【実施例】
【0018】
図1は、本発明の実施例に係る被覆電線の接合方法によって接合した複数の被覆電線10の接合部分30周辺の斜視図であり、(a)が圧着接合端子20をかしめる側から視た図であり、(b)が圧着接合端子20を貫通孔21側から視た図である。
図2は、
図1に示す接合部分30の断面図である。
なお、
図2では、銅製導体部11Cおよびアルミ製導体部11Aのそれぞれは、銅製素線13c、あるいは、アルミ製素線13を示さず、簡略化して示している。
本発明の実施例に係る被覆電線の接合方法は、例えば、自動車の電気回路を構成するワイヤハーネスの被覆電線10の分岐部分に用いる。この被覆電線の接合方法は、アルミニウム、または、アルミニウム合金からなるアルミ製導体部11Aを絶縁被覆12で被覆したアルミ電線10A、および、銅、または、銅合金からなる銅製導体部11Cを絶縁被覆12で被覆した銅電線10Cの2種類の被覆電線10が混在する複数の被覆電線10のアルミ製導体部11Aおよび銅製導体部11Cの2種類の導体部11同士を接合する。
【0019】
まず、本発明の実施例に係る被覆電線の接合方法に用いる銅電線10Cについて説明する。
銅電線10Cは、銅製導体部11Cと、銅製導体部11Cの外周を被覆する絶縁材である絶縁被覆12と、を有する。
銅製導体部11Cは、銅、あるいは銅合金の線材からなる複数の銅製素線13cを束ねてなる。
なお、銅製導体部11Cは、複数の銅製素線13cを束ねてなるものを例示したが、これに限らず、単芯線であっても構わない。
絶縁被覆12は、絶縁性の合成樹脂からなり、銅製導体部11Cの外周を包囲するように被覆することによって、銅製導体部11Cを外部から絶縁可能に保護するものである。
【0020】
銅電線10Cは、銅電線10Cの端部から離れた位置で延在方向の所定区間だけ除去する(以下、「絶縁被覆を中剥ぎする」という)。
【0021】
次に、本発明の実施例に係る被覆電線の接合方法に用いるアルミ電線10Aについて説明する。
アルミ電線10Aは、アルミ製導体部11Aと、アルミ製導体部11Aの外周を被覆する絶縁材である絶縁被覆12と、を有する。
アルミ製導体部11Aは、アルミニウム、または、アルミニウム合金の線材からなる複数のアルミ製素線13aを束ねてなる。
なお、アルミ製導体部11Aは、複数のアルミ製素線13aを束ねてなるものを例示したが、これに限らず、単芯線であっても構わない。
絶縁被覆12は、絶縁性の合成樹脂からなり、アルミ製導体部11Aの外周を包囲するように被覆することによって、アルミ製導体部11Aを外部から絶縁可能に保護するものである。
【0022】
このアルミ電線10Aは、銅電線10Cと同様に、絶縁被覆12を中剥ぎする。
【0023】
次に、本発明の実施例に係る被覆電線の接合方法に用いる圧着接合端子20について説明する。
圧着接合端子20は、複数のアルミ電線10Aおよび銅電線10Cの露出した導体部11同士を接合するように圧着するものである。
この圧着接合端子20は、銅、あるいは銅合金等の金属からなる板状部材を金型プレス加工等によって成形してなる。
【0024】
また、圧着接合端子20は、複数のアルミ電線10Aおよび銅電線10Cの露出した導体部11への圧着前に、各被覆電線10の導体部11を圧着接合端子20上に載置できるように、載置する被覆電線10の延在方向に直交する断面形状が上部を開口した略U字状になっている。
このような圧着接合端子20を導体部11に圧着する場合、圧着前の略U字状の圧着接合端子20に複数の被覆電線10の導体部11を載置した状態で、いわゆるクリンパ、アンビルと称される不図示の圧着治具等によって、複数の被覆電線10の導体部11を包むように圧着接合端子20を圧着する。
【0025】
また、圧着接合端子20は、貫通孔21を有する。貫通孔21は、圧着完了状態の圧着接合端子20の底部20aに形成する。この貫通孔21は、いわゆるセレーションとして機能するものであり、圧着接合端子20を圧着する際、アルミ電線10Aの露出したアルミ製導体部11Aの酸化被膜を破壊する。
このような貫通孔21は、圧着接合端子20の強度等を考慮するとその形成範囲を大きくすることはできないものの、凹凸形状のセレーションに比べて簡易な構成であり、加工が容易である。
【0026】
次に、
図3および
図4を用いて、被覆電線の接合方法の作業工程について説明する。
図3は、(a)が、絶縁被覆12を中剥ぎして露出したアルミ電線10A、および、銅電線10Cを示した図であり、(b)が、複数の被覆電線10の露出した導体部11同士を圧着接合した状態を示した図である。
