(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013373
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】切削工具および切削工具用の締付け凹部を有する切削インサート
(51)【国際特許分類】
B23B 27/16 20060101AFI20161011BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
B23B27/16 B
B23B27/14 C
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-554059(P2013-554059)
(86)(22)【出願日】2012年1月17日
(65)【公表番号】特表2014-508651(P2014-508651A)
(43)【公表日】2014年4月10日
(86)【国際出願番号】IL2012000025
(87)【国際公開番号】WO2012114326
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2014年11月28日
(31)【優先権主張番号】211326
(32)【優先日】2011年2月21日
(33)【優先権主張国】IL
(73)【特許権者】
【識別番号】306037920
【氏名又は名称】イスカーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギル ヘクト
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−154004(JP,U)
【文献】
特表2003−531019(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00450542(EP,A1)
【文献】
米国特許第02500387(US,A)
【文献】
実開昭48−103973(JP,U)
【文献】
特開2001−328011(JP,A)
【文献】
特開昭60−090603(JP,A)
【文献】
特表2004−508206(JP,A)
【文献】
特開昭49−050576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/16,27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インサートポケット(16)と、
ヘッド締付け面(44)を有するヘッド(42)を含む、締付け部材(20)と
を備えるホルダ(14)であって、
前記インサートポケット(16)は、
インサートポケット前端(27)およびインサートポケット後端(29)と、
前記インサートポケット前端(27)に位置するインサートポケット前面(22)と、
前記インサートポケット前面(22)から、後方に、前記インサートポケット後端(29)に向かって延びるインサート支持面(24)と、
前記インサート支持面(24)からインサートポケット上面(28)に、上方に、前記インサート支持面(24)から離れて延びる2つの支持壁(26)であって、上方および後方において収束する支持壁(26)と、
前記インサート支持面(24)および前記インサートポケット前面(22)に開口するハウジング(30)であって、前記インサート支持面(24)から下方に延びるハウジング壁(32)、および前記ハウジング壁(32)から前記インサートポケット前面(22)に延びるハウジング周面(34)を含むハウジング(30)と、
前記ハウジング壁(32)へ開口するボア(38)であって、縦方向ボア軸(B)を有するボア(38)と
を備え、
前記締付け部材が前記ハウジング(30)内に位置するときには、前記ヘッド締付け面(44)の露出された締付け面(52)が、前記インサート支持面(24)の上方に突出することを特徴とするホルダ。
【請求項2】
前記インサートポケット(16)が切削インサートを締め付けるためにだけ構成されていることを特徴とする請求項1に記載のホルダ(14)。
【請求項3】
前記締付け部材(20)がネジであることを特徴とする請求項1または2に記載のホルダ(14)。
【請求項4】
前記縦方向ボア軸(B)が前記インサート支持面(24)に平行であることを特徴とする請求項1に記載のホルダ(14)。
【請求項5】
前記ハウジング周面(34)が、その長さに沿って延びる、複数のレール形ヘッド支持面(36)を含むことを特徴とする請求項1に記載のホルダ(14)。
【請求項6】
