特許第6013254号(P6013254)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013254
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】作業機のデータ管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20161011BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   G06Q50/02
   E02F9/20 N
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-70119(P2013-70119)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-194602(P2014-194602A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】三浦 敬典
(72)【発明者】
【氏名】田中 勲
(72)【発明者】
【氏名】魚谷 安久
(72)【発明者】
【氏名】早川 義人
【審査官】 山本 雅士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−161991(JP,A)
【文献】 特開2000−084765(JP,A)
【文献】 特開2011−198066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機が作動したときの作動データを記憶するデータ記憶部と、作業機の累積時間を求める累積時間算出部と、前記作動データ及び累積時間を外部に送信するデータ通信部とを有するデータ収集装置と、
前記累積時間及び作動データを受信するデータ管理装置と、
を備え
前記データ管理装置は、
時刻を算出する時刻算出部と、
前記データ収集装置との通信時に前記作業機から出力された作動データ及び累積時間を受信した際には、当該作動データ及び累積時間と前記時刻算出部で算出した時刻とを通信区間のデータとして対応付ける対応付け部と、
前記データ収集装置との通信を行わなかった非通信区間において前記データ記憶部に記憶された作動データ及び累積時間と前記時刻との対応付けを行うデータ補正部と、
を有し、
前記データ補正部は、前記通信区間のデータとして対応付けられた累積時間及び時刻に基づいて単位累積時間当たりの時刻の増加傾向を求め、前記増加傾向と前記非通信区間における累積時間から当該累積時間に対応する前記非通信区間における時刻を求め、前記作動データに対して前記求めた時刻及び累積時間を適用することで、作動データ及び累積時間と前記時刻との対応付けを行うことを特徴とする作業機のデータ管理システム。
【請求項2】
前記累積時間算出部は、前記作業機に搭載された電源によって作動し、前記データ通信部は、前記電源から累積時間算出部への電力供給停止後であって電力供給が再開された後に前記累積時間算出部が算出した累積時間を、送信するようになっており、
前記データ管理装置は、
電力供給停止前であって且つ前記通信区間のデータとして対応付けられた累積時間及び時刻に基づいて、前記電力供給停止前における単位累積時間当たりの時刻の増加傾向を求め、求めた増加傾向と電力供給再開後であって且つ前記通信区間における累積時間及び当該累積時間に対応する時刻に基づいて、前記電力供給再開後で且つ前記非通信区間における累積時間に対応する時刻を求め、前記電力供給再開後で且つ前記非通信区間における作動データに対して前記求めた時刻及び累積時間を適用することで、前記電力供給再開後で且つ前記非通信区間における作動データ及び累積時間と前記時刻との対応付けを行う停電補正部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の作業機のデータ管理システム。
【請求項3】
前記データ管理装置は、前記データ収集装置から累積時間及び前記作動データを受信可能で且つ前記時刻算出部を備えた携帯端末と、前記携帯端末を介して累積時間、作動データ及び時刻を受信可能で且つ前記データ補正部を備えた管理サーバとから構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機のデータ管理システム。
【請求項4】
