特許第6013260号(P6013260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013260
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ディストリビュータの洗浄構造
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/24 20060101AFI20161011BHJP
   B01D 21/02 20060101ALI20161011BHJP
   B01D 21/06 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   B01D21/24 D
   B01D21/02 N
   B01D21/06 A
   B01D21/24 Z
   B01D21/24 S
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-79920(P2013-79920)
(22)【出願日】2013年4月5日
(65)【公開番号】特開2014-200753(P2014-200753A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝一
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−361003(JP,A)
【文献】 特開2002−282608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00−34
C02F 1/52−56
Japio−GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈降分離を行う槽と、
前記槽内に直立状態で配設されており、被処理水が導入されるチャンバと、
前記チャンバ内の処理水を前記槽内に分配供給するディストリビュータと、を備える沈殿槽に設けられ、前記ディストリビュータを洗浄する洗浄構造であって、
前記槽内の前記処理水を洗浄液として前記ディストリビュータの内部に供給する洗浄液ラインと、
前記洗浄液ラインで供給された前記洗浄液によって前記ディストリビュータの内部を洗浄する洗浄部と、
上下方向において、前記槽内の前記処理水の水面側の第1の流出口と前記ディストリビュータとの間の位置から、前記槽内の前記処理水を取り出す取出部と、を備え
前記洗浄液ラインは、前記洗浄部と前記取出部とに接続されるディストリビュータの洗浄構造。
【請求項2】
記取出部は、前記槽の側面に設けられた第2の流出口によって構成されている、請求項1に記載のディストリビュータの洗浄構造。
【請求項3】
記取出部は、前記槽内に配置されるポンプによって構成されている、請求項1に記載のディストリビュータの洗浄構造。
【請求項4】
前記洗浄部は、前記ディストリビュータの内部に対し、前記取出部側へ向けて前記洗浄液を供給する、請求項1〜3の何れか一項に記載のディストリビュータの洗浄構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディストリビュータの洗浄構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、沈殿槽として、ディストリビュータを有するものが知られている。このような沈殿槽は、槽内に直立状態で配設されて被処理水が導入されるチャンバと、チャンバ内の被処理水を槽内に分配供給するディストリビュータと、を備えている。ここで、ディストリビュータの閉塞を防止するために、当該ディストリビュータの洗浄が行われる。例えば、特許文献1に記載のディストリビュータの洗浄構造では、ディストリビュータを洗浄する際の洗浄液として、沈殿槽によって処理された上澄液を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−282608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のディストリビュータの洗浄構造では、沈殿槽での処理が終了した処理水を貯留槽に貯めておき、当該貯留槽から取り出した処理水を洗浄液としてディストリビュータに供給している。このようなシステム構成においては、沈殿槽中の処理水と洗浄液との間の温度の差や、沈殿槽中の上昇流などによって、洗浄中における清澄性に影響が及ぼされる場合があった。