(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記データ収集装置は、前記農作業データを一時的に記憶する第1記憶部を備え、前記携帯端末は、受信した農作業データを一時的に記憶する第2記憶部を備え、第2記憶部の記憶容量は、前記第1記憶部の記憶容量以上としていることを特徴とする請求項1又は2に記載の農作業データ管理システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態による農作業データ管理システムを説明する。
図1は、農業機械を用いて農作業を行っている状況の一例を示したものである。
図1に示すように、春や秋などの同一時期(同一季節)において、農作業の様子を見たとき、同一機種の多くの農業機械2によって各圃場H内で農作業が行われているのが実情である。近年では、従来のように1の農家が1の圃場Hを管理するという形態ではなく、1の農家が複数の圃場Hを管理することが多くなってきている。それゆえ、同一時期の農作業では、1の農家が所有する複数の農業機械2が、複数の圃場Hで農作業を行うといった形態となることから、1の農家が1つ1つの圃場Hにおける農作業を正確に管理することが一層難しくなってきているのが実情である。
【0013】
さて、従来では、各圃場Hでの農作業をノート等に記録していたが、この方法では記録自体が大変である。特に、上述したように管理する圃場Hが増加すると、圃場Hで行った農作業を間違いなく記録するのが大変である。
そこで、農作業をノート等に記録するのではなく、農業機械2側を動かしたときに得られた農作業データを農作業の記録として自動的に農業機械2側で保存(記憶)しておき、農業機械2側で保存した農作業データを後述するサーバに送信し、サーバ側で農作業データを整理するようにシステム化すれば、複数の農業機械2を同時に動かすことがあっても、各圃場Hでの農作業を簡単に管理することが可能となる。
【0014】
しかしながら、このように、農業機械2で農作業したときの農作業データを農作業の記録とする場合、農作業データを滞りなくサーバに送信しなければ、農作業の全体を正確に管理することが難しくなる。
本発明の農作業データ管理システム1では、複数の農業機械2を移動させながら農作業を行うような状況下でも、持ち運びが容易で通信を行う携帯端末を用いることによって、各農業機械2で得られた農作業データを確実にサーバに送信できるようにしている。
【0015】
以下、農作業データ管理システムについて詳しく説明する。
図2に示すように、農作業データ管理システム1は、トラクタ、コンバイン、田植機などの農業機械2に、農作業を行ったときの農作業データを収集するデータ収集装置3を設け、収集した農作業データを携帯端末4を介してサーバ5に送信し、サーバ5等で農作業データを管理するものである。即ち、農作業データ管理システム1は、移動しながら農作
業を行う複数の農業機械2と、農業機械2に搭載され且つ当該農業機械2が農作業を行ったときの農作業データを収集するデータ収集装置3と、データ収集装置3から送信された農作業データを受信する携帯端末4と、携帯端末4から送信された農作業データを受信するサーバ5とを備えている。なお、農作業データは、農業機械で農作業を行った時の様々な情報であって、例えば、農業機械の負荷情報(速度、エンジン回転数)、施肥量、収穫量などである。
【0016】
図3は、農業機械、データ収集装置、携帯端末及びサーバで構築されたネットワークの一例を示したものである。
図3に示すように、ネットワークを見ると、農業機械2とデータ収集装置3とは、「1対1」の関係となっていて、1つの農業機械2で農作業を行ったときの様々な農作業データは、CAN、LIN等の車両用通信ネットワークを介して1つのデータ収集装置3に記憶される。
【0017】
例えば、3台の農業機械2a、2b、2cがあるとき、まず、各農業機械2a、2b、2cは、農作業を行った際に農作業データを、それぞれの農業機械2a、2b、2cに搭載された各データ収集装置3a、3b、3cに送信する。このように、農業機械2で農作業を行うと、農業機械2に搭載されたデータ収集装置3に農作業データが一時的に記憶される。
【0018】
データ収集装置3と携帯端末4とは、「多対多」又は「1対多」の関係となって、各データ収集装置3に記憶された農作業データは、WiFi(R)などの近距離の無線通信によって、通信許可(認証許可)された各携帯端末4に送信することができるようになっている。なお、通信許可は、ネットワークに物理的に割り当てられたMACアドレスやネットワークキーなどの認証情報により行う。
