特許第6013219号(P6013219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013219
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E05F 5/02 20060101AFI20161011BHJP
   E06B 3/46 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   E05F5/02 F
   E06B3/46
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-26675(P2013-26675)
(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公開番号】特開2014-156695(P2014-156695A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高山 幸久
(72)【発明者】
【氏名】伊良波 怜美
【審査官】 佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−73797(JP,U)
【文献】 実開平5−84797(JP,U)
【文献】 実開昭57−29784(JP,U)
【文献】 実開昭53−151162(JP,U)
【文献】 特開平1−102115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00− 13/04、
17/00
E06B 3/04− 3/46、
3/50− 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体に案内されて移動方向に移動可能な障子と、
前記枠体を構成し前記障子の戸先部と前記移動方向において対向する対向枠と、
を有し、
前記戸先部と前記対向枠とのうちの一方には、
前記戸先部が前記対向枠に対する所定の位置に前記障子が移動したときに、前記戸先部と前記対向枠とのうちの他方に当接される当接部が設けられており、
前記当接部は、前記障子を移動させる外力により当該当接部に押圧力が作用したときに、前記押圧力を吸収すべく弾性変形する弾性変形部を介して設けられており、
前記当接部と前記弾性変形部とは前記移動方向と交差する方向において互いに隣り合う位置に配置されるとともに、
前記当接部は、前記押圧力が作用する前記移動方向への移動が許容されており、
前記弾性変形部は、前記移動方向への移動が規制され、
前記当接部に前記押圧力が作用したときに生じるモーメントにより弾性変形することを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項に記載の建具であって、
前記当接部は、前記弾性変形部を介して、前記戸先部と前記対向枠のうちの前記一方に固定されており、
前記弾性変形部が撓むことにより前記押圧力を吸収することを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項に記載の建具であって、
前記移動方向と直交する方向において、前記モーメントの中心と前記当接部との距離は、前記モーメントの中心と前記弾性変形部において撓みによる変位量が最も大きい部位までの距離より短いことを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項のいずれか記載の建具であって、
前記戸先部と前記対向枠とのうちの一方は、前記当接部とともに当接されて前記障子の位置を規制する規制部を備えており、
前記戸先部が前記対向枠に対する前記所定の位置は、前記当接部が前記対向枠に当接されて前記戸先部と前記対向枠とが平行をなす位置であることを特徴とする建具。
【請求項5】
請求項1乃至請求項のいずれかに記載の建具であって、
前記枠体は、前記移動方向に沿って設けられ前記障子を案内する案内部を備え、
前記障子は、前記案内部と係合して摺動しつつ移動する摺動部材を有する摺動ユニットを備え、
前記当接部は、前記摺動ユニットに設けられていることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体に案内されて移動方向に移動可能な障子を備えた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
