特許第6013457号(P6013457)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013457
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】横置型膜ろ過装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20161011BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   C02F1/44 C
   B01D65/02 520
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-507981(P2014-507981)
(86)(22)【出願日】2013年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2013059116
(87)【国際公開番号】WO2013146936
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2015年11月17日
(31)【優先権主張番号】特願2012-72185(P2012-72185)
(32)【優先日】2012年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】塚本 純平
(72)【発明者】
【氏名】坂田 眞一
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−136777(JP,A)
【文献】 実開平04−098401(JP,U)
【文献】 米国特許第05494577(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
C02F 3/12− 3/34
C02F 9/00− 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜モジュールと、前記膜モジュール内に原水を流入させる流入管とを備え、前記原水が前記膜モジュールの膜エレメントに係る流路内を略水平方向に流通する横置型膜ろ過装置であって、
前記膜エレメントの端面の直前の流路区間において前記膜エレメントの端面に対して所定距離を空けて配設されて前記膜エレメントに係る流路全体を覆うとともに鉛直方向に沿うように配列された複数の棚板を有する棚状部材と、棚状部材に係る流路の底部に設けられた気体供給口を通じて前記膜エレメントを洗浄するための気体を原水中に供給する気体供給手段と、からなる散気装置を有し、
前記棚状部材は、前記状部材の鉛直方向に沿った最下位置に係る棚板が、前記気体供給口から吹き出された空気を所定の比率で前記棚状部材および前記膜エレメントの端面の隙間を通じて前記膜エレメントの端面の下側領域に係る流路に押し込まれることとなる空気と、前記棚状部材の手前側から廻り込むようにして余りの前記膜エレメントの端面の上側領域に係る流路に押し込まれることとなる空気とに散らすように、前記膜エレメントの端面側に向かって鉛直上方向に傾斜している
ことを特徴とする横置型膜ろ過装置。
【請求項2】
前記棚状部材は、前記棚状部材の最下位置に係る棚板より上側に係る棚板が、前記最下位置に係る棚板によって前記棚状部材における前記原水の流れ方向の手前側から廻り込むこととなった空気が前記棚状部材に係る流路に流入する際の流入方向に沿うように前記膜エレメントの端面側に向かって鉛直上方向に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の横置型膜ろ過装置。
【請求項3】
前記気体供給手段が、前記棚状部材に係る流路の底部両側であって上下に隣り合う棚板の間に設けられた一対の気体供給口をさらに有し、前記一対の気体供給口を通じて前記膜エレメントを洗浄するための気体を原水中にさらに供給可能に構成され、前記棚状部材が、前記棚状部材の鉛直方向上下に隣り合う棚板のうちの上側に係る棚板が、前記気体供給口から吹き出された空気を所定の比率で前記棚状部材および前記膜エレメントの端面の前記隙間を通じて前記膜エレメントの端面の両側下領域に係る流路に押し込まれることとなる空気と、前記棚状部材における原水の流れ方向に沿った手前側から廻り込むようにして余りの前記膜エレメントの端面の両側上領域に係る流路に押し込まれることとなる空気とに散らすように、前記膜エレメントの端面側に向かって鉛直上方向に傾斜していることを特徴とする請求項1または2に記載の横置型膜ろ過装置。
