特許第6013330号(P6013330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノヴォ ノルディスク アー/エスの特許一覧

特許6013330追加のジスルフィド結合を含有するヒトインスリン
<>
  • 特許6013330-追加のジスルフィド結合を含有するヒトインスリン 図000006
  • 特許6013330-追加のジスルフィド結合を含有するヒトインスリン 図000007
  • 特許6013330-追加のジスルフィド結合を含有するヒトインスリン 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013330
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】追加のジスルフィド結合を含有するヒトインスリン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20161011BHJP
   C07K 14/62 20060101ALI20161011BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20161011BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20161011BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20161011BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20161011BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20161011BHJP
   A61K 38/28 20060101ALI20161011BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20161011BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   C12N15/00 A
   C07K14/62
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C12P21/02 E
   A61K37/26
   A61P3/10
   A61P3/08
【請求項の数】17
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2013-515850(P2013-515850)
(86)(22)【出願日】2011年6月21日
(65)【公表番号】特表2013-532970(P2013-532970A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2011060295
(87)【国際公開番号】WO2011161083
(87)【国際公開日】20111229
【審査請求日】2014年6月20日
(31)【優先権主張番号】61/359,127
(32)【優先日】2010年6月28日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10167036.2
(32)【優先日】2010年6月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509091848
【氏名又は名称】ノヴォ ノルディスク アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】フランティセク・フバレク
(72)【発明者】
【氏名】ティネ・ニガール・ヴィンター
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ベーグルム・ケルセン
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン・ルドヴィグセン
【審査官】 小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−534613(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/112583(WO,A2)
【文献】 特開平07−309896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 1/00−19/00
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つシステイン置換を有するヒトインスリン類似体であって、ヒトインスリンの3つのジスルフィド結合が保持されており、かつ、システイン置換の部位は、導入されたシステイン残基が、折り畳まれたインスリン類似体の三次元構造内に位置し、ヒトインスリンには存在しない1つの追加のジスルフィド結合の形成を可能にするように選ばれ、
A10C, B1C, desB30ヒトインスリン、
A10C, B2C, desB30ヒトインスリン、
A10C, B3C, desB30ヒトインスリン、
A10C, B4C, desB30ヒトインスリン、
B1C, B4C, desB30ヒトインスリン、
A10C, B1Cヒトインスリン、
A10C, B2Cヒトインスリン、
A10C, B3Cヒトインスリン、
A10C, B4Cヒトインスリン、および
B1C, B4Cヒトインスリン
からなる群から選択される、ヒトインスリン類似体。
【請求項2】
ヒトインスリンを安定化するための方法であって、ヒトインスリンまたはdesB30ヒトインスリンの2つアミノ酸をシステイン残基で置換することを含み、
a.ヒトインスリンの3つのジスルフィド結合が保持されており、かつ、
b.システイン置換の部位は、導入されたシステイン残基が、折り畳まれたインスリン類似体の三次元構造内に位置し、ヒトインスリンには存在しない1つの追加のジスルフィド結合の形成を可能にするように選ばれ、
それによって、ヒトインスリンには存在しない1つの追加のジスルフィド結合を含み、
A10C, B1C, desB30ヒトインスリン、
A10C, B2C, desB30ヒトインスリン、
A10C, B3C, desB30ヒトインスリン、
A10C, B4C, desB30ヒトインスリン、
B1C, B4C, desB30ヒトインスリン、
A10C, B1Cヒトインスリン、
A10C, B2Cヒトインスリン、
A10C, B3Cヒトインスリン、
A10C, B4Cヒトインスリン、および
B1C, B4Cヒトインスリン
からなる群から選択される、ヒトインスリン類似体を作製する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載のヒトインスリン類似体の生物学的活性量および薬剤的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項4】
薬剤的に許容される担体および/または賦形剤をさらに含み、そしてアジュバンドを含む、または含まない、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
請求項1に記載のヒトインスリン類似体または請求項3もしくは4に記載の医薬組成物を含む、対象における真性糖尿病を治療するための医薬組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のヒトインスリン類似体、または、請求項3もしくは4に記載の医薬組成物の治療的に活性な用量を含む、哺乳動物において血糖値を下げるための医薬組成物。
【請求項7】
経口投与のための、請求項3から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
非経口投与のための、請求項3から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
気管内投与のための、請求項3から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害および1型糖尿病の治療または予防のための、請求項1に記載のヒトインスリン類似体を含む医薬組成物。
【請求項11】
2型糖尿病の疾患進行を遅延するまたは予防するための、請求項1に記載のヒトインスリン類似体を含む医薬組成物。
【請求項12】
請求項1に記載のヒトインスリン類似体をコードする核酸分子。
【請求項13】
請求項12に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項14】
請求項13に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項15】
請求項14に記載の宿主細胞を培養するステップを含む、ヒトインスリン類似体を産生する方法。
【請求項16】
アミノ酸のシステイン置換が部位特異的変異誘発により実施される、請求項1に記載のヒトインスリン類似体を調製する方法。
【請求項17】
請求項1に記載のヒトインスリン類似体を薬剤的に許容される物質および/または賦形剤と混合することを含む、請求項3から6のいずれか一項に記載の医薬組成物を調製するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追加のジスルフィド結合を含有するヒトインスリンおよびdesB30ヒトインスリンならびにそれを作製する方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
真性糖尿病は、グルコースを利用する能力が部分的にまたは完全に失われている代謝障害である。真性糖尿病の治療においては、レギュラーインスリン、イソフェンインスリン(NPHと命名されている)、インスリン亜鉛懸濁液(たとえば、Semilente(登録商標)、Lente(登録商標)、およびUltralente(登録商標))、および二相性イソフェンインスリンなどの多くの種類のインスリン製剤が提唱され使用されてきた。
【0003】
ヒトインスリンは、2本のポリペプチド鎖、つまり、それぞれ21および30アミノ酸残基を含有するAおよびB鎖からなる。A鎖とB鎖は2本のジスルフィド架橋により相互接続している。他の大半の種由来のインスリンは類似しているが、いくつかの位置にアミノ酸置換を含有することがある。この10年内で、いくつかのヒトインスリン類似体が開発されてきた。これらの類似体は、特定の作用プロファイル、すなわち、速効性または持続性作用のために考案されている。そのようなインスリン類似体を含む市販の製品には、Levemir(登録商標)、NovoRapid(登録商標)、Humalog(登録商標)、Apidra(登録商標)、およびLantus(登録商標)が含まれる。
【0004】
ヒトインスリンは、循環へのその吸収を制限する複数のプロテアーゼの作用により消化管の管腔において急速に分解される。親水性でありタンパク質分解に対して安定化されているインスリン類似体は、天然のインスリンと比べた場合、動物モデルではより高い生物学的利用能を示す。
【0005】
ジスルフィド結合をタンパク質に組み込むことは、タンパク質の安定性を改善する自然のやり方の1つであり、好熱生物の中のジスルフィド結合の存在量と最大成長温度の間には相関関係が見出されており、高温環境におけるタンパク質安定化でのジスルフィド結合の重要性を暗示している(Mallick P, et al、2002年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、99、9679〜9684頁; Ladenstein R, et al、2006年、FEBS J.、273、4170〜4185頁)。ジスルフィド結合が首尾よく操作されてタンパク質内に導入されるとそれに付随して安定性が増す多くの例がある。最大の安定化の1つがリボヌクレアーゼバルナーゼについて実現された(Clarke J.、Fersht A.、1993年、Biochem.、32、4322〜4329頁)。アンフォールディングに必要な活性化エネルギーを増加させることにより、またはタンパク質のアンフォールドされた立体構造を束縛しそれによってその立体構造エントロピーを減少させることにより、そのような安定化は引き起こされる(Pace C.N.、1990年、Trends Biol. Sci.、14〜17頁)。しかし、この新生の研究領域ではさらに多くのことを知る必要がある。現在まで、インスリンにおいて操作されたジスルフィド結合についての報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2008034881
【特許文献2】EP 1,246,845
【特許文献3】米国特許明細書第4,343,898号
【特許文献4】米国特許明細書第4,916,212号
【特許文献5】米国特許第5,395,922号
【特許文献6】欧州特許第765,395号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Mallick P, et al、2002年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、99、9679〜9684頁
【非特許文献2】Ladenstein R, et al、2006年、FEBS J.、273、4170〜4185頁
【非特許文献3】Clarke J.、Fersht A.、1993年、Biochem.、32、4322〜4329頁
【非特許文献4】Pace C.N.、1990年、Trends Biol. Sci.、14〜17頁
【非特許文献5】「Stability of Protein Pharmaceuticals」Ahern. T.J. & Manning M.C.、Plenum Press、New York 1992年
【非特許文献6】Hudson and Andersen、Peptide Science、vol 76 (4)、298〜308頁(2004)
【非特許文献7】Kaarsholm、N.C. et al、1993年、Biochemistry、32、10773〜8頁
【非特許文献8】Holladay et al.、1977年、Biochim. Biophys.Acta、494、245〜254頁
【非特許文献9】Melberg and Johnson、1990年、Biochim. Biophys.Acta、494、245〜254頁
【非特許文献10】Morris et al.、1968年、Biochim. Biophys. Acta.、160、145〜155頁
【非特許文献11】Wood et al.、1975年、Biochim. Biophys. Acta、160、145〜155頁
【非特許文献12】Strickland & Mercola、1976年、Biochemistry、15、3875〜3884頁
【非特許文献13】http://www.rcsb.org
【非特許文献14】http://www.rcsb.org/pdb/explore.do?structureId=1MSO
【非特許文献15】http://www.rcsb.org/pdb/explore.do?structureId=1EV3
