(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013256
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】開口の開閉構造
(51)【国際特許分類】
B62D 55/10 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
B62D55/10 Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-70124(P2013-70124)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-193643(P2014-193643A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100061745
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】坂本 昭太
【審査官】
川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−224520(JP,A)
【文献】
実開平06−033786(JP,U)
【文献】
実開平05−094077(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 41/00 − 67/00
H05K 5/00 − 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部に形成された開口を開閉自在に閉鎖する開閉カバーを備え、この開閉カバーの下部を、前記壁部に、取付ボルトによって、該取付ボルト回りに回転可能に取付固定し、前記開閉カバーの横幅方向の一側に、該開閉カバーの閉鎖位置で前記開口の開口縁部の一端側に接当して開閉カバーの取付ボルト締付け方向の回転を規制するストッパを設け、このストッパは、取付ボルトを緩めると共に開閉カバーを取付ボルト緩み方向に回転させて該開閉カバーを開けた際に、前記開口の開口縁部の他端側に接当して開閉カバーの取付ボルト緩み方向の回転を規制することを特徴とする開口の開閉構造。
【請求項2】
前記開閉カバーの閉鎖位置において、前記取付ボルトを緩めた際に開閉カバーが自重で開き側に回転するように、開閉カバーの横幅方向の中心線から前記ストッパを設けた側に偏倚した位置に前記取付ボルトを設けたことを特徴とする請求項1に記載の開口の開閉構造。
【請求項3】
前記開口は、グリスシリンダにグリスを注入するために前記壁部に形成されたグリス注入用の開口であり、前記ストッパは、開閉カバーを開けた際に、グリスシリンダにグリスを注入可能な位置で、前記開口の開口縁部の前記他端側に接当することを特徴とする請求項1又は2に記載の開口の開閉構造。
【請求項4】
トラックフレームの前後一方に設けた駆動輪と、トラックフレームの前後他方に設けたアイドラと、これら駆動輪及びアイドラに巻き掛けられたクローラベルトと、トラックフレーム内に設けられていてクローラベルトのテンション調整をするグリスシリンダと、このグリスシリンダにグリスを注入するためにトラックフレームの側壁に形成されたグリス注入用の開口を開閉自在に閉鎖する開閉カバーとを備えたクローラ式走行装置に採用される開口の開閉構造であって、
前記開閉カバーの下部を、トラックフレームに取付ボルトによって、該取付ボルト回りに回転可能に取付固定し、開閉カバーに、該開閉カバーの閉鎖位置で前記グリス注入用の開口の開口縁部の一端側に接当して開閉カバーの取付ボルト締付け方向の回転を規制するストッパを設け、このストッパは、取付ボルトを緩めると共に開閉カバーを取付ボルト緩
み方向に回転させて該開閉カバーを開けた際に、グリスシリンダにグリスを注入可能な位置で、グリス注入用の開口の開口縁部の他端側に接当して開閉カバーの取付ボルト緩み方向の回転を規制することを特徴とする開口の開閉構造。
【請求項5】
壁部に形成された開口を開閉自在に閉鎖する開閉カバーを備え、この開閉カバーの下部を、前記壁部に、取付ボルトによって、該取付ボルト回りに回転可能に取付固定し、前記開閉カバーの横幅方向の一側に、該開閉カバーの閉鎖位置で前記開口の開口縁部の一端側に接当して開閉カバーの取付ボルト締付け方向の回転を規制するストッパを設け、このストッパは、取付ボルトを緩めた状態で且つ開閉カバーが取付ボルト回りに取付ボルト緩み方向に開いた状態で、前記開口の開口縁部の他端側に接当して開閉カバーの取付ボルト緩み方向の回転を規制することを特徴とする開口の開閉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口の開閉構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クローラ式走行装置として、特許文献1に開示されたものがある。
