【実施例】
【0026】
以下、本発明の実施例に係る情報処理用スライド移動体装置のギヤ噛合円滑化機構について図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
(実施例1)
まず、本発明の実施例1に係るギヤ噛合円滑化機構31を含む情報処理用スライド移動体装置1について、
図1乃至
図4を参照して詳述する。
本発明の実施例1に係るギヤ噛合円滑化機構31を含む情報処理用スライド移動体装置1は、
図1乃至
図3に示すように、垂直な壁面10に取り付けられた黒板やホワイトボード等の固定部材である筆記用ボード2に対して、その上辺と下辺に沿って並設状態にスライド支持機構を構成するレール3を固定配置し、更に、前記レール3の一部(レール3の両端部側の各一部分)に制動用のラック4を添着している。
【0028】
前記筆記用ボード2の表面側には、この筆記用ボード2と平行配置に、かつ、間隔を隔て四角板状のフレーム5を配置するとともに、更にフレーム5の表面側に例えば大型画像表示モニタのような薄型直方体状の情報処理用スライド移動体6を固定配置している。
【0029】
そして、前記フレーム5の上端両隅部から筆記用ボード2側に突出する状態で一対のスライド案内体7を設けて、スライド案内体7を前記レール3にスライド可能に係合させることで、前記フレーム5及び情報処理用スライド移動体6を前記筆記用ボード2の表面側の領域で
図1に示す矢印a、b方向にスライド移動可能としている。
【0030】
特に、前記フレーム5及び情報処理用スライド移動体6を、前記筆記用ボード2の表面全てが表出するようにb方向(横方向)にスライドさせることで、前記筆記用ボード2の表面の筆記エリア全体を使用可能とするようにしている。
【0031】
前記フレーム5と壁面10とわたって、このフレーム5の左右の横移動範囲を規制する無伸縮で可撓性を有するクローラー8を取り付けている。
【0032】
次に、前記スライド案内体7について
図4を参照して詳細に説明する。
【0033】
前記スライド案内体7は、
図4に示すように、一片をフレーム枠5aに固定し、他片をレール3側に突出させた支持片11と、この支持片11の突出端側に水平配置したローラ支持片12と、ローラ支持片12から垂直下方に垂下した垂下片13とを有し、前記ローラ支持片12により前記レール3のレール面に回転接触させる所要数のローラ14を回転可能に支持し、前記垂下片13にロータリーダンパー15を水平配置に支持している。
【0034】
そして、このロータリーダンパー15の前記レール3側の突出端には、前記ラック4のラックギヤ4aに噛合するピニオンギヤ16aを備えたピニオン16を取り付けている。
【0035】
また、前記ラック4におけるラックギヤ4aのうち端部のラックギヤ4aのギヤ列外側位置には、詳細は後述するギヤ噛合円滑化機構31を構成する接触ピンユニット21を配置している。
【0036】
前記レール3におけるスライド案内体7のスライド範囲の末端領域であり、前記ラック4の末端領域の近傍位置には、例えばバネを利用したストッパ17を配置している。
ここで、前記ギヤ噛合円滑化機構31を構成する接触ピンユニット21について、
図5乃至
図8を参照して詳述する。
【0037】
前記ギヤ噛合円滑化機構31は、
図5乃至
図7に示すように、前記ラック4におけるラックギヤ4aのうち端部のラックギヤ4aのギヤ列外側位置に、ねじ込み式の接触ピンユニット21を配置することにより構成している。
【0038】
この接触ピンユニット21は、前記ラック4のギヤ列外側位置においてこのラック4を貫通するように設けられ内周に雌ネジ22aを設けた収納孔22と、外周に前記雌ネジ22aに螺合する雄ネジ23aを設け上端開口内部に受段部23bを設け、更に内周下部側に調整ネジ26用の雌ネジ23cを設けた接触ピン収納筒体23と、接触ピン収納筒体23の上端開口部分から球面状の先端24aをラックギヤ4aと同方向に突出させるとともに下端側にストッパ突部24bを設けた接触ピン24と、前記接触ピン収納筒体23内に収納され、前記接触ピン24を突出側に付勢する例えばコイルバネからなる押しバネ25と、前記雌ネジ23cに螺合させる調整ネジ26と、を具備している。
【0039】
すなわち、前記接触ピンユニット21は、先端をラックギヤ4aと同方向に突出させた接触ピン24を押しバネ25により突出側に付勢するとともに、調整ネジ26の接触ピン収納筒体23に設けた雌ネジ23cに対するねじ込み位置を調整することで、接触ピン24に対する付勢力、すなわち、接触ピン24のラック4の上面からの突出量を調整することが可能な構成としている。
【0040】
また、前記接触ピンユニット21の垂直方向中心位置と、ラック4の端部のラックギヤ4aの垂直方向中心位置との寸法dは、
図8に示すピニオン16における隣のピニオンギヤ16a2が接触ピン24に接触するとき、一つのピニオンギヤ16a1が円滑に端部のラックギヤ4aに噛み合う寸法に設定している。
