【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明の一態様は、その薬物に関連する代謝、例えば、初回通過代謝を最小限にすることによって3APSを送達することができる化合物および組成物、特に、例えば、アミノ基転移酵素および/またはモノアミン酸化酵素によって代謝を回避するために3APSのアミノ基を遮断または保護する化合物に関する。
【0010】
本発明は、対象、好ましくはヒト対象において、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸、またはその塩を送達するための方法、化合物、組成物および媒体を含む。3−アミノ−1−プロパンスルホン酸(または3APS、トラミプロセート、アルツヘメド(商標)と称される)は、以下の構造を有する。
【化2】
【0011】
一態様によると、本発明は、対象に投与された後、3APSを産出または生成する化合物または組成物に関する。一実施形態においては、3APSを産出または生成する化合物は、3APSのアミノ酸プロドラッグである。別の実施形態においては、3APSを産出または生成する化合物は、3APSのカルバメートプロドラッグである。別の実施形態においては、3APSを産出または生成する化合物は、3APSのアミドプロドラッグである。別の実施形態においては、3APSを産出または生成する化合物は、3APSの炭水化物由来のプロドラッグである。別の実施形態においては、3APSを産出または生成する化合物は、N−ヒドロキシプロドラッグである。別の実施形態においては、3APSを産出または生成する化合物は、環状二重保護プロドラッグである。さらなる実施形態では、3APSを産出または生成する化合物は、3APS重合体(例えば、互いに結合した3APSの2つ以上の分子から成る分子)である。さらなる実施形態では、3APSを産出または生成する化合物は、3APSのジェミニ二量体である。ある実施形態においては、体外または体内のいずれかにおいて3APSを産出または生成することができる3APSのアミノ酸プロドラッグは、本明細書において開示された一般または特定の式または構造の一つを有する。本発明は、これらの化合物、これらの化合物を含有する医薬組成物、およびアルツハイマー病等の各種の医学的障害の治療においてこのような化合物または組成物を使用する方法を包含する。
【0012】
本発明は、本発明の化合物を含む医薬組成物にも関する。
【0013】
本発明は、さらに、対象、好ましくはヒト対象に本発明のプロドラッグの有効量を投与するステップを含む、3APSの治療有効性を増加させるための方法に関する。
【0014】
本発明は、本発明の化合物を3APSに変換するためのプロセスも提供する。3APSの変換および/または生成は、本発明の化合物のいずれかを、例えば、血液、血漿および/または脳細胞に接触させるステップに関与する。変換は、体外または体内で生じ得る。変換は、ペプチダーゼ、または血液、血漿および/または脳において見られる酵素を含む、本明細書における他の構造に対して適切な他の酵素等、アミン結合を開裂することができる酵素の存在下で生じる場合もある。
【0015】
本発明は、薬物の製造のために、本発明による化合物の使用も提供する。本発明は、アルツハイマー病、軽度認識障害、ダウン症、オランダ型遺伝性アミロイド性脳出血、脳アミロイドアンギオパチー、他の変性認知症、血管性と退化性の両方が原因の認知症、パーキンソン病に関連する認知症、進行性核上麻痺に関連する認知症、皮質基底の退化に関連する認知症、またはレヴィー小体型の広範性アルツハイマー病を治療または予防するための、本発明の化合物の使用も提供する。本発明は、本発明の化合物または同じものを含む組成物の治療有効量を、それを必要とする対象、好ましくはヒト対象に投与するステップを含む、前述の病気の治療または予防のための方法も提供する。より好ましくは、病気は、アルツハイマー病である。したがって、本発明の関連態様は、本発明の化合物または組成物の有効量を、それを必要とするヒト対象に投与することによって、ヒト対象におけるアルツハイマー病の予防および/または治療に関する。
【0016】
さらなる実施形態では、本発明は、例えば、鼻腔用スプレー、チューインガム、または点眼薬によって粘膜、鼻(鼻腔内)、口、または眼を介して、または粘膜下、例えば、点耳薬によって耳を介して、移植の使用によって、例えば、坐薬またはかん腸剤によって経直腸的に、例えば、クリームもしくはローションによって経膣的に、または、例えば、吸入、鼻腔内または気管内を介した呼吸器系による3APSの投与を含む。
【0017】
さらなる態様における本発明は、本明細書で開示された全ての方法および/または媒体を含む、任意の方法および/または媒体によって本発明の化合物の投与、例えば、鼻、粘膜、経皮、貼布等を介した3APSのプロドラッグの投与を含む。
【0018】
各種の態様における本発明は、以下の番号付けられた態様に関する。
[態様1]式Iの化合物であって、
B−L−A (I)
Bは、薬物動態的調節部分であり、直接的に、または間接的にさらなる連結基Lを介して任意にAにも結合し、
Aは、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸部分(すなわち、L−Bに結合した3APS)であり、
Lは、共有結合的および解離的にBをAにカップリングするための開裂可能な連結(好ましくは、通常は、NH
2基を介する)であるか、または存在せず、それによってLは、開裂可能な連結を提供する直接結合または追加の化学構造、
またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物となり得る、化合物。
[態様2]
Lは、体外または体内のいずれかにおいて代謝または加水分解される場合に、3APSを産生する連結であり、および/または
Bは、式Iの化合物の投与時に3APSの治療的脳生体内分布を増加させる部分である、態様1による化合物。
[態様3]Bは、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸部分である、態様1による化合物。
[態様4]
Bは、アミノ酸またはペプチドであり、
Lは、加水分解性連結である、態様1による化合物。
[態様5]以下で説明される式(I)、(I−A)、(I−C)、(I−D)、(I−E)、(I−P)、(I−P2)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XII−A)または(XIII)の化合物、またはそれらの医薬的に許容される塩である、態様1による化合物。
[態様6]態様1の化合物および医薬的に許容される媒体を含有する、医薬組成物。
[態様7]態様1の化合物の治療有効量を、それを必要とするヒト対象に投与するステップを含む、アルツハイマー病、軽度認識障害、ダウン症、オランダ型遺伝性アミロイド性脳出血、脳アミロイドアンギオパチー、他の変性認知症、血管性と退化性の両方が原因の認知症、パーキンソン病に関連する認知症、進行性核上麻痺に関連する認知症、皮質基底の退化に関連する認知症、またはレヴィー小体型の広範性アルツハイマー病を治療または予防するための方法。
[態様8]化合物を、体外または体内で前記化合物を3APSに代謝する酵素に接触させるステップを含む、態様1の化合物を3APSに変換するためのプロセス。
[態様9]化合物を血漿、血液および/または脳細胞に接触させるステップを含む、態様8によるプロセス。
[態様10]3APSがヒト対象に投与される場合に生じる、3APSの代謝、例えば、初回通過代謝を減少させるステップを含む、ヒト対象において3APSの治療的脳生体内分布を増加させるための方法。
[態様11]3APSがヒト対象に投与される場合に生じる、3APSの代謝、例えば、初回通過代謝を減少させるステップを含む、ヒト対象において3APSの副作用を軽減させる(例えば、胃腸不耐性を軽減または予防する)ための方法。
[態様12]3APSは、ヒト対象に投与された後に3APSを産出または生成する3APSのプロドラッグの形で投与される、態様10による方法。
[態様13]プロドラッグは、式Iの化合物であり、
B−L−A (I)
式中、
Bは、薬物動態的調節部分であり、直接的または間接的にさらなる連結基Lを介して任意にAにも結合し、
Aは、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸部分(すなわち、L−Bに結合した3APS)であり、
Lは、共有結合的および解離的にBをAにカップリングするための開裂可能な連結(好ましくは、通常は、NH
2基を介する)であるか、または存在せず、それによってLは、開裂可能な連結を提供する直接結合または追加の化学構造であり得る、化合物、
またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物である、態様10による方法。
[態様14]3APSは、呼吸器系を介して、気管内に、鼻腔内に、粘膜を介して、または粘膜下、耳を介して、経直腸的に、または経膣的に、または移植、スプレー、鼻腔用スプレー、チューインガム、点眼薬、点耳薬、坐薬、かん腸剤、または膣クリームもしくはローションによって投与される、態様10による方法。
[態様15]3APSのバイオアベイラビリティ、3APSのAUC、3APSの脳内レベル、3APSのCSFレベル、3APSのC
max、3APSのT
max、および/または3APSのバイオ吸収が増加する、態様10による方法。
[態様16]アルツハイマー病が治療または予防される、態様10による方法。
[態様17]選択されたヒト組織における3APSの効果的な治療的レベルが増加する、態様10による方法。
[態様18]前記ヒト対象の脳における3APSのレベルを増加させる、態様17による方法。
[態様19]3APSの治療有効性を増加させる、態様10による方法。
[態様20]3APSの初回通過代謝を減少させる、態様10による方法。
[態様21]3APSの副作用を軽減させる、態様10による方法。
[態様22]3APSの経口AUCが、少なくとも20%増加する、態様10による方法。
[態様23]3APSを、プロドラッグの形または3APSのジェミニ二量体の形で投与するステップを含む、ヒト対象において3APSの治療的脳生体内分布を増加させるための方法。
[態様24]3APSを、非経口または非経腸的に投与するステップを含む、ヒト対象において3APSの治療的脳生体内分布を増加させるための方法。
[態様25]3APSは、3APSの肝初回通過代謝を最小限にする経路(経皮的、皮下注射、鼻腔内、等)または媒体(貼布、移植、スプレー、製剤、等)を使用して送達される、態様10による方法。
[態様26]態様1による化合物であって、開裂可能な連結は、体外または体内のいずれかにおいて3APSまたは3APSの誘導体を産出または生成するために選択され、例えば、連結は、加水分解または酵素的に開裂可能である、化合物。
[態様27]薬物動態的調節部分は、ヒト対象への式Iの化合物の投与時に3APSの治療的脳生体内分布を増加させるために選択される、態様1による化合物。
[態様28]式Iのプロドラッグであって、
B−L−A (I)
式中、
Bは、薬物動態的調節部分であり、直接的または間接的にさらなる連結基Lを介して任意にAにも結合し、
Aは、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸部分(すなわち、L−Bに結合した3APS)であり、
Lは、共有結合的および解離的にBをAにカップリングするための開裂可能な連結(好ましくは、通常は、NH
2基を介する)であるか、または存在せず、それによってLは、開裂可能な連結を提供する直接結合または追加の化学構造であり得、
【0019】
プロドラッグの代謝産物は、3APSおよび/または本明細書のほかの部分、例えば、実施例で特定される代謝産物を含むが、これに限定されるものではない、他の代謝産物となり得る、プロドラッグ、またはその医薬的に許容される塩、代謝産物もしくは溶媒和物。
【0020】
本発明の追加の目的、利点および特徴は例示的であり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない好適な実施形態の以下の非制限的説明を読むことによって、より明らかとなる。
【0021】
[I.定義]
本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、本発明が関連する当業者によって通常理解されるものと同様の意味を有する。便宜上、本明細書で使用される特定の用語および語句の意味を以下に提供する。
【0022】
参照することにより本明細書に組み込まれる出版物、特許、および特許出における用語の定義が、本明細書に記載される定義に反する場合、本明細書の定義が優先される。本明細書で使用される項の見出しは、構成上の目的のみのためであり、開示された題目を限定するものとして解釈されるものではない。
【0023】
単数形である「1つの」、「ある」(“a”、“an”)および「その」(“the”)は、内容によって明確に定められない限り、複数の指示対象を含むことに注意する。したがって、例えば、「1つの(ある)化合物」(“a compound”)を含む組成物の言及は、2つの以上の化合物の混合物を含む。「または」という用語は、内容によって明確に定められない限り、通常、「および/または」を含む意味合いで使用されることにも注意する。
【0024】
本明細書における化学構造は、当技術分野で周知の従来の基準によって描かれる。したがって、炭素原子などの描かれた原子が、未充足の価数を有するように見え、たとえ水素原子を明確に描かれていなくとも、その価数は、水素原子によって充足していると想定される。水素原子は、化合物の一部であると暗示されるべきである。
【0025】
「−」の記号は、一般的に、鎖における2つの原子の間の結合を表す。したがって、CH
3−O−CH
2−CH(R
1)−CH
3は、2−置換−1−メトキシプロパン化合物を表す。加えて、「−」の記号は、置換基の化合物への付着点を表す。したがって、例えば、アリール(C
1−C
6)−アルキルは、アルキル部分で化合物に付着した、ベンジル等のアリールアルキル基を示す。
【0026】
複数の置換基が、構造に付着しているように示される場合、当然のことながら、置換基は、同じ、または異なってよい。したがって、例えば、「1つ、2つ、または3つのR
q基で任意に置換されたR
m」は、1つ、2つ、または3つのR
q基で置換されたR
mを示し、R
q基は、同じ、または異なってよい。
【0027】
本明細書で使用される「本発明の化合物」という用語および同等の表現は、本発明の少なくとも1つの目的に役立つように本明細書で記載される化合物、例えば、(I)、(I−A)、(I−C)、(I−D)、(I−E)、(I−P)、(I−P2)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)、(XII−A)および(XIII)等の構造式に包含されるものを指し、A1からA35、C1からC26、B1からB14、H1からH4、G1からG11、S1からS14およびD1からD8等の、本明細書で記載される特定の化合物およびそれらの医薬的に許容される塩および溶媒和物を含む。本明細書における実施形態は、本発明の1つ以上の化合物を除外し得る。化合物は、それらの化学構造および/または化学名のいずれかによって特定され得る。化学構造および化学名が一致しない場合、化学構造によって、化合物の固有性が決定される。本明細書に記載される化合物は、1つ以上のキラル中心および/または二重結合を含有してもよく、そのため、二重結合異性体(すなわち、幾何異性体)、光学異性体またはジアステレオマー等の立体異性体として存在してもよい。したがって、本明細書に記載される化学構造は、立体異性体的に純粋な形(例えば、幾何学的に純粋な、鏡像異性的に純粋な、またはジアステレオマー的に純粋な)および光学異性的および立体異性的混合物を含む、例示される化合物の全ての可能性のある光学異性体および立体異性体を包含する。光学異性的および立体異性体混合物は、当業者に周知の分離技術またはキラル合成技術、例えば、キラルクロマトグラフィー(キラルHPLC等)、免疫測定法、または所望の異性体を回復させるために、クロマトグラフィー、蒸留、晶出または昇華等の従来の方法によって分離することができ、その後キラル塩またはエステルが従来の手段によって交換または開裂される、ジアステレオマー混合物をそれぞれ形成するための共有(モッシャーエステル等)および非共有(キラル塩等)結合キラル試薬の使用によって、それらの成分光学異性体または立体異性体に分解することができる。化合物は、エノール型、ケト型、およびその混合物を含む、いくつかの互変異性型においても存在し得る。したがって、本明細書で描かれる化学構造は、例示される化合物の全ての可能性のある互変異性型を包含する。開示された化合物は、1つ以上の原子が、自然界で最も豊富に見られる原子質量とは異なる原子質量を有する、同位体で標識された化合物も含む。本発明の化合物に組み込まれ得る同位体としては、これに限定されるものではないが、
2H(D)、
3H(T)、
11C、
13C、
14C、
15N、
18O、
17O、等を含む。化合物は、非溶媒和型、および水和型を含む溶媒和型で存在し得る。一般的に、化合物は、水和または溶媒和してもよい。特定の化合物は、複数の結晶または非晶形で存在してもよい。一般的に、全ての物理的形状は、本明細書で考えられる使用に対して同等であり、本発明の範囲内にあることを目的とする。さらに、化合物の部分的な構造が例示される場合、角括弧または同等のものは、部分的な構造の、分子の他の部分への付着点を示す。
【0028】
「プロドラッグ」という用語および同等の表現は、体外または体内において直接または間接的に活性型に変換可能な薬剤を指す(例えば、R. B. Silverman, 1992. “The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action”, Academic Press, Chap. 8; Bundgaard, Hans; Editor. Neth. (1985), “Design of Prodrugs”, 360pp. Elsevier, Amsterdam; Stella, V.; Borchardt, R.; Hageman, M.; Oliyai, R.; Maag, H.; Tilley, J. (Eds.), (2007), “Prodrugs: Challenges and Rewards, XVIII”, 1470p. Springer参照)。プロドラッグは、特定の薬剤に対する生体内分布(例えば、通常、プロテアーゼの反応部分に入らない薬剤を可能にする)または薬物動態を変化させるために使用することができる。様々な基が、例えば、エステル、エーテル、リン酸塩等、プロドラッグを形成するために化合物を修飾するために使用されている。プロドラッグが、対象に投与される場合、基は、酵素的または非酵素的、還元的、酸化的、または加水分解または別の方法で開裂され、活性型を露呈する。本明細書で使用される「プロドラッグ」は、その医薬的に許容される塩、または医薬的に許容される溶媒和物および前述のいずれかの結晶形を含む。プロドラッグは、親薬物に変換されるまで、必ずではないが、頻繁に薬理学的に不活性である。
【0029】
「ジェミニ二量体」という用語および同等の表現は、互いに結合した同じ薬剤または薬物の少なくとも2つの部分を含む合成化合物を指す。ジェミニ二量体の背景に関しては、Hammell D C,Hamad M,Vaddi H K,Crooks P A,Stinchcomb A L.A duplex “Gemini” prodrug of naltrexone for transdermal delivery. J Control Release.2004.97(2): 283-90を参照のこと。好適な実施形態では、本発明のジェミニ二量体は、体外または体内において直接または間接的に変換され得、少なくとも1つ、好ましくは2つの薬学的に活性な3APS分子を放出する、2つの結合した3APS分子でできている。
【0030】
「カルバメート」という用語は、アミノ基と結合して(−OC(O)N(またはNH)−)ラジカルを含む基を形成する、オキシカルボニル残留物(−OC(O)−)を指す。カルバメート基は、二級(NH)または三級(N)であることがある。この用語は、II−B(a)の項でさらに定義される。
【0031】
「アミド」という用語は、アミン基に付着して、ラジカル(−C(O)N(またはNH)−)を含む基を形成する、カルボニル(−C(O)−)を含有する有機化合物を指す。アミド基は、二級(NH)または三級(N)であることがある。この用語は、II−Aの項でさらに定義される。「非アミノ酸アミド」という用語は、カルボニル(−C(O)−)がアミノ酸残基の一部を形成しないアミド基を指す。この用語は、II−B(b)の項でさらに定義される。
【0032】
「炭水化物由来の」という用語は、例えば、3APSに付着した基が、ポリヒドロキシアルデヒド、ポリヒドロキシケトン、またはポリオールまたはこれらから由来し、加水分解、酸化、または還元等の単純な化学転換によって、そのような基に変化できる、化合物を指す。これらの基には、例えば、糖類、デンプン類、セルロース、およびゴム類がある。この用語は、II−Cの項でさらに定義される。「N−ヒドロキシ由来の」という用語は、(RO−N(またはNH)−)を形成するために、ヒドロキシまたはヒドロキシ由来の基(例えば、アルコキシ、ベンジルオキシ、フェノキシ、アシルオキシ、等)を含有する化合物を指す。この用語は、II−D(a)の項でさらに定義される。
【0033】
「環状二重保護」という用語は、保護基が、3APSのアミンおよびスルホン酸の両方と結合する化合物を指す。この用語は、II−D(b)の項でさらに定義される。
【0034】
「エステル」という用語は、RCOOR(カルボンエステル)という式またはRSO
3R’(スルホン酸エステル)’という式で表すことができる化合物を指し、基Rは、例えば、3APSまたはその3−アミノプロパン部であることがあり、基R’は、別の有機基であることがある。これらの化合物は、通常、カルボンまたはスルホン酸とアルコールとの間に起こる水の脱離との反応によってそれぞれ形成される。
【0035】
「アミノ酸」という用語は、一般的に、カルボン酸基およびアミン基の両方を含む有機化合物を指す。「アミノ酸」という用語は、「天然」および「不天然」または「非天然」アミノ酸の両方を含む。また、「アミノ酸」という用語は、O−アルキル化またはN−アルキル化アミノ酸、および窒素または酸素原子が、アシル化またはアルキル化されている窒素または酸素含有の側鎖(Lys、Orn、またはSer等)を含む。アミノ酸は、ラセミ混合物を含む、純粋なLまたはD異性体またはLおよびD異性体の混合物であり得る。一般的に、アミノ酸は、式Vの残留物で表される。