前記管理サーバは、複数の携帯端末から累積時間及び作動データを受信したときは、累積時間及び作動データの中で最も新しい累積時間及び作動データを採用することを特徴とする請求項3に記載の作業機のデータ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ、コンバイン、田植機等の農業機械やバックホーの建設機械等におけるデータ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圃場の作業計画の効率化や圃場で収穫した収穫物の品質等を高めるため、圃場で作業した内容など圃場に関する圃場データを収集して活用することが望まれている。例えば、トラクタやコンバインなどの農業機械を用いて圃場データを収集する技術として、例えば、特許文献1や2に示すものがある。
特許文献1では、農業機械に装着されたデ−タ収集装置にて、作業開始時刻、作業終了時刻、作業した日付、機械の識別コ−ド、作業者名、圃場番号を関連付けて記憶するようにしている。
【0003】
特許文献2では、グレンタンクに順次供給される穀粒の充填量を穀粒センサによって検出し、この穀粒センサが刈取開始から満タンに達するまでの検出時間の総和を所要時間として求め、該所要時間を指定の携帯電話に送信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−231329号公報
【特許文献2】特開2006−94780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2の技術では、農業機械に装着されたデ−タ収集装置を用いて圃場データを収集することができるものの、収集時の圃場データと時刻とを対応させることが難しいのが実情である。
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、例えば、農業機械などの作業機側でカウントしている累積時間と農業機械(作業機)が作動したときの作動データと時刻とを簡単に対応付けることができる作業機のデータ管理システムを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
作業機のデータ管理システムは、作業機が作動したときの作動データを記憶するデータ記憶部と、作業機の累積時間を求める累積時間算出部と、前記作動データ及び累積時間を外部に送信するデータ通信部とを有するデータ収集装置と、前記累積時間及び作動データを受信するデータ管理装置と、を備え前記データ管理装置は、時刻を算出する時刻算出部と、前記データ収集装置との通信時に前記作業機から出力された作動データ及び累積時間を受信した際には、当該作動データ及び累積時間と前記時刻算出部で算出した時刻とを通信区間のデータとして対応付ける対応付け部と、前記データ収集装置との通信を行わなかった非通信区間において前記データ記憶部に記憶された作動データ及び累積時間と前記時刻との対応付けを行うデータ補正部と、を有し、前記データ補正部は、前記通信区間のデータとして対応付けられた累積時間及び時刻に基づいて単位累積時間当たりの時刻の増加傾向を求め、前記増加傾向と前記非通信区間における累積時間から当該累積時間に対応する前記非通信区間における時刻を求め、前記作動データに対して前記求めた時刻及び累積時間を適用することで、作動データ及び累積時間と前記時刻との対応付けを行うことを特徴とする。
【0007】
また、前記累積時間算出部は、前記作業機に搭載された電源によって作動し、前記データ通信部は、前記電源から累積時間算出部への電力供給停止後であって電力供給が再開された後に前記累積時間算出部が算出した累積時間を、送信するようになっており、前記データ管理装置は、電力供給停止前であって且つ前記通信区間のデータとして対応付けられた累積時間及び時刻に基づいて、前記電力供給停止前における単位累積時間当たりの時刻の増加傾向を求め、求めた増加傾向と電力供給再開後であって且つ前記通信区間における累積時間及び当該累積時間に対応する時刻に基づいて、前記電力供給再開後で且つ前記非通信区間における累積時間に対応する時刻を求め、前記電力供給再開後で且つ前記非通信区間における作動データに対して前記求めた時刻及び累積時間を適用することで、前記電力供給再開後で且つ前記非通信区間における作動データ及び累積時間と前記時刻との対応付けを行う停電補正部を備えていることを特徴とする。
【0008】
また、前記データ管理装置は、前記データ収集装置から累積時間及び前記作動データを受信可能で且つ前記時刻算出部を備えた携帯端末と、前記携帯端末を介して累積時間、作動データ及び時刻を受信可能で且つ前記データ補正部を備えた管理サーバとから構成されていることを特徴とする。
