特許第6013243号(P6013243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013243
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ハニカム触媒体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20161011BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20161011BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20161011BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20161011BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   B01J35/04 301L
   B01J35/10 301F
   B01J35/04 301K
   B01J35/04 301C
   B01J35/04 301P
   B01D53/94ZAB
   B01D53/94 280
   B01J23/46 311A
   F01N3/28 301P
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-58701(P2013-58701)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-180654(P2014-180654A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】高橋 道夫
【審査官】 佐藤 哲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−147931(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0212831(US,A1)
【文献】 特表2012−527339(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0065443(US,A1)
【文献】 特開2008−168279(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0085394(US,A1)
【文献】 特開2010−082615(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02168662(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/94
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム基材と、前記隔壁の表面部分に配設された触媒層とを備え、
前記触媒層は、触媒成分及び高比表面積材料を含有し、
前記触媒層は、前記隔壁の表面上に位置する部分である表面部及び前記隔壁の内部に入り込んだ部分である侵入部を有し、
前記触媒層全体の厚さに対する前記表面部の厚さの比の値が0.50〜0.95であり、
前記隔壁の、表面から隔壁厚さの10%の深さまでの範囲である隔壁表面層における平均細孔径が、5μm以下であり、
前記隔壁の、前記隔壁表面層を除いた範囲である隔壁中央層における気孔率が、40〜70%であるハニカム触媒体。
【請求項2】
前記隔壁全体の平均細孔径が、5〜200μmである請求項1に記載のハニカム触媒体。
【請求項3】
前記隔壁厚さが、0.020〜0.500mmである請求項1又は2に記載のハニカム触媒体。
【請求項4】
セル密度が、0.7〜233セル/cmである請求項1〜のいずれかに記載のハニカム触媒体。
【請求項5】
前記隔壁を構成する材料が、炭化珪素、珪素−炭化珪素複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも一種のセラミックを含むものである請求項1〜のいずれかに記載のハニカム触媒体。
【請求項6】
