特許第6013353号(P6013353)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許60133532,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013353
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/25 20060101AFI20161011BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20161011BHJP
   C07C 17/395 20060101ALI20161011BHJP
   C07C 17/383 20060101ALI20161011BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20161011BHJP
【FI】
   C07C17/25
   C07C21/18
   C07C17/395
   C07C17/383
   !C07B61/00 300
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-538962(P2013-538962)
(86)(22)【出願日】2011年11月14日
(65)【公表番号】特表2014-503494(P2014-503494A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】US2011060519
(87)【国際公開番号】WO2012067980
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年11月7日
(31)【優先権主張番号】61/414,074
(32)【優先日】2010年11月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/281,063
(32)【優先日】2011年10月25日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】マーケル,ダニエル・シー
(72)【発明者】
【氏名】ポクロフスキー,コンスタンティン・エイ
(72)【発明者】
【氏名】トゥン,シュー・エス
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ハイユー
【審査官】 吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−047573(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0187088(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/071136(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/25
C07C 17/383
C07C 17/395
C07C 21/18
C07C 19/08
C07C 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
99.5重量パーセントを超える純度を有し、他の飽和フルオロカーボンを含有する2,3,3,3−テトラフルオロプロペン生成物の製造法、ここで、他の飽和フルオロカーボンの合計が500ppm未満である、であって、
2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン及び少なくとも一つの不純物を含む蒸留分離不能な供給ストリームを準備し、ここで、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンと少なくとも一つの不純物とは互いに蒸留分離不能であり、不純物の合計が500ppmより多い;
供給ストリームを少なくとも一つの不純物が全重量の1%以下に除去されるまで処理し;そして
供給ストリームを脱ハロゲン化水素して2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する
ことを含み、
前記処理工程が、不飽和不純物を含む供給ストリームを光塩素化反応に付することを含み、不飽和不純物が高沸点生成物に転化される、方法。
【請求項2】
99.5重量パーセントを超える純度を有し、他の飽和フルオロカーボンを含有する2,3,3,3−テトラフルオロプロペン生成物の製造法、ここで、他の飽和フルオロカーボンの合計が500ppm未満である、であって、
2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン及び少なくとも一つの不純物を含む蒸留分離不能な供給ストリームを準備し、ここで、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンと少なくとも一つの不純物とは互いに蒸留分離不能であり、不純物の合計が500ppmより多い;
供給ストリームを少なくとも一つの不純物が全重量の1%以下に除去されるまで処理し;そして
供給ストリームを脱ハロゲン化水素して2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する
ことを含み、
前記処理工程が、不飽和不純物を含む供給ストリームを水素化反応に付することを含み、不飽和不純物が蒸留によってHCFC−244bbから分離される低及び高沸点生成物に転化される、方法。
【請求項3】
不純物が、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)、1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HFC−254eb)、1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HFC−254fb)、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(HCFO−1232xf)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)、クロロテトラフルオロプロペン(HCFO−1224異性体)、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(シス及びトランス異性体))、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(シス及びトランス異性体))、及び3,3,3−トリフルオロプロピンならびにそれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
不純物が、供給ストリーム中に下記の量:すなわち、0〜400ppmの3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)、0〜200ppmの2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(HCFO−1232xf)、0〜200ppmの2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、0〜200ppmの1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)、0〜200ppmの1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)、0〜200ppmのクロロテトラフルオロプロペン(HCFO−1224異性体)、0〜200ppmの1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(シス及びトランス異性体))、0〜200ppmの1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(シス及びトランス異性体))、0〜200ppmの1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)、0〜200ppmの1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HFC−254eb)、0〜200ppmの1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HFC−254fb)、及び0〜200ppmの3,3,3−トリフルオロプロピンで供給される、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本願は、2010年11月16日出願の米国仮特許出願第61/414,074号に関連し、それに基づく優先権の利益を主張する。前記出願の内容は引用によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本願はまた、2008年7月31日出願の米国仮特許出願第61/085,141号に基づく優先権の利益を主張する2009年7月28日出願の米国特許出願第12/510,740号の一部継続出願である。これらの各出願の内容は引用によって本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の分野
