(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013428
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】外扇型回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/04 20060101AFI20161011BHJP
H02K 5/173 20060101ALI20161011BHJP
H02K 9/06 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
H02K5/04
H02K5/173 A
H02K9/06 F
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-226336(P2014-226336)
(22)【出願日】2014年11月6日
(65)【公開番号】特開2016-93013(P2016-93013A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2015年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山野 啓太
【審査官】
三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−111460(JP,U)
【文献】
実開昭59−034458(JP,U)
【文献】
実開昭62−011361(JP,U)
【文献】
実開昭54−124911(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/04
H02K 5/173
H02K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平回転軸まわりに回転可能に軸支されたロータシャフトと、そのロータシャフトに固定された回転子鉄心とを有する回転子と、
前記ロータシャフトの軸方向の前記回転子鉄心を挟んだ位置にそれぞれ配設され、前記ロータシャフトを支持する第1軸受および第2軸受と、
前記回転子鉄心の径方向外側に配された固定子と、
前記回転子鉄心および前記固定子の径方向外側を包囲し両端が開放された筒状のフレームと、前記フレームの軸方向の両端に固定支持され前記第1軸受および第2軸受をそれぞれ支持する第1の軸受ブラケットおよび第2の軸受ブラケットとを有し、筐体開口部が形成された本体筐体と、
前記ロータシャフトの前記第1軸受の軸方向外側に取り付けられて前記第1の軸受ブラケットおよび前記フレームの外側に冷却用空気を送る外扇と、
前記外扇の外側を覆うように設けられた外扇カバーと、
前記筐体開口部を通して前記本体筐体内に差し込まれて前記第1軸受に供給され前記第1軸受から落下するグリースを前記本体筐体内で受けて前記本体筐体内に貯留するグリース受け部と、前記筐体開口部において前記本体筐体と取外し取付け可能に形成されたグリース受け取付け部とを有するグリース受け部材と、
を備え、
前記外扇カバーには、前記回転子の回転中に外側から前記グリース受け部材を取外し取付け可能なように当該外扇カバーが前記本体筐体に部分的に密着するように前記筐体開口部に向かってカバー窪み部が形成され、前記カバー窪み部には前記筐体開口部を含む範囲に前記グリース受け部が貫通可能なカバー開口部が形成されていることを特徴とする外扇型回転電機。
【請求項2】
前記グリース受け部材と前記筐体開口部とは、前記筐体開口部の外側の縁部において互いに密着するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の外扇型回転電機。
【請求項3】
前記外扇カバーは、前記カバー窪み部および前記カバー開口部を有する第1のカバー部材と、前記第1のカバー部材以外の第2のカバー部材とを有し、
前記第1のカバー部材は、前記第2のカバー部材と取外し取付け可能に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の外扇型回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平回転軸を有し、グリース受けを備えた外扇型回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
外扇型回転電機、すなわち、フレームの外側でロータシャフトに取り付けられたファンによって冷却用空気を駆動する方式の回転電機がある(特許文献1)。外扇はロータシャフトに直結して回転駆動されること、および外気取り入れ口との位置関係から、通常、軸受の軸方向外側であって軸受の直近に配置される。
【0003】