【非特許文献16】Glendorf et al. (2008)、Biochemistry、47、4743〜4751頁
【非特許文献17】Volund、A.、(1978)、Biometrics、34、357〜365頁
【非特許文献18】Kohler, G & Milstein C. (1976)、European J. Immunology、6:511〜19頁
【非特許文献19】Taggart RT et al (1983)、Science 219:1228〜30頁
【非特許文献20】Greene and Wuts、「Protective Groups in Organic Synthesis」、John Wiley & Sons、1999年
【非特許文献21】Ryle et al.、1955年、Biochem J. 60、541〜56頁
【非特許文献22】Kumazaki T、Ishii, S. 1990年、J. Biochem (Tokyo) 17、414〜9頁
【非特許文献23】Ota M、Ariyoshi, Y.、1995年、Biosci. Biotech. Biochem. 59、1956〜7頁
【非特許文献24】Yen, T.-Y.、Yan, H.、Macher, B.、2001年、J Mass Spectrom. 37、15〜30頁
【非特許文献25】Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed. (A. Osol ed.、1985年)
【非特許文献26】Glendorf, T.、Sorensen, A.R.、Nishimura, E.、Pettersson, I. and Kjeldsen, T.「Importance of the Solvent-Exposed Residues of the Insulin B Chain α-Helix for Receptor Binding」Biochemistry 2008年、47、4743〜4751頁
【非特許文献27】J Markussen:「Human Insulin by Tryptic Transpeptidation of Porcine Insulin and Biosynthetic P」
【非特許文献28】Naiki et al. Anal. Biochem. 177、244〜249頁、1989年
【非特許文献29】Le-Vine、Methods Enzymol. 309、274〜284頁、1999年
【非特許文献30】Nielsen at al. Biochemistry 40、6036〜6046頁、2001年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
安定な新規のヒトインスリン類似体の必要性が今もなお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、2つ以上のシステイン置換を有するヒトインスリン類似体であって、ヒトインスリンの3つのジスルフィド結合が保持されておりシステイン置換の部位は、導入されたシステイン残基が、折り畳まれたインスリン類似体の三次元構造内に位置し、ヒトインスリンには存在しない1つまたは複数の追加のジスルフィド結合の形成を可能にするように選ばれるヒトインスリン類似体に関係する。
【0010】
一態様では、システイン置換の部位は、(1)導入されたシステイン残基が、折り畳まれたインスリン類似体の三次元構造内に位置し、ヒトインスリンには存在しない1つまたは複数の追加のジスルフィド結合の形成を可能にし、(2)前記ヒトインスリン類似体がヒトインスリンに付随する所望の生物活性を保持するように選ばれる、本発明のヒトインスリンが得られる。
【0011】
一態様では、システイン置換の部位は、(1)導入されたシステイン残基が、折り畳まれたインスリン類似体の三次元構造内に位置し、ヒトインスリンには存在しない1つまたは複数の追加のジスルフィド結合の形成を可能にし、(2)前記ヒトインスリン類似体が、ヒトインスリンに付随する所望の生物活性を保持し、(3)前記ヒトインスリン類似体が、ヒトインスリンおよび/または親インスリンと比べて増加した物理的安定性を有するように選ばれる、本発明のヒトインスリンが得られる。
【0012】
一態様では、システイン置換の部位は、(1)導入されたシステイン残基が、折り畳まれたインスリン類似体の三次元構造内に位置し、ヒトインスリンには存在しない1つまたは複数の追加のジスルフィド結合の形成を可能にし、(2)前記ヒトインスリン類似体が、ヒトインスリンに付随する所望の生物活性を保持し、(3)前記ヒトインスリン類似体が、タンパク質分解に対して安定化されるように選ばれる、本発明のヒトインスリンが得られる。
【0013】
ヒトインスリンを安定化するための方法であって、ヒトインスリンまたはdesB30ヒトインスリンの2つ以上のアミノ酸をシステイン残基で置換することを含み、ヒトインスリンの3つのジスルフィド結合が保持されており、システイン置換の部位は、導入されたシステイン残基が、折り畳まれたインスリン類似体の三次元構造内に位置し、ヒトインスリンには存在しない1つまたは複数の追加のジスルフィド結合の形成を可能にするように選ばれ、それによって、ヒトインスリンには存在しない1つまたは複数の追加のジスルフィド結合を含むヒトインスリン類似体が得られる方法も本明細書には記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1〜3(パネルA)、ヒトインスリン(先行技術)および実施例4、5(パネルB)、ならびに実施例6および9(パネルC)に記載されるヒトインスリン(先行技術)およびヒトインスリン類似体の示差走査熱量測定(DSC)比較。
図2】本発明の実施例4に記載されるヒトインスリン(先行技術)およびヒトインスリン類似体のThT細線維化アッセイ比較。ヒトインスリン細線維化は<2時間のラグタイムで容易に検出され、本発明の実施例4に記載されるヒトインスリン類似体は実験の45時間の期間内では細線維化しなかった。これらの結果は、本発明のインスリンの優れた物理的安定性と一致している。
図3】本発明の実施例4に記載されるヒトインスリン(先行技術)およびヒトインスリン類似体の静脈投与に続く血糖プロファイル。前記2つの化合物は3.6nmol/kg用量を投与された(平均値±SEM)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明では、ジスルフィド結合が操作されてインスリンに導入されている新規のヒトインスリン類似体が提示される。
【0016】
一態様では、本発明に従ったヒトインスリン類似体は、2つ以上のシステイン置換を有し、ヒトインスリンの3つのジスルフィド結合が保持されている。
【0017】
本発明の一態様では、システイン置換の部位は、導入されたシステイン残基が、折り畳まれたヒトインスリン類似体の三次元構造内に位置し、ヒトインスリンには存在しない1つまたは複数の追加のジスルフィド結合の形成を可能にするように選ばれる。
【0018】
本発明に従ったヒトインスリン類似体は改善された物理的安定性を有することが本発明者らにより見出されている。したがって、ヒトインスリン類似体の生物学的に不活性なおよび/または不溶性の凝集体を形成する本発明に従ったヒトインスリン類似体の傾向は、たとえば、熱機械的ストレスへのヒトインスリン類似体の曝露および/または疎水性表面および界面などの不安定化させる界面および表面との相互作用の結果として減少することが見出されている。
【0019】
本発明に従ったヒトインスリン類似体は、インスリン受容体に結合する。したがって、驚くべきことに、本発明に従ったヒトインスリン類似体は、改善された物理的安定性を有しかつインスリン受容体への結合も保持していることが本発明者らにより見出されている。
【0020】
一態様では、本発明に従ったヒトインスリン類似体は、タンパク質分解に対して、すなわち、消化(GI)管または身体の他の場所での急速な分解に対して安定化されている。一態様では、本発明に従ったヒトインスリン類似体は、ヒトインスリンまたはdesB30ヒトインスリンと比べて、タンパク質分解に対して安定化されている。
【0021】
タンパク質分解に対して安定化されているヒトインスリン類似体は、本明細書ではヒトインスリンと比べて1つまたは複数のプロテアーゼによるもっとゆっくりした分解を受けるヒトインスリン類似体として理解されるべきである。一実施形態では、本発明に従ったヒトインスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて1つまたは複数のプロテアーゼによるもっとゆっくりした分解を受ける。本発明の追加の実施形態では、本発明に従ったヒトインスリン類似体は、ペプシン(たとえば、アイソフォームペプシンA、ペプシンB、ペプシンCおよび/またはペプシンFなど)、キモトリプシン(たとえば、アイソフォームキモトリプシンA、キモトリプシンBおよび/またはキモトリプシンCなど)、トリプシン、インスリン分解酵素(IDE)、エラスターゼ(たとえば、アイソフォーム膵エラスターゼIおよび/またはIIなど)、カルボキシペプチダーゼ(たとえば、アイソフォームカルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼA2および/またはカルボキシペプチダーゼB)、アミノペプチダーゼ、カテプシンDおよびラット、ブタまたはヒト由来の腸抽出物に存在する他の酵素からなる群から選択される1つまたは複数の酵素による分解に対して安定化されている。
【0022】
一実施形態では、本発明に従ったヒトインスリン類似体は、キモトリプシン、トリプシン、インスリン分解酵素(IDE)、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、アミノペプチダーゼおよびカテプシンDからなる群から選択される1つまたは複数の酵素による分解に対して安定化されている。追加の実施形態では、本発明に従ったヒトインスリン類似体は、キモトリプシン、カルボキシペプチダーゼおよびIDEからなる群から選択される1つまたは複数の酵素による分解に対して安定化されている。さらに追加の実施形態では、本発明に従ったヒトインスリン類似体は、キモトリプシンおよびIDEから選択される1つまたは複数の酵素による分解に対して安定化されている。さらに追加の実施形態では、本発明に従ったヒトインスリン類似体は、キモトリプシンおよびカルボキシペプチダーゼから選択される1つまたは複数の酵素による分解に対して安定化されている。
【0023】
「プロテアーゼ」または「プロテアーゼ酵素」は、タンパク質およびペプチドを分解し、たとえば、胃(ペプシン)、腸管腔(キモトリプシン、トリプシン、エラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ等)またはGI管の粘膜面(アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、エンテロペプチダーゼ、ジペプチジルペプチダーゼ、エンドペプチダーゼ等)、肝臓(インスリン分解酵素、カテプシンD等)などのヒトの身体の様々な組織においておよび他の組織において見出される消化酵素である。
【0024】
T1/2は、キモトリプシン、ペプシンおよび/もしくはカルボキシペプチダーゼAなどのプロテアーゼ酵素に対するまたは組織抽出物(肝臓、腎臓、十二指腸、空腸、回腸、結腸、胃等から)などの酵素の混合物に対する本発明に従ったヒトインスリン類似体のタンパク質分解安定性の尺度として決定してよい。本発明の一実施形態では、ヒトインスリンと比べてT1/2は増加する。追加の実施形態では、T1/2は親インスリンと比べて増加する。さらに追加の実施形態では、T1/2は親インスリンと比べて少なくとも2倍に増加する。さらに追加の実施形態では、T1/2は親インスリンと比べて少なくとも3倍に増加する。さらに追加の実施形態では、T1/2は親インスリンと比べて少なくとも4倍に増加する。さらに追加の実施形態では、T1/2は親インスリンと比べて少なくとも5倍に増加する。さらに追加の実施形態では、T1/2は親インスリンと比べて少なくとも10倍に増加する。
【0025】
一態様では、本発明に従ったヒトインスリン類似体は、改善された化学的安定性を有する。一態様では、本発明に従ったヒトインスリン類似体は、改善された物理的安定性を有する。一態様では、本発明に従ったヒトインスリン類似体は、改善された化学的および物理的安定性を有する。
【0026】
一態様では、本発明に従ったヒトインスリン類似体は、ヒトインスリンと比べて改善された化学的および/または物理的安定性を有する。一態様では、本発明に従ったヒトインスリン類似体は、親インスリンと比べて改善された化学的および/または物理的安定性を有する。
【0027】
本明細書で使用される用語「物理的安定性」とは、熱機械的ストレスへのヒトインスリン類似体の曝露および/または疎水性表面および界面などの不安定化させる界面および表面との相互作用の結果としてヒトインスリン類似体の生物学的に不活性なおよび/または不溶性の凝集体を形成するヒトインスリン類似体の傾向のことである。したがって、物理的不安定性は、ヒトインスリンと比べて、高次構造の喪失、凝集、細線維化、沈殿および/または表面への吸着を含む、立体構造変化を含む。インスリンなどのペプチドは、たとえば、細線維化のせいで不安定になる傾向があることが知られている。ヒトインスリン類似体を含む溶液の物理的安定性は、適切な容器(たとえば、カートリッジまたはバイアル)に充填された前記溶液を機械的/物理的ストレス(たとえば、攪拌)に異なる温度で様々な期間曝露した後、従来の手段、たとえば、目視検査、比濁分析および/または濁り度計測により評価し得る。溶液の目視検査は、暗視野での鋭く焦点を合わせた光で実施される。溶液の濁り度は、たとえば、0から3までのスケールで濁り度の程度をランク付けする目視スコアー(濁りが全くない溶液は目視スコアー0に相当し、昼光で目視濁りを示す溶液は目視スコアー3に相当する)により特徴付けられる。溶液は、それが昼光で目視濁りを示す場合はタンパク質凝集に関して物理的に不安定と分類される。代わりに、溶液の濁り度は、当業者には周知の簡易濁り度計測により評価することが可能である。ヒトインスリン類似体の物理的安定性は、ヒトインスリン類似体の立体構造状態の分光学的作用剤またはプローブを使用することによっても評価することが可能である。前記プローブは好ましくは、タンパク質の非天然配座異性体に優先的に結合する小分子である。タンパク質構造の小分子分光学的プローブの一例はチオフラビンTである。チオフラビンTは、アミロイド細線維の検出のために広く使用されてきた蛍光色素である。細線維およびその上おそらく他のタンパク質構造物の存在下では、チオフラビンTは、フィブリルタンパク質形態に結合すると、約450nmで新たな励起最大および約482nmで増強された発光を生じる。非結合チオフラビンTは基本的に前記波長では非蛍光である。本発明のヒトインスリン類似体の物理的安定性は、たとえば、実施例13に記載される通りに決定してもよい。
【0028】
