(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0013】
1.本実施形態の概要
まず、本実施形態の概要について説明する。以下ではRGBベイヤ配列の撮像素子を用いる場合を例に説明するが、本実施形態はこれに限定されず、波長帯域がオーバーラップするカラーフィルタを有する撮像素子であればよい。また、以下では第1瞳を右瞳とし、第2瞳を左瞳として説明するが、本実施形態ではこれに限定されない。
【0014】
図8に、撮像装置の基本構成例を示す。撮像装置の光学系10には、瞳分割用の光学フィルタ12が設けられ、光学フィルタ12には、右瞳に対応する光学フィルタFL1と、左瞳に対応する光学フィルタFL2が設けられる。
図9に、光学フィルタ12の透過率特性と撮像素子のカラーフィルタの透過率特性を模式的に示す。光学フィルタ12の右瞳、左瞳は、透過率特性f
R、f
Lを有し、RGBのカラーフィルタは、透過率特性F
B、F
G、F
Rを有する。この場合、例えば右瞳画像を赤色画素値r=I・F
Rで構成し、左瞳画像を青色画素値b=I・F
Bで構成することにより、位相差画像が得られる。ここで、Iは撮像素子の画素への入射光量である。
【0015】
しかしながら、カラーフィルタの透過率特性F
B、F
Rはφ
RB=φ
GB+φ
GRでオーバーラップしているため、赤色と青色の色純度は低下している。この色純度の低下により、左右瞳画像は互いに混ざった成分をもってしまう。即ち、右瞳画像はr=I・F
R=I・(φ
R+φ
GR+φ
GB)と表されるが、そのうちI・φ
GBは左瞳を通過した成分である。また、左瞳画像はb=I・F
B=I・(φ
B+φ
GB+φ
GR)と表されるが、そのうちI・φ
GRは右瞳を通過した成分である。この成分により左右瞳画像の分離性が低下し、位相差検出の精度を低下させる要因となる。
【0016】
そこで
図1に示すように、本実施形態の撮像装置は、光学系10と撮像素子20と補正処理部120と位相差検出部185を含む。光学系10は、第1波長帯域f
Rの光を透過する第1瞳11と、第1波長帯域とは異なる第2波長帯域f
Lの光を透過する第2瞳13と、を有する。撮像素子20は、第1透過率特性F
Bを有する第1色(青色)フィルタと、第2透過率特性F
Gを有する第2色(緑色)フィルタと、第3透過率特性F
Rを有する第3色(赤色)フィルタとを含み、第1色〜第3色の画素値b、g、rを取得する。補正処理部120は、第1色及び第3色の画素値b、rを、第1透過率特性F
Bと第3透過率特性F
Rの重複部分φ
RB=φ
GB+φ
GRの成分値に基づいて補正する。そして位相差検出部185は、その補正した第1色の画素値b’=I・φ
Bで構成する画像(左瞳画像)と、補正した第3色の画素値r’=I・φ
Rで構成する画像(右瞳画像)と、の間の位相差を検出する。
【0017】
このようにすれば、第1色と第3色の画素値b、rにおいて互いに重複する成分(I・φ
RBを、補正により低下させる(又はキャンセルする)ことが可能となる。これにより、カラーフィルタの透過率特性F
B、F
G、F
Rがオーバーラップした撮像画像から、互いの成分の混入が低下した(又はキャンセルされた)右瞳画像(r’=I・φ
R)、左瞳画像(b’=I・φ
B)を得ることができる。これにより、高精度な位相差検出を実現できる。
【0018】
後述する実施形態を例に、より具体的に説明する。一般的な撮像素子では、透過率特性F
B、F
Rの重複部分φ
RBが緑色(第2色)の透過率特性F
Gに相似であることから、緑色の画素値gに基づいて重複部分φ
RBの成分値I・φ
RBを推定する。この成分値I・φ
RBを画素値b、rから減算することで、補正後の青色と赤色の画素値{b’,r’}={I・φ
B,I・φ
R}を得る。
【0019】
このようにして、第1色と第3色の画素値b、rを重複部分の成分値I・φ
RBに基づいて補正し、補正後の画素値{b’,r’}={I・φ
B,I・φ
R}を求めている。この補正後の画素値I・φ
B、I・φ
Rは、カラーフィルタの透過率特性F
B、F
Rのオーバーラップ部分が除かれることで、色純度の高い画素値となっている。この色純度の高い画素値を用いることで、位相差検出における相関演算の精度を向上できる。
【0020】
2.第1実施形態
2.1.高純度分光分離手法
次に、本実施形態の詳細について説明する。なお以下では、撮像素子20を適宜、撮像センサとも呼ぶ。また、透過率特性(分光特性){F
B,F
G,F
R,F
G1,F
G2}や、透過率特性の領域又は部分{φ
B,φ
G,φ
R,φ
RB}は、波長λの関数であるが、簡単のためF
B(λ)等をF
B等と表記する。また、{φ
B,φ
G,φ
R,φ
RB}に光量Iを乗じ(て波長λで積分し)た{I・φ
B,I・φ
G,I・φ
R,I・φ
RB}は画素値又は成分値である。
【0021】
まず、瞳分割を行わないRGB撮像画像から高色再現画像を取得する手法について説明する。
図2、
図3に示すように、撮像センサのカラーフィルタの透過率特性F
B、F
G、F
Rを4つの領域φ
R、φ
RB、φ
B、φ
Gに分けて考える。φ
RBは、F
BとF
Rが重なる部分である。φ
Rは、F
Rから重複部分φ
RBを除いた部分である。φ
Bは、F
Bから重複部分φ
RBを除いた部分である。φ
Gは、F
B、F
Rを包含するようにF
Gをゲインアップした特性F
G2からφ
R、φ
RB、φ
