特許第6013259号(P6013259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6013259水素化処理触媒用担体、その製造方法、水素化処理触媒、およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013259
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】水素化処理触媒用担体、その製造方法、水素化処理触媒、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 32/00 20060101AFI20161011BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20161011BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20161011BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20161011BHJP
   B01J 37/20 20060101ALI20161011BHJP
   B01J 27/19 20060101ALI20161011BHJP
   C01B 35/10 20060101ALI20161011BHJP
   C01G 23/00 20060101ALI20161011BHJP
   C01B 33/00 20060101ALI20161011BHJP
   C10G 45/08 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   B01J32/00
   B01J35/10 301B
   B01J35/10 301J
   B01J37/02 101Z
   B01J37/04 102
   B01J37/20
   B01J27/19 M
   C01B35/10 Z
   C01G23/00 C
   C01B33/00
   C10G45/08 A
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-77930(P2013-77930)
(22)【出願日】2013年4月3日
(65)【公開番号】特開2014-200729(P2014-200729A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】松元 雄介
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−119453(JP,A)
【文献】 特開昭58−108292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ系複合酸化物からなる水素化処理触媒用担体であって、
透過型フーリエ変換赤外吸収スペクトル測定装置(FT−IR)により測定した酸性OH基に起因する当該担体単位表面積当たりの吸光度(OHAS)が0.04〜0.1m−2の範囲にあり、
前記FT−IRにより測定した塩基性OH基に起因する当該担体単位表面積当たりの吸光度(OHBS)が0.01〜0.02m−2の範囲にある
ことを特徴とする水素化処理触媒用担体。
(但し、前記酸性OH基に起因する吸収スペクトルの極大ピーク位置の波数は3670〜3695cm−1の範囲にあり、前記塩基性OH基に起因する吸収スペクトルの極大ピーク位置の波数は3760〜3780cm−1の範囲にある。)
【請求項2】
前記塩基性OH基の吸光度(OHBS)と前記酸性OH基の前記吸光度(OHAS)との比(OHBS)/(OHAS)が0.2〜0.5の範囲にあり、
当該担体の比表面積が250〜500m/gの範囲にある
ことを特徴とする請求項1に記載の水素化処理触媒用担体。
【請求項3】
前記酸性OH基の当該担体単位質量当たりの吸光度(OHAW)が10〜30g−1の範囲にあり、
前記塩基性OH基の当該担体単位質量当たりの吸光度(OHBW)が4〜6.5g−1の範囲にあり、
前記塩基性OH基の前記吸光度(OHBW)と前記酸性OH基の前記吸光度(OHAW)との比(OHBW)/(OHAW)が0.2〜0.5の範囲にある
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水素化処理触媒用担体。
【請求項4】
前記アルミナ系複合酸化物が、アルミナとアルミナ以外の第1酸化物とアルミナ以外の第2酸化物とからなり、
前記第1酸化物がSi、Ti、およびZrから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、
前記第2酸化物がBおよびPから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物である
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の水素化処理触媒用担体。
【請求項5】
前記第1酸化物の含有量が前記アルミナ系複合酸化物基準で1〜10質量%の範囲にあり、
前記第2酸化物の含有量が前記アルミナ系複合酸化物基準で1〜5質量%の範囲にあり、
前記アルミナの含有量が前記アルミナ系複合酸化物基準で5〜98質量%の範囲にある
ことを特徴とする請求項4に記載の水素化処理触媒用担体。
【請求項6】
当該担体の細孔容積(PV)が0.5〜1.5mL/gの範囲にあり、
当該担体の平均細孔径(D)が60〜150Åの範囲にある
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の水素化処理触媒用担体。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の水素化処理触媒用担体に、
周期表第VIA族から選ばれる少なくとも1種の元素と、周期表第VIII族から選ばれる少なくとも1種の元素とを担持した
ことを特徴とする水素化処理触媒。
【請求項8】
前記周期表第VIA族から選ばれる元素がCr、Mo、およびWのいずれかであり、
前記周期表第VIII族から選ばれる元素がCoまたはNiのいずれかである
ことを特徴とする請求項7に記載の水素化処理触媒。
【請求項9】
前記周期表第VIA族元素の担持量(酸化物換算)が、前記担体(酸化物換算)100質量部に対して10〜60質量部の範囲にあり、
