【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のガラス溶解炉は、可燃性ガスと酸素含有ガスとを噴出して燃焼する液中燃焼バーナが、ガラス溶解槽の溶解ガラスの内部に燃焼炎を形成して燃焼する状態で前記ガラス溶解槽の壁部に装備されたものであって、その第1特徴構成は、
前記ガラス溶解槽の内部に、前記溶解ガラスの上層部が溶解槽前部側に流動しかつ前記溶解ガラスの下層部が溶解槽後部側に向かう方向に沿って流動する形態で上下に循環するガラス原料投入側の上流側循環流、及び、前記溶解ガラスの上層部が溶解槽後部側に流動しかつ前記溶解ガラスの下層部が溶解槽前部側に向かう方向に沿って流動にする形態で上下に循環する溶解ガラス取出側の下流側循環流が形成され、
前記液中燃焼バーナが、前記上流側循環流に沿って流動する前記溶解ガラスが前記下流側循環流に流動するのを抑制すべく、前記上流側循環流と前記下流側循環流との間に相当する箇所から前記可燃性ガスと前記酸素含有ガスとを溶解槽前部側に噴出するように構成されている点を特徴とする。
【0014】
すなわち、ガラス溶解槽の内部の溶解ガラスを加熱することにより、ガラス溶解槽の内部に、溶解ガラスの上層部が溶解槽前部側に流動しかつ溶解ガラスの下層部が溶解槽後部側に向かう方向に沿って流動する形態で上下に循環するガラス原料投入側の上流側循環流、及び、溶解ガラスの上層部が溶解槽後部側に流動しかつ溶解ガラスの下層部が溶解槽前部側に向かう方向に沿って流動にする形態で上下に循環する溶解ガラス取出側の下流側循環流が形成されることになる。
【0015】
つまり、ガラス溶解槽の内部のうちの、上流側循環流が形成される部分は、ガラス溶解槽に投入されたガラス原料を溶解する溶解ゾーンに相当し、ガラス溶解槽の内部のうちの、下流側循環流が形成される部分は、溶解ガラスから気泡等を排出する清澄ゾーンに相当することになり、ガラス溶解槽の前部側に投入されたガラス原料は、溶解ゾーンにおいて、上流側循環流に沿って流動しながら溶解し、その後、清澄ゾーンに流動して、下流側循環流に沿って流動しながら清澄され、清澄後において、ネックを通して溶解槽の外部の作業槽に取り出されることになる。
【0016】
そして、本第1特徴構成によれば、液中燃焼バーナが、上流側循環流に沿って流動する溶解ガラスが下流側循環流に流動するのを抑制すべく、上流側循環流と下流側循環流との間に相当する箇所から可燃性ガスと酸素含有ガスとを前記溶解槽前部側に噴出するように構成されているから、溶解ゾーンにおいて、上流側循環流に沿って流動する溶解ガラスを十分に溶解させることができる。
【0017】
このように、溶解ガラスを加熱するための液中燃焼バーナを有効利用して、上流側循環流に沿って流動する溶解ガラスが下流側循環流に流動するのを抑制するものであるから、液中燃焼バーナを有効利用した簡素な構成にて、上流側循環流に沿って流動する溶解ガラスを十分に溶解させることができる。
【0018】
要するに、本発明の第1特徴構成によれば、液中燃焼バーナを有効利用した簡素な構成にて、ガラス溶解槽の内部の溶解ガラスを十分に溶解することができるガラス溶解炉を提供する点にある。
【0019】
本発明のガラス溶解炉の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記液中燃焼バーナが、前記壁部としての底壁部における前記上流側循環流と前記下流側循環流との間に相当する箇所に、前記可燃性ガスと前記酸素含有ガスとを、溶解槽前部側でかつ上方側に向かう方向に向けて噴出する状態で設けられている点を特徴とする。
【0020】
すなわち、ガラス溶解槽の底壁部における上流側循環流と下流側循環流との間に相当する箇所に、液中燃焼バーナが、可燃性ガスと酸素含有ガスとを、溶解槽前部側でかつ上方側に向かう方向に向けて噴出する状態で設けられているから、上流側循環流に沿って流動する溶解ガラスが、下流側循環流が存在する清澄ゾーンに流動することを的確に抑制でき、しかも、溶解ガラスが上流側循環流に沿って循環することを助長して、溶解ガラスの攪拌を促進することができる。
