(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基部、及び前記支持腕部における前記マウント部よりも前記基部側の部位の少なくとも一方に、前記幅方向に沿って凹む切欠き部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧電振動子。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
(圧電振動子の構成)
図1〜
図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、内部に気密封止されたキャビティCを有するパッケージ2と、キャビティC内に収容された音叉型の圧電振動片3Aと、を備えたセラミックパッケージタイプの表面実装型振動子とされている。
【0021】
この圧電振動子1は、概略直方体状に形成されており、本実施形態では平面視において圧電振動子1の長手方向を長さ方向Lといい、短手方向を幅方向Wといい、これら長さ方向L及び幅方向Wに対して直交する方向を厚み方向Tという。
【0022】
上記パッケージ2は、パッケージ本体5と、このパッケージ本体5に対して接合されると共に、パッケージ本体5との間に上記キャビティCを形成する封口板6と、を備えている。
【0023】
パッケージ本体5は、互いに重ね合わされた状態で接合された第1ベース基板10及び第2ベース基板11と、第2ベース基板11上に接合されたシールリング12と、を備えている。
第1ベース基板10は、平面視略長方形状に形成されたセラミックス製の基板とされている。第2ベース基板11は、第1ベース基板10と同じ外形形状である平面視略長方形状に形成されたセラミックス製の基板とされており、第1ベース基板10上に重ねられた状態で焼結等によって一体的に接合されている。
【0024】
第1ベース基板10及び第2ベース基板11の四隅には、平面視1/4円弧状の切欠部15が、両基板10、11の厚み方向Tの全体に亘って形成されている。これら第1ベース基板10及び第2ベース基板11は、例えばウエハ状のセラミック基板を2枚重ねて接合した後、両セラミック基板を貫通する複数のスルーホールを行列状に形成し、その後、各スルーホールを基準としながら両セラミック基板を格子状に切断することで作製される。その際、スルーホールが4分割されることで、上記切欠部15となる。
また、第2ベース基板11の上面は、圧電振動片3Aがマウントされる内壁に対応する実装面11aとされている。
【0025】
なお、第1ベース基板10及び第2ベース基板11はセラミックス製としたが、その具体的なセラミックス材料としては、例えばアルミナ製のHTCC(High Temperature Co−Fired Ceramic)や、ガラスセラミックス製のLTCC(Low Temperature Co−Fired Ceramic)等が挙げられる。
【0026】
シールリング12は、第1ベース基板10及び第2ベース基板11の外形よりも一回り小さい導電性の枠状部材であり、第2ベース基板11の実装面11aに接合されている。
具体的には、シールリング12は、銀ロウ等のロウ材や半田材等による焼付けによって実装面11a上に接合、或いは、実装面11a上に形成(例えば、電解メッキや無電解メッキの他、蒸着やスパッタ等により)された金属接合層に対する溶着等によって接合されている。
【0027】
なお、シールリング12の材料としては、例えばニッケル基合金等が挙げられ、具体的にはコバール、エリンバー、インバー、42−アロイ等から選択すれば良い。特に、シールリング12の材料としては、セラミック製とされている第1ベース基板10及び第2ベース基板11に対して熱膨張係数が近いものを選択することが好ましい。例えば、第1ベース基板10及び第2ベース基板11として、熱膨張係数6.8×10
-6/℃のアルミナを用いる場合には、シールリング12としては、熱膨張係数5.2×10
-6/℃のコバールや、熱膨張係数4.5〜6.5×10
-6/℃の42−アロイを用いることが好ましい。
【0028】
封口板6は、シールリング12上に重ねられた導電性基板であり、シールリング12に対する接合によってパッケージ本体5に対して気密に接合されている。そして、この封口板6とシールリング12と第2ベース基板11の実装面11aとで画成された空間が、気密に封止された上記キャビティCとして機能する。
なお、封口板6の溶接方法としては、例えばローラ電極を接触させることによるシーム溶接や、レーザ溶接、超音波溶接等が挙げられる。また、封口板6とシールリング12との溶接をより確実なものとするため、互いになじみの良いニッケルや金等の接合層を、少なくとも封口板6の下面と、シールリング12の上面とにそれぞれ形成することが好ましい。
【0029】
ところで、第2ベース基板11の実装面11aには、圧電振動片3Aとの接続電極である一対の電極パッド20A、20Bが長さ方向Lに間隔をあけて形成されていると共に、第1ベース基板10の下面には、一対の外部電極21A、21Bが長さ方向Lに間隔をあけて形成されている。
これら電極パッド20A、20B及び外部電極21A、21Bは、例えば蒸着やスパッタ等で形成された単一金属による単層膜、又は異なる金属が積層された積層膜であり、互いにそれぞれ導通している。
【0030】
この点について詳細に説明する。