また、前記管理サーバは、複数の携帯端末から累積時間及び作動データを受信したときは、累積時間及び作動データの中で最も新しい累積時間及び作動データを採用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
発明によれば、農業機械などの作業機が作動したときの作動データをデータ収集装置に記憶していき、作動データ及び累積時間をデータ管理装置が取得するにあたって、作動データ及び累積時間を逐次受信できない場合でも、作動データ及び累積時間と、時刻(実時間)との対応付けを行うことができる。
【0010】
また、作動データ及び累積時間と、時刻との対応付けの精度を向上させることができる。
また、作業機の電源(例えば、バッテリー)が取り外された場合であっても簡単に作動データ及び累積時間と、時刻との対応づけを行うことができる。
【0011】
また、携帯端末を用いて管理サーバに簡単に作動データ及び累積時間を送信することができると共に、携帯端末に搭載された時刻算出部で算出した時刻を用いることにより作動データ及び累積時間と時刻とを対応付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】作業機のデータ管理システムの全体図である。
図2】作動データを外部(携帯端末)に送信する説明図である。
図3】携帯端末とデータ通信部との通信を繰り返し行ったときの既存取得区間A及び通信区間Bと、累積時間との関係の概念図である。
図4】データベースに記憶した作動データの一例を示す図である。
図5】累積時間の増加傾向を示す図である。
図6】バッテリーが取り外されなかった場合の累積時間の増加状態と、バッテリーが外された場合の累積時間の増加状態とを示した図である。
図7】トラクタの全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、作業機のデータ管理システムの全体図を示したものである。
作業機のデータ管理システム1は、トラクタ、コンバイン、田植機等の作業機(農業機械)2から取得した作動データを管理するものである。この作業機のデータ管理システム1では、特に、農作業を行った際に、農業機械を作動させたときの作動データ(農作業データ)を取得し、その作動データを農業管理に用いることに適している。
【0014】
図1に示すように、作業機のデータ管理システム1は、農業機械2が作動したときの作動データを収集するデータ収集装置3と、データ収集装置3で収集した作動データの管理を行うデータ管理装置4とを備えている。
以下、農業機械2の1つであるトラクタを例にとり説明する。
図7に示すように、トラクタ2は、前後に車輪を有する走行車両(走行車体)10に、エンジン11、変速装置12等が搭載されて構成されている。この走行車両10の後部には、3点リンク機構13などが昇降可能に設けられている。この3点リンク機構13には、耕耘装置、肥料散布装置、農薬散布装置、播種散布装置、収穫装置などの作業装置14が着脱自在となっている。
【0015】
図1に示すように、トラクタ2には、当該トラクタ2の様々な制御を行う制御装置5と、上述したデータ収集装置3とが搭載されている。制御装置5とデータ収集装置3とは、車両通信ネットワーク(例えば、Controller Area Network、FlexRayなど)によって接続されていて、互いに信号(データ)の送受信が行えるようになっている。
制御装置5は、例えば、エンジン11を制御したり、操作具の操作に基づいて3点リンク機構13などの昇降を制御したり、変速装置の変速制御、作業装置14の動作を制御するものであり、これらの制御によってトラクタ2は作動するようになっている。なお、制御装置5の制御は、上述したものに限定されない。
【0016】
データ収集装置3は、トラクタ2が作動したときの様々な作動データを収集し、その作動データを累積時間と共に外部に送信するものであり、累積時間算出部30と、データ記憶部31と、データ通信部32とを備えている。
累積時間とは、ユーザがトラクタを使用を開始してからの累計の時間、即ち、ユーザがトラクタを購入後に、購入したトラクタを所有している間の時間である。
【0017】
累積時間算出部30は、累積時間を求めるもので、トラクタ2に搭載された電源(例えば、バッテリー)32により作動する。例えば、累積時間算出部30は、ユーザがトラクタ2を購入後に初期設定が完了すると、ゼロ秒から1秒単位で時間をカウントアップし初め、カウントアップした値を累積時間とする。この累積時間算出部30は、電源が供給されている間は、常に一定の間隔で時間をカウントアップするようになっている。
【0018】
