(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸心が互いに平行となるように所定の隙間をあけて隣接して配置されると共に互いに異なる方向へ回転する一対のロータを備え、前記一対のロータの両端側には各ロータに加わるラジアル方向の荷重を支持する軸受が設けられており、各ロータに加わるスラスト方向の荷重が両端側の前記軸受のうち一端側の前記軸受で支持された密閉式混練装置において、
前記一端側の軸受の外輪を固定する外輪固定部材または前記外輪固定部材が取り付けられたケーシングと、前記一端側の軸受の内輪を固定する内輪固定部材または前記内輪固定部材が取り付けられたロータとの軸方向に沿った相対変位を求め、求められた前記相対変位に乗じることで前記ロータに加わるスラスト荷重を算出するための換算係数の校正を行う、密閉式混練装置のスラスト荷重計測装置の校正方法であって、
前記校正は、前記一端側の軸受を固定するための締結ボルトに軸方向に加わる荷重を計測可能な軸力計測ボルトを用いて計測される軸力を、当該軸力が計測されたときの前記相対変位で除することであること、
を特徴とする密閉式混練装置のスラスト荷重計測装置の校正方法。
前記外輪固定部材を前記ケーシングに締結する外輪固定部材用の前記締結ボルトに、前記軸力計測ボルトが用いられていることを特徴とする請求項1に記載の密閉式混練装置のスラスト荷重計測装置の校正方法。
前記内輪固定部材を前記ロータに締結する内輪固定部材用の前記締結ボルトに、前記軸力計測ボルトが用いられていることを特徴とする請求項1または2に記載の密閉式混練装置のスラスト荷重計測装置の校正方法。
混練中の前記ロータに発生するスラスト荷重のうち最大のスラスト荷重を、前記ロータに設けられた前記締結ボルトの本数で除した値以下の荷重を前記軸力計測ボルトの初期軸力とし、
前記軸力計測ボルトのすべてに前記初期軸力を上回る軸力が加わった際に、前記軸力計測ボルトで計測される軸力を用いて前記換算係数を校正することを特徴とする請求項1または3に記載の密閉式混練装置のスラスト荷重計測装置の校正方法。
混練中の前記ロータに発生するスラスト荷重のうち最大のスラスト荷重を、前記ケーシングに設けられた締結ボルトの本数で除した値以下の荷重を前記軸力計測ボルトの初期軸力とし、
前記軸力測定ボルトのすべてに前記初期軸力を上回る軸力が加わった際に、前記軸力計測ボルトで計測される軸力を用いて前記換算係数を校正することを特徴とする請求項1または2に記載の密閉式混練装置のスラスト荷重計測装置の校正方法。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゴム、プラスチック等の被混練材料を混練する密閉式混練装置として特許文献1に開示されているものがある。特許文献1の密閉式混練装置は、混練室に圧入された被混練材料を当該混練室内に設けられた2本のロータにより混練し、所望の混練状態となった被混練材料を外部に取り出す構成となっている。これら2本のロータは軸の両側が軸受で回転自在に支持されており、それぞれのロータのドライブ側の端部は外部へ突出する入力軸となっていて、隣接配置された駆動装置の出力軸とこれらの入力軸とがギヤカップリング等の接続装置を介して接続されている。
【0003】
特許文献1の密閉式混練装置では、ゴム、プラスチック等の被混練材料は各種の添加剤とともに上部の投入口からホッパ内に所定量づつ投入され、この被混練材料はフローティングウェイトの押し込み作用によって密閉状態の混練室内に圧入される。このようにして混練室に圧入された被混練材料は互いに異方向に回転するロータにより混練が行われる。
つまり、それぞれのロータには減速機を介して原動機の駆動力(回転)が伝達されており、各ロータが混練室の内壁を掃くように回転すると共に互いに異方向に回転し、混練室内に圧入された樹脂原料(被混練材料)が各種の添加剤とともに混練され、所望の混練状態となった被混練材料が外部に取り出される。
【0004】