第1ベース基板10には一方の外部電極21Aに導通し、該第1ベース基板10を厚み方向Tに貫通する一方の第1貫通電極22Aが形成されていると共に、第2ベース基板11には一方の電極パッド20Aに導通し、該第2ベース基板11を厚み方向Tに貫通する一方の第2貫通電極23Aが形成されている。そして、第1ベース基板10と第2ベース基板11との間には、一方の第1貫通電極22Aと一方の第2貫通電極23Aとを接続する一方の接続電極24Aが形成されている。これにより、一方の電極パッド20Aと一方の外部電極21Aとは、互いに導通している。
【0031】
また、第1ベース基板10には他方の外部電極21Bに導通し、該第1ベース基板10を厚み方向Tに貫通する他方の第1貫通電極22Bが形成されていると共に、第2ベース基板11には他方の電極パッド20Bに導通し、該第2ベース基板11を厚み方向Tに貫通する他方の第2貫通電極23Bが形成されている。そして、第1ベース基板10と第2ベース基板11との間には、他方の第1貫通電極22Bと他方の第2貫通電極23Bとを接続する他方の接続電極24Bが形成されている。これにより、他方の電極パッド20Bと他方の外部電極21Bとは、互いに導通している。
なお、他方の接続電極24Bは、後述する凹部40を回避するように、例えばシールリング12の下方を該シールリング12に沿って延在するようにパターニングされている。
【0032】
第2ベース基板11の実装面11aには、後述する圧電振動片3Aの一対の振動腕部30、31の先端30a、31aに対向する部分に、落下等による衝撃の影響によってこれら振動腕部30、31が厚み方向Tに変位(撓み変形)した際に、振動腕部30、31の先端30a、31aとの接触を回避する凹部40が形成されている。この凹部40は、第2ベース基板11を貫通する貫通孔とされていると共に、シールリング12の内側において四隅が丸み帯びた平面視正方形状に形成されている。
【0033】
(圧電振動片)
上記圧電振動片3Aは、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片であり、長さ方向Lに互いに沿って延びる一対の振動腕部30,31と、一対の振動腕部30,31の各基端30b、31bが接続され、幅方向Wに延びる基部32と、一対の振動腕部30,31の間において基部32に接続され、基部32から振動腕部30,31に沿って延びる支持腕部33と、を備えている。なお、圧電振動片3Aの形状はこれに限定されるものではなく、例えば振動腕部30,31が長さ方向Lに対して最大で5度程度傾斜して延びているような形状であってもよい。即ち、基部の幅方向Wに離間して設けられる振動腕部30,31があり、その間に支持腕部33が設けられるような形状であれば、圧電振動片3Aの形状は特に限定されるものではない。
【0034】
一対の振動腕部30,31は、例えば、先端30a,31a側の幅寸法が基端30b,31b側に比べて拡大されたハンマーヘッドタイプであって、振動腕部30,31の先端30a,31a側の重量および振動時の慣性モーメントが増大させられている。これによって、振動腕部30,31は振動し易くなり、振動腕部30,31の長さを短くすることができ、小型化が図られている。
なお、一対の振動腕部30,31は、ハンマーヘッドタイプに限定されるものではない。
【0035】
一対の振動腕部30,31は、その両主面30c,31c上に、振動腕部30,31の長手方向(延在方向)に沿ってそれぞれ形成された溝部37を備えている。
溝部37は、例えば、振動腕部30,31の基端30b、31b側からほぼ中央付近に至る間に形成されている。
【0036】
一対の振動腕部30,31は、自身の振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整するための周波数調整用に外表面上に被膜された重り金属膜(図示略)を備えている。
重り金属膜(図示略)は、例えば、周波数を粗く調整するための粗調膜(図示略)と、微小調整するための微調膜(図示略)とを備えている。
この周波数調整は、粗調膜及び微調膜の重量調整によって行なわれ、一対の振動腕部30,31の周波数は所定の目標周波数の範囲内に収まるように調整される。
【0037】
また、
図5に示すように、一対の振動腕部30,31は、一対の振動腕部30,31を振動させる第1の励振電極35及び第2の励振電極36からなる励振電極を圧電材料からなる圧電体(圧電板34)の表面上に備えている。
【0038】
第1の励振電極35および第2の励振電極36からなる励振電極は、一対の振動腕部30,31の外表面上に互いに電気的に絶縁された状態でパターニングされ、一対の振動腕部30,31を互いに接近または離間する方向に所定の周波数で振動させる。
より詳細には、
図5(a)、(b)に示すように、例えば、第1の励振電極35は、主に、振動腕部30の溝部37上と、振動腕部31の両側面31d上とに、それぞれ振動腕部30,31の延在方向である長さ方向Lに沿って連続して設けられている。また、第2の励振電極36は、主に、振動腕部30の両側面30d上と、振動腕部31の溝部37上とに、それぞれ振動腕部30,31の延在方向である長さ方向Lに沿って連続して設けられている。
【0039】
支持腕部33の外表面上には、圧電振動片3Aを実装する際のマウント部として、一対のマウント電極38A,38Bが設けられている。一方のマウント電極38Aは、上記の第1の励振電極35に連続してパターニングされることによって形成され、他方のマウント電極38Bは、上記の第2の励振電極36に連続してパターニングされることによって形成されている。