【0036】
「天然アミノ酸」という用語および同等の表現は、通常、天然由来のタンパク質に見られるL−アミノ酸を指す。天然アミノ酸には、無制限に、アラニン(Ala)、システイン(Cys)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、フェニルアラニン(Phe)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、リジン(Lys)、ロイシン(Leu)、メチオニン(Met)、アスパラギン(Asp)、プロリン(Pro)、グルタミン(Gln)、アルギニン(Arg)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、バリン(Val)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、β−アラニン(β−ALA)、およびγ−アミノ酪酸(GABA)がある。
【0037】
「非天然アミノ酸」という用語は、D型を含む天然アミノ酸の任意の誘導体、およびα−およびβ−アミノ酸誘導体を指す。「不天然アミノ酸」および「非天然アミノ酸」という用語は、本明細書において同じ意味で使用され、同じ部分を含むことを意図する。本明細書で非天然アミノ酸と分類される特定のアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリンは、特定の有機体または特定のタンパク質内で自然に見られる場合があることに注意する。ペプチドの固相合成における即時使用に適切な多くの異なる保護基を有するアミノ酸が、市販されている。20の最も一般的な天然由来のアミノ酸に加えて、非天然アミノ酸およびアミノ酸誘導体の以下の例を、本発明によって使用することができる(括弧内は一般的な略語)。2−アミノアジピン酸(Aad)、3−アミノアジピン酸(β−Aad)、2−アミノ酪酸(2−Abu)、α、β−デヒドロ−2−アミノ酪酸(8−AU)、1−アミノシクロプロパン−1−カルボン酸(ACPC)、アミノイソ酪酸(Aib)、3−アミノイソ酪酸(β−Aib)、2−アミノ−チアゾリン−4−カルボン酸、5−アミノ吉草酸(5−Ava)、6−アミノヘキサン酸(6−Ahx)、2−アミノヘプタン酸(Ahe)、8−アミノオクタン酸(8−Aoc)、11−アミノウンデカン酸(11−Aun)、12−アミノドデカン酸(12−Ado)、2−アミノ安息香酸(2−Abz)、3−アミノ安息香酸(3−Abz)、4−アミノ安息香酸(4−Abz)、4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン酸(スタチン、Sta)、アミノオキシ酢酸(Aoa)、2−アミノテトラリン−2−カルボン酸(ATC)、4−アミノ−5−シクロヘキシル−3−ヒドロキシペンタン酸(ACHPA)、パラ−アミノフェニルアラニン(4−NH
2−Phe)、2−アミノピメリン酸(Apm)、ビフェニルアラニン(Bip)、パラ−ブロモフェニルアラニン(4−Br−Phe)、オルト−クロロフェニルアラニン(2−Cl−Phe)、メタ−クロロフェニルアラニン(3−Cl−Phe)、パラ−クロロフェニルアラニン(4−Cl−Phe)、メタ−クロロチロシン(3−Cl−Tyr)、パラ−ベンゾイルフェニルアラニン(Bpa)、tert−ブチルグリシン(TLG)、シクロヘキシルアラニン(Cha)、シクロヘキシルグリシン(Chg)、デスモシン(Des)、2,2−ジアミノピメリン酸(Dpm)、2,3−ジアミノプロピオン酸(Dpr)、2,4−ジアミノ酪酸(Dbu)、3,4−ジクロロフェニルアラニン(3,4−Cl
2−Phe)、3,4−ジフルオロフェニルアラニン(3,4−F
2−Phe)、3,5−ジヨードチロシン(3,5−I
2−Tyr)、N−エチルグリシン(EtGly)、N−エチルアスパラギン(EtAsn)、オルト−フルオロフェニルアラニン(2−F−Phe)、メタ−フルオロフェニルアラニン(3−F−Phe)、パラ−フルオロフェニルアラニン(4−F−Phe)、メタ−フルオロチロシン(3−F−Tyr)、ホモセリン(Hse)、ホモフェニルアラニン(Hfe)、ホモチロシン(Htyr)、ヒドロキシリジン(Hyl)、アロ−ヒドロキシリジン(aHyl)、5−ヒドロキシトリプトファン(5−OH−Trp)、3−または4−ヒドロキシプロリン(3−または4−Hyp)、パラ−ヨードフェニルアラニン(4−I−Phe)、3−ヨードチロシン(3−I−Tyr)、インドリン−2−カルボン酸(Idc)、イソデスモシン(Ide)、アロ−イソロイシン(a−Ile)、イソニペコチン酸(Inp)、N−メチルイソロイシン(Melle)、N−メチルリジン(Melys)、メタ−メチルチロシン(3−Me−Tyr)、N−メチルバリン(MeVal)、1−ナフチルアラニン(1−Nal)、2−ナフチルアラニン(2−Nal)、パラ−ニトロフェニルアラニン(4−NO
2−Phe)、3−ニトロチロシン(3−NO
2−Tyr)、ノルロイシン(Nle)、ノルバリン(Nva)、オルニチン(Orn)、オルト−ホスホチロシン(H
2PO
3−Tyr)、オクタヒドロインドール−2−カルボン酸(Oic)、ペニシラミン(Pen)、ペンタフルオロフェニルアラニン(F
5−Phe)、フェニルグリシン(Phg)、ピペコリン酸(Pip)、プロパルギルグリシン(Pra)、ピログルタミン酸(PGLU)、サルコシン(Sar)、テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸(Tic)、チエニルアラニン、およびチアゾリジン−4−カルボン酸(チオプロリン、Th)。
【0038】
本明細書で使用される「非環式」という用語は、環系を有さない有機部分を指す。
【0039】
「脂肪族基」という用語は、通常、1から15の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖を特徴とする有機部分を含む。脂肪族基としては、非環状アルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基を含む。
【0040】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、直鎖、分岐、よび環状アルキル基を含む、1から12の炭素原子を有する飽和炭化水素を指す。アルキル基としては、無制限に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、イソプロピル、tert−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、等を含む。アルキルという用語は、非置換アルキル基および置換アルキル基の両方を含む。nが2から12の整数である「C
1−C
nアルキル」という用語は、1から示された「n」個の炭素原子を有するアルキル基を指す。
【0041】
本明細書で使用される「アルケニル」という用語は、直鎖、分岐、および環状非芳香族アルケニル基を含み、1から6の炭素−炭素の二重結合を含む、2から12の炭素原子を有する不飽和炭化水素を指す。アルケニル基としては、無制限に、ビニル、アリル、1−プロペン−2−イル、1−ブテン−3−イル、1−ブテン−4−イル、2−ブテン−4−イル、1−ペンテン−5−イル、1,3−ペンタジエン−5−イル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、エチルシクロペンテニル、エチルシクロヘキセニル、等を含む。アルケニルという用語は、非置換アルケニル基および置換アルケニル基の両方を含む。nが3から12の整数である「C
2−C
nアルケニル」という用語は、2から示された「n」個の炭素原子を有するアルケニル基を指す。
【0042】
本明細書で使用される「アルキニル」という用語は、直鎖、分岐、および環状非芳香族アルキニル基を含み、1から6の炭素−炭素の三重結合を含む、2から12の炭素原子を有する不飽和炭化水素を指す。アルキニル基としては、無制限に、エチニル、1−プロピン−3−イル、1−ブチン−4−イル、2−ブチン−4−イル、1−ペンチン−5−イル、1,3−ペンタジイン−5−イル、等を含む。アルキニルという用語は、非置換アルキニル基および置換アルキニル基の両方を含む。nが3から12の整数である「C
2−C
nアルキニル」という用語は、2から示された「n」個の炭素原子を有するアルキニル基を指す。
【0043】
炭素の数が特定されない限り、本明細書で使用される「低級脂肪族化合物」、「低級アルキル」、「低級アルケニル」および「低級アルキルニル」の「低級」は、その部分
が、少なくとも1つ(アルケニルおよびアルキニルには2)、および6以下の炭素原子を有することを意味する。
【0044】
「シクロアルキル」、「脂環式」、「炭素環式」という用語および同等の表現は、3から15の環員を有する単一、スピロ(1つの原子を共有する)、または融合(少なくとも1つの結合を共有する)炭素環系において飽和または部分的不飽和炭素環を含む基を指す。シクロアルキル基としては、無制限に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテン−1−イル、シクロペンテン−2−イル、シクロペンテン−3−イル、シクロヘキシル、シクロヘキセン−1−イル、シクロヘキセン−2−イル、シクロヘキセン−3−イル、シクロヘプチル、ビシクロ[4,3,0]ノナニル、ノルボルニル、等を含む。シクロアルキルという用語は、非置換シクロアルキル基および置換シクロアルキル基の両方を含む。nが4から15の整数である「C
3−C
nシクロアルキル」という用語は、環構造において3から示された「n」個の炭素原子を有するシクロアルキニル基を指す。炭素の数が特定されない限り、本明細書で使用される「低級シクロアルキル」基は、それらの環構造において少なくとも3および8以下の炭素原子を有する。
【0045】
「ヘテロシクロアルキル」という用語および同等の表現は、1から6のヘテロ原子(例えば、N、O、S、P)またはそのようなヘテロ原子(例えば、NH、NR
x(R
xは、アルキル、アシル、アリール、ヘテロアリールまたはシクロアルキル)、PO
2、SO、SO
2、等)を含有する基を含む、3から15の環員を有する単一、スピロ(1つの原子を共有する)、または融合(少なくとも1つの結合を共有する)炭素環系において飽和または部分的不飽和炭素環を含む基を指す。ヘテロシクロアルキル基は、C−付着またはヘテロ原子−付着(例えば、窒素原子を介して)が可能な場合、そのようになってもよい。ヘテロシクロアルキル基としては、無制限に、ピロリジノ、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロジチエニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3−アザビシクロ[3,1,0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4,1,0]ヘプタニル、3H−インドリル、キノリジニル、および糖類、等を含む。ヘテロシクロアルキルという用語は、非置換ヘテロシクロアルキル基および置換ヘテロシクロアルキル基の両方を含む。nが4から15の整数である「C
3−C
nヘテロシクロアルキル」という用語は、少なくとも1つの上に定義したようなヘテロ基または原子を含む、環構造において3から示された「n」個の原子を有するヘテロシクロアルキル基を指す。炭素の数が特定されない限り、本明細書で使用される「低級ヘテロシクロアルキル」基は、それらの環構造において少なくとも3および8以下の炭素原子を有する。
【0046】
「アリール」および「アリール環」という用語は、共役単環または多環系(融合またはそうではない)において、nが1から3の整数である「4n+2」π(pi)電子を有し、6から14の環原子を有する芳香族基を指す。多環系は、少なくとも1つの芳香環を含む。アリールは、直接付着、またはC
1−C
3アルキル基(アリールアルキルまたはアラルキルとも称される)を介して連結され得る。アリール基の例としては、無制限に、フェニル、ベンジル、フェネチル、1−フェニルエチル、トリル、ナフチル、ビフェニル、テルフェニル、インデニル、ベンゾシクロオクテニル、ベンゾシクロヘプテニル、アズレニル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナントレニル、アントラセニル、等を含む。アリールという用語は、非置換アリール基および置換アリール基の両方を含む。nが6から15の整数である「C
6−C
nアリール」という用語は、少なくとも1つの上に定義したようなヘテロ基または原子を含む、環構造において6から示された「n」個の原子を有するアリール基を指す。
【0047】
「ヘテロアリール」および「ヘテロアリール環」という用語は、共役単環または多環系(融合またはそうではない)において、nが1から3の整数である「4n+2」π(pi)電子を有し、1から6のヘテロ原子(例えば、N、O、S)またはヘテロ原子(例えば、NH、NR
x(R
xは、アルキル、アシル、アリール、ヘテロアリールまたはシクロアルキル)、SO、等)を含有する基を含む、5から14の環員を有する芳香族基を指す。多環系は、少なくとも1つのヘテロ芳香環を含む。ヘテロアリールは、直接付着、またはC
1−C
3アルキル基(ヘテロアリールアルキルまたはヘテロアラルキルとも称される)を介して連結され得る。ヘテロアリール基は、C−付着またはヘテロ原子−付着(例えば、窒素原子を介して)が可能な場合、そのようになってもよい。ヘテロアリール基としては、無制限に、ピリジル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、イソインドリル、クロメニル、イソクロメニル、ベンズイミダゾリル、ベンソフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、ベンズオキサゾリル、キナゾリニル、キノリジニル、キノロニル、イソキノロニル、キノキサリニル、ナプチリジニル、フロピリジニル、カルバゾリル、フェナンスリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、ジベンゾフラニル、等を含む。ヘテロアリールという用語は、非置換ヘテロアリール基および置換ヘテロアリール基の両方を含む。nが6から15の整数である「C
5−C
nヘテロアリール」という用語は、少なくとも1つのヘテロ基または上に定義したような原子を含む、環構造において5から示された「n」個の原子を有するヘテロアリール基を指す。
【0048】
「複素環」または「複素環式」という用語は、ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリール基を含む。ヘテロサイクルとしては、無制限に、アクリジニル、アゾシニル、ベンズイミダゾリル、ベンソフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンズオキサゾリル、ベンズチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダゾリニル、カルバゾリル、4αH−カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナプチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、ピリミジニル、フェナンスリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H−ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、ヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H−1,2,5−チアジアジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,5−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリル、キサンテニル、等を含む。複素環という用語は、非置換複素環式基および置換複素環式基の両方を含む。
【0049】
本明細書で使用される「アミン」または「アミノ」という用語は、式NR
aR
bの非置換または置換部分を指し、R
aおよびR
bは、それぞれ独立して水素、アルキル、アリール、またはヘテロシクリルであり、またはR
aおよびR
bは、それらが付着する窒素原子と合わせて、複素環を形成する。アミノという用語は、窒素原子が、少なくとも1つの炭素またはヘテロ原子と共有結合した、化合物または部分を含む。したがって、本明細書で使用される「アルキルアミノ」および「ジアルキルアミノ」という用語は、それぞれ、それに付着した1つおよび少なくとも2つのC
1−C
6アルキル基を有するアミン基を意味する。「アリールアミノ」および「ジアリールアミノ」という用語は、窒素が、少なくとも1つまたは2つのアリール基のそれぞれに結合した基を含む。「アミド」または「アミノカルボニル」という用語は、カルボニルまたはチオカルボニル基の炭素に結合した窒素原子を含有する化合物または部分を含む。アシルアミノという用語は、本明細書で定義される、アシル基に直接付着したアミノ基を指す。
【0050】
「ニトロ」という用語は、NO
2を意味し、「ハロ」および「ハロゲン」という用語は、臭素、塩素、フッ素またはヨード置換基を指し、「チオール」、「チオ」、または「メルカプト」という用語は、SHを意味し、「ヒドロキシル」または「ヒドロキシ」という用語は、OHを意味する。「アルキルチオ」という用語は、それに付着したスルフヒドリル基を有するアルキル基を指す。適切なアルキルチオ基は、1から約12の炭素原子、好ましくは1から約6の炭素原子を有する基を含む。本明細書で使用される「アルキルカルボキシル」という用語は、それに付着したカルボキシル基を有するアルキル基を意味する。
【0051】
本明細書で使用される「アルコキシ」または「低級アルコキシ」という用語は、それに付着した酸素原子を有するアルキル基を意味する。代表的なアルコキシ基は、1から約6の炭素原子、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert−ブトキシ等を有する基を含む。アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、トリクロロメトキシ基等を含む。アルコキシという用語は、非置換または置換アルコキシ基およびペルハロゲン化アルキルオキシ基の両方を含む。
【0052】
「カルボニル」または「カルボキシ」という用語は、酸素原子と二重結合によって連結した炭素を含有する化合物および部分を含む。カルボニルを含有する部分としては、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、無水物、等を含む。
【0053】
「アシル」という用語は、その炭素原子を介して、水素(すなわち、ホルミル)、脂肪族基(C
1−C
6アルキル、C
1−C
6アルケニル、C
1−C
6アルキニル、例えば、アセチル)、シクロアルキル基(C
3−C
8シクロアルキル)、複素環式基(C
3−C
8ヘテロシクロアルキルおよびC
5−C
6ヘテロアリール)、芳香族基(C
6アリール、例えば、ベンゾイル)、等に付着するカルボニル基を指す。アシル基は、非置換または置換アシル基(例えば、サリチロイル)であってもよい。
【0054】
当然のことながら、「置換」または「〜で置換された」は、そのような置換が、置換原子および置換基の認可価数に従って行われ、置換によって、例えば、転位、環化、除去、等で自然に転換されない安定化合物がもたらされるという、暗示的条件を含む。本明細書で使用される「置換」という用語は、有機化合物の全ての許容置換基を含むことを意味する。広範の態様では、許容置換基としては、有機化合物の環状および環式、分岐および非分岐、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族置換基を含む。許容置換基は、1つ、あるいはそれ以上である場合がある。「置換」という用語は、前述の基のいずれかと結合する場合、1つ以上の位置で、アシル、アミノ(単純なアミノ、モノおよびジアルキルアミノ、モノおよびジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(カルバモイル、およびウレイドを含む)、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アルコキシカルボニル、カルボキシ、カルボン酸塩、アミノカルボニル、モノおよびジアルキルアミノカルボニル、シアノ、アジド、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、トリフルオロメチル、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルチオカルボニル、チオカルボン酸塩、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、低級アルコキシ、アリールオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、ベンジルオキシ、ベンジル、スルフィニル、アルキルスルフィニル、スルホニル、硫酸塩、スルホン酸塩、スルホンアミド、リン酸塩、ホスホナト、ホスフィナト、オキソ、グアニジン、イミノ、ホルミル等の置換基で置換された基を指す。上記の置換基のいずれも、許容である場合、例えば、アルキル基、アリール基、またはその他を含有する場合、さらに置換することができる。
【0055】
「溶媒和物」という用語は、本発明の化合物の、有機または無機に係わらず1つ以上の溶媒分子との物理的結合を指す。この物理的結合は、水素結合を含む。場合によっては、溶媒和物は、例えば、1つ以上の溶媒分子が、結晶性固体の結晶格子に組み込まれる場合、単離可能となる。「溶媒和物」は、溶液相および単離可能な溶媒和物の両方を包含する。典型的な溶媒和物としては、水和物、エタノール付加物、メタノール付加物、ヘミエタノール付加物、等を含む。
【0056】