また、ロータの外周面には翼(混練翼)が設けられており、特許文献1の密閉式混練装置ではこの翼はロータの軸線に対して螺旋状にねじれた構造となっている。このねじれた翼の作用で、ゴムやプラスチックの被混練材料は軸方向に押し込まれ、軸方向に沿って被混練材料を送る材料の流れが発生する。また、2本のロータにおいて逆方向の流れが生じるように翼はねじられており、チャンバー内を循環するように被混練材料を流すことで効果的な混練が実現される。
【0005】
ところで、特許文献1に開示された密閉式混練装置、言い換えれば、一般的な密閉式混練装置においては、ロータに形成された螺旋状にねじれた翼により被混練材料を軸方向に沿って送ると、その反作用で軸方向を向く反力(スラスト荷重)が発生する。このようなスラスト荷重は、ロータを支持する軸受の寿命に大きな影響を与えるので、軸受の寿命を判断するためにはスラスト荷重を精確に計測することが必要となる。また、スラスト荷重が精確に把握できない場合は、軸受に設計以上のスラスト荷重が加わっていたり、逆にオーバースペックの軸受を用いていたりするといった問題が生じる可能性もある。それゆえ、上述した種類の軸受を採用した場合にはロータに加わるスラスト方向の荷重を精確に計測できる手段を設けるのが好ましい。
【0006】
例えば、特許文献2には、軸受本体とケーシングとの間に荷重センサを設けて、軸受に作用する荷重を計測する方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献2の方法は、ラジアル荷重(正確にはロール同士が径方向に離間する場合の荷重)を計測するものであるが、スラスト荷重を計測する場合にも十分適用できると思われる。
しかしながら、この方法で用いられる計測装置は構造が複雑で、設置に比較的大きなスペースを必要とし、設置スペースの制約で設置が困難となる場合がある。また、既設の混練設備に対して追加で取り付ける場合には、混練機のケーシングに対して大幅な改造を行わなくてはならなくなる可能性もあり、既存の設備に設置することも困難である。
【0009】
この問題に対応するために、軸受の内輪と外輪との間の相対変位を変位センサなどで計測し、求められた相対変位に換算係数を乗じることで、ロータに加わるスラスト荷重を算出するスラスト荷重の計測方法が考えられる。この計測方法は非常に有用な方法であるものの、換算係数が常に正しい値となっていなければ、精確なスラスト荷重を算出することができない。そのため、換算係数を適宜校正して適正な値に維持する必要がある。
【0010】
このような換算係数の校正、言い換えれば、計測装置の校正は、既知のスラスト荷重をロータに与えてその時に生じる相対変位を計測することで実施することができる。
ただ、換算係数の値は軸受内部の摩擦状態やロータの回転の有無により変化する為、校正に用いる相対変位は、ロータを回転させた状態で且つロータに対し生産時と同様なスラスト荷重を与えて計測するといった事前実験が必要となる。このような事前実験において、ロータに対して大きなスラスト荷重を付与する機構やロータを回転させる機構を設けることは大変な事項であり、計測装置自体も大がかりで複雑なものとなる。
【0011】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、相対変位をスラスト荷重に換算するための換算係数を、簡便且つ精確に求めことができる密閉式混練装置のスラスト荷重計測装置の校正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の密閉式混練装置のスラスト荷重計測装置の校正方法は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の密閉式混練装置のスラスト荷重計測装置の校正方法は、軸心が互いに平行となるように所定の隙間をあけて隣接して配置されると共に互いに異なる方向へ回転する一対のロータを備え、前記一対のロータの両端側には各ロータに加わるラジアル方向の荷重を支持する軸受が設けられており、各ロータに加わるスラスト方向の荷重が両端側の前記軸受のうち一端側の前記軸受で支持された密閉式混練装置において、前記一端側の軸受の外輪を固定する外輪固定部材または前記外輪固定部材が取り付けられたケーシングと、前記一端側の軸受の内輪を固定する内輪固定部材または前記内輪固定部材が取り付けられたロータとの軸方向に沿った相対変位を求め、求められた前記相対変位