[0003]本発明は、フッ素化有機化合物の新規製造法、さらに詳しくは、フッ素化オレフィンの製造法、なおさらに詳しくは2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)の製造法に関する。
【背景技術】
【0004】
[0004]テトラフルオロプロペン(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)を含む)などのヒドロフルオロオレフィン(HFO)は、今では効果的な冷媒、消火剤、熱媒体、噴射剤、発泡剤(foaming agent、blowing agent)、気体誘電体、滅菌剤担体、重合媒体、微粒子除去液(particulate removal fluid)、分散媒、バフ研磨剤、置換乾燥剤(displacement drying agent)及び動力サイクル作動流体(power cycle working fluid)であることが知られている。地球のオゾン層を損傷する恐れのあるクロロフルオロカーボン(CFC)やヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)と違って、HFOは塩素を含有しないので、オゾン層に脅威を及ぼさない。HFO−1234yfも低毒性の低地球温暖化化合物であることが示されているので、カーエアコンの冷媒に対するますます厳密な要件に応えることができる。従って、HFO−1234yfを含有する組成物は、上記用途の多くに使用するために開発中の材料の一つである。
【0005】
[0005]HFO−1234yfの製造に使用される一つの公知前駆体は2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)である。実際、HCFC−244bbの脱塩化水素によるHFO−1234yfの製造で知られている多数の気相反応がある。例えば、米国特許公開第U.S.2007/0197842号は、炭素系及び/又は金属系の触媒(例えばニッケル又はパラジウム系触媒)の存在下での気相HCFC−244bb脱塩化水素によるHFO−1234yfの合成を教示している。米国特許公開第U.S.2009/0043136号も、(i)一つ又は複数の金属ハロゲン化物、(ii)一つ又は複数のハロゲン化金属酸化物、(iii)一つ又は複数のゼロ価金属/金属合金、又は(iv)前記の二つ以上の組合せ、からなる群から選ばれる触媒の存在下での気相HCFC−244bb脱塩化水素によるHFO−1234yfの製造を教示している。
【0006】
[0006]前述の反応は比較的高い変換レベルを有する方法を開示しているが、そのような反応にも欠点がないわけではない。本明細書中に示したように、HCFC−244bbの公知製造法は約90%の収率しか生じないことが多い。つまり、残りの生成物ストリームには望まざる副産物及び原料が含まれる。これらの副産物及び原料は、驚くべきことに、前述の用途の一つ又は複数との関連で使用される場合、高純度HFO−1234yfの製造能力に悪影響を及ぼすことが本明細書において示された。その結果、生成物収率は低減し、関連コストも増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許公開第U.S.2007/0197842号明細書
【特許文献2】米国特許公開第U.S.2009/0043136号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0007]前述の事由に基づき、HCFC−244bbから高純度HFO−1234yfを製造するための改良された方法が引き続き求められている。本発明及び本明細書中に提示されている態様は、少なくともこのニーズに応えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0008]本発明は、一部は、HCFC−244bbを脱塩化水素して2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)を形成する最中に、反応器供給材料、特にHCFC−244bb供給原料中に一定の不純物がたとえ少量でも存在すると、(a)最終HFO−1234yf生成物を精製する能力;(b)脱塩化水素触媒の安定性;及び/又は(c)得られる反応生成物ストリームに重大な悪影響を及ぼすという驚くべき発見に関する。本発明は、脱ハロゲン化水素の前にHCFC−244bb供給材料を実質的に精製することによって、高純度HFO−1234yfの製造を改良する方法を提供する。
【0010】
[0009]一側面において、本発明は、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、好ましくは高純度2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを、(a)蒸留分離不能な2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンと約500ppmより多い量の少なくとも一つの不純物の供給ストリームを準備し;(b)供給ストリームを少なくとも一つの不純物が実質的に除去されるまで処理し;そして(c)2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン含有供給ストリームを脱ハロゲン化水素して2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する;ことによって製造するための方法に関する。一定の態様において、処理された供給ストリームは、全重量の5%未満の不純物、全重量の3%未満の不純物、全重量の1%未満の不純物、又は全重量の0.5%未満の不純物しか含有しない。
【0011】
[0010]反応物ストリームの不純物は、高純度の1234yfを高収率で製造する能力を阻害する、脱塩化水素触媒の安定性を阻害する、又はさもなければ得られる生成物ストリームに悪影響を及ぼす(有毒不純物を含有する)いずれか一つ又は複数の化合物を含みうる。一態様において、そのような不純物は、式I:
【0012】
【化1】
【0013】
の一つ又は複数の化合物を含む。式中、第一及び第二の炭素原子間の結合は、単結合、二重結合、又は三重結合のいずれかであることを示し;aは1、2、又は3であり、bは0、1、又は2であり、そして、各個別のX、Y、及びZは独立にCl、I、Br、F、又はHである。ただし式Iは2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン又は2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含まない。
【0014】
[0011]式Iの一定の態様において、不純物は、ハロゲン化プロパン、ハロゲン化プロペン、又はハロゲン化プロピンの群から選ばれる一つ又は複数の化合物を含みうる。そのような不純物は、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)、1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HFC−254eb)、1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HFC−254fb)、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(HCFO−1232xf)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)、クロロテトラフルオロプロペン(HCFO−1224異性体)、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(シス及びトランス異性体))、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(シス及びトランス異性体))、及び3,3,3−トリフルオロプロピンの一つ又は組合せなどであるが、これらに限定されない。
【0015】
