特許第6013303号(P6013303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6013303ピペット装置および検査液のピペット操作方法
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  • 特許6013303-ピペット装置および検査液のピペット操作方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013303
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ピペット装置および検査液のピペット操作方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   G01N35/10 D
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-210414(P2013-210414)
(22)【出願日】2013年10月7日
(65)【公開番号】特開2014-81371(P2014-81371A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年10月20日
(31)【優先権主張番号】12188267.4
(32)【優先日】2012年10月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローランド フッター
(72)【発明者】
【氏名】ローランド ストエクリ
【審査官】 山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−228954(JP,A)
【文献】 特開昭54−155088(JP,A)
【文献】 特開昭57−208461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 − 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外診断検査を行うための量(V1)の検査液(10)をピペット操作する方法であって、
ピペット装置(100)のノズル(50)を検査液(10)に浸し、前記体外診断検査を行うのに必要な量V1より多い量(V4)の前記検査液(10)を吸引すること、
前記ノズル(50)を洗浄液(20)に浸し、V4−V1に等しいか、またはV4−V1より少ない量(V2)の前記検査液(10)を前記洗浄液(20)に供給すること、
前記ノズル(50)を反応液(30)に浸し、前記体外診断検査に必要な量V1の検査液(10)供給すること
を含む方法。
【請求項2】
検査液(10)の総吸引量V4が3つの検査液の量V1、V2、V3の合計であり、V3は、前記反応液にV1を供給した後、前記ピペット装置に残っている検査液の余剰分である請求項1記載の方法。
【請求項3】
V1、V2、V3はそれぞれ1〜100マイクロリットルの範囲内である請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ノズル(50)を前記洗浄液に浸し、前記量V3を前記洗浄液(20)に供給することをさらに含む請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
前記検査液(10)を吸引する前に、前記ピペット装置(100)をシステム液(61)で少なくとも一部満たすことを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ノズル(50)の外側の少なくとも一部を洗浄するために前記ノズル(50)を前記洗浄液(20)に浸し、前記ピペット装置(100)の内側を洗浄するために量V5のシステム液(61)を前記洗浄液(20)に供給することをさらに含む請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記検査液(10)を吸引することが、検査液容器(12)の蓋(11)を貫通することを含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記検査液容器(12)の内部の圧力を測定し、測定された圧力が所定の範囲内である場合にのみ前記検査液(10)を吸引することを含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
くの量V4の検査液を吸引/供給する場合は高速に吸引および/または供給し、少しの量の検査液を吸引/供給する場合は低速に吸引および/または供給し、それによって総吸引/供給時間が、量V4が異なっても略一定となることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
体外血液凝固検査を行うための請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
体外診断検査を行うための量(V1)の検査液(10)をピペット操作するためのピペット装置(100)であって、
少なくとも垂直方向に移動し、検査液(10)の量を吸引/供給するように構成された吸引/供給ノズル(50)を備えた流体システム(51)と、