に乗じること
で前記ロータに加わるスラスト荷重を算出する
ための換算係数の校正を行う、密閉式混練装置のスラスト荷重計測装置の校正方法であって、前記校正は、前記一端側の軸受を固定するための締結ボルト
に軸方向に加わる荷重を計測可能な軸力計測ボルトを用い
て計測される軸力
を、当該軸力が計測されたときの前記相対変位
で除することであること、を特徴とする。
【0013】
なお、好ましくは、前記外輪固定部材を前記ケーシングに締結する外輪固定部材用の前記締結ボルトに、前記軸力計測ボルトが用いられているとよい。
なお、好ましくは、前記内輪固定部材を前記ロータに締結する内輪固定部材用の前記締結ボルトに、前記軸力計測ボルトが用いられているとよい。
なお、好ましくは、混練中の前記ロータに発生するスラスト荷重のうち最大のスラスト荷重を、前記ロータに設けられた前記締結ボルトの本数で除した値以下の荷重を前記軸力計測ボルトの初期軸力とし、前記軸力計測ボルトのすべてに前記初期軸力を上回る軸力が加わった際に、前記軸力計測ボルトで計測される軸力を用いて前記換算係数を校正するとよい。
【0014】
なお、好ましくは、混練中の前記ロータに発生するスラスト荷重のうち最大のスラスト荷重を、前記ケーシングに設けられた締結ボルトの本数で除した値以下の荷重を前記軸力計測ボルトの初期軸力とし、前記軸力測定ボルトのすべてに前記初期軸力を上回る軸力が加わった際に、前記軸力計測ボルトで計測される軸力を用いて前記換算係数を校正するとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の密閉式混練装置のスラスト荷重計測装置の校正方法によれば、相対変位をスラスト荷重に換算するための換算係数を、簡便且つ精確に求めて、スラスト荷重計測装置の校正を適正に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のスラスト荷重計測装置1の校正方法を説明する。
まず、スラスト荷重計測装置1の校正方法の説明に先立ち、スラスト荷重計測装置1が設けられる密閉式混練装置2について説明する。
図1は、本実施形態の密閉式混練装置2を模式的に示したものである。
図1に示すように、本実施形態の密閉式混練装置2は、内部が混練室3とされたハウジング4と、このハウジング4の内部に設けられた一対のロータ5、5とを備えており、これら一対のロータ5、5で混練室3に圧入されたゴムやプラスチックなどの被混練材料を混練し、所望の混練状態となった被混練材料を外部に取り出す構成となっている。
【0018】
図2に示すように、これら一対のロータ5、5はいずれも軸方向の両端側を軸受6、7で回転自由に支持されている。また、ロータ5の軸方向の一端側(反駆動側)はハウジング4の外部へ突出していないが、軸方向の他端側(駆動側)はハウジング4の外部へ突出しており、この突出したロータ5の他端側にはギヤカップリング等の接続装置が接続されていて、駆動装置で発生した駆動力が接続装置を経由して入力されている。
【0019】
なお、以降の説明において、
図2の紙面の左側を、スラスト荷重計測装置1を説明する際の「反駆動側」または「一端側」、また紙面の右側を、スラスト荷重計測装置1を説明する際の「駆動側」または「他端側」という。また、
図1の紙面の上側を、スラスト荷重計測装置1を説明する際の「上側」、また紙面の下側を、スラスト荷重計測装置1を説明する際の「下側」という。さらに、
図2の紙面の上側を、スラスト荷重計測装置1を説明する際の「左側」、また紙面の下側を、スラスト荷重計測装置1を説明する際の「右側」という。
【0020】
