特許第6013343号(P6013343)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6013343ソーダ石灰シリカガラス基板、表面処理済みガラス基板、及び同基板を組み込んだ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013343
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ソーダ石灰シリカガラス基板、表面処理済みガラス基板、及び同基板を組み込んだ装置
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/245 20060101AFI20161011BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20161011BHJP
   C03C 23/00 20060101ALI20161011BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20161011BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20161011BHJP
   C23C 14/48 20060101ALI20161011BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20161011BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   C03C17/245 A
   G02B5/20 101
   C03C23/00 D
   C03C3/087
   C23C14/08 K
   C23C14/48 D
   C23C14/34 C
   G02F1/1333 500
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-533837(P2013-533837)
(86)(22)【出願日】2011年10月4日
(65)【公表番号】特表2014-500841(P2014-500841A)
(43)【公表日】2014年1月16日
(86)【国際出願番号】US2011001709
(87)【国際公開番号】WO2012050597
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2014年9月22日
(31)【優先権主張番号】12/923,952
(32)【優先日】2010年10月15日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593005002
【氏名又は名称】ガーディアン・インダストリーズ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】トムセン、スコット ヴィー.
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−085029(JP,A)
【文献】 特表2007−534598(JP,A)
【文献】 米国特許第06368664(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0003545(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆物製造方法であって、
SiOを67から75%、NaOを6から20%、及びCaOを5から15%含むガラス基板実質全表面に対し、少なくとも1つの第1イオン源を使用して、前記ガラス基板の表面の最上部から少なくとも150オングストロームの深さにわたる部分である、前記ガラス基板の表面上部部分を除去するために、イオンビームミリングを行い、
前記イオンビームミリングの間に、又は前記イオンビームミリングの後に、イオンビームミリング済みの前記基板表面の少なくとも一部分上に、少なくとも1つのスパッタリングターゲットと少なくとも1つの第2イオン源を使用して、イオンビームアシスト法(IBAD:Ion Beam Assisted Deposition)により、AlSiOを含む層を少なくとも1層形成する、
被覆物製造方法。
【請求項2】
AlSiOを含む前記層をAlとSiを含むターゲットから成膜する、
請求項1に記載の被覆物製造方法。
【請求項3】
AlSiOを含む前記層の厚さが200から300オングストロームである、
請求項1又は請求項2に記載の被覆物製造方法。
【請求項4】
AlSiOを含む前記層の屈折率が1.55以下である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の被覆物製造方法。
【請求項5】
AlSiOを含む前記層の光学的消衰係数kが0である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の被覆物製造方法。
【請求項6】
前記イオンビームミリングにより基板の厚さを150オングストロームから250オングストローム薄くする、
請求項1から5のいずれか1項に記載の被覆物製造方法。
【請求項7】
AlSiOを含む前記層の厚さが、前記イオンビームミリングの結果として薄くなる前記基板の厚さと実質的に同じである、
請求項1から6のいずれか1項に記載の被覆物製造方法。
【請求項8】
AlSiOを含む前記層の厚さが、前記イオンビームミリング処理の結果として薄くなる前記基板の厚さよりも厚い、
請求項1から7のいずれか1項に記載の被覆物製造方法。
【請求項9】
前記IBADがアルゴンイオンを伴う、
請求項1から8のいずれか1項に記載の被覆物製造方法。
【請求項10】
前記ガラス基板がソーダ石灰シリカ高透過ガラス基板である、
請求項1から9のいずれか1項に記載の被覆物製造方法。
【請求項11】
電子ディスプレイ装置の製造方法であって、
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法により被覆物を製造し、
前記被覆物をその基部として使用するTFT基板を製造し、
カラーフィルタ基板を提供し、
前記カラーフィルタ基板と前記TFT基板との間に液晶材料の層を成膜する、