システム液(61)のソース(60)、および前記ソース(60)に動作可能に連結され、前記ピペット装置(100)におけるデッドボリュームを最小限に抑えるために前記流体システム(51)をシステム液(61)で少なくとも一部を満たすように構成されたシステムポンプ(71)と、
前記流体システム(51)内の前記システム液(61)を、ノズル(50)の開口部から送り出す/開口部の方に送り込むことによって、検査液(10)を吸引/供給するための、前記流体システム(51)に動作可能に連結されたピペットポンプ(70)と、
前記ノズル(50)を検査液(10)に浸して、検査を行うのに必要な量V1より多い量(V4)の前記検査液(10)を吸引し、前記ノズル(50)を洗浄液(20)に浸して、V4−V1に等しいか、またはV4−V1より少ない量(V2)の前記検査液(10)を前記洗浄液(20)に供給し、前記ノズル(50)を反応液(30)に浸して、検査に必要な量V1の検査液(10)を供給し、前記ピペット装置(100)の外側の少なくとも一部を洗浄するために前記ノズル(50)を前記洗浄液(20)に浸して、前記ノズル(50)の内側を洗浄するために量V5のシステム液(61)を前記洗浄液(20)に供給するように、前記ノズル(50)の移動とシステム液(61)のポンピングを制御するように構成された制御装置(80)とを備えることを特徴とするピペット装置。
【請求項12】
前記ノズル(50)が、検査液容器(12)の蓋(11)を貫通し、前記蓋(11)を通って量V4の検査液(10)を吸引するように構成された請求項11記載のピペット装置(100)。
【請求項13】
前記検査液容器(12)の内部の圧力を測定するための圧力センサ(91)をさらに備え、前記制御装置(80)が、測定された圧力が所定の範囲内にある場合にのみ前記検査液(10)を吸引するように前記ピペット装置(100)を制御するように構成されている請求項12記載のピペット装置(100)。
【請求項14】
吸引される前記検査液(10)の液面を検知する液面検出器(90)をさらに備え、前記制御装置(80)が、前記液面検出器(90)の情報に基づいて前記ノズル(50)の移動を制御するように構成された請求項11〜13のいずれか1項に記載のピペット装置(100)。
【請求項15】
前記制御装置(80)が、システム液(61)のポンピング速度(Ps)を調節し、それによって吸引/供給される検査液の量V4に基づいた吸引および/または供給速度とし、そのため総吸引/供給時間は、量V4が異なっても略一定となる請求項11〜14のいずれか1項に記載のピペット装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は体外診断検査、特に凝固検査を行うために、一定量の検査液をピペット操作する方法に関する。また本発明は前記方法を行うためのピペット装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
様々な種類のピペット装置とピペット操作方法が様々な分析機器において組み込まれている。様々なピペット操作方法の中で、最も困難なものは1つの検査液容器の蓋を通って一定量の検査液を吸引する必要があるものである。これは検査液が入っている検査液容器を密封するエラストマー材料の隔膜をピペット装置のノズルで孔を開けることによって通常行われている。検査液容器から部分的に抜き取る場合および/または吸引量が少量、例えば5〜10マイクロリットル以下の場合、正確な量と再現性はとりわけ実現しがたい可能性がある。これはピペット装置に空気が存在する可能性があるのと、検査液容器に陰圧、すなわち大気圧より低い圧力が存在していることによる。この陰圧は容器によって異なる可能性があり、ピペット装置内の空気に影響を及ぼし得る。そしてこれは、吸引される検査液の実際の量と、吸引された量のピペット装置内での位置とに影響を及ぼし得る。これは吸引時に第1のピペット操作エラーが起こる可能性があり(誤吸引量)、供給時に、吸引された検査液の一部のみが供給されるか、あるいは全く供給されない第2のピペット操作エラーが起こる可能性がある(誤った位置)ことを意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ピペット操作の精度を上げるために、ピペット装置はシステム液を使用して操作してもよく、それによってピペット装置内の空気を最小限に抑えられる。しかし、少量の空気が依然とシステム液内に例えば微小気泡の形で分散している可能性がある。また空気は、例えばシステム液が蒸発したために、または意図的にシステム液と吸引される検査液とを分離するために空気栓を吸引することによって、通常ノズルの先端にも存在する。この空気は容器内の圧力状態に影響を受け、前記の通り、とりわけ少量のものに対してピペット操作エラーが起こる主な原因となる可能性がある。
【0004】
さらなる可能性のあるエラー原因は、検査液を吸引する際にノズルの外側、すなわちノズルの先端と側面が湿っていることである。また、容器の蓋を通ってノズルを引き出す時に、検査液が蓋の下部に残ってしまったために吸引した検査液の減少につながったり、またはノズルの内側または外側を通っての余分な検査液の取出しにつながる。
【0005】
この問題を部分的に解決するための一つの既知の方法は、余分な検査液を吸引し、反応容器に検査に必要な量を供給する前に、空気と検査液を含んでいる可能性がある第1の量を捨てることである。
