特許第6013223号(P6013223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013223
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】エンジンの油圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   F01M 1/08 20060101AFI20161011BHJP
   F01M 1/16 20060101ALI20161011BHJP
   F01P 3/08 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   F01M1/08 B
   F01M1/16 G
   F01M1/08 E
   F01P3/08 A
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-30141(P2013-30141)
(22)【出願日】2013年2月19日
(65)【公開番号】特開2014-159760(P2014-159760A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2015年11月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松山 泰
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】高木 登
(72)【発明者】
【氏名】西田 裕基
(72)【発明者】
【氏名】小野 壽
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−174824(JP,A)
【文献】 特開平9−209733(JP,A)
【文献】 特開2010−138846(JP,A)
【文献】 特開2010−24926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 1/08
F01M 1/16
F01P 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンへ直接、オイルを噴射するオイルジェットを備えたエンジンの油圧制御装置であって、
エンジンの運転状態に基づいて、前記ピストンの温度状態が高いほど高圧側の値になるように油圧の制御目標値を設定する目標油圧設定部を備え、
前記目標油圧設定部は、エンジンの運転状態の変化に対するピストンの温度変化の応答遅れを表すピストン時定数を算出し、このピストン時定数を用いて前記油圧の制御目標値を補正する、ことを特徴とするエンジンの油圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンの油圧制御装置において、
前記目標油圧設定部は、エンジンの吸気量に基づいて、吸気量が少ないほど大きな値になるようにピストン時定数を算出する、エンジンの油圧制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエンジンの油圧制御装置において、
前記目標油圧設定部は、吸気量が増大しているときには減少しているときに比べて小さな値になるように、ピストン時定数を算出する、エンジンの油圧制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のエンジンの油圧制御装置において、
前記目標油圧設定部は、エンジンの運転状態として少なくとも負荷率および回転数に基づいて、推定される前記ピストンの温度状態が高いほど高圧側の値になるように油圧の制御目標値を設定する、エンジンの油圧制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のエンジンの油圧制御装置において、
前記目標油圧設定部は、エンジンの水温および油温の少なくとも一方を加味して、推定される前記ピストンの温度状態が高いほど高圧側の値になるように、油圧の制御目標値を設定する、エンジンの油圧制御装置。
【請求項6】
請求項4または5のいずれかに記載のエンジンの油圧制御装置において、
前記目標油圧設定部は、エンジンの燃焼室の空燃比を加味して、推定される前記ピストンの温度状態が高いほど高圧側の値になるように、油圧の制御目標値を設定する、エンジンの油圧制御装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1つに記載のエンジンの油圧制御装置において、
前記目標油圧設定部は、エンジンの点火時期、気筒内圧、および排気温の少なくとも1つを加味して、推定される前記ピストンの温度状態が高いほど高圧側の値になるように、油圧の制御目標値を設定する、エンジンの油圧制御装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載のエンジンの油圧制御装置において、
前記目標油圧設定部は、エンジンの油温が高いほど高圧側の値になるように油圧の制御目標値を設定する、エンジンの油圧制御装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載のエンジンの油圧制御装置において、
エンジンには容量可変形のオイルポンプが装備され、
前記目標油圧設定部により設定された油圧の制御目標値に基づいて前記オイルポンプの容量を変更し、その吐出圧を制御するように構成されている、エンジンの油圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンの油圧制御装置に関し、特にピストンに直接、オイルを噴射するオイルジェットを備える場合の油圧の制御に関連する。
【背景技術】
【0002】
従来より一般にエンジンには、ピストンやクランクジャーナルなどの被潤滑部にエンジンオイルを供給するようにオイル通路が設けられており、ピストンに対して冷却のために直接、オイルを噴射するオイルジェットを備える場合もある。そして、そのようなオイル通路の油圧は、各部に必要なオイル供給を行える範囲であれば、できるだけ低くなるように制御することが好ましい。
【0003】
例えば特許文献1に記載のエンジンでは、その温度状態や負荷率などのエンジン状態を監視し、これに応じて、できるだけ低圧になるように油圧を制御している。こうすると、例えば、ピストンの受熱量が大きな高負荷高回転の運転状態では、その冷却に十分なオイル供給が可能になる一方、受熱量の小さな低負荷ないし低回転の運転状態では油圧を低下させて、オイルポンプの駆動負荷を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−146839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エンジンの状態がそのままピストンの状態を表しているわけではなく、特にエンジンの運転状態が変化する過渡時には、その運転状態とピストンの温度状態との間に時間的なズレが生じるので、前記従来例のようにエンジンの状態を考慮するのみでは、オイルジェットによるピストンへのオイルの噴射量が過剰になったり、反対に不足したりすることがある。
【0006】