従って、ディストリビュータの洗浄中における、沈殿槽の処理性能の更なる向上が求められていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、ディストリビュータの洗浄中における、沈殿槽の処理性能を向上することができるディストリビュータの洗浄構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るディストリビュータの洗浄構造は、沈降分離を行う槽と、槽内に直立状態で配設されており、被処理水が導入されるチャンバと、チャンバ内の処理水を槽内に分配供給するディストリビュータと、を備える沈殿槽に設けられ、ディストリビュータを洗浄する洗浄構造であって、槽内の処理水を洗浄液としてディストリビュータの内部に供給する洗浄液ラインと、洗浄液ラインで供給された洗浄液によってディストリビュータの内部を洗浄する洗浄部と、を備える。
【0007】
本発明に係るディストリビュータの洗浄構造は、槽内の処理水を洗浄液としてディストリビュータの内部に供給する洗浄液ラインと、洗浄液ラインで供給された洗浄液によってディストリビュータの内部を洗浄する洗浄部とを備えている。このように、槽内の処理水を洗浄液ラインで洗浄液として洗浄部へ供給することによって、槽内の処理水と洗浄液との間の温度差を低減することができるため、槽内での水流の乱れを更に低減することができる。以上によって、ディストリビュータの洗浄中における、処理性能を向上することができる。
【0008】
また、本発明に係るディストリビュータの洗浄構造において、上下方向において、槽内の処理水の水面側の第1の流出口とディストリビュータとの間の位置から、槽内の処理水を取り出す取出部をさらに備え、洗浄液ラインは、洗浄部と取出部とに接続され、取出部は、槽の側面に設けられた第2の流出口によって構成されていてよい。これによって、槽内の処理水を容易に取り出すことが可能となる。また、取出部は、上下方向において、処理水の水面側の第1の流出口とディストリビュータとの間の位置から、槽内の処理水を取り出すことによって、槽内で洗浄液による上昇流の増加を抑制することができる。
【0009】
また、本発明に係るディストリビュータの洗浄構造において、上下方向において、槽内の処理水の水面側の第1の流出口と前記ディストリビュータとの間の位置から、槽内の処理水を取り出す取出部をさらに備え、洗浄液ラインは、洗浄部と取出部とに接続され、取出部は、槽内に配置されるポンプによって構成されていてよい。これによって、ポンプの位置を変更することで容易に洗浄液の取り出し位置を変更することが可能となる。また、取出部は、上下方向において、処理水の水面側の第1の流出口とディストリビュータとの間の位置から、槽内の処理水を取り出すことによって、槽内で洗浄液による上昇流の増加を抑制することができる。
【0010】
また、本発明に係るディストリビュータの洗浄構造において、洗浄部は、ディストリビュータの内部に対し、取出部側へ向けて洗浄液を供給してよい。これによって、ディストリビュータ内に付着していた固形物を、ディストリビュータから吐き出されたときに直ちに取出部で取り出すことにより、槽内で拡散することを抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ディストリビュータの洗浄中における沈殿槽の処理性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るディストリビュータの洗浄構造を備える凝集沈殿処理システムの構成を示す概略構成図である。
図2図1に示す高速凝集沈殿槽を上方から見た概略平面図である。
図3】従来のディストリビュータの洗浄構造を備える凝集沈殿処理システムの構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るディストリビュータの洗浄構造を備える凝集沈殿処理システムを示す構成図である。まず、図1を参照して、凝集沈殿処理システムの全体的な概略構成について説明する。
【0015】