枠体に案内されて移動方向に移動可能な障子、例えば、ガラス戸や網戸などを備えた建具としては、例えば、方形状に框組みしてなる框体内にガラス体が納められた内障子及び外障子が、上枠と下枠及び左右の縦枠を方形状に枠組みしてなる枠体内に引き違い状に納められ、外障子の室外側に網戸が納められたサッシが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなサッシは、枠体が形成する開口を閉塞すべく内障子及び外障子を閉じたときには、内障子及び外障子の戸先框内に設けられて、内障子及び外障子を見込み方向の適切な位置に案内する部材が枠体の内周側に突出する部位に当接される。また、網戸においては、見付け方向における枠体の両端側にて、網戸の縦框が枠体を構成する縦枠に当接される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−208391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなサッシは、内障子及び外障子を閉じるとき、または網戸を移動したときに、内障子、外障子、及び、網戸が縦枠に向かって移動して縦枠に当接されるので、縦枠に当接するときに縦枠に押圧力が作用する。特に、網戸は、軽量であるため、勢いよく縦枠に当接される場合があり、このような操作による衝撃が繰り返されることにより、上枠及び下枠と縦枠との接合部に隙間が生じる、或いは、縦枠が変形する場合があるという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、障子が縦枠に当接されるときに生じる衝撃を低減することが可能な建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の建具は、枠体に案内されて移動方向に移動可能な障子と、前記枠体を構成し前記障子の戸先部と前記移動方向において対向する対向枠と、を有し、前記戸先部と前記対向枠とのうちの一方には、前記戸先部が前記対向枠に対する所定の位置に前記障子が移動したときに前記戸先部と前記対向枠とのうちの他方に当接される当接部が設けられており、前記当接部は、前記障子を移動させる外力により当該当接部に押圧力が作用したときに、前記押圧力を吸収すべく弾性変形する弾性変形部を介して設けられていることを特徴とする建具である。
【0007】
このような建具によれば、障子の戸先部と枠体の対向枠とのうちの一方には、戸先部が対向枠に対する所定の位置に障子が移動したときに、戸先部と対向枠とのうちの他方に当接される当接部が設けられているので、戸先部と対向枠とのうちの他方に当接部を当接させることにより障子を所定の位置に移動させることが可能である。また、障子を移動させる外力により当接部を押圧する押圧力が作用したときに、その押圧力を吸収すべく弾性変形する弾性変形部を介して当接部が設けられているので、戸先部が所定の位置に至った際に当接部が押圧される場合には、押圧力が弾性変形部により吸収されるので、戸先部と対向枠との間にて作用する押圧力を軽減することが可能である。このため、障子が縦枠に当接されるときに生じる衝撃を低減することが可能である。
【0008】
また、当接部と弾性変形部とは移動方向と交差する方向において互いに隣り合う位置に配置されるので、移動方向への移動が許容されている当接部に押圧力が作用すると、移動方向への移動が規制されている弾性変形部との間を中心として当接部が移動方向に回転しようとするモーメントが生じる。このとき、回転の中心に対して当接部と反対側に位置する弾性変形部は、生じたモーメントにより移動方向と反対方向に作用する力により弾性変形するので、当接部に作用した押圧力を吸収することが可能である。
【0009】
かかる建具であって、前記当接部は、前記弾性変形部を介して、前記戸先部と前記対向枠のうちの前記一方に固定されており、前記弾性変形部が撓むことにより前記押圧力を吸収することが望ましい。
このような建具によれば、弾性変形部が撓むことにより押圧力を吸収することができるので、例えば、バネなどの弾性体を用いる場合より簡単な構造にて実現することが可能である。
【0010】
かかる建具であって、前記移動方向と直交する方向において、前記モーメントの中心と前記当接部との距離は、前記モーメントの中心と前記弾性変形部において撓みによる変位量が最も大きい部位までの距離より短いことが望ましい。
このような建具によれば、モーメントの中心と当接部との距離が、移動方向と直交する方向において、モーメントの中心と弾性変形部において撓みによる変位量が最も大きい部位までの距離より短いので、当接部の移動方向における変位が小さくても、弾性変形部をより大きく変形させて押圧力を吸収させることが可能である。このため、より大きな押圧力を吸収することが可能である。
【0011】
かかる建具であって、前記戸先部と前記対向枠とのうちの一方は、前記当接部とともに当接されて前記障子の位置を規制する規制部を備えており、前記戸先部が前記対向枠に対する前記所定の位置は、前記当接部が前記対向枠に当接されて前記戸先部と前記対向枠とが平行をなす位置であることが望ましい。