化合物の「医薬的に許容される塩」は、医薬的に許容される化合物の塩を意味する。望ましいものは、本明細書で定義され、親化合物の遊離酸および塩基の生物学的有効性および特性を保持または改善し、または分子に対する本質的に塩基性、酸性または荷電した官能性を利用し、および生物学的に、または別の方法で好ましい化合物の塩である。医薬的に許容される塩は、例えば、Berge et al,「Pharmaceutical Salts」、J.Pharm.Sci.66,1-19(1977)にも記載される。そのような塩としては、以下のものを含む。
(1)塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸、リン酸、炭酸塩形成剤、等の無機酸の付加によって、塩基性または正電荷の官能性に対して形成された、または酢酸、プロピオン酸、乳酸、シュウ酸、グリコール酸、ピバル酸、t−ブチル酢酸、β−ヒドロキシ酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、シクロへキシルアミノスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、スルファニル酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタリンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンフルスルホン酸、3−フェニルプロピオン酸、ラウリルスルホン酸、ラウリル硫酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、エンボン(パモ)酸、パルモ酸、パントテン酸、ラクトビオン酸、アルギン酸、ガラクタル酸、ガラクツロン酸、グルコン酸、ヘプトグルコン酸、グルタミン酸、ナフトエ酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、アスコルビン酸、ステアリン酸、ムコン酸、等の有機酸で形成される酸付加塩、
(2)いずれかの親化合物に存在する酸性プロトンが、アルカリ金属イオン(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アルカリ土類イオン(例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム)を含む金属イオン、またはアルミニウム、亜鉛、鉄、等の他の金属イオンによって置き換えられる、またはアンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、N,N’−ジベンジルエチルエネジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミン、ピペラジン、クロロプロカイン、プロカイン、コリン、リジン、等の有機塩基と連携する場合に形成される、塩基付加塩。
【0057】
医薬的に許容される塩は、従来の化学的手法によって、塩基性または酸性部分を含有する新薬物から合成され得る。一般的に、そのような塩は、水、有機溶媒、またはその2つの混合物において、これらの薬剤の遊離酸または塩基型を、適切な塩基または酸の化学量論量と反応させることによって調製される。塩は、薬剤の最終単離または精製の間に、そのままの状態で調製されてもよく、または本発明の精製化合物を、その遊離酸または塩基型において、望ましい類似の塩基または酸で別々に反応させ、塩を単離して形成することによって調製されてもよい。「医薬的に許容される塩」という用語は、陰性基と共有結合した陽性基を含有する両性イオン化合物が「内部塩」であるため、それらも含む。
【0058】
全ての酸、塩、塩基、および化合物の他のイオンおよび非イオン型は、本発明の化合物として含まれる。例えば、化合物が、本明細書における酸として示される場合、化合物の塩型も含まれる。同様に、化合物が、塩として示される場合、酸および/または塩基型も含まれる。
【0059】
「Aベータ」、「Aβ」、または「β−アミロイド」は、例えば、37、38、39、40、41、42、および43アミノ酸のペプチドを含む、βアミロイド前駆体タンパク質(APP)のベータ−セクレターゼ媒介開裂から生じ、ベータ−セクレターゼ開裂部位からアミノ酸37、38、39、40、41、42、または43へ伸展する任意のペプチドとして定義される。ピログルタミン型pE3−40、pE3−42、pE3−43、pE11−42、pE11−43等、上記のペプチドのN末端切断種も含まれる。用語の便宜上、「Aβ
1−42」は、本明細書において、「Aβ(1−42)」または単に「Aβ
42」(および本明細書で述べられる任意の他のアミロイドペプチドに対しても同様)と称されることがある(および本明細書で述べられる任意の他のアミロイドペプチドに対しても同様)。本明細書で使用される「Aベータ」、「Aβ」、「β−アミロイド」、「アミロイド−β」という用語は、総合的に、APPのβ−とγ−開裂部位の間にある配列の切断および非切断ペプチド種を指す同義語である。
【0060】
「アミロイド−β疾患」または「アミロイド−β関連疾患」という用語は、軽度認識障害、血管性認知症、早期アルツハイマー病、散発性(非遺伝性)アルツハイマー病および家族性(遺伝性)アルツハイマー病を含む、アルツハイマー病、加齢性認識衰退、脳アミロイドアンギオパチー(「CAA」)、遺伝性脳出血、老人性認知症、ダウン症、封入体筋炎(「IBM」)、または加齢性黄斑変性症(「ARMD」)、軽度認識障害(「MCI」)、脳アミロイドアンギオパチー(「CAA」)、加齢性黄斑変性症(ARMD)に対して使用され得る。
【0061】
「AUC」は、対象への化合物の投与後の時間関数として、ヒト対象の生体試料における化合物の濃度を表す濃度曲線下面積である。生体試料としては、血漿および血液等の体液、または脳または肝臓ホモジネート等の臓器ホモジネートを含む。AUCは、多様なの時間間隔で液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC/MS/MS)等の方法を使用して、血漿、血液または脳ホモジネート等の生体試料における化合物の濃度を測定し、濃度対時間曲線下面積を算出することによって決定することができる。薬物濃度対時間曲線からAUCを算出するための適切な方法は、当技術分野で周知である。ここでの開示との関連として、3APSのAUCは、対象への式(I)、(I−A)、(I−C)、(I−D)、(I−E)、(I−P)、(I−P2)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、(XI)、(XII)または(XIII−A)の化合物の経口投与の後の、対象の血漿、血液または脳ホモジネートにおける3APSの濃度を測定することによって決定することができる。本明細書で特に断りのない限り、AUCは、実施例4でさらに定義されるように、AUC
0−
∞を意味する。
【0062】
「バイオアベイラビリティ」は、患者への薬物またはそのプロドラッグの投与の後の、対象の体循環に到達する薬物の比率および量を指し、例えば、薬物に対する血漿または血液濃度対時間プロフィールを評価することによって決定することができる。血漿または血液濃度対時間曲線を特徴付ける際に役立つパラメータとしては、濃度曲線下面積(AUC)、ピーク濃度までの時間(T
max)、および最高薬物濃度(C
max)を含む。バイオアベイラビリティは、IV投与の後の化合物のAUCに対する、特定の投与法(例えば、経口)に対しての化合物のAUCの割合の比率(%)を指すF(%)としてしばしば表される。
【0063】
「生物学的同等性」は、患者への同量の薬物またはプロドラッグの投与の後の、薬物の吸収の比率および程度の等価性を指す。本明細書で使用される2つの血漿または血液濃度プロフィールは、2つのプロフィールの平均応答の比率に対する90%信頼区間が、0.8および1.25の限度内である場合、生物学的に同等である。平均応答は、C
max、T
maxおよびAUC等、プロフィールの特性パラメータの少なくとも1つを含む。
「C
max」は、対象への薬物またはプロドラッグのある量の投与の後の、対象の生体試料における薬物の最高濃度である。
「T
max」は、対象への薬物またはプロドラッグのある量の投与の後の、対象の生体試料における薬物の最高濃度(C
max)までの時間である。
【0064】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、患者への単回または繰り返し投与によって、診断または治療中の患者において望ましい効果を与える化合物の量または投与量を指す。有効量は、周知の技術および類似の状態で得られた結果を見ることによって、当業者としての担当診断医によってすぐに決定することができる。投与する化合物の有効量または投与量を決定する際、対象の大きさ、年齢、一般的健康、関与する特定の病気、関与の程度または病気の重症度、個々の対象の反応、投与する特定の化合物、投与方法、投与する製剤のバイオアベイラビリティ特性、選択する用法、併用薬の使用、および他の関連する状態を含むが、これに限定されるものではない、多数の因子は、担当診断医によって考慮される。
【0065】
本明細書で使用される「3APSの治療的脳生体内分布」という用語は、3APSの治療活性に影響を与える、3APSの1つ以上の薬物動態パラメータを指す。そのような薬物動態(PK)パラメータとしては、これに限定されるものではないが、3APSのバイオアベイラビリティ、3APSのAUC、3APSの脳内レベル、3APSのCSFレベル、3APSのC
max、3APSのT
max、および/または3APSの、バイオ吸収、等を含む。
【0066】
本明細書で使用される「3APSの増加した治療有効性(または、例えば、増加する、〜の増加等の用語)」および「3APSの強化した治療有効性(または、例えば、強化する、〜の強化等の用語)」という用語は、上記の「3APSの治療的脳生体内分布」に記載される1つ以上のパラメータによって測定される、対象、例えば、動物またはヒトに投与した場合、例えば、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、125%、等、またはそれ以上、例えば、2または4倍、またはそれ以上に増加した3APSの治療有効性を指し、その増加は、水溶液において経口投与された3APSの等価線モル投与量に対するものである。好ましくは、そのような%の増加は、2005年4月12日出願のUSSN第11/103,656号の表3の処方における、経口投与した3APSに対しても得られる。有効性は、斑の軽減または脳のAβ負荷、または、例えば、記憶喪失、認知、理性、判断力、適応、等、病気の選択された兆候の改善によって、例えば、アルツハイマー病等の病気の特徴に対する効果によって測定することもできる。そのような病気の特徴に対する効果の測定法の詳細は、2005年4月12日出願のUSSN第11/103,656号を参照。
【0067】
「3APS代謝を減少させる」(または軽減、より少ない、下げる、軽減する、下がった、等の関連用語)という用語は、3APSの胃腸管または肝臓における初回通過代謝の程度または量を(3APSを、対象に、非経口デ、あるいは、特に経口組成またはプロドラッグの形態で投与することにより)、例えば、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%減少させることを指し、その減少は、3APSの同じ等価線モル投与量が、水溶液において経口投与される場合に生じる3APSの代謝の程度または量に対するものである。好ましくは、そのような%の減少は、2005年4月12日出願のUSSN第11/103,656号の表3の処方における、経口投与した3APSに対しても得られる。
【0068】
「3APSの副作用の軽減」という用語は、例えば、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または99.9%、または100%の、3APSの量またはその1つ以上の副作用の重症度の減少を指し、その減少は、3APSの同じ等価線モル投与量が、水溶液において経口投与される場合に生じる3APSの量またはその副作用の重症度に対するものである。好ましくは、そのような%の減少は、2005年4月12日出願のUSSN第11/103,656号の表3の処方における、経口投与した3APSに対しても得られる。
【0069】
より一般的に、減少等、増加等の用語は、本明細書の内容において、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、125%、等、またはそれ以上、例えば、2または4倍、またはそれ以上の割合変化を指す。
【0070】
2005年4月12日出願のUSSN第11/103,656号における全ての薬物動態データは、実施例1および表3のデータを含む、例えば、本発明によって得られる効果に対する比較の基礎原料を形成するために、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0071】
産生(例えば、製剤またはプロドラッグから放出される)される「3APS」を指す場合、3APSの全ての型が、例えば、その溶媒和物、そのイオン解離型、その荷電型等が含まれる。
【0072】
「医薬的に許容される」は、妥当な損益比に相応する、過度の毒性、不適合、不安定性、炎症、アレルギー反応、等を引き起こさずにヒトおよび下等動物の組織に接触する際の使用に役立つ、用語が説明する薬物、薬剤、不活性成分、等を指す。好ましくは、動物および特にヒトにおける使用に対して、連邦または州政府の規制当局または米国薬局方または一般的に承認された薬局方に記載される規制当局によって承認された、または承認可能な化合物または組成物を指す。
【0073】
「医薬的に許容される媒体」は、化合物がともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、または担体を指す。
【0074】
「医薬組成物」は、患者に化合物がともに投与される少なくとも1つの化合物および少なくとも1つの医薬的に許容される媒体を指す。
【0075】
「予防する」または「予防」は、病気または疾患に罹るリスク(または感受性)の尤度の少なくとも減少を指すことを目的とする(すなわち、病気の臨床症状の少なくとも1つが、病気に曝された、または罹りやすいが、まだ病気の症状が起こる、または示されていない患者において、発症しないようにする)。
【0076】
任意の病気または疾患を「治療する」またはその「治療」は、一部の実施形態においては、少なくとも1つの病気または疾患を改善する(すなわち、病気の進行またはその臨床症状の少なくとも1つを止める、または軽減する)ことを指す。ある実施形態においては、「治療する」または「治療」は、患者によって認識できるかもしれない、またはできないかもしれない少なくとも1つの物理的パラメータを改善することを指す。ある実施形態においては、「治療する」または「治療」は、物理的(例えば、認識できる症状の安定化)、生理学的(例えば、物理的パラメータの安定化)のいずれか、または両方で病気または疾患を阻止することを指す。ある実施形態においては、「治療する」または「治療」は、病気または疾患の発症を遅延させることを指す。「治療する」という用語は、症状の軽減、寛解、減少、外傷、病変または病状を対象に対してより耐えられるものにする、退化または減退の割合を遅延させる、退化の最終点をより衰弱させる、対象の身体的または精神的健康を改善する、または場合によっては、認知症の発症を予防する等、任意の客観的または主観的パラメータを含む、外傷、病変または病状の治療または改善における成功の任意の兆候を指す。症状の治療または改善は、理学的検査、精神医学的評価、またはCDR、MMSE、DAD、ADAS−Cog、または当技術分野で周知の他の試験等の認知試験の結果を含む、客観的または主観的パラメータに基づくことができる。例えば、本発明の方法によって、認識衰退の割合を遅延させる、またはその程度を減少させることによって対象の認知症の治療が成功する。
【0077】
「治療有効量」は、化合物の量が、病気を治療または予防するために患者に投与される場合、病気のそのような治療または予防に作用するのに十分であることを意味する。「治療有効量」は、化合物、病気およびその重症度、および治療または予防する病気を有する患者の年齢、体重、等によって異なる。
【0078】
ここで、化合物および方法の特定の実施形態への言及が詳細に行なわれる。開示された実施形態は、本発明の限定を目的としない。
【0079】
さらなる態様では、本発明は、経皮パッチ、または組成物、例えば、ローション、クリーム、溶液、ゲル、または固体での局所投与、または皮下注射、静脈注射または腹腔内投与または髄腔内または脳内を介さない3APSの投与を含む。
【0080】
[II.本発明の化合物]
本発明は、本明細書において3APSとも称される、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸、またはその塩を、対象、好ましくは、ヒト対象において送達するための方法、化合物および組成物に関する。本発明は、体外または体内のいずれかにおいて3APSを産出または生成する化合物を包含する。
【0081】
最適な実施形態では、本発明の化合物は、ヒトに投与されると3APSを産出または生成するプロドラッグを含む。理論に束縛されるものではないが、一部の態様においては、本発明によるプロドラッグは、「薬物動態的調節部分」、例えば、血液、血漿または他の特定の組織(例えば、脳)において一旦開裂され、それによって3APSを放出する、例えば、以下の連結Lによって、3APSと共有結合的ではあるが解離的に連結した、例えば、以下のBを含有する。
【0082】
したがって、一態様においては、本発明は、式Iの化合物、
B−L−A (I)
およびその医薬的に許容される塩、代謝産物、および溶媒和物に関し、
式中、
Bは、薬物動態的調節部分であり、直接的または間接的にさらなる連結基Lを介して任意にAにも結合し、
Aは、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸部分(すなわち、L−Bに結合した3APS)であり、
Lは、共有結合的および解離的にBをAにカップリングするための開裂可能な連結(好ましくは、通常は、NH
2基を介する)であるか、または存在せず、それによってLは、開裂可能な連結を提供する直接結合または追加の化学構造である。
【0083】
適切な薬物動態的調節部分(例えば、B)としては、アミノ酸もしくはペプチド部分、カルバメート部分、非アミノ−酸アミド部分、炭水化物由来の部分、およびイノシトール由来の部分、N−ヒドロキシおよびその誘導体(例えば、OHにおけるHが、OH保護基によって置き換えられる場所)等の類似体を含む。Bは、環状二重保護3APS分子および前駆体(例えば、部分が、3APSのNH
2およびSO
3Hを連結する場所、例えば、スルフィン酸、チオール、硫化物、二硫化物、等)、およびそれらの組み合わせを含有することもできる。より一般的にB部分は、N−保護基を含む。Bは、分子3APS自体にもなり得る(ジェミニ二量体参照)。
【0084】
適切な連結Lは、体外または体内において、例えば、本明細書で述べられる酵素、または血液、血漿および/または脳細胞における他のものによって、本明細書で記載されるように開裂される任意のものである。連結は、一般的に、全て化合物において連結Lとして適用可能な、これに限定されるものではないが、ペプチド、アミド、エステル、硫化物、ジスルフィド、カルボキサメート、尿素、−N−O−、等、結合、および、例えば、本明細書で開示される構造において証明されるような他のもの等、非常に開裂可能であるものとして周知の結合を含有する。架橋剤の実際の開裂能力は、当技術分野で周知の加水分解、酵素(例えば、ペプチダーゼ、エステラーゼ)もしくは代謝ベースの試験およびアッセイを使用して、体外および/または体内において評価することができる。本明細書と合わせて出願した国際PCT出願WO第91/14434号、公開出願US第2005/0096317号、US第2006/0046967号および仮出願US60/xxx,xxx号は、本発明によると、有用であるかもしれない様々な架橋剤を記載しているため、全て参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0085】
他の態様では、本発明は、式I−A(およびその塩、エステルおよび溶媒和物)に関し、
【化3】
式中、
R
xおよびR
yは、水素および保護基から独立して選択され、R
xおよびR
yは、両方が共に水素になることはなく、
L
1およびL
2は、それぞれ開裂可能な連結であり、R
xがHである場合、L
1は存在せず、R
yがHである場合、L
2は存在しない。
【0086】
「保護基」という用語は、3APSのアミノ基の代謝を阻害および減少させる群を指す。保護基としては、無制限に、アミノ酸残基、カルバメート、非アミノ酸アミド、炭水化物由来の残留物、N−ヒドロキシ由来の残留物、環状二重保護基、等を含む。
【0087】
好適な実施形態によると、本発明の化合物は、多数の有利な特性を示す。一実施形態においては、化合物は、3APS自体の投与に関連する、肝臓および/または消化管(例えば、内臓、胃または腸)による初回通過代謝を回避し、それによって、3APSのモル当量の投与と比較して、3APSの生体内分布および/またはバイオアベイラビリティを増加させる、プロドラッグである。肝臓初回通過代謝を回避することによって、3APSのAUC、C
maxおよび/またはT
max等の3APSの薬物動態パラメータが、改変、改善または増加する。一実施形態においては、化合物は、3APS自体のモル当量の投与と比較して、胃腸管による吸収の増加を示すプロドラッグである。一実施形態においては、化合物は、徐々に3APSの持続放出を提供するプロドラッグである。別の実施形態においては、化合物は、3APS自体のモル当量の投与と比較して、3APSの脳内レベルを増加させるプロドラッグである。別の実施形態においては、化合物は、3APS自体の投与に関連するよく見られる副作用を減少させるプロドラッグである。例えば、好適な実施形態では、プロドラッグは、3APSより高い胃腸忍容性を提示する。
【0088】
好適な実施形態では、本発明の化合物および/または組成物によって、以下の1つ以上の利点が得られる。(1)患者に投与する3APSのモル投与量の減少(例えば、3APSと比較した際の吸収の改善による、または3APSの初回通過代謝の減少による)、(2)3APSの経口投与に関連する胃腸刺激等のよく見られる副作用の回避、(3)BBBにわたる3APSの浸透の改善、(4)3APSに関連する副作用の減少(例えば、胃腸の問題の減少による、または脳へ到達する3APSの相対量の増加による)、(5)望ましい組織または液体(例えば、脳、CSF)における3APSの濃度またはレベルの増加。他の利点は、当業者にとって明らかとなるであろう。