電子ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項12】
電子ディスプレイ装置の製造方法であって、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法により被覆物を製造し、
前記被覆物をその基部として使用するカラーフィルタ基板を製造し、
TFT基板を提供し、
前記カラーフィルタ基板と前記TFT基板との間に液晶材料の層を成膜する、
電子ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項13】
電子ディスプレイ装置の製造方法であって、
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法により第1被覆物を製造し、
前記第1被覆物をその基部として使用するカラーフィルタ基板を製造し、
請求項1から10のいずれか1項に記載の方法により第2被覆物を製造し、
前記第2被覆物をその基部として使用するTFT基板を製造し、
前記カラーフィルタ基板と前記TFT基板との間に液晶材料の層を成膜する、
電子ディスプレイ装置の製造方法。
【請求項14】
電子装置の製造方法であって、
Ar及びO含有環境で、複数の第1イオン源を使用したガラス基板実質全表面に対し、前記ガラス基板の表面の最上部から少なくとも150オングストロームの深さにわたる部分である、前記ガラス基板の表面上部部分を除去するために、イオンビームミリングを行い、
前記イオンビームミリングの後に、前記イオンビームミリング済み基板表面の少なくとも一部分上に、イオンビームアシスト法(IBAD)により、ケイ素含有層を少なくとも1層形成し、
前記イオンビームミリングを行い、その上にケイ素含有層を形成した基板を、電子装置に組み込み、
前記IBADは、Ar及びO含有環境で実行され、それぞれに付随する第2イオン源を備えている複数のスパッタリングターゲットを含む、
電子装置の製造方法。
【請求項15】
前記ケイ素含有層は、AlSiOを含み、屈折率が1.55以下であり、光学的消衰係数kが0であり、前記AlSiO主成分の層が200−300オングストロームの厚さである、
請求項14に記載の電子装置の製造方法。
【請求項16】
前記イオンビームミリングと前記ケイ素含有層の成膜が、前記基板がイオンビームミリングされておらずケイ素含有層が成膜されていない状況と比較して、アルカリ及びアルカリ性イオン並びに硫酸塩、炭酸塩の少なくとも90%の、前記基板から前記装置の機能層への移動を妨げるという結果をもたらす、
請求項14又は15に記載の電子装置の製造方法。
【請求項17】
前記イオンビームミリングと前記ケイ素含有層の成膜が、前記基板がイオンビームミリングされておらずケイ素含有層が成膜されていない状況と比較して、アルカリ及びアルカリ性イオン並びに硫酸塩、炭酸塩の少なくとも95%の、前記基板から前記装置の機能層への移動を妨げるという結果をもたらす、
請求項14から16のいずれか1項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項18】
前記ガラス基板が高透過ガラス基板である、
請求項14から17のいずれか1項に記載の電子装置の製造方法。
【請求項19】
基板が前記電子装置用TFT基板として使用されている、
請求項14から18のいずれか1項に記載の電子装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明のある例示的実施形態は、例えば、ソーダ石灰シリカアルカリイオンガラス基板のような、ソーダ石灰シリカガラス基板の表面処理方法と、その結果物である表面処理済みガラス基板に関する。より詳細には、本発明のある例示的実施形態は、ガラス基板の表面部分を除去する方法に関する。発明のある例示的実施形態では、ガラス基板の表面部分をミリングにより、高エネルギーイオン源を用いて、ガラス表面上部を除去する。この部分の除去中又は除去後に、キャッピング層として使用されることになる別の層でガラスに被覆を施すことができる。発明のある例示的実施形態では、キャッピング層を、ガラス基板のミリング済み/平削り済み部分にイオンビームアシスト法(IBAD:Ion Beam Assisted Deposition)により成膜する。発明のある例示的実施形態では、キャッピング層で被覆されたガラス基板を、LCD装置のカラーフィルタ及び/又はTFT基板として使用することもできる。発明の他の例示的実施形態では、キャッピング層をその上に備えたガラス基板は、様々なディスプレイ装置で使用することができる。
【背景技術】
【0002】
当技術分野ではディスプレイ装置が知られている。ディスプレイ装置には、例えば、LCD装置、プラズマ装置、有機EL(OLED)装置及びその他同種類のものが含まれる。これらディスプレイ装置の応用には、テレビ、モニター、ノートブック、業務用ディスプレイ、携帯電話、携帯ゲーム機、その他携帯式装置及びその他同種類のものが含まれる。
【0003】
ディスプレイ装置には、一般的に1つ又は複数のガラス基板が含まれる。例えば、図1は典型的なLCD装置1の断面図である。LCD装置の例については、米国特許第7,602,360号、第7,408,606号、第6,356,335号、第6,016,178号及び第5,598,285号を参照のこと。これら特許それぞれ全体を本出願に援用して本文の一部とする。ディスプレイ装置1には、一般的に第1基板4、第2基板6、及び第1基板4と第2基板6とにはさまれた液晶材料の層2が含まれ、第1基板4及び第2基板6はホウケイ酸ガラス基板であることが典型的である。第1基板4はカラーフィルタ基板と呼ばれ、第2基板6はアクティブ基板又はTFT基板と呼ばれる場合が多い。
【0004】
第1基板4、即ちカラーフィルタ基板4は、例えば、ディスプレイの色品質の向上ため、その上にブラックマトリックス8を備えているのが典型的である。ブラックマトリクス形成には、まずポリマー、アクリル、ポリイミド、金属又はその他適切な基部をブランケット層として成膜し、続けてフォトリソグラフィ又はその他同種方法を用いてパターニングを実行する。個々のカラーフィルタ10はブラックマトリクスに形成された穴に成膜する。個々のカラーフィルタには、赤緑青以外の色を代わりに又は追加で使用することはできるが、それぞれ赤10a、緑10b及び青10cのカラーフィルタが含まれるのが典型的である。個々のカラーフィルタは、インクジェット技術又はその他適切な技術により、フォトリソグラフィによって形成することができる。典型的には酸化インジウムスズ(ITO)又はその他適切な導電性材料からなる共通の電極12を、実質基板全体上又はブラックマトリクス12と個々のカラーフィルタ10a,10b,10cの上に形成する。