図1に示すように、凝集沈殿処理システム100は、導入された被処理水の凝集沈殿処理を行う高速凝集沈殿槽3を備えている。なお、被処理水の種類は特に限定されず、無機排水でも有機排水でもよく、活性汚泥処理などによる処理水が導入されてもよい。高速凝集沈殿槽3は、汚泥を沈降分離する槽11と、槽11内に直立状態で配設されているミキシングチャンバ12と、ミキシングチャンバ12内の処理水を槽11内に分配供給するディストリビュータ14と、を備えている。この高速凝集沈殿槽3は、具体的には、槽11内に直立状態で配設されたミキシングチャンバ12内に被処理水を導入すると共に、ミキシングチャンバ12内に被処理水中の懸濁物質を凝集させるための各種添加剤が添加され、この状態で、ミキシングチャンバ12内に配設された回転ミキサ13の回転による撹拌を行うことで、添加剤とフロックとの接触性を高めてフロックを集合させ粗大化した粗大フロックを生成すると共に、このミキシングチャンバ12内の粗大フロックを含む処理水を、水平且つ放射状に延び回転するディストリビュータ14から槽11内に均等に分散供給し、槽11内に均等な上昇流を形成することで、粗大フロックを沈降分離させて槽11内底部に濃縮汚泥層を形成する一方で、この濃縮汚泥層の上に、凝集フロック分離槽、上澄みである清澄層を順に形成する。槽11の底部には汚泥を引く抜く汚泥ラインL1が設けられる。
【0016】
ディストリビュータ14は、基本的には、センタシャフト21に同軸に固定されミキシングチャンバ12の下端部を閉じるよう配置されたカップ状の回転支持体17と、回転支持体17の内部と連通し且つ回転支持体17の外周面から径方向外方に水平に延びる複数本(図2に示す例では4本とされているが、本数は特に限定されない)の吐出管16とから構成されている。各吐出管16の外端部は閉じられている。また、各吐出管16の最下部には、その長手方向に沿って一列に複数の吐出孔18が穿設されている。なお、吐出孔18の個数や配列は特に限定されない。
【0017】
センタシャフト21は、ディストリビュータ14よりも下方に延長されており、その先端にはレーキ22が固定されている。レーキ22は、処理水中の凝集フロックが沈降して形成する汚泥を濃縮すると共に、槽底面中央の汚泥引抜き用凹部に汚泥を掻き寄せるためのものである。
【0018】
更に、槽11内の上部にはトラフ(第1の流出口)24が設けられており、このトラフ24の上縁を越えた槽11内の処理水の水面WF側の上澄液が処理済み液として、槽外部に流出されるようになっている。当該構造により、槽11内の処理水の水面WFが上昇して、トラフ24の上縁からオーバーフローした分量の処理水が、槽外部に流出する。槽外部に流出した処理水は、ラインL5を通って回収される。
【0019】
次に、図1を参照して、本実施形態に係る凝集沈殿処理システム100の高速凝集沈殿槽3に設けられるディストリビュータの洗浄構造について詳細に説明する。上述のような高速凝集沈殿槽3においては、処理水中の凝集フロック等によりディストリビュータ14の吐出管16又は吐出孔18が閉塞を起こすおそれがある。かかる閉塞を防止するために、図1に示すように、高速凝集沈殿槽3には、ディストリビュータ14を洗浄するための洗浄構造30が設けられている。なお、図1には、一の形態に係る洗浄構造30Aと、他の形態に係る洗浄構造30Bとが両方示されているが、高速凝集沈殿槽3には、洗浄構造30Aと洗浄構造30Bの少なくとも一方が設けられていればよい。すなわち、洗浄構造30Aのみが設けられていてもよく、洗浄構造30Bのみが設けられていてもよく、両方設けられていてもよい。
【0020】
洗浄構造30は、槽11内の処理水を洗浄液として取り出す取出部35と、取出部35から取り出された処理水を洗浄液としてディストリビュータ14内部に供給する洗浄ノズル(洗浄部)32と、取出部35と洗浄ノズル32とを接続する洗浄液ライン40と、を備えている。
【0021】
取出部35は、上下方向(槽11内の処理水の深さ方向)において、トラフ24と、ディストリビュータ14との間の位置に配置されており、当該位置から槽11内の処理水を取り出す。取出部35は、少なくともディストリビュータ14の吐出孔18より上方に配置されている。これによって、ディストリビュータ14の直下におけるSS(Suspended Solid)分離ゾーンにおける水流を乱すことなく、取出部35から処理水を取り出すことができる。なお、取出部35が槽11内の処理水を取り出す径方向における位置は、特に限定されず、槽11の外周側の位置であってもよく、内周側の位置であってもよい(ただし、ミキシングチャンバ12よりも外周側の位置である)。
【0022】
洗浄液ライン40は、取出部35と洗浄ノズル32とを直接接続する洗浄液の流路である。ここで、「直接接続する」とは、洗浄液ライン40の中途位置に槽(例えば、図3に示す貯留槽50のように、洗浄液を貯留しておく槽)を介することなく、取出部35と洗浄ノズル32とを接続することである。なお、洗浄液ライン40には、ポンプやバルブなどは設けられていてもよい。洗浄液ライン40が、取出部35と洗浄ノズル32とを直接接続しているため、(ポンプ33,38によって)取出部35から取り出された洗浄液は、途中で貯留されることなく、直接的に洗浄ノズル32へ供給されて、直ちにディストリビュータ14内に供給される。従って、取出部35から取り出された洗浄液は、洗浄液ライン40を通過する程度の時間で、直ちにディストリビュータ14へ供給されるため、槽11内の処理水とディストリビュータ14へ供給される洗浄液との間の温度差を小さくすることができる。