【0006】
供給は、廃棄物コンパートメントの上側および反応容器の上側にそれぞれピペットノズルを配置することによって通常行われる。そして、次の検査液を吸引する前に、ピペットノズルは洗浄液に浸すことによって外側から洗浄され、システム液を流すことによって内側から洗浄される。この供給方法もノズルの先端と側面における表面効果のためエラーとなりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここである方法が導入され、それによって検査で必要とされる量や検査液容器の種類にかかわらず検査液をより再現可能に、またより正確にピペット操作することが可能となる。
【0008】
これは、請求項1による方法および請求項12によるピペット装置によって実現される。好ましい実施形態は従属項で言及されている。
【0009】
余分な検査液を吸引することは、検査に必要な十分な量が吸引されることを確実とする。吸引された検査液の一部を洗浄液に供給することは、次の供給ステップで、ピペット装置における吸引された検査液の位置によるエラーが最小限に抑えられることを確実にする。吸引された検査液の一部を供給する前に洗浄液にピペット装置を浸すことは、供給する際のノズルの表面効果によるエラーを最小限に抑え、ノズルの外側が次のステップの前に洗浄されることを確実にする。また、ノズルを洗浄液に浸すことは、検査に影響を及ぼさないで、ノズルの先端と側面の検査液のどんな痕跡も洗浄液に置き換えられるため、ピペット操作状態は常に同じとなることを確実にし、それによって再現性が増す。検査に必要な検査液の量を供給する前にピペット装置を反応液に浸すことは、ノズルの表面効果によるエラーを最小限に抑えることを確実にする。
【0010】
開示された方法は、ピペット操作の精度がキャリーオーバーのリスクより重要である場合にとりわけ適切である。これには例えば凝固検査の場合がある。
【0011】
本発明は体外診断検査を行うための検査液の量V1をピペット操作する方法に関する。この方法はピペット装置のノズルを検査液に浸し、検査を行うのに必要な量V1より多い検査液の量V4を吸引することを含む。さらにこの方法は、ノズルを洗浄液に浸し、検査液のV4−V1に等しい、あるいはV4−V1より少ない量V2を、洗浄液の中に供給することを含む。さらに前記方法は、ノズルを反応液に浸し、検査に必要とされる検査液の量V1を供給することを含む。
【0012】
本明細書では、「検査液」の用語は、試料または試薬またはその両方を、例えば1つまたは2つ以上の試料および1つまたは2つ以上の試薬の混合物または溶液を示すために使用される。本明細書で使用されるように「試料」の用語は、例えば、その中に含まれることが疑われる1つまたは2つ以上の検体を検出するために、またはpH、色、濁度、粘度、凝固時間などの試料の物理的パラメーターを測定するためにピペットするのに適切な、および体外診断検査を受けるのが適切な液状物質のことをいう。体外診断検査の例としては、臨床化学試験、免疫学的検定、凝固試験、核酸検査などである。この方法はとりわけ凝固体外診断検査に適切である。標準的な体外凝固検査は、血小板数(Plt)、平均血小板量(MPV)、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、トロンビン凝固時間(TCT)、フィブリノゲン、アンチトロンビンIII(AT III)および粘度の測定であるが、これらに限られるものではない。この種の検査に関して、検査液に含まれる検体の濃度は、例えば免疫化学的試験に比較して通常十分高いので、キャリーオーバーによる別の検査液からそのような検体が残っていても、検査の最終結果においてその影響を無視できるほどである。一方、検体の濃度が高いため、検査で使用される検査液の量V1はできるだけ正確であることが重要である。
【0013】
試料は例えば、血液、唾液、接眼レンズ液、脳脊髄液、汗、尿、ミルク、腹水、粘液性滑液、腹腔液、羊水、組織、細胞などを含む生理液のような生物学的ソースから得ることができる。試験試料は使用前に血液から血漿を調製、粘液、溶菌等の希釈のような前処理が施されうる。処理方法は濾過、蒸留、濃縮、妨害成分の不活化、試薬の添加を含む。試料はソースから得られたものを直接使用してもよいし、または例えば別の溶液で希釈した後または例えば1つまたは2つ以上の体外診断検査を行うために試薬と混合した後などの試料の形質を変える前処理の後、使用してもよい。したがって、本明細書で使用される「試料」の用語は原試料に対してのみ使用されるのではなく、すでに処理された(ピペットで取られた、希釈された、試薬と混合された、濃縮された、精製された、増幅された、等)試料にも関する。
【0014】
凝固検査の場合、試料は通常クエン酸塩で処理された血液からの血漿である。
【0015】
「試薬」の用語は、試料の処理に必要な組成物を示すのに使用される。試薬はどんな液体でもよく、例えば反応を起こすため、または検出を可能にするため、例えば試料や他の試薬と混合する必要のある溶媒または化学溶液であってもよい。試薬は、例えば水を含む希釈液であってもよく、有機溶媒を含んでもよく、洗浄剤を含んでもよく、緩衝剤であってもよい。用語のより厳密な意味における試薬は、反応物を含む溶液であってもよく、一般的に、例えば試料の中に含まれる1つまたは2つ以上の検体に化学結合させる、または試料の中に含まれる1つまたは2つ以上の検体を化学的に形質転換することができる化合物または試剤であってもよい。反応物の例としては、酵素、酵素基質、共役染料、タンパク質結合分子、核酸結合分子、抗体、キレート剤、プロモーター、阻害剤、エピトープ、抗原等である。