これらマウント電極38A,38Bは、圧電振動片3Aを実装する際に電極パッド20A、20Bと電気的に接続されることで、外部電極21A,21Bから第1の励振電極35および第2の励振電極36に給電できるようになっている。
【0040】
このように構成された圧電振動片3Aは、図示しない金属バンプや導電性接着剤等を介して、一対のマウント電極38A,38Bが一対の電極パッド20A、20Bに接触するようにマウントされる。これにより、圧電振動片3Aは、支持腕部33により第2ベース基板11の実装面11a上から浮いた状態で支持され、基部32を介して、一対の振動腕部30、31の基端30b,31b側が片持ち支持される。また、圧電振動片3Aは、一対のマウント電極38A,38Bが一対の電極パッド20A、20Bにそれぞれ電気的に接続された状態とされる。
そして、外部電極21A、21Bに所定の電圧が印加されると、一対の励振電極35,36に電流が流れ、これら励振電極35,36同士の相互作用により一対の振動腕部30、31が互いに接近、離間する方向(幅方向W)に所定の共振周波数で振動する。
この一対の振動腕部30,31の振動は、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源などとして用いられる。
【0041】
ここで、本実施形態の圧電振動片3Aでは、支持腕部33において、以下で説明する特定の位置にマウント電極38A,38Bが設けられている。
すなわち、支持腕部33が接続された側とは反対側の基部32の端部32aから、支持腕部33の先端33b側に向けての距離が、基部32の幅方向Wに沿った幅寸法Sの45±20%となる支持腕部33上の領域、すなわち、端部32aから幅寸法Sの25%の距離離れた位置P1と、端部32aから幅寸法Sの65%の距離離れた位置P2との間で規定されるマウント領域M内に一対のマウント電極38A,38Bが設けられて、一対の電極パッド20A、20Bに接触するようにマウントされている。
【0042】
具体的に本実施形態では、基部32の幅寸法Sが500μmとなっており、圧電振動片3Aでは、基部32の端部32aから長さ方向Lでの距離で、125(位置P1)〜325(位置P2)μmとなる範囲に規定されたマウント領域M内に、一対のマウント電極38A,38Bが設けられ、一対の電極パッド20A、20Bに接触するようにマウントされている。
なお、この圧電振動片3Aでは、基部32の端部32aから振動腕部30,31の先端までの長さが900〜1200μmであり、基部32の長さ方向Lでの寸法が50〜150μmである。また、振動腕部30,31の基部32との接続位置からの長さ寸法は、750〜1150μmであり、支持腕部33の基部32との接続位置からの長さ寸法は、300μm以上であり、支持腕部の幅寸法は100μm以上である。また、マウント電極38A,38Bは100×100μmの略正方形状となっている。
ここで、
図5では、支持腕部33において、基部32の端部32aから長さ方向Lでの距離で、225μm(長さ寸法N)となる点nを示し、この点n(以下、位置n)は、振動腕部30,31から支持腕部33に伝達される振動が可及的に抑制されるノーダルポイント(節点)を示している。なお、この位置nは、基部32の端部32aからの長さ方向Lでの距離が、幅寸法Sの45%近辺となる位置である。
マウント電極38A,38Bは、位置nの近傍で、この位置nを挟んで対向する位置に設けられ、かつ端部32aから幅寸法Sの約25%の距離離れた位置P1と、端部32aから幅寸法Sの約65%の距離離れた位置P2との間で規定されるマウント領域M内に設けられている。なお、この例では、マウント電極38A,38Bと位置nとが重ならない位置関係になっているが、マウント電極38A,38Bと位置nとが重なるようにしてもよい。
【0043】
また、圧電振動片3Aには、振動腕部30,31のそれぞれに対し、基部32と、支持腕部33におけるマウント位置(マウント電極38A,38B)よりも基部32側の部位とに、振動腕部30,31及び支持腕部33の延在方向に直交する幅方向Wに沿って凹む一対の切欠き部50が形成されている。
この切欠き部50によれば、振動腕部30,31から支持腕部33に伝達される振動を減衰させ易くできる。
なお、この切り欠き部50は、基部32と、支持腕部33におけるマウント領域Mよりも基部32側の部位の一方にのみ形成しても良く、また、切り欠き部50を省略した構成とすることも可能である。
【0044】
上述したような構成によれば、圧電振動片3Aは、支持腕部33において、基部32の端部32aから、支持腕部33の先端33b側に向けての距離が、基部32の幅方向Wに沿った幅寸法Sに対して45±20%となる範囲に設定されたマウント領域M内でマウントされている。これにより、圧電振動片3Aからの振動漏れを可及的に抑えることができる。