内燃機関の排ガス浄化用として用いられる請求項1〜のいずれかに記載のハニカム触媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム触媒体に関する。更に詳しくは、使用時のクラックの発生を抑制すると共に、エンジン冷間始動時のライトオフ性能に優れたハニカム触媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各種エンジン等から排出される排ガスを浄化するために、ハニカム構造体(ハニカム基材)に触媒が担持されて形成されたハニカム触媒体が用いられている(例えば、特許文献1〜3を参照)。このようなハニカム触媒体は、流入側の端面から各セルに流体(排気ガス)を流入させ、排ガスに含まれる炭化水素、窒素酸化物(NO)等を触媒により浄化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−59009号公報
【特許文献2】特開2003−502261号公報
【特許文献3】特開2004−82091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のハニカム触媒体においては、特に1000℃を超える温度から数100℃まで急激に温度低下する厳しい使用環境では、熱衝撃によりクラックが発生し易いという問題があった。この原因の一つとして、熱膨張の異なる触媒がハニカム基材に担持されたことで、触媒とハニカム基材との界面において、温度変化時の熱応力が大きくなり、ハニカム基材にクラックが発生し易いことが挙げられる。特に、担持した触媒がハニカム基材内部の深く入り込むことで、触媒とハニカム基材との界面が多くなり、更にハニカム基材にクラックが発生し易くなる。また、1000℃を超える温度では、触媒とハニカム基材とが反応し易く、熱膨張の異なる反応物による熱応力で、温度変化時にハニカム基材にクラックが発生し易いということも原因として挙げられる。また、従来のハニカム触媒体においては、エンジン冷間始動時、触媒が活性する温度域に達していないため、排ガスが浄化され難いという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、使用時のクラックの発生を抑制することができ、エンジン冷間始動時のライトオフ性能に優れたハニカム触媒体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって以下のハニカム触媒体が提供される。
【0007】
[1] 流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム基材と、前記隔壁の表面部分に配設された触媒層とを備え、前記触媒層は、触媒成分及び高比表面積材料を含有し、前記触媒層は、前記隔壁の表面上に位置する部分である表面部及び前記隔壁の内部に入り込んだ部分である侵入部を有し、前記触媒層全体の厚さに対する前記表面部の厚さの比の値が0.50〜0.95であり、前記隔壁の、表面から隔壁厚さの10%の深さまでの範囲である隔壁表面層における平均細孔径が、5μm以下であり、前記隔壁の、前記隔壁表面層を除いた範囲である隔壁中央層における気孔率が、40〜70%であるハニカム触媒体。
【0010】
] 前記隔壁全体の平均細孔径が、5〜200μmである[1]に記載のハニカム触媒体。
【0011】
] 前記隔壁厚さが、0.020〜0.500mmである[1]又は[2]に記載のハニカム触媒体。
【0012】
] セル密度が、0.7〜233セル/cmである[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム触媒体。
【0013】
] 前記隔壁を構成する材料が、炭化珪素、珪素−炭化珪素複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも一種のセラミックを含むものである[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム触媒体。
【0014】
] 内燃機関の排ガス浄化用として用いられる[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム触媒体。
【発明の効果】
【0015】
本発明のハニカム触媒体は、「触媒層全体の厚さa」に対する、「表面部の厚さb」の比の値が0.50〜0.95であるため、使用時における「ハニカム基材が触媒層から受ける熱応力の大きさ」が、小さくなる。これにより、ハニカム基材にクラックが発生することが抑制される。特に、上記「比の値」の上限値が0.95と大きいため、隔壁の内部に入り込んだ部分である侵入部が少なくなり、使用時においてハニカム基材が触媒層から受ける熱応力の大きさが、小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のハニカム触媒体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明のハニカム触媒体の一の実施形態の中心軸に平行な断面を示す模式図である。