軸受(特にころがり軸受)には、軸受潤滑のためのグリースが供給されている。軸受に供給されて軸受の潤滑を行ったグリースは、軸受を通過した後に、軸受の下方に設けられて受け皿状に形成されたグリース受け上に落下して貯留される。グリース受けは、一方の端部が、本体筐体すなわち軸受ブラケットあるいはフレームを貫通して内部に挿入される。また、他方の端部は、本体筐体の貫通部に設けられた取付け部によって取外し可能に取り付けられている。このように、グリース受けは、結合部において片側支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−11361号公報
【特許文献2】実開昭59−34458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
落下してきたグリースを貯留したグリース受けは、定期的に取り出して貯留していたグリースを除去した後に、軸受の下方に戻す必要がある。グリース受けに貯留したグリースを除去するためは、回転電機を停止させる必要はなく、回転電機の運転状態においても行われる。
【0006】
運転員等の手や装備などがファンに巻き込まれることを防止するために、外扇の外側には外扇カバーが設けられている。また、外扇カバーは、フレームおよび空気取り入れ側に面した軸受ブラケットの外側に設けられて、例えば、軸受ブラケットおよびフレームとの間で冷却用空気の流路を形成する。外扇カバーには、グリース受けを出し入れする際の通過孔が形成され、通過孔には取外し可能な蓋が取り付けられている(特許文献2)。
【0007】
図7は、外扇型回転電機のグリース受けの取付け部まわりの従来例を示す立断面図である。ここで、グリース受け部材51を取り出す場合、まず、外扇カバー46に設けられた外扇カバー開口蓋46aを取り外し、外扇カバー46内に設けられた本体筐体49へのグリース受け取付け部51bを取り外した後に、グリース受け部材51を外扇カバー46の外に取り出すことになる。
【0008】
グリース受け部材51を本体筐体49内から取り外し、外扇カバー46の外に取り出すために、外扇カバー46内を移動している間は、グリース受け部51aの周囲は外扇により外気取り入れ口から吸い込まれた空気の気流が渦巻いており、グリース受け部51a内のグリースがグリース受け部51aの外に飛散する。
【0009】
また、グリース受け部材51の本体筐体49からの取外し、あるいは、外扇カバー46内のグリース受け部51aの移動は、回転するファンの近傍で行う必要があり、取り扱う者の手や装備がファンに巻き込まれる危険がある。
【0010】
これを防止するために、外扇カバー46内に外扇と隔離するための仕切りを設ける場合、回転電機の軸方向の長さが長くなる、あるいは、製作上の工数が増加する、さらには保守点検時の取り扱いが複雑となるという課題があった。
【0011】
そこで、本発明は、外扇型回転電機において、グリース受けの取り出しおよび取り付けを、安全にかつグリースの飛散なしに行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明に係る外扇型回転電機は、水平回転軸まわりに回転可能に軸支されたロータシャフトと、そのロータシャフトに固定された回転子鉄心とを有する回転子と、前記ロータシャフトの軸方向の前記回転子鉄心を挟んだ位置にそれぞれ配設され、前記ロータシャフトを支持する第1軸受および第2軸受と、前記回転子鉄心の径方向外側に配された固定子と、前記回転子鉄心および前記固定子の径方向外側を包囲し両端が開放された筒状のフレームと、前記フレームの軸方向の両端に固定支持され前記第1軸受および第2軸受をそれぞれ支持する第1の軸受ブラケットおよび第2の軸受ブラケットとを有し、筐体開口部が形成された本体筐体と、前記ロータシャフトの前記第1軸受の軸方向外側に取り付けられて前記第1の軸受ブラケットおよび前記フレームの外側に冷却用空気を送る外扇と、前記外扇の外側を覆うように設けられた外扇カバーと、前記筐体開口部を通して前記本体筐体内に差し込まれて前記第1軸受に供給され前記第1軸受から落下するグリースを前記本体筐体内で受けて前記本体筐体内に貯留するグリース受け部と、前記筐体開口部において前記本体筐体と取外し取付け可能に形成されたグリース受け取付け部とを有するグリース受け部材と、を備え、前記外扇カバーには、前記回転子の回転中に外側から前記グリース受け部材を取外し取付け可能なように当該外扇カバーが前記本体筐体に部分的に密着するように前記筐体開口部に向かってカバー窪み部が形成され、前記カバー窪み部には前記筐体開口部を含む範囲に前記グリース受け部が貫通可能なカバー開口部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外扇型回転電機において、グリース受けの取り出しおよび取り付けを、安全にかつグリースの飛散なしに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係る外扇型回転電機の水平断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る外扇型回転電機の立断面図である。
