(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1つの支持体を前記前処置容器中に配置した後で、前記前処置容器に前記キャリア組成物の表面上へ前記層を形成する少なくとも1つの試薬を添加する前に、前記キャリア組成物が前記前処置容器に添加され、さらに前記キャリア組成物が前記包埋生体試料と接触しない、請求項1に記載の方法。
前記試薬形成層の少なくとも一部が前記前処置容器からオーバーフローするまで前記前処置容器中の前記キャリア組成物の体積を増加させることによって、前記試薬形成層の少なくとも一部を除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
追加のキャリア組成物を前記前処置容器に添加して、したがって前記試薬形成層を生体試料の少なくとも一部に3度目に接触させて、次に前記キャリア組成物の少なくとも一部を除去して、これにより前記試薬形成層の少なくとも一部を前記包埋生体試料の少なくとも一部と4度目に接触させることをさらに含む、請求項6に記載の方法。
前記試薬形成層が前記包埋生体試料の少なくとも一部と2度目に接触するように、オーバーフローの前に前記キャリア組成物の少なくとも一部を前記前処置容器から除去することをさらに含む、請求項9に記載の前処置方法。
【背景技術】
【0002】
たとえば免疫組織化学(IHC)および他の化学および生物学的分析における試料処理用途は、少なくとも1つの試料の分析の一部として、少なくとも1つの処理シーケンスまたは処置プロトコルを包含することがある。通例、このような処置プロトコルは、分析を依頼している組織または個人、たとえば病院に所属する病理学者または組織学者によって定義され、行われる特定の分析の指示によってさらに定義されることがある。
【0003】
試料分析の準備にあたって、生体試料は通常、ある保存形態でスライドまた他のキャリア上に入手され封入することができる。一例として、組織の層または薄切片などの試料は、ホルムアルデヒド中で保存され、パラフィンまたは他の包埋剤中に包埋されて、ミクロトームを使用して薄切されてもよい。組織切片は次にスライド上に封入してもよい。パラフィンによって保存された試料には、試料を包埋しているパラフィンが除去される工程である、脱パラフィンを行ってもよい。加えて、標的または試料には、標的または試料が染色操作に好適である条件に回復される工程である、標的賦活化を行ってもよい。
【0004】
「染色」という用語は、試料の特徴を明らかにする、または強調するために、試料のある部分が処置される工程を指す。染色の結果として、明らかにしようとする特徴は、可視光域、あるいは別の電磁波域として、たとえば紫外線域のいずれかにおいて異なる色を帯びることがある。いくつかの例において、染色は、特性の検出可能な変化、たとえば試料の蛍光、磁気、電気または放射性特性の変化につながることがある。試料の染色は処置プロトコルと呼ばれる一連の処置ステップを含む。代表的な処置プロトコルは、洗浄、試料の特異的部分への試薬の結合、試薬のいずれかの活性化を含んでもよく、各処置ステップは、複数の個別の処置を含んでもよい。
【0005】
診断用途、たとえば免疫組織化学(IHC)、インサイチューハイブリダイゼーション(ISH)および特殊な染料は、脱パラフィン、標的賦活化および染色などのステップを含む処理シーケンスまたは処置プロトコルを含んでいてもよい。いくつかの用途において、これらのステップは手動で行われ、潜在的に時間集約型プロトコルが作られ、人員が試料処理に積極的に関わる必要があったかもしれない。自動で行われた場合でも、このような用途には不十分なことがあった。好都合な試料処理および手動の負担がより少ない操作に対する要求に対処するために、試料処理を自動化する試みが行われてきた。
【0006】
生体試料を今後の分析用に保存するために、異なる種類の包埋剤が使用されてきた。「包埋剤」は、室温にて固体であり、組織学的分析または他の分析、たとえば免疫組織化学、インサイチューハイブリダイゼーション、特殊染色および古典的染料染色で生体試料を包埋またはそうでなければ支持するための、組織学で使用されるいずれの組成物でもよい。包埋剤の例としては、これに限定されるわけではないが、ワックス、パラフィン、パラマット(paramat)、パラプラット(paraplats)、ピール・アウェイ・パラフィン(peel away paraffin)、組織凝固剤、クリオニックゲル(cryonic gel)、OCT(商標)(Optimum Cutting Temperature(最適切断温度))包埋化合物、ポリフィン(商標)、ポリエステルワックスが挙げられる。
【0007】
「ワックス」は、組織学的分析または他の化学的および生物学的分析の生体試料を包埋するための組成物であってよい。ワックスは、室温にて固体であり;通常、高級脂肪酸および高級グリコールのエステルを含むことが多い高級炭化水素の複合混合物より成り;起源は鉱物、天然、または合成であってもよく;脂質よりも硬く脆性であり;油脂に溶解性であり、これの試料包埋特性を向上させる添加剤を場合により含有することができる。パラフィンは、組織化学分野で最も普通に使用される鉱物ワックスの例である。パラフィンは、石油の蒸留によって通例調製された疎水性物質であり、主に固体飽和炭化水素の混合物である。パラフィン(ワックス)は一般に、高級ポリオレフィンより成り、ポリマーを含むことが多いか、またはジメチルスルホキシド(DMSO)が添加される。パラフィンは、組織学的検査の試料切片を作製するためにミクロトームで薄切する生体試料の調製において、包埋剤として長年使用されてきた。
【0008】
本開示で使用する場合、「組織化学的」とは一般に、免疫組織化学、細胞化学、組織病理学、特殊染色、顕微技術およびインサイチューハイブリダイゼーションなどでの分子プローブの使用として公知の技法および方法を指す。
【0009】
本開示で使用する場合、「脱パラフィン」という用語は、本願に記載するパラフィンまたは他の包埋剤の除去を含む。染色前の脱パラフィンは通常、次の染色工程において抗体またはプローブの標的に接触できるようにするために必要とされる。脱パラフィンに使用する溶媒は、たとえばキシレン、キシレン代替品およびトルエンである。脱パラフィンで一般に使用される溶媒は、毒性で可燃性であり、環境上の危険を引き起こすことがある。
【0010】
在来の手作業による脱パラフィン手順としては、たとえば包埋剤が可溶化されるまで、包埋試料をキシレン(フィッシャーサイエンティフィック、カタログ番号X5−4)浴、トルエン浴またはヒストクリア(登録商標)(ナショナルダイアグノスティックス社、カタログ番号HS−200)浴に浸漬するステップが挙げられる。脱パラフィンした試料は続いて洗浄し、溶媒除去および試料再水和のために、通例は、試料を浸漬する浴として、アルコール濃度を低下させた一連のアルコール溶液を用いて再水和させる。試料はたとえば、95%エタノールの第1の浴に2回、70%エタノールの第2の浴に2回および水性緩衝液の第3の浴に試料を浸漬することによって再水和してもよい。
【0011】
燃料の引火点は、燃料が空気との発火性混合物を生成できる最低温度である。この温度において、点火源を除去すると、蒸気の燃焼を停止させることができる。ややより高い温度である燃焼点は、点火された後に蒸気が燃焼を継続する温度として定義される。上述したように、キシレンは可燃性、揮発性および毒性の有機溶媒である。キシレンは、約137℃の低い沸点、約29℃の低い引火点および1から6%の範囲に及ぶ低い爆発限界を有する。同様に、アルコールおよびとりわけエタノールは可燃性であり、約78℃の低い沸点、約17℃の低い引火点、3.5から15%の範囲に及ぶ低い爆発限界を有し、したがって爆発性空気混合物にて一部を容易に形成できる。しかし、希釈アルコール溶液、たとえば水中10%または20%エタノールは、これまで使用されたエタノール溶液(水中70−95%エタノール)よりも著しく高い引火点および沸点を有することができる。
【0012】
キシレンおよびアルコールの危険な特性のために、より安全な脱パラフィン方法を開発することが有利である。脱パラフィン工程のキシレンを毒性および揮発性がより低い溶媒で置き換える努力がなされてきた。たとえばテルペン油およびイソパラフィン系炭化水素は、キシレンと等しい脱パラフィンをもたらすことが示されている。それにもかかわらず、このような代替溶媒を使用する場合でも、再水和工程としても公知の一連のアルコール洗浄は、ほとんどのタイプの染色、たとえば免疫組織化学染色との適合性を達成するために、水洗浄の前に溶媒を除去するためになお必要とされている。
【0013】
バイオジェネックスラボラトリーズへの米国特許第6,632,598号明細書、米国特許出願公開第2003/0175852(A1)号明細書および国際公開第02/23156(A1)号パンフレットは、キシレンの使用を撤廃してもよく、続いての洗浄ステップにおけるアルコールの使用が低減または撤廃される、ワックス包埋生体試料からワックスを除去するための組成物および方法について記載している。これに記載されている組成物は、パラフィン可溶化有機溶媒、極性有機溶媒および界面活性剤を含む。パラフィン可溶化有機溶媒の例としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、テルペン類、他の油および石油蒸留物が挙げられる。極性有機溶媒としては、たとえばケトンおよび低級アルコールが挙げられる。アルコールとしては、たとえばエタノール、エチレングリコール、イソプロパノール、プロピレングリコールおよびその混合物でもよい。
【0014】
バイオジェネックスラボラトリーズが開示した組成物および方法の欠点は、脱パラフィン後のアルコール浴の使用を低減または撤廃することができても、開示された脱パラフィンの極性有機溶媒組成物がアルコールを含んでいることである。したがって、開示された脱パラフィン組成物は、アルコール浴または洗浄を使用する脱パラフィン方法と同じ欠点を有する。
【0015】
Camienerへの米国特許第5,344,637号明細書は、ヒストクリア(登録商標)およびキシレンの代わりに、溶媒として有機環含有化合物を使用する方法について記載している。溶媒は、固定生体材料中のアルコールおよび/または他の脱水剤を置き換えて、ワックス包埋生体材料からワックスを除去するために使用される。溶媒は、単独であるか、または水素添加芳香族石油蒸留物中およびこれの組合せ中に存在するかのどちらかの、5重量%から100重量%の、飽和有機環含有化合物の非置換または置換誘導体から成る群より選択される化合物を含む。溶媒は、CBGバイオテックによりフォーミュラ83(商標)として販売されている。フォーミュラ83(商標)の欠点は、沸点が119〜145℃とかなり低く概して燃えやすいことである。わずか7℃の低い引火点およびわずか1.3体積%の、すなわち7℃を超える温度におけるより低い爆発限界(LEL)によって、フォーミュラ83(商標)は、空気との発火性混合物を生成して、これにより危険な状態を生じることがある。さらに、フォーミュラ83(商標)は、有機溶媒の混合液であるため、たとえば手袋および安全メガネを使用するなど、身体への安全対策を講じる必要がある。
【0016】
ベンタナ・メディカル・システムズ社への米国特許出願公開第2004/0002163号明細書および国際公開第03/089240(A1)号パンフレットは、顕微鏡スライドに封入された生体組織切片に染料を適用するための、自動スライド染色システムについて記載している。組織試料は、組織試料を包埋しているパラフィンの融点より上の温度の脱パラフィン液に試料を接触させることによって、脱パラフィンされる。液化されたパラフィンを次にすすいで除去する。脱パラフィン液は水性ベースの流体であり、包埋剤が50〜57℃の間の融点を有するパラフィンである場合、通例、60〜70℃の間の温度まで加熱される。
【0017】
ベンタナ・メディカル・システムズ社への米国特許第6,855,559号明細書および米国特許第6,544,798号ならびに国際公開第99/44030パンフレットおよび国際公開第00/14507号パンフレットは、試料スライドが乾燥して包埋剤が可溶化されるように、試料の片側を加熱することによる、有機溶媒を使用しない包埋剤の除去を開示している。可溶化された包埋剤はその後、洗浄除去される。包埋剤は、免疫組織化学(IHC)、インサイチューハイブリダイゼーション(ISH)または他の組織化学または細胞化学操作の前に、自動装置で生体試料から除去される。
【0018】
国際公開第99/44030号パンフレットの開示により、包埋組織の脱パラフィンは、個々のスライドを精密な制御により加熱して、組織に包埋されたパラフィンを溶出させ、水溶液中に浮遊させて、水溶液からすすいで除去することにより達成される。加熱は、組織試料と共にスライドが上に配置され得るスライド回転式トレーの周囲を放射状に取り巻いて配置されたサーマルプラットフォームによって達成される。
【0019】
熱を使用する包埋剤の除去は、Torstein Ljungmann他への国際公開第2005/057180号パンフレットにも開示されている。
【0020】