図1に示すように、混練室3の上部には、上方に向かって開口する開口部8が形成されている。この開口部8の上側には、ゴムやプラスチック等の被混練材料を上下方向に沿って案内(導入)する材料導入路9が形成されている。また、材料導入路9の上部には下方に向かって揺動させることで開口可能なホッパ10が設けられており、このホッパ10からはゴムやプラスチックなどの母材に添加剤などが配合された被混練材料が投入されている。また、材料導入路9の内部にはフローティングウエイト11が材料導入路9の形成方向(上下方向)に沿って移動可能に設けられており、フローティングウエイト11を下方に移動させることで材料導入路9の内部に投入された被混練材料を下方の混練室3内に押し込むことが可能となっている。
【0021】
混練室3は、2つの円筒状の空洞を、外周面の一部が互いに重なり合うように左右に並べたような形状(軸垂直方向に沿った断面がめがね穴の形状)に形成されており、その内部には上述した一対のロータ5、5が配備されている。これら一対のロータ5、5は、2つの円筒状の空洞の中心に軸心が略一致するようにしてそれぞれ配備されている。
図2に示すように、各ロータ5の外周面には被混練材料を混練する翼12が形成されている。このロータ5の外周面に設けられた翼12は、いずれのロータ5でも軸方向(軸線)に対してねじれた構造とされており、右側のロータ5と左側のロータ5とでは被混練材料に互いに軸方向の逆向きに流れを生起できるように形成されている。
【0022】
ロータ5の両端側にはこのロータ5を回転自在に支持する軸受6、7がそれぞれ設けられており、これら両端側の軸受6、7は、ラジアル方向の荷重のみならずスラスト方向の荷重も支持できる軸受が採用されている。このような軸受6、7には複列の円錐ころ軸受けや自動調芯ころ軸受が用いられる。なお、ロータ5の他方側の軸受7は、ロータ5の熱伸びを吸収する為に、スラスト方向にスライドできる構造となっている。
【0023】
また、ロータ5の軸方向の他端側には、原動機などの駆動装置で発生した回転駆動力(回転)を減速して伝達する減速機が設けられており、この減速機で減速された回転駆動力が上述した接続装置(減速機の軸芯とロータ5の軸芯との偏差を許容すると共に、ロータ5の軸方向の移動を許容可能なギヤカップリング)を介して各ロータ5、5に入力されていて、各ロータ5、5が互いに異方向に回転するようになっている。さらに、ロータ5の軸方向の一端側は先端に向かってテーパ状に形成されており、このテーパ状の部分に上述した軸受の内輪13が取り付けられている。
【0024】
すなわち、上述した密閉式混練装置2では、翼12が混練室3の内壁を掃くようにロータ5が回転して、ロータ5に形成された翼12により混練室3内に圧入された被混練材料が各種の添加剤とともに混練される。このとき、各ロータ5、5は、翼12のねじれ方向が同じで回転方向が互いに逆となっているので、
図2の上側に示す左側のロータ5では、軸方向の他端側(駆動側)から一端側(反駆動側)に向かうスラスト荷重が発生し、
図2の下側に示す右側のロータ5では、軸方向の一端側(反駆動側)から他端側(駆動側)に向かうスラスト荷重が発生する。ここで、
図2の上側に示すロータ5および下側に示すロータ5で発生するスラスト荷重は、いずれも一端側の軸受6で支持される。
【0025】
このようにしてロータ5を回転させることで混練が行われた被混練材料は、混練室3の下側に形成された排出口14のドロップドア15を開くことで、排出口14から混練室3の外部に取り出される。そして、被混練材料を取り出した後は、ドロップドア15を再び上方に揺動して混練室3の排出口14を閉塞し、投入口からフローティングウエイト11を用いて次バッチの被混練材料を混練室3内に押し込む。このようなバッチ式の混練サイクルを繰り返すことで、上述した密閉式混練装置2では混練が行われる。
【0026】
ところで、被混練材料の混練に伴ってロータ5に発生するスラスト荷重は、ロータ5を支持する軸受(スラスト軸受)の寿命に大きな影響を与えるので、軸受の寿命を判断するためにはスラスト荷重を精確に計測することが必要となる。そのため、上述した密閉式混練装置2には、スラスト荷重を受ける一端側の軸受6に対して、この軸受6の外輪16に対する内輪13の軸方向に沿った変位を相対変位として計測し、計測された相対変位に換算係数を乗じることでスラスト荷重を精確に算出するスラスト荷重計測装置1が設けられている。