【0019】
例えば、各データ収集装置3a、3b、3cと、複数(例えば、4名)の作業者A、B、C、Dが所有する各携帯端末4a、4b、4c、4dとがあり、このうちデータ収集装置3a、3bと各携帯端末4a、4bとが無線通信可能で、データ収集装置3cと携帯端末4c、4dとが無線通信可能であるとする。
図4に示すように、例えば、データ収集装置3a、3bは、無線通信が可能な各携帯端末4a、4bのうち、データ収集装置3a、3bの通信エリアM内にあって通信許可がなされている携帯端末4aに農作業データを送信する。また、データ収集装置3cも、無線通信が可能な携帯端末4c、4dのうち、通信エリアM内にあって通信許可がなされている携帯端末4dに農作業データを送信する。このように、複数のデータ収集装置3は、予め記憶している農作業データを、携帯端末4が通信エリアMに入る度に当該通信エリアMに入った携帯端末4に送信する。
【0020】
携帯端末4とサーバ5とは、「多対1」となっていて、各携帯端末4が受信した農作業データは、移動体通信システムのネットワーク(通信網)によってサーバ5に送信することができるようになっている。例えば、携帯端末4a、4bをネットワークを介してサーバ5に接続すると、サーバ5に接続した携帯端末4a、4bは、自己に記憶されている農作業データをサーバ5に送信する。
【0021】
以上のように、農作業データ管理システム1では、まず、複数の農業機械2が農作業をする度に農作業データを各データ収集装置3に記憶しておき、携帯端末4を所持している作業者が各データ収集装置3に近づくと、各データ収集装置3が農作業データを送信し、携帯端末4は農作業データを受信すると記憶する。ここで、複数の作業者が農業機械2に近づくと、各作業者が所有する携帯端末4にそれぞれ農作業データが記憶されることから、1台の農業機械2で農作業したときの農作業データを、複数の携帯端末4に記憶(保存)することが可能となる。そして、同一の農業機械2の農作業データを記憶した複数の携帯端末4のうち、通信エリアに入った携帯端末4は、サーバ5に接続することができるため、当該携帯端末4に入っている農作業データをサーバ5に送信することができる。
【0022】
農作業データ管理システム1について、トラクタを例にとり、さらに詳しく説明する。
図12に示すように、トラクタ2は、前後に車輪が取り付けられた走行車両(走行車体)10に、エンジン11、変速装置12等を搭載して構成されている。エンジン11の後
方には、独立搭載型のキャビン13が設けられており、キャビン13内には運転席14が設けられている。また、走行車両2の後部には、3点リンク機構15が昇降可能に設けられると共に、エンジン11からの動力を伝達するPTO軸が設けられている。3点リンク機構15には、肥料散布装置、耕耘装置、農薬散布装置、播種散布装置、収穫装置などの作業装置16が着脱自在となっている。なお、
図12は、肥料散布装置を3点リンク機構15に取り付けた例を示している。
【0023】
図2に示すように、トラクタ2には、他に、制御装置20とデータ収集装置3とが搭載されている。制御装置20とデータ収集装置3は、車両用通信ネットワークにより接続されている。制御装置20は、トラクタ2の走行系制御や作業系制御等を行うものであって、走行系制御として、エンジンの動作を制御したり、作業系制御として、運転席の周囲に設けられた操作レバーや操作スイッチなどの操作具からの入力を受けると、入力値に従って3点リンク機構15の昇降、PTO軸の出力(回転数)などの動作を制御する。トラクタ2の走行系制御や作業系制御を行うときの制御信号や制御を行うための各種検出信号(例えば、センサが検出した信号)は、車両用通信ネットワークに出力されて、トラクタ2の各部に伝達される。なお、制御装置20による走行系制御や作業系制御は、上述したものに限定されない。
【0024】
データ収集装置3は、車両用通信ネットワークを介して、トラクタ2が動作しているときの農作業に関する様々なデータを自動的に収集するものである。例えば、トラクタ2の後部に作業装置16として耕耘装置が連結されてトラクタ2が動作したときは、ロータリーの回転数、ロータリーの負荷、エンジン回転数、車速、耕深などのデータが車両用通信ネットワークに出力される。データ収集装置3は、ロータリーの回転数、ロータリーの負荷、エンジン回転数、車速、耕深などのデータを農作業データとして取得する。
【0025】
