【文献】
Dawson R.E. et. al,Synthesis of α-cyclodextrin [2]-rotaxanes using chlorotriazine capping reagents,Organic and Biomolecular Chemistry,2008年,vol.6,p.1814-1821
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
環状分子、環状分子に串刺し状に包接される直鎖状分子、及び直鎖状分子から環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両末端に配置されるブロック基を有するポリロタキサンの製造方法であって、
溶媒の非存在下又は非プロトン性アミド系溶媒及び芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒中、環状分子に包接され、両末端にカルボキシル基を有する直鎖状分子と、アミノ基を含むブロック化剤とを、当該直鎖状分子のカルボキシル基1モルに対して、2.0モル〜100モルのトリアジン系アミド化剤の存在下で反応させて、ブロック基を形成することを含み、
前記環状分子が、シクロデキストリンであり、
前記直鎖状分子が、分子の両末端がカルボキシル基であり、繰り返し単位中のアルキレン部分の炭素原子数が2〜14であり、数平均分子量が3,000〜50,000であるポリアルキレングリコール類である、
ポリロタキサンの製造方法。
トリアジン系アミド化剤が、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム・クロリド(DMT−MM)である、請求項2記載の製造方法。
反応を、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、及びトルエンからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒中で行なう、請求項1〜8のいずれか1項記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、環状分子、環状分子に串刺し状に包接される直鎖状分子、及び直鎖状分子から環状分子が脱離しないように直鎖状分子の両末端に配置されるブロック基を有するポリロタキサンの製造方法であって、溶媒の非存在下又は反応に不活性な溶媒中、特定量のトリアジン系アミド化剤の存在下で、両分子末端にカルボキシル基を有する直鎖状分子と環状分子を含む擬ポリロタキサンと、アミノ基を含むブロック化剤とを反応させて、ブロック基を導入することを特徴とするブロック化されたポリロタキサンの製造方法である。
【0011】
本発明における環状分子は、直鎖状分子を包接可能であれば、特に限定されない。また、環状分子には、実質的に環状である分子又は物質を含む。実質的に環状である分子には、英字の「C」のように、完全に閉環構造ではないもの、螺旋構造を有するもの等が挙げられる。
【0012】
本発明における環状分子として、種々のシクロデキストリン(CD)類(例えばα−CD、β−CD、γ−CD、ジメチルシクロデキストリン及びグルコシルシクロデキストリン、これらの誘導体又は変性体等)、クラウンエーテル類、ベンゾクラウン類、ジベンゾクラウン類、及びジシクロヘキサノクラウン類を挙げることができる。中でも、CD類が好ましく、とりわけα−シクロデキストリンが好ましい。
【0013】
本発明における直鎖状分子は、環状分子に串刺し状に包接され、非共有結合的に一体化することができる分子又は物質であって、直鎖状分子の両末端部分にカルボキシル基を有する化合物であれば特に限定されない。
直鎖状分子としての具体例としては、分子の両末端がカルボキシル基である、
ポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール誘導体、ポリテトラメチレングリコール誘導体、ポリペンタメチレングリコール誘導体、ポリヘキサメチレングリコール誘導体等のポリアルキレングリコール類(例えば、繰り返し単位中のアルキレン部分の炭素原子数が2〜14のポリアルキレングリコール類);
ポリブチロラクトン誘導体、ポリカプロラクトン誘導体等の脂肪族ポリエステル類(例えば、繰り返し単位中のアルキレン部分の炭素原子数が1〜14の脂肪族ポリエステル類);
ポリエチレン誘導体、ポリプロピレン誘導体、ポリブテン誘導体等のポリオレフィン類(例えば、オレフィン単位の炭素原子数が1〜12のポリオレフィン類);
ポリジメチルシロキサン誘導体等のポリジアルキルシロキサン類(例えば、ケイ素原子に結合しているアルキル部分の炭素原子数が1〜4のポリジアルキルシロキサン類);
ポリブタジエン誘導体、ポリイソプレン誘導体等のポリジエン類(例えば、ジエン単位の炭素原子数が4〜12のポリジエン類);