このクローラ式走行装置は、トラックフレームの前後一方に設けられた駆動輪と、トラックフレームの前後他方に設けられたアイドラと、これら駆動輪及びアイドラに巻き掛けられたクローラベルトとを有する。
また、このクローラ式走行装置は、クローラベルトのテンション調整をするためにグリスシリンダ式の緊張装置を備えており、この緊張装置はトラックフレーム内に設けられている。
【0003】
トラックフレームの側壁には、緊張装置のグリスシリンダにグリスを注入するグリスガンを挿入するためにグリス注入用開口が形成されている。このグリス注入用開口は、不要時には開閉カバーによって開閉自在に閉鎖される。この開閉カバーは、グリス注入用開口の内側に入ってトラックフレームの側壁の内面に接当する係止片と、トラックフレームにボルトで取付固定される取付片とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−188179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のクローラ式走行装置にあっては、グリスシリンダにグリスを注入する際に、開閉カバーを取り外す必要があり、開閉カバーを着脱するのが面倒であった。
そこで、本発明は、前記問題点に鑑み、開閉カバーを取り外さずに開口を開けることができる開口の開閉構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
開口の開閉構造は、壁部に形成された開口を開閉自在に閉鎖する開閉カバーを備え、この開閉カバーの下部を、前記壁部に、取付ボルトによって、該取付ボルト回りに回転可能に取付固定し、前記開閉カバーの横幅方向の一側に、該開閉カバーの閉鎖位置で前記開口の開口縁部
の一端側に接当して開閉カバーの取付ボルト締付け方向の回転を規制するストッパを設け、このストッパは、取付ボルトを緩めると共に開閉カバーを取付ボルト緩み方
向に回転させて該開閉カバーを開けた際に、前記開口の開口縁部
の他端側に接当して開閉カバーの取付ボルト緩み方向の回転を規制することを特徴とする。
【0007】
また、前記開閉カバーの閉鎖位置において、前記取付ボルトを緩めた際に開閉カバーが自重で開き側に回転するように、開閉カバーの横幅方向の中心線から前記ストッパを設けた側に偏倚した位置に前記取付ボルトを設けたことを特徴とする。
また、前記開口は、グリスシリンダにグリスを注入するために前記壁部に形成されたグリス注入用の開口であり、前記ストッパは、開閉カバーを開けた際に、グリスシリンダにグリスを注入可能な位置で、前記開口の開口縁部
の前記他端側に接当することを特徴とする。
【0008】
また、トラックフレームの前後一方に設けた駆動輪と、トラックフレームの前後他方に設けたアイドラと、これら駆動輪及びアイドラに巻き掛けられたクローラベルトと、トラックフレーム内に設けられていてクローラベルトのテンション調整をするグリスシリンダと、このグリスシリンダにグリスを注入するためにトラックフレームの側壁に形成されたグリス注入用の開口を開閉自在に閉鎖する開閉カバーとを備えたクローラ式走行装置に採用される開口の開閉構造であって、
前記開閉カバーの下部を、トラックフレームに取付ボルトによって、該取付ボルト回りに回転可能に取付固定し、開閉カバーに、該開閉カバーの閉鎖位置で前記グリス注入用の開口の開口縁部
の一端側に接当して開閉カバーの取付ボルト締付け方向の回転を規制するストッパを設け、このストッパは、取付ボルトを緩めると共に開閉カバーを取付ボルト緩み方向に回転させて該開閉カバーを開けた際に、グリスシリンダにグリスを注入可能な位置で、グリス注入用の開口の開口縁部
の他端側に接当して開閉カバーの取付ボルト緩み方向の回転を規制することを特徴とする。
【0009】
また、壁部に形成された開口を開閉自在に閉鎖する開閉カバーを備え、この開閉カバーの下部を、前記壁部に、取付ボルトによって、該取付ボルト回りに回転可能に取付固定し、前記開閉カバーの横幅方向の一側に、該開閉カバーの閉鎖位置で前記開口の開口縁部の一端側に接当して開閉カバーの取付ボルト締付け方向の回転を規制するストッパを設け、このストッパは、取付ボルトを緩めた状態で且つ開閉カバーが取付ボルト回りに取付ボルト緩み方向に開いた状態で、前記開口の開口縁部の他端側に接当して開閉カバーの取付ボルト緩み方向の回転を規制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