図3】本発明のハニカム触媒体の一の実施形態を構成する隔壁の、ハニカム触媒体の中心軸に直交する断面の一部を示す模式図である。
図4】本発明のハニカム触媒体の一の実施形態を構成する隔壁の、ハニカム触媒体の中心軸に直交する断面の一部を示す模式図である。
図5】実施例の「熱サイクル試験」において、ハニカム触媒体を缶体に挿入した状態を示す模式図である。
図6】実施例の「HC(ハイドロカーボン)浄化試験」において用いられる装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を具体的に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0018】
(1)ハニカム触媒体:
図1図3に示すように、本発明のハニカム触媒体の一実施形態は、流体の流路となる一方の端面11から他方の端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有するハニカム基材3を備えるものである。そして、本実施形態のハニカム触媒体100は、隔壁1の表面部分に配設された触媒層4を備えるものである。そして、触媒層4は、触媒成分及び高比表面積材料を含有する。更に、触媒層4は隔壁1の表面(隔壁表面21)上に位置する部分である表面部14及び隔壁1の内部に入り込んだ部分である侵入部15を有している。更に、触媒層全体の厚さaに対する表面部の厚さbの比の値(b/a)が、0.50〜0.95である。図1は、本発明のハニカム触媒体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明のハニカム触媒体の一の実施形態の中心軸に平行な断面を示す模式図である。図3は、本発明のハニカム触媒体の一の実施形態を構成する隔壁の、ハニカム触媒体の中心軸に直交する断面の一部を示す模式図である。
【0019】
このように、本実施形態のハニカム触媒体100は、触媒層全体の厚さaに対する表面部の厚さbの比の値(b/a)が、0.50〜0.95である。そのため、ハニカム触媒体100を排ガスの配管に装着して使用する際に、急激な「加熱と冷却の繰り返し」が生じても、クラックの発生を、抑制することができる。これは、「b/a」が、0.50〜0.95であると、表面部bの厚さが相対的に薄く形成された状態であるため、触媒層4及びハニカム基材3に応力がかかった際に、ハニカム基材にクラックが発生せずに、薄い表面部14にクラックが入るためである。
【0020】
本実施形態のハニカム触媒体100において、触媒層4は、隔壁1の表面(隔壁表面21)上に位置する部分である表面部14、及び隔壁1の内部(細孔内)に入り込んだ部分である侵入部15を有している。
【0021】
そして、「触媒層全体の厚さa」に対する「表面部の厚さb」の比の値(b/a)が、0.50〜0.95であり、0.70〜0.90が好ましい。本実施形態のハニカム触媒体100は、このように構成したため、使用時のクラックの発生を抑制することができる。b/aが、0.50より小さいと、使用時にクラックが発生し易く、0.95より大きいと、使用時に振動、排ガスの風圧で隔壁から触媒が剥がれ易く、触媒効率が低下するため好ましくない。尚、「表面部の厚さb」というときは、表面部14の触媒の厚さのことを意味する。
【0022】
触媒層4を構成する表面部14の厚さは、1〜50μmが好ましく、10〜30μmが更に好ましい。1μmより薄いと、触媒効率が低下することがある。50μmより厚いと、ハニカム触媒体100にクラックが発生し易くなることがある。しかしながら、触媒層4を構成する表面部14の厚さ、触媒の種類、使用目的によって適宜選択される。
【0023】
触媒層4を構成する侵入部15の深さは、SEM(走査型電子顕微鏡)による断面観察で測定した値である。また、「触媒層全体の厚さa」は、「表面部の厚さb」と「侵入部15の深さ」の合計値である。
【0024】
触媒層4は、触媒成分及び高比表面積材料を含有するものであり、触媒成分及び高比表面積材料を主成分とするものであることが好ましい。ここで、「主成分」とは、全体の90%以上含有される成分を意味する。触媒成分は、高比表面積材料の表面及び内部に担持された状態で、隔壁1に担持されていることが好ましい。また、触媒成分は、隔壁1に直接担持された状態も好ましい態様である。更に、触媒成分は、高比表面積材料に担持された状態で隔壁に担持されるとともに、隔壁に直接担持されることが好ましい。
【0025】
触媒成分としては、「Pt、Pd、Rh等の貴金属を基体とした三元触媒」、酸化触媒、脱臭触媒、「Mn、Fe、Cu等の卑金属触媒」等を挙げることができる。