また、作業装置16が肥料散布装置、農薬散布装置、播種散布装置である場合は、車速、エンジン回転数、散布量(肥料散布量、農薬散布量、播種散布量)などのデータが車両通信ネットワーク上に出力され、データ収集装置3は、車速、エンジン回転数、肥料散布量、農薬散布量、播種散布量を農作業データとして取得する。或いは、作業装置16が収穫装置である場合は、車速、エンジン回転数、収穫量などのデータが車両通信ネットワーク上に出力され、データ収集装置3は、車速、エンジン回転数、収穫量を農作業データとして取得する。
【0026】
このようなデータ収集装置3は、上述したような農作業に関係する農作業データを一時的に記憶する第1記憶部(バッファ)30を備えている。トラクタ2が作動する度に第1記憶部30には、農作業データが逐次、蓄積されていくことになる。なお、データ収集装置3には、トラクタ2を識別(特定)するための機械特定情報が記憶されると共に、トラクタ2が作動したときの作動時間なども記憶されている。
【0027】
また、データ収集装置3は、第1記憶部30に記憶した農作業データを携帯端末4に送信する第1通信部31を備えている。第1通信部31は、近距離の無線を行うものであって、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(Wireless Fidelity、登録商標)によって携帯端末4との無線通信を行うものである。第1通信部31は、携帯端末4との認証の許可を行うための認証情報(例えば、自己のMACアドレス、ネットワーク名(SSID)、ネットワークキー)が記憶されている。
【0028】
携帯端末4は、例えば、比較的演算能力の高いスマートフォン(多機能携帯電話)やタブレットPC等の携帯型コンピュータなどである。携帯端末4は、データ収集装置3からの様々なデータ(農作業データ等)を受信する第2通信部40を備えている。第2通信部40は、第1通信部31と同様に近距離の無線を行うものであって、例えば、通信規格であるIEEE802.11シリーズのWi-Fi(登録商標)によってデータ収集装置3との無線通信を行うものである。また、携帯端末4は、通信網を介してサーバなどに農作業データを送信する第3通信部41を備えている。
【0029】
携帯端末4は、データ収集装置3から送信された農作業データを記憶する第2記憶部42を備えている。第2記憶部42の記憶容量、即ち、農作業データを記憶する記憶容量は、データ収集装置3の第1記憶部30の記憶容量以上となっている。例えば、第2記憶部
42の記憶容量(農作業データを記憶する記憶容量)は、データ収集装置3の第1記憶部30の記憶容量(農作業データを記憶する記憶容量)の少なくとも2倍以上、好ましくは、10倍以上、さらに好ましくは、250倍以上であることが好ましい。
【0030】
サーバ5は、上述した携帯端末4、その他の様々なコンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータ)によりアクセス可能である。サーバ5には、少なくとも農作業データを記憶するデータベース(記憶部)DBを有している。携帯端末4から送信された農作業データは、データベースDBに記憶されるようになっていて、データベースDBに記憶された農作業データは、サーバ5にアクセスすることにより取り出したり、整理することができる。例えば、農作業が終わった後、農家に設置したコンピュータでサーバ5にアクセスし、農作業時の農作業データを、コンピュータ上又はサーバ上で整理することにより、作業日報を作成したり、作業計画を立てたり、各圃場の農作業実績をグラフ化したり、経営計画を作成することが可能となる。サーバ5は、様々な地域の農作業を管理する管理会社、トラクタ2などの農業機械を製造したり農業機械のサービスを行う製造会社などに設置して、各地域の農作業を一括管理することが望ましい。
【0031】
図5は、データ収集装置から携帯端末への農作業データの送信の手順を示したものである。
まず、携帯端末4が所定のデータ収集装置3と無線通信が行えるように、通信を行うデータ収集装置3の認証情報(SSIDやネットワークキー)を所定の携帯端末4に記憶する(S1)。具体的には、携帯端末4に備えられたタッチパネル等のインタフェースを用いて、無線通信を行うデータ収集装置3、即ち、接続対象であるデータ収集装置3のSSID及びネットワークキーの入力(登録)をする。入力(登録)したSSIDやネットワークキーは、携帯端末4の記憶部に記憶される。例えば、携帯端末4c、4dがデータ収集装置3cから農作業データを取得する場合には、データ収集装置3cに対応するSSIDやネットワークキーを携帯端末4c、4dに記憶させておく。