前記周期表第VIII族元素の担持量(酸化物換算)が、前記担体(酸化物換算)100質量部に対して1〜20質量部の範囲にある
ことを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれかに記載の水素化処理触媒。
【請求項10】
請求項4または請求項5に記載の水素化処理触媒用担体の製造方法であって、
アルミン酸アルカリ水溶液(A液)と、アルミニウム塩水溶液と前記第1酸化物用金属塩水溶液との混合水溶液(B液)とを混合して複合酸化物ヒドロゲル(水和物)スラリーを調製するスラリー調製工程Aと、
前記工程において、あるいは前記工程後に前記第2酸化物用金属塩を添加する第2酸化物用金属塩添加工程とを実施する
ことを特徴とする水素化処理触媒用担体の製造方法。
【請求項11】
請求項4または請求項5に記載の水素化処理触媒用担体の製造方法であって、
アルミン酸アルカリ水溶液(A液)と、アルミニウム塩水溶液と前記第2酸化物用金属塩水溶液との混合水溶液(C液)とを混合して複合酸化物ヒドロゲル(水和物)スラリーを調製するスラリー調製工程Bと、
前記工程において、あるいは前記工程後に前記第1酸化物用金属塩を添加する第1酸化物用金属塩添加工程とを実施する
ことを特徴とする水素化処理触媒用担体の製造方法。
【請求項12】
前記スラリー調製工程Aまたは前記スラリー調製工程Bにおけるアルミン酸アルカリ水溶液(A液)がカルボン酸塩を含む
ことを特徴とする請求項10または請求項11に記載の水素化処理触媒用担体の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の水素化処理触媒用担体を、
周期表第VIA族から選ばれる少なくとも1種の元素を含んだ水溶液と、周期表第VIII族から選ばれる少なくとも1種の元素を含んだ水溶液に含浸し、次いで乾燥する
ことを特徴とする水素化処理触媒の製造方法。
【請求項14】
前記乾燥する際の温度が105〜300℃の範囲にある
ことを特徴とする請求項13に記載の水素化処理触媒の製造方法。
【請求項15】
前記乾燥に次いで、当該触媒をさらに硫化する
ことを特徴とする請求項13または請求項14に記載の水素化処理触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化処理触媒用担体、その製造方法、水素化処理触媒、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭化水素油の水素化処理触媒として、アルミナ担体に周期表第VIA族および周期表第VIII族から選ばれた活性金属成分を担持した触媒が広く使用されている。また、前記の触媒成分の他に第3成分としてシリカやリン酸化物などを含む水素化処理触媒についても種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、炭化水素転化プロセスにおいて使用される触媒として、5〜50質量%のAl、10〜90重量%のSiO、および5〜40質量%のPを含む燐、珪素、およびアルミニウム酸化物のアモルファス固溶体で構成される触媒複合体が記載されている。また、アルミナ・ヒドロゾル、シリカ・ヒドロゾルおよび燐化合物の混合物を作成し、粒子を作成するためにその混合物をゲル化し、燐、珪素およびアルミニウム酸化物をつくるためにそれらの粒子をか焼するステップで構成される前記触媒複合体の調製方法も開示されており、いずれもゾルの形で混合した後、ゲル化している。
【0004】
また、特許文献2には、第VIII族非貴金属の酸化物2.5〜6質量%、第VIB族金属の酸化物13〜24質量%、シリカ0〜2質量%、およびリン酸化物0〜2質量%を担持した、170〜220m/gの全表面積、0.6〜0.8cm/gの全細孔容積、および全細孔容積の約33%未満が直径約100Å未満の一次ミクロポアとして存在し、全細孔容積の少なくとも約41%が直径約100〜200Åの二次ミクロポアとして存在し、全細孔容積の約16〜26%が直径≧200Åのメソポアとして存在するような細孔径分布を有する多孔質アルミナ担体の触媒の存在下に炭化水素原料を供給して水素化処理する方法が記載されている。
【0005】
上記した、従来の水素化処理触媒は実装置で工業的に使用する場合、工業触媒としての触媒性状、活性などの点で必ずしも満足のいくものではなく、改善が望まれていた。
そこで、本願出願人は特許文献3において、シリカヒドロゲルが懸濁した、リン酸イオンを含有するアルミニウム塩水溶液と中和剤とをpHが6.5〜8.5になるように混合して水和物を得、該水和物を洗浄した後、成形、乾燥、焼成することによって、有効細孔容積割合が高く、高い比表面積を有し、強度に優れるとともに、脱硫活性および分解活性が向上した触媒が得られることを開示している。
【0006】
また、本願出願人は特許文献4において、アルミナと、シリカ、チタニア、リン酸化物、ボリア、ジルコニア、セリアおよびマグネシアから選ばれる1種以上の酸化物とからなる複合酸化物担体と、周期表第VIA族金属の硫化物と、周期表第VIII金属の硫化物と炭素質とからなる水素化脱硫触媒を開示している。このとき、グルコン酸ナトリウムを含むアルミン酸ナトリウム水溶液と硫酸アルミニウム水溶液とを混合して熟成し、温水洗浄した後、シリカゾルを添加し、ついで、熟成、混練等してシリカ−アルミナ担体を調製している。この担体を用いると、アンモニア吸着熱の高い酸量の割合が低下し、過分解による液収率の低下、活性の低下が抑制された触媒が得られることを開示している。
【0007】
また、特許文献5には、シリカ−チタニア−アルミナ担体に周期表第VIA族および周期表第VIII族から選ばれる少なくとも1種の金属を担持した水素化脱硫触媒において、アナターゼ型およびルチル型チタニアのピーク面積をγ−アルミナのピーク面積の1/4以下とすることによってチタニア量を増やしても有効な細孔容積が減少しない高性能な触媒が開示されている。
【0008】
特許文献6には、リン酸化物を含む無機酸化物担体上に、周期表第8族金属から選ばれる少なくとも1種を含む化合物、モリブデン化合物、リン化合物および有機酸を含有する溶液を用い、モリブデン、第8族金属、リン酸化物を酸化物換算で所定量含み、有機酸由来の炭素を所定量含有する水素化処理触媒の製造方法が開示されている。また、このとき、リン酸化物を含む無機酸化物担体を、無機酸化物の原料とリン酸化物の原料とを混練法により調製することが開示されている。このとき、得られる触媒は炭化水素油中の硫黄化合物および窒素化合物を従来の触媒より低減できることも開示されている。また、このとき、無機酸化物はアルミナを主成分とし、これにゼオライト、ボリア、シリカおよびジルコニアから選ばれる少なくとも1種を含むことが推奨されている。
