特許第6013429号(P6013429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6013429カシメまたはホックを取り外すための工具キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013429
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】カシメまたはホックを取り外すための工具キット
(51)【国際特許分類】
   B25B 27/02 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   B25B27/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-226478(P2014-226478)
(22)【出願日】2014年11月6日
(65)【公開番号】特開2016-87754(P2016-87754A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2015年9月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】712006651
【氏名又は名称】株式会社川崎屋
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】上 田 信 二
(72)【発明者】
【氏名】上 田 総一郎
(72)【発明者】
【氏名】寺 内 純 子
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平2−205484(JP,A)
【文献】 実開平7−17475(JP,U)
【文献】 米国特許第4700500(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0180287(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 25/00 − 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象部品に取り付けられたカシメまたはホックの芯部を打ち突いて当該カシメまたはホックを破壊することで、当該カシメまたはホックを前記対象部品から取り外すための工具キットであって、
カシメまたはホックの芯部を打ち突くための棒状部材と、
カシメまたはホックが取り付けられた対象部品を載置するための土台部材と、
を備え、
前記土台部材には、カシメまたはホックの芯部を棒状部材によって打ち突く際の逃げ部となる穴部が少なくとも2種類設けられている
ことを特徴とする工具キット。
【請求項2】
前記棒状部材は、長さが6cm〜15cmであり、
前記土台部材は、厚みが0.5cm〜2.0cmであり、
前記穴部の一つは、径0.5cm〜1.3cmの円形穴部であり、
前記穴部の他の一つは、径1.3cm〜2.0cmの円形穴部である
ことを特徴とする請求項1に記載の工具キット。
【請求項3】
前記穴部は、少なくとも5種類設けられていて、
前記穴部の一つは、径0.6cm〜1.0cmの円形穴部であり、
前記穴部の他の一つは、径0.8cm〜1.2cmの円形穴部であり、
前記穴部の更に他の一つは、径1.0cm〜1.4cmの円形穴部であり、
前記穴部の更に他の一つは、径1.2cm〜1.6cmの円形穴部であり、
前記穴部の更に他の一つは、径1.4cm〜1.8cmの円形穴部である
ことを特徴とする請求項2に記載の工具キット。
【請求項4】
前記棒状部材は、長さが10cm〜15cmであり、
前記土台部材は、長さが3cm〜15cmであり、幅が3.0cm〜6.0cmである
ことを特徴とする請求項2または3に記載の工具キット。
【請求項5】
前記棒状部材は、金属製であり、
前記土台部材は、樹脂製である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の工具キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象部品に取り付けられたカシメまたはホックを当該対象部品から取り外すための工具キットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、革部品や布部品やビニル部品等であり得る複数枚の対象部品を重ねた状態に固定する際、当該複数枚の対象部品を穿孔して、それらの孔にカシメと呼ばれる金具を挿入して固定することが幅広く利用されている。カシメと呼ばれる金具は、複数枚の対象部品の孔に挿入された後、押圧変形されることで、当該複数枚の対象部品を重ねた状態に固定する。
【0003】
図1は、カシメと呼ばれる金具の概略斜視図である。図1に示すように、カシメと呼ばれる金具10は、軸心方向に延びる突芯部11を有する下金具12と、突芯部11を受容するための中空筒部13を有する上金具14と、からなっている。
【0004】
図2に示すように、例えば2枚の対象部品としての革部品を重ねた状態に固定する際、当該2枚の革部品が穿孔されて、それらの孔にカシメと呼ばれる金具10が挿入される。具体的には、2枚の革部品の孔の裏側に、突芯部11を上向きにした下金具12が載置され、2枚の革部品の孔の表側から、中空筒部13を下向きにした上金具14が挿入されて、突芯部11と中空筒部13とが係合される。
【0005】
その後、上金具14をトンカチ等で叩打することにより、上金具14と下金具12との間の距離が2枚の革部品の厚さに整えられると共に、突芯部11と中空筒部13とが変形されることで両者の係合状態が半永久的に維持される。
【0006】
以上のようなカシメ10を用いた革部品の固定は、革製品を作成する人々に、幅広く利用されている。
【0007】