【0089】
本発明は、本発明の化合物の塩型および酸/塩基型の両方に関連する。例えば、本発明は、塩として本明細書に示される化合物の特定の塩型に関連するだけではなく、本発明は、他の医薬的に許容される塩、および化合物の酸および/または塩基型も含む。本発明は、本明細書に示される化合物の塩型にも関連する。本発明の化合物は、以下の表1、表2、表3、表4および表4Bにも示される。
【0090】
本発明の化合物は、多形を示す場合がある。本発明による化合物の多形は、異なる状態での晶出によって調製することができる。例えば、再結晶のための異なる溶媒もしくは異なる溶媒混合物、異なる温度での晶出、晶出の間の急速から低速までの各種冷却方法がある。多形は、プロドラッグの加熱もしくは融解に続く、徐冷却または急速冷却によって得ることもできる。多形体の存在は、固体プローブNMR分光法、IR分光法、示差走査熱量測定法、粉末X線回折または他のそのような技術によって決定することができる。
【0091】
本発明の化合物は、例えば、ハイドレート、エタノラート 、n−プロパナレート、イソ−プロパノレート、1−ブタノレート、2−ブタノレート等の溶媒和物、およびInternational Conference on Harmonization (ICH)、 Guidance for Industry、 Q3C Impurities: Residual Solvents (1997)に記載されるクラス3溶媒等の、他の生理学的許容される溶媒の溶媒和物の形で存在してもよい。本発明は、各溶媒和物およびその混合物を含む。
【0092】
本発明によるアミノ酸もしくはペプチド部分、カルバメート部分、非アミノ酸アミド部分、炭水化物由来部分、イノシトール由来のもの、N−ヒドロキシ部分および誘導体、または環状二重保護3APSおよび前駆体(例えば、スルフィン酸、チオール、硫化物、ジスルフィド、等)を含む、プロドラッグの任意の他の薬物動態的調節部分等の類似体、およびそれらの組み合わせは、胃腸管(例えば、胃または腸管腔内)による吸収の前、および/または胃腸管(例えば、哺乳類の腸組織、血液、肝臓、または他の適切な組織)による吸収の後に開裂され得る。ある実施形態においては、3APSは、腸粘膜防壁をわたる運搬の間、薬物動態的調節部分に共有結合のままとなり、前全身代謝からの保護を提供する。ある実施形態においては、本発明の薬物動態的調節部分は、本質的に、腸または肝臓の細胞(例えば、腸細胞、肝細胞)内で、類似の3APSに代謝されないが、体循環内に入る際、3APS親分子を生成する。ある実施形態においては、投与されたプロドラッグの少なくともいくつかは、脳において、一度のみ、すなわち、血液脳関門(BBB)を通過した後に、類似の3APSを生成する。胃腸管による吸収後の、本発明によるプロドラックの薬物動態的調節部分の開裂によって、これらのプロドラッグは、能動輸送、受動拡散のいずれか、または受動的および能動的プロセスの両方の組み合わせによって体循環へ吸収される。したがって、ある実施形態においては、本発明の医薬組成物、製剤、または剤形は、本発明による類似の化合物を含有する医薬組成物、製剤、または剤形、および医薬的に許容される媒体が、患者に経口投与された後、少なくとも約1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、4時間、少なくとも約8時間の間、少なくとも約12時間、少なくとも約16時間、少なくとも約20時間の間、およびある実施形態においては、少なくとも約24時間、患者の血漿もしくは血液における3APSの治療効果のある濃度を維持できる。ある実施形態においては、本発明の医薬組成物、製剤、または剤形は、3APSのT
maxを、少なくとも2倍、または少なくとも3、4、5、6、7、8、9もしくは10倍またはそれ以上、改善できる。
【0093】
本発明による特定の化合物の薬物動態的調節部分は、化学的および/または酵素的に開裂され得る。哺乳類の胃、腸管腔、腸組織、血液、肝臓、脳、もしくは任意の他の適切な組織に存在する1つ以上の酵素は、化合物のアミノ酸もしくはペプチド部分を酵素的に開裂できる。薬物動態的調節部分が、胃腸管による吸収の後に開裂される場合、本発明による特定の化合物は、大腸から体循環へ吸収される機会を有する。ある実施形態においては、薬物動態的調節部分は、胃腸管による吸収、またはBBBを通過した後に開裂される。
【0094】
操作の理論が本明細書において述べられるが、化合物の全ての一般的構造式および特定の名称および式を含む、特定の化合物構造に関して、本発明は、特別定められた場合を除き、任意のそのような理論によって限定されるものではない。したがって、全ての新規化合物の全ての使用は、操作のメカニズムまたは理論に関わらず、本発明によって包含される。
【0095】
[II−A.アミノ酸プロドラッグ]
好適な実施形態では、本発明の化合物は、ヒトに投与されると3APSを産出または生成するアミノ酸プロドラッグである。好ましいプロドラッグは、アミド結合を介して3APSのアミン基と連結したアミノ酸残基で構成される。アミノ酸残基は、ペプチダーゼ等の酵素、または任意の他のメカニズムによって体内で開裂され得、3APSのアミン基を遊離させる。
【0096】
特に、本発明の態様は、式(II)の化合物およびその医薬的に許容される塩、エステルもしくは溶媒和物に関し、
【化4】
式中、AAは、天然もしくは非天然アミノ酸残基、または2つ、3つ、もしくはそれ以上の天然もしくは非天然アミノ酸残基を含有するペプチドである。
【0097】
本発明の他の態様は、式(III)の化合物およびその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物に関し、
【化5】
式中、
aa
1は、天然もしくは非天然アミノ酸残基であり、
aa
2およびaa
3は、それぞれ独立して天然もしくは非天然アミノ酸残基であるか、または存在しない。
【0098】
本発明のさらなる態様は、式(IV)の化合物およびその医薬的に許容される塩、エステルもしくは溶媒和物に関し、
【化6】
式中、
aa
1は、天然もしくは非天然アミノ酸残基であり、
aa
2は、天然もしくは非天然アミノ酸残基であるか、または存在しない。
【0099】
本発明のさらなる態様は、式(V)の化合物、およびその医薬的に許容される塩、エステルもしくは溶媒和物に関し、
【化7】
式中、aa
1は、天然もしくは非天然アミノ酸残基である。
【0100】
本発明は、さらに、式(V−A)の化合物、およびその医薬的に許容される塩、エステルもしくは溶媒和物に関し、
【化8】
式中、aa
xは、バリン、プロリン、リジン、ロイシン、メチオニン、D−メチオニン、セリン、アラニン、D−アラニン、グリシン、イソロイシン、ヒスチジン、アミノイソ酪酸、フェニルグリシン、トリプトファン、チロシン、O−ベンジルセリン、O−ベンジルグルタミン、およびγ−アミノ酪酸から選択されるアミノ酸残基である。
【0101】
好適な実施形態では、aa
xは、バリン、リジン、メチオニン、セリン、およびO−ベンジルセリン、から選択されるアミノ酸残基であるか、またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0102】
一実施形態においては、アミノ酸残基は、酸端を介して連結される(C−連結)。一実施形態では、アミノ酸残基は、天然アミノ酸残基、またはその塩もしくはエステルである。別の実施形態においては、アミノ酸残基は、非天然アミノ酸残基、またはその塩もしくはエステルである。さらに別の実施形態においては、アミノ酸残基は、例えば、単一アミノ酸が、N原子に付着している場合、または任意の他の場合、フェニルアラニンではない。さらなる実施形態では、式II、式III、式IV、式V、または式V−Aにおける天然もしくは非天然アミノ酸残基は、式(VI)によって任意に表され、
【化9】
式中、
R
1およびR
2は、H、およびC
1−C
12アルキル、C
2−C
12アルケニル、C
2−C
12アルキニル、C
3−C
15シクロアルキル、C
3−C
15ヘテロシクロアルキル、C
6−C
15アリール、C
5−C
15ヘテロアリール、NH(C
1−C
6アルキル)、N(C
1−C
6アルキル)
2、およびC(O)(C
1−C
6アルキル)から選択される置換もしくは未置換基から成る群からそれぞれ独立して選択され、またはR
1およびR
2は、隣接する炭素原子と合わせて、置換もしくは未置換C
3−C
12ヘテロシクロアルキルを形成し、
R
3は、H、およびC
1−C
12アルキル、C
2−C
12アルケニル、C
2−C
12アルキニル、C
3−C
15シクロアルキル、C
3−C
15ヘテロシクロアルキル、C
6−C
15アリール、C
5−C
15ヘテロアリール、C(O)(C
1−C
6アルキル)、およびC(O)(C
6−C
10アリール)から選択される置換もしくは未置換基から成る群から選択され、またはR
3は、少なくとも2つのアミノ酸残基が存在する場合、2つのアミノ酸残基の間の結合であり、
R
4は、H、およびC
1−C
6アルキル、C
2−C
6アルケニル、C
2−C
6アルキニルから選択される置換もしくは未置換基から成る群から選択され、またはR
1およびR
4は、隣接する炭素および窒素原子と合わせて、C
3−C
10ヘテロシクロアルキルを形成し、およびnは、1、2、または3、もしくはそれ以上の数字である。
【0103】
一実施形態においては、本発明の化合物は、式VIのアミノ酸残基を含有し、R
2は、Hであり、全ての他の群は、前で開示されている通りである。別の実施形態においては、本発明の化合物は、式VIのアミノ酸残基を含有し、R
2およびR
3は、それぞれHであり、全ての他の群は、前で開示されたとおりである。別の実施形態においては、本発明の化合物は、式VIのアミノ酸残基を含有し、R
2およびR
3は、それぞれHであり、R
1は、アリール−置換C
1アルキルではない。別の実施形態においては、本発明の化合物は、式VIのアミノ酸残基を含有し、R
2およびR
3は、それぞれHであり、R
1は、−CH
2アリール基ではない。別の実施形態においては、本発明の化合物は、式VIのアミノ酸残基を含有し、R
2はHであり、およびR
3はHまたは結合である時、R
1は、−CH
2フェニル基ではない。別の実施形態においては、本発明は、aa
1がフェニルアラニンではないという条件の下で、式Vの化合物を提供する。別の実施形態においては、本発明は、aa
1およびaa
2が両方ともD−フェニルアラニンではないという条件の下で、式IVの化合物を提供する。別の実施形態においては、本発明は、aa
1およびaa
2が両方ともL−フェニルアラニンではないという条件の下で、式IVの化合物を提供する。別の実施形態においては、本発明は、aa
1およびaa
2の一方がD−フェニルアラニンであり、他方がD−フェニルアラニンまたはD−チロシンではないという条件の下で、式IVの化合物を提供する。さらに別の実施形態においては、本発明は、aa
1およびaa
2の一方がL−フェニルアラニンであり、他方がD−フェニルアラニンまたはLもしくはD−チロシンではないという条件の下で、式IVの化合物を提供する。
【0104】
本発明による典型的なアミノ酸プロドラッグ
【表1】
【0105】
本発明による好ましいアミノ酸プロドラッグは、化合物A2、A4、A6、A7およびA18(上述のように)、およびその医薬的に許容される塩および溶媒和物である。
【0106】
[II−B.カルバミン酸塩、非アミノ酸アミドおよび関連プロドラッグ]
本発明のある態様は、式(VII)の化合物、およびその医薬的に許容される塩、エステルもしくは溶媒和物に関し、
【化10】
式中、
R
5は、C
1−C
12アルキル、C
2−C
12アルケニル、C
2−C
12アルキニル、C
3−C
15シクロアルキル、C
3−C
15ヘテロシクロアルキル、C
6−C
15アリール、C
5−C
15ヘテロアリール、NH(C
1−C
6アルキル)、N(C
1−C
6アルキル)
2、およびC(O)(C
1−C
6アルキル)から選択される置換もしくは未置換基であり、
R
6は、水素、またはC(O)NH
2、C(O)NH(C
1−C
6アルキル)、C(O)N(C
1−C
6アルキル)
2、およびC(O)(C
1−C
6アルキル)から選択される置換もしくは未置換基であり、またはR
5およびR
6は、隣接する炭素原子と合わせて、置換もしくは未置換C
3−C
12ヘテロシクロアルキルを形成し、
Mは、酸素、硫黄、および窒素(NHまたはN(C
1−C
6アルキル))から成る群から選択されるか、または存在しない。
【0107】
本発明は、本発明の化合物の塩型および酸/塩基型の両方に関連する。例えば、本発明は、塩として本明細書に示される化合物の特定の塩型に関連するだけではなく、本発明は、他の医薬的に許容される塩、および化合物の酸および/または塩基型も含む。本発明は、本明細書に示される化合物の塩型にも関連する。
【0108】
一実施形態においては、本発明は、式VIIの化合物を提供し、Mは存在せず、R
6はHの場合、R
5は、1−(4−イソブチルフェニル)エチル以外のものである。別の実施形態においては、本発明は、式VIIの化合物を提供し、R
6はHであり、MはNHであるか、または存在しない場合、R
5は、1−(4−イソブチルフェニル)エチル以外のものである。別の実施形態においては、本発明は、式VIIの化合物を提供し、R
6はHであり、MはNHである場合、R
5は、ベンジル、ジフェニルメチル、ヘキシル、ドデシル、アダマンチル、およびt−ブチル以外のものである。別の実施形態においては、本発明は、式VIIの化合物を提供し、R
6はHであり、MはNHである場合、R
5は、水素、1、4−ジヒドロ−5、6−ジメチル−4−オキソ−2−ピリミジニル、および5−エチルオキシカルボニル−1−ペンチル以外のものである。別の実施形態においては、本発明は、式VIIの化合物を提供し、MがNHであり、R
5およびR
6が、隣接する炭素原子と合わせて、置換もしくは未置換C
3−12ヘテロシクロアルキルを形成する場合、ヘテロシクロアルキルは、ベンゾイミダゾール−2−オン、テトラヒドロ−2,4、6−トリオキソ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジオキソ−1−イミダゾリドン、2,4−ジオキソ−(ジまたはテトラヒドロ)−ベンゾ[g]プテリジン、4、10−ジヒドロ−10−メチル−2,4−ジオキソピリミド[4、5b]キノリン、2−オキソ−1−イミダゾリジニル、および3,4−ジヒドロ−2,4−ジオキソ−1(2H)ピリミジン以外のものである。別の実施形態においては、本発明は、式VIIの化合物を提供し、MはNHである場合、R
5およびR
6は、隣接する炭素原子と合わせて、置換もしくは未置換C
3‐12ヘテロシクロアルキルを形成する。別の実施形態においては、本発明は、式VIIの化合物を提供し、R
6がHであり、MがOである場合、R
5は、t−ブチルおよびベンジル以外のものである。別の実施形態においては、本発明は、式VIIの化合物を提供し、R
6がHであり、MがOである場合、R
5は、i−ブチルおよび9H−フルオレン−9−イルメチル以外のものである。別の実施形態においては、本発明は、式VIIの化合物を提供し、R
6がHであり、Mが存在しない場合、R
5は、ベンジル、フェニル、3−ピリジニル、3−N−メチルピリジニウム、メチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ペンタフルオロフェニル、およびt−ブチル以外のものである。別の実施形態においては、本発明は、式VIIの化合物を提供し、R
6がHであり、Mが存在しない場合、R
5は、n−ブチル、i−ブチル、n−プロピル、i−プロピル、ビニル、2−プロペニル、2−(1−デセニル)、2−(1−ドデセニル)、1−(8−ウンデセニル)、オクチル、デシル、ウンデシル、トリデシル、ペンタデシル、ヘプタデシル、4−(N−オキシ−2、2、6、6−テトラメチルピペリジニル)、5−(1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−2−ベンソフラニル)、4−ニトロフェニル、および3−フェノキシフェニル以外のものである。
【0109】
a)カルバミン酸塩プロドラッグ
一部の好適な実施形態においては、本発明の化合物は、ヒトに投与されると3APSを産出または生成するカルバメートプロドラッグである。好ましいプロドラッグは、カルバメート結合(−OC(O)−NH−)を介して3APSのアミン基と連結したオキシカルボニル残留物(OC(O)−)を含有する。アミン残留物は、酵素、または加水分解を含む任意の他のメカニズムによって体内で開裂され得、3APSのアミン基を遊離させる。好適な実施形態では、本発明の化合物は、ヒトに投与されると3APSを産出または生成するカルバメートプロドラッグである。
【0110】
特に、本発明のある態様は、式(VIII)の化合物、およびその医薬的に許容される塩、エステルもしくは溶媒和物に関し、
【化11】
式中、
R
7は、C
1−C
12アルキル、C
2−C
12アルケニル、C
2−C
12アルキニル、C
3−C
15シクロアルキル、C
3−C
15ヘテロシクロアルキル、C
6−C
15アリール、C
5−C
15ヘテロアリール、C
7−C
12アリールアルキル、C
7−C
12ヘテロアリールアルキル、およびそれらの組み合わせから選択される置換もしくは未置換基である。
【0111】
一実施形態においては、R
7の定義は、置換もしくは未置換1−(アルキルカルボキシ)アルキル基である。別の実施形態においては、R
7は、置換もしくは未置換ベンジル基である。別の実施形態においては、R
7は、置換もしくは未置換ヘテロシクロアルキルメチレン基である。別の実施形態においては、本発明は、R
7が、t−ブチルまたはベンジル以外のものであるという条件の下で、式VIIIの化合物を提供する。別の実施形態においては、本発明は、R
7が、i−ブチルまたは9H−フルオレン−9−イルメチル以外のものであるという条件の下で、式VIIIの化合物を提供する。
【0112】
本発明は、本発明の化合物の塩型および酸/塩基型の両方に関連する。例えば、本発明は、塩として本明細書に示される化合物の特定の塩型に関連するだけではなく、本発明は、他の医薬的に許容される塩、および化合物の酸および/または塩基型も含む。本発明は、本明細書に示される化合物の塩型にも関連する。本発明の化合物は、以下の表2にも示される。
【0113】
本発明による典型的なカルバメートプロドラッグ
【表2】
【0114】
b)非アミノ酸アミドプロドラッグ
一部の好適な実施形態においては、本発明の化合物は、ヒトに投与されると3APSを産出または生成する非アミノ酸アミドプロドラッグである。好ましいプロドラッグは、アミド結合を介して3APSのアミン基と連結したカルボニル含有残基を含有する。カルボニル含有残基は、3APSのアミン基を遊離させるために、酵素、または任意の他のメカニズムによって体内で開裂され得る。
【0115】
好ましいプロドラッグは、アミド結合、およびアミド結合を内部で開裂できる、カルボン酸またはアルコール等の求核試薬を有するそのようなカルボニル含有基を介して、3APSのアミン基を連結したカルボニル含有残基で構成される。アミノ酸残基は、酵素または任意の他のメカニズムによって体内で開裂され得、3APSのアミン基を遊離させる。
【0116】
特に、本発明のある態様は、式(IX)の化合物、およびその医薬的に許容される塩、エステルもしくは溶媒和物に関し、
【化12】
式中、
R
8は、C
1−C
12アルキル、C
2−C
12アルケニル、C
2−C
12アルキニル、C
3−C
15シクロアルキル、C
3−C
15ヘテロシクロアルキル、C
6−C
15アリール、C
5−C
15ヘテロアリールから選択される置換もしくは未置換基であり、
R
9は、水素、または置換もしくは未置換C(O)(C
1−C
6アルキル)、C(O)NH
2、C(O)NH(C
1−C
6アルキル)もしくはC(O)N(C
1−C
6アルキル)
2であり、または、R
8およびR
9は、隣接する炭素原子と合わせて、置換もしくは未置換C
3−C
12ヘテロシクロアルキルを形成する。
【0117】
一実施形態においては、R
8は、置換C
1−C
12アルキルである。別の実施形態においては、R
8は、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、置換もしくは未置換2−ヒドロキシフェニル、置換もしくは未置換2−アルキルカルボニルオキシフェニル基、またはそれらの組み合わせから選択される置換基で置換されたC
1−C
12アルキルである。別の実施形態においては、R
8は、置換もしくは未置換ベンジル基である。さらなる実施形態では、R
8は、表3に描かれる基から選択される。
【0118】
一実施形態においては、本発明の化合物は、式IXの化合物であり、R
9はHである。別の実施形態においては、本発明の化合物は、式IXの化合物であり、R
8およびR
9は、隣接する炭素原子と合わせて、置換もしくは未置換C
3−C
12ヘテロシクロアルキルを形成する。別の実施形態においては、本発明の化合物は、式IXの化合物であり、R
8およびR
9は、隣接する炭素原子と合わせて、置換もしくは未置換フタルイミドを形成する。別の実施形態においては、本発明の化合物は、式IXの化合物であり、R
8およびR
9は、隣接する炭素原子と合わせて、置換もしくは未置換C
3−C
12ヘテロシクロアルキルを形成し、複素環は、フタルイミド以外のものである。別の実施形態においては、本発明は、式IXの化合物を提供し、R
9がHである場合、R
8は、ベンジル、フェニル、3−ピリジニル、3−N−メチルピリジニウム、メチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ペンタフルオロフェニル、およびt−ブチル以外のものである。別の実施形態においては、本発明は、式IXの化合物を提供し、R
9がHである場合、R
8は、n−ブチル、i−ブチル、n−プロピル、i−プロピル、ビニル、2−プロペニル、2−(1−デセニル)、2−(1−ドデセニル)、1−(8−ウンデセニル)、オクチル、デシル、ウンデシル、トリデシル、ペンタデシル、ヘプタデシル、4−(N−オキシ−2、2、6、6−テトラメチルピペリジニル)、5−(1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−2−ベンソフラニル)、4−ニトロフェニル、および3−フェノキシフェニル以外のものである。別の実施形態においては、本発明は、式IXの化合物を提供し、R