【0009】
特許文献7には、担体基準でチタン原子を酸化物換算で0.1〜10質量%、リン酸化物を10質量%以下含む担体上に、周期表第VIA族から選ばれる少なくとも1種、周期表第VIII族金属から選ばれる少なくとも1種、有機酸由来の炭素およびリン酸化物を所定量担持した触媒が開示されている。このとき、触媒は炭化水素油中の硫黄化合物および窒素化合物の低減効果に優れていることが報告されている。
このとき、無機酸化物担体の製造方法としては、アルミナ原量には、各種アルミナゲルを用いることができ、他の酸化物成分としては各種酸化物成分の粉末を用いることが記載されている。具体的には、アルミナゲル、チタン酸化物またはチタン化合物の溶液、リン酸化物の原料を混練することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−204512号公報
【特許文献2】特開平7−286184号公報
【特許文献3】特開2002−28491号公報
【特許文献4】特開2011−88044号公報
【特許文献5】特開2011−72928号公報
【特許文献6】特開2009−101362号公報
【特許文献7】特開2013−27847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一方、環境問題等から水素化処理生成油中の硫黄濃度をできるだけ下げることが求められている。これに対して、上記した各種の水素化処理触媒においても脱硫活性(水素化活性)は未だ十分ではない。
【0012】
本発明は、脱硫活性(水素化活性)に優れる水素化処理触媒が得られる水素化処理触媒用担体、その製造方法、水素化処理触媒、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、アルミナを主成分とし、これに少なくともアルミナ以外の第1の酸化物成分、第2の酸化物成分とを含む担体の調製において、アルミナと第1の酸化物成分を含む複合酸化物ゲルを調製し、その後、第2の酸化物成分を添加して調製した担体は、担持した活性金属成分が微粒子状で高分散した触媒となり、反応前に予備硫化した際の硫化度が向上し、脱硫活性に優れた触媒が得られることを見出して本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下に示すような水素化処理触媒用担体、その製造方法、水素化処理触媒、およびその製造方法を提供するものである。
(1)アルミナ系複合酸化物からなる水素化処理触媒用担体であって、透過型フーリエ変換赤外吸収スペクトル測定装置(FT−IR)により測定した酸性OH基に起因する当該担体単位表面積当たりの吸光度(OHAS)が0.04〜0.1m−2の範囲にあり、前記FT−IRにより測定した塩基性OH基に起因する当該担体単位表面積当たりの吸光度(OHBS)が0.01〜0.02m−2の範囲にあることを特徴とする水素化処理触媒用担体。
(但し、前記酸性OH基に起因する吸収スペクトルの極大ピーク位置の波数は3670〜3695cm−1の範囲にあり、前記塩基性OH基に起因する吸収スペクトルの極大ピーク位置の波数は3760〜3780cm−1の範囲にある。)
【0014】
(2)前記塩基性OH基の吸光度(OHBS)と前記酸性OH基の前記吸光度(OHAS)との比(OHBS)/(OHAS)が0.2〜0.5の範囲にあり、当該担体の比表面積が250〜500m/gの範囲にあることを特徴とする上述の(1)に記載の水素化処理触媒用担体。
(3)前記酸性OH基の当該担体単位質量当たりの吸光度(OHAW)が10〜30g−1の範囲にあり、前記塩基性OH基の当該担体単位質量当たりの吸光度(OHBW)が4〜6.5g−1の範囲にあり、前記塩基性OH基の前記吸光度(OHBW)と前記酸性OH基の前記吸光度(OHAW)との比(OHBW)/(OHAW)が0.2〜0.5の範囲にあることを特徴とする上述の(1)または(2)に記載の水素化処理触媒用担体。
(4)前記アルミナ系複合酸化物が、アルミナとアルミナ以外の第1酸化物とアルミナ以外の第2酸化物とからなり、前記第1酸化物がSi、Ti、およびZrから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、前記第2酸化物がBおよびPから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の水素化処理触媒用担体。
(5)前記第1酸化物の含有量が前記アルミナ系複合酸化物基準で1〜10質量%の範囲にあり、前記第2酸化物の含有量が前記アルミナ系複合酸化物基準で1〜5質量%の範囲にあり、前記アルミナの含有量が前記アルミナ系複合酸化物基準で85〜98質量%の範囲にあることを特徴とする請求項4に記載の水素化処理触媒用担体。
(6)当該担体の細孔容積(PV)が0.5〜1.5mL/gの範囲にあり、当該担体の平均細孔径(D)が60〜150Åの範囲にあることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の水素化処理触媒用担体。
【0015】
(7)上述の(1)〜(6)のいずれかに記載の水素化処理触媒用担体に、周期表第VIA族から選ばれる少なくとも1種の元素と、周期表第VIII族から選ばれる少なくとも1種の元素とを担持したことを特徴とする水素化処理触媒。
(8)前記周期表第VIA族から選ばれる元素がCr、Mo、およびWのいずれかであり、前記周期表第VIII族から選ばれる元素がCoまたはNiのいずれかであることを特徴とする請求項7に記載の水素化処理触媒。
(9)前記周期表第VIA族元素の担持量(酸化物換算)が、前記担体(酸化物換算)100質量部に対して10〜60質量部の範囲にあり、前記周期表第VIII族元素の担持量(酸化物換算)が、前記担体(酸化物換算)100質量部に対して1〜20質量部の範囲にあることを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれかに記載の水素化処理触媒。