前記ホルダ(14)が、前記ヘッド(42)と前記ハウジング壁(32)の間に位置する、ワッシャ(54)を備えることを特徴とする請求項1に記載のホルダ(14)。
【請求項7】
請求項1に記載のホルダ(14)、および前記ホルダ(14)のインサートポケット(16)内に確実に締め付けられた、切削インサート(18)であって、
反対側にあるインサート前端およびインサート後端(67、69)と、
反対側にある第1の主要面および第2の主要面(60、62)、ならびにその間に延びる2つの側面(64)と、
それぞれがそれぞれの側面(64)上に位置する2つの側方当接面(66)と、
前記インサート前端(67)に形成されて、前記第1の主要面および第2の主要面(60、62)の間、ならびに前記側面(64)同士の間に延びる、インサート前面(68)と、
前記第2の主要面(62)に開口している締付け凹部(82)と
を備え、
前記2つの側方当接面(66)は、前記第1の主要面(60)に向かって収束し、前記2つの側面(64)は前記インサート前面(68)から離れる方向に収束し、前記第1の主要面(60)は、縁部において前記前面(68)および前記側面(64)と一体となり、その縁部の少なくとも一部分は切れ刃(80)を含み、
前記締付け凹部(82)は、前記インサート前端(67)に対向する、インサート締付け面(86)を含み、前記締付け凹部(82)は、前記切削インサートの厚さ方向において、前記第1の主要面と第2の主要面(60、62)の中間に位置する、中央面(P)を超えて延びないことを特徴とする前記切削インサート
を備えることを特徴とする切削工具(12)。
【請求項8】
切削工具(12)の組立位置において、
前記第2の主要面(62)が前記インサート支持面(24)に当接し、
各側方当接面(66)がそれぞれの支持壁(26)に当接し、
前記ヘッド(42)の露出されたヘッド部分(50)が、前記締付け凹部(82)によって収容され、
前記ヘッド締付け面(44)の前記露出された締付け面(52)は、前記インサート締付け面(86)に当接することを特徴とする請求項7に記載の切削工具(12)。
【請求項9】
切削工具(12)の組立位置において、
前記第2の主要面(62)が前記インサート支持面(24)に当接し、
各側方当接面(66)が、それぞれの支持壁(26)に当接し、
前記ヘッド(42)の露出されたヘッド部分(50)が、前記締付け凹部(82)によって収容され、
ワッシャ(54)が前記締付け部材(20)のネジ切り部分(40)に装着され、
前記ヘッド締付け面(44)の前記露出された締付け面(52)が、前記ワッシャ(54)に当接し、次いで前記ワッシャ(54)が、前記インサート締付け面(86)に当接することを特徴とする請求項7または8に記載の切削工具(12)。
【請求項10】
前記切削インサート(18)が前記インサートポケット(16)内に据えられているとき、前記切削インサート(18)のインサート後面(70)が、前記インサートポケット(16)のいずれの部分とも接触しないことを特徴とする請求項7に記載の切削工具(12)。
【請求項11】
前記締付け凹部(82)は、非円形開口(83)において、前記第2の主要面(62)に開口していることを特徴とする請求項7に記載の切削工具(12)。
【請求項12】
前記切削インサート(18)に貫通穴がないこと、及び/又は、前記インサート締付け面(86)が前記第2の主要面(62)に垂直であることを特徴とする請求項7に記載の切削工具(12)。
【請求項13】
前記締付け凹部(18)は、インサート締付け面(86)の反対側に位置するとともに、前記インサート後端(69)に向かって対面する、インサート当接面(84)を備えることを特徴とする請求項7に記載の切削工具(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の主題は、旋削工具およびロータリ溝切りカッター(rotary slotting cutters)に関する。
【背景技術】
【0002】
インサートポケット(insert pocket)内に締め付けられた切削インサートを有する、旋削工具が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第0559965号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の主題の目的は、新規な改良型の切削工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の主題によれば、切削インサートであって、
反対側にあるインサート前端およびインサート後端と、
反対側にある第1の主要面および第2の主要面、ならびにその間に延びる2つの側面と、
