【文献】
Proceeding of the American Association for Cancer Research Annual Meeting,2008年 4月,Vol.49,p.84-85
【文献】
MITRA A,POLYMERIC CONJUGATES OF MONO- AND BI-CYCLIC ALPHAVBETA3 BINDING PEPTIDES FOR TUMOR TARGETING,JOURNAL OF CONTROLLED RELEASE,NL,ELSEVIER,2006年 8月28日,V114 N2,P175-183
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記癌が、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、{きんじょうそく にくしゅ}菌状息肉症、ホジキン病、骨髄性白血病、膀胱癌、脳癌、神経系癌、頭頚部癌、頭部および頚部の有棘細胞癌、腎臓癌、肺癌、神経芽細胞腫/グリア芽腫、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、皮膚癌、肝臓癌、黒色腫、口、咽頭、喉頭また肺の有棘細胞癌、結腸癌、子宮頚癌、子宮頚癌、乳癌、上皮癌、頭部および頚部癌、大腸癌、造血性癌;精巣癌;結腸および直腸癌、前立腺癌、膵癌、結腸直腸癌、星状細胞腫、多発性骨髄腫、鼻癌、咽頭癌、胃癌、細胞腫、有棘細胞癌、腺癌、肉腫、神経膠腫、芽細胞腫、形質細胞腫、組織球腫、腺腫、低酸素性腫瘍、骨髄腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、腎癌、尿生殖器癌、肺癌、食道癌、膵癌であることを特徴とする請求項5に記載の使用する方法。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2007/067417号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5,037,883号明細書
【特許文献3】米国特許第6,348,209号明細書
【特許文献4】米国特許第6,346,349号明細書
【特許文献5】米国特許第6,342,221号明細書
【特許文献6】米国特許第5,258,453号明細書
【特許文献7】米国特許第5,037,883号明細書
【特許文献8】米国特許第4,074,039号明細書
【特許文献9】米国特許第4,062,831号明細書
【特許文献10】米国特許第3,997,660号明細書
【特許文献11】米国特許第3,931,123号明細書
【特許文献12】米国特許第3,931,111号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kopecek et al., Advances in Polymer Science, 122 (Biopolymers II): 55-123 (1995)
【非特許文献2】Duncan, et al., Hum. Exp. Toxicol., 17: 93-104 (1998)
【非特許文献3】Felding-Habermann et al., Clin. Exp. Metastasis, 19: 427-436 (2002)
【非特許文献4】Koivunen, E., Wang, B. & Ruoslahti, E., Biotechnology (N. Y.), 13: 265-270 (1995)
【非特許文献5】Arap, W., Pasqualini, R. & Ruoslahti, E., Science, 279: 377-380 (1998)
【非特許文献6】Capello, A. et al., J. Nucl. Med., 45: 1716-1720 (2004)
【非特許文献7】Kopecek and Bazilova, Eur. Polym. J., 9:7-14 (1973)
【非特許文献8】Kopecek et al., Ann. N Y Acad. Sci., 446:93-104 (1985)
【非特許文献9】Skehan et al., J. National Cancer Institute, 82: 1107-1112 (1990)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態は、以下に詳細に論じられる。記載される実施形態において、特定の専門用語は、明瞭さのために使用される。しかし、本発明は、そのように選択された特定の専門用語に限定されるものではない。特定の例示的な実施形態が論じられるが、例証目的のためになされるに過ぎないことを理解されたい。関連分野の当業者は、他の構成要素および構成が本発明の精神および範囲から逸脱することなく用いることができるということを理解するであろう。本明細書に引用したすべての参考文献は、それぞれが個別に組み込まれるのと同じように参照により組み込まれる。
【0019】
A.ポリマーベースの療法
遊離の抗癌薬は、細胞全体に拡散し、ある特定の細胞内部位に濃縮されない。さらに、かかる薬物が静脈内に投与される場合、これらは、身体の全組織に全身的に分布する。これらの意図しない分布の部位におけるこれらの薬物の作用は、観察可能な全身性の副作用をもたらす。したがって、薬物を作用が望まれる身体の部位に局在化させることが好ましい。これらの薬剤を薬剤が最も有効である細胞内部位を標的とすることによって、これらの効果を増大させ、毒性を減少させる。
【0020】
抗癌薬の腫瘍標的指向化は、「受動的標的指向化」および「能動的標的指向化」によって達成することができる。受動的標的指向化は、水溶性ポリマーなどの高分子担体への抗癌薬の組み込みまたは結合によって達成される。能動的標的指向化は、癌細胞の表面上で認識分子(受容体)に特異的である細胞の標的指向化部分を組み込むことによって達成される。
【0021】
ポリマーは、正常な組織と比べ、固形腫瘍中に優先的に局在する。これは、腫瘍組織の形態的変化に起因する、血管透過性{けっかん とうか せい}・滞留性亢進効果(Enhanced Permeability and Retention)(「EPR」)効果と呼ばれる現象により起こり、血管新生により産生された漏出脈管構造が血管内容物の細胞外組織への漏出をもたらす。さらに、リンパ管が遮断される場合があり、これは腫瘍細胞周囲の細胞外組織における高分子薬剤の蓄積をもたらす。この現象は、薬物をポリマーに結合させて腫瘍細胞を標的にするために用いることができる。ポリマーが腫瘍細胞の周囲に局在化するため、ポリマーに結合された薬物もまた、腫瘍の周囲により高濃度で利用可能である。ポリマーに結合された薬物は、エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれる。しかし、薬物がポリマー主鎖に共有結合したままであるため、これらは、遊離の薬物ほど有効ではない。これは、薬物をポリマー主鎖に連結するための生体分解性もしくは加水分解性ペプチド配列の使用によって克服することができる。選択される配列は、これらが特定の条件下で細胞の内部で分解することができるようなものである。
【0022】
ポリマーベースの療法は、大きな流体力学的体積を有し、これがより長期の血管内の半減期につながる。ポリマーベースの療法はまた、不溶性薬物の溶解性および生体利用度(バイオアベイラビリティ)を増強する。ポリマーベースの療法によって得られる他の利点には、最大耐性用量の増加、非特異的な毒性の減少、アポトーシスの誘導の強化、および代替シグナル伝達経路の活性化が含まれる(例えば、非特許文献1参照)。
【0023】