【0032】
次に、データ収集装置3から認証情報を含むビーコンを送信している状況下にて(S2)、携帯端末4が接続対象となるデータ収集装置3の通信エリアM内に入ることにより当該携帯端末4がデータ収集装置3から発信されるビーコンを受信すると(S3)、携帯端末4はデータ収集装置3に認証情報(ネットワークキー)を送信する(S4)。なお、認証情報を携帯端末4に登録後は、携帯端末4が接続対象となるデータ収集装置3を検知する毎に登録した認証情報を自動的にデータ収集装置3に送信することが望ましい。また、接続対象となるデータ収集装置3の通信エリアM内であるか否かの判断は、携帯端末4に予め記憶(登録)しておいたSSIDによって行う。
【0033】
データ収集装置3は、携帯端末4から送信されたネットワークキーを受信すると、当該データ収集装置3に記憶されているネットワークキーとの認証を行う(S5)。ネットワークによる認証が成立し、データ収集装置3と携帯端末4との接続を確立すると、データ収集装置3は、第1記憶部30に記憶された農作業データを携帯端末4に送信する(S6)。なお、データ収集装置3は、農作業データを送信する際には、トラクタ2(農業機械)を識別(特定)する機械特定情報やトラクタ2(農業機械)が作動した作動時間なども農作業データの1つとして携帯端末4に送信する。携帯端末4は、農作業データを受信すると、機械特定情報や作動時間を有する農作業データを第2記憶部42に保存する。
【0034】
以上のように、複数の携帯端末4と複数のデータ収集装置3とが連携して農作業データの送受信を行うことにより、各データ収集装置3で収集した農作業データを、複数の携帯端末4に確実に保存することができる。
例えば、ある圃場で、データ収集装置3cを搭載したトラクタ2cと、作業者C、Dとで農作業を行うこととする。この場合、まず、作業者C、Dがそれぞれ所持する2台の携帯端末4c、4dに、データ収集装置3cに対応するSSIDやネットワークキーを入力し、これらのSSID及びネットワークキーを携帯端末4c、4dに記憶しておく。
【0035】
図6に示すように、作業者Cがトラクタ2cに乗車してトラクタ2cを操作し、トラクタ2cによる農作業を行っている状況下では、作業者Cが所持している携帯端末4cはデータ収集装置3cの通信エリアM内であるため、作業者Cの携帯端末4cは、データ収集
装置3cから農作業データを受信し、当該農作業データを保存することができる。このとき、作業者Dもトラクタ2cに近く、データ収集装置3cの通信エリアMに入っている場合には、作業者Dの携帯端末4dにも同一の農作業データを送信されることから、この農作業データを保存することができる。即ち、2人の作業者C、Dが所持している携帯端末4c、4dのそれぞれに農作業データを保存することができる。
【0036】
図6の矢印に示すように、別の作業者Eが作業者C、Dが農作業している圃場に入り、農作業を手伝う場合もある。この場合、作業者Eが所持する携帯端末4eにデータ収集装置3cの認証情報(SSIDやネットワークキー)を事前に入力しておけば、作業者Eの携帯端末4eが通信エリアMに入ったときに、作業者Eの携帯端末4eにも同一の農作業データを送信することができ、この農作業データを保存することができる。
【0037】
さて、データ収集装置3aを搭載したトラクタ2aに作業者Aが乗り、データ収集装置3bを搭載したトラクタ2bに作業者Bが乗って農作業を行うことを考える。
作業者Aがトラクタ2aを操作して農作業を行っている場合は、このトラクタ2aを操作する作業者Aの携帯端末4aにトラクタ2aの農作業データを保存することができる。また、作業者Bがトラクタ2bを操作して農作業を行っている場合は、このトラクタ2bを操作する作業者Bの携帯端末4bにトラクタ2bの農作業データを保存することができる。ここで、
図7に示すように、作業者Aがトラクタ2bに乗り換え、作業者Bがトラクタ2aに乗り換えた場合は、作業者Aの携帯端末4aにトラクタ2bの農作業データが保存され、作業者Bの携帯端末4bにトラクタ2aの農作業データが保存されることになり、2台のトラクタ2a、2bのそれぞれの農作業データを、2名の作業者A、Bの携帯端末4a、4bに保存することができる。
【0038】
このように農作業データ管理システム1では、異なる農業機械(トラクタ)の農作業データを、複数の作業者が所有する携帯端末4に保存することができ、複数のトラクタ2が農作業を行った場合での農作業データを複数の携帯端末4によりバックアップをとることができる。
