(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013261
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】プレート一体ガスケットの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16J 15/00 20060101AFI20161011BHJP
H01M 8/0271 20160101ALI20161011BHJP
F16J 15/12 20060101ALI20161011BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20161011BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20161011BHJP
B29K 105/20 20060101ALN20161011BHJP
【FI】
F16J15/00 B
H01M8/02 S
F16J15/12 F
B29C45/14
!H01M8/10
B29K105:20
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-82625(P2013-82625)
(22)【出願日】2013年4月11日
(65)【公開番号】特開2014-206185(P2014-206185A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】古賀 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】眞坂 武史
(72)【発明者】
【氏名】林 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】杉田 成利
(72)【発明者】
【氏名】菊池 英明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙
【審査官】
佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−268077(JP,A)
【文献】
特開2004−202806(JP,A)
【文献】
特開平11−170292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00−15/52
B29C 45/14
H01M 8/0271
B29K 105/20
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の第一分割型からなる第一金型の前記第一分割型の間にプレートを挿入すると共にその外周部を前記第一分割型に形成された外周押さえ面の間に型締めによって挟持する工程と、一方の第一分割型と前記プレートの一面側との間に型締めによって画成された第一キャビティに成形材料を充填することにより前記プレートの一面に第一シール材を一体成形する工程と、前記プレートと第一シール材の一体成形物を前記第一金型から取り出して、一対の第二分割型からなる第二金型の前記第二分割型の間に挿入すると共に前記第二分割型の間に前記プレートを型締めによって挟持する工程と、前記第二分割型と前記プレート及び前記第一シール材との間に型締めによって画成され前記プレートの他面側へ延びる第二キャビティに成形材料を充填し、前記プレートの他面に前記第一シール材から連続した第二シール材を一体成形する工程と、を備えることを特徴とするプレート一体ガスケットの製造方法。
【請求項2】
プレートと第一シール材の一体成形物を、第一金型から取り出して第二金型の一対の第二分割型間に挿入する際に表裏反転させることを特徴とする請求項1に記載のプレート一体ガスケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃料電池セルを構成するセパレータなどのプレートの外周部にガスケット本体が一体に設けられたプレート一体ガスケットを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電解質膜の両面に一対の電極層を設けた膜電極複合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)の厚さ方向両側にセパレータを積層して燃料電池セルとし、さらにこの燃料電池セルを多数積層したスタック構造となっている。そして酸化ガス(空気)が膜電極複合体のカソード側に供給され、燃料ガス(水素)が膜電極複合体のアノード側に供給され、水の電気分解の逆反応である電気化学反応、すなわち水素と酸素から水を生成する反応によって、電力を発生するものである。
【0003】
この種の燃料電池は、各燃料電池セルに、燃料ガスや酸化ガス、上述の電気化学反応により生成された水や、余剰空気等をシールするためのプレート一体ガスケットが用いられる。このプレート一体ガスケットは、