【0027】
次に、本発明のスラスト荷重計測装置1について説明する。
上述した一端側の軸受6に関しては、その外輪16は、外輪16のさらに外周側に設けられたケーシング18に対して、外輪固定部材17(ベアリング抑え)を介して取り付けられている。また、軸受の内輪13は、内輪13のさらに内周側に設けられたロータ5に対して、内輪固定部材20(ベアリング抑え)を介して取り付けられている。これらの外輪固定部材17及び内輪固定部材20は、外輪16や内輪13の一端側に隣接して配備されている。外輪固定部材17は後述する締結ボルトを用いてケーシング18に締結(固定)されており、また内輪固定部材20は後述する締結ボルトを用いてロータ5の一端側端面に締結(固定)されている。
【0028】
具体的には、スラスト荷重計測装置1は、一端側の軸受6の外輪側に設けられる部材、言い換えれば外輪固定部材17または外輪固定部材17が取り付けられたケーシング18に、少なくとも1つ以上の変位センサ19を備えている。そして、この変位センサ19は、外輪16に対する内輪13の軸方向に沿った相対変位、つまり一端側の軸受6の内輪13を固定する内輪固定部材20または内輪固定部材20が取り付けられたロータ5の位置を測定可能とされている。また、スラスト荷重計測装置1には、この変位センサ19で計測された相対変位に換算係数を乗じることにより、ロータ5に加わるスラスト荷重を算出する荷重算出部(図示せず)が設けられている。
【0029】
つまり、スラスト荷重計測装置1は、外輪固定部材17またはケーシング18に対して、内輪固定部材20またはロータ5が軸方向に沿ってどの程度変位しているかを示す相対変位を変位センサ19で計測し、荷重算出部において変位センサ19で計測された相対変位に換算係数を乗じることでロータ5に加わるスラスト荷重を算出している。
ところで、スラスト荷重計測装置1でロータ5に発生するスラスト荷重を精度良く求めるためには、相対変位から適正なスラスト荷重が算出されるように校正を行う必要がある。このようなスラスト荷重計測装置1の校正は、スラスト荷重計測装置1で実際に計測されるスラスト荷重が、真のスラスト荷重と一致するように、換算係数の値を適正なものに修正することで行われる。
【0030】
ところが、上述したスラスト荷重計測装置1の校正は、実際にスラスト荷重計測装置1が設けられた密閉式混練装置2、言い換えれば実機で行われる必要がある。つまり、軸受内部の摩擦状態やロータ5の回転の有無によりロータ5に加わるスラスト荷重は変化する為、精確な校正を行うためには実際の密閉式混練装置2において混練時に発生するような大きなスラスト荷重を加えつつロータ5を回転させて、校正を行うのが望ましい。
【0031】
そこで、本発明者は、スラスト荷重計測装置1を校正する際には、軸受6、7を固定する締結ボルトを、軸方向に加わる荷重を計測可能な軸力計測ボルト26に交換し、軸力計測ボルト26で計測される軸力を用いて校正を行うことに想到した。このような軸力計測ボルト26を用いれば、実際にスラスト荷重計測装置1が設けられる密閉式混練装置2において、実際に混練を行う場合と同じ条件で校正を行うことが可能となり、スラスト荷重計測装置1の校正を高精度に実施できることが可能になる。
【0032】
すなわち、本発明のスラスト荷重計測装置1の校正方法は、上述した一端側の軸受6を固定するための締結ボルトに、軸方向に加わる荷重を計測可能な軸力計測ボルト26を用い、この軸力計測ボルト26で計測された軸力と、この軸力が計測されたときの相対変位とを用いて換算係数を校正することを特徴とするものである。
具体的には、上述した外輪固定部材17をケーシング18に締結する外輪固定部材用の締結ボルト、あるいは内輪固定部材20をロータ5に締結する内輪固定部材用の締結ボルトに、上述した軸力計測ボルト26を用いることができる。
【0033】
以降では、外輪固定部材用の締結ボルトに軸力計測ボルト26を用いた例を挙げて、本発明のスラスト荷重計測装置1の校正方法を説明する。
