(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エレベータの速度制御及び運転制御を行うエレベータ制御装置と、前記エレベータ制御装置に接続され、前記エレベータの状態を監視するとともに、前記エレベータ制御装置に対して運転制御の指令を送出可能な遠隔監視装置と、前記遠隔監視装置に遠隔的に接続された監視センタ装置と、前記遠隔監視装置と前記監視センタ装置とを接続するデータ通信網と、前記監視センタ装置に遠隔的に接続された遠隔制御指令装置と、前記監視センタ装置と前記遠隔制御指令装置とを接続するインタネット網と、前記遠隔監視装置に接続可能な可搬式の保守端末とを含み、
前記遠隔制御指令装置は、前記エレベータの運転休止の指令を前記インタネット網、前記監視センタ装置、及び前記データ通信網を介して前記遠隔監視装置に送出し、
前記遠隔監視装置は、前記エレベータの運転休止の指令に応じて、前記エレベータ制御装置に前記エレベータの運転休止の指令を送出するとともに、前記エレベータの運転休止の指令を記憶し、
前記遠隔監視装置に前記保守端末が接続されたときに、前記保守端末の画面上に、前記エレベータの運転休止を表示させ、
前記エレベータの運転休止が前記遠隔制御指令装置から送出された指令であるときに、前記保守端末の前記画面上に前記エレベータの運転休止を解除する入力手段を表示し、この入力手段の投入に応じて前記遠隔監視装置は、前記エレベータ制御装置に対する前記エレベータの運転休止の指令を中止するとともに、
前記遠隔監視装置は、前記入力手段の投入から所定時間が経過したときに、前記エレベータの運転休止を再開させるように前記エレベータ制御装置を制御することを特徴とするエレベータ遠隔制御システム。
【背景技術】
【0002】
エレベータには自動運転を中止する「運転休止」、あるいは「エレベータパーキング」と呼ばれる運転制御が備えられている。この運転制御は、休日などにエレベータの運転を取りやめて省エネを図ったり、豪雨の際にエレベータの冠水による故障を回避するために用いられている。
【0003】
従来、運転休止に際しては、エレベータホールに備えられた運転休止キーによってエレベータ制御装置に運転休止の指示を与える構成となっていた。しかしながら、利便性を高めるために運転休止キーを用いずに運転休止を行う「エレベータの休止作業認証システム」が特許文献1に開示されている。この特許文献1に記載された従来技術は、作業員が保有する携帯電話により入力される休止作業の認証を行う休止作業認証コンピュータが、携帯電話及び認証した休止作業場所に対応するエレベータの乗かごの制御盤に認証コードを与え、携帯電話から休止作業が行われるエレベータの乗かごへブルートゥース機能を介して認証コードが送られ、制御盤が、休止作業認証コンピュータから与えられた認証コードと乗かごから得られた認証コードが一致したときに乗かごを休止モードにするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように特許文献1には、エレベータの設置現場においてブルートゥースを使った遠隔の運転休止の設定方法が示されている。このような従来技術の考え方と、エレベータの遠隔監視制御技術とを合せ考慮して、エレベータから遠隔的に離れた場所においてエレベータの運転休止の設定を行うようにすることは容易に考えられる。
【0006】
しかしながら、このように特許文献1に記載された従来技術と、エレベータの遠隔監視制御技術とを合わせ考えたものであっても、遠隔地においてエレベータに運転休止の設定が行われたときには、運転休止キーなどエレベータの状態を可視化できるものが無いために、エレベータの点検のために、あるいはエレベータの所有者や管理者からのコールバックによって、エレベータが設置されている現場に駆けつけた保守員には、エレベータが故障によって停止しているのか、運転休止の設定によって停止しているのか判断できない問題が発生してしまう。
【0007】
なお、運転休止状態となっているエレベータの保守運転を行うためには、一時的に運転休止を解除してエレベータを動かす必要がある。また、このように一時的に運転休止を解除した場合に、保守点検作業後に確実に運転休止状態に復帰させなければ、エレベータの所有者や管理者が所望したエレベータの運転制御を逸脱してしまうことになる。
【0008】