図6に示すように、例えば金属製セパレータaの外周部にゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなるシール材bを一体に設けたものであり、電気絶縁性を確保するために、前記シール材bをセパレータaの外周部の表裏両面に設けることが知られている。
【0004】
セパレータaの外周部の表裏両面にシール材bを射出成形により一体に設けるには、
図7に示すように、セパレータaを金型cにセットし、型締めによってセパレータaの外周部の表裏両側と金型cの間に画成されるキャビティdに未硬化の液状ゴム材料を充填して架橋硬化させるが、この方法では、注入口eからの液状ゴム材料の流入圧力等によって、セパレータaが曲げ変形されてしまうおそれがあり、最悪の場合は、変形したセパレータaの外周部がシール材bから露出する懸念もあり、シール材bによる電気絶縁性が損なわれるおそれがあった。
【0005】
そこで、このような射出圧力等によるセパレータaの変形を防止するためには、例えば特許文献1に記載のように、まず一面側に第一のシール材を射出成形してから、他面側に第二のシール材を射出成形するといった2色成形によるものがある。
【0006】
また、特許文献1に記載の2色成形では、セパレータの一面側と他面側において第一の及び第二のシール材が互いに不連続となっているが、絶縁被覆という観点からは、セパレータの外周部の表裏面は完全被覆されていることが望ましく、そのために例えば特許文献2に記載方法では、セパレータの外周部の表裏面に連続する一つながりのシール材を一体成形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−129396号公報
【特許文献2】特許第4398763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の技術のように、キャビティ内でセパレータを押さえるための可動部(支持体)を設けた場合、その周囲の隙間に液状成形材料が浸入することによるゴムバリが発生し、バリ除去工程などによる製品の仕上げが必要になり、コストの上昇が懸念される。
【0009】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、プレートの外周部の表裏両面に互いに連続したシール材が一体に設けられたプレート一体ガスケットの製造において、キャビティ内でプレートを押さえるための可動部によるバリの発生をなくし、コストを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係るプレート一体ガスケットの製造方法は、一対の第一分割型からなる第一金型の前記第一分割型の間にプレートを挿入すると共にその外周部を前記第一分割型に形成された外周押さえ面の間に型締めによって挟持する工程と、一方の第一分割型と前記プレートの一面側との間に型締めによって画成された第一キャビティに成形材料を充填することにより前記プレートの一面に第一シール材を一体成形する工程と、前記プレートと第一シール材の一体成形物を前記第一金型から取り出して、一対の第二分割型からなる第二金型の前記第二分割型の間に挿入すると共に前記第二分割型の間に前記プレートを型締めによって挟持する工程と、前記第二分割型と前記プレート及び前記第一シール材との間に型締めによって画成され前記プレートの他面側へ延びる第二キャビティに成形材料を充填し、前記プレートの他面に前記第一シール材から連続した第二シール材を一体成形する工程と、を備えることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2の発明に係るプレート一体ガスケットの製造方法は、請求項1に記載の製造方法において、プレートと第一シール材の一体成形物を、第一金型から取り出して第二金型の一対の第二分割型間に挿入する際に表裏反転させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るプレート一体ガスケットの製造方法によれば、第一金型の一対の第一分割型の間に挿入したプレートの外周部を、前記第一分割型に形成された外周押さえ面の間に型締めによって挟持して、成形材料の賦形圧力によるプレートの外周部の変形を防止するものであるため、キャビティ内でプレートを押さえるための可動部が存在せず、このため可動部に起因するバリの発生が防止され、コストを低減することができる。
【0013】
また、第一シール材が一体成形されたプレートを、第一金型から取り出して第二金型の一対の第二分割型間に挿入する際に表裏反転させることで、第一金型による第一キャビティへの成形材料の充填と、第二金型による第二キャビティへの成形材料の充填を同じ方向から行うことができ、しかも、プレートが第一シール材によって位置決めされると共に支持されるため、品質に優れたプレート一体ガスケットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るプレート一体ガスケットの製造方法の好ましい実施の形態により製造されるセパレータ一体ガスケットを示すもので、(A)は平面図、(B)は(A)におけるB−B断面図である。