さらに、癌細胞はしばしば、正常な組織と比較して正常な組織に存在しないまたは過剰発現される表面分子を有する。これらは、成長因子受容体および/またはある種の抗原を含み得る。認識分子をこれらの分子に結合するポリマーに結合させることにより、腫瘍の局所環境において高濃度のポリマーをもたらす。かかる標的指向化部分には、抗体および細胞表面受容体に対するペプチジルリガンドが含まれる。こうした認識分子のいくつかの受容体への結合によって開始される、受容体によって媒介されるエンドサイトーシスにより、細胞内濃度を増加させ、これに対応して治療効果を強化させることができる。
【0024】
臨床試験におけるいくつかのポリマー−薬物コンジュゲートは、HPMA−コポリマーベースのまたはPGAベースのコンジュゲートが含まれる。HPMAコポリマーは、薬物関連毒性の制限を克服する腫瘍細胞への特異的な送達を可能にする生体適合性、非免疫原性および非毒性の担体である(例えば、非特許文献2参照)。さらに、これらの身体分布は十分に特徴付けられ、これらは、増強された透過性および血管透過性{けっかん とうか せい}・滞留性亢進効果(EPR)によって腫瘍部位に選択的に蓄積することが知られている。コンジュゲートは、内皮細胞増殖もしくは癌細胞の部位を、または増殖性細胞に関連する特異的な受容体もしくはマーカーを対象とするための標的指向化リガンドを含むこともできる。臨床試験の様々な段階で、現在2つのポリグルタミン酸−薬物コンジュゲートおよび6つのHPMAコポリマー−薬物コンジュゲートがあり、デキストラン−薬物コンジュゲートおよびPEG−薬物コンジュゲートなどのさらなるポリマー−薬物コンジュゲートが、臨床または前臨床開発で報告されている。
【0025】
本発明の化合物は、抗癌剤の送達を増大する、これらの特質を有し、さらに、開示される組成物は、抗癌薬についての他の標的指向化戦略と比較して、特定の細胞タイプへの標的指向化ならびに標的指向化した癌細胞による取り込みの両方を増強する。
【0026】
B.化合物
本明細書では、「HPMA」という用語は、化合物N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドを意味し、以下の構造によって表される親水性ポリマーである:
【0028】
本発明の「抗癌剤」は、具体的な実施形態において、ドセタキセルまたはゲムシタビンである。
【0029】
本発明は、いくつかの点において他のHPMA−薬物コンジュゲートよりも有利である。
【0030】
第1に、本発明によるコンジュゲートの分子量は、臨床的に評価されたHPMA薬物コンジュゲートよりも大きい。前臨床もしくは臨床試験における既知のHPMAコポリマー−薬物コンジュゲートは、分子量約25〜50kDaを有し、一方、いくつかの本発明の実施形態は、約100〜170kDaの分子量範囲を有するHPMAを対象とする。増加した分子量のHPMAコンジュゲートは、より長期の血漿滞留時間を有し、強化されたEPRによる受動的な腫瘍標的指向化を増加させる。本発明の他の実施形態は、約10kDaから約250kDa、約20kDaから約170kDa、約50kDaから約250kDa、または約100kDaから約170kDaのHPMAコポリマー−薬物コンジュゲートの重量平均分子量(M
w)を有する。さらに本発明の他の実施形態は、少なくとも約20kDa、少なくとも約50kDa、少なくとも約100kDa、少なくとも約125kDaまたは少なくとも約150kDaのHPMAコポリマー−薬物コンジュゲートの重量平均分子量(M
W)を含む。高分子量の薬物−ポリマーコンジュゲートは、本明細書に開示される合成方法を用いて得ることができる。
【0031】
循環時間の増加に加えて、高分子量コンジュゲートの使用は、ある特定の部位への薬物送達の増加をもたらすことができる。具体的には、(百分率またはモル百分率に基づいた)薬物取り込みの程度が低分子量種および高分子量種において類似である場合では、単一のポリマー鎖は、低分子量の鎖よりも多数の薬物分子を有する。したがって、低分子量鎖を用いる場合よりも高分子量鎖を用いている場合に、より多くの薬物が特定の部位または腫瘍に送達される。これにより、腫瘍の近傍において薬物の局所濃度が本質的に高くなる。
【0032】
第2に、本発明の他の新規性は、例えば、RGDfK、EPPT1ペプチドまたは葉酸などの腫瘍特異的標的指向化リガンドを含む第2世代のHPMA−ドセタキセルまたはゲムシタビンコンジュゲートを調製することである。一般に受動的に標的指向化したHPMAコンジュゲートを用いる、臨床試験の成功は、主として、受動的な拡散のみによる固形腫瘍における薬物の限定的な蓄積および臨床的に存在する癌の不均一性のため、十分とはいえないものであった。能動的な標的指向化戦略は、腫瘍生理機能の変動を考慮する複数の細胞タイプに標的指向化することを可能にし、固形腫瘍の微小環境における分布を最大限にし、同時に、他の臓器におけるこれらの非特異的な取り込みを最小限にする。能動的な標的指向化戦略は、(1)腫瘍の特異性を増加し;(2)薬物動態を改善し;(3)毒性を軽減することによって、治療効果を大幅に改善することもできる。抗癌薬の腫瘍の局在化を大幅に改善するために利用することができるいくつかのかかる戦略は、近年浮上している。分子マーカー(例えば、ペプチドおよび抗体)を結合させることによるポリマー薬物送達系の能動的な標的指向化は、腫瘍の局在化を大幅に改善することが示されている。
【0033】
ムチン−1は、ほとんどの腺上皮細胞によって発現される膜貫通型分子である。いくつかの重要な特徴により、ムチン−1は腫瘍へ標的指向化した送達のための魅力的な受容体である。
【0034】
第1に、ムチン−1は、ヒトの乳癌、卵巣癌、膵臓癌、結腸直腸癌、肺癌、前立腺癌、結腸癌、および胃癌の90%を含めた、ほとんどすべてのヒト上皮細胞腺癌で過剰発現する。さらに、ムチン−1発現は、非上皮性癌細胞株(星状細胞腫、黒色腫、および神経芽細胞腫)において、ならびに全体でヒトにおけるすべての癌の50%を構成する、多発性骨髄腫およびいくつかのB細胞非ホジキンリンパ腫などの血液悪性腫瘍において実証されている。
【0035】
第2に、腺癌組織において、失われた腺構造の結果として、ムチン−1は、細胞表面全体にわたって遍在的に発現される。その桿体様構造のため、分子は、表面の上側に100〜200nm延び、ほとんどの膜分子の長さの5〜10倍である。この特徴により、ムチン−1が治療プローブのための利用可能な標的になる。
【0036】
第3に、正常な組織において、ムチン−1が高度にグリコシル化され(その分子量の50〜90%は、炭水化物によるものである)、一方、ムチン−1は、新生物組織においてグリコシル化が不十分である。糖鎖修飾の減少により、免疫系が腫瘍関連グリコシル化不十分のムチン−1抗原のペプチドコアに接近することができ、正常な細胞において遮蔽されるエピトープを露出させる。この特徴によって、正常な細胞と腺癌細胞を識別するプローブを設計することが可能である。
【0037】
第4に、PDTRP(配列記号7)配列の存在によって定義される、ムチン−1の細胞外ドメインは、細胞表面の上側に延び、したがって、腫瘍細胞表面上の接着分子およびリンパ球上のそれらのリガンドの相互作用を妨げ、腫瘍エピトープを免疫認識に到達困難にする。したがって、免疫療法に応答して腫瘍抗原をダウンレグレートする傾向はなく、ムチン−1発現は、腫瘍の寿命および腫瘍転移の間、均一にアップレグレートされたままである。こうした特徴は、腫瘍進行の異なる段階のために標的指向化した薬物送達を設計する上で重要である。
【0038】
多くの調査は、免疫療法に対する標的としてムチン−1を使用する可能性に焦点を絞っている。複数のモノクローナル抗体が、タンデム反復の免疫原性APDTRP(配列記号8)配列を認識するために産生されてきた。しかし、抗体が標的指向化分子として使用されたとき、これらのタンパク質の免疫原性および長期の血漿半減期は、有害であった。その結果、ペプチドリガンドは非免疫原性であり受容体に高い親和性および選択性を有するため、小型のペプチドの使用により、これらの欠点を取り除くことができる。設計合成ペプチドEPPT1(YCAREPPTRTFAYWG(配列記号9)は、特異的なリガンドとして開発されており、大きな親和性(Kd=20μM)を示している。で標識化EPPT1(99mTc)は、in vivoで乳癌をイメージングするために用いられている。上に挙げたムチン−1タンパク質の特徴のすべてにより、EPPT1が腫瘍標的指向化リガンドとして用いるための理想的な候補になる。