ポリエチレンカーボネート誘導体、ポリプロピレンカーボネート誘導体、ポリテトラメチレンカーボネート誘導体、ポリペンタメチレンカーボネート誘導体、ポリヘキサメチレンカーボネート誘導体、ポリフェニレンカーボネート誘導体等のポリカーボネート類(例えば、繰り返し単位中の炭化水素部分の炭素原子数が1〜12のポリカーボネート類);
カルボキシメチルセルロース誘導体、ヒドロキシエチルセルロース誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース誘導体等のセルロース類;
ポリ(メタ)アクリル酸誘導体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル誘導体(例えば、ポリメチルメタクリレート誘導体、ポリメチルアクリレート誘導体等)、ポリ(メタ)アクリルアミド誘導体、ポリ(メタ)アクリロニトリル誘導体、及び(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルから選ばれる2種以上のモノマーを共重合させて得られるコポリマー誘導体等の(メタ)アクリル系ポリマー類;
ナイロン6誘導体、ナイロン66誘導体等のポリアミド類;ポリイミド類;ポリスルホン酸類;ポリイミン類;ポリ尿素類;ポリスルフィド類;ポリフォスファゼン類;ポリケトン類、ポリエーテルエーテルケトン類;例えば、クラブレスコール等のポリフェニレン類等が挙げられる。
ここで、分子の両末端がカルボキシル基であるポリアルキレングリコール類とは、ポリアルキレングリコールに由来する直鎖状の部分構造と、当該部分構造の両末端にカルボキシル基とを有するジカルボン酸化合物であるポリアルキレングリコール誘導体のグル―プを意味し、分子の両末端がカルボキシル基である脂肪族ポリエステル類、分子の両末端がカルボキシル基であるポリオレフィン類、分子の両末端がカルボキシル基であるポリジアルキルシロキサン類、分子の両末端がカルボキシル基であるポリジエン類等についてもそれぞれ同様の構成を成す誘導体のグル―プを意味する。
【0014】
本発明における直鎖状分子は、好ましくは、分子の両末端がカルボキシル基である、ポリアルキレングリコール類、脂肪族ポリエステル類、ポリオレフィン類、ポリジエン類又はポリジアルキルシロキサン類;より好ましくは、分子の両末端がカルボキシル基である、ポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール誘導体、ポリテトラメチレングリコール誘導体、ポリブチロラクトン誘導体、ポリカプロラクトン誘導体、ポリエチレン誘導体、ポリプロピレン誘導体、ポリブテン誘導体、ポリイソプレン誘導体、ポリブタジエン誘導体、ポリジメチルシロキサン誘導体;特に好ましくは、分子の両末端がカルボキシル基である、ポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコール誘導体、ポリエチレン誘導体、ポリプロピレン誘導体、ポリジメチルシロキサン誘導体である。
【0015】
本発明における直鎖状分子の数平均分子量は特に限定されないが、好ましくは200〜200,000であり、さらに好ましくは1,000〜100,000であり、より好ましくは3,000〜50,000であり、特に好ましくは5,000〜45,000である。なお、本願明細書における数平均分子量としては、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography、標準物質:ポリスチレン、プルラン又はポリエチレンオキシド)などによって測定される値を使用することができる。
前記直鎖状分子の重量平均分子量が200以上であると、得られるポリロタキサンを用いて、例えば、架橋ポリロタキサンを構成した場合に、特性がより良好になる傾向がある。一方、前記直鎖状分子の重量平均分子量が200,000以下であると、水分含量の少ない擬ポリロタキサンを調製することがより容易になる傾向がある。
【0016】
本発明における製造原料は、直鎖状分子が環状分子により串刺し状に包接され、かつその直鎖状分子の両末端にカルボキシル基を有するジカルボン酸化合物であって、本明細書では、擬ポリロタキサンと称することもある。
【0017】
直鎖状分子の両末端にカルボキシル基を導入する方法、又は直鎖状分子の両末端をカルボキシル基に変換する方法は、特に限定されない。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)の両末端の水酸基をカルボキシル基化する方法としては、PEGの、過マンガン酸カリウムによる酸化、酸化マンガン/過酸化水素による酸化、クロム酸化合物を用いた酸化(Jones酸化)、又は2,2,6,6−テトラメチル−1−ピぺリジニルオキシラジカルによる酸化(TEMPO酸化)等の酸化方法を使用することができる。
