特許第6013352号(P6013352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013352
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】緊急留置縫合糸及びパッケージ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/04 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   A61B17/04
【請求項の数】9
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2013-538868(P2013-538868)
(86)(22)【出願日】2011年11月9日
(65)【公表番号】特表2014-500069(P2014-500069A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】US2011060069
(87)【国際公開番号】WO2012064902
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2014年10月9日
(31)【優先権主張番号】61/412,389
(32)【優先日】2010年11月10日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/411,918
(32)【優先日】2010年11月9日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513109706
【氏名又は名称】エシコン・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Ethicon LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ダゴスティーノ・ウィリアム・エル
(72)【発明者】
【氏名】メルケル・マット
(72)【発明者】
【氏名】バウザー・ロン
(72)【発明者】
【氏名】ホイト・マーク
【審査官】 沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/151876(WO,A2)
【文献】 特表2011−520529(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/132284(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0149447(US,A1)
【文献】 特表2010−523288(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0116718(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0200950(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り外し可能な双方向性留置縫合糸であって、
a.第1の端部、第2の端部、及び周辺部と、
b.複数のリテーナであって、前記第1の端部の動きの方向に組織を通る前記縫合糸の動きを容認し、かつ前記第1の端部の前記動きの方向と反対の方向に組織を通る前記縫合糸の動きを防止する、前記縫合糸の前記第1の端部と前記縫合糸上の第1の軸方向位置との間の、前記縫合糸の第1の部分上のリテーナ、及び前記第2の端部の動きの方向に組織を通る前記縫合糸の動きを容認し、かつ前記第2の端部の前記動きの方向と反対の方向に組織を通る前記縫合糸の動きを防止する、前記縫合糸の前記第2の端部と前記縫合糸上の第2の軸方向位置との間の、前記縫合糸の第2の部分上のリテーナと、
c.前記第1の軸方向位置と前記第2の軸方向位置との間の前記周辺部から連続的に延びるリングまたは閉ループを含む把持係合要素と、を備える、縫合糸。
【請求項2】
前記把持係合要素が、縫合糸セグメントを備え、前記縫合糸セグメントが、そのそれぞれの端部に、前記縫合糸セグメントが組織内に入るのを防止するための止め具を有する、請求項1に記載の縫合糸。
【請求項3】
前記把持係合要素が、前記縫合糸の前記周辺部よりも大きい周辺部を有する、請求項1に記載の縫合糸。
【請求項4】
前記把持係合要素が、強化された把持表面を更に備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の縫合糸。
【請求項5】
前記縫合糸が、前記把持係合要素と前記第1の軸方向位置及び前記第2の軸方向位置との間に、前記縫合糸からの前記把持係合要素の除去を容易にするための脆い部分を更に備える、請求項1に記載の縫合糸。
【請求項6】
前記把持係合要素と前記縫合糸とを接続する、取り外し可能なコネクタを更に備える、請求項1に記載の縫合糸。
【請求項7】
前記把持係合要素が、前記縫合糸の残りの部分とは異なる材料を含む、請求項1に記載の縫合糸。
【請求項8】
取り外し可能な多方向性留置システムであって、
a.把持係合要素と、
b.少なくとも3つの縫合糸セグメントであって、それぞれの縫合糸セグメントが、前記縫合糸セグメントの第1の端部と前記縫合糸セグメントの第2の端部との間に、前記第1の端部の動きの方向に組織を通る前記縫合糸の動きを容認し、かつ前記第1の端部の前記動きの方向と反対の方向に組織を通る前記縫合糸セグメントの動きを防止するように複数のリテーナを有し、それぞれの縫合糸セグメントの第2の端部が前記把持係合要素に付着された、縫合糸セグメントと、を備え、
前記把持係合要素が前記縫合糸セグメントから連続的に延びるリングまたは閉ループを含む、取り外し可能な多方向性留置システム。
【請求項9】
前記把持係合要素が、縫合糸セグメントを備え、前記縫合糸セグメントが、そのそれぞれの端部に、前記縫合糸セグメントが組織内に入るのを防止するための止め具を有する、請求項8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2010年11月9日出願の米国特許仮出願番号第61/411,918号、及び2010年11月10日出願の同第61/412,389号の利益を請求するものであり、これらの仮出願は、参照によりその全体を本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、広義には、外科手技用のフィラメント、外科手技用のフィラメントを製造する方法、及びその使用法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
数例を挙げると、創傷を閉鎖する、外傷又は欠陥を修復する、組織を互いに接合する(切断された組織を接近させる、解剖学的空間を閉鎖する、単一又は複数の組織層を互いに固着させる、2つの中空/管腔構造の間に吻合を生じさせる、組織を隣接させる、適切な解剖学的部位に組織を付着又は再付着させる)、外的要素を組織に付着させる(医療移植片、デバイス、人工関節及び他の機能的又は支持的デバイスを固着させる)ため、また新たな解剖学的部位に組織を再位置決めする(修復、組織を持ち上げること、組織移植及びそれに関連する手技)ために、縫合糸、ステープル及びタックなどの創傷閉鎖デバイスが、ヒト及び動物における表層的及び深層的な外科手技に広く使用されてきた。
【0004】
縫合糸は多くの場合、創傷閉鎖デバイスとして使用される。縫合糸は、典型的に鋭い先端を有する針に取り付けられたフィラメント状縫合スレッドからなる。縫合スレッドは、生体吸収性(即ち、体内で経時的に完全に分解する)又は非吸収性(永続的、非分解性)材料を含む種々多様の材料から作製され得る。吸収性縫合糸は、縫合糸の除去が修復を危うくする状況又は創傷治癒が完了した後に自然治癒プロセスが、縫合糸材料によって与えられる支持を不要にする状況で、例えば、複雑でない皮膚閉鎖を完了する等の場合、特に有用であることが分かっている。例えば、深部の組織修復、高張力の創傷、多数の整形外科的修復、及びいくつかの種類の外科的吻合などにおいて、非分解性(非吸収性)縫合糸は、治癒が長引くと予想される場合がある創傷、又は縫合材料から長期間にわたって物理的支持を受ける必要がある創傷において使用される。また、種々多様の外科手術縫合針が利用可能であり、針本体の形状とサイズ及び針先端の構造は、典型的に、特定用途の必要性に基づいて選択される。
【0005】
普通の縫合糸を使用するため、縫合糸針を創傷の片側の所望の組織を通して進めてから創傷の隣側に通して進める。次いで、縫合糸を「ループ」の形にして、縫合糸内に結び目を作って創傷を閉じておくことによって完了する。結び目を作るには時間がかかり、(i)スピッティング(spitting)(皮下閉鎖後に縫合糸、通常は結び目が皮膚を押す状態)、(ii)感染(結び目によって生じた空間に細菌が付着して増殖することが多い)、(iii)バルク/塊(創傷内に残った有意量の縫合糸材料は結び目を含む部分である)、(iv)滑り(結び目が滑るか又はほどけてしまう場合がある)、及び(v)刺激(結び目は創傷内のバルク「異物」として働く)等が挙げられるが、これらに限定されない、一連の合併症を引き起こす。糸結びに伴う縫合糸ループは、虚血(結び目が張力点を生じさせて、組織を絞扼して、その領域への血流を制限する可能性がある)及び外科創傷における離開又は破裂のリスク増加をもたらす場合がある。糸結びはまた、労働集約的でもあり、外科創傷の閉鎖に費やす時間の相当な割合を占める可能性がある。追加の手術処置時間は患者にとって悪いばかりでなく(麻酔下で費やされる時間とともに合併症を起こす確率が上昇する)、手術の全体的費用をも増加させる(多くの外科的処置は、手術時間1分当たり$15〜$30の費用がかかると見積もられる)。
【0006】
留置縫合糸(バーブ付き(barbed)縫合糸を含む)は、展開後の組織中に留置縫合糸を固定して、リテーナが面する方向と反対の方向への縫合糸の動きに抵抗し、それによって、隣接組織を一緒に固着するための結び目を作る必要性を排除する(「結び目のない」閉鎖)、多数の組織リテーナ(例えば、バーブ(barb))を留置縫合糸が有するという点で従来の縫合糸と異なる。バーブを有する無結節組織近接デバイスが既に、例えば、バーブに似た突出部を有する有刺アンカーを開示する米国特許第5,374,268号に記載されており、一方で、有刺側方部材を有する縫合組立体が米国特許第5,584,859号及び同第6,264,675号に記載されている。縫合糸の大部分に沿って位置する複数のバーブを有する縫合糸が、一方向性バーブ付き縫合糸を開示する米国特許第5,931,855号、及び双方向性バーブ付き縫合糸を開示する同第6,241,747号に記載されている。縫合糸上にバーブを形成するための方法及び装置が、例えば米国特許第6,848,152号に記載されている。創傷閉鎖のための留置システムはまた、創傷縁部の接近性を結果として良好にし、創傷の長さ方向に沿って張力を均等に分布させ(破断するかあるいは血流不全につながる張力領域を縮小する)、創傷内に残る縫合材料の量を減少させ(結節を排除することによる)、スピッティング(縫合材料、通常は結節が皮膚表面を通じて突出すること)を低減する。これらの全ての特性が瘢痕を減らし、美容術を改善し、単純な縫合糸又はステープルを用いた創傷閉鎖に比べて創傷強度を高めると考えられる。したがって、留置縫合糸が、糸結びを回避するので、この留置縫合糸により患者は改善された臨床結果を体験することができ、拡張手術及び追跡治療に伴う時間と費用を節約することもできる。全体を通じて特定される全ての特許、特許出願、及び特許公報は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0007】
結び目によって縫合糸に張力を加えない場合でさえ、組織を適所に固定し保持する留置縫合糸の能力は、単純な縫合糸を超える優位性をも提供するという特徴である。張力を受けている創傷を閉鎖する場合、いくつかの点でこの利益が自ずと現れる:(i)別々の点に張力を集中させる、結び目で中断された縫合糸とは反対に、留置縫合糸は、縫合糸の全長に沿って張力を消散させ得る複数のリテーナを有する(数百の「アンカー」点ならば、優れた美容上の結果をもたらし、縫合糸が「滑る」か又は貫入する機会を減らす)、(ii)中断された縫合糸で達成することができるより高い精度と正確さで、均一な様式で複雑な創傷形状(円形、弓形、ギザギザの縁)を閉じることができる、(iii)伝統的な縫合及び糸結び中に創傷を横断する張力を維持するために必要とされることが多い(糸結び中に張力が直ちに解放されるときの「滑り」を防止するため)、「第3の手」の必要性を留置縫合糸は排除する、(iv)留置縫合糸は、深部創傷におけるような糸結びが技術的に困難な場合の処置又は腹腔鏡下/内視鏡下処置等において優れている、及び(v)最終的閉鎖前に、留置縫合糸を用いて創傷を接近させて保持することができる。結果として、留置縫合糸は、解剖学的に狭い又は深い場所(例えば、骨盤、腹部、及び胸部)で簡単に取扱うことができ、腹腔鏡下/内視鏡下で組織を容易に接近させることができ、侵襲的処置を最小限にし、全て結び目によって閉鎖を確保する必要がない。より複雑な閉鎖(例えば、直径が一致しない場合、より大きい欠損又は巾着縫合(purse string suturing)による閉鎖等)のため、単純な縫合糸で達成できるより高い正確さで留置縫合糸を使用することができる。