【0026】
高比表面積材料としては、γ−アルミナ等を挙げることができる。高比表面積材料とは、比表面積が100m/g以上の粉末材料のことである。
【0027】
本実施形態のハニカム触媒体100において、触媒の担持量は、10〜400(g/リットル)であることが好ましく、50〜200(g/リットル)であることが更に好ましい。触媒の担持量が、10(g/リットル)より少ないと、排ガス浄化性能が低くなることがある。触媒の担持量が、400(g/リットル)より多いと、圧力損失が大きくなることがある。ここで、触媒担持量(g/リットル)は、隔壁表面の触媒と隔壁内の触媒の総質量を、ハニカム基材の体積(隔壁及び「セル空間」の合計体積)で除した値である。
【0028】
本実施形態のハニカム触媒体100において、ハニカム基材3は、上記のように、流体の流路となる一方の端面11から他方の端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有するものである。
【0029】
図4に示されるように、隔壁1の、隔壁表面21から「隔壁厚さの10%の深さ」までの範囲を、「隔壁表面層22」とする。また、隔壁1の、隔壁表面層22を除いた範囲を「隔壁中央層23」とする。隔壁1は、隔壁表面21から「隔壁厚さの10%の深さ」までの範囲である隔壁表面層22における平均細孔径が、5μm以下であ、3μm以下であることが好ましい。隔壁表面層22の平均細孔径がこのような範囲であるため、使用時に急激な加熱、冷却があっても、ハニカム基材が触媒層から熱膨張差による応力を受け難く、ハニカム基材にクラックが発生することを抑制することができる。ハニカム基材が触媒層から熱膨張差による応力を受け難いのは、隔壁表面層22の平均細孔径が小さいため、触媒層の「隔壁内に入り込む部分(侵入部)」の大きさが、小さくなり、ハニカム基材が触媒層から受ける力が小さくなるからである。隔壁表面層22における平均細孔径が、5μmより大きいと、使用時の急激な加熱、冷却による熱応力によって、ハニカム基材にクラックが発生することがある。特に、隔壁表面の気孔径が大きいことにより、触媒層の「隔壁内に入り込む部分(侵入部)」の大きさが、大きくなるため、熱応力発生時に、ハニカム基材が触媒層から受ける力が大きくなり、ハニカム基材にクラックが発生し易くなる。平均細孔径は、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて測定した値である。図4は、本発明のハニカム触媒体の一の実施形態を構成する隔壁の、ハニカム触媒体の中心軸に直交する断面の一部を示す模式図である。
【0030】
隔壁1の、隔壁表面層22を除いた範囲である「隔壁中央層23」における気孔率が、40〜70%である。40%より小さいと、触媒(触媒成分)の着火性能(ライトオフ性能)が低下することがある。70%より大きいと、隔壁1の強度が低下することがある。また、「隔壁表面層22」における気孔率は、20〜50%であることが好ましく、30〜40%であることが更に好ましい。20%より小さいと、隔壁表面層で触媒を担持し難いことがある。50%より大きいと、触媒が隔壁中央層23に入り込み易く、本発明の効果が発現し難いといった問題が生じることがある。気孔率は、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて隔壁(隔壁表面層22、隔壁中央層23)の断面を撮像し、観察像の画像解析から求めた値である。
【0031】
隔壁1全体の平均細孔径が、5〜200μmであることが好ましく、10〜100μmであることが更に好ましい。5μmより小さいと、触媒(触媒成分)の着火性能(ライトオフ性能)が低下することがある。200μmより大きいと、隔壁1の強度が低下することがある。
【0032】
更に、隔壁1全体の平均細孔径が5〜200μmであり、且つ、隔壁表面層22における平均細孔径が5μm以下であることが最も好ましい。
【0033】
隔壁厚さ(隔壁の厚さ)が、0.020〜0.500mmであることが好ましい。本実施形態のハニカム触媒体100は、このように隔壁厚さが薄く、隔壁が割れやすい構造であっても、隔壁のクラック発生を抑制することが可能である。隔壁厚さが、0.020mmより薄いと、ハニカム触媒体の強度が低下し、使用時に、隔壁にクラックが発生し易くなることがある。隔壁厚さが、0.500mmより厚いと、圧力損失が悪化する(大きくなる)ことがある。隔壁の厚さは、SEM(走査型電子顕微鏡)よる断面観察の方法で測定した値である。
【0034】