【0023】
具体的に、洗浄構造30Aにおいて、取出部35は、槽11の側面に設けられた流出口(第2の流出口)34によって構成されている。なお、流出口34は、槽11の側面の位置で処理水を取り出してもよいが、配管等を槽11内に延ばすことで、側面よりも内周側で処理水を取出してもよい。また、槽11の側面に上下方向の複数カ所に流出口34を設け、槽11の状態(例えば、濃縮汚泥層、凝集フロック分離槽、清澄層の状態や、処理水中のSSの状態など)に応じて、最適な流出口34を選択して取出し可能な構成にしてもよい。また、周方向において複数カ所に流出口34を設けてもよい。また、洗浄構造30Aにおいては、洗浄液ライン40は、流出口34と接続されて高速凝集沈殿槽3の外側を通るように延びる送液配管36と、当該送液配管36に接続されてミキシングチャンバ12内へ洗浄液を送る洗浄液配管31と、を備えて構成されている。洗浄液配管31は、洗浄ノズル32と接続されており、送液配管36及び洗浄液配管31を通過してきた洗浄液は、洗浄ノズル32から噴出する。洗浄液ライン40には中途位置(ここでは、送液配管36)にポンプ33が設けられている。洗浄液ライン40は、配管(継手を含む)、ポンプ33のみ(バルブを含んでよい)によって構成されていてよい。
【0024】
また、具体的に、洗浄構造30Bにおいて、取出部35は、槽11内に配置されるポンプ(第2の流出口)38によって構成されている。取出部35としてのポンプ38は、槽11内の処理水中に配置される。ポンプ38の槽11内の周方向における位置は特に限定されない。なお、槽11の状態(例えば、濃縮汚泥層、凝集フロック分離層、清澄層の状態や、処理水中のSSの状態など)に応じて、処理水を取り出す位置が変更可能となるように、ポンプ38を槽11内における複数カ所に設けてもよく、槽11において配置場所を可変にできる構成としてもよい。また、洗浄構造30Bにおいては、洗浄液ライン40は、ポンプ38と接続されて槽11内を通るように延びる送液配管39と、当該送液配管39に接続されてミキシングチャンバ12内へ洗浄液を送る洗浄液配管31と、を備えて構成されている。洗浄液配管31の構成は、洗浄構造30Aと同様である。洗浄液ライン40は、配管(継手を含む)のみ(バルブを含んでよい)によって構成されていてよい。
【0025】
洗浄ノズル32は、ディストリビュータ14の吐出管16が延びる方向、すなわちディストリビュータ14の径方向外側へ向かって延びており、当該方向へ洗浄液を噴出する。これによって、洗浄ノズル32から噴出した洗浄液は、吐出管16内を当該吐出管16の延在方向に向かって供給されるため、吐出管16内の略全域、及び当該吐出管16に形成される略全部の吐出孔18を洗浄できる。
【0026】
ディストリビュータ14は回転運動を行うのに対して、洗浄液配管31及び洗浄ノズル32の位置は固定されており回転を行わない。従って、図2(a)に示す状態では、洗浄ノズル32から噴出した洗浄液は、回転支持体17の側面に衝突する。ディストリビュータ14の回転運動が進行し、図2(b)に示すように、吐出管16が洗浄ノズル32と対向する位置に配置される状態となった時に、洗浄ノズル32からの洗浄液が吐出管16内に供給され、当該吐出管16内、吐出孔18に付着した固形物Sを除去することができる。
【0027】
ここで、図2に示すように、洗浄ノズル32は、ディストリビュータ14の内部に対し、取出部35側へ向けて洗浄液を供給する。このような構成により、洗浄ノズル32の洗浄液を噴出されることによって吐出孔18から槽11の処理水中へ押し出された固形物Sは、洗浄ノズル32の噴出による圧力の影響によって、洗浄ノズル32の洗浄液の噴出方向側へ流れる。ここで、通常は固形物Sは凝集フロック分離層で沈降するが、場合によって巻き上がり、清澄層(処理水)に拡散することがある。そのような場合であっても、固形物Sが流れる先には、取出部35が設けられているため、吐出孔18から吐き出された固形物Sは、処理水中に拡散する前に、直ちに取出部35によって槽11外へ取り出される。