本発明は、前述した従来技術における実情からなされたもので、その目的は、遠隔にて運転休止を設定できるエレベータに対して保守員が現場において、該当するエレベータが運転休止の設定がなされたものかどうか確認することができるエレベータ遠隔制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明に係るエレベータ遠隔制御システムは、エレベータの速度制御及び運転制御を行うエレベータ制御装置と、前記エレベータ制御装置に接続され、前記エレベータの状態を監視するとともに、前記エレベータ制御装置に対して運転制御の指令を送出可能な遠隔監視装置と、前記遠隔監視装置に遠隔的に接続された監視センタ装置と、前記遠隔監視装置と前記監視センタ装置とを接続するデータ通信網と、前記監視センタ装置に遠隔的に接続された遠隔制御指令装置と、前記監視センタ装置と前記遠隔制御指令装置とを接続するインタネット網と、前記遠隔監視装置に接続可能な可搬式の保守端末とを含み、前記遠隔制御指令装置は、前記エレベータの運転休止の指令を前記インタネット網、前記監視センタ装置、及び前記データ通信網を介して前記遠隔監視装置に送出し、前記遠隔監視装置は、前記エレベータの運転休止の指令に応じて、前記エレベータ制御装置に前記エレベータの運転休止の指令を送出するとともに、前記エレベータの運転休止の指令を記憶し、前記遠隔監視装置に前記保守端末が接続されたときに、前記保守端末の画面上に、前記エレベータの運転休止を表示させ
、前記エレベータの運転休止が前記遠隔制御指令装置から送出された指令であるときに、前記保守端末の前記画面上に前記エレベータの運転休止を解除する入力手段を表示し、この入力手段の投入に応じて前記遠隔監視装置は、前記エレベータ制御装置に対する前記エレベータの運転休止の指令を中止するとともに、前記遠隔監視装置は、前記入力手段の投入から所定時間が経過したときに、前記エレベータの運転休止を再開させるように前記エレベータ制御装置を制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、遠隔にて運転休止を設定できるエレベータに対して保守員が現場において、該当するエレベータが運転休止の設定がなされたものかどうか保守端末の画面を見て確認することができる。これにより本発明は、エレベータの所有者や管理者にエレベータの運転休止設定の有無を確認する作業が不要となり、エレベータの保守作業効率を従来に比べて向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るエレベータ遠隔制御システムの実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係るエレベータ遠隔監視システムの全体構成図である。
【0014】
この
図1に示すように、本実施形態に係るエレベータ遠隔監視システムは、エレベータの速度制御及び運転制御を行うエレベータ制御装置1と、エレベータ制御装置1に接続され、エレベータの状態を監視するとともに、エレベータ制御装置1に対して運転制御の指令を送出可能な遠隔監視装置5とを含んでいる。また、本実施形態は、遠隔監視装置5に遠隔的に接続された監視センタ装置7と、遠隔監視装置5と監視センタ装置7とを接続するデータ通信網6と、監視センタ装置7に遠隔的に接続された遠隔制御指令装置、例えばパソコン9と、監視センタ装置5とパソコン9とを接続するインタネット網8と、遠隔監視装置5に接続可能な可搬式の保守端末11とを含んでいる。
【0015】
パソコン9は、エレベータの運転休止の指令をインタネット網8、監視センタ装置7、及びデータ通信網6を介して遠隔監視装置5に送出し、遠隔監視装置5は、エレベータの運転休止の指令に応じて、エレベータ制御装置1にエレベータの運転休止の指令を送出するとともに、エレベータの運転休止の指令を記憶する。また、遠隔監視装置5に保守端末11が接続されたときには、保守端末11の画面上に、エレベータの運転休止を表示させるようになっている。
【0016】
また、本実施形態は、エレベータの運転休止がパソコン9から送出された指令であるときに、保守端末11の画面上にエレベータの運転休止を解除する
図2に示す入力手段20aを表示し、この入力手段20aの投入に応じて遠隔監視装置5は、エレベータ制御装置1に対するエレベータの運転休止の指令を中止するとともに、遠隔監視装置5は、入力手段20aの投入から所定の時間が経過したときに、エレベータの運転休止を再開させるようにエレベータ制御装置1を制御するものである。
【0017】
エレベータ全体を制御するエレベータ制御装置1は、図示しないホールボタンあるいは乗かご3に設置された押しボタンなどからの行先階指示に従って、図示しない巻き上げ機を駆動して乗かご3を昇降させる。
【0018】