例えば、高負荷での運転後にエンジンの回転数や負荷が低くなっても、ピストンの温度はすぐには低下せず、暫くの間はオイルジェットによってピストンへ或る程度のオイルを噴射する必要がある。このときに前記従来例のようにエンジン負荷の低下に応じて油圧を低下させてしまうと、ピストンへのオイルの噴射量が不足してしまい、一時的にピストン温度が高くなり過ぎて、ダメージを与える虞もある。
【0007】
かかる点を考慮して本発明の目的は、オイルジェットによるピストンの冷却性能を十分に担保しながら、オイルポンプの駆動負荷はできるだけ軽減して、燃費の改善を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために本発明は、エンジンの状態から推定されるピストンの温度状態に対応する好適な値になるように、油圧の制御目標値を設定することが特徴である。すなわち、本発明は、ピストンへ直接、オイルを噴射するオイルジェットを備えたエンジンの油圧制御装置を対象として、エンジンの運転状態に基づいて、前記ピストンの温度状態が高いほど高圧側の値になるように油圧の制御目標値を設定する目標油圧設定部を備える。
【0009】
そして、前記目標油圧設定部を、エンジンの運転状態の変化に対するピストンの温度変化の応答遅れを表すピストン時定数を算出し、このピストン時定数を用いて前記油圧の制御目標値を補正するように構成した。
【0010】
前記の発明特定事項により、エンジンの運転中には基本的にその運転状態に基づいて、ピストンの温度状態が高いほど油圧も高くなるように制御される。すなわち、ピストンの受熱量が大きな高負荷高回転の運転状態では油圧が高くなり、ピストンへその冷却に十分なオイルを噴射することができる。一方、ピストンの受熱量が小さな低負荷ないし低回転の運転状態では油圧が低くなって、オイルポンプの駆動負荷が軽減されることにより、燃費の低減が図られる。
【0011】
また、例えばエンジンの運転状態が変化する過渡時には、その運転状態の変化に対してピストン温度の変化が遅れることを考慮して、この遅れ分を補償するようにピストン時定数を用いて油圧の制御目標値が補正される。これにより、過渡時においても、ピストンの実際の温度状態に対応する適切な油圧を制御目標値として設定することができる。
【0012】
前記のピストン時定数は、ピストンの熱容量に主として依存するものなので、予め実験・シミュレーションなどによって適合した値を用いてもよいが、エンジンの運転状態によってピストンの受熱量および放熱量が変化することも、ピストン時定数の値に反映させることが好ましい。
【0013】
例えば、前記目標油圧設定部は、エンジンの吸気量に基づいて、吸気量が少ないほど大きな値になるようにピストン時定数を算出してもよい。吸気量の少ないときは、エンジンの燃焼室における発熱量も少なくなり、ピストンの温度上昇の応答遅れが比較的大きくなるからである。また、吸気量の少ないときは、燃料カットの際の吸気によるピストンの冷却作用が弱くなるので、ピストンの温度低下の応答遅れも比較的大きくなる。
【0014】
一方、吸気量の多いときには燃焼室における発熱量も多くなるので、ピストンの温度上昇の応答遅れが比較的小さくなるし、燃料カットの際の吸気によるピストンの冷却作用も強くなる。よって、この場合はピストン時定数を比較的小さな値とすればよい。
【0015】
また、前記目標油圧設定部は、吸気量が増大しているときには減少しているときに比べて小さな値になるように、ピストン時定数を算出してもよい。こうすれば、吸気量の増大に伴いピストンの受熱量も増大する加速の過渡時と、吸気量の減少に伴いピストンの受熱量が減少する減速の過渡時とで、それぞれ実際のピストン温度の変化に対応するよう好適に油圧の制御目標値を設定できる。
【0016】
すなわち、加速の過渡時には燃焼室における発熱量が急速に増大するので、これを受けるピストンの温度も比較的速く上昇し、その応答遅れが比較的小さくなる。一方、減速の過渡時にはピストンの受熱量は急速に減少するものの、その放熱量の増大は、前記加速の過渡時における受熱量の増大に比べれば緩やかなものなので、ピストンの温度は比較すれば緩やかな低下を示し、その応答遅れが比較的大きくなるからである。
【0017】
さらに、前記目標油圧設定部は、前記のように算出したピストン時定数を用いて補正する前の油圧の制御目標値を、少なくともエンジンの負荷率および回転数に基づいて推定されるピストンの温度状態が高いほど、高圧側の値になるように設定してもよい。こうすれば、受熱量の大きさに応じて実際のピストン温度に対応するよう、好適に油圧の制御目標値を設定できる。
【0018】
また、前記目標油圧設定部は、エンジンの水温および油温の少なくとも一方を加味して、推定される前記ピストンの温度状態が高いほど高圧側の値になるように、油圧の制御目標値を設定してもよい。こうすれば、放熱量の大きさに応じて実際のピストン温度に対応するよう、好適に油圧の制御目標値を設定できる。
【0019】
また、前記目標油圧設定部は、エンジンの燃焼室の空燃比を加味して、推定される前記ピストンの温度状態が高いほど高圧側の値になるように、油圧の制御目標値を設定してもよいし、エンジンの点火時期、気筒内圧、および排気温の少なくとも1つを加味して、推定される前記ピストンの温度状態が高いほど高圧側の値になるように、油圧の制御目標値を設定してもよい。
【0020】
加えて、前記目標油圧設定部は、エンジンの油温が高いときほど高圧側の値になるように、油圧の制御目標値を設定するように構成してもよい。これは、エンジンの油温が高いほど、オイルジェットによるピストンの冷却性能が低下するからである。
【0021】
ところで、前記のように目標油圧設定部により設定された制御目標値になるように、エンジンの油圧を制御するために、好ましいのは、エンジンに容量可変形のオイルポンプを装備して、その容量を前記油圧の制御目標値に基づいて変更し、オイルポンプの吐出圧を制御することである。但し、容量可変形のオイルポンプは装備せず、開度を連続的に調整可能な流量制御バルブなどを用いることもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るエンジンの油圧制御装置によると、オイルジェットによりピストンへ直接、オイルを噴射する場合に、エンジンの運転状態に基づいて、推定されるピストンの温度状態が高いほど高圧側の値になるように、油圧の制御目標値を設定するとともに、この制御目標値をピストン時定数を用いて補正することにより、過渡時においてもピストンの実際の温度状態に対応するよう適切に油圧を制御して、ピストンの冷却性能を十分に担保しながら、オイルポンプの駆動負荷はできるだけ軽減し、燃費を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態に係るエンジンの概略構成例を示す図である。
図2】エンジンの燃焼室およびその周辺部の構造を示す断面図である。
図3】エンジンのオイル供給系統の概略を示す説明図である。
図4】エンジンのオイルポンプの構造を示す断面図であって、ポンプ容量が最大の状態を示す。
図5】オイルポンプの容量が最小の状態を示す図4相当図である。
図6】OCVへの電流指令値とポンプ吐出圧との関係を示すグラフ図である。
