特許第6013263号(P6013263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6013263ソフトスタート制御回路、半導体集積回路、および絶縁型スイッチング電源
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013263
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ソフトスタート制御回路、半導体集積回路、および絶縁型スイッチング電源
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   H02M3/28 B
   H02M3/28 Q
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-91776(P2013-91776)
(22)【出願日】2013年4月24日
(65)【公開番号】特開2014-217144(P2014-217144A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊介
(72)【発明者】
【氏名】久田 茂
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−38857(JP,A)
【文献】 特開2007−244086(JP,A)
【文献】 特開2009−189108(JP,A)
【文献】 特開2004−215444(JP,A)
【文献】 特開2006−230135(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0130921(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子に接続された交流電源を整流する整流部と、前記整流部の出力と接地との間で直列接続されたハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを有するスイッチング部と、一端が前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチのスイッチ接続点に接続された一次側巻線および前記一次側巻線に磁気的に結合された二次側巻線を有するトランス部と、前記二次側巻線の両端に発生した交流電圧を整流平滑し、整流平滑された直流電圧を出力端子に出力する整流平滑部と、容量素子を有するコンデンサ部と、前記コンデンサ部の容量素子を充電するとともに、前記容量素子の充電電圧であるソフトスタート電圧が高くなるにつれて所定の上限導通時間を上限として導通時間が長くなるように前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチを相補的に導通状態または遮断状態に制御するスイッチ制御回路と、を備える絶縁型スイッチング電源に用いられ、
前記スイッチ制御回路が間欠的に動作するバーストモードにおいて前記交流電源に基づくモニタ電圧が所定の入力閾値電圧未満に低下した場合、前記一次側巻線の電圧に基づく参照電圧が所定の出力閾値電圧に達するまで、前記ソフトスタート電圧の上昇速度を、前記バーストモードにおける前記ソフトスタート電圧の上昇速度である第1の上昇速度から、前記第1の上昇速度よりも低速の第2の上昇速度に切り替えることを特徴とするソフトスタート制御回路。
【請求項2】
前記コンデンサ部は、一端が前記スイッチ制御回路のコンデンサ電圧入力端子に接続された第1の容量素子と、一端が前記第1の容量素子の他端に接続され、他端が接地された第2の容量素子とを有し、
前記ソフトスタート制御回路は、前記第1の容量素子と前記第2の容量素子の間の容量素子接続点を接地することにより、前記ソフトスタート電圧の上昇速度を前記第1の上昇速度から前記第2の上昇速度に切り替えることを特徴とする請求項1に記載のソフトスタート制御回路。
【請求項3】
前記モニタ電圧が入力されるラインセンス端子と、
前記参照電圧を分圧した分圧電圧が入力される分圧電圧入力端子と、
前記容量素子接続点に接続されるソフトスタート時間制御端子と、
前記モニタ電圧が前記入力閾値電圧未満の場合に、セット信号を出力するセット信号生成部と、
前記分圧電圧が前記出力閾値電圧に対応する電圧よりも大きい場合にリセット信号を出力するリセット信号生成部と、
前記セット信号を受信すると、前記容量素子接続点を接地に電気的に接続し、前記リセット信号を受信すると、前記容量素子接続点を接地から電気的に絶縁するソフトスタート時間制御部と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載のソフトスタート制御回路。
【請求項4】
前記モニタ電圧は、前記交流電源の電圧を整流し、前記整流した電圧を分圧して平滑化した直流電圧であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のソフトスタート制御回路。
【請求項5】
前記第2の上昇速度は、前記スイッチ制御回路が連続的に動作する通常モードにおける前記ソフトスタート電圧の上昇速度であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のソフトスタート制御回路。
【請求項6】
前記出力閾値電圧は、前記バーストモードにおける前記参照電圧の上限の電圧であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のソフトスタート制御回路。
【請求項7】
前記参照電圧は、前記一次側巻線に磁気的に結合された補助巻線の両端に発生する交流電圧を整流平滑した直流電圧であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のソフトスタート制御回路。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のソフトスタート制御回路を所定の半導体基板上に形成したことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のソフトスタート制御回路と、前記スイッチ制御回路とを所定の半導体基板上に形成したことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項10】
入力端子に接続された交流電源を整流する整流部と、