Bを除いた部分である。
【0022】
φ
R、φ
G、φ
Bを、高純度な原色RGBの分光特性フィルタを通過した光量成分と捉えると、φ
R、φ
G、φ
Bの特性を予め求めることができれば、高色再現の画像を得ることができる。
【0023】
図2を用いて、赤色と青色の高純度画素値{r’,b’}={I・φ
R,I・φ
B}を抽出する手法について説明する。なお以下では、一般に広く使われているカラー撮像センサでは、重複部分φ
RBの分光特性F
RGと緑色のカラーフィルタの分光特性F
Gの相似性が高いことが分かっている。相互の特性そのものの相似性が高いため、φ
RBを下式(1)により近似できる。なお、係数αの求め方は後述する。
φ
RB≒F
G1=α・F
G,
0<α<1.0 (1)
【0024】
上式(1)で求めたφ
RBからφ
R、φ
Bを求める。
図2から分かるように、下式(2)が成り立つ。
F
R=φ
R+φ
RB,
F
B=φ
B+φ
RB (2)
【0025】
上式(1)、(2)より、下式(3)が成り立つことから、φ
R、φ
Bを求めることができる。
φ
R=F
R−φ
RB≒F
R−α・F
G,
φ
B=F
B−φ
RB≒F
B−α・F
G (3)
【0026】
撮像センサの画素に入力する光量値をIとすると、実際に各画素のRGB画素値として得られるのは、下式(4)となる。
r=I・F
R,
g=I・F
G,
b=I・F
B (4)
【0027】
即ち、上式(3)、(4)より、高純度画素値r’、b’は下式(5)のように求められる。
r’=I・φ
R≒r−α・g,
b’=I・φ
b≒b−α・g (5)
【0028】
次に、
図3を用いて、緑色の高純度画素値g’=I・φ
Gを抽出する手法について説明する。分光特性F
G2は、緑色の分光特性F
Gにゲインβ(係数β)を乗じたものである。ゲインβは、F
G2が領域φ
R及び領域φ
Bを包含し、且つ最小のゲインとなるように求める。なお、ゲインβの求め方の詳細は後述する。
【0029】
下式(6)に示すように、ゲインβにより緑色の分光特性F
Gをゲインアップした分光特性F
G2を得る。
F
G2=β・F
G,
1.0<β (6)
【0030】
上式(6)で得られたF
G2と、上式(1)、(3)で求めたφ
R、φ
RB、φ
Bから、下式(7)によりφ
Gが得られる。
φ
G=β・F
G−(φ
R+φ
RB+φ
B) (7)
【0031】
上式(1)、(4)、(7)より、高純度画素値g’は下式(8)のように求められる。
g’=I・φ
G=β・g−(r+α・g+b) (8)
【0032】
以上のようにして、高純度な原色画素値{r’,g’,b’}={I・φ
B,I・φ
G,I・φ
R}が得られる。
【0033】
なお、高感度画像としては、RGB特性の重なりが大きい撮像センサで取得したままの画像を使えばよいので、画素値r、g、bを用いればよい。
【0034】
2.2.係数α、βの算出手法
次に、上記の係数α、βを推定する手法について説明する。以下で説明する手法で予め求めておいた係数α、βを画像処理装置100に記憶しておいてもよいし、或は、画像処理装置100が分光特性F
B、F
G、F
Rを取得し、その分光特性に基づいて係数α、βを求めてもよい。
【0035】
図4に示すように、実用的観点から、分光特性F
B、F
G、F
RはF
Gに対してF
B、F
Rが対称的な特性になっているとは限らないので、F
B、F
Rに偏りのある特性の場合について、係数α、βの決定手法を示す。
【0036】
まず、係数αの求め方について説明する。F
BとF
Rの重なり部分φ
RBはF
Gに対して偏っており、F
Gの最大値を示す波長をλ
Cとし、F
BとF
Rのクロスポイントを示す波長をλ’
Cとする。下式(9)に示すように、重複部分φ
RBの分光特性及び分光特性F
Gを、波長λ
0、λ
1、λ
2、・・・、λ
Nにおける透過率を成分としたベクトルV
RB、V
Gとして捉える。
V
RB=[φ
RB(λ
0),φ
RB(λ
1),φ
RB(λ
2),・・・,φ
RB(λ
N)],
V
G=[F
G(λ
0),F
G(λ
1),F
G(λ
2),・・・,F
G(λ
N)] (9)
【0037】
下式(10)に示すように、これらのベクトルV
RB、V
Gのユークリッド距離が最小になるときの係数αを採用する。これにより、φ
RBとαF
G(=F
G1)の類似性を高くできるため、漏れ光成分の低減効果を最適化できる。
【数1】
【0038】
なお、係数αの算出手法は上記に限定されない。例えば、係数αを変数として変化させ、上式(1)と上式(3)によりφ
R、φ
Bを求め、光量Iをフラットな分光特性である白色光と仮定して上式(5)によりr’、b’を求め、そのホワイトバランスが最良になるように係数αを探索的に求めてもよい。
【0039】
次に、係数βの求め方について説明する。
図5に示すように、φ
R、φ
Bを包含するようにF
GをゲインアップしたF
G2からφ
R、φ
RB、φ
Bを差し引いた部分をφ
Gとする。分光特性F
RとF
G2がほぼ合致する波長域をλ
R、・・・、λ
Nとし、分光特性F
BとF
G2がほぼ合致する波長域をλ
0、・・・、λ
Bとする。下式(11)に示すように、波長λ
R、λ
R+1、・・・、λ
Nにおける分光特性F
R、F
G2の透過率を成分としたベクトルをV
R、V
GR2とする。また、波長λ
0、λ
1、・・・、λ
Bにおける分光特性F
B、F
G2の透過率を成分としたベクトルをV