(10)上述の(4)または(5)に記載の水素化処理触媒用担体の製造方法であって、アルミン酸アルカリ水溶液(A液)と、アルミニウム塩水溶液と前記第1酸化物用金属塩水溶液との混合水溶液(B液)とを混合して複合酸化物ヒドロゲル(水和物)スラリーを調製するスラリー調製工程Aと、前記工程において、あるいは前記工程後に前記第2酸化物用金属塩を添加する第2酸化物用金属塩添加工程とを実施することを特徴とする水素化処理触媒用担体の製造方法。
(11)上述の(4)または(5)に記載の水素化処理触媒用担体の製造方法であって、アルミン酸アルカリ水溶液(A液)と、アルミニウム塩水溶液と前記第2酸化物用金属塩水溶液との混合水溶液(C液)とを混合して複合酸化物ヒドロゲル(水和物)スラリーを調製するスラリー調製工程Bと、前記工程において、あるいは前記工程後に前記第1酸化物用金属塩を添加する第1酸化物用金属塩添加工程とを実施することを特徴とする水素化処理触媒用担体の製造方法。
(12)前記スラリー調製工程Aまたは前記スラリー調製工程Bにおけるアルミン酸アルカリ水溶液(A液)がカルボン酸塩を含むことを特徴とする上述の(10)または(11)に記載の水素化処理触媒用担体の製造方法。
(13)上述の(1)〜(6)のいずれかに記載の水素化処理触媒用担体を、周期表第VIA族から選ばれる少なくとも1種の元素を含んだ水溶液と、周期表第VIII族から選ばれる少なくとも1種の元素を含んだ水溶液に含浸し、次いで乾燥することを特徴とする水素化処理触媒の製造方法。
(14)前記乾燥する際の温度が105〜300℃の範囲にあることを特徴とする上述の(13)に記載の水素化処理触媒の製造方法。
(15)前記乾燥に次いで、当該触媒をさらに硫化することを特徴とする上述の(13)または(14)に記載の水素化処理触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の水素化処理触媒用担体によれば、担持した活性金属成分が微粒子状で高分散した触媒となるので、反応前に予備硫化した際の硫化度が向上し、脱硫活性に優れた水素化処理触媒を提供できる。また、本発明の水素化処理触媒用担体の製造方法によれば、上述した当該担体を簡便に製造できる。さらに、本発明の水素化処理触媒の製造方法によれば、当該触媒を簡便に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。まず、本発明に係る水素化処理触媒用担体について説明する。
[水素化処理触媒用担体]
本発明に係る水素化処理触媒用担体(以下、単に「本担体」ともいう。)は、アルミナ系複合酸化物からなり、透過型フーリエ変換赤外吸収スペクトル測定装置(FT−IR)により測定した酸性OH基に起因する本担体単位表面積当たりの吸光度(OHAS)と、前記FT−IRにより測定した塩基性OH基に起因する本担体単位表面積当たりの吸光度(OHBS)が所定の範囲にあることが必要である。
具体的には、OHASが0.04〜0.1m−2の範囲にあり、OHBSが0.01〜0.02m−2の範囲にあることが必要であり、OHASとOHBSがこの範囲にあることで、触媒担体表面における活性金属の分散性が向上し、脱硫性能が大幅に向上する。
ここで、前記酸性OH基に起因する吸収スペクトルの極大ピーク位置の波数は3670〜3695cm−1の範囲にあり、前記塩基性OH基に起因する吸収スペクトルの極大ピーク位置の波数は3760〜3780cm−1の範囲にある。なお、上記したFT−IRによる測定法に関しては後述する。
【0018】
また、OHBSとOHASとの比(OHBS)/(OHAS)が0.2〜0.5の範囲にあり、本担体の比表面積が250〜500m/gの範囲にあると、本担体表面における活性金属の分散性がより向上するので好ましい。
さらに、前記酸性OH基の本担体単位質量当たりの吸光度(OHAW)が10〜30g−1の範囲にあり、前記塩基性OH基の本担体単位質量当たりの吸光度(OHBW)が4〜6.5g−1の範囲にあり、OHBWとOHAWとの比(OHBW)/(OHAW)が0.2〜0.5の範囲にあると、本担体表面における活性金属の分散性がさらに向上するので好ましい。
【0019】
前記したアルミナ系複合酸化物は、アルミナとアルミナ以外の第1酸化物とアルミナ以外の第2酸化物とからなることが好ましい。具体的には、前記第1酸化物がSi、Ti、およびZrから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であり、前記第2酸化物がBおよびPから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物であることが、後に担持する金属成分を高分散状態で担持することができ、活性が高く、長寿命の触媒が得られるので好ましい。
さらに、この第1酸化物の含有量が、前記したアルミナ系複合酸化物基準で1〜10質量%の範囲にあると、後に担持する金属成分をより高分散状態で担持でき、より活性が高く、長寿命の触媒が得られるので好ましく、同様に前記第2酸化物の含有量も、前記アルミナ系複合酸化物基準で1〜10質量%の範囲にあると、後に担持する金属成分を高分散状態で担持することができ、より活性が高く、長寿命の触媒が得られるので好ましい。また、前記アルミナの含有量は、前記アルミナ系複合酸化物基準で80〜98質量%の範囲にあることが好ましい。
【0020】
本担体の細孔容積(PV)は、0.5〜1.5mL/gの範囲にあることが好ましい。細孔容積が0.5mL/g以上であると、金属成分をより高分散状態で担持でき、さらに水素化触媒として用いたときに炭化水素油がより拡散しやすくなる。また、細孔容積が1.5mL/g以下であると、担体および触媒(成型体)の強度もより優れたものになる。
本担体の平均細孔径(D)は、触媒の比表面積および炭化水素油の拡散の観点より、60〜150Åの範囲にあることが好ましい。平均細孔径が60Å以上であると、水素化触媒としたときに炭化水素油がより拡散しやすくなる。また、平均細孔径が150Å以下であると、担体および触媒(成型体)の強度もより優れたものになる。
細孔容積と平均細孔径の測定法は後述する。
【0021】
〔水素化処理触媒用担体の製造方法〕
本担体の第1の製造方法では、アルミン酸アルカリ水溶液(A液)と、アルミニウム塩水溶液と上述の第1酸化物用金属塩水溶液との混合水溶液(B液)とを混合して複合酸化物ヒドロゲル(水和物)スラリーを調製するスラリー調製工程Aと、前記工程において、あるいは前記工程後に上述の第2酸化物用金属塩を添加する第2酸化物用金属塩添加工程とを実施する。例えば、以下のような各工程を実施することにより本担体を簡便に製造することができる。第1の製造方法の詳細は後述の実施例にて説明する。