データ記憶部31は、トラクタ2が作動して車両通信ネットワーク等に流れる様々な作動データを蓄積するもので、例えば、作業装置14が耕耘装置である場合には、ロータリーの回転数、ロータリーの負荷、エンジン回転数、車速、耕深などを作動データ(農作業データ)として記憶する。また、作業装置14が肥料散布装置、農薬散布装置、播種散布装置である場合は、車速、エンジン回転数、散布量(肥料散布量、農薬散布量、播種散布量)などの作動データ(農作業データ)として記憶する。なお、どのような種類の作動データを収集するかは予めデータ収集装置3に設定されている。
【0019】
作動データを記憶するに際して、データ記憶部31は、累積時間算出部30が算出した累積時間と共に作動データを記憶する。例えば、図2(a)に示すように、作動データとして、累積時間が497.95(hr:時間)〜510.07(hr)の間に、車速(1.30km/h,1.57km/h,1.76km/h・・・1.64km/h)、エンジン回転数(786rpm,768rpm・・・792rpm)、肥料散布量(0.07kg,0.02kg,・・・0.41kg)などの作動データを取得する。作動データを取得すると、データ記憶部31は、作動データと取得時の累積時間とを対応付けて記憶する。
【0020】
データ通信部32は、作動データや累積時間を、無線を用いて外部の機器へ送信するものである。例えば、データ通信部32は、近距離の無線通信(WiFi(登録商標)、Bluetoooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)など)を行うことができる通信機能を有している。
データ通信部32から外部に送信された作動データや累積時間は、データを管理するデータ管理装置4によって管理する。
【0021】
以下、データ管理装置4について詳しく説明する。
データ管理装置4は、携帯端末6と、管理サーバ7とを備えている。
携帯端末6は、データ収集装置3(データ通信部32)から作動データ及び累積時間を取得すると共に、取得した作動データ及び累積時間を管理サーバ7に送信するものである。
【0022】
この携帯端末6は、近距離や長距離の通信機能を備えたスマートフォンやタブレット等で構成され、トラクタ2を操作するオペレータやトラクタ2を所有するユーザが所有している。また、携帯端末6は、現在の時刻を正確に算出する時刻算出部34を備えている。この時刻算出部34は、例えば、測位衛星(Global Positioning System、Positioning systemなど)から正確な時刻を受信して、現在の時刻を補正しながら算出するものであっても、例えば、NTPサーバなどのサーバから時刻を受信して時刻を補正しながら算出するものであってもよい。なお、本発明において、時刻とは、「時」、「分」、「秒」だけでなく、「年」、「月」、「日」を含むものとしてもよい。時刻算出部34で算出された時刻は、作動データと、累積時間と、時刻との対応付けに用いられる。
【0023】
さて、携帯端末6がデータ通信部32から累積時間及び作動データを受信(取得)するにあたっては、まず、携帯端末6からの電波を受信できる状況下(通信エリア内)で、携帯端末6とデータ通信部32とのペアリング(認証)を行う。携帯端末6とデータ通信部
32とのペアリングは、予めソフトウェア(アプリ)を格納しておき、そのソフトウェアを起動させることによって行うことが好ましい。ペアリング(認証)が成立すると、データ記憶部31に記憶されている累積時間及び作動データを携帯端末6に送信する。
【0024】
図2(a)は、データ通信部32から携帯端末6へ送信するデータの一例を示したものである。
図2(a)に示すように、累積時間が510(hr)となるアクセスP1時に、データ通信部32と携帯端末6とのペアリングが成立すると、データ通信部32は、アクセス開始ポイントP1から過去に遡って、既にデータ記憶部31に記憶されている既存取得区間Aの累積時間及び作動データを携帯端末6に送信する。なお、過去に遡る累積時間の長さ(既存取得区間Aの長さ)は、データ通信部32に予め設定されていてもよいし、携帯端末6が過去に遡って取得する累積時間及び及び作動データを、通信時にデータ通信部32に対して指定できるようにしてもよい。
【0025】
また、データ通信部32は、過去の累積時間及び作動データ(既存取得区間Aの累積時間及び作動データ)を携帯端末6に送信するだけでなく、アクセスP1以降であって、データ収集装置3が、携帯端末6との通信中時に逐次取得している作動データを携帯端末6に送信すると共に、累積時間算出部30が算出した累積時間も送信する。