【0005】
第2又はTFT基板6は、その上にTFTアレイ14を備えている。これらTFTは、液晶材料の層2の液晶光バルブ機能を制御するため、駆動電子装置(図では示さず)により選択的に作動可能である。TFT基板と基板上に形成されるTFTアレイについては、例えば、米国特許番号第7,589,799号、第7,071,036号、第6,884,569号、第6,580,093号、第6,362,028号、第5,926,702号及び第5,838,037号に記載されており、これら特許それぞれ全体を本出願に援用して本文の一部とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1では示されていないが、典型的なLCD装置には1つの光源、1つ又は複数の偏光装置、配向層及び/又はその他同種類のものが含まれてもよい。
【0007】
図1に示すようなディスプレイ装置には、一般的にガラス基板としてホウケイ酸ガラス(例えば、図1の基板4と基板6は一般的にはホウケイ酸ガラス製である)が含まれる。発明のある例示的実施形態では、これらガラス基板は薄膜トランジスタ(TFT)やカラーフィルタとの関連で使用することができる。慣例上は、ディスプレイ装置全体の品質を維持するためには、ホウケイ酸ガラスをガラス基板として使用しなければならない。例えば、現在のディスプレイ装置の製造技術に伴う高温のために、基板として使用可能な材料タイプが制限される(例えば、TFTアレイ製造工程等での共通電極用ITO成膜において)ということは理解されよう。
【0008】
しかしながら、ホウケイ酸は高価であり、ある事例では、ディスプレイ装置で装置品質を低下させることなく、より費用効果の高いガラス基板を使用することが望ましいであろうということは理解されよう。
【0009】
残念ながら、ソーダ石灰シリカガラス(ホウケイ酸ガラスより安価であるが、アルカリ/アルカリ性イオンをより多く含んでいる)はディスプレイ装置製造に必要な高温にさらされると、ナトリウム及び/又はその他混入物質を含むアルカリ及び/又はアルカリ性イオンが、ソーダ石灰シリカガラス基板からディスプレイ装置の被覆部及び/又はその他部分へ外向きに移動する場合が多い。これらイオン及び/又は混入物質は、ディスプレイ装置全体の耐久性と品質に対しネガティブな影響を与える可能性がある。
【0010】
したがって当技術分野で、ディスプレイ及び/又はその他製品で使用される改良被覆物及び/又はその製造方法に対して需要があることは理解されよう。例えば、LCD及び/又はその他フラットパネルへの応用で、ホウケイ酸ガラスをソーダ石灰シリカガラスで交換することは有利なことになろうということは理解されよう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明のある例示的実施形態の一態様は、装置の品質や耐久性を低下させることなしに、LCD、プラズマ及び/又はOLED装置のようなディスプレイ装置で使用可能とするためのソーダ石灰シリカガラス基板処理技術に関する。
【0012】
発明のある例示的実施形態の別の態様は、これら処理済みガラス基板をディスプレイ装置で使用することに関する。
【0013】
本発明のある例示的実施形態は、被覆物製造方法に関する。二酸化ケイ素(SiO)を約67−75%、酸化ナトリウム(NaO)を約6−20%及び酸化カルシウム(CaO)を約5−15%含むガラス基板が提供される。(平削り及び/又はその他同種類のものを含む)イオンビームミリングを、基板の実質全表面に対し、基板の厚さを少なくとも約100オングストローム薄くするために、少なくとも1つの第1イオン源を使って実行する。イオンビームミリング済み基板表面の少なくとも一部上に、前記イオンビームミリング中又はミリング後に、ケイ酸アルミニウム(AlSiO)を含む少なくとも1層を、イオンビームアシスト法(IBAD:Ion Beam Assisted Deposition)により形成する。前記IBADでは、少なくとも1つのスパッタリングターゲットと少なくとも1つの第2イオン源を使用する。
【0014】
発明のある例示的実施形態により、電子ディスプレイ装置を製造することができる。第1及び第2被覆物は、この方法又は請求項1に記載の類似方法により製造することができる。カラーフィルタ基板は、第1被覆物をその基部として使用し製造することができる。TFT基板は、第2被覆物をその基部として使用し製造することができる。液晶材料層は、カラーフィルタ基板とTFT基板の間に成膜することができる。もちろん、発明のある例示的実施形態では、TFT基板とカラーフィルタ基板の一方又は両方にこの方法を使用することができる。
【0015】
本発明のある例示的実施形態は、電子装置製造方法に関する。方法には、アルゴン(Ar)及び酸素(O)含有環境での、ガラス基板の実質全表面に対する複数の第1イオン源を用いた、基板厚さを少なくとも約150オングストローム薄くするためのイオンビームミリングが含まれる。当該方法には、前記イオンビームミリング後に、イオンビームによる平削り済み又はミリング済み基板表面の少なくとも一部上に、イオンビームアシスト法(IBAD)により、ケイ素含有キャッピング層を少なくとも1層形成することが含まれる。また、当該方法には、平削り又はミリングがなされ、その上にケイ素含有キャッピング層が形成された基板を電子装置に組み込むことが含まれる。IBADはAr及びO含有環境で実行され、複数のスパッタリングターゲットを伴う。前記スパッタリングターゲットはそれぞれ第2イオン源を伴う。
【0016】
本発明のある例示的実施形態はまた、TFT及び/又はカラーフィルタ基板を含む電子装置に関する。TFT及び/又はカラーフィルタ基板には、ガラス基板、その表面部分が平削り又はミリングにて少なくとも150オングストローム除去されたソーダ石灰シリカガラス基板が含まれる。TFT及び/又はカラーフィルタ基板には、ガラス基板のミリング済み表面部の上に接触する形で位置するイオンビームアシスト法により成膜されたAlSiO層又はAlSiO含有層が含まれる。AlSiO含有層は、屈折率1.55以下で光学減衰係数kが約0である。AlSiOの厚さは200−300オングストロームである。