次に、携帯端末からサーバへの農作業データの送信の手順について説明する。
【0039】
携帯端末4が通信エリアに入り、携帯電話通信網などの通信網を介してサーバ5に接続できる状態になると、携帯端末4は、第2記憶部42に記憶された農作業データをサーバ5に送信(アップロード)する。携帯端末4からサーバ5への農作業データのアップロードは、自動的に行ってもよいし、手動で行っても良い。例えば、上述したように、農作業の終了後、作業者C、D、Eのうち、通信エリアに入った作業者Dの携帯端末4dが通信エリアに入った時点で自動的に、当該携帯端末4dで取得した農作業データをサーバ5に送信してもよいし、携帯端末4dを所持している作業者Dが通信エリア内に入ったことを確認して当該作業者Dが携帯端末4dを操作することにより手動で農作業データをサーバ5に送信してもよい。
【0040】
以上、本発明によれば、あらゆる箇所に自在に移動する複数の農業機械2で農作業した農作業データを、移動する複数の携帯端末4を用いて取得し、各携帯端末4でサーバ5に送信しているため、農業機械2の台数が増加した場合であっても取りこぼしなく確実に農作業データをサーバ5に送ることができる。サーバ5側では、農業機械2で農作業したときの農作業データを保存することができ、農作業データを整理することにより、農作業計画を立てたり、農作業の分析等を行うことができる。
【0041】
このシステムでは、農業機械2に搭載したデータ収集装置3と、農業機械2の周辺で協力しながら農作業を進める複数作業者の携帯端末4とによって、農作業データを送信するためのネットワークが構築しているため、例えば、農業機械2が農作業のために様々な所に移動したとしても、その近くに居る各作業者の携帯端末4によってデータ収集装置3で収集した農作業データを取り出すことができる。しかも、複数の携帯端末4に、同一の農業機械2の農作業データが保存することができるため、農作業データのバックアップをとることができ、農作業データの欠落を防止することが可能となる。これに加え、複数の携帯端末4のうち、通信エリアにある携帯端末4によって収集した農作業データをサーバ5に送信するようにしているため、電波受信環境の良い携帯端末4によって農作業データを
サーバ5に送信することができる。
【0042】
さて、データ収集装置3と携帯端末4との間で農作業データの送受信を行うにあたって、農作業データの送信完了、又は、農作業データの受信完了したときに、お互いの無線通信の接続を自動的に切断する手段を、データ収集装置3や携帯端末4に備えてもよい。
図8〜
図12は、農作業データ管理システムの変形例を説明する説明図である。
図8に示すように、携帯端末4は、プログラム等から構成された第1通信切断部44を備えている。この第1通信切断部44は、データ収集装置3から送信された農作業データの受信完了後に、通信を行っていたデータ収集装置3との無線通信の接続(アクセス)を切断するものである。
【0043】
具体的には、データ収集装置3側では、当該データ収集装置3から携帯端末4へ1回のアクセスで送信することができる農作業データの送信容量を、データ収集装置3の第1記憶部30に記憶することができる農作業データの容量として設定しておく。また、携帯端末4側では、1回のアクセスで送信される農作業データの送信容量を設定しておく。そのうえで、データ収集装置3と携帯端末4との無線通信による接続を行い、携帯端末4が予め設定された送信容量(1MB)の農作業データを受信した時点で、第1通信切断部44は、農作業データの受信完了と判断し、データ収集装置3との無線通信の接続を停止する(無線通信の切断処理を行う)。
【0044】
或いは、データ収集装置3から携帯端末4へ農作業データを送信するにあたって、送信する農作業データの最後のフレームに農作業データの末尾を示す末尾フラグを付加しておき、携帯端末4の第1通信切断部44は、末尾フラグを受信したときに、農作業データの受信完了と判断し、データ収集装置3との無線通信の接続を停止する。なお、農作業データを送信するフレームの最後に付加されたチェックサムを末尾フラグとして用いてもよい。
【0045】
また、第1通信部31及び第2通信部40の通信速度に基づいて、第1記憶部30に記憶された農作業データの全てを携帯端末4側で受信するに必要な受信時間(データ収集装置3側から言うと農作業データを携帯端末4に送信するのに必要な送信時間)を予め携帯端末4に設定しておく。そのうえで、携帯端末4が最初に農作業データを受信してから(農作業データのヘッダを検知してから)の経過時間が受信時間に到達した時点で、第1通信切断部44は、農作業データの受信完了と判断し、データ収集装置3との無線通信の接続を停止してもよい。