【0008】
留置縫合糸によって提供されるより高い正確さ及び時間的節約の有利点は、外科的条件が準最適である場合には、より明白である場合がある。武力衝突地域、自然災害区域、テロリストの攻撃現場及び他の緊急事態では、創傷閉鎖(及び他の組織の近接)は、留置縫合糸により、従来の相応物よりも早急に、簡単に、かつ効果的に達成される場合があり、したがってより多くの生命を救える潜在的な可能性がある。結び目の必要性を除去することは、第一応答者がより早急に創傷を閉鎖することを可能にするだけでなく、外傷患者を治療するために、看護師、医師、又は他の医療創傷スタッフがより早急に一時的な若しくは緊急の閉鎖を除去することを可能にすることになる。
【0009】
例えば、戦場で外傷を被った兵士を治療するために、衛生兵は、外傷を迅速に閉鎖し、負傷した患者を最寄りの野戦病院へ早急に搬送しなければならない。次いで、野戦病院では、医療関係者は、縫合糸を創傷から除去して手術を開始しなければならない。留置縫合糸によって作製される場合がある結び目のない創傷閉鎖は、現場での迅速な閉鎖に著しい有利点を提供する。同様に、留置縫合糸は、双方向縫合糸の遷移セグメントを位置付け、これを切断し、次いで残りの縫合糸セグメントを、それぞれのセグメントの遠位すなわち展開端部で引き抜くことによって、容易かつ早急に組織から除去することができる。(同様に、一方向性縫合糸の場合、アンカーは切断され、縫合糸セグメントは組織からその展開端部によって引き抜かれる場合がある。)しばしば準最適な手術条件で、並びに戦闘の負傷が被った創傷の潜在的に複雑な性質の多数の外傷患者が治療のために一度に送り込まれることになる、戦いの直後に示される時間の制約を考えると、創傷閉鎖の留置縫合糸の遷移点の迅速な識別は、困難である可能性がある。
【0010】
留置縫合糸は、一方向性で、一方向に方向付けられた1つ又は2つ以上のリテーナを縫合スレッドの長さ方向に沿って有してもよく、あるいは、双方向性で、通常は、一方向に方向付けられた1つ又は2つ以上のリテーナを縫合糸の一部分に沿って有し、別の(多くの場合、反対の)方向に方向付けられた1つ又は2つ以上のリテーナを、縫合糸の異なる部分にわたって有してもよい(米国特許第5,931,855号及び同第6,241,747号にバーブ付きリテーナと共に記載されている)。リテーナの逐次的又は間欠的構成がいくつも考えられるが、双方向性留置縫合糸の共通形態は、縫合スレッドの一方の端部に針を含み、その縫合糸は、縫合糸の遷移点に達するまで、縫合糸の展開点(組織をそれ自体が貫通するほど鋭い、又はそれに取り付けられた針を有する)から「離れて」突出する先端を有するバーブを有し、遷移点で、バーブの構成は、縫合スレッドの残りの長さ方向に沿って約180°反転し(バーブがここでは反対方向に向くようになる)、その後、反対の端部にて第2の針を取り付けられる(その結果、縫合糸のこの部分にあるバーブもまた、最も近い針から「離れて」突出する先端を有する)。針から「離れて」突出することは、バーブの先端が針から更に離れることを意味し、縫合糸のうちのバーブを備える部分は、針の方向には、反対方向よりも容易に組織を通して引張られる場合がある。言い換えれば、典型的な双方向性留置縫合糸の両「半体」上のバーブは、中央を向く先端を有し、それらの間に遷移セグメント(バーブがない)が組み入れられ、いずれかの端に針が取り付けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
留置縫合糸の有利点を考えると、改善された留置縫合糸、及び緊急事態において、武力紛争や自然災害地域におけるなどの準最適な手術条件での創傷閉鎖及び組織の接近のために有用な方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様によると、本発明は、縫合糸の展開及びそれに続く除去を容易にする把持係合要素を有する双方向性留置縫合糸を提供する。
【0013】
別の態様によると、本発明は、縫合糸の展開及びそれに続く除去を容易にする把持係合要素を有する、一方向性留置縫合糸を提供する。
【0014】
別の態様によると、本発明は、縫合糸の展開及びそれに続く除去を容易にする把持係合要素を有する、多方向性留置縫合糸を提供する。
【0015】
別の態様によると、本発明は、把持係合要素を有する留置縫合糸を展開し、それに続いて除去する方法を提供する。
【0016】
別の態様によると、本発明は、取り外し可能な把持係合要素を有する留置縫合糸を提供する。
【0017】
以下は、本発明の例示的な実施形態である。
【0018】
実施形態1:取り外し可能な双方向性留置縫合糸であって、
a.第1の端部、第2の端部、及び周辺部と、
b.複数のリテーナであって、第1の端部の動きの方向に組織を通る縫合糸の動きを容認し、かつ第1の端部の動きの方向と反対の方向に組織を通る縫合糸の動きを防止する、縫合糸の第1の端部と縫合糸上の第1の軸方向位置との間の、縫合糸の第1の部分上のリテーナ、及び第2の端部の動きの方向に組織を通る縫合糸の動きを容認し、かつ第2の端部の動きの方向と反対の方向に組織を通る縫合糸の動きを防止する、縫合糸の第2の端部と縫合糸上の第2の軸方向位置との間の、縫合糸の第2の部分上のリテーナと、
c.第1の軸方向位置と第2の軸方向位置との間の把持係合要素と、を備える、縫合糸。
【0019】
実施形態2:把持係合要素がループを備える、実施形態1の縫合糸。
【0020】
実施形態3:ループが不連続的である、実施形態2の縫合糸。
【0021】
実施形態4:把持係合要素がタブを備える、実施形態1の縫合糸。
【0022】
実施形態5:把持係合要素が、縫合糸セグメントを備え、縫合糸セグメントが、そのそれぞれの端部に、縫合糸セグメントが組織内に入るのを防止するための止め具を有する、実施形態1の縫合糸。
【0023】
実施形態6:把持係合要素が、縫合糸の残りの部分とは異なる色を備える、実施形態1の縫合糸。
【0024】
実施形態7:縫合糸が、把持係合要素と第1の軸方向位置及び第2の軸方向位置との間に、縫合糸からの把持係合要素の除去を容易にするための脆い部分を更に備える、実施形態6の縫合糸。
【0025】
実施形態8:把持係合要素が、強化された把持表面を更に備える、実施形態6の縫合糸。
【0026】
実施形態9:把持係合要素が、縫合糸の周辺部よりも大きい周辺部を有する、実施形態1の縫合糸。
【0027】
実施形態10:縫合糸が、把持係合要素と第1の軸方向位置及び第2の軸方向位置との間に、縫合糸からの把持係合要素の除去を容易にするための脆い部分を更に備える、実施形態9の縫合糸。
【0028】
実施形態11:把持係合要素が、強化された把持表面を更に備える、実施形態9の縫合糸。
【0029】
実施形態12:把持係合要素が、強化された把持表面を更に備える、実施形態1の縫合糸。
【0030】
実施形態13:縫合糸が、把持係合要素と第1の軸方向位置及び第2の軸方向位置との間に、縫合糸からの把持係合要素の除去を容易にするための脆い部分を更に備える、実施形態1の縫合糸。
【0031】
実施形態14:把持係合要素と縫合糸とを接続する、取り外し可能なコネクタを更に備える、実施形態1の縫合糸。
【0032】
実施形態15:把持係合要素が少なくとも部分的に可撓性である、実施形態1の縫合糸。
【0033】
実施形態16:把持係合要素が少なくとも部分的に剛性である、実施形態1の縫合糸。
【0034】
実施形態17:把持係合要素が、縫合糸の残りの部分とは異なる材料を含む、実施形態1の縫合糸。
【0035】
実施形態18:ループの構成が、円、楕円、及び多角形を含むクラスから選択される、実施形態2の縫合糸。
【0036】
実施形態19:取り外し可能な多方向性留置システムであって、
a.把持係合要素と、
b.少なくとも3つの縫合糸セグメントであって、それぞれの縫合糸セグメントが、縫合糸セグメントの第1の端部と縫合糸セグメントの第2の端部との間に、第1の端部の動きの方向に組織を通る縫合糸の動きを容認し、かつ第1の端部の動きの方向と反対の方向に組織を通る縫合糸セグメントの動きを防止するように複数のリテーナを有し、それぞれの縫合糸セグメントの第2の端部が把持係合要素に付着された、縫合糸セグメントと、を備える、取り外し可能な多方向性留置システム。
【0037】
実施形態20:把持係合要素がループを備える、実施形態19のシステム。
【0038】
実施形態21:ループが不連続的である、実施形態20のシステム。
【0039】
実施形態22:把持係合要素がタブを備える、実施形態19のシステム。
【0040】
実施形態23:把持係合要素が、縫合糸セグメントを備え、縫合糸セグメントが、そのそれぞれの端部に、縫合糸セグメントが組織内に入るのを防止するための止め具を有する、実施形態19のシステム。
【0041】
実施形態24:ループが円状である、実施形態20のシステム。
【0042】
実施形態25:ループが楕円状である、実施形態20のシステム。
【0043】
実施形態26:ループが多角形状である、実施形態20のシステム。
【0044】
実施形態27:緊急の創傷閉鎖の方法であって、
a.双方向性留置縫合糸を提供することであって、縫合糸が、複数のリテーナであって、縫合糸の第1の端部の動きの方向に組織を通る縫合糸の動きを容認し、かつ第1の端部の動きの方向と反対の方向に組織を通る縫合糸の動きを防止するための、縫合糸の第1の端部と縫合糸上の第1の軸方向位置との間の縫合糸の第1の部分の上のリテーナ、並びに縫合糸の第2の端部の動きの方向に組織を通る縫合糸の動きを容認し、かつ第2の端部の動きの方向と反対の方向に組織を通る縫合糸の動きを防止するための、縫合糸の第2の端部と縫合糸上の第2の軸方向位置との間の縫合糸の第2の部分の上のリテーナを有する、双方向性留置縫合糸を提供することと、
b.縫合糸の第1の端部を、創傷の第1の端部と第2の端部との間の第1の挿入点で組織内に挿入することと、
c.縫合糸の第1の端部を、第1の展開経路に沿って、創傷の交互の側の組織を通して、第1の出口点まで、創傷の第1の端部に向かって引くことと、
d.縫合糸の第2の端部を、創傷の第1の端部と第2の端部との間の第2の挿入点で、縫合糸の第1の挿入点と第2の挿入点との間の部分を残して、組織内に挿入することと、
e.縫合糸の第2の端部を、第2の展開経路に沿って、創傷の交互の側の組織を通して、第2の出口点まで、創傷の第2の端部に向かって引くことと、
f.恒久的な治療の前に、創傷からの縫合糸の除去のために、第1の挿入点と第2の挿入点との間の部分に沿って、縫合糸を切断することと、を含む、方法。
【0045】
実施形態28:縫合糸の第2の端部を組織内に挿入する工程が、縫合糸の第1の端部を創傷の第1の端部に向かって引く工程の前に遂行される、実施形態27の方法。
【0046】
実施形態29:緊急の創傷閉鎖の方法であって、
a.一方向性留置縫合糸を提供することであって、縫合糸が、縫合糸の第1の端部と第2の端部との間における、第1の端部の動きの方向に組織を通る縫合糸の動きを容認し、かつ第1の端部の動きの方向と反対の方向に組織を通る縫合糸の動きを防止する複数のリテーナ、及び縫合糸の第2の端部における把持係合要素を有する、縫合糸を提供することと、
b.把持係合要素を少なくとも部分的に創傷の外側に位置付けることと、
c.縫合糸の第1の端部を創傷の挿入点において組織内に挿入することと、
d.縫合糸の第1の端部を展開経路に沿って、創傷の交互の側の組織を通して、組織の外側の出口点まで、創傷の端部に向かって引くことと、を含む、方法。
【0047】
実施形態30:一方向性縫合糸が、把持係合要素の近位にある脆い部分を更に備える、実施形態29の方法。
【0048】
実施形態31:緊急の創傷閉鎖の方法であって、
a.多方向性留置システムを提供することであって、システムが、把持係合要素、及び少なくとも2つの縫合糸セグメントであって、それぞれの縫合糸セグメントが、縫合糸セグメントの第1の端部と縫合糸セグメントの第2の端部との間に、第1の端部の動きの方向に組織を通る縫合糸の動きを容認し、かつ第1の端部の動きの方向と反対の方向に組織を通る縫合糸セグメントの動きを防止するように複数のリテーナを有し、それぞれの縫合糸セグメントの第2の端部が把持係合要素に付着された、縫合糸セグメントを有する、システムを提供することと、
b.把持係合要素を少なくとも部分的に創傷の外側に位置付けることと、
c.第1の縫合糸セグメントの第1の端部を、創傷の第1の挿入点において組織に挿入することと、
d.第1の縫合糸セグメントの第1の端部を、第1の展開経路に沿って、創傷の交互の側の組織を通して、第1の出口点まで、創傷の第1の端部に向かって引くことと、
e.第2の縫合糸セグメントの第1の端部を、第1の挿入点の近位にある第2の挿入点において、組織内に挿入することと、
f.第2の縫合糸セグメントの第1の端部を、第2の展開経路に沿って、創傷の交互の側の組織を通して、第2の出口点まで、創傷の第2の端部に向かって引くことと、を含む、方法。
【0049】