【請求項4】
前記流入管が前記膜エレメントのケーシング側の端部に第1のフランジを有し、前記ケーシングが前記流入管側の端部に第2のフランジを有し、前記散気装置は、前記第1のフランジと前記第2のフランジとの間に挟み付けられるように前記流入管および前記ケーシングに取り付けられることにより前記直前の流路区間の一部を構成するとともに複数の棚板を支持するアダプタ部材を有し、前記アダプタ部材に前記気体供給口および前記気体供給口に連通する気体供給路が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の横置型膜ろ過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック等の膜エレメントにおけるファウリング物質を除去するための散気装置を取り付けた横置型膜ろ過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排水の活性汚泥処理は、曝気槽内で排水中のBOD(Biochemical Oxygen Demand:生物化学的酸素要求量)を活性汚泥に摂取させ、沈殿槽内で曝気槽からの処理水を重力沈降によって固液分離し、上澄み水を処理水として取り出す処理である。ところが、重力沈降を利用した固液分離処理は、多くの時間を必要とし、また槽内水質によってはバルキング(汚泥膨化)により固液分離を行うことが不可能になる場合がある。
【0003】
このような背景から、曝気槽の排水中にセラミック等の膜エレメントをケーシング内に装填してなる膜モジュールを浸漬し、曝気槽内の排水を直接ろ過して固液分離を行う浸漬型膜分離活性汚泥法が提案されている(特許文献1参照)。この方法によれば、多くの時間を要することなく、かつ、槽内水質に拘わらず固液分離を行うことができる。ところが、この方法では、膜モジュールが曝気槽内の排水中に浸漬されているために、膜モジュールのメンテナンスにおいて曝気槽内の水を全量抜く必要があるなどの多くの労力を要する。
【0004】
そこで、近年、曝気槽の外部に設置された膜モジュールを利用して曝気槽内の排水をクロスフローろ過する方法が提案されている。この方法では、ポンプを利用して曝気槽内の排水を外部に設置された膜モジュールに供給し、膜モジュールで排水をクロスフローろ過し、膜エレメントに係る流路内周面として形成される膜面を透過したろ過水を処理水として取り出す一方、膜面を透過しなかった排水を濃縮水として曝気槽に返送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−333490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、膜モジュールを用いて排水をろ過する場合、運転時間の経過に伴いファウリング(膜の目詰まり)が発生する。ファウリングが発生した場合、膜モジュールの洗浄や交換が必要になるために、ファウリングの発生をできるだけ抑制することが望ましい。そこで、本発明者らは、膜モジュールに供給される排水中に空気を混入させることによって、排水中の空気のせん断力により膜面に付着したファウリング物質を除去する方法の検討を行った。
【0007】
この検討の結果、本発明者らは、この方法は、膜モジュールに対する排水の供給方向が鉛直方向に対し平行、換言すれば膜面が鉛直方向に対し平行である場合は有効である一方、排水の供給方向が水平方向に対し略平行、換言すれば膜面が水平方向に対し略平行である場合には不具合を伴うことを知見した。すなわち、本発明者らは、膜モジュールに対する排水の供給方向が水平方向に対し略平行である場合、排水の配管の上部側に空気が偏り、膜エレメントの端面全体に亘って均等に空気を供給できないことを知見した。