なお、本実施形態では、マウント電極38A,38Bは100×100μmの略正方形状と説明したが、マウント電極38A、38Bの大きさはこれに限定されるものではない。本発明において、基部32の幅方向Wに沿った幅寸法Sに対して45±20%となる範囲に設定された領域を、マウント領域Mとするのは、マウント電極38A,38Bの大きさ、導電性接着剤の広がり、及びマウント電極38A,38B間の絶縁を考慮し、極力位置n近傍にマウント電極38A,38Bを配置するためである。このため、圧電振動片3Aを、基部32の幅方向Wに沿った幅寸法Sに対して45±20%となる範囲に設定されたマウント領域M内でマウントすることで、圧電振動片3Aからの振動漏れを可及的に抑えることができるのである。なお、導電性接着剤の広がりやマウント電極38A,38B間の絶縁を考慮しつつ、幅寸法Sに対して45±10%となる範囲にマウント電極38A、38Bを設けることができれば、より効果的に振動漏れを抑制することができる。
ここで、上記では、基部32の端部32aからの長さ方向Lでの距離が、幅寸法Sの45%となる位置が振動腕部30,31から支持腕部33に伝達される振動が可及的に抑制されるノーダルポイント(節点)であると説明したが、このノーダルポイントは、長さ方向Lにおける支持腕部33の長さ(基部32から支持腕部33の先端33bまでの長さ)を変えても、支持腕部33において、基部32の端部32aからの距離が、基部32の幅方向Wに沿った幅寸法Sに対して45%近傍となる位置で共通となる。
これは、シミュレーション結果から導出されたものであり、本発明は、これに基づくものである。つまり、従来技術は、支持腕部33の長さを延ばして振動を減衰することで振動漏れを抑制するといった技術思想を有するものであるが、これに対して本願発明は、振動の節点に着目しつつ、その節点の位置が基部32の幅寸法Sに大きく依存することを見出した点が従来技術とは大きく異なる点である。このように節点の位置が基部の幅寸法の関連性についてはこれまで何ら開示も示唆もされていない。この点について以下詳述する。
【0045】
図6にはシミュレーションの一例が示されている。
図6においては、圧電振動片3Aの支持腕部33の長さ方向Lにおける長さを、450μm±10%の範囲にある所定の値、300μm±10%の範囲にある所定の値、600μm±10%の範囲にある所定の値と異ならせたそれぞれの場合において、圧電振動片3Aにおける振動分布を、シミュレーション解析によって求めた結果の一例が示されている。なお、基部32の幅寸法Sは500μm、支持腕部33の幅方向Wにおける幅寸法W1は200mmとした。
図中において、破線で示す「○」は振動が振動腕部上において可及的に抑制された点を示し、いずれも基部32の端部32aからの長さ方向Lでの距離が、幅寸法Sの約45%若しくはその近傍となっている。一方で、破線で示す「□」は、最も振動した点を示している。いずれも、支持腕部33と基部32との接続位置からやや基部32内側に入り込んだ位置となっている。
この結果に示すように、支持腕部33の長さが、450μm、300μm、600μm等のいずれの場合においても、支持腕部33において、基部32の端部32a側で振動が大きく、基部32の端部32aからの距離が基部32の幅寸法Sに対して約45%近辺となる位置が、振動が可及的に抑制される部位であることが確認された。
【0046】
なお、上記実施形態においては、基部32の幅寸法Sをはじめとして、各部の具体的な寸法例を挙げたが、圧電振動片3Aは、例示した寸法に限らず、適宜他の寸法で形成することもできる。
また、上記のマウント領域Mは、圧電振動片3Aの重心位置を含むように形成しても良い。
ここで、
図5に示すように、振動腕部30,31及び支持腕部33の延在方向に直交する幅方向において、支持腕部33の幅寸法W1は、振動腕部30,31の寸法の幅寸法W2の1.0〜5.0倍であり、支持腕部33の基部32からの長さ寸法L1は、基部32の幅寸法Sの0.5〜2.5倍であるのが好ましい。この場合、圧電振動片3Aの重心位置がマウント部(マウント電極38A,38B)近傍に位置し易くなる。このため、圧電振動片3Aの設置のバランスを良好にすることができる。
【0047】
〔第2実施形態〕
次に、本実施形態に係る圧電振動片の第2実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態で示す圧電振動片3Bは、第1実施形態で示した圧電振動片3Aに代えてパッケージ2に組み込むことにより圧電振動子1を構成することができるものである。以下の説明において、上記第1実施形態と共通する構成については、図中に同符号を付してその説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態の圧電振動片3Bは、一対の振動腕部30,31と、一対の振動腕部30,31の各基端30b、31bが接続され、幅方向Wに延びる基部32と、一対の振動腕部30,31の間において基部32に接続され、基部32から振動腕部30,31に沿って延びる支持腕部33と、を備えている。
そして、基部32において、一方の振動腕部30と他方の振動腕部31との間の、幅方向Wの中央部に、支持腕部33が接続された側とは反対側の端部32aから長さ方向Lに延びるスリット60が形成されている。このスリット60は、基部32の端部32aから支持腕部33の延在方向に沿って支持腕部33の先端33b側に向けて延びるように形成されている。
このスリット60は、
図6に示したシミュレーション結果において、振動が最も大きかった部位を切り欠くことによって形成されたものである。
【0048】
上記の圧電振動片3Bは、支持腕部33において、スリット60における支持腕部33の先端33b側に位置する部位である先端60aから、支持腕部33の先端33b側に向けての距離が、基部32の幅寸法Sに対して45±20%となる領域、すなわち、幅寸法Sの25%の距離だけ先端60aから離れた位置P3と、幅寸法Sの65%の距離だけ先端60aから離れた位置P4との間で規定されるマウント領域M内で、一対のマウント電極38A,38Bが一対の電極パッド20A、20Bに接触するようにマウントされている。
