特許第6013240号(P6013240)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6013240人孔撤去装置及びそれを用いた既設人孔の撤去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013240
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】人孔撤去装置及びそれを用いた既設人孔の撤去方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/12 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   E02D29/12 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-52030(P2013-52030)
(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公開番号】特開2014-177806(P2014-177806A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2015年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141956
【氏名又は名称】株式会社コプロス
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 薫
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−183655(JP,A)
【文献】 特開2006−257675(JP,A)
【文献】 特開2002−240030(JP,A)
【文献】 特開2001−123413(JP,A)
【文献】 米国特許第05265981(US,A)
【文献】 特開2006−257872(JP,A)
【文献】 特開平10−054045(JP,A)
【文献】 特開2006−265878(JP,A)
【文献】 特開2003−171947(JP,A)
【文献】 特開2005−120782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/12,35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設人孔の外側に鋼製の円形ケーシングを旋回または揺動しながら、圧入して、土止め壁を形成し、前記円形ケーシング内部の前記既設人孔を撤去する工法に使用する人孔撤去装置であって、
複数のシリンダを放射状に配置したシリンダブロックを上下2段で構成し、上下のシリンダブロックは一体に固定され、
上側シリンダブロックのシリンダのロッドの先端には、該ロッドが伸長したときに前記円形ケーシングの内壁に押し付けられる上側押し付け具を設け、
下側シリンダブロックのシリンダのロッドの先端には、該ロッドが伸長したときに前記既設人孔の内壁に押し付けられる下側押し付け具を設けたことを特徴とする人孔撤去装置。
【請求項2】
既設人孔の撤去方法であって、
既設人孔の外側に鋼製の円形ケーシングを旋回または揺動しながら圧入する工程と、
既設人孔の斜壁を撤去する工程と、
請求項1に記載の人孔撤去装置を前記円形ケーシング内にクレーン等の荷下げ機械で吊り下げて入れる工程と、
前記人孔撤去装置の上側シリンダブロックのシリンダにて上側押し付け具を前記円形ケーシングの内壁に押し付け、前記下側シリンダブロックのシリンダにて下側押し付け具を前記既設人孔の内壁に押し付ける工程と、
前記円形ケーシングを旋回または揺動することにより、前記既設人孔の躯体を回転させて前記人孔撤去装置の下側シリンダブロックにより固定されている人孔躯体とその下部の人孔躯体との連結を解除する工程と、
前記人孔撤去装置の上側シリンダブロックのシリンダのロッドを縮め、押し付け具を前記円形ケーシングの内壁から離脱させる工程と、
前記人孔撤去装置を前記クレーン等の荷下げ機械で吊り上げ、前記人孔撤去装置の下部シリンダブロックの押し付け具により固定されている既設人孔躯体を撤去する工程と
を有する既設人孔の撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木建設工事で、劣化した既設人孔を新規人孔に交換するために、既設人孔の撤去を行う装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道の普及が進んできて、普及率も上がってきた。しかし、年数が経つにしたがって下水管や人孔(マンホール)の劣化が問題になってきている。
【0003】
下水管の劣化では、旧管を新管に置き換える方法と、既設管の内部にライニングを設ける管更正工法が知られている。
【0004】
人孔の劣化については、ライナープレートで土留めを行って既設人孔を撤去し、撤去後に新規人孔を設置する方法と、既設人孔の内部にライニングを施工する人孔更正方法が知られている。
【0005】