【0018】
両末端にカルボキシル基を有する直鎖状分子の環状分子による包接化反応は、分子の両末端にカルボキシル基を有する直鎖状分子と環状分子とを、例えば、溶媒中で混合するといった方法によって行なうことができる。ここで使用される溶媒としては、両末端にカルボキシル基を有する直鎖状分子、環状分子、及び生成物である擬ポリロタキサンを溶解する溶媒であって、かつ包接化反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。
例えば、特許文献1(実施例1)に記載の方法に従って、本発明の製造原料である擬ポリロタキサンを取得することができる。
【0019】
本発明における擬ポリロタキサンについて、直鎖状分子を包接する環状分子の個数(包接量)は、特に限定されず、例えば、所望の溶媒への分散性、修飾基の種類等に応じて直鎖状分子と環状分子の使用量を調整する等の方法により適宜選択することができる。また、直鎖状分子に環状分子が最密で包接されたとき(充填率:100%)の包接量を最大包接率1.0として表したとき、直鎖状分子を包接する環状分子の導入率(包接率)は、通常、0.05〜0.80である。より具体的には、直線状分子がポリエチレングリコール誘導体であって、且つ環状分子がシクロデキストリンである場合の包接率は、好ましくは0.05〜0.65であり、より好ましくは0.10〜0.60であり、さらにより好ましくは0.15〜0.55であり、特に好ましくは0.20〜0.40である。ここで、環状分子の最大包接量は、直鎖状分子の長さと環状分子の厚さとから決定することができる。例えば、直鎖状分子がポリエチレングリコール誘導体であり、且つ環状分子がα−シクロデキストリンの場合の最大包接量は、例えば、Macromolecules,1993,Vol26,5698−5703ページに記載の方法等により算出することができる。また、包接率は、測定溶媒(DMSO−d
6)に、得られたポリロタキサンを溶解し、
1H−NMR測定装置(AVANCE500型 Bruker BioSpin社製) により測定し、ケミカルシフトが4〜6ppmのシクロデキス卜リン由来のプロトンの積分値と3〜4ppmのPEG由来のプロトンの積分値との比較で算出することができる。
【0020】
本発明における擬ポリロタキサンについて、環状分子の包接量が最大値に近い状態であると、直鎖状分子上の環状分子の移動距離が制限される傾向が生じる。すなわち、前記包接率が0.65以下であると、直鎖状分子上に環状分子が密に配置され過ぎず、環状分子の可動性がより向上する傾向がある。また一方、前記包接率が0.05以上であると、例えば、ポリロタキサンから架橋ポリロタキサンを製造した場合、所望の滑車効果(スライドリングゲル効果)が充分に得られる傾向がある。
【0021】
そこで、製造原料である擬ポリロタキサンの分子量(数平均分子量)は、直線状分子の数平均分子量、及び包接率の観点から、好ましくは10,000〜500,000、より好ましくは30,000〜400,000、さらに好ましくは50,000〜300,000、特に好ましくは90,000〜200,000、特により好ましくは100,000〜160,000である。前記擬ポリロタキサンの数平均分子量が10,000以上であると、これを用いて、例えば、架橋ポリロタキサンを構成した場合に特性がより向上する傾向がある。一方、前記擬ポリロタキサンの数平均分子量が500,000以下であると、水分含量が少ない擬ポリロタキサンを調製することが容易になる傾向がある。
【0022】
本発明においては、反応開始時の反応混合物の水分量が多いと、反応が影響を受ける場合がある。そこで、製造原料である擬ポリロタキサンの含有水分量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。なお、水分量は、例えば、カールフィッシャー法等で測定された値を使用する。製造原料である擬ポリロタキサンの含有水分量が10質量%を超える場合は、適宜、脱水、乾燥等の処理を行ってから使用することが好ましい。
【0023】
本発明で使用されるもう一方の製造原料である、アミノ基を有するブロック化剤としては、擬ポリロタキサン中の直鎖状分子の両末端のカルボキシル基と反応し、かつ反応後、環状分子が直鎖状分子により串刺し状になった形態を保持することができるブロック基を形成することができるものであれば、特に限定されない。ブロック化剤は、例えば、アミノ基と、ブロック基を形成する部分構造とを有する化合物であることが好ましい。
【0024】