他の小分子は、天然から非天然状態へのタンパク質構造の変化のプローブとして使用することが可能である。たとえば、タンパク質の曝露された疎水性パッチに優先的に結合する「疎水性パッチ」プローブである。疎水性パッチは一般的には、その天然状態ではタンパク質の三次構造内に埋もれているが、タンパク質が解けるまたは変性し始めると曝露される。これら小分子の例である、分光学的プローブは、アントラセン、アクリジン、フェナントロリンまたは同種の物などの芳香族疎水性色素である。他の分光学的プローブは、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、およびバリンまたは同種の物などの疎水性アミノ酸のコバルト金属複合体などの金属アミノ酸複合体である。
【0029】
本明細書で使用されるヒトインスリン類似体の「化学的安定性」という用語とは、天然のタンパク質構造と比べて生物学的効力が少ないポテンシャルおよび/または免疫原性特性が増加しているポテンシャルを有する化学的分解産物を形成するタンパク質構造の化学的共有結合変化のことであり、加水分解、ラセミ化、酸化または架橋などの共有結合の分解を回避することを含む。様々な化学的分解産物は、天然のタンパク質の種類および性質ならびにヒトインスリン類似体が曝露される環境に応じて形成することが可能である。化学的分解の除去は、十中八九は、完全に回避することができるわけではなく、当業者には周知であるように化学的分解産物の量の増加がタンパク質製剤の貯蔵および使用中に見られることが多い。大半のタンパク質は、グルタミンまたはアスパラギン残基における側鎖アミド基が加水分解されて遊離のカルボン酸を形成するプロセスであるアミド分解をする傾向がある。アスパラギンおよびアスパラギン酸残基はイソアスパラギン酸分解産物をさらに形成する場合がある。他の分解経路は、2つ以上のタンパク質分子がアミド基転移および/またはジスルフィド相互作用を通じて互いに共有結合し、共有結合ダイマー、オリゴマーおよびポリマー分解産物を形成する高分子量転換産物の形成を含む(「Stability of Protein Pharmaceuticals」Ahern. T.J. & Manning M.C.、Plenum Press、New York 1992年)。酸化(たとえば、メチオニン残基の)およびラセミ化は、化学的分解の別の変異形であると言える。ヒトインスリン類似体の化学的安定性は、異なる環境条件への曝露後の様々な時点での化学分解産物の量を測定することにより評価することが可能である(分解産物の形成は、多くの場合、たとえば、温度を上げることにより加速させることが可能である)。個々の分解産物は、たとえば、時には化学的/酵素的断片化を組み合わせて、クロマトグラフィー法(たとえば、SEC-HPLC、RP-HPLCまたはIE-HPLC)と分光学的方法(様々な質量分析法)の組合せを使用して、分子サイズおよび/または電荷に応じて分解産物を分離することにより決定されることが多い。
【0030】
一実施形態では、本発明のヒトインスリン類似体は、実施例に記載される通りに試験された場合、ヒトインスリンおよび/またはdesB30ヒトインスリンと比べて改善された化学的安定性を有する。
【0031】
一実施形態では、本発明のヒトインスリン類似体は、当業者に公知であり、たとえば、実施例14に記載される通りに疎水性について試験された場合、ヒトインスリンおよび/またはdesB30ヒトインスリンと比べて改善された親水性を有する。
【0032】
一実施形態では、本発明のヒトインスリン類似体は凝集する傾向がほとんどまたは全くない。凝集傾向は、チオフラビンアッセイにおいて試験された場合、好ましくは、ヒトインスリンおよび/またはdesB30ヒトインスリンの凝集傾向と比べて著しく改善されている。
【0033】
本発明に従ったヒトインスリン類似体は、その親インスリンと比べて、実質的に同じインビボ効力または増加したインビボ効力を有し得る。一態様では、本発明のヒトインスリン類似体は、その親インスリンと比べて、実質的に同じインビボ効力を有する。一態様では、本発明のヒトインスリン類似体は、その親インスリンと比べて、増加したインビボ効力を有する。
【0034】
インスリンインビボ効力を測定するための標準アッセイは当業者には公知であり、ヒトインスリンと比べた本発明のヒトインスリン類似体の効力、小腸内注射に続くラット薬物動態およびラットPKなどの静脈定常状態クランプアッセイ、血糖低下効果ならびに静脈ラットPKアッセイなどの実施例に記載されるアッセイを含む。
【0035】
本発明に従ったヒトインスリン類似体は、その親インスリンと比べて、実質的に同じインビトロ効力または増加したインビトロ効力を有し得る。一態様では、本発明のヒトインスリン類似体は、その親インスリンと比べて、実質的に同じインビトロ効力を有する。一態様では、本発明のヒトインスリン類似体は、その親インスリンと比べて、増加したインビトロ効力を有する。
【0036】
インスリンインビトロ効力を測定するための標準アッセイは当業者には公知であり、とりわけ、以下のインビトロアッセイ:
(1)インスリンの相対的効力が、細胞膜、たとえば、ラット肝臓原形質膜画分上に存在するインスリン受容体に特異的に結合している125I-インスリンの50%に置き換わるのに必要なインスリン対インスリン類似体の比として定義されている、インスリンラジオレセプターアッセイ;
(2)相対的インスリン効力が、[3-3H]グルコースの有機抽出可能物質(すなわち、脂質)への最大変換の50%を達成するのに必要なインスリン対インスリン類似体の比として定義されている、たとえば、ラット脂肪細胞を用いて実施される、脂肪生合成アッセイ;および
(3)ヒトインスリン類似体の相対的効力が、グルコース-1-[14C]の[14CO2]への最大変換の50%を達成するのに必要なインスリン対インスリン類似体の比として定義されている、単離された脂肪細胞におけるグルコース酸化アッセイ
を含む。
【0037】
一態様では、本発明に従ったヒトインスリン類似体は、たとえば、フォールディング安定性、立体構造安定性および/またはより高い融解温度などの改善された熱力学的安定性を有する。
【0038】
本明細書で使用される場合、ヒトインスリン類似体は、前記ヒトインスリン類似体の変性が、ヒト/desB30ヒトインスリンと比べてより高い温度および/またはより高い濃度の変性剤などのより高いストレスレベルを必要とするならば、改善された「熱力学的安定性」を有すると言われる。
【0039】
立体構造安定性は、たとえば、Hudson and Andersen、Peptide Science、vol 76 (4)、298〜308頁(2004)により記載される円二色性およびNMRにより評価し得る。融解温度は、インスリン構造が可逆的にまたは不可逆的に変化する温度として理解されている。融解温度が高いほどより安定な構造に対応する。融解温度は、たとえば、温度の関数としての円二色性および/もしくはNMRにより立体構造安定性を評価することにより、または示差走査熱量測定により決定することが可能である。熱力学的安定性は、たとえば、塩酸グアニジウムなどの増加する濃度の変性剤の存在下でのCD分光測定および/またはNMRにより決定することも可能である。以前記載されているアンフォールディングの自由エネルギー(Kaarsholm、N.C. et al、1993年、Biochemistry、32、10773〜8頁)は、そのような実験から決定することが可能である。タンパク質が変性すると、遠UV範囲(240〜218nm)のネガティブCDは徐々に減少し、タンパク質アンフォールディングに伴う規則正しい二次構造の喪失と一致する(Holladay et al.、1977年、Biochim. Biophys.Acta、494、245〜254頁; Melberg and Johnson、1990年、Biochim. Biophys.Acta、494、245〜254頁)。近UV範囲(330〜250nm)におけるインスリンCDスペクトルは、ジスルフィド結合からの寄与のあるチロシン発色団の環境を反映する(Morris et al.、1968年、Biochim. Biophys. Acta.、160、145〜155頁; Wood et al.、1975年、Biochim. Biophys. Acta、160、145〜155頁; Strickland & Mercola、1976年、Biochemistry、15、3875〜3884頁)。インスリンのアンフォールディングの自由エネルギーは4.5kcal/molであると以前そのような研究から計算された(Kaarsholm, N.C. et al、1993年、Biochemistry、32、10773〜8頁)。
【0040】
近UV範囲(330〜250nm)におけるインスリンCDスペクトルは、ジスルフィド結合からの寄与のあるチロシン発色団の環境を反映する。チロシン残基はインスリンダイマー表面の一部であるために、この領域での(特に、276nmでの)モル楕円率の変化はインスリンの会合状態を反映する。インスリンの会合状態を測定する別の方法は、当技術分野では公知であり実施例に記載されている非解離条件下でのサイズ排除クロマトグラフィーの適用による。
【0041】
ジスルフィド結合は、2つのチオール基のカップリングにより導かれ、本明細書では2個の硫黄原子間の連結、すなわち、全体的結合性R-S-S-Rを有する構造として理解されることになる。ジスルフィド結合は、連結ジスルフィド結合、SS結合またはジスルフィド架橋とも呼ばれる場合がある。ジスルフィド結合は、2つのシステインアミノ酸残基をペプチドに導入し、それに続いて2個のチオール基を酸化してジスルフィド結合にすることにより作り出される。そのような酸化は化学的に実施することができ(当業者には公知であるように)または、たとえば、酵母内でのインスリン発現中に起こり得る。
【0042】
システイン残基を親インスリンに導入する際、システイン残基は、折り畳まれたインスリン類似体の三次元構造内に位置し、ヒトインスリンには存在しない1つまたは複数の追加のジスルフィド結合の形成を可能にする。たとえば、2つの新しいシステイン残基を入れる場合、三次元構造における前記新しいシステイン残基は、ジスルフィド結合が前記2つの新しいシステイン残基間で形成される程度に近接している。
【0043】
本発明の一態様では、2つ以上のシステイン置換を有し、ヒトインスリンの3つのジスルフィド結合が保持されているヒトインスリン類似体が提供される。
【0044】
用語「システイン置換」は本明細書では、ヒトインスリン中のアミノ酸をシステインで置き換えることを意味する。たとえば、ヒトインスリンのA鎖の10位のイソロイシン(IleA10)およびB鎖の4位のグルタミン(GlnB4)は、それぞれがシステイン残基で置き換えられ得る。
【0045】
本明細書で使用される用語「ヒトインスリン」は、その二次元および三次元構造ならびに特性が周知であるヒトインスリンホルモンを意味する。ヒトインスリンの三次元構造は、たとえば、多くの異なる条件下でNMRおよびX線結晶解析によってこれまで決定されており、これらの構造の多くはタンパク質データバンク(http://www.rcsb.org)に寄託されている。ヒトインスリン構造の非限定的例は、T6構造(http://www.rcsb.org/pdb/explore.do?structureId=1MSO)およびR6構造(http://www.rcsb.org/pdb/explore.do?structureId=1EV3)である。ヒトインスリンは、A鎖およびB鎖と名付けられた2本のポリペプチド鎖を有する。A鎖は21アミノ酸ペプチドであり、B鎖は30アミノ酸ペプチドであり、前記2本の鎖はジスルフィド結合により接続され、第一の架橋はA鎖の7位のシステインとB鎖の7位のシステイン間であり、第二の架橋はA鎖の20位のシステインとB鎖の19位のシステイン間である。第三の架橋はA鎖の6位と11位のシステイン間に存在する。したがって、「ヒトインスリンの3つのジスルフィド結合が保持されている」ヒトインスリン類似体は本明細書では、ヒトインスリンの3つのジスルフィド結合、すなわち、A鎖の7位のシステインとB鎖の7位のシステイン間のジスルフィド結合、A鎖の20位のシステインとB鎖の19位のシステイン間のジスルフィド結合およびA鎖の6位と11位のシステイン間のジスルフィド結合を含むヒトインスリン類似体として理解されている。
【0046】
人体では、インスリンホルモンは、その立体配置において24アミノ酸のプレペプチドと続いて86アミノ酸を含有するプロインスリンからなる一本鎖前駆体のプロインスリン(プレプロインスリン)、すなわちプレペプチド-B-Arg Arg-C-Lys Arg-A(Cは31アミノ酸の接続ペプチド)として合成される。Arg-ArgおよびLys-Argは、AとB鎖からの接続ペプチドの切断のための切断部位である。
【0047】
本発明の一態様では、ヒトインスリンの3つのジスルフィド結合が保持されており、A鎖のA9、A10およびA12からなる群から選択される位置における少なくとも1つのアミノ酸残基がシステインで置換されており、B鎖のB1、B2、B3、B4、B5およびB6からなる群から選択される位置における少なくとも1つのアミノ酸残基がシステインで置換されており、場合によりB30位のアミノ酸が欠失している、2つ以上のシステイン置換を有するヒトインスリン類似体が提供される。本発明の一態様では、A鎖のA10位のアミノ酸残基がシステインで置換されており、B鎖のB1、B2、B3、およびB4からなる群から選択される位置における少なくとも1つのアミノ酸残基がシステインで置換されており、場合によりB30位のアミノ酸が欠失している。本発明の一態様では、A鎖のA10位のアミノ酸残基がシステインで置換されており、B鎖のB3およびB4からなる群から選択される位置における少なくとも1つのアミノ酸残基がシステインで置換されており、場合によりB30位のアミノ酸が欠失している。本発明の一態様では、A鎖のA10位のアミノ酸残基がシステインで置換されており、B鎖のB3位のアミノ酸残基がシステインで置換されており、場合によりB30位のアミノ酸が欠失している。本発明の一態様では、A鎖のA10位のアミノ酸残基がシステインで置換されており、B鎖のB4位のアミノ酸残基がシステインで置換されており、場合によりB30位のアミノ酸が欠失している。
【0048】
一態様では、B30位のアミノ酸が欠失している、本発明に従ったインスリン類似体が得られる。
【0049】
本発明により得られる追加のジスルフィド結合は、同一鎖の2つのシステイン、すなわち、インスリンのA鎖中の2つのシステインもしくはB鎖中の2つのシステインを接続していても、またはインスリンのA鎖中のシステインとB鎖中のシステインを接続していてもよい。一態様では、少なくとも1つの追加のジスルフィド結合がA鎖中の2つのシステインを接続しているまたはB鎖中の2つのシステインを接続している、本発明に従ったヒトインスリン類似体が得られる。一態様では、少なくとも1つの追加のジスルフィド結合がA鎖中のシステインとB鎖中のシステインを接続している、本発明に従ったヒトインスリン類似体が得られる。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「追加のジスルフィド結合」はヒトインスリンには存在しない1つまたは複数のジスルフィド結合を意味する。
【0051】
本発明の一態様では、システインは、ヒトインスリン類似体の2つの位置に置換され、その位置は、
A10C, B1C;
A10C, B2C;
A10C, B3C;
A10C, B4C;
A10C, B5C;および
B1C, B4C
からなる群から選択される。