図2(a)に示すように、例えば、アクセス開始ポイントP1からアクセス終了ポイントP2までが通信中であるとすると、データ通信部32は、通信区間Bにて取得した累積時間及び作動データを、データを取得する度に、携帯端末6に送信する。
【0026】
この通信区間Bでは、携帯端末6は、トラクタ2が作動したときの作動データを累積時間と共にデータ通信部32を介して直ちに取得している。つまり、通信区間Bでは、データ収集装置3が収集した作動データと、携帯端末6が当該データ収集装置3から受信した作動データとでは、時間的なズレがなく、携帯端末6が取得した作動データは、トラクタ2が作動した時の生データと考えてよい。
【0027】
そのため、通信区間Bにおいて、トラクタ2が作動したときの作動データを、データ収集装置3を介して携帯端末6が受信している場合は、当該携帯端末6に設けられた対応付け部33によって、受信した作動データ及び累積時間と、当該携帯端末6の時刻算出部34が算出した時刻とを対応付けている。そして、携帯端末6は、対応付け部33によって対応付けた作動データ、累積時間、時刻を記憶している。即ち、対応付け部33は、携帯端末6とデータ通信部32とがデータ通信中であって、そのデータ通信中にトラクタ1の作動による作動データを受信した場合には、作動データと同時に受信した累積時間と、作動データと、時刻算出部34が算出した時刻とを対応付ける。
【0028】
このように、携帯端末6に対応付け部33を設けることにより、データ収集装置3側で時計の機能を持たなくてもトラクタ2が作業したときの時刻を把握することができる。
図2(b)は、携帯端末6が受信したデータの一例を示したものである。上述したように、作業機側(データ収集装置3)側から、図2(a)に示すような作動データ、累積時間、携帯端末6に送信すると、図2(b)に示すように、携帯端末6には、既存取得区間Aに対応する作動データ及び累積時間が記憶されると共に、通信区間Bに対応する作動データ、累積時間、時刻が記憶されることになる。
【0029】
図3は、携帯端末6とデータ通信部32との通信を繰り返し行ったときの既存取得区間A(非通信区間A)及び通信区間Bと、累積時間算出部30で算出した累積時間との関係の概念図である。図3では、説明の便宜上、既存取得区間Aの長さは、携帯端末6とデータ通信部32とが通信できなかった区間(非通信区間)と同じとする。
図3に示すように、累積時間算出部30で算出した累積時間は、時間(実時間)が経過するに応じて次第に増加すると共に、トラクタ2が作動すると逐次作動データがデータ収集装置3に蓄積されていくことになる。
【0030】
ここで、携帯端末6とデータ収集装置3とが通信している通信中である通信区間Bでの発生した作動データ及び計算された累積時間は、携帯端末6の対応付け部33によって時刻と共に対応付けるため、何時何分にトラクタ2が作動し、そのときの作動はどのようなものであって、累積時間との関係は、どのようなものであったか即座に把握することがで
きる。
【0031】
一方、非通信区間Aで発生した作動データ及び計算された累積時間は、携帯端末6は取得できるものの、時刻との対応がなされていないため、トラクタが作動したときの累積時間が分かるものの、正確な時刻との関係までは分からない。そこで、本発明では、非通信区間Aでの作動データと、累積時間と、時刻とを対応づけるデータ補正部38を備えている。データ補正部38は、管理サーバ7に備えられている。
【0032】
管理サーバ7は、農業機械(トラクタ)のデータ管理を一括して行うもので、トラクタを販売する販売会社やトラクタを製造する製造会社やトラクタの管理を行うサービス会社等に設置されている。管理サーバ7には、トラクタを所有するユーザがコンピュータ(PC、スマートフォン、タブレット等)を用いてアクセスできるようになっている。
さて、上述した携帯端末6から管理サーバ7へ作動データ、累積時間及び時刻の送信を行う際は、ユーザは、まず、携帯端末6を用いて管理サーバ7にアクセスを行い、管理サーバ7との認証を行う。そして、携帯端末6を操作して、当該携帯端末6に記憶された作動データ、累積時間、時刻を管理サーバ7に送信する。
【0033】
例えば、図2(b)に示すようなデータ(累積時間、作動データ、時刻)を携帯端末6から管理サーバ7に送信すると、図4に示すように、図2(b)と同じデータが管理サーバ7のデータベース8に記憶される。