開閉カバーを取り付けている取付ボルトを緩めると、開閉カバーは取付ボルトを中心に回転して開口を開くので、開閉カバーを取り外すことなく、取付ボルトを緩めるだけで開口を開けることができる。
また、取付ボルトを緩めると共に開閉カバーを取付ボルト緩み方向に回転させて該開閉カバーを開けた際に、ストッパが開口の開口縁部
の他端側に接当して開閉カバーの回転を規制し、開口を開閉カバーで閉鎖した状態でストッパが開口縁部
の一端側に接当して開閉カバーの取付ボルト締付け方向の回転を規制する。これによって、開閉カバーの開閉を容易に行える。
【0011】
また、開閉カバーを取り付けている取付ボルトを緩めると、開閉カバーは自重で開き側に回転するので、至便である。
また、開閉カバーを取り外すことなく、取付ボルトを緩めるだけでグリスの注入が可能となる。
また、グリスシリンダにグリスを注入する際に、グリス注入用開口を閉鎖する開閉カバーを取り付けている取付ボルトを緩めると、開閉カバーは取付ボルトを中心に回転してグリス注入用開口を開くので、開閉カバーを取り外すことなく、取付ボルトを緩めるだけでグリスの注入が可能となる。
【0012】
また、取付ボルトを緩めると共に開閉カバーを取付ボルト緩み方向に回転させて該開閉カバーを開けた際に、グリスシリンダにグリスを注入可能な位置でストッパがグリス注入用開口の開口縁部
の他端側に接当して開閉カバーの回転を規制し、グリス注入用開口を開
閉カバーで閉鎖した状態でストッパが開口縁部
の一端側に接当して開閉カバーの取付ボルト締付け方向の回転を規制する。これによって、開閉カバーの開閉を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図5】一実施形態に係る開閉カバーの側面図を示し、(a)はグリス注入用開口の閉鎖状態を示し、(b)はグリス注入用開口の開口状態を示す。
【
図6】他の実施形態に係る開閉カバーの側面図を示し、(a)はグリス注入用開口の閉鎖状態を示し、(b)はグリス注入用開口の開口状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1において、符号1は作業機として例示するバックホーである。
このバックホー1は、下部の走行装置2と、この走行装置2に上下方向の軸心回りに旋回自在に支持された旋回台3とを有する。
旋回台3にはキャビン4及びエンジン5が搭載されている。キャビン4内には運転席6が設けられている。
【0015】
旋回台3の前部には作業装置が設けられている。この作業装置は、ブーム8と、図示省略のアーム及びバケットを有し、ブーム8は基部がスイングブラケット9に枢支され、ブームシリンダ10によって上下に揺動駆動される。スイングブラケット9は旋回台3の前部の支持ブラケット11に上下方向の軸心回りに左右揺動自在に支持されている。
走行装置2は、左右両側にトラックフレーム12を備えており、左右各トラックフレーム12にはクローラ式走行装置13が装着されている。
【0016】
クローラ式走行装置13は、駆動輪14と、アイドラ15と、複数の転輪16と、これら駆動輪14,アイドラ15,転輪16にわたって巻き掛けられたクローラベルト17とを有する。
駆動輪14、アイドラ15及び複数の転輪16は左右方向の軸心回りに回転自在に支持され、駆動輪14を回転駆動することにより、クローラベルト17が周方向に循環回走される。
【0017】
駆動輪14はトラックフレーム12の後端側に設けられ、アイドラ15はトラックフレーム12の前端側に設けられ、複数の転輪16は駆動輪14とアイドラ15との間に前後方向に間隔をおいて設けられている。前記アイドラ15は、
図4に示すように、支持枠18に回転自在に取り付けられ、この支持枠18はトラックフレーム12の前部に前後方向移動自在に支持されている。なお、駆動輪14をトラックフレーム12の前端側に設け、アイドラ15をトラックフレーム12の後端側に設けてもよい。
【0018】
図3に示すように、トラックフレーム12は左右方向内外一対の側壁(壁部)19A,19Bと、左右の側壁19A,19Bの上端同士を連結する上壁20とを有する。
図4に示すように、トラックフレーム12内にはクローラベルト17にテンションを付与する緊張装置21が設けられている。この緊張装置21は、スプリング22とグリスシリンダ23とを有する。スプリング22は、アイドラ15がクローラベルト17を押圧する方向に前記支持枠18を付勢する。グリスシリンダ23はスプリング22を介して支持枠18(アイドラ15)を押圧する。
【0019】
前記グリスシリンダ23は、シリンダ本体24とピストン25とを有し、シリンダ本体24にグリスを注入することによりピストン25が突出する。ピストン25を突出させることによりアイドラ15がクローラベルト17に押し付けられ、これによって、クローラベルト17に張りが与えられる。