【0041】
次に本実施例1に係るギヤ噛合円滑化機構31を含む情報処理用スライド移動体装置1の動作を、ギヤ噛合円滑化機構31の動作を主にし、
図1、
図8を参照して詳述する。
【0042】
本実施例1に係るギヤ噛合円滑化機構31を含む情報処理用スライド移動体装置1において、前記情報処理用スライド移動体6及びフレーム5が
図1に示す位置にあるとき、一方(
図1において右側)のピニオン16は一方(
図1において右側)のラック4から離れ、ピニオンギヤ16aとラックギヤ4aとの噛合は解除された状態にある。
【0043】
この状態から前記情報処理用スライド移動体6及びフレーム5を、例えば
図1に示す矢印b方向へスライドさせると、前記ピニオン16の一つのピニオンギヤ16a1は、
図8に示すように、ラック4の端部のラックギヤ4aに接近する。
【0044】
このとき、前記一つのピニオンギヤ16a1の隣のピニオンギヤ16a2であってピニオン進行方向手前のピニオンギヤ16a2を前記接触ピン24の先端に弾性衝突させ、この弾性衝突に伴う衝撃力を前記隣のピニオンギヤ16a2に付与して前記ピニオン16に微小な回転力(
図8においては矢印で示す時計回り方向)を与える。
【0045】
なお、ピニオンギヤ16a2が前記接触ピン24の先端に弾性衝突するとき、接触ピン24のバネ力に抗して
図8において下方に逃げるため、衝撃力は小さいものであり騒音等も発生することはない。
【0046】
これにより、前記一つのピニオンギヤ16a1の歯先と、端部のラックギヤ4aの歯先との直接衝突は回避され、前記一つのピニオンギヤ16a1のピニオン進行方向先方側の歯底部分がラック4の端部のラックギヤ4aの歯に円滑に噛合する状態にとなる。
【0047】
これ以降はピニオン16の矢印b方向への進行に伴い、ピニオン16の各ピニオンギヤ16aがラック4の各ラックギヤ4aに順に、かつ、円滑に噛合する状態の基に前記情報処理用スライド移動体6及びフレーム5はレールの端部側にスライドする。
【0048】
同時に、前記ロータリーダンパー15による制動力が働き、前記情報処理用スライド移動体6及びフレーム5は緩やかに減速しつつ停止する。
【0049】
上述したように、本実施例1に係る情報処理用スライド移動体装置1のギヤ噛合円滑化機構31によれば、前記情報処理用スライド移動体6及びフレーム5をスライドさせ、ピニオン16をラック4に噛合させるとき、一つのピニオンギヤ16a1とラック4における端部のラックギヤ4aとの歯先同士の衝突を回避しつつ前記
ピニオン16をラック4に円滑に噛合させることができ、特に前記情報処理用スライド移動体6が大重量の大型画像表示モニタ等である場合においても、ラックギヤ4a又はピニオンギヤ16aの歯欠け防止機能を長期にわたって十分に発揮させることができる。
【0050】
また、前記接触ピンユニット21は、前記調整ネジ26のねじ込み位置を調整することで、接触ピン24に対する付勢力、すなわち、接触ピン24のラック4の上面からの突出量を調整可能としているので、接触ピン24の突出量の調整によって、上述したギヤ噛合円滑化機構31によるラックギヤ4a又はピニオンギヤ16aの歯欠け防止機能の最適化を図ることもできる。
【0051】
更に、前記接触ピン24を金属製とし、前記押しバネ25を使用することで、板バネを使用する場合よりも繰り返し耐久性能に優れる利点もある。
更にまた、前記調整ネジ26を設けることで、様々なピニオン16の回転抵抗に対応できる効果も発揮する。
【0052】
次に、
図9乃至
図11を参照して、前記ギヤ噛合円滑化機構31の他例について説明する。
図9乃至
図11に示すギヤ噛合円滑化機構31Aは、前記接触ピンユニット21に替えて、前記ラック4におけるラックギヤ4aのうち端部のラックギヤ4aのギヤ列外側位置に、掘り込み式の接触ピンユニット21Aを配置することにより構成している。
【0053】
なお、この接触ピンユニット21Aにおいて、
図5乃至
図7に示す接触ピンユニット21の場合と同一の要素には同一の符号を付して示す。
【0054】
この接触ピンユニット21Aは、前記ラック4のギヤ列外側位置においてこのラック4を貫通するように設けられるとともに、上部開口孔41aの下側に段部41bを設け下部側に雌ネジ41cを設けた掘り込み式の収納孔41と、球面状の先端42aを上部開口孔41aからラックギヤ4aと同方向に突出させるとともに、下端側に前記段部41bに当接させるストッパ突部42bを設けた接触ピン42と、前記収納孔41内に収納され、前記接触ピン42を突出側に付勢する例えばコイルバネからなる押しバネ43と、前記収納孔41内の下部において前記収納孔41の雌ネジ41cに螺合され、押しバネ43を収納孔41内に封止してこの押しバネ43による一定のバネ力を前記接触ピン42に作用させる止めネジ44と、を具備している。
【0055】