図3に示すように、軸力計測ボルト26は、歪ゲージ27を用いてボルトに加わる軸力を計測可能な構成とされている。具体的には、この軸力計測ボルト26の外周面には、軸力を検出可能な歪ゲージ27が貼り付けられている。また、軸力計測ボルト26の内部には、頭部からボルトの内部を貫通して歪ゲージ27に達する貫通孔28が形成されており、この貫通孔28には、歪ゲージ27から延びる出力線29が挿通されている。軸力計測ボルト26では、この歪ゲージ27の抵抗値を検出することで軸力計測ボルト26に加わる軸力を検出可能となっている。なお、軸力計測ボルト26に貼り付けられた歪ゲージ27は、それぞれの軸力計測ボルト26で、軸力と歪との関係が予め校正されている。
【0034】
このような軸力計測ボルト26は、上述した外輪固定部材17をケーシング18に締結する外輪固定部材用の締結ボルトの替わりに取り付けられている。つまり、外輪固定部材17は、円環状に形成されているので、外輪固定部材17の周方向に所定の間隔をあけて設けられた複数の締結ボルトを用いて締結されている。そして、これらの締結ボルトのすべてが上述した軸力計測ボルト26とされている。
【0035】
なお、軸力計測ボルト26を内輪固定部材用の締結ボルトの替わりに取り付ける場合も、外輪固定部材用の締結ボルトと同様に、内輪固定部材用の締結ボルトのすべてを軸力計測ボルト26に取り替えればよい。
このようにして複数の軸力計測ボルト26で計測された軸力を、軸力計測ボルト26の本数分ですべて合計し、軸力の総和を「実際にロータ5に加わっているスラスト荷重」、言い換えれば真のスラスト荷重として扱う。一方、上述したスラスト荷重計測装置1でも変位センサ19で計測された相対変位に基づいてスラスト荷重が算出される。そこで、スラスト荷重計測装置1から算出された値が真のスラスト荷重と一致するように換算係数を校正する。
【0036】
具体的には、上述したスラスト荷重計測装置1の校正方法は、次のような手順で行われる。
まず、軸力と発生歪との関係が予め校正された軸力計測ボルト26を用意する。外輪固定部材17をケーシング18に締結している締結ボルトのすべてを、用意した軸力計測ボルト26に交換する。
【0037】
図例では、周方向に180°の位相差をあけて設けられた2箇所の締結ボルトを、用意した軸力計測ボルト26に交換している。
このようにして締結ボルトを外輪固定部材17に取り付けた後は、軸力が入る前に歪のゼロ点をとっておく。そして、軸力計測ボルト26で計測される軸力の計測結果(出力)を監視しながら、計測された軸力が所定の初期軸力となるように軸力計測ボルト26を締め付けて、軸力計測ボルト26を外輪固定部材17に取り付ける。
【0038】
軸力計測ボルト26を外輪固定部材17に取り付けた後は、ロータ5を回転させながら密閉式混練装置2に被混練材料を投入する。変位センサ19で計測された相対変位の出力と、軸力計測ボルト26で計測された軸力とをデータロガーやメモリに記録する。
このようにしてデータロガーやメモリに記録された軸力計測ボルト26の軸力を軸力計測ボルト26の本数分だけ加算し、軸力の総和を求める。求められた軸力の総和を、変位センサ19で計測された相対変位の計測値で除して、換算係数を算出し、校正された換算係数とする。
【0039】
なお、この換算係数の算出は、各軸力計測ボルト26の荷重が初期軸力を上回っている領域で行う必要がある。そのため、各軸力計測ボルト26の荷重が初期軸力を上回っている領域において得られた複数の換算係数に対して、その平均値などを用いた換算係数の代表値などを求め、求められた代表値を用いればスラスト荷重計測装置1の校正が可能となる。
【0040】
ところで、上述した軸力計測ボルト26を用いてロータ5に加わるスラスト荷重を正確に計測するためには、締結ボルトの締め付け方(締結の強さ)を適正なものにする必要がある。
というのも、軸力計測ボルト26でスラスト荷重が正確に計測できるのは、ロータ5に加わるスラスト荷重が軸力計測ボルト26のみに作用する場合に限られるからである。つまり、締結ボルトを強く締結するなどして、スラスト荷重を計測する時にも軸受6の外輪の他端側端面がケーシング18に接触したままになる状態では、ロータ5に加わったスラスト荷重により軸力計測ボルト26に伸びを生じさせることにならず、軸力計測ボルト26で正しいスラスト荷重を計測することができなくなる。