このようなブロック基を形成する部分構造としては、ジニトロベンゼン類由来の基(例えば、2,4−ジニトロフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基等)、シクロデキストリン類由来の基、アダマンタン類由来の基(例えば、アダマンチル基等)、トリフェニルメタン類由来の基(例えば、トリチル基等)、フルオレセイン類由来の基、ピレン類由来の基、置換ベンゼン類由来の基、置換されていてもよい多核芳香族基、ステロイド類由来の基などが挙げられる。好ましくは、ジニトロベンゼン類由来の基、シクロデキストリン類由来の基、アダマンタン類由来の基、トリフェニルメタン類由来の基、フルオレセイン類由来の基、又はピレン類由来の基であり、より好ましくは、2,4−ジニトロフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基、2,4−ジフェニルフェニル基、2,4−ジイソプロピルフェニル基、2,4−ジ−t−ブチルフェニル基、4−ジフェニルアミノフェニル基、4−ジフェニルホスフィニルフェニル基、アダマンチル基、又はトリチル基であり、特に好ましくは、2,4−ジニトロフェニル基、3,5−ジニトロフェニル基、アダマンチル基、又はトリチル基である。なお、本発明のポリロタキサンの両分子末端に設けられるブロック基は、互いに同一であっても、又は異なっていてもよい。本発明で使用されるアミノ基を有するブロック化剤としては、上記ブロック基を形成する部分構造を含むアミン類を使用ことができる。さらに、上記ブロック基を形成する部分構造を含むアミン類は、例えば、水和物、無機酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩等)、又は有機酸塩(メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩等)であってもよい。擬ポリロタキサン中のカルボキシル基との反応性、及び/又は経済性の観点からアダマンチルアミン及びその塩酸塩が好ましい。なお、アダマンチルアミン及びその塩酸塩は、市販品を使用することができる。
【0025】
なお、本発明の製造方法において、アミノ基を有するブロック化剤の使用量は、特に限定されない。しかしながら、経済性の観点から、ブロック化剤の使用量は、擬ポリロタキサン中の直鎖状分子のカルボキシル基1モルに対して、1.0モル〜50モルとすることができ、1.4モル〜40モルであることが好ましく、2.4モル〜30モルであることがさらに好ましく、5.0モル〜30モルであることがより好ましく、7.5モル〜20モルであることが特に好ましい。なお、アミド化剤の使用量が50モル以下である場合は、経済性が良好であるために好ましい。
【0026】
本発明の製造方法は、例えば、直鎖状分子のカルボキシル基1モルに対して2.0モル〜100モルのトリアジン系アミド化剤の存在下で、直鎖状分子として両分子末端にカルボキシル基を有するPEG誘導体及び環状分子を含む擬ポリロタキサンと、アミノ基を含むブロック化剤と、必要に応じて有機塩基及び/又は反応に不活性な溶媒とを混合し、攪拌、振とう等を行って反応させる方法で行われる。なお、トリアジン系アミド化剤、擬ポリロタキサン、ブロック化剤、並びに有機塩基及び/又は反応に不活性な溶媒の投入順序は、特に限定されない。しかしながら、本発明の反応は、擬ポリロタキサン、ブロック化剤、並びに有機塩基及び/又は反応に不活性な溶媒を加えた混合物に、トリアジン系アミド化剤を添加して行う反応方法が好ましい。
【0027】
本発明におけるトリアジン系アミド化剤としては、具体的には、式(1):
【0029】
(式中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数6〜8のアリール基であり、
R
3、R
4及びR
5のいずれか1つは、炭素原子数1〜4のアルキル基であり、他の2つは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、5〜6員環を形成しており、
Xは、ハロゲン原子である)
で示される化合物が挙げられる。
【0030】
R
1及びR
2について、炭素原子数1〜4のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、炭素原子数6〜8のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基等が挙げられる。R
1及びR
2としては、炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、中でもメチル基が好ましい。
【0031】
R
3、R
4及びR
5のいずれか1つは、炭素原子数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。
【0032】
R
3、R
4及びR