【0052】
本発明の一態様では、システインは、ヒトインスリン類似体の2つの位置に置換され、その位置は、
A10C, B1C;
A10C, B2C;
A10C, B3C;
A10C, B4C;および
B1C, B4C
からなる群から選択される。
【0053】
本発明の一態様では、システインは、ヒトインスリン類似体の2つの位置に置換され、その位置は、
A10C, B1C;
A10C, B2C;
A10C, B3C;および
A10C, B4C
からなる群から選択される。
【0054】
本発明の一態様では、システインは、ヒトインスリン類似体の2つの位置に置換され、その位置は、
A10C, B3C;および
A10C, B4C
からなる群から選択される。
【0055】
本発明の一態様では、システインは、ヒトインスリン類似体の2つの位置に置換され、その位置は、A10CおよびB3Cである。
【0056】
本発明の一態様では、システインは、ヒトインスリン類似体の2つの位置に置換され、その位置は、A10CおよびB4Cである。
【0057】
本発明の一態様では、2つのシステイン置換を含み、ヒトインスリンと比べて1つの追加のジスルフィド結合を生じるヒトインスリン類似体が得られる。
【0058】
本発明に従った用語「インスリン(an insulin)」および「インスリン(the insulin)」は本明細書では、ヒトインスリンまたはdesB30ヒトインスリンとして理解されることになる。
【0059】
本明細書で使用される用語「インスリンペプチド」は、ヒトインスリンまたはインスリン活性を有するその類似体もしくは誘導体であるペプチドを意味する。
【0060】
本明細書で使用される用語「親インスリン」は、本発明に従ったいかなるシステイン置換であれそれに適用される前のインスリンを意味することが意図されている。一態様では、親インスリンはヒトインスリンまたはdesB30ヒトインスリンである。一態様では、親インスリンはdesB30ヒトインスリンである。一態様では、親インスリンはヒトインスリンである。
【0061】
本発明の一態様では、システイン置換の部位は、ヒトインスリン類似体がヒトインスリンに付随する所望の生物活性を保持するように選ばれる。所望の生物活性は当業者には公知であり、たとえば、実施例に記載されているように、インスリン受容体への結合、IGF-1(インスリン増殖因子1)受容体への結合、インビトロ効力(脂質生合成、グリコーゲン合成の尺度)、インビボ効力(定常状態クランプ、PKおよびPD実験)を含む。
【0062】
一態様では、インスリン受容体への受容体結合が、インスリン受容体へのヒトインスリンの受容体結合の少なくとも1%である本発明に従ったヒトインスリン類似体が得られる。一態様では、インスリン受容体への受容体結合が、インスリン受容体へのヒトインスリンの受容体結合の少なくとも3%である。一態様では、インスリン受容体への受容体結合が、インスリン受容体へのヒトインスリンの受容体結合の少なくとも5%である。一態様では、インスリン受容体への受容体結合が、インスリン受容体へのヒトインスリンの受容体結合の少なくとも10%である。一態様では、インスリン受容体への受容体結合が、インスリン受容体へのヒトインスリンの受容体結合の少なくとも15%である。一態様では、インスリン受容体への受容体結合が、インスリン受容体へのヒトインスリンの受容体結合の少なくとも20%である。
【0063】
一態様では、インスリン受容体への受容体結合が増加する、本発明に従ったヒトインスリン類似体が得られる。一態様では、インスリン受容体への受容体結合がインスリン受容体へのヒトインスリンの受容体結合の少なくとも110%である本発明に従ったヒトインスリン類似体が得られる。一態様では、インスリン受容体への受容体結合はインスリン受容体へのヒトインスリンの受容体結合の少なくとも120%である。一態様では、インスリン受容体への受容体結合はインスリン受容体へのヒトインスリンの受容体結合の少なくとも130%である。一態様では、インスリン受容体への受容体結合はインスリン受容体へのヒトインスリンの受容体結合の少なくとも140%である。一態様では、インスリン受容体への受容体結合はインスリン受容体へのヒトインスリンの受容体結合の少なくとも150%である。一態様では、インスリン受容体への受容体結合はインスリン受容体へのヒトインスリンの受容体結合の少なくとも160%である。一態様では、インスリン受容体への受容体結合はインスリン受容体へのヒトインスリンの受容体結合の110から200%までである。一態様では、インスリン受容体への受容体結合はインスリン受容体へのヒトインスリンの受容体結合の120から180%までである。一態様では、インスリン受容体への受容体結合はインスリン受容体へのヒトインスリンの受容体結合の140から180%までである。一態様では、インスリン受容体への受容体結合はインスリン受容体へのヒトインスリンの受容体結合の150から170%までである。
【0064】
インスリン受容体への受容体結合は、たとえば、下に記載されている通りに決定してよい:
インスリン受容体結合アッセイ(可溶化されたインスリン受容体上へ):
ヒトインスリン受容体に対する本発明のヒトインスリン類似体の親和性は、シンチレーション近接アッセイ(SPA)により決定される(Glendorf et al. (2008)、Biochemistry、47、4743〜4751頁に従って)。競合結合実験は、ヒトIR-AまたはIR-Bインサートを含有するpZemベクターで安定的にトランスフェクトされたベビーハムスター腎臓(BHK)細胞から、コムギ胚芽凝集素精製により半精製された可溶化されたヒトIR(ホロ受容体)を使用して、Eppendorf epMotion 5075ロボット上で96ウェルプレート(ポリスチレンOptiplate-96、PerkinElmer)において実施された。アッセイは、ヒトインスリン類似体とヒトインスリン標準を含有する酵母上清の希釈系列(8希釈、それぞれ5倍、最初の希釈43倍)を作製することにより開始された。結合緩衝液に再懸濁されたSPAビーズ(SPA PVT抗体結合ビーズ、抗マウス試薬カタログ番号RPNQ0017、GE Healthcare)、抗IRモノクローナルマウス抗体(83-7)、可溶化されたヒトIR(hIR-AまたはhIR-B)、および[125I]A14Tyr標識されたインスリンからなる試薬混合物が、適切な試料の希釈系列に添加された。[125I]A14Tyr標識されたインスリンの最終濃度は7.5pMであり、前記緩衝液は100mM HEPES(pH7.8)、100mM NaCl、10mM MgSO4、および0.025%(v/v) Tween 20からなっていた。プレートは室温で24時間穏やかに振盪しながらインキュベートされ、2000rpmで2分間遠心分離され、TopCount NXTにおいて3分間/ウェルで計数された。SPAからのデータは4パラメータロジスティックモデル(Volund、A.、(1978)、Biometrics、34、357〜365頁)およびヒトインスリンと比べた発現されたヒトインスリン類似体の親和性に従って解析された。
【0065】
モノクローナルmIR抗体の調製
特異的抗体(F12または83-7)はモノクローナル技法により作製される。RBFマウスは、FCA中の精製されたmIR 50μgを皮下に注射され、続いてFIA中のmIR 20μgを用いた2回注射により免疫化される高応答マウスは25μgのmIRで静脈内に追加免疫され、脾臓は3日後に収穫される。脾細胞は骨髄腫Fox細胞系統と融合される(Kohler, G & Milstein C. (1976)、European J. Immunology、6:511〜19頁; Taggart RT et al (1983)、Science 219:1228〜30頁)。上清はmIR特異的ELISAにおいて抗体産生についてスクリーニングされる。陽性ウェルはクローン化され、ウェスタンブロッティングにおいて試験される。
【0066】
インスリン受容体結合アッセイ(膜結合性インスリン受容体上で):
膜結合性組換えヒトインスリン受容体アイソフォームA(hIR-A)への[125I]-ヒトインスリンの結合:
膜結合性インスリン受容体の抽出:10層細胞ファクトリーからヒトインスリン受容体アイソフォームAを発現しているBHK細胞(tk-ts13)が収穫され、25mlの氷冷緩衝液(25mM HEPES pH7.4、2.5mM CaCl2、1mM MgCl2、250mg/lバシトラシン、0.1mM Pefablock (Roche))中にホモジナイズされた。ホモジネートは41%ショ糖クッション上に慎重に層状にされ、4℃でBeckman SW28ローター中75分間、超遠心機において95,000×gで遠心分離された。原形質膜はショ糖クッションの上から回収され、緩衝液で1対4に希釈され、Beckman SW28ローター中45分間、40,000×gで遠心分離された。ペレットは緩衝液(25mM HEPES pH7.4、2.5mM CaCl2、1mM MgCl2、250mg/lバシトラシン、0.1mM Pefablock)に懸濁され、-80℃で貯蔵された。
【0067】
膜結合性インスリン受容体への放射性リガンドの結合は、96ウェルOptiPlate(Perkin Elmer)において2度重複して実施された。膜タンパク質は、総容積200mlアッセイ緩衝液(50mM HEPES、150mM NaCl、5mM MgSO4、0.01% Triton X-100、0.1% HSA (脂肪酸なし)、Complete(商標) EDTA-なしプロテアーゼ阻害剤)中50pM [125I-TyrA14]-ヒトインスリン、増加する濃度のヒトインスリンまたはヒトインスリン類似体(典型的には0.01から300nMまで)、および1mgのWGA-被膜PVTミクロスフェア(GE Healthcare)と一緒に25℃で150分間インキュベートされた。アッセイは2000rpmでの2分間のプレートの遠心分離により終了され、結合した放射能は60分の遅延後Packard TopCount NXTにおいてカウントすることにより定量化された。
【0068】
結合データは、GraphPad Prism 5.02 (GraphPad Software、San Diego、CA)において4パラメータシグモイド回帰アルゴリズムを使用してフィットさせた。結果は、ヒトインスリンと比べたIC50として%で与えられる。
【0069】
一態様では、本発明に従ったヒトインスリン類似体は、ヒトインスリンの2つのアミノ酸残基がシステイン残基で置換されており、場合によりヒトインスリンのアミノ酸配列と比べてB30位のアミノ酸が欠失している改変されたインスリンである。
【0070】
インスリン分子の改変は、鎖(AまたはB)、位置、および天然のアミノ酸残基と置き換わるアミノ酸残基を表す1または3文字コードを記載して表示される。
【0071】
本明細書では、「A1」、「A2」および「A3」等のような用語は、インスリンのA鎖の(N末端から数えて)それぞれ1位、2位および3位等のアミノ酸を示している。同様に、「B1」、「B2」および「B3」等のような用語は、インスリンのB鎖の(N末端から数えて)それぞれ1位、2位および3位等のアミノ酸を示している。アミノ酸を表す1文字コードを使用して、A10Cのような用語は、A10位のアミノ酸がシステインであることを指定する。アミノ酸を表す3文字コードを使用すれば、対応する表現はA10Cysとなる。
【0072】
「desB30」または「B(1-29)」は、B30アミノ酸を欠く天然インスリンB鎖またはその類似体を意味し、「A(1-21)」は天然インスリンA鎖を意味する。したがって、たとえば、A10C, B1C, desB30ヒトインスリンまたは代わりにA10Cys, B1Cys, desB30ヒトインスリンは、A鎖中の10位のアミノ酸がシステインで置換されており、B鎖中の1位のアミノ酸がシステインで置換されており、B鎖中の30位のアミノ酸が欠失しているヒトインスリンの類似体である。
【0073】
本明細書では、用語「アミノ酸残基」は、形式上、ヒドロキシ基がカルボキシ基から取り除かれているおよび/または形式上、水素原子がアミノ基から取り除かれているアミノ酸である。
【0074】
インスリン類似体の例は、たとえば、A10C, B1Cヒトインスリン、A10C, B2Cヒトインスリン、A10C, B3Cヒトインスリン、A10C, B4Cヒトインスリン、A10C, B5Cヒトインスリン、A10C, B1C, desB30ヒトインスリン、A10C, B2C, desB30ヒトインスリン、A10C, B3C, desB30ヒトインスリン、A10C, B4C, desB30ヒトインスリン、A10C, B5C, desB30ヒトインスリン、B1C, B4CヒトインスリンおよびB1C, B4C, desB30ヒトインスリンである。
【0075】
ポリペプチド、たとえば、インスリンの作製は当技術分野では周知である。本発明に従ったヒトインスリン類似体は、たとえば、古典的ペプチド合成、たとえば、t-BocもしくはFmoc化学を使用する固相ペプチド合成または他の確立した技法により作製し得る。たとえば、Greene and Wuts、「Protective Groups in Organic Synthesis」、John Wiley & Sons、1999年を参照されたい。ヒトインスリン類似体は、前記類似体をコードするDNA配列を含有し、ヒトインスリン類似体の発現を可能にする条件下で適切な栄養培地においてヒトインスリン類似体を発現することができる宿主細胞を培養することを含む方法により産生してもよい。いくつかの組換え法を、ヒトインスリンおよびヒトインスリン類似体の作製に使用し得る。たとえば、大腸菌(Escherichia coli)および出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)などの微生物におけるインスリンの産生に使用し得る方法の3つの非限定的例は、たとえば、WO2008034881に開示されている。
【0076】
典型的には、ヒトインスリン類似体は、たとえば、EP1,246,845またはWO2008034881に開示されている周知の技法により、適切な宿主細胞において問題のヒトインスリン類似体またはその前駆体をコードするDNA配列を発現することによって産生される。これらの両特許文献は参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【0077】
ヒトインスリン類似体は、EP1,246,845に開示されるN末端伸長を用いて発現し得る。培養培地への分泌および回収後、インスリン前駆体は様々なインビトロ手順を受けて、考えられるN末端伸長配列および接続ペプチドを取り除きヒトインスリン類似体を得ることになる。そのような方法には、米国特許明細書第4,343,898号または米国特許明細書第4,916,212号に記載されている、L-スレオニンエステルの存在下でのトリプシンまたはアクロモバクター・リティカス(Achromobacter lyticus)プロテアーゼによる酵素変換とそれに続く塩基または酸加水分解によるヒトインスリン類似体のスレオニンエステルのヒトインスリン類似体への変換を含む。
【0078】