【0017】
本出願に記載の特徴、態様、利点、例示的実施形態は、組み合わせで更なる実施形態を実現することができる。
これらの及びその他の特徴及び利点は、以下図面と共に発明の代表的例示的実施形態の詳細な説明を参照することにより、より良くより完全に理解することができよう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】典型的なLCD装置の断面図である。
図2a】発明のある例示的実施形態による、混入部最上部を含む典型的なソーダ石灰シリカガラス基板の断面図である。
図2b】混入部の少なくとも部分を実質取り除き、ガラス基板のミリング及び/又は平削り済み部分にキャッピング層を成膜した、ソーダ石灰シリカガラス基板の断面図である。
図3a】発明のある例示的実施形態により、図2bの例示的被覆基板がどのようにして作られているかを示している。この例では、基板表面をミリング及び/又は平削りするためにイオン源を用い、ガラス基板のミリング及び/又は平削り済み部分にキャッピング層を成膜するためにイオンビームアシスト法を使用している。
図3b】発明のある例示的実施形態により、図2bの例示的被覆基板がどのようにして作られているかを示している。この例では、基板表面をミリング及び/又は平削りするためにイオン源を用い、ガラス基板のミリング及び/又は平削り済み部分にキャッピング層を成膜するためにイオンビームアシスト法を使用している。
図3c】発明のある例示的実施形態により、図2bの例示的被覆基板がどのようにして作られているかを示している。この例では、基板表面をミリング及び/又は平削りするためにイオン源を用い、ガラス基板のミリング及び/又は平削り済み部分にキャッピング層を成膜するためにイオンビームアシスト法を使用している。
図4a】発明のある例示的実施形態による例示的イオンビームミリング装置に関する。
図4b】発明のある例示的実施形態による例示的イオンビームミリング装置に関する。
図5】発明のある例示的実施形態による層のイオンビームアシスト法(IBAD)の例を示している。
図6】発明のある例示的実施形態によるイオンビームアシスト法(IBAD)の例示的原理を示す図である。
図7】発明の例示的実施形態によるカラーフィルタ及び/又はTFT基板としての表面処理済みソーダ石灰シリカガラス基板を含む、電子装置製造における、図3a−3cに対応する例示的工程を示すフローチャートである。
図8】LCD装置内のカラーフィルタ及び/又はTFT基板として、イオンビームアシスト法で成膜された層を備えたイオンビームミリング済みガラス基板を組み込んだ、LCD装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明のある例示的実施形態は、ある種のガラスをディスプレイ装置での使用により適切な状態にするための、ガラス表面処理方法に関する。発明のある例示的実施形態は、例えば、カラーフィルタ及び/又はTFT基板として、ディスプレイ装置での使用に適切な表面処理済みガラス物品に関わる。発明のある例示的実施形態では、少なくとも1つのイオン源を使用して、ソーダ石灰シリカガラスをミリング及び/又は平削りし、ソーダ石灰シリカガラス基板のミリング/平削り済み部分の少なくとも部分上に、ケイ酸アルミニウム(例えば、AlSiO)を含むキャッピング層を成膜することができる。発明のある実施形態では、イオンビームアシスト法(IBAD)を用いて、AlSiOの成膜が行われる。本発明のある例示的実施形態は、ガラス基板表面処理方法と、対応する表面処理済みガラス物品の両方に関する。
【0020】
図2aと図3aは、「混入部分」5’を含むソーダ石灰シリカガラス基板5の例示的実施形態を示している。発明のある例示的実施形態では、ガラス基板5は厚さ約1から10mmで、クリアフロートガラス又は高透過ガラス(低鉄ガラス)でよい。
【0021】
本発明のある実施形態による、例示的ソーダ石灰シリカ主成分のガラスには、重量パーセント基準で次の基本成分が含まれる。
【0022】
【表1】
【0023】
発明の更なる例示的実施形態では、ガラスの主成分組成に他材料も使用することができる。
【0024】
発明の他の例示的実施形態では、ガラス基板5は、厚さ約0.5から2mmの、より好ましくは約0.5から1.1mmの、高透過ガラスでもよい。例示的高透過ガラス基板は、例えば、米国特許出願番号第12/385,318号の他、米国特許出願公開番号第2006/0169316、2006/0249199、2007/0215205、2009/0223252、2010/0122728及び2009/0217978にも開示されており、これらそれぞれ全体を本出願に援用して本文の一部とする。
【0025】
ガラス基板の部分5’には、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、硫酸塩、炭酸塩及びその他同種類のもの等、多くの混入物質が含まれている。電子ディスプレイ装置の製造でよく利用される高温加工処置中、これらの混入物質はガラス基板からガラス基板上又はガラス基板付近にある被覆部へ外向きに時折移動することがある。ある事例では、これらのような混入物質が被覆部へ移動すると、被覆部の品質及び/又は耐久性が低下しうる。
【0026】
被覆部成膜前にガラス基板にイオンビームミリングを施す例示的方法は米国特許番号第6,777,030号に記載されており、その特許を本出願に援用し本文の一部とする。
【0027】
本発明のある例示的実施形態により、ガラス基板上への被覆組織(例えば、キャッピング層)の成膜前又は成膜中に、ガラス基板にイオンビームミリングを施す。イオンビームミリングは、ガラス基板表面を平滑化し且つ/又はガラス基板表面に元々以前から存在しうるナノクラックを除去/減少させるために、ガラス基板表面に隣接するガラス基板の一部を除去又は削り落とすという機能を果たしている。発明のある実施形態では、イオンビームミリング後又はイオンビームミリング中に、被覆組織及び/又は層を平滑化した基板表面に成膜する(例えば、イオンビーム法、イオンビームアシスト法、スパッタリング法又はその他同種方法による)。