包埋剤の除去に熱を使用する方法およびシステムの欠点は、パラフィン包埋生体試料が5分から60分に及ぶ範囲の期間中、高温にさらされなければならないため、これが低速の工程であり得るということである。別の欠点は、組織切片中の最後のパラフィン残留物を除去する効率が低いと推定されていることである。また別の欠点は、使用する加熱要素によって、生体試料を置いた表面と加熱要素との間の十分な接触の維持が要求されることである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本明細書で開示する簡単であるが、有効な方法は、包埋生体試料の表面上で試薬形成層を運搬して、これにより包埋剤を除去することに基づいている。試薬形成層はキャリア組成物の上に位置して、ここでキャリア組成物はパラフィンの溶解に関与しない。この2相系は、2つの溶液が混和しないので形成される。本願における「非混和性」という用語は、混合できない、または均質性を達成できないこと、すなわち2つの溶液を接触させたときに、本質的に均質混合ができないことと理解すべきである。
【0039】
試薬形成層はキャリア組成物よりも低い密度を有し、それゆえ2相系の上相を形成する。この層は、本開示において「上層」または「第2相の層」と呼ばれることもある。試薬形成層が溶媒である実施形態において、この層は「溶媒層」と呼ばれることもある。キャリア組成物は、2相系の第1相として作用し、「下層」、「第1相の層」または「溶媒キャリア層」と呼ばれることがある。
【0040】
本願で使用する場合、「生体試料」は一般に、支持体に封入することができる、遊離状態または組織内のどちらかの、いずれの細胞の集合も指す。非網羅的な例としては、臓器の切片、腫瘍切片、体液、塗抹、凝固切片、血液、細胞調製物、微生物および細胞株が挙げられる。
【0041】
「支持体」は一般に、少なくとも1つの生体試料がさらなる分析のために配置されることがあるいずれの媒体も指す。これはいずれの支持体、たとえば試験管、チップ、アレイ、ディスクまたはスライド、たとえば顕微鏡スライドをも含む。本明細書で使用する場合、「試料ホルダー」は、少なくとも1つの生体試料を支持することができる、いずれの支持体、たとえばキャリア、試験管、チップ、アレイ、ディスクまたはスライド、たとえば顕微鏡スライドをも含む。
【0042】
「試料ホルダー」または「支持体ホルダー」は、支持体の群、たとえばスライドの群を保持し得るラックを支持することが可能な器具を含むこともある。
【0043】
「試料ホルダー」は、より大規模の支持体、たとえば少なくとも1つのより小型の支持体、たとえば複数のスライドラックであって、各ラックが複数のスライドを含有するスライドラックを保持するスライドラックホルダーをも指すことがある。ホルダーは、移動、たとえば垂直、水平または約1本以上の軸を中心とした枢動を可能にするような方法で、解放自在であり得る、固定され得る、および/または保持され得る。一実施形態において、試料ホルダーは試料保持手段として機能し得る。試料ホルダーの代替例としては、回転式トレー、トレー、ラック、キャリア、ホルダー、コンパートメントまたは試料および試料キャリアの操作および処理に使用される他の運搬機構が挙げられ、これのいずれも少なくとも部分的に除去され得る。
【0044】
本明細書で使用する場合、「包埋剤を除去すること」または「包埋剤の除去」は、試料がさらなる処理および/または分析が受けられるようにするための、包埋生体試料からの十分量の包埋剤の除去を指す。通例、このような分析は、組織学、たとえば免疫組織化学またはインサイチューハイブリダイゼーションであり、除去すべき包埋剤の量は、最適な分析技法が試料中の活性部位の少なくとも1つに到達できるようにするのに十分な量となる。包埋剤がワックスまたはパラフィンである場合、この工程は、「脱ワックス」または「脱パラフィン」と呼ばれることもある。
【0045】
2相系は、比較的少ない量の溶媒を包埋生体試料からの包埋剤、たとえばパラフィンの除去に使用することができる前処置系である。たとえば、包埋剤、たとえばヒストクリアII(登録商標)を除去する試薬をキャリア組成物の上に添加してもよい。キャリア組成物は、たとえば脱イオン水(Dl水)または標的賦活化緩衝剤であることができる。溶媒(たとえばヒストクリアII(登録商標)またはクリアリファイ(Clearify)(商標))は、水よりも低い密度を有し、したがって水の上に浮き、このため液体2相系を生成する。
【0046】
方法は、包埋生体試料をその表面上に有する支持体または試料ホルダーを容器に入れること、および前処置タンクまたは容器内に2相系の試薬を導入することによって行ってもよい。脱パラフィンの間にキャリア組成物の体積が変化を受ける。たとえばキャリア組成物の体積を増加させて、溶媒の上層が容器または前処置タンクの上または上端に向かって運搬されるよう、それゆえ包埋生体試料を越えて絶え間なく流れるようにしてもよい。一実施形態において、溶媒の層は包埋生体試料を一度に部分的に被覆する。さらなる実施形態において、溶媒の層は包埋生体試料を一度に完全に被覆する。
【0047】
本願の一実施形態において、2相系は、包埋試料の脱パラフィンのための改良された方法および装置を提供する。2相が動きながら試料と接触していることが有益である。溶媒が最初にパラフィンと接触するとき、溶媒はパラフィンの溶解を開始する。溶媒の動きは、パラフィンの一部を試料から引き剥がすのに役立つ。その後、キャリア組成物が試料ならびに溶媒および/またはパラフィンの残りと接触して、溶媒および/またはパラフィンを洗い流す。
【0048】
洗浄されたいずれの溶媒および/またはパラフィンも浮いて、上相と混合するようになる。この工程は、必要な場合には、最適な脱パラフィンおよび試料の洗浄が達成されるまで、数回反復してもよい。
【0049】
本願の一実施形態により、工程を3回、すなわちスライドの上へ1回、次にスライドの下へ、次にスライドの上へと反復して、そしてオーバーフロー中に入れることができる。必要な場合には、試料および包埋剤の種類に応じて、工程をさらなる回数反復することも可能である。工程をより少ない回数、たとえば1回のみ行うこと、すなわち溶媒層をスライドの上へ移動させて、オーバーフロー中に入れることも可能である。
【0050】
本願の一実施形態において、生体試料の包埋剤の除去、再水和および標的賦活化は、3つの独立した工程によって達成され、おそらくこれに内因性ペルオキシダーゼ活性を遮断する試薬の適用が続く。これは本願の2相脱パラフィン系を使用して行うことができる。内因性ペルオキシダーゼ活性を遮断する試薬をキャリア組成物に添加することができる。それゆえ、包埋剤を溶解させる溶媒が試料を越えて最後に流れたときに、遮断剤を含むキャリア組成物が試料と接触して、内因性ペルオキシダーゼの活性が本質的に遮断される。前述したように、2相系を使用する場合は再水和のステップは必要ではないので、試料を標的賦活化に直接進めることができる。
【0051】
本願の別の実施形態において、生体試料の包埋剤の除去、再水和、および標的賦活化は、内因性ペルオキシダーゼ活性を遮断する試薬の適用と共に、組み合わせて単一のステップとされる。このような実施形態は、フォー・イン・ワン法と呼ばれることがある。
【0052】
免疫組織化学では、スリー・イン・ワンと呼ばれることが多い、非溶媒ベースの手順が、ホルマリン固定パラフィン包埋組織試料中のエピトープの標的賦活化に関連して普通に使用される。スリー・イン・ワン手順は、染色前のホルマリン固定パラフィン包埋組織切片の脱パラフィン、再水和および熱誘導型エピトープ賦活化(HIER)のステップのために単一の試薬(たとえばDako;S2375)を使用することを含む。スリー・イン・ワン試薬を包埋試料と接触させて、試薬および/または試料は包埋剤の融点を超えて加熱される。包埋剤は溶解して、試料から除去することができる。
【0053】
容器または前処置タンクにおいてスリー・イン・ワン工程を行う場合、本願の装置および方法を使用して、包埋剤が試料と再び接触することなく、溶融した包埋剤を容器または前処置タンクから除去することができる。これが好都合であるのは、除去された包埋剤が試料と再度接触した場合に、試料上に包埋剤の残留物をおそらく残すからである。溶融した包埋剤は、スリー・イン・ワン試薬の密度より低い密度を有し、したがってこれが2相系を形成するスリー・イン・ワン試薬の上に浮く。上層(すなわち包埋剤)は次に、本明細書に記載するようなオーバーフローによって、ならびに本願の方法および装置によって、容器または前処置タンクから除去される。
【0054】
本願の別の実施形態において、脱パラフィン、再水和、標的賦活化および内因性ペルオキシダーゼ活性を遮断する試薬の適用を、フォー・イン・ワンとも呼ばれる単一の試薬における単一の工程にまとめることもできる。フォー・イン・ワン試薬はスリー・イン・ワンに類似していて、すなわちフォー・イン・ワンは脱パラフィン、再水和および標的賦活化のステップを行うことができるが、さらに内因性ペルオキシダーゼ遮断のステップを含んでいる。ペルオキシダーゼは、染色において別のペルオキシダーゼ、たとえばホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)が使用され、これらが同一の基質に触媒作用するときに、この染色に影響を及ぼすことができる。在来のスリー・イン・ワン工程および試薬は、自動化および手動での実施の両方について、アッセイ時間を延ばし、このためアッセイコストを増大させる酵素遮断ステップを必要としない。手動で実施する場合の在来のスリー・イン・ワンは、酵素遮断ステップのために必要な実習時間の延長も要する。フォー・イン・ワンの適用は、免疫標的を賦活化するためだけに先に使用された加熱ステップが、今や脱パラフィン、再水和、標的賦活化およびペルオキシダーゼ遮断を含むことを意味する。
【0055】
免疫組織化学のためのフォー・イン・ワン試薬によって、在来の独立ユニット操作と比較した場合、必要なステップの数が減少する。また、フォー・イン・ワン緩衝剤によって、4つのステップを同時に行うことが可能となり、アッセイ時間が短縮される。全自動アッセイ、半自動アッセイおよび手動で実施するアッセイでは、アッセイ時間を短縮することができる。手動で実施するアッセイでは、必要な実習時間も短縮される。フォー・イン・ワン法は、熱誘導型エピトープ回収に使用されるいずれの加熱器具によっても使用できる。通例、在来の順序でこれらのステップを実施すると、40から60分かかる。フォー・イン・ワンを使用すると、総アッセイ時間がたとえば20から40分に短縮されることがある。この時間をフォー・イン・ワン緩衝剤中でスライドを加熱するためにも使用できる。処理時間の短縮によって、実験室で1稼働日中に免疫組織化学アッセイを2回以上行うことができるようになる。処理時間の短縮によって、アッセイのワークフローも改善される。フォー・イン・ワン工程は、たとえばDako S2367およびS1699標的賦活化緩衝剤と共に使用してもよい。
【0056】
少なくとも1つの実施形態において、フォー・イン・ワン工程は、最初にスライドをベーキングすること、次にスライドをフォー・イン・ワン緩衝剤中でたとえば約20から40分間加熱すること、および次に免疫組織化学アッセイを行うことを包含していてもよい。たとえば標準免疫組織化学工程において、キシレン中での脱パラフィンは2回、毎回約5分間かけて行ってもよく、次にアルコール中での再水和を4回、毎回約5分間かけて、次に熱誘導型エピトープ賦活化をたとえば約20から40分間行ってもよく、次に酵素遮断を約10分間かけてもよく、次に免疫組織化学アッセイを行う。
【0057】
本願の少なくとも1つの実施形態において、フォー・イン・ワン緩衝剤を含有する容器にパラフィン包埋組織の切片を直接入れて加熱する。熱は、当分野で一般に公知のデバイスおよび方法、たとえば水浴によって、工程に供給してもよい。加熱後、スライドを洗浄緩衝剤中で洗浄して、次に実験室によって使用される免疫組織化学手順に従って処理することができる。フォー・イン・ワン試薬を使用することによって、加熱後洗浄ステップの間に、内因性ペルオキシダーゼは効率的に遮断され、同時に切片上のパラフィンが溶融および洗浄除去される。少なくとも1つの実施形態において、0.075%−0.00005%の、たとえば0.075%−0.0000025%の範囲の濃度の過酸化水素がうまく使用された。阻害剤としての過酸化水素の使用は先に試みられているが、結果は、本明細書で開示するように非常に低い濃度を添加する概念が発明されるまで、不満足なものであった。
【0058】
本願の別の実施形態において、試料中のパラフィンまたは溶媒残留物の可能性をさらに低下させるために、染色後浄化工程が行われる。このような実施形態により、染色された試験片または生体試料は、いずれの残留物も溶解させることができる組成物にさらに暴露される。たとえば、染色生体試料は、カバースリップの前に、いずれのパラフィン媒体も溶解させることができる溶媒に暴露されてもよい。
【0059】
本願の実施形態は、生体試料の処理のための系、装置、組成物および方法に、ならびにとりわけ、たとえば溶媒によって包埋生体試料から包埋剤を除去することによる、包埋生体試料の前処置にも関する。
【0060】