[0012]改良された生成物純度及び触媒安定性は、そのような不純物が下記の量で含有されている場合に得られる。0〜約400ppmの3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)、0〜約200ppmの2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(HCFO−1232xf)、0〜約200ppmの2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、0〜約200ppmの1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)、0〜約200ppmの1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)、0〜約200ppmのクロロテトラフルオロプロペン(HCFO−1224異性体)、0〜約200ppmの1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(シス及びトランス異性体))、0〜約200ppmの1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(シス及びトランス異性体))、0〜約200ppmの1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)、0〜約200ppmの1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HFC−254eb)、0〜約200ppmの1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HFC−254fb)、及び0〜約200ppmの3,3,3−トリフルオロプロピン。しかしながら、前述の量は、本発明に対する制限ではない。
【0016】
[0013]2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン含有供給ストリームが実質的に不純物を含まないことを確保する方法は、供給ストリームを、光塩素化反応、水素化反応、蒸留又は液液抽出の一つ又は組合せに付することを含むが、これらに限定されない。
【0017】
[0014]従って、及び一定の態様において、本発明は、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン未加工供給原料から不純物を、(a)任意に、前記2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン未加工供給原料を光塩素化法に付し;そして(b)2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン供給材料を精製して実質的に純粋な2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン供給材料を製造することによって除去するための方法に関する。光塩素化法は、紫外線を含みうる電磁放射線の存在下で、不純物を塩素(Cl)と反応させることを含みうるが、これに限定されない。多数の反応条件が使用できるが、一態様において、反応は、気相又は液相中、約0℃〜約50℃の温度で進行する。
【0018】
[0015]前記未加工供給原料を精製する工程は、未加工供給原料か又は光塩素化された供給原料に含有される不純物から2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを抽出するための、当該技術分野で公知の任意の精製又は分離技術を含みうる。一態様において、精製法は蒸留を含む。この目的を達成するために、未加工供給原料は、一つ又は複数の蒸留カラム又は充填塔を使用して蒸留される。蒸留は、大気圧、過圧(super-atmospheric pressure)又は真空下で起こりうるが、一定の態様において、約300psig未満の圧力で実施される。また、約−10℃〜約90℃の温度で実施されうる。繰り返すが、本発明はそのように限定されず、単独で又は他の抽出法と組み合わせて使用できる液液抽出のようなその他の精製法を含むこともできる。
【0019】
[0016]更なる態様において、本発明は、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン供給材料から不純物を、(a)前記2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン供給材料を水素化法に付し;そして(b)2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン供給材料を精製して実質的に純粋な2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン供給材料を製造することによって除去するための方法に関する。水素化法は、一つ又は複数の触媒の存在下で、不純物を水素(H)と反応させることを含みうるが、これに限定されない。そのような触媒は、不活性担体上に担持されていないか又は担持されているPt、Pd、及びNiの一つ又は組合せを含みうる。後者の状況において、担体基材は、下記の一つ又は複数を含みうる。すなわち、活性炭、アルミナ、様々な金属酸化物、ゼオライト、アルミノケイ酸塩、及びモレキュラーシーブ。多数の反応条件が使用できるが、一態様において、水素化反応は、気相又は液相中、約50℃〜約400℃の温度で実施される。
【0020】
[0017]前記未加工供給原料を精製する工程は、未加工供給原料か又は水素化された供給原料に含有される不純物から2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを抽出するための、当該技術分野で公知の任意の精製又は分離技術を含みうる。一態様において、精製法は蒸留を含む。この目的を達成するために、未加工供給原料は、一つ又は複数の蒸留カラム又は充填塔を使用して蒸留される。蒸留は、大気圧、過圧又は真空下で起こりうるが、一定の態様において、約300psig未満の圧力で実施される。また、約−10℃〜約90℃の温度で実施されうる。繰り返すが、本発明はそのように限定されず、単独で又は他の抽出法と組み合わせて使用できる液液抽出のようなその他の精製法を含むこともできる。
【0021】
[0018]更なる態様において、本発明は、高純度2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを、(a)2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンと少なくとも一つの不純物とを含有する供給ストリームを準備し;(b)未加工供給原料を光塩素化法及び水素化法のいずれか又は両方に付して改質供給ストリームを形成し;(c)2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを未加工供給反応ストリーム又は改質供給ストリームから精製して、実質的に純粋な2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン供給原料を製造し;そして(d)前記実質的に純粋な2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン供給原料を脱ハロゲン化水素することによって製造するための方法に関する。前記工程のそれぞれに関連する非制限的方法を本明細書において提供する。
【0022】
[0019]本発明に対する追加の態様及び利点は、本明細書中に提供されている開示内容を基にすれば、当業者には容易に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】[0020] 図1は、89.7%244bb/7.3%1233xf/3.0%その他の供給材料を用いたMgF触媒上での244bb変換率を示す(450℃、1atm、6gの有機物/h)。
図2】[0021]図2は、10wt%CsCl/MgF2触媒の安定性を示す。
図3】[0022]図3は、3/4”(約1.9cm)インコネル625X0.035”(約0.09cm)反応器での244bb脱塩化水素中の、操業時間の関数としての244bbの変換率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[0023]本明細書中に示されているとおり、本発明は、HCFC−244bbを脱塩化水素して2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)を形成する最中に、反応器供給材料、特にHCFC−244bb供給原料中に一定の不純物がたとえ少量でも存在すると、(a)最終HFO−1234yf生成物を精製する能力;(b)脱塩化水素触媒の安定性;及び/又は(c)得られる反応生成物ストリームに重大な悪影響を及ぼすという驚くべき発見に関する。従って、本発明は、少なくとも一部は、HCFC−244bb反応器供給材料を実質的に精製することによって、高純度HFO−1234yfの製造を改良する方法に関する。
【0025】
[0024]本明細書中で使用されている用語“不純物(一つ又は複数)”又は“不飽和不純物”は、脱塩化水素触媒の安定性を妨害するか又はさもなくばHCFC−244bbからHFO−1234yfへの変換率及び/又は選択率を低減するHCFC−244bbストリーム内の任意の化合物、特にハロカーボン系化合物を含みうる。特別の態様において、そのような不純物は、以下の式I:
【0026】
【化2】
【0027】
によって表すことができる。式中、第一及び第二の炭素原子間の結合は、単結合、二重結合、又は三重結合のいずれかであることを示し;それぞれの炭素原子の価数要件を満足するために必要な原子の数に応じて、aは1、2、又は3のいずれかであり、bは0、1、又は2のいずれかであり、そして、各個別のX、Y、及びZは独立にCl、I、Br、F、又はHである。しかしながら、前述の式は、HCFC−244bbもHFO−1234yfも含まないという条件に従う。
【0028】
[0025]別の態様において、本発明及び式Iの不純物は、ハロゲン化プロパン、ハロゲン化プロペン、又はハロゲン化プロピン及びそれらの組合せなどでありうるが、これらに限定されない。例示的なハロゲン化プロパン不純物は、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)、1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HFC−254eb)、1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HFC−254fb)、及びそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。例示的なハロゲン化プロペンは、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(HCFO−1232xf)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)、クロロテトラフルオロプロペン(HCFO−1224異性体)、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(シス及びトランス異性体))、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(シス及びトランス異性体))、及びそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。例示的なハロゲン化プロピンは、3,3,3−トリフルオロプロピンなどであるが、これに限定されない。
【0029】
[0026]本明細書中に示されているとおり、本発明の一側面は、実質的に純粋なHCFC−244bb反応ストリーム又は不純物を実質的に含まないHCFC−244bbを形成するために、そのような不純物を除去することである。本明細書中で使用されている用語“実質的に純粋な”又は“実質的に含まれていない”とは、高純度のHFO−1234yfを製造する能力を改良するため、収率を改良するため、及び関連コストを低減するために、一定量の一つ又は複数の不純物がそれ(ストリーム)から除去されたHCFC−244bb反応ストリームのことを言う。一側面において、不純物は、244bbから1234yfへの変換を実際多少妨げるという点において“実質的に含まれていない”。一態様において、最終的なHCFC−244bbストリームは、全重量の約5%以下の不純物を含有する。更なる態様において、それは全重量の3%以下の不純物を有するHCFC−244bb反応物ストリームのことを言う。なお更なる態様において、それは全重量の1%以下の不純物を有するHCFC−244bb反応物ストリームのことを言う。なお更なる態様において、それは全重量の0.5%以下の不純物を有するHCFC−244bb反応物ストリームのことを言う。
【0030】
[0027]なお更なる態様において、最終1234yf生成物純度及び触媒安定性は、最終反応物供給ストリーム中のそのような不純物が下記の量に低減された場合に得られる。0〜約400ppmの3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)、0〜約200ppmの2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(HCFO−1232xf)、0〜約200ppmの2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、0〜約200ppmの1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)、0〜約200ppmの1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)、0〜約200ppmのクロロテトラフルオロプロペン(HCFO−1224異性体)、0〜約200ppmの1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(シス及びトランス異性体))、0〜約200ppmの1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(シス及びトランス異性体))、0〜約200ppmの1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)、0〜約200ppmの1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HFC−254eb)、0〜約200ppmの1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HFC−254fb)、及び0〜約200ppmの3,3,3−トリフルオロプロピン。
【0031】
[0028]HCFC−244bb反応物供給材料からの不純物の除去法は、当該技術分野で公知の方法の一つ又は組合せを含みうる。一態様において、方法は下記工程を含む。すなわち、(a)HCFC−244bbと一つ又は複数の不純物を含む未加工供給原料を準備し;(b)前記未加工供給原料を光塩素化法又は水素化法に付して、前記未加工供給原料と比べて低減された量の前記不純物の少なくとも一つ、好ましくは前記未加工供給原料と比べて低減された量の不飽和ハロカーボン不純物を含む改質供給原料を製造し;(c)前記未加工供給原料又は前記改質供給原料を抽出又は分離技術によって精製して実質的に純粋な供給原料を製造し(ここで、前記高純度供給原料は、前記未加工供給原料又は前記改質供給原料と比べて相対的に少ない不純物を含む);(d)前記実質的に純粋な供給原料を、前記HCFC−244bbの少なくとも一部を脱塩化水素するのに有効な条件に付して、不純物が実質的に除去されていない供給材料を用いた反応生成物と比べて相対的に多くのHFO−1234yfを含む反応生成物を製造する。この結果、実質的に純粋な反応物供給材料は、多量のHFO−1234yf及びあったとしても少量の不純物を含む最終生成物を製造するのに有効である。
【0032】
[0029]HCFC−244bbを製造するための初期工程は、当該技術分野で公知の一つ又は複数の方法を用いて達成できる。一つのそのような非限定的方法は、米国特許出願第12/338,466号(その内容は引用によって本明細書に援用する)に開示されているような、HCFO−1233xfのフッ化水素化である。この目的のためには触媒を使用すると、HCFO−1233xfの二重結合へのHF付加によるHCFO−1233xfからHCFC−244bbへのワンパス変換(single-pass conversion)が増強される。この工程を実施するための触媒は、SbCl、SbCl、SbF、TiCl、SnCl、Cr、及びフッ素化Crを含みうるが、これらに限定されない。フッ化水素化法は気相でも液相でも実施できる。
【0033】
[0030]気相フッ化水素化では、HF(フッ化水素ガス)を触媒床に連続供給する。短時間のHF供給ストリームのみの後、HCFO−1233xfを約1:1〜約1:30、好ましくは約1:2〜約1:15(HCFO−1233xf/HFモル比)の比率で触媒床に連続供給する。HFとHCFO−1233xf間の反応は、約30℃〜約400℃(好ましくは約100℃〜約300℃)の温度及び約5psia〜約200psia(ポンド/平方インチ絶対圧力)(好ましくは約30psia〜約175psia)の圧力で実施される。触媒は活性炭のような基材上に担持されていても又は非担持もしくは自立式(free-standing)であってもよい。活性炭のほかに有用な触媒担体は、アルミナ、フッ素化アルミナ、フッ化アルミニウム、アルカリ土類金属酸化物、フッ素化アルカリ土類金属、酸化亜鉛、フッ化亜鉛、酸化スズ、及びフッ化スズを含む。触媒は、触媒の状態に応じて使用前に無水フッ化水素HF(フッ化水素ガス)で活性化される必要があるかもしれない(又はないかもしれない)。
【0034】