8は、n−ブチル、i−ブチル、n−プロピル、i−プロピル、ビニル、2−プロペニル、2−(1−デセニル)、2−(1−ドデセニル)、1−(8−ウンデセニル)、オクチル、デシル、ウンデシル、トリデシル、ペンタデシル、ヘプタデシル、4−(N−オキシ−2、2、6、6−テトラメチルピペリジニル)、5−(1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−2−ベンソフラニル)、4−ニトロフェニル、および3−フェノキシフェニルから選択される。さらに別の実施形態においては、本発明は、式IXの化合物を提供し、R
9がHである場合、R
8C(O)は、24−オキソコラン−24−イル以外のものである。さらに別の実施形態においては、本発明は、式IXの化合物を提供し、R
9がHである場合、R
8C(O)は、(3α、5β)−3−ヒドロキシ−24−オキソコラン−24−イル、(3α、5β、12α)−3、12−ジヒドロキシ−24−オキソコラン−24−イル、(3α、5β、7α)−3、7−ジヒドロキシ−24−オキソコラン−24−イル、または(3α、5β、7α、12α)−3、7、12−トリヒドロキシ−24−オキソコラン−24−イル以外のものである。さらに別の実施形態においては、本発明は、式IXの化合物を提供し、R
8C(O)は、(3α、5β)−3−ヒドロキシ−24−オキソコラン−24−イル、(3α、5β、12α)−3、12−ジヒドロキシ−24−オキソコラン−24−イル、(3α、5β、7α)−3、7−ジヒドロキシ−24−オキソコラン−24−イル、および(3α、5β、7α、12α)−3、7、12−トリヒドロキシ−24−オキソコラン−24−イルから選択される。
【0119】
本発明は、本発明の化合物の塩型および酸/塩基型の両方に関連する。例えば、本発明は、塩として本明細書に示される化合物の特定の塩型に関連するだけではなく、本発明は、他の医薬的に許容される塩、および化合物の酸および/または塩基型も含む。本発明は、本明細書に示される化合物の塩型にも関連する。本発明の化合物は、以下の表3にも示される。
【0120】
本発明による典型的な非アミノ酸アミドプロドラッグ
【表3】
【0121】
[II−C.炭水化物由来のプロドラッグ]
一部の好適な実施形態においては、本発明の化合物は、ヒトに投与されると3APSを産出または生成する炭水化物由来のプロドラッグである。本明細書で開示される本発明による好ましいプロドラッグは、例えば、アミド、カルバメート、尿素、または開裂可能なアルキル基は、炭水化物、または、例えば、アミド、カルバメート、尿素、または開裂可能なアルキル基等の連結を介して3APSのアミン基と連結するポリオール類似残留物を含有する。一実施形態においては、炭水化物由来の部分は、例えば、ヘキソース、ペントース等の炭水化物誘導体炭水化物由来のポリオール、イノシトールもしくはイノシトール由来の部分、炭水化物由来のカルボン酸、アスコルビン酸、核酸、またはヌクレオチドである。連結および/または炭水化物由来の残基は、酵素、または任意の他のメカニズムによって体内で開裂され得、3APSのアミン基を遊離させる。
【0122】
特に、本発明のある態様は、式(X)の化合物、およびその医薬的に許容される塩、エステルもしくは溶媒和物に関連し、
【化13】
式中、
R
10は、−OH、−OAc、−CH
2OH、−OCH
3、−CH
2OAc、および=Oからそれぞれ独立して選択される、3つから5つの置換基によって置換される、任意に、および好ましくは−O−基を含有する、例えば、C
5−6飽和または部分的または完全不飽和シクロアルキル基等の炭水化物、炭水化物誘導体もしくは炭水化物由来のポリオールの残基である。
Lは、連結部分であるか、または存在せず、例えば、飽和もしくは不飽和しているかもしれないアルキル基、好ましくは、1つ以上の−O−および/または−NH−基によって任意に遮られ、1つ以上の=O、−OHおよび/または−NH
2基によって任意に置換される低級アルキルである。
【0123】
一実施形態においては、本発明は、式Xの化合物を提供し、Lが存在しない場合、R
10は、2−デオキシ−2−D−グルコース以外のものである。
【0124】
本発明は、本発明の化合物の塩型および酸/塩基型の両方に関連する。例えば、本発明は、塩として本明細書に示される化合物の特定の塩型に関連するだけではなく、本発明は、他の医薬的に許容される塩、および化合物の酸および/または塩基型も含む。本発明は、本明細書に示される化合物の塩型にも関連する。本発明の化合物は、以下の表4Aにも示される。
【0125】
本発明による典型的な炭水化物由来のプロドラッグ
【表4A】
【0126】
[II−D.他のプロドラッグ]
一部の好適な実施形態においては、本発明の化合物は、ヒトに投与されると3APSを産出または生成するプロドラッグとしての、N−ヒドロキシプロドラッグおよび誘導体、環状二重保護プロドラッグ、3APSの前駆体である。
【0127】
a)N−ヒドロキシ由来のプロドラッグ
特に、本発明のある態様は、式(XI)の化合物、およびその医薬的に許容される塩、エステルもしくは溶媒和物に関し、
【化14】
式中、
R
11は、水素、またはC
1−C
12アルキル、C
2−C
12アルケニル、C
2−C
12アルキニル、C
3−C
15シクロアルキル、C
3−C
15ヘテロシクロアルキル、C
6−C
15アリール、C
5−C
15ヘテロアリール、C(O)R
12、およびC(O)OR
13から選択される置換もしくは未置換基であり、
R
12およびR
13は、置換もしくは未置換C
1−C
12アルキル、C
2−C
12アルケニル、C
2−C
12アルキニル、C
3−C
15シクロアルキル、C
3−C
15ヘテロシクロアルキル、C
6−C
15アリール、C
5−C
15ヘテロアリールから独立して選択される。
【0128】
一実施形態においては、本発明は、式XIの化合物を提供し、R
11は、ヒドロキシル以外のものである。
【0129】
本発明の化合物は、以下の化合物を含む。
【化15】
【0130】
b)環状二重保護プロドラッグ
特に、本発明のある態様は、式(XII)の化合物、およびその医薬的に許容される塩、エステルもしくは溶媒和物に関し、
【化16】
式中、
Dは、カルボニル、アミノ酸残基、または置換メチレン基であり、
Xは、O、NHおよびSから選択される。
【0131】
特に、本発明のある態様は、式(XII−A)の化合物、およびその医薬的に許容される塩、エステルもしくは溶媒和物に関し、
【化17】
式中、
R
14は、C
1−C
12アルキル、C
2−C
12アルケニル、C
2−C
12アルキニル、C
3−C
15シクロアルキル、C
3−C
15ヘテロシクロアルキル、C
6−C
15アリール、C
5−C
15ヘテロアリールから選択される置換もしくは未置換基である。
【0132】
本発明の化合物は、以下の化合物を含む。
【化18】
【0133】
c)イミンプロドラッグ
特に、本発明のある態様は、式(XIII)の化合物、およびその医薬的に許容される塩、エステルもしくは溶媒和物に関し、
【化19】
式中、
R
15およびR
16は、水素、またはC
1−C
12アルキル、C
2−C
12アルケニル、C
2−C
12アルキニル、C
3−C
15シクロアルキル、C
3−C
15ヘテロシクロアルキル、C
3−C
15アリール、およびC
5−C
15ヘテロアリールから選択される置換もしくは未置換基から独立して選択される。
【0134】
一実施形態においては、本発明は、式XIIIの化合物を提供し、R
15およびR
16の両方が、置換もしくは未置換アリールである場合、R
15およびR
16の少なくとも1つは、オルト位置において水酸基で置換される。他の実施形態では、本発明は、式XIIIの化合物を提供し、R15およびR16の両方が、置換もしくは未置換アリールである場合、R15およびR16のいずれも、オルト位置において水酸基で置換されない。
本発明の化合物は、以下の化合物を含む。
【化20】
【0135】
一部の好適な実施形態においては、本発明の化合物は、ヒトに投与されると3APSを産出または生成するプロドラッグとして、II−AからII−Dの項において、本明細書に記載されるプロドラッグのいずれかの組み合わせを含有する。本発明は、さらに、スルホン酸塩エステル、スルホンアミド、スルフィン酸、硫化物、二硫化物等を含む、II−AからII−Dの項で記述されるプロドラッグのいずれかのスルホン酸前駆体に関する。
【0136】
[II−E.オリゴマーおよびジェミニ二量体]
さらなる実施形態では、式Iの化合物は、互いに連結した2つの以上の3APS分子を含有し得る。したがって、本発明の他の態様は、3APSの重合体に関し、すなわち、開裂可能な連結と連結した3APSの2つの以上の分子を含有する、または本質的に含む、または含む分子に関する。したがって、本発明の他の態様は、式I−Pの化合物、
A−(L
x−A)
p−L
x−A (I−P)
およびその医薬的に許容される塩、エステル、代謝産物、および溶媒和物に関し、
Aは、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸部分であり、
L
xは、2つの隣接する3APS部分を共有結合的および解離的にカップリングする開裂可能な連結であり、
pは、0、または1から5、例えば、2、3、4、もしくは5と変化し得る整数である。
【0137】
当業者は、3つ以上の3APS部分を互いにカップリングする変形または配向の可能性が多数あるということをすぐに理解する(可能な変形または配向の数が2
n‐1であり、nは、3量体については3(4つの可能な変形または配向)、四量体に対してn=4(8つの可能な変形または配向)、等)。実際には、ジェミニ二量体で以下にさらに詳細に例示されるように、そのような連結は、3APS分子のNH
2基もしくはSO
3H基を介して行われる。例えば、3APSの3量体(すなわち、3APSの3つの分子)に関しては、4つの異なる可能な変形または配向がある。
1)◆−*◆−*◆−、2)◆−*◆−*−◆、3)◆−*−◆*◆−、4)◆−*−◆*−◆
記号「◆」は、3APS分子のNH
2基を表し、記号「−」は、3APS分子のSO
3H基を表し、記号「*」は、連結の位置を表す。
代替として、本発明は、式I−P2の化合物、
L
y(A)
m (I−P2)
およびその医薬的に許容される塩、エステル、および溶媒和物に関し、
mは、2から5の整数であり、
Aは、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸部分であり、
L
yは、Aのアミノもしくはスルホン酸端のいずれかにおいて、2つから5つのA部分を共有結合的および解離的にカップリングするための多価担体部分である。
【0138】
好適な実施形態では、式I−Pの化合物は、「ジェミニ二量体」を含有する、または「ジェミニ二量体」であり、すなわち、それらは、開裂可能な連結で互いに連結された2つの3APS分子を含有する。したがって、他の態様では、本発明は、式I−Cの化合物(およびその塩、エステルおよび溶媒和物)に関し、
【化21】
式中、L
3は、アミド連結およびカルバメート連結を含むが、これに限定されるものではない、本明細書で定義されるものと同等または異なる連結を使用して、3APSの2つの分子を、それらのアミノ基で連結する二価架橋剤である。
【0139】
他の態様では、本発明は、式I−Dの化合物(およびその塩、エステルおよび溶媒和物)に関し、
【化22】
式中、L
4は、Xが酸素であるエステル連結もしくは無水物連結、またはXが窒素(NH、またはNR)であるスルホンアミド連結、またはXが硫黄であるチオ硫酸塩連結を含むが、これに限定されるものではない、本明細書で定義されるものと同等または異なる連結を使用して、3APSの2つの分子を、それらのスルホン酸基で連結する二価架橋剤である。Pは、本明細書に定義されるように、水素またはN−保護基である。
【0140】
他の態様では、本発明は、式I−Eの化合物(およびその塩、エステルおよび溶媒和物)に関し、
【化23】
式中、L
5は、式I−Cで定義されるような連結を使用して、1つの3APSにおけるアミノ基で、および式I−Dで定義されるような連結を使用して、他の3APSにおけるスルホン酸基で、3APSの2つの分子を連結する二価架橋剤である。Pは、本明細書で定義されるように、水素またはN−保護基である。
【0141】
好適な実施形態では、架橋剤L
x、L
3、L
4、もしくはL
5、または担体部分L
yは、2つ、3つ、4つ、もしくは5つの連結3APS部分が、2つ、3つ、4つ、もしくは5つの薬学的に活性を有する3APS分子を放出するために、体外または体内において、直接または間接的に変換されるように、選択される。3APS親分子の放出能力は、テストすることができ、多くの場合、予測可能である。より好ましくは、架橋剤は、3APS分子を、それらの窒素原子を介して結合するように設計されるが(初回通過代謝に対する保護の改善のために)、以上に例示されるように、3APS分子を、それらのスルホン酸塩基の酸素原子(例えば、エステルタイプの連結を介して)、またはそれらの硫黄原子(例えば、スルホンアミド連結した二量体)を介して結合することも可能である。上記の各種の置換も、可能である。当業者は、適切な架橋剤および連結部位を選択し、各種の化学的および/または生物学的状態の下で有効性および開裂能力に対して、得られた生成物を試験することができる。本発明の化合物は、以下の表4Bにも示される。
【0142】
本発明による典型的なジェミニ二量体
【表4B】
【0143】
本発明は、本発明の化合物の塩型および酸/塩基型の両方に関連する。例えば、本発明は、塩として本明細書に示される化合物の特定の塩型に関連するだけではなく、本発明は、他の医薬的に許容される塩、および化合物の酸および/または塩基型も含む。本発明は、本明細書に示される化合物の塩型にも関連する。
【0144】
[III. 本発明の化合物の合成]
概して、本発明の全ての化合物は、容易に入手可能な、および/もしくは従来型の調整可能な出発原料、試薬、ならびに従来型の合成手順を使用して、後述の実施例で例示される方法、および/または他の従来型の方法により調製され得る。これらの反応において、それ自体既知であるが、本明細書では言及されない変異体を使用することもまた、考えられる。発明の化合物を調製する特定の新規および典型的な方法は、例証の項に記載される。そのような方法は、本発明の範囲内である。本化合物の本質的な性質または実用性に悪影響を及ぼさない、置換基の1つ以上の単純な変形物が形成される、本明細書に記載かつ同一の一般的性質を有する本化合物の機能的および構造的同等物もまた、含まれる。
【0145】
より具体的には、本発明のアミノ酸プロドラッグは、後述の実施例1−Aで例示される方法、および例えばスキーム1および2で記載される等の一般反応スキームで、またはそれらの変形物により、調製され得る。
【0146】
本発明のカルバメートプロドラッグは、後述の実施例1−Bで例示される方法、またはその変形物により調整され得る。
【0147】
本発明の非アミノ酸プロドラッグは、後述の実施例1−Cで例示される方法、および例えばスキーム1および2で記載されるアミドカップリングステップ等の一般反応スキームで、またはそれらの変形物により、調製され得る。
【0148】
炭水化物由来のプロドラッグは、後述の実施例1−Dで例示される方法、または使用される連結(カルバメート、尿素、アミド等)により既知のカップリング反応により、またはそれらの変形物により、調製され得る。
【0149】
N−ヒドロキシプロドラッグおよびそれらの誘導体は、アミン基の酸化、および所望の場合そのようなN−ヒドロキシ基のアルキル化により、調製され得る。これらの反応を達成するための手段は、容易に利用可能であり、当業者には既知である。
【0150】
環状二重保護プロドラッグは、使用されるDおよびX基に応じて、そのような基の環化のための標準的な手順により、調製される。
【0151】
本発明の化合物は、提供された具体的な手順で例示されるように、本明細書に記載の合成スキームおよびプロトコルに従って、容易に調製され得る。しかしながら、当業者は、本発明の化合物を形成するために、他の合成経路が使用され得、以下は単に例を目的として提供されるに過ぎず、本発明を限定するものではないことを認識する。例えば、“Comprehensive Organic Transformations” by R. Larock, VCH Publishers (1989)を参照のこと。当技術分野で標準的である、様々な保護および脱保護戦略が利用されることが、さらに認識される(例えば、“Protective Groups in Organic Synthesis ” by Greene and Wuts (1991)を参照)。当業者は、任意の特定の保護基(例えばアミン、ヒドロキシル、チオ、およびカルボキシル保護基)の選択は、その後の反応条件に関して保護部分の安定性に依存することを認識し、その適切な選択を理解する。
【0152】
当業者の知識をさらに例示するのは、以下に抽出した広範な化学文献である:“Chemistry of the Amino Acids” by J. P. Greenstein and M. Winitz, John Wiley & Sons, Inc., New York (1961); “Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure ” by J. March, 4th Edition, John Wiley & sons (1992); T. D. Ocain, et al., J. Med. Chem., 31, 2193-99 (1988); E. M. Gordon, et al., J. Med. Chem. 31 , 2199-10 (1988); “Practice of Peptide Synthesis ” by M. Bodansky and A. Bodanszky, Springer- Verlag, New York (1984); “Asymmetric Synthesis: Construction of Chiral Molecules Using Amino Acids” by G. M. Coppola and H. F. Schuster, John Wiley & Sons, Inc., New York (1987); “The Chemical Synthesis of Peptides” by J. Jones, Oxford University Press, New York (1991);および“Introduction of Peptide Chemistry” by P. D. Bailey, John Wiley & Sons, Inc., New York (1992)。
【0153】
本発明の化合物の合成は、好ましくは溶媒中で行われる。適切な溶媒は、環境室温および圧力で液体であるか、または反応に使用される温度および圧力条件下で液体状態のままである。溶媒の選択は当業者の一般技能の範囲内であり、温度、試薬および出発原料の性質、試薬および出発原料の溶解度および安定性、反応の種類等に依存する。状況に応じて、溶媒は、蒸留または脱気されてもよい。溶媒は、例えば、脂肪族炭化水素(例えばヘキサン、ヘプタン、リグロイン、石油エーテル、シクロヘキサン、またはメチルシクロヘキサン)、およびハロゲン化炭化水素(例えば塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、クロロベンゼン、またはジクロロベンゼン)、芳香族炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、テトラヒドロナフタレン、エチルベンゼン、またはキシレン)、エーテル類(例えばジグリム、メチル−tert−ブチルエーテル、メチル−tert−アミルエーテル、エチル−tert−ブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフランもしくはメチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、またはジエチレングリコールジメチルエーテル)、アミド類(例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、ニトリル類(例えばアセトニトリル)、ケトン類(例えばアセトン)、エステル類(例えば酢酸メチルまたは酢酸エチル)、アルコール類(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール)、水、ならびにそれらの混合物であり得る。
【0154】
「活性化エステル」および同等の表現は、Xは離脱基である、式COXで表すことができ、その典型例は、N−ヒドロキシスルホスクシンイミジルおよびN−ヒドロキシスクシンイミジル基、電子吸引基(例えばp−ニトロ、ペンタフルオロ、ペンタクロロ、p−シアノ、またはp−トリフルオロメチル)で置換されるアリールオキシ基、およびカルボジイミドまたは他の従来のカップリング試薬により活性化され、例えばR
aおよびR
bは独立してC
1−C
6アルキル、C
5−C
8アルキル(例えばシクロヘキシル)、C
1−C
6ペルフルオロアルキル、またはC
1−C
6アルコキシ基である、−OCOR
aまたは−OCNR
aNHR
bのような無水物もしくは混合無水物を形成するカルボン酸を含む。活性化エステルは、そのままの状態で形成されてもよく、あるいは単離可能な試薬であってもよい。エステル離脱基は、例えば、スルホスクシンイミジルエステル、ペンタフルオロチオフェノールエステル、スルホテトラフルオロフェノール、置換または未置換C
1−C
6アルキル(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、またはヘキシル等)、または置換もしくは未置換C
6−C