【0028】
本発明のある代表的実施形態による、層及び/又は被覆組織の基板上への成膜前又は成膜中における基板へのイオンビームミリングよって、その結果となる成膜後の層及び/又は被覆組織の基板への粘着性を、より向上させることが可能になる。
【0029】
更には、イオンビームミリングにより、ソーダ含有ガラス基板(例えば、ソーダ石灰シリカガラス基板)のミリング済み表面に隣接するナトリウム(Na)やその他混入物質の含有量を減らす機能を果たすこともでき、従ってその結果となる被覆物でのナトリウムによる腐食の可能性を減らすこともできる。発明のある例示的実施形態では、基板5から部分5’を除去することにより、基板5における混入物質の量を減らすことができる、ということがわかっており有利である。
【0030】
ある事例では、イオン移動の多くはガラス基板表面の最上部(例えば、ガラス基板表面の上部150オングストローム部分)が原因で生じる。表面部の『上部』や『最上部』とは、ガラス基板の絶対的な上部表面を指すものではなく、むしろガラス基板の絶対的な表面最上部(例えば、雰囲気と接するガラス基板表面)からガラス基板内部へ深さ数百オングストロームの部分を指す。発明のある例示的実施形態では、部分5’は、スズ側と反対の位置にある基板5’側に位置している。
【0031】
ソーダ石灰シリカガラス基板5の表面上部5’を除去することで、Na、Ca、Mg並びに硫酸塩及び炭酸塩を含む、アルカリ/アルカリ性イオンのような表面部に隣接する潜在的混入物質の量を減少させる。したがって、発明のある例示的実施形態では、表面部に隣接する混入物質の多くをミリング及び/又は平削りにより除去すると、高温や加工環境への曝露においてガラス基板から外向きに移動するイオンをより少なくすることも可能である。
【0032】
発明のある例示的実施形態では、このガラス基板5の上部5’を、高エネルギーイオン源(例えば、リニアイオン源)により発生させたイオンビームを使って除去する。発明の異なる例示的実施形態では、1つ又は複数のイオン源を使用することができる。発明のある例示的実施形態では、ガラス基板5の上部5’を除去するために使用されるイオンビームを、リニア及び/又は高エネルギーイオン源により発生させる。上述のこの工程は『ミリング』及び/又は『平削り』と呼ばれる。
【0033】
図3bでは、ガラス基板5の表面5'をイオンビームミリングするために、ガラス基板5の表面5'全体を、基板の表面5'全体を広く覆う1つ又は複数のリニアイオンビーム源20(発明のある実施形態では非集束イオンビームを使用することもできるが、集束イオンビームを発するものが好ましい)の下を通している。このイオンビームミリングは、ガラス基板表面の一部を削り落とすか又は除去する。例えば、本発明のある実施形態では、工程101におけるイオンビームミリングは、約50から350オングストローム(例えば、図3の削り落とされたガラスの深さ「D」を参照のこと)、より好ましくは約100から300オングストローム、最も好ましくは150から200オングストローム除去する。例は、基板1表面から約150オングストロームのガラスをミリング及び/又は平削りしているところである。

【0034】
図3bにおける基板5のミリング実行にはアルゴン(Ar)イオンを使用することが好ましい(例えば、イオンビーム源にはArガスを使用し、ミリング実行のために基板表面に向けられるArイオン21のほとんどを生成している。)。基板5のミリング実行のため、代わりに又は追加で集束イオンビームに他のタイプのイオン(例えば、クリプトン(Kr)、ネオン(Ne)、キセノン(Xe)のようなその他の不活性ガスイオン)を使用することもできる。発明のある例示的実施形態では、イオン21には酸素及び/又はアルゴンの混合物を使用することもできる。基板5との化学反応の可能性を減らすためには、少なくともいくつかの不活性ガスイオンは好ましい。イオンビームミリングは、イオンビーム源とミリングされる基板5を設置した真空チャンバで実行するのが好ましい。更には、各イオンビーム源20は、イオンビームミリング工程中、ビームのイオンエネルギーが約300から5,000e∨となるように作業を行うことが好ましく、約1,000から3,000e∨となるのがより好ましく、約1,500から2,500e∨となるのが最も好ましい。発明の異なる例示的実施形態では、ミリング工程中、1つ又は複数のイオンビーム源を使用することもできる。
【0035】
図4aと4bは、本発明のある例示的実施形態による、真空チャンバ110に備えられたイオンビームミリング装置を示している。上述の工程に関連した発明のある例示的実施形態では、図3bに示すイオンミリング及び/又は平削りについて、図4aと4bに示すようなイオンビームミリング装置を使うことができる。
【0036】
図4aは装置を横から見た図であり、図4bは装置を上から見た図である。イオンビームミリング装置には、ガラス基板5を装置内『F』方向に移動させるための、少なくとも1つの駆動ロール又はギア112によって駆動されるコンベヤー111が含まれる。ガラス基板5はコンベヤー111上に置かれ、ガラス基板主要表面105(表面部分5’の最上部である主要表面105)の全体が、1つ又は複数のイオンビーム源20の下を通るように、装置内『F』方向に移動させる。本発明の異なる実施形態によれば、イオン21を含むイオンビームは、集束でも又は非集束でもよい。イオン21を含むイオンビームを基板表面105上に当て(例えば、Arイオンを使用して)、それにより、上述のように同表面をミリングする。上述のように、イオンビームは、発明のある例示的実施形態では、その実施結果がその表面付近でアルカリ/アルカリ性イオン及び/又は炭酸塩や硫酸塩のような混入物質がより少ない基板となるように、ガラス基板5の一部(例えば、表面部5’のいくつかの部分及び/又は実質全部)を削り落とす機能を果たす。更には、発明のある例示的実施形態では、その上にキャッピング層9が成膜される表面(図4aと4bには非表示)は、より平滑且つ/又はよりナノクラック数が少ないものであってもよい。
【0037】
図4aは、イオン21を含むイオンビームをおおよそ90度の確度Ωで基板5の表面105に当てる様子を示している。しかしながら、発明の他の例示的実施形態では、基板表面に当てるため約30から90度の角度でイオン21を含むイオンビームを表面105に向けることもでき、削り落としでより効果を上げるためは(例えば、イオンビームで基板からより容易にガラスを除去できるように)約40から60度の角度で向けることが好ましい。