【
図3】
図2のIII−III線矢視横断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る外扇型回転電機のグリース受け取付け部まわりの外観図である。
【
図6】第2の実施形態に係る外扇型回転電機のグリース受け取付け部近傍の外扇カバーの変形例の立断面図である。
【
図7】外扇型回転電機のグリース受けの取付け部まわりの従来例を示す立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る外扇型回転電機について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る外扇型回転電機の水平断面図である。
図2は、立断面図である。また、
図3は、
図2のIII−III線矢視横断面図である。
【0017】
外扇型回転電機100は、回転子10、固定子30、本体筐体49、第1軸受41a、第2軸受41b、外扇45、外扇カバー46、およびグリース受け部材51を有する。回転子10は、ロータシャフト11と、ロータシャフト11の径方向に設けられた回転子鉄心12を有する。ロータシャフト11は、両端を回転可能に軸支され、水平な軸方向に延びている。回転子鉄心12は、強磁性体製で中央に開口を有する円板状の鋼板が軸方向に積層された積層構造である。
【0018】
固定子30は、回転子10の径方向外側に設けられて、軸方向に延びた円筒状である。固定子30は、固定子鉄心31と固定子巻線32を有する。固定子鉄心31は、強磁性体製で中央に開口を有する円板状の鋼板が軸方向に積層された積層構造である。回転子鉄心12の径方向外側に対向する固定子鉄心31の内側には周方向に互いに間隔をおいて軸方向に延びた図示しないスロットが形成されている。それぞれのスロット内および固定子鉄心31の軸方向の両外側には固定子巻線32が設けられている。
【0019】
第1軸受41aおよび第2軸受41bは、ロータシャフト11の軸方向の両側でロータシャフト11を回転可能に支持している。第1軸受41aおよび第2軸受41bは、たとえば、転がり軸受である。
【0020】
本体筐体49は、フレーム43、第1の軸受ブラケット42aおよび第2の軸受ブラケット42bを有する。フレーム43は、水平方向を軸とする筒状であり、両端が開放されている。第1の軸受ブラケット42aおよび第2の軸受ブラケット42bは、フレーム43の両端を塞ぐように取り付けられている。第1の軸受ブラケット42aは、第1軸受41aを支持している。また、第2の軸受ブラケット42bは、第2軸受41bを支持している。本体筐体49には、グリース受け部材51が貫通する筐体開口部49a(
図5)が形成されている。
【0021】
外扇45は、ロータシャフト11に取り付けられ、ロータシャフト11の回転とともに回転する。外扇45は、第1軸受41aの軸方向の外側、すなわち、第1軸受41aを挟んで回転子鉄心12の反対側に設けられている。外扇45の外側には、外扇を覆うように外扇カバー46が設けられている。外扇カバー46には、外扇45に供給される空気が通るための通風孔47が形成されている。
【0022】
グリース受け部材51は、グリースを貯留するグリース受け部51aと、グリース受け部材51を取り付けるグリース受け取付け部51bを有する。グリース受け部材51は本体筐体49を貫通している。グリース受け部材51は、筐体開口部49aにおいてグリース受け取付け部51bによって本体筐体49に取付け取外し可能に取り付けられている。
【0023】
第1軸受41aの周囲には飛散防止カバー48(
図3)が設けられており、第1軸受41aから周囲にグリースが飛散するのを防止している。また、飛散防止カバー48の下部は開放されており、第1軸受41aから落下するグリースは下方に落ちるようになっている。第2軸受41bについても図示しないが同様である。
【0024】
グリース受け部51aは、第1軸受41aから落下するグリースを受けとめられるように、筐体開口部49aの位置から本体筐体49の内部の第1軸受41aの下方まで延びている。グリース受け部51aは、上方から落下するグリースを受け止められるように上部が開放されている。また、グリース受け部51aは、グリースを貯留できるよう底部および側部を有する形状となっている。
【0025】
図4は、第1の実施形態に係る外扇型回転電機のグリース受け取付け部の外観図である。また、
図5は、
図4のV−V線矢視立断面図である。外扇カバー46には、カバー窪み部53およびカバー開口部54が形成されている。
【0026】