また、特許文献1には、人孔を包み込むように二重ケーシングを圧入し、人孔と地盤との縁を切り、既設の人孔を内側ケーシングとともに撤去する人孔の交換方法が開示されている。具体的には、既設の人孔を撤去する際、フレームをケーシングの上端に設けた凹部に嵌合し、移動しないように固定し、チェーンブロックをフレームから吊り下げる。次いで人孔上部の斜壁の内面の傾斜に合致する端面を有する引き上げ補助部材を人孔内に降下させ、補助部材の端面を人孔の斜壁に当てて、チェーンブロックを使用して斜壁を引き上げ、内側ケーシングと共に人孔を撤去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−183655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したライナープレートを使って既設人孔を撤去する方法では、地盤改良を行ってライナーを設置する必要があり、作業員がライナープレートの内部に入り作業するため、地下水位の高い地盤等、地盤の状態が悪いところでは危険が伴う作業となる。
【0008】
また、人孔躯体もライナープレート内部に入って人力で分解・破砕し、クレーン等で撤去するため、作業に手間を要し、工期が長期化している。
【0009】
一方、特許文献1に開示された方法では、引き上げ補助部材を人孔の斜壁の内部に当てて引き上げ補助部材をチェーンブロックで引き上げることにより人孔を撤去することにしているため、斜壁を有しない円形の人孔には適用できないという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、傾斜を有しない円形の既設人孔の撤去が可能な人孔撤去装置及びそれを用いた既設人孔の撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の人孔撤去装置は、既設人孔の外側に鋼製の円形ケーシングを旋回または揺動しながら、圧入して、土止め壁を形成し、前記円形ケーシング内部の前記既設人孔を撤去する工法に使用する人孔撤去装置であって、
複数のシリンダを放射状に配置したシリンダブロックを上下2段で構成し、上下のシリンダブロックは一体に固定され、
上側シリンダブロックのシリンダのロッドの先端には、該ロッドが伸長したときに前記円形ケーシングの内壁に押し付けられる上側押し付け具を設け、
下側シリンダブロックのシリンダのロッドの先端には、該ロッドが伸長したときに前記既設人孔の内壁に押し付けられる下側押し付け具を設けたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の既設人孔の撤去方法は、
既設人孔の外側に鋼製の円形ケーシングを旋回または揺動しながら圧入する工程と、
既設人孔の斜壁を撤去する工程と、
請求項1に記載の人孔撤去装置を前記円形ケーシング内にクレーン等の荷下げ機械で吊り下げて入れる工程と、
前記人孔撤去装置の上側シリンダブロックのシリンダにて上側押し付け具を前記円形ケーシングの内壁に押し付け、前記下側シリンダブロックのシリンダにて下側押し付け具を前記既設人孔の内壁に押し付ける工程と、
前記円形ケーシングを旋回または揺動することにより、前記既設人孔の躯体を回転させて前記人孔撤去装置の下側シリンダブロックにより固定されている人孔躯体とその下部の人孔躯体との連結を解除する工程と、
前記人孔撤去装置の上側シリンダブロックのシリンダのロッドを縮め、押し付け具を前記円形ケーシングの内壁から離脱させる工程と、
前記人孔撤去装置を前記クレーン等の荷下げ機械で吊り上げ、前記人孔撤去装置の下部シリンダブロックの押し付け具により固定されている既設人孔躯体を撤去する工程と
を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、鋼管内部で人が中に入らず人孔の破砕・撤去ができるため安全に作業ができる。また地盤改良の必要が無いために工程が簡略化できる。さらに、既設人孔撤去後も人が中に入らず底盤コンクリートを打設し仮設立坑とすることができる。このように人孔の撤去、仮設立坑の設置まで人が中に入らずできるため安全に作業ができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る人孔撤去装置の実施の形態を示すもので、(a)は縦断面図、(b)は平面図である。
図2】本発明に係る既設人孔の撤去方法の第1工程を示す説明図である。
図3】本発明に係る既設人孔の撤去方法の第2工程を示す説明図である。
図4】本発明に係る既設人孔の撤去方法の第3工程を示す説明図である。
図5】本発明に係る既設人孔の撤去方法の第4工程を示す説明図である。
図6】本発明に係る既設人孔の撤去方法の第5工程を示す説明図である。
図7】本発明に係る既設人孔の撤去方法の第6工程を示す説明図である。
図8】本発明に係る既設人孔の撤去方法の第7工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。