【0016】
本明細書では、「反応液」は体外診断検査を行うために検査液とともに反応させられる液体を示すのに使用される。したがって、「反応液」は、検査液の特質によって次の3つの選択肢のいずれかであってもよい。第1の選択肢によれば、検査液は試料であり、反応液は少なくとも1つの試薬を含む液体である。第2の選択肢によれば、検査液は試薬であり、反応液は少なくとも1つの試料を含み、任意で少なくとも1つの試薬を含む。第3の選択肢によれば、検査液は少なくとも1つの試料と少なくとも1つの試薬を含む液体であって、反応液は少なくとも1つの試薬を含む液体である。
【0017】
「ピペット操作」の用語は、本明細書では、第1のステップで、一定量の検査液を吸引、すなわち引き出し、第2のステップで一定量の検査液を供給することを示すのに使用される。供給された液体の量は吸引された液体の量と異なっていてもよく、第1のステップと第2のステップの間に中間の吸引および/または供給のステップがあってもよい。
【0018】
したがって、「ピペット装置」は、少なくとも1つの吸引/供給ノズルを含み、検査液の量を自動的にピペット操作して使用者を補助する装置である。
【0019】
試料は一般的に試料管のような検査液容器に入れられ、よって試料管から通常吸引される。「試料管」は、患者から試料を受け取り、その試料を体外診断検査のために分析実験室に搬送するのに使用される試料収集試験管で「一次管」とよばれるものか、一次管からサンプルのアリコートを受け取るのに使用できる「二次管」のいずれかである。一次管のような試料管は蓋で閉じてもよく、部分的に減圧(evacuated)されてもよい。蓋は貫通可能なエラストマー材料を含んでもよい。
【0020】
試薬は、通常、1つまたは2つ以上の様々な種類の試薬を含む1つまたは2つ以上の試薬コンパートメント、例えば特定の体外診断検査に必要な試薬キットを含む試薬カセット、ボトルまたはパッケージのような様々な種類の検査液容器に入れられる。試薬容器は通常、例えば蒸発を防ぎ、環境からの汚染のリスクを最小限に抑えるために、蓋によって閉じられる。蓋は、例えば一定量の試薬が吸引される必要がある時はいつでも開けられ、再び閉じられるように適合されていてもよい。別の方法として、吸引が蓋を通って行われるように蓋が貫通できるように構成されていてもよい。
【0021】
したがって、検査液を吸引することは、検査液容器の蓋を貫通し、蓋を通って検査液を吸引することを含んでもよい。この量はV4とする。
【0022】
一定量の検査液を吸引するために、その方法として検査液にピペット装置のノズルを浸すことを含む。これはノズルを検査液の方へ動かし、検査液の中に入れることを意味し、そうすることによってノズルは液面より下の深さに位置し、それは所望の量を吸引するのに十分で、一方でノズルの外側が検査液に接触するのを最小限に抑える。この深さは、ノズルの外側が検査液に接触することを最小限に抑えるために、通常ほぼ数ミリメートル程度で、例えば5ミリメートル未満である。このようにして、キャリーオーバーのリスクおよび/またはノズルの外側の湿りによるピペット操作エラーはさらに低減される。吸引された検査液の量V4は、検査を行うために必要な量V1より多い。量V4は名目の量で、ピペット装置は量V4をポンプで注入する、すなわち吸引するように操作されることを意味する。しかし、実際に吸引された量V4は名目の量より多くても少なくてもよい。またそれは例えば空気を含んでいてもよく、ゆえにV4は検査液の量V4’と空気V4”の量の合計であってもよい。しかしながら、V4は、検査に必要とされる量V1より多い一定量の検査液が実際に吸引されるように、十分多い。
【0023】
前記方法は、量V4を吸引した後、ノズルを洗浄液に浸し、検査液のV4−V1に等しい、またはV4−V1より少ない量V2を洗浄液に供給することをさらに含む。
【0024】
「洗浄液」は、本明細書では、ピペット装置、およびとりわけ少なくともピペット装置の外側表面のある部分を洗うための液体を示すのに使用され、ある部分とはその前の吸引ステップで検査液に浸された、すなわち少なくともノズルの一部である。これは、ノズルを洗浄液の方へ動かし洗浄液の中に入れることを意味し、そうすることによってノズルは液面より下の深さに位置し、それは検査液が接触したノズルの外側の部分を洗うのに十分である。洗浄液は洗浄チャンバまたは洗浄容器を少なくとも一部満たすよう、または洗浄チャンバの中を流れるように適合され、それによってノズルの洗浄される部分はノズルが洗浄液に浸される時、洗浄液に接触する。洗浄液は、検査液の痕跡を除去するよう構成された、例えば酸、塩基、酵素などの例えば洗剤および/または活性成分を含む、例えば水または他の水溶液などの水または水性液体を含む例えば極性溶媒などの溶媒であってもよい。
【0025】