【0039】
腫瘍細胞を正常な細胞と区別する、いくつかの腫瘍細胞および関連する脈管構造特異的受容体もまた、同定されている。αVβ3インテグリンは、最も研究されたものの1つであり、腫瘍に関連する新生脈管構造においてならびにいくつかの転移性癌において選択的に過剰発現する(例えば、非特許文献3参照)。トリペプチド配列Arg−Gly−Asp(RGD)を含む高親和性αVβ3選択的リガンドは、ファージディスプレイ研究によって同定されている。立体配座により制限されたRGD配列、すなわち、環式RGDは、ジスルフィド架橋を含み、直鎖RGDペプチドよりも20〜40倍強くαVβ3に結合する(例えば、非特許文献4参照)。RGDペプチドは、標的指向化した化学療法ならびに標的指向化した放射線治療(例えば、非特許文献6参照)のために、ドキソルビシンと結合されている(例えば、非特許文献5参照)。これらは、体内分布を改善し腫瘍への蓄積および抗腫瘍効果を増大するために、ヒト型抗体、リポソーム、ポリ(エチレングリコール)およびHPMAコポリマーに結合されている。これらの研究により、RGDが抗腫瘍薬物標的指向化を研究するための理想的な標的指向化リガンドになる。
【0040】
葉酸、その塩、および/またはその還元された相当物(総称して「葉酸」と称される)は、ヌクレオチド塩基の生合成に用いられる一炭素転移反応のために真核細胞によって必要とされる。葉酸の細胞取り込みは、身体の多くの細胞に存在する低親和性還元型葉酸担体(Km約1μM)または非常に限定された分布を示す高親和性グリコシルホスファチジルイノシトール連結葉酸受容体(FR)(KD=約100pM)によって促進される。FRは、健常な細胞で限定された発現を示すが、癌細胞にしばしば数多く存在する。例えば、FRは、卵巣、乳腺、結腸、肺、前立腺、鼻、咽頭、および脳の上皮癌で過剰発現される。FRはまた、慢性および急性骨髄性白血病を含めたミエロイド起源の造血性悪性腫瘍で過剰発現される。FR発現と腫瘍の悪性度および組織学的段階との間での強力な相関が観察されている。様々な葉酸に連結された分子および複合体は、癌細胞および活性化されたマクロファージにおいて薬物のFRへの選択的送達を可能にするよう設計されている。薬物標的指向化に用いるために葉酸を魅力的なリガンドにする他の特徴は、その低分子量(MW441)、水溶性、多様な溶媒への安定性、pH、および熱、容易な共役化学反応、免疫原性の欠如、およびその受容体に対する高親和性が含まれる。
【0041】
本明細書に開示されるのは、例えば、抗癌療法に用いることができる化合物である。これらの化合物は、典型的には、抗癌化合物または他の治療用化合物の標的指向化した送達を増加または変化させる。これらの化合物は、抗癌剤、担体分子、任意選択のリンカー分子、および場合によっては、標的指向化リガンドを含むことができる。いくつかの実施形態において、リンカーは、例えば、Gly−Phe−Leu−Gly(配列記号1)などのオリゴペプチドであってもよい。いくつかの実施形態において、標的指向化リガンドは、例えば、RGDfK、EPPT1または葉酸であってもよい。
【0042】
また、本明細書に開示されるのは、抗癌剤、担体分子、場合によってはリンカー分子、場合によっては標的指向化リガンドを含めた化合物であり、抗癌剤、担体分子、リンカー分子、および標的指向化リガンドは、1つまたは複数の共有結合によって互いに結合される。
【0043】
抗癌剤、担体分子、任意選択のリンカー分子および任意選択の標的指向化リガンドを互いに結合することができるいくつかの異なる方法がある。いくつかの実施形態において、抗癌剤、担体分子、場合によってはリンカー分子、場合によっては標的指向化リガンドを、互いに直接結合することができる。他の実施形態では、抗癌剤は、共有結合によって、あるいはリンカー分子によって担体分子に結合される。
【0045】
他の実施形態において、リンカー分子は、共有結合によって担体分子に直接結合され、抗癌剤は、リンカー分子に直接結合される。
【0047】
他の実施形態において、抗癌剤は、共有結合によって担体分子に直接結合され、標的指向化リガンドは、共有結合によって担体分子に直接結合される。
【0049】
他の実施形態において、リンカー分子は、共有結合によって担体分子に直接結合され、抗癌剤は、リンカー分子に直接結合され、標的指向化リガンドは、共有結合によって担体分子に直接結合される。
【0051】
他の実施形態において、リンカー分子は、共有結合によって担体分子に直接結合され、標的指向化リガンドは、リンカー分子に直接結合され、抗癌剤は共有結合によって担体分子に直接結合される。
【0053】
他の実施形態において、リンカー分子は、共有結合によって担体分子に直接結合され、抗癌剤は、リンカー分子に直接結合され、標的指向化リガンドは、共有結合によって担体分子に直接結合される異なるリンカー分子に直接結合される。
【0055】
化合物を生成するために用いた抗癌剤、担体分子、リンカー分子および標的指向リガンドは以下に論じられる。
【0056】
1.抗癌剤
「抗癌剤」は、癌と戦うのに有用な任意の薬剤を意味する。担体分子および/またはリンカーに直接的にもしくは間接的に結合することができる、任意の抗癌剤を用いることができる。開示された組成物と共に用いることができる抗癌剤の部分的なリストは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる特許文献2、ならびに抗癌剤を含む前記文献中で引用された任意の特許公報および特許、または特許出願において見出すことができる。特許文献3、特許文献4、および特許文献5はまた、抗癌化合物に関連する薬剤を記載している。抗癌剤のクラスは、それだけには限らないが、化学療法薬、細胞毒、代謝拮抗剤、アルキル化剤、蛋白リン酸化酵素(プロテインキナーゼ)阻害薬、アントラサイクリン系薬剤、抗生剤、有糸分裂阻害剤(例えば、抗チューブリン薬)、コルチコステロイド、放射性医薬品、およびタンパク質(例えば、サイトカイン、酵素、またはインターフェロン)が含まれる。具体的な例には、それだけには限らないが、ドセタキセル、ゲムシタビン、イマチニブ(Gleevec(登録商標))、5−フルオロウラシル、9−アミノカンプトテシン、アミン修飾ゲルダナマイシン、ドキソルビシン、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、メソe−クロリン、シスプラチン、Gd(+3)化合物、アスパラギナーゼ、および放射性核種(例えば、I−131、Y−90、In−111、およびTc−99m)が含まれる。当技術分野で既知の多くの抗癌剤があり、多くは開発され続けている。
【0057】
当業者は、抗癌剤を以下の説明に基づいて担体分子または連結分子に結合させるために抗癌剤の必要な化学修飾をすることができる。
【0058】
2.担体分子