それぞれがそれぞれの側面上に位置する2つの側方当接面と、
前記インサート前端に形成されて、前記第1の主要面および第2の主要面の間、ならびに前記側面同士の間に延びる、インサート前面と、
前記第2の主要面、および/または前記インサート前面に開口している締付け凹部と
を備え、
前記側方当接面は、前記第1の主要面に向かって収束し、前記側面は前記インサート前面から離れる方向に収束し、前記第1の面は、縁部において前記前面および前記側面と一体となり、その縁部の少なくとも一部分は切れ刃を含み、
前記締付け凹部は、前記インサート前端に対向する、インサート締付け面を含み、前記締付け凹部は、前記切削インサートの厚さ方向において、前記第1の面と第2の面の中間に位置する、中央面Pを超えて延びない切削インサートが提供される。
【0006】
本願の主題によれば、ホルダがさらに提供され、このホルダは、
インサートポケットと、
ヘッド締付け面を有するヘッドを含む、締付け部材とを備え、
前記インサートポケットは、
インサートポケット前端およびインサートポケット後端と、
前記インサートポケット前端に位置するインサートポケット前面と、
前記インサートポケット前面から、後方に、前記インサートポケット後端に向かって延びるインサート支持面と、
前記インサート支持面からインサートポケット上面に、上方に、前記インサート支持面から離れて延びる、2つの支持壁であって、上方および後方において収束する支持壁と、
前記インサート支持面および前記インサートポケット前面に開口するハウジングであって、前記インサート支持面から下方に延びるハウジング壁、および前記ハウジング壁から前記インサートポケット前面に延びるハウジング周面を含むハウジングと、
前記ハウジング壁へ開口するボアであって、縦方向ボア軸Bを有するボアと
を備え、
前記締付け部材が前記ハウジング内に位置するときには、前記ヘッド締付け面の露出された締付け面が、前記インサート支持面の上方に突出する。
【0007】
本願の主題によれば、ホルダおよび、ホルダのインサートポケット内に確実に締め付けられる切削インサートを備える、切削工具がさらに設けられる。
【0008】
切削工具の組立位置において、
前記第2の主要面が前記インサート支持面に当接し、
各側方当接面がそれぞれの支持壁に当接し、
前記ヘッドの露出されたヘッド部分が、前記締付け凹部によって収容され、
前記ヘッド締付け面の前記露出された締付け面は、前記インサート締付け面に当接する。
【0009】
上記の内容は概要であること、または上記の観点のいずれも、以下に記載するその他の観点または特徴のいずれかと関係づけて記載される特徴のいずれかをさらに含むか、またはそれによってさらに定義されることが可能であることを理解されたい。例えば、以下の特徴は、本発明の上記の観点のいずれにも応用可能である。
【0010】
締付け凹部は、第2の主要面および/またはインサート前面に、非円形開口において開口することができる。
【0011】
その開口は、長方形とすることができる。
【0012】
中央面Pに垂直な方向において、インサート締付け面は長さがLであり、切削インサートの最大厚さはTであり、ここで長さLは、切削インサートの最大厚さTの10%から45%の範囲とすることができる。
【0013】
切削インサートは、貫通穴をなくすることができる。
【0014】
切削インサートの横断面正面図において、締付け凹部は、アーチ形状とすることができる。
【0015】
インサート締付け面は、第2の主要面に垂直にすることができる。
【0016】
締付け凹部は、インサート締付け面の反対側に位置するインサート当接面を含むことができる。
【0017】
インサートポケットは、切削インサートを締め付けるためにだけ構成することができる。
【0018】
締付け部材は、ネジとすることができる。
【0019】
縦方向ボア軸Bは、インサート支持面と平行にすることができる。
【0020】
ハウジング周面には、その長さに沿って延びる、複数のレール形ヘッド支持面を含めることができる。
【0021】
ホルダには、ヘッドとハウジング壁の間に位置する、ワッシャを含めることができる。
【0022】
ワッシャには、ワッシャネジ山を含めて、ワッシャを、締付け部材にネジ込み式で固定することができる。
【0023】
切削インサートはインサートポケット内に据えられているとき、切削インサートのインサート後面は、インサートポケットのいずれの部分とも接触しない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本願の主題がより詳細に理解されるように、またそれを実際に実行する方法を示すために、次に、添付の図面を参照する。