[0031]液相フッ化水素化では、触媒は液体形で反応器に装入される。任意にHFで活性化されてもよい。次に、活性化された触媒を所望の反応温度、すなわち約30℃〜約200℃(好ましくは約50℃〜約120℃)に加熱する。圧力は約15psia〜約200psia(好ましくは約50psia〜約175psia)に維持される。短時間のHF供給のみの後、HCFO−1233xf供給ストリームを約1:1〜約1:30、好ましくは約1:2〜約1:15(HCFO−1233xf/HFモル比)の比率で触媒に連続供給する。必要であれば、触媒は、Cl又は類似の酸化剤の連続又はバッチ式添加によって活性化状態を維持することができる。
【0035】
[0032]フッ化水素化反応は、好ましくは、約70%、又は好ましくは約90%以上の変換率を達成するために実施される。変換率は、消費された反応物(HCFO−1233xf)のモル数を、反応器に供給された反応物(HCFO−1233xf)のモル数で割って100を乗じることによって計算される。達成されるHCFC−244bbに対する選択率は好ましくは約60%以上、最も好ましくは約80%以上である。選択率は、形成された生成物(HCFC−244bb)のモル数を消費された反応物のモル数で割ることによって計算される。
【0036】
[0033]フッ化水素化は耐食性反応容器で実施できる。耐食材料の例は、ハステロイ(Hastelloy)、ニッケル、インコロイ(Incoloy)、インコネル(Inconel)、モネル(Monel)及びフルオロポリマーライニング(内張り)である。容器は、固定触媒床を有することも、又は液体触媒を含有することもできる。所望であれば、操作中に窒素又はアルゴンのような不活性ガスを反応器内で使用してもよい。
【0037】
[0034]しかしながら、前述のフッ化水素化工程は必ずしも本発明に対する制限ではなく、当該技術分野で別に知られている派生的な又は代替の方法論も含みうる。
[0035]HCFC−244bbが製造されたら、脱ハロゲン化水素反応器にそれを供給する前に、本明細書中に提供されている方法の一つ又は組合せを用いて反応不純物を低減するための処理をする。一定の態様において、及びHCFC−244bb脱塩化水素反応器への投入前に、HCFC−244bb反応物供給材料の不飽和不純物は、まず光塩素化反応によって、増大した塩素含有量を有する対応する飽和ハロゲン化炭化水素に変換される。さらに詳しくは、光塩素化反応において、塩素(Cl)は紫外線源のような電磁波源の存在下で不飽和不純物と反応する。
【0038】
[0036]光塩素化法の一態様において、適切な光源から指向された電磁放射線、例えばUV光は、反応器壁を通ってその中に含有されている不純物と相互作用する。光源は、当該技術分野で公知のいくつかのアーク灯又は白熱電球のいずれか一つでありうる。石英又はパイレックスガラスのようなホウケイ酸ガラスが、反応器壁の部分(光線はここを通って反応器に入る)を構築するための透明材料として使用できる。光塩素化は気相で連続的に実施できる。その場合、出発材料は気化され、塩素蒸気と反応ゾーンで接触させられる。広範囲の塩素化反応条件が適切と考えられるが、一定の好適な態様において、反応温度は約0℃〜約50℃である。あるいは又はさらに、塩素化は、出発材料を含有している反応器に塩素を供給することによって液相で実施することもできる。その場合、反応温度は出発材料及び生成物の沸点未満に制御するのが一般的に好適である。
【0039】
[0037]代替の又は追加的な態様において、不飽和不純物は、HCFC−244bb脱塩化水素反応器への投入前に、好ましくは水素化によって、増大した水素含有量を有する対応する飽和ハロゲン化炭化水素に変換される。その場合、水素(H)が触媒の存在下で不飽和不純物と反応する。水素化法の一態様において、適切な触媒が水素化反応を促進するために使用される。水素化触媒の非制限的例は、担持されていない又は不活性担体上に担持されたPt、Pd、Ni又はそれらの混合物である。触媒担体は、活性炭、アルミナ、様々な金属酸化物、ゼオライト、アルミノケイ酸塩又はモレキュラーシーブを含みうるが、これらに限定されない。
【0040】
[0038]水素化反応器は、当該技術分野で公知の任意の構築材料、例えばスチール、ステンレススチール、又は金属合金などで製造できる。反応器は温度及び圧力制御を備えているのが好適である。水素化反応は気相で連続的に実施できる。その場合、出発材料は気化され、水素ガスと反応ゾーンで接触させられる。広範囲の水素化反応条件が適切と考えられるが、一定の好適な態様において、反応温度は約50℃〜約400℃である。あるいは又はさらに、水素化は、出発材料を含有している反応器に水素を供給することによって液相で実施することもできる。その場合、反応温度は出発材料及び生成物の沸点未満に制御するのが一般的に好適である。
【0041】
[0039]次に、供給ストリームは、光塩素化及び/又は水素化に付されたか否かに関わらず、化合物分離技術(例えば蒸留及び/又は抽出などであるが、これらに限定されない)の一つ又は組合せで処理される。本発明に従って広範囲の分離条件が使用できると考えられるが、一定の態様において、HCFC−244bb原料は、大気圧、過圧又は真空で提供されうる一つ又は複数の標準的な蒸留カラム及び/又は充填塔に通すことによって蒸留される。好ましくは、限定するのではないが、圧力は約300psig未満、さらに好ましくは約150psig未満、最も好ましくは約100psig未満である。
【0042】
[0040]HCFC−244bbは、蒸留カラムを約−10℃〜約90℃、好ましくは約0℃〜約80℃で操作することによって蒸留物として回収できる。それに限定するわけではないが、存在することがわかっているHCFO−1233xfとHCFC−244bbの共沸混合物又は共沸混合物様組成物の存在のため、複数の蒸留カラムが好適であろう。
【0043】
[0041]代替の又は追加的な態様において、HCFC−244bbストリームは当該技術分野で公知の抽出技術を用いて精製できる。一つのそのような抽出技術は液液抽出で、HCFC−244bbは一つ又は複数の溶媒中でのその公知溶解度に基づいて抽出される。
【0044】
[0042]前述の抽出又は分離技術の一つ又は組合せを使用すれば、HCFC−244bb反応物供給材料は実質的に純粋であるか又は本明細書において定義された不純物を実質的に含まない。一定の非制限的態様において、得られたストリームは不純物が5000ppm未満の、少なくとも約99.5%純粋なHCFC−244bbであるので、脱ハロゲン化水素反応器に移すための準備が整っている。
【0045】
[0043]脱塩化水素工程は、HCFC−244bbからHFO−1234yfへの変換のための一つ又は複数の公知プロセス技術を用いて実施できる。この目的のために、HCFC−244bbの接触変換が、HCFC−244bbを脱塩化水素してHFO−1234yfを製造するのに有効な任意の条件下で実施される。好ましくは、限定するのではないが、HCFC−244bbの脱塩化水素は気相で、例えば気相での固定床反応器で実施される。脱ハロゲン化水素反応は、任意の適切な反応容器又は反応器中で実施できるが、好ましくは、限定するのではないが、塩化水素の腐食作用に対して耐性のある材料で構築された反応器で実施される(そのような材料が脱ハロゲン化水素条件下で形成される限り)。そのような反応器の例示的材料は、これらに限定されないが、ニッケル及びその合金、例えばハステロイ、インコネル、インコロイ、及びモネル又はフルオロポリマーで内張りされた容器を含み、脱ハロゲン化水素触媒を充填した単一又は複数の管が使用されうる。
【0046】
[0044]脱ハロゲン化水素反応のための触媒は、金属ハロゲン化物、ハロゲン化金属酸化物、中性(又はゼロ酸化状態)金属又は金属合金、又はバルク形態もしくは担持された形態の活性炭を含みうる。金属ハロゲン化物又は金属酸化物触媒を使用する場合、好ましくは一、二、及び三価の金属ハロゲン化物、酸化物及びそれらの混合物/組合せ、さらに好ましくは、一及び二価の金属ハロゲン化物及びそれらの混合物/組合せである。構成金属は、Cr3+、Fe3+、Mg2+、Ca2+、Ni2+、Zn2+、Pd2+、Li、Na、K、及びCsなどであるが、これらに限定されない。構成ハロゲンは、F、Cl、Br、及びIなどであるが、これらに限定されない。有用な一又は二価の金属ハロゲン化物の例はLiF、NaF、KF、CsF、MgF、CaF、LiCl、NaCl、KCl、及びCsClなどであるが、これらに限定されない。ハロゲン化処理は、先行技術で公知の処理のいずれか、特に、HF、F、HCl、Cl、HBr、Br、HI、及びIをハロゲン化源として使用する処理を含みうる。
【0047】
[0045]中性、すなわちゼロ価の場合、金属、金属合金及びそれらの混合物が使用される。有用な金属は、Pd、Pt、Rh、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Cr、Mn、及び合金又は混合物として前述の組合せなどであるが、これらに限定されない。触媒は担持されていても担持されていなくてもよい。有用な金属合金の例は、SS316、モネル400、インコネル825、インコネル600、及びインコネル625などであるが、これらに限定されない。
【0048】