本願はさらに、自動生体試料処理装置の制御、管理、追跡、監視、スケジューリングおよび診断のためのソフトウェアおよびハードウェアにも関する。本願による系、方法および装置は、生体試料の処理全体を1つの機器で自動的に行えるように、自動処理装置、たとえば自動染色装置(ステイナー)におけるスライドまたは他のキャリアまたは基材(スライド)上の生体試料の自動前処置を可能にする。
【0061】
溶媒は一般に、包埋剤の迅速な軟化、液化または溶解を可能にする特性を有する。溶媒は、たとえばパラフィンを室温、すなわち約19〜25℃以上、たとえば最高40℃または60℃にて、数分以内に、またはたとえば数秒以内にさせ溶解することがある。試薬形成層は、包埋剤中に迅速に拡散してこれにより包埋剤を溶解させる能力を含む、物理的特性に基づいて選択してもよい。溶解した包埋剤はその後、容易に除去されるか、または除去前にさらに希釈される。
【0062】
試薬形成層が溶媒である実施形態において、溶媒は、中でも、低い粘度、低レベルの臭気ならびに貯蔵および使用中の高い安定性を有する。低い粘度によって溶媒の試料への送達が促進され、試料上への溶媒が迅速に広がって組織中に浸透するようになり、洗浄サイクル中に容易に除去される。
【0063】
本願で使用する場合、低粘度溶媒は、室温にて500cP以下の動的粘度を有する溶媒を指す。いくつかの実施形態において、85cP以下の粘度、たとえば30cP以下の粘度を有する溶媒または溶媒混合物を使用してもよい。低粘度溶媒の網羅的ではない例としては、植物油、たとえばダイズ、トウモロコシ、ナタネ、オリーブまたは約25から150cPの範囲の粘度を有する他の天然油であるが、その対応するモノアルコールエステル、たとえばメチルエステルは10から50cP以下の範囲の粘度を有していてもよい。
【0064】
本願の少なくとも1つの実施形態において、溶媒は、試料の変化を防止するために化学反応性ではない。言い換えれば、溶媒は、試料の変化を防止するために、化学的に非反応性、すなわち安定性である。一般に溶媒は、室温にて高濃度の包埋剤、たとえばパラフィンを溶解した状態で保持することができる。このため最小量の溶媒を使用することが可能となり、包埋剤、たとえばパラフィンの沈殿が防止される。
【0065】
本願の一実施形態において、溶媒は高い沸点、低い可燃性および高い引火点を有するか、または引火点を有さない。本願の別の実施形態において、溶媒は、不燃性である。このような溶媒の例、たとえば油は食品用途では、たとえば調理油として;医薬世業界では、たとえば薬品を溶解または安定化させるために;化粧品業界では、たとえば保湿剤として;および塗料業界ではたとえば希釈剤として使用されることがある。
【0066】
好ましい実施形態において、本願の溶媒または薬剤はヒトに対して、ならびに概して環境に対して低毒性または非毒性であり、分解および廃棄物処置が容易となる。
【0067】
実施形態において、適切な溶媒または溶媒混合物の選択は、3次元空間に溶媒または包埋剤の分散、極性および水素結合特性を集約した、ハンセンの溶解度モデルを使用することによって行ってもよい。
【0068】
許容可能な程度の溶解力をなお維持しながら、特性、たとえば密度、蒸気圧、蒸発速度、引火点、沸点などをより容易に実用に適合させることができる。特定の溶媒のこれらのパラメータそれぞれの値は、多様な参考文献源から得ることができる。珍しい溶媒のパラメータを計算または概算するための文献中の方法を利用できる。
【0069】
溶媒または溶媒混合物では、3次元空間にて生じた点は溶質の溶解度を表すことができ、ほぼ球状の形状がその点を囲み、その溶質の「相互作用半径」(Ir)を定義する。球内に入る3次元溶解度パラメータを有する溶媒は、理論的には包埋剤を溶解させる。
【0070】
いくつかの実施形態において、溶媒は包埋剤を溶解させる。生じた液体を試料から除去することができる。液体は、キャリア層として使用される水性洗浄緩衝剤よりも低い密度を有し、したがって試料から分離して、水性緩衝剤の表面に浮く。
【0071】
本願の好ましい実施形態において、溶媒の密度は、溶媒および溶解した包埋剤を除去するために使用されるキャリア組成物、たとえば洗浄緩衝剤の密度よりも低い。溶媒の密度は1.00g/mLより低くてもよい。たとえばパラフィン包埋生体試料がパラフィン油に対して約0.84の密度を有する溶媒ヒストクリア(登録商標)に暴露される場合、生じたヒストクリア(登録商標)およびパラフィン液体は、容易に除去するためにほぼ1.00g/mLまたはその塩含有量のためにやや高い密度を有する水性洗浄緩衝剤に暴露させたときに、試料から分離して、試料表面まで上昇する。いくつかの実施形態において、ほとんどの包埋剤は、スライドがたとえば水性緩衝剤を含むキャリア組成物によって洗浄される前に、溶媒によって置換および溶解される。
【0072】
溶媒とキャリア組成物の密度の差は、包埋剤を試料から分離する効率を向上させる。前記密度差は、たとえば水性洗浄緩衝剤中の塩含有量および溶媒の精密な混合を操作することによって大きくすることができる。
【0073】
一実施形態により、2相系を容器または前処置タンク内で生成して、この後に支持体上の包埋生体試料を2相系中に配置する。これにより包埋剤を除去するための溶媒は、試料と接触したときに生体試料の包埋剤を除去する。その後、処置した生体試料を別の容器内で容易に洗浄して、残りのいずれの溶媒も除去することができる。
【0074】
本願の別の実施形態により、試薬形成層、たとえば包埋剤を除去するための溶媒を容器または前処置タンク内に入れ、この後にキャリア組成物を容器内に挿入する。これにより、包埋剤を除去するための溶媒の容器底部から容器または前処置タンクの上部または上端への移動が起こる。包埋生体試料上での包埋剤を除去するために溶媒を移動する方法は、本願の範囲から逸脱せずに変更することができる。容器に配置されている支持体上の包埋生体試料はこれにより、両方の液相と接触する。包埋剤を除去するための試薬形成層は、包埋生体試料と接触して、試薬形成層が包埋生体試料を越えて移動するときに、包埋剤の除去を開始する。試薬形成層が生体試料を越えて通過すると、より下のキャリア組成物層が本質的に洗浄溶液として機能して、包埋剤および溶媒を含まない生体試料のすすぎを行う。2、3分間のインキュベーションの後、キャリア溶液を容器中に導入する工程を中止するか、またはたとえば2、3もしくは4回反復することができる。
【0075】
包埋剤が包埋生体試料から除去されると、試薬形成層または溶媒層は容器の底部にあっても、または容器の上部にあってもよい。一実施形態により、溶媒が容器の底部にある場合、溶媒は再使用されるか、または容器底部の出口を通じて除去することができ、いずれの過剰な溶媒もその後、生体試料からすすぐことができる。
【0076】
本願の別の実施形態により、キャリア溶液の体積を容器または前処置タンクが含有できるより多くまで増加させて、それゆえ試薬形成層の大部分を容器からたとえばドレイン中へオーバーフローさせて除去することができる。その後、熱および必要な方法ステップを加えることによって、標的賦活化を同じ容器で行ってもよい。
【0077】
オーバーフロー法を使用することによって、キャリア溶液を洗浄/すすぎ溶液として使用して、追加の溶液またはステップの必要性を低下させることができる。さらに本方法は、他の次の工程ステップへの包埋剤を除去するための溶媒のキャリーオーバーを防止して、交差汚染を最小限にするのに役立つ。
【0078】
いくつかの実施形態において、試料は、いずれの残留溶媒も除去できるアルコールまたは希釈アルコール溶液による脱パラフィンの後に、すすいでもよい。たとえばエタノール溶液を使用してもよい。好適なエタノール濃度の例は、水中10%のエタノール、20%のエタノールまたは30%のエタノールである。これらの組成物は、いずれの残存溶媒も試料からうまく除去するが、十分に高い引火点および沸点を有するので、火災または爆発のリスクが排除され、毒性が低減されている。このようなエタノール洗浄は、脱パラフィン後にいつでも、ただし抗体またはプローブを試料に適用する前に行うことができる。
【0079】
非混和性2相系は、同じ容器で標的賦活化と組み合わせて、既存の技法と比較することが可能であり、キシレンもアルコールも使用する必要がない。包埋剤を除去するための溶媒は、上層、上相または上層溶媒とも呼ばれ、これらの用語は互換的に使用される。本願で使用する溶媒は、包埋剤を溶解させることができる有機溶媒である。好適な溶媒の例は、これに限定されるわけではないが水素化ナフタレン、ナフテン系炭化水素、d−リモネン、パラフィン系/イソパラフィン系炭化水素、パラフィン系グリコールエーテル、アルカン炭化水素またはその組合せを含む。
【0080】
ナフテン系炭化水素は、商品名フォーミュラ83(商標)およびヒストチョイス(Histochoice)で販売されている;d−リモネンは商品名アメリクリア(Americlear)、バイオクリア(Bioclear)、クリアレン(Clearene)、ヘモ(Hemo)−DE、ヒストクリア、ヒストソルブ(HistoSolve)X、マスタークリア(Master Clear)およびサフソルブ(Safsolv)で販売されている。パラフィン系/イソパラフィン系炭化水素は、商品名クリアリファイ(Clearify)、クリアリング(Clearing)100、クリアライト(Clear Rite)3、アイソパーL、アイソパーG、アイソパーH、マイクロ−クリア(Micro−Clear)、マイクロ−クリア(Micro−Clear)−HC、マイクロ−クリア(Micro−Clear)−R、パラクリア(Paraclear)、セーフクリア(Safe Clear)、セーフクリア(Safe Clea)II、シャンドン(Shandon)XY、スライド−ブライト(Slide−Brite)、Xy−レス(Xy−Less)、XS−3で販売されている。パラフィン系グリコールエーテル混合物は、商品名プロ−パール(Pro−Par)で販売されている。
【0081】
溶媒の追加の例は、高級油の複合混合物である、ヒストクリア(登録商標)またはヒストクリア(登録商標)IIである。ヒストクリア(登録商標)は、ジョージア州アトランタのナショナルダイアグノスティックスによって販売されている有機溶媒の商品名である。ヒストクリア(C
10H
16)は、植物に見出される天然型炭化水素である。ヒストクリア(登録商標)は、1−メチル−4(1−メチルエテニル)シクロヘキサンp−メンタ−1,8−ジエン、d−リモネン、サフソルブ(Safsolv)(BrodiSpecialty Products,Ltd.より販売されている商品名)、ヒストレン、ジペンテンとしても公知であることもある。フィッシャーサイエンティフィックによるシトリソルブ(Citrisolve)は、d−リモネン系溶媒であり、キシレンおよび酢酸エチルの安全な代替品として使用してもよい。
【0082】
クリアリファイ(Clearify)(商標)およびヒストクリア(登録商標)がとりわけ有用な溶媒であり得るのは、多くの包埋剤、たとえばパラフィンが、温水性洗浄溶液、たとえば水性緩衝剤の使用による除去が困難である高級ポリマーを含有しているためである。アイソパーも非常に有用であるのは、臭気が限られていて、比較的安価なためである。
【0083】
有用な溶媒の追加の例は、ペンタン、ヘプタン、ヘキサン、オクタンならびにドデカンを含む高級類似体および分枝異性体を含むアルカン炭化水素;トルエン、クロロベンゼン、1−メチルナフタレン、ジイソブチルケトン、ビフェニルおよび多様なハロゲン化溶媒ならびにその混合物である。
【0084】
好適な溶媒の他の例は、動物、植物または鉱物源をベースとする油または混合物である。植物油は、エッセンシャルオイルまたは天然油であってもよい。天然油は動物の油脂に似ている。天然油は、生分解性であり、低い毒性を有する、長鎖脂肪酸の天然型トリグリセリドである。粗天然油は、抽出後、たとえば、遊離脂肪酸の除去、漂白および真空水蒸気蒸留によって精製して、臭気、香味および一部の発色生成物を除去することができる。
【0085】
おそらく興味深いのは、動物および植物油を含む、低毒性もしくは非毒性溶媒または油である。植物油は、グリセリンと脂肪酸の各種ブレンドとのエステルであることができる。植物油は、低い毒性および低い可燃性を有し、広く入手可能である。植物油の供給源の例は、これに限定されるわけではないが、カシュー、ヒマの実、ココナッツシード、アマニシード、グレープシード、アサ、マスタード、ポピーシード、ナタネ、キャノーラ、ベニバナ、ゴマおよびヒマワリなどの脂肪種子を含む。植物油の追加の供給源は、これに限定されるわけではないが、アーモンド、アプリコット、アボカド、トウモロコシ、コットン、ココア・シード・バター、ココナッツ、フサリウム、ヘーゼルナッツ、ニーム、オリーブ、パームおよびパーム核、ピーナッツ、カボチャ、コメ、ダイズおよびクルミを含む。
【0086】
たとえば油は、これに限定されるわけではないが、トウモロコシ、ダイズ、パーム、ナタネ、ヒマワリシード、ピーナッツ、コットンシード、パーム核およびオリーブからの油または油の混合物を含む。植物油は、これに限定されるわけではないが、カプリルおよびカプリン脂肪酸をベースとした水素化植物油および精製油および混合物を含んでいてもよい。