【
図1】切削インサートがその中に締め付けられている、切削工具の切削部分の等角図である。
【
図3】
図1のIII−IIIラインに沿った横断面図である。
【
図4】
図1のIV−IVラインに沿った横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
適当であると考えられる場合には、対応するまたは類似する要素を示すために、複数の図の間で参照番号を繰り返し示すことがある。
【0026】
以下の説明においては、本願の主題の様々な観点について記載する。説明の目的で、本願の主題が完全に理解されるように、具体的な構成および詳細について記載する。しかしながら、本願の主題は、本明細書に提示される具体的な詳細がなくても、実施できることは、当業者には明白であろう。
【0027】
切削工具12の切削部分10を示す、
図1および2に注目する。切削工具12は、ホルダ14と、その上に位置する少なくとも1つの切削部分10とを含む。各切削部分10は、インサートポケット16と、その上に締付け部材20を介して確実に締め付けられた切削インサート18とを含む。インサートポケット16は、切削インサートを締め付けるためにだけ構成されている。この非限定の例によれば、締付け部材20は、ネジとすることができる。
【0028】
インサートポケット16には、その前端27に位置するインサートポケット前面22と、インサート支持面24と、2つの支持壁26とを含めることができる。インサート支持面24は、インサートポケット前面22から支持壁26に向かって後方に延在させることができる。支持壁26は、インサート支持面24からインサートポケット上面28へと上方に延在させることができる。インサートポケット前面22は、インサート支持面24から全体的に下方に延びる。支持壁26は、インサートポケット前面22から離れて、インサートポケット後端29に向かって収束する。支持壁26は、インサート支持面24から離れる方向において、上方に収束する。
【0029】
インサートポケット16には、インサート支持面24に開口させることのできる、ハウジング30を含めることができる。このハウジング30は、インサートポケット前面22にも開口させることができる。ハウジング30は、インサート支持面24から下方に延びるハウジング壁32を含めることができる。ハウジング30には、ハウジング壁32とインサートポケット前面22の間を、インサート支持面24に概して平行に延びる、ハウジング周面34を含めることができる。ハウジング周面34には、その長さに沿って延びる、2つのヘッド支持面36を含めることができる。ヘッド支持面36はレール形の形状として、締付け部材20の曲げに対して支持を行うように形成することができる。
【0030】
図3から5に注目する。ハウジング30には、ハウジング壁32に開口させることのできる、ネジ付きボア(threaded bore)38を含めることができる。ボア38は、インサート支持面24に対して概して平行に延ばすことのできる、縦方向ボア軸Bを有する。締付け部材20は、ボア38の中にねじ込み式に受け入れることができる。この非限定の例によれば、締付け部材20は、ヘッド42から延びるネジ付き部分40を有することができる。ヘッド42は、ネジ付き部分40に対向するヘッド締付け面44、および反対側のヘッド当接面46を含む。締付け部材20には、ヘッド当接面46に開口して、トルクを伝達するため、すなわち締付け部材20を締めるためのキーと連絡するように構成された、凹部を含めることができる。ヘッド42には、ヘッド締付け面44とヘッド当接面46の間に延びる、ヘッド周面48を含めることができる。ボア38は、インサート支持面24と隣接して配置して、締付け部材20がボア38中にねじ込まれるときに、ヘッド42の露出されたヘッド部分50、そしてその結果として、ヘッド締付け面44の露出された締付け面52が、インサート支持面24の上に持ち上げられるか、またはそこから突出するようにされている。露出されたヘッド部分50および露出された締付け面52は、ヘッド42、またはヘッド締付け面44の特定の部分としてではなく、締付け部材20の所与の角度方位を基準にして画定される。ホルダ14には、摩耗を低減するためのワッシャ54を含めることができる。このワッシャはヘッド42とハウジング壁32の間に位置している。ワッシャ54は、2つの反対側のワッシャ当接面56を含み、ワッシャ54が、回転されるときに、締付け部材20に沿って自由に動くのを防止するために、ワッシャネジ山(washer thread)58を有してもよい。
【0031】