実施形態32:留置システムが、少なくとも第3の縫合糸セグメントを備え、第3の縫合糸セグメントが、縫合糸セグメントの第1の端部と縫合糸セグメントの第2の端部との間に、第1の端部の動きの方向に組織を通る縫合糸の動きを容認し、かつ第1の端部の動きの方向と反対の方向に組織を通る縫合糸セグメントの動きを防止するように複数のリテーナを有し、第3の縫合糸セグメントの第2の端部が把持係合要素に付着される、実施形態31の方法。
【0050】
実施形態33:第3の縫合糸セグメントの第1の端部を、第1の挿入点及び第2挿入点のうちの少なくとも1つの近位にある第3の挿入点において、組織内に挿入することと、第3の縫合糸セグメントの第1の端部を、第3の展開経路に沿って、創傷の交互の側の組織を通して、第3の出口点まで、創傷の第3の端部に向かって引くことと、を更に含む、実施形態32の方法。
【0051】
実施形態34:把持係合要素が縫合糸セグメント間の接続を備える、実施形態312の方法。
【0052】
実施形態35:少なくとも3つの組織の頂点を有する星状の創傷緊急閉鎖を達成する方法であって、
a.多方向性留置システムを提供することであって、システムが、把持係合要素及び少なくとも3つの縫合糸セグメントであって、それぞれの縫合糸セグメントが、縫合糸セグメントの第1の端部と縫合糸セグメントの第2の端部との間に、第1の端部の動きの方向に組織を通る縫合糸の動きを容認し、かつ第1の端部の動きの方向と反対の方向に組織を通る縫合糸セグメントの動きを防止するように複数のリテーナを有し、それぞれの縫合糸セグメントの第2の端部が把持係合要素に付着された、縫合糸セグメントを有する、システムを提供することと、
b.組織の頂点の近位に把持係合要素を位置付けることと、
c.第1の縫合糸セグメントの第1の端部を第1の組織の頂点内に挿入し、かつ第1の縫合糸セグメントの第1の端部を組織の外に引くことと、
d.第2の縫合糸セグメントの第1の端部を第2の組織の頂点内に挿入し、かつ第2の縫合糸セグメントの第1の端部を組織の外に引くことと、
e.第3の縫合糸セグメントの第1の端部を第3の組織の頂点において組織内に挿入し、かつ第3の縫合糸セグメントの第1の端部を組織の外に引くことと、を含む、方法。
【0053】
実施形態36:緊急留置縫合糸を組織から除去する方法であって、縫合糸は少なくとも1つの留置縫合糸セグメントを有し、縫合糸セグメントは、把持係合要素に接続された第1の端部、及び第2の端部を有し、方法が、
a.把持係合要素を縫合糸セグメントから切断することと、
b.縫合糸セグメントを、その第2の端部によって組織の外へ引くことと、を含む、方法。
【0054】
実施形態37:少なくとも1つの、遠位端を有する縫合糸セグメントに付着された把持係合要素を有する、縫合デバイスを保持するためのパッケージであって、
a.少なくとも1つの表面を有する基部と、
b.縫合糸セグメントを基部に解除可能に固定するためのセグメントホルダと、
c.把持係合要素を基部に解除可能に固定する把持係合要素ホルダと、を備える、パッケージ。
【0055】
実施形態38:セグメントホルダ及び把持係合要素ホルダは、セグメントと把持係合要素とを隔離するために位置付けられる、実施形態37のパッケージ。
【0056】
実施形態39:更なるセグメントホルダを更に備える、実施形態37のパッケージ。
【0057】
実施形態40:更なるセグメントホルダが更なるセグメントをセグメント及び把持係合要素から隔離するように適合される、実施形態39のパッケージ。
【0058】
実施形態41:把持係合要素を基部に固定する一方で、把持係合要素ホルダが、把持係合要素において、又はそのそばで、デバイスに接触するように適合される、実施形態37のパッケージ。
【0059】
実施形態42:セグメントを基部に固定する一方で、セグメントの遠位端において、又はそのそばでデバイスに接触するようにセグメントホルダが適合される、実施形態37又は38のパッケージ。
【0060】
実施形態43:少なくとも1つのホルダが複数のセクションを備える、実施形態37又は38のパッケージ。
【0061】
実施形態44:少なくとも1つのホルダがパッケージから取り外し可能である、実施形態37又は38のパッケージ。
【0062】
実施形態45:少なくとも1つの縫合糸セグメントの一部を位置付けるためのセグメントガイドを更に備える、実施形態37又は38のパッケージ。
【0063】
実施形態46:セグメントホルダが針パーク(needle park)である実施形態37のパッケージ。
【0064】
実施形態47:外側筐体を更に備える、実施形態37のパッケージ。
【0065】
実施形態48:持針器及びはさみのうちの少なくとも1つを保持するように外側筐体が適合される、実施形態47のパッケージ。
【0066】
実施形態49:外傷キットであって、
d.外側筐体と、
e.少なくとも1つの縫合糸セグメントに付着された把持係合要素を有する留置縫合糸を含む縫合パッケージと、を備える、キット。
【0067】
実施形態50:持針器及びはさみのうちの少なくとも1つを更に備える、実施形態49のキット。
【0068】
実施形態51:取り外し可能な双方向性留置縫合糸であって、
a.第1の端部、第2の端部、及び周辺部を有する縫合糸本体と、
b.複数のリテーナであって、第1の端部の動きの方向に組織を通る縫合糸の動きを容認し、かつ第1の端部の動きの方向と反対の方向に組織を通る縫合糸の動きを防止する、縫合糸の第1の端部と縫合糸上の第1の軸方向位置との間の、縫合糸の第1の部分上のリテーナ、及び第2の端部の動きの方向に組織を通る縫合糸の動きを容認し、かつ第2の端部の動きの方向と反対の方向に組織を通る縫合糸の動きを防止する、縫合糸の第2の端部と縫合糸上の第2の軸方向位置との間の、縫合糸の第2の部分上のリテーナと、
c.第1の軸方向位置と第2の軸方向位置との間の把持係合要素であって、縫合本体が第1の軸方向位置と第2の軸方向位置との間で糸を通される、少なくとも2つの開口部を有する把持係合要素と、を備える、縫合糸。
【0069】
実施形態52:把持係合要素の少なくとも1つの開口部が、鋭いエッジを備える、実施形態51の縫合糸。
【0070】
1つ又は2つ以上の実施形態の詳細が、以下の説明に記載されている。他の特性、目的、及び利点は、説明、図面、及び請求の範囲により明らかになるであろう。加えて、本明細書に言及される全ての特許及び特許出願の開示は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
本発明の特性、その性質及び様々な利点は、添付の図面及び様々な実施形態の下記の詳細な説明から明白であろう。
図1】縫合糸が閉じたループの把持係合要素を有する、本発明の実施形態に基づく緊急双方向性縫合糸の図。
図2】縫合糸が閉じたループの把持係合要素を有する、本発明の別の実施形態に基づく緊急双方向性縫合糸の図。
図3】縫合糸がタブ付きの把持係合要素を有する、本発明の別の実施形態に基づく緊急双方向性縫合糸の図。
図4】縫合糸が開放多角形状の把持係合要素を有する、本発明の別の実施形態に基づく緊急双方向性縫合糸の図。
図5】縫合糸が開放ループ状の把持係合要素を有する、本発明の更に別の実施形態に基づく緊急双方向性縫合糸の図。
図6】把持係合要素が組織止め具を含む、本発明の更に別の実施形態に基づく緊急双方向性縫合糸の図。
図7】取り外し可能な把持係合要素を含む、本発明の更に別の実施形態に基づく緊急双方向性縫合糸の図。
図8a】本発明による緊急双方向性縫合糸の実施形態の使用の斜視図。
図8b】本発明による緊急双方向性縫合糸の実施形態の使用の斜視図。
図9】本発明による緊急双方向性縫合糸の実施形態の使用の斜視図。
図10】本発明の一実施形態に基づく緊急一方向性縫合糸の図。
図11】本発明の一実施形態に基づく緊急多方向性縫合糸の図。
図12】本発明の一実施形態に基づく緊急多方向性縫合糸の図。
図13】本発明による緊急多方向性縫合糸の実施形態の使用の図。
図14A】本発明に基づく緊急展開縫合糸の図。縫合糸は、所望による縫合のためのパッケージ材料の状況で示され、図14Bは、図14Aに示される縫合糸の部分の拡大図。
図14B】本発明に基づく緊急展開縫合糸の図。縫合糸は、所望による縫合のためのパッケージ材料の状況で示され、図14Bは、図14Aに示される縫合糸の部分の拡大図。
図15】本発明に基づく緊急展開縫合糸の図。縫合糸は、所望による縫合のためのパッケージ材料の状況で示され、図14Bは、図14Aに示される縫合糸の部分の拡大図。
図16】緊急展開縫合糸の格納及び搬送のために使用されてもよい本発明のパッケージの図。
図17】緊急展開縫合糸の格納及び搬送のために使用されてもよい本発明のパッケージの図。
図18】緊急展開縫合糸の格納及び搬送のために使用されてもよい本発明のパッケージの図。
図19】緊急展開縫合糸の格納及び搬送のために使用されてもよい本発明のパッケージの図。
図20】緊急展開縫合糸の格納及び搬送のために使用されてもよい本発明のパッケージの図。
図21】緊急展開縫合糸の格納及び搬送のために使用されてもよい本発明のパッケージの図。
図22】緊急展開縫合糸及び付属材料の格納及び搬送のために使用されてもよい本発明のパッケージの図。
【発明を実施するための形態】
【0072】
定義
以下で用いられ得る特定の用語の定義は、次のものを含む。
【0073】
「留置システム」は、縫合糸を組織中に展開するためのデバイスとともに留置縫合糸を指す。このような展開デバイスとしては、縫合針及び他の展開デバイス、並びに縫合糸自体にある、組織を貫入するのに十分堅くかつ鋭い端部が挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
「留置縫合糸」は、結び目又は縫合糸アンカーを必要とせずに、組織と係合するための縫合フィラメント上に特性を含む縫合糸を指す。
【0075】
「組織リテーナ」(あるいは、単に「リテーナ」)又は「バーブ」は、組織を機械的に係合し、少なくとも1つの軸方向の縫合糸の動きに抵抗するように適合され、好ましくは、かかる動きを防止する、縫合糸フィラメントの物理的特性を指す。例示のみの目的で、組織リテーナ(複数可)としては、フック、突起、バーブ、ダート(dart)、伸長、膨隆(bulge)、アンカー、隆起、距状突起(spur)、瘤(bump)、先端(point)、歯(cog)、組織係合対(tissue engager)、牽引デバイス、表面粗さ、表面不規則さ、表面欠陥、エッジ、ファセット等が挙げられる。ある種の構成において、組織リテーナは、組織と係合して、実質的に展開方向に向くように配向されることによって、医師が組織中に縫合糸を展開する方向以外の方向への縫合糸の動きに抵抗するように適合されている。いくつかの実施形態において、リテーナは、展開方向に引張られるときは平坦となり、展開方向と逆の方向に引張られるときは開く、つまり「散開」する。それぞれのリテーナの組織貫入端部は、展開中に組織を通して動くときは展開方向から見て外方に向いているので、この段階では組織リテーナは組織を捕らえない、又はつかまないはずである。留置縫合糸が展開されたらすぐに、別の方向(多くの場合、展開方向と実質的に反対)に及ぼされた力が、リテーナを展開位置から動かし(即ち、縫合糸本体に沿って実質的に休止する)、周囲組織を捕らえて中に貫入するように、縫合糸本体からリテーナ端部を開かせ(又は「散開させ」)、結果としてリテーナと縫合糸本体との間に組織を捕らえることになり、これによって留置縫合糸を適所に「固定」又は固着する。一実施形態では、本明細書に記載された緊急縫合糸は、それぞれが複数の切り込みを備える、フィラメントのセグメントから調製され、すなわち、切り込みは、刃若しくはレーザー又は他の適切な切削器具を使用してフィラメント内に作製され、これらの切り込みは、フィラメントから散開することができるリテーナのために作製及び提供される。このようにして形成されたリテーナは、セグメントが組織を通って引かれるとき、リテーナをフィラメントの本体内に格納することができ、したがって、創傷内、又は他の縫合が必要な領域内へ縫合糸セグメントが展開されるときの間、組織を通した縫合糸セグメントの動きに対して、抵抗が少なく、好ましくは抵抗がないので、有利である。フィラメント内に作製された切り込みは、切り込みの存在により生じるフィラメントの引張り強さの低減が最低限となるように、好ましくは深すぎず、本発明の異なる任意選択的な実施形態において、フィラメントの断面寸法の約5%未満、又は約10%、15%、20%、又は25%未満の切り込みの深さが提供され、本発明の任意選択的な実施形態において、5〜25%、5〜20%又は5〜15%の範囲で存在する。フィラメントを切削することによって作製されたリテーナは、フィラメント外面から構成された上側と、切り込みによって形成され、フィラメントの内側を形成する材料から構成された下側と、を有する。本発明の様々な任意選択的な実施形態では、特定の切り込みは、単一の平面内にある下側を有するリテーナを作製する場合がある。すなわち、切り込みが単一の真っ直ぐな切り込みであること、又は切り込みが、2つの平面にわたる下側を有するリテーナを作成することがある。すなわち切り込みが第1の距離だけ第1の軌道をたどり、次いで第2の距離だけ第2の軌道をたどることがある。2つの異なる平面にわたる下側を有するリテーナは、有利である場合があり、第1の平面はフィラメントに切り込んでフィラメントの中心に向かい、典型的には、フィラメントの長手方向軸に沿った何らかの付随する切削によって、効果的に切り込みの深さを確立し、一方でそれに続く第2の平面は、フィラメントの長手方向軸に沿って動くが、リテーナ長さを効果的に確立するフィラメントの中心に向かう動きはほとんどないか又は全くない。リテーナを備えるセグメントを提供するために複数の切り込みを有するフィラメントが利用される場合、リテーナの下側は、基準線に沿ってフィラメントに接合することになり、この基準線は、直線的であっても弓状であってもよい。弓状の基準線は、リテーナが「散開」するのを補助するのに有利である場合がある。いくつかの他の実施形態において、組織リテーナは、散開又は展開することなく、縫合糸の一方向への動きを容認し、縫合糸の別の方向への動きに抵抗するように構成されてもよい。特定の他の構成において、組織リテーナは、両方向における縫合フィラメントの運動に抵抗するように他の組織リテーナと共に構成されるか、あるいはそれらと組み合わされてもよい。典型的に、そのようなリテーナを有する縫合糸は、縫合糸が所望の位置になるまでリテーナと組織との間の接触を防止するカニューレ等のデバイスを介して展開される。