前記整流部の出力と接地との間で直列接続されたハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを有するスイッチング部と、
一端が前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチのスイッチ接続点に接続された一次側巻線と、前記一次側巻線に磁気的に結合された二次側巻線とを有するトランス部と、
前記二次側巻線の両端に発生した交流電圧を整流平滑し、整流平滑された直流電圧を出力端子に出力する整流平滑部と、
容量素子を有するコンデンサ部と、
前記コンデンサ部の容量素子を充電するとともに、前記容量素子の充電電圧であるソフトスタート電圧が高くなるにつれて所定の上限導通時間を上限として導通時間が長くなるように前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチを相補的に導通状態または遮断状態に制御するスイッチ制御回路と、
前記入力端子に接続され、前記交流電源に基づくモニタ電圧を生成するモニタ電圧生成部と、
前記スイッチ制御回路が間欠的に動作するバーストモードにおいて前記モニタ電圧が所定の入力閾値電圧未満に低下した場合、前記一次側巻線の電圧に基づく参照電圧が所定の出力閾値電圧に達するまで、前記ソフトスタート電圧の上昇速度を、前記バーストモードにおける前記ソフトスタート電圧の上昇速度である第1の上昇速度から、前記第1の上昇速度よりも低速の第2の上昇速度に切り替えるソフトスタート制御回路と、
を備えることを特徴とする絶縁型スイッチング電源。
【請求項11】
前記モニタ電圧生成部は、前記交流電源の電圧を整流し、前記整流した電圧を分圧して平滑化した直流電圧を、前記モニタ電圧として、前記ソフトスタート制御回路に出力することを特徴とする請求項10に記載の絶縁型スイッチング電源。
【請求項12】
前記トランス部は、前記一次側巻線に磁気的に結合された補助巻線をさらに有し、
前記参照電圧は、前記補助巻線の両端に発生する交流電圧を整流平滑した直流電圧であることを特徴とする請求項10または11に記載の絶縁型スイッチング電源。
【請求項13】
前記一次側巻線に直列又は並列に接続された共振用の容量素子をさらに備えることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載の絶縁型スイッチング電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトスタート制御回路、半導体集積回路、および絶縁型スイッチング電源に関する。より詳しくは、本発明は、絶縁型スイッチング電源のソフトスタート動作を制御するソフトスタート制御回路、該ソフトスタート制御回路を半導体基板上に形成した半導体集積回路、および該ソフトスタート制御回路を備える絶縁型スイッチング電源に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、交流電源から入力した電圧を整流して得られた電圧を、スイッチにより交流電圧にしてトランス部の一次側巻線に供給し、二次側巻線に発生した交流電圧を整流平滑化することで所望の直流電圧を出力する絶縁型スイッチング電源が知られている。
【0003】
この絶縁型スイッチング電源には、通常モードに加えてバーストモードを有しているものがある。通常モードではスイッチを連続的にオン/オフ制御するのに対し、バーストモードでは、スイッチをオン/オフ制御するスイッチング期間と、スイッチをオン/オフ制御しないスイッチング休止期間とを交互に繰り返す。これにより、バーストモードにおけるスイッチング電源の消費電力は低減される。
【0004】
また、絶縁型スイッチング電源の起動時における突入電流および出力電圧のオーバーシュートを軽減するために、電源起動時において出力電圧を徐々に上昇させるソフトスタートと呼ばれる起動手法が知られている。ソフトスタート動作は、例えば、定電流源により充電されるコンデンサの電圧(ソフトスタート電圧)と所定の周期を有する三角波信号とを比較して得られるPWM信号を用いて、導通時間が徐々に長くなるようにスイッチをオン/オフ制御することにより行われる。
【0005】
特許文献1には、スイッチングパルスの発振器の動作を開始させるときに、ソフトスタート時間が通常の起動時より短くなるようにした電流共振型のスイッチング電源が記載されている。特許文献2には、複数の定電流源を設け、これを順次切り替えて用いることにより、ソフトスタート全体の時間を短縮したスイッチング電源が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−189108号公報
【特許文献2】特開2007−244086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、バーストモード設定下でソフトスタートによる電源起動を行う場合は、ソフトスタート時間が通常モードの場合に比べてずっと短くなる。即ち、ソフトスタート電圧が上昇する速度が通常モードの場合に比べてずっと速くなる。このため、出力電圧を徐々に上昇させることで突入電流やオーバーシュートを軽減するというソフトスタート動作による効果が低下する。
【0008】
そのため、出力電圧が上昇する電源起動の間、出力電圧が低く、かつ負荷に流れる電流が大きい状態となり、絶縁型スイッチング電源のトランス部に過大な電流が流れてしまう。その結果、例えば、トランス鳴きや、電流共振型電源の一種であるLLC電流共振型スイッチング電源の場合には共振はずれが起こるおそれがある。
【0009】
この問題を解決するため、トランス部の一次側巻線の電圧に基づく参照電圧を用いて、ソフトスタート電圧の上昇速度を制御することが考えられる。即ち、参照電圧が所定の閾値電圧未満に低下した場合に、ソフトスタート電圧の上昇速度を通常モードにおけるソフトスタート電圧の上昇速度に切り替えて電源起動を行うことが考えられる。
【0010】
しかしながら、参照電圧は一次側巻線に磁気的に結合された補助巻線等により発生する電圧に基づくため、交流電源からの入力が途絶えた後、参照電圧が所定の閾値電圧未満に低下するのには、非常に長い時間を要する。このため、交流電源からの入力が短時間途絶えた後に回復した場合、より正確には、参照電圧が所定の閾値電圧まで低下しないうちに交流電源からの入力が回復した場合には、ソフトスタート電圧の上昇速度が切り替わらないという課題がある。
【0011】