【0038】
図4aと4bは3つのそれぞれ独立した固定イオンビーム源20の使用を示している。発明の異なる例示的実施形態によれば、使用するイオン源は多くても又は少なくてもよい。更には、ガラス基板5のミリング中、1つ又は複数のイオン源を1度又は複数回使用することができる。例えば、基板5を1つ又は複数のイオンビーム20の下を一度通過させてもよいし(例えば、基板5を各イオンビーム20の下を一度通過させる)、1つ又は複数のイオンビーム20の下を複数回通過させてもよい。また、図4a及び図4bの装置では、基板全表面がイオン21を含むイオンビームの下を通過する時走査ができるように、リニアイオンビーム源20は決まった場所に固定されている。しかしながら、本発明の別の実施形態では、固定された基板5上を前後に移動可能なイオンビーム源1つを使用することもできる。
【0039】
ある例示的実例では、図4aと4bのイオン源は、図2bや図3cに示す発明の例示的実施形態との関連で使用することができる。図2bや図3cは、イオン源でミリング及び/又は平削りすることで部分5’が除去された後の基板5を示している。図2bでは、ガラス基板5のミリング及び/又は平削り済み部分上に、キャッピング層9が既に成膜されている。図3cはキャッピング層が成膜される発明の例示的実施形態を示している。
【0040】
発明のある例示的実施形態では、キャッピング層9にはケイ酸アルミニウム(例えば、AlSiO)が含まれる。発明の代表的実施形態では、キャッピング層は厚さ約50から500オングストロームであり、厚さ約100から400オングストロームであることがより好ましく、約200から300オングストロームであることが最も好ましい。発明のある例示的実施形態では、キャッピング層9の厚さは、ガラス基板表面からミリング及び/又は平削り中に削り落とされた又は除去された部分の深さと少なくとも同程度か、それより厚い。言い方を変えれば、基板5から除去された部分5’の厚さ/深さが150オングストロームであれば、層9の厚さは、少なくとも実質150オングストロームに等しいか、150オングストロームより厚いことが好ましいといえる。しかしながら、発明の他の例示的実施形態では、キャッピング層9はそれより薄い厚さであってもよい。
【0041】
発明のある例示的実施形態では、キャッピング層にはケイ酸アルミニウムが含まれるか、ケイ酸アルミニウムからなるものでもよい。発明のある例示的実施形態では、層9は化学量論比又は準化学量論比でよい。
【0042】
層9の屈折率は、約1.3から1.6であってよく、約1.45から1.6であることがより好ましく、1.55以下であることが最も好ましい。層9の消衰係数kは約0であってよい。
【0043】
発明のある例示的実施形態では、層9はイオンビームアシスト法(IBAD)により成膜される。イオンビームアシスト法の例示的方法については、米国特許番号第7,563,347号に記載されており、それを本出願に援用し本文の一部とする。
【0044】
IBAD型のイオンビーム処理では、イオンビーム源とスパッタリングターゲットの両方を使用する。イオンビーム源からのイオンビーム(例えば、Arイオン)は、キャッピング層9の追加又は残り部分を成長させていくことになる表面に最も近いスパッタリングターゲットからスパッタリングされた材料と交錯し、それによりキャッピング層9の追加又は残り部分がイオンビーム法とスパッタリング法の両方の同時組み合わせで成長し/形成されていく。
【0045】
図5は、本発明のある例示的実施形態による、層のイオンビームアシスト法(IBAD)を示している。本発明のある例示的実施形態では、スパッタリングターゲット24とイオン源22を、おおよそ等圧状態となるように(例えば、大気圧よりは低い気圧で)同じ成膜チャンバ(C)(発明の異なる例示的実施形態では真空であっても真空でなくてもよい)に設置する。発明のある例示的実施形態では、成膜チャンバのふた(L)は、スパッタリングターゲット24(例えば、平面ターゲット及び/又は回転式CMAGターゲット)と少なくとも1つのイオン源22を支持している。これにより、スパッタリング法とイオンビーム処理は同じ成膜チャンバ内でおおよそ同じ気圧及び/又はガス雰囲気で行うことが可能となっている。この点では装置の占有空間もまた節約可能である。シールド(S)は、逸れてしまったターゲット材料が予定よりも早期に及び/又は誤った時期に基板に着地してしまうという事態を減らすことに役立っている。本発明のある例示的実施形態では 、シールド(S)を使用しても、使用しなくともよい。
【0046】
同一チャンバ内でのスパッタリングターゲットとイオンビーム源両方の使用は、基板上に様々なタイプの被覆からなるそれぞれの用途に適切な層(例えば、ケイ素(Si)含有層又はその他それぞれの用途に適切なタイプの層)を形成する際に利用することができる。例を挙げれば、イオン源とスパッタリングターゲットの両方が成膜チャンバの同じふたにより支持され且つ/又はその両方がおおよそ等圧下で同一チャンバ内に設置されているような構造は、本出願で考察のどの発明の例示的実施形態においても利用することができる。例えば、そのような構造は、層のピーニングのための実施形態で、層形成にIBADを用いるIBADの実施形態で及び/又は最初にスパッタリング法により成膜しその後に本出願で考察のイオンビーム処理を施す層に関わる実施形態で、使用することができる。発明のある例示的実施形態では、ターゲットとイオンビーム源間の距離D及び/又は角度θは、ターゲット材料25とイオン23を含むイオンビーム間の重なり度合いと位置を制御するために、調整することができる。図5は成膜前のターゲット材料とイオンビームの重なりを描写していないが、θを大きくすることで、そのような重なりを領域26の基板5のちょうど上で発生させることができる。
【0047】
図6は更なるIBADの例示的原理を示しており、領域26におけるターゲット材料25とイオン23を含むイオンビーム間の著しい重なりのある、例示的実施形態を示している。図6の回転式の基板ホルダ121は、IBADによる層9の形成中に基板を保持及び/又は回転させる。図6には、更にIBADの原子スケール図123が含まれる。
【0048】