このような建具によれば、当接部が、戸先部と対向枠とのうちの他方に当接される所定の位置は、戸先部と対向枠とが平行をなす位置なので、障子と対向枠とが平行となる位置を越える際に生じる押圧力が弾性変形部により吸収される。このため、弾性変形部の弾性変形による復元力を、障子と対向枠とが平行となるように作用させることが可能である。
【0012】
かかる建具であって、前記枠体は、前記移動方向に沿って設けられ前記障子を案内する案内部を備え、前記障子は、前記案内部と係合して摺動しつつ移動する摺動部材を有する摺動ユニットを備え、前記当接部は、前記摺動ユニットに設けられていることが望ましい。
このような建具によれば、当接部が摺動ユニットに設けられているので、当接部と摺動ユニットとを個々に取り付ける必要はない。このため、組立が容易である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、障子が縦枠に当接されるときに生じる衝撃を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る建具を室外側から見た外観図である。
図2】本実施形態に係る建具を示す横断面図である。
図3図3(a)は、建具の右上部に設けられた摺動ユニットを示す平面図であり、図3(b)は、図1におけるA−A断面図である。
図4】建具の右上部に設けられた摺動ユニットを室外側から見た図である。
図5】摺動ユニットの斜視図である。
図6】押圧力により弾性変形した弾性変形部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る建具について図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態では、室内外の境界に設けられ、図1図2に示すように、上枠11、下枠12と左右の縦枠13とが矩形状に枠組みされた枠体10と、枠体10にて形成される枠開口10aを閉塞可能な2枚の障子としてのガラス戸15と、2枚のガラス戸15の室外側に設けられた障子としての網戸20と、を有する引き違い方式の建具1を例に挙げて説明する。
【0017】
以下の説明においては、建物等に取り付けられた建具1を室外側から見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向または見付け方向、室内外方向である奥行き方向を見込み方向として示す。また、建具1が備える各部材は、単体として説明する場合であっても、建物等に取り付けられた状態で上下方向、見付け方向、見込み方向等となる方向にて方向を特定して説明する。また、見付け方向については、枠体10及び後述する框体21の面内方向において枠開口10a及び框開口21aの中央側を内周側、枠開口10a及び框開口21aの外側を外周側として示す。
【0018】
本実施形態の建具1は、上枠11及び下枠12に見付け方向に沿って設けられたレール10b、10cに沿って、2枚のガラス戸15、及び、網戸20が移動可能に設けられている。
【0019】
枠体10の上枠11及び下枠12には、最も室外側に網戸20を案内する網戸レール10cが設けられており、左右の縦枠13には、見付け方向における左右の端側に移動された網戸20と係合するヒレ状の係合部13aが設けられている。係合部13aは、上下の網戸レール10cと繋がるように、枠体10の内周側に突出されている。
【0020】
網戸20の框体21は、互いに間隔を隔てた左右の縦框24の上下端部間に上框22と下框23とが接合されて矩形状に框組みされており、框体21の内周側に網材40が張設されて形成されている。網戸20は、枠体10の見付け方向において、左右のいずれの縦枠13にも係合すべく移動するので、網戸20が備える2本の縦框24は、いずれも戸先部に相当し、網戸20が移動する際の進行方向が移動方向に相当する。また、左右の縦枠13が、網戸20の戸先部をなす2本の縦框24と対向する対向枠に相当する。
【0021】
縦框24は、図3に示すように、上下方向に連通し、平面視ほぼ矩形状の中空部25を形成する縦框本体部26と、縦框本体部26において室外に臨む室外側壁部26aと、室内に臨む室内側壁部26bとが框体21の外周側に延出され形成され、外周側に向かって開放された外周溝部27をなし、縦框本体部26にて框体21の内周側に面する内周壁部26cには、網材40の端部が固定される固定溝部28が形成されている。
【0022】