しかしながら、何らかの理由で、一旦取り付けたカシメ10を革部品から取り外したい場合がある。例えば、カシメ10のサイズ、色、模様等を間違えた場合や、上金具14をトンカチ等で叩打する作業時にカシメ10が不所望に不細工に変形してしまった場合である。
【0008】
こういった時、従来は、クイキリまたはニッパを用いてカシメ10を取り外していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、クイキリまたはニッパを用いてカシメ10を取り外す作業は、極めて面倒である。
【0010】
本件発明者は、鋭意検討を重ねるうち、革部品等の対象部品に取り付けられたカシメの芯部を打ち突いて当該カシメを破壊することで、当該カシメを前記革部品等の対象部品から取り外すことができるという知見を得た。また、当該知見は、カシメのみならず、ホックにも適用できる。
【0011】
本発明は、以上の知見に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、クイキリまたはニッパを用いることなく、革部品等の対象部品に取り付けられたカシメまたはホックを当該革部品等の対象部品から取り外すことができる工具キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、対象部品に取り付けられたカシメまたはホックの芯部を打ち突いて当該カシメまたはホックを破壊することで、当該カシメまたはホックを前記対象部品から取り外すための工具キットであって、カシメまたはホックの芯部を打ち突くための棒状部材と、カシメまたはホックが取り付けられた対象部品を載置するための土台部材と、を備え、前記土台部材には、カシメまたはホックの芯部を棒状部材によって打ち突く際の逃げ部となる穴部が少なくとも2種類設けられていることを特徴とする工具キットである。
【0013】
本発明によれば、対象部品に取り付けられたカシメまたはホックの芯部を打ち突いて当該カシメまたはホックを破壊することで、当該カシメまたはホックを前記対象部品から取り外すことができるため、クイキリまたはニッパを用いた面倒な作業から開放される。また、カシメまたはホックの芯部を棒状部材によって打ち突く際の逃げ部となる穴部が少なくとも2種類設けられた土台部材が用意されたことにより、カシメまたはホックのサイズに応じて、棒状部材による打ち突きの作業を極めて容易に行うことができる。
【0014】
打ち突き作業にとって好適なサイズとして、棒状部材は、長さが6cm〜15cmであり、土台部材は、厚みが0.5cm〜2.0cmである。また、2種類の穴部としては、例えば、穴部の一つは、径0.5cm〜1.3cmの円形穴部であり、穴部の他の一つは、径1.3cm〜2.0cmの円形穴部である。
【0015】
本件発明者の試作品においては、前記穴部は、5種類設けられている。そして、好適なサイズとして、穴部の一つは、径0.6cm〜1.0cmの円形穴部であり、穴部の他の一つは、径0.8cm〜1.2cmの円形穴部であり、穴部の更に他の一つは、径1.0cm〜1.4cmの円形穴部であり、穴部の更に他の一つは、径1.2cm〜1.6cmの円形穴部であり、穴部の更に他の一つは、径1.4cm〜1.8cmの円形穴部である。
【0016】
また、保存ないし収納あるいは販売時のレイアウトにとって好適なサイズとして、棒状部材は、長さが10cm〜15cmであり、土台部材は、長さが3cm〜15cmであり、幅が3.0cm〜6.0cmである。また、一般的には、棒状部材は、金属製であり、土台部材は、樹脂製である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、対象部品に取り付けられたカシメまたはホックの芯部を打ち突いて当該カシメまたはホックを破壊することで、当該カシメまたはホックを前記対象部品から取り外すことができるため、クイキリまたはニッパを用いた面倒な作業から開放される。また、カシメまたはホックの芯部を棒状部材によって打ち突く際の逃げ部となる穴部が少なくとも2種類設けられた土台部材が用意されたことにより、カシメまたはホックのサイズに応じて、棒状部材による打ち突きの作業を極めて容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】カシメと呼ばれる金具の概略斜視図である。
図2】カシメによって固定された状態の2枚の革部品を示す概略斜視図である。
図3】本発明の一実施の形態による工具キットの棒状部材を示す概略斜視図である。
図4】本発明の一実施の形態による工具キットの土台部材を示す概略斜視図である。
図5】打ち突きによって破壊されたカシメを示す概略斜視図である。
図6】打ち突きによって破壊されたカシメの他の例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
図3は、本発明の一実施の形態による工具キット50の棒状部材30を示す概略斜視図であり、図4は、本発明の一実施の形態による工具キット50の土台部材40を示す概略斜視図である。
【0021】
本実施の形態の工具キット50は、図3に示す棒状部材30と、図4に示す土台部材40とからなるキットである。
【0022】
図3に示すように、本実施の形態の棒状部材30は、全体の長さが13.5cmであり、先端側の4cmの部分31が直径2mmの細い円筒形状となっている。当該部分31は、長さ1cmの拡径部32を経て、長さ6.5cmの断面正八角形状の把持部33を経て、長さ1cmの縮径部34に至っている。本実施の形態の棒状部材30は、全体がステンレススチールで構成されている。
【0023】
一方、図4に示すように、本実施の形態の土台部材40は、厚みが1.0cmであり、長さが12.0cmであり、幅が4.8cmである。4つのコーナー部は、角丸めされている。そして、本実施の形態の土台部材40には、カシメ10またはホックの芯部を棒状部材30によって打ち突く際の逃げ部となる穴部が、5種類設けられている。