任意の担体分子を用いることができる。典型的には、担体分子は、ポリマー(高分子)である。典型的には、担体ポリマー(高分子)は、少なくとも約5,000ダルトンの大型の巨大分子である。他の実施形態において、担体分子は、少なくとも約25,000ダルトン、少なくとも約50,000ダルトン、少なくとも約100,000ダルトン、少なくとも約125,000ダルトンまたは少なくとも約150,000ダルトンである。担体分子は、約5,000ダルトンから約25,000ダルトン、または約25,000ダルトンから約100,000ダルトン、または約50,000ダルトンから約130,000ダルトン、または約100,000ダルトンから約170,000ダルトン、または約120,000ダルトンから約200,000ダルトン、または約120,000ダルトンから約1,000,000ダルトンの範囲であってよい。担体分子は、細胞膜を通って抗癌剤を輸送する助けとなる。したがって、抗癌剤が、担体分子に直接的にまたは間接的に結合されるとき、それは、通常、抗癌剤単独よりも多く細胞膜を横断する。担体分子として機能する当技術分野で既知の多数の担体および高分子担体がある。担体分子の例は、「酵素および光によって活性化可能な薬物の同時送達のための薬物送達系」に関する特許文献6;「合成ポリマー薬物」に関する特許文献7;「親水性N,N−ジエチルアクリルアミドコポリマー」に関する特許文献8;「N−置換アクリルアミド、N−置換メタクリルアミドおよびN,N−二置換アクリルアミドベースのコポリマーならびにその製造方法」に関する特許文献9;「可溶性親水性ポリマーおよびそれらを生成する方法」に関する特許文献10;「親水性亜硝酸コポリマー」に関する特許文献11;および「可溶性親水性ポリマーおよびそれらを生成する方法」に関する特許文献12にも記載され、そのそれぞれは、その全体が個別におよび明確に参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
一実施形態では、担体分子は、不飽和モノマーの重合によって生成されたポリマーを含む。モノマーの例には、それだけには限らないが、アクリラートおよびメタクリラートが含まれる。一実施形態では、担体分子は、薬物または標的指向部分または造影剤含有コモノマーとのN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMAコモノマー)の重合から生成されるコポリマーである。得られたポリマー−薬物コンジュゲートは、HPMAコポリマーと本明細書において称される。
【0060】
本発明に従って調製されたポリマーは、約1.0から約2.0の多分散性を有し得る。代表的な実施形態において、多分散性は、約1.3から約1.8、約1.3から約1.5または約1.5から約1.7である。いくつかの実施形態は、約1.4の多分散性を有し、他の実施形態は、約1.7の多分散性を有し得る。
【0061】
3.リンカー分子
「リンカー」は、薬物または標的指向化リガンドを担体分子から空間的に隔てる基を意味する。リンカーは、それだけには限らないが、ポリ(エチレングリコール)、アミノ酸、ポリ(アミノ酸)(例えば、ペプチドもしくはオリゴペプチド)、またはポリペプチド(例えば、タンパク質)などの任意の種類の実体であってよく、その一方の端は担体分子との共有結合を形成することができ、他方の端は薬物または標的指向化リガンドとの共有結合を形成することができる。リンカーは、Gly−Phe−Leu−Gly(配列記号1)などの、リソソーム分解され易い特定の配列を有する短いペプチドを含むこともできる。他の例には、前立腺癌の場合、前立腺細胞に、および配列特異的タンパク質分解能力を有する前立腺特異抗原(PSA)に標的指向化した連結が含まれる。例えば、PSAは、His−Ser−Ser−Lys−Leu−Gln(配列記号5)およびグルタリル−4−ヒドロキシプロリル−Ala−Ser−シクロヘキサグリシル−Gln−Ser−Leu(配列記号6)を加水分解する。
【0062】
例えば、還元条件下で、酸化条件下で、またはエステル、アミド、ヒドラジド、もしくはリンカーおよび抗癌剤間の共有結合を形成する類似の連結の加水分解によって抗癌剤を放出することができるように、リンカーは通常切断可能である。さらに、リンカーのタイプは、細胞に隣接したまたは細胞内の抗癌剤の選択的な放出を可能にすることにより、選択的な細胞毒性(したがって、治療係数を改善する)態様を増大することができる。
【0063】
4.標的指向化リガンド
「標的指向化リガンド」という用語は、所望の活性のために特定の部位に本発明の化合物を送達するのに役立つ分子を意味し、すなわち、それは、化合物を局在化させる。局在化は、分子の決定因子の特異的認識、標的指向化薬剤またはコンジュゲートの分子サイズ、イオン相互作用、疎水的相互作用などによって媒介される。特定の組織または領域に薬剤を標的指向化する他の機序は、当業者に知られている。標的指向化リガンドには、例えば、標的指向化した細胞表面上で分子に結合する分子が含まれる。模範的な標的指向化リガンドには、抗体、抗体断片、低分子の有機分子、ペプチド、ペプトイド、タンパク質、ポリペプチド、オリゴ糖、トランスフェリン、HS−糖タンパク質、凝固因子、血清タンパク質、β−糖タンパク質、G−CSF、GM−CSF、M−CSF、EPOなどが含まれる。本発明の模範的な実施形態では、標的指向化系には、RGDfK、EPPT1ペプチド、または葉酸などの標的指向化リガンドを担体分子、リンカー、または抗癌剤に共有結合することが含まれる。
【0064】
5.細胞による取り込みの効率および特異性
本明細書に記載した化合物は、抗癌剤単独によって用いられるものと典型的には異なる機序を用いて細胞による抗癌剤の取り込みを可能にさせることを特徴とし得る。取り込みの効率および/または特異性が担体分子によって増加されるか否かを決定する多くの方法がある。効率および/または特異性の典型的な増加は、少なくとも2倍、5倍、10倍、25倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、5,000倍または10,000倍以上となり得る。
【0065】
C.化合物を作製する方法
本発明の化合物は、当技術分野で知られている技法を用いて調製することができる。記載されているように、化合物を生成するために用いられる4つまでの構成要素があり、すなわち、抗癌剤、担体分子、任意選択の標的指向化リガンドおよび任意選択のリンカー分子である。具体的な実施形態では、本発明の化合物には、担体分子、抗癌剤、標的指向化リガンド、および少なくとも1種のリンカー分子が含まれる。前述した構成要素のいずれかは、任意の可能な組み合わせまたは順序で互いに反応させて本発明の化合物を生成することができる。構成要素の2つを一緒に結合して(すなわち、反応させて)、新規な反応生成物もしくは中間体を生成し、次いで、中間体を次の成分と化学的に結合することが好ましい場合もある。例えば、抗癌剤は、抗癌/担体分子を生成するために担体分子と反応させることができる。同様に、抗癌剤は、抗癌/リンカー分子を生成するためにリンカー分子と反応させることができる、あるいは、リンカー分子は、リンカー/担体分子を生成するために担体分子と反応させることができる。その場合は、これらの中間体のそれぞれは、個別の成分と反応させることができる(例えば、担体/リンカー/抗癌剤を生成するための担体分子との抗癌/リンカーの反応)、あるいは、中間体のそれぞれは、化合物を生成するために互いに反応させることができる(例えば、抗癌/担体分子との抗癌/リンカー分子の反応)。
【0066】
一実施形態では、化合物は、(1)リンカーを、担体分子を調製するために用いられるモノマーと反応させてモノマー/リンカー分子を生成すること、(2)モノマー/リンカー分子を抗癌剤と反応させてモノマー/リンカー/抗癌剤を生成すること、および(3)モノマー/リンカー/抗癌剤の少なくとも1種のコモノマーとの重合、によって生成することができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1種のコモノマーは、HPMAコモノマーである。
【0067】
他の実施形態において、化合物は、(1)リンカーを、担体分子を調製するために用いられるモノマーと反応させてモノマー/リンカー分子を生成すること、(2)モノマー/リンカー分子を抗癌剤と反応させてモノマー/リンカー/抗癌剤を生成すること、(3)モノマー/リンカー/抗癌剤の少なくとも1種のコモノマーとの重合、および(4)標的指向化リガンドをコポリマーと反応させること、によって生成することができる。かかる実施形態では、少なくとも1種のコモノマーには、標的指向化リガンドと反応することができる反応性部位が含まれる。いくつかの実施形態において、少なくとも1種のコモノマーはHPMAコモノマーである。他の実施形態において、少なくとも1種のコモノマーには、HPMAコモノマーおよび標的指向化リガンドによって置換することができる脱離基を有する第2のコモノマーが含まれる。