【0022】
(a)アルミン酸アルカリ水溶液(A液)と、アルミニウム塩水溶液と第1酸化物用金属塩水溶液との混合水溶液(B液)とを混合して複合酸化物ヒドロゲル(水和物)スラリーを調製する工程(スラリー調製工程A)
(b)熟成する工程(第1熟成工程)
(c)洗浄する工程
(d)熟成する工程(第2熟成工程)
(e)混練・濃縮する工程(第1混練工程)
(f)混練する工程(第2混練工程)
(g)成型する工程
(h)加熱処理(乾燥および焼成)する工程
(i)第2酸化物用金属塩(例えばオキソ酸塩)水溶液を添加する工程
【0023】
上述の各工程のうち、工程(a)と工程(i)以外は必ずしも全てが必要ではない。目的に応じて適宜選択すればよい。また、上記工程(i)は、工程(a)〜(e)の少なくともいずれかの工程において実施してもよいし、あるいは工程(a)〜(e)の少なくともいずれかの工程の後に実施してもよい。
【0024】
本担体の第2の製造方法では、アルミン酸アルカリ水溶液(A液)と、アルミニウム塩水溶液と第2酸化物用金属塩水溶液との混合水溶液(C液)とを混合して複合酸化物ヒドロゲル(水和物)スラリーを調製するスラリー調製工程Bと、前記工程において、あるいは前記工程後に前記第1酸化物用金属塩を添加する第1酸化物用金属塩添加工程とを実施する。例えば、以下のような各工程を実施することにより本担体を簡便に製造することができる。第2の製造方法の詳細は後述の実施例にて説明する。
【0025】
(j)アルミン酸アルカリ水溶液(A液)と、アルミニウム塩水溶液と第2酸化物用金属塩(オキソ酸塩)水溶液との混合水溶液(C液)とを混合して複合酸化物ヒドロゲル(水和物)スラリーを調製する工程(スラリー調製工程B)。
(k)熟成する工程(第1熟成工程)
(l)洗浄する工程
(m)熟成する工程(第2熟成工程)
(n)混練・濃縮する工程(第1混練工程)
(o)混練する工程(第2混練工程)
(p)成型する工程
(q)加熱処理(乾燥および焼成)する工程
(r)第1酸化物用金属塩水溶液を添加する工程
【0026】
上述の各工程のうち、工程(j)と工程(r)以外は必ずしも全てが必要ではない。目的に応じて適宜選択すればよい。また、上記工程(r)は、工程(j)〜(n)の少なくともいずれかの工程において実施してもよいし、あるいは工程(j)〜(n)の少なくともいずれかの工程の後に実施してもよい。
ここで、上記した第1の製造方法においても第2の製造方法においても、スラリー調製工程Aやスラリー調製工程Bにおけるアルミン酸アルカリ水溶液(A液)がカルボン酸塩を含むと、アルミナゲルの粒子成長を制御でき、比表面積の大きな担体(触媒)を調製できる点で好ましい。
【0027】
〔水素化処理触媒およびその製造方法〕
上述した水素化処理触媒用担体に、周期表第VIA族から選ばれる少なくとも1種の元素と、周期表第VIII族から選ばれる少なくとも1種の元素とを担持することで本発明の水素化処理触媒(以下、「本触媒」ともいう。)を得ることができる。
また、前記した周期表第VIA族から選ばれる元素としては、Cr、Mo、およびWのいずれかであることが水素化脱硫活性の観点より好ましく、前記周期表第VIII族から選ばれる元素はCoまたはNiのいずれかであることが水素化脱硫活性の観点より好ましい。
本触媒では、周期表第VIA族元素の担持量(酸化物換算)が、本担体(酸化物換算)100質量部に対して10〜60質量部の範囲にあることが脱硫活性および触媒寿命の観点より好ましく、周期表第VIII族元素の担持量(酸化物換算)が、本担体(酸化物換算)100質量部に対して1〜20質量部の範囲にあることが脱硫活性および触媒寿命の観点より好ましい。
【0028】
本触媒は、本担体を、周期表第VIA族から選ばれる少なくとも1種の元素を含んだ水溶液と、周期表第VIII族から選ばれる少なくとも1種の元素を含んだ水溶液に含浸し、次いで乾燥することで簡便に得られる。また、乾燥する際の温度が105〜300℃の範囲であることが好ましい。この乾燥に次いで、本触媒をさらに硫黄含有ガス等により硫化処理することが脱硫効果向上の観点より好ましい。
【実施例】
【0029】
以下に実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、触媒担体における酸性OH基の吸光度、塩基性OH基の吸光度、細孔容積および平均細孔径については、以下のようにして測定した。
【0030】
[細孔容積および平均細孔径]
水銀圧入法(水銀の接触角:150度、表面張力:480dyn/cm)によって測定した。細孔容積は細孔直径40Å以上の細孔の容積とし、平均細孔径は細孔容積の50%に相当する細孔直径とした。
【0031】
[酸性OH基の吸光度、塩基性OH基の吸光度]
透過型フーリエ変換赤外分光計(日本分光(株)製:FT-IR/6100)にて、以下のようにして酸性OH基の極大ピーク波数、その波数における吸光度、塩基性OH基の極大ピーク波数、その波数における吸光度を測定した。
(測定法)
試料20mgを成型容器(内径20mmφ)に充填して4ton/cm(39227N/cm)で加圧圧縮し、薄い円盤状に成型した。この成型体を、真空度が1.0×10−3Pa以下の条件下、500℃で2時間保持した後、室温に冷却して吸光度を測定した。
具体的には、TGS検出器にて、分解能4cm―1、積算回数を200回とし、波数範囲3000〜4000cm―1でベースライン補正し、その後、比表面積で補正した。吸光度は、単位表面積当りおよび単位質量当りに換算した。
単位表面積当たりの吸光度(m―2)=吸光度/成型体質量/比表面積
単位質量当たりの吸光度(g−1)=吸光度/成型体質量
なお、以下の実施例・比較例いずれにおいても酸性OH基に起因する吸収スペクトルの極大ピーク位置の波数は3670〜3695cm−1の範囲にあり、塩基性OH基に起因する吸収スペクトルの極大ピーク位置の波数は3760〜3780cm−1の範囲にあった。
【0032】
[実施例1]
〔水素化処理触媒用担体(1)の調製〕(第1の製造方法)
(工程(a))
100Lスチームジャケット付きタンクに、濃度がAl換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液8.78kgを入れ、イオン交換水で希釈して29.83kgとした。次に、この溶液に濃度26質量%のグルコン酸ナトリウム水溶液109.6gを加え、撹拌しながら60℃に加温して濃度がAl換算で5質量%アルミン酸ナトリウム水溶液を調製した。