室外側壁部26aと繋がって外周溝部27の室外に臨む面を形成する外溝壁部27aには、縦框24の中空部25を形成し内周壁部26cと対面するとともに外周溝部27の底部をなす外周壁部26dと、見付け方向に間隔を隔てて室内側に突出する突起27bが設けられている。また、室内側壁部26bと繋がって外周溝部27の室内に臨む面を形成する内溝壁部27cには、外周壁部26dと見付け方向に間隔を隔てた位置にシール部材(不図示)が室内側から嵌合される嵌合溝27dが設けられている。突起27bと嵌合溝27dの内周側の縁とは、見込み方向に対向する位置に設けられている。
【0023】
外周壁部26dには、外周壁部26dの室外側壁部26a側と室内側壁部26b側とを僅かに残して、見込み方向に対向する突片26eを形成するように、縦框24の上端から下方に切り欠かいた外凹部26f(図4)が設けられている。また、外周壁部26dと見付け方向にて対向する内周壁部26cには、縦框24の上端から下方に切り欠かいて、後述する摺動ユニット35の内周側の部位が入り込む内凹部26g(図4)が設けられている。
【0024】
下框23の左右の端部には、図1に示すように、下側の網戸レール10c上に載置されつつ案内される戸車31と、戸車31を回動自在に支持するハウジング32と、を有する戸車ユニット30がそれぞれ設けられている。戸車ユニット30には、網戸20が枠体10内において、左右の端に移動された際に、左右の縦枠13が有する係合部13aと係合して、網戸20の縦枠13に対する位置を規制する規制部33がハウジング32に一体に設けられている。
【0025】
戸車ユニット30は、ハウジング32が、下框23及び当該下框23と連結された縦框24内にわたって設けられており、規制部33は、中空部25側から外周溝部27内に至るように形成されており、係合部13aに当接される規制部33が外周溝部27の開放されている外周側に臨むように形成されている。
【0026】
また、左右の戸車ユニット30は各々、網戸20が下枠12の網戸レール10cに載置された状態にて、ハウジング32に対する戸車31の上下方向における位置、すなわち高さを調整可能な調整機構(不図示)を備えている。このため、左右の戸車ユニット30において、ハウジング32に対する戸車31の位置を調整することにより枠体10に対する網戸の傾きを調整することが可能である。
【0027】
左右の縦框24の上端部には、網戸20が移動する際に、上枠11の網戸レール10cと摺動する摺動部材36を備えた合成樹脂製の摺動ユニット35が、それぞれ設けられている。ここで、摺動部材36が係合しつつ移動する、上枠11の網戸レール10cが案内部に相当する。
【0028】
摺動ユニット35は、図3図5に示すように、外周壁部26dの室外側壁部26a側と室内側壁部26b側とに設けられた突片26eが挿入されるスリット35aを備え中空部25及び外周溝部27にそれぞれ嵌合される中空嵌合部35b及び溝部嵌合部35cが一体に設けられた摺動ユニット嵌合部35dと、中空嵌合部35bの下部側に一体に設けられ中空部25内から上框22側に至るように収容されるホルダ35eと、ホルダ35eに回動自在に支持されるとともに、捻りばね39により上方に付勢されて下方に移動可能な摺動部材36と、中空嵌合部35bから下方に延出された弾性変形部35fと、弾性変形部35fの下部に設けられ、網戸20が見付け方向の左右の端に移動されたときに係合部13aが当接される当接部35gと、を有している。
【0029】
摺動ユニット35は、縦框24の上方から溝部嵌合部35c、弾性変形部35f、当接部35gが、外周溝部27内に挿入され、摺動部材36が設けられたホルダ35e及び中空嵌合部35bが中空部25に挿入されて、スリット35aに突片26eが入り込むように縦框24の上端に嵌合される。このとき、摺動ユニット嵌合部35dが外凹部26fに支持され、ホルダ35eが中空部25間に架け渡されるように内凹部26gに支持される。また、溝部嵌合部35cの上端に、見込み方向において各々、中空部25の外側に向かって突出された縁部35oが、外周溝部27の外溝壁部27a及び内溝壁部27cの上端と係合する。
【0030】
摺動ユニット嵌合部35dには、網戸20が枠体10に取り付けられた際に上枠11の網戸レール10cが挿通されるV字状の溝35hが見付け方向に沿って設けられている。
【0031】
溝部嵌合部35cと弾性変形部35fは、図3(a)、図3(b)に示すように、見込み方向の幅W1が、外周溝部27内に設けられた突起27bと嵌合溝27dとの、見込み方向における間隔W2より広く形成されている。
【0032】
弾性変形部35fの下端側には、上部側より見付け方向の厚みが厚い厚肉部35iが設けられている。厚肉部35iの見付け方向の厚みtは、外周壁部26dと突起27b及び嵌合溝27dの内周側の縁との間隔W3より僅かに狭く形成されている。そして、弾性変形部35fの見付け方向における内周側の面は外周壁部26dにほぼ沿うように配置されており、厚肉部35iより上部側の変形部本体35lは、突起27b及び嵌合溝27dの内周側の縁との間隔W4が、厚肉部35iより広く設けられている。