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、膜エレメントの端面全体に亘って均等に空気を供給可能な膜モジュールが設置された横置型膜ろ過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決し、目的を達成するために、膜モジュールと、膜モジュール内に原水を流入させる流入管とを備え、原水が膜モジュールの膜エレメントに係る流路内を略水平方向に流通する横置型膜ろ過装置であって、膜エレメントの端面の直前の流路区間において膜エレメントの端面に対して所定距離を空けて配設されて膜エレメントに係る流路全体を覆うとともに鉛直方向に沿うように配列された複数の棚板を有する棚状部材と、棚状部材に係る流路の底部に設けられた気体供給口を通じて膜エレメントを洗浄するための気体を原水中に供給する気体供給手段と、からなる散気装置を有し、棚状部材は、状部材の鉛直方向に沿った最下位置に係る棚板が、気体供給口から吹き出された空気を所定の比率で棚状部材および膜エレメントの端面の隙間を通じて膜エレメントの端面の下側領域に係る流路に押し込まれることとなる空気と、棚状部材の手前側から廻り込むようにして余りの膜エレメントの端面の上側領域に係る流路に押し込まれることとなる空気とに散らすように、膜エレメントの端面側に向かって鉛直上方向に傾斜していることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る横置型膜ろ過装置は、上記の発明において、棚状部材は、棚状部材の最下位置に係る棚板より上側に係る棚板が、最下位置に係る棚板によって棚状部材における原水の流れ方向の手前側から廻り込むこととなった空気が棚状部材に係る流路に流入する際の流入方向に沿うように膜エレメントの端面側に向かって鉛直上方向に傾斜していることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る横置型膜ろ過装置は、上記の発明において、気体供給手段が、棚状部材に係る流路の底部両側であって上下に隣り合う棚板の間に設けられた一対の気体供給口をさらに有し、一対の気体供給口を通じて膜エレメントを洗浄するための気体を原水中にさらに供給可能に構成され、棚状部材が、棚状部材の鉛直方向上下に隣り合う棚板のうちの上側に係る棚板が、気体供給口から吹き出された空気を所定の比率で棚状部材および膜エレメントの端面の隙間を通じて膜エレメントの端面の両側下領域に係る流路に押し込まれることとなる空気と、棚状部材における原水の流れ方向に沿った手前側から廻り込むようにして余りの膜エレメントの端面の両側上領域に係る流路に押し込まれることとなる空気とに散らすように、膜エレメントの端面側に向かって鉛直上方向に傾斜していることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る横置型膜ろ過装置は、上記の発明において、流入管が膜エレメントのケーシング側の端部に第1のフランジを有し、ケーシングが流入管側の端部に第2のフランジを有し、散気装置は、第1のフランジと第2のフランジとの間に挟み付けられるように流入管およびケーシングに取り付けられることにより直前の流路区間の一部を構成するとともに複数の棚板を支持するアダプタ部材を有し、アダプタ部材に気体供給口および気体供給口に連通する気体供給路が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る横置型膜ろ過装置によれば、横置型膜ろ過装置に設けられる膜モジュールの膜エレメントの端面全体に亘って均等に空気を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態である横置型膜ろ過装置が適用される膜ろ過システムの構成を示す模式図である。
図2図2は、本発明の一実施形態である散気装置の原水流入面側および側面の構成を示す図である。
図3A図3Aは、空気供給口から供給された空気の作用を説明するための概念図である。
図3B図3Bは、空気供給口から供給された空気の作用を説明するための概念図である。
図4A図4Aは、空気供給口から供給された空気の作用を説明するための概念図である。
図4B図4Bは、空気供給口から供給された空気の作用を説明するための概念図である。
図5A図5Aは、散気装置の原水の流入側からみた、空気の移動状態を説明するための平面図である。
図5B図5Bは、すべての空気供給口から供給された空気の作用を説明するための図3Bおよび図4Bを重ねた状態の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。