別途、濃度がAl換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液13.13kgをイオン交換水23.64kgで希釈した硫酸アルミニウム水溶液と、TiO濃度換算で33質量%の硫酸チタン272.7gを1.53kgのイオン交換水に溶解したTiO換算で5質量%の硫酸チタン水溶液1.80kgとを混合し、60℃に加温した硫酸アルミニウム・硫酸チタン混合水溶液を調製した。
次に、前記濃度5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液を撹拌しながら、これに硫酸アルミニウム・硫酸チタン混合水溶液を一定速度、10分間で添加して、Al・TiOとしての濃度が3.8質量%のアルミナ・チタニア複合酸化物水和物スラリーを調製した。このとき、スラリーのpHは7.2であった。
【0033】
(工程(b))
アルミナ・チタニア複合酸化物水和物スラリーを、撹拌しながら60℃で60分間熟成した。
(工程(c))
熟成したアルミナ・チタニア複合酸化物水和物スラリーを脱水した後、濃度0.3質量%のアンモニア水溶液1.5Lで洗浄した。
(工程(d))
洗浄したケーキ状スラリーに、濃度がAl換算で10質量%になるようにイオン交換水で希釈してスラリー化した後、濃度15質量%のアンモニア水を添加してpH10.5に調製し、撹拌しながら95℃で10時間熟成した。
(工程(e))
熟成したスラリーをスチームジャケット付き双腕式ニーダーで練りながら加温し、固形分の濃度が33質量%となるまで濃縮した。
(工程(f)および工程(i))
加熱を停止し、ホウ酸107.1gを添加して更に30分間捏和した。
(工程(g))
得られた捏和物をスクリュウ式押出機で径が1.8mmの円柱状に成型した。
(工程(h))
成型物を110℃で12時間乾燥した後、長さが3mmになるようにカッティングし、550℃で3時間焼成してチタニア−ボリア−アルミナからなる水素化処理触媒用担体(1)を調製した。
【0034】
上述の工程により得られた水素化処理触媒用担体(1)について、チタニア(TiO)、ボリア(B)およびアルミナ(Al)の各含有量を分析した。また、細孔容積、平均細孔径を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0035】
〔水素化処理触媒(1)の調製〕
1Lビーカーにイオン交換水450gを入れ、三酸化モリブデン355.6g、炭酸コバルト135.8gを加え、ついで、リン酸72.9g、クエン酸133.3gを加え、95℃で3時間撹拌して溶解させ含浸液(1)を調製した。
水素化処理触媒用担体(1)500gをビーカーに採り、この担体の全細孔容積(担体重量x細孔容積x係数)に相当する含浸液604.3gを徐々に滴下して吸収させた後、120℃で2時間乾燥して水素化処理触媒(1)を調製した。
得られた水素化処理触媒(1)について、組成分析を行い、担体100質量部あたりの金属酸化物としての含有量を測定した。
【0036】
また、以下の方法で一酸化窒素(NO)吸着量を測定した。結果を表1に示す。
〔一酸化窒素(NO)吸着量(測定法)〕
水素化処理触媒(1)を60メッシュ以下に粉砕し、約0.2gを石英製の測定セルに封入し、全自動触媒ガス吸着量装置(大倉理研(株)製:機種R6015)に充填した後、5体積%硫化水素/95体積%水素気流中、320℃で1時間硫化処理を行なった。
その後、ヘリウム気流中NOガス(NO濃度10体積%)をパルスで導入し、触媒1gあたりに吸着するNOガス量を測定した。
NO分子は、触媒上の活性金属の反応活性点に吸着するため、この吸着量により活性金属の分散性を評価することができる。
【0037】
また、以下の条件で触媒性能を評価した。結果を表1に示す。
〔触媒性能評価〕
まず、以下の条件で硫化処理を行った。
固定床流通式反応装置に水素化処理触媒(1)50ccを充填した。次に、下記原料油(直留軽油)に硫化剤としてジメチルジスルフィドを濃度が1.0質量%となるように加えた炭化水素油を用い、20℃/hrで300℃まで昇温し、300℃で20時間保持して硫化処理を行った。
LHSV :1.0hr−1
/Oil :250Nm/kL
PpH(水素分圧):4.5MPa
次に、直留軽油の水素化処理を行い、脱硫活性を測定した。反応は、固定床流通式反応装置を用いて、次の反応条件で行った。
LHSV :1.0hr−1
/Oil :250Nm/kL
PpH(水素分圧):4.5MPa
また、使用した原料油(直留軽油)の性状を以下に示す。
密度(15℃):0.8468g/cm
硫黄分 :1.13質量%
窒素分 :83質量ppm
反応温度を300〜360℃の範囲で10℃間隔で変更し、各温度での生成油中の硫黄分濃度を分析し、生成油中の硫黄分が8質量ppmとなる温度を測定した。結果を表1に示す。
【0038】
[実施例2]
〔水素化処理触媒用担体(2)の調製〕(第1の製造方法)
実施例1の(工程(a))において、濃度がTiO換算で5質量%の硫酸チタン水溶液872.4gを用い、(工程(f)および工程(i))でホウ酸51.9gを添加した以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒用担体(2)を調製した。
得られた水素化処理触媒用担体(2)について、組成分析を行うとともに、細孔容積、平均細孔径、酸性OH基の吸光度および塩基性OH基の吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
〔水素化処理触媒(2)の調製〕
実施例1において、水素化処理触媒用担体(2)を用いた以外は同様にして水素化処理触媒(2)を調製した。
得られた水素化処理触媒(2)について、組成分析を行うとともに、一酸化窒素(NO)吸着量の測定と性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0040】
[実施例3]
〔水素化処理触媒用担体(3)の調製〕(第1の製造方法)
実施例1の(工程(a))において、濃度がTiO換算で5質量%の硫酸チタン水溶液5.24kgを用い、(工程(f)および工程(i))でホウ酸231.3gを添加した以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒用担体(3)を調製した。