ピーニングの実施形態では、層が先にスパッタリング法又はその他同種方法によって成膜された後に、イオンビーム処理が実行される。あるIBADの実施形態では、スパッタリング法とイオンビーム処理は、層の形成及び/又は処理のために、同時に実行することもできる。ある例示的事例では、IBADとピーニングの実施形態は組み合わせることもできる。
【0049】
図5及び/又は図6の例示的原理は、図3cに関連し呈示記載されている例示的実施形態との関連で用いることができる。図3cは、イオンビーム処理/形成のIBADタイプで、イオンビーム源22とスパッタリングターゲットを含むスパッタリング装置24の両方を使用することができることを示している。発明のある例示的実施形態では、イオンビーム源22からのイオン23を含むイオンビームは、キャッピング層9の追加又は残り部分を成長させていく基板表面5に最も近いスパッタリングターゲット24からスパッタリングされた材料25と交錯し、それによりキャッピング層9の追加又は残り部分が、イオンビーム法とスパッタリング法の両方の同時組み合わせにより成長し/形成されていく。本発明のある例示的実施形態では、Si及び/又はアルミニウム(Al)含有スパッタリングターゲットを、キャッピング層のスパッタリング成膜に使用することもでき、アルゴンイオンを含む少なくとも1つのイオン源も使用される。しかしながら、本発明は前述のように限定されるものではなく、クリプトン、キセノン及びその他同種類のもののような他タイプのイオンを代わりに使用することもできる。IBADを用いて成長させていく層には、イオン源で使用されているガス由来の粒子が含まれるかもしれない、ということには特に注意されたい。
【0050】
発明のある例示的実施形態では、成膜環境に、1つのスパッタリング装置(例えば、カソード)と1つのイオン源を含まれてもよい。発明の他の例示的実施形態では、複数のスパッタリング装置及び/又はイオン源を使用することもできる。発明の更なる例示的実施形態では、各装置において複数の種類を使用することもできる。
【0051】
発明の代表的例示的実施形態では、キャッピング層9は、シングル回転式のSiAlカソード及び冷陰極、並びに閉鎖型ドリフトリニアイオン源を使用して成膜するができる。発明の異なる例示的実施形態では、酸素、アルゴン、クリプトン及び/又はキセノンをイオンとしてイオン源で使用することができ且つ/又はガス供給システムを通して供給することができる。発明のある例示的実施形態では、アルゴンと酸素の混合気体を使用することもできる。例えば、アルゴンをイオン源に導入し、酸素はガス供給システムを通して供給することもできる。いくつかの事例では、このやり方で層を成膜すると、層は最終的にその他のスパッタリング材料と酸素に加えて少量のアルゴンを含んだものになりうる。
【0052】
発明のある例示的実施形態では、IBAD利用は、異なる成膜技術(例えば、従来のマグネトロンスパッタリング法)で達成可能なレベルよりもはるかに密度の濃い膜を生成するという点で特に有利である。しかしながら、本発明の異なる例示的実施形態によれば、他の技術を使用することもできる。
【0053】
図7は、本出願に記載のソーダ石灰シリカガラス基板の表面処理の代表的実施方法を示している。最初に、工程1(S1)では ソーダ石灰シリカガラス基板を提供している。工程2(S2)では、ソーダ石灰シリカガラス基板の表面部分を、1つ又は複数のイオン源を使用して、ミリング及び/又は平削りしている。工程3(S3)では、ガラス基板のミリング及び/又は平削り済み部分に、AlSiOを含む層を形成している。S3では、この層を、イオンビームアシスト法を用いて形成している。この方法では、イオン源(例えば、Ar+イオンを含む)からのイオンビームは、キャッピング層の追加又は残り部分を成長させていく表面に最も近いスパッタリングターゲットからスパッタリングされた材料と交錯し、それによりキャッピング層の追加又は残り部分を、イオンビーム法とスパッタリング法の両方の同時組み合わせにより成長させ/形成していく。工程4(S4)では、その上に少なくともキャッピング層を備えたソーダ石灰シリカガラス基板を、電子ディスプレイ装置のカラーフィルタ及び/又はTFT基板として使用している。
【0054】
図8は、その上に層9を備えたミリング及び/又は平削り済みのガラス基板5を組み込んだ、例示的LCD装置を示している。本発明のある例示的実施形態では、キャッピング層9をその上に備えたガラス基板5は、図8に示すように、LCD装置でカラーフィルタ基板4及び/又はTFT基板6として使用することができる。
【0055】
本出願に記載の方法によるガラス基板処理は、装置の品質及び/又は耐久性を低下させることなく、有利に電子ディスプレイ装置(例えば、LCD)での使用に適したガラス基板にするという結果をもたらすことができる。
【0056】
本発明のある代表的実施形態では、イオンビームミリングは、ソーダ石灰シリカ含有ガラス基板のミリング済み表面に隣接するナトリウム、その他アルカリ/アルカリ性イオン及びその他混入物質の含有量を減らすための機能を果たすことができる。発明のある実施形態では、ガラス基板からその上に施した被覆部に移動する潜在的混入物質の多くは、ガラス基板表面付近の上部に位置している。したがって、ガラス基板表面のこの上部を除去することで、多くの潜在的混入物質の存在可能性をガラス基板から減らすことが(時には可能性を皆無にすることすら)できる。したがって、ある例では、このミリングにより、電子装置製造にしばしば伴う高温及び/又は加工処置の結果として生じるナトリウム及び/又はその他混入物質のガラス基板から被覆部への外向きの移動による、発明の実施結果としての、被覆物へのナトリウム(及びその他混入物質)による腐食やその他被害の可能性を減らすこともできる。硫酸塩や炭酸塩のようなその他混入物質も同様に、基板に近接する被覆部及び/又は層へ被害をもたらしうる。これらの影響は電子装置では特に有害となりうる。したがって、発明のある例示的実施形態では、ガラス基板表面の上部を除去することで、加工中の被覆部/被覆物への被害の可能性を減らしている。
【0057】