そこで、本発明は、交流電源からの入力が途絶える時間の長短にかかわらず、バーストモードでソフトスタートによる電源起動を行う際、トランス部に過電流が流れることを確実に防止することが可能なソフトスタート制御回路、半導体集積回路、および絶縁型スイッチング電源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係るソフトスタート制御回路は、
入力端子に接続された交流電源を整流する整流部と、前記整流部の出力と接地との間で直列接続されたハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを有するスイッチング部と、一端が前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチのスイッチ接続点に接続された一次側巻線および前記一次側巻線に磁気的に結合された二次側巻線を有するトランス部と、前記二次側巻線の両端に発生した交流電圧を整流平滑し、整流平滑された直流電圧を出力端子に出力する整流平滑部と、容量素子を有するコンデンサ部と、前記コンデンサ部の容量素子を充電するとともに、前記容量素子の充電電圧であるソフトスタート電圧が高くなるにつれて所定の上限導通時間を上限として導通時間が長くなるように前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチを相補的に導通状態または遮断状態に制御するスイッチ制御回路と、を備える絶縁型スイッチング電源に用いられ、
前記スイッチ制御回路が間欠的に動作するバーストモードにおいて前記交流電源に基づくモニタ電圧が所定の入力閾値電圧未満に低下した場合、前記一次側巻線の電圧に基づく参照電圧が所定の出力閾値電圧に達するまで、前記ソフトスタート電圧の上昇速度を、前記バーストモードにおける前記ソフトスタート電圧の上昇速度である第1の上昇速度から、前記第1の上昇速度よりも低速の第2の上昇速度に切り替えることを特徴とする。
【0013】
また、前記ソフトスタート制御回路において、
前記コンデンサ部は、一端が前記スイッチ制御回路のコンデンサ電圧入力端子に接続された第1の容量素子と、一端が前記第1の容量素子の他端に接続され、他端が接地された第2の容量素子とを有し、
前記ソフトスタート制御回路は、前記第1の容量素子と前記第2の容量素子の間の容量素子接続点を接地することにより、前記ソフトスタート電圧の上昇速度を前記第1の上昇速度から前記第2の上昇速度に切り替えるようにしてもよい。
【0014】
また、前記ソフトスタート制御回路において、
前記モニタ電圧が入力されるラインセンス端子と、
前記参照電圧を分圧した分圧電圧が入力される分圧電圧入力端子と、
前記容量素子接続点に接続されるソフトスタート時間制御端子と、
前記モニタ電圧が前記入力閾値電圧未満の場合に、セット信号を出力するセット信号生成部と、
前記分圧電圧が前記出力閾値電圧に対応する電圧よりも大きい場合にリセット信号を出力するリセット信号生成部と、
前記セット信号を受信すると、前記容量素子接続点を接地に電気的に接続し、前記リセット信号を受信すると、前記容量素子接続点を接地から電気的に絶縁するソフトスタート時間制御部と、
を備えてもよい。
【0015】
また、前記ソフトスタート制御回路において、
前記モニタ電圧は、前記交流電源の電圧を整流し、前記整流した電圧を分圧して平滑化した直流電圧であるようにしてもよい。
【0016】
また、前記ソフトスタート制御回路において、
前記第2の上昇速度は、前記スイッチ制御回路が連続的に動作する通常モードにおける前記ソフトスタート電圧の上昇速度であるようにしてもよい。
【0017】
また、前記ソフトスタート制御回路において、
前記出力閾値電圧は、前記バーストモードにおける前記参照電圧の上限の電圧であるようにしてもよい。
【0018】
また、前記ソフトスタート制御回路において、
前記参照電圧は、前記一次側巻線に磁気的に結合された補助巻線の両端に発生する交流電圧を整流平滑した直流電圧であるようにしてもよい。
【0019】
本発明の一態様に係る半導体集積回路は、本発明のソフトスタート制御回路を所定の半導体基板上に形成したことを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様に係る半導体集積回路は、本発明のソフトスタート制御回路と、前記スイッチ制御回路とを所定の半導体基板上に形成したことを特徴とする。
【0021】
本発明の一態様に係る絶縁型スイッチング電源は、
入力端子に接続された交流電源を整流する整流部と、
前記整流部の出力と接地との間で直列接続されたハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチを有するスイッチング部と、
一端が前記ハイサイドスイッチと前記ローサイドスイッチのスイッチ接続点に接続された一次側巻線と、前記一次側巻線に磁気的に結合された二次側巻線とを有するトランス部と、
前記二次側巻線の両端に発生した交流電圧を整流平滑し、整流平滑された直流電圧を出力端子に出力する整流平滑部と、
容量素子を有するコンデンサ部と、
前記コンデンサ部の容量素子を充電するとともに、前記容量素子の充電電圧であるソフトスタート電圧が高くなるにつれて所定の上限導通時間を上限として導通時間が長くなるように前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチを相補的に導通状態または遮断状態に制御するスイッチ制御回路と、
前記入力端子に接続され、前記交流電源に基づくモニタ電圧を生成するモニタ電圧生成部と、
前記スイッチ制御回路が間欠的に動作するバーストモードにおいて前記モニタ電圧が所定の入力閾値電圧未満に低下した場合、前記一次側巻線の電圧に基づく参照電圧が所定の出力閾値電圧に達するまで、前記ソフトスタート電圧の上昇速度を、前記バーストモードにおける前記ソフトスタート電圧の上昇速度である第1の上昇速度から、前記第1の上昇速度よりも低速の第2の上昇速度に切り替えるソフトスタート制御回路と、
を備えることを特徴とする。
【0022】
前記絶縁型スイッチング電源において、
前記モニタ電圧生成部は、前記交流電源の電圧を整流し、前記整流した電圧を分圧して平滑化した直流電圧を、前記モニタ電圧として、前記ソフトスタート制御回路に出力するようにしてもよい。
【0023】
前記絶縁型スイッチング電源において、
前記トランス部は、前記一次側巻線に磁気的に結合された補助巻線をさらに有し、