5の他の2つは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、5〜6員環基を形成しており、例えば、ピロリジニル基、ピペリジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基が挙げられ、中でもモルホリノ基が好ましい。これらの環は、炭素原子数1〜4のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基)で置換されていてもよい。
【0033】
Xは、ハロゲン原子であり、例えば、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子が挙げられ、中でも塩素原子が好ましい。
【0034】
式(1)のトリアジン系アミド化剤としては、アミド化反応の反応性及び経済性(コスト)の観点から、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム・クロリド(以降、DMT−MMと称することがある)が好ましい。
【0035】
本発明の製造方法において、トリアジン系アミド化剤の使用量は、擬ポリロタキサン中の直鎖状分子のカルボキシル基1モルに対して、2.0モル〜100モルであれば、特に限定されない。しかしながら、経済性の観点からトリアジン系アミド化剤の使用量は、擬ポリロタキサン中の直鎖状分子のカルボキシル基1モルに対して、3.8モル〜80モルであることが好ましく、7.5モル〜70モルであることがより好ましく、15モル〜60モルであることが特に好ましい。アミド化剤の使用量が、2.0モル未満である場合、使用した擬ポリロタキサン中のカルボキシル基が充分にブロック化されず、その結果、擬ポリロタキサンから環状分子が脱離することがある。また、アミド化剤の使用量が、100モルを越える場合、経済性が悪くなるために好ましくない。
【0036】
本発明における反応は、有機塩基の存在下、又は非存在下のいずれの場合で行なってもよい。また、本発明における反応を有機塩基の存在下にて行う場合、使用される有機塩基としては、アミド化反応に悪影響を与えるもの以外であれば、特に限定されない。また、アミド化剤を、有機塩基として使用してもよい。
【0037】
有機塩基としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルメチルアミン、トリ−n−ブチルアミン等の炭素原子数3〜24のアルキルアミン類;
ジメチルフェニルアミン、エチルメチルフェニルアミン、ジエチルフェニルアミン、ジフェニルアミン、ジフェニルメチルアミン、ジフェニルエチルアミン、n−プロピルジフェニルアミン、イソプロピルジフェニルアミン、トリフェニルアミン等の置換基を有していてもよい炭素原子数8〜24のアリールアミン類;
ピリジン、ピコリン、ルチジン、コリジン、ジメチルアミノピリジン、4−ピロリジノピリジン等の置換基を有していてもよい炭素原子数5〜24のピリジン類;
ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、キヌクリジン、N−メチルピロリジン、N−エチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N−メチルモルホリン、炭素原子数1〜20のアルキルモルホリン、ジ(炭素原子数1〜10のアルキル)ピペラジン、炭素原子数1〜19のアルキルピペリジン等の置換基を有していてもよい炭素原子数4〜24の脂環式アミン類;
イミダゾール、N−(炭素原子数1〜12のアルキル)イミダゾール、N−フェニルイミダゾール、N−トリメチルシリルイミダゾール、N−トリエチルシリルイミダゾール、N−tert−ブチルジメチルシリルイミダゾール等の置換基を有していてもよい炭素原子数3〜24のイミダゾール類;
トリアゾール、N−(炭素原子数1〜12のアルキル)トリアゾール、N−フェニルトリアゾール等の置換基を有していてもよい炭素原子数3〜24のトリアゾール類;
テトラ(炭素原子数1〜4のアルキル)グアニジン等の置換基を有していてもよい炭素原子数1〜24のグアニジン類;
1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(別名:プロトンスポンジ)、ホスファゼン等が挙げられる。
【0038】
有機塩基としては、炭素原子数3〜24のアルキルアミン類、及び炭素原子数4〜24の脂環式アミン類からなる群より選択される少なくとも1種の有機塩基が好ましく;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、及びN−メチルモルホリンからなる群より選択される少なくとも1種の有機塩基がより好ましく使用される。
【0039】
反応を有機塩基の存在下に行う場合、例えば、反応液がアルカリ性(pH試験紙)を示す量であれば、その使用量は特に制限されない。また有機塩基を有機溶媒として用いてもよい。
【0040】