セル密度が、0.7〜233セル/cmであることが好ましい。0.7セル/cmより小さいと、ハニカム触媒体として強度不足のことがある。233セル/cmより大きいと、ハニカム触媒体として圧損が大きくなる他に、触媒によるセルの目詰まりが発生することがある。
【0035】
隔壁1は、セラミックを含む材料からなるものであることが好ましい。更に、隔壁1を構成する材料は、下記、「材料群」から選択される少なくとも一種のセラミックを含むものであることが好ましい。「材料群」とは、「炭化珪素、珪素−炭化珪素複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群」である。
【0036】
本実施形態のハニカム触媒体100においては、セル2の延びる方向に直交する断面におけるセル2の形状は、特に限定されない。例えば、「三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等の多角形」、円形、楕円形等を挙げることができる。また、これらの形状の複数を組み合わせた態様も、好ましい態様である。また、四角形の中では、正方形又は長方形が好ましい。
【0037】
ハニカム触媒体100の外形(ハニカム触媒体100全体の形状)としては、特に限定されないが、円筒形、楕円筒形、「四角筒形等の、底面多角形の筒形状」、「底面不定形の筒形状」等を挙げることができる。また、ハニカム触媒体100の大きさは、特に限定されないが、中心軸方向長さが25〜350mmであることが好ましい。また、例えば、ハニカム触媒体100の外形が円筒状の場合、その底面の直径が30〜500mmであることが好ましい。
【0038】
本実施形態のハニカム触媒体100においては、図1図2に示すように、最外周に位置する外周壁5を有してもよい。また、ハニカム触媒体100の最外周に位置する外周壁5は、成形時にハニカム成形体と一体的に形成させる一体成形壁(隔壁と外周壁とが焼結し、隔壁と外周壁との境界が明確には残っていない状態)であることが好ましい。また、外周壁5は、成形後に、ハニカム成形体の外周を研削して所定形状とし、セメント等で外周壁を形成するセメントコート壁であることも好ましい態様である。外周壁の厚さは0.1〜1.0mmが好ましい。外周壁の厚さは、SEM(走査型電子顕微鏡)による断面観察で測定した値である。また、外周壁がセメントコート壁の場合、セメントコート壁の材質としては、特に限定されるものではないが、ハニカム基材と同じ材質が好ましい。
【0039】
本実施形態のハニカム触媒体100は、内燃機関の排ガス浄化用(フィルター)として用いることが好ましい。これにより、使用時にクラックが発生し難いフィルターとなる。
【0040】
(2)ハニカム触媒体の製造方法:
次に、本発明のハニカム触媒体の一実施形態の製造方法について説明する。
【0041】
まず、セラミック原料を含有する成形原料を成形して、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁(焼成前の隔壁)と最外周に位置する外周壁(焼成前の外周壁)とを備える筒状のハニカム成形体を成形する。
【0042】
成形原料に含有されるセラミック原料としては、例えば、以下の「原料群」から選択される少なくとも一種のセラミックが好ましい。「原料群」とは、「炭化珪素、珪素−炭化珪素複合材料、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群」である。これらの原料を用いることにより、強度及び耐熱性に優れたハニカム触媒体を得ることができる。尚、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。シリカ源となる原料成分(シリカ源成分)としては、石英、溶融シリカ等を挙げることができる。アルミナ源となる原料成分(アルミナ源成分)としては、不純物が少ないため、酸化アルミニウム及び水酸化アルミニウムの中の少なくとも一方(両方でもよい)を、用いることが好ましい。マグネシア源となる原料成分(マグネシア源成分)としては、タルク、マグネサイト等を挙げることができる。マグネシア源成分としてのタルクは、平均粒子径が10〜30μmであることが好ましい。また、マグネシア源成分は、不純物として、Fe、CaO、NaO、KO等を含有してもよい。
【0043】
成形原料は、上記セラミック原料に、造孔材、バインダ、分散剤、界面活性剤、分散媒等を混合して調製することが好ましい。
【0044】
造孔材としては、グラファイト、小麦粉、澱粉、発泡樹脂、吸水性ポリマー、「中空又は中実の、「フェノール樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等」の合成樹脂」、等を挙げることができる。造孔材の含有量は、セラミック原料を100質量%としたときに、1〜10質量%であることが好ましい。