【0087】
本願のいくつかの実施形態において、溶媒はエステルまたは植物油を含んでいてよい。エステルは、植物油のアルコール分解から調製した混合脂肪酸エステルであってもよい。通常、このような混合脂肪酸エステルは、それが調製された植物油の粘度および安定性と比較して、より低い粘度および改善された酸化安定性を有し、これによって第1の溶媒の粘度および安定性が改善されることがある。このようなエステル化またはトランスエステル化後に生じた生成物としては、たとえば分枝または直鎖1級アルコールと直鎖ジカルボン酸とのエステル、分枝鎖モノカルボン酸と直鎖ジオールまたはポリアルキレングリコールとのエステル、直鎖1級アルコールと分枝鎖ジカルボン酸とのエステルおよびネオペンチルポリオールとモノカルボン酸とのエステルが挙げられる。
【0088】
本願の他の実施形態において、第1の溶媒は、脂肪酸メチルエステル(FAME)含んでいてもよい。脂肪酸メチルエステルは、脂質または脂肪酸とメタノールとの間の触媒化反応によって生成することができる。8から18個の炭素原子を有するメチルエステルは、実用的に非毒性である。たとえば溶媒は、酢酸エチルエステル、ダイズメチルエステルまたはダイズエチルエステルを含んでいてもよい。
【0089】
溶媒の分解、たいていは酸化に対する安定性は、酸化防止剤を添加することによって低下させることができる。酸化防止剤の例は、これに限定されるわけではないが、ヒンダードフェノール、たとえばブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)およびジブチルpクレゾール;ある種のアミン、たとえばフェニルアルファナフチルアミン;硫黄およびリンまたはこれらの元素の両方を含有する化合物;金属フェナート、たとえばフェノールジスルフィドのアルカリ土類金属化合物;チオホスフェートおよびカルバメートの亜鉛化合物、たとえば亜鉛ジアルキルジチオ−ホスフェート−1を含む。
【0090】
さらに、電離放射線によって開始されるラジカル反応は、溶媒に300〜400nmの波長範囲にて吸収する化合物を添加することによって減少させることができる。このような化合物の例は、ヒドロキシジフェニルケトンおよびヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールである。
【0091】
実施形態において、溶媒または試薬は、染料、蛍光添加剤、臭気物質および/または抗菌性保存料を含んでいてもよい。染料または臭気物質を溶液に添加することによって、あるタイプの試薬、溶媒、プロトコルおよび機器に独自の外観が提供されてもよい。
【0092】
好適な染料の例としては、これに限定されるわけではないが、非水溶性、油溶性アゾ染料、たとえば赤色である、1−(2,4−ジメチルベンゼンアゾ)−2−ヒドロキシ−ナフタレン;または赤みがかった褐色である、2,3−ジメチル−4−(2−ヒドロキシ−1−アゾナフチル)−アゾベンゼンが挙げられる。
【0093】
溶媒または試薬は、使用者によるその容認性および認識を改善するために、臭気物質を添加して自然の臭気をマスキングすることができる。これらの生成物は、ハッカ油、マツ油およびシトロネラ油などの物質を含む。とりわけ一部の天然油の独特の匂い、たとえば柑橘系油は、快い臭気物質の添加によって変化させることができる。
【0094】
抗菌性保存料を溶媒に添加して、微生物の増殖を防止して、これにより貯蔵寿命を延長することができる。好適な人工保存料の例としては、これに限定されるわけではないが、イミダゾリン、アミドアセタール、ヘキサヒドロ−トリアジン、オキサゾリジン誘導体、O−ホルマール、フェノキシアルコールおよびイソチアゾロン誘導体が挙げられる。
【0095】
キャリア組成物、キャリア流体は、下層、下層溶媒、下相もしくは第1相、または第1相液体と呼ばれてもよい。これらの用語は、本願を通じて互換的に使用される。好適なキャリア組成物は、水および多様な水性溶液、たとえば緩衝剤溶液または標的賦活化溶液である。両方の層について本明細書で言及する溶媒は、フォー・イン・ワン工程にも利用してもよい。
【0096】
本願の一実施形態により、キャリア組成物は、生体試料からの洗浄溶液、洗浄溶媒および/または包埋剤として機能する。洗剤を第2の溶液に添加して、その洗浄能力を改善してもよい。
【0097】
包埋生体試料の再水和は、キシレンが包埋剤を除去するために使用される場合、生体試料からキシレンを除去するために従来より行われている。しかし、本願の方法を使用する場合、生体試料を再水和する必要はない。このため、包埋剤の除去から、たとえば標的賦活化に直接続けることが可能である。
【0098】
(たとえばエピトープの感受性のために)標的賦活化を行うことができない工程において、すべての包埋剤を本願によって除去して、試験の性能を向上させる。包埋剤を除去するために在来の方法を使用する場合、通常、少量の包埋剤が生体試料中に残される。
【0099】
生体試料の固定により、構造が破壊されるか、または抗体の結合部位がマスキングされることが多く、小ペプチドまたはエピトープの抗原性が低下する。したがって、従来のIHC法によるホルマリン固定に感受性であり得るエピトープを検出することは困難なことがある。熱誘導型エピトープ賦活化(HIER)法は、抗原性を回復させることができ、固定生体試料中の多種多様の抗原をうまく検出するために使用されてきた。
【0100】
本願の一実施形態に従って、エピトープ賦活化溶液(標的賦活化溶液とも呼ばれる)をキャリア組成物として使用することができる。それゆえ、包埋剤の除去後に、標的賦活化を生体試料中で行うことができ、生体試料の全体または少なくとも有意な量が標的賦活化溶液中に完全に浸漬される。HIERで使用するための好適な溶液は、たとえばカルシウムキレート化溶液、たとえばクエン酸塩緩衝剤、MES緩衝剤またはトリス−EDTA溶液である。
【0101】
本願のさらなる目的により、溶媒を含む上相は、加熱中の蒸発を最小限に抑える、標的賦活化溶液の上の蓋として機能する。それゆえ、生体試料の装置内での濃縮、乾燥および過熱が減少する。
【0102】
本願の一実施形態により、第1の溶液(溶媒または試薬形成層)および第2の溶液(キャリア組成物)は組み合わされて2相系を形成する。本願の実施形態において、試薬形成層の体積は固定されているが、キャリア組成物の体積は変動する。このためキャリア組成物の体積を増加させると、第1の溶液を含む相は容器または前処置タンク内で上方に移動し、キャリア組成物の体積が低下すると、試薬形成層を含む相が容器内で下方に移動する。生体試料を有するキャリアを容器中に挿入して、キャリア組成物の体積が変動すると、試薬形成層を含む相が生体試料の上で上下に移動する。試薬形成層は、工程において生体試料中のいずれの包埋剤も除去する。
【0103】
試薬形成層の厚さは、容器のサイズ、第2の溶液の体積および生体試料を保持するキャリアまたは支持体に依存している。このため、異なる厚さの試薬形成層が本願で検討される。本願の一実施形態により、試薬形成層の厚さは小さくまたは薄くすることができる。これにより必要とされる第1の溶液の体積が小さくなり、より環境に優しく、より簡単になり、コストが低減される。一実施形態において、試薬形成層(第2相または溶媒層とも呼ばれる)は、約1cmの厚さを有していてもよい。
【0104】
試薬形成を含む相による包埋生体試料を越える流動または通過によって一般に、生体試料がさらに標的賦活化または他の工程ステップをただちに受けられるように、十分な脱パラフィンがもたらされる。包埋剤の除去を最適化するための追加の流動または通過は、本開示によって検討される。
【0105】
包埋生体試料の前処置のための本方法の一実施形態は、包埋剤の融点を低下させるまたは包埋剤を溶解させることができる上相およびキャリア溶媒として作用する下相を持つ、非混和性2相系を提供すること;包埋生体試料を非混和性2相系に暴露して、これにより包埋剤を液化させること;上相をオーバーフロー工程によって除去すること;ならびに場合により、試料をすすぎ溶液、たとえば脱イオン水(DI水)または標的賦活化溶液によってすすぐことを含む。
【0106】
本願の実施形態は、非混和性2相系の少なくとも一部が提供される容器を提供することをさらに含む。前記容器は、本願において処理タンク、ディップタンクまたは前処置タンクと呼んでもよい。実施形態において、試料を非混和性2相系に暴露するステップは試料を処理タンク内に浸漬するステップを含む。いくつかの実施形態において、試料は処理タンク内に垂直に置かれる。
【0107】
本願のいくつかの実施形態は、非混和性2相系を包埋生体試料に供給する供給手段をさらに提供する。供給手段は、溶媒供給源、供給ノズルおよび溶媒を供給源から供給ノズルまで供給する供給管であって、これによってノズルを通じて溶媒を試料まで供給することができる供給管を備えていてもよい。本願の別の実施形態において、試薬形成層、すなわち溶媒は、入口またはバルブを通じて前処置タンク中に導入されてもよい。
【0108】
いくつかの実施形態において、包埋生体試料を非混和性2相系に暴露するステップは、試料をキャリア組成物(下層またはキャリア層とも呼ばれる)によってすすぐ、必須ではないステップを含む。必須ではないすすぎステップは、2相系で使用される同じキャリア組成物によって、または別のものによって行ってもよい。いくつかの実施形態において、すすぎは、入口または供給手段を介してキャリア組成物を前処置タンク中に供給することによって達成される。いくつかの実施形態において、試料は、下層またはキャリア層の連続流の下で所定の期間すすぎを行う。他の実施形態により、試料は、複数のすすぎ期間の間に、より下層またはキャリア層によってすすがれ;各すすぎ期間は所定の時間長を有し、2回のすすぎ期間は、所定の時間長の非すすぎ期間によって隔離されている。いくつかの場合において、試料が非混和性2相系によってすすいだ後に、十分な量の包埋材料が除去され、スライドが十分に清浄になるため、必須ではないすすぎステップは必要ないかもしれない。
【0109】
上記のすすぎステップは、非混和性2相系すすぎサイクルとも呼ばれ、所望の回数、たとえば2から3回以上反復してもよい。
【0110】
実施形態において、新たな非混和性2相系が試料に供給される前に、試料にすでに供給された非混和性2相系は試料から除去される。
【0111】
本願の実施形態は、容器または前処置タンクからの非混和性2相系の除去のための機械的手段も提供できる。たとえば、上層を前処置容器からたとえばドレイン中へ除去する上水平移動バー。非混和性2相系はたとえば、非混和性2相系を試料から吹払うように構成されたエアブロワによって完全または部分的に除去してもよく、または溶媒は、溶媒を吸込むように構成された吸込機器によって除去してもよい。代替として、エアブロワは、非混和性2相系がエアブロワによって吹払われるまたは吸込まれるかのどちらかによる、追加の吸込機能によって構成されてもよい。さらに非混和性2相系は、上層のオーバーフローおよび収集により最初に上層を除去することによって除去してもよい。
【0112】
いくつかの実施形態において、供給手段、たとえば供給管、供給ノズル、入口は、スライドを乾燥させるために、またはスライド上に考えられる流体、たとえば上層、下層、非混和性2相系または必須ではない追加の洗浄溶液を吹払うために、スライド上にエアを吹き付けるためのエアブロワまたはエアノズルを含む。
【0113】
いくつかの実施形態において、遠心機を使用して流体、たとえば上層、下層、非混和性2相系または必須ではない追加の洗浄溶液を除去してもよく、これにより流体は遠心機によって引き起こされた遠心力によって除去される。遠心機は1本以上の回転軸を中心として回転するように構成されていてもよい。回転軸は、スライド面にあるもしくはスライド面と平行な軸、またはスライド面に垂直な軸であってもよい。
【0114】
いくつかの実施形態において、スライドは、スライドをゆっくりまたは迅速に傾斜または回転させて、スライドからの液体の効率的な除去を補助する、1つ以上の取付箇所または固定具に載せられる。
【0115】
いくつかの実施形態において、試料からの流体の除去は、重力によって達成される。試料を有するスライドは、たとえば垂直位置に置いてもよく、これにより流体が重力のために、またはオーバーフローによってスライドから流れ落ちる。
【0116】
実施形態において、液化した包埋剤の考えられる残留物を試料から洗い流すための洗浄溶液を提供する必須ではないステップは、洗浄溶液を供給するための洗浄溶液供給手段を提供するステップを含む。洗浄溶液供給手段は、洗浄溶液供給源、洗浄溶液供給ノズルおよび供給源から供給ノズルまたは入口を介して試料へ洗浄溶液を供給するための洗浄溶液供給管を備えていてもよい。いくつかの実施形態において、洗浄溶液の供給および試料の洗浄は自動的に制御される。いくつかの実施形態において、溶媒供給ノズルおよび溶媒管の考えられる同様の部品は、洗浄溶液供給ノズルおよび洗浄溶液管の考えられる同様の部品として機能するように構成されている。
【0117】