B、V
GB2とする。
V
R=[F
R(λ
R),F
R(λ
R+1),・・・,F
R(λ
N)],
V
GR2=[F
G2(λ
R),F
G2(λ
R+1),・・・,F
G2(λ
N)],
V
B=[F
B(λ
0),F
B(λ
1),・・・,F
B(λ
B)],
V
GB2=[F
G2(λ
0),F
G2(λ
1),・・・,F
G2(λ
B)] (11)
【0040】
下式(12)に示すように、これらのベクトルV
R、V
GR2、V
B、V
GB2のユークリッド距離が最小になるときの係数βを採用する。これにより、φ
R、φ
BとβF
G(=F
G2)の類似性を高くできるため、漏れ光成分の低減効果を最適化できる。
【数2】
【0041】
なお、係数βの算出手法は上記に限定されない。例えば、係数βを変数として変化させ、上式(1)と上式(3)によりφ
R、φ
RB、φ
Bを求め、光量Iをフラットな分光特性である白色光と仮定して上式(5)によりr’、g’、b’を求め、そのホワイトバランスが最良になるように係数βを探索的に求めてもよい。
【0042】
以上の説明では分光特性F
B、F
G、F
Rを撮像センサのカラーフィルタの分光特性であるものとして説明したが、分光特性F
B、F
G、F
Rは、例えば撮像光学系の分光特性や撮像センサの画素の感度特性、光源の分光特性等を含んでもよい。この場合、照明や撮像センサによる撮像条件が決まっていれば、分光特性F
B、F
G、F
Rはそれに従った特性となるので、予め係数α,βを求めておくことができる。一方、外光などによる撮影の場合は、撮影ごとに分光特性F
B、F
G、F
Rを検出し、その分光特性から係数α,βを求めてもよい。
【0043】
2.3.撮像装置
図6に、高感度画像{r,g,b}と高色再現画像{r’,g’,b’}を同時取得する撮像装置の構成例を示す。
【0044】
撮像装置は、結像レンズ14(光学系)、撮像部40、モニタ表示部50、分光特性検出部60、画像処理装置100を含む。画像処理装置100は、デモザイキング部130、高画質化処理部140、モニタ画像生成部150、高純度分光分離処理部160、高画質化処理部180、撮像モード選択部190、分光特性記憶部195を含む。
【0045】
撮像部40は、撮像素子20と撮像処理部を含む。撮像素子20は、例えばベイヤ配列のカラー撮像センサである。撮像処理部は、撮像動作の制御や、アナログの画素信号をA/D変換する処理等を行い、ベイヤ配列の画像{r,gr,gb,b}を出力する。
【0046】
デモザイキング部130は、ベイヤ配列の画像をデモザイキング処理し、画素毎にRGB画素値を有する画像(3板化画像){r,g,b}を生成する。
【0047】
カラー撮像センサは、RGBの分光特性F
B、F
G、F
Rの重なりを大きくしたものを採用しているので、画像{r,g,b}は、そのまま高感度画像として扱える。なお、カラー撮像センサとして、通常のオーバーラップ特性をもつ撮像センサを用いてもよいし、或は、通常よりもオーバーラップを大きくした撮像センサを用いてもよい。後者の場合、各色の帯域を広くできるため、通常よりも高感度な撮影が可能であり、例えば暗所等でも明るい画像が得られる。
【0048】
高画質化処理部140は、高感度画像{r,g,b}に対して高画質化処理(例えば、ノイズ低減処理や、階調補正処理等)を行い、その画像をモニタ画像生成部150へ出力する。モニタ画像生成部150は、その画像をモニタ表示部50に表示する処理を行う。
【0049】
高純度分光分離処理部160は、係数α、βを取得する係数取得部170と、デモザイキング処理を経た3板化画像{r,g,b}から純度の高い原色成分を抽出する補正処理部120を含む。
【0050】
具体的には、分光特性記憶部195は、カラーフィルタの分光特性{F
B、F
G、F
R}を記憶する。この分光特性は、例えば撮像部40から取得してもよいし、予め分光特性記憶部195に記憶しておいてもよい。また、外光や照明光の分光特性を取得する分光特性検出部60を更に設け、その外光や照明光の分光特性を加えて分光特性{F
B、F
G、F
R}を取得してもよい。
【0051】
係数取得部170は、分光特性記憶部195から分光特性{F
B、F
G、F
R}を読み出し、その分光特性{F
B、F
G、F
R}に基づいて、上述の手法により係数α、βを求める。
【0052】
或は、分光特性記憶部195は、予め分光特性{F
B、F
G、F
R}から求めておいた係数α、βを記憶しておいてもよい。この場合、係数取得部170は、分光特性記憶部195から係数α、βを読み出すことにより、係数α、βを取得する。
【0053】
補正処理部120は、上述の手法に基づく処理を行うことにより、係数α、βに基づいて高色再現画像{r’,g’,b’}を求め、その高色再現画像を出力する。
【0054】
高画質化処理部180は、色の再現性を高めるために、高色再現画像{r’,g’,b’}に対して色バランス等の調整処理を行う。即ち、高色再現画像{r’,g’,b’}に対してホワイトバランス処理等の適正な高画質化処理を施す。高画質化処理部180は、その画像をモニタ画像生成部150へ出力し、モニタ画像生成部150は、その画像をモニタ表示部50に表示する処理を行う。
【0055】