14アリール、または2−フルオロエチル、2−クロロエチル、2−ブロモエチル、2,2−ジブロモエチル、2,2,2−トリクロロエチル、3−フルオロプロピル、4−クロロブチル、メトキシメチル、1,1−ジメチル−1−メトキシメチル、エトキシメチル、N−プロポキシメチル、イソプロポキシメチル、N−ブトキシメチル、tert−ブトキシメチル、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、1−(イソプロポキシ)エチル、3−メトキシプロピル−4−メトキシブチル、フルオロメトキシメチル、2,2,2−トリクロロエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ)メチル、3−フルオロプロポキシメチル、4−クロロブトキシエチル、ジブロモメトキシエチル、2−クロロエトキシプロピル、フルオロメトキシブチル、2−メトキシエトキシメチル、エトキシメトキシエチル、メトキシエトキシプロピル、メトキシエトキシブチル、ベンジル、フェネチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、α−ナフチルメチル、β−ナフチルメチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、α−ナフチルジフェニルメチル、9−アンスリルメチル、4−メチルベンジル、2,4,6−トリメチルベンジル、3,4,5−トリメチルベンジル、4−メトキシベンジル、4−メトキシフェニルジフェニルメチル、2−ニトロベンジル、4−ニトロベンジル、4−クロロベンジル、4−ブロモベンジル、4−シアノベンジル、4−シアノベンジルジフェニルメチル、またはビス(2−ニトロフェニル)メチル基等の複素環基であり得る。
【0155】
[III. 本発明によるアミノ酸プロドラッグの典型的な合成]
以下のスキームは、例示目的であって、限定することを意図するものではない。3−アミノ−1−プロパンスルホン酸の第1のアミノ酸とのカップリングは、概してスキーム1により表すことができる。
【0156】
スキーム1
【化24】
式中、R
1、R
2およびR
4は、すでに開示した通りであり、R
zは、R
3または保護基であり、Xは、活性化エステルの離脱基である。
【0157】
スキーム1において、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸のモノアミノ酸プロドラッグは、その遊離アミノ基(または保護スルホン酸エステル変異体)を、所望のアミノ酸(N−保護であってもよい)の活性化エステルと反応させることにより産生される。活性化エステルの基C(O)Xは、ハロゲン化アシル、混合無水物、スクシンイミドエステルであってもよく、または塩基(例えばアミン類(DIPEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン)、水酸化物類(水酸化ナトリウム等)、炭酸塩類(炭酸カリウム等)、等)、および任意で触媒(例えば4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt))の存在下で、ペプチドカップリング剤(例えばカルボジイミド類(EDC(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−ジイソプロピルエチルカルボジイミド)等)、およびウロニウム類(HATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸)等))により活性化されるカルボン酸であり得る。塩基および触媒の選択は、主に活性化エステルの性質に依存する。
【0158】
この段階で、保護基(アミン上のR
zまたはR
1およびR
2基の中のヘテロ原子上に存在する保護基)は、取り除かれ得る。アミン上以外のヘテロ原子上の保護基は、さらなるアミノ酸カップリングが必要である場合取り除くことはできない(スキーム2を参照)。酸素原子の保護基は、ベンジルおよびシリルエーテル、アセタール、およびエステルを含んでよく、窒素の保護基は、カルバメートおよびフルオレン誘導体を含んでもよい。これらは広く使用されている手順により開裂される(例えば上記Greene and Wuts (1991)を参照)。
【0159】
スキーム2
【化25】
式中、R
1、R
2、およびR
4は、それぞれR
1、R
2、およびR
4として定義されるが、上記スキームのR
1、R
2、およびR
4と同一であってもなくてもよく、R
1、R
2、R
4、R
z、およびXは、すでに開示した通りである。
スキーム2を使用して、3APSに付着した2つ以上のアミノ酸を含むプロドラッグを産生する。カップリング条件は、スキーム1に記載したものと概して同じである。その後のアミノ酸は、それぞれのカップリングステップの間にアミン基の脱保護を伴い、同じように添加される。他の保護基が残留物のヘテロ原子上に存在する場合、それらは最後の化学的ステップの間に取り除くことができる。
【0160】
概して、反応の完了後、生成物は、標準的な技術に従って、反応混合物から単離される。例えば、溶媒は、生成物が固体である場合、任意で減圧下で、蒸発または濾過により取り除かれる。反応の完了後、残留物に水を添加して、水層を酸性または塩基性にし、また沈殿化合物を濾過してもよいが、感水性の化合物を扱う場合には注意を要する。同様に、反応混合物に、疎水性溶媒とともに水を添加して、標的化合物を抽出してもよい。該有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムまたは硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を蒸発させて標的化合物を得ることができる。このようにして得られた標的化合物は、必要であれば、例えば再結晶、沈殿、クロマトグラフィー、により、または酸もしくは塩基を添加して塩に変換することにより、精製され得る。
【0161】
[IV. 肝初回通過代謝を最小限に、または減少させることによる、3APSを送達するための代替の経路および媒体]
以上で示したように、本発明の一態様は、3APSの肝初回通過代謝を減少させるための、新規な投与経路(例えば、経皮、皮下、鼻腔内等)、および新規な医薬用媒体(例えばパッチ、移植片、スプレー、製剤(経口投与用を含む))に関係する。
【0162】
[経皮薬物送達装置]
経皮経路による薬物の送達は、関心が高まりつつある分野であり、薬物を血液中へ長期的かつ安定して投入することを可能にする利点を提供する。3APSの経皮的送達は、3APSの投与に関連する肝初回通過代謝を回避する可能性があり、したがって3APSの治療有効性を高める可能性があるため、本発明の好適な一実施形態である。経皮的送達はまた、注射に関連する痛みの回避にも役立ち得、用量の順守を向上させ得る。
【0163】
したがって、本発明の特定の態様は、認知障害の治療における、本発明による化合物、好ましくは3APSの有効性を高めるための、該化合物を送達するための方法に関する。本発明は、さらに本発明による化合物、好ましくは3APSの送達方法に関連し、該化合物は経皮パッチで投与され得る。
【0164】
本発明による経皮薬物送達装置は、当業者には周知の技術および構成要素を使用して製造され得る。経皮薬物送達装置が典型的に伴うものには、任意で着色ポリエステルフィルム、薬物リザーバ、システムから皮膚表面への薬物の送達速度を制御する微多孔膜、および送達システムを対象に付着させるための接着製剤を含む、裏張り層がある。任意で、接着製剤は薬物を含んでもよく、したがって、パッチを対象に貼り付けた後、より該化合物の即座のボーラスを提供する。
【0165】
経皮薬物送達装置は、典型的に、送達される薬物が中に組み込まれる担体(液体、ゲル、もしくは固体マトリックス、または粘着剤等)もまた伴う。そして、薬物を含有する担体が皮膚上に設置され、薬物は、任意のアジュバントおよび賦形剤とともに、皮膚に送達される。典型的に、担体の対象の肌と接触しない部分は、裏張りで覆われる。裏張りは、担体(および薬物を含む担体に含有される構成要素)をその環境から保護する役割を果たし、薬物送達装置の成分の環境への損失を防ぐ。角質層の水和作用が、皮膚全体への特定の薬物の輸送を促進することが既知であるため、裏張りが、薬物送達装置により覆われた部位に水分を保持するために、比較的低い水蒸気透過率を有することが、しばしば望ましい。長期の着用(例えば1日を越える期間)の間、皮膚を呼吸させることにより、覆われた皮膚を健全に維持するために、裏張りは比較的高い酸素透過性を有することもまた望ましい。さらに、裏張りは、薬物ならびに任意のアジュバントおよび賦形剤を含む、担体の構成要素と接触するため、裏張りがその構造的完全性、引張強度、皮膚への適合性を保持するように、裏張りがそのような構成要素に対して安定していることが重要である。裏張りが、担体から薬物または他の賦形剤を吸収しないこともまた望ましい。特定のリザーバタイプの経皮薬物送達装置の準備に関連して、裏張りは、それ自体および他の様々な高分子基材に対して比較的低温でヒートシール可能であることもまた望ましい。経皮薬物送達装置における使用で見られる裏張り材料には、金属箔、金属化プラスチックフィルム、ならびに単層および多層の高分子フィルムがある(米国特許第5,264,219号を参照)。
【0166】
経皮パッチの作製に有用な膜は、当技術分野において既知であり、COTRAN(商標)9701、9702、9705、9706、9715、9716、9726、およびCOTRAN(商標)9728膜等の3Mから市販されているCoTran(商標)膜があるが、それらに限定されない。経皮パッチの作製に有用な裏張りは、当技術分野において既知であり、COTRAN(商標)およびSCOTCHPAK(商標)裏張等の3Mから市販されている裏張り材料があるが、それらに限定されない。同じく、裏地も当技術分野において周知であり、多くの商業的供給源から得ることができる。任意で、ゲル化剤を容量で20%まで添加することができる。ゲル化剤には、例えば商標名CARBOPOL(商標)で商業的に入手可能であるカルボキシポリアルキレンのような、ポリマーの「カルボマー」ファミリー等の、架橋アクリル酸重合体類、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体およびポリビニルアルコール等の親水性ポリマー類;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸塩、およびメチルセルロース等のセルロースポリマー類、トラガカントおよびキサンタンゴム等のゴム類;アルギン酸ナトリウム、ならびにゼラチンがあるが、これらに限定されない。
【0167】
当業者は、裏張り層、薬物リザーバ、膜、担体、裏張り、浸透促進剤、ゲル化剤等の適切な組み合わせおよび/または濃度を容易に特定する。必要であれば、全て経皮薬物送達装置について記載し、関連する、欧州特許第1 602 367号、米国特許第2005/019384号、米国特許第2005/0074487号、および米国特許第2005/175680号等の特許文献を含む、該主題に関する多くの刊行物を参照することができる。例えば、ヒトの皮膚を介した薬物の吸収を使用して、特定の担体または媒体を伴う経皮的送達の実行可能性を決定することができる。例えば、ヒトの表皮全体の本発明による化合物、好ましくは3APSの透過は、ガラス製拡散セルを使用して、体外で測定することができる。したがって、化合物の吸収の最適化は、本明細書で開示され、浸透促進剤として当技術分野において既知である、製剤の使用により達成される。追加の周知の試験およびアッセイには、透過速度についての研究、吸収についての研究、拡散アッセイ、ヒト表皮への透過の経時的プロファイリング、刺激についての研究等がある。
【0168】
臨床研究は、3APSの、1日2回の約100および/または150mgの経口量が、AD等の認知障害に対して有益な治療となり得ることを示している。本発明による化合物、好ましくは3APSの経皮投与は、初回通過代謝を低下する傾向があると考えられているため、3APSの用量は、経皮投与の場合低下され得る。一方、経皮投与は、該薬物の経口投与に関連する胃腸刺激等の、一般的な副作用を回避することにより、3APSの用量の増量に役立つ場合がある。
【0169】
経皮剤形の利益には、投与回数を削減する可能性があるため、対象の服薬遵守の向上がある。例えば、本発明の経皮パッチは、1、2、3、4、5、6、7日間の投薬を提供するように、処方され得る。典型的な実施形態においては、経皮パッチは、パッチの交換が望ましくなるまでに、約3日間の投薬を提供する 別の典型的な実施形態において、経皮パッチは、パッチの交換が望ましくなるまでに、約7日間の投薬を提供する。加えて、経皮用量は、本発明による化合物の任意の望ましい用量で処方され得る。例えば、経皮用量は、1日2回(bid)100mg、150mg bid、200mg bid、250mg bid、300mg bid、350mg bid、または400mg bidの経口投与と等価用量を提供し得る。したがって、150mg bidの経口投与と等価用量を有する経皮パッチを、望ましい期間(例えば4週間)対象に投与し、その後200mg bidの経口投与と等価用量を有するパッチを、望ましい期間投与してもよい。
【0170】
やはり本発明に含まれるのは、例えば1ヶ月の供給量の経皮パッチのような、望ましい供給量のパッチを含む、キットである。任意で、キットは、第1の部分の内容物がまず投与され、次に第2の部分の内容物の投与、その後第3の内容物の投与と続く、複数の、例えば3つの、異なって特定される(番号付け、色等)部分に整理されてもよい。代替として、パッチと経口製剤との組み合わせを含み得る。
【0171】
[V.対象および患者集団]
「対象」という用語は、Aβ−アミロイド症を発症する、または例えばアルツハイマー病等のAβ−アミロイド病にかかりやすい生命体を含む。対象の例には、ヒト、ニワトリ、アヒル、ペキンダック、ガチョウ、サル、シカ、ウシ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ラット、およびそれらの遺伝子導入種を含む。「対象」という用語は、好ましくは、神経細胞死により特徴付けられる状態になりやすい動物、例えば哺乳動物、例えばヒトを含む。該動物は、例えばアルツハイマー型の神経病理を有する遺伝子導入マウスのような、疾患に関しての動物モデルであり得る。好適な実施形態において、対象は、哺乳動物、より好ましくはヒトヒト対象である。
【0172】
「ヒト対象」という用語は、3APSの投与の利益を受けやすいヒト、より具体的には、アミロイド−β関連疾病にかかりやすい、もしくはそれを有すると診断された、および/またはアルツハイマー病、パーキンソン病等の神経変性病を罹患する者を含む。
【0173】
本発明のある実施形態において、ヒト対象は、本発明の方法による治療を必要とし、この必要性に基づいて治療のために選択される。治療を必要とする対象は、当技術分野で認識されており、β−アミロイド沈着に関連する疾病もしくは疾患を有すると同定された対象を含み、そのような疾病もしくは疾患の症状を有し、またはそのような疾病もしくは疾患の危険性があり、診断、例えば医学的診断に基づき、治療から利益(例えば該疾病もしくは疾患、該疾病もしくは疾患の症状、または該疾病もしくは疾患の危険性を治す、癒す、予防、緩和、軽減、変質、修復、改善、好転、もしくはそれらに影響を及ぼす)を得ることが期待される。
【0174】
例えば、ヒト対象は、30歳を超えるヒト、40歳を超えるヒト、50歳を超えるヒト、60歳を超えるヒト、70歳を超えるヒト、80歳を超えるヒト、85歳を超えるヒト、90歳を超えるヒト、または95歳を超えるヒトであり得る。対象は、閉経後のヒト女性を含むヒト女性であり得、ホルモン(エストロゲン)補充療法中であってもよい。対象は、また、ヒト男性であってもよい。別の実施形態においては、対象は、40歳未満である。
【0175】
好適な実施形態では、対象は、アルツハイマー型の神経病理を有するヒト対象である。アルツハイマー病に目下罹患する個人は、特有の認知症、ならびに以下に記載の危険因子の存在から認識され得る。加えて、ADを有する個人の同定には、認識および神経学的試験に基づく多くの診断試験が利用可能である。例えば、アルツハイマー病に罹患する個人は、本明細書に記載する、臨床認知症評価(Clinical Dementia Rating; CDR)尺度、簡易認知機能検査(Mini-mental State Examination;MMSE)、アルツハイマー病評価尺度−認知機能サブスケール(Alzheimer’s Disease Assessment Scale-Cognitive Subscale; DAS-Cog)、または当技術分野で既知である他の任意の試験により診断され得る。より正規の母集団を評価するために考案された他の評価指標と合わせてMMSEおよびADASを含む、適切な評価指標についての基準得点を使用して、危険性のある集団を突き止めることができる。危険性のある群を同定するための別の方法では、尿中の神経糸状タンパク質のためのアッセイを利用する。例えばMunzar et al., Neurology and Clinical Neurophysiology, Vol. 2002, No.1を参照のこと。高いアルツハイマー病の危険性を有する患者は、発症前アルツハイマー症候学に関連する記憶障害の初期兆候または他の問題、アルツハイマー病の家族暦、軽度認識障害(MCI)を有する患者、遺伝的危険因子、年齢、性別、および高いアルツハイマー病の危険性を予測すると認められる他の特徴のスクリーニングにより、集団から選択され得る。
【0176】
「予防」または「予防する」という用語は、本発明の化合物または組成物の、そのような疾病または状態の高い危険性を有する(またはかかりやすい)対象への投与について、記載するためにもまた使用される。該疾病または状態の予防のための治療に適した患者には、高い該疾病または状態の危険性があるが、症状は呈さない個人、ならびに目下症状を呈する患者を含む。アルツハイマー病の場合は、事実上、長生きをすれば誰にでもアルツハイマー病を罹患する高い危険性がある。したがって、本方法は、対象患者の危険性を何ら調べずとも、一般集団に予防的に施すことができる。しかし、本方法は、既知のアルツハイマー病の危険性を実際有する個人に、特に有用である。そのような個人には、この疾病を経験した血縁者を有する者、ならびに例えばMRI、PET、SPECT等の画像検査法により診断される脳プラークを含む、遺伝的または生化学的マーカーの分析によりその危険性が決定される者を含む。そのような画像検査法の実施例は、Burggren et al., Current Topics in Medicinal Chemistry, vol. 2002, no. 2, pp 385-393、およびSair et al., Neuroradiology, vol. 46, pp. 93-104 (2002)で考察されている。科学文献で同定または提案されたアルツハイマー病の素因には、とりわけ、対象をアルツハイマー病にかかりやすくする遺伝子型、対象をアルツハイマー病にかかりやすくする環境因子、対象をアルツハイマー病にかかりやすくする、ウイルス性および細菌性の作用因子による感染の既往歴、ならびに対象をアルツハイマー病にかかりやすくする血管因子を含む。アルツハイマー病への危険性の遺伝的マーカーには、APP遺伝子の突然変異、特に、それぞれHardyおよびSwedish変異と称される、位置717ならびに位置670および671での突然変異を含む(Hardy et al., TINS 20, 154-158 (1997)を参照)。他の危険性マーカーは、プレセニリン遺伝子、PS1およびPS2、ならびにApoE4の突然変異、ADの家族暦、高コレステロール血症、またはアテローム性動脈硬化症である。対象は、例えば、脳活動、プラーク沈着、または脳萎縮を測定するもののような、診断用の脳画像化技術により、危険性が高いことを示すことができる。ヒト対象もまた、臨床認知症評価(「CDR」)、アルツハイマー病認知機能評価尺度(「ADAS−Cog」)、認知症における機能障害評価(Disability Assessment for Dementia)(「DAD」)、もしくは簡易認知機能検査(「MMSE」)等の認識試験、および/または当技術分野で既知の他の任意の認識試験によって、危険性が高いことを示すことができる。
【0177】
別の実施形態においては、ヒト対象は、アルツハイマー病の症状を呈さない。別の実施形態においては、対象は少なくとも40歳で、アルツハイマー病の症状を呈さない。別の実施形態においては、ヒト対象は少なくとも40歳で、1つ以上のアルツハイマー病の症状を呈する。
【0178】
本発明の方法および化合物を使用することにより、対象の血漿または脳脊髄液(CSF)中のアミロイドβペプチドレベルは、治療前のレベルから、約10から約100パーセント、またはさらに約50から約100パーセント、例えば15、25、40、60、70、75、80、90、95、もしくは99%、有意に低下され得る。したがって、ある実施形態において、ヒト対象は、本方法による治療前に、例えば、約10pg/mLを上回る、または約20pg/mLを上回る、または約35pg/mLを上回る、またはさらに約40pg/mLを上回るAβ
40レベル、および30pg/mLから約200pg/mL、もしくはさらに約500pg/mLまでのAβ
42レベルの、上昇した、血中および/またはCSF中のアミロイドAβ
40およびAβ
42ペプチドレベルを有する場合がある。同様に、いくつかの実施形態によると、本発明の方法および化合物は、治療前のレベルと比較して、脳におけるAβプラークまたはAβ沈着の大きさおよび/または数を、約10から約100パーセント、またはさらに約50から約100パーセント、例えば15、25、40、60、70、75、80、90、95、または99%減少させるのに役立つ。
【0179】
[VI. 医薬組成物]
好ましくは、本発明の化合物は、当技術分野において周知である技術および手順を使用して、投与前に医薬組成物に処方化される。したがって、別の実施形態においては、本発明は、有効量の、本明細書における式のいずれかによる1つ以上の化合物、および医薬的に許容される媒体、ならびにそのような医薬組成物の使用および製造方法を含む、医薬組成物(例えば、溶液、懸濁液、または乳剤)に関する。
【0180】
医薬組成物は、適切な投与(経口、非経口(IV、IM、デポ剤IM、SC、およびデポ剤SC)、舌下、鼻腔内(吸入)、髄腔内、局所的、または経直腸的)に処方化される。適切な医薬的に許容される媒体には、無制限に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の、経口、非経口、経鼻、粘膜、経皮、局所、髄腔内、直腸、血管内(IV)、動脈内(IA)、筋肉内(IM)、および皮下(SC)投与経路に適切な、任意の非免疫原性の医薬担体または希釈剤を含む。また、本発明は、静脈内、筋肉内、または皮下注射による等の投与用の、医薬的に許容される製剤を形成するために、凍結乾燥された、再構成され得るそのような化合物を含む。投与はまた、皮内または経皮であってもよい。
【0181】