【0076】
「リテーナ構成」は、組織リテーナの構成を指し、サイズ、形状、可撓性、表面特性等の特性を含むことができる。これらは、「バーブ構成」とも称される。
【0077】
「遷移セグメント」又は「遷移部分」とは、双方向縫合糸の、一方向に配向された第1のセットのリテーナ(バーブ)、と別の方向に配向された第2のセットのリテーナ(バーブ)との間に位置する、リテーナのない(バーブのない)部分を指す。遷移セグメントは、留置縫合糸のほぼ中央にあってよく、又は留置縫合糸の一端に近くに、非対称留置縫合糸システムを形成してもよい。
【0078】
「縫合スレッド」は、縫合糸のフィラメント状の本体構成要素を指す。縫合スレッドは、モノフィラメントであってもよく、又は編まれた縫合糸においてみられるような複数のフィラメントを備えてもよい。縫合スレッドは、任意の適切な生体適合性材料でできていてもよく、また、縫合糸の強度、弾力性、寿命、又は他の品質を向上させるために、あるいは、組織を互いに接合すること、組織を再位置決めすること、又は外的要素を組織に付着させることの他に、更なる機能を果たすように縫合糸を備えるために、任意の適切な生体適合性材料で更に処理されていてもよい。
【0079】
「モノフィラメント縫合糸」は、モノフィラメント状縫合スレッドを含む縫合糸を指す。
【0080】
「編み縫合糸」は、マルチフィラメント状縫合スレッドを含む縫合糸を指す。そのような縫合スレッドのフィラメントは、典型的に、一緒に編まれ、縒られ、又は織られている。
【0081】
「分解性縫合糸」(「生分解性縫合糸」又は「吸収性縫合糸」とも称する)は、組織内への導入後に分解して生体によって吸収される縫合糸を指す。典型的に、分解プロセスは少なくとも部分的に生体系によって媒介され、又は生体系内で遂行される。「分解」は、ポリマー鎖がオリゴマー及びモノマーに開裂される鎖切断プロセスを指す。鎖切断は、例えば、化学反応(例えば、加水分解、酸化/還元、酵素メカニズム、又はこれらの組み合わせ)によって、又は熱プロセス若しくは光分解プロセスによって、を含む、様々なメカニズムを介して起こる場合がある。ポリマー分解は、例えば、腐食及び分解の間にポリマーの分子量の変化を監視するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて特徴付けられてもよい。分解性縫合糸材料には、ポリグリコール酸等のポリマー、グリコリドとラクチドのコポリマー、トリメチレンカルボナート及びグリコリドとジエチレングリコールのコポリマー(例えば、MAXONTM、Tyco Healthcare Group)、グリコリド、トリメチレンカルボナート、及びジオキサンで構成されるターポリマー(例えば、BIOSYNTM[グリコリド(60%)、トリメチレンカルボナート(26%)、及びジオキサン(14%)]、Tyco Healthcare Group)、グリコリド、カプロラクトン、トリメチレンカルボナート、及びラクチドのコポリマー(例えば、CAPROSYNTM、Tyco Healthcare Group)を含んでもよい。溶解性縫合糸は、部分脱アセチル化ポリビニルアルコールを含むこともできる。分解性縫合糸で用いるのに適しているポリマーは、線形ポリマー、分枝ポリマー、又は多軸ポリマーとすることができる。構造内で使用される多軸ポリマーの例が、米国特許出願公開第20020161168号、同第20040024169号、及び同第20040116620号に記載されている。分解性縫合糸材料製の縫合糸は、この材料が分解するにつれて引張り強度を失う。分解性縫合糸は、編みマルチフィラメント形態又はモノフィラメント形態のいずれであってもよい。
【0082】
「非分解性縫合糸」(「非吸収性縫合糸」とも称する)は、化学反応プロセス(例えば、加水分解、酸化/還元、酵素メカニズム、又はこれらの組み合わせ)等の鎖切断によって、又は熱プロセス若しくは光分解プロセスによって分解されない材料を含む縫合糸を指す。非分解性縫合糸材料としては、ポリアミド(ナイロン、例えば、ナイロン6及びナイロン6,6としても知られる)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリテトラフルオロエチレン(例えば、延伸(expanded)ポリテトラフルオロエチレン)、ポリブテステル(ブチレンテレフタレートとポリテトラメチレンエーテルグリコールのブロックコポリマー)などのポリエーテル−エステル、ポリウレタン、合金、金属(例えば、ステンレス鋼線材)、ポリプロピレン、ポリエチレン、絹及び綿が挙げられる。非分解性縫合糸材料製の縫合糸は、縫合糸が永続的に残留するように意図されているか、又は生体から物理的に除去されるように意図されている用途に適している。
【0083】
「縫合糸直径」は、縫合糸本体の直径を指す。理解されたいこととして、様々な縫合糸の長さが、本明細書で説明する縫合糸で用いられてもよく、「直径」という用語は多くの場合、円形の周囲と関連付けられるが、これは、任意の形状の周囲と関連付けられる横断面寸法を示唆すると本明細書で解釈されるべきである。縫合糸の寸法は、直径に基づく。縫合糸サイズの米国薬局方(「USP」)記号表示は、より大きい範囲では0〜7の値をとり、より小さい範囲では1−0〜11−0の値をとり、より小さい範囲では、ハイフンで結んだゼロに先行する値が高いほど、縫合糸径が小さい。縫合糸の実直径は、縫合糸材料によって決まるので、例として、サイズ5−0かつコラーゲン製の縫合糸は、0.15mmの直径を有し、一方、同じUSPサイズ記号表示を有するが、合成吸収性材料又は非吸収性材料製の縫合糸は、それぞれ、0.1mmの直径を有するであろう。特定の目的に対する縫合材寸法の選択は、縫合される組織の性質、及び外見の不安などの要因に依存するが、細い縫合糸は、狭い手術部位を通じてより容易に操作される場合があると共に、瘢痕を伴うことも少なく、所与の材料から製造された縫合糸の引張り強度は、寸法の減少と共に低下する傾向がある。当然のことながら、本明細書で開示される縫合糸及び縫合糸の製造方法が、7、6、5、4、3、2、1、0、1−0、2−0、3−0、4−0、5−0、6−0、7−0、8−0、9−0、10−0、及び11−0等が挙げられるが、これらに限定されない、様々な直径に適していることを理解されたい。
【0084】
「針取付け」は、組織中への展開と同様に必要とされる縫合糸に針を取り付けることを指し、例えば、圧着する、すえ込み加工する(swaging)、接着剤を使用する等の方法を含むことができる。圧着、すえ込み加工、及び接着剤等の方法を使用して、縫合糸針に縫合スレッドを取り付ける。縫合糸及び外科手術針の取付けは、米国特許第3,981,307号、第5,084,063号、第5,102,418号、第5,123,911号、第5,500,991号、第5,722,991号、第6,012,216号、及び第6,163,948号、並びに米国特許出願公開第US 2004/0088003号に記載されている。針への縫合糸の取付け点は、すえ込み(swage)として知られる。
【0085】
「縫合糸針」は、組織中に縫合糸を展開するために使用する針を指し、多くの異なる形状、形態、及び組成で提供される。外傷性針と非外傷性針の2つの主要タイプの針がある。外傷性針は、導管又は穿孔端(drilled end)(即ち、穴又は目)を有し、縫合スレッドとは別に供給され、現場で糸が通される。非外傷性針は、目がなく(eyeless)、工場ですえ込み加工するか又は縫合糸材料を針の平滑端部で導管内に挿入し、次いで、縫合糸と針を一緒に保持するための最終形状に変形させる他の方法によって、縫合糸に取り付けられる。したがって、非外傷性針は、現場では糸を通すための余分な時間が不要であり、針取付け部位の縫合糸端は、通常、針本体より小さい。外傷性針では、両側の針穴から糸が出てきて、多くの場合、縫合糸が組織を通過するときに縫合糸が組織をある程度まで引き裂く。最新の縫合糸は、非外傷性針によるすえ込み加工である。非外傷性針は縫合糸に永久的にすえ込み加工されてもよく、あるいは、強く真っ直ぐに引くと縫合糸から外れるように設計されてもよい。これらの「ポップオフ(pop-off)」が一般的に使用され、この場合、それぞれの縫合糸を一回だけ通してから結ぶ。中断されないバーブ付き縫合糸では、これらの非外傷性針が好ましい。
【0086】
縫合糸針はまた、針の先又は先端の形状に応じて分類することもできる。例えば、針は、(i)「先細」(針本体は、丸みを付けられており、尖端に向かって平滑に先細となる)、(ii)「カッティング」(針本体が三角形であり、鋭い切断へりを内側に有する)、(iii)「逆カッティング」(切断へりが外側にある)、(iv)「トロカール端」又は「テーパカット」(針本体が丸みを持ち、先細であるが、小さな三角形の切断点で終端する)、(v)脆弱な組織を縫うための「ずんどう」端、(vi)「サイドカッティング」又は「スパチュラポイント」針は、頂部と底部において平坦であり、前面から一方の側面に切断へりを有する(これらは通常、目の手術に使用される)であってもよい。
【0087】
縫合針はまた、いくつかの形状のものでもよく、これには、(i)直線、(ii)半湾曲又はスキー板、(iii)1/4円、(iv)3/8円、(v)1/2円、(vi)5/8円、及び(v)複合曲線が挙げられる。
【0088】
縫合針は、例えば、米国特許第6,322,581号及び同第6,214,030号(Mani,Inc.(Japan))、並びに同第5,464,422号(W.L.Gore(Newark,DE))、並びに同第5,941,899号、同第5,425,746号、同第5,306,288号、及び同第5,156,615号(US Surgical Corp.(Norwalk,CT))、並びに同第5,312,422号(Linvatec Corp.(Largo,FL))、並びに同第7,063,716号(Tyco Healthcare(North Haven,CT))に記載されている。他の縫合針は、例えば、米国特許第6,129,741号、第5,897,572号、第5,676,675号、及び第5,693,072号に記載されている。本明細書で説明する縫合糸は、様々な針の種類(非限定的に、曲線型、直線型、長尺型、短尺型、微小型などを含む)、針の切断表面(非限定的に、切断表面、先細表面などを含む)、及び針の取付け技術(非限定的に、穿孔端部、折り曲げなど)を伴って展開されてもよい。更に、本明細書に記載される縫合糸自体が、展開針の必要性を全くなしで済ますように十分に堅くかつ鋭い端部を含んでもよい。
【0089】
「針直径」は、縫合糸展開針の、当該針の最も広い点での直径を指す。「直径」という用語は多くの場合、円形の周囲に関連付けられるが、任意の形状の周囲に関連付けられる横断面寸法を示すことを本明細書では理解されたい。
【0090】
「縫合糸展開端部」は、組織の中に展開される縫合糸の端部を指し、縫合糸の一方又は両方の端部が縫合糸展開端部であってもよい。縫合糸展開端部は、縫合針などの展開デバイスに取り付けられてもよく、あるいは、それ自体で組織を貫通するように十分に鋭くかつ硬質であってもよい。
【0091】
「創傷閉鎖」は、創傷を閉じるための外科的処置を指す。傷害、特に皮膚又は別の外面若しくは内面が、切断され、裂かれ、突き刺され、又はそうでなければ、破壊された場合の傷害が、創傷として知られる。創傷は、一般的に、いずれの組織の完全性が損なわれた場合にも生じる(例えば、皮膚が破壊又は焼灼し、筋肉が裂け、又は骨折する)。外傷は、穿刺、落下、又は外科手技などの行為によって、感染症によって、あるいは基礎疾患によって生じる場合がある。外科的創傷閉鎖は、組織が裂かれ、切断され、又はそうでなければ、分離されたそれらの創傷の縁を接合するか、又は密接に近づけることによって、治癒という生物学的事象を容易にする。外科的創傷閉鎖は、組織層を直接並置するか、又は近づけて、創傷の2つの縁間の間隙を架橋するために必要な新組織形成量を最小限にするのに役立つ。閉鎖は、機能的及び審美的の両目的に役立てることができる。これらの目的には、皮下組織に近づくことによる死腔の排除、慎重な表皮アラインメントによる瘢痕形成の最小化、及び皮膚縁の正確な外返しによる陥没性瘢痕の回避が含まれる。