【0041】
例えば、
図4に示すように、ケーシング118に対して軸力計測ボルト126(締結ボルト)を強く締結した場合を考える。この場合、軸力計測ボルト126による締め付け力が大きいため、軸力計測ボルト126によって外輪固定部材117は軸方向の他端側に押されており、外輪固定部材117を介して軸受の他端側端面がケーシング118に強い力で押し付けられて接触している状態となっている。そのため、スラスト荷重が加わってロータ105が一端側に押されても、ロータ105から軸受6を介して外輪固定部材117に伝わったスラスト荷重は、外輪固定部材117の一端側端面から軸力計測ボルト126に伝わるが、軸力計測ボルト126に伸びを生じさせることにならず、軸力計測ボルト126では発生したスラスト荷重を計測することができなくなる。当然、このような状態の軸力計測ボルト126で計測された軸力は正確なものとは言えず、スラスト荷重計測装置101の校正を高精度に行うことも困難になってしまう。
【0042】
ところが、
図5に示すように、ケーシング18に対して軸力計測ボルト26を弱く締結した場合には、軸力計測ボルト26による外輪固定部材17の締め付け力が小さいため、外輪固定部材17が軸方向の他端側に強く押し付けられることはなく、ロータ5にスラスト荷重が加わった場合には軸受6の外輪の他端側端面がケーシング18から離間するようになる。そのため、ロータ5からこの外輪固定部材17まで伝わったスラスト荷重が、軸力計測ボルト26の初期軸力を上回って軸力計測ボルト26に伸びを発生させ、軸力計測ボルト26でスラスト荷重を計測することができるようになる。
【0043】
つまり、軸力計測ボルト26の締め付け方を調整して、ロータ5にスラスト荷重が加わった場合に、軸受6の外輪の他端側端面がケーシング18から離間する程度の弱い締結力で締め付けることができれば、軸力計測ボルト26で計測された軸力からスラスト荷重を正確に把握することが可能となる。なお、この外輪固定部材17を介して軸受6の外輪の他端側端面をケーシング18に押し付けて接触させる力は、軸力計測ボルト26の初期の締め付け力から、ロータ5に加わったスラスト荷重を差し引いた力に相当すると考えられるので、軸力計測ボルト26の初期の締結力を所定の値以下とすれば、軸力計測ボルト26でスラスト荷重を正確に計測することが可能となる。具体的には、混練中のロータ5に発生するスラスト荷重のうち最大のスラスト荷重を、ケーシング18に設けられた軸力計測ボルト26の本数で除した値以下の荷重を軸力計測ボルト26の初期軸力とし、軸力計測ボルト26のすべてに初期軸力を上回る軸力が加わった際に軸力計測ボルト26で計測される軸力を用いて換算係数を校正するのが好ましい。
【0044】
なお、
図5と同様に軸力計測ボルト26のすべてに初期軸力を上回る軸力が加わった場合であっても、例えば
図6に示すようにロータ105に対してスラスト荷重が一端側から他端側に向かって作用する場合、言い換えればスラスト荷重の加わる方向が逆の場合には、軸力計測ボルト126でスラスト荷重を正確に計測できなくなる。
図6のように、スラスト荷重が一端側から他端側に向かって作用する場合には、外輪固定部材117の他端側端面がケーシング118に必ず接触し、軸力計測ボルト126にすべてのスラスト荷重が加わらなくなる。このようにスラスト荷重が一端側から他端側に向かって作用する場合には、
図7に示すように内輪固定部材20とロータ5との間に設けられた内輪固定部材用の締結ボルトをすべて軸力計測ボルト26に取り替えることで、スラスト荷重計測装置1の校正を精度良く行うことができる。
【0045】
ここでも、混練中のロータ5に発生するスラスト荷重のうち最大のスラスト荷重を、ロータ5に設けられた軸力計測ボルト26の本数で除した値以下の荷重を軸力計測ボルト26の初期軸力とし、軸力計測ボルト26のすべてに初期軸力を上回る軸力が加わった際に軸力計測ボルト26で計測される軸力を用いて換算係数を校正するのが好ましい。