媒体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、それらの適切な混合物、および植物油類を含有する、溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチン等のコーティングの使用により、分散の場合、必要とされる粒度を維持することにより、ならびに界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。微生物の作用の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等の、様々な抗菌および抗真菌剤により達成され得る。多くの場合、該組成物には、例えば、糖類、塩化ナトリウム、またはマンニトールおよびソルビトール等の多価アルコールのような、等張剤が含まれる。注射可能な組成物の持続的吸収は、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンのような、吸収を遅延させる薬剤を組成物に含むことにより、もたらされ得る。
【0182】
好ましくは、本発明の化合物は、経口投与され得る。本発明の製剤には、経口投与に適したものを含む。該製剤は、単位剤形として便利に提示されてもよく、薬学の技術分野において周知である任意の方法により、調整され得る。これらの製剤または化合物を調製する方法は、本発明の化合物を、医薬的に許容される媒体(例えば不活性希釈剤または同化可能な食用担体)、および任意で1つ以上の副成分と関連させるステップを含む。概して、該製剤は、本発明の化合物を、液体担体、または微粉化した固体担体、またはその両方と、均一および密接に関連させ、必要であればその生成物を成形することにより、調製される。そのような医薬的に有用な組成物中の治療薬の量は、適切な用量が得られるだけのものである。
【0183】
経口投与に適した本発明の製剤は、それぞれ本発明の化合物の所定量を活性成分として含有する、カプセル(例えば硬質または軟質ゼラチンカプセル殻)、カシェ剤(cachet)、丸剤、錠剤、薬用ドロップ(lozenge)、粉末、顆粒、丸薬、例えばコーティングされた(例えば腸溶性)もしくはコーティングされていない糖衣錠の形態で、または水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液として、水中油型もしくは油中水型乳濁液として、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤として、またはトローチ(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア等の不活性基剤)として、または洗口剤等としてであってもよい。本発明の化合物は、ボーラス、舐剤もしくはペースト剤として投与されてもよく、または対象の食餌に直接組み込まれてもよい。さらに、ある実施形態においては、これらの丸薬は、(a)即座または急速な薬の放出を提供する(つまり、それらにコーティングを施さない)、(b)例えばゆっくり時間をかけた持続的な薬の放出を提供するように、コーティングを施す、または(c)胃腸により耐性を持たせるように腸溶性のコーティングを施すように、処方化され得る。
【0184】
本発明の経口投与用の固体剤形では、活性成分は、クエン酸ナトリウムもしくは第2リン酸カルシウム等の、1つ以上の医薬的に許容される担体、または以下のうちのいずれとも混合される。澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、もしくはケイ酸等の充填剤もしくは増量剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、もしくはアカシア等の結合剤;グリセロール等の保湿剤、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカ澱粉、アルギン酸、特定のケイ酸、および炭酸ナトリウム等の崩壊剤、パラフィン等の溶液遅延剤;第四級アンモニウム化合物等の吸収促進剤、例えばセチルアルコールおよびステアリン酸グリセロール等の湿潤剤、カオリンおよびベントナイト粘土等の吸収剤、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物等の潤滑剤、ならびに着色剤。カプセル、錠剤、および丸剤の場合、該医薬組成物は緩衝剤もまた含有し得る。類似の種類の固体組成物を、ラクトースまたは乳糖等の賦形剤、ならびに高分子量のポリエチレングリコール等を使用して、軟および硬ゼラチンカプセル中の充填剤として、用いることができる。
【0185】
経口組成物には、典型的に、溶液、乳剤、懸濁液等を含む。そのような化合物の調製に適切である医薬的に許容される媒体は、当技術分野において周知である。シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、および懸濁液用の担体の典型的な構成要素には、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、液体スクロース、ソルビトール、および水を含む。懸濁液については、典型的な懸濁化剤には、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、トラガカント、およびアルギン酸ナトリウムを含み、典型的な湿潤剤には、レシチンおよびポリソルベート80を含み、典型的な防腐剤には、メチルパラベンおよび安息香酸ナトリウムを含む。経口液体組成物は、上記で開示した甘味料、香味料、および着色剤等の、1つ以上の構成成分もまた含むことができる。
【0186】
注射可能な使用に適切である医薬組成物には、滅菌水溶液(水溶性)もしくは分散液、および滅菌注射液もしくは分散液を即時調製するための滅菌粉末を含む。いずれの場合も、該組成物は、滅菌されていなければならず、容易な注入可能性が存在する程度まで流動的でなければならない。製造および保管の状態で安定していなければならず、細菌および真菌等の微生物の汚染作用から保護されなければならない。滅菌注射液は、上記で列挙した成分のうちの1つまたは組み合わせとともに、必要とされる量の治療薬を適切な溶媒に組込み、必要に応じてその後濾過滅菌することにより、調製され得る。概して、分散液は、基本的な分散媒および上記に列挙したものから必要とされる他の成分を含有する滅菌媒体中に、治療薬を組み込むことにより調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌粉末の場合、その調整方法は、活性成分(つまり、該療薬)に加えて、予め滅菌濾過されたその溶液からのいずれかの追加の所望の成分の、粉末を産生する、真空乾燥法および凍結乾燥法である。
【0187】
エアロゾルとして吸入による投与に適切な医薬製剤もまた、提供される。これらの製剤は、本明細書のいずれかの式の所望の化合物の溶液もしくは懸濁液、またはそのような化合物の複数の固体粒子を含む。所望の製剤は、小さなチャンバに取り付けて、噴霧され得る。噴霧化は、薬剤または塩を含む複数の液滴または固体粒子を形成する、圧縮空気または超音波エネルギーにより達成され得る。液滴または固体粒子は、約0.5から約5ミクロンの範囲の粒度を有すべきである。固体粒子は、本明細書で記載のいずれかの式の固体薬剤、またはその塩を、微粉化等の当技術分野で既知の適切な様式で処理することにより得ることができる。固体粒子または液滴の大きさは、例えば約1から約2ミクロンであろう。この点では、この目的を達成するために、商用の噴霧器が利用可能である。
【0188】
エアロゾルとしての投与に適切な医薬製剤は、液体の形態であってもよく、該製剤は、水を含む担体中に、本明細書に記載のいずれかの式の水溶性薬剤、またはその塩を含有する。噴霧化される際に所望の範囲内の大きさの液滴の形成をもたらすのに十分なほど、製剤の表面張力を低下させる、界面活性剤が存在してもよい。
【0189】
本発明の組成物は、また、例えば、対象の表皮もしくは上皮組織上に組成物を直接置く、もしくは広げることにより、対象に局所的に、または「パッチ」を介して経皮的に投与され得る。そのような組成物には、例えばローション、クリーム、溶液、ゲル、および固体を含む。これらの局所用組成物は、有効量、少なくとも約0.1%、またはさらに約1%から約5%の本発明の薬剤を含有し得る。局所投与に適切な担体は、典型的に、連続的フィルムとして皮膚上にそのまま留まり、発汗または水中での浸水によって取り除かれるのを防止する。概して、担体は有機性であり、治療薬をその中で分散または溶解することができる。担体には、医薬的に許容される軟化薬、乳化剤、増粘剤、溶媒等を含み得る。
【0190】
対象薬剤の全身への送達を達成するために有用な他の組成物には、舌下、口腔、および鼻腔用剤形を含む。そのような組成物は、典型的に、スクロース、ソルビトール、およびマンニトール等の可溶性充填物質、アカシア、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース等の結合剤のうちの1つ以上を含む。上記で開示した、流動促進剤、潤滑剤、甘味料、着色剤、酸化防止剤、および香味料もまた含み得る。本発明の化合物は、非経口、腹腔内、脊髄内、または脳室内にもまた、投与され得る。そのような組成物について、本発明の化合物は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中、ならびに油中で調製され得る。通常の保管および使用状態下で、微生物の成長を防ぐために、これらの調製品に防腐剤を含有させることができる。
【0191】
非経口的投与以外により本発明の化合物を投与するには、該化合物をその不活性化を防ぐ材料でコーティングする、または該化合物をそのような材料と併用投与することが、有用であり得る。例えば、本発明の化合物は、例えばリポソーム等の適した担体、または希釈剤中で、対象に投与され得る。医薬的に許容される釈剤には、生理食塩水および水性緩衝溶液を含む。リポソームには、水中油中水型CGF乳剤、ならびに従来型のリポソームを含む。
【0192】
本発明による医薬組成物は、また、従来の方法、典型的にはpHもしくは時間依存性コーティングで、本発明の化合物が、所望の位置の周辺で、または所望の作用を延長する様々な時間、放出されるように、コーティングされ得る。そのような剤形は、典型的に、酢酸フタル酸セルロース、ポリ酢酸フタル酸ビニル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、エチルセルロース、ワックス、およびセラックのうちの1つ以上を含むが、それらに限定されない。
【0193】
本発明の化合物は、キットの一部として、任意で容器(例えば包装用、箱、バイアル等)を含んで、梱包され得る。キットは、本明細書に記載の方法により商業的に使用されてもよく、本発明の方法での使用のための取扱説明書を含み得る。追加のキット構成要素には、酸、塩基、緩衝剤、無機塩、溶媒、酸化防止剤、防腐剤、または金属キレート剤を含み得る。追加のキット構成要素は、純粋組成物として、または1つ以上の追加のキット構成要素を組み込む水溶液または有機溶液として存在する。任意または全てのキット構成要素は、任意でさらに緩衝剤を含む。
【0194】
[VII. 投与量]
剤形は、本発明による化合物を放出する際、ヒト患者への体内投与時に、対応する3APSを提供し得る。適切な用量は、通常の熟練した医師、獣医、または研究者の知識内である、多くの要因に依存することが理解される(例えばWells et al. eds., Pharmacotherapy Handbook, 2
nd Edition, Appleton and Lange, Stamford, Conn. (2000); PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000, Deluxe Edition, Tarascon Publishing, Loma Linda, Calif. (2000)を参照)。本発明の化合物の用量は、例えば、用いられる特定の薬剤の活性、対象の年齢、体重、総体的な健康、性別、および食餌、投与時間、投与経路、排泄率、および任意の薬物の組み合わせ、該当する場合は、対象および本化合物の特性に対して、化合物が有することを施術者が望む効果(例えばバイオアベイラビリティ、安定性、効能、毒性等)を含む、様々な要因によって異なる。そのような適切な用量は、本明細書に記載のアッセイを使用して決定され得る。本発明の化合物のうちの1つ以上がヒトに投与される場合、医師は、例えば最初、比較的低用量を処方し、続いて適切な反応が得られるまで増加させることができる。
【0195】
典型的な用量は、対象または試料体重のキログラム当たりのミリグラムまたはマイクログラム量(例えばキログラム当たり約50マイクログラムからキログラム当たり約500ミリグラム、キログラム当たり約1ミリグラムからキログラム当たり約100ミリグラム、キログラム当たり約1ミリグラムからキログラム当たり約50ミリグラム、キログラム当たり約1ミリグラムからキログラム当たり約10ミリグラム、またはキログラム当たり約3ミリグラムからキログラム当たり約5ミリグラム)の化合物を含む。追加の典型的な用量は、約5から約500mg、または約25から約300mg、または約25から約200mg、好ましくは、約50から約150mg、より好ましくは、約50、約100、約150mg、約200mg、または約250mg、また好ましくは毎日もしくは1日に2回、またはより低量もしくはより高量の用量を含む。比較用に、3APS自体の典型的な用量には、対象のキログラム当たり約2〜3ミリグラムの3APSを含む(1日2回)。2005年4月12日出願の、米国特許第11/103,656号もまた参照されたく、それは参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0196】
投与を容易にし、投与量を均一化するため、非経口組成物を単位剤形に処方化することが、概して有利である。「単位剤形」という用語は、ヒト対象および他の哺乳動物に対する統一された投与量として適切な、物理的に個別の単位を指し、それぞれの単位は、適切な医薬媒体と関連して、所望の治療効果をもたらすように計算された、所定の量の活物質を含有する。一実施形態において、本発明による組成物は、各投与量が、約50mgから約500mg、より好ましくは、約100mgから約300mgの本発明による化合物を含有する、単位剤形に処方化される。2005年4月12日出願の、米国特許第11/103,656号もまた参照されたく、それは参照することにより本明細書に組み込まれる。本発明の単位剤形の明細は、異なってもよく、(a)治療薬および達成される特定の治療効果に独特の特徴、および(b)対象におけるアミロイド沈着の治療用の、そのような治療薬を調合する技術分野に特有の限界により決定づけられ、またそれらに直接依存する。
【0197】
本発明の化合物および組成物の治療される対象への投与は、所望の目的(例えばADの予防または治療、3APSの特定のレベルを得る等)を達成するために効果的な投与量および時間で、既知の手順を使用して実行され得る。投与計画は、最善の治療反応を提供するために、調節され得る。例えば、いくつかに分割された用量が毎日投与されてもよく、または用量は、治療状況の要件が示す通り、比例的に減少されてもよい。
【0198】
一実施形態においては、本発明の化合物は、対象、好ましくは、ヒト対象におけるアミロイド沈着を阻害するのに十分である、治療上有効な投与量で投与される。アミロイド沈着に言及する場合、「治療上有効な」投与量は、未治療の対象と比較して、例えば少なくとも約20%、または少なくとも約40%、またはさらに少なくとも約60%、または少なくとも約80%、アミロイド沈着を阻害する。
【0199】
一実施形態においては、本発明の化合物は、アルツハイマー病の予防または治療のために、治療上有効な投与量で投与される。アルツハイマー病に言及する場合、「治療上有効な」投与量は、認知機能を安定化、または認知機能のさらなる低下を防ぐ(つまり、病気の進行を防止、減速、または停止させる)。
【0200】
[VII. 化合物、組成物、および剤形の使用]
本発明の別の態様は、有効量の本発明の化合物を投与することにより、神経細胞死を阻害するための方法に関する。さらに別の態様では、本発明は、Aβ−アミロイド関連の疾病、例えばアルツハイマー病、を有する対象への神経保護を提供するための方法に関し、神経保護が提供されるように、有効量の本発明の化合物を対象に投与するステップを含む。本明細書で使用される「神経保護」という用語は、限定されるわけではないが、細胞骨格の不安定化、DNA断片化、ホスホリパーゼA2等の加水分解酵素の活性化、カスパーゼ、カルシウム活性化プロテアーゼおよび/またはカルシウム活性化エンドヌクレアーゼの活性化、マクロファージにより媒介される炎症、細胞中へのカルシウム流入、細胞における膜電位変化、細胞間連絡の減少または不在にいたる細胞間結合の崩壊、ならびに細胞死に関与する遺伝子の発現の活性化等の、プロセスの開始をもたらし得る細胞死からの、対象の神経細胞の保護を含む。
【0201】
好適な実施形態に従い、本発明の化合物および組成物は、次の、アルツハイマー病の予防、アルツハイマー病の治療もしくはアルツハイマー病の症状の改善、アミロイドβ(Aβ)ペプチドの産生もしくはそのレベルの調節、対象におけるアミロイド沈着の予防、軽減、もしくは阻害、アミロイド関連疾病の治療もしくは予防のうちの1つ以上のために使用される。
本発明の化合物および医薬組成物は、次の機序のうちのいずれかを使用し、β−アミロイド関連疾病の経過を改善するように作用し得る(本リストは例示的なものであって、限定する意図はない)。β−アミロイド線維形成または沈着速度の減速、β−アミロイド沈着の程度の軽減、アミロイド線維形成の阻害、軽減、または予防、β−アミロイドにより誘発される神経変性または細胞毒性の阻害、アミロイド誘発炎症の阻害、脳からのβ−アミロイドの排除の促進、脳におけるAβの分解の促進、またはアミロイドタンパク質が繊維状に組織化する前にその排除およびCSFまたは血漿中のAβ42:Aβ40の比率の減少。別の実施形態においては、本発明は、ADを罹患する対象における認知機能を改善するための方法に関する。該方法は、対象の認知機能が改善されるように、有効量の本発明の医薬化合物を投与するステップを含む。対象の認知機能は、臨床認知症評価(「CDR」)、簡易認知機能検査(「MMSE」)、認知症における機能障害評価(「DAD」)、およびアルツハイマー病認知機能評価尺度(「ADAS−Cog」)等の当技術分野において既知の方法を使用して、試験され得る。認知機能における改善は、本発明の方法を使用して治療された対象の成果に、プラシーボ群の構成員、歴史的対照と比較して、または同一対象に対して行われたその後の試験の間で、測定可能な差異がある場合、発明の枠内に存在する。本発明は、また、対象に有効量の本発明の医薬化合物を投与することにより、前述の試験のいずれかにより測定される、対象の認知機能の毎年の悪化が改善される、認知機能障害に関連するβ−アミロイド関連疾病を治療、減速、または停止するための方法にも関する。
【0202】
本明細書において、例えば対象集団の年齢、投与量、および血中レベルにおいて、値および範囲が提供される場合はいつでも、これらの値および範囲に包含される全ての値および範囲は、本発明の範囲内に包含されることが意図されていることが、理解されるべきである。さらに、これらの値および範囲における全ての値は、範囲の上限および下限でもあり得る。
[VIII. 併用療法]
ある実施形態においては、本発明による化合物および組成物は、少なくとも1つの他の治療薬との併用療法で使用され得る。本発明によるプロドラッグ化合物および少なくとも1つの他の治療薬は、付加的に、またはある実施形態においては、相乗的に作用し得る。ある実施形態においては、本発明の化合物は、別の治療薬の投与と併用投与され得る。ある実施形態においては、本発明の化合物は、治療薬の投与の前、またはその後に投与され得る。少なくとも1つの他の治療薬は、同一または異なる疾病、疾患、または状態の治療に効果的であり得る。
【0203】
本発明の方法は、本発明の1つ以上の化合物または医薬組成物および1つ以上の他の治療薬の投与を含むが、組み合わせた投与は、本発明の1つ以上の化合物の治療効果を阻害、および/または有害な組み合わせ効果をもたらさないことを条件とする。
【0204】
ある実施形態においては、本発明の組成物は、本発明の化合物を含有するものと同一の医薬組成物の一部、またはそれとは異なる組成物であり得る、別の治療薬の投与と併用投与され得る。ある実施形態においては、本発明の化合物は、別の治療薬の投与の前、またはその後に投与され得る。併用療法のある実施形態において、併用療法は、例えば特定の薬物と関連する有害な副作用を最小限に抑えるために、発明の組成物と別の治療薬を含む組成物とを交互で投与することを含む。本発明の化合物が、潜在的に、限定されないが、毒性を含む有害な副作用を引き起こし得る別の治療薬と併用投与される場合、該治療薬は、有害な副作用が引き起こされる閾値を下回る用量で、有利に投与され得る。
【0205】
ある実施形態において、医薬組成物は、放出、バイオアベイラビリティ、治療効果、治療有効性、安定性等を促進、調整、および/または制御するための物質をさらに含み得る。例えば、本発明の化合物の治療効果を促進するために、該化合物は、胃腸管からの該化合物の吸収もしくは拡散を増進、または体循環における薬物の分解を阻害する1つ以上の活性薬剤と併用投与され得る。ある実施形態において、本発明の少なくとも1つの化合物は、3APSの治療効果を促進する薬理効果を有する活性薬剤と、併用投与され得る。
【0206】
ある実施形態において、本発明の化合物または医薬組成物は、店頭で、または処方箋により入手可能であり得る別の治療薬物を含む、またはそれとともに患者に投与され得る。米国特許出願第2005/0031651号(参照することにより、本明細書に組み込まれる)は、本発明による組み合わせにおいて有用であり得る、長いが限定的である「治療薬物」のリストを提供している。本発明の化合物または医薬組成物とともに使用される好適な治療薬物は、アルツハイマー病またはその症状の予防または治療に有用である治療薬物であり、ドネペジル(Aricept(商標))、メマンチン(Namenda(商標))、リバスティグミン(Exelon(商標))、ガランタミン(Reminyl(商標))およびR−フルルビプロフェン(Flurizaん(商標))を含むが、それらに限定されない。本発明による化合物および組成物は、ADの予防または治療用のワクチンおよび抗体とも組み合わせることができる。
【0207】
さらなる実施形態において、本発明の化合物は、3APSと併用投与され得る。