【0045】
バインダとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。バインダの含有量は、セラミック原料を100質量%としたときに、1〜10質量%であることが好ましい。
【0046】
分散剤としては、デキストリン、ポリアルコール等を挙げることができる。
【0047】
界面活性剤としては、エチレングリコール、脂肪酸石鹸等を挙げることができる。界面活性剤の含有量は、セラミック原料を100質量%部としたときに、0.1〜5質量%質であることが好ましい。
【0048】
分散媒としては、水が好ましい。分散媒の含有量は、セラミック原料を100質量%としたときに、30〜150質量%であることが好ましい。
【0049】
成形原料を用いてハニカム成形体を形成する際には、まず成形原料を混練して坏土とし、得られた坏土をハニカム形状に成形することが好ましい。
【0050】
成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0051】
坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はなく、押出成形法、射出成形法、プレス成形法等の成形方法を用いることができる。連続成形が容易であり、例えばコージェライト結晶を配向させることができることから、押出成形法を採用することが好ましい。押出成形法は、真空土練機、ラム式押出成形機、2軸スクリュー式連続押出成形機等の装置を用いて行うことができる。また、押出成形に用いる装置に、所望の隔壁厚さ、セルピッチ、セル形状等のハニカム成形体となるような口金を装着して、押出成形を行うことが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い、ステンレス鋼、超硬合金等が好ましい。
【0052】
ハニカム成形体を成形した後に、得られたハニカム成形体を乾燥することが好ましい。乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。これらのなかでも、ハニカム成形体全体を、迅速且つ均一に乾燥することができることから、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。また、乾燥条件は、乾燥方法によって適宜決定することができる。
【0053】
次に、得られたハニカム成形体を焼成(本焼成)してハニカム基材を得ることが好ましい。「本焼成」とは、ハニカム成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するための操作を意味する。
【0054】
なお、ハニカム成形体を焼成(本焼成)する前には、そのハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものであり、その方法は、特に限定されるものではなく、中の有機物(バインダ、分散剤、造孔材等)を除去することができればよい。一般に、バインダ(有機バインダ)の燃焼温度は100〜300℃程度である。造孔材の燃焼温度は、種類によって異なるが、200〜1000℃程度である。そのため、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、3〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0055】
本焼成における焼成条件(温度・時間)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成最高温度は、1410〜1440℃が好ましい。また、焼成最高温度キープ(保持)時間は、3〜15時間が好ましい。
【0056】
次に、得られたハニカム基材に、触媒成分を担持して、ハニカム触媒体を得ることが好ましい。
【0057】
触媒成分の担持方法については特に制限はなく、従来公知のハニカム触媒体の製造方法において用いられる方法に準じて触媒を担持することができる。例えば、自動車排ガス用触媒としてPt、Pd、Rh等の貴金属を担持する場合は、以下のようにして担持することができる。まず、「塩化白金酸水溶液等の貴金属触媒成分」及び「CeO等の希土類酸化物」を含むγ−アルミナのスラリーに、酸処理及び熱処理を実施したハニカム基材を浸漬する。そして、スラリーがコートされたハニカム基材の余剰のスラリーを、エアー等で除去し、乾燥して、ハニカム触媒体とすることが好ましい。ハニカム基材にスラリーをコートし、エアー等で余剰のスラリーを除去した後に、500〜600℃の温度で焼付けて(焼成して)、ハニカム触媒体としてもよい。