実施形態により、キャリア組成物、下層もしくキャリア層または必須ではないすすぎ溶液は、液化包埋剤を除去することができる水性緩衝剤溶液であり、上層と非混和性である。一実施形態において、キャリア層はDI水でもよい。水性緩衝剤溶液の例は、これに限定されるわけではないが、トリス緩衝食塩水ツイン−20(TBST)、PBS、Hepes、MES緩衝剤ならびに在来のIHCおよびISH標的賦活化溶液である。
【0118】
本願のいくつかの実施形態は、包埋剤の除去、すなわち脱ワックスまたは脱パラフィンの前に、包埋生体試料を疎水性染料、たとえばアゾ染料、スダンブラックまたはオイルレッドOを含む洗浄溶液によってすすぐことを場合によりさらに含む。染料は、使用されるカメラにより高コントラスト画像が得られるように選択してもよい。たとえば染料は、包埋剤および組織の両方に非共有結合してもよい。洗浄後、包埋生体試料は着色され、周囲のスライドはほぼ未着色となる。カメラなどの撮像装置によって撮影された着色包埋生体試料およびスライドの画像は分析することができ、これにより着色包埋生体試料は、そのサイズおよびスライドまたは支持体上の位置と共に検出することができる。この情報は、たとえばステイナーが試薬滴下域、必要な試薬の体積を定義し、染色工程の品質を確保するために使用することができる。染料は、包埋剤の除去中に除去される。染料は、包埋剤の除去、たとえば脱ワックスまたは脱パラフィンおよび洗浄が効率的であったことを検証するためにさらに使用することができる。
【0119】
従来より、アルコール処置の手順は、組織において有機相から水相に変化するために行われた。本願は、包埋剤の除去が完了したとき、生体試料が水性環境にあり、包埋剤が水性組成物(キャリア組成物)によって置換されている方法を提供する。それゆえ、次の在来の再水和ステップへの必要性を実質的に排除する。在来のアルコールステップを実質的に排除することによって、工程全体が単純化され、結果として、アルコールの可燃性および毒性という不都合な点が回避される。
【0120】
本願の方法により、脱ワックスまたは脱パラフィン工程による廃棄物の量を減少させることができる。その上、純アルコールまたは高濃度アルコール混合物のどちらも一般に本願で使用されないので、廃棄物の性質が変わり、大量のアルコールを含むことの規制上および健康上の問題が実質的に回避される。加えて、本願による非毒性または低毒性試薬形成層を使用することによって、包埋スライドの前処置工程は単純化され、在来の除去方法よりも安全であり、同時に少なくとも同等の効率を保持している。
【0121】
上述したように、実施形態は、試料をすすぎ溶液、たとえば脱イオン水または標的賦活化溶液によってすすぐ、必須ではないすすぎステップも含んでもよい。
【0122】
上述したように、スライド上の流体、たとえば溶媒、洗浄溶液、すすぎ溶液または標的賦活化溶液をスライドまたは支持体から各種の方法で、たとえば印加された空気流、遠心力、重力、毛細管力による流れによって、吸引によって、または水平棒を移動させることによって除去してもよい。
【0123】
いくつかの実施形態において、スライドまたは支持体が垂直位置にある場合、試料は非混和性2相系および/または標的賦活化溶液に暴露される。このような垂直スライド位置において、試料が垂直位置となることも考慮される。非混和性2相系を使用して垂直スライド上に、すなわち垂直位置のスライド上に脱パラフィンを施す実施形態での利点は、非混和性2相系を用いない処理タンクで発生することがある交差汚染またはキャリーオーバーが実質的に回避または排除されることである。
【0124】
「交差汚染」または「キャリーオーバー」は、物質がこれらの物質の存在していない反応混合物中に運び込まれる工程を指す。これらの物質は、試料または試薬のどちらか一部であることもできる。このような場合、キャリーオーバーは、物質、たとえば試験片または試薬の、1つの容器からまたは1つの反応混合物から別のものへの移行を意味する。キャリーオーバーは、一連の試験片またはアッセイにおいて一方向または双方向のどちらであることもできる。
【0125】
加えて、スライドを個別に処置することによって、多数の処置プロトコルを多くの異なるスライドに並行して行うことができる。また、スライドを試料処理装置、たとえばステイナーに同時に装填する必要はないが、連続フロー工程で追加および除去することができ、すなわちスライドをステイナーに追加および除去して、同時にステイナーが他のスライドを処理する。
【0126】
非混和性2相系を利用するスライドの垂直処理を含む本願の実施形態において、1つのスライドから別のスライドへの細胞キャリーオーバーの可能性が排除されるのは、試料スライドが一般に新たに濾過された上層または標的賦活化溶液に暴露され、試料ホルダー内で試料スライドの上に非混和性2相系を流す系が、脱パラフィンまたは標的賦活化工程におけるスライド間での細胞キャリーオーバーによる考えられる交差汚染を一定方向で防止するためである。
【0127】
混和性2相系によるスライドまたは支持体の垂直処理の別の利点は、処理タンクを異なるステップ間に、たとえば前処置ステップとさらなる試料処理ステップとの間に浄化する必要がないことである。したがって、処理速度を向上させることができ、処理時間、たとえば総アッセイ時間(TAT)またはアッセイの処理時間を短縮することができる。
【0128】
非混和性2相系によって垂直スライド上に脱パラフィンを施す実施形態によるまた別の利点は、必要とされる溶媒体積を減少できることである。非混和性2相系によって、たとえば、非混和性2相系を用いないで処理タンクを使用する垂直洗浄と比べて、スライド1枚当たりに使用する溶媒の体積をより少なくすることができる。溶媒の体積は、スライド1枚および溶媒すすぎ1サイクル当たり、10ミリリットル未満でもよい。たとえば、溶媒の体積は、スライド1枚および溶媒すすぎ1サイクル当たり、2ミリリットル未満でもよい。別の例において、溶媒の体積は、スライド1枚および溶媒すすぎ1サイクル当たり、300マイクロリットル未満でもよい。さらに、非混和性2相系による垂直処理を使用すると、試料を有するスライド側面のみを非混和性2相系(試薬形成層およびキャリア組成物)に暴露する必要がある。
【0129】
本願による方法が高温においても行えることを理解すべきである。概して、溶解力、すなわち上層が包埋剤を可溶化または溶解する機能は、温度の上昇と共に上昇する。脱ワックスステップの間に温度を周囲温度よりも上昇させることによって、脱ワックスはなおより効率的となる。固体包埋剤を通じた上層の第1の浸透ステップは、温度によって増進させることができる。高い処理温度は、各種の方法で達成することができる。たとえば、包埋試料を2相系に暴露させながら;または供給される流体を、流体が試料に接触する前に加熱することによって、2相系が供給される前に包埋試料を加熱してもよい。本願の一実施形態において、非溶媒キャリア組成物を、前処置容器に添加して、試料と接触する前に包埋剤の融点より高い温度まで加熱してもよい。続いて、包埋剤が溶融した後に、低温のキャリア組成物を前処置タンクに添加する。溶融した包埋剤との接触時に、キャリア組成物は包埋剤を冷却して、効果的に凝固させて、オーバーフロー時に前処置タンクから運び去る。
【0130】
いくつかの実施形態において、高温は、室温と包埋剤の融点のすぐ下との間でもよい。高温は、25から60℃に及ぶ範囲であってもよい。好適な温度は、30から50℃に及ぶ範囲であっても、さらにおよそ40℃であってもよい。
【0131】
オートステイナー(商標)システム(ラブビジョンコーポレーション)は、自動化スライド処理システムの一例である。ステイナーは、たとえば、現在利用できるパラフィン包埋および凝固組織切片を染色するための試薬、サイトスピン、細胞塗抹標本および微細針吸引と適合性である。ステイナーは、免疫組織化学および細胞化学で日常的に使用される手動染色法を自動化するように設計されている。柔軟なプログラミングによって、各種の処理ステップの間のすすぎおよびブローステップ、ならびに64の各種試薬を含めた最大35ステップを含む、数に制限のないプロトコルが可能となる。染色操作では、1から48枚の顕微鏡スライドを処理することができる。染色プロトコルのいずれのステップの間にも、規定の体積の各種試薬が与えられるように個々のスライドをプログラミングすることが可能であり、廃棄物は危険物および非危険物収集容器に分離されて、廃棄コストが削減される。ステイナーはさらに、多種多様のデータを追跡するように設計されている。ステイナーは、患者、試薬およびリアルタイム操作データレポートを生成するとともに、試薬使用量を追跡して、機器保守も記録することができる。これに関連して、「試薬」という用語は、これに限定されるわけではないが、水性混合物、生物学的プローブ、ポリメラーゼ、抗体、消化酵素、前固定剤、後固定剤、読取用(readout)化学薬品、ステインおよび染料、マーカー色原体、フルオロフォアおよび溶媒を含む、試料キャリア、たとえばスライドに適用される化学または生物学的物質のいずれかの流体またはガスを挙げることができる。
【0132】
脱パラフィン後のパラフィンのいずれの痕跡も、すべてのスライドで慎重に監視できる。パラフィンの複屈折(二重屈折)を利用することによって、そうでなければ通常の明視野顕微鏡法では検出が困難であるパラフィン残留物を描出することが可能である。
【0133】
いくつかの実施形態において、スライドを処理する方法は、1枚以上の新しいスライドを試料処理装置、たとえばステイナーに導入すること、1枚以上の新しいスライドの少なくとも1枚のスライド識別情報を取得すること、スライド識別情報を使用するステイナーに関連付けられたデータベースから該1枚以上の新しいスライドの少なくとも1枚について処置プロトコル手順を取得すること、および1枚以上の新しいスライドの少なくとも1枚のための処置プロトコル手順に対応するコマンドリスト内のコマンドに従って新しいスライドを処理することを含む。いくつかの実施形態において、ステイナーがステイナーに先に提示された古いスライドのいずれを処理している間にも、1枚以上の新しいスライドがステイナーに導入される。
【0134】
いくつかの実施形態において、少なくとも1枚の新しいスライドの処置プロトコル手順は、少なくとも1枚の新しいスライドに関するスライド識別情報を使用して、少なくとも1枚の新しいスライドのための処置プロトコル手順を含有する個々のスライド記録を検索することによって、ステイナーに関連付けられたデータベースから取得してもよい。
【0135】
いくつかの実施形態において、少なくとも1枚の新しいスライドのための処置プロトコル手順に対応するコマンドリスト内のコマンドに従って少なくとも1枚の新しいスライドを処理することは、少なくとも1枚の新しいスライドのための処置プロトコル手順内の個々の処理ステップに対応するステイナーコマンドのリストを作成すること、およびステイナーで少なくとも1枚の新しいスライドにコマンドリスト内のコマンドを順序通りに実行することをさらに含む。いくつかの実施形態において、1枚以上の新しいスライドの少なくとも1枚の新しいスライドのための処置プロトコル手順に対応するコマンドリスト内のコマンドによって新しいスライドを処理することは、ステイナーによって自律的に行われる。
【0136】
いくつかの実施形態において、少なくとも1枚の新しいスライドのスライド識別情報は、少なくとも1枚の新しいスライドに添付されたコード化スライド識別情報を含有するラベルを読み取ることによって取得してもよい。いくつかの実施形態において、スライド識別は、コード化スライド識別情報を含有するグリフまたはバーコードを読み取ることによって取得してもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1枚の新しいスライドのスライド識別情報は、少なくとも1枚の新しいスライドに関連付けられた無線周波数識別タグを読み取ることによって取得してもよい。
【0137】
いくつかの実施形態において、ステイナーに関連付けられたデータベースは、ステイナーに先に提示されたいずれの古いスライドの処理とも同時に、スライド前処理、データ入力、問い合せおよびレポート生成を含む他の目的のためにアクセスしてもよい。スライド前処理は、ステイナーに関連付けられたデータベース内のスライドに関するスライド記録を作成または更新すること、およびスライドに添付するためのスライド識別情報を含有するラベルを生成することを含む。
【0138】
いくつかの実施形態において、ステイナーで少なくとも1枚の新しいスライドにコマンドリスト内のコマンドを順序通りに実行することは、コマンドリスト上の次のコマンドの実行のための前提条件が満足されているかどうかを判定すること、コマンドリスト上の次のコマンドの順序通りの実行のための前提条件が満足されていない場合には修正措置を講じること、およびコマンドリスト上の次のコマンドの実行のための前提条件が満足されたときに次のコマンドを実行することをさらに含む。いくつかの実施形態において、コマンドリスト上の次のコマンドの実行のための前提条件が満足されたときに次のコマンドを実行することは、試薬を少なくとも1枚の新しいスライドに塗布すること、および実行完了を反映するために、ステイナーに関連付けられたデータベース内の少なくとも1つのデータベース記録を更新することをさらに含む。いくつかの実施形態において、コマンドリスト上の次のコマンドの実行のための前提条件が満足されているかどうかを判定することは、次のコマンドを実行するのに使用される試薬に関する情報を取得すること、および十分な量の試薬が入手可能かどうかを判定することをさらに含む。