【0092】
緊急留置縫合糸及びシステム
特定の実施形態に基づいて、本発明は、一方向性の、双方向性の、多方向性の緊急留置縫合糸及びシステムを提供する。本発明の縫合糸及びシステムは、緊急縫合糸又はシステムの除去を容易にする把持係合要素を備え、いくつかの実施形態では、把持係合要素は、指を係合するように適合されてもよく、一方で、他の実施形態は、手術道具(ピンセットなどの)を係合するように適合されてもよい。そのサイズ、形状、色、テクスチャー、又はこれらの任意の組み合わせのいずれかに起因して、これは、容易に検出できるようにも構成される。創傷閉鎖から本発明の緊急縫合糸又はシステムを除去するために、いくつかの実施形態では、把持係合要素は、把持され(ここでも指又は手術道具によって)、縫合糸の残りから切断され、ひいては、それぞれの留置セグメントを最初に展開された方向で組織から除去することを可能にする。他の実施形態では、把持係合要素は把持され、その後それぞれの留置セグメントは、それに続く留置セグメントの除去を容易にするために把持係合要素及び互いから切断されてもよい。把持係合要素は、連続ループ(円状及び楕円状ループを含む)、多角形、ハンドル付きループ、タブ、部分的ループ、及び部分的多角形を含む、任意の数の構成で提供されてもよい。これには、把持係合要素の組織内への通過を避けるための、それぞれの端部の組織止め具を含む。これらは、剛性であっても可撓性であってもよい。
【0093】
本発明の特定の実施形態によると、これらの緊急縫合糸及び縫合システム及び/又はそのセクションは、把持係合要素のデバイスの残りの部分からの区別を容易にするためのマーク付きでなくても、マーク付きでも、1つ以上のタイプのマーカー若しくはマーカーの組み合わせでも、又は異なるようにマークが付けられていてもよい。
【0094】
兵士又は医療関係者が把持係合要素を識別可能であるという目的に適うように、使用される任意の可視のマーキングは、縫合糸が使用される状況の下で、兵士又は医療関係者によって容易に認識され、見分けられるべきである。例えば、戦場又は野戦病院では、把持係合要素のこのマーキングは、肉眼で、光線状態がよくなくても容易に見えることが望ましいであろう。
【0095】
マーカーは、互いに識別され、見分けられる場合がある、様々な形態で提供することができる。マーカーは、見分け可能な、パターン、形状、長さ、色サイズ、方向及び配設を含んでいてもよい。マーカーは、赤、緑、オレンジ、黄色、緑、青などの異なる色を含むことができる。かかる色は、均一の密度又は異なる密度で使用されてもよく、その場合、色の濃度の変化は、例えば、配向を指定するために使用されてもよい。マーカーは、自己保持縫合システムの全長にわたって、いくつかの別個の点で、又は留置縫合糸の遷移セクションの端部のみにおいて含まれてもよい。いくつかの場合では、マーカーに対して、手術環境では一般的でない色を使用するのが望ましい場合がある。例えば、緑は、人体内では一般的ではないので、緑のマーカーを使用するのが望ましい場合がある。
【0096】
マーカーは、様々な従来の方法によって形成することができる。例えば、マーカーは、留置縫合糸システム又はその構成要素に、コーティング、スプレー、糊付け、染色、着色又は別の方法により固着することができる。従来の着色剤塗布プロセスとしては、対象となる縫合糸セクション上に着色剤を浸漬、スプレー(例えば、インクジェットにより)、塗装、印刷、塗布及び/又はコーティングすることが挙げられるが、これらに限定されない。臨界流体抽出(炭素酸化物など)も、マーキングが望まれるセクションの局所、全体又は部分に着色剤を加えるために使用されてもよい。あるいは、対象となる縫合糸セクションのための着色剤は、縫合糸本体を形成するために使用される縫合糸材料の部分に含まれてもよく、その部分は、製造された縫合糸の対象となるセクション内にある。
【0097】
更に、対象となる縫合糸セクションの境界を定めるために採用された着色剤は、対象となるセクションにおいて縫合糸上に塗布されるプラスチック生体適合性材料に含まれてもよい。かかる層は、対象となる縫合糸セクションをマーキングする着色剤を有するポリグリコリドコーティングなどのように吸収可能であってもよく、又はシリコーンなどの吸収不可能な材料であってもよい。着色された材料は、合成されたものであってもよく、又はコラーゲンのように天然の材料源(材料は改質されていても又は改質されていなくても)に由来してもよい。
【0098】
あるいは、対象となる縫合糸セクションは、逆マーキング、すなわち、縫合糸本体がすでに可視的に着色されている場合に、対象となるセクションの少なくとも一部が縫合糸の他の部分から軍医によって光学的に識別可能であるように、対象となる縫合糸セクションの全体又は一部から着色剤が欠如してもよい。かかる縫合糸は、縫合糸本体上にリテーナが形成される前であっても又は後であっても、縫合糸本体の製造中に(例えば、押出成形による)、又は縫合糸本体が製造された後に、対象となる縫合糸セクションからの着色剤の除去により、対象となる領域の縫合糸セクションに縫合糸材料の着色剤を含まない部分を含んで製造されてもよい。着色剤は、例えば、(例えば、炭素酸化物)などの臨界流体抽出によって、局所的に除去されてもよい。対象となるセクションと縫合糸の残りとの間に軍医によって感知可能な違いがある限り、縫合糸の対象となるセクションから全ての着色剤を除去する必要はない。
【0099】
逆マーキングされた縫合糸の別の例は、縫合糸本体の残りには存在する着色された層が欠如していることである。着色剤を含有するプラスチック生体適合性材料は、縫合糸の他のセクションに塗布されてもよく、少なくとも他のセクションが、対象となるセクションの境界となるところに塗布されてもよい。かかる材料の例は、上記で考察される。前述の例におけるように、対象となる縫合糸セクションの境界を定めることは、リテーナの形成前であっても後であっても、縫合糸製造プロセスの影響を受ける。
【0100】
逆マーキングされた縫合糸の別の例は、それぞれの同軸層が異なる色を有する同軸構造を有するものであり、下の層を視覚的に露出するために、最も外側の層の一部を除去する。例えば、2層のモノフィラメントポリプロピレン縫合糸は、青い外側同軸層をともなう白い内側コア(同軸間層)を備えて、生成することができ、対象となる縫合糸セクションをマーキングするために、白い内側モノフィラメントを視覚的に露出するように外側層の部分を除去することができる。
【0101】
逆マーキングされた縫合糸の更に別の例は、対象となる縫合糸セクションの縫合糸から外側コーティングが除去される(又は部分的に除去される)ものであり、コーティング又は基部縫合糸のいずれかは対照的な色の違いを有する。対象となる縫合糸セクションでこの材料を除去する(又は部分的に除去する)技法は、対象となる縫合糸セクションの触感の境界をまた作る場合がある。
【0102】
上記されたように、把持係合要素又は脱離領域は、セクションを識別し、他のセクションから見分けることを可能にするために、縫合糸フィラメント自体をマーキングするかわりに、又はこれに加えて、マーキングされてもよい。可視波長範囲以外にかかるマーキングが波長範囲内で存在する場合、不可視マーカーの位置を示し、画像化するために検出器が使用されることになり、そのため、野戦病院の人員は、このマーカーの使用及び有利点を有することになる。
【0103】
双方向性緊急縫合糸
本発明に基づく双方向性緊急縫合糸の実施形態が、図1図7に示される。図1では、縫合糸100は、第1の留置縫合糸セグメント102aと、第2の留置縫合糸セグメント102bと、リング106aを備える把持係合要素106と、を含む。一般にリング106aは、いずれかの人が自分の指をそのリングを通すことができ、その人が次いでリングを第1の留置縫合糸セグメント102a及び第2の留置縫合糸セグメント102bから引きはなすことができる、いかなる形状であってもよい。例えば、リングは、図1に示すように丸くてもよく、あるいは楕円状若しくは多角形状、又はリングが開口若しくは開口部を備える限り、他の形状とすることができる可能性がある。図1に示すように、把持係合要素106は、好ましくはリング106aに沿った異なる場所で、セグメント102bの近位端108b及びセグメント102aの近位端108aに接合する。第1の留置縫合糸セグメント102aは、組織内にあるとき、遠位端又は展開端104aの動きの方向に組織を通るセグメント102aの動きを容認し、遠位端104aの動きの方向と反対の方向に組織を通る縫合糸の動きに抵抗するように配向された複数のリテーナ103aを含む。反対に、第2の留置縫合糸セグメント102bは、組織内にあるとき、第2のセグメント102bの遠位端又は展開端104bの動きの方向に組織を通るセグメント102bの動きに抵抗し、かつ端部104bの動きの方向と反対の方向に組織を通るセグメントの動きに抵抗するように配向された複数のリテーナ103bを含む。所望により、セグメント102aは、針112aに固着されてもよく、所望によりセグメント102bは針112bに固着されてもよく、いずれかの又は両方の針は、所望により、図1に示すように曲がっていてもよい。
【0104】
図2は、ループ状の把持係合要素を有する緊急縫合糸の別の実施形態を図示する。縫合糸200は、第1の留置縫合糸セグメント202aと、第2の留置縫合糸セグメント202bと、セグメント202a及び202bのそれぞれの近位端208a及び208bにおける把持係合要素206(ハンドル206bの端部における楕円(すなわち、閉ループ)206aの形態の)と、を含む。第1の留置縫合糸セグメント202aは、組織内にあるとき、セグメント202aの遠位端204aの動きの方向に組織を通るセグメント202aの動きを容認し、かつ遠位端204aの動きの方向と反対の方向に組織を通る縫合糸の動きに抵抗するように配向された複数のリテーナ203aを含む。反対に、第2の留置縫合糸セグメント202bは、組織内にあるとき、第2のセグメント202bの遠位端204bの動きの方向に組織を通るセグメント202bの動きを容認し、かつ遠位端204bの動きの方向と反対の方向に組織を通るセグメント202bの動きに抵抗するように配向された複数のリテーナ203bを含む。所望により、セグメント202aは、針212aに固着されてもよく、所望によりセグメント202bは針212bに固着されてもよく、いずれかの又は両方の針は、所望により、図2に示すように曲がっていてもよい。
【0105】
本発明に基づく緊急縫合糸の実施形態が図3に図示され、第1の留置縫合糸セグメント302aの端部308aと第2の留置縫合糸セグメント302bの端部308bとの間に位置する、タブの形態の把持係合要素306を含む。把持係合要素306は、いずれかの人が把持係合要素306を把持する能力を高めるために、様々なテクスチャー付きの表面310を備え、テクスチャーを付けることは、図3に図示するように上昇した隆起部又は他の平らでない表面の形態をとってもよい。第1の留置縫合糸セグメント302aは、組織内にあるとき、セグメント302aの遠位端304aの動きの方向に組織を通るセグメント302aの動きを容認し、かつ遠位端304aの動きの方向と反対の方向に組織を通るセグメント302aの動きに抵抗するように配向された複数のリテーナ303aを含む。反対に、第2の留置縫合糸セグメント302bは、組織内にあるとき、第2のセグメント302bの遠位端304bの動きの方向に組織を通るセグメント302bの動きを容認し、かつ遠位端304bの動きの方向と反対の方向に組織を通るセグメントの動きに抵抗するように配向された複数のリテーナ303bを含む。所望により、セグメント302aは、針312aに固着されてもよく、所望によりセグメント302bは針312bに固着されてもよく、いずれかの又は両方の針は、所望により、図3に示すように曲がっていてもよい。
【0106】
把持係合要素306の全体又は一部に異なるテクスチャーを提供することは、把持係合要素306に沿って増加した及び/又は減少した縫合糸本体の直径の複数の領域を提供することを含む。圧縮、切削、コーティング、及び研磨剤、重合剤、酸エッチング液、塩基エッチング液などの薬剤の塗布を含むが、これらに限定されない方法により、例えば、複数のくぼみ、複数の逃がし形状、及びその任意の組み合わせが、対象となるセクションに提供されてもよい。
【0107】
図4及び図5は、把持係合要素の開ループの形態の2つの変形それぞれ406及び506を有する実施形態を図示する。図4では、把持係合要素406は、開いた多角形であり、第1の留置縫合糸セグメント402aの近位端408aと第2の留置縫合糸セグメント402bの近位端408bとの間に位置する。第1の留置縫合糸セグメント402aは、組織内にあるとき、遠位端404aの動きの方向に組織を通るセグメント402aの動きを容認し、かつ遠位端404aの動きの方向と反対の方向に組織を通るセグメント402aの動きに抵抗するように配向された複数のリテーナ403aを含む。反対に、第2の留置縫合糸セグメント402bは、組織内にあるとき、第2のセグメント402bの遠位端404bの動きの方向に組織を通るセグメント402bの動きを容認し、かつ遠位端404bの動きの方向と反対の方向に組織を通るセグメントの動きに抵抗するように配向された複数のリテーナ403bを含む。所望により、セグメント402aは、針412aに固着されてもよく、所望によりセグメント402bは針412bに固着されてもよく、いずれかの又は両方の針は、所望により、図4に示すように曲がっていてもよい。