【
図2】本発明に係るプレート一体ガスケットの製造方法の好ましい実施の形態において、セパレータを第一金型の一対の第一分割型間に挿入し型締めした状態を示す断面図である。
【
図3】本発明に係るプレート一体ガスケットの製造方法の好ましい実施の形態において、セパレータの一面に第一シール材を一体成形した状態を示す断面図である。
【
図4】本発明に係るプレート一体ガスケットの製造方法の好ましい実施の形態において、第一シール材を一体成形したセパレータを第二金型の一対の第二分割型間に挿入し型締めした状態を示す断面図である。
【
図5】本発明に係るプレート一体ガスケットの製造方法の好ましい実施の形態において、セパレータの他面に第一シール材から連続した第二シール材を一体成形した状態を示す断面図である。
【
図6】セパレータの両面にシール材が一体成形された従来の技術によるセパレータ一体ガスケットを示す断面図である。
【
図7】従来のプレート一体ガスケットの製造方法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るプレート一体ガスケットの製造方法を燃料電池のセパレータ一体ガスケットの製造に適用した好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
まず
図1は、本発明に係るプレート一体ガスケットの製造方法により製造された燃料電池用セパレータ一体ガスケット100の一例を示すもので、参照符号101は燃料電池セルを構成する金属製のセパレータ、参照符号102はセパレータ101の外周部の一面101aに一体成形された第一シール材、参照符号103は第一シール材102の外周側からセパレータ101の外周部の他面101bに廻り込むように一体成形され第一シール材102と連続した第二シール材である。セパレータ101は請求項1に記載されたプレートに相当するものである。
【0017】
第一シール材102は、電気絶縁性のゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなるものであって、セパレータ101の外周部の一面101aに接合された基部102aと、この基部102aから山形に隆起したシールリップ102bからなる。また、第二シール材103は、第一シール材102の基部102aに接合されると共にセパレータ101の外周部の他面101bへ廻り込むようにこのセパレータ101に接合された基部103aと、この基部103aから第一シール材102のシールリップ102bと反対側で山形に隆起したシールリップ103bからなる。
【0018】
上記構成を備えるセパレータ一体ガスケット100は、燃料電池セルを構成する積層部品として用いられ、第一シール材102のシールリップ102b及び第二シール材103のシールリップ103bが、適当に圧縮された状態で他の積層部品(例えばMEA)と密接されることによって、燃料電池セルに供給される燃料ガスや酸化ガス、電気化学反応により生成される水、あるいは余剰空気などに対するシール機能を奏するものである。
【0019】
図2〜
図5は、本発明に係るプレート一体ガスケットの製造方法を上記セパレータ一体ガスケット100の製造に適用した実施の形態を示すものである。
【0020】
図2及び
図3において、参照符号1は互いに上下に衝合・分離可能な第一上型11及び第一下型12からなる第一金型である。第一上型11及び第一下型12は、請求項1に記載された一対の第一分割型に相当するものである。
【0021】
第一上型11の内面(下面)には、内周押さえ面11aと、その外周側の第一キャビティ形成面11bと、この第一キャビティ形成面11bに向けて開口した注入口11cと、第一キャビティ形成面11bの外周側の外周押さえ面11dが形成され、第一下型12の内面(上面)には、第一上型11の内周押さえ面11aと対向する内周押さえ面12aと、その外周側にあって第一上型11の外周押さえ面11dと対向する外周押さえ面12bが形成されている。第一下型12の内周押さえ面12aと外周押さえ面12bは互いに連続した平面をなしている。また、第一上型11の外周押さえ面11dは、全周に連続して形成されているものであっても良いし、断続していても良い。
【0022】
そしてこの第一金型1は、型締めによって第一上型11の内周押さえ面11a及び外周押さえ面11dと、第一下型12の内周押さえ面12a及び外周押さえ面12bの間でセパレータ101を厚さ方向両側(上下)から挟持すると共に、このセパレータ101の外周部の一面101aと第一上型11の第一キャビティ形成面11bの間に、第一キャビティ13が画成されるようになっている。
【0023】
すなわち
図1に示すセパレータ一体ガスケット100を製造するには、まず
図2に示すように、第一金型1の第一上型11と第一下型12の間にセパレータ101を位置決め挿入すると共に、型締めによって、第一上型11の内周押さえ面11a及び外周押さえ面11dと、第一下型12の内周押さえ面12a及び外周押さえ面12bの間で挟持する。
【0024】