【0068】
例示的な一実施形態では、化合物は、(1)メタクリロイルクロリド(MACl)をGly−Phe(GF)と反応させ、生成物をLeu−Gly(LG)と結合させてMA−GFLG−OH分子を生成すること;(2)MA−GFLG−OH分子をゲムシタビンまたはドセタキセルと反応させてMA−GFLG−抗癌分子を生成すること;(3)MA−GFLG−抗癌分子をHPMAコモノマーと反応させてHPMAコポリマー−薬物コンジュゲートを生成することによって、生成することができる。この方法は、下記の実施例1〜2から1〜8に詳細に記載されている。「GFLG」は、配列記号1として開示されている。
【0069】
他の例示的な実施形態では、MA−GFLG−OHは、ドセタキサル(DCT)と反応させてMA−GFLG−DCTを得るまたはゲムシタビン(GEM)と反応させてMA−GFLG−GEMを得る。次いで、HPMAコモノマーは、MA−GFLG−DCTもしくはMA−GFLG−GEMおよびメタクリロイル−グリシルグリシン−p−ニトロフェニルエステル(以下のスキーム6に示されるMA−GGONp)などの脱離基を含む他のコモノマーと共重合して、HPMA−GFLG−薬物−GGONpを生成する。次いで、HPMA−GFLG−薬物−GGONpは、標的指向化リガンドと反応させてHPMA−GFLG−薬物−標的指向化リガンドを生成する。いくつかの実施形態において、標的指向化リガンドは、例えば、RGDfK、EPPT1ペプチドまたは葉酸であってよい。この方法は、下記の実施例1〜9から1〜12に詳細に記載されている。「GFLG」は、配列記号1として開示されている。
【0070】
前述した通り、抗癌剤、担体分子、およびリンカーは、直接的にまたは間接的に互いに結合することができる。さらに、各成分への互いの結合は、選択された構成要素のタイプおよび構成要素が互いに反応可能である順序に応じて変わり得る。
【0071】
D.化合物を使用する方法
開示される化合物は、抗癌剤の細胞への標的指向化した送達のために用いることができる。本明細書に開示されている化合物は、薬学的に許容される形態でおよび抗癌剤もしくは類似の化合物の送達を必要とする対象に有効量で投与することができる。対象は、例えば、マウス、ラット、ウサギ ハムスター、イヌ、ネコ、ブタ、雌ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、またはサル、ゴリラ、オランウータン、チンパンジーもしくはヒトなどの霊長類などの哺乳動物とすることができる。
【0072】
本明細書に開示されている結合された抗癌剤は、癌細胞増殖を阻害するために用いることができる。癌細胞増殖を阻害することは、癌細胞の増殖を減少または防阻害することを意味する。阻害剤は、癌細胞アッセイを用いることによって決定することができる。例えば、癌細胞系は、コンジュゲートされた抗癌剤または抗癌剤単独または開示される組成物とは別に調製された抗癌剤(例えば、抗癌剤および担体のみ)の存在下もしくは非存在下のいずれかで任意の設定期間に96穴プレートで培養することができる。次いで、細胞はアッセイ(検定)することができる。いくつかの実施形態において、コンジュゲートされた抗癌化合物は、アッセイによって決定された対照のいずれかに対して増殖の10%または15%または20%または25%または30%または35%または40%または45%または50%または55%または60%または65%または70%または75%または80%または85%または90%または95%を阻害する。他の実施形態には、転移性腫瘍形成を抑制する組成物が含まれる。かかる組成物は、対照化合物の少なくとも10%または15%または20%または25%または30%または35%または40%または45%または50%または55%または60%または65%または70%または75%または80%または85%または90%または95%まで転移性腫瘍形成を減少することができる。
【0073】
いくつかの実施形態において、開示される化合物は、抗癌または類似の薬剤の送達を必要とする様々な障害を治療するために用いることができる。いくつかの実施形態において、開示されている組成物は、癌などの制御の効かない細胞の増殖が発生する場合に、疾患を治療するために用いることができる。本明細書で使用される場合、「治療する」または「治療している」は、状態に脅かされているまたは罹患している対象において、病的な状態を特徴付ける少なくとも1種の症状を抑制する、軽減する、調節する、寛解させる、または遮断することを意味する。癌の異なるタイプの非限定的なリストは、以下の通りである。すなわち、癌(細胞腫)、固形組織の癌、有棘細胞癌、腺癌、肉腫、神経膠腫、高悪性度神経膠腫、芽細胞腫、神経芽細胞腫、形質細胞腫、組織球腫、黒色腫、腺腫、低酸素性腫瘍、骨髄腫、転移性癌、または一般的な癌である。治療するために開示されている組成物を用いることができる癌の具体的な例には、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、{きんじょうそく にくしゅ}菌状息肉症、ホジキン病、骨髄性白血病、膀胱癌、脳癌、神経系癌、頭頚部癌、頭部および頚部の有棘細胞癌、腎臓癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌などの肺癌、神経芽細胞腫/グリア芽腫、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、皮膚癌、肝臓癌、黒色腫、口、咽頭、喉頭および肺の有棘細胞癌、結腸癌、子宮頚癌、子宮頚癌、乳癌、および上皮癌、腎癌、尿生殖器癌、肺癌、食道癌、頭部および頚部癌、大腸癌、造血性癌;精巣癌;結腸および直腸癌、前立腺癌、または膵癌が含まれる。
【0074】
本明細書に開示されている化合物は、子宮頚部および肛門異形成、他の異形成、重症の異形成、過形成、異型過形成、および新形成などの前癌状態の治療のために用いることもできる。
【0075】
E.用量
化合物の投与のための用量範囲は、送達が行われる所望の効果を十分にもたらす大きさのものである。用量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応などの有害な副作用を引き起こすほどの大きさであるべきではない。一般に、用量は、患者における年齢、状態、性別および疾患の程度によって変わり、当業者によって決定することができる。用量は、任意の使用禁忌の事象において個別の医師によって調整することができる。用量は、1日または数日間、1日1回または複数回の用量投与で約1mg/kgから30mg/kgまで変わり得る。
【0076】
F.薬学的に許容される担体
化合物のいずれかは、1種または複数の薬学的に許容される担体と併用して医薬組成物に治療的に用いることができる。
【0077】
医薬用担体は当業者に知られている。これらのほとんどは、通常、滅菌水、食塩水、および生理的pHの緩衝液などの溶液を含めて、組成物のヒトへの投与のための標準的な担体となるはずである。他の化合物は、当業者によって用いられる標準手順に従って投与される。
【0078】
医薬品送達を目的とした分子は、医薬組成物に処方することができる。医薬組成物は、選択した分子に加えて、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝液、保存剤、界面活性剤などを含むことができる。医薬組成物は、抗菌剤、抗炎症薬、麻酔薬などの1種または複数の有効成分を含むこともできる。
【0079】