【0021】
説明を加えると、ガラス溶解槽の底壁部における上流側循環流と下流側循環流との間に相当する箇所に設けた液中燃焼バーナから、可燃性ガスと酸素含有ガスとが溶解槽前部側でかつ上方側に向かう方向に向けて噴出されているため、上流側循環流における溶解槽後部側に向かう方向に沿って流動する下層部の溶解ガラスが、液中燃焼バーナから噴出された可燃性ガスと酸素含有ガスとの流れによって、溶解槽前部側でかつ上方側に向かう方向に向けて押し流されて、上流側循環流における溶解槽前部側に流動する上層部に至ることになる。
【0022】
このように、上流側循環流における溶解槽後部側に向かう方向に沿って流動する下層部の溶解ガラスが、液中燃焼バーナから噴出される可燃性ガスと酸素含有ガスとの流れによって、溶解槽前部側でかつ上方側に向かう方向に向けて押し流されることになるため、上流側循環流に沿って流動する溶解ガラスが、下流側循環流が存在する清澄ゾーンに流動することを抑制できるのであり、しかも、上流側循環流の下層部の溶解ガラスが上層部に向けて流れることを助長して、溶解ガラスが上流側循環流に沿って循環することを助長することができるため、溶解ガラスの攪拌を促進することができるのである。
【0023】
要するに、本発明の第2特徴構成によれば、上記第1特徴構成による作用効果に加えて、上流側循環流に沿って流動する溶解ガラスが、下流側循環流が存在する清澄ゾーンに流動することを的確に抑制でき、しかも、溶解ガラスが上流側循環流に沿って循環することを助長して、溶解ガラスの攪拌を促進することができるガラス溶解炉を提供できる。
【0024】
本発明のガラス溶解炉の第3特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記液中燃焼バーナが、前記壁部としての横側壁部における下方側でかつ前記上流側循環流と前記下流側循環流との間に相当する箇所に、前記可燃性ガスと前記酸素含有ガスとを、溶解槽前部側で且つ前記ガラス溶解槽の横幅方向における内方でかつ上方側に向かう方向に向けて噴出する状態で設けられている点を特徴とする。
【0025】
すなわち、ガラス溶解槽の横側壁部における下方側でかつ上流側循環流と下流側循環流との間に相当する箇所に、液中燃焼バーナが、可燃性ガスと酸素含有ガスとを、溶解槽前部側で且つガラス溶解槽の横幅方向における内方でかつ上方側に向かう方向に向けて噴出する状態で設けられているから、上流側循環流に沿って流動する溶解ガラスが、下流側循環流が存在する清澄ゾーンに流動することを的確に抑制でき、しかも、溶解ガラスの攪拌を促進することができる。
【0026】
説明を加えると、ガラス溶解槽の底壁部における横側壁部における下方側でかつ上流側循環流と下流側循環流との間に相当する箇所に設けた液中燃焼バーナから、可燃性ガスと酸素含有ガスとが溶解槽前部側で且つガラス溶解槽の横幅方向における内方でかつ上方側に向かう方向に向けて噴出されているため、上流側循環流における溶解槽後部側に向かう方向に沿って流動する下層部の溶解ガラスが、液中燃焼バーナから噴出された可燃性ガスと酸素含有ガスとの流れによって、溶解槽前部側で且つガラス溶解槽の横幅方向における内方でかつ上方側に向かう方向に向けて押し流されながら、上流側循環流における溶解槽前部側に流動している上層部に流動することになる。
【0027】
つまり、上流側循環流における下層部の溶解ガラスは、液中燃焼バーナから噴出された可燃性ガスと酸素含有ガスとの流れによって、基本的には、溶解槽前部側で且つ上方側に向かう方向に向けて押し流されながら上層部に流動することになるが、液中燃焼バーナから噴出される可燃性ガスと酸素含有ガスとが、ガラス溶解槽の横幅方向における内方に向かう成分を備えるものであるため、上流側循環流における下層部の溶解ガラスは、ガラス溶解槽の横幅方向に沿って槽内方側に向けて流動することになる。
【0028】