図7】エンジンの回転数および負荷率とピストン温度との関係を示す特性図である。
図8】加速の過渡時におけるピストン温度の上昇遅れの一例を示すグラフ図である。
図9】(a)は、エンジンの油圧制御の全体的な制御動作を示すフローチャートであり、(b)は、目標油圧の設定について示すフローチャートである。
図10】エンジンの吸気量に対応づけてピストン時定数を設定したマップの一例を示す図である。
図11】他の実施形態に係る図9(b)相当図であって、(a)は油温を加味する場合を、(b)はさらに空燃比を加味する場合を、それぞれ示す。
図12図11(b)のフローにさらに気筒内圧、排気温または点火時期を加味する他の実施形態に係る図9(b)相当図であって、(a)は気筒内圧を加味する場合を、(b)は排気温を加味する場合を、(c)は点火時期を加味する場合をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では一例として自動車用のディーゼルエンジンに本発明を適用した場合について説明するが、これに限ることはない。本実施形態の記載はあくまで例示に過ぎず、本発明の構成や用途などについても限定するものではない。
【0025】
−エンジン−
まず、ディーゼルエンジン1(以下、単にエンジン1ともいう)の概略構成について説明すると、図1には模式的に示すようにエンジン1は、一例として直列4気筒エンジンであって、4つのシリンダ12(気筒)のそれぞれに空気(吸気)を供給するための吸気通路2がシリンダヘッド1aの一側(図の上側)に接続されている。また、シリンダヘッド1aの反対側(図の下側)には、4つのシリンダ12のそれぞれから既燃ガス(排気)を排出させるための排気通路3が接続されている。
【0026】
すなわち、図2を参照して後述するように、エンジン1のシリンダブロック1bには円筒状のシリンダ12が4つ(同図には1つのみ示す)形成され、その内部にそれぞれピストン13が収容されている。このピストン13の頂面13aとシリンダヘッド1aの下面との間に燃焼室11が区画され、吸気ポート15および排気ポート16によってそれぞれ前記の吸気通路2および排気通路3に連通されるようになっている。
【0027】
図1に表れているように、吸気通路2の下流側(吸気流の下流側)は、各シリンダ12に吸気を分配するインテークマニホールド2aとされている。この吸気通路2の上流側には、空気を濾過するエアクリーナ6、後述するターボチャージャ20のコンプレッサインペラ24、これにより圧縮された高温の空気を冷却するインタークーラ7、吸気絞り弁(ディーゼルスロットル)8などが配設されている。
【0028】
また、排気通路3の上流側(排気流の上流側)は、各シリンダ12からの排気の流れが合流するエキゾーストマニホールド3aであり、その下流側にはターボチャージャ20のタービンホイール22、排気浄化装置9などが配設されている。排気浄化装置9は一例として、NOx吸蔵触媒(NSR触媒:NOx Storage Reduction触媒)9aおよびDPNR触媒(Diesel Particulate-NOx Reduction触媒)9bを備えている。
【0029】
なお、ターボチャージャ20は、排気流の力で吸気を過給するもので、排気通路3のタービンハウジング21に収容されたタービンホイール22が、排気の流れを受けて回転される。一方、吸気通路2のコンプレッサハウジング23にはコンプレッサインペラ24が収納されて、タービンシャフト25によりタービンホイール22に連結されている。これによりタービンホイール22と一体にコンプレッサインペラ24が回転し、吸気を圧縮しながら送り出す(過給)。
【0030】
本実施形態におけるターボチャージャ20は、可変ノズル式ターボチャージャであって、タービンホイール22を取り囲むように配設された複数のノズルベーン26によって排気の流速を変更可能になっている。ノズルベーン26は、図示しないリンク機構などを介して電動のアクチュエータ27により動作され、その角度が変更される。
【0031】
また、本実施形態では排気通路3におけるエキゾーストマニホールド3aとの接続部付近から分岐して吸気通路2まで延び、排気の一部を吸気通路2に還流させるEGR通路10が設けられている。このEGR通路10には、排気の還流量を調整するためのEGRバルブ10aと、EGRガスを冷却するためのEGRクーラ10bとが設けられている。
【0032】
ここで、エンジン1の燃焼室11およびその周辺部の構造について、図2を参照して説明する。図示のようにシリンダ12内には、その中心線Pに沿って図の上下方向に往復動するようにピストン13が収容されている。ピストン13は、図の下方に延びるコネクティングロッド14によってクランクシャフト(図示省略)と連結され、その往復動とクランクシャフトの回転運動とが相互に変換されるようになっている。
【0033】
一方、ピストン13の頂面13aの略中央部には、キャビティ(凹陥部)13bが凹設されて、シリンダ12内に区画される燃焼室11の一部を構成している。また、ピストン13の頂面13aの上方に対向してシリンダヘッド1aの下面には、吸気ポート15および排気ポート16がそれぞれ開口しており、この各開口部がそれぞれ吸気バルブ17および排気バルブ18によって開閉されるようになっている。
【0034】
また、シリンダヘッド1aには、燃焼室11の内部へ直接、燃料を噴射するようにインジェクタ19が配設されている。このインジェクタ19は例えばピエゾインジェクタであって、シリンダ中心線Pに沿う起立姿勢で燃焼室11の略中央上部に配設されており、図に表れているようにピストン13が上死点付近に位置するときに、そのキャビティ13b内に向かって燃料を噴射する。
【0035】
さらに、本実施形態では前記ピストン13に向かって直接、エンジンオイルを噴射するようにオイルジェット30が設けられている。すなわち、図2では左側に示すシリンダブロック1bの排気側の側壁の下部には、シリンダ列方向(図では紙面に直交する方向)に延びるようにオイルジェットギャラリ31が形成され、これに連通するようシリンダ12毎にピストンジェットノズル32(以下、単にノズル32ともいう)が配設されている。
【0036】
図示の例ではノズル32は、シリンダブロック1bの側壁からクランクケース内方に向かって略水平に延びた後に、L字状に湾曲して上方に延びていて、その上端に噴射孔が開口している。そして、後述するオイル供給系統4からオイルジェットギャラリ31を経て供給されるエンジンオイルが、ノズル32の先端(上端)の噴射孔から上方のピストン13の裏側に向かって噴射される(図2の矢印Oを参照)。
【0037】
但し、本実施形態のノズル32には、図示は省略するがチェック弁が内蔵されており、オイルジェットギャラリ31から作用する油圧が所定圧未満であれば、前記のようなオイルの噴射は行われない。オイルジェットギャラリ31からの油圧が所定圧以上になると、チェック弁が開放されて、流入したオイルが前記のようにノズル32の上端から噴射されるようになる。
【0038】
また、図2に表れているように、4つのシリンダ12を取り囲んでシリンダブロック1bの側壁にはウォータジャケットwが形成され、吸気側(図の右側)のウォータジャケットwに臨んで水温センサ105が配設されている。また、前記図1にのみ示すがエンジン1には、エンジン回転数Neを算出するためにクランクシャフトの回転角を検出するクランク角センサ101、吸気通路2を流れる吸気の流量(吸気量Ga)を検出するエアフローメータ102なども配設されている。