【0139】
いくつかの実施形態において、コマンドリスト上の次のコマンドの順序通りの実行のための前提条件が満足されていない場合に修正措置を講じることは、満足されていない次のコマンドのための前提条件についてオペレータに警報すること、および満足されていないステータスの変化のための次のコマンドの前提条件を監視することをさらに含む。
【0140】
いくつかの実施形態において、実行完了を反映するために、ステイナーと関連付けられたデータベースにおける少なくとも1つのデータベース記録を更新することは、少なくとも1枚の新しいスライドに講じられた措置を反映するスライドログ、試薬に講じられた措置を反映する試薬ログ、およびステイナーによって講じられた措置を反映するステイナーログから成る群より選択される少なくとも1つのデータベース記録を更新することをさらに含む。
【0141】
本願のいくつかの実施形態は、ステイナーネットワークにおいて少なくとも1つのステイナーとのネットワーク接続を確立すること、ネットワーク接続を介して少なくとも1つのステイナーにコマンドを送信すること、およびネットワーク接続を介して少なくとも1つのステイナーに送信されたコマンドに対応する応答を受信することを含む、ステイナーネットワーク(たとえばLAN)で接続された複数のステイナーのうち少なくとも1つのステイナーにてネットワークを介した操作を実行する方法も含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのステイナーとネットワーク接続を確立することは、ステイナーネットワーク内のデバイスから開始される。
【0142】
いくつかの実施形態において、ステイナーネットワークにおいて少なくとも1つのステイナーとのネットワーク接続を確立することは、ステイナーネットワーク内でエージェントとのネットワーク接続を確立することをさらに含み、エージェントの機能は、少なくとも1つのステイナーへのコマンドおよび少なくとも1つのステイナーから応答を中継すること、ならびに複数のステイナーに関連付けられたデータベースへの問い合せおよびデータベースからの応答を返すことを含み、データベースは、ステイナー、スライド、消耗品および複数のステイナーに関連付けられた処置プロトコルに関するステータス情報を含む情報を含む。いくつかの実施形態において、エージェントは、外部アプリケーションのための定義インタフェースも提供するソフトウェアツールであり、操作は外部アプリケーションを通じてネットワークを介して少なくとも1つのステイナーで行うことができる。いくつかの実施形態において、外部アプリケーションは、実験室情報システムである。
【0143】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのステイナーでネットワークを介して行われる操作は、診断試験の実行および診断情報の検索を含む。いくつかの実施形態において、診断情報がこのようなサービスが行われることを示している場合、診断情報は、少なくとも1つのステイナーでサービスを自動的にスケジューリングするために使用される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのステイナーでネットワークを介して行われる操作は、1つ以上のソフトウェアおよびファームウェアの更新を実行することを含む。
【0144】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのステイナーでネットワークを介して行われる操作は、ステイナーの消耗品の使用量に関する情報を取得することを含む。いくつかの実施形態において、ステイナーの消耗品の使用量に関する情報は、複数のステイナーについてのステイナー消耗品の集計使用量を含むことができる。いくつかの実施形態において、ステイナーの消耗品の使用量に関する情報は、試薬使用量の情報およびバルク流体使用量の情報を含む。いくつかの実施形態において、ステイナーの消耗品の使用量に関する情報は、1つ以上の消耗品の追加の供給分を発注することに関する決定を行うために使用される。いくつかの実施形態において、1つ以上の消耗品の追加の供給分の発注が自動的に行われる。いくつかの実施形態において、1つ以上の消耗品の追加の供給分の発注は、経済的な発注量に基づいている。いくつかの実施形態において、1つ以上の消耗品の追加の供給分の発注は、ステイナーネットワークを運用する実体によって同意された消耗品発注のための所定の計画に基づいている。
【0145】
いくつかの実施形態において、ネットワークを介して少なくとも1つのステイナーに対して行われる操作は、少なくとも1つのステイナー装置によって処理されているスライドのステータスを監視することを含む。いくつかの実施形態において、ネットワークを介して少なくとも1つのステイナーに対して行われる操作は、少なくとも1つのステイナーによって処理されているいずれのスライドの完了時間のリアルタイム推定値を取得することを含む。いくつかの実施形態において、完了時間のリアルタイム推定値は、ユーザの動作または他の予定外のイベント、たとえばステイナーからの試薬瓶の導入もしくは除去、またはステイナー内のスライドラックの優先順位の変更、またはステイナーへの新たなスライドの導入の効果を反映することがある。
【0146】
いくつかの実施形態において、ネットワークを介して少なくとも1つのステイナーに対して行われる操作は、少なくとも1つのステイナーによって処理されているスライド上で試料の画像を取得することを含む。いくつかの実施形態において、試料の画像は、適切な倍率および解像度で取り込むことができる。いくつかの実施形態において、ネットワークを介して少なくとも1つのステイナーに対して行われる操作は、ステイナー中に装填されなかったスライドに関するステータス情報を取得することを含む。いくつかの実施形態において、ネットワーク接続を介してステイナーに送信されるすべてのコマンドおよびネットワーク接続を介して受信されるすべての応答を含む、ネットワーク接続を介してステイナーと交換されるすべての情報は、暗号化されている。
【0147】
本願の実施形態は、ステイナーに連結されたロボットのためにある時間間隔でロボットタスクを適応的にスケジューリングする方法も含む。いくつかの実施形態において、ロボットは、ステイナーに連結された試薬瓶または流体容器内の試薬を使用する処置プロトコルに従って、ステイナーに連結されているスライドを処置する。いくつかの実施形態において、ある時間間隔でロボットタスクを適応的にスケジューリングする方法のステップは、時間間隔内に実行する準備が整っているすべてのロボットタスクを含むロボットタスクのリストを作成すること、ロボットタスクのリスト内の各ロボットタスクについてロボットタスク優先順位を計算すること、ロボットタスクのリストをロボットタスク優先順位の降順にソートすること、およびロボットが時間間隔にて完全に利用されるまで、またはロボットタスクのリストがなくなるまで、ソートされたロボットタスクのリストの上から開始するロボットタスクをロボットタスク実行キューに追加することを含む。
【0148】
いくつかの実施形態において、ロボットタスクのリストを作成することは、同時イベントの結果として生成されたロボットタスクをロボットタスクのリストに追加することをさらに含む。同時イベントは、新たないスライドをステイナー中に導入すること、試薬瓶または流体容器を追加または除去すること、およびスライドが載せられる1つ以上のスライドラックに割り当てられた優先順位を変更することの1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、ロボットは、ロボットをステイナー内の位置に移動させること、スライド用の試薬を混合すること、試薬瓶または流体容器からスライドに試薬を塗布すること、スライドにエアブローを行うこと、スライドを水平または垂直位置に傾けること;およびスライドの画像を捕捉することの1つ以上を含む多くの種類のタスクを実行できる。いくつかの実施形態において、試薬瓶または流体容器からスライドに試薬を塗布することは、緩衝剤をスライドに塗布すること、および脱イオン水をスライドに塗布することの1つ以上をさらに含む。
【0149】
いくつかの実施形態において、ある時間間隔でロボットタスクを適応的にスケジューリングする方法のステップは、ステイナーによって自律的に行われ、ステイナーは、ロボットおよびその動作に対する制御を行うこともできる。いくつかの実施形態において、ステップは、ステイナーが最初に電源投入される時間から開始して連続した時間間隔にわたって繰り返し実行される。いくつかの実施形態において、ステップは、他のステイナーおよびロボットタスクの実施と同時に実行される。
【0150】
いくつかの実施形態において、ロボットタスクのリスト内の各ロボットタスクのロボットタスク優先順位を計算することは、個々のタスクパラメータに割り当てられたサブスコアの数学的関数に基づいて、各ロボットタスクのスコアを計算することをさらに含む。いくつかの実施形態において、個々のタスクパラメータは、タスクの最も早い開始時間、タスクの最も遅い開始時間、タスクを実行するための継続時間、ロボットの位置、タスクと関連付けられたスライドが載せられているラックの優先順位およびロボットタスクの種類についての所定の相対優先順位をさらに含む。いくつかの実施形態において、ロボットタスクについての所定の相対優先順位は、高いかまたは低いかの一方であり得る。いくつかの実施形態において、あるロボットタスクは、最高の優先順位に指定され、ロボットの実行キューの最上位に直接加えられることもある。
【0151】
上記のように脱パラフィン/脱ワックスを用いることができる自動化試料処理装置の一実施形態は、
図1〜3に示され、以下で詳細に説明されている。自動化試料処理装置のこの考えられる実施形態のさらなる態様および詳細事項は、以下の出願および国際特許出願に記載され、このそれぞれは参照によりこのそれぞれの全体が本明細書に組み入れられている:国際特許出願公開WO 2004/057307 A1、国際特許出願公開WO 2004/057308 A1、国際特許出願公開WO 2004/058950 A1、国際特許出願公開WO 2004/059287 A2、国際特許出願公開WO 2004/058404 A2、国際特許出願公開WO 2004/059284 A2、国際特許出願公開WO 2004/059288 A2、国際特許出願公開WO 2004/059441 A2および、国際特許出願公開WO 2004/059297 A1、仮特許出願第60/616,444号ならびに米国特許出願第11/177,730号および米国特許出願第 11/229,098号および米国特許出願第11/227,270号。
【0152】
図1は、生体試料の自動前処置および処理のための前処置モジュール100の分解図を示す。
図1に示すように、前処置モジュール100は、処置が必要な生体試料112を含有することができるスライド110を含有する、スライドラック104を含む。いくつかの実施形態において、スライド110は、個々のスライド110が垂直位置で操作されるようにするスライドラック104に載せられている。スライドラック104は、内部フレーム117内へ摺動する。一実施形態において、内部フレーム117は、壁を有するのではなく、開放されていてよい。内部フレーム117の底部は、前処置のために液体が添加されたときに渦流または気泡を低減することができる、分散グリッド114を場合により有する。ラックアーム105は、スライドラック104が内部フレーム117内にある状態で、前処置タンク102のラック・アーム・ガイド116内へ摺動する。ラック・アーム・ガイド116は、スライドラックを前処置タンク102内の適正な位置まで誘導してもよい。前処置タンク102は、加熱シート107の温度を変化させる加熱リード109によって温度制御されてもよい。加熱シート107は、前処置タンクまたはコンテナ102の一部またはすべての壁にあってもよい。フランジ103は、前処置タンクまたはコンテナ102を取り付けるために使用してもよい。一実施形態において、液体が前処置モジュール100に全量の上まで添加された後に、液体はオーバーフローチャネル113内に流入してもよい。オーバーフローチャネル113は、液体の除去を容易にするために、オーバーフロードレイン111に向けて下方に傾斜している。
【0153】
図2Aは、前処置タンク202に挿入されたスライドラック204と共に、前処置モジュール200の正投影図(orthogonal view)を示す。
図2Bは、前処置タンク202に挿入されたスライドラック204と共に、前処置モジュール200の断面図を示す。
図2Bに示すように、一実施形態において、オーバーフローチャネル213は、液体があるレベルまで充填されたときに、液体がスライドラック204の上部から除去されるようにする。オーバーフローチャネル213内の液体は、オーバーフロードレイン211に収集されて、標的賦活化のために、または使用済み溶媒をリサイクルするためにさらに処理されてもよい。オーバーフロー液体は試薬形成層(または第2相の層)であってもよく、標的試料と共にパラフィンを含んでいてもよい。別の実施形態において、オーバーフロー液体は、第2相の層がすでに除去された後に第1相の液体(キャリア組成物)であってもよく、水性溶媒を標的試料と共に含んでいてもよい。