【0016】
〔膜ろ過システムの構成〕
まず、本発明の一実施形態による横置型膜ろ過装置について説明する。図1は、本発明の一実施形態である横置型膜ろ過装置が適用される膜ろ過システムの構成を示す模式図である。
【0017】
図1に示すように、この一実施形態による横置型膜ろ過装置が適用される膜ろ過システム100は、下水、し尿、工場排水等の原水が供給され、気体としての空気を原水中に曝気させる散気部1aを有する曝気槽1と、曝気槽1からの原水をクロスフローろ過する横置型膜ろ過装置2とを備える。
【0018】
この横置型膜ろ過装置2は、膜モジュールとしてのセラミック膜モジュール3と、セラミック膜モジュール3の原水の流入側に連結された散気装置10と、曝気槽1からの原水をポンプ4によりセラミック膜モジュール3内に流入させる流入管5と、セラミック膜モジュール3から流出した濃縮水を曝気槽1に返送させる返送管6と、散気装置10に気体としての空気を供給する空気ポンプ装置12とを備え、原水がセラミック膜モジュール3のセラミック膜エレメント3aに係る流路内を略水平方向に流通するものである。膜モジュールとしては、原水の流入口、ろ過水の取出口及び濃縮水の流出口を有するケーシング内に膜エレメントを装填してなるものであればよく、装填される膜の形式や材質を問わないが、例えば、円柱形状の多孔質セラミック体に形成された内径が1.0〜10mmの範囲内にある貫通孔の内周面を細孔径が0.1μmの緻密なろ過膜としたモノリス型セラミック膜やチューブラー型セラミック膜のほか、チューブラー型高分子膜等を用いることが好ましい。
【0019】
この膜ろ過システム100では、曝気槽1内の原水に散気部1aから空気が供給され、有機分を含む原水は曝気槽1内で活性汚泥処理される。また、曝気槽1内の原水の一部は、ポンプ4によって散気装置10の設置側からセラミック膜モジュール3に供給される。セラミック膜モジュール3におけるセラミック膜エレメント3aに係る流路の膜面を透過したろ過水は処理水として取り出され、膜面を透過しなかった濃縮水は返送管6を通じて曝気槽1に返送される。
【0020】
このような構成を有する膜ろ過システム100は、ファウリングを抑制するための気体としての空気をセラミック膜モジュール3におけるセラミック膜エレメント3aの端面である原水流入面の全体に亘って均等に供給するために、セラミック膜モジュール3の原水流入側に散気装置10を備える。以下、図2図3A図3B図4A図4B図5A、および図5Bを参照して、この散気装置10の構成および作用について説明する。
【0021】
〔散気装置10の構成〕
まず、図2を参照して、本発明の一実施形態である散気装置の構成について説明する。図2は、本発明の一実施形態による散気装置、具体的には、主として棚状部材およびアダプタ部材の原水流入面側(a)および側面側(b)の構成を示す図である。また、図3Aおよび図4Aはいずれも、空気供給口から供給された空気の挙動および作用を説明するための断面状の概念図である。
【0022】
図2図3A、および図4Aに示すように、本発明の一実施形態である散気装置10は、セラミック膜エレメント3aの原水流入面の直前の流路区間において、セラミック膜エレメント3aの原水流入面に対して所定距離を空けて配設される棚状部材11と、棚状部材11に係る流路の底部に設けられた気体供給口としての空気供給口12a,12b,12cを通じてセラミック膜エレメント3aを洗浄するための気体を原水中に供給する気体供給手段としての空気ポンプ装置12とを備える。ここで、直前の流路区間は、気体供給口から吹き出され棚状部材11により前後に散らされた空気のうち前側の空気が棚状部材11の手前側から廻り込むようにして、層流状態が維持され乱流状態が生じないようして、円滑に棚状部材11に係る流路内に進入することが可能になるように、棚状部材11の手前側に十分な空間が確保されていることが必要である。具体的には、セラミック膜エレメント3aの原水流入面から棚状部材11の手前側に至るまでケーシング3bの流入口における内空横断面形状・寸法に連続形成されていることが好ましい。なお、散気装置10における棚状部材11の配置位置は、原水の流速と後述する空気の上昇速度とによって決定される。
【0023】