テールコード2は信号線の集合体であり、乗かご3への電源の供給や制御信号を送受信するケーブルである。
【0019】
遠隔監視装置5は、エレベータ制御装置1に接続されて、エレベータ制御装置1の生成するエレベータの故障信号や稼働状態信号を捕捉してエレベータを監視する。また、エレベータ制御装置1に対して、制御信号を与えて、擬似的なホール呼びやエレベータの運転休止を行わせる。
【0020】
一方で遠隔監視装置5は、データ通信網6を介して監視センタ装置7に接続され、エレベータ故障の通知や稼働状況の通知を行う。また、監視センタ装置7からの指示をエレベータ制御装置1に伝える。データ通信網6は、一般的には加入者電話網やPHS、携帯電話網であってもよく、IP(インタネットプロトコル)網であってもよい。監視センタ装置7はWEBサーバ機能を有しており、インタネット網8を介してエレベータの所有者や管理者のパソコン9に接続することができる。パソコン9は、インタネット網8を介してエレベータの運転休止を指示したり、エレベータの運行状態を表示することができる。なお、本実施形態では遠隔制御指令装置をパソコン9によって構成してあるが、WEBブラウザが稼働可能であれば、遠隔制御指令装置を、いわゆるスマートフォンなどの入出力手段によって構成してもよい。
【0021】
エレベータ保守員が帯同する可搬式の保守端末11は、信号線10を介して遠隔監視装置5と通信して、エレベータの状態の確認や、エレベータへの制御設定を行う。本実施形態では、乗かご3に保守端末11の接続点がある場合を示しているが、接続点はどこに設けても構わない。
【0022】
エレベータの所有者または管理者は、パソコン9からエレベータの運転休止の要求をインタネット網8を介して監視センタ装置7に登録する。監視センタ装置7は、データ通信網6を介してエレベータの運転休止の設定指示を遠隔監視装置5に伝える。遠隔監視装置5における詳細な動作については後述するが、大まかには遠隔監視装置5は、エレベータの運転休止の設定指示をエレベータ制御装置1に伝えて、運転休止が実行される。本実施形態にあっては、パソコン9の操作者が例えばエレベータの所有者や管理者であるが、パソコン9の操作者としてはその他に、エレベータの保守契約者、また保守契約者が委任した管理会社やマンションの管理組合なども含まれる。
【0023】
次に、遠隔でエレベータの運転休止を設定するときの動作について説明する。
【0024】
エレベータの所有者あるいは管理者は、インタネット網8に接続されたパソコン9によって、監視センタ装置7に実装されたWEBサーバに対して、特定のエレベータに対する運転休止の指示を登録する。このときのパソコン9に表示される画面は、本実施形態の説明には不要であるので省略する。
【0025】
まず、最初にパソコン9からインタネット網8を介して監視センタ装置7に送出され、登録された運転休止の指示は、データ通信網6を介して遠隔監視装置5に伝送され、エレベータ制御装置1に運転休止の指示が伝送される。これに応じてエレベータ制御装置1は、エレベータを休止させて待機状態とする。
【0026】
このようなエレベータの運転休止状態が実行されているときに、エレベータの保守作業のために、一時的にエレベータ保守員が運転休止を解除する場合の動作について、
図2の保守端末11の画面遷移図によって説明する。
【0027】
エレベータの保守作業を実施する保守員が、保守端末11を信号線10を介して遠隔監視装置5に接続し、保守作業プログラムを立ち上げると、保守端末11の表示画面は、遠隔監視装置5内の運転休止フラグ12を読み出して遠隔による運転休止か否かを判別して、画面20を表示し、画面20上に入力手段20aを表示する。運転休止を解除するために、保守員が入力手段20aをクリックすると、保守端末11は画面21を表示する。
【0028】
画面21では、運転休止フラグ12を読み出して運転休止の設定中なので、「休止設定中」のメッセージ21aを表示して、一時解除ボタンである入力手段21bを表示する。保守員が運転休止の一時的解除を行いたいときは、入力手段21bをクリックする。これにより、画面22に遷移する。
【0029】
画面22では、メッセージ22aを表示して、入力手段22b,22cを表示する。運転休止の一時的解除を行いときには、入力手段22bをクリックする。運転休止を継続したいときには、入力手段22cをクリックする。
【0030】
入力手段22bをクリックしたときには、保守端末11は画面23を表示し、「一時解除中」のメッセージ23aを表示するとともに、入力手段23bを表示する。エレベータの運転休止を再開したい場合は、入力手段23bをクリックする。