得られた水素化処理触媒用担体(3)について、組成分析を行うとともに、細孔容積、平均細孔径、酸性OH基の吸光度および塩基性OH基の吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0041】
〔水素化処理触媒(3)の調製〕
実施例1において、水素化処理触媒用担体(3)を用いた以外は同様にして水素化処理触媒(3)を調製した。
得られた水素化処理触媒(3)について、組成分析を行うとともに、一酸化窒素(NO)吸着量の測定と性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
[実施例4]
〔水素化処理触媒用担体(4)の調製〕(第1の製造方法)
実施例1の工程(a)において、TiO換算で5質量%の硫酸チタン水溶液1.80kgの代わりにSiO換算で濃度5質量%の珪酸ナトリウム水溶液1.80gを用い、攪拌しながらAl換算で濃度5質量%アルミン酸ナトリウム水溶液に加え、60℃に加温する以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒用担体(4)を調製した。
得られた水素化処理触媒用担体(4)について、組成分析を行うとともに、一酸化窒素(NO)吸着量の測定と性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
〔水素化処理触媒(4)の調製〕
実施例1において、水素化処理触媒用担体(4)を用いた以外は同様にして水素化処理触媒(4)を調製した。
得られた水素化処理触媒(4)について、組成分析を行うとともに、一酸化窒素(NO)吸着量の測定と性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
[実施例5]
〔水素化処理触媒用担体(5)の調製〕(第1の製造方法)
実施例1の(工程(f)および工程(i))において、ホウ酸107.1gの代わりにP換算で61質量%のリン酸1アンモニウム98.4gを用いた以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒用担体(5)を調製した。
得られた水素化処理触媒用担体(5)について、組成分析を行うとともに、細孔容積、平均細孔径、酸性OH基の吸光度および塩基性OH基の吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0045】
〔水素化処理触媒(5)の調製〕
実施例1において、水素化処理触媒用担体(5)を用いた以外は同様にして水素化処理触媒(5)を調製した。
得られた水素化処理触媒(5)について、組成分析を行うとともに、一酸化窒素(NO)吸着量の測定と性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0046】
[実施例6]
〔水素化処理触媒用担体(6)の調製〕(第1の製造方法)
実施例5の(工程(f)および工程(i))において、B換算で56質量%のホウ酸107.1gの代わりに、(工程(d)および工程(i))において、洗浄したケーキ状スラリーにP濃度として61%濃度のリン酸98.4gを加えた以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒用担体(6)を調製した。
得られた水素化処理触媒用担体(6)について、組成分析を行うとともに、細孔容積、平均細孔径、酸性OH基の吸光度および塩基性OH基の吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0047】
〔水素化処理触媒(6)の調製〕
実施例1において、水素化処理触媒用担体(6)を用いた以外は同様にして水素化処理触媒(6)を調製した。
得られた水素化処理触媒(6)について、組成分析を行うとともに、一酸化窒素(NO)吸着量の測定と性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
[実施例7]
〔水素化処理触媒用担体(7)の調製〕(第2の製造方法)
(工程(j))
100Lスチームジャケット付きタンクに、濃度がAl換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液8.78kgを入れ、イオン交換水で希釈して29.83kgとした。ついで、この溶液に濃度26質量%のグルコン酸ナトリウム水溶液109.6gを加え、撹拌しながら60℃に加温して濃度がAl換算で5質量%アルミン酸ナトリウム水溶液を調製した。
別途、濃度がAl換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液13.13kgをイオン交換水23.64kgで希釈した硫酸アルミニウム水溶液と、濃度がP換算で61質量%のリン酸147.5gとを混合し、60℃に加温した硫酸アルミニウム・リン酸混合水溶液を調製した。
次に、前記した濃度5質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液を撹拌しながら、これに硫酸アルミニウム・リン酸混合水溶液を一定速度、10分間で添加して、Al・Pとしての濃度が3.8質量%のアルミナ・リン複合酸化物水和物スラリーを調製した。このとき、スラリーのpHは7.2であった。
【0049】
(工程(k))
アルミナ・リン複合酸化物水和物スラリーを、撹拌しながら60℃で60分間熟成した。
(工程(l))
熟成したアルミナ・リン複合酸化物水和物スラリーを脱水した後、濃度0.3質量%のアンモニア水溶液1.5Lで洗浄した。
(工程(m))
洗浄したケーキ状スラリーに濃度がAl換算で10質量%になるようにイオン交換水で希釈してスラリー化した後、濃度15質量%のアンモニア水を添加してpH10.5に調製し、撹拌しながら95℃で10時間熟成した。
(工程(n))
熟成したスラリーをスチームジャケット付き双腕式ニーダーで練りながら加温し、固形分の濃度が33質量%となるまで濃縮した。
(工程(o)および工程(r))
加熱を停止し、TiO換算で2質量%のペルオキソチタン酸溶液3.0kgを添加して更に30分間捏和した。
(工程(p))
得られた捏和物をスクリュウ式押出機で径が1.8mm、長さ3mmの円柱状に成型した。
(工程(q))
成型物を110℃で12時間乾燥した後、550℃で3時間焼成してチタニア−リン酸化物−アルミナからなる水素化処理触媒用担体(7)を調製した。
【0050】