【0154】
図3A〜3Dは、試料312を含むスライド310がクリップ318を使用してスライドラック304に固定され、スライドラック304が適正に配置するためのガイドとして作用するラック・ガイド・レセプタクル316を備えた前処置タンク302内に挿入されている、前処置モジュール300の側面概略図を示す。
図3Aに示すように、2相溶媒系は、前処置モジュール300内に導入されていない。
図3Bに示すように、薄い第2相の層322およびより厚い第1相の液体320は、前処置タンク302内への導入が開始されている。第2相の層322は、第1相の液体320に浮く、薄い層である。第2相の層322は、前処置タンク302中の分散グリッド314より場合により上の、場合により一方向の入口306を使用して添加される。第1相の層(キャリア組成物)320は、前処置タンク302中の分散グリッド314の場合により下の、双方向ポート308を使用して添加されている。第1相の層(キャリア組成物)320が前処置タンク302に添加されるときに、必須ではない分散グリッド314は渦流または気泡を減少させることができる。渦流または気泡の減少によって、2相系は試料を均一の速度およびレベルで上昇させることができる。前述したように、本願の一実施形態において、第2相の層はパラフィン相を含んでいてもよく、第1相の液体は水性相を含んでいてもよい。
図3Cに示すように、追加の第1相の層(キャリア組成物)320は、双方向ポート308を通じて添加されている。第1相の層(キャリア組成物)320の添加によって、第2相の薄層322が支持体またはスライド310に向けて上方に押し流されて、試料312と接触することができる。
図3Dに示すように、追加の第1相の液体は、双方向ポート308を通じて添加されている。第1相の層(キャリア組成物)320の添加によって、第2相の薄層322がスライド310の上部まで押し流されて、第2相の層322と試料312との間の接触が完了する。一実施形態において、第2相の層322は次に、オーバーフローチャネル(図示せず)を使用して除去してもよい。第1相の液体320は次に双方向ポート308を使用して除去し、スライド310は前処置モジュール300から除去してもよい。別の実施形態において、オーバーフローチャネル(図示せず)を使用して第2相の層322を除去した後、新しい第1相の層320および第2相の層322を、試料312と接触する新しい第2相の層322のために添加してもよい。別の実施形態において、双方向ポート308を使用して第1相の層320を除去すると、同じ第2相の層322が試料312と2度目に接触するように第2相の層がスライド310の下方に押し流される。第1相の層320を場合により添加および除去して、第2相の層322をスライド310の上下に移動させることによって、同じ第2相の層322を試料312と複数回接触させることができる。第2相の層322が試料312を越えて1回または複数回流れるかの選択は、とりわけ試料の種類によって変わることがある。
【0155】
図4は、スライド412が挿入された前処置モジュール400の断面概略図を示す。
図4に示すように、第1相の層420が双方向ポート408を使用して添加され、第2相の層420が必須ではない分散グリッド414よりも場合により上の入口406を使用して添加されている。前処置モジュール400は、前処置モジュール400の両側でヒーターシート407の温度を変化させるヒーター・パワー・リード409を使用して温度制御してもよい。
図4に示すように、第2相の層420はスライド412の上部の試料412の上にあり、オーバーフローチャネル413に流入するのに十分な高さである。オーバーフローチャネル413中の液体は次にオーバーフロードレイン411中に排出されるので、液体を除去できる。少なくとも1つの実施形態において、第2相の層420はオーバーフローチャネル中にオーバーフローすることによって除去してもよく、第1相の液体420は前処置モジュール400に残存していてもよい。
【0156】
図5は、溶媒ベースの2相前処置法のための方法のフローチャート500を示す。
図5に示すように、工程は502を、スライドラックのタンク中への挿入ステップ504で開始する。前処置法は、ISHおよびIHCについてサイクル数を変化させて、ステップ506から512の間で連続ループ処置してもよい。ステップ506で第1相の液体を添加し、拡散グリッドを場合により使用して、第1相の液体を拡散グリッドの下で添加してもよい。上述したように、第1相の層またはキャリア組成物は、たとえば標的賦活化に使用できる水性相、または洗剤を含むDI水でもよい。ステップ506から510で第2相の層をスライドの上部まで流した後に、第2相の層を、ステップ510と512との間でオーバーフローチャネルを使用して場合により除去してもよい。前処置法を行い、十分な回数のループ処置または反復を行った後、ステップ514で、前処置タンクをスライドより上まで充填して、オーバーフローチャネルを使用して第2相の層を除去できるようにする。ステップ515において、熱誘導型標的賦活化が所望である場合、必須ではない酵素遮断を備える標的賦活化溶液であってもよい第1相の流体をたとえば約97℃まで加熱して、所望のプロトコルおよび時間間隔でインキュベートすることができる。次にスライドをステップ516にて前処置モジュールから移動して、ステップ518で前処置モジュールを空にする。高温スライドは、ステップ516で前処置タンクから次のステーションに移動される前に移動中の試料損傷を回避する温度まで、たとえば低速移動では約45℃まで、または高速移動では約65℃まで冷却してもよい。
【0157】
図6は、液化パラフィン2相前処置法のための方法のフローチャート600を示す。
図6に示すように、工程は、ステップ604での第1相の液体の添加で開始する。スライドラックは次にステップ606で挿入され、前処置モジュールが加熱される。前処置モジュールの加熱により、第1相の流体の加熱および/または第1相の層の上の第2相の層を形成するパラフィンの溶融が可能となる。一実施形態において、第1相の流体は、標的賦活化も可能にするステップ608と同様に、97℃まで加熱される。包埋剤除去、たとえば脱ワックスのために熱が使用される別の実施形態において、第1相の流体またはキャリア組成物は、ステップ608で約60℃まで加熱される。ステップ608および610はこの図では2つの別個のステップとして示されているが、一実施形態において、これらの2つのステップを併合してもよい。次に第1相の液体をステップ612でオーバーフローを超えて添加して、第2相の層をオーバーフローチャネル中へオーバーフローさせることによって除去できるようにしてもよい。一実施形態において、パラフィンまたは他の包埋剤を確実に除去できるように、ステップ604から612を必要に応じて反復してもよい。一実施形態において、前処置タンクに必須ではない酵素遮断を含んでいてもよい標的賦活化溶液を再充填することによって、ステップ611を追加の標的賦活化のために行ってもよい。一実施形態において、ステップ613は、必須ではない酵素遮断を備える標的賦活化溶液であってもよい第1相の流体を約97℃まで加熱して、所望のプロトコルおよび時間間隔でインキュベートすることを含む。これにより熱誘導型標的賦活化および必須ではない酵素遮断を完了させてもよい。前処置法を行い、所望の回数のループ処置または反復を行った後、次にスライドをステップ614で前処置モジュールから移動して、ステップ616で前処置モジュールを空にすることができる。高温スライドは、ステップ614で前処置タンクから次のステーションに移動される前に移動中の試料損傷を回避する温度まで、たとえば低速移動では約45℃まで、または高速移動では約65℃まで冷却してもよい。
【0158】
図7は、ベーキングおよび乾燥を伴う前処置法のフローチャート700を示す。
図7に示すように、工程は702でスライドラックの挿入704から開始して、ヒーターが前処置タンク内で空気および試料を加熱するために位置決めされるようにする706。空気および試料は次にステップ708で指定の時間長にわたって加熱されて、試料がベーキングされる。試料は、試料のスライドへの付着を改善するためにベーキングされてもよい。試料の付着を改善することによって、後の前処置ステップの間に試料がタイミング悪く除去されることが防止できる。次に試料を、
図5および6でそれぞれ先に示したように、溶媒ベース2相前処置500または熱ベース2相パラフィンオーバーフロー前処置600のどちらかによって処理することができる。試料が処理された後、ステップ710で空気および試料が指定の時間長にわたって加熱され、試料またはスライドが乾燥される。ステップ712で、次にスライドラックは次のステーションに移動される。
【0159】
図8は、生体試料の自動前処置および処理のための、スライドラック810がモジュール800外にある前処置モジュール800の側面図を示す。垂直スライド810および試料812を含有するスライドラック810は、前処置モジュール800中に挿入されてもよい。前処置モジュールは、前処置モジュール中の液体を除去するためのドレイン811に連結されたオーバーフローチャネル813および温度制御のためにヒーター807に連結されたヒーター・パワー・リード809を含有する。第1相の液体(図示せず)は双方向ポート808によって添加され、第2相の層(図示せず)は場合により一方向の入口806によって添加される。
【0160】
図9は、ベーキングおよび乾燥を伴う前処置法のための、挿入されたスライド910周囲の気流924を示す前処置モジュールの断面概略図を示す。ファン923は前処置モジュール中に空気を強制的に流入させてもよく、空気はエアヒーター925によって加熱されてもよい。空気は場合により加熱され、試料912を含有するスライド910の周囲に気流924を有する。気流924経路は空気をオーバーフローチャネル913まで運んでもよく、気流はここで前処置モジュールを出る。場合により、加熱された空気によって、試料912またはスライド910の乾燥が可能になってもよい。これによりスライド910が前処置モジュールから除去されたときに乾燥されるようになってもよい。試料912のスライド910の付着を改善するために、スライド910および試料912はまた、ベーキングされてもよい。前処置モジュールにおけるベーキングは、ヒーター907によって行われてもよい。
【0161】
説明された実施形態に対する多様な変更は当業者にただちに明らかとなり、本明細書で開示する一般原理は他の実施形態に適用できる。説明される実施形態は例示にすぎず、本明細書で説明する実施形態は本願を限定することを意図するものではない。このようなものとして、特許請求の範囲は、本明細書で説明する原理および特色と一致する最も広い範囲が与えられるものである。すべての特許、特許出願および他の刊行物はここで、その全体が参照により本明細書に組み入れられている。
【実施例】
【0162】
実施例は、下で説明するように、General FISHおよび/またはCISH法またはGeneral IHC法に従って行う。パラメータのいずれの詳細な変動も実施例で言及されている。
【0163】
General FISHおよび/またはCISH法:
General法は、手動および自動化設備の両方で行うことができる。自動化設備の例は、本願で示されている。
1.脱パラフィン−実施例の試験条件を参照のこと。
手動脱パラフィン−キャリア組成物を容器に添加して、その後、溶媒を容器に添加する。溶媒は、キャリア組成物の上に「浮く」。スライドまたはスライドラックを容器の層状化内容物中にゆっくり挿入する。スライドまたはスライドラックを実施例に記載されている回数だけ上げ下げする。必要な場合は、再水和を続ける。
自動化脱パラフィン−自動化設備において、溶媒入口の下までキャリア組成物を充填する。溶媒入口を通じて溶媒(浄化/脱ワックス剤)を適用する。自動化様式でスライドまたはスライドラックを上下に移動することも可能である。
2.該当する場合には、標的賦活化を行うことができる−在来の方法、たとえば水の沸点のすぐ下(約95〜100°C)まで加熱したMES緩衝剤またはクエン酸緩衝剤を使用することが可能であり、圧力鍋の使用によって、組織を沸騰させることなく、100℃を超える温度が可能となる。チオシアン酸ナトリウムを80℃にて使用して標的賦活化を行うことも可能である。我々は95℃を超える前処置溶液(Dako、K5599より)を10分間使用した。
3.ペプシン消化−在来の方法を使用できる、たとえば過剰な前処置緩衝剤または標的賦活化緩衝剤を除去して、ペプシン(Dako、K5599より)を試料に適用して、37℃にて2〜6分間インキュベートし、必要に応じて希釈FISH洗浄緩衝剤(Dako、K5599より)によって洗浄する。
4.脱水−在来の方法、たとえばスライドを一連のエタノール溶液(70%、85%、96%)中に、各溶液に約2分間入れた。その後、風乾させる。または、エタノールの代わりに水で洗浄して、室温にて、約45℃にて風乾させる。