このように、上流側循環流における溶解槽後部側に向かう方向に沿って流動する下層部の溶解ガラスが、液中燃焼バーナから噴出される可燃性ガスと酸素含有ガスとの流れによって、溶解槽前部側でかつ上方側に向かう方向に向けて押し流されることになるため、上流側循環流に沿って流動する溶解ガラスが、下流側循環流が存在する清澄ゾーンに流動することを抑制できるのである。
【0029】
しかも、上流側循環流の下層部の溶解ガラスが、液中燃焼バーナから噴出される可燃性ガスと酸素含有ガスとの流れによって、ガラス溶解槽の横幅方向に沿って槽内方側に向けても押し流されながら、上層部に向けて流れる状態となるため、上流側循環流に沿って流れる溶解ガラスの流れの中に、ガラス横幅方向に沿う流れを存在させて、上流側循環流に沿って流れる溶解ガラスの攪拌を促進することができるのである。
【0030】
要するに、本発明の第3特徴構成によれば、上記第1特徴構成による作用効果に加えて、上流側循環流に沿って流動する溶解ガラスが、下流側循環流が存在する清澄ゾーンに流動することを的確に抑制でき、しかも、溶解ガラスの攪拌を促進することができるガラス溶解炉を提供できる。
【0031】
本発明のガラス溶解炉の第4特徴構成は、上記第1〜第3特徴構成のいずれかに加えて、
前記液中燃焼バーナが、前記可燃性ガスと前記酸素含有ガスとを非混合状態で噴出するように構成されている点を特徴とする。
【0032】
すなわち、液中燃焼バーナが、可燃性ガスと酸素含有ガスとを非混合状態で噴出するように構成されているから、噴出された可燃性ガスと酸素含有ガスとは、噴出後に混合されて燃焼することになる。
【0033】
このように、可燃性ガスと酸素含有ガスとを、液中燃焼バーナから噴出した後に混合させて燃焼させるものであるから、換言すれば、いわゆる先混合方式にて燃焼させるものであるから、逆火の発生を抑制した状態で良好に燃焼させることができる。
【0034】
要するに、本発明の第5特徴構成によれば、上記第1〜第3特徴構成による作用効果に加えて、液中燃焼バーナを逆火の発生を抑制した状態で良好に燃焼させることができるガラス溶解炉を提供できる。
【0035】
本発明のガラス溶解炉の第5特徴構成は、上記第1〜第3特徴構成のいずれかに加えて、
前記液中燃焼バーナが、前記可燃性ガスと前記酸素含有ガスとを混合状態で噴出するように構成されている点を特徴とする。
【0036】
すなわち、液中燃焼バーナが、可燃性ガスと酸素含有ガスとを混合状態で噴出するように構成されているから、噴出される可燃性ガスと酸素含有ガスとは、噴出された際には既に混合されているため、噴出されるに伴って的確に燃焼することになる。
【0037】
このように、可燃性ガスと酸素含有ガスとを、混合状態で液中燃焼バーナから噴出させて燃焼させるものであるから、換言すれば、いわゆる元混合方式にて燃焼させるものであるから、溶解ガラスの内部にて燃焼炎を形成する状態で燃焼させるものでありながらも、不測に消火することを回避した状態で良好に燃焼させることができる。
【0038】
要するに、本発明の第5特徴構成によれば、上記第1〜第4特徴構成による作用効果に加えて、液中燃焼バーナを不測に消火することを回避した状態で良好に燃焼させることができるガラス溶解炉を提供できる。
【0039】
本発明のガラス溶解炉の第6特徴構成は、上記第1〜第5特徴構成のいずれかに加えて、
前記可燃性ガスと前記酸素含有ガスとを噴出して燃焼する液中燃焼式の加熱バーナが、前記溶解ガラスの内部のうちの、前記上流側循環流が形成される部分に燃焼炎を形成する状態で、かつ、前記燃焼炎の形態を、先端側に伸びることなく径方向に拡がる平面状炎、燃焼炎先端側ほど径方向に拡がるスカート状炎、旋回しながら直進状に伸びるトロイダル炎、及び、非旋回状態で直進状に伸びる直進炎のうち、少なくとも2種類の形態に変更できるように構成された状態で、前記壁部に設けられている点を特徴とする。
【0040】
すなわち、溶解ガラスの内部のうちの、上流側循環流が形成される部分に燃焼炎を形成する液中燃焼式の加熱バーナが設けられているから、溶解ゾーンにおいて、上流側循環流に沿って流動する溶解ガラスを、液中燃焼式の加熱バーナにて良好に加熱することができる。
【0041】