非経口投与用の調製には、緩衝液、賦形剤および他の適当な添加物を含むこともできる無菌の水性または非水性溶液、懸濁液、および乳剤が含まれる。非水性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルである。水性担体には、食塩水および緩衝された媒体を含めた、水、アルコール/水溶液、乳剤または懸濁液が含まれる。非経口溶媒(ビヒクル)には、塩化ナトリウム溶液、デキストロースリンゲル液、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液または固定油が含まれる。静脈内溶媒には、液体および栄養補充剤、電解質補充剤(デキストロースリンゲルをベースとしたものなど)などが含まれる。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤、および不活性ガスなどの保存剤および他の添加物もまた、存在することができる。
【0080】
本明細書に記載した組成物は、塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硝酸、チオシアン酸、硫酸およびリン酸などの無機酸ならびにギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸およびフマル酸などの有機酸との反応によって、または水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムなどの無機塩基ならびにモノアルキル、ジアルキル、トリアルキルおよびアリールアミンおよび置換されたエタノールアミンなどの有機塩基との反応によって形成された、薬学的に許容される酸または塩基添加塩として投与することもできる。
【0081】
G.医薬組成物
単一剤形を生成するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、治療される宿主および特定の投与方法に応じて変わる。
【0082】
本発明の化合物および/または組成物で疾患状態を治療するための投与用量計画(レジメン)は、患者のタイプ、年齢、体重、性別、食事および医学的状態、疾患の重症度、投与経路、使用される特定の化合物の活性、効果、薬物動態学的および毒性学プロファイル、薬物送達系が利用されるか否かならびに化合物が薬物の合剤の一部として投与されるか否か、などの薬理学的な考察を含めて、様々な因子に従って選択される。したがって、実際に使用される用量レジメンは、幅広く変わり得、したがって、上記の好ましい用量レジメンから逸脱する場合がある。
【0083】
例えば、無菌の注射用水性もしくは油性懸濁液を含めた注射用製剤は、適当な分散化剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて既知の技術に従って処方することができる。無菌の注射用製剤はまた、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液のような、非毒性の非経口に許容される希釈剤または溶媒中の無菌の注射剤または懸濁液であってもよい。使用することができる許容されるビヒクルおよび溶媒の中でも、水、リンゲル液、および生理食塩液である。さらに、無菌の固定油は、溶媒または懸濁化媒体として常法に従って使用される。こうした目的のために、任意の無刺激性の固定油は、合成モノもしくはジグリセリドを含めて使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射用の製剤における使用が見出されている。
【0084】
本発明の化合物を唯一の活性医薬品として投与することができ、免疫調節薬、抗ウイルス薬または抗感染薬などの1種もしくは複数の治療薬と併用して用いることもできる。
【0085】
以上は、本発明の例示に過ぎず、本発明を開示されている化合物に限定するものではない。当業者に明らかである変形形態および変更形態は、添付した特許請求の範囲に定義される本発明の範囲および性質の範囲内であることが意図される。以上の説明から、当業者は、本発明の本質的な特性を容易に確認することができ、その精神および範囲から逸脱することなく、それを様々な使用および条件に適合させるために本発明の様々な変更および修正を行うことができる。
【実施例】
【0086】
本発明は、以下の実施例に関する参照文献によりさらに明らかになり得、これは、好ましい実施形態のいくつかを例示するのに役立ち、いかなる方法においても本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0087】
薬物送達のためのHPMA−ゲムシタビンまたはドセタキセルコンジュゲートの合成
HPMAコモノマー薬物コンジュゲートを、異なるモル比でHPMAモノマーおよび活性化したMA−GFLG−薬物(配列記号1)コモノマーの重合によって合成した。
【0088】
1)HPMAコモノマーの合成
HPMAモノマーの合成、スキーム1に示されるように、以前に記載されている通り行った(例えば、非特許文献7参照)。MA−GG−ONpコモノマーを、改変した多段階手順によって合成した(例えば、非特許文献8参照)。
スキーム1
【0089】
【化2】
【0090】
1−アミノ−2−プロパノール(65.6ml、0.84モル)のアセトニトリル250ml溶液に、アセトニトリル20ml中の新たに蒸留したメタクリロイルクロリド(MACl)(41ml、0.42モル)を−5℃で激しく撹拌しながら滴下添加した。少量の阻害剤、三級オクチルピロカテキンを溶液に加えた。反応混合物を、さらに30分間室温で撹拌した。副生成物として形成した1−アミノ−2−プロパノール塩酸塩を、沈殿させろ過した。残渣を前もって冷却したアセトニトリルで洗浄した。ろ液を−70℃に冷却しHPMAは沈殿させた。室温まで平衡化してから、生成物をろ過し、前もって冷却したアセトニトリルで洗浄した。再結晶をアセトンから得、純粋な生成物を単離した(融点:67〜69℃)。MS(ESI)m/z144(M+1)。
1H NMR(400MHz、CDC1
3):δ1.20および1.22(d、J=6.4Hz、3H))、1.97(s、3H)、3.18〜3.21(m、1H)、3.48〜3.51(m、1H)、3.95〜3.96(m、1H)、5.36(s、1H)、5.74(s、1H)。
【0091】
2)MA−GF−OHの合成
メタクリロイルグリシルフェニルアラニン(MA−GF−OH)を、スキーム2で概説する通りメタクリロイルクロリド(MACl)およびグリシルフェニルアラニン(GF)の反応から合成した。
【0092】
グリシルフェニルアラニン(Gly−Phe、5.0g、22.5mmol)を4N NaOH(22.5mmol)5.6mlに溶解し、0〜5℃に冷却した。ジクロロメタン10ml中の新たに蒸留したMACl(2.3g、22.5mmol)を滴下添加した。少量の阻害剤、三級オクチルピロカテキンを加えてモノマーの重合を防止した。同時に、しかし、わずかに遅れて、4N NaOH5.6ml(22.5mmol)を反応混合物に滴下添加した。MAClおよびNaOHを加えてから、反応混合物を室温まで温め、1時間放置して反応させた。pHを約8〜9で維持した。ジクロロメタン層を水層から分離し、水2mlで洗浄し捨てた。合わせた水層に酢酸エチル40mlを混合した。激しく撹拌冷却しながら、希薄HClをpHが2〜3になるまでゆっくり加えた。有機層を分離し水層を酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで終夜乾燥した。乾燥した溶液をろ過し酢酸エチルで洗浄した。酢酸エチルを回転蒸発によって除去して生成物を白色粉末として得た。酢酸エチルから再結晶を行った(融点:141.8〜143.4℃)。
1H NMR(400MHz、CDC1
3):δ1.96(s、3H))、3.06〜3.20(2m、2H)、3.85〜4.11(2m、2H)、4.83〜4.85(m、1H)、5.41(s、1H)、5.79(s、1H)、7.20〜7.30(m、5H)。
【0093】
3)LG−OMeHClの合成
ロイシルグリシン−OMe(LG−OMe)を、スキーム2で概説する通りロイシルグリシン(LG)および塩化チオニル/メタノールの反応から合成した。