[IX. 本発明の化合物.を試験するための標準的な方法]
本発明による化合物は、様々な体外アッセイ、またはその安全性、バイオアベイラビリティ、神経保護、3APSを送達するそれらの能力等を確認するための体内アッセイを使用して、さらに分析、試験、または検証され得る。以下に、本化合物を調べるために行うことができる、生物学的アッセイの種類を例示する。
【0208】
i)体外におけるプロドラッグの酵素開裂の決定
経口投与されたプロドラッグについて、プロドラッグは、胃腸管内では無傷(つまり、非開裂)のままであり、体循環中に開裂される(つまり、親薬物を放出する)ことが、概して望ましい。有用なレベルの安定性は、胃腸管によるプロドラッグの吸収の機序および動態により、少なくとも部分的に決定され得る。有用なレベルの不安定性は、体循環中のプロドラッグおよび親薬物の薬物動態により、少なくとも部分的に決定され得る。概して、Caco−2 S9および/またはパンクレアチンアッセイでより安定し、ラット血漿、ヒト血漿、ラット肝臓S9、および/またはヒト肝臓S9調製においてより不安定であるプロドラッグが、経口投与されるプロドラッグとして有用であり得る。体外でプロドラッグの酵素開裂を決定するための試験結果を使用して、体内試験用のプロドラッグを選択することができる。
【0209】
ii)体内におけるプロドラッグのバイオアベイラビリティー
同一経路(例えば経口投与)によって患者に投与される等モル用量の親薬物により提供されるバイオアベイラビリティよりも優れた、対応する親薬物のバイオアベイラビリティを提供するプロドラッグが、治療薬として有用であり得る。本発明の化合物および放出された3APSのバイオアベイラビリティは、当技術分野において周知の方法を使用して、体内(ヒトおよび実験動物)で測定され得る。本明細書の実施例3は、マウスにおけるバイオアベイラビリティを調べるための、典型的な方法を提供する。
【0210】
iii)体内アッセイ:動物モデル
様々な動物モデルが、本発明による化合物の薬効および/または効能に対して使用され得る。例えば、特定の遺伝子導入動物モデルが、例えば米国特許第5,877,399号、同第5,612,486号、同第5,387,742号、同第5,720,936号、同第5,850,003号、同第5,877,015号、および同第5,811,633号、ならびにGanes et al., (Nature 1995, 373: 523)に記載されている。好適なのは、ADの病態生理学に関連する特徴を呈する動物モデルである。本明細書に記載の、本発明の化合物の阻害剤の遺伝子導入マウスへの投与は、本化合物の阻害活性を明示する代替の方法を提供する。適切な治療量の、治療上有効な担体中、または標的組織に達する投与経路を介しての、本化合物の投与もまた、好適である。
【0211】
iv)毒性
毒素を調べるために、異なる様々なパラメータが、監視され得る。そのようなパラメータの例には、細胞増殖、遺伝子またはタンパク質の発現分析による、毒性反応のための細胞経路の活性化の監視、DNA断片化、細胞膜の組成の変化、膜透過性、デスレセプターまたは下流シグナリング経路の構成要素(例えばカスパーゼ)の活性化、一般的なストレス反応、NF−κB活性化、およびマイトジェンに対する応答を含むが、それらに限定されない。アポトーシス(プログラムされた細胞死のプロセス)および壊死を検定するために、cGMP形成およびNO形成を含む、関連アッセイが使用される。
【0212】
本発明の化合物および組成物の毒性および治療効果は、例えばLD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%に治療上有効な用量)を決定するための、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順により、決定され得る。有毒と治療効果との用量比は治療指数であり、比率LD50/ED50で表現することができ、通常、大きな治療指数がより有効である。有毒な副作用を呈する薬剤を使用することが可能である一方、無影響の細胞への潜在的な損傷を最小限に抑え、それにより副作用を軽減するために、そのような薬剤を標的にする罹患組織の部位への送達システムの考案には注意を要する。
【0213】
v)神経保護
以下に、阻害剤が神経損傷または疾病に対して保護効果を有するかどうかを調べるために行われ得る、生物学的アッセイの種類を例示する。
【0214】
a.形態学的変化
多くの細胞型におけるアポトーシスは、形態的外観変化と相関性がある。そのような変化の例には、原形質膜の小疱形成、細胞形状変化、基質付着特性の損失を含むが、それらに限定されない。そのような変化は、光学顕微鏡で容易に検知可能である。アポトーシスを受ける細胞は、染色体の断片化および壊変によってもまた、検知され得る。これらの変化は、光学顕微鏡検査および/またはDNAもしくはクロマチンに特異的な染料を使用して、検知され得る。
【0215】
b.膜透過性変化
アポトーシスを受ける細胞膜は、しばしば透過性が増す。膜特性におけるこの変化は、生体染色色素(例えばヨウ化プロピジウムおよびトリパンブルー)を使用して、容易に検知され得る。染料を使用して、壊死細胞の存在を検知することができる。例えば、ある方法は、Molecular Probesから入手可能である、緑色蛍光LIVE/DEAD(商標) Cytotoxicity Kit #2を利用する。染料は、細胞のアミン基と特異的に反応する。壊死細胞では、遊離アミン含有量全体が、染料と反応することができ、したがって、強い蛍光染色をもたらす。対照的に、生存細胞の細胞表面アミンのみが、染料と反応することができる。したがって、生存細胞の蛍光強度は、壊死細胞と比べて有意に低下する(例えば、Haugland, 1996 Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, 6th ed., Molecular Probes, ORを参照)。
【0216】
c.ミトコンドリア膜電位の機能障害
ミトコンドリアは、高等生物の細胞において主要なエネルギー源として、様々な細胞プロセスの直接および間接的な生化学的調節を提供する。これらのプロセスには、アデノシン三リン酸(つまり、ATP)の形態で、代謝エネルギーを産生するための酸化的リン酸化を促進する、電子伝達系の活性を含む。ミトコンドリア活性化の変化または不全は、「透過性転移」またはミトコンドリア透過性転移と呼ばれるミトコンドリア崩壊をもたらし得る。ミトコンドリアが正常に機能するには、膜全体に確立された膜電位の維持を必要とする。膜電位の消失は、ATP合成を妨害し、したがって、不可欠な生化学的エネルギー源の産生を中断または制限する。
【0217】
このため、毒性および細胞死を調べるために考案される様々なアッセイは、ミトコンドリア膜電位またはミトコンドリア透過性転移に対する試験薬の効果の監視を伴う。一手法は、蛍光指示薬の使用である(例えばHaugland, 1996 Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, 6th ed., Molecular Probes, OR, pp. 266-274 and 589-594を参照)。様々な非蛍光性のプローブもまた利用可能である(例えばKamo et al. (1979) J. Membrane Biol. 49:105を参照)。ミトコンドリア膜電位は、また、ミトコンドリア膜透過性から間接的にも決定され得る(例えばQuinn (1976) The Molecular Biology of Cell Membranes, University Park Press, Baltimore, Md., pp. 200-217を参照)。そのようなアッセイを行うための方法に関するさらなる手引き、Dykensらに属するPCT刊行物第WO00/19200号で提供されている。
【0218】
d.カスパーゼ活性
アポトーシスは、プログラムされた細胞死のプロセスであり、細胞が必要とされなくなる、またはひどい損傷を受けると、遺伝的プログラムの活性に伴って生じる。アポトーシスは、生化学的事象のカスケードを伴い、多くの異なる遺伝子の調節下で起こる。一群の遺伝子が、アポトーシスのエフェクターの役目を果たし、インターロイキン−1β変換酵素(ICE)遺伝子ファミリーと称される。これらの遺伝子は、その活性がアポトーシスで増す、システインプロテアーゼファミリーをコードする。ICEファミリーのプロテアーゼは、一般的にカスパーゼ酵素と称される。その名称の「C」は、その酵素がシステインプロテアーゼである事実を反映し、一方「カスパーゼ」は、これらの酵素のアスパラギン酸残基の後ろを開裂する能力を指す。
【0219】
従って、アポトーシスのアッセイの中には、カスパーゼがアポトーシス中に誘発されるという見解に基づくものがある。これらの酵素の誘発は、これらの酵素に特異的に認識される基質の開裂を監視することにより、検知され得る。多数の自然発生、および合成のタンパク基質が知られている。(Ellerby et al(1997) J. Neurosci. 17:6165; Kluck, et al. (1997) Science 275:1 132; Nicholson et al. (1995) Nature 376:37;およびRosen and Casciola- Rosen (1997) J. Cell Biochem. 64:50を参照)。これらのアッセイにおいて利用され得る多くの異なる基質を調製するための方法が、米国特許第5,976,822号に記載されている。この特許は、特定の本明細書に記載のマイクロ流体装置に対して修正可能である細胞全体を使用して行うことができる、アッセイにつてもまた記載している。FRET技術を使用する他の方法が、Mahajan, et al. (1999) Chem. Biol. 6:401 - 9; and Xu, et al. (1998) Nucl. Acids. Res. 26:2034-5で考察されている。
【0220】
e.シトクロムC放出
正常細胞において、ミトコンドリアの内膜は、巨大分子に対して不透過性である。したがって、細胞アポトーシスの一指標は、ミトコンドリアからのシトクロムCの放出または漏出である。シトクロムCの検知は、タンパク質固有の吸収特性のため、分光法を使用して実行することができる。したがって、本装置を用いた検知の一選択肢は、細胞を保持空間内に置き、シトクロムCに特徴的な吸収波長で吸収を監視することである。代替として、該タンパク質は、シトクロムCに特異的に結合する抗体を用いた、標準的な免疫学的方法(例えばELISAアッセイ)を使用して検知され得る(例えばLiu et al. (1996) Cell 86:147を参照)。
f.細胞溶解のためのアッセイ
細胞死の最終段階は、典型的には、細胞の溶解である。細胞が死ぬと、それらは典型的に、ヌクレオチドを含む、化学物質の混合物、および様々な他の物質(例えばタンパク質および炭水化物)をその周囲に放出する。放出される物質のいくつかには、ADPおよびATP、ならびに余剰なADPの存在下で、ADPのATPへの変換を触媒するアデニル酸シクラーゼ酵素を含む。したがって、特定のアッセイは、ATPの生成へ向けて均衡を促進し、その後多くの異なる手段を介して検知され得るように、アッセイ培地への十分なADPの提供を伴う。そのような一手法は、ルシフェラーゼ酵素が、測光法により分析可能な信号を生成するためにATPおよびルシフェリン基質を利用する、当業者には周知である、ルシフェリン/ルシフェラーゼシステムの利用である。実行することのできる特定の細胞溶解アッセイに関するさらなる詳細は、PCT刊行物第WO 00/70082号で説明されている。
【0221】
g.虚血モデル系
化合物が虚血および卒中に対して保護的な神経学的影響を与えることができるかどうかを検定するための方法が、Aartsら (Science 298:846-850, 2002)により考察されている。概して、このアッセイは、比較的短時間の間(例えば約90分)、ラットの中大脳動脈の閉塞(MCAO)を伴う。MCAOは、腔内縫合法を含む、様々な方法を使用して誘発され得る(例えばLonga, E. Z. et al. (1989) Stroke 20:84およびBelayev, L., et al. (1996) Stroke 27:1616を参照)。推定阻害剤を含有する組成物を、従来の方法(例えば静脈注射を介して)を使用して、ラットに導入する。組成物の予防効果を評価するために、MCAOを実行する前に組成物を投与する。該化合物が、すでに起こった虚血性事象を緩和するその能力について評価される場合、MCAOが開始された後、該化合物とともに該組成物を導入する。そして、神経機能の様々な評価基準を使用して、脳梗塞の程度を評価する。そのような評価基準の例には、姿勢反射試験(Bederson, J. B. et al. (1986) Stroke 17:472)および前肢定置試験(De Ryck, M. et al. (1989) Stroke 20:1383)を含む。体外アッセイを使用してNMDA誘発興奮毒性の効果を調べたAartsらにもまた、方法が記載されている。
h.MTT細胞毒性アッセイ
【0222】
MTTアッセイは、神経細胞における細胞毒性を調べるために幅広く使用されている、もう一つのアッセイである。細胞毒性は、製造会社の推奨に従い、3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)− 2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイ(Trevigen, Gaithersburg, Md.)を使用して調べることができる。
【0223】
i.トリパンブルー細胞生存率測定
細胞生存率は、トリパンブルー排除法を使用して測定され得る(Yao et al., Brain Res., 889, 181-190 (2001))。
【0224】
j.細胞内ATPレベルの決定
細胞内ATPレベルは、細胞生存率を示すことができる。細胞内ATP濃度は、ATPLite−M(登録商標)発光アッセイ(Packard BioSciences Co.)を使用して測定され得る。例えばこのアッセイでは、細胞は、典型的に、黒色の96ウェルViewPlate(登録商標)上で培養され、ATP濃度は、製造会社の推奨に従って、TopCount NXT(登録商標)計測器(Packard BioSciences Co.)で測定される。
【0225】
vi)胃腸吸収
本発明による化合物または薬物は、所望であれば、腸管および/または腸によって吸収されるそれらの能力をさらに分析、試験、または検証することができる。
【0226】
薬物候補の腸透過性および腸管輸送は、様々な体外、その場、ならびに体内モデルを使用して推測され得る(Balimane et al. (2000) J Pharmacol Toxicol Methods 44:385−401 ; Hidalgo I. (2001) Curr Top Med Chem 1 :385-401, Hillgreen K, Kato A and Borchardt R. (1995) 15:83−109)。
【0227】
例えば、平行人工膜透過性(PAMPA)アッセイ、およびCaco−2およびMardin−Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞等の細胞に基づいたシステムが、最も頻繁に使用される体外モデルである。PAMPAモデルは、不活性有機溶媒中に溶解された、レシチン/リン脂質の混合物でコーティングされた疎水性フィルター材料から成り、腸上皮を模倣する人工脂質膜障壁を形成する。ヒト結腸腺癌である、Caco−2細胞は、培養下に自然発生的な腸細胞の分化を受け、ヒトの腸上皮に似た、安定した密着結合を有する極性細胞になる。Caco−2細胞モデルは、製薬業界および学究的世界の両方において、薬物の透過性の検査に際し、最も一般的であり、最も幅広く特徴付けられた、細胞に基づくモデルである。代替として、やはり密着結合を発達させ、極性細胞の単分子層を形成する、MDCK細胞が使用される。
【0228】
腸灌流等のその場研究もまた、薬物吸収を調べるために実行することができる。単離された腸部分は、吸収細胞および筋肉の下層を含む。一般的に使用されているように、この技術は粘膜側からのサンプリングのみを可能とするため、薬物消失が、薬物吸収と同等であるとみなされる。典型的には、腸透過性を調べるために、全固体動物吸収実験(薬物動態学的研究)が、生体外および/またはその場研究と平行して実行される。概して、動物における薬物吸収は、ヒトにおける吸収を上手く予測する判断材料であると考えられている。
【0229】
vii)胃腸毒性
本発明による化合物または薬物は、胃腸(GI)毒性について、さらに分析、試験、または検証することができる。化合物の体内胃腸毒性は、標準的な、一連の総合毒物学的評価の実施を通して、確実に確立され得る。概して、EU、OECD、ICH、FDA、およびJMOHWからの規制的な試験指針が、そのような評価の研究プロトコルを準備するための参考材料として、使用される。北米では、毒物学的評価は、概して1978年12月22日発行の食品医薬品局、第21巻、連邦規則集、パート58、非臨床研究のための医薬品安全性試験実施基準、ならびに連邦公報およびその後の改正に従って行われる。
【0230】
そのような、特定の化合物の毒性の非臨床評価の脈絡の中で、GI毒性は、特に、体重増加の監視、試験対象により出された物質(特に嘔吐物および排泄物)の肉眼的検査、および食物/水消費量(欲求)の監視を通して調べられる。さらに、非臨床毒物学的評価の終了時、試験対象からスライドステージへの胃腸管組織の保持および処理、その後の訓練を受けた病理学者による該組織の組織病理学検査は、前述の「生存中」の所見を補完する、有用なツールである。
【0231】
viii)血液脳関門(BBB)の横断
血液脳関門(BBB)は、上皮細胞の非常に特化した関門システムであり、基礎をなす脳細胞から血液を隔て、脳細胞を保護し、脳のホメオスタシスを保つ。脳の内皮細胞は、微分子の通過を制限する細胞間の密着結合の複雑な配列を有する。典型的には、BBBは、小さな、脂肪親和性の微分子を通すことができるが、能動輸送システムが利用できない限り、より大きな微分子は概して輸送されない。したがって、これは、薬剤送達にとって障害の1つである。さらなる問題は、細胞から薬剤を排出する、きわめて有効な薬剤流出系(P−糖タンパク質)である。
【0232】
本発明による化合物は、所望であれば、BBBを横断するそれらの能力をさらに分析、試験、または検証することができる。多くの体外、体内、およびシリコン内の方法を、BBBを模倣する薬剤開発中に用いることができる(Lohmann et al. (2002) Predicting blood−brain barrier permeability of drugs: evaluation of different in vitro assays. J Drug Target 10:263−276; Nicolazzo et al. (2006) Methods to assess drug permeability across the blood−brain barrier. J Pharm Pharmacol 58:281−293)。体外モデルは、Caco−2、BMEC、MDCKなどの、主要内皮細胞培養および不死化した細胞株を含む。これらの細胞は、スクリーニング方法として有用であり、BBB浸透性の順に、化合物を適切にランク付けすることができる。頚動脈単回投与または灌流などの体内モデルにおいて、静脈内ボーラス、脳排出指標、および脳内微量透析は、脳への取り込みに関するより正確な情報を提供し、該方法は高生産性浸透性評価に適していないが、これらは今までにない画像技術(磁気共鳴影像法および陽電子断層撮影法等)で補足することが可能である。
【0233】
ix)脳およびCSFレベル
本発明による化合物または薬剤の脳および/または脳脊髄液(CSF)レベルは、多くのモデル、方法、およびアッセイを使用して評価、測定、または推定することが可能である(Potchoiba MJ, and Nocerini, MR (2004) DMD 32:1 190−1 198; Orlowska-Madjack M. (2004) Acta Neurobiol Exp 64: 177−188; and Hocht, C, Opezza, JA and Taira, CA (2004) Curr Drug Discov Technol 1 :269−85を参照)。
【0234】
最も一般的な技術の1つは、おそらく全個体吸収研究(薬学動態)の後の脳のサンプリングである。例えば、本発明の化合物の薬学動態(PK)プロファイルは、マウスにおける一般的な非臨床的研究を使用して調査することが可能であろう。手短に言うと、静脈内、皮下および経口の化合物投与後の異なる時点で、脳、CSFおよび血漿試料が採取される。その後、脳、CSFおよび血漿試料は、化合物の濃縮時間特性を測定するためにLC/MSにより分析される。
【0235】
オートラジオルミノグラフィーを備える、または備えない、脳透析法または放射性標識化合物の分布等の代替も使用可能である。一般的な例は、放射性標識化合物の既知量の投与後の、組織からの放射能の排出の時間的経過を評価する組織分布研究であり、脳、またはCSFに送達された最初の投与量のパーセントを測定することが可能である。さらに、広範囲の放射能を有する脳組織を含有する低温切開片のオートラジオルミノグラフィーは、脳の薬剤レベルを測定するために直ちに定量化される。
【0236】
代替として、微小透析は、脳から薬剤を除くための方法を提供する。微小透析の原理は、画定された脳領域へ埋入されたプローブと連結した半浸透膜管組織の、小口径孔を通じる微分子の拡散に基づく。プローブは、かん流ポンプと連結し、液体をかん流し、液体は両方向への拡散によってチューブの外側の流体と釣り合う。マイクロ透析で採取した部分における薬剤の定量分析は、流体における濃度を反映する。
【0237】
当業者は、本明細書に記載した具体的な手順、実施形態、特許請求の範囲、および実施例の数多くの同等物を認識する、または日常的にすぎない実験を使用して、それらの同等物を確認することができる。そのような同等物は、本発明の範囲内であるとみなされ、本明細書に添付の特許請求の範囲により網羅される。本願全体で引用された、全ての参考文献、交付済み特許、および公開された特許出願の内容は、参照することにより、本明細書に組み込まれる。本発明は、以下の実施例によりさらに例示されるが、さらに限定するものであると解釈されるべきではない。