本発明において適切な種類のN末端伸長の例は、米国特許第5,395,922号および欧州特許第765,395号に開示されており、これらの両特許文献は参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【0079】
本発明は、主張されるインスリン類似体をコードする核酸配列にも関係する。追加の実施形態では、本発明はそのような核酸配列を含有するベクターおよびそのような核酸配列またはベクターを含有する宿主細胞に関係する。
【0080】
さらに追加の実施形態では、本発明は、
(i)インスリン前駆体をコードする核酸配列を含む宿主細胞を培養する、
(ii)前記培養培地から前記インスリン前駆体を単離する、
(iii)前記インスリン前駆体をインビトロ酵素変換により本発明のインスリン類似体に変換すること
を含む、ヒトインスリン類似体を産生するための方法に関する。
【0081】
さらに追加の実施形態では、本発明は、
(i)インスリン前駆体をコードする核酸配列を含む宿主細胞を培養する、
(ii)前記培養培地から前記インスリン前駆体を単離する、
(iii)前記インスリン前駆体を本発明のヒトインスリン類似体に変換すること
を含む、ヒトインスリン類似体を産生するための方法に関する。
【0082】
本発明の一実施形態では、宿主細胞は酵母宿主細胞であり、追加の実施形態では、酵母宿主細胞は酵母菌(Saccharomyces)属から選択される。追加の実施形態では、酵母宿主細胞は出芽酵母種から選択される。
【0083】
本発明の一態様では、ヒトインスリンまたはdesB30ヒトインスリンの2つ以上のアミノ酸をシステイン残基で置換し、
a.ヒトインスリンの3つのジスルフィド結合が保持されており、
b.システイン置換の部位は、導入されたシステイン残基が、折り畳まれたインスリン類似体の三次元構造内に置かれ、ヒトインスリンには存在しない1つまたは複数の追加のジスルフィド結合の形成を可能にするように選ばれ、
それによって、ヒトインスリンには存在しない1つまたは複数の追加のジスルフィド結合を含むヒトインスリン類似体を作製することを含む、
ヒトインスリンを安定化するための方法が得られる。
【0084】
本発明に従ったインスリン類似体を得る方法は、前記説明から明らかである。したがって、当業者は、前記説明を読めば、ヒトインスリンの3つのジスルフィド結合に加えて、導入されたシステイン残基が、折り畳まれたインスリン類似体の三次元構造内に置かれ、ヒトインスリンには存在しない1つまたは複数の追加のジスルフィド結合の形成を可能にするようにヒトインスリンまたはdesB30ヒトインスリンを改変する方法が分かる。
【0085】
タンパク質(たとえば、インスリン)中のジスルフィド結合の数は、たとえば、実施例に記載されている正確な無傷の質量測定により容易に決定することが可能である。ジスルフィド結合の結合性は、ペプチドマッピングなどの当技術分野で公知の標準技法により確認する(決定する)ことが可能である。インスリンペプチドにおけるジスルフィド結合マッピングのための一般的戦略は、以下のステップ:1)可能であれば、ペプチドあたり1個のジスルフィド結合のみを含有するジスルフィド結合されたペプチドに非還元インスリンが断片化され、選ばれる条件は、ジスルフィド結合の再構成が回避されるような条件でもある、2)ジスルフィド結合されたペプチドの互いからの分離、3)個々のジスルフィド結合に関与しているシステイン残基の同定を含む。
【0086】
ヒトインスリンは典型的には、Glu-Cプロテアーゼにより消化されて、2つのジスルフィド結合(A6-A11およびA7-B7)を含有するペプチドIおよび1つのジスルフィド結合(A20-B19)を含有するペプチドIIを生じる。ジスルフィド結合をペプチドIに一義的に割り当てるためには、さらに断片化が必要である。酸加水分解(Ryle et al.、1955年、Biochem J. 60、541〜56頁)、マニュアルエドマン分解(Kumazaki T、Ishii, S. 1990年、J. Biochem (Tokyo) 17、414〜9頁)、またはサーモリシンを用いる長期消化(Ota M、Ariyoshi, Y.、1995年、Biosci. Biotech. Biochem. 59、1956〜7頁)が以前用いられて、タンパク質中のCysCys結合を加水分解した。ジスルフィド結合をペプチドIに割り当てる別の方法は、トリスカルボキシエチルホスフィンを用いる部分的還元(A7-B7ジスルフィド結合の還元)、還元されたシステイン残基のアルキル化とそれに続く完全還元および異なるアルキル基を使用するシステインアルキル化である(Yen, T.-Y.、Yan, H.、Macher, B.、2001年、J Mass Spectrom. 37、15〜30頁)。余分なジスルフィド結合を含有するインスリンのジスルフィドマッピングのための戦略は、原則的に、新しいジスルフィド結合を収容するように類似体ごとに調整されたヒトインスリンについての上の概要と同じである。NMRまたはX線結晶学によるインスリン構造の決定は、ジスルフィド結合の結合性を確認するための別のアプローチである。インスリンのNMRおよび/またはX線構造を解明するための条件は、すでに記載されており当技術分野では公知である。
【0087】
医薬組成物
本発明のもう1つの目的は、0.1mg/mlから500mg/mlまでの濃度で存在する本発明に従ったインスリン類似体を含み、2.0から10.0までのpHを有する医薬製剤を提供することである。前記製剤は、プロテアーゼ阻害剤、緩衝系、保存剤、等張化剤、キレート化剤、安定剤および界面活性剤をさらに含み得る。本発明の一実施形態では、医薬製剤は水性製剤、すなわち、水を含む製剤である。
【0088】
別の実施形態では、医薬製剤は、事前の溶解なしで使用できる状態である乾燥製剤(たとえば、凍結乾燥または噴霧乾燥)である。
【0089】
本発明に従ったインスリン類似体を含有する医薬組成物は、いくつかの部位に、たとえば、局所部位、たとえば、皮膚および粘膜部位に、吸収を迂回する部位(たとえば、動脈での、静脈での、心臓での投与)に、ならびに吸収を伴う部位(たとえば、皮膚での、皮下への、筋肉でのまたは腹部での投与)にそのような治療を必要とする患者に投与し得る。
【0090】
本発明に従った医薬組成物の投与は、そのような治療を必要とする患者への、いくつかの投与経路、たとえば、舌、舌下、頬側、口内、経口、胃および腸内、経鼻、たとえば、細気管支および肺胞またはその組合せを通して肺、上皮、真皮、経皮、膣、直腸、たとえば、結膜を通して眼球、尿管、および非経口を通じてであってよい。
【0091】
本発明の組成物は、いくつかの剤形で、たとえば、溶液、懸濁液、乳濁液、ミクロ乳濁液、多層乳剤、気泡、塗薬、ペースト、プラスター、軟膏、錠剤、コーティング錠、リンス、カプセル、たとえば、硬ゼラチンカプセルおよび軟ゼラチンカプセル、坐薬、直腸カプセル、ドロップ、ゲル、スプレー、粉末、エアロゾル、吸入剤、点眼剤、眼軟膏、眼リンス、膣ペッサリー、膣リング、膣軟膏、注射液、インサイツトランスフォーミング液、たとえば、インサイツゲル化、インサイツ硬化、インサイツ沈殿、インサイツ結晶化、輸液および移植片として投与し得る。
【0092】
非経口投与では、本発明のインスリン類似体は、既知のインスリンの製剤と類似して処方される。さらに、非経口投与では、本発明のインスリン類似体は、既知のインスリンの投与に類似して投与され、医者はこの手順には精通している。
【0093】
非経口投与は、注射器、場合によりペン様注射器により実施することが可能である。代わりに、非経口投与は輸液ポンプにより実施することが可能である。
【0094】
本発明のインスリン類似体を含有する注射用組成物は、必要に応じて成分を溶解し混合して所望の最終産物を得ることを含む製薬産業の従来技法を使用して調製することが可能である。したがって、1つの手順に従って、本発明のインスリン類似体は、調製される組成物の最終容積よりもいくらか少ない量の水に溶解される。等張剤、保存剤および緩衝剤は必要に応じて添加され、溶液のpH値は、必要であれば、酸、たとえば、塩酸または塩基、たとえば、水酸化ナトリウム水溶液を必要に応じて使用して調整される。最終的に、溶液の容積は水で調整されて、成分の所望の濃度が得られる。
【0095】
さらに正確には、本発明のインスリン類似体調製物、たとえば、溶液または懸濁液は、たとえば、約240から約2400nmol/mlまでの範囲の濃度で、本発明の化合物を水溶媒質中にわずかに酸性条件で溶解させることにより調製し得る。水溶媒質は、たとえば、塩化ナトリウムまたはグリセロールを用いて等張にされる。さらに、水溶媒質は、酢酸またはクエン酸などの緩衝剤、m-クレゾールまたはフェノールなどの保存剤および、たとえば、インスリン活性単位あたり最大約20μgのZn++の濃度で亜鉛イオンを含有し得る。前記溶液のpH値は、沈殿を回避するために本発明の化合物の等電点に近づきすぎることなく、中性のほうに調整される。最終インスリン調製物のpH値は、本発明のどの化合物が使用されるか、亜鉛イオンの濃度および本発明の化合物の濃度に依存する。ヒトインスリン類似体調製物は、たとえば、濾過減菌法により無菌にされる。
【0096】
経口使用を意図される製剤は、任意の既知の方法に従って調製してよく、そのような製剤は、薬剤的に優雅で美味な調製物を提供するために、甘味剤、芳香剤、着色剤および保存剤からなる群から選択される1つまたは複数の薬剤を含有し得る。錠剤は、錠剤の製造に適した非毒性の薬剤的に許容される賦形剤との混合物で活性成分を含有し得る。これらの賦形剤は、たとえば、マンニトール、マルトデキストリン、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;顆粒化および分解剤、たとえば、コーンスターチ;結合剤、たとえば、デンプン、ゼラチン、ポリマーまたはアカシア;ならびに潤滑剤、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであり得る。錠剤は、コーティングされていなくてもよく、治療的に活性なポリペプチドの分解または放出を遅延するための既知の技法によりコーティングされてもよい。
【0097】
本発明の経口投与可能な製剤は、製薬化学において周知の方法に従って調製され、投与され得る(レミントン薬学、第17版(A. Osol ed.、1985年)を参照)。
【0098】
本発明のヒトインスリン類似体調製物は、既知のインスリン調製物の使用に類似して使用される。
【0099】
投与される本発明の化合物の量、本発明の化合物を投与する頻度の決定、および、場合により別の抗糖尿病化合物と共に、本発明のどの化合物または複数の化合物を投与するかの選出は、糖尿病の治療に精通している実務者と相談して決定される。
【0100】
一態様では、本発明に従ったヒトインスリン類似体は経口的に投与される。一態様では、本発明に従ったヒトインスリン類似体は非経口的に投与される。
【0101】
別の実施形態では、本発明は、医薬として使用するための本発明に従ったインスリン類似体に関する。
【0102】
一実施形態では、本発明に従ったインスリン類似体は、高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害および1型糖尿病を治療するまたは予防するための医薬の調製のために使用される。
【0103】
別の実施形態では、本発明に従ったインスリン類似体は、2型糖尿病の疾患進行を遅延するまたは予防するための医薬として使用される。
【0104】
本発明の一実施形態では、本発明に従ったヒトインスリン類似体は、高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、1型糖尿病を治療するもしくは予防するための、または2型糖尿病の疾患進行を遅延するもしくは予防するための医薬として使用することを目的とする。
【0105】
本発明の追加の実施形態では、高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害、1型糖尿病を治療するもしくは予防するための、または2型糖尿病の疾患進行を遅延するもしくは予防するための方法であって、そのような治療のための有効量の本発明に従ったインスリン類似体を、そのような治療を必要とする患者に投与することを含む方法が提供される。
【0106】
用語「糖尿病」には、1型糖尿病、2型糖尿病および高血糖症を引き起こす他の状態が含まれる。
【0107】
疾患の「治療」という用語には、疾患の治療、予防または軽減が含まれる。
【0108】
下記は、本発明をさらに説明する態様の一覧である。
1.ヒトインスリンの3つのジスルフィド結合が保持されており、かつ、システイン置換の部位は、導入されたシステイン残基が、折り畳まれたインスリン類似体の三次元構造内に位置し、ヒトインスリンには存在しない1つまたは複数の追加のジスルフィド結合の形成を可能にするように選ばれる、2つ以上のシステイン置換を有するヒトインスリン類似体。
2.システイン置換の部位は、
(1)導入されたシステイン残基が、折り畳まれたインスリン類似体の三次元構造内に位置し、ヒトインスリンには存在しない1つまたは複数の追加のジスルフィド結合の形成を可能にし、および
(2)前記ヒトインスリン類似体がヒトインスリンに付随する所望の生物活性を保持している
ように選ばれる、態様1に従ったヒトインスリン類似体。
3.システイン置換の部位は、
(1)導入されたシステイン残基が、折り畳まれたインスリン類似体の三次元構造内に位置し、ヒトインスリンには存在しない1つまたは複数の追加のジスルフィド結合の形成を可能にし、
(2)前記ヒトインスリン類似体がヒトインスリンに付随する所望の生物活性を保持している、ならびに
(3)前記ヒトインスリン類似体が、ヒトインスリンおよび/または親インスリンと比べて増加した物理的安定性を有する、
ように選ばれる、態様1または2に従ったヒトインスリン類似体。
4.システイン置換の部位は、
(1)導入されたシステイン残基が、折り畳まれたインスリン類似体の三次元構造内に位置し、ヒトインスリンには存在しない1つまたは複数の追加のジスルフィド結合の形成を可能にし、
(2)前記ヒトインスリン類似体がヒトインスリンに付随する所望の生物活性を保持している、および
(3)前記ヒトインスリン類似体が、タンパク質分解に対して安定化される
ように選ばれる、可能な範囲で態様1から3のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体。
5.A鎖のA9、A10、A11およびA12からなる群から選択される位置における少なくとも1つのアミノ酸残基がシステインで置換されており、B鎖のB1、B2、B3、B4、B5およびB6からなる群から選択される位置における少なくとも1つのアミノ酸残基がシステインで置換されており、かつ、場合によりB30位のアミノ酸が欠失している、可能な範囲で態様1から4のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体。
6.A鎖のA10位におけるアミノ酸残基がシステインで置換されており、B鎖のB1、B2、B3およびB4からなる群から選択される位置におけるアミノ酸残基がシステインで置換されており、かつ、場合によりB30位のアミノ酸が欠失している、可能な範囲で態様1から5のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体。