検査液のV4−V1に等しい、またはV4−V1より少ない量V2を洗浄液に供給することは、ノズルが洗浄液に浸されている間、吸引された量V4の一部を洗浄液に供給することを意味する。またこの場合、量V2は名目の量で、ピペット装置は量V2をポンプで送り出す、すなわち供給するように操作されることを意味する。しかし、実際に供給された量は、空気を含んでいてもよく、したがって名目の量V2より少なくてもよい。どんな場合でも、このステップによって、V1に等しい、またはV1より多い量を持つ検査液のプラグはノズルの先端にもたらされ、ノズルの外側上の検査液の痕跡は洗い流される。
【0026】
前記方法は、ノズルを反応液に浸し、検査に必要な検査液の量V1を供給することをさらに含む。これはノズルを反応液の方へ移動し、反応液の中に入れることを意味し、それによってノズルは、液面より下の深さに位置し、それは所望の量を反応液に直接供給するのに十分である。この深さはノズルの外側が反応液に接触するのを最小限に抑えるために、通常ほぼ数ミリメートル程度で、例えば、5ミリメートル未満である。このようにして、キャリーオーバーおよびノズルの外側の湿りによる検査液と反応液の間の量の比の乱れのリスクは低減される。量V1を供給することは、検査に必要な検査液の量に相当する量を反応液の中に直接ポンプで送り出すことを意味する。
【0027】
V1に相当する検査液の有効量が供給されることを確実にするために、検査液の全吸引量V4がV1、V2、V3の3つの検査液の量の合計であり、V3は反応液の中にV1を供給した後、ピペット装置の中に残った検査液の余剰分であるようにV4は十分多く取られてもよい。余剰分の検査液V3を有することは、検査液と、もしあれば、システム液との接触の可能性による希釈効果の可能性を最小限に抑えるためにも有用である。これは、余剰分の検査液V3がV1と検査液の間にある場合、反応液の中に供給された検査液V1の量がシステム液を含む可能性が低いことを意味する。空気のような気体のプラグがV3とシステム液の間にある場合にも、このリスクはさらに低減される。
【0028】
ある実施形態によると、V1、V2、V3はそれぞれ1〜100マイクロリットルの範囲内である。ある実施形態によると、V1は2〜50マイクロリットルの範囲内であり、V2とV3はそれぞれ1〜20マイクロリットルの範囲内である。特に、ある実施形態によると、V1は検査のために異なる量の検査液を必要とする異なる体外診断検査に対して異なってもよく、一方でV2および/またはV3は一定に保たれる。したがって、前記方法は、異なる検査に対して異なる検査液の量V4を吸引することを含んでもよく、これは異なる量の検査液V1を必要とし、一方でV2および/またはV3は一定に保たれる。
【0029】
余剰分の検査液V3が、V1を供給した後、ピペット装置に残っているある実施形態によれば、前記方法は、ノズルを洗浄液に浸し、量V3を洗浄液に供給することをさらに含む。このステップは、V2が洗浄液の中に供給される洗浄/供給ステップに類似している。これはノズルを洗浄液の方に移動し、洗浄液の中に入れ、それによってノズルは液面より下の深さに位置し、反応液が接触したノズルの外側の部分を洗浄するのに十分であることを意味する。洗浄液および/または洗浄チャンバまたは洗浄容器は便宜上、その前の洗浄ステップで使用されたものと同じであってもよいし、あるいはこの洗浄ステップ用により適切に構成してもよい。このステップの効果は反応液が接触したノズルの外側を洗浄することと、供給された時にノズル内にある検査液がノズルの外側を汚染しないようにすることである。それによってピペット装置を、前記方法が新しい検査液で繰り返される前に、外側から洗浄することができる。
【0030】
ある実施形態によれば、前記方法は、検査液を吸引する前にピペット装置の流体システムの少なくとも一部にシステム液を満たすことを含む。本明細書では、「システム液」はピペット装置のピペット操作に関連し、ピペット装置のデッドボリュームを最小限に抑える機能を持つ液体を示すのに使用される。これは流体システム内の空気のような圧縮性媒体の量を最小限に抑え、それによって流体システムの剛性およびピペット操作の精度を高めることを意味する。このシステム液は例えば水や他の水溶液などの水性液体であってもよい。あるいは、システム液は検査液と混合しない液体であってもよい。ある実施形態によれば、システム液は洗浄液と同じである。ある実施形態によれば、システム液は水で、洗浄液も水である。
【0031】
ある実施形態によれば、前記方法は、検査液を吸引する前にピペット装置内に気体のプラグを挿入することをさらに含み、それによって、検査液を吸引した後、プラグはシステム液と検査液の間に位置する。このプラグは、例えば拡散による、結果的にたとえば検査液の希釈となり得る検査液とシステム液の混合を防ぐ、または最小限に抑えることに役立つ。
【0032】
ある実施形態によれば、前記方法は、ピペット装置の外側の少なくとも一部を洗浄するためにノズルを洗浄液に浸し、ピペット装置の内部を洗浄するために、洗浄液にシステム液の量V5を供給することをさらに含む。このステップは、V1を供給した後ピペット装置に残った余剰分の量V3を供給する前記ステップと一緒に行ってもよい。これは、検査液が接触したピペット装置の内側を洗浄するのに十分な量のシステム液が、同じ供給ステップでノズルからポンプで送り出されることを意味し、ここで検査液の余剰量V3は全て洗浄液に供給される。したがって、同じステップで、検査液に続くシステム液はノズルの内側を洗浄し、一方でノズルが浸される洗浄液はノズルの外側を洗浄する。