前記参照電圧は、前記補助巻線の両端に発生する交流電圧を整流平滑した直流電圧であるようにしてもよい。
【0024】
前記絶縁型スイッチング電源において、
前記一次側巻線に直列又は並列に接続された共振用の容量素子をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、バーストモードにおいて、交流電源に基づくモニタ電圧が所定の入力閾値電圧未満に低下した場合、一次側巻線の電圧に基づく参照電圧が所定の出力閾値電圧に達するまで、ソフトスタート電圧の上昇速度を、バーストモードにおけるソフトスタート電圧の上昇速度である第1の上昇速度から、第1の上昇速度よりも低速の第2の上昇速度に切り替える。これにより、バーストモードでソフトスタートによる電源起動を行った場合においても、ソフトスタートの効果が低下せず、トランス部に過電流が流れることを防止することができる。
【0026】
また、本発明では、交流電源に基づくモニタ電圧に基づいてソフトスタート電圧の上昇速度を切り替えることから、交流電源からの入力が短時間途絶えた場合であっても、ソフトスタート電圧の上昇電圧を第1の上昇速度から第2の上昇速度に確実に切り替えることができる。
【0027】
よって、本発明によれば、交流電源からの入力が途絶える時間の長短にかかわらず、バーストモードでソフトスタートによる電源起動を行う際、トランス部に過電流が流れることを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源の概略的な構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るソフトスタート制御回路の回路図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図4】本発明の第2の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源におけるスイッチ制御回路の一部およびコンデンサ部の概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0030】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る絶縁型スイッチング電源1について説明する。図1は、本実施形態に係る絶縁型スイッチング電源1の概略的な構成図を示している。
【0031】
絶縁型スイッチング電源1は、入力端子2a,2bに交流電源(図示せず)が接続され、該交流電源から入力された交流電力を所望の直流電力に変換して、出力端子7a,7bから出力するスイッチング電源である。
【0032】
図1に示すように、絶縁型スイッチング電源1は、入力端子2a,2bと、整流部3と、スイッチング部4と、トランス部5と、整流平滑部6と、出力端子7a,7bと、コンデンサ部8と、スイッチ制御回路9と、ソフトスタート制御回路10と、整流平滑部11と、モニタ電圧生成部12とを備えている。
【0033】
なお、絶縁型スイッチング電源1は、整流部3の出力とハイサイドスイッチQ1との間に、インダクタを有する力率改善回路(PFC、図示せず)を備えていてもよい。
【0034】
また、図1に示すように、絶縁型スイッチング電源1は、一次側巻線W1と接地との間で直列接続された共振用の容量素子C4および抵抗R1をさらに備え、電流共振型のスイッチング電源として構成されてもよい。容量素子C4は、一次側巻線W1の一端とスイッチ接続点Mとの間に一次側巻線W1に直列に接続されていてもよい。あるいは、容量素子C4は、一次側巻線W1に並列接続されていてもよい。
【0035】
整流部3は、入力端子2a,2bに接続された交流電源を整流(半波整流または全波整流)する。そして、整流部3は、整流された入力整流電圧を出力する。整流部3は、例えば、ブリッジダイオードを用いて構成される。なお、整流部3は、平滑用コンデンサを備えて交流電源を整流平滑して出力するようにしてもよい。
【0036】
スイッチング部4は、図1に示すように、整流部3の出力と接地との間で直列接続されたハイサイドスイッチQ1およびローサイドスイッチQ2を有する。ハイサイドスイッチQ1およびローサイドスイッチQ2は、n型MOSFETなどの半導体スイッチング素子である。
【0037】
トランス部5は、図1に示すように、一次側巻線W1と、二次側巻線W2と、補助巻線W3とを有する。一次側巻線W1は、一端がハイサイドスイッチQ1とローサイドスイッチQ2のスイッチ接続点Mに接続されている。二次側巻線W2および補助巻線W3は、一次側巻線W1に磁気的に結合されている。
【0038】
一次側巻線W1の他端は、図1に示すように、直列接続された容量素子C4および抵抗R1を介して接地されている。なお、一次側巻線W1の他端は、容量素子C4および抵抗R1を介さずに直接接地されていてもよい。
【0039】
整流平滑部6は、二次側巻線W2の両端に発生した交流電圧を整流平滑し、整流平滑された直流電圧を出力端子7a,7bに出力する。整流平滑部6は、例えば、図1に示すように、整流素子D1,D2および平滑用の容量素子C3を有するものとして構成される。より詳しくは、整流素子D1は、二次側巻線W2の一端にアノードが接続され、出力端子7aにカソードが接続されている。整流素子D2は、二次側巻線W2の他端にアノードが接続され、出力端子7aにカソードが接続されている。容量素子C3は、一端が出力端子7aに接続され、他端が出力端子7bに接続されている。また、出力端子7bは、二次側巻線W2のセンタータップに接続されている。
【0040】
なお、整流平滑部6は、二次側巻線W2の両端に発生した交流電圧を整流平滑することが可能であれば、上記の構成に限らない。また、図1では、整流平滑部6は1つのみ記載しているが、これに限らず、二次側巻線W2を2つ以上並列的に設けて、各々の二次側巻線W2に整流平滑部6を設けてもよい。
【0041】
コンデンサ部8は、図1に示すように、直列接続された容量素子C1およびC2を有する。容量素子C1は、一端がスイッチ制御回路9のコンデンサ電圧入力端子SSに接続されている。容量素子C2は、一端が容量素子C1の他端に接続され、他端が接地されている。
【0042】
なお、コンデンサ部8の有する容量素子の数は2個に限らず、コンデンサ部8は3個以上の容量素子を有してもよい。
【0043】
スイッチ制御回路9は、スイッチを介してコンデンサ電圧入力端子SSに接続された定電流源(図示せず)を有しており、ソフトスタート動作の際、スイッチを導通状態にして、定電流源によりコンデンサ部8の容量素子C1,C2を充電する。