更には、ミリング及び/又は平削り済み部分にキャッピング層を成膜することで、ミリング及び/又は平削り後に残る混入物質の多くの移動を減らし且つ/又は阻害することになる。IBADを用いることで、はるかに密度の濃い層を形成することができることがわかっていることは有利である。発明のある例示的実施形態では、この高い密度がガラスからガラス基板付近の層及び/又は被覆部への混入物質の移動を減らすことに役立っているといえよう。発明のある実施形態では、より高い密度を持つ層は、層を通って移動したり他の層へ浸透したりする粒子の数をより減らすことができる。
【0058】
発明のある例示的実施形態では、イオンビームアシスト法によりガラス基板のミリング済み部分にキャッピング層9を形成することで、ガラス基板から被覆部への混入物質の移動を更に減らすことができる。発明のある例示的実施形態では、IBADは、従来のスパッタリング法により形成した場合よりも、又はイオンビーム成膜(例えば、スパッタリングターゲットを使用すること無しにイオン源を使って)により形成した場合よりさえ、高密度の層を生成することに役立つ。したがって、ソーダ石灰シリカガラス基板表面の約100から300オングストローム分のガラスをミリングし取り除くことと、IBADによりミリング済み部分への更なるキャッピング層の形成は、組み合わせで用いることで、驚くべきことに混入物質の被覆部への移動を大きく減らすことが既にわかっており、それによりソーダ石灰シリカガラス基板を電子ディスプレイ装置での使用に適切なものとすることができる、ということは理解されよう。その他例示的利点には、キャッピング層9とガラス基板5の表面間の粘着性の向上や、ガラス基板表面5がミリングを施された後での平滑さの向上が含まれる。
【0059】
イオンビームミリング及び/又はイオンビームアシスト法を説明する米国特許の更なる例としては、第7,049,003号、第7,183,559号、第7,198,699号、第7,229,533号、第7,311,975号、第7,387,816号、第7,405,411号、第7,445,273号、第7,550,067号、第7,566,481号、第7,563,347号、第7,585,396号、第7,641,978号及び第7,622,161号があり、それら全てを本出願に援用し本文の一部とする。イオンビームミリング及び/又はイオンビームアシスト法を説明する米国特許出願公開の更なる例としては、第2005/0178652号、第2006/0269661号、第2008/0226926号、第2009/0226714号、第2009/0263667号、第2010/0032287号、第2010/0075155号及び第2010/0075157号があり、それら全てを本出願に援用し本文の一部とする。
【0060】
発明のある例示的実施形態では、ソーダ石灰シリカガラスが本出願に記載の方法により処理される場合、現在LCD産業で使用されているアルミナホウケイ酸ガラスよりもむしろ、ソーダ石灰シリカ主成分のガラス基板をLCDのようなディスプレイ装置で使用することができる。これは、ソーダ石灰シリカガラスはホウケイ酸ガラスよりも安価であるという点で有利であり、いくつかのケースではソーダ石灰シリカガラスはホウケイ酸ガラスのほぼ半値(平方フィート当たり)である。したがって、表面処理のこれら方法は特に有利であるということが理解されよう。
【0061】
更には、発明のある例示的実施形態では、カラーフィルタ及び/又はTFT基板としての使用に適したガラス基板の大量生産は有利に達成可能である。発明のある例示的実施形態では、ディスプレイ装置サイズの大型化のため、電子ディスプレイ装置でカラーフィルタ及び/又はTFTガラス基板としての使用に適切な大型ガラス基板を手に入れることは有利となろう。ソーダ石灰シリカガラス基板は、ホウケイ酸ガラス基板より大きなサイズでも、商業的により入手しやすく且つ/又はより経済的であり、したがって、大型ディスプレイ装置の製造を実現しやすくしよう。
【0062】
発明のある例示的実施形態では、イオンビーム平削り又はミリングとキャッピング層成膜は、基板がイオンビーム平削り又はミリングされておらずキャッピング層が成膜されていない状況と比較して、アルカリ及びアルカリ性イオン並びに硫酸塩、炭酸塩の少なくとも約75%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも99%の基板から装置の機能層への移動を防ぐという結果をもたらすことができる。
【0063】
いくつかの事例では、例示されている層9の下、内部又は上に他層を形成することもできる。このように、層組織や被覆部は(直接又は間接的に)基板5「上にある」又は基板5「に支持されている」一方で、その間に他層を形成することもできる。したがって、例えば、たとえ他層を特にある層と基板5間に形成することがあっても、本出願に記載の個々の層は基板5「上にある」又は基板5「に支持されている」とみなすことができる。更には、発明のある実施形態では、層9を除去することもでき、本発明の他の実施形態では、本発明のある実施形態の全体的趣旨から逸脱することなく、他層を追加することもできる。
【0064】
本発明の異なる実施形態による被覆物は、異なる事例では熱処理(HT)することも、しないこともできる。本出願で使われている『熱処理(「heat treatment」 and 「heat treating」)』という言葉は、ガラス含有物の加熱焼戻し、加熱曲げ加工及び/又は加熱強化を行うに十分な温度に対象物を加熱することを意味する。この定義には、例えば、焼戻し、曲げ加工及び/又は加熱強化を可能とするため、被覆物をオーブンや炉で少なくとも約580℃で、より好ましくは少なくとも約600℃で、十分な期間加熱することが含まれる。ある事例では、HTは少なくとも約4分間又は5分間実施できる。発明のある例示的実施形態では、熱処理は、ガラス基板のミリング前、ガラス基板のミリング後で層の成膜前に、及び/又は、ガラス基板のミリング後でいくつかの層又は全層の成膜後に、実行することができる。他の例示的実施形態では、ガラス基板/被覆物を圧縮及び/又は再アニール処理をすることもできる。
【0065】
本発明は現在最も実用的で好ましい実施形態と考えられているものとの関連で説明されているものの、本発明は開示された実施形態に限定されるものではなく、逆に添付請求項の趣旨と範囲に含まれる様々な変更や同等とみなされる配置を含むことが意図されているということは理解されるべきである。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8