【0049】
上述したような構成によれば、圧電振動片3Bは、支持腕部33において、スリット60の先端60aから、支持腕部33の先端33b側に向けての距離が、基部32の幅方向Wに沿った幅寸法Sに対して45±20%となる範囲に設定されたマウント領域M内でマウントされている。これにより、第1実施形態と同様に、振動が支持腕部33のマウント部から漏れるのを有効に抑えることができ、圧電振動片3Bを高感度に共振させることが可能となる。なお、本実施形態においても第1実施形態と同様の切欠き部50が形成されている。また、
図7においては、先端60aから、支持腕部33の先端33b側に向けての距離が、基部32の幅寸法Sに対して45%となる位置nも示され、マウント電極38A,38Bは、位置nの近傍で、この位置nを挟んで対向する位置に設けられている。
【0050】
〔第3実施形態〕
次に、本実施形態に係る圧電振動片の第3実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態で示す圧電振動片は、第1実施形態で示した圧電振動片3Aに代えてパッケージ2に組み込むことにより圧電振動子1を構成することができるものである。以下の説明において、上記第1、第2実施形態と共通する構成については、図中に同符号を付してその説明を省略する。
図8に示すように、本実施形態の圧電振動片3Cは、上記第1実施形態の圧電振動片3Aと同様、一対の振動腕部30,31と、一対の振動腕部30,31の各基端30b、31bが接続され、幅方向Wに延びる基部32と、一対の振動腕部30,31の間において基部32に接続され、基部32から振動腕部30,31に沿って延びる支持腕部33と、を備えている。
【0051】
ここで、第2ベース基板11の実装面11aには、圧電振動片3Cとの接続電極である一対の電極パッド20A、20Bが、幅方向Wに間隔をあけて形成されて、圧電振動片3C側においては、マウント部である一対のマウント電極38A,38Bが幅方向Wに間隔をあけて形成されている。
本実施形態の圧電振動片3Cは、これら幅方向Wに沿って並んだ一対の電極パッド20A,20Bに対し、支持腕部33において、基部32の端部32aから支持腕部33の先端33b側に向けての距離が、基部32の幅寸法Sに対して45±20%となる範囲で規定されるマウント領域M内でマウント電極38A,38Bによりマウントされている。
また、
図8においては、端部32aから、支持腕部33の先端33b側に向けての距離が、基部32の幅寸法Sに対して45%となる位置nも示され、マウント電極38A,38Bは、位置nの近傍で、この位置nを挟んで対向する位置に、幅方向Wに並んで設けられている。
【0052】
上述したように、圧電振動片3Cをマウント領域M内においてマウントすることにより、振動が支持腕部33のマウント部から漏れるのを有効に抑えることができ、圧電振動片3Cを高感度に共振させることが可能となる。
【0053】
(第4実施形態;発振器)
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、
図9を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器100は、
図9に示すように、上記第1から第3実施形態のいずれかに示したような圧電振動子1を、集積回路101に電気的に接続された発振子として構成したものである。ここでは、第1実施形態に示した圧電振動片を圧電振動子1に備えるものとする。
この発振器100は、コンデンサ等の電子部品102が実装された基板103を備えている。基板103には、発振器用の上述した集積回路101が実装されており、この集積回路101の近傍に、圧電振動子1が実装されている。これら電子部品102、集積回路101および圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0054】
このように構成された発振器100において、圧電振動子1に電圧を印加すると、この圧電振動子1内の圧電振動片が振動する。この振動は、圧電振動片が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路101に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路101によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路101の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0055】
上述したように、本実施形態の発振器100によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、同様に振動漏れを有効に抑えることのできる発振器100とすることができる。
【0056】
(第5実施形態;電子機器)
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、
図10を参照して説明する。なお電子機器として、上記第1〜第3実施形態で示したいずれかの圧電振動子1を有する携帯情報機器(電子機器)110を例にして説明する。ここでは、第1実施形態に示した圧電振動片を携帯情報機器110に備えるものとする。