【0044】
また、スイッチ制御回路9は、ソフトスタート動作の際、コンデンサ電圧入力端子SSの電圧である容量素子C1,C2の充電電圧(ソフトスタート電圧)に基づいて、ハイサイドスイッチQ1およびローサイドスイッチQ2をスイッチングさせる。
【0045】
より詳しくは、スイッチ制御回路9は、ソフトスタート動作の際、ソフトスタート電圧が高くなるにつれて所定の上限導通時間(上限オン幅)を上限として導通時間(オン幅)が長くなるように、ハイサイドスイッチQ1およびローサイドスイッチQ2を相補的に導通状態または遮断状態に制御する。
【0046】
ここで、「相補的に」という文言は、いわゆるデッドタイムを挟んでスイッチングする場合も含んでいる。即ち、ハイサイドスイッチQ1およびローサイドスイッチQ2の両方が遮断状態になる時間を挟んで、一方のスイッチを導通状態にして他方のスイッチを遮断状態にすることも含む。
【0047】
なお、スイッチ制御回路9は、例えば、ICチップとして構成される。即ち、スイッチ制御回路9は、所定の半導体基板上に形成された半導体集積回路として構成することが可能である。
【0048】
ソフトスタート制御回路10は、ソフトスタート動作を制御する。ソフトスタート制御回路10の詳細な構成および動作は後述する。
【0049】
整流平滑部11は、補助巻線W3の両端に発生した交流電圧を整流平滑して、ソフトスタート制御回路10に出力する。この整流平滑部11は、例えば、図1に示すように、アノードが補助巻線W3の一端に接続され、カソードがソフトスタート制御回路10に接続された整流素子D3と、一端が整流素子D3のカソードに接続され、他端が補助巻線W3の他端に接続された平滑用の容量素子C5とを有するものとして構成される。
【0050】
モニタ電圧生成部12は、絶縁型スイッチング電源1の入力端子2a,2bに接続され、交流電源に基づくモニタ電圧を生成し、ソフトスタート制御回路10に出力する。
【0051】
このモニタ電圧生成部12は、例えば、図1に示すように、整流素子D4,D5と、抵抗R4,R5と、平滑用の容量素子C6とにより構成される。ここで、整流素子D4および整流素子D5は、アノードが入力端子2aおよび入力端子2bにそれぞれ接続され、カソードが互いに接続されている。また、抵抗R4と抵抗R5は直列接続されている。抵抗R4は整流素子D4,D5のカソードに接続され、抵抗R5は接地されている。容量素子C6は、一端が抵抗R4と抵抗R5の接続点に接続され、他端が接地されている。
【0052】
このような構成により、モニタ電圧生成部12は、交流電源の電圧を整流し、その整流された電圧を抵抗R4と抵抗R5で分圧し、分圧された電圧を容量素子C6で平滑化して得られた直流電圧を、モニタ電圧として、ソフトスタート制御回路10に出力する。
【0053】
なお、モニタ電圧生成部12は、整流部3の入力側電圧のモニタではなく、整流部3の出力側電圧をモニタするものとして構成されてもよい。この場合、モニタ電圧生成部12は、整流部3が出力した入力整流電圧を必要に応じて分圧してソフトスタート制御回路10に出力する。
【0054】
<ソフトスタート制御回路10の構成>
ソフトスタート制御回路10は、図1に示すように、端子として、参照電圧入力端子VWと、分圧電圧入力端子COMPと、ソフトスタート時間制御端子SSCと、電圧入力端子Vinと、電力供給端子KVc1と、ラインセンス端子LSinとを備える。
【0055】
参照電圧入力端子VWは、整流平滑部11を介して補助巻線W3に接続され、参照電圧が入力される。参照電圧は、補助巻線W3の両端に発生する交流電圧を整流平滑部11により整流平滑した直流電圧である。なお、参照電圧は、補助電源の出力する直流電圧であってもよい。ここで、補助電源は、直流電源を有し、一次側巻線W1の両端に発生する電圧に応じた直流電圧を参照電圧入力端子VWに出力する電源である。このように参照電圧は、一次側巻線W1の電圧に基づく電圧であり、絶縁型スイッチング電源1の動作レベル(出力電圧)を反映している。
【0056】
分圧電圧入力端子COMPは、参照電圧を抵抗R2および抵抗R3により分圧した分圧電圧が入力される。ソフトスタート時間制御端子SSCは、容量素子接続点Nに接続されている。電圧入力端子Vinは、整流部3が出力した入力整流電圧が入力される端子である。電力供給端子KVc1は、スイッチ制御回路9に動作電力を供給するための端子である。ラインセンス端子LSinは、モニタ電圧生成部12の出力に接続され、モニタ電圧が入力される。
【0057】
次に、図2を参照して、本実施形態に係るソフトスタート制御回路10の内部構成について詳しく説明する。図2はソフトスタート制御回路10の回路図の一例を示している。
【0058】
ソフトスタート制御回路10は、セット信号生成部21と、リセット信号生成部22と、比較器CMP3と、SRフリップフロップFF2と、ソフトスタート時間制御部23と、比較器CMP4と、スイッチQ4と、スイッチQ5と、ゲート電圧制御部25と、レベルシフト回路24と、整流素子D6とを備えている。
【0059】
セット信号生成部21は、モニタ電圧が入力閾値電圧Vth_LS未満の場合に、セット信号(Hレベル信号)を出力するものとして構成されている。セット信号は、交流電源からの入力電圧が所定の値を下回ったことを示す入力電圧低下信号である。
【0060】
上記のセット信号生成部21は、例えば、図2に示すように、比較器CMP1で構成される。比較器CMP1は、ラインセンス端子LSinに接続された入力端子(−)と、入力閾値電圧Vth_LSが入力される入力端子(+)と、入力端子(−)の電圧が入力端子(+)の電圧よりも小さい場合にセット信号を出力する出力端子とを有する。
【0061】
リセット信号生成部22は、分圧電圧入力端子COMPに入力される分圧電圧が出力閾値電圧Vth_HLに対応する電圧Vaよりも大きい場合にリセット信号(Hレベル信号)を出力するものとして構成されている。出力閾値電圧Vth_HLに対応する電圧Vaは、出力閾値電圧Vth_HLを抵抗R2および抵抗R3で分圧した電圧である。リセット信号は、出力電圧がバーストモードにおける上限値に達したことを示す出力電圧上昇完了信号である。
【0062】
上記のリセット信号生成部22は、例えば、図2に示すように、比較器CMP2および比較器CMP2の出力端子に接続されたNOTゲートN1で構成される。比較器CMP2は、分圧電圧入力端子COMPに接続された入力端子(−)と、電圧Vaが入力される入力端子(+)と、入力端子(−)の電圧が入力端子(+)の電圧よりも小さい場合にリセット信号を出力する出力端子とを有する。