更に、洗浄ノズル32で洗浄が行われている吐出管16以外の吐出管16(図2(b)の例では、洗浄ノズル32と対向していない三つの吐出管16)付近の領域では、垂直で均一な上昇流が形成されているが、洗浄ノズル32が取出部35側へ向けて洗浄液を供給して直ちに固形物Sを取り出すことにより、他の吐出管16付近の領域での均一な上昇流を乱すことなく洗浄を行うことが可能となる。これにより、高速凝集沈殿槽3全体の安定運転が可能となる。例えば、図2に示す例では、上下方向から見たときに、洗浄ノズル32の洗浄液の噴出軸(図2(a)において一点鎖線CLで示す)上に取出部35が配置されるような構成となっている。なお、洗浄ノズル32の噴出軸CL上に取出部35が配置されておらず、当該噴出軸CLから周方向へ離間した位置に取出部35が設けられていてもよい。例えば、噴出軸CLに対して、所定の角度(例えば、互いに隣り合う吐出管16同士がなす角度)の範囲内に取出部35が設けられていてよい。
【0028】
上述のように構成された洗浄構造30によるディストリビュータ14の洗浄は1日に1〜24回程度、1回につき数分程度行う。その間、高速凝集沈殿槽3の運転は停止されず、処理水の導入、駆動部の駆動及び添加剤の注入等は続けられている。このような状態において洗浄を始める場合、まずポンプ33,38を駆動させる。これにより、槽11内の処理水は洗浄液ライン40を通り、洗浄液として洗浄ノズル32から噴出され、ディストリビュータ14の各吐出管16に順次供給される。これによって、吐出管16の内壁面や吐出孔18に付着している凝集フロック等は洗い落とされ、処理済み液と共に吐出孔18から槽11内に排出され、吐出管16ないしは吐出孔18の閉塞は未然に防止されることになる。
【0029】
次に、本実施形態に係るディストリビュータ14の洗浄構造30の作用・効果について説明する。
【0030】
ここで、図3を参照して、従来の凝集沈殿処理システムの洗浄構造200について説明する。従来の洗浄構造200では、トラフ24でオーバーフローした上澄液をラインL5を介して貯留槽50に貯留する。貯留槽50と洗浄液配管51及び洗浄ノズル54とは、ポンプ53が設けられた送液配管52で接続されている。従って、従来の洗浄構造200は、洗浄の際は、ポンプ53を運転することによって貯留槽50から洗浄液を取り出し、送液配管52及び洗浄液配管51を介して洗浄ノズル54から洗浄液をディストリビュータ14に噴出する。
【0031】
従来のこのようなシステム構成においては、槽11内の処理水を洗浄液として用いることで、槽11内の処理水と洗浄液との間の密度差や温度差を小さくすることができるため、槽11内の沈降分離ゾーンにて乱れが生じて清澄性が低下することを抑制できる。ただし、従来の洗浄構造200では、槽11から取り出した処理水を一旦貯留槽50に貯めておいてから洗浄液として使用している。従って、貯留槽50を設けるためのコストがかかってしまう。また、一旦処理水を貯留槽50に貯めておくことによって、槽11内の処理水と貯留槽50内の処理水との間で温度差が生じる。従って、当該貯留槽50内の処理水を用いることにより、槽11内の処理水と洗浄液との間で温度差が生じる場合がある。
【0032】
また、従来の洗浄構造200では、洗浄液をディストリビュータ14へ供給し、当該洗浄液が吐出孔18から槽11内へ吐き出され、当該吐き出された洗浄液はトラフ24でオーバーフローすることで貯留槽50へ取り出される構造となっている。従って、槽11内における上昇速度が、洗浄を行っていないときに比して大きくなる場合がある。例えば、通常運転時(洗浄を行っていないとき)においては、ラインL4を通ってミキシングチャンバ12に供給される被処理水量W1を「X」とし、汚泥ラインL1から抜かれる処理水量を「Z」とした場合、ディストリビュータ14の吐出孔18から吐き出されて槽11内を上昇する処理水量W2、及びトラフ24でオーバーフローする処理水量W3はいずれも「X−Z」となる。従って、ラインL5を通って貯留槽50に貯められる処理水量W4、及び処理水として貯留槽50から取り出される処理水量W6も「X−Z」となる。一方、洗浄時において、洗浄液として貯留槽50から取り出される処理水量W5を「Y」とした場合、ディストリビュータ14の吐出孔18から吐き出されて槽11内を上昇する処理水量W2は「X+Y−Z」となる。また、トラフ24でオーバーフローする処理水量W3、及びラインL5を通って貯留槽50へ向かう処理水量W4はいずれも「X+Y−Z」となる。このように、槽11内を上昇する処理水量W2は、ディストリビュータ14とトラフ24との間の全領域において「X+Y−Z」となり、通常運転時よりも多くなる。従って、洗浄時の上昇速度は、通常運転時よりも大きくなる。