ここで、本実施形態の携帯情報機器110は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカおよびマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化および軽量化されている。
【0057】
次に、本実施形態の携帯情報機器110の構成について説明する。この携帯情報機器110は、
図10に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部111とを備えている。電源部111は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部111には、各種制御を行う制御部112と、時刻等のカウントを行う計時部113と、外部との通信を行う通信部114と、各種情報を表示する表示部115と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部116とが並列に接続されている。そして、電源部111によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0058】
制御部112は、各機能部を制御して音声データの送信および受信、現在時刻の計測や表示等、システム全体の動作制御を行う。また、制御部112は、予めプログラムが書き込まれたROMと、このROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、このCPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0059】
計時部113は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路およびインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片が振動し、この振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部112と信号の送受信が行われ、表示部115に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0060】
通信部114は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部117、音声処理部118、切替部119、増幅部120、音声入出力部121、電話番号入力部122、着信音発生部123および呼制御メモリ部124を備えている。
無線部117は、音声データ等の各種データを、アンテナ125を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部118は、無線部117又は増幅部120から入力された音声信号を符号化および複号化する。増幅部120は、音声処理部118又は音声入出力部121から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部121は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0061】
また、着信音発生部123は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部119は、着信時に限って、音声処理部118に接続されている増幅部120を着信音発生部123に切り替えることによって、着信音発生部123において生成された着信音が増幅部120を介して音声入出力部121に出力される。
なお、呼制御メモリ部124は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部122は、例えば、0から9の番号キーおよびその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0062】
電圧検出部116は、電源部111によって制御部112等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部112に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部114を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部116から電圧降下の通知を受けた制御部112は、無線部117、音声処理部118、切替部119および着信音発生部123の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部117の動作停止は、必須となる。更に、表示部115に、通信部114が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0063】
すなわち、電圧検出部116と制御部112とによって、通信部114の動作を禁止し、その旨を表示部115に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部115の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部114の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部126を備えることで、通信部114の機能をより確実に停止することができる。