棚状部材11は、セラミック膜エレメント3aに係る流路全体を覆うような正面視で略円板形状に形成され、鉛直方向に配列された金属製の複数の棚板11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11h,11iを有する。複数の棚板11a〜11iは、原水の流入側から流出側に向かって、原水の流入方向(水平方向)に対して鉛直上方向に0°より大きく20°以下、具体的には例えば10°程度傾斜している。すなわち、複数の棚板11a〜11iは、セラミック膜エレメント3aの原水流入面側に向かって鉛直上方向に0°より大きく20°以下の範囲で傾斜している。なお、この一実施形態においては、鉛直方向最上部の棚板11aの原水流入側位置と円板形状の多孔質材料の周縁部との間の距離xは、鉛直方向最下部の棚板11iの原水流入側位置と円板形状の多孔質材料の周縁部との間の距離yよりも長く設定されている。また、棚状部材11は、流入管5がセラミック膜エレメント3aのケーシング3b側の端部に有する第1のフランジとしてのフランジ5aとケーシング3bが流入管側の端部に第2のフランジとしてのフランジ3cとの間に挟み付けられるように流入管5およびケーシング3bに取り付けられることで直前の流路区間の一部を構成するとともに複数の棚板11a〜11iを支持するアダプタ部材13を有する。
【0024】
このアダプタ部材13は、矩形形状の金属部材(例えば圧延鋼材SS400等)によって構成される。アダプタ部材13の中心部には円形状の貫通孔13aが形成され、この貫通孔13aが直前の流路区間の一部を構成する。また、アダプタ部材13は、セラミック膜モジュール3におけるセラミック膜エレメント3aの原水流入面を略覆うことができる大きさの正面視で略円板形状に形成される棚状部材11を支持している。さらに、アダプタ部材13の貫通孔13aの底部には、アダプタ部材13の底面部から貫通孔13aの周縁部に向けて空気を供給するための第1の気体供給口としての空気供給口12aおよびこれに連通する空気供給路が設けられている。アダプタ部材13の貫通孔13aの底部両側には、アダプタ部材13の両側面の下部から貫通孔13aの周縁部に向けて空気を供給するための、一対の第2の気体供給口としての空気供給口12b,12cおよびこれらに連通する一対の空気供給路が設けられている。
【0025】
〔散気部材の作用〕
次に、図3A図5Bを参照して、この一実施形態による散気装置10によって生じる空気の挙動および作用について説明する。なお、空気の挙動および作用は、空気供給口12aから供給された空気の挙動および作用と、空気供給口12b,12cから供給された空気の挙動および作用とに分けて説明する。
【0026】
まず、図3A図3Bおよび図5Aを参照して、空気供給口12aから供給された空気の挙動および作用について説明する。図3Aおよび図3Bはいずれも、空気供給口12aから供給された空気の挙動および作用を説明するための概念図であり、図3Aは、セラミック膜モジュール3の側面側から、図3Bは、セラミック膜モジュール3の原水流入側からの図である。また、図5Aは、散気装置の原水の流入側からの空気の流れを示す概念図である。
【0027】
図3Aに示すように、セラミック膜モジュール3は、散気装置10との接続側に第2のフランジとしてのフランジ3cが形成されたケーシング3bの内部に、セラミック膜エレメント3aが嵌入されて構成されている。また、曝気槽1からセラミック膜モジュール3に原水を供給するための流入管5においても、散気装置10との接続側に第1のフランジとしてのフランジ5aが形成されている。そして、セラミック膜モジュール3と流入管5とは、それらのフランジ3c,5aが散気装置10におけるアダプタ部材13を介して、例えばボルト(図示せず)などにより固定されて連結されている。これにより、セラミック膜モジュール3に対する原水の供給方向が水平方向に対し略平行、換言するとセラミック膜エレメント3aの膜面が水平方向に対し略平行になる。また、曝気槽1から供給された原水は、流入管5に係る流路から散気装置10の棚状部材11に係る流路を通過してセラミック膜エレメント3aに係る流路内を略水平方向に流通する。
【0028】