以上の点から、上述したスラスト荷重計測装置1の校正を精度良く行うためには、軸力計測ボルト26のすべてに初期軸力を上回る軸力が加わっている点に加えて、スラスト荷重の向きに応じて軸力計測ボルト26を外輪固定部材17または内輪固定部材20に取り付けることが条件として必要となる。
【0046】
上述した軸力計測ボルト26を用いたスラスト荷重計測装置1の校正方法では、軸受6に実際に加わる軸力に基づいて換算係数(校正された換算係数)が決定されるため、スラスト荷重計測装置1の校正を高精度に行うことが可能となる。
また、上述した校正方法では、ロータ5にスラスト荷重を加えるための機構や、ロータ5を回転させるための機構に、大がかりな装置を用意する必要がなくなり、装置構成を複雑なものとすることなくスラスト荷重計測装置1の校正が可能となる。
【0047】
次に、上述した校正方法を用いた場合の校正の精度を、実際の実験データを用いて説明する。
例えば、ロータ5の一端側に設けられた軸受6の外輪固定部材17に対して、この外輪固定部材17をケーシング18に固定する4本の締結ボルトを軸力計測ボルト26に取り替えて、各軸力計測ボルト26で軸力で計測する。なお、これらの軸力計測ボルト26の初期軸力(歪み)は、被混練材料が投入される前の状態、つまり負荷が作用していない状態での歪値に相当し、各軸力計測ボルト26で計測される歪みが300μm〜400μmとなる範囲に設定されている。このようにして各軸力計測ボルト26で計測された軸力の計測結果は、
図8に示すようになる。
【0048】
なお、
図8の縦軸は軸力ではなく歪みで示されているが、歪みに弾性係数を乗じれば軸力に換算できることから、
図8では縦軸を歪みとして結果を示している。また、
図9や
図10でも同様な理由から縦軸は「変位量」や「歪総和値」であるが、軸力の計測結果も同じ傾向を示すものとして以降では説明を行っている。
一方、
図9に示すように、スラスト荷重計測装置1の外輪固定部材17には、変位センサ19が設けられており、変位センサ19で計測されたロータ5の相対変位も計測されている。それゆえ、荷重算出部で、計測された相対変位に換算係数を乗じることで、スラスト荷重を算出することができる。
【0049】
例えば、
図10は、計測された相対変位に換算係数を乗じて得られるスラスト荷重と、軸力計測ボルト26で計測された軸力の総和とを比較したものである。なお、このスラスト荷重の算出に用いられる換算係数は、各軸力計測ボルト26の歪みが相対変位から導かれるスラスト荷重に対して初期軸力を上回る区間で最もよく一致するように求めたものである。
【0050】
図10において「太線」で示される「相対変位に換算係数を乗じて得られるスラスト荷重」の結果を見ると、計測開始後20秒程度で混練が開始され、時間が経過するにつれてスラスト荷重の値が大きくなる。ところが、
図10において「細線」で示される「軸力の総和」は、多少の上下はあるものの、計測開始後35秒程度までは値が大きくなることはない。
【0051】
しかし、計測開始後35秒において、各軸力計測ボルト26の歪みが初期軸力を上回るようになると、「相対変位に換算係数を乗じて得られるスラスト荷重」の結果と、「軸力の総和」の結果とは、ほぼ同じ値で変化するようになる。
やがて、計測開始後100秒程度で、各軸力計測ボルト26の歪みが初期軸力を下回るようになると、「相対変位に換算係数を乗じて得られるスラスト荷重」の結果と、「軸力の総和」の結果とは、大きく解離した数値で変化するようになる。
【0052】
これらの結果から、各軸力計測ボルト26の歪みが初期軸力を上回る区間では、「相対変位に換算係数を乗じて得られるスラスト荷重」と、「軸力計測ボルト26で計測された軸力の総和」とは極めて精度良く一致することがわかる。このことから、各軸力計測ボルト26の歪みが初期軸力を上回る区間では、相対変位をスラスト荷重に換算するための換算係数を精確に求めることができ、スラスト荷重計測装置1の校正を適正に行うことができると判断される。
【0053】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。