図4は、(a)が溶接接合のため、電極Eを圧着接合端子に押し当てた状態を示した図であり、(b)が溶接接合後の圧着接合端子20を含む接合部分30を絶縁テープ40によって覆った状態を示した図である。
なお、以下に示す作業は、装置を用いて自動で行ってもよいし、治具等を用いて手作業によって行ってもよい。
【0027】
まず、絶縁被覆中剥ぎ工程を実施する(
図3(a)参照)。この絶縁被覆中剥ぎ工程は、アルミ電線10Aと銅電線10Cとが混在した複数の被覆電線10の各被覆電線10の絶縁被覆12を中剥ぎすることによって、各被覆電線10の導体部11を露出する工程である。このように、被覆電線10の絶縁被覆12を中剥ぎすることによって導体部11を露出すると、被覆電線10の端末部の絶縁被覆12を剥ぐことによってアルミ製導体部11A、および、銅製導体部11Cを露出するのに比較して、アルミ製導体部11A、および、銅製導体部11Cをほつれ等の乱れのない状態に維持することができる。
【0028】
また、このように絶縁被覆12を中剥ぎして露出した複数の被覆電線10の導体部11同士を接合することによって、被覆電線10の接合部分30では、被覆電線の端末部に露出した導体部を接合する場合に比して少ない被覆電線の本数でより多くの分岐数を得ることができる。
なお、接合部分30で奇数本の被覆電線10を分岐する場合、使用しない分岐電線をダミーの電線として処理すればよい。
また、この絶縁被覆中剥ぎ工程は、複数の被覆電線10の各被覆電線10の延在方向での絶縁被覆12の除去区間を略等しく調整している。
【0029】
その後、導体部接合工程として、圧着接合端子20によってアルミ電線10Aと銅電線10Cの2種類の被覆電線10が混在する複数の被覆電線10の露出した2種類の導体部11同士を圧着接合する(
図3(b)参照)。この作業では、クリンパ、アンビル等の不図示の圧着治具を用いて圧着接合端子20を圧着する。
また、この作業では、アルミ製導体部11Aを圧着接合端子20に形成した貫通孔21の少なくとも一部に重なる位置に配置して2種類の導体部11同士を圧着接合端子20によって圧着接合する。
ここで、絶縁被覆12を中剥ぎすることによって露出したアルミ製導体部11Aおよび銅製導体部11Cのそれぞれは、ほつれ等の乱れを防止できるので、アルミ製導体部11Aを貫通孔21の少なくとも一部に重なる位置に配置し易い(
図2参照)。このため、アルミ製導体部11Aと銅製導体部11Cとが混在して接合する場合であっても、圧着接合によって、アルミ製導体部11Aの酸化被膜を貫通孔21によって確実に破壊することができる。
【0030】
その後、導体部接合工程として、溶接接合に一般的に使用する電極Eを圧着接合端子20に押し当て、電極Eから圧着接合端子20に圧力および電流を与えることによって、複数の被覆電線10の導体部11を溶接接合する(
図4(a)参照)。これにより、複数の被覆電線10の接合部分30は、圧着接合、および、溶接接合の両方の接合方法を用いて接合したことになる。
なお、導体部接合工程は、複数の被覆電線10を、絶縁被覆12の除去区間を揃えて接合する。
【0031】
その後、溶接接合後の圧着接合端子20を含む接合部分30を絶縁テープ40によって覆う(
図4(b)参照)。この作業によって、複数の被覆電線10の接合部分30を絶縁可能に保護する。
【0032】
次に、
図5から
図7を用いて、アルミ製導体部11Aの圧着接合端子20に対する配置位置の違い、および、圧着接合後溶接接合有り無しの違いによる接合部分における接触抵抗の比較を行う。
図5および
図6は、アルミ製導体部11Aの圧着接合端子20に対する配置位置の違い、および、圧着接合後溶接接合有り無しの違いによる接合部分30における接触抵抗の比較を行うためのグラフである。
図7は、(a)が本発明の実施例に係る被覆電線の接続方法での圧着接合端子に対する2種類の被覆電線の配置関係を示した図であり、(b)が(a)の比較対象となる配置関係を示した図である。
なお、
図5、および、
図6に示したグラフは本発明者が発明の効果を確認するために実施した試験の結果である。
また、耐久試験は、複数の被覆電線10の接合部分30に120℃、138時間の熱処理を行って接触抵抗の値を評価する。
なお、
図5および
図6では、縦軸が接触抵抗(mΩ)を示し、横軸が圧着接合後(記号Aで示す)、圧着接合後さらに溶接接合を行った後(記号Bで示す)、耐久試験実施後(記号Cで示す)の接触抵抗の測定データを並べて示している。また、グラフ中の「ひし形印」が圧着接合後溶接接合有りの場合の測定データを示し、「正方形印」が圧着接合後溶接接合無しの場合の測定データを示している。