さらに本発明における反応は、溶媒の非存在下又は反応に不活性な溶媒中で行なうことができる。反応に不活性な溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)、β−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)等の非プロトン性アミド系溶媒、及びベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒が挙げられる。中でも、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、及びトルエンからなる群より選択される少なくとも1種の有機溶媒が好ましい。水を使用する場合は、反応開始時の反応混合物中の水分量が5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下となるように使用する。反応開始時の水分量が5質量%以下であると、アミド化反応に影響が出ることをより効果的に抑制することができる。有機溶媒を使用する場合、水を含有しないことが好ましく、具体的には、水分を含有する有機溶媒を使用する場合、反応開始時に、反応混合物中の水分量が5質量%以下となるように調整しながら使用することが好ましく、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下となるように調整しながら使用する。但し、本発明におけるアミド化反応により生成する水は、前記水分量に包含されないこととする。
【0041】
溶媒を使用する場合、溶媒の使用量は、製造原料である擬ポリロタキサン1gに対して、0.1mL〜1000mLが好ましく、0.5mL〜500mLがより好ましく、1mL〜100mLが特に好ましい。溶媒の使用量が、0.1mL以上であると、アミド化反応の反応性、及び/又は反応混合物の攪拌効率が低下しないため好ましく、また、1000mL以下の場合は、経済性が良好であるために好ましい。
【0042】
本発明の製造方法において、反応温度は、特に限定されない。しかしながら、本発明における反応温度は、−20〜150℃とすることができ、0〜100℃が好ましく、5〜60℃がより好ましく、5〜45℃が特に好ましい。この反応温度の範囲であれば、使用する擬ポリロタキサンの反応性も良好であることがわかっている。
【0043】
また、本発明において、反応圧力は、特に限定されないが、大気圧下で行われることが好ましい。さらに、反応容器内は、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス流通下、又はこれらのガス雰囲気下で行っても、あるいは開放系で行ってもいずれの場合であってもよい。
【0044】
本発明における反応は、例えば、トリアジン系アミド化剤の存在下で、PEGの両分子末端にカルボキシル基を有する直鎖状分子と環状分子とを含む擬ポリロタキサンと、アミノ基を含むブロック化剤と、必要に応じて有機塩基及び/又は反応に不活性な溶媒とを混合し、攪拌、振とう等を行って反応させる方法で行われる。なお、本発明における反応は、固−液懸濁状態でも実施できることを特徴とする。
【0045】
反応後、得られた反応混合物に、水等のポリロタキサンに対する貧溶媒を加えて固形物を析出させ、例えば、ろ過、デカンテーション等により反応混合物から分離する固形物を取得する。次いで、得られた固形物を、必要に応じて、精製用溶媒等を用いて、リンス洗浄、リパルプ洗浄等の操作により精製後、この固形物を乾燥させることで本発明の目的物であるブロック基を有するポリロタキサンを取得する。
【0046】
精製用溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロへキサン等の脂肪族炭化水素類;アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等の精製用溶媒が挙げられる。なお、これらの精製用溶媒は、単独、又は2種以上混合して使用してもよい。また、洗浄回数、精製用溶媒の使用量は特に限定されない。
【0047】
乾燥の方法としては、例えば、風乾、窒素ガスの吹き付けによる乾燥、減圧乾燥等が挙げられるが、特に限定されない。また、乾燥温度も、室温〜100℃の範囲であれば、特に限定されない。
【0048】
本発明の製造方法によれば、所望の包接率を有するポリロタキサンを、収率及び純度よく製造することができる。なお、所望の包接率を有することは、環状分子がシクロデキストリンの場合、例えば、特許文献1(実施例1)に記載の方法などに従い、