【0039】
それらクランク角センサ101、エアフローメータ102などの各種センサ、スイッチから出力される信号は、図1に破線で示すようにECU(Electronic Control Unit)100に入力される。詳しい説明は省略するがECU100は、CPU、ROM、RAMおよびバックアップRAM等を含んだ一般的な構成のものであり、例えばディーゼルスロットル8のアクチュエータに指令信号を出力して、吸気量を制御するとともに、図1には示さないインジェクタ19にも指令信号を出力して、燃料噴射量などを制御する。
【0040】
また、ECU100は、ターボチャージャ20の電動アクチュエータ27にも指令信号を出力するとともに、以下に説明するようにオイル供給系統4の油圧を制御するために、オイルポンプ5の制御弁(OCV60:図3〜5を参照)にも指令信号を出力する。
【0041】
−エンジンのオイル供給系統−
図3には、エンジン1のオイル供給系統4の概略を示す。同図には、シリンダヘッド1aおよびシリンダブロック1bからなるエンジン1の本体部分の外形を仮想線で示す。図示のようにシリンダブロック1bの下部にはオイルパン1cが取り付けられて、ピストン13やクランクジャーナル、或いは、吸気バルブ17および排気バルブ18を駆動する動弁系のカムジャーナルなど、エンジン1の各被潤滑部から還流されたオイルが貯留されている。
【0042】
そうして貯留されているオイルに浸かるようにしてオイルストレーナ41が配設され、その吸入管41aがオイルポンプ5の吸入ポート50dに接続されている。オイルポンプ5は、詳しくは後述するが、互いに噛み合う外歯車のドライブロータ51と内歯車のドリブンロータ52とを備えた内接式ギヤポンプであって、ドライブロータ51の中央を貫通する入力軸5aがクランクシャフトの回転によって駆動され、オイルストレーナ41を介してオイルパン1c内のオイルを吸い上げる。
【0043】
一方、オイルポンプ5の吐出ポート50eには、シリンダブロック1b内に形成された第1オイル通路42の上流端が連通し、この第1オイル通路42の下流端がオイルクーラ43に接続されている。オイルクーラ43は、エンジン冷却水との間で熱交換を行うことによりオイルを冷却する。冷却されたオイルは、シリンダブロック1b内に形成された第2オイル通路44を流通してオイルフィルタ45に送られる。
【0044】
オイルフィルタ45はフィルタエレメントによってオイル内の異物や不純物などを濾過し、こうして濾過されたオイルが第3オイル通路46を流通してメインギャラリ47に送られる。メインギャラリ47は、シリンダブロック1bの内部に例えばシリンダ列方向に延びるように形成されており、前記のように送られてくるオイルを所定の圧力に維持して、ここから分岐する複数のオイル通路により前記の被潤滑部などに分配する。
【0045】
例えば、図示は省略するがメインギャラリ47の長手方向に等間隔で分岐し、それぞれ下方に延びる分岐オイル通路によって、クランクジャーナルにオイルが供給される。また、メインギャラリ47から上方に延びる分岐オイル通路によって、シリンダヘッド1aの動弁系にオイルが供給される。さらに、メインギャラリ47から概ね水平に延びる分岐オイル通路48によって、オイルジェットギャラリ31にオイルが供給される。
【0046】
そして、そのようにエンジン1の被潤滑部へ分配するオイルの流量や油圧を適正なものとするために、メインギャラリ47の油圧は所定の状態に維持されている。すなわち、メインギャラリ47には油圧センサ103が配設され、その出力する信号がECU100に入力されて、以下に説明するようにオイルポンプ5の容量が可変制御される。また、オイルパン1cには油温センサ104が配設され、その出力する信号もECU100に入力される。
【0047】
−オイルポンプ−
次に、オイルポンプ5の構造について図4を参照して詳細に説明する。図示の例ではオイルポンプ5は、入力軸5aにより回転される外歯車のドライブロータ51と、これに噛み合って回転される内歯車のドリブンロータ52と、そのドリブンロータ52を外周から回転自在に保持する調整リング53と、をハウジング50内に収容してなる。調整リング53は、後述するようにドライブロータ51およびドリブンロータ52を変位させることにより、ポンプ容量を変更するものである。
【0048】
ハウジング50は全体としては厚肉の板状であり、図4に示すようにエンジン後方から見た平面視では左右に長い楕円形状とされ、図の右上部から右側に向かって突出部50aが、また、図の左下部からは下方に向かって突出部50bが、それぞれ形成されている。また、ハウジング50の全体に後方、即ちエンジン1の内方(図の手前側)に向かって開放された凹部50cが形成されている。
【0049】
この凹部50cは前記ドライブロータ51、ドリブンロータ52、調整リング53等を収容するものであり(以下、収容凹部50cという)、ハウジング50に後方から重ね合わされるカバー(図示せず)によって閉止される。また、収容凹部50cの中央よりもやや右側位置には円形断面の貫通孔(図には示さず)が形成され、ここに挿通された入力軸5aを回転自在に支持している。
【0050】
入力軸5aは、エンジン1のクランクシャフトの前端部に一体に設けてもよいし、クランクシャフトとは別体としてチェーンなどにより駆動される構成としてもよい。この入力軸5aがドライブロータ51の中央部を貫通し、例えばスプラインによって嵌合されている。ドライブロータ51には、外周にトロコイド曲線またはトロコイド曲線に近似した曲線(例えばインボリュート、サイクロイドなど)を有する外歯51aが複数(図示の例では11個)、形成されている。
【0051】
一方、ドリブンロータ52は円環状に形成され、その内周には前記ドライブロータ51の外歯51aと噛み合うよう、これより歯数が1歯大きい(図示の例では12個の)内歯52aが形成されている。ドリブンロータ52の中心は、ドライブロータ51の中心に対して所定量、偏心しており、その偏心している側(図4の左上側)でドライブロータ51の外歯51aとドリブンロータ52の内歯52aとが噛み合っている。
【0052】
また、ドリブンロータ52は、調整リング53の円環状の本体部53aによって摺動自在に嵌合支持されている。この例では調整リング53には、その本体部53aの外周から周方向に所定の角度範囲(図示の例では約50°)に亘って径方向外方に張り出す2つの張出部53b,53cと、径方向外方に大きく延びるアーム部53dと、小さな突起部53eとが一体に形成されている。
【0053】
そのようにして調整リング53に保持されたドライブロータ51およびドリブンロータ52によって、本実施形態では11葉12節のトロコイドポンプが構成されており、2つのロータ51,52の間の環状の空間には、互いに噛合する歯と歯の間に円周方向に並んだ複数の作動室Rが形成される。これらの各作動室Rは2つのロータ51,52の回転に連れてドライブロータ51の外周に沿うように移動しながら、その容積が増減する。
【0054】