[0046]HCFC−244bbは、反応器に、純粋な形態、部分精製された形態、又は前工程からの反応器流出液の一部として、のいずれかで導入される。HCFC−244bbは、任意に、窒素、アルゴンなどの不活性ガス希釈剤と共に供給されてもよい。本発明の限定的ではないが好適な態様において、HCFC−244bbは、反応器への投入前に予蒸発又は予熱される。あるいは、HCFC−244bbは反応器内部で気化される。
【0049】
[0047]有用な反応温度は約100℃〜約700℃の範囲でありうる。好適な温度は約150℃〜約600℃の範囲であり、さらに好適な温度は約200℃〜約550℃の範囲でありうる。反応は、大気圧、過圧又は真空下で実施されうる。真空圧は約5torr(0.0966psia)〜約760torr(14.69psia)でありうる。HCFC−244bbと触媒との接触時間は、約0.5秒〜約120秒の範囲でありうるが、それより長い又は短い時間が使用できる。
【0050】
[0048]そのような脱塩化水素態様において、HCFC−244bbの変換率は少なくとも約10%、さらに好ましくは少なくとも約20%、なおさらに好ましくは少なくとも約30%である。好ましくは、そのような態様において、HFO−1234yfに対する選択率は少なくとも約70%、さらに好ましくは少なくとも約85%、さらに好ましくは少なくとも約95%である。
【0051】
[0049]一定の態様において、プロセス流は触媒床を通って下方又は上方に流れる。触媒は、長期の使用後には触媒を反応器内の定位置に置いたまま定期的に再生するのが有益であろう。触媒の再生は、O又は塩素のような酸化剤を使用するなど、当該技術分野で公知の任意の手段によって達成できる。例えば、空気又は窒素で希釈された空気を約100℃〜約400℃、好ましくは約200℃〜約375℃の温度で、反応器の大きさに応じて約0.5時間〜約3日間、触媒上に通過させることによる。
【0052】
[0050]一般に、脱ハロゲン化水素反応工程からの流出液(多段反応器構成の場合に存在しうる何らかの中間流出液も含む)は、所望の程度の分離及び/又はその他の処理を達成するために処理することができる。例えば、反応器流出液がHFO−1234yfを含む態様において、流出液は一般的にHCl及び未反応HCFC−244bbも含むであろう。反応生成物のこれらの成分の一部又は実質的にすべては、中和及び蒸留のような当該技術分野で公知の分離又は精製法によって反応混合物から回収できる。未反応HCFC−244bbは、所望のCFCF=CH(HFO−1234yf)の総収率を改良するために完全に又は部分的にリサイクルできると期待される。随意ではあるが好ましくは、塩化水素は脱塩化水素反応の結果からその後回収される。塩化水素の回収は、従来の蒸留によって実施されて、蒸留物から除去される。
【0053】
[0051]あるいは、HClは水スクラバ又は苛性スクラバによって回収又は除去することもできる。水抽出器を使用する場合、HClは水溶液として除去される。苛性スクラバが使用される場合、HClは水溶液中の塩化物塩としてただ単にシステムから除去される。
【0054】
[0052]以下は本発明の実施例であるが、制限と解釈してはならない。
【実施例】
【0055】
[0053]実施例1
[0054]本実施例では、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)+HF→2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)の連続液相フッ素化反応を示す。実験のフッ素化触媒はSbClであった。
【0056】
[0055]約5618グラムのSbClを2インチ(約5cm)ID(内径)充填カラムと凝縮器を備えたテフロン(登録商標)内張り液相反応器に装入した。反応器は2.75インチ(約7cm)ID×36インチ(約91cm)L(長さ)であった。まず、5:1を超えるモル比のHFを反応器に加えて触媒をフッ素化した。次に、3:1を超えるモル比のClを反応器に加えて、触媒を確実に五価状態に戻した。反応器を約85℃〜87℃に加熱した。HFの供給を最初に開始した。追加の1.5ポンド(約680g)のHFが添加されたら、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンの供給を開始した。2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン供給原料の純度は約97.3GC(ガスクロマトグラフ)面積%であった。実験は連続して約162時間実施した。この実験では塩素を実験全体を通して約4時間ごとにバッチ式に供給し、触媒活性を維持した。
【0057】
[0056]変換率は直ちに98%を超え、残りの実験の間中ずっとそのままであった。HF及びHCFO−1233xfの平均供給量は、それぞれ0.91ポンド(約413g)及び0.88ポンド(約399g)/時間であった。塩素の添加は平均有機物供給量の約3.0重量%に達した。約123ポンド(約55.8kg)の酸除去2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン粗製物が回収された。
【0058】
[0057]実験の反応器温度範囲は78℃〜86℃、圧力範囲は70psig〜105psigであった。反応は、反応器の流出液ストリームを定期的にサンプリングすることによってモニターした。サンプルはガスクロマトグラフで分析した。2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)の平均変換率は約98%で、以下のような平均生成物選択率であった。HCFC−244bb=90%、HCFO−1223xd=1%及びHFC−245cb=8%。
【0059】
[0058]実施例2
[0059]本実施例では、従来のバッチ式蒸留カラムを用いて高純度244bbを得ることの困難さを示す。
【0060】
[0060]実施例1に記載されているのと同様の反応実験で製造された粗HCFC−244bbを苛性スクラバに連続供給して未反応HF及びHCl副産物(不純物形成時に形成された)を除去した。次に、生成物ストリームを乾燥剤を充填したカラムに通して残留水分を除去し、回収した。この材料100ポンド(約45.4kg)を、10ガロン(約37.9リットル)リボイラー、1/4”Propak充填剤を充填された内径2インチ(約5cm)×10フィート(約305cm)カラム、及び凝縮器用の管形熱交換器(shell and tube heat exchanger)からなる蒸留カラムに装入した。カラムは約30の理論段を有していた。蒸留カラムは、温度、圧力、及び差圧伝送器を備えていた。蒸留は27psigの圧力及び13〜15インチ(約33〜38cm)HOの範囲のD/Pで実施した。蒸留カラムに装入された材料の組成は、3.85GC面積%のHFC−245cb、91.2GC面積%のHCFC−244bb、2.46GC面積%のHCFO−1233xf、1.1GC面積%のHCFO−1223xd、及び1.4GC面積%のその他(特に、HCFO−1232xf、HFO−1243zf、クロロテトラクロロプロペン異性体、HCFO−1223zd、HFO−1234ze、HFO−1225ye、HFC−254eb、HFC−254fb、及び3,3,3−トリフルオロプロピンなど)であった。蒸留からわずか40ポンド(約18kg)の99.25GC面積%のHCFC−244bbしか回収されなかった。不純物は、1233xf、クロロテトラフルオロプロペン、1233zd、1223xd、及び1243zfなどであった。さらに、46ポンド(約21kg)の94GC面積%のHCFC−244bbと5GC面積%のHCFO−1233xfの混合物が回収され、上記と同じ不純物のほかに245cb及び3,3,3−トリフルオロプロピンを含有していた。
【0061】
[0061]実施例3
[0062]実施例2から回収された99.25GC面積%のHCFC−244bbを、脱塩化水素触媒を含有する反応器への供給材料として使用した。反応は、HFO−1234yfに対して高選択性であり、未変換HCFC−244bb以外は<1.0GC面積%の不純物しか含有しない粗HFO−1234yf生成物が製造された。脱塩化水素反応への供給材料として比較的純粋なHCFC−244bbを使用することは、脱塩化水素触媒の安定性も改良した。触媒安定性は、非精製244bb供給材料を使用した場合の<500時間と比べて、1000時間を超える連続実験時間の間不変であった。
【0062】
[0063]実施例4