ここで、セラミック膜エレメント3aの原水流入面は、棚状部材11のセラミック膜モジュール3側の側縁部との間において所定のクリアランス空間Cを形成している。また、セラミック膜エレメント3aの原水流入面のうち少なくとも流路に係る領域は、散気装置10における棚状部材11によって略覆われた状態になっている。すなわち、散気装置10は、そのアダプタ部材13における所定の方向である棚板11a〜11iの配列方向に平行な面が、セラミック膜エレメント3aの原水流入面に対して略平行になるとともに棚状部材11によって原水流入面を覆った状態で、原水流入面から所定距離を隔てて配置される。この所定距離は、原水の流速が0.3m/s未満である場合、11.6mm以下、具体的には例えば7.6mm(原水の流速が0.2m/sである場合)が好ましい。
【0029】
このようにして、原水が流入管5に係る流路から棚状部材11に係る流路を介してセラミック膜エレメント3aに係る流路内を略水平方向に流通している状態で、空気ポンプ装置(図2参照)により空気供給口12aを通じてアダプタ部材13の貫通孔13aの底部に空気Aを供給する。すると、この空気供給口12aから吹き出された空気Aは、セラミック膜エレメント3aの原水流入面側に向かって鉛直上方向に傾斜している棚状部材11の棚板11iにより、所定の比率で、棚状部材11およびセラミック膜エレメント3aの原水流入面の隙間であるクリアランス空間Cを通じてセラミック膜エレメント3aの原水流入面の下側領域に係る流路に押し込まれることとなる空気A1と、棚状部材11の手前側から廻り込むようにして余りのセラミック膜エレメント3aの原水流入面の上側領域に係る流路に押し込まれることとなる空気A2とに散らされて分岐する。
【0030】
空気A1と空気A2との所定の比率は、鉛直方向最下位置に係る棚板11iの傾斜角、棚状部材11に係る流路底部と棚板11iとの間に形成される空間の体積、クリアランス空間Cの幅寸法である棚板11iのセラミック膜エレメント3a側の側縁部とセラミック膜エレメント3aの原水側流入面との隙間寸法、空気Aの流量、および原水の流速を考慮した上で、セラミック膜エレメント3aの原水流入面全体(少なくとも両側領域を除く領域全体)に亘って均等に空気を供給しようとする観点から決定されるが、この一実施形態においては、(空気A1の量)/(空気A2の量)は70/30程度とした。
【0031】
一部の空気A1は、棚板11iの傾斜に沿って上昇を規制されつつクリアランス空間C内に案内された後、クリアランス空間C内を上昇することによって、セラミック膜エレメント3aの原水流入面のうち下側領域から中央領域に係る流路内に流入する。具体的には、鉛直方向最下部の棚板11iがセラミック膜モジュール3側に向かって鉛直上方向に傾斜していること、および原水がセラミック膜エレメント3aの原水流入面に向けて流動していることにより、空気供給口12aから供給された空気Aのうちの多くは空気A1として、まずセラミック膜エレメント3aの原水流入面のうち下側領域におけるセラミック膜エレメント3aに係る流路内に押し込まれる。続いて、当該下側領域で押し込まれずに溢れ出た空気A1が順次セラミック膜エレメント3aの原水流入面のうち中央領域に向けて拡散しつつ押し込まれる。すなわち、空気A1は、クリアランス空間C内を上昇するとともに、原水の流れWによる作用によってセラミック膜エレメント3aに係る流路(管)内に押し込まれる。これにより、空気A1は、図3Bに示すように、セラミック膜エレメント3aの原水流入面の鉛直方向に沿った比較的下側から中央の領域、すなわち空気供給領域R1において、セラミック膜エレメント3aに係る流路に押し込まれる。
【0032】
一方、他部の空気A2は、棚状部材11の原水流入側から流出して流入管5に係る流路内を速やかに上昇するとともに、原水の流れWによって棚状部材11に係る流路内に向かって流れ込む。そして、空気A2は、棚板11a〜11hの傾斜に沿って、上昇を規制されつつクリアランス空間C内に案内された後、クリアランス空間C内を上昇することによって、セラミック膜エレメント3aの原水流入面のうち中央領域から上側領域に流入する。すなわち、図3Aおよび図5Aに示すように、棚状部材11の原水流入側に溢れた空気A2は、棚状部材11を通過していないことから、セラミック膜エレメント3aに係る流路内に押し込まれることなく上昇する。同時に空気A2は、上昇中に原水の流れWによって円滑に棚状部材11に係る流路内に進入し、棚板11a〜11hの傾斜に沿って上昇を規制されつつ案内された後、クリアランス空間C内を上昇する。これによって、空気A2はまず、セラミック膜エレメント3aの原水流入面のうち中央領域におけるセラミック膜エレメント3aに係る流路内に押し込まれる。続いて、この中央領域で押し込まれずに溢れ出た空気A2は、順次セラミック膜エレメント3aの原水流入面のうち上側領域に向けて拡散しつつ押し込まれる。