なお、携帯端末6から管理サーバ7へのデータの送信は、農作業中に携帯端末6とデータ通信部32とのペアリングを確立しておき、農作業中或いは農作業が終了した後に行う。農作業を行うにあたっては、複数の作業者で農作業を行うことがある。そのため、1台のトラクタ1(データ通信部32)からそれぞれの作業者の携帯端末6に、作動データ、累積時間及び時刻を保存することが可能である。このような場合、複数の携帯端末6から管理サーバ7へ作動データ、累積時間及び時刻が送信される可能性があるが、管理サーバ7は、複数の携帯端末6から累積時間及び作動データを受信した場合は、累積時間及び作動データの中で最も新しい累積時間及び作動データを採用して、これらをデータベース8に記憶することとしている。
【0034】
さて、管理サーバ7は、作動データ、累積時刻、時刻が対応付けられていないデータを受信した場合、即ち、非通信区間Bであって、携帯端末6とデータ通信部32との通信中ではない非通信中に、データ収集装置3に蓄積された作業データ及び累積時間を、携帯端末6から受信した場合、データ補正部38により、作業データと累積時間と時刻との対応付けを行う。
【0035】
具体的には、データ補正部38は、非通信区間Aにおける累積時間と作業データと時刻との対応付けを行う際、非通信区間Aよりも前の累積時間及び時刻を用いて、時刻に対する累積時間の増加傾向を求める。
具体的には、まず、データ補正部38は、データベース8に記憶されているデータのうち累積時間と時刻とが正しく対応付けられている複数の時刻と、複数の累積時間とを抽出する。例えば、データ補正部38は、データベース8において対応付け部33によって既に対応付けられている複数の通信区間Bでの累積時間と時刻とを抽出する。抽出した累積時間と時刻とを並べると、図5に示すようなものとなる。
【0036】
次に、データ補正部38は、抽出した複数の時刻と、複数の累積時間とを用いて、累積時間の増加傾向[単位累積時間当たりの時間(時刻)の増加傾向]を最小二乗法等により求める。累積時間の増加傾向は、例えば、図5の直線Lに示すものとなる。
ここで、非通信区間Aにおける累積時間と時刻との対応付けを行うに際しては、対応付けを行う非通信区間Aよりも前に受信した通信区間Bのデータも用いる。例えば、図3に示すように、右側に示した非通信区間(対象区間)Aにおける時刻の対応付けをする場合、当該対象区間の直前の通信区間(使用区間)Bのデータを用いる。
【0037】
具体的には、使用区間Bにおいて最後に受信した累積時間(第1累積時間)と、この第1累積時間に対応する時刻(第1時刻)と、対象区間Aの先頭の累積時間(第2累積時間)と、上述した単位累積時間当たりの時刻の増加傾向とに基づいて、データ補正部38は、非通信区間(対象区間)Aの時刻を推定する。
例えば、使用区間Bで最後に受信した第1累積時間が「600hr」、この第1累積時間に対応する第1時刻が「12月3日、15時30分」、第2累積時間が「601hr」、単位累積時間当たりの時刻の増加傾向として「累積時間が1hr(1時間)増加する毎の時刻(実時間)の増加が0.05日(1.2時間)」である場合、データ補正部38は、これらを用いて、第1累積時間から第2累積時間となる間に、どれだけ時間が進んだかを求める。上述した例では、第1累積時間と第2累積時間との差が1時間で、1時間当たりの時刻の増加は1.2時間であるため、通信区間Bで最初に受信した累積時間の時刻は、「12月3日、16時42分」と推測できる。
【0038】
そして、非通信区間Aで最初に受信した累積時間の時刻(第2時刻)が決定すると、データ補正部38は、この先頭の第2時刻(12月3日、16時42分)を基準に、先頭から次の累積時間に対して時刻を割り当てることを繰り返し、非通信区間Aの全ての累積時間と時刻とを対応付ける。
このように、データ補正部38によって累積時間と時刻とを対応付けた後は、各累積時間に対応する時刻をデータベース8内に書き込み、これにより、累積時間と時刻と作動データとの3つを対応付ける。なお、データ補正部38によって時刻と対応付けられた作業データ及び累積時間は更新せずに、上述したデータベース8とは他のデータベース8に記憶して残すようにしてもよい。
【0039】
以上、本発明によれば、トラクタ2を用いて圃場内で農作業を行う際、トラクタを操作するオペレータ(ユーザ)は、携帯端末6とデータ収集装置3との通信を行いながらトラクタ2を動作させることによって、圃場内で作業したときの様々な作動データ(農作業データ)を累積時間と共に取得することができる。例えば、圃場内で肥料の散布を行った場合、肥料の散布量と、そのときのトラクタ2の累積時間と携帯端末6やデータ管理装置4に取り込むことができ、取り込んだ作動データ及び累積時間を見ることにより、どのタイミングでどれだけの量の肥料を散布したかを把握することができる。
【0040】