撮像モード選択部190は、モニタ表示画像を選択する処理を行う。具体的には、モニタ画像生成部150に対して、高感度画像と高色再現画像のうち選択した一方をモニタに表示させる指示を行う。或は、高感度画像と高色再現画像の両方を表示させる指示を行ってもよい。画像の選択は、例えば不図示の操作部を介して入力されたユーザー指示に基づいて行ってもよい。或は、外光センサを設け、その外光センサで検出した明るさに基づいて画像を選択してもよい。例えば、外光が閾値より明るい場合には高色再現画像を選択し、外光が閾値より暗い場合には高感度画像を選択してもよい。
【0056】
なお、上記では画像処理装置100が撮像装置に設けられる場合を例に説明したが、本実施形態はこれに限定されず、画像処理装置100を撮像装置と別体に構成してもよい。この場合、別体に構成された撮像装置が撮像画像データと分光特性{F
B、F
G、F
R}のデータを不図示の記録装置に記録しておく。そして、画像処理装置100が、記録されたデータを取得し、そのデータから高色再現画像{r’,g’,b’}を求める。このように、別体の画像処理装置100が事後処理により高色再現画像を求めてもよい。別体の画像処理装置100としては、例えばPC等の情報処理装置が想定される。
【0057】
この撮像システムによれば、例えば、暗所環境において感度を優先したい場合は高感度画像を選択し、明所環境において色再現性を優先したい場合は高色再現画像を1度に撮影した画像から選択できる。条件を変えて複数回に分けて撮影する従来のやり方に比べ、リアルタイムに2種類の撮影を可能にし、データ量の節約と目的に柔軟に応じた撮影を可能とする。また、本実施形態では、基本的に撮像センサのカラーフィルタの特性に依存するだけなので、純度の高い3原色画素値を抽出するための光学フィルタやその機械的挿抜機構も不要なために、実施が容易で実現性に極めて優れている。
【0058】
3.第2実施形態
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態の撮像装置は、
図1や
図6の撮像装置と同様に構成できる。
【0059】
第2実施形態では、領域{φ
R,φ
RB,φ
B}の分光特性を関係式に基づいて推定する。具体的には、上記領域の画素値{I・φ
R,I・φ
RB,I・φ
B}={r’,gx,b’}と、デモザイキング処理後の原色画素値{r,g,b}との間には、下式(13)の関係が成り立つ。ここで、便宜的にI・φ
RB=gxとする。
r=I・F
R=I・(φ
R+φ
RB)=r’+gx,
b=I・F
B=I・(φ
B+φ
RB)=b’+gx (13)
【0060】
上式(13)より、I・φ
RB=gxを未知数(未知変数)として下式(14)の関係式が求められる。
gx=(未知数),
r’=r−gx,
b’=b−gx (14)
【0061】
上式(14)は、未知数gxが決まると{r’,b’}が一意的に決まることを示している。gxが正しければ{r’,b’}は必ず正しい値として求めることができる。
【0062】
しかしながら、現段階では候補値{r’,gx,b’}の組み合わせ解は多数存在している。この多数解の中から尤もらしい解を特定するために、候補値{r’,gx,b’}の近傍に存在する参照値{I
R,I
RB,I
B}を求める。分光特性F
Rに占めるφ
Rの占有率をγ
Rとし、分光特性F
Bに占めるφ
Bの占有率をγ
Bとし、参照値を下式(15)とする。ここで、αは第1の実施形態にて求めた係数である。
I
R=I・φ
R=I・(γ
R・F
R)=γ
R・r,
I
RB=I・φ
RB=I・(α・F
G)=α・g,
I
B=I・φ
B=I・(γ
B・F
B)=γ
B・b (15)
【0063】
候補値{r’,gx,b’}の中から参照値{I
R,I
RB,I
B}に最尤度な組み合わせ解を求めるために、それらの誤差が最小になるような候補値{r’,gx,b’}を求めるものとする。
【0064】
分光特性{F
R,F
G,F
B}は撮像条件で決まり、それにより係数αと占有率γ
R、γ
Bは既知情報であるから、それらを上式(15)に代入し、参照値{I
R,I
RB,I
B}を求める。その参照値と上式(14)を下式(16)の評価関数E(gx)に代入し、評価関数E(gx)が最小になる未知数gxを求める。即ち、
図7に示すように、未知数gxにより求められる候補値{r’,gx,b’}と参照値{I
R,I
RB,I
B}の誤差が最小になるような未知数gxを特定する。
E(gx)=(r’−I
R)
2+(gx−I
RB)
2+(b’−I
B)
2 (16)
【0065】
上式(16)において、未知数gxを変化させて評価関数E(gx)が最小になるgxを探索的に求めてもよいし、上式(16)を未知数gxの2次関数として展開し、解析的に解いてgxを特定してもよい。
【0066】
なお、候補値{r’,gx,b’}の取りえる範囲は下式(17)のように決まっているので、その条件を満足する組み合わせ値となるように、gxを決定する。
0≦r’<(最大設定画素値),
0≦gx<(最大設定画素値),
0≦b’<(最大設定画素値) (17)
【0067】
4.第3実施形態
4.1.左右瞳画像の漏れ光を低減する手法
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、左右瞳による位相差検出を行い、その左右瞳画像の間での漏れ光を低減する。
【0068】
なお、以下では1眼の光学系の瞳を分割する例を説明するが、本実施形態はこれに限定されず、2眼の光学系を2つの瞳としてもよい。また、以下では第1瞳を右瞳とし、第2瞳を左瞳として説明するが、本実施形態ではこれに限定されない。即ち、瞳の分離方向は左右に限定されず、撮像光学系の光軸に対して垂直な任意の方向に第1瞳と第2瞳が分離されていればよい。