[0064]3.85GC面積%のHFC−245cb、91.2GC面積%のHCFC−244bb、2.46GC面積%のHCFO−1233xf、1.1GC面積%のHCFO−1223xd、及び1.4GC面積%のその他(特に、HCFO−1232xf、HFO−1243zf、クロロテトラクロロプロペン異性体、HCFO−1223zd、HFO−1234ze、HFO−1225ye、HFC−254eb、HFC−254fb、及び3,3,3−トリフルオロプロピンなど)で構成される粗HCFC−244bbストリームをジャケット付き光塩素化反応器(450ワットの紫外線源があり、点灯している)に装入する。Clストリームを光塩素化反応器内に散布すると、不飽和不純物、特に3,3,3−トリフルオロプロピン、HCFO−1233xf、HFO−1243zf及びHCFO−1223xdの二重結合に付加し、従来の蒸留で容易に分離される高沸点生成物が製造される。Clは、粗材料中の全不飽和化合物を変換するのに必要な化学量論量に対して20%過剰に添加される。反応器は大気圧付近(0〜10psig)で運転され、内容物は、反応器ジャケットを循環する冷却塩水を用いて冷却される。反応時間は約2〜約4時間である。反応器内容物の定期的サンプリングとその後のGC分析で、塩素化反応がいつ完了したか確認する。反応器内の未反応塩素を中和するのに必要な量の亜硫酸水素塩を含有する微苛性溶液を混合タンクに加える。溶液に使用された亜硫酸水素塩の量は約0.015重量パーセントで、溶液に使用された水酸化ナトリウムの量は約0.2%である。反応混合物ストリームは光塩素化反応器を出て、混合タンク中の微苛性亜硫酸水素塩溶液の上に添加される。混合タンクの内容物を撹拌機によってよく混合し、何らかの過剰Cl又は塩酸(飽和化合物へのCl添加の副産物)を、それぞれ亜硫酸水素塩及び苛性アルカリによって中和する。
【0063】
[0065]混合後、撹拌機を止め、混合タンクの内容物を上部の水性相と下部の粗HCFC−244bb相に相分離させる。次に、粗HCFC−244bb相を混合タンクの底から取り出す。粗HCFC−244bb相を取り出した後、水性相を処理のために取り出す。その後、酸及びClが除去された粗HCFC−244bbストリームは乾燥カラムに投入され、何らかの残留又は溶存水があれば乾燥剤で除去される。
【0064】
[0066]乾燥カラムを出た乾燥粗HCFC−244bbは、不純物から2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを分離するために従来の蒸留カラムに投入される。HFC−245cbのような低沸点不純物がまず除去された後、500ppm未満の不飽和ハロゲン化炭化水素しか含有しない99.8重量パーセントを超える2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンストリームが取り出される。
【0065】
[0067]実施例5
[0068]本実施例では、不飽和不純物を、蒸留などの当該技術分野で公知の任意の手段によってHCFC−244bbから容易に分離される飽和ハロカーボンに変換するための粗HCFC−244bbの連続気相水素化反応を示す。水素化は、蒸発器及び予熱器(内径1インチ(約2.5cm)、長さ32インチ(約81cm)、熱伝達を増強するためにニッケルメッシュが充填されている)を備えたモネル反応器(内径0.5インチ(約1.3cm)、長さ32インチ(約81cm))を用いて実施される。反応器には、50ミリリットルの1wt%Pd/Al水素化触媒が充填されている。触媒を支持するためにニッケルメッシュが反応器の頂部及び底部に配置されている。多点熱電対(multi-point thermocouple)を反応器の中央に挿入する。3.85GC面積%のHFC−245cb、91.2GC面積%のHCFC−244bb、2.46GC面積%のHCFO−1233xf、1.1GC面積%の1223xd、及び1.4GC面積%のその他(特に、HCFO−1232xf、HFO−1243zf、クロロテトラクロロプロペン異性体、HCFO−1223zd、HFO−1234ze、HFO−1225ye、HFC−254eb、HFC−254fb、及び3,3,3−トリフルオロプロピンなど)で構成される粗HCFC−244bbストリームを気化し、1ポンド(約450g)/時間の速度で供給する。水素も、粗HCFC−244bb供給材料中に存在する不飽和不純物を完全に水素化するのに必要な化学量論量に対して20〜80モル%過剰になる速度で同時供給する。水素は、不飽和不純物、特に3,3,3−トリフルオロプロピン、HCFO−1232xf、HCFO−1233xf、HFO−1243zf、HCFO−1223xd、クロロテトラクロロプロペン異性体、HCFO−1223zd、HFO−1234ze及びHFO−1225yeの二重結合に付加し、従来の蒸留でHCFC−244bbから容易に分離される低及び高沸点生成物が製造される。反応器を電気炉で200℃に加熱する。反応は約45psiaの圧力で実施される。
【0066】
[0069]水素化された粗HCFC−244bbを、不純物から2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを分離するために従来のバッチ式蒸留カラムに装入する。HFC−245cb(−18℃)及び263fb(沸点−13℃)のような低沸点不純物がまず除去された後、500ppm未満の不飽和ハロゲン化炭化水素しか含有しない99.8重量パーセントを超える2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン蒸留物ストリームが取り出される。
【0067】
[0070]実施例6
[0071]本実施例では、244bb供給材料中の不純物がMgF系脱ハロゲン化水素触媒の安定性に及ぼす悪影響を示す。
【0068】
[0072]3ゾーン電気炉に浸漬された直径3/4インチ(約1.9cm)の円筒形モネル反応器を使用した。プロセス温度は、反応器内部及び触媒床内に配置された多点熱電対を用いて記録した。二つの隣接プローブ点間の距離は4インチ(約10cm)であった。触媒は、その床が二つの隣接プローブ点内に入るように装填された。244bbは、垂直に据え付けられた反応器の底から供給され、触媒床に到達する前に気化した。流出ガスをガスサンプリング管に通し、反応の進行をガスサンプリング管の内容のGC分析によって定期的にモニターした。20mlの触媒を装入し、有機物の流量は典型的な実験で6g/hであった。89.7%244bb/7.3%1233xf/3%その他の供給材料を用いた図1に示されているように、244bbの変換率は、初期の50%超から、わずか24時間の操業後に40%未満に減少した。供給材料中の不純物が脱塩化水素触媒の早期失活を引き起こした。
【0069】
[0073]比較例6
[0074]本比較例では、比較的純粋な244bb供給材料の使用がMgF系脱ハロゲン化水素触媒の安定性に好影響を及ぼすことを示す。実施例6で使用したのと同じセットアップ及び反応条件を使用した。244bb供給材料は99.0%純粋で、主な不純物は0.8%の1233xfであった。触媒の図2は、脱塩化水素触媒が450時間を超える操業時間にわたって安定であることを示している。
【0070】
[0075]実施例7
[0076]本実施例では、インコネル625反応器で1234yfを製造するための高度に選択的な244bb脱塩化水素反応を示す。
【0071】
[0077]3ゾーン電気炉に浸漬された直径3/4インチ(約1.9cm)の円筒形インコネル625反応器を使用した。プロセス温度は、反応器内部に配置された多点熱電対を用いて記録した。244bb供給材料は、99.37GC面積%の純度で、多少の不飽和不純物を含有していた。主な不純物は約0.5GC面積%のHCFO−1233xf及び約0.13%のその他の不飽和化合物であった。材料は蒸留のみで精製され、一定の不飽和化合物は除去できなかった。244bbは、垂直に据え付けられた反応器の底から供給され、反応ゾーンに到達する前に気化した。流出ガスをガスサンプリング管に通し、反応の進行をガスサンプリング管の内容のGC分析によって定期的にモニターした。図3に示されているように、480℃及び25psigにおける244bbの変換率は、一般的に50〜55%であり(平均52.5%)、約1000時間続いた試験時間中に失活は認められなかった。1234yfに対する選択率は反応中およそ99.8%の高さを維持していた。
【0072】
[0078]ガス袋サンプルを480℃及び25psigで採取し、GC−MSで分析した。比較のために供給材料も分析した。表1に示されているように、微量のC、C、及びC副産物(おそらくは244bb及び/又はその他の分子の切断によって製造された)以外、その他の副産物は反応中に形成されなかった。さらに、供給原料に含まれていた不飽和種(例えば1233及び1224)は、生成物ストリーム中にも存在したままで、インコネル625反応器での244bb脱塩化水素中、それらの不飽和種に対して何の反応も起きなかったことを示していた。
【0073】
【表1】
【0074】
[0079]実施例8