特に、携帯端末6とデータ収集装置3とが通信している間は、作動データ及び累積時間だけでなく、作動データ及び累積時間に対応して、作動データ取得時(作業発生時)の時刻も得ることができるため、ユーザがデータベース8にアクセスして作動データ、累積時間及び時刻を取得することにより、肥料を散布した日時を把握することができる。
携帯端末6とデータ収集装置3との通信を行わない状態でトラクタ2で散布などの農作業を行ったとしても、非通信区間Aでのデータを後日、携帯端末6等を用いて取得して管理サーバ7に送信することにより、管理サーバ7側で非通信区間Aでの作動データ及び累積時間と、時刻との対応付けを行うことができる。即ち、携帯端末6とデータ収集装置3との通信を行わない状態で農作業を行ったとしても農作業の内容と、その日時を把握することが可能となる。
【0041】
なお、上述した実施形態では、管理サーバ7及び携帯端末6によってデータ管理装置4を構成しているが、携帯端末6のみでデータ管理装置4を構成してもよいし、管理サーバ7のみでデータ管理装置4を構成してもよい。
管理サーバ7のみをデータ管理装置4とする場合は、データ通信部32から携帯端末6を介さずに直接管理サーバ7にアクセスできるようにすると共に、管理サーバ7に時刻を設定する時刻算出部34を設ける。そのうえで、データ通信部32から管理サーバ7に作動データ及び累積時間を送信し、管理サーバ7のデータ補正部38によって、作動データと累積時間と時刻との対応付けを行えばよい。一方、携帯端末6をデータ管理装置4にする場合は、上述した管理サーバ7が有するデータ補正部38を携帯端末6に設けて、携帯端末6とデータ通信部32とが通信していない間に、データ収集装置3に蓄積された作動データ及び累積時間を、通信時に取得し、管理サーバ7と同様に、データ補正部38によって補正してもよい。
【0042】
さて、トラクタ2の長期保管やメンテナンスを行うためにバッテリーが長い間取り外される場合がある。この場合、累積時間算出部30への電力供給が停止されるため、当該累積時間算出部30は作動が停止し、累積時間のカウントアップできず、累積時間は電力供給停止時(バッテリー取り外し時の時間)でストップしまう。このように、電力供給停止
後、再び電力供給を再開する際に、携帯端末6とデータ収集装置3(データ通信部32)との通信を行わず、しばらくしてから、携帯端末6とデータ収集装置3との通信を行うようにした場合、電力供給再開後の累積時間と時刻との対応付けが難しくなる。そのため、データ管理装置4は、電力供給停止時には、後述するような累積時間と時刻との対応付けを行う停電補正部39を備えている。
【0043】
以下、バッテリーの取り外した場合での累積時間と時刻との対応付けについて説明する。
バッテリーの取り外し等を検出するために、トラクタ側(データ収集装置3)には、電力の供給停止を検知する停止検出部40を備えている。この停止検出部40は、バッテリーからの電力供給状態を監視して電力供給状態の変化からバッテリーの取り外しを検知するものである。なお、例えば、データ収集装置に格納されたプログラム(ソフトウェア)等によって電力再供給による再起動を検知することによりバッテリーの取り外しを検知してもよい。
【0044】
この停止検出部40によってバッテリーの取り外しが検出されると、データ収集装置3は、電源の供給が停止したことを示す停止フラグを保持する。停止フラグは、電力供給再開後であって、最初に携帯端末6とデータ通信部32との通信が行われた場合に、データ通信部32によって携帯端末6に送信される。携帯端末6は、データ収集装置3(データ通信部32)から受信した停止フラグを、作動データ及び累積時間と共に管理サーバ7に送信する。これにより、管理サーバ7側でも、バッテリーが取り外されたことを把握することができる。
【0045】
図6は、バッテリーが外された場合の累積時間の増加状態と時刻(実時間)との関係を示したものである。
図6に示すように、ポイントP3でバッテリーが取り外され、ポイントP4でバッテリーが再装着されたとすると、ポイントP3〜P4の間では、累積時間が増加することはない。ポイントP4でバッテリーが装着されて電力供給が再開された場合は、ポイントP4から以降は累積時間が増加し始めることになる。ここで、電力供給の再開と同時(ポイントP4)に、携帯端末6とデータ収集装置3との通信を行った場合は、時刻(実時間)を取得できるため、電力供給再開時の累積時間と時刻(実時間)とは対応させることができる。
【0046】
しかしながら、電力供給再開時ではなく、相当な時間が経過したポイントP5で初めて、携帯端末6とデータ収集装置3との通信を行った場合は、ポイントP4〜ポイントP5の非通信区間Aでは、累積時間に対して正確な時刻を対応付けられた状態ではない。