【0069】
図8に、第3実施形態における撮像装置の基本構成例を示す。撮像装置は、被写体を撮像センサに結像させる光学系10を含む。光学系10は、結像レンズ14と光学フィルタ12を有する。
【0070】
光学フィルタ12は、透過率特性f
Rを有する右瞳フィルタFL1(第1フィルタ)と、透過率特性f
Lを有する左瞳フィルタFL2(第2フィルタ)と、を有する。光学フィルタ12は、撮像光学系10の瞳位置(例えば絞りの設置位置)に設けられ、フィルタFL1、FL2がそれぞれ右瞳、左瞳に相当する。撮像素子に入射する光量をIとすると、I
R(x)=I(x)・f
R、I
L(x)=I(x)・f
L、I(x)=I
R(x)+I
L(x)である。ここで、xは水平方向(瞳分割方向)における位置(座標)である。
【0071】
透過率特性{f
R,f
L}は、撮像波長帯域を2つの分光(バンド)成分に分割したものである。即ち、
図9に示すように、原色RGBの3つの分光特性{F
R,F
G,F
B}を含む(覆う)バンドを2つに分割したものである。例えば、F
RとF
Bがクロスする波長λ
Cでバンドを分割する。或は、左右瞳画像の分離性が良くなるように設定した波長でバンドを分割してもよい。
【0072】
撮像センサで撮像した画像は、
図9のような原色RGBの3つの分光特性{F
R,F
G,F
B}を入射光量Iに乗じた成分値として得られる。分光特性{F
R,F
G,F
B}は、撮像センサの画素毎に設けられたカラーフィルタの分光特性だけでなく、被写体に照射される外光又は照明光の分光特性が合成されたものとして定義される。
【0073】
さて、分光特性{F
R,F
G,F
B}を4つの領域に分けて考える。F
Rとf
Rが重なる部分をφ
GRとし、F
Bとf
Lが重なる部分をφ
GBとする。F
Rから重複成分φ
RB(=φ
GR+φ
GB)を差し引いた部分をφ
Rとし、F
Bから重複部分φ
RB(=φ
GR+φ
GB)を差し引いた部分をφ
Bとする。
【0074】
位相差情報を精度良く検出するには、左右の瞳分割画像が高精度に分離できる必要がある。左右瞳には分離した帯域{f
R,f
L}を割り当てているため、例えば右瞳画像を画素値r=I・F
Rで構成し、左瞳画像を画素値b=I・F
Bで構成することにより瞳分割画像を分離できる。
【0075】
ところが、撮像センサのフィルタ特性は、そもそも左右の瞳分割画像に割り当てた波長帯域{f
R,f
L}に完全には分離されておらず、相互に瞳画像成分が漏れ光として入り込み合成されて取得してしまうという課題がある。即ち、右瞳画像の画素値r=I・F
Rには、左瞳の分光特性f
Lと重なるφ
GBの成分が含まれており、左瞳画像の画素値b=I・F
Bには、右瞳の分光特性f
Rと重なるφ
GRの成分が含まれている。このように、左右瞳画像が相互に混入して、分離性が低下している。
【0076】
このような分離性の低下は、位相差検出の精度を低下させる要因となる。
図10に示すように、例えば被写体が白から黒へ変化する像パターンである場合、右瞳画像と左瞳画像のプロファイルの歪みが発生し、右瞳画像と左瞳画像の類似性を失う。この類似性の低下により、相関演算による位相差検出の精度が著しく劣化する。
【0077】
即ち、右瞳、左瞳を通過した成分は、それぞれ左瞳、右瞳のポイントスプレッドファンクションPSF
L、PSF
Rと被写体のプロファイルとのコンボリューションになっている。これにより、右瞳、左瞳を通過した成分の間には視差(位相差)が生じる。右瞳画像の画素値rは、右瞳を通過したI
R・(φ
R+φ
GR)に左瞳を通過したI
L・φ
GBが加算されているため、これらの視差をもつ成分を加算した画素値rのプロファイルは、右瞳のみのプロファイルとならず歪んでいる。画素値bについても同様であり、左瞳を通過したI
L・(φ
B+φ
GB)に右瞳を通過したI
R・φ
GRが加算されており、プロファイルは歪んでいる。これらのプロファイルの相関演算を行った場合、歪みの影響で類似性が低下しており、正確なマッチングができなくなってしまう。
【0078】
そこで、本実施形態では、右瞳画像から不要な左瞳の通過成分I
L・φ
GBを除き、左瞳画像から不要な右瞳の通過成分I
R・φ
GRを除く。φ
RB=φ
GR+φ
GBなので、第1実施形態等で説明した手法によりφ
RBの成分値を低減又は除去することにより、分光特性{φ
R,φ
B}の画素値{r’,b’}={I
R・φ
R,I
L・φ
B}を求めることができる。この画素値{r’,b’}は、それぞれ純粋な右瞳、左瞳の通過光の成分と見なせるので、歪みのないプロファイルが得られる。この画素値{r’,b’}でそれぞれ右瞳画像、左瞳画像を構成することにより、左右瞳画像の類似性が保たれ、高精度な位相差検出が可能となる。
【0079】
4.2.撮像装置
図11に、第3実施形態における撮像装置の構成例を示す。光学系10(光学フィルタ12、結像レンズ14)、撮像部40、モニタ表示部50、分光特性検出部60、画像処理装置100を含む。画像処理装置100は、デモザイキング部130、モニタ画像生成部150、高純度分光分離処理部160、測距演算部175、高画質化処理部180、位相差検出部185、分光特性記憶部195を含む。なお、
図1や