【0033】
厚肉部35iの下端には、下方に向かって見付け方向の厚みが薄くなるテーパー35j、35kが、内周側と外周側とにそれぞれ設けられている。内周側に設けられた内テーパー35jは、外周側に設けられた外テーパー35kより上方まで形成されている。
【0034】
当接部35gは、厚肉部35iの半分よりほぼ下側に設けられて、厚肉部35iより下側まで延出され、厚肉部35iの外周側に設けられた外テーパー35kより上側の部位のみが厚肉部35iと連結されている。すなわち、当接部35gと弾性変形部35fとは、移動方向と交差するほぼ上下方向において互いに隣り合う位置に配置されている。当接部35gの厚肉部35iより下側に延出された部位と外周壁部26dとは、見付け方向に間隔が隔てられている。
【0035】
当接部35gは、外周溝部27内に設けられた突起27b及び嵌合溝27dより内周側に設けられた弾性変形部35fと繋がり、当接部35gの係合部13aと当接する当接面35mが、突起27bと嵌合溝27dとの間から当該突起27bより外周側に突出している。この当接面35mは、外テーパー35kの上端より下側に設けられており、当接部35gの当接面35mより上側は、上方に向かって見付け方向の幅が狭くなるような当接テーパー部35nが設けられている。
【0036】
網戸20は、枠体10における左右の端側に移動させた状態にて、左右の下端部に設けられた戸車ユニット30が有する戸車31の上下方向における位置を調整して、図4に示すように、戸車ユニット30の規制部33と、弾性変形部35fが変形しない状態にて摺動ユニット35の当接面35mとが、縦枠13の係合部13aに当接するように網戸の姿勢が調整される。網戸20の戸車31の位置が調整された状態では、網戸20と左右の縦枠13とが平行をなしている。
【0037】
ところで、網戸等の障子は、室内または室外側から、上部側が下部側より奥側に位置するように見込み方向に傾斜させた状態にて、障子を上方に移動させて上部を上枠内に挿入した後に、下部側を奥側に移動して障子がほぼ鉛直な状態となった後に、下枠のレール上に載置する、所謂けんどん方式にて枠体に取り付けられることが多い。このため、障子の上部には、枠体との間に空隙が設けられていることが多い。
【0038】
このような障子を枠体に沿って移動させる場合には、進行方向の前方側に位置する縦框に手を掛けて、当該縦框を進行方向に向かって外力を作用させて押圧し移動させる。このとき、進行方向の前側に位置する戸車を中心として障子にモーメントが作用する。すなわち、障子の下端側より上端側の方が先行するように障子が傾くおそれがある。特に、重量が小さな網戸の場合には、網戸が傾斜する傾向が顕著になる。
【0039】
そして、網戸の下端側より上端側の方が先行するように網戸が傾いて移動し、縦框の係合部と係合したときには、ほぼ同時に係合部に当接するはずの戸車ユニットの規制部と摺動ユニットの当接面とのうち、当接面の方が先に当接する。このとき、網戸の姿勢を調整するための規制部及び当接部が、框体に高い剛性を備えて設けられているような従来の網戸の場合には、係合部に、当接面の当接により押圧力が作用する。すなわち、網戸20を移動させる外力により当接部35gに押圧力が作用する。このような当接面からの押圧力が繰り返し作用すると、進行方向の前方側の縦枠と上枠との間に隙間が生じる、或いは、縦枠が変形するおそれがある。
【0040】
そこで、本願の建具1は、障子としての網戸20に設けられている当接部35g(当接面35m)と、框体21に嵌合された摺動ユニット嵌合部35dとの間に介在された弾性変形部35fの、内周側への移動を規制し、当接部35gの内周方向への移動を許容するように構成している。このため、係合部13aに、当接面35mの当接により押圧力が作用したときに当接部35gも係合部13aにより内周側に押圧されて、図6に示すように、厚肉部35iに設けられた内テーパー35jの上縁を中心Oとして、当接部35g及び弾性変形部35fにモーメントが作用する。当接部35g及び弾性変形部35fにモーメントが作用することにより、弾性変形部35fが、変形部本体35lにおける上下方向の中央が最も外周側に変位して撓むように弾性変形して押圧力が吸収される。
【0041】