【0033】
ここで、棚板11a〜11hは、棚板11iによって棚状部材11における原水の流れ方向の手前側から廻り込むこととなった空気A2が棚状部材11に係る流路に流入する際の流入方向に沿うようにセラミック膜エレメント3aの原水流入面側に向かって鉛直上方向に傾斜している。棚板11a〜11hが0°の傾斜の場合、すなわち傾斜していない場合には、空気A2がセラミック膜エレメント3aに係る流路に円滑に押し込まれない。空気A2は、このような挙動によって、セラミック膜エレメント3aの原水流入面のうち中央領域から比較的上側領域において、流路に押し込まれやすくなる。これにより、空気A2は、図3Bに示すように、セラミック膜エレメント3aの原水流入面の鉛直方向に沿った中央領域から上側領域、すなわち空気供給領域R2において、セラミック膜エレメント3aに係る流路に押し込まれる。
【0034】
次に、図4A図4B、および図5Aを参照して、空気供給口12b,12cから供給された空気の作用について説明する。図4Aおよび図4Bはいずれも、空気供給口12b,12cから供給された空気の挙動および作用を説明するための概念図であり、図4Aは、セラミック膜モジュール3の側面側から、図4Bは、セラミック膜モジュール3の原水流入側からの図である。
【0035】
図4Aおよび図5Aに示すように、原水が流入管5から散気装置10を介してセラミック膜モジュール3におけるセラミック膜エレメント3aに係る流路内を略水平方向に流通している状態で、空気ポンプ装置12により空気供給口12b,12cを通じてアダプタ部材13の貫通孔13aの周縁部に空気A3,A4を供給する。すると、この空気供給口12b,12cから吹き出された空気A3,A4は、セラミック膜エレメント3aの原水流入面側に向かって鉛直上方向に傾斜している棚状部材11の棚板11hにより、所定の比率で、棚状部材11およびセラミック膜エレメント3aの原水流入面の隙間であるクリアランス空間Cを通じてセラミック膜エレメント3aの原水流入面の両側下領域に係る流路に押し込まれることとなる空気A5と、棚状部材11における原水の流れ方向に沿った手前側から廻り込むようにして余りのセラミック膜エレメント3aの原水流入面の両側上領域に係る流路に押し込まれることとなる空気A6とに散らされて分岐する。
【0036】
空気A5と空気A6との所定の比率は、棚板11hの傾斜角、棚板11iの上面部と棚板11hの下面部との間に形成される空間の体積、クリアランス空間Cの幅寸法である棚板11hのセラミック膜エレメント3a側の側縁部とセラミック膜エレメント3aの原水側流入面との隙間寸法、空気A3,A4の流量、および原水の流速を考慮した上で、セラミック膜エレメント3aの原水流入面全体(少なくとも両側領域)に亘って均等に空気を供給しようとする観点から決定されるが、この一実施形態においては、(空気A5の量)/(空気A6の量)は70/30程度とした。
【0037】
一部の空気A5は、複数の棚板11iの傾斜に沿って上昇を規制されつつクリアランス空間C内に案内された後、クリアランス空間C内を上昇することによって、セラミック膜エレメント3aの原水流入面のうち両側下領域から両側中央領域に係る流路内に流入する。具体的には、図4Aおよび図5Aに示すように、鉛直方向に沿った空気供給口12b,12cの直上の棚板11hがセラミック膜モジュール3側に向かって鉛直上方向に傾斜していること、および原水がセラミック膜エレメント3aの原水流入面に向けて流動していることにより、空気供給口12b,12cから供給された空気Aのうちの多くは空気A5として、セラミック膜エレメント3aの原水流入面のうち両側下領域に係る流路内に押し込まれ、続いて当該両側下領域で押し込まれずに溢れ出た空気A5が順次セラミック膜エレメント3aの原水流入面のうち両側中央領域に向けて拡散しつつ押し込まれる。すなわち、空気供給口12b,12cが棚状部材11の側部に設けられ、空気A5が空気供給口12b,12cから吹き出された後に速やかに上昇すること、および空気供給口12aからも空気が吹き出していることにより、空気A5は、散気装置10における棚状部材11の両側部分においてクリアランス空間C内を上昇するとともに、原水の流れWによる作用によってセラミック膜エレメント3aに係る流路内に押し込まれる。これにより、図4Bに示すように、空気A3,A4は、セラミック膜エレメント3aの空気供給口12b,12c付近の、原水流入面の鉛直方向に沿った比較的両側下領域から両側中央領域、すなわち空気供給領域R3,R4において、セラミック膜エレメント3aに係る流路内に押し込まれる。