[0080]本実施例では、連続式の従来型蒸留カラム及び>8%の不純物を含有する244bb供給原料から製造された1234yf粗材料を用いて、高純度1234yfを得ることの困難さを示す。前記不純物とは、3.85GC面積%のHFC−245cb、2.46GC面積%のHCFO−1233xf、1.1GC面積%の1223xd、及び1.4GC面積%のその他(特に、HCFO−1232xf、HFO−1243zf、クロロテトラクロロプロペン異性体、HCFO−1223zd、HFO−1234ze、HFO−1225ye、HFC−254eb、254fb、及び3,3,3−トリフルオロプロピンなど)である。製造された粗HFO−1234yfを苛性スクラバに連続供給してHCl副産物を除去した。次に、生成物ストリームを乾燥剤を充填したカラムに通して残留水分を除去した。オイルレス圧縮機を用いて粗生成物を蒸留カラム(30〜45psigの圧力に維持)に供給した。蒸留カラムは、10ガロン(約37.9リットル)リボイラー、1/4”Propak充填剤を充填された内径2インチ(約5cm)×10フィート(約305cm)カラム、及び凝縮器用の管形熱交換器からなるものであった。カラムは約30の理論段を有していた。蒸留カラムは、温度、圧力、及び差圧伝送器を備えていた。蒸留は連続モードで実施され、取出し速度は、反応器でのHFO−1234yfの製造速度と等しかった。蒸留されたHFO−1234yfの純度はわずか99.0GC面積%であった。蒸留物のGC分析から、3,3,3−トリフルオロプロピン、HFO−1243zf、クロロテトラクロロプロペン異性体、HCFO−1223zd、HFO−1234ze、HFC−245cb、HCFO−1233xf、及びHCFC−244bbを含む低沸点及び高沸点不純物の両方の存在が示された。HCFO−1223xd及びHCFO−1232xfは検出されなかった。蒸留カラムの底部は排出され。脱塩化水素反応器にリサイクルされた。
【0075】
[0081]実施例9
[0082]実施例7の連続蒸留から回収された蒸留オーバーヘッド材料は、社内のハネウェル1234yf製品仕様書に適合させるためにバッチ蒸留によってさらに精製する必要があった。実施例7に記載されているのと同じ蒸留装置を使用したが、バッチモードで運転した。バッチ蒸留は50psigの圧力及び20〜35インチ(約51〜89cm)HOの範囲のD/Pで実施された。つまり、分離に莫大な還流ストリームを必要としたことを意味していた。HFO−1234yfの出発純度は約99GC%であった。取出し速度は軽質留分の場合0.5ポンド(約227g)/時間、主留分の場合0.5〜1.0ポンド(約227〜454g)/時間であった。どちらの場合も、軽質留分はリボイラーに装入された材料の初期量の約7wt%であった。リボイラーには50ポンド(約22.7kg)の材料が装入された。軽質留分の重量は3.5ポンド(約1.6kg)であった(軽質留分はHFO−1234yfの純度が99.9%を超えるまで回収された)。主HFO−1234yf留分の重量は36.5ポンド(約16.6kg)であった。主留分中のHFO−1234yfの純度は99.96GC%より高かった。蒸留は、リボイラー中のレベルが低くなったために停止された。表2は、精製されたHFO−1234yfのGC分析である。
【0076】
【表2】
本発明は以下の態様を含む。
[1] 99.5重量パーセントを超える純度を有し、約500ppm未満の何らかのその他の飽和フルオロカーボンしか含有しない2,3,3,3−テトラフルオロプロペン生成物の製造法であって、
蒸留分離不能な2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンと約500ppmより多い量の少なくとも一つの不純物の供給ストリームを準備し;
供給ストリームを少なくとも一つの不純物が実質的に除去されるまで処理し;そして
供給ストリームを脱ハロゲン化水素して2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを製造する
ことを含む方法。
[2] 不純物が、1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)、1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HFC−254eb)、1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HFC−254fb)、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)、2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(HCFO−1232xf)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)、クロロテトラフルオロプロペン(HCFO−1224異性体)、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(シス及びトランス異性体))、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(シス及びトランス異性体))、及び3,3,3−トリフルオロプロピンならびにそれらの組合せからなる群から選ばれる、[1]に記載の方法。
[3] 不純物が、供給ストリーム中に下記の量:すなわち、0〜約400ppmの3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf)、0〜約200ppmの2,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(HCFO−1232xf)、0〜約200ppmの2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、0〜約200ppmの1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)、0〜約200ppmの1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)、0〜約200ppmのクロロテトラフルオロプロペン(HCFO−1224異性体)、0〜約200ppmの1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye(シス及びトランス異性体))、0〜約200ppmの1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze(シス及びトランス異性体))、0〜約200ppmの1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(HFC−245cb)、0〜約200ppmの1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HFC−254eb)、0〜約200ppmの1,1,1,3−テトラフルオロプロパン(HFC−254fb)、及び0〜約200ppmの3,3,3−トリフルオロプロピンで供給される、[2]に記載の方法。
[4] 処理工程が、供給ストリームを光塩素化反応に付することを含む、[1]に記載の方法。
[5] 処理工程が、供給ストリームを水素化反応に付することを含む、[1]に記載の方法。
[6] 2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン供給材料から一つ又は複数の不純物を除去するための方法であって、
前記2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン供給材料を光塩素化法に付し;そして
2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを精製して実質的に純粋な2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを製造する
ことを含む方法。
[7] 前記光塩素化反応が、電磁放射線の存在下で、不純物を塩素(Cl)と反応させることを含む、[6]に記載の方法。
[8] 電磁放射線が紫外線スペクトルの中にある、[7]に記載の方法。
[9] 2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン供給材料から一つ又は複数の不純物を除去するための方法であって、
前記2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン供給材料を水素化法に付し;そして
2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンを精製して実質的に純粋な2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン供給材料を製造する
ことを含む方法。
[10] 水素化法が、一つ又は複数の触媒の存在下で不純物を水素(H)と反応させることを含む、[9]に記載の方法。
[11] 触媒が、Pt、Pd、Ni、及びそれらの混合物からなる群から選ばれ、不活性担体上に担持されていないか又は担持されているのいずれかである、[10]に記載の方法。
[12] 担体が、活性炭、アルミナ、様々な金属酸化物、ゼオライト、アルミノケイ酸塩、及びモレキュラーシーブからなる群から選ばれる、[11]に記載の方法。
図1
図2
図3