【0064】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器110によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、同様に振動漏れを有効に抑えることのできる携帯情報機器110とすることができる。
【0065】
(第6実施形態;電波時計)
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、
図11を参照して説明する。なお電波時計として、上記第1〜第3実施形態で示したいずれかの圧電振動子1を有する電波時計130を例にして説明する。ここでは、第1実施形態に示した圧電振動片を電波時計130に備えるものとする。
本実施形態の電波時計130は、
図11に示すように、フィルタ部131に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0066】
以下、電波時計130の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ132は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ133によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部131によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上述した搬送周波数と同一の40kHzおよび60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部138、139をそれぞれ備えている。
【0067】
さらに、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路134により検波復調される。続いて、波形整形回路135を介してタイムコードが取り出され、CPU136でカウントされる。CPU136では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC137に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部138、139は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0068】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計130を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0069】
上述したように、本実施形態の電波時計130によれば、上述した圧電振動子1を備えているので、同様に振動漏れを有効に抑えることのできる電波時計130とすることができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこれら実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述した実施形態では、圧電振動子の一例として、セラミックパッケージタイプの圧電振動子1を例に挙げたが、これに限らず、例えばガラスパッケージタイプの圧電振動子や、表面実装型の圧電振動子、シリンダパッケージタイプの圧電振動子、シリンダパッケージタイプの圧電振動子を、さらにモールド樹脂部で固めて表面実装型の圧電振動子としても構わない。また、上記では詳述していないが、本願発明に係る圧電振動子は、その製造工程において、基部32の幅寸法Sに基づいてマウント電極38A,38Bの位置を決定する、「マウント電極位置決め工程」を有している点を特徴とする。つまり、所定の設計値に基づいて外形寸法、溝寸法等を決定した後に、マウント電極位置決め工程を行い、振動漏れを効果的に抑制可能なマウント電極38A,38Bの位置を決定した後、従来と同様に、圧電振動片3Aの外形を形成する外形形成工程、振動腕部30、31に溝を形成する溝形成工程、基部32、振動腕部30,31、支持腕部33に電極を形成する電極形成工程、ウエハから圧電振動片3Aを個片化する個片化工程、を有している。
従来では、基部の幅寸法に基づいてマウント電極の位置を決定する、といった工程は何ら開示も示唆もされておらず、また、基部の幅寸法とマウント電極との位置関係に着目するといった技術思想に関しても何ら開示されていない。よって、この製造方法は従来にはない、または従来技術から想到し得ることのない特徴たる製造方法であるといえる。
【0071】
また、第1ベース基板10及び第2ベース基板11の2枚の基板でベース基板を構成したが、1枚の基板でベース基板を構成し、実装面11aに凹部40を形成しても構わない。但し、上述したように、第1ベース基板10及び第2ベース基板11の2枚基板構成とすることが好ましい。この場合には、第2ベース基板11に貫通孔を形成した後、両ベース基板を接合することで凹部40を容易に形成できるので、凹部形成に費やす工程及び時間を低減できる。
【0072】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。