1H−NMRスペクトル分析により、ブロック化されたポリロタキサン中のシクロデキストリンの特定のプロトン数の増減を調べて確認することができる。また、一般に、アミノ基を有するブロック化剤を使用した擬ポリロタキサンへのブロック基導入反応では、アミノ基を有するブロック化剤と、擬ポリロタキサン中の直鎖状分子の末端基であるカルボキシル基とのアミド化反応のほかに、擬ポリロタキサンの中のシクロデキストリンの水酸基と、直鎖状分子の末端基のカルボキシル基とのエステル化反応の2種類の反応が同時に行われる。しかしながら、トリアジン系アミド化剤を使用した本発明の製造方法によれば、非常に高いアミド化反応選択率で、目的とするブロック化されたポリロタキサンを高収率且つ高純度で取得することができる。
【0049】
また、本発明の製造方法によれば、特定量のトリアジン系アミド化剤の存在下、両分子末端にカルボキシル基を有する直鎖状分子と環状分子とを含む擬ポリロタキサンと、アミノ基を有するブロック化剤とをアミド化させる反応を固−液懸濁系のような不均一反応系で実施したとしても、意外にも良好な反応収率でアミド化反応が進み、目的とする擬ポリロタキサン中の直鎖状分子の両末端にブロック基が導入されたポリロタキサンを高純度で得ることができる。
【0050】
さらに、本発明によれば、一般に、水を含む溶媒との組み合わせで良好なアミド化反応性を示すトリアジン系アミド化剤を、特定の製造原料との反応で使用したとしても、意外にも水の非存在下であればあるほど、良好な反応選択性と反応収率でブロック基を有するポリロタキサンを高純度で得ることができる。
【実施例】
【0051】
次に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0052】
〔ブロック基を有するポリロタキサンの純度〕
(使用機器)
カラム:TSKgel SuperAWM-H φ6.0mm×150mm(東ソー社製)
ガードカラム:TSKguardcolumn SuperAW-H φ6.0mm×35mm東ソー社製)
溶離液:0.01M LiBr/DMSO
(LiBr・H
2O:3.15gとDMSO:3Lとから調製)
カラム温度:50℃
検出器:RI検出器
流量:0.5mL/min
(試料調製)
実施例及び比較例で得られたブロック基を有するポリロタキサン10mg〜15mgを秤量し、これに溶離液(0.01M LiBr/DMSO)4mLを加えて、超音波処理を行なって溶解させた。次いで、この溶液を、クロマトディスク(GLサイエンス、0.2μm)でろ過処理し、得られたろ液を30μL使用してGPC分析を行なった。
(純度測定:GPC面積百分率、GPC面積%)
上記のようにして調製した試料についてGPC分析(標準物質:ポリエチレンオキシド)を行い、目的物であるブロック基を有するポリロタキサンに相当するGPC面積%を、本発明におけるブロック基を有するポリロタキサンの純度(GPC面積%)とした。
【0053】
〔アミド化選択率〕
(使用機器)
上記の純度測定:GPC面積%の分析条件にて使用した条件と同じである。
(アルカリ処理された試料の調製)
実施例・比較例のブロック基を有するポリロタキサン25mgを秤量し、これに、水2.5mL及び50質量%水酸化ナトリウム水溶液0.3gを加えて、室温下、2時間攪拌した。次いで、得られた溶液に、酢酸0.25g、溶離液(0.01M LiBr/DMSO)10mLを順に加え、不溶物が無くなるまで超音波処理を行なって溶解させた。さらに、この溶液を、ろ紙(アドバンテック東洋社製、円形定量ろ紙、No.5C)でろ過処理し、得られたろ液を30μL使用してGPC分析を行なった。
(GPC分析:アルカリ処理後のポリロタキサンの純度)
上記のようにしてアルカリ処理した試料についてGPC分析(標準物質:ポリエチレンオキシド)を行い、目的物であるブロック基を有するポリロタキサンに相当するGPC面積%を、アルカリ処理後のブロック基を有するポリロタキサンの純度(GPC面積%)とした。
(アミド化選択率の算出)
上記のようにして得られた実施例及び比較例におけるブロック基を有するポリロタキサンの純度とアルカリ処理後のブロック基を有するポリロタキサンの純度の数値を用いて、下記数式<1>より、本発明におけるブロック基を有するポリロタキサンのアミド化選択率を算出した。
【0054】
【数1】
【0055】
(参考例;擬ポリロタキサンの合成)
(参考例1:PEG−ジカルボン酸の調製;TEMPO酸化)
分子量35,000のポリエチレングリコール(PEG)(Clariant社製)200gを使用して、特許文献1の実施例1の方法に従って、分子の両末端がカルボキシル基であるポリエチレングリコール誘導体(PEG−ジカルボン酸)を定量的に得た。
【0056】
(参考例2:擬ポリロタキサンの合成;包接化)
参考例1にて調製したPEG−ジカルボン酸10gに、65〜70℃に加温したα‐シクロデキストリン水溶液(組成;α‐シクロデキストリン:27.8g、水:40g)を加え、液温80℃にて1時間攪拌して包接化反応を行った。反応終了後、反応液から水分を留去し、得られた濃縮物を減圧乾燥することで、白色固体として擬ポリロタキサン(34