【0058】
触媒成分としては、「Pt、Pd、Rh等の貴金属を基体とした三元触媒」、酸化触媒、脱臭触媒、「Mn、Fe、Cu等の卑金属触媒」等を挙げることができる。また酸処理後の高比表面積状態のコージエライトからなるハニカム基材の表面に、触媒成分を担持し、次いで600〜1000℃で熱処理を行うことも好ましい態様である。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
タルク、カオリン及びアルミナ、シリカ、水酸化アルミニウムを組み合わせて、その化学組成が、SiO42〜56質量%、Al30〜45質量%、及びMgO12〜16質量%となるように所定の割合で調合してコージェライト化原料を得た。コージェライト化原料100質量%に対して、造孔材を10質量%添加し、バインダとしてメチルセルロースを3質量%添加し、分散媒として水を50質量%添加し、これらを混合して成形原料を得た。そして、成形原料を混練して坏土を得た。造孔材としては、平均粒径の異なる2種類のグラファイトを所定の割合で混合したものを用いた。グラファイトとしては、平均粒子径10μmのものと、平均粒子径50μmのものを用いた。
【0061】
次に、所定の口金を用いて坏土を押出成形し、複数のセルを区画形成する隔壁と、外周壁とを備えるハニカム成形体を得た。ハニカム成形体は、セル形状(セルの延びる方向に直交する断面におけるセルの形状)が正方形で、全体形状が円筒形であった。
【0062】
次に、得られたハニカム成形体を、120℃で熱風乾燥させ、その後、1400〜1430℃で10時間焼成してハニカム基材を作製した。得られたハニカム基材は、底面(中心軸に直交する断面)の直径が100mm、中心軸方向の長さが100mmの円筒形であった。ハニカム基材の、セル密度は、62セル/cmであり、隔壁厚さは、0.11mmであった。隔壁厚さは、SEM(走査型電子顕微鏡)による断面観察の方法で測定した値である。
【0063】
次に、得られたハニカム基材に、触媒成分及び高比表面積材料を担持して、ハニカム触媒体を作製した。触媒成分としては、パラジウム、白金及びロジウムを用いた。高比表面積材料としては、γ−アルミナを用いた。
【0064】
具体的には、まず、パラジウム、白金、ロジウム、γ−アルミナ及び水を混合して触媒スラリーを得た。パラジウム、白金及びロジウムの質量比は、15:1:1(パラジウム:白金:ロジウム=15:1:1)であった。また、触媒スラリー中のγ−アルミナの量は、「パラジウム、白金及びロジウムの合計質量」の20倍の量(質量)であった。
【0065】
得られた触媒スラリーを容器内に入れ、更にハニカム基材を触媒スラリーに浸漬した。その後、ハニカム基材を触媒スラリーから取り出し、エアー(空気)で余分な触媒スラリーを除去し、120℃で乾燥した。所定量の触媒(触媒成分(パラジウム、白金及びロジウム)及びγ−アルミナ)がハニカム基材に担持されるまで浸浸と乾燥の繰返しを行い、窒素雰囲気下、550℃で焼成することでハニカム触媒体を得た。触媒の担持量は、30g/リットルであった。
【0066】
得られたハニカム触媒体について、以下に示す方法で、「隔壁の平均細孔径」、「隔壁の気孔率」、及び「触媒層全体の厚さaに対する表面部の厚さbの比の値(b/a)」を測定した。また、得られたハニカム触媒体について、「熱サイクル試験」及び「HC(ハイドロカーボン)浄化試験」を行った。結果を表1に示す。
【0067】
(隔壁の平均細孔径)
ハニカム触媒体の隔壁を10mm×10mm×10mmの大きさで切り出し、細孔内に樹脂を埋め込み、表面を研磨して測定サンプルとする。SEM(走査型電子顕微鏡)にて測定サンプルを撮像し、得られた画像より、平均細孔径を算出する。SEM画像は、300倍の倍率とする。この方法で、「隔壁全体の平均細孔径」及び「隔壁表面層(隔壁表面から、隔壁厚さの10%の深さまでの範囲)の平均細孔径」を求める。
【0068】
(隔壁の気孔率)
ハニカム触媒体の隔壁を10mm×10mm×10mmの大きさで切り出し、細孔内に樹脂を埋め込み、表面を研磨して測定サンプルとする。SEM(走査型電子顕微鏡)にて測定サンプルを撮像し、得られた画像より、気孔率を算出する。SEM画像は、300倍の倍率とする。この方法で、「隔壁全体の気孔率」及び「隔壁中央層(隔壁全体から、隔壁表面層を除いた部分)の気孔率」を求める。「隔壁の気孔率」の測定は、上記「隔壁の平均細孔径」の測定と同時に行うことができる。
【0069】
(触媒層全体の厚さaに対する表面部の厚さbの比の値(b/a))