【0063】
比較器CMP3は、分圧電圧入力端子COMPに接続された入力端子(−)と、出力閾値電圧Vth_LLに対応する電圧Vbが入力される入力端子(+)と、入力端子(−)の電圧が入力端子(+)の電圧よりも小さい場合にHレベル信号を出力し、そうでない場合にLレベル信号を出力する出力端子とを有する。出力閾値電圧Vth_LLに対応する電圧Vbは、出力閾値電圧Vth_LLを抵抗R2および抵抗R3で分圧した電圧である。
【0064】
出力閾値電圧Vth_LLは、出力閾値電圧Vth_HLよりも低い。例えば、出力閾値電圧Vth_HLはバーストモードにおける参照電圧の上限の電圧であり、出力閾値電圧Vth_LLはバーストモードにおける参照電圧の下限の電圧である。
【0065】
SRフリップフロップFF2は、リセット信号生成部22の出力端子に接続されたセット入力端子Sと、比較器CMP3の出力端子に接続されたリセット入力端子Rと、ゲート電圧制御部25に接続された出力端子Qとを有する。
【0066】
SRフリップフロップFF2は、セット入力端子SにHレベル信号(リセット信号)が入力された場合、ゲート電圧制御部25にHレベルバースト制御信号を出力し、リセット入力端子RにHレベル信号が入力された場合、ゲート電圧制御部25にLレベルバースト制御信号を出力する。
【0067】
ソフトスタート時間制御部23は、セット信号生成部21からセット信号を受信すると、コンデンサ部8の容量素子接続点Nを接地に電気的に接続する。また、ソフトスタート時間制御部23は、リセット信号生成部22からリセット信号を受信すると、コンデンサ部8の容量素子接続点Nを接地から電気的に絶縁するものとして構成されている。
【0068】
上記のソフトスタート時間制御部23は、例えば、図2に示すように、スイッチQ3およびSRフリップフロップFF1で構成される。スイッチQ3は、一端がソフトスタート時間制御端子SSCに接続され、他端が接地されている。このスイッチQ3は、n型MOSFETなどの半導体スイッチング素子である。この場合、n型MOSFETのドレイン端子がソフトスタート時間制御端子SSCに接続され、ソース端子が接地に接続される。
【0069】
SRフリップフロップFF1は、セット信号生成部21の出力端子SET_OUTに接続されたセット入力端子Sと、リセット信号生成部22の出力端子RESET_OUTに接続されたリセット入力端子Rと、スイッチQ3のゲート端子に接続された出力端子Qとを有する。
【0070】
そして、SRフリップフロップFF1は、セット入力端子Sにセット信号が入力された場合、スイッチQ3を導通状態にするHレベル信号を出力する。また、SRフリップフロップFF1は、リセット入力端子Rにリセット信号が入力されるとスイッチQ3を遮断状態にするLレベル信号を出力する。
【0071】
比較器CMP4は、参照電圧入力端子VWに接続された入力端子(−)と、閾値電圧Vth_SWが入力される入力端子(+)と、入力端子(−)の電圧が入力端子(+)の電圧よりも小さい場合にHレベル信号を出力し、そうでない場合にL信号を出力する出力端子とを有する。なお、この比較器CMP4は、ノイズ耐性を高めるため、ヒステリシスコンパレータであることが好ましい。また、閾値電圧Vth_SWは、出力閾値電圧Vth_LLよりも低い。
【0072】
スイッチQ4は、バースト制御用のスイッチであり、一端がスイッチQ5に接続され、他端が電力供給端子KVc1に接続されている。このスイッチQ4は、例えば、p型MOSFETなどの半導体スイッチング素子である。この場合、p型MOSFETのソース端子がスイッチQ5に接続され、ドレイン端子が電力供給端子KVc1に接続される。
【0073】
スイッチQ5は、一端が電圧入力端子Vinに接続され、他端がスイッチQ4の一端に接続されている。スイッチQ5は、比較器CMP4からHレベル信号を受信すると導通状態になり、Lレベル信号を受信すると遮断状態になる。なお、スイッチQ5は、例えば、n型MOSFETなどの半導体スイッチング素子である。この場合、n型MOSFETのドレイン端子が電圧入力端子Vinに接続され、ソース端子がスイッチQ4の一端に接続される。
【0074】
ゲート電圧制御部25は、スイッチQ4が間欠的に導通状態になるようにゲート電圧を制御する。具体的には、SRフリップフロップFF2からHレベルバースト制御信号を受信すると、ゲート電圧制御部25は、スイッチQ4を遮断状態にしてスイッチ制御回路9への動作電力の供給を停止する。一方、SRフリップフロップFF2からLレベルバースト制御信号を受信すると、ゲート電圧制御部25は、スイッチQ4を導通状態してスイッチ制御回路9への動作電力の供給を行う。
【0075】
また、ゲート電圧制御部25は、セット信号生成部21からセット信号(入力電圧低下信号)を受信した場合は、スイッチQ4が遮断状態になるようにスイッチQ4のゲート電圧を制御する。これにより、交流電源からの入力が低下した場合にスイッチ制御回路9への動作電力の供給を停止し、不十分な動作電力によりスイッチ制御回路9が誤動作することを防止できる。
【0076】
レベルシフト回路24は、入力端が参照電圧入力端子VWに接続され、出力端が整流素子D6を介してスイッチQ4とスイッチQ5との接続点に接続され、参照電圧を所定の電圧に降下させる。レベルシフト回路24は、例えば、参照電圧をスイッチ制御回路9の動作電圧になるようにレベルシフトした電圧を出力する。
【0077】
整流素子D6は、アノードがレベルシフト回路24の出力端に接続され、カソードがスイッチQ4およびスイッチQ5との接続点に接続されている。これにより、電圧入力端子Vinに入力された入力整流電圧を電力供給端子KVc1から出力する際に、入力整流電圧が参照電圧入力端子VWに流入することを防止できる。
【0078】
なお、整流素子D6は、参照電圧入力端子VWとレベルシフト回路24との間に設けられてもよい。この場合、整流素子D6のアノードが参照電圧入力端子VWに接続され、カソードがレベルシフト回路24の入力端に接続される。このように整流素子D6は、参照電圧入力端子VWと、スイッチQ4およびスイッチQ5の接続点との間でレベルシフト回路24に直列接続され、参照電圧入力端子VWからスイッチQ5の他端に向かう方向に電流を流すものとして設けられる。
【0079】