しかも、加熱バーナが、燃焼炎の形態を、先端側に伸びることなく径方向に拡がる平面状炎、燃焼炎先端側ほど径方向に拡がるスカート状炎、旋回しながら直進状に伸びるトロイダル炎、及び、非旋回状態で直進状に伸びる直進炎のうち、少なくとも2種類の形態に変更できるから、ガラス溶解槽に投入されるガラス原料の種類や投入量が変化しても、その変化に合わせて、加熱バーナの燃焼炎の形態を変更することにより、溶解ガラスに与える熱量を適切に調節できることになる。
ちなみに、平面状炎、スカート状炎、トロイダル炎、直進炎は、この記載順に、溶解ガラスに与える熱量を大きくできる傾向となる。
【0042】
説明を加えると、ガラス溶解槽に投入されるガラス原料の溶解性は一律ではなく、難溶解性のものや易溶解性のものがあり、易溶解性のものに較べて難溶解性の場合には、溶解ガラスに与える熱量を増大させる必要がある。
【0043】
また、溶解槽に投入するガラス原料の投入量(ガラスの生産量)の変動に合わせて、ガラス原料の投入量が多いとき(ガラスの生産量が多いとき)には、ガラス原料の投入量が少ないとき(ガラスの生産量が少ないとき)に較べて、溶解ガラスに与える熱量を増大させる必要がある。
さらに、色つきガラスを生産する場合においては、黒、緑青、透明の順に、溶解ガラスに与える熱量を増大させる必要がある。
【0044】
このように、ガラス溶解槽に投入されるガラス原料の種類や投入量が変化すると、溶解ガラスに与える熱量を調節する必要があるが、ガラス溶解槽に投入されるガラス原料の種類や投入量の変化に合わせて、加熱バーナの燃焼炎の形態を変更することにより、溶解ガラスに与える熱量を適切な熱量に調節することが可能となる。
【0045】
要するに、本発明の第6特徴構成によれば、上記第1〜第5特徴構成による作用効果に加えて、ガラス溶解槽に投入されるガラス原料の種類や投入量の変化に合わせて、溶解ガラスに与える熱量を適切に調節できるガラス溶解炉を提供できる。
【0046】
本発明のガラス溶解炉の第7特徴構成は、上記第6徴構成に加えて、
前記加熱バーナが、
前記酸素含有ガスとしての燃焼用空気を先端側に向けて噴出する中央側空気噴出部と、
前記可燃性ガスを前記中央側空気噴出部の周囲から先端側に向けて噴出する燃料噴出部と、
前記燃焼用空気を前記燃料噴出部よりも径方向外方側箇所から径方向内方側に向けて旋回状態で噴出する外周側空気噴出部と、
前記中央側空気噴出部及び前記外周側空気噴出部から噴出された前記燃焼用空気と前記燃料噴出部から噴出された前記可燃性ガスとを先端側に向けて案内する基端側の直円筒部分の先端側に、先端側ほど漸次外方側に拡径する拡径部分が連なる形態に構成された案内部と、
前記中央側空気噴出部からの前記燃焼用空気の噴出量と前記外周側空気噴出部からの前記燃焼用空気の噴出量との比を変更する噴出比調整手段とを備えて、
前記噴出比調整手段による前記比の変更により、前記燃焼炎の形態を、前記平面状炎、前記スカート状炎、前記トロイダル炎、及び、前記直進炎に変更するように構成されている点を特徴とする。
【0047】
すなわち、噴出比調整手段によって、中央側空気噴出部からの燃焼用空気の噴出量と前外周側空気噴出部からの燃焼用空気の噴出量との比を変更することにより、加熱バーナの燃焼炎の形態を、平面状炎、スカート状炎、トロイダル炎、及び、直進炎に変更できるから、溶解ガラスに与える熱量を十分に大きな範囲に亘って適切に調節できることになる。
【0048】
したがって、ガラス溶解槽に投入されるガラス原料の溶解性が大きく変動することや、溶解槽に投入するガラス原料の投入量(ガラスの生産量)が大きく変動することがあっても、その変動に合わせて、溶解ガラスに与える熱量を適切に調節できるのである。
また、色つきガラスを生産する場合においては、黒、緑青、透明のいずれを生産する場合においても、生産する色つきガラスに応じて、溶解ガラスに与える熱量を適切に調節できるのである。
【0049】
要するに、本発明の第7特徴構成によれば、上記第6特徴構成による作用効果に加えて、溶解ガラスに与える熱量を十分に大きな範囲に亘って適切に調節できるガラス溶解炉を提供できる。