5.変性およびハイブリダイゼーション−在来の方法、たとえばプローブミックスの試料への適用、カバースリップおよびシールエッジによる試料の被覆、適切な温度(プローブ混合物およびハイブリダイゼーション緩衝剤の組成によって変わる、たとえば室温、30℃、37℃、40℃、45℃、50℃、52℃、57℃、60℃、65℃、67℃、70℃、75℃、80℃、82℃、88℃、90℃、92℃、95℃)での変性およびハイブリダイゼーションのためのインキュベーション(ホルムアミドベースハイブリダイゼーション緩衝剤の場合、一晩のハイブリタイゼーションインキュベーションまたはIQFISHハイブリダイゼーション緩衝剤の場合、1時間)。
6.ストリンジェント洗浄−在来の方法、たとえばストリンジェンシー緩衝剤(Dako、K5599より)を用いて室温にて1回および65℃にて1回、10分間洗浄して、FISHアッセイを行う場合にはウォッシュ緩衝剤(Dako、K5599より)を用いて洗浄する。試料がSK108(Dako)における工程であるCISH用である場合、および下のステップ6を行わない。
7.脱水−在来の方法、たとえばスライドを一連のエタノール溶液(70%、85%、96%)中に、各溶液に約2分間入れた。その後、風乾させる。または、エタノールの代わりに水または緩衝剤で洗浄して、室温にて、約45℃にて風乾させる。
8.封入−試料を封入剤、たとえば蛍光封入剤(Dako、K5599より)に封入すること。
【0164】
General IHC法:
General法は、手動および自動化設備の両方で行うことができる。自動化設備の例は、本願で示されている。
1.脱パラフィン−実施例の試験条件を参照のこと。
手動脱パラフィン−キャリア組成物を容器に添加して、その後、溶媒を容器に添加する。溶媒は、キャリア組成物の上に「浮く」。スライドまたはスライドラックを容器の層状化内容物中にゆっくり挿入する。スライドまたはスライドラックを実施例に記載されている回数だけ上げ下げする。再水和を続ける。
自動化脱パラフィン−自動化設備において、溶媒入口の下までキャリア組成物を充填する。溶媒入口を通じて溶媒(浄化(clearifying)/脱ワックス剤)を適用する。自動化様式でスライドまたはスライドラックを上下に移動することも可能である。
2.該当する場合には、標的賦活化を行うことができる−
a)溶媒を使用する場合、水の沸点のすぐ下(約95〜100°C)まで試料をMES緩衝剤またはクエン酸緩衝剤で加熱するような在来の方法を使用することが可能であり、圧力鍋の使用によって、組織を沸騰させることなく、100℃を超える温度が可能となる。一部のエピトープは、標的賦活化に耐えることができず、プロテイナーゼK処置は通例、標的賦活化ステップに代わる。
b)スリー・イン・ワンを使用する場合、S2375(Dako)の添付文書の手順に従う。
3.染色は、FLEX(Dako、K8000)またはFLEX+(Dako、K8002)のプロトコルに従って行うことができる。
【0165】
使用した原理の例:
−標的賦活化(TR)緩衝剤をタンク底部に入れる。
−溶媒(たとえばクリアリファイ(Clearify)(商標)、ヒストクリアII(登録商標)、アイソパーG(商標))を、TR緩衝液の上の、液位置1に入れる(これが2相系を生成する)。
−タンクにTR緩衝剤を充填する。
−タンクを液位置1まで空けて、試料の上に溶媒の薄層を残す。
−0〜3分間インキュベートする。一部の試料は加熱(たとえば40℃または50℃)が必要なことがある。
−タンクをTR緩衝剤または水で過充填する(溶媒は、オーバーフロードレインに流出する)。
−97±2℃で10分間インキュベートする。
−DI水を用いて40℃未満まで低温洗浄(cool flush)を行う(残存溶媒がある場合には、オーバーフロードレインに流出する)。
−さらなる処理のために、スライドを染色モジュールに移動する:ISH消化、IHC染色、特殊染色およびヘマトキシリン染色。
*n=さらなる処理に応じて、0〜5サイクル。
【実施例1】
【0166】
この実験は、手動で実施した(手作業による)2相脱パラフィンが、在来のキシレン処理と比較した場合に、Dako標準ホルムアミドHER2 FISH pharmDx(商標)と作用することを再確認するために行った。標的賦活化ステップは、マイクロ波オーブン内でMES緩衝剤を用いて行った。
−DI水を容器に入れる。
−溶媒(ヒストクリアII(登録商標))をDI水の上に入れる(2相系を形成する)。
−2相系にスライドを浸漬する。
−2相系からスライドを取り出す。
−2分間インキュベートする。
−洗浄緩衝剤中で2×3分間洗浄する。
−マイクロ波オーブン内で10分間標的賦活化。
−標準手順を継続する。
結論:手動で行った2相脱パラフィンは、在来のホルムアミド緩衝剤を使用するDakoのFISHおよびCISHで作用した。ヒストクリアの残り(液滴)は、スライド上に高すぎるレベルで存在していた(TRステップ前にヒストクリアを除去しなかった)。
【実施例2】
【0167】
この実験は、手動で実施した(手作業による)2相脱パラフィンが、在来のキシレン処理と比較した場合に、HER2 IQFISH PharmDx(商標)緩衝剤と作用するか否かを試験するために行った。標的賦活化ステップは、マイクロ波オーブン内で行った。使用したCISHプロトコルは、組織に対して非常に苛酷であることに留意されたい。
−DI水を容器に入れる。
−溶媒(ヒストクリア)をDI水の上に入れる(2相系)。
−2相系にスライドを浸漬する。
−2相系からスライドを取り出す。
−2分間インキュベートする。
−洗浄緩衝剤中で3×3分間洗浄する。
−マイクロ波オーブン内で10分間標的賦活化。
−FISH/CISH手順を継続する。
結論:手動で行った2相脱パラフィンは、HER2 IQFISH PharmDx(商標)緩衝剤を使用するDako FISHおよびCISHで作用した。ヒストクリアII(登録商標)の残り(液滴)は、スライド上に高すぎるレベルで存在していた(TRステップ前にヒストクリアII(登録商標)を除去せず)。
【実施例3】
【0168】
この実験は、自動(
図8〜9)2相脱パラフィンが、在来のキシレン処理と比較した場合に、HER2 IQFISH pharmDx(商標)と作用するか否かを試験するために行った。標的賦活化ステップは、モジュールによって行った。
バージョンA:
−DI水をタンクの底部に入れる。
−DI水(液位置1)の上に溶媒(ヒストクリアII(登録商標))を入れる、2相系。
−タンクにDI水を充填する。
−タンクを液位置1まで空にする。
−2分間インキュベートする。
−タンクにDI水(ヒストクリアII(登録商標))を過充填する(オーバーフロードレインに流出させる)。
−タンクを空にする。
−タンクにMES緩衝剤を充填する。
−97℃にて10分間インキュベートする。
−DI水を用いて35℃まで冷却洗浄(cool flush)を行う(残存ヒストクリアII(登録商標)は、オーバーフロードレインに流出する)。
−スライドを洗浄緩衝剤に移動する。
−FISH/CISH手順を継続する。
バージョンB:
−MES緩衝剤をタンクの底部に入れる。
−溶媒(ヒストクリアII(登録商標))をMES緩衝剤(液位置1)の上に入れる、2相系。
−タンクにMES緩衝剤を充填する。
−タンクを液位置1まで空にする。
−2分間インキュベートする。
−タンクにMES緩衝剤を過充填する(ヒストクリアII(登録商標)は、オーバーフロードレインに流出する)。
−97±2℃で10分間インキュベートする。
−DI水を用いて約35℃まで冷却洗浄(cool flush)を行う(残存ヒストクリアII(登録商標)は、オーバーフロードレインに流出する)。
−スライドを洗浄緩衝剤に移動する。
−FISH処理のために、スライドを染色モジュールに移動する。
結論: HER2 IQFISH pharmDx(商標)を使用する自動で実施した2相脱パラフィンは、FISH染色のために在来のキシレン脱パラフィンを有するものと同等であるか、または良好である。CISH染色の試験は行わなかった。ヒストクリアII(登録商標)の残り(液滴)はスライド上に存在しなかった(モジュールによるTRステップの前後のヒストクリアII(登録商標)の除去)。
【実施例4】
【0169】
多様な溶媒(FISHおよびCISH)
General FISH法に従った。具体的な変形を表1に規定する。
表1:溶媒のタイプ、キャリア組成物、プローブ組成のタイプ、自動/手動法のバリエーション
【表1】
【実施例5】
【0170】
IHC
試験スライド(A):試験試料A(表2を参照のこと)をエンビジョンフレックス(EnVision FLEX)標的賦活化溶液、高pH、K8000/K8004またはエンビジョンフレックス(EnVision FLEX)、低pH、K8005を用い、添付文書S2375に規定されたスリー・イン・ワン・ワークフローを使用して、
図1〜4に示すモジュールで自動前処置した。
終了前処置後、スライドを室温の希釈エンビジョンフレックス洗浄緩衝剤、K8007中へ低下させた。
試験スライド(B):試験試料(表2を参照のこと)をエンビジョンフレックス標的賦活化溶液、高pH、K8004またはエンビジョンフレックス、低pH、K8005を用いて、
図1〜4に示すモジュールで自動前処置した。溶媒サイクルの回数は1回であり、使用した溶媒はクリアリファイ(Clearify)(商標)であり、TR後の冷却体積は、容器の体積の1.5倍であった。
試験スライドA、B:
試験スライドAおよび試験スライドBならびに参照スライドをオートステイナーに移動した。フレックス(FLEX)RTU抗体特異的プロトコルを使用して、染色を行った。染色後、スライドを脱水して、永続的に封入する。
結論:2相脱パラフィンを使用する前処置によって、スリー・イン・ワン法を使用する前処置に対して著しくより良好な染色結果が示されている。
表2:試験を行った多様な抗体
【表2】
【実施例6】
【0171】
脱パラフィンの改善
上のGeneral IHC法に記載された手順に従った。キャリア組成物はDI水であり、組織タイプは扁桃であり、インキュベーション時間は2分であり、インキュベーション温度は40℃である。2相工程は3サイクル、すなわちスライドの3回の上昇および3回の下降を含む(6回の流動+オーバーフロー)。
すべてのスライドをS3301により5分間、手動でヘマトキシリン染色して、DI水で洗浄し、洗浄緩衝剤によって5分間青色にして、水性封入剤ファラマウント封入剤(Dako、S3025)によって封入した。
4タイプの脱パラフィン。ヒストクリアIIまたはアイソパーGのどちらか、スリー・イン・ワン脱パラフィン(工程についてS2375の添付文書およびDako PT101を参照のこと)および在来のキシレン脱パラフィン(工程についてK5599の添付文書を参照のこと)を使用する2相工程。
結果:パラフィン残留物は、通常の明視野顕微鏡法によって、偏光フィルタを使用して、ファラマウントで封入した場合に、白い/明るい点として現れる。2相系によって脱パラフィンした組織試料(
図10a(ヒストクリアII(登録商標))および
図10b(アイソパーG))が、スリー・イン・ワン緩衝液(
図10c)および在来のキシレン脱パラフィン(
図10d)によって脱パラフィンした組織試料よりも良好な結果を示した。
【実施例7】
【0172】
溶媒の量
最良の脱パラフィンをもたらす最適量を確認するために、多様な体積の溶媒(上層)で試験を行った。
キャリア組成物としてのDI水、Her2 IQFISH pharmDxプローブ(Dako、K5731)、自動化法を使用する、General FISHおよび/またはCISH法としての試験。
サイクル数4サイクル、インキュベーション時間2分、インキュベーション温度室温。
ヒストクリアII(登録商標)を脱パラフィン剤として使用した。試験した体積は、15mL;3.0mL;4.5mL;6.0mL;7.5mL;9.0mLおよび10.5mLであった。
1.5mLは厚さ約1mmの溶媒層に等しく、3.0mLは厚さ約2mmの溶媒層に等しく、4.5mLは厚さ約3.0mmの溶媒層に等しく、6.0mLは厚さ約4mmの溶媒層に等しく、7.5mLは厚さ約5.5mmの溶媒層に等しく、9.0mLは厚さ約6mmの溶媒層に等しい。
結果:すべての試験は、実施例6と同様に双極(dipolarised)フィルタを用いて評価した場合に、良好なパラフィン化を示し、スリー・イン・ワンより良好であった。しかし、6.0mLを超える体積によって6.0mL以下よりも良好な結果が得られ、9.0mLによって最良の脱パラフィンが得られた。異なる厚さの2相脱パラフィンのFISH染色は、良好な形態、低いバックグラウンドレベルおよび許容されるシグナル強度を示した。
【実施例8】
【0173】
20%EtOHによる洗浄
試料にいくらかでも微量の溶媒が残っている場合には、20%エタノール溶液によって洗浄することが有益であり得る。標的賦活化および冷却後の20%エタノール溶液による洗浄は、結果の改善を示した。洗浄はDI水中20%エタノール300μLで2回行い、エタノール溶液中でのインキュベーション時間は5分であった。この工程は、試料からの溶媒の除去の改善を示した。