【0033】
以上のように、従来の洗浄構造200においては、槽11中の処理水と洗浄液との間の温度の差や、槽11中の上昇流などによって、洗浄中における清澄性に影響が及ぼされる場合があった。
【0034】
一方、本実施形態に係るディストリビュータ14の洗浄構造30によれば、槽11内の処理水を取り出す取出部35と、取出部35から取り出された処理水を洗浄液としてディストリビュータ14の内部に供給する洗浄ノズル32とを有し、更に、取出部35と洗浄ノズル32とを接続する洗浄液ライン40とを備えている。このように、取出部35と洗浄ノズル32とを(図3のような貯留槽50を介することなく)直接洗浄液ライン40で接続することによって、槽11内の処理水と洗浄液との間の温度差を低減することができるため、槽11内での水流の乱れを更に低減することができる。また、貯留槽を設ける必要が無くなるため、コストを低減することもできる。
【0035】
また、ディストリビュータ14の下側では固形物が多い領域となっているが、取出部35はディストリビュータ14の上側の領域から処理水を取り出すことにより、凝集フロック分離層の領域での水流を乱すことなく洗浄液を取り出すことができる。また、取出部35は、上下方向において、処理水の水面WF側のトラフ24とディストリビュータ14との間の位置から、槽11内の処理水を取り出すことによって、槽11内で洗浄液により清澄層の上昇流の上昇速度の増加を抑制することができる。具体的には、洗浄時において、洗浄液として取出部35から取り出される処理水量W5を「Y」とし、汚泥ラインL1から抜かれる処理水量を「Z」とした場合、ディストリビュータ14の吐出孔18から吐き出されて槽11内を上昇する処理水量W10は「X+Y−Z」となる。しかしながら、取出部35は、トラフ24とディストリビュータ14との間に設けられているため、トラフ24よりも下側の位置で「Y」の水量を処理水として取り出す。従って、取出部35よりも上側の領域における上昇流の処理水量W11は「X−Z」となる。トラフ24でオーバーフローする処理水量W3、及びラインL5を通って回収される処理水量W4はいずれも「X−Z」となる。このように、槽11内の上昇流は、少なくとも取出部35よりも上側の領域では、通常運転時と同等の上昇速度とすることができる。このように、洗浄時における槽11内の上昇速度を抑制することができるため、洗浄中における沈殿槽3での沈降性を維持することができ、清澄性を確保することができる。以上によって、ディストリビュータ14の洗浄中における、凝集沈殿処理システム100の高速凝集沈殿槽3の処理性能を向上することができる。なお、取出部35は、低い位置に設けることで、上昇速度の低い領域を広くすることができる。一方、高い位置に設けることで、SSの少ない領域で洗浄液を回収することができる。取出部35は、例えば、上下方向におけるトラフ24とディストリビュータ14との間の中央位置付近に設けてよく、中央位置より上側に設けてよく、中央位置より下側に設けてよい。
【0036】
また、本実施形態に係るディストリビュータ14の洗浄構造30において、取出部35は、槽11の側面に設けられた流出口34によって構成されていている。これによって、槽11内の処理水を容易に取り出すことが可能となる。
【0037】
また、本実施形態に係るディストリビュータ14の洗浄構造30において、取出部35は、槽11内に配置されるポンプ38によって構成されている。これによって、ポンプ38の位置を変更することで容易に洗浄液の取り出し位置を変更できる。
【0038】
また、洗浄ノズル32は、ディストリビュータ14内において、取出部35側へ向けて洗浄液を供給している。これによって、ディストリビュータ14内に付着していた固形物を、ディストリビュータ14から吐き出されたときに直ちに取出部35で取り出すことにより、槽11内で拡散することを抑制できる。
【0039】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0040】
本発明の洗浄構造は、薬品を使用しないが、ディストリビュータを洗浄する構造を有しているあらゆる沈殿槽に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
3…高速凝集沈殿槽(沈殿槽)、14…ディストリビュータ、24…トラフ(第1の流出口)、30…洗浄構造、32…洗浄ノズル(洗浄部)、34…流出口(取出部、第2の流出口)、35…取出部、38…ポンプ(取出部)、40…洗浄液ライン。
図1
図2
図3