そこで、停電補正部39によって、電力供給再開後であって非通信区間Aにおける累積時間と、時刻(実時間)との対応付けを行う。この停電補正部39は、管理サーバ7に備えられている。以降、電力供給再開後の非通信区間Aのことを、「対象区間A」という。
【0047】
電力供給再開後の対象区間Aにおける累積時間と時刻との対応付けを補正するにあたっては、電力供給停止後に、携帯端末6とデータ通信部32とのアクセスが行われて、正しく時刻と累積時間とが対応付けらているデータを使用する。例えば、図6に示すように、ポイントP4〜ポイントP5の対象区間Aにおける累積時間と時刻との対応付けを行うには、まず、対象区間Aの次の通信区間B(後述する後使用区間)のデータ(正しく時刻と累積時間とが対応付けられているデータ)が必要となる。加えて、電力停止前における時刻に対する累積時間の増加傾向が必要となる。
【0048】
詳しく説明すると、まず、管理サーバ7は、停止フラグがデータベース8に入力されている場合は、バッテリーが取り外されたと認識し、停電補正部39を起動する。そして、停電補正部39の起動後、当該停電補正部39は、電力停止前における時刻に対する累積時間の増加傾向求める。例えば、図6に示すように、停電補正部39は、電力供給停止前(ポイントP3よりも前)であって、累積時間と時刻とが正しく対応付けられている通信区間B(前使用区間B)における累積時間及び時刻を抽出し、この前使用区間Bの累積時間及び時刻を用いて、図5に示したのと同様に、単位累積時間当たりの時刻の増加傾向[単位累積時間当たりの時刻の増加傾向]を最小二乗法等により求める。
【0049】
次に、停電補正部39は、求めた単位累積時間当たりの時刻の増加傾向と、電力供給再開後の通信区間B(後使用区間)における時刻(第3時刻)と、その第3時刻に対応する累積時間(第3累積時間)とを用いて、対象区間Aにおける累積時間と時刻との対応付けを補正する。
例えば、図6に示すように、後通信区間Bで最初に受信した第3累積時間が「900hr」、この第3累積時間に対応する第3時刻が「12月19日、18時30分」、非通信区間Aで最後に受信した累積時間(第4累積時間)が「899hr」、単位累積時間(1時間)当たりの時刻の増加傾向が0.05日(1.2時間)」である場合、停電補正部39は、第4累積時間を受信した時刻は、「12月19日、17時18分」であると推測する。
【0050】
そして、対象区間Aで最後に受信した累積時間に対応する時刻(12月19日、17時18分)の対応付けが終了すると、停電補正部39は、対象区間Aにおいて第4累積時間よりも前の累積時間に対する時刻の対応付けを行う。この対応付けも、第4累積時間と同様に行う。
対象区間Aの全ての累積時間と時刻とを対応付けが終了すると、停電補正部39は、電力供給停止後であって電力供給が再開された後の対象区間Aにおける累積時間と時刻との対応付けを終了する。なお、累積時間と作動データとの対応付けはそのままであるため、停電補正部39による累積時間と時刻との対応付けに伴って、作動データも対応付けられることになる。
【0051】
以上、本発明の作業機のデータ管理システムでは、停電補正部39を備えているため、トラクタ2のバッテリーを長期間取り外した後であっても、非通信区間Aでの作動データと累積時間と時刻とを対応させることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。作業機のデータ管理システムを、バックホーの建設機械から取得した作動データを管理するものに適用してもよい。
【0052】
なお、上述した実施形態では、電力停止前の時刻に対する累積時間の増加傾向に基づいて、電力供給再開後の非通信区間での累積時間と作動データと時刻との対応付けを行っていたが、これに代え、電力停止後の時刻に対する累積時間の増加傾向に基づいて、非通信区間における累積時間と作動データと時刻との対応付けを行ってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 作業機のデータ管理システム
2 農業機械(トラクタ)
3 データ収集装置
4 データ管理装置
5 制御装置
6 携帯端末
7 管理サーバ
8 データベース
10 走行車両
11 エンジン
12 変速装置
13 3点リンク機構
14 作業装置
30 累積時間算出部
31 データ記憶部
32 データ通信部
33 対応付け部
34 時刻算出部
38 データ補正部
39 停電補正部
40 停止検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7