図6で説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0080】
分光特性記憶部195は、光学フィルタ12の分光特性と照明光(又は外光)の分光特性と撮像センサのカラーフィルタの分光特性で決まる分光特性{F
B,F
G,F
R}を記憶する。或は、分光特性{F
B,F
G,F
R}から予め求めた係数α、βを記憶してもよい。
【0081】
位相差検出部185は、高純度分光分離処理部160が出力する高色純度の左右瞳画像{r’,b’}の位相差δ(x,y)を検出する。位相差δ(x,y)は、各画素について求める。(x,y)は画像上における位置(座標)であり、例えばxは水平走査方向、yは垂直走査方向に対応する。
【0082】
測距演算部175は、検出された位相差δ(x,y)に基づいて3次元計測を行う。即ち、各画素位置(x,y)での被写体までの距離を位相差δ(x,y)から算出し、物体の3次元形状情報を取得する。なお、測距手法の詳細については後述する。
【0083】
本実施形態のアプリケーションとしては、例えば位相差δ(x,y)を用いた高速位相差AFや、測距情報を用いた3次元計測、立体表示等が想定できる。
【0084】
なお、上記では高純度分光分離処理部160が高色再現画素値{r’,g’,b’}を求める場合を例に説明したが、本実施形態はこれに限定されず、例えば高純度分光分離処理部160が高色再現画素値{r’,b’}のみを求めてもよい。
【0085】
4.3.シミュレーション例
図12、13に、第3実施形態に第1実施形態を適用した場合のシミュレーション結果の例を示す。
【0086】
図12は、シミュレーションにおいて設定したRGBの分光特性F
B、F
G、F
Rと、被写体の分光特性である。被写体の分光特性は任意に設定可能であり、
図12の特性に限定されるものではない。また
図12には、第1実施形態で説明した分光特性F
G1=α・F
Gを示す。α・F
Gは、分光特性F
B、F
Rの重複部分φ
RBを係数αと分光特性F
Gにより近似したものである。
【0087】
図13は、
図12の分光特性をもとに被写体のエッジ部分(例えば
図10のようなエッジ)についてシミュレーションを行った結果である。r、bのプロファイルは、補正前の右瞳画像と左瞳画像のプロファイルである。画素値r’、b’のプロファイルは、補正後の右瞳画像と左瞳画像のプロファイルである。左右瞳画像のプロファイルは、本来、瞳分割方向(横軸方向)に位相差δの分だけ離れた相似なプロファイルであることが望ましい。しかしながら、補正前のプロファイルでは左右瞳画像が混合し、左右瞳画像の相似性が失われていることが分かる。一方、補正後のプロファイルでは、瞳分割方向に位相差δの分だけ離れた相似なプロファイルとなっていることが分かる。このような相似なプロファイルで相関演算を行うことにより、位相差検出の精度が向上することは明かである。
【0088】
以上の実施形態によれば、
図9に示すように、第2色(緑色)は、第1色(青色)よりも長波長側及び第3色(赤色)よりも短波長側の色である。そして、第1瞳(第1フィルタFL1、右瞳)が透過する第1波長帯域f
Rは、第3色(赤色)に対応し、第2瞳(第2フィルタFL2、左瞳)が透過する第2波長帯域f
Lは、第1色(青色)に対応する。
【0089】
このようにすれば、第3色(赤色)の画像を第1瞳画像(右瞳画像)とし、第1色(青色)の画像を第2瞳画像(左瞳画像)とすることで、位相差を検出することができる。そして、本実施形態では、第1色及び第3色の画素値が、第1透過率特性F
Bと第3透過率特性F
Rの重複部分φ
RBの成分値に基づいて補正されるので、左右瞳画像の混合(漏れ光)を低減でき、高精度な位相差検出を実現できる。
【0090】
ここで、第3色に対応する第1波長帯域とは、白色帯域(F
R、F
G、F
Bを覆う帯域)のうち少なくとも第3色の帯域を含むものであり、第3色の透過率特性F
Rの帯域全てを含む必要はない。例えば、第3色の透過率特性F
Rの主要な帯域(例えば最大透過率の前後の帯域)に対応していればよい。例えば本実施形態では、
図9に示すように、白色帯域を波長λ
Cで分割した2つの帯域のうち、長波長側(即ち赤色側)の帯域である。また、第1色に対応する第2波長帯域も同様である。即ち、白色帯域のうち少なくとも第1色の帯域を含むものであり、第1色の透過率特性F
Bの帯域全てを含む必要はない。
【0091】
また本実施形態では、補正処理部120は、第2色の画素値gに基づいて第1透過率特性F
Bと第3透過率特性F
Rの重複部分の成分値I・φ
RB≒α・gを推定し、第1色及び第3色の画素値b、gから重複部分の成分値I・φ
RB≒α・gを低下させる補正を行う。
【0092】
このようにすれば、第1色及び第3色の画素値b、rにおいて互いに重複する成分(I・φ
RB)を、補正により低下させる又はキャンセルすることが可能となる。これにより、カラーフィルタの透過率特性F
B、F
G、F
Rがオーバーラップした高感度な撮像画像から、あたかもオーバーラップが小さいカラーフィルタを用いたかのような色純度の高い画像を得ることができる。このような色純度の高い画像を用いて相関演算を行うことにより、位相差検出の精度を向上できる。
【0093】
また本実施形態では、補正処理部120は、第1透過率特性F
Bと第3透過率特性F
Rに基づく第1係数αを第2色の画素値gに乗じることで、重複部分の成分値I・φ
RB≒α・gを求める(
図2、上式(1)〜(5))。
【0094】