【0033】
ある実施形態によれば、前記方法は、多い量の検査液V4を吸引/供給する時は、高速で吸引および/または供給し、少ない量の検査液を吸引/供給する時は、低速で吸引および/または供給することを含み、それによって総吸引/供給時間はV4の量が異なっても略一定となる。このようにして、様々な検査のサイクル時間が、検査に必要な検査液の量にかかわらず、ピペット操作による影響を受けない。
【0034】
本発明は、また、体外診断検査を行うための検査液の量V1をピペット操作するピペット装置に関する。このピペット装置は、少なくとも垂直方向に移動し、一定量の検査液を吸引/供給するように構成された少なくとも1つの吸引/供給ノズルを備えた流体システムを備えている。このノズルは、例えば中空の鋼製針などの再使用可能な洗浄可能な針として、または例えば異なる検査液をピペット操作する前に、例えば定期的に付け替えるように構成された、例えば使い捨てのピペットの先端などのピペットの先端として具体化されてもよい。前記ピペット装置は、例えばガイドレールによって平面内で1つまたは2つの方向に移動可能な、および例えばスピンドルドライブによって平面に対して直交方向に移動する第3の方向に移動可能な移動ヘッドに取り付けられてもよい。
【0035】
ノズルは検査液容器の蓋を貫通し、蓋を通って検査液の量V4を吸引するよう構成されてもよい。
【0036】
ピペット装置はシステム液のソースをさらに含んでもよい。特に、流体システムは流体的にシステム液のソースをノズルに接続するための管と、システム液を流体システムに送り込むためのシステムポンプを含んでもよい。
【0037】
ピペット装置は、ノズルから流体システムのシステム液を送り出す/ノズルの方に流体システムのシステム液を送り込むことによって、検査液を吸引/供給するための流体システムに動作可能なように連結されるピペットポンプをさらに備えていてもよい。ポンプは例えばシリンジ型または当該技術において公知の任意の他の型であってもよく、V4の範囲内の量で液体を送り出すように構成されてもよい。
【0038】
ピペット装置は、ノズルの移動およびシステム液のポンピングを制御するよう構成された制御装置をさらに備えていてもよく、それによってノズルを検査液に浸し検査を行うのに必要な量V1より多い検査液の量V4を吸引し、ノズルを洗浄液に浸し検査液のV4−V1に等しいまたはV4−V1より少ない量V2を洗浄液に供給し、ノズルを反応液に浸し検査に必要な検査液の量V1を供給し、ピペット装置の少なくとも一部外側を洗浄するためにノズルを洗浄液に浸しノズルの内側を洗浄するためにシステム液の量V5を洗浄液に供給する。
【0039】
制御装置は、例えば少なくとも検査液のピペット操作に関連した操作計画に従って操作を行うための指示が備わっているコンピュータ可読プログラムを実行するプログラマブル論理制御装置として具体化されてもよい。特に、操作計画はピペット装置の吸引、供給、移動以外の操作を含んでもよい。例えば、操作計画は次の操作の1つまたは2つ以上を含んでもよい。それは、検査液容器の移動、検査液容器の開閉、検査液容器の蓋の貫通、反応容器の移動、ピペットの先端の装着および/または廃棄、および例えば吸入および吐出(sip and spitting)などによる検査液の混合である。特に制御装置は所定のサイクル時間内に一連のステップを実行するためのスケジューラを含んでいてもよい。制御装置は分析の種類、緊急性等に応じて、体外診断検査の順番を決めることをさらに含んでもよい。
【0040】
ピペット装置は、ノズルが蓋を貫通する時、蓋によって閉じられた検査液容器の内部の圧力を測定するための圧力センサを備えていてもよい。測定された圧力が所定の範囲内にある場合のみ検査液を吸引するように、制御装置はピペット装置を制御するように構成されてもよい。特に、検査液容器内の圧力がピペット操作の精度に関して重要な役割を果たし、ピペット装置は圧力の最適範囲内で動作するように構成され得るので、前もって圧力を測定することは不要なプロセスステップを割愛することができる。もし測定された圧力が所定の範囲外であった場合、制御装置はその試料に関連したピペット操作を終わらせることができ、検査液に関する体外診断検査を行わないでノズルの洗浄に進むことができる。別の方法では、このピペット操作は続行可能で、検査液容器内の不適切な圧力範囲のため、体外診断検査の結果が不正確である可能性があることを示すことができる。ピペット装置に動作可能なように連結された圧力センサは、当該技術において公知であり、本明細書ではこれ以上説明しない。
【0041】
ピペット装置は吸引される検査液の液面を検知するための液面検出器を備えていてもよい。そうした場合、制御装置は、液面検出器の情報に基づいてノズルの移動とシステム液のポンピングを制御するよう構成されてもよい。液面検出器は、例えば、コンダクタンスまたはキャパシタンスの測定に基づいた、光検出に基づいた、圧力変化の検出に基づいた等の、当該技術において公知のいかなる種類のものでもよい。ピペット装置に動作可能なように連結された液面検出器は当該技術において公知であり、本明細書ではこれ以上説明しない。
【0042】