本実施形態の建具1によれば、網戸20が移動して縦枠13と係合する網戸20の縦框24には、縦框24が縦枠13に対する所定の位置に網戸20が移動したときに、縦枠13の係合部13aに当接される当接部35gが設けられているので、縦枠13の係合部13aに当接部35gを当接させることにより網戸20を所定の位置に移動させることが可能である。また、網戸20を移動させる外力により当接部35gを押圧する押圧力が作用したときに、その押圧力を吸収すべく弾性変形する弾性変形部35fを介して当接部35gが設けられているので、縦框24が所定の位置に至った際に当接部35gが押圧される場合には、押圧力が弾性変形部35fにより吸収されるので、縦框24と縦枠13との間にて作用する押圧力を軽減することが可能である。このため、網戸20が縦枠13に当接されるときに生じる衝撃を低減することが可能である。
【0042】
また、当接部35gと弾性変形部35fとは移動方向と交差する方向、すなわち上下方向において互いに隣り合う位置に配置されるので、移動方向への移動が許容されている当接部35gに押圧力が作用すると、移動方向への移動が規制されている弾性変形部35fとの間、すなわち、内テーパー35jの上縁を中心Oとして当接部35gが移動方向に回転しようとするモーメントが生じる。このとき、回転の中心Oに対して当接部35gと反対側に位置する弾性変形部35fの変形部本体35lは、生じたモーメントにより移動方向と反対方向に作用する力により撓むように弾性変形するので、当接部35gに作用した押圧力を吸収することが可能である。
【0043】
また、モーメントの中心Oと当接部35gとの距離L1が、移動方向と直交する上下方向において、モーメントの中心Oと、撓み変形する弾性変形部35fにおいて最も変位が大きな、変形部本体35lの中央との距離L2より短いので、当接部35gの移動方向における小さな変位であっても、弾性変形部35fをより大きく変形させて押圧力を吸収させることが可能である。このため、より大きな押圧力を吸収することが可能である。
【0044】
また、当接部35gが、縦枠13の係合部13aに当接される所定の位置は、網戸20と縦枠13とが平行をなす位置なので、網戸20と縦枠13とが平行となる位置を越える際に生じる押圧力が吸収され、弾性変形部35fの弾性変形による復元力を、網戸20と縦枠13とが平行となるように作用させることが可能である。
【0045】
また、弾性変形部35fを変形部本体35lが撓む形態としたので、より簡単な構造にて押圧力を吸収することが可能である。本実施形態においては、弾性変形部35fと当接部35gとが一体に形成されている例について説明したが、各々別体に形成された弾性変形部と当接部とが接合された形態であっても構わない。また、本実施形態においては、弾性変形部35fが撓み変形する例を挙げて説明したが、弾性変形部として例えば、バネなどの弾性体を用いても構わない。
【0046】
本実施形態の当接部35gは、枠体10の上枠11に設けられた網戸レール10cと係合して摺動しつつ移動する摺動部材36が設けられている摺動ユニット35と一体に形成されているので、当接部35gと摺動部材36とを個々に取り付ける必要はない。このため、組立が容易である。尚、当接部35gと摺動部材36とは必ずしも一体に設けられていなくともよい。また、当接部及び弾性変形部は、障子の戸先部または縦枠に一体に形成されていても構わない。
【0047】
上記実施形態においては、障子として網戸20を例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば、ガラス戸等であっても構わない。また、引き違いタイプの建具1を例に挙げて説明したが、片引きタイプの障子など枠体に沿って移動可能な障子であれば構わない。また、左右方向に移動する障子を例に挙げて説明したが、障子の移動方向は上下方向であっても構わない。
【0048】
また、上記実施形態においては、戸先部が縦枠と係合した際に、衝撃を吸収する当接部及び弾性変形部を障子側に備えた例について説明したが、縦枠側に設けられていても構わない。
【0049】
上記実施形態においては、網戸20の縦框24が有する外周溝部27内に左右の縦枠13が有する係合部13aが入り込むことにより係合する例について説明したが、これに限るものではない。たとえば、枠体と網戸の戸先部との係合には、縦枠に設けられた溝部に縦框に設けられたヒレ状の部位が入り込むことにより係合する場合、或いは、縦枠側に上下方向に沿って設けられ内周側に向かって開放された溝部に戸先の縦框が入り込み、互いの平面部同士が当接されることにより係合する場合も含まれる。
【0050】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0051】
1 建具、10 枠体、10ba 網戸レール、11 上枠、13 縦枠、
13a 係合部、20 網戸、24 縦框、33 規制部、35 摺動ユニット、
35f 弾性変形部、35g 当接部、35l 変形部本体、35m 当接面、
36 摺動部材、
O モーメントの中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6