【0046】
上述したいずれの場合でも、第1通信切断部44は、データ収集装置3との無線通信の接続を停止する際には、接続を切断(停止)する信号(切断信号という)をデータ収集装置3へ向けて送信する処理を行う。
一方、データ収集装置3は、プログラム等から構成された第2通信切断部35を備えている。第2通信切断部35は、農作業データの送信完了後、携帯端末4との無線通信の接続を切断するものである。
【0047】
具体的には、データ収集装置3の第1通信部31が、予め設定された送信容量の農作業データを送信したとき、第2通信切断部35は農作業データの送信完了と判断する。そして、第2通信切断部35は、農作業データの送信完了後であって、携帯端末4の第1通信切断部44からの接続の切断が確認できない場合(状況)のときに、無線通信の接続を切断する。
【0048】
例えば、
図9(a)に示すように、データ収集装置3と携帯端末4とが無線通信を行うことができる通信エリアM内にあるときに、データ収集装置3から農作業データを携帯端末4に送信すると、携帯端末4は農作業データを受信することができる。一方、データ収集装置3は、携帯端末4の第1通信切断部44から送信された切断信号を受信することができる。
【0049】
しかしながら、
図9(b)に示すように、データ収集装置3と携帯端末4とが無線通信中に、トラクタ2(データ収集装置3)及び/又は携帯端末4が移動し、通信エリアM外になった場合、データ収集装置3は、携帯端末4の第1通信切断部44から送信された切断信号を受信することができない。即ち、携帯端末4からの切断信号が受信できない(第
1通信切断部44からの接続の切断が確認できない)場合は、データ収集装置3の第2通信切断部35は、携帯端末4との無線通信の接続を自動的に切断する。
【0050】
データ収集装置3における農作業データの送信完了後、所定時間経過しても携帯端末4からの切断信号が受信できない場合、第2通信切断部35は、携帯端末4との無線通信の接続の切断を行う。
例えば、
図10に示すように、データ収集装置3が携帯端末4へ農作業データの送信開始後から切断信号を受信するまでの経過時間Tが、農作業データを携帯端末4に送信するのに必要な送信時間T1を超え、さらに、第1通信切断部44からデータ収集装置3への接続を切断するのに必要な切断時間(切断信号を携帯端末4からデータ収集装置3へ送信するのに必要な時間)T2を超えた場合に、第2通信切断部35は、第1通信切断部44から接続の切断が確認できないとして、無線通信の切断を行う。
【0051】
さらに詳しくは、この実施形態では、データ収集装置3から携帯端末4へ送信する送信容量を128kB、データ収集装置3と携帯端末4との間のデータ転送速度(実効速度)を10Mbs、データ収集装置3及び携帯端末4で行う通信処理時間を10秒として、データ収集装置3が携帯端末4へ農作業データの送信開始後から切断信号を受信するまでの経過時間(送信時間+切断時間)を20秒とし、20秒を超えたときに、データ収集装置3の第2通信切断部35は、携帯端末4との無線通信の接続の切断を行う。
【0052】
以上によれば、第1通信切断部44によって携帯端末4側から無線通信の接続の切断が実行できると共に、第2通信切断部35によってデータ収集装置3側からも無線通信の接続の切断が実行できるため、農作業データを送受信する場合における携帯端末4側やデータ収集装置3側の通信処理の負荷を出来るだけ小さくすることが可能となる。また、トラクタ2(データ収集装置3)と作業者(携帯端末4)との位置関係が農作業の影響によって様々な形態に変化したとしても、農作業データを携帯端末4に確実に送信することができる。
【0053】
図9(a)に示すように、農作業の開始時には、1台のトラクタ2aと2人の作業者A、Bで作業を行っているとする。トラクタ2aに搭載した1つのデータ収集装置3aの通信エリア内Mには、作業者Aさんが所持している携帯端末4a(一の携帯端末ということがある)と、作業者Bさんが所持している携帯端末4b(他の携帯端末ということがある)とが入っている場合、データ収集装置3aから作業者Aさんが所持している携帯端末4aへ農作業データを送信することができる。
【0054】