すなわち、前記接触ピンユニット21Aは、先端をラックギヤ4aと同じ方向に突出させた接触ピン42を押しバネ43により突出側に一定のバネ力で付勢する構成となっている。
図9乃至
図11に示す接触ピンユニット21Aを採用したギヤ噛合円滑化機構31によっても、接触ピン42の突出量調整の点を除いて既述した接触ピンユニット21を採用したギヤ噛合円滑化機構31の場合と同様な作用、効果を発揮させ、特に前記情報処理用スライド移動体6が大重量の大型画像表示モニタ等である場合においても、ラックギヤ4a又はピニオンギヤ16aの歯欠け防止機能を長期にわたって十分に発揮させることができる。
【0056】
次に、
図12乃至
図14を参照して前記ギヤ噛合円滑化機構31の更に別の例について説明する。
【0057】
図12乃至
図14に示すギヤ噛合円滑化機構31Bは、前記接触ピンユニット21に替えて、前記ラック4におけるラックギヤ4aのうち端部のラックギヤ4aのギヤ列外側位置に、ねじ込み式で、汎用されているピン型プランジャタイプの接触ピンユニット21Bを配置することにより構成している。
【0058】
なお、この接触ピンユニット21Bにおいて、
図5乃至
図7に示す接触ピンユニット21の場合と同一の要素には同一の符号を付して示す。
【0059】
この接触ピンユニット21Bは、前記ラック4のギヤ列外側位置においてこのラック4を貫通するように設けられるとともに、内周に雌ネジ51aを有する収納孔51と、外周に前記雌ネジ51aに螺合する雄ネジ52aを設けた円筒状のプランジャ本体52と、このプランジャ本体52内に収納した接触ピン53と、前記プランジャ本体52内に収納され、前記接触ピン53を突出側に付勢する例えばコイルバネからなる押しバネ54と、前記プランジャ本体52の下部に螺合され、押しバネ54を収納孔51内に封止してこの押しバネ54による一定のバネ力を前記接触ピン53に作用させる止めネジ55と、を具備している。
【0060】
すなわち、前記接触ピンユニット21Bは、先端をラックギヤ4aと同じ方向に突出させた接触ピン53を押しバネ54により突出側に一定のバネ力で付勢する構成としている。
【0061】
図12乃至
図14に示す接触ピンユニット21Bを採用したギヤ噛合円滑化機構31によっても、接触ピン53の突出量調整の点を除いて既述した接触ピンユニット21を採用したギヤ噛合円滑化機構31の場合と同様な作用効果を発揮させ、特に前記情報処理用スライド移動体6が大重量の大型画像表示モニタ等である場合においても、ラックギヤ4a又はピニオンギヤ16aの歯欠け防止機能を長期にわたって十分に発揮させることができる。
【0062】
前記情報処理用スライド移動体6としては、大型画像表示モニタの他、電子黒板、インタラクティブボード、更には、スライド式黒板等のうちから選定することができる。
【0063】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2に係るギヤ噛合円滑化機構31を含む情報処理用スライド移動体装置1Aについて、
図15を参照して詳述する。なお、
図15は、情報処理用スライド移動体装置1Aの概略構成を示すものである。
【0064】
図15に示す情報処理用スライド移動体装置1Aは、縦長四角形状の枠体61の垂直な両側片62、62に、各々二枚重ね合わせ式で、個別に上下する情報処理用スライド移動体6として機能するスライド式黒板71、71用の片側2列構造のレール72、72を配置するとともに、二枚重ね合わせ式のスライド式黒板71、71用のレール72、72のうち、
図15において手前のレール72の下部に、下げ用のラック73を添着し、後側のレール72の上下方向より少し上の位置に下げ用のラック73を添着した構成としている。
【0065】
また、二枚重ね合わせ式のスライド式黒板71、71のうちの
図15において手前のスライド式黒板71の側部に、既述した場合と同様な構成からなるスライド案内体7及びギヤ噛合円滑化機構31を配置している。
【0066】
なお、後側のスライド式黒板71に配置したギヤ噛合円滑化機構31については図示省略する。
【0067】
このような構成の情報処理用スライド移動体装置1Aのギヤ噛合円滑化機構31によっても、手前のスライド式黒板71を
図15において下側にスライドさせるとき、及び、後側のスライド式黒板71を
図15において上側にスライドさせるとき、各々既述した場合と同様、前記ギヤ噛合円滑化機構31によって、ラックギヤ4a又はピニオンギヤ16aの歯欠け防止機能を長期にわたって十分に発揮させることができ、実施例1の場合と同様な効果を発揮させることができる。
【0068】
また、本実施例2の場合も、既述したギヤ噛合円滑化機構31A、31Bを採用した構成とすることも勿論可能であり、各々既述した場合と同様な効果を発揮させることができる。
【0069】
前記情報処理用スライド移動体6としては、スライド式黒板71の他、実施例1と同様な大型画像表示モニタ、電子黒板、インタラクティブボード等のうちから選定することができる。