【0024】
第1穴部41は、径0.8cmの円形穴部であり、第2穴部42は、径1.0cmの円形穴部であり、第3穴部43は、径1.2cmの円形穴部であり、第4穴部44は、径1.4cmの円形穴部であり、第5穴部45は、径1.6cmの円形穴部である。第1穴部41〜第5穴部45は、図4に示すように、互いに間隔を空けて、長さ方向に1列に並ぶように設けられている。
【0025】
次に、以上のような本実施の形態の作用について説明する。
【0026】
図2を用いて説明したように、例えば2枚の対象部品である革部品を重ねた状態に固定する際、当該2枚の革部品が穿孔されて、それらの孔にカシメ10が挿入される。具体的には、重ねられた2枚の革部品の孔の裏側に、突芯部11を上向きにした下金具12が載置され、2枚の革部品の孔の表側から、中空筒部13を下向きにした上金具14が挿入されて、突芯部11と中空筒部13とが係合される。そして、上金具14をトンカチ等で叩打することにより、上金具14と下金具12との間の距離が2枚の革部品の厚さに整えられ、突芯部11と中空筒部13とが変形されて、両者の係合状態が半永久的に維持される。本実施の形態の工具キット50は、このように一旦取り付けたカシメ10を、何らかの理由で革部品から取り外したい場合に用いられる。
【0027】
まず、取り外したいカシメ10が当該カシメ10のサイズに適合する土台部材40の穴部の上に位置するように、革部品が土台部材40の上に載置される。そして、取り外したいカシメ10の芯部、すなわち、突芯部11及び中空筒部13が存在するカシメ10の中心部に対応する上金具14の上面に、棒状部材30の先端が押し当てられる。
【0028】
当該押し当て状態を維持しつつ、棒状部材30を把持部33にて把持して、棒状部材30の頭部をトンカチ等で強く叩打する。これにより、上金具14の中空筒部13と下金具12の突芯部11とが一体となって変形し、中空筒部13を含む上金具14の中心部が上金具14の残部から分離され、上金具14は図5に示すように破壊される。あるいは、上金具14の中空筒部13の内側領域と下金具12の突芯部11とが一体となって変形し、中空筒部13の内側領域が上金具14の残部から分離され、上金具14は図6に示すように破壊される。このようにして、下金具12と上金具14との係合状態が解消し、取り外したいカシメ10を革部品から容易に取り除くことができる。
【0029】
なお、カシメ10のサイズに適合する土台部材40の穴部というのは、トンカチ等による強い叩打を受ける際に、カシメ10の中空筒部13を含む上金具14の中心部が上金具14の残部から分離されるのに十分な力が有効にカシメ10に伝達されるべく、必要以上に過大でない大きさを有する穴部であり、作業者によって、第1穴部41乃至第5穴部45から適宜に選択される。
【0030】
以上のように、本実施の形態によれば、革部品に取り付けられたカシメ10の芯部を打ち突いて当該カシメ10の上金具14を破壊することで、当該カシメ10を革部品から容易に取り外すことができる。このため、クイキリまたはニッパを用いた面倒な作業から開放される。また、カシメ10の芯部を棒状部材30によって打ち突く際の逃げ部となる穴部が5種類も設けられているため、カシメ10のサイズに応じて、棒状部材30による打ち突きの作業を極めて容易に行うことができる。
【0031】
本実施の形態の工具キット50は、革部品等の対象部品に取り付けたホックを、何らかの理由で当該革部品等の対象部品から取り外したい場合にも用いられ得る。この場合も、革部品等の対象部品に取り付けられたホックの芯部を打ち突いて当該ホックの上金具を破壊することで、当該ホックを革部品等の対象部品から容易に取り外すことができる。また、ホックの芯部を棒状部材30によって打ち突く際の逃げ部となる穴部が5種類も設けられているため、ホックのサイズに応じて、棒状部材30による打ち突きの作業を極めて容易に行うことができる。
【0032】
なお、本実施の形態の棒状部材30及び土台部材40のサイズは、単なる一例に過ぎないが、打ち突き作業にとって好適なサイズとしては、棒状部材30は、長さが6cm〜15cmであり、土台部材40は、厚みが0.5cm〜2.0cmである。また、第1穴部41乃至第5穴部45についても、それぞれ、径0.6cm〜1.0cmの円形穴部、径0.8cm〜1.2cmの円形穴部、径1.0cm〜1.4cmの円形穴部、径1.2cm〜1.6cmの円形穴部、径1.4cm〜1.8cmの円形穴部であり得る。
【0033】
穴部の種類数は、5種類に限定されない。少なくとも2種類の穴部が設けられ、例えば、穴部の一つは、径0.5cm〜1.3cmの円形穴部であり、穴部の他の一つは、径1.3cm〜2.0cmの円形穴部であればよい。
【0034】
また、保存ないし収納あるいは販売時のレイアウトにとって好適なサイズとして、棒状部材30は、長さが10cm〜15cmであり、土台部材40は、長さが3cm〜15cmであり、幅が3.0cm〜6.0cmである。
【0035】
また、強度とコストとの観点から、棒状部材30は金属製であることが好ましく、土台部材40は樹脂製であることが好ましいが、それぞれ他の材料も採用され得る。
【符号の説明】
【0036】
10 カシメ(と呼ばれる金具)
11 突芯部
12 下金具
13 中空筒部
14 上金具
30 棒状部材
31 先端部分
32 拡径部
33 把持部
34 縮径部
40 土台部材
41 第1穴部(径0.8cmの円形穴部)
42 第2穴部(径1.0cmの円形穴部)
43 第3穴部(径1.2cmの円形穴部)
44 第4穴部(径1.4cmの円形穴部)
45 第5穴部(径1.6cmの円形穴部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6