そして、第一上型11とセパレータ101との間に画成された第一キャビティ13に、未硬化の液状ゴム材料を充填し、架橋硬化させることによって、
図3に示すように、前記セパレータ101の外周部の一面101aに第一シール材102を一体成形する。このとき、セパレータ101の外周部は、第一キャビティ13の外周側で、第一上型11の外周押さえ面11dと第一下型12の外周押さえ面12bによって厚さ方向両側から挟持されているので、第一上型11に開設された注入口11cから第一キャビティ13内へ射出される液状ゴム材料の賦形圧力によってセパレータ101の外周部が曲げ変形を受けるようなことがない。
【0025】
また、セパレータ101の外周部を、第一上型11に形成された外周押さえ面11dと第一下型12に形成された外周押さえ面12b間に、型締めによって挟持するものであるため、第一金型1には第一キャビティ13内でセパレータ101の外周部を押さえるための可動部が存在せず、このため可動部に起因するバリの発生が防止され、バリ除去作業が不要となる。
【0026】
次に第一金型1を型開きして、この第一金型1からセパレータ101と第一シール材102の一体成形物を取り出し、
図4に示すように、これを表裏(上下)反転させて、第二金型2に挿入する。第二金型2は、互いに上下に衝合・分離可能な第二上型21及び第二下型22からなるものであって、第二上型21及び第二下型22は、請求項1に記載された一対の第二分割型に相当するものである。
【0027】
第二上型21の内面(下面)には、押さえ面21aと、その外周側の第二キャビティ形成面21bと、この第二キャビティ形成面21bに向けて開口した注入口21cが形成され、第二下型22の内面(上面)には、型締め状態において第二上型21の押さえ面21aと対向する押さえ面22aと、その外周側にあって前記第二キャビティ形成面21bと対称の断面形状を呈し、第一シール材102と嵌合可能な第一シール材保持面22bが形成されている。
【0028】
すなわちこの第二金型2は、型締めによって、第二上型21の押さえ面21aと第二下型22の押さえ面22aの間でセパレータ101を厚さ方向両側から挟持すると共に、このセパレータ101に先行して一体成形された第一シール材102を第二下型22の第一シール材保持面22bに嵌合した状態で、セパレータ101の外周部及び第一シール材102と、第二上型21の第二キャビティ形成面21b及び第二下型22の第一シール材保持面22bとの間に、第二キャビティ23が画成されるようになっている。
【0029】
そして、第二キャビティ23に、未硬化の液状ゴム材料を充填し、架橋硬化させることによって、
図5に示すように、前記セパレータ101の外周部の他面101bに第二シール材103を一体成形する。このとき、第二上型21の押さえ面21aと第二下型22の押さえ面22aによる挟持部から第二キャビティ23内へ張り出したセパレータ101の外周部は、第一シール材102を介して第二下型22の第一シール材保持面22bに支持されるので、第二上型21に開設された注入口21cから第二キャビティ23内へ射出される液状ゴム材料の賦形圧力によってセパレータ101の外周部が曲げ変形を受けるようなことがない。
【0030】
また、
図3に示す第一金型1から取り出したセパレータ101と第一シール材102の一体成形物を、第二金型2の第二上型21と第二下型22の間に挿入する際に表裏反転させることで、第一金型1による第一キャビティ13への液状ゴム材料の充填と、第二金型2による第二キャビティ23への液状ゴム材料の充填を同じ方向から行うことができる。
【0031】
しかも、第二金型2による第二シール材103の成形の際には、セパレータ101と第一シール材102の一体成形物が、第一シール材102と第一シール材保持面22bとの嵌合によって第二金型2内に位置決めされるので、第一シール材102と第二シール材103に互いに位置ずれを生じてしまうのを防止することができる。
【0032】
また上述のように、第二キャビティ23は、セパレータ101の外周部及び第一シール材102と、第二上型21の第二キャビティ形成面11b及び第二下型22の第一シール材保持面22bとの間に画成されるので、この第二キャビティ23で成形される第二シール材103は、第一シール材102に接合されると共にセパレータ101の外周部の他面101bへ廻り込むようにこのセパレータ101に接合されたものとなる。このため、セパレータ101の外周部をゴム状弾性材料からなる第一シール材102及び第二シール材103で完全に被覆して優れた電気絶縁性を確保することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 第一金型
11 第一上型(第一分割型)
11c,21c 注入口
11d,12b 外周押さえ面
12 第一下型(第一分割型)
13 第一キャビティ
2 第二金型
21 第二上型(第二分割型)
22 第二下型(第二分割型)
23 第二キャビティ
100 セパレータ一体ガスケット(プレート一体ガスケット)
101 セパレータ(プレート)
101a 一面
101b 他面
102 第一シール材
103 第二シール材