【0094】
ロイシルグリシン(Leu−Gly、4.0g 21mmol)を、メタノール35mlに溶解し−15℃に冷却した。わずかに過量の塩化チオニル(SOCl
2)(2ml、26mmol)を撹拌しながら滴下添加した。室温に平衡化してから、混合物を3時間還流した。溶媒を蒸発乾固し、残渣をメタノールに溶解し、再び蒸発させて微量のHClおよびSOCl
2を除去した。残渣をベンゼンに溶解し蒸発させて白色の非晶質の固形物を得た。粗生成物(LG−OMe.HCI)を精製せずにその後のステップに用いた。
1H NMR(400MHz、DMSO-d
6):δ0.89〜0.93(m、6H)、1.56〜1.61(m、2H))、1.71〜1.78(m、1H)、3.65(s、3H)、3.77〜3.85(m、2H)、3.88〜4.00(m、1H)、5.41(s、1H)、5.79(s、1H)、7.25〜7.28(m、5H)。
【0095】
4)MA−GFLG−OMe(配列記号1)の合成
メタクリロイルグリシルフェニルアラニルロイシルグリシンOMe(MA−GFLG−OMe)(配列記号1)を、スキーム2で概説する通りメタクリロイルグリシルフェニルアラニン(MA−GF−OH)およびロイシルグリシン−OMe(LG−OMe)の反応から合成した。
【0096】
Leu−Gly−OMe HCl(21mmol)5.0gのジメチルホルムアミド(DMF)40ml溶液に、1−ヒドロキシベンゾニトリル(HOBT、25mmol)4.0g、N,N’−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、25mmol)4.0ml、およびMA−Gly−Phe(20.7mmol)6.0gを加えた。反応混合物を撹拌し−10℃に冷却した。DMF20ml中のN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、25mmol)5.2gを5分以内に滴下添加した。溶液を2時間0℃で撹拌し、次いで、24時間室温で撹拌した。終夜撹拌してから、沈殿させた副生成物、ジシクロヘキシル尿素(DCU)をろ過した。ろ液を回転蒸発してDMFを完全に除去した。残渣に5%NaHCO
3溶液40mlを混合し、酢酸エチルで3回抽出した。抽出物を5%クエン酸溶液40ml、5%NaHCO
3溶液40ml、および飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過してから、乾燥剤およびろ液を減圧下で濃縮して生成物(MA−GFLG−OMe(配列記号1))を得た。酢酸エチルから再結晶を行った(融点:140.9〜143.0℃)。
【0097】
5)MA−GFLG−OH(配列記号1)の合成
メタクリロイルグリシルフェニルアラニルロイシルグリシン(MA−GFLG−OH(配列記号1))を、スキーム2で概説する通りメタクリロイルグリシルフェニルアラニルロイシルグリシンOMe(MA−GFLG−OMe(配列記号1))の加水分解から合成した。
【0098】
MA−GFLG−OMe(配列記号1)(14.5mmol)6.9gのメタノール80ml中の冷却した溶液に、過量の1N NaOH(18ml、18mmol)を撹拌しながら滴下添加した。少量の阻害剤(t−オクチルピロカテキン)を加えてから、反応混合物を1時間30分0℃で撹拌し、次いで2時間室温で撹拌した。以前の反応から得られたDCU副生成物の追加の量を沈殿させ、ろ過した。ろ液を減圧下で濃縮してメタノールを除去し、蒸留水160mlで混合し、濃縮したクエン酸でpH2.0まで酸性にした。遊離酸を酢酸エチル4×200mlで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで終夜乾燥した。減圧下で溶媒を蒸発させてから、テトラペプチド生成物(MA−GFLG−OH(配列記号1))を酢酸エチルから再結晶化した(融点:161.4〜165.6℃)。MS(ESI)m/z483(M+Na)。
スキーム2「GFLG」を配列記号1として開示する
【0099】
【化3】
【0100】
6)メタクリロイルグリシルフェニルアラニルロイシルグリシル−ゲムシタビン(MA−GFLG−ゲムシタビン)(配列記号1)の合成(スキーム3)。
【0101】
MA−GFLG−OH(配列記号1)のDMF(1×)溶液に、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1.2×)の溶液を一定に撹拌しながら加えた。温度を−10℃に冷却し、DCC(1.2×)のDMF溶液を撹拌しながら滴下添加した。次いで、DMFおよびN,N’−ジイソプロピルエチルアミン中のゲムシタビン塩酸塩溶液を反応混合物に滴下添加した。反応混合物を室温になるまで放置した。沈殿させたDCUをろ過し、DMFは回転蒸発によって除去した。生成物を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:EtOAc/MeOH)によって精製し、質量分析(M+1=706.3)およびTLCによって分析した。
【0102】
【化4】
【0103】
スキーム3「GFLG」を配列記号1として開示する
7)メタクリロイルグリシルフェニルアラニルロイシルグリシル−ドセタキセル(MA−GFLG−ドセタキセル(配列記号1))の合成(スキーム4)。
【0104】
MA−GFLG−OH(配列記号1)を、無水DMFに溶解し、この溶液に0℃でジイソプロピルカルボジイミド(DIPC、1×)、ドセタキセル(1×)、および4−ジ(メチルアミノ)ピリジン(DMAP、1.5×)を加えた。得られた溶液を室温に温まるまで放置し、16時間放置した。反応混合物を0.1N HClで洗浄し、乾燥し、真空中で蒸発させて、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:EtOAc/MeOH)によって精製された白色固形物として生成物を得た。生成物を薄層クロマトグラフィーおよび質量分析m/z 1272.3(M+Na)によって検証した。
スキーム4「GFLG」を配列記号1として開示する
【0105】
【化5】
【0106】
8)ポリマー−薬物コンジュゲートの合成
HPMAコポリマー−薬物(薬物はゲムシタビンおよびドセタキセルを表す)コンジュゲートを、スキーム5に示す通り開始剤としてN,N’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN、4.4mg)を用いて、50℃で24時間アセトン(0.72ml)/DMSO(0.08ml)中のコモノマーHPMA(86.7mg、0.603mmol)およびMA−GFLG−薬物(配列記号1)(5mg、0.004mmol、薬物がドセタキセルである場合)の遊離基沈殿共重合によってコモノマーから合成した。コモノマーの供給組成を、MA−GFLG−薬物(配列記号1)0、2、および10モル%をそれぞれ含むように変化させた。コモノマー:開始剤:溶媒の比を、12.5:0.6:86.9重量%で一定に保った。典型的には、AIBNおよびHPMAをアセトンに溶解し、少量のDMSO中のMA−GFLG−薬物(配列記号1)の溶液と混合した。混合物を窒素でアンプルに封入し、50℃で24時間撹拌しながら放置して重合させた。沈殿させたポリマーをメタノールに溶解し、20×体積のエーテルに再沈殿した。低分子量の未反応のモノマーおよび他の不純物を蒸留水に再溶解することによってポリマーコンジュゲートから分離し、蒸留水に対して透析して塩を除去し、続いて、凍結乾燥して純粋な生成物を得た。
スキーム5「GFLG」を配列記号1として開示する
【0107】
【化6】
【0108】
9)HPMAコポリマー−RGDfK−ドセタキセルコンジュゲートの合成。
【0109】