ハニカム触媒体の隔壁を10mm×10mm×10mmの大きさで切り出し、細孔内に樹脂を埋め込み、表面を研磨して測定サンプルとする。SEM(走査型電子顕微鏡)にて測定サンプルを撮像し、得られた画像より、「触媒層全体の厚さa」及び「表面部の厚さb」を算出する。得られた「触媒層全体の厚さa」及び「表面部の厚さb」の値より、「b/a」を得る。
【0070】
(熱サイクル試験)
図5に示すように、ハニカム触媒体100をステンレス鋼製の試験用缶体31内に装着(キャニング)する。そして、ガスバーナー試験機(図示せず)を用いて、燃焼ガスを1.0Nm/分の流量でハニカム触媒体100に流す。この時、燃料としてはプロパンを使用した。そして、ハニカム触媒体100を、240秒間で1100℃まで昇温し、1100℃で240秒間保持した後に、25℃のガスを0.9Nm/分で5分間流す。そして、「燃焼ガスを流し始めてから、25℃のガスを流し終わるまで」を1サイクルとしたときに、当該サイクルを5サイクル繰り返す。その後、ハニカム触媒体100を試験用缶体31から取り出し、顕微鏡を用いて、ハニカム触媒体100の端面を観察し、クラックの有無を確認する。図5は、実施例の「熱サイクル試験」において、ハニカム触媒体を缶体に挿入した状態を示す模式図である。
【0071】
(HC(ハイドロカーボン)浄化試験)
図6に示すように、排気システム(Manifold System)35を作製した。排気システム35は、上流からガソリンエンジン33、及び、評価サンプルであるハニカム触媒体を装着した触媒コンバーター34を備えるものである。ガソリンエンジンとしては、排気量2000ccのガソリンエンジンを用い、ダイナモメータで動力を吸収した。排気システム35を用いて、ハイドロカーボン(HC)浄化試験を行った。具体的には、まず、ガソリンエンジンを始動し、10分間、3000回転/分の条件で運転した後、ガソリンエンジンを停止する。その後、試験装置全体を20℃の10時間放置し、いわゆるコールド状態(ガソリンエンジン本体、冷却水や排気管等が、室温(20℃)と同じレベルの温度になった状態)とした後に、再度ガソリンエンジンを始動する。始動後アイドリングで10秒間運転した後、ガソリンエンジンを2000回転/分の運転状態として130秒間以上の間運転する。この時に、ガソリンエンジン始動後140秒経過までの間に触媒コンバーター34から排出されたガス中のHC量を測定する。表1の「HC浄化試験」の欄に、「HC比」を示す。表1に示す「HC比」は、ハニカム触媒体装着前のHC量に対するハニカム触媒体装着後のHC量の割合(比)になる。この時に得られたHC比が小さいほど、試験を行ったハニカム触媒体は、触媒の着火性能(ライトオフ性能)に優れている。図6は、実施例の「HC浄化試験」において用いられる装置を示す模式図である。
【0072】
【表1】
【0073】
(実施例2〜6、比較例1〜7)
各条件を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてハニカム触媒体を作製した。実施例1と同様にして、上記方法で、「隔壁の平均細孔径」、「隔壁の気孔率」、及び「触媒層全体の厚さaに対する表面部の厚さbの比の値(b/a)」を測定した。また、得られたハニカム触媒体について、「熱サイクル試験」及び「HC(ハイドロカーボン)浄化試験」を行った。結果を表1に示す。
【0074】
表1より、実施例1〜4と比較例1、2を比べた場合、b/aの値が0.50未満であると、クラックが発生し易くなることがわかる。また、実施例1、5と比較例3、4を比べた場合、隔壁表面層の平均細孔径が5μmを超えると、クラックが発生し易くなることがわかる。更に、実施例1、6と比較例5〜7を比べた場合、「隔壁中央層(隔壁全体から、隔壁表面層を除いた部分)の気孔率」が40%未満であると、HC(ハイドロカーボン)浄化試験の結果、排ガスの浄化が悪くなり、ライトオフ性能に劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のハニカム触媒体は、自動車等の排気ガス等の処理に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1:隔壁、2:セル、3:ハニカム基材、4:触媒層、5:外周壁、11:一方の端面、12:他方の端面、14:表面部、15:侵入部、21:隔壁表面、22:隔壁表面層、23:隔壁中央層、31:試験用缶体、32:ガス、33:ガソリンエンジン、34:触媒コンバーター、35:排気システム、100:ハニカム触媒体、a:触媒層全体の厚さ、b:表面部の厚さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6