切削インサート18は、通常、焼結炭化物(cemented carbide)などの超硬質の耐摩耗性材料を、成型プレスするか、または射出成形し、結合剤中で炭化物粉末を焼結させることにより作られている。焼結炭化物は、例えば、タングステン炭化物としてもよい。切削インサート18は、コーティングしても、しなくてもよい。
【0032】
切削インサート18は、とがり三角形(basic triangular shape)として、貫通穴を有さないようにすることができる。切削インサート18は、切削インサートの厚さ寸法を画定する、反対側の第1と第2の主要面60、62を含む。切削インサート18は、主要面60、62の中間に位置する、中央面Pを含む。中央面Pは、主要面60、62の一方または両方に平行にすることができる。切削インサート18は、主要面60、62の間に延びる、2つの側面64を含む。各側面64には、1つの側方当接面66を含めることができる。切削インサート18は、切削インサートの前後方向を画定する、インサート前端67およびインサート後端69を有する。切削インサート18は、インサート前端67において、主要面60、62の間、および側面同士64の間に延びる、インサート前面68を含む。側方当接面66は、第2の主要面62から離れる方向に収束する。側面64は、インサート後端69に向かって、インサート前面68から離れる方向に収束する。切削インサート18には、側面64同士の間、および主要面60、62の間に延びる、インサート後面70を含めることができる。切削インサート18が、インサートポケット16内に据えられているときに、インサート後面70は、インサートポケット16のどの部分とも接触しない。
【0033】
第2の主要面62には、(
図5に示すように)インサート前面68に隣接して位置する、前方当接面72、およびインサート後端69に隣接して位置する後方当接面74を含めることができる。インサート前面68に隣接する第1の主要面60の一部分は、すくい面(rake surface)76を設けて構成されている。第1の主要面60に隣接するインサート前面68の少なくとも一部分を、逃げ面(relief surface)78を設けて構成することができる。第1の主要面60は、一縁部において、前面68および側面64と一体となることができて、その縁部の少なくとも一部分には切れ刃80を含めることができる。第1の主要面60と前面68の間の縁部の少なくとも一部分は、切れ刃80として構成することができる。すくい面76と逃げ面78は、切れ刃80において交わっている。
【0034】
切削インサート18は、(
図3、4、および5に示す)締付け凹部82を含み、この締付け凹部82は、第2の主要面62および/またはインサート前面68に開口している。締付け凹部82は、非円形開口83において、第2の主要面62に開口させることができる。締付け凹部82は、第2の主要面62と中央面Pの間に全体として位置している。言い換えると、締付け凹部82は、切削インサート18の厚さ方向において中央面Pを超えて延びていない。締付け凹部82は、すくい面を構成すること、またはすくい面として機能することができない。言い換えると、締付け凹部は、切削屑搬送面として機能することができない。切削インサート18の正面図において、締付け凹部82の横断面は、ヘッド42の露出されたヘッド部分50を収容するために、好ましくは(
図3に示す)最小のアーチ形状にすることができる。アーチ形状は、締付け凹部82をできる限り小さくできるように選択される。締付け凹部82は、締付け部材20を受け入れるのに適した、その他任意の形状にすることができる。
【0035】
締付け凹部82には、実質的に平面状のインサート当接面84、および反対向きの、実質的に平面状のインサート締付け面86を含めることができる。インサート締付け面86は、概してインサート前端67方向に面しており、これに対してインサート当接面84は、概してインサート後端69方向に面している。すなわち、実施形態によっては、締付け凹部82は、第2の主要面62だけに開口して、インサート前面68には開口しなくてもよい。
【0036】
開口83の形状は、締付け部材ヘッド42の露出されたヘッド部分50の形状に一致させ、それによって締付け凹部82の体積を最小に保つために、実質的に長方形にすることができる。これらの実施形態において、中央面Pに垂直な軸に沿って切断された締付け凹部82の任意の横断面は、やはり長方形であり、したがって、インサート締付け面および当接面84、86が平面形態となる。
【0037】