【0108】
図5では、把持係合要素506は、開いたループとして示され、第1の留置縫合糸セグメント502aの近位端508aと第2の留置縫合糸セグメント502bの近位端508bとの間に位置する。第1の留置縫合糸セグメント502aは、組織内にあるとき、遠位端504aの動きの方向に組織を通るセグメント502aの動きを容認し、かつ遠位端504aの動きの方向と反対の方向に組織を通るセグメントの動きに抵抗するように配向された複数のリテーナ503aを含む。反対に、第2の留置縫合糸セグメント502bは、組織内にあるとき、第2のセグメント502bの遠位端504bの動きの方向に組織を通るセグメント502bの動きを容認し、かつ遠位端504bの動きの方向と反対の方向に組織を通るセグメント502bの動きに抵抗するように配向された複数のリテーナ503bを含む。いくつかの実施形態では、開ループ状又は開多角形状の把持係合要素を有し、この要素は、剛体材料又は半剛体材料で作製されてもよく、又は剛性又は半剛性をもたらすためにコーティングされていてもよい。所望により、セグメント502aは、針512aに固着されてもよく、所望によりセグメント502bは針512bに固着されてもよく、いずれかの又は両方の針は、所望により、図5に示すように曲がっていてもよい。
【0109】
図6は、開ループ状の把持係合要素を有する緊急縫合糸の別の実施形態を図示する。縫合糸600は、第1の留置縫合糸セグメント602aと、第2の留置縫合糸セグメント602bと、把持係合要素606と、を含む。把持係合要素606は、第1の留置縫合糸セグメント602a及び第2の留置縫合糸セグメント602bそれぞれの近位端608a及び608bに近接する、組織止め具610a及び610bを備える。組織止め具610a及び610bのそれぞれは、近接する近位端608a及び608bそれぞれの断面寸法より大きい断面寸法を有し、ひいては縫合糸600が組織内に位置し、創傷閉鎖において機能を果たす場合に、把持係合要素606の組織内への滑りを防止するように構成される。第1の留置縫合糸セグメント602aは、組織内にあるとき、遠位端604aの動きの方向に組織を通るセグメント602aの動きを容認し、かつ遠位端604aの動きの方向と反対の方向に組織を通るセグメントの動きに抵抗するように配向された複数のリテーナ603aを含む。反対に、第2の留置縫合糸セグメント602bは、組織内にあるとき、第2のセグメント602bの遠位端604bの動きの方向に組織を通るセグメント602bの動きを容認し、かつ遠位端604bの動きの方向と反対の方向に組織を通るセグメント602bの動きに抵抗するように配向された複数のリテーナを含む。所望により、セグメント602aは、針612aに固着されてもよく、所望によりセグメント602bは針612bに固着されてもよく、いずれかの又は両方の針は、所望により、図6に示すように曲がっていてもよい。
【0110】
さらに別の実施形態では、図7に図示するように、縫合糸700の把持係合要素706は、留置縫合糸セグメント702a及び702bそれぞれの近位端708a及び708bと隣接する脱離要素710a及び710bによって境を接している。縫合糸700から要素706を除去するには、脱離要素708a及び708bは、強く引くことのみを必要とするように適合され、脱離要素708a及び708bは、脆い材料、より小さい縫合糸材料の直径(これにより、縫合糸の隣接する部分より低い引張り強さを有する)、又は取り外し可能なコネクタから構成されてもよい。第1の留置縫合糸セグメント702aは、組織内にあるとき、遠位端704aの動きの方向に組織を通るセグメント702aの動きを容認し、かつ遠位端704aの動きの方向と反対の方向に組織を通るセグメントの動きに抵抗するように配向された複数のリテーナ703aを含む。反対に、第2の留置縫合糸セグメント702bは、組織内にあるとき、第2のセグメント702bの遠位端704bの動きの方向に組織を通るセグメント702bの動きを容認し、かつ遠位端704bの動きの方向と反対の方向に組織を通るセグメントの動きに抵抗するように配向された複数のリテーナ703bを含む。所望により、セグメント702aは、針712aに固着されてもよく、所望によりセグメント702bは針712bに固着されてもよく、いずれかの又は両方の針は、所望により、図7に示すように曲がっていてもよい。
【0111】
図14A図14B及び図15は、本発明に基づく緊急展開縫合糸の更に別の実施形態の描写を含み、縫合糸は、任意選択的な縫合糸のためのパッケージ材料の状況で示される。図14Aの双方向性縫合糸1401は、それらの遠位端1411a及び遠位端1411bのそれぞれにおいて、針1409a及び針1409bをそれぞれ伴う第1の留置縫合糸セグメント1403a及び第2の留置縫合糸セグメント1403bを含む。一実施形態では、把持係合要素1405は、把持係合要素1405の開口部1407a及び1407bに結びつけるか、又はそうでなければ接合する手段として、第1の留置縫合糸セグメント1403aの近位端1413a及び第2の留置縫合糸セグメント1403bの近位端1413bに付着する。図14Bに図示する代替的な実施形態では、近位端1413a及び1413bは、それぞれ破線1415で示される遷移セグメントの端部に付着し、遷移セグメント1415は、リテーナがないフィラメント又は何らかの他のフィラメントであり、これによって近位端1413a及び1413bをともに連接し、この実施形態では、縫合糸1401は、遷移セグメントにおいて、又はその近くで開口部1407a及び1407bを通過する。図14Bは、領域1417a及び1417bを示し、これらは、所望により把持係合要素1405の部分として存在し、領域1417a及び1417bは、把持要素1405の脆い領域であり、ひいては容易にポキンと折れるか又はばらばらになるように適合される。創傷閉鎖から、2つの脆い領域1417a及び1417bを伴う把持係合要素1405を有する1401などの縫合糸を取り除くために、把持係合要素1405は破壊される可能性があり、残された部分は、切断を容易にするように、縫合糸、例えば遷移セグメント1415を露出するために、分離したままとなる。同様に、図15では、図14Aと関連して説明される双方向性縫合糸1401は、1501と番号をつけかえられ、縫合糸1501を縫合糸1501の遷移セグメントにおいて又はその近くで係合する開口部1507a及び1507bを有する把持係合要素1505を含む。所望により、把持係合要素1505は、1つの、好ましくは2つの、又は2つより多い、脆い領域を含んでもよく、ひいてはポキンと折れるか又はばらばらになるように適合されてもよい。いくつかの実施形態では、図14及び図15に図示するものなどの把持係合要素の1つ以上の縫合糸開口部は、縫合糸を切断する一方で、ひいては創傷閉鎖からの縫合糸の容易な除去を可能にする、把持係合を除去することが可能な鋭いエッジを含んでもよい。
【0112】
把持係合要素806は、図8a及び図8bに描写される。図8aを参照すると、把持係合要素806は、それぞれ第1の留置縫合糸セグメント802a及び第2の留置縫合糸セグメント802bにそれぞれ係合され、創傷801の外側に位置付けられる。縫合糸800の第1の留置縫合糸セグメント802aは、創傷縁部801bを通した表皮下の縫い目の中に展開され、創傷801のおおよそ中央部801aから開始し、創傷801の一端に801cに向かって移動し、次いで縫合糸800は、展開方向(すなわち、創傷801cの端部の方向)に、創傷縁部801aにともに接近するまで引かれる。破線802aは、組織の下に位置付けられる第1の留置縫合糸セグメント802aを図示する。次いで、図8bに図示されるように、創傷の残りの部分のために、第2の留置縫合糸セグメント802bによりプロセスが繰り返され(破線で示して、組織内のその場所を表す)、閉鎖された創傷がもたらされる。創傷閉鎖の第2の半分で縫合糸800が、組織を通して創傷の開いている残りの部分の創傷縁部に接近するまで引かれるときに、縫合糸800を第2の展開方向に(すなわち、創傷の第2の端部801eに向かって)引く行動は、セグメント802a上で複数のリテーナに対して必要な固着力を含み、ひいては組織係合を生じる。反対に、創傷の第2の半分を閉じるために縫合糸800が十分強く引かれると、第1のセグメント802a上の複数のリテーナに対して組織の係合力が行使され、セグメント802b上に複数のリテーナを固着する。縫合糸を組織から除去するために、把持係合要素806は把持され、縫合糸セグメント802a及び802bは、互いから及び要素806から切断される。次いで、縫合糸セグメント802aは、縫合糸出口点801dで組織から引き抜かれ、縫合糸セグメント802bは、同様にそれぞれの縫合糸出口点801fで組織から引き抜かれる。
【0113】
緊急双方向性縫合糸の別の使用が図9に図示され、最も確実な表面閉鎖が遂行できるまで、創傷を適所に保持するために、創傷を高い張力下でともにより近くに持ってくる。間隙のある創傷(又は創傷にかかる張力のために、一緒のところに持ってくるのが難しい創傷)では、双方向性緊急縫合糸900は、組織をより近くに接近させるように持ってくるために展開される。この手順では、把持係合要素906は、創傷の中間点付近に位置付けられ、留置セグメント902は、創傷から放射状に外向きに通るように、創傷縁部を通して挿入され、創傷縁部からある距離だけ離れて出口点908で出る。この距離は、創傷及び周囲の組織の特性に適するように選択されるが、距離が大きいほど保持する強度がより高いことに留意する。次いで、留置セグメント904により、創傷のもう一方の側で手順が繰り返される。大きい創傷のためには、いくつかの縫合糸が必要な場合がある。次いで、組織は、リテーナによって進行的に、必要なだけ互いに近くに寄るまで(又は用心深いほど)互いに「歯止めをかける」ことができる。把持係合要素を留置セグメント902と904との間に有することは、縫合糸の後での除去を容易にするだけでなく、創傷のいずれかの側での留置セグメントの固定を増強し、それにより、縫合糸が組織を通して引っ張らなくても耐えられる張力の量を増加する。
【0114】
一方向性の緊急縫合糸
本発明の縫合糸は、図10に示す例などの、一方向性の実施形態も含む。縫合糸1000は、留置縫合糸セグメント1002と、セグメント1002の近位端で脱離要素1008に近接するアンカー要素1006と、を含む。留置縫合糸セグメント1002は、組織内にあるとき、鋭い端部1004の動きの方向に組織を通るセグメント1002の動きを容認し、かつ端部1004の動きの方向と反対の方向に組織を通る縫合糸の動きに抵抗するように配向された複数のリテーナ1003を含む。縫合糸が一旦組織内に完全に展開されると、把持係合アンカー1006が端部1004に向かう方向の縫合糸の動きに抵抗するように作用する。脱離要素1008は、セグメント1002から要素1006を除去できるように、強く引くこと、曲げること、又はねじることなどの破壊動作を要するように適合され、脆い材料、縫合糸材料のより小さい直径(それによって、縫合糸の他の部分よりも引張り強さが低い)又は取り外し可能なコネクタを備えてもよい。
【0115】
多方向性緊急縫合糸システム
留置縫合糸システムは、3つ以上の縫合糸セグメントを備えてもよい。留置縫合糸システムは、用途により、最高約10個の縫合糸セグメント又はより多くを含む、1つ、2つ又はそれより多くの縫合糸セグメントを有してもよい。例えば、図11に示すように、縫合糸システム1100は、中央リング1106から放射する5つの留置縫合糸セグメント1102a〜eを有する。それぞれの縫合糸セグメント1102a〜eは、針をその展開端部1104a〜eに、及びコネクタ1108a〜1108eをその他の端部に有し、それぞれのコネクタは、そのそれぞれの縫合糸セグメントをリング1106に接合する。患者に対してより良好な医療が利用可能となったときに、リングの除去及びそれに続く縫合糸セグメントの一時的な創傷閉鎖からの除去を容易にするために、コネクタは、全体として又は部分的に脆い材料で製造されてもよい。あるいは、コネクタは、縫合糸システムの除去の前に、縫合糸セグメントから切断されてもよい。
【0116】