7.A鎖のA10位におけるアミノ酸残基がシステインで置換されており、B鎖のB3およびB4からなる群から選択される位置におけるアミノ酸残基がシステインで置換されており、かつ、場合によりB30位のアミノ酸が欠失している、可能な範囲で態様1から6のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体。
8.A鎖のA10位におけるアミノ酸残基がシステインで置換されており、B鎖のB3位におけるアミノ酸残基がシステインで置換されており、かつ、場合によりB30位のアミノ酸が欠失している、可能な範囲で態様1から7のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体。
9.A鎖のA10位におけるアミノ酸残基がシステインで置換されており、B鎖のB4位におけるアミノ酸残基がシステインで置換されており、かつ、場合によりB30位のアミノ酸が欠失している、可能な範囲で態様1から8のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体。
10.A鎖のA21位におけるアミノ酸残基がシステインで置換されており、B鎖のB25およびB26からなる群から選択される位置におけるアミノ酸残基がシステインで置換されており、かつ、場合によりB30位のアミノ酸が欠失している、態様1から9のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体。
11.1つまたは複数の追加のジスルフィド結合がA鎖とB鎖の間で得られる、可能な範囲で態様1から10のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体。
12.インスリン受容体への受容体結合が、インスリン受容体へのヒトインスリンの受容体結合の少なくとも1%である、可能な範囲で態様1から11のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体。
13.親インスリンと比べて改善された物理的安定性を有する、可能な範囲で態様1から12のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体。
14.B30位のアミノ酸が欠失している、可能な範囲で態様1から13のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体。
15.少なくとも1つの追加のジスルフィド結合が、A鎖において2つのシステインを接続している、またはB鎖において2つのシステインを接続している、可能な範囲で態様1から14のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体。
16.2つのシステイン置換を有する、可能な範囲で態様1から15のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体。
17.A10C, B1C, desB30ヒトインスリン
A10C, B2C, desB30ヒトインスリン
A10C, B3C, desB30ヒトインスリン
A10C, B4C, desB30ヒトインスリン
A21C, B25C, desB30ヒトインスリン
A21C, B26C, desB30ヒトインスリン
B1C, B4C, desB30ヒトインスリン
A10C, B1Cヒトインスリン
A10C, B2Cヒトインスリン
A10C, B3Cヒトインスリン
A10C, B4Cヒトインスリン
A21C, B25Cヒトインスリン
A21C, B26Cヒトインスリン、および
B1C, B4Cヒトインスリン
からなる群から選択される、可能な範囲で態様1から16のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体。
18.A10C, B1C, desB30ヒトインスリン
A10C, B2C, desB30ヒトインスリン
A10C, B3C, desB30ヒトインスリン
A10C, B4C, desB30ヒトインスリン
B1C, B4C, desB30ヒトインスリン
A10C, B1Cヒトインスリン
A10C, B2Cヒトインスリン
A10C, B3Cヒトインスリン
A10C, B4Cヒトインスリン、および
B1C, B4Cヒトインスリン
からなる群から選択される、可能な範囲で態様1から17のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体。
19.A21C, B25C, desB30ヒトインスリン
A21C, B26C, desB30ヒトインスリン
A21C, B25Cヒトインスリン、および
A21C, B26Cヒトインスリン
からなる群から選択される、可能な範囲で態様1から18のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体。
20.ヒトインスリンまたはdesB30ヒトインスリンの2つ以上のアミノ酸をシステイン残基で置換することを含むヒトインスリンを安定化するための方法であって、
a.ヒトインスリンの3つのジスルフィド結合が保持されており、かつ、
b.システイン置換の部位は、導入されたシステイン残基が、折り畳まれたインスリン類似体の三次元構造内に位置し、ヒトインスリンには存在しない1つまたは複数の追加のジスルフィド結合の形成を可能にするように選ばれ、
それによって、ヒトインスリンには存在しない1つまたは複数の追加のジスルフィド結合を含むヒトインスリン類似体を作製する方法。
21.態様1から19のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体の生物学的活性量および薬剤的に許容される担体を含む医薬組成物。
22.薬剤的に許容される担体および/または賦形剤ならびに場合によりアジュバンドをさらに含む、態様21に従った医薬組成物。
23.態様1から19のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体または態様21から22のいずれかに従った医薬組成物を対象に投与することを含む、対象における真性糖尿病を治療するための方法。
24.態様1から19のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体または態様21から22のいずれかに従った医薬組成物の治療的に活性な用量を、そのような治療を必要とする患者に投与することにより、哺乳動物において血糖値を下げる方法。
25.経口投与である、態様21または22に従った方法。
26.非経口投与である、態様21または22に従った方法。
27.気管内投与である、態様21または22に従った方法。
28.高血糖症、2型糖尿病、耐糖能障害および1型糖尿病の治療または予防における医薬品として使用するための態様1から19のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体。
29.2型糖尿病の疾患進行を遅延するまたは予防することにおける医薬品として使用するための態様1から19のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体。
30.態様1から19のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体をコードする核酸配列、その誘導体、その部分的配列、その縮重した配列または厳密な条件下でそれにハイブリダイズする配列。
31.態様1から19のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体の前駆体をコードする核酸配列、その誘導体、その部分的配列、その縮重した配列または厳密な条件下でそれにハイブリダイズする配列。
32.態様30または31に従った核酸配列を含む発現ベクター。
33.態様32に従った発現ベクターを含む宿主細胞。
34.態様33の宿主細胞を培養するステップを含む、ヒトインスリン類似体を産生する方法。
35.アミノ酸のシステイン置換が部位特異的変異誘発により実施される、態様1から19のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体を調製する方法。
36.態様1から19のいずれか1つに従ったヒトインスリン類似体を薬剤的に許容される物質および/または賦形剤と混合することを含む、態様21から22のいずれか1つに従った医薬組成物を調製するための方法。
37.態様36に従った方法により入手可能な医薬組成物。
【0109】
本明細書において引用される、出版物、特許出願および特許を含むすべての参照文献は、これによりその全体を参照により、および各参考文献が参照により組み込まれることを個々におよび具体的に示されていて本明細書にその全体を記載されている場合と同じ程度に、組み込まれている(法が許す最大範囲まで)。
【0110】
見出しおよび小見出しはすべて、単に便宜上、本明細書において使用されており、いかなる点でも本発明を限定するものと解釈すべきではない。
【0111】
本明細書において提供されるありとあらゆる例、または例となる言葉遣い(たとえば、「などの(such as)」)の使用は、本発明の理解をもっと容易にするためだけに意図されており、他の方法で主張されていなければ、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のどんな言葉遣いも、本発明の実行に不可欠である主張されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0112】
本明細書への特許文書の引用および組込みは、単に便宜上行われ、そのような特許文書の妥当性、特許性、および/または執行可能性についてのいかなる見解も反映していない。
【0113】
本発明は、適用法により容認されている通りに、この文書に添付される特許請求の範囲に列挙される主題のあらゆる改変物および等価物を含む。
【0114】
(実施例)
下記の実施例は、限定のためではなく、説明のために提供される。
【0115】
本明細書で使用される略語は以下の通りである:γGluはγL-グルタミルであり、HClは塩酸であり、MeCNはアセトニトリルであり、OEGは[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]エチルカルボニルであり、RPCは逆相クロマトグラフィーであり、RTは室温であり、TFAはトリフルオロ酢酸である。
【0116】
以下の実施例および一般的手順は、本明細書においておよび合成計画において同定される中間化合物および最終産物に言及する。本発明の化合物の調製は、以下の実施例を使用して詳細に説明されるが、記載されている化学反応は、本発明の化合物の調製に対するその一般的適用性に関して開示されている。反応は、本発明の開示された範囲内に含まれる各化合物には記載されている通りに適用可能ではない場合がある。こうしたことが起こる化合物は当業者であれば容易に認識するであろう。こうした場合、反応は、当業者に公知の従来の変更により、つまり、妨害している基の適切な防御により、他の従来の試薬に変更することにより、または反応条件の常用の変更により首尾よく実施することが可能である。代わりに、本明細書で開示されたまたは他の点では従来の他の反応が、本発明の対応する化合物の調製に適用可能になるであろう。すべての調製法では、出発物質はすべて既知であり、または既知の出発物質から容易に調製し得る。温度はすべて摂氏度で記載されており、他の方法で示されていなければ、部および百分率はすべて収量に言及する場合は重量により、部はすべて、溶媒および溶出剤に言及する場合は容量による。
【0117】
ベクターの構築、酵母発現、プロセッシングおよびインスリン類似体の精製は、当業者により容易に認識される標準技法を使用して行うことが可能である。インスリン類似体の調製の1つの非限定的例(一般的手順(A))は、以前記載されていた(Glendorf, T.、Sorensen, A.R.、Nishimura, E.、Pettersson, I. and Kjeldsen, T.「Importance of the Solvent-Exposed Residues of the Insulin B Chain α-Helix for Receptor Binding」Biochemistry 2008年、47、4743〜4751頁)。手短に言えば、変異はオーバーラップ伸長PCRを使用してインスリンをコードするベクターに導入される。インスリン類似体は、出芽酵母MT663株におけるAla-Ala-Lys mini C-ペプチドを有する、プロインスリン様融合タンパク質として発現される。一本鎖前駆体は、A.リティカスエンドプロテアーゼを使用して、酵素的に2本鎖desB30類似体に変換される。前記2本鎖desB30類似体への完全変換は、MALDI-TOF MSにより確認され、その純度は酸性pHと中性pHの両方でRP-HPLCにより測定される。
【0118】
精製
本発明の化合物は、当技術分野内では典型的な以下の手順のうちの1つまたは複数を用いることにより精製することが可能である。これらの手順は、必要であれば、勾配、pH、塩、濃度、流量、カラムなどに関して変更することが可能である。問題のインスリンの不純物プロファイル、溶解性等などの要因に応じて、これらの変更は当業者により容易に認識され加えられることが可能である。
【0119】
ヒトインスリン類似体の精製は1つおよび/または2つのステップで実施され:
1)酸性化され清澄された培養上清は陽イオン交換カラムへの吸着により捕獲され、および/または
2)インスリン類似体は、たとえば、pH3のリン酸緩衝液中エタノール/水勾配を用いてC18シリカカラム上で調製用逆相高圧液体クロマトグラフィーにより精製される。
【0120】
中性HPLCまたは陰イオン交換クロマトグラフィー後、前記化合物は、たとえば、サイズ排除クロマトグラフィーにより脱塩、等電pHで沈殿、または酸性HPLCにより脱塩される。
【0121】
酸性HPLCまたは脱塩後、前記化合物は純粋画分の凍結乾燥により単離される。
【0122】
典型的な精製手順:
HPLCシステムは、以下の:Model 215液体ハンドラー、Model 322-H2ポンプおよびModel 155 UV検出器からなるGilsonシステムである。検出は典型的には210nmおよび280nmである。
【0123】
Akta Purifier FPLCシステムは以下の:Model P-900ポンプ、Model UV-900 UV検出器、Model pH/C-900 pHおよび電導度検出器、Model Frac-950フラクションコレクターからなる。UV検出は典型的には214nm、254nmおよび276nmである。
酸性HPLC:
カラム: Macherey-Nagel SP 250/21 Nucleusil 300-7 C4
流量: 8ml/分
緩衝液A: アセトニトリル中0.1% TFA
緩衝液B: 水中0.1% TFA
勾配: 0.0〜5.0分: 10% A
5.00〜30.0分: 10% Aから90% A
30.0〜35.0分: 90% A
35.0〜40.0分: 100% A
中性HPLC:
カラム: Phenomenex、Jupiter、C4 5μm 250×10.00mm、300Å
流量: 6ml/分