また、整流素子D6を削除してもよい。この場合、レベルシフト回路24の出力端はスイッチQ4およびスイッチQ5の接続点に接続される。
【0080】
上記のセット信号生成部21、リセット信号生成部22およびソフトスタート時間制御部23を備えることにより、ソフトスタート制御回路10は、モニタ電圧が入力閾値電圧Vth_LS未満となると、スイッチQ3を導通状態にしてソフトスタート時間制御端子SSC(容量素子接続点N)を接地に電気的に接続し、一方、参照電圧が出力閾値電圧Vth_HLよりも高くなると、スイッチQ3を遮断状態にしてソフトスタート時間制御端子SSC(容量素子接続点N)を接地から電気的に絶縁する。
【0081】
また、リセット信号生成部22、比較器CMP3、SRフリップフロップFF2、ゲート電圧制御部25およびスイッチQ4を備えることにより、ソフトスタート制御回路10は、参照電圧が出力閾値電圧Vth_HLと出力閾値電圧Vth_LLとの間の電圧になるように、スイッチ制御回路9を間欠的に動作させる。これにより、絶縁型スイッチング電源1はバーストモードで動作する。
【0082】
また、比較器CMP4、スイッチQ5、レベルシフト回路24および整流素子D6を備えることにより、ソフトスタート制御回路10は、スイッチ制御回路9に動作電力を供給する電力供給回路としての機能も有する。即ち、ソフトスタート制御回路10は、参照電圧が閾値電圧Vth_SWに達するまでの間、電圧入力端子Vinに入力された電圧を電力供給端子KVc1からスイッチ制御回路9の電力入力端子Vc1に出力し、参照電圧が閾値電圧Vth_SWに達すると、参照電圧入力端子VWに入力された電圧を電力供給端子KVc1からスイッチ制御回路9の電力入力端子Vc1に出力する。
【0083】
なお、ソフトスタート制御回路10は、単独で、またはスイッチ制御回路9とともに、所定の半導体基板上に形成した半導体集積回路として構成することが可能である。
【0084】
<絶縁型スイッチング電源1の動作>
次に、図3を参照して絶縁型スイッチング電源1の動作について説明する。図3は、本実施形態に係る絶縁型スイッチング電源1の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0085】
時刻t1以前において、絶縁型スイッチング電源1はスイッチ制御回路9が間欠的に動作するバーストモードで動作しており、参照電圧は、出力閾値電圧Vth_HLと出力閾値電圧Vth_LLとの間の範囲に制御されている。
【0086】
時刻tにおいて、交流電源の停止、あるいは交流電源と絶縁型スイッチング電源1との接続が切断されること等によって、交流電源からの入力が途絶える。これにより、整流部3が出力する入力整流電圧がゼロになり、モニタ電圧がモニタ電圧生成部12で決まる時定数に従って低下し始める。また、参照電圧が補助巻線W3および整流平滑部11で決まる時定数に従って漸減し始める。
【0087】
その後、時刻tにおいて、モニタ電圧が入力閾値電圧Vth_LS未満となる。これにより、セット信号生成部21は、セット信号(入力電圧低下信号)を出力する。この入力電圧低下信号を受信すると、ソフトスタート時間制御部23のSRフリップフロップFF1がHレベル信号をスイッチQ3のゲート端子に出力する。Hレベル信号によりスイッチQ3は導通状態となるため、容量素子接続点Nは接地される。よって、スイッチ制御回路9からみたコンデンサ部8の静電容量は、容量素子C1および容量素子C2の合成容量よりも大きい容量素子C1の静電容量となる。
【0088】
その後、時刻tにおいて、交流電源からの入力が回復する。これにより、モニタ電圧が回復し、セット信号生成部21はセット信号(入力電圧低下信号)の出力を停止する。また、入力整流電圧がスイッチ制御回路9に供給され、スイッチング部4が動作するため、参照電圧が上昇し始める。また、スイッチ制御回路9は定電流源をコンデンサ電圧入力端子SSに接続してコンデンサ部8の充電を開始する。これにより、図3に示すように、ソフトスタート電圧Vssが容量素子C1の静電容量に応じた上昇速度で上昇し始める。
【0089】
その後、時刻tにおいて、参照電圧は出力閾値電圧Vth_HLに達する。このため、リセット信号生成部22がリセット信号を出力し、SRフリップフロップFF1がLレベル信号をスイッチQ3のゲート端子に出力する。スイッチQ3はLレベル信号の受信により遮断状態となるため、容量素子接続点Nは接地から電気的に絶縁される。よって、スイッチ制御回路9からみたコンデンサ部8の静電容量は、容量素子C1の静電容量よりも小さい、容量素子C1および容量素子C2の合成容量となる。
【0090】
また、参照電圧が出力閾値電圧Vth_HLに達すると、ゲート電圧制御部25は、Hレベルバースト制御信号を受信し、スイッチQ4を遮断状態にしてスイッチ制御回路9への動作電力の供給を停止する。そのため、スイッチング部4の動作が停止し、参照電圧が低下し始める。
【0091】
時刻t以降における絶縁型スイッチング電源1の動作については、図3に示すように、通常のバーストモードにおける動作と同じである。即ち、参照電圧が出力閾値電圧Vth_HLと出力閾値電圧Vth_LLの間になるように、スイッチ制御回路9が間欠的に動作する。また、スイッチ制御回路9からみたコンデンサ部8の静電容量は容量素子C1の静電容量よりも小さい容量であるため、ソフトスタート電圧Vssの上昇速度は起動途中における上昇速度よりも速い。よって、時刻t以降、ソフトスタート電圧Vssは、通常のバーストモードと同じ速度で上昇する。
【0092】
参照電圧が出力閾値電圧Vth_HLと出力閾値電圧Vth_LLの範囲にある状態では絶縁型スイッチング電源1の出力電圧は十分に上昇しているため、ソフトスタート電圧Vssが通常のバーストモードと同じ速度で上昇しても、図3に示すようにトランス部5に流れる電流Iwが過大になることはない。
【0093】
上記のように、本実施形態に係るソフトスタート制御回路10は、バーストモードにおいてモニタ電圧が入力閾値電圧Vth_LS未満に低下した場合、参照電圧が出力閾値電圧Vth_HLに達するまで、ソフトスタート電圧の上昇速度を、バーストモードにおけるソフトスタート電圧の上昇速度である第1の上昇速度から、第1の上昇速度よりも低速の第2の上昇速度に切り替える。この第2の上昇速度は、例えば、スイッチ制御回路9が連続的に動作する通常モードにおけるソフトスタート電圧の上昇速度である。
【0094】