ある実施例によれば、制御装置はシステム液のポンピング速度を調整し、それによって吸引/供給される検査液のそれぞれの量V4に基づいた吸引および/または供給の速度を調整するよう構成され、それによって総吸引/供給時間は様々な量V4に対して略一定となる。
【0043】
ピペット装置は、作業セルに組み込まれていてもよい、すなわち内蔵されていてもよいし、または作業セルに動作可能なように接続されたシステムのモジュールであってもよい。「作業セル」は、独立型装置か、例えば診断目的のための試料の定性的および/または定量的評価、および/または検知前の試料の分類および/または調製、または検知後の試料の保存および/または廃棄など体外診断検査で使用者を補助する、大型装置内のモジュールである。特に、作業セルは、分析および/または分析前および/または分析後試料処理ステップに関連する場合がある。作業セルは相互に連結し、少なくとも一部相互に依存することができる。例えば、それぞれが試料処理ワークフローの専用タスクを実行し、それが別の作業セルに進む前の必須条件となり得る。あるいは、作業セルは相互に独立して機能してもよい。例えば、それぞれが個別のタスクを実行したり、例えば同じ試料に関してまたは異なる試料に関して異なる種類の分析をしたりなどである。一般的に、作業セルは試料管または試料管もしくはマルチウェルプレートを含む試料ラックを搭載、離脱、移送、および/または保管するためのユニット、試薬容器または試薬カセットを搭載、離脱、移送、および/または保管するためのユニット、キュベットなどの反応容器を搭載、離脱、移送、保管、および/または洗浄するためのユニット、ピペットチップまたはチップラックを搭載、離脱、移送および/または保管するためのユニットを備えていてもよい。作業セルは例えばバーコードやRFIDリーダーなどのセンサを備えた識別ユニットを備えていてもよい。作業セルはピペットチップまたは針、または例えばキュベット、混合パドル等の反応容器を洗浄するための洗浄ステーションを備えていてもよい。
【0044】
さらなる他の目的、機能、利点が以下の説明および添付の図面に示され、それらは例示的な実施形態を示し、その基本原理をより詳しく説明するために機能する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】体外診断検査を行うためのピペット装置および一定量の検査液をピペット操作する方法の一例の正確な縮尺ではない概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は体外診断検査を行うための液体試料10の量V1をピペット操作するためのピペット装置100の一例を概略的に示す。ピペット装置100は、少なくとも垂直方向に移動し一定量の液体試料10を吸引/供給するよう適合された吸引/供給ノズル50を含む流体システム51を含む。特に、ノズル50は試料管12の蓋11を貫通し、その中に含まれた液体試料10の量V4を吸引するように構成され、蓋11は試料管12を密封するエラストマー材料を含み、試料管12は内部スペース13を有し、部分的に減圧されている。したがって試料管12の内部の圧力は大気圧より低い。特に、ノズル50は再使用可能なスチール針であり、一端に吸引/供給のための開口部を含む。ピペット装置100はシステム液61のソース60と、流体システム51を少なくとも部分的にシステム液61で満たし、ノズル50からシステム液を注入することによって、流体システム51の内部をシステム液61で洗浄するように構成されたシステムポンプ71を備えている。システム液61は水である。ピペット装置100は、流体システム51のシステム液61を、ノズル50の開口部から離れるように/開口部へ向かうように移動させることによって液体試料10を吸引/供給するために流体システム51に動作可能なように連結されたピペットポンプ70をさらに備えている。ピペットポンプ70は、少なくとも液体試料10の量V4をピペット操作するように適合された容積を有するシリンジ型である。
【0047】
ピペット装置100は、洗浄ステップと供給ステップの間およびその後に、ノズル50の移動、および液体試料10の量V4を吸引し液体試料の量V1を液体試薬30に供給するようなポンプ70の動作を制御するよう構成された制御装置80をさらに備えている。
【0048】
ピペット装置100は、試料管12の中の液体試料10の液面の高さを検出する液面検出器90をさらに備えている。制御装置80は液面検出器90から液面の高さの情報を受け、ノズル50の開口部が液面より下の所望の深さに位置するようにノズル50を動かすように構成されている。制御装置80は液体試料10の所望の量V4が吸引されるようにポンプ70を制御する。
【0049】
制御装置80は、システム液61のポンピング速度Psを調整し、それによってピペット操作される液体試料10の量V4に基づいたピペットポンプ70の吸引および/または供給の速度を調整するように構成され、そのため総吸引/供給時間はV4の量が異なっても略一定となる。
【0050】
ピペット装置100は、試料管12の内部の圧力を測定するための圧力センサ91をさらに備え、制御装置80は、測定された圧力が所定の範囲内である場合のみ試料10を吸引するようピペット装置100を制御するように構成される。
【0051】
また図1は、体外凝固検査を行うためにピペット装置100を使用して液体試料10をピペット操作する方法を概略的に示す。連続的なステップは左から右に矢印で示される。明確にするために、第2ステップからノズル50のみがピペット装置100の構成品として示される。