外扇カバー46には、筐体開口部49aに取り付けられたグリース受け部材51のグリース受け取付け部51bを含む範囲にカバー開口部54が形成されている。また、外扇カバー46のカバー窪み部53は、カバー開口部54に向かって窪んでおり、その端部は本体筐体49の表面に密着している。なお、密着度は無漏えい状態である必要はない。すなわち、外扇45により送られる空気がカバー窪み部53と本体筐体49の表面との間から漏えいする量はゼロでなくともよい。グリース受け部材51を本体筐体49から引き抜く際に、この漏えいする空気によってグリース受け部51a内のグリースが吹き飛ばされない程度であれば、空気が漏えいしていてもよい。
【0027】
以上のように構成された本実施形態における外扇型回転電機100において、グリース受け部材51の取外しの際は、外扇カバー46にカバー窪み部53が形成されていることから、外扇カバー46の一部を外すなどを行わずとも、そのままの状態でグリース受け取付け部51bを取り扱うことができる。
【0028】
グリース受け取付け部51bで本体筐体49からグリース受け部材51を外したら、グリース受け部材51を本体筐体49の外側に引き出すことができる。この際、本体筐体49と外扇カバー46間の空気の流れは、本体筐体49とカバー窪み部53間から漏えいしてもグリース受け部51a内のグリースを吹き飛ばす勢いはない。また、グリース受け部材51の引き出しの際、作業者の手や装備が外扇45に触れる可能性はない。
【0029】
以上のように、本実施形態によれば、外扇型回転電機100において、グリース受け部材51の取り出しおよび取り付けを、安全にかつグリースの飛散なしに行うことができる。
【0030】
[第2の実施形態]
図6は、第2の実施形態に係る外扇型回転電機のグリース受け取付け部近傍の外扇カバーの変形例の立断面図である。本実施形態は、第1の実施形態の変形である。本第2の実施形態においては、外扇カバー60は、第1のカバー部材61とそれ以外の部分である第2のカバー部材62とを有する。第1のカバー部材61は、第2のカバー部材62から取外し、また第2のカバー部材62に取付け可能に形成されている。第1のカバー部材61と第2のカバー部材62とには対応する位置に図示しないボルト穴が形成され、蝶ボルト61cで結合されている。なお、結合方法は、蝶ボルトには限らず、たとえば、ばねなどを用いた嵌めあい方式など、他の方法でもよい。
【0031】
第1の実施形態と同様に、第1のカバー部材61は、カバー窪み部61aおよびカバー開口部61bを有する。カバー開口部61bは、筐体開口部49aに取り付けられたグリース受け部材51のグリース受け取付け部51bを含む範囲に形成されている。また、カバー窪み部61aは、カバー開口部61bに向かって窪んでおり、その端部は本体筐体49の表面に密着している。
【0032】
以上のように構成された本実施形態における外扇型回転電機100において、グリース受け部材51の取り出しおよび取外しは、第1の実施形態と同様に、安全にかつグリースの飛散なしに行うことができる。
【0033】
また、外扇カバー60を本体筐体49から取り外す必要が生じた場合で、グリース受け部51aは、グリースを受ける状態を維持したい場合などがあり得る。このような場合に、グリース受け部材51のグリース受け取付け部51bとカバー窪み部61aとが干渉していずれかが損傷する恐れがある。
【0034】
本実施形態においては、外扇カバー60を本体筐体49から取り外す必要が生じた場合、第1のカバー部材61を取り外すのみで、グリース受け部材51を取り外すことなしに、干渉なしに外扇カバー60を取り外すことが可能となる。特に、外扇全閉型回転電機のように、本体筐体が全閉式の場合は、グリース受け部材を取り外すことは全閉状態を崩すことになり好ましくない。このような場合に、グリース受け部材51を取り外すことなしに、干渉なしに外扇カバー60を取り外しが可能であることは、大きなメリットがある。
【0035】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0036】
さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0037】
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0038】
10…回転子、11…ロータシャフト、12…回転子鉄心、30…固定子、31…固定子鉄心、32…固定子巻線、41a…第1軸受、41b…第2軸受、42a…第1の軸受ブラケット、42b…第2の軸受ブラケット、43…フレーム、45…外扇、46…外扇カバー、46a…外扇カバー開口蓋、47…通風孔、48…飛散防止カバー、49…本体筐体、49a…筐体開口部、51…グリース受け部材、51a…グリース受け部、51b…グリース受け取付け部、53…カバー窪み部、54…カバー開口部、60…外扇カバー、61…第1のカバー部材、61a…カバー窪み部、61b…カバー開口部、61c…蝶ボルト、62…第2のカバー部材、100…外扇型回転電機