上述したように、一般的な撮像素子では第1色(青色)及び第3色(赤色)のカラーフィルタの分光特性F
B、F
Rの重複部分φ
RBは、第2色(緑色)のカラーフィルタの分光特性F
Gに相似である。また、本実施形態では高色純度の画像を分離できることから、一般的な撮像素子とは異なる分光特性を設定することも可能であり、その際に重複部分φ
RBとF
Gの相似性を高く設定しておくことも可能である。このような相似性から、重複部分の成分値I・φ
RBをα・gと推定することが可能となり、その推定値に基づいて第1色〜第3色の画素値b、g、rの色純度を上げる補正が可能となる。
【0095】
また本実施形態では、係数取得部170は、第1係数αを乗じた第2透過率特性F
Gと重複部分φ
RBとの類似性が最も高い場合の第1係数αを取得する(
図4、上式(9)、(10))。
【0096】
このようにすれば、第2透過率特性F
Gと重複部分φ
RBとの類似性に基づいて、その類似性が最も高いときの係数αを決定することができる。これにより、色純度を上げる補正(即ち、画素値r、bから重複部分の成分α・gを減算する補正)の精度を向上できる。
【0097】
また本実施形態では、類似性が最も高い場合の第1係数αは、重複部分φ
RBの複数波長λ
0、λ
1、・・・、λ
Nでの透過率を成分とするベクトルV
RBと、第1係数αを乗じた第2透過率特性F
Gの複数波長λ
0、λ
1、・・・、λ
Nでの透過率を成分とするベクトルV
Gと、の間のユークリッド距離が最小となる場合の第1係数αである(
図4、上式(9)、(10))。
【0098】
このようにすれば、ベクトルV
RBとベクトルV
Gとの間のユークリッド距離を指標として類似度を求めることができる。そして、その指標が最小値をとる場合を類似度が最も高い場合として、第1係数αを決定することができる。
【0099】
また本実施形態では、補正処理部120は、重複部分φ
RBの成分値α・gを第1色の画素値bから減算することで第1色の画素値bを補正し(画素値b’)、重複部分φ
RBの成分値α・gを第3色の画素値rから減算することで第3色の画素値rを補正する(画素値r’)(上式(1)〜(5))。
【0100】
このようにすれば、第1係数により推定した重複部分φ
RBの成分値α・gにより、第1色と第3色の画素値b、rから重複部分φ
RBの成分値I・φ
RBを低下させることができる。これにより、カラーフィルタの分光特性がオーバーラップした撮像画像から、色純度が高い画素値b、rを求めることができる。
【0101】
また本実施形態では、補正処理部120は、第1透過率特性F
Bと第3透過率特性F
Rに基づく第2係数βを乗じた第2色の画素値gから、重複部分の成分値α・gと補正した第1色の画素値b’と補正した第3色の画素値r’とを減算することで、第2色の画素値gを補正する(画素値g’)(
図5、上式(6)、(7))。
【0102】
このようにすれば、第2透過率特性F
Gを第2係数βでゲインアップした分光特性の成分値β・gを推定し、その推定した成分値β・gに基づいて色純度の高い第2色の画素値g’を求めることができる。即ち、成分値β・gから、第1色、第2色の画素値b、rとの重複部分を低下させる補正を行うことができる。
【0103】
また本実施形態では、
図5に示すように、係数取得部170は、第1透過率特性F
Bの短波長側の一部(波長λ
Bより短波長側)及び第3透過率特性F
Rの長波長側の一部(波長λ
Rより短波長側)と、第2係数βを乗じた第2透過率特性F
Gと、の類似性が最も高い場合の第2係数βを取得する(上式(11)、(12))。
【0104】
このようにすれば、第2透過率特性F
Gと第1、第3透過率特性F
B、F
Rの一部との類似性に基づいて、その類似性が最も高いときの係数βを決定することができる。これにより、色純度を上げる補正(即ち、成分値β・gから重複部分の成分r’、b’、α・gを減算する補正)の精度を向上できる。
【0105】
また本実施形態では、
図5に示すように、第1透過率特性F
Bの最大透過率よりも短波長側の所定波長を第1波長λ
Bとし、第3透過率特性F
Rの最大透過率よりも長波長側の所定波長を第2波長λ
Rとする。そして、第1透過率特性F
Bにおける第1波長λ
Bよりも短波長側の複数波長λ
0、λ
1、・・・、λ
Bでの透過率を成分とするベクトルをV
Bとする。第3透過率特性F
Rにおける第2波長λ
Rよりも長波長側の複数波長λ
R、λ
R+1、・・・、λ
Nでの透過率を成分とするベクトルをV
Rとする。第2係数βを乗じた第2透過率特性F
Gの複数波長での透過率を成分とするベクトルをV
GB2、V
GR2とする(上式(11))。この場合に、類似性が最も高い場合の第2係数βは、ベクトルV
B及びベクトルV
RとベクトルV
GB2、V
GR2との間のユークリッド距離が最小となる場合の第2係数βである(上式(12))。
【0106】
このようにすれば、ベクトルV
B及びベクトルV
RとベクトルV
GB2、V
GR2との間のユークリッド距離を指標として類似度を求めることができる。そして、その指標が最小値をとる場合を類似度が最も高い場合として、第2係数βを決定することができる。
【0107】
また本実施形態では、補正処理部120は、重複部分φ
RBの成分値gx=I・φ