上述の工程により得られた水素化処理触媒用担体(7)について、組成分析を行うとともに、細孔容積、平均細孔径、酸性OH基の吸光度および塩基性OH基の吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
〔水素化処理触媒(7)の調製〕
実施例1において、水素化処理触媒用担体(7)を用いた以外は同様にして水素化処理触媒(7)を調製した。
得られた水素化処理触媒(7)について、組成分析を行うとともに、一酸化窒素(NO)吸着量の測定と性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0052】
[実施例8]
実施例1の水素化処理触媒用担体(1)を用い、以下のように水素化処理触媒を調製した。
〔水素化処理触媒(8)の調製〕
1Lビーカーにイオン交換水500gを入れ、三酸化モリブデン295.8g、炭酸コバルト117.4gを加え、ついで、リン酸69.3g、クエン酸105.6gを加え、95℃で3時間撹拌して溶解させ含浸液(2)を調製した。
次に、含浸液(2)を用いた以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒(8)を調製した。
得られた水素化処理触媒(8)について、組成分析を行うとともに、一酸化窒素(NO)吸着量の測定と性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0053】
[実施例9]
実施例1の水素化処理触媒用担体(1)を用い、以下のように水素化処理触媒を調製した。
〔水素化処理触媒(9)の調製〕
1Lビーカーにイオン交換水400gを入れ、三酸化モリブデン448.0g、炭酸コバルト 173.3gを加え、ついで、リン酸91.8g、クエン酸156.0gを加え、95℃で3時間撹拌して溶解して含浸液(3)を調製した。
次に、含浸液(3)を用いた以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒(9)を調製した。
得られた水素化処理触媒(9)について、組成分析を行うとともに、一酸化窒素(NO)吸着量の測定と性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
[比較例1]
〔水素化処理触媒用担体(R1)の調製〕
実施例1の(工程(f)および工程(i))でホウ酸を使用しなかった以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒用担体(R1)を調製した。
得られた水素化処理触媒用担体(R1)について、組成分析を行うとともに、細孔容積、平均細孔径、酸性OH基の吸光度および塩基性OH基の吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0055】
〔水素化処理触媒(R1)の調製〕
実施例1において、水素化処理触媒用担体(R1)を用いた以外は同様にして水素化処理触媒(R1)を調製した。
得られた水素化処理触媒(R1)について、組成分析を行うとともに、一酸化窒素(NO)吸着量の測定と性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
[比較例2]
〔水素化処理触媒用担体(R2)の調製〕
実施例1の(工程(a))で濃度がTiO換算で5質量%の硫酸チタン水溶液1.90kgを用い、(工程(f)および工程(i))でホウ酸395.8gを添加した以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒用担体(R2)を調製した。
得られた水素化処理触媒用担体(R2)について、組成分析を行うとともに、細孔容積、平均細孔径、酸性OH基の吸光度および塩基性OH基の吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0057】
〔水素化処理触媒(R2)の調製〕
実施例1において、水素化処理触媒用担体(R2)を用いた以外は同様にして水素化処理触媒(R2)を調製した。
得られた水素化処理触媒(R2)について、組成分析を行うとともに、一酸化窒素(NO)吸着量の測定と性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
[比較例3]
〔水素化処理触媒用担体(R3)の調製〕
実施例1の(工程(a))で、濃度がTiO換算で5質量%の硫酸チタン水溶液10.96kgを用い、(工程(f)および工程(i))でホウ酸456.7gを添加した以外は実施例1と同様にして水素化処理触媒用担体(R3)を調製した。
得られた水素化処理触媒用担体(R3)について、組成分析を行うとともに、細孔容積、平均細孔径、酸性OH基の吸光度および塩基性OH基の吸光度を測定した。結果を表1に示す。
〔水素化処理触媒(R3)の調製〕
実施例1において、水素化処理触媒用担体(R3)を用いた以外は同様にして水素化処理触媒(R3)を調製した。
得られた水素化処理触媒(R3)について、組成分析を行うとともに、一酸化窒素(NO)吸着量の測定と性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
[比較例4]
〔水素化処理触媒用担体(R4)の調製〕
比較例3の(工程(a))で、濃度がTiO換算で5質量%の硫酸チタン水溶液10.96kgを用いることなく、(工程(f)および工程(i))でホウ酸383.1gを添加した以外は比較例3と同様にして水素化処理触媒用担体(R4)を調製した。
得られた水素化処理触媒用担体(R4)について、組成分析を行うとともに、細孔容積、平均細孔径、酸性OH基の吸光度および塩基性OH基の吸光度を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
〔水素化処理触媒(R4)の調製〕
実施例1において、水素化処理触媒用担体(R4)を用いた以外は同様にして水素化処理触媒(R4)を調製した。
得られた水素化処理触媒(R4)について、組成分析を行うとともに、一酸化窒素(NO)吸着量の測定と性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
[評価結果]
表1の実施例1〜9からわかるように、本発明に係る水素化処理触媒用担体を用いた水素化処理触媒は、触媒担体表面における酸性OH基および塩基性OH基に起因する吸光度が所定の範囲にあるので脱硫活性(水素化活性)に優れている。一方、前記した吸光度が所定の範囲から外れている比較例1〜4では脱硫活性が劣る。