携帯端末4aへの農作業データの送信完了時には、データ収集装置3a側は、携帯端末4aから切断信号を受信できるため、当該データ収集装置3aは、切断信号の受信後(切断の確認後)に、一の携帯端末4aとは異なる他の携帯端末4b(作業者Bさんが所持している携帯端末4b)との無線通信による農作業データの送信処理を実行することができる。一方、一の携帯端末4aも、データ収集装置3aとの無線通信の切断を実行すると、別の場所にあるデータ収集装置3bと一の携帯端末4aとの無線通信が行える。
【0055】
さて、
図9(b)に示すように、データ収集装置3aが携帯端末4bに農作業データを送信中に作業者Bが農作業のために移動し、携帯端末4bがデータ収集装置3aの通信エリアMから外れる場合がある。このような場合、データ収集装置3aは、携帯端末4bから切断信号を受信できないが、当該データ収集装置3aの第2通信切断部35によってデータ収集装置3a側から無線通信の接続の切断することができるため、データ収集装置3aは、携帯端末4bとの通信を中止して、通信エリアM内にある他の携帯端末4と無線通信を行うことが可能となる。
【0056】
例えば、データ収集装置3aは、第2通信切断部35によって携帯端末4bとの無線通信を切断後、
図9(c)に示すように、作業者Bとは他の作業者Cがデータ収集装置3aの通信エリアM内に入った場合、他の携帯端末4cから送信されたネットワークキーを受け入れ(受信)し、他の携帯端末4cとの無線通信の接続を開始する。そして、データ収集装置3aと他の携帯端末4cとの認証が成立すると、当該データ収集装置3aは、第1記憶部30に記憶している農作業データを他の携帯端末4cに送信することができる。
【0057】
複数の携帯端末4からサーバ5に、農作業データを送信するようにした場合には、サー
バ5側で重複した農作業データ(同一の農作業データ)を1つにまとめるデータ整理部を備えていることが望ましい。例えば、
図11に示すように、3名の作業者C、D、Eのそれぞれが所有する携帯端末4c、4d、4eから農作業データX1、X2、X3がサーバ5に送信されたとする。サーバ5のデータ整理部は、3つの農作業データX1、X2、X3を受信すると、各農作業データX1、X2、X3のうち、同一の農作業データであるX1、X3を1つの農作業データにまとめる。異なる農作業データX2は、そのまま保存する。同一の農作業データであるか否かの判断は、各農作業データ内の機械特定情報や農作業データ内の作業時間によって行ったり、予め農作業データ群に付されたデータ識別情報により行うことが望ましい。例えば、複数の農作業データのうち、機械特定情報が同じで且つ作業時間が同じである場合は、その農作業データは同一であると判断することができ、データ識別情報が一致する場合も同一の農作業データであると判断することができる。
【0058】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。上述した実施形態では、農業機械の一例としてトラクタを例にあげ説明したが、コンバインであってもよい。コンバインには、収穫した穀物のタンパク質を検出するセンサや収穫量を検出する計量器等が設けられており、コンバインに適用した場合には、収穫量、タンパク質などを農作業データとして取得することができ、圃場毎の収穫量やタンパク質などを整理することが可能となる。或いは、トラクタやコンバインだけでなく、農業機械は、田植機であってもよい。
【0059】
携帯端末4からサーバ5に農作業データを送信するにあたっては、携帯端末4を識別するための識別情報(例えば、携帯端末4の電話番号、携帯端末4の製造番号、携帯端末4のMACアドレス等)を、農作業データと共にサーバ5に送信してもよい。このようにすれば、農作業データと携帯端末4を所有(所持)する作業者との関連付けを行うことができ、農作業を行った作業者が誰であるか把握することが可能である。
【0060】
また、携帯端末4側に、測位衛星(例えば、GPS)からの信号に基づいて位置を求める位置検出装置を設け、位置検出装置で検出した位置と農作業データとをサーバ5に送信するようにしてもよい。作業者が携帯端末4を持参して農業機械2に乗車したときは、携帯端末4の位置が農業機械2の位置になるため、農業機械2の軌跡を求めることができる。農業機械2の軌跡を農作業データとして携帯端末4からサーバ5に送信して、サーバ5側で圃場を示す地図(圃場マップ)と、農業機械2の軌跡とを照らし合わせることにより、、農業機械2で行った農作業の圃場を特定することが可能となる。このようにすれば、圃場毎に農作業の記録を付けるのに便利である。なお、農業機械2に位置検出装置を設けて、位置検出装置で検出した農業機械の位置と農作業データとをサーバ5に送信するようにしてもよい。