多方向性緊急縫合糸システムの別の実施形態は、図12に図示される。縫合糸システム1200は、3つの留置縫合糸セグメント1202a〜cを有する。それぞれのセグメント1202a〜cは、一端部、すなわち近位端で、任意の適切な形状、例えば、円状、楕円状、又は図12に示すように多角形状であってもよい把持係合要素1206に結合する。セグメント1202a〜cのそれぞれは、他の端部、すなわち遠位端において針1204a〜cも有する。把持係合要素1206は、システム1200内の分離された構成要素ではないが、留置セグメント1202a〜cに結合される。これらは、融解、糊付け、溶接等によって接合されてもよく、又は一体で形成されてもよい。図12に示されるように、留置縫合糸セグメント1202aは、セグメント1202b及び1202cより大きい直径を有する(及びそれに従ってより大きくかつ異なる構成のそれに付着された針を有する)。図12は幅広い変形の内の1つの選択肢を図示し、これは1200などのマルチアーム留置縫合糸システムで可能である。縫合糸システムのアームは、アームが展開される組織に基づいて個別に選択されてもよい。1202aなどの縫合糸セグメント上のリテーナ1203aは、リテーナが、セグメントがそのアームに付着された針の方向、すなわち遠位方向で展開されるのを容認し、縫合糸セグメントの把持係合要素に向かう方向、すなわち近位方向の動きに抵抗し、アンカーとして作用し、並びに後での一時的な創傷閉鎖からの縫合糸システムの除去を容易にするように構成されることに留意されたい。したがって、縫合糸セグメントが組織を通して展開され、組織が要素1206に向かって近接され、次いでリテーナが組織を近接された位置に保持することになり、組織が要素1206から離れる動きに抵抗する。何らかのマルチアームシステムでは、リテーナを有しないいくつかのアームを有することが望ましいことに留意されたい。
【0117】
3つ以上の縫合糸セグメントを有する留置システムは、共通の点から放射する複数の縫合糸ラインを有することが望ましい用途に有用である。かかる留置縫合糸システムは、例えば、閉鎖、刺創、星状の創傷及び他の非直線的創傷に有用である。かかる創傷は、鈍的外傷、射撃、爆発などにより生じる可能性があり、通常の縫合技法では閉鎖するのが極めて難しい。図13は、多方向性緊急縫合糸システム1300による星状の創傷の閉鎖を図示する。星状の創傷は、非直線的創傷であり、組織を通したいくつかの裂傷が共通の点で交わり、これは通常の縫合技法では閉鎖するのが難しい。しかしながら、かかる創傷は、それぞれの組織の頂点に対して留置縫合糸セグメントを有する多方向性システムを使用して、容易に閉鎖することができる。図13に示されるように、システム1300は、一端、すなわち近位端にそれぞれ針1312a〜dを有する4つの留置縫合糸セグメント1302a〜dを備え、把持係合要素1306にその端部、すなわち遠位端で結合する。それぞれの針1312は、組織のフラップの頂点1314a〜dで挿入され、組織を通して創傷からある距離離れて位置する出口点1310a〜dへ引かれる。中央の創傷を閉鎖した後、必要に応じて、留置縫合糸の変換(一方向性の又は双方向性の)によるなどの標準的な技法を使用して、残りの直線状の創傷も更に閉鎖される場合がある。
【0118】
緊急留置縫合糸のパッケージ
本明細書で説明した縫合糸及びシステムは、縫合糸セグメント、端部及び把持係合要素がからまるのを防止し、縫合糸又はシステムの、パッケージからの容易な取り出しを提供するために適合するようにパッケージ内に装填されてもよい。
【0119】
パッケージの実施形態が図14Aに示され、パッケージは2つの異なる緊急留置縫合糸システムを保持して示される。パッケージは、基部1400、基部1400上でいくらかの距離だけ互いに離れて位置付けられる把持係合要素ホルダ1404及び縫合糸セグメントホルダ1402を含む。ホルダは、複数のセクションを備えてもよく、例えば、縫合糸セグメントホルダ1402は、複数の通路1402a及び1402bを提供し、縫合糸上のそれぞれの針は、他のものから隔離されてもよい。同様に、把持係合要素ホルダ1404は、複数の通路1404a及び1404bを配置することによって複数のセクションを備えてもよく、それによって、把持係合ホルダ1404上に示されるように、縫合糸セグメント1403は、互いに隔離されてもよい(バーブがからまるのを防止するために)。基部1400は、線A及び線Bに沿って折り曲げられ、タブ/スロットの組み合わせ1406bで閉じられるように構成される。基部は、より長い縫合糸の端部を保護するために、線Cに沿って折り曲げられ、タブ/スロットの組み合わせ1408bで閉じられてもよい。
【0120】
図15に示される別の実施形態では、パッケージは基部1500、基部1500上で互いにいくらかの距離だけ離れて位置付けられる把持係合要素ホルダ1504及び縫合糸セグメントホルダ1502を含む。把持係合ホルダ1504と縫合糸セグメントホルダ1502との両方は、それぞれの縫合糸1501の縫合糸セグメントをホルダを通して(楕円状又は代替的な配設のいずれかで)巻くことができる複数のセクションを備え、それにより、縫合糸/パッケージの組み合わせの全体的なサイズを低減する。基部1500は、折り曲げられ、タブ/スロットの組み合わせ1505a、bで閉じられるように構成される。基部は、より長い縫合糸の端部を保護するために折り曲げられてもよく、タブ/スロットの組み合わせ1506a、bで閉じられてもよい。
【0121】
図16の実施形態は、ホルダのうちの2つ(1602a及びb)がおおまかに中央ホルダ(1602c)に対して垂直に配設された3つのマルチセクションホルダ1602a〜cを有する基部1600を含み、ホルダのこの配設は、縫合糸1601が把持係合要素1605を渦巻きの中心として渦巻き状に巻かれることを容認する。縫合糸の端部にある針1609は、ホルダ1602a〜cからいくらかの距離離れて位置付けられるホルダ1604において、基部に固定される。基部1600は、縫合糸1601の更なる保護のために、上に折り曲げられてもよい1つ以上のフラップ1606、1608、1610及び1612を更に含む。2つのみのマルチセクションホルダを有する代替的な配設1602も本発明の実施形態である。
【0122】
図17は、2つの延長されたマルチセクションホルダ1702a及び1702bを使用する縫合糸1701が交互配設で固定されてもよい実施形態を図示する。針1709a及び1709bは、マルチセクションホルダ1710を使用して、把持係合要素1705からいくらかの距離をおいて固定され、1つ以上の所望により存在するフラップ1706、1707、1708及び1711は、更なる保護を提供するために縫合糸の上に折り曲げられてもよい。
【0123】
図18は、縫合糸1801がマルチセクションホルダ1802a〜dで「C」型の配設で固定されてもよい実施形態を図示する。針1809a及び1809bは、把持係合要素1805の近くでマルチセクションホルダで固定され、それ自体はマルチセクションホルダ1804で適所に保持されるが、もつれを防止するために十分に遠く離れて配置される。基部1800は、パッケージの全体的なサイズを低減するために、線「A」に沿って「B」に示される方向に折り曲げられてもよく、所望により線C1とC2とのいずれか又は両方に沿って折り曲げられてもよい。
【0124】
図19は、延長されたマルチセクションホルダ1904a及び1904bに沿って、縫合糸1901が交互配設で固定されてもよい実施形態を図示する。針1909a及び1909bは、把持係合要素1905からいくらかの距離を置いて、マルチセクションホルダ1902で固定される。更に、縫合糸1911を同様のやり方で固定するインサート1910が、基部1900の上に置かれてもよく、フラップ1906及び1908が、インサートの上に折り曲げられてインサートを完全に覆ってもよい。
【0125】
図20は、一方向性の縫合糸のパッケージに対する実施形態を図示し、パッケージ基部2000は、一方向性の縫合糸2001a及び2001bを保持し、パッケージは、把持係合要素2005a及び2005bのためのホルダそれぞれ2002a及び2002b、並びに針2009a及び2009bそれぞれのためのマルチセクションホルダ2004a及び2004bを含む。図21は、基部2100上の多方向性縫合糸パッケージを図示し、縫合糸デバイス2101の様々なセグメントは、分離された対で互いから隔離され、したがってマルチセクションホルダ2104で適所に固定されて保持された1つのみの把持係合ホルダ2105と、ニーズ2009a、2009b、2009c及び2009dを保持する複数の縫合糸セグメントホルダ2012a及び2102bと、がある。
【0126】
図22は、外スリーブ2201を備えるパッケージ2200を図示し、パッケージ化された緊急縫合糸は、はさみ2202a及び2202b(一挺のはさみのみが含まれてもよいが)、並びに/又は持針器2203a及び2203b(一挺の持針器のみを含む可能性があるが)などの関連するデバイスと一緒に配置されてもよい。
【0127】
材料
本明細書に記載の縫合スレッドは、制限なしに、射出成形、スタンピング、切断、レーザー、押出し成形等を含む任意の適切な方法によって生成されてもよい。切削に関しては、高分子スレッド又はフィラメントは、縫合糸本体用に製造又は購入されてもよく、その後リテーナを縫合糸本体上に切り込むことができ、リテーナは、手動切断、レーザー切断、又は切削刃、切削砥石、砥石車等を用いた機械的に機械切削されてもよい。切削の間に、切り込み210の大きさ、形状及び深さを制御するために、切削装置又は縫合糸のいずれかが互いに対して移動されてもよく、又は両方が移動されてもよい。フィラメント上でバーブを切り込むための特定の方法は、表題「Method Of Forming Barbs On A Suture And Apparatus For Performing Same」のGenovaらの米国特許出願整理番号第09/943,733号、及び表題「Barbed Sutures」のLeungらの米国特許出願整理番号第10/065,280号に記載され、これらの両方は、参照により本明細書に組み込まれる。縫合スレッドは、任意の適切な生体適合性材料で製作されてもよく、縫合糸の強度、弾力性、寿命、又は他の品質を向上させるために、あるいは、組織を互いに接合すること、組織を再位置決めすること、又は外的要素を組織に付着させることの他に、更なる機能を果たすように縫合糸を備えるために、任意の適切な生体適合性材料で更に処理されていてもよい。
【0128】
本明細書に記載の把持係合要素は、制限なしに、射出成形、スタンピング、切断、レーザー、押出し成形等を含む任意の適切な方法によって作られてもよい。これらは、縫合スレッド(複数可)と一体的に形成されてもよく、把持係合要素は、各構成要素の製造後に組み立てられてもよい。これらは、布、フェルト、メッシュ、プラスチック(吸収性及び非吸収性の両方の)、金属又は他の材料から製造されてもよく、縫合スレッドに糊付け、結び、クリンプ又は別法により付着されてもよい。いくつかの実施形態では、これらはステンレス鋼又は他の放射線不透過性材料から製造されてもよい。いくつかの実施形態では、これらは典型的な大人の指が楽に入るように構成されてもよく、適切な直径の範囲は、1.91cm(0.75インチ)〜3.81cm(1.5インチ)、及び2.5cm(1インチ)〜3.18cm(1.25インチ)であってもよい。
【0129】
本明細書に説明されたパッケージは、紙と合成材料との組み合わせ、又は合成材料のみ若しくは紙のみなどの任意の適切な材料から作製されてもよい。針ホルダは、針をしっかりと係合するフォーム又は他の材料から作製されてもよい。外スリーブは、微生物汚染を防止するのと同時に(二酸化エチレンなどの)殺菌ガス透過性の材料、ガンマ線による殺菌に適合する材料、耐湿性の材料(フォイルなど)、及びこれらの任意の組み合わせを含む、任意の適切な材料から製造されてもよい。
【0130】
更に、本明細書に説明された縫合糸及びシステムは、治癒を促進し、瘢痕形成、感染、疼痛などの望ましくない影響を防止する組成物を備えてもよい。これは、例えば、(a)処方を縫合糸に直接的に固着すること(例えば、縫合糸にポリマー/薬剤被膜をスプレーすることによる、若しくは縫合糸をポリマー/薬液に浸漬することによる、のいずれか)、(b)縫合糸にヒドロゲルなどの物質をコーティングし、これが今度は組成物を吸収することになる、(c)マルチフィラメント縫合糸の場合、処方をコーティングしたスレッドを縫合糸構造へと織り合わせることによる(若しくはポリマー自体をスレッドへと形成する)、(d)縫合糸を処方からなる、若しくは処方でコーティングされたスリーブ若しくはメッシュ内へと挿入することによる、又は(e)縫合糸自体を組成物で構成することを含む、様々な様式により達成することができる。鎮痛剤、抗感染薬剤、抗瘢痕薬剤、潤滑剤及び抗炎症薬剤を含む組成物は、本明細書で考察した緊急事態では一般に有用である場合があり、他のかかる組成物としては、限定なしに、抗増殖剤、血管新生阻害剤、繊維増加誘発剤、エコー源性薬剤、細胞周期阻害剤、鎮痛剤、及び微小管阻害薬が挙げられてもよい。例えば、リテーナが形成される前に組成物を縫合糸に塗布することができるので、リテーナが係合するとき、係合表面は、実質的にコーティングを有しない。このようにして、縫合糸が導入されると、縫合された組織は縫合糸のコーティングされた表面に接触するが、リテーナが係合すると、リテーナのコーティングされていない表面が組織に接触する。あるいは、例えば、選択的にコーティングされた縫合糸よりも完全にコーティングされた縫合糸が望ましい場合、縫合糸は、縫合糸上へのリテーナの形成後又は形成の間にコーティングされてもよい。更に別の実施形態では、縫合糸は、縫合糸の選択された部分のみをコーティングに露出することによって、リテーナの形成の間又は形成後のいずれかに選択的にコーティングされてもよい。縫合糸が使用される特定目的又は組成物が、完全にコーティングされた縫合糸又は選択的にコーティングされた縫合糸のどちらが適切かを判定する場合があり、例えば、滑らかなコーティングについては、縫合糸を選択的にコーティングし、例えば、縫合糸の組織に係合する表面は、これらの表面の組織係合機能を低下させるのを防止するために、コーティングせずに残すのが望ましい場合がある。これに反して、抗感染薬剤などの組成物を含むものなどのコーティングは、適宜縫合糸全体に塗布する場合があり、一方で線維化薬剤を含むものなどのコーティングは、(組織に係合する表面などの)縫合糸の全体又は部分に適宜塗布される場合がある。コーティングはまた、複数の組成物をともに、あるいは縫合材の異なる部分に含んでもよく、異なる目的(鎮痛剤、抗感染薬剤及び抗瘢痕薬剤の組み合わせなど)のため、又はそれらの相乗効果のためのいずれかで、複数の組成物を選択することができる。