ポリマーコンジュゲートをスキーム6で概説する通り2段階ステップ手順で合成した。第1のステップでは、反応性HPMAコポリマー−薬物コンジュゲートを、アセトン/5%DMSO中のHPMA、MA−GFLG−ドセタキセル(配列記号1)およびメタクリロイルグリシルグリシン−p−ニトロフェニルエステル(MA−GG−ONp)コモノマーの遊離基沈殿共重合によって合成した。コモノマーの供給組成は、それぞれ89.34%、0.66%および10%であった。N,N’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を開始剤として用いた。簡単に述べると、HPMA(54.24mg、0.38mmol)、MA−GFLG−ドセタキセル(配列記号1)(3.5mg、0.0028mmol)およびMA−GG−ONp(13.62mg、0.0424mmol)およびAIBN(3.43mg)を、アセトン(5%DMSO)1mlに溶解した。コモノマー:開始剤:溶媒の比を12.5:0.6:86.9重量%で一定に保った。混合物を窒素アンプル封入し、50℃で24時間撹拌しながら放置して重合させた。沈殿させたポリマー前駆体を、メタノールに溶解し、20×体積のエーテルに再沈殿した。低分子量の未反応のモノマーおよび他の不純物を、蒸留水に再溶解することによってポリマーコンジュゲートから分離し、蒸留水に対して透析して塩を除去し、続いて、凍結乾燥して純粋な生成物を得た。ポリマーのONp含有量を272nmで分光光度分析的に(spectrophometrically)決定した。
【0110】
第2のステップでは、標的指向化ペプチドRGDfKを、アミノリシス反応によってポリマー前駆体に結合させた。簡単に述べると、(0.02mmolのONp基を含む)HPMA−(GFLG−ドセタキセル)−GG−ONp(配列記号1)前駆体35.69mgを(3Åモレキュラーシーブスで乾燥した)乾燥DMF1.6mlに溶解した。RGDfK(16.7mg、0.03mmol)を、MA−GG−ONp含有量に対して1.3モル過量でポリマーの前駆体中に加えた。反応を窒素中で24時間、室温で実施した。反応を1−アミノ−2−プロパノール(0.02mmol)で終了させた。コンジュゲートを、脱イオン水に対して透析し凍結乾燥した。
スキーム6「GFLG」を配列記号1として開示する。
【0111】
【化7】
【0112】
10)HPMAコポリマー−RGDfK−ゲムシタビンコンジュゲートの合成および特徴付け。
【0113】
表題のポリマー−薬物コンジュゲートは、HPMAコポリマー−RGDfK−ドセタキセルコンジュゲートに関する類似の方法を用いて調製することができる。
【0114】
11)HPMAコポリマー−EPPT1−ドセタキセルコンジュゲートまたはHPMAコポリマー−EPPT1−ゲムシタビンコンジュゲートの合成。
【0115】
表題のポリマー−薬物コンジュゲートは、HPMAコポリマー−RGDfK−ドセタキセルコンジュゲートに関する類似の方法を用いて調製することができる。
【0116】
12)HPMAコポリマー−葉酸−ドセタキセルコンジュゲートまたはHPMAコポリマー−葉酸−ゲムシタビンコンジュゲートの合成
表題のポリマー−薬物コンジュゲートを、HPMAコポリマー−RGDfK−ドセタキセルコンジュゲートに関する類似の方法を用いて調製した。
【0117】
13)ポリマー−薬物コンジュゲートの物理化学的特徴付け
表1に列挙する通り、一連のポリマー薬物コンジュゲートの合成に成功した。合成されたポリマー−薬物コンジュゲートの重量平均分子量(Mw)および多分散性を、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)系(Amersham Biosciences)のSuperose12 HR 10/30カラム(Amersham Biosciences)を用いた分子ふるいクロマトグラフィーによって推定した。1mg/mlにおけるサンプルを、溶離溶媒としてPBSを用いて流速0.4ml/分で溶離した。ポリマーの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および多分散性(n=Mw/Mn))を、既知の分子量のポリHPMA画分を用いた検量線から推定した。薬物含有量をアミノ酸分析(Commonwealth Biotechnologies Inc、Richmond、VA)を用いて得た。結果を表1に示した。ポリマーの全体的なサイズ分布は、類似の系に関する文献で報告された立証済みの値と一致した。
【0118】
【表7】
【実施例2】
【0119】
生物学的試験
1)癌細胞株増殖
HPMA−薬物コンジュゲートの効果を決定する癌細胞株を以下の供給源から得た。すなわち、米国アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)(Manassas、VA)から得られたヒトMDA−MB−231(乳癌)、HCT116(結腸癌)およびPANC−1(膵臓癌)、米国国立癌研究所(Bethesda、MD)から得られたUMRC2(腎臓癌)である。細胞を10%FBS、P/Sおよび10mM HEPESを補充したダルベッコ改変イーグル培地(「DMEM」、Invitrogen)中で維持した。すべての細胞を37℃で加湿した5%CO
2下でインキュベートした。
【0120】
2)ヒト株化腫瘍細胞に対するin vitro細胞増殖アッセイ
ヒト癌細胞系に対するHPMA−薬物コンジュゲートの増殖阻害アッセイを、スルホロ−ダミンB(「SRB」)法を用いて行った(例えば、非特許文献9参照)。簡単に述べると、対数増殖期の癌細胞を2〜3×10
3細胞/ウェルの密度で96穴プレートに播種し、翌日HPMAコポリマー−薬物コンジュゲートで処理した。各処理をトリプリケートウェルで行った。水を対照として用いた。細胞をHPMAコポリマー−薬物コンジュゲートで加湿した5%CO
2雰囲気中で96時間37℃でインキュベートした。96時間インキュベートしてから、細胞を、10%トリクロロ酢酸(「TCA」)で固定し、4℃で1時間インキュベートし、水道水で3回洗浄した。続いて、細胞を、1%酢酸中の0.4%スルホロ−ダミンBで30分間染色し、1%酢酸で3回洗浄し、再び風乾した。10mMトリス溶液中で5分撹拌してから、各ウェルの530nmにおける吸光度を、Benchmark Plus Microplate reader(Bio−Rad Laboratories、Hercules、CA)を用いて測定した。吸光度の値が、HPMAコポリマー−薬物コンジュゲートで処理後の生細胞測定数を直接与える。
【0121】
OD
530値を各ウェル中の生細胞の数に変換するために、OD
530値を、各細胞株ごとに派生するの標準OD
530対細胞数曲線と比較した。生存パーセントを、次式を用いて算出した。
%生存=生細胞数[試験]/生細胞数[対照]×100
IC
50値を非線形回帰分析によって算出した。
【0122】
表2は、HPMAコポリマー−薬物コンジュゲートについて決定した細胞増殖(IC
50、μM)の阻害をまとめて示す。
【0123】
【表8】
【実施例3】
【0124】
異種移植試験
動物モデルにおける腫瘍増殖阻害を観察するために、ヌードマウス異種移植モデルを後述の通りHPMAに結合させたドセタキセルまたはゲムシタビンを利用して行った。
【0125】
Mia−Pacaヒト膵癌細胞またはHCT116細胞懸濁液(3×10
6細胞)を0日目に6週齢の雌FoxN1ヌルマウスの下脇腹に皮下注射した。腫瘍が適当なサイズ、例えば、約50〜60mm
3の体積に達したら、マウスにリン酸緩衝食塩水(PBS)のみまたは本発明の薬物コンジュゲートを4〜5日毎に静脈内注射した。対照の腫瘍が、例えば、直径約1cmになるまで、動物を数週間にわたってモニターし、その時点で動物を安楽死させる。腫瘍サイズおよび腫瘍構成物を腫瘍サイズ変化の倍率として決定し報告した(
図1〜
図3)。
【0126】
この実施例に記載のモデルを用いて、本発明の薬物コンジュゲート、例えば、実施例1に記載の薬物コンジュゲートは、細胞のin vivo増殖を阻害するまたは安定化することができ、その抗癌効果および特性を裏付けることが示される。