なお、ソフトスタート電圧の上昇速度を切り替える期間の終期は、参照電圧が出力閾値電圧Vth_HLに達したときに限らず、例えば、参照電圧が出力閾値電圧Vth_LLに達したときでもよい。一般的に言えば、参照電圧(ひいては出力電圧)がトランス部5に過電流が流れない程度に上昇する時点まで、ソフトスタート電圧の上昇速度が通常のバーストモードにおける上昇速度よりも低速に切り替えられていればよい。
【0095】
以上説明したように、本実施形態では、ソフトスタート電圧の上昇速度の切り替えは、スイッチ制御回路9からみたコンデンサ部8の静電容量を変化させることにより行っている。即ち、ソフトスタート制御回路10は、容量素子C1と容量素子C2の間の容量素子接続点を接地することにより、ソフトスタート電圧Vssの上昇速度を、容量素子C1と容量素子C2の合成容量に基づく第1の上昇速度から、容量素子C1の静電容量に基づく第2の上昇速度に切り替えている。
【0096】
これにより、絶縁型スイッチング電源1の起動途中(図3の場合、時刻t〜t)におけるソフトスタート電圧の上昇速度は通常のバーストモードにおける上昇速度よりも遅くなるため、バーストモードでソフトスタートによる電源起動を行った場合においても、ソフトスタートの効果が低下することなく、トランス部5に過電流が流れることを防止することができる。その結果、例えば、トランス鳴きや、LLC電流共振型スイッチング電源の共振はずれ等を防止することができる。
【0097】
また、本実施形態では、モニタ電圧に基づいてスイッチQ3を導通状態にすることにより、ソフトスタート電圧の上昇電圧を低速の上昇電圧に切り替える。モニタ電圧は、交流電源からの入力が途絶えたとき、参照電圧などに比べてずっと早く低下する。このため、交流電源からの入力が短時間途絶えた場合であっても、ソフトスタート電圧の上昇電圧を第1の上昇速度から第2の上昇速度に確実に切り替えることができる。
【0098】
よって、本実施形態によれば、交流電源からの入力が途絶える時間の長短にかかわらず、バーストモードでソフトスタートによる電源起動を行う際、トランス部に過電流が流れることを確実に防止することができる。
【0099】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態と第1の実施形態との相違点の一つは、ソフトスタート電圧の上昇速度の切り替え方法である。第1の実施形態では、スイッチ制御回路9から見たコンデンサ部8の静電容量を変化させることで、ソフトスタート電圧の上昇速度を切り替えた。これに対し、第2の実施形態では、コンデンサ部8の容量素子を充電する定電流源の数を変化させることで、ソフトスタート電圧の上昇速度を切り替える。以下、第1の実施形態との相違点を中心に、第2の実施形態について説明する。
【0100】
第2の実施形態では、スイッチ制御回路9Aは、図4に示すように、2つの定電流源I1およびI2を有する。定電流源I1およびI2はそれぞれ、スイッチSW1およびSW2を介して、コンデンサ電圧入力端子SSに電気的に接続されている。また、コンデンサ部8Aは、容量素子C7を有する。
【0101】
スイッチSW1およびSW2は、例えば、n型MOSFETなどの半導体スイッチング素子で構成される。
【0102】
第2の実施形態において、ソフトスタート電圧を第1の上昇速度で上昇させる場合は、スイッチSW1およびSW2をともに導通状態にすることにより、定電流源I1およびI2により容量素子C7を充電する。
【0103】
一方、電源起動中においてソフトスタート電圧を第1の上昇速度より低速の第2の上昇速度で上昇させる場合は、スイッチSW1およびSW2の一方のみを導通状態にすることにより、定電流源I1およびI2の一方により容量素子C7を充電する。
【0104】
スイッチSW1,SW2の制御は、例えば、ソフトスタート制御回路10のSRフリップフロップFF1の出力信号に基づいて行う。この場合、ソフトスタート制御回路10は、例えば、スイッチQ3を備えず、SRフリップフロップFF1の出力端子Qはソフトスタート時間制御端子SSCに接続されている。そして、ソフトスタート時間制御端子SSCは、容量素子接続点Nではなく、スイッチ制御回路9Aの信号入力端子に接続される。
【0105】
スイッチ制御回路9Aは、SRフリップフロップFF1の出力を受信する端子介してHレベル信号を受信した場合には、スイッチSW1およびSW2の一方を導通状態にし、他方を遮断状態にする。一方、Lレベル信号を受信した場合には、スイッチ制御回路9Aは、スイッチSW1およびSW2の両方を導通状態にする。
【0106】
このように本実施形態では、バーストモードにおいてモニタ電圧が入力閾値電圧Vth_LS未満に低下した場合、参照電圧が出力閾値電圧Vth_HLに達するまで、コンデンサ部8Aの容量素子を充電する定電流源の数を通常のバーストモードの場合よりも減らすことで、ソフトスタート電圧の上昇速度を第1の上昇速度から第1の上昇速度よりも低速の第2の上昇速度に切り替える。
【0107】
よって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0108】
なお、第2の実施形態の変形例として、電流源の数ではなく、電流源の出力電流量を変化させることで、ソフトスタート電圧の上昇速度を変化させてもよい。
【0109】
また、第2の実施形態に係るソフトスタート制御回路は、単独で、またはスイッチ制御回路9Aとともに、所定の半導体基板上に形成した半導体集積回路として構成することが可能である。
【0110】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 絶縁型スイッチング電源
2a,2b 入力端子
3 整流部
4 スイッチング部
5 トランス部
6 整流平滑部
7a,7b 出力端子
8 コンデンサ部
9 スイッチ制御回路
10 ソフトスタート制御回路
11 整流平滑部
12 モニタ電圧生成部
21 セット信号生成部
22 リセット信号生成部
23 ソフトスタート時間制御部
24 レベルシフト回路
25 ゲート電圧制御部
C1,C2,C3,C4,C5,C6,C7 容量素子
CMP1,CMP2,CMP3,CMP4 比較器
D1,D2,D3,D4,D5,D6 整流素子
FF1,FF2 SRフリップフロップ
I1,I2 定電流源
N1 NOTゲート
Q1 ハイサイドスイッチ
Q2 ローサイドスイッチ
Q3,Q4,Q5 スイッチ
R1,R2,R3,R4,R5 抵抗
SW1,SW2 スイッチ
W1 一次側巻線
W2 二次側巻線
W3 補助巻線
M スイッチ接続点
N 容量素子接続点
図1
図2
図3
図4