【0131】
本発明は、本発明のほんの例示的な実施形態に関して示され、詳細に記載されているが、当業者は、開示される特定の実施形態に対して本発明を制限することは意図されないことが理解されよう。本発明の新規の教示及び有利点から実質的に逸脱することなく、特に前述の教示を考慮に入れて、開示された実施形態に対して、様々な特徴の組み合わせ、並びに様々な修正、省略及び追加が行われてもよい。したがって、そのような修正物、省略物、追加物、及び等価物の全てを、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲に含まれてもよいものとして網羅することが意図されている。
【0132】
〔実施の態様〕
(1) 取り外し可能な双方向性留置縫合糸であって、
a.第1の端部、第2の端部、及び周辺部と、
b.複数のリテーナであって、前記第1の端部の動きの方向に組織を通る前記縫合糸の動きを容認し、かつ前記第1の端部の前記動きの方向と反対の方向に組織を通る前記縫合糸の動きを防止する、前記縫合糸の前記第1の端部と前記縫合糸上の第1の軸方向位置との間の、前記縫合糸の第1の部分上のリテーナ、及び前記第2の端部の動きの方向に組織を通る前記縫合糸の動きを容認し、かつ前記第2の端部の前記動きの方向と反対の方向に組織を通る前記縫合糸の動きを防止する、前記縫合糸の前記第2の端部と前記縫合糸上の第2の軸方向位置との間の、前記縫合糸の第2の部分上のリテーナと、
c.前記第1の軸方向位置と前記第2の軸方向位置との間の把持係合要素と、を備える、縫合糸。
(2) 前記把持係合要素がループを備える、実施態様1に記載の縫合糸。
(3) 前記ループが不連続的である、実施態様2に記載の縫合糸。
(4) 前記把持係合要素がタブを備える、実施態様1に記載の縫合糸。
(5) 前記把持係合要素が、縫合糸セグメントを備え、前記縫合糸セグメントが、そのそれぞれの端部に、前記縫合糸セグメントが組織内に入るのを防止するための止め具を有する、実施態様1に記載の縫合糸。
【0133】
(6) 前記把持係合要素が、前記縫合糸の残りの部分とは異なる色を備える、実施態様1に記載の縫合糸。
(7) 前記縫合糸が、前記把持係合要素と前記第1の軸方向位置及び前記第2の軸方向位置との間に、前記縫合糸からの前記把持係合要素の除去を容易にするための脆い部分を更に備える、実施態様6に記載の縫合糸。
(8) 前記把持係合要素が、強化された把持表面を更に備える、実施態様6に記載の縫合糸。
(9) 前記把持係合要素が、前記縫合糸の前記周辺部よりも大きい周辺部を有する、実施態様1に記載の縫合糸。
(10) 前記縫合糸が、前記把持係合要素と前記第1の軸方向位置及び前記第2の軸方向位置との間に、前記縫合糸からの前記把持係合要素の除去を容易にするための脆い部分を更に備える、実施態様9に記載の縫合糸。
【0134】
(11) 前記把持係合要素が、強化された把持表面を更に備える、実施態様9に記載の縫合糸。
(12) 前記把持係合要素が、強化された把持表面を更に備える、実施態様1に記載の縫合糸。
(13) 前記縫合糸が、前記把持係合要素と前記第1の軸方向位置及び前記第2の軸方向位置との間に、前記縫合糸からの前記把持係合要素の除去を容易にするための脆い部分を更に備える、実施態様1に記載の縫合糸。
(14) 前記把持係合要素と前記縫合糸とを接続する、取り外し可能なコネクタを更に備える、実施態様1に記載の縫合糸。
(15) 前記把持係合要素が少なくとも部分的に可撓性である、実施態様1に記載の縫合糸。
【0135】
(16) 前記把持係合要素が少なくとも部分的に剛性である、実施態様1に記載の縫合糸。
(17) 前記把持係合要素が、前記縫合糸の残りの部分とは異なる材料を含む、実施態様1に記載の縫合糸。
(18) 前記ループの構成が、円、楕円、及び多角形を含むクラスから選択される、実施態様2に記載の縫合糸。
(19) 取り外し可能な多方向性留置システムであって、
a.把持係合要素と、
b.少なくとも3つの縫合糸セグメントであって、それぞれの縫合糸セグメントが、前記縫合糸セグメントの第1の端部と前記縫合糸セグメントの第2の端部との間に、前記第1の端部の動きの方向に組織を通る前記縫合糸の動きを容認し、かつ前記第1の端部の前記動きの方向と反対の方向に組織を通る前記縫合糸セグメントの動きを防止するように複数のリテーナを有し、それぞれの縫合糸セグメントの第2の端部が前記把持係合要素に付着された、縫合糸セグメントと、を備える、取り外し可能な多方向性留置システム。
(20) 前記把持係合要素がループを備える、実施態様19に記載のシステム。
【0136】
(21) 前記ループが不連続的である、実施態様20に記載のシステム。
(22) 前記把持係合要素がタブを備える、実施態様19に記載のシステム。
(23) 前記把持係合要素が、縫合糸セグメントを備え、前記縫合糸セグメントが、そのそれぞれの端部に、前記縫合糸セグメントが組織内に入るのを防止するための止め具を有する、実施態様19に記載のシステム。
(24) 前記ループが円状である、実施態様20に記載のシステム。
(25) 前記ループが楕円状である、実施態様20に記載のシステム。
【0137】
(26) 前記ループが多角形状である、実施態様20に記載のシステム。
(27) 緊急の創傷閉鎖の方法であって、
a.双方向性留置縫合糸を提供することであって、前記縫合糸が、複数のリテーナであって、前記縫合糸の第1の端部の動きの方向に組織を通る前記縫合糸の動きを容認し、かつ前記第1の端部の前記動きの方向と反対の方向に組織を通る前記縫合糸の動きを防止するための、前記縫合糸の前記第1の端部と前記縫合糸上の第1の軸方向位置との間の前記縫合糸の第1の部分の上のリテーナ、並びに前記縫合糸の第2の端部の動きの方向に組織を通る前記縫合糸の動きを容認し、かつ前記第2の端部の前記動きの方向と反対の方向に組織を通る前記縫合糸の動きを防止するための、前記縫合糸の前記第2の端部と前記縫合糸上の第2の軸方向位置との間の前記縫合糸の第2の部分の上のリテーナ、を有する、双方向性留置縫合糸を提供することと、
b.前記縫合糸の前記第1の端部を、前記創傷の第1の端部と第2の端部との間の第1の挿入点で組織内に挿入することと、
c.前記縫合糸の前記第1の端部を、第1の展開経路に沿って、前記創傷の交互の側の組織を通して、第1の出口点まで、前記創傷の前記第1の端部に向かって引くことと、
d.前記縫合糸の前記第2の端部を、前記創傷の前記第1の端部と前記第2の端部との間の第2の挿入点で、前記縫合糸の前記第1の挿入点と前記第2の挿入点との間の部分を残して、組織内に挿入することと、
e.前記縫合糸の前記第2の端部を、第2の展開経路に沿って、前記創傷の交互の側の組織を通して、第2の出口点まで、前記創傷の前記第2の端部に向かって引くことと、
f.恒久的な治療の前に、前記創傷からの前記縫合糸の除去のために、前記第1の挿入点と前記第2の挿入点との間の前記部分に沿って、前記縫合糸を切断することと、を含む、方法。
(28) 前記縫合糸の前記第2の端部を組織内に挿入する工程が、前記縫合糸の前記第1の端部を前記創傷の前記第1の端部に向かって引く工程の前に遂行される、実施態様27に記載の方法。
(29) 緊急の創傷閉鎖の方法であって、
a.一方向性留置縫合糸を提供することであって、前記縫合糸が、前記縫合糸の第1の端部と第2の端部との間における、前記第1の端部の動きの方向に組織を通る前記縫合糸の動きを容認し、かつ前記第1の端部の前記動きの方向と反対の方向に組織を通る前記縫合糸の動きを防止する複数のリテーナ、及び前記縫合糸の前記第2の端部における把持係合要素を有する、縫合糸を提供することと、
b.前記把持係合要素を少なくとも部分的に前記創傷の外側に位置付けることと、
c.前記縫合糸の前記第1の端部を前記創傷の挿入点において組織内に挿入することと、
d.前記縫合糸の前記第1の端部を展開経路に沿って、前記創傷の交互の側の組織を通して、前記組織の外側の出口点まで、前記創傷の端部に向かって引くことと、を含む、方法。
(30) 前記一方向性縫合糸が、前記把持係合要素の近位にある脆い部分を更に備える、実施態様29に記載の方法。
【0138】
(31) 緊急の創傷閉鎖の方法であって、
a.多方向性留置システムを提供することであって、前記システムが、把持係合要素、及び少なくとも2つの縫合糸セグメントであって、それぞれの縫合糸セグメントが、前記縫合糸セグメントの第1の端部と前記縫合糸セグメントの第2の端部との間に、前記第1の端部の動きの方向に組織を通る前記縫合糸の動きを容認し、かつ前記第1の端部の前記動きの方向と反対の方向に組織を通る前記縫合糸セグメントの動きを防止するように複数のリテーナを有し、それぞれの縫合糸セグメントの第2の端部が前記把持係合要素に付着された、縫合糸セグメントを有する、システムを提供することと、
b.前記把持係合要素を少なくとも部分的に前記創傷の外側に位置付けることと、
c.第1の縫合糸セグメントの前記第1の端部を、前記創傷の第1の挿入点において組織内に挿入することと、
d.前記第1の縫合糸セグメントの前記第1の端部を、第1の展開経路に沿って、前記創傷の交互の側の組織を通して、第1の出口点まで、前記創傷の第1の端部に向かって引くことと、
e.第2の縫合糸セグメントの前記第1の端部を、前記第1の挿入点の近位にある第2の挿入点において、組織内に挿入することと、
f.前記第2の縫合糸セグメントの前記第1の端部を、第2の展開経路に沿って、前記創傷の交互の側の組織を通して、第2の出口点まで、前記創傷の第2の端部に向かって引くことと、を含む、方法。
(32) 前記留置システムが、少なくとも第3の縫合糸セグメントを備え、前記第3の縫合糸セグメントが、前記縫合糸セグメントの第1の端部と前記縫合糸セグメントの第2の端部との間に、前記第1の端部の動きの方向に組織を通る前記縫合糸の動きを容認し、かつ前記第1の端部の前記動きの方向と反対の方向に組織を通る前記縫合糸セグメントの動きを防止するように複数のリテーナを有し、前記第3の縫合糸セグメントの前記第2の端部が前記把持係合要素に付着される、実施態様31に記載の方法。
(33) 前記第3の縫合糸セグメントの前記第1の端部を、前記第1の挿入点及び前記第2の挿入点のうちの少なくとも1つの近位にある第3の挿入点において、組織内に挿入することと、前記第3の縫合糸セグメントの前記第1の端部を、第3の展開経路に沿って、前記創傷の交互の側の組織を通して、第3の出口点まで、前記創傷の第3の端部に向かって引くことと、を更に含む、実施態様32に記載の方法。
(34) 前記把持係合要素が前記縫合糸セグメント間の接続を備える、実施態様31に記載の方法。
(35) 少なくとも3つの組織の頂点を有する星状の創傷緊急閉鎖を達成する方法であって、
a.多方向性留置システムを提供することであって、前記システムが、把持係合要素、及び少なくとも3つの縫合糸セグメントであって、それぞれの縫合糸セグメントが、前記縫合糸セグメントの第1の端部と前記縫合糸セグメントの第2の端部との間に、前記第1の端部の動きの方向に組織を通る前記縫合糸の動きを容認し、かつ前記第1の端部の前記動きの方向と反対の方向に組織を通る前記縫合糸セグメントの動きを防止するように複数のリテーナを有し、それぞれの縫合糸セグメントの第2の端部が前記把持係合要素に付着された、縫合糸セグメントを有する、システムを提供することと、
b.前記組織の頂点の近位に前記把持係合要素を位置付けることと、
c.第1の縫合糸セグメントの前記第1の端部を第1の組織の頂点内に挿入し、かつ前記第1の縫合糸セグメントの前記第1の端部を前記組織の外に引くことと、
d.第2の縫合糸セグメントの前記第1の端部を第2の組織の頂点内に挿入し、かつ前記第2の縫合糸セグメントの前記第1の端部を前記組織の外に引くことと、
e.第3の縫合糸セグメントの前記第1の端部を第3の組織の頂点において組織内に挿入し、かつ前記第3の縫合糸セグメントの前記第1の端部を前記組織の外に引くことと、を含む、方法。
【0139】
(36) 緊急留置縫合糸を組織から除去する方法であって、前記縫合糸は少なくとも1つの留置縫合糸セグメントを有し、前記縫合糸セグメントは、把持係合要素に接続された第1の端部、及び第2の端部を有し、前記方法は、
a.前記把持係合要素を前記縫合糸セグメントから切断することと、
b.前記縫合糸セグメントを、その第2の端部によって前記組織の外へ引くことと、を含む、方法。
図1
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