【0031】
この一連の画面遷移を、遠隔監視装置5の処理を説明する
図3のプログラムチャートを用いて、併せ説明する。
【0032】
まず最初に、パソコン9からインタネット網8を介して送信され、監視センタ装置7に登録されたエレベータの運転休止の指示は、データ通信網6を介して遠隔監視装置5に伝送される。
【0033】
遠隔監視装置5では、手順300の判定において、エレベータの運転休止の指示があるかどうかを判定する。運転休止の指示があると判定された場合は(手順300でYes)、手順301において、運転休止の指示があることを運転休止フラグ12に記録するとともに、手順302において、エレベータ制御装置1に運転休止の指示を伝達する。これに応じてエレベータ制御装置1は、エレベータを休止させ、乗かご3を待機状態とする。その後は手順300に戻る。
【0034】
手順300の判定において、運転休止の指示がないと判定された場合は(手順300でNo)、手順303において、運転休止フラグ12がONかどうか判定する。運転休止フラグ12がONでないと判定された場合(手順303でNo)、手順300に戻る。
【0035】
運転休止フラグ12がONと判定された場合(手順303でYes)、手順304の保守端末11からの一時解除要求があるかどうかを判定する。
【0036】
このとき、保守端末11は画面20を表示する。この画面20の入力手段20aがクリックされると画面21を表示する。この画面21の入力手段21bがクリックされると画面22を表示する。この画面22の入力手段22bが保守員によってクリックされると、保守端末11からの一時解除要求有りと判定され(手順304でYes)、手順305において一時解除時間の監視タイマを初期化して、解除状態となる時間の計測をスタートする。このとき、保守端末11は画面23を表示し、この画面23上に「一時解除中」のメッセージ23aが表示される。
【0037】
次に、手順306において、エレベータ制御装置1に運転休止の解除、すなわち運転開始の指令を与える。その後手順300に戻る。これにより保守員はエレベータの保守運転を実施し、所望の保守作業を行うことができる。
【0038】
最後に、一時的に運転休止が解除されている状態にあって、運転休止が解除されてからの所定時間後に運転休止が復帰する場合の動作について説明する。
【0039】
例えば、エレベータの保守員によって、保守端末11の一時解除取り消し操作が行われたとする。この場合、手順304における判定で、保守端末11からの一時解除要求無しと判定され(手順304でNo)、保守端末11は画面23を表示する。
【0040】
このとき、保守員によって画面23の入力手段23bがクリックされると、手順307の判定で、保守端末11から運転休止再開の要求が有ったと判定され、手順308において、エレベータ制御装置1に運転休止の一時解除の中止、すなわち運転休止の再開の指令を与える。その後は手順300に戻る。
【0041】
なお、保守員によって画面23の入力手段23bがクリックされなかったとき、すなわち、手順307において保守端末11から運転休止再開の要求が無いと判定されたときには、手順309において、手順305で起動した監視タイマによって計測される時間が所定時間経過したかどうか判定される。この手順309で所定時間経過していないと判定された場合には(手順309でNo)、手順300に戻る。
【0042】
手順309において、監視タイマによって計測される時間が所定時間経過したと判定された場合には(手順309でYes)、手順308の処理を実施する。すなわち、前述したように、エレベータ制御装置1に運転休止の一時解除の中止、すなわち運転休止の再開の指令を与える。その後は手順300に戻る。
【0043】
このように本実施形態によれば、エレベータの保守員は、遠隔にて運転休止を設定できるエレベータに対して、現場において、該当するエレベータが運転休止の設定がなされたものかどうか保守端末11の画面21のメッセージ21aを見て確認することができる。これにより本実施形態は、エレベータの所有者や管理者にエレベータの運転休止設定の有無を確認する作業が不要となり、エレベータの保守作業効率を向上させることができる。
【0044】
また本実施形態は、エレベータの保守員による保守端末11の操作により、あるいは所定時間の経過後に自動的に、エレベータの運転休止の一時的な解除が中止され、運転休止を再開することができるので、保守作業の終了後にはエレベータの所有者や管理者が所望したエレベータの運転制御に確実に復帰させることができ、信頼性の高いエレベータ制御を実現させることができる。