緩衝液A: 5mM TRIS、7.5nM (NH4)2SO4、pH=7.3、20% CH3CN
緩衝液B: 60% CH3CN、40%水
勾配: 0〜5分: 10% B
5〜35分: 10〜60% B
35〜39分: 60% B
39〜40分: 70% B
40〜43.5分: 70% B
陰イオン交換クロマトグラフィー:
カラム: RessourceQ、1ml
流量: 6ml/分
緩衝液A: 0.09% NH4HCO3、0.25% NH4OAc、42.5% エタノール pH8.4
緩衝液B: 0.09% NH4HCO3、2.5% NH4OAc、42.5% エタノール pH8.4
勾配: 30カラム体積中に100% Aから100% B
脱塩:
カラム: HiPrep 26/10
流量: 10ml/分、6カラム体積
緩衝液: 10mM NH4HCO3
【0124】
A10C, B3Cヒトインスリンの調製:
0.23gのL-スレオニンメチルエステルを水(1mL)に溶解し、N-メチルピロリジン-2-オン(NMP)が添加され、200mgのA10C, B3C, desB30ヒトインスリンが添加された。得られたpH(8.2)は水性酢酸でpH6.6に調整された。ALP III Sepharose 4 fast flow(Novo Nordisk)が前記混合物に添加され、混合物は室温で3時間穏やかに攪拌された。pHは塩酸で1.5に調整され、混合物は濾過された。濾液はアセトニトリル(2mL)を添加され、pHは1Nの水酸化ナトリウムで7.5に調整された。A10C, B3C, B30Tメチルエステルヒトインスリンは、Phenomenex、Gemini、5μ、C18、110Å、250×30cmカラムならびに以下の溶出剤および勾配:
流量: 20ml/分
溶出剤: A: 20% CH3CN 10mM TRIS+15mM (NH4)2SO4 pH=7.3
B: 80% CH3CN、20%水
勾配: 0〜7.5分: 10% B
7.5〜47.5分: 10% Bから60% B
47.5〜47.5分: 60% B
47.5〜48分: 60% Bから100% B
48〜50分: 100% B
50〜53分: 10% B
を使用してHPLCにより精製された。
【0125】
純粋画分はプールされ、pHは1Nの塩酸で1.5に調整され、以下の溶出剤および勾配:
流量: 20ml/分
溶出剤: A: 水中0.1%トリフルオロ酢酸
B: アセトニトリル中0.1%トリフルオロ酢酸
勾配: 0〜7.5分: 0% B
7.5〜27.5分: 0% Bから60% B
27.5〜32.5分: 60% B
32.5〜38分: 60% Bから100% B
38〜40分: 100% B
40〜43分: 10% B
を使用してPhenomenex、Gemini、5μ、C18、110Å、250×30cmカラム上で脱塩された。
【0126】
インスリン含有画分はプールされ、凍結乾燥されて14mgのA10C, B3C, B30Tメチルエステルヒトインスリンを得た。
【0127】
これを1.4mLの氷冷0.1N水酸化ナトリウムに溶解し、1時間および室温で30分間静置させた。次に、pHは1Nの塩酸で2.5に調整され、インスリンは、Phenomenex、Gemini、5μ、C18、110Å、250×30cmカラムおよび以下の溶出剤および勾配:
流量: 20ml/分
溶出剤: A: 水TFA iCH3CN中0.1%トリフルオロ酢酸
B: アセトニトリル中0.1%トリフルオロ酢酸
勾配: 0〜7.5分: 25% B
7.5〜47.5分: 25% Bから55% B
47.5〜52.5分: 55% B
52.5〜57.5分: 55% Bから100% B
57.5〜60分: 100% B
を使用してHPLCにより精製された。
【0128】
純粋画分の凍結乾燥により、4.5mgのA10C, B3Cヒトインスリンが得られた。
MS(エレクトロスプレー)m/4対m/z=1447.46.Calcd対1447.17
【0129】
A10C, B4Cヒトインスリンの調製:
この類似体は、A10C, B4C, desB30ヒトインスリンおよびL-スレオニンメチルエステルから開始して、上記のB3C類似体と類似して調製された。アルカリ加水分解後に得られた産物(6mg)は所望のA10C, B4Cヒトインスリンであった。
MS(エレクトロスプレー)m/4対m/z=1444.02.Calcd対1443.66
【0130】
代わりに、これらの類似体は、J. Markussen: Human Insulin by Tryptic Transpeptidation of Porcine Insulin and Biosynthetic Pにより公表されている手順を使用して調製してもよい。
【0131】
方法1:
インスリン類似体は、C18逆相HPLCカラムを使用するAlliance HPLCシステム(Waters、Milford、MA)により解析される。インスリン類似体分離は、リン酸/硫酸緩衝液中のアセトニトリルの直線勾配を用いて実現される。
カラム: ODDMS 120Å、5μm、YMC 4×125mm、FeF Chemicals
流量: 1ml/分
緩衝液A:
緩衝液B: 水中43.8%(w/w)アセトニトリル
勾配: 20分で20% Bから50% B、5分で50% Bから80% B
温度: 50℃
【0132】
方法2:
LC-MS計装は、Acquity UPLCシステム(Waters、Milford、MA)およびSynapt G2質量分析計(Waters、Milford、MA)からなる。インスリン類似体はC18逆相HPLCカラムに適用され、0.05%トリフルオロ酢酸中アセトニトリルの直線勾配を使用して解析される。HPLCからのフローは、2500V毛管ポテンシャル、110℃ソース温度、250℃脱溶媒和温度および50L/時間のコーンガスフロー(N2)を用い、ポジティブMSオンリーモードで作動するSynapt G2のエレクトロスプレーインターフェイスに直接適用される。m/z=100からm/z=3000までのMSスペクトルが1秒あたり2度得られる。機器は解析に先立ってNalの標準混合物により較正され、LC-MS解析中はロイシンエンケファリンのロックスプレーが適用される。無傷のインスリン質量は、MaxEnt3アルゴリズムを使用するBioPharma-Lynx 1.2(Waters、Milford、MA)により再構築される。Orbitrap XL質量分析計(Thermo Fisher)をSynapt G2の代わりに使用することが可能である。Orbitrap機器は、4kVの電源電圧、100μAの電源電流、40のシースガスフロー、10の補助ガスフロー、5のスイープガスフロー、20Vの毛管電圧を用いるポジティブMSモードで作動される。MSパラメータはすべて最適化性能のために機器のチューニング中に調整され、上に与えられたパラメータからわずかに逸脱していてもよい。この方法により得られる質量精度は10ppmよりもよい。
カラム: Acquity BEH C18 1×150mm、1.7μm(Waters)
流量: 0.1ml/分
緩衝液A: 0.02%(v/v)または0.05% (v/v) TFA
緩衝液B: アセトニトリル中0.02%(v/v)または0.04%(v/v)TFA
勾配: 2分間5% B; 12分で5% Bから50% B、1分で50% Bから90% B
UV検出: 215nm
【0133】
方法3:
インスリン類似体を含有する酵母培養物由来の上清は、10% TFA溶液を使用して酸性化され、HCCAマトリックススポットを含むPAC384 MALDIプレート(Bruker Daltonics、Bremen、Germany)上にスポットされた。各スポットは、リン酸アンモニウム/0.1% TFAフィニッシング溶液を使用して2度洗浄される。試料は、直線ポジティブモードで作動されるAutoflex Tof/Tof MALDI質量分析計(Bruker)を使用して解析され、インスリン類似体の手製の混合物を使用して較正される。この方法により、無傷のインスリン類似体の範囲(4000〜8000Da)で平均質量分解能が可能になる。この方法の精度は±3Daである。
【0134】
以下のそれぞれの実施例で与えられる結果は、複数の測定値および/または一部の場合では単一測定値からの平均を表す。一部の例では、第一の優先出願を提出して以来追加の測定が行われており、これにより平均値が修正され、異なる版の出願におけるわずかに異なる値を説明することが可能になるであろう。
【0135】
(実施例1)
一般的手順(A):
A10C, B1C, desB30ヒトインスリン
HPLC法1における保持時間: RT=15.5分
方法2: RT=10.6分; 理論的質量=5646.44Da; 測定された質量=5646.46Da
【0136】
(実施例2)
一般的手順(A):
A10C, B2C, desB30ヒトインスリン
HPLC法1: RT=14.3分
方法2: RT=10.3分; 理論的質量=5694.44Da; 測定された質量=5694.46Da
【0137】
(実施例3)
一般的手順(A):
A10C, B3C, desB30ヒトインスリン
HPLC法1: RT=13.3分
方法2: RT=10.1分; 理論的質量=5679.47Da; 測定された質量=5679.48Da
【0138】
(実施例4)
一般的手順(A):
A10C, B4C, desB30ヒトインスリン
HPLC法1: RT=13.3分
方法2: RT=10.1分; 理論的質量=5665.45Da; 測定された質量=5665.46Da
【0139】
(実施例5)
一般的手順(A):
A10C, B3Cヒトインスリン
方法2: RT=10分; 理論的質量=5780.51Da; 測定された質量=5780.52Da
【0140】
(実施例6)
一般的手順(A):
A10C, B4Cヒトインスリン
方法2: RT=10分; 理論的質量=5766.5Da; 測定された質量=5766.48Da
【0141】
(実施例7)
一般的手順(A):
B1C, B4C, desB30ヒトインスリン
HPLC法1: RT=20.5分
平均質量法3: 予想質量=5635.5Da; 測定された質量=5636.5Da
【0142】
(実施例8)
一般的手順(A):
A21C, B25C, desB30ヒトインスリン
HPLC法1: RT=17.1分
平均質量法3: 予想質量=5649.6Da; 測定された質量=5652.4Da
【0143】
(実施例9)
一般的手順(A):
A21C, B26C, desB30ヒトインスリン
HPLC法1: RT=15.5分
方法2: RT=11.1分; 理論的質量=5629.49Da; 測定された質量=5629.49Da
【0144】
(実施例10)
本発明の選択されたインスリン類似体のインスリン受容体親和性:
インスリン受容体結合アッセイ(可溶化されたインスリン受容体上で)
ヒトインスリン受容体に対する本発明のヒトインスリン類似体の親和性は、シンチレーション近接アッセイ(SPA)により決定された(Glendorf et al. (2008)、Biochemistry、47、4743〜4751頁に従って)。ヒトIR-AまたはIR-Bインサートを含有するpZemベクターで安定的にトランスフェクトされたベビーハムスター腎臓(BHK)細胞からコムギ胚芽凝集素精製により半精製された可溶化されたヒトIR(ホロ受容体)を使用して、Eppendorf epMotion 5075ロボット上の96ウェルプレート(ポリスチレンOptiplate-96、PerkinElmer)において競合結合実験は実施された。アッセイは、ヒトインスリン類似体とヒトインスリン標準を含有する酵母上清の希釈系列(8希釈、それぞれ5倍、最初の希釈43倍)を作製することにより開始された。結合緩衝液に再懸濁されたSPAビーズ(SPA PVT抗体結合ビーズ、抗マウス試薬カタログ番号RPNQ0017、GE Healthcare)、抗IRモノクローナルマウス抗体(83-7)、可溶化されたヒトIR(hIR-AまたはhIR-B)、および[125I]A14Tyr標識インスリンからなる試薬混合物は、適切な試料の希釈系列に添加された。[125I]A14Tyr標識インスリンの最終濃度は7.5pMで、緩衝液は、100mM HEPES(pH7.8)、100mM NaCl、10mM MgSO4、および0.025%(v/v) Tween 20からなっていた。プレートは室温で24時間穏やかに振盪しながらインキュベートされ、2000rpmで2分間遠心分離され、TopCount NXTにおいて3分間/ウェルで計数された。SPAからのデータは、4パラメータロジスティックモデル(Volund, A.、(1978)、Biometrics、34、357〜365頁)に従って解析され、ヒトインスリン類似体の親和性は、ヒトインスリンの親和性と比べて表された。
【0145】
モノクローナルmIR抗体の調製
特異的抗体(F12または83-7)はモノクローナル技法:すなわち、RBFマウスはFCA中50μgの精製されたmIRを皮下に注射され、続いてFIA中20μgのmIRを2回注射により免疫化されて作製された。高応答マウスは25μgのmIRで静脈内に追加免疫され、その脾臓は3日後に収穫された。脾細胞は骨髄腫Fox細胞系統と融合された(Kohler, G & Milstein C. (1976), European J. Immunology, 6:511〜19頁; Taggart RT et al (1983), Science 219:1228〜30頁)。上清はmIR特異的ELISAにおいて抗体産生についてスクリーニングされた。陽性ウェルはクローン化され、ウェスタンブロッティングにおいて試験された。
【0146】
本発明の選択されたインスリンのインスリン受容体親和性
【0147】
【表1】
【0148】
(実施例11)
十二指腸管腔酵素を使用するインスリン類似体の分解:
SPDラット由来の十二指腸管腔酵素(十二指腸管腔内容物の濾過により調製される)を使用するインスリン類似体の分解。前記アッセイは、インスリン類似体および標準に16ウェルが利用可能な96ウェルプレート(2ml)においてロボットにより実施された。インスリン類似体約15μMは、37℃で100mM Hepes、pH=7.4において十二指腸酵素と一緒にインキュベートされ、試料は1、15、30、60、120および240分後に採取され、反応はTFAの添加により急冷された。各時点での無傷のヒトインスリン類似体の濃度はRP-HPLCにより決定された。分解半減期は、前記データの指数関数フィッティング(たとえば、単一指数関数的減衰、2パラメータ、Sigma Plotバージョン11、Systat Software)により決定され、各アッセイにおいて基準インスリンおよび/またはヒトインスリンについて決定された半減期に正規化された。結果は、ラット十二指腸におけるヒトインスリン類似体についての分解半減期割る同一実験からの基準インスリンの分解半減期(相対的分解比率)として与えられる。
【0149】
【表2】
【0150】
(実施例12)
融点決定
示差走査熱量測定(DSC)
データ収集は、VP-DSC示差走査マイクロ熱量計(MicroCal、LLC、Northampton、MA)を使用して実施された。タンパク質スキャン(約200μMインスリン類似体)はすべて、スキャン速度1℃/分および過圧0.21MPaで10℃から110℃まで基準セルにおいて2mMリン酸緩衝液を用いて実施された。試料および基準はすべて使用する直前に脱気された。緩衝液-緩衝液基準スキャンは、濃度正規化に先立って、各試料スキャンから減算された。