【0038】
一方、他部の空気A6は、棚状部材11の原水流入側に流出して速やかに上昇するとともに、原水の流れWに沿って棚状部材11に係る流路に向かって流れ込み、セラミック膜エレメント3aの原水流入面のうち両側中央領域から両側上領域に流入する。すなわち、図4Aおよび図5Aに示すように、棚状部材11の原水流入側に溢れた空気A6は、棚状部材11を通過していないことから、セラミック膜エレメント3aに係る流路に押し込まれることなく上昇する。同時に空気A6は、上昇中に原水の流れWによって円滑に棚状部材11に係る流路に進入し、棚板11a〜11gの傾斜に沿って上昇を規制されつつ案内された後、クリアランス空間C内を上昇する。これによって、空気A6はまず、セラミック膜エレメント3aの原水流入面のうち両側中央領域におけるセラミック膜エレメント3aに係る流路内に押し込まれる。続いて、この両側中央領域で押し込まれずに溢れ出た空気A6が順次セラミック膜エレメント3aの原水流入面のうち上側領域に向けて拡散しつつ押し込まれる。
【0039】
ここで、棚板11a〜11gは、棚板11hによって棚状部材11における原水の流れ方向の手前側から廻り込むこととなった空気A6が棚状部材11に係る流路に流入する際の流入方向に沿うようにセラミック膜エレメント3aの原水流入面側に向かって鉛直上方向に傾斜している。空気A6は、このような挙動によって、セラミック膜エレメント3aの原水流入面の水平方向に沿った両側領域で、鉛直方向に沿った中央領域から比較的上側領域に係る流路内に押し込まれやすくなる。これにより、空気A6は、図4Bに示すように、セラミック膜エレメント3aの原水流入面における水平方向に沿った両側領域で、鉛直方向に沿った中央領域から上側領域、すなわち空気供給領域R5〜R7において、セラミック膜エレメント3aに係る流路に押し込まれる。
【0040】
以上説明した本発明の一実施形態によれば、セラミック膜エレメント3aの原水流入面の直前の流路区間に棚状部材11を設け、この棚状部材11に係る流路において、セラミック膜エレメント3aの原水流入面側に向かって鉛直上方向に傾斜している棚板11a〜11iを有し、しかも棚状部材11に係る流路の底部に空気供給口12a,12b,12cを有しているため、上方に行きやすい、空気供給口12aから供給された空気および空気供給口12b,12cから供給された空気のかなりの部分を下方にとどめ、全体の空気配分を均等にする作用効果を奏することが可能になるので、図5Bに示すように、セラミック膜エレメント3aの原水流入面全体に亘って略均等に空気を押し込むことが可能となる。
【0041】
以上、本発明の一実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の一実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
【0042】
上述の一実施形態においては、横置型膜ろ過装置を曝気槽に適用したものであるが、本発明は本実施形態に限定されることはなく、嫌気槽や無酸素槽等の反応槽内の処理水をろ過する場合にも適用できる。このように、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1 曝気槽
1a 散気部
2 横置型膜ろ過装置
3 セラミック膜モジュール
3a セラミック膜エレメント
3b ケーシング
3c,5a フランジ
4 ポンプ
5 流入管
6 返送管
10 散気装置
11 棚状部材
11a,11b,11c,11d,11e,11f,11g,11h,11i 棚板
12 空気ポンプ装置
12a,12b,12c 空気供給口
13 アダプタ部材
13a 貫通孔
100 膜ろ過システム
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B