RBの候補値、及び第1色(青色)の画素値bを候補値gxで補正した値b’=b−gx、及び第3色(赤色)の画素値rを候補値gxで補正した値r’=r−gxと、第1色〜第3色の画素値b、g、rと、の類似性を表す評価値E(gx)を求める(上式(13)〜(16))。そして、補正処理部120は、類似性が最も高い場合の候補値gxを評価値E(gx)に基づいて決定することで、重複部分φ
RBの成分値gx=I・φ
RBを求める(
図7)。
【0108】
このようにすれば、補正後の画素値の候補値{r’,gx,b’}と第1色〜第3色の画素値b、g、rと、の類似性に基づいて、補正後の画素値{r’,g’,b’}を求めることが可能となる。即ち、類似性の指標として評価値E(gx)を求め、例えばその評価値E(gx)が最小値となる場合を類似性が最も高い場合として、重複部分φ
RBの成分値gxを決定できる。重複部分φ
RBの成分値gxが求まれば、第1実施形態と同様にして色純度の高い画素値{r’,g’,b’}を求めることが可能である。
【0109】
5.位相差から距離を求める手法
次に、位相差から被写体までの距離を求める手法について説明する。この測距手法は、例えば測距演算部175の処理に用いる。或は、求めたデフォーカス量を用いて位相差AF制御を行ってもよい。
【0110】
図14に示すように、絞りを開放した時の開口径をAとし、開口径Aに対する左右の瞳の重心間の距離をq×Aとし、光軸上における結像レンズ14の中心から撮像素子のセンサ面PSまでの距離をsとし、センサ面PSにおける右瞳画像I
R(x)と左瞳画像I
L(x)の位相差をδとすると、三角測量法により下式(18)が成り立つ。
q×A:δ=b:d,
b=s+d (18)
【0111】
ここで、qは、0<q≦1を満たす係数であり、q×Aは、絞り量によっても変化する値である。sは、レンズ位置検出センサにより検出される値である。bは、光軸上における結像レンズ14の中心からフォーカス位置PFまでの距離を表す。δは、相関演算により求められる。上式(18)よりデフォーカス量dは下式(19)で与えられる。
d=(δ×s)/{(q×A)−δ} (19)
【0112】
距離aは、フォーカス位置PFに対応する距離であり、光軸上における結像レンズ14から被写体までの距離である。一般的に結像光学系では、複数のレンズで構成される結像光学系の合成焦点距離をfとすると、下式(20)が成り立つ。
(1/a)+(1/b)=1/f (20)
【0113】
上式(19)で求めたデフォーカス量d及び検出可能な値sから、上式(18)によりbを求め、そのbと、結像光学構成により決まる合成焦点距離fとを上式(20)に代入し、距離aを算出する。任意の画素位置に対応する距離aを算出できるので、被写体までの距離計測や、被写体の3次元形状計測を行うことが可能である。
【0114】
AF制御を行う場合には、次のようにする。
図14が、例えば撮像装置の上部(瞳分割方向に垂直な方向)から見た図である場合、xは水平方向(瞳分割方向)の座標軸である。座標軸xでの位相差δを、右瞳画像I
R(x)及び左瞳画像I
L(x)のいずれかを基準として正負の符号で表すように定義し、その位相差δの正負により、センサ面PSがフォーカス位置PFの前方にあるのか後方にあるのかを識別する。センサ面PSとフォーカス位置PFの前後関係が分かれば、フォーカス位置PFにセンサ面PSを一致させる際に、どちらの方向にフォーカスレンズを移動させれば良いのかが簡単に分る。
【0115】
デフォーカス量d及び位相差δの符号を求めた後、それらに基づいて、デフォーカス量dをゼロにするようにフォーカスレンズを駆動させ、フォーカシングを行う。本実施形態では、左右瞳により水平方向に色分割しているので、撮像画像の中のフォーカシングさせたい水平方向の領域を選択して相関演算を行えばよい。なお、瞳色分割の方向は水平方向とは限らないので、左右帯域分離光学フィルタの設定条件(分割方向)に合わせて適宜、相関演算を行う方向を設定すればよい。また、デフォーカス量dを求める対象領域は、撮像画像の一部領域に限らず、撮像画像の全領域を対象としてもよい。その場合は、複数のデフォーカス量dが求められるので、それらを所定の評価関数により最終的なデフォーカス量を決定するプロセスが必要である。
【0116】
以上、本発明を適用した実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は、各実施形態やその変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階では、発明の要旨を逸脱しない範囲内で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記した各実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成することができる。例えば、各実施形態や変形例に記載した全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施の形態や変形例で説明した構成要素を適宜組み合わせてもよい。また、撮像装置、画像処理装置の構成・動作や、それらの作動方法(撮像方法、画像処理方法)も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。このように、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能である。また、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。