【0151】
DSC結果は図1に示されている。
【0152】
(実施例13)
細線維化傾向の測定
チオフラビンT(ThT)細線維化アッセイのための一般的手順
原理:
ペプチドの物理的安定性が低いと、アミロイド線維が形成される場合があり、この線維は試料中で整然とした糸状巨大分子構造として観察され、最終的にはゲルを形成する。これは従来、試料の目視検査により測定されてきた。しかし、そのような類の測定は非常に主観的であり、観察者に左右される。したがって、小分子指標プローブを適用するのがはるかに好ましい。チオフラビンT(ThT)はそのようなプローブであり、線維に結合するとはっきりした蛍光サインを有する(Naiki et al. Anal. Biochem. 177、244〜249頁、1989年; Le-Vine、Methods Enzymol. 309、274〜284頁、1999年)。線維形成の時間経過は以下の式を用いてS字状曲線により記述することができる(Nielsen at al. Biochemistry 40、6036〜6046頁、2001年)。
【0153】
【数1】
【0154】
式中、Fは時間tでのThT蛍光である。定数t0は最大蛍光の50%に到達するのに必要な時間である。線維形成を記述する2つの重要なパラメータは、t0-2τで計算されるラグタイムおよび見掛けの速度定数kapp=1/τである。
【0155】
ペプチドの部分的に折り畳まれた中間体の形成は、細線維化の一般的開始機序として提唱されている。わずかなそれらの中間体が核を形成して、さらに中間体が集合して細線維化が進行する鋳型を形成する。ラグタイムは、核の臨界量が蓄積される間隔に一致し、見掛けの速度定数は線維それ自体が形成される速度である。
【0156】
試料調製:
試料はそれぞれのアッセイ前に新たに調製された。各類似体は7mMリン酸ナトリウム、pH=7.4に溶解された。チオフラビンTは水中保存液から試料に最終濃度の1μMまで添加された。200μlの試料アリコートが96ウェルマイクロタイタープレート(Packard Optiplate(商標)-96、ホワイトポリスチレン)に置かれた。通常は、各試料の4つのレプリカ(1つの試験条件に対応する)がウェルの1つのカラムに入れられた。プレートはScotch Pad (Qiagen)で密封された。
【0157】
インキュベーションおよび蛍光測定:
所与の温度でのインキュベーション、振盪およびThT蛍光発光の測定は、Fluoroskan Ascent FLまたはVarioskan蛍光プレートリーダー(thermo Labsystems)において行われた。温度は37℃に調整された。オービタル振盪は提出されたデータすべてにおいて振幅1mmで960rpmに調整された。蛍光測定は、444nmフィルターを通じた励起を使用して行われ、発光の測定は485nmフィルターを通した。
【0158】
各ランは、プレートをアッセイ温度で10分間インキュベートすることにより開始された。プレートは、典型的には45時間の間20分ごとに測定された。各測定間では、プレートは上記の通りに振盪され加熱された。
【0159】
データ処理:
測定データポイントはさらなる処理のためにMicrosoft Excelフォーマットに保存され、曲線描画およびフィッティングはGraphPad Prismを使用して実施された。細線維非存在下でのThTからのバックグラウンド発光は無視できた。データポイントは典型的には4つの試料の平均である。同一実験(つまり、同一プレート上の試料)で得られたデータのみが、異なるアッセイ間の比較ではなく1つのアッセイの個々の試料間の細線維化の相対的尺度を保証する同一グラフに示されている。
【0160】
データセットは方程式(1)に適合させ得る。しかし、完全S字状曲線は通常は測定時間中に達成されないために、細線維化の程度は4つの試料の平均として計算され、標準偏差を用いて示される様々な時点でのThT蛍光として表される。
【0161】
ヒトインスリンについての典型的ラグタイム(先行技術)は<2時間である。本発明に記載され本アッセイにおいて試験された化合物はすべて、実験の45時間期間では細線維化を全く示さなかった。
【0162】
【表3】
【0163】
細線維化傾向は図2に示されている。
【0164】
(実施例14)
本発明のヒトインスリン類似体の疎水性:
インスリン類似体の疎水性は、均一濃度条件下で実行される逆相HPLCにより見出される。ヒトインスリン類似体の溶出時間は、ヒトインスリン(本明細書ではHIと称される)または同一条件下で既知の疎水性を有する別の類似体の溶出時間と比較される。疎水性、k'rel、はk'relderiv=((tderiv-t0)/(tref-t0))*k'relrefとして計算される。HIを基準として使用すれば、k'relref=k'relHI=1である。HPLCシステムのボイド時間、t0は、5μlの0.1mM NaNO3を注入することにより決定される。実行条件:
カラム: Lichrosorb RP-C18、5μm、4×250mm
緩衝液A: 0.1Mリン酸ナトリウム pH7.3、10vol% CH3CN
緩衝液B: 50vol% CH3CN
注入量: 5μl
実行時間: 最大60分
【0165】
最初の勾配を実行後、誘導体および基準(たとえば、HI)を実行するための均一濃度レベルが選ばれ、均一濃度条件下での類似体および基準の溶出時間を上の式において使用し、k'relderivを計算する。
【0166】
(実施例15)
ラット薬物動態、静脈内ラットPK:
麻酔下ラットはインスリン類似体を様々な用量で静脈内(i.v.)に投与され、用いた化合物の血漿濃度は、投与後4時間またはそれよりも長い指定された間隔を空けて免疫アッセイまたは質量分析を使用して測定された。引き続いて、薬物動態パラメータがWinNonLin Professional (Pharsight Inc.、Mountain View、CA、USA)を使用して計算された。
【0167】
体重がほぼ200グラムの断食させていないオスウィスター系ラット(Taconic)が使用された。
【0168】
体重が測定され、それに続いてラットは、ヒポノルム/ドルミカム(各化合物は無菌水に別々に1対1で希釈され、その後混合された。実験当日に新たに調製された)で麻酔された。麻酔は、scへの2ml/kgのヒポノルム/ドルミカム混合物により開始され、続いてscに30分の間隔を空けて1ml/kgの維持量を2回およびscに45分の間隔を空けて1ml/kgの維持量を2回投与した。必要であれば、ラットを最初から最後まで軽度の麻酔下に置くために、scへ1〜2ml/kgの追加の用量が供給された。部屋から別の部屋に移動させることにより動物にストレスを加えることを回避するために、体重測定と最初の麻酔はラット待機室において実施された。
【0169】
(実施例16)
血糖値低下効果、静脈内ラットPK:
オスの餌を与えたウィスター系ラット(250〜300g)を、プライミング投与量(時間=-35分)としてヒポノルム-ドルミカム(0.081mg/mlクエン酸フェンタニルおよび1.25mg/mlミダゾラム)2ml/kgを、試験物質投与に先立つ時間=-5分までに追加の1ml/kgを、その後45分ごとに1ml/kg(4回)を使用して麻酔した。
【0170】
ラットは5グループに割り当てられ、ヒトインスリンおよびインスリン類似体を投与される各グループで4〜6頭のラットに2種類の用量(1.6nmol/kgと3.6nmol/kg)が投与された。動物たちは、溶媒(5mMリン酸緩衝液、140mM NaCl、70ppmポリソルベート20、pH7.4)またはインスリンのいずれかを尾部静脈に静脈注射(1ml/kg)で投与された。全血糖濃度の決定のための血液試料は、投与前および投与後の時点まで尾部先端の毛細血管に穿刺することによりヘパリン処置した10μlのガラスチューブに収集された。血糖濃度はBiosen自動分析計(EKF Diagnostic、Germany)を使用する固定化グルコースオキシダーゼ法により、分析緩衝液(500μl)中への希釈後に測定された。
【0171】
PDプロファイルは図3に示されている。
【0172】
(実施例17)
ラット薬物動態、小腸内注射に続くラットPK:
麻酔されたラットはインスリン類似体を小腸内に(空腸内に)投与される。用いられた化合物の血漿濃度ならびに血糖値の変化は、投与後4時間またはそれよりも長く指定された間隔を空けて測定される。それに続いて、薬物動態パラメータがWinNonLin Professional (Pharsight Inc.、Mountain View、CA、USA)を使用して計算される。
【0173】
約18時間断食させた体重250から300gのオススプラーグドーリーラット(Taconic)を、プライミング投与量(試験物質投与に先立つ時点-60分までに)としてs.c.にヒポノルム-ドルミカム(0.079mg/mlクエン酸フェンタニル、2.5mg/mlフルアニソンおよび1.25mg/mlミダゾラム)2ml/kgを、20分後に1ml/kg続いて40分ごとに1ml/kgを使用して麻酔する。
【0174】
小腸内注射モデルにおいて試験されるインスリンは、以下の組成物(重量%で):
45% プロピレングリコール (Merck)
33% Capmul MCM C10 (Abitec)
11% ポロキサマー 407 (BASF)
11% ポリエチレングリコール 3350 Ultra (Fluka)
に従って処方される。
【0175】
添加されるインスリンの量は、Capmul MCM C10、ポロキサマー 407およびPEG 3350から等しく減算されるが、薬物負荷とは無関係にプロピレングリコールの量を一定の45%に保つために、プロピレングリコールからは減算されない。
【0176】
麻酔されたラットは37℃に安定化された恒温ブランケット上に置かれる。20cmのポリエチレンカテーテルを装着した1ml注射器にインスリン製剤または溶媒を充填する。腹壁に4〜5cmの正中切開をする。カテーテルは、腸壁を穿通することにより盲腸から約50cmの中央空腸内に穏やかに挿入される。腸内容物が存在する場合は、適用部位を±10cm移動させる。カテーテル先端は腸部分の管腔のほぼ2cm内部に置かれ、結紮糸を使用せずに固定される。腸管は腹腔において慎重に交換され、腹壁および皮膚は各層においてオートクリップで閉鎖される。時間0で、ラットはカテーテルを介して0.4ml/kgの試験化合物または溶媒を投与される。
【0177】
全血糖濃度の決定のための血液試料は、尾部先端の毛細血管に穿刺することによりヘパリン処置した10μlのキャピラリーチューブに収集された。血糖濃度はBiosen自動分析計(EKF Diagnostic Gmbh、Germany)を使用するグルコースオキシダーゼ法により、500μlの分析緩衝液中への希釈後に測定される。平均血糖濃度コース(平均±SEM)は化合物ごとに作成される。
【0178】
血漿インスリン濃度の決定のために試料が収集される。100μlの血液試料は、EDTAを含有する冷却チューブ内に吸引される。試料は遠心分離する(7000rpm、4℃、5分)まで氷上に維持され、血漿はマイクロニックチューブにピペットで採取され、次にアッセイまで20℃で凍結される。ヒトインスリン類似体の血漿濃度は、個々の誘導体に適切であると見なされるまたは確認されている免疫アッセイにおいて測定される。
【0179】
血液試料は、t=-10(血糖のみについて)で、t=-1(投与直前)でおよび投与後4時間またはそれよりも長い指定された間隔を空けて吸引される。
【0180】
(実施例18)
ヒトインスリンと比べた本発明のインスリン類似体の効力、静脈内定常状態クランプ
実験当日に体重238〜383gのオススプラーグドーリーオスラットが、クランプ実験のために使用される。ラットは制御された環境条件下で餌を自由に得ることができ、クランプ実験に先立って一晩断食される(午後3時から)。
【0181】
実験プロトコール:
ラットは、外科的処置に先立って少なくとも1週間動物施設において気候順応させる。クランプ実験のほぼ1週間前、Tygonカテーテルがハロセン麻酔下で頸静脈(注入のため)および頸動脈(血液採取のため)に挿入され、露出させ首の後部に固定される。ラットは手術後にストレプトシリン(Streptocilin) vet (Boehringer Ingelheim; 0.15ml/ラット、i.m.)を与えられ、回復期間中は動物管理室(25℃)に入れられる。無痛にするために、麻酔中はアノルフィン(Anorphin) (0.06mg/ラット、s.c.)が投与され、麻酔からの完全に回復後(2〜3時間)はリマダイル(Rimadyl) (1.5mg/kg、s.c.)が投与され、2日間は再び毎日1回投与される。
【0182】
実験当日午前7時に、一晩断食された(前日の午後3時から)ラットは体重測定され、試料採取注射器および注入装置(Harvard 22 Basic pumps、Harvard、およびPerfectum Hypodermic注射筒、Aldrich)に接続され、その後、実験開始前の約45分間休息する個別のクランプケージに置かれる。ラットは、全実験中は通常の床敷き上で自由に動くことができ、飲料水を自由に得ることができる。血漿グルコースレベルが10分の間隔を空けて測定される30分の基礎期間後、試験されるヒトインスリン類似体およびヒトインスリン(ラットあたり1用量レベル、用量レベルあたりn=6〜7)が300分間一定速度で注入される(i.v.)。場合により、血漿中で即時に定常状態レベルに到達するために、試験されるヒトインスリン類似体のプライミングボーラス注入が施される。プライミングボーラス注入の用量は、薬物動態分野の当業者がi.v.ボーラス薬物動態から入手したクリアランスデータに基づいて計算することが可能である。血漿グルコースレベルは全体を通して10分の間隔を空けて測定され、20%水性グルコースの注入は正常血糖を維持する目的に従って調整される。再懸濁赤血球の試料は各ラットからプールされ、頸動脈カテーテルを介して約1/2ml容積に戻される。
【0183】
各実験日に、試験される個々のインスリン類似体の溶液およびヒトインスリン溶液の試料がクランプ実験の前におよび終了時に採取され、そのペプチド濃度がHPLCにより確認される。ラットインスリンおよびCペプチドのならびに試験されるヒトインスリン類似体およびヒトインスリンの血漿濃度は実験の前におよび終了時の関連する時点で測定される。ラットはペントバルビタール過量を使用して実験の終了時に屠殺される。
【0184】
(実施例19)
ラット脂肪細胞における脂質生合成
本発明のインスリンのインビトロ効力の尺度として、脂質生合成を使用することが可能である。
【0185】
始原ラット脂肪細胞は、精巣上体の脂肪パッドから単離され、たとえば、1%無脂肪HSAを含有する緩衝液中の3H-グルコースおよび標準(ヒトインスリン、HI)または本発明のインスリンのどちらかと一緒にインキュベートされる。標識されたグルコースは用量依存的に抽出可能な脂質に変換され、完全な用量反応曲線を生じる。結果は、標準(HI)と比べて本発明のインスリンの95%信頼限界を有する相対的効力(%)として表される。
図1
図2
図3