すなわち、2つのロータ51,52の歯が互いに噛み合う位置から、図に矢印で示すロータ回転方向に約180度に亘る範囲(図4では左下側の範囲)では、2つのロータ51,52の回転に連れて徐々に作動室Rの容積が増大してゆき、オイルを吸入する吸入範囲となる。一方、残りの約180度に亘る範囲(図4では右上側の範囲)では、ロータ51,52の回転に連れて徐々に作動室Rの容積が減少してゆき、オイルを加圧しながら吐出する吐出範囲となる。
【0055】
そして、それらの吸入範囲および吐出範囲にそれぞれ対応するように、ハウジング50およびカバーに吸入ポートおよび吐出ポートが形成されている。図4にはハウジング50の吸入ポート50dおよび吐出ポート50eのみを示すが、この吸入ポート50dは、ハウジング50の収容凹部50cの底面において前記の吸入領域に対応するように開口し、同じく吐出領域に対応するように吐出ポート50eが開口している。
【0056】
吸入ポート50dは、図ではハウジング50の左下側に位置して、図示しないカバーの吸入ポートと連通しており、これを介してオイルストレーナの吸入管路に連通している。一方、吐出ポート50eはハウジング50の右上側に位置して、図示しないカバーの吐出ポートと連通するとともに、ハウジング50の突出部50aに対応するように図の右側に向かって延びていて、オイルフィルタ45に向かう連通路6aに至る。
【0057】
かかる構成によりオイルポンプ5は、その入力軸5aの回転によってドライブロータ51およびドリブンロータ52が互いに噛み合いながら回転し、それらの間に形成される作動室Rに吸入ポート50dからオイルが吸入され、加圧されて吐出ポート50eから吐出される。このオイルの流量は、基本的にはオイルポンプ5の回転数(入力軸5aの回転数)、即ちエンジン回転数Neが高くなるほど多くなる。
【0058】
−容量可変機構−
本実施形態のオイルポンプ5は、ドライブロータ51の1回転につき吐出するオイルの量、即ちポンプ容量を変更可能な容量可変機構を備えている。本実施形態では、主に吐出ポート50eから導入する油圧(吐出圧P)によって前記の調整リング53を変位させて、ドライブロータ51およびドリブンロータ52の吸入ポート50dおよび吐出ポート50eに対する相対的な位置を変更することにより、1回転あたりに吸入および吐出するオイルの流量を変更する。
【0059】
詳しくは図4に表れているように、調整リング53の本体部53aから径方向外方に延びるアーム部53dには、圧縮コイルスプリング54からの押圧力が作用しており、これによって調整リング53が図の時計回りに回動しながら、少し上方に変位するように付勢されている。なお、このように変位する際の調整リング53の軌跡は、その張出部53b,53cと、これに係合されたガイドピン55,56とによって規定される。
【0060】
そうして変位する調整リング53が、収容凹部50c内を図の右上側の高圧空間THと、左側から下側にかけての低圧空間TLとに仕切っており、高圧空間THの油圧を受けて動作される。すなわち、高圧空間THは、ハウジング50の収容凹部50c内において、調整リング53の張出部53cの外周とハウジング50の壁部とによって囲まれ、かつ、第1および第2のシール材57,58によってオイルの流れが制限される領域に形成される。
【0061】
そして、この高圧空間THには吐出ポート50eの開口の一部が臨み、オイルポンプ5の吐出圧Pが高圧空間THに導かれて調整リング53外周面に作用するようになる。これに対して、吸入ポート50dの連通する低圧空間TLには概ね大気圧が作用しているので、調整リング53は、高圧空間THからの油圧によって図の反時計回りに回動するように付勢される。
【0062】
一方で調整リング53は、前記したようにアーム部53dに作用するコイルスプリング54の弾発力を受けて時計回りに付勢されている。このため、例えばアイドリングのようにエンジン回転数Neが低いときに調整リング53は、コイルスプリング54の弾発力によって図4の最大容量位置に付勢される。このとき、ドライブロータ51およびドリブンロータ52の1回転当たりに、吸入ポート50dから吸い込んで吐出ポート50eから吐出するオイルの量、即ちポンプ容量が最大になる。
【0063】
この状態からエンジン回転数Neが上昇すると、オイルの吐出量の増大によって吐出圧Pも増大傾向となるので、高圧空間THの油圧を受けて調整リング53は、コイルスプリング54の弾発力に抗して反時計回りに変位するようになる。これによりポンプ容量は減少するので、回転数が上昇しても吐出量および吐出圧Pの増大は抑制される。そして、図5に示すように調整リング53が最小容量位置に位置づけられると、1回転当たりの吐出量は最小になる。
【0064】
さらに、本実施形態では、図4、5にそれぞれ示すように、ハウジング50内において高圧空間THに隣接するように制御空間TCを設けて、ここに電子制御式の制御弁60(Oil Control Vale:以下、OCVという)からの制御油圧を供給するようにしている。制御空間TCの油圧は調整リング53を、前記のようにオイルポンプ5の容量が減少する向きに変位させるような力を発生させる。
【0065】
具体的には、前記調整リング53の2つの張出部53b,53cのほぼ中間において、その外周には第2のシール材58が配設され、収容凹部50cを取り囲むハウジング50の壁部の内面と摺接するようになっている。この第2のシール材58は、高圧空間THと制御空間TCとの間のシール部であって、前記のような調整リング53の変位に伴いハウジング50の壁部の内面に沿って移動することになる。
【0066】
同様に調整リング53のアーム部53dの先端には第3のシール材59が配設されて、対向するハウジング50の壁部の内面と摺接するようになっている。なお、これら第2および第3のシール材58,59、および、前記した第1のシール材57は、いずれも調整リング53の厚み(図4、5の紙面に直行する方向の寸法)と同程度の寸法を有し、耐摩耗性に優れた金属材や樹脂材にて形成されている。
【0067】
こうして制御空間TCは、ハウジング50の収容凹部50c内において、調整リング53の外周(詳しくは張出部53bの外周)とアーム部53dと、それらに対向するハウジング50の壁部とによって囲まれ、かつ前記第2および第3のシール材58,59によってオイルの流れが制限される領域に形成される。そして、この制御空間TCにおいて収容凹部50cの底面に開口する制御油路61によって、OCV60から制御油圧が供給される。
【0068】
制御油路61は、その一端部が前記のように制御空間TCに臨む丸穴61aとして開口する一方、他端部がOCV60の制御ポート60aに連通している。OCV60は、後述するECU100からの信号を受けてスプールの位置が変更され、供給ポート60bからのオイルを制御ポート60aから制御油路61へ送り出す状態と、制御油路61から排出されてきたオイルを制御ポート60aに受け入れて、ドレンポート60cから排出する状態とに切り換えられる。
【0069】
また、一例としてリニアソレノイドバルブであるOCV60は、ECU100からの信号に応じてスプールの位置が連続的に変化し、前記のように制御ポート60aから制御油路61へ送り出すオイルの圧力(制御油圧)をリニアに増大または減少させることができる。この制御油圧の調整により、以下に述べるように調整リング53を変位させてオイルポンプ5の容量を調整し、その吐出圧Pひいてはメインギャラリ47の油圧を制御することができる。