インサート締付け面86は、露出された締付け面52、またはワッシャ当接面56の形状に一致するとともに、それに係合するように構成される。インサート締付け面86には、インサート前面68に向かってそこから突出する、中心に置かれた当接突起88を含めることができる。この当接突起88は、締付け部材20によって付加される締付け力が確実に中心にかかるようにするために、インサート締付け面86において中心に配置することができる。インサート締付け面86およびインサート当接面84は、第2の主要面62と締付け凹部82の閉鎖端の間に延ばすことができる。インサート締付け面86は、好ましくは、第2の主要面62に垂直である。インサート当接面84は、好ましくは、第2の主要面62に垂直である。
【0038】
インサート締付け面86の長さLは、第2の主要面62と、締付け凹部82におけるインサート締付け面86の最深点の間で、全体的に中央面(P)に垂直な方向において測られる。切削インサート18の最大厚さTは、主要面60、62の間の最大距離として測られる。いくつかの実施形態によれば、長さLは、切削インサート18の最大厚さTの10%から45%の範囲にある。例えば、貫通穴あると切削インサート18の強度が低下するが、締付け凹部82の深さが小さいと、そうはならない。さらに、貫通穴がないことによって、第1の主要面60が、均質で、障害物のない形態となり、切削屑を自由に流動させることができる。
【0039】
切削インサート18をインサートポケット16内に締め付けるために、切削工具12を操作する人、すなわち作業員は、これらのステップを追従することができる。a)ボア38内で締付け部材20を軽く締める。b)第2の主要面62がインサート支持面24と対向し、側面64が、各支持壁26とそれぞれ全体的に位置合わせされるか、またはそれに平行になっている間に、切削インサート18を、インサート支持面24の上のインサートポケット16内に設置する。現在位置において、インサート後面70は、インサートポケット後端29と対向する。c)締付け部材20を、露出されたヘッド部分50が締付け凹部82によって収容されるまで締めて、それによって切削インサート18が、インサートポケット16内部で下方にわずかに低下することを可能にする。d)締付け部材20を、切削部分10が組立位置に達するまで、さらに締める。切削部分10の組立位置において、切削インサート18は、ホルダ14のインサートポケット16内に確実に締め付けられる。第2の主要面の前方当接面および後方当接面72、74が、インサート支持面24と当接する。各側方当接面66は、それぞれの支持壁26に当接する。締付け部材20は、ボア38中にねじ込まれるネジであり、露出されたヘッド部分50は、締付け凹部82によって収容される。ホルダ14がワッシャ54を含まない実施形態によれば、ヘッド締付け面44は、インサート締付け面86に当接する。ホルダ14がワッシャ54を含む実施形態によれば、一方のワッシャ当接面56が、ヘッド締付け面44に当接し、他方のワッシャ当接面56がインサート締付け面86(
図5を参照)に当接する。ヘッド周面48は、必ずしもヘッド支持面36に当接しない。
【0040】
切削インサート18が摩耗した後に切削インサート18を交換するのに、作業員は、(締付け部材20をボア38から完全に取り外すことなく)締付け部材20を数回転緩めるだけでよく、切削インサート18は、インサートポケット16から容易に持ち上げられる筈である。しかしながら、切削インサート18は、固着されることがあり、切削インサート18にかかる圧力を単に開放するだけでは、それを、支持壁26により発生される摩擦力から開放するためには不十分である。切削インサート18を開放するために、作業員は、締付け部材20を、そのヘッド当接面46がインサート当接面84と係合するまで、さらに回して、切削インサート18をインサートポケット16から押し出してもよい。
【0041】
切削インサート18の主要面60、62に対して、締付け部材20の方位を概して平行にすることに対して、少なくとも2つの利点がある。
【0042】
第1は、締付け部材20がネジである配設において、ネジの長手方向において達成可能な締付け力の量は、締付けネジが、切削インサートの主要面を貫通して、それに垂直にインサートポケット内にネジ山が付けられたネジである、汎用の配設で達成される偏心的な締付け力の量よりも大きいことである。
【0043】
第2の利点は、切削インサートが、強度低下させる貫通ネジボアを備えないことである。結果的に、切削インサートは、切削屑がその回りを自由に流れる、障害物のない第1の主要面を備えて設計することができる。
【0044】
上記の説明は、特許請求された主題についての、例示的な実施形態および、必要な場合には、実施可能化の詳細を含み、非例示の実施形態および詳細を、本願の請求の範囲から除外するものではない。