図3に示すように、シリンダ本体24の後端側には、グリスを注入するためのグリスニップル26が設けられている。また、トラックフレーム12の左右方向外方側の側壁19A(これを外側壁という)には、グリスを注入するためのグリス注入用の開口27が形成
されている。このグリス注入用開口27はグリスニップル26に対応する位置に形成されていると共に、グリスガンのノズル34の先端側が挿入可能とされている。
【0020】
前記グリス注入用開口27は、不要時には、開閉カバー28で開閉自在に閉鎖される。
この開閉カバー28は、板材によって形成され、本実施形態では、横幅方向(本実施形態では前後方向に一致)の寸法に対して上下方向の寸法が長い縦長の側面視矩形状に形成されている。この開閉カバー28は、
図2及び
図3に示すように、その下部が、トラックフレーム12の外側壁19Aに一本の取付ボルト29によって取付固定されている。この開閉カバー28は、平板状のカバー本体30と、ストッパ31とを有する。
【0021】
図5に示すように、開閉カバー28のカバー本体30は、グリス注入用開口27を塞ぐ上部の開口閉鎖部30aと、トラックフレーム12の外側壁19Aにボルト固定される下部の取付部30bとを有し、トラックフレーム12の外側壁19Aの外側面に重ね合わされている。
取付ボルト29は、開閉カバー28の横幅方向の中心線32上において、トラックフレーム12の外側壁19Aを貫通すると共に該外側壁19Aの内側面に溶接固定されたナット33に螺合している。したがって、取付ボルト29を締め付けることにより開閉カバー28が固定され、取付ボルト29を緩めることにより開閉カバー28が取付ボルト29回りに(取付ボルト29の軸心回りに)回転する。開閉カバー28を取付ボルト29回りに(左右方向の軸心回りに)回転させることにより、開閉カバー28がグリス注入用開口27を開閉する。これにより、開閉カバー28を取り外すことなく、グリス注入用開口27を開閉することができ、取付ボルト29を緩めるだけでグリスの注入が可能である。
【0022】
図5(a)は開閉カバー28がグリス注入用開口27を閉鎖した状態を示している。この開閉カバー28の閉鎖位置において、取付ボルト29の上方側における取付ボルト締付け方向A側のカバー本体30の縁部(開閉カバー28の横幅方向の一側)にストッパ31が設けられている。このストッパ31は、開閉カバー28を形成する板材の一部を左右方向内方に折り曲げることにより形成されており、グリス注入用開口27内に挿入状とされている。
【0023】
したがって、開閉カバー28の閉鎖位置では、ストッパ31がグリス注入用開口27の開口縁部に接当することにより、開閉カバー28の取付ボルト締付け方向Aの回転が規制され、開閉カバー28が取付ボルト29と連れ回りするのを防止している。
図5(b)は開閉カバー28がグリス注入用開口27を開口(開放)した状態を示している。
【0024】
この開閉カバー28の開口位置では、ストッパ31がグリス注入用開口27の開口縁部に接当することにより、開閉カバー28の取付ボルト緩み方向Bの回転が規制され、この状態で、グリスニップル26に対してグリスが注入可能となる。
図6は開閉カバー28の他の実施形態を示している。
この実施形態では、開閉カバー28でグリス注入用開口27を閉鎖した状態において、取付ボルト29を緩めた際に開閉カバー28が自重で開き側に回転するように、取付ボルト29が開閉カバー28の横幅方向の中心線32からストッパ31形成側に偏倚した位置に設けられている。
【0025】
この実施形態では、開閉カバー28が閉塞位置に位置する状態で、取付ボルト29を緩めると開閉カバー28は自重により開き側に回転するので至便である。
なお、前記ストッパ31はカバー本体30を構成する板材の一部を折り曲げることにより形成されることに限定されることはなく、ストッパ31を開閉カバー28のカバー本体30とは別部材からなる板材等で形成して、カバー本体30に溶接又はネジ等によって固定してもよい。
【0026】
また、前記開口27を開閉カバー28によって開閉する開閉構造は、本実施形態のようにクローラ式走行装置に採用されることに限定されることはなく、開口と該開口を開閉する開閉カバーを備えたところであれば採用可能である。
【符号の説明】
【0027】
12 トラックフレーム
14 駆動輪
15 アイドラ
16 転輪
23 グリスシリンダ
19A 側壁
27 開口(グリス注入用の開口)
28 開閉カバー
29 取付ボルト
31 ストッパ
32 グリス注入用開口の横幅方向の中心線
A 取付ボルト締付け方向
B 取付ボルト緩み方向