【0070】
例えば、OCV60からの制御油圧を増大させることによって、制御空間TCの油圧が増大すると調整リング53が図4の反時計回りに変位して、ポンプ容量が減少するので、オイルポンプ5の吐出量が減少傾向となり、その吐出圧Pが低下する。反対に制御油圧を低下させると、調整リング53は図4の時計回りに変位し、ポンプ容量が増大して、その吐出圧Pも増大するようになる。
【0071】
−油圧の制御−
次に、前記のようにオイルポンプ5の容量を変更し、その吐出圧Pを調整することで、メインギャラリ47の油圧を好適に維持する油圧制御装置の動作について、より詳細に説明する。図6は、ECU100からOCV60への指令信号、即ちOCV電流指令値(一例として制御デューティー)と、オイルポンプ5の吐出圧Pとの関係を示す。この図からOCV電流指令値を大きくすれば、ポンプ回転数が高くなっても吐出圧Pを低く保つことができる一方、OCV電流指令値を小さくすれば吐出圧Pは高くなっており、オイルポンプ5の吐出圧Pを任意に制御できることが分かる。
【0072】
ここで、エンジン1の燃費を低減するためには、できるだけオイルポンプ5の駆動負荷を軽減することが好ましいが、一方でピストン13やクランクジャーナルなどの被潤滑部に適正なオイル供給を行うためには、メインギャラリ47の油圧を或る程度、高く維持しなくてはならない。すなわち、エンジン1の高回転ないし高負荷においては被潤滑部に十分な油量および油圧を供給するために、メインギャラリ47の油圧は高めに維持する必要があり、一方、低回転ないし低負荷では油圧を低めに維持して、オイルポンプ5の駆動負荷を軽減したい。
【0073】
そこで従来より、エンジン1の運転状態(例えばエンジン回転数Neや吸気量Ga、負荷率KLなど)に応じて前記のようにOCV60への電流指令値を変更し、オイルポンプ5の容量を調整して、吐出圧Pをできるだけ低く制御することは提案されている。また、一例を図7に示すように、エンジン1の運転状態とピストン13の温度状態(ピストン温度Tp)との間には、エンジン回転数Neが高いほど、また、負荷率KLが高いほど、ピストン温度Tpも高くなるという関係がある。
【0074】
このことから、前記の提案のようにエンジン1の運転状態に応じてオイルポンプ5の吐出圧Pを調整すれば、自ずとピストン温度Tpの高いときほど、メインギャラリ47の油圧も高めに維持されて、オイルジェット30へ概ね必要な油圧が供給されるようになる。よって、ピストン13の受熱量が大きな高回転ないし高負荷において、オイルジェット30からのオイルの噴射量が多くなる。
【0075】
一方、前記の提案のようにエンジン1の運転状態に応じてオイルポンプ5の吐出圧Pを調整すれば、自ずとピストン温度Tpの低いときほど、メインギャラリ47の油圧も低くなり、オイルポンプの駆動負荷を軽減することができる。
【0076】
しかしながら、エンジン1の運転状態がそのままピストン温度Tpを表しているわけではなく、エンジン1の運転状態が所定以上、急に変化する過渡時においては、その運転状態とピストン温度Tpとの間に時間的なズレが生じることから、前記のようにエンジン1の運転状態に応じて油圧を制御するのみでは、オイルジェット30によるピストン13へのオイル噴射量が一時的に過剰になったり、反対に不足したりすることがある。
【0077】
すなわち、例えば、アクセルペダルの踏み込みに応じてエンジン1の負荷率KLが急上昇するときには、図8に実線や破線のグラフで示すように遅れてピストン温度Tpが上昇することになる。図の例では時刻t1から負荷率KLがステップ状に立ち上がっており、これに応じて油圧を上昇させると、時刻t2まではピストン温度Tpの上昇に応答遅れがあるにもかかわらず、オイルポンプ5の駆動負荷が増大することになる。
【0078】
また、図示は省略するが、例えば高負荷での運転後にアクセルペダルが離されて、負荷率KLが急に低くなっても、ピストン温度Tpはすぐには低下せず、暫くの間は冷却のために或る程度の油量を必要とする。このときには、その負荷率KLの低下に応じて油圧を低下させてしまうと、オイルジェット30によるピストン13へのオイルの噴射量が不足してしまい、一時的にピストン温度Tpが上昇し過ぎることがあり、ダメージを与える虞もある。
【0079】
かかる点を考慮して本実施形態では、ECU100(目標油圧設定部)により、まず、エンジン1の運転状態に基づいて、推定されるピストン温度Tpに対応するようにオイルポンプ5の吐出圧Pの目標値Pt(目標油圧)を算出し、エンジン1が定常的な運転状態にあれば、この目標油圧Ptに基づいてオイルポンプ5の吐出圧Pを制御する。
【0080】
一方、エンジン1の運転状態が所定以上、急に変化する過渡時には、エンジン1の運転状態の変化に対するピストン温度Tpの変化の応答遅れを考慮して、この応答遅れを表すピストン時定数τを用いて前記目標油圧Ptを補正する。これにより、過渡時の実際のピストン温度Tpに対応した好適な目標油圧Ptを設定することができる。
【0081】
−具体的な制御動作−
以下、図9のフローチャートを参照して具体的に、ECU100によって行われるオイルポンプ5の制御(油圧制御)について説明する。なお、図示の制御ルーチンは、エンジン1の運転中に一定周期(例えば数msec〜数十ミリsec程度)毎に実行される。
【0082】
図9(a)には油圧制御の全体的な制御動作を示し、まず、スタート後のステップST1では、エンジン1の運転状態に関する所定の情報を取得する。例えば、クランク角センサ101からの信号によってエンジン回転数Neを算出し、エアフローメータ102からの信号によって吸気量Gaを算出し、これらエンジン回転数Neおよび吸気量Gaまたはアクセル操作量などから、エンジン1の負荷率KLを算出する。
【0083】
続くステップST2では、前記のエンジン回転数Ne、吸気量Ga、負荷率KL等に基づいて、即ち、エンジン1の運転状態に基づいて、詳しくは後述するようにオイルポンプ5の吐出圧Pの目標値(目標油圧Pt)を設定する。また、ステップST3,ST4では、それぞれ油温センサ104および油圧センサ103の信号によって油温および油圧を算出する(油温、油圧の取得)。
【0084】
そして、オイルポンプ5の実際の吐出圧Pが前記の目標油圧Ptになるようにフィードバック制御を行う。すなわち、ステップST5では、例えば前記油圧の情報から実際のポンプ吐出圧Pと目標油圧Ptとの偏差を算出し、この偏差に応じてPID則などにより、ポンプ吐出圧Pを目標油圧Ptに収束させるようなポンプ容量の目標値を算出する(フィードバック制御演算)。
【0085】
また、ステップST6では、前記のポンプ容量の目標値になるようにオイルポンプ5の制御空間TCに供給する制御油圧を算出して、この制御油圧をOCV60が出力するよう、そのスプールを動作させるための指令信号、即ちOCV電流指令値(制御デューティー)を算出し、これをOCV60へ出力してリターンする。これによりオイルポンプ5の吐出圧Pひいてはメインギャラリ47の油圧が制御される。
【0086】