【0033】
また、
図5は、(a)が
図2の位置P3および位置P4にアルミ製導体部11Aを配置し、残りに銅製導体部11Cを配置したもので(
図7(a)参照)、位置P3と位置P4に配置したアルミ製導体部11Aの間の接触抵抗を測定したものであり、(b)が
図2の位置P1および位置P2にアルミ製導体部11Aを配置し、残りに銅製導体部11Cを配置したもので(
図7(b)参照)、位置P1と位置P2に配置したアルミ製導体部11Aの間の接触抵抗を測定したものである。
【0034】
また、
図6は、(a)が
図2の位置P3および位置P4にアルミ製導体部11Aを配置し、残りに銅製導体部11Cを配置したもので(
図7(a)参照)、位置P3に配置したアルミ製導体部11Aと、位置P1に配置した銅製導体部11Cとの間の接触抵抗を測定したものであり、(b)が
図2の位置P1および位置P2にアルミ製導体部11Aを配置し、残りに銅製導体部11Cを配置したもので(
図7(b)参照)、位置P1に配置したアルミ製導体部11Aと位置P3に配置した銅製導体部11Cとの間の接触抵抗を測定したものである。
【0035】
図5および
図6に示したグラフでは、本発明の実施例に係る被覆電線の接合方法に該当するものが、
図5および
図6の(a)のグラフで横軸記号BおよびCに示した「ひし形印」の測定データであり、これらの測定データは、他の接合条件の接触抵抗に比較して低く抑えられていることが分かる。
【0036】
本発明の実施例にかかる被覆電線の接合方法は、アルミ製導体部11A、あるいは銅製導体部11Cを、アルミ電線10Aおよび銅電線10Cのそれぞれの絶縁被覆12をアルミ電線10Aおよび銅電線10Cのそれぞれの端部から離れた位置で延在方向の所定区間だけ除去して露出し、アルミ製導体部11A、あるいは銅製導体部11Cのほつれ等の乱れを防止することによって、アルミ電線10A、および、銅電線10Cの2種類の被覆電線10が混在する複数の被覆電線10の導体部11同士の圧着接合端子20による圧着接合の際、簡易な構成であってセレーションの機能をなす貫通孔21に重なる位置にアルミ製導体部11Aを容易に配置することができるので、アルミ製導体部11Aの酸化被膜を貫通孔21を利用して確実に破壊することができ、しかも、圧着接合の後、さらに溶接接合を実施しているので、被覆電線であるアルミ電線10Aおよび銅電線10Cを混在して多くの本数の被覆電線10を簡易な構成で接合する場合であっても、複数の被覆電線10の接合部分30の電気的および機械的な接続信頼性を確保することができる。
【0037】
また、本発明の実施例にかかる被覆電線の接合方法は、圧着接合端子20による圧着接合の際、アルミ製導体部11Aを圧着接合端子20の底部20aに載置することによって、アルミ製導体部11Aを貫通孔21の少なくとも一部に重なる位置に配置することができるので、より容易にアルミ製導体部11Aを貫通孔21の少なくとも一部に重なる位置に配置することができる。
【0038】
なお、本発明の実施例にかかる被覆電線の接合方法は、貫通孔21を圧着接合端子20の底部20aに形成するものを例示したがこれに限らず、側部等、その他の部分に形成してもよい。
【0039】
また、本発明の実施例に係る被覆電線の接合方法は、圧着接合端子20が圧着前に断面形状が略U字状であるものを例示したが、これに限らず、複数の被覆電線10の導体部11同士を圧着接合することができればその他の形状であっても構わない。例えば、圧着接合端子20は、筒状であってもよい。
【0040】
また、本発明の実施例に係る被覆電線の接合方法は、絶縁被覆中剥ぎ工程が複数の被覆電線10の各被覆電線10の延在方向での絶縁被覆12の除去区間を略等しく調整するようにしていたが、これに限らず、絶縁被覆12を中剥ぎすることによって複数の被覆電線10の露出した導体部11を接合できれば、各被覆電線10で除去区間が異なっても構わない。
【0041】
また、本発明の実施例に係る被覆電線の接合方法は、溶接接合として、電極Eによって圧力および電流を圧着接合端子20に負荷するものを例示したが、これに限らず、超音波ホーン等によって圧力および超音波振動を圧着接合端子20に負荷するようにしても構わない。
【0042】
以上、本発明者によってなされた発明を、上述した発明の実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上述した発明の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。