【0052】
前記方法には液体試料を吸引する前にノズル50内に空気を入れることを含み、そのため液体試料10を吸引した後、空気62のプラグはシステム液61と液体試料10の間に配置される。
【0053】
前記方法は、液面検出器90による試料管12における液体試料10の高さを検出すること、ノズル50を試料管12の蓋11を通って液体試料10の液面の方へ移動させること、ノズル50をその開口部が液面より下の所望の深さに位置するまで液体試料10の中に浸すこと、および体外診断検査を行うのに必要な量V1より多い液体試料10の量V4を吸引することを含む。液体試料10はクエン酸塩で処理された血漿である。
【0054】
前記方法は、試料管12からノズル50を取り出すことをさらに含む。この操作の間、流体システム51にすでに存在する空気の弾性と試料管12の内側と外側の圧力変化のため、さらなる空気がノズル50に入れられてもよい。したがって総吸引量V4は吸引された液体試料の量V4’と吸引された空気量V4”の合計となる。
【0055】
前記方法は、洗浄チャンバ22内に含まれた洗浄液20にノズル50を浸すこと、および液体試料10のV4−V1より少ない量V2を洗浄液20に供給すること、それによってノズル50の先端にある空気V4”のプラグも供給することをさらに含む。したがって供給された検査液V2は、表面張力によってノズル50の外側に付着しなくなる。それと同時に、洗浄液20と接触するノズル50の外側は、吸引ステップの間に付着した可能性のある液体試料10の痕跡から洗浄される。液体試料10の一定量はノズル50内に残り、それはV1プラス液体試料10の余剰分V3、すなわちV1+V3に相当する。
【0056】
この方法は、ノズル50を反応容器32内に含まれた液体試薬30に浸すこと、および検査に必要な液体試料10の量V1を供給し、一方で液体試料10の余剰量V3をノズル50内に残す。
【0057】
この方法は、ノズル50を洗浄液20に浸し、洗浄液20に量V3を供給することをさらに含む。この方法は、この同じ供給ステップで、システム液61の量V5を洗浄液20に供給し、それによって空気62のプラグも供給することをさらに含む。このようにして、ノズル50の内側と洗浄液50に浸されたノズル50の外側部分の両方が洗浄される。ノズル50は、試料管12の蓋11を貫通したノズルの外側部分を洗浄するように、前回の洗浄ステップよりも深い洗浄液20内の位置まで浸してもよい。
【0058】
ノズル50における液体試料10の吸引された量V4’の位置は、上述の影響によって不正確に定められ、実際に供給された液体試料10の量V2とV3もまた不正確に定められる。しかし、試験に必要とされる、実際に供給された液体試料10の量V1は、液体試料10の2つの量V2とV3の間にあり、V2とV3の近くにある空気のプラグに影響を受けないので、正確に定められる。言い換えれば、ノズル50におけるV4の実際の位置によって、供給される量V2とV3は様々な量の液体試料10を含んでよく、一方、V1は不変である。
【0059】
前記方法は、別の試料に対して繰り返すことができ、量V1ひいてはV4は、その試料を用いて行われる個別の検査によって異なってもよい。
【0060】
特に、この方法は様々な検査に対して様々な検査液量V4を吸引することを含み、検査液V1の様々な量を必要とし、一方でV2とV3を一定に保つ。ある例によれば、V1は検査によって2から50マイクロリットルまで幅があってもよい。ある例によれば、V2は5マイクロリットルでV3は8マイクロリットルだが、V2とV3は例えばノズル50のサイズや内部容積のようなピペット装置の特性によって適合されてもよい。例えば、試料10の活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)またはプロトロンビン時間(PT)を測定するために、試料10の全量V4を63マイクロリットル吸引し、この場合、検査に必要で供給される試料10の量V1は50マイクロリットルである。別の例によれば、アンチトロンビン(AT III)検査を行うために、試料10の全量V4を15マイクロリットル吸引し、この場合、検査で必要とされ供給される試料10の量V1は2マイクロリットルである。
【0061】
この方法は、検査液V4の多くの量を吸引する時は高速で吸引し、また検査液V4の少ない量を吸引する時は低速で吸引することをさらに含み、そうすることによって総吸引時間はV4の量が異なっても略一定となる。さらにこの方法は、検査液V1の多くの量を供給する時は高速で供給し、検査液V1の少しの量を供給する時は低速で供給することを含み、それによって総供給時間はV4の量が異なっても略一定となる。
【0062】
上述の説明に照らすと、明らかに多くの修正および変更が可能である。したがって、添付の請求項の範囲内で、本発明は具体的に考案されている以外の他の方法で実施されてもよいことが理解される。
【符号の説明】
【0063】
10 検査液
11 蓋
12 検査液容器
20 洗浄液
30 反応液
50 ノズル
51 流体システム
60 ソース
61 システム液
70 ピペットポンプ
71 システムポンプ
80 制御装置
90 液面検出器
91 圧力センサ
100 ピペット装置
図1