なお、前記のポンプ容量、制御油圧、OCV電流指令値などのパラメータの対応関係は、予め実験・シミュレーションなどによって適合されてマップとしてECU100のROMに記憶されており、前記のステップST6では、そのようなマップを参照して、目標とするポンプ容量を実現するためのOCV電流指令値を算出する。また、マップの代わりにパラメータの対応関係を計算式として設定することもできる。
【0087】
−目標油圧の設定−
次に、前記のステップST2における目標油圧Ptの設定について詳細に説明する。図9(b)には目標油圧Ptを設定するルーチンの一例を示し、このルーチンを実行することによってECU100が、目標油圧設定部としての機能を実現する。
【0088】
同図におけるスタート後のステップST21では吸気量Gaの情報を取得し、続くステップST22では、水温センサ105からの信号によってエンジン水温を算出する(水温の取得)。なお、吸気量Gaの情報は、前記のようにエアフローメータ102からの信号に基づいて算出されて、ECU100のRAM若しくはバックアップRAMに一時的に記憶され、所定のサイクル毎に更新されている。エンジン水温についても同様にRAM若しくはバックアップRAMに一時的に記憶されているものを読み取ってもよい。
【0089】
そして、ステップST23では、エンジン1の運転状態が所定以上、急に変化する過渡時における目標油圧Ptを算出するためのピストン時定数τを算出する。すなわち、上述したように過渡時にはエンジン1の運転状態の変化に対してピストン温度Tpが遅れて変化するので、この遅れ分を補償するために時定数τを用いるのである。ピストン時定数τは、ピストン13の熱容量に主として依存するものなので、予め適合した値を用いてもよいが、エンジン1の運転状態によってピストン13の受熱量および放熱量が変化することも、ピストン時定数τの値に反映させることが好ましい。
【0090】
一例としてピストン時定数τは、図10に示すマップを参照して算出すればよい。ピストン温度Tpの変化の応答遅れは、エンジン1の吸気量Gaとの相関があり、吸気量Gaの少ないときには、エンジン1の燃焼室11における発熱量も少なくなり、ピストン13の温度上昇の応答遅れが比較的大きくなる。また、吸気量Gaの少ないときは、燃料カットの際の吸気によるピストン13の冷却作用が弱くなるので、その温度低下の応答遅れも比較的大きくなる。
【0091】
一方、吸気量Gaの多いときには燃焼室11における発熱量も多くなるので、ピストン13の温度上昇の応答遅れが比較的小さくなるし、燃料カットの際の吸気によるピストン13の冷却作用も強くなる。そこで、図10に示すマップにおいては、吸気量Gaの少ないときほどピストン時定数τを大きな値に設定し、反対に吸気量Gaの多いときほどピストン時定数τを小さな値に設定している。このようなピストン時定数τと吸気量Gaとの関係は、予め実験・シミュレーションなどによって適合し、前記のマップとしてECU100のROMに記憶させてある。
【0092】
より詳しくは、図10のマップにおいてピストン時定数τは、吸気量Gaの増大する温度上昇時には温度低下時に比べて小さな値に設定されている。これは、吸気量Gaの増大に伴いピストン13の受熱量も増大するエンジン1の加速過渡時と、吸気量Gaの減少に伴いピストン13の受熱量も減少する減速過渡時とで、それぞれ実際のピストン温度Tpの変化の応答遅れに対応するものである。
【0093】
すなわち、エンジン1の加速過渡時には燃焼室11における発熱量が急速に増大し、これを受けてピストン温度Tpも比較的速く上昇するので、その変化の応答遅れは比較的小さくなる。一方、減速過渡時にはピストン13の受熱量は急速に減少するものの、その放熱量の増大は、前記加速過渡時における受熱量の増大に比べれば緩やかなので、ピストン温度Tpは比較すれば緩やかな低下傾向を示し、その応答遅れは比較的大きくなるのである。
【0094】
そして、ステップST24では、目標油圧Ptを算出する。この目標油圧Ptの算出の仕方は、エンジン1の運転状態が定常的であるか過渡的であるかによって異なっている。なお、エンジン1が定常的な運転状態にあることは、例えばエンジン回転数Neや負荷率KLの時間あたりの変化量から判定することができる。まず、エンジン1が定常的な運転状態にあれば、その運転状態、例えばエンジン回転数Neおよび負荷率KLに基づいて、エンジン水温も加味して目標油圧Ptを算出する。この目標油圧Ptは、エンジン1の定常的な運転状態におけるピストン温度Tpに対して好適なものである
詳しくは目標油圧Ptは、ECU100のROMに記憶させたマップを参照して算出する。このマップは、図示は省略するが、例えば上述した図7の関係を反映するように、エンジン1の負荷率KLおよびエンジン回転数Neに対応する目標油圧Ptを予め実験・シミュレーションなどによって適合し、設定したものである。言い換えると、エンジン1の負荷率KLおよびエンジン回転数Neに基づいて推定されるピストン温度Tpに対応する好適な目標油圧Ptを設定したものである。
【0095】
図示のマップにおいては負荷率KLが高いほど、また、エンジン回転数Neが高いほど、目標油圧Ptが高圧側の値に設定されている。よって、燃焼室11での発熱量が大きくピストン13の受熱量が大きいほど、推定されるピストン温度Tpが高くなるのに応じて目標油圧Ptが高く設定される。また、ピストン13の放熱量はエンジン水温によって変化するので、本実施形態では目標油圧Ptをエンジン水温によって補正する。
【0096】
すなわち、図示は省略するが、予め実験・シミュレーションなどによって適合し、設定したマップや演算式に従い、目標油圧Ptをエンジン水温が高いほど高圧側の値になるように補正する。言い換えると、本実施形態では目標油圧Ptは、基本的にエンジン1の負荷率KLおよびエンジン回転数Neに基づいて設定され、エンジン水温が高いほど、推定されるピストン温度Tpが高くなるのに対応して、高圧側の値に補正される。
【0097】
ところで、そのような定常的な運転状態ではなく、例えば加速運転や減速運転などの際にエンジン1の運転状態が所定以上、大きく変化する過渡時には、その運転状態の変化に対し遅れてピストン温度Tpが変化することになる。そこで、その遅れ分を補償するように、前記のように算出(および補正)した目標油圧Ptを、さらにピストン時定数τを用いて補正する。
【0098】
具体的には、例えば、定常状態から過渡状態に切り替わる際のエンジン1の運転状態に基づいて、前記目標油圧Ptのマップから算出しエンジン水温に依って補正した目標油圧Ptを、基本値Ptbとする。そして、この基本値Ptbを目標油圧Ptの初期値として以下の式(1)の計算を繰り返すことにより、エンジン1の運転状態が所定以上、急に変化する過渡時においても適切な目標油圧Ptを算出することができる。
【0099】
Pt(n) ←Pt(n-1)+(Ptb(n)−Pt(n-1))/τ ・・・ (1)
前記の式(1)においてPt(n)は、ある制御サイクル(n)における目標油圧Pt、即ち、算出する目標油圧Ptの今回値であり、Pt(n-1)は、前回の制御サイクルで算出した目標油圧(前回値)である。Ptb(n)は、今回の制御サイクルで前記目標油圧のマップから算出しエンジン水温によって補正した目標油圧Ptの基本値Ptbであり、τはピストン時定数である。なお、前記したように目標油圧Pt(n)の初期値はその基本値Ptb(n)の初期値になる。