本発明の人孔撤去装置Aは、図1に示すように、リング状の上側シリンダブロック1の3箇所に基端部が固定された3個の上シリンダ2と、同じくリング状の下側シリンダブロック3の3箇所に基端部が固定された3個の下シリンダ4とを備えており、上側シリンダブロック1と下側シリンダブロック3とは、連結ピン5により一体に固定されている。上シリンダ2と下シリンダ4はそれぞれ上シリンダロッド2a、下シリンダロッド4aを有しており、さらに各上シリンダロッド2aの先端には上側押し付け具2bが取り付けられ、各下シリンダロッド4aの先端には下側押し付け具4bが取り付けられている。
【0016】
それぞれ3個の上シリンダ2と下シリンダ4は、各シリンダロッド2a,4aが上側シリンダブロック1、下側シリンダブロック3の中心位置から放射状に伸縮可能となるように構成されており、伸びた状態では上側押し付け具2bは円形ケーシング10の内壁に押し付けられ、下側押し付け具4bは既設人孔20の内壁に押し付けられるようになっている。
連結ピン5の上部には、クレーンから吊り下げられるワイヤロープの下端が係合するワイヤロープ係合部5aが形成されている。
【0017】
以下、この人孔撤去装置Aを用いた工法について、図2図8を用いて具体的に説明する。
これらの図において、立坑掘削機30は、走行可能なベースマシン31と、ベースマシン31から旋回および俯仰可能に設けられたブーム32と、ブーム32の先端に取り付けられたフック33とを備えている。ベースマシン31には、連結装置41により円形立坑掘削装置40が固定されている。円形立坑掘削装置40は、円形ケーシング10を旋回または揺動させながら地盤中に圧入するものである。フック33には、掘削バケット35を取り付けて使用できるようになっている。
【0018】
まず、図2に示すように、既設人孔20の外径よりも大きな径の鋼製の円形ケーシング10を、既設人孔20が円形ケーシング10の内径内になるように、円形立坑掘削装置40を用いて旋回または揺動しながら圧入する。円形ケーシング10の下端には、既設人孔20の周囲の土砂を掘削するための掘削刃11が設けられている。
【0019】
その後、図3に示すようにブーム32の先端に取り付けた掘削バケット35を用いて人孔躯体21上部の斜壁22を撤去する。
【0020】
次に、図4に示すように、円形ケーシング10を人孔躯体21aと21bの連結部より下まで圧入する。
【0021】
次いで図5に示すように、フック33に取り付けたワイヤロープ34の下部に、図1に示した人孔撤去装置Aを吊り下げ、円形ケーシング10の内部の既設人孔20の上部に吊り下げ入れる。
【0022】
それから、図6に示すように、人孔撤去装置Aの上側シリンダブロック1の上シリンダ2にて押し付け具2bを円形ケーシング10の内面に押し付け、下側シリンダブロック3の下シリンダ4にて押し付け具4bを人孔躯体21aの内壁に押し付ける。これにより、円形ケーシング10と人孔躯体21が人孔撤去装置Aを介して一体となる。次に、円形立坑掘削装置40を用いて円形ケーシング10を旋回または揺動して、既設人孔20を回転させて人孔撤去装置Aの下側シリンダブロック3で固定されている上側の人孔躯体21aとその下部の人孔躯体21bとの連結を解除する。
【0023】
次に、図7に示すように、人孔撤去装置Aの上側シリンダブロック1の上シリンダ2のロッド2aを引き込み、押し付け具2bを円形ケーシング10の内壁から離す。
【0024】
次いで、図8に示すように、下側シリンダブロック3の押し付け具4bで固定されている人孔躯体21aを、フック33で人孔撤去装置Aを吊り上げることにより回収する。
【0025】
地上部では、人孔撤去装置Aの下側シリンダブロック3のシリンダ4のロッド4aを縮め、押し付け具4bを人孔躯体21aの内壁より離し、人孔躯体21aを地上に置く。
さらに、人孔撤去装置Aを円形ケーシング10内に吊り下げて入れて、次の躯体を前述の方法の繰り返しで撤去する。
【0026】
このようにして、円形ケーシング10の内部で人が中に入らず既設人孔20の破砕・撤去ができるため安全に作業ができる。また地盤改良の必要が無いために工程が簡略化できる。さらに、既設人孔20の撤去後も人が中に入らず底盤コンクリートを打設し仮設立坑とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、傾斜を有しない円形の既設人孔の撤去が可能な既設人孔の撤去装置及びそれを用いた既設人孔の撤去方法として、劣化した人孔の撤去、新設の作業に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
A 人孔撤去装置
1 上側シリンダブロック
2 上シリンダ
2a 上シリンダロッド
2b 上側押し付け具
3 下側シリンダブロック
4 下シリンダ
4a 下シリンダロッド
4b 下側押し付け具
5 連結ピン
5a ワイヤロープ係合部
10 円形ケーシング
11 掘削刃
20 既設人孔
21,21a,21b 人孔躯体
22 斜壁
30 立坑掘削機
31 ベースマシン
32 ブーム
33 フック
34 ワイヤロープ
35 掘削バケット
40 円形立坑掘削装置
41 連結装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8