【0100】
前記の式(1)を用いて目標油圧Ptを逐次、算出することにより、運転状態が所定以上、大きく変化する加速や減速の過渡時にも、ピストン温度Tpの変化の遅れ分を補償して、実際のピストン温度Tpに見合うような適切な目標油圧Ptを算出することができる。なお、ピストン時定数τ=1とすれば、前記の式(1)において Pt(n) ←Ptb(n) となる。
【0101】
したがって、本実施形態に係るエンジン1の油圧制御装置によると、まず、エンジン1の運転状態(エンジン水温などを含む)に応じて目標油圧Ptを設定することによって、ピストン温度Tpの高いときほどオイルポンプ5の吐出圧P、ひいてはメインギャラリ47の油圧が高くなるように制御することができる。これによりオイルジェットギャラリ31に十分な油量および油圧を供給し、ピストンジェットノズル32からピストン13に向かって、その冷却に十分なオイルを噴射することができる。
【0102】
特に、エンジン1の運転状態が所定以上、急に変化する加速または減速の過渡時において、その運転状態の変化に対するピストン温度Tpの変化の遅れを補償するピストン時定数τを用いて、前記の目標油圧Ptを適切に補正することにより、過渡時においても実際のピストン温度Tpに対応した適切なオイルの噴供給射を実現できる。よって、エンジン1の定常的な運転状態のみならず、加速や減速の過渡時においても、ピストン13の冷却性能を十分に担保しながら、オイルポンプ5の駆動負荷はできるだけ軽減し、燃費の改善を図ることができる。
【0103】
(他の実施形態)
以上、説明した実施形態では、自動車用の直列4気筒ディーゼルエンジン1の油圧制御装置として本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、自動車以外のエンジンの油圧制御装置としても適用可能である。勿論、気筒数やエンジンの形式(V型や水平対向型等)にも限定されず、ガソリンエンジンにも適用可能である。
【0104】
また、前記の実施形態では、エンジン1の運転状態(一例として負荷率KLおよび回転数Ne)に基づき、図9(b)に示すようにエンジン水温を加味して、目標油圧Ptを算出しているが、さらにピストン13の受熱量および放熱量をより正確に反映させて、目標油圧Ptを算出するようにしてもよい。
例えば、図11(a)のフローに示すように、ステップST22でエンジン水温を取得した後に、ステップST221でエンジン1の油温を取得し、これも加味して目標油圧Ptを算出するようにしてもよい。この場合も、予め実験・シミュレーションなどによって適合し、設定したマップや演算式に従い、目標油圧Ptを油温が高いほど高圧側の値になるように補正すればよい。
【0105】
また、図11(b)のフローに示すように、さらにステップST222でシリンダ12内の空燃比(空気過剰率)の情報を取得し、これも加味して目標油圧Ptを算出するようにしてもよい。なお、空燃比の情報は、負荷率KLおよび燃料噴射量から算出されて、ECU100のRAM若しくはバックアップRAMに一時的に記憶され、所定のサイクル毎に更新されている。
【0106】
前記実施形態のようにディーゼルエンジン1の場合は、空気過剰率λが量論値λ=1に近いほど発熱量が大きくなるので、このことを加味して空気過剰率λが小さいほど、推定されるピストン温度Tpが高くなることに対応して、目標油圧Ptを高圧側の値に設定すればよい。同様にガソリンエンジンの場合は、空燃比が理論空燃比に近いほど、推定されるピストン温度Tpが高くなることに対応して、目標油圧Ptを高圧側の値に設定すればよい。すなわち、予め実験・シミュレーションなどによって適合し、設定したマップや演算式に従い、前記のように空燃比(空気過剰率)に応じて目標油圧Ptを補正するのである。
【0107】
また、エンジン1に燃焼室11の圧力を検出するシリンダ内圧力センサが配設されている場合、図12(a)のフローに示すように、ステップST222で空燃比の情報を取得した後に、ステップST223で前記シリンダ内圧力センサの信号からシリンダ内圧を取得し、これも加味して目標温度Tpを算出するようにしてもよい。この場合は、シリンダ内圧が高いほど、推定されるピストン温度Tpが高くなることに対応して、目標油圧Ptを高圧側の値に設定すればよい。
【0108】
また、エンジン1の排気通路3に排気温度センサが配設されている場合、図12(b)のフローに示すように、ステップST222で空燃比の情報を取得した後に、ステップST224で前記排気温度センサの信号から排気温を取得し、これも加味して目標温度Tpを算出するようにしてもよい。この場合は、排気温が低いほど、推定されるピストン温度Tpは高くなるので、予め実験・シミュレーションなどによって適合し、設定したマップや演算式に従い、目標油圧Ptを高圧側の値に補正すればよい。
【0109】
さらに、エンジン1がガソリンエンジンである場合、図12(c)のフローに示すように、ステップST222で空燃比の情報を取得した後に、ステップST225で点火時期の情報を取得し、これも加味して目標温度Tpを算出するようにしてもよい。この場合は、点火時期が進角側にあるほど、推定されるピストン温度Tpは高くなるので、予め実験・シミュレーションなどによって適合し、設定したマップや演算式に従い、目標油圧Ptを高圧側の値に補正すればよい。
【0110】
さらにまた、前記の実施形態ではオイルポンプ5の容量可変機構として、調整リング53によってドライブロータ51およびドリブンロータ52を変位させ、入力軸5aの1回転当たりの吐出量を変更する構造について説明したが、このような構造にも限定されない。オイルポンプは内接式、外接式を問わずギヤポンプにも限定されず、可変容量形のものであればよい。
【0111】
また、エンジン1の油圧を制御するために可変容量形のオイルポンプ5を装備する構造にも限定されず、例えばリニアソレノイドバルブなど、開度を無段階に調整して、油圧をリニアに調圧することのできるバルブを用いて、容量が固定のオイルポンプから吐出されるオイルの油量および油圧を調整するようにしてもよい。
【0112】
また、前記の実施形態において、さらに目標油圧Ptを、エンジン1の油温が高いときほど高めの値になるように補正してもよい。これは、エンジン1の油温が高いほど、オイルジェット30によるピストン13の冷却性能が低下するからである。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の油圧制御によれば、エンジンのピストンの冷却性能を十分に担保しながらオイルポンプの駆動負荷をできるだけ軽減し、燃費の改善が図られるので、例えば自動車のエンジンなどに適用して有効である。
【符号の説明】
【0114】
1 エンジン
5 可変容量形のオイルポンプ
13 ピストン
30 オイルジェット
31 オイルジェットギャラリ(オイルジェット)
32 ピストンジェットノズル(オイルジェット)
100 ECU(目標油圧設定部)
Ga 吸気量
Ne エンジン回転数
Tp ピストン温度(ピストンの温度状態)
P オイルポンプの吐出圧
Pt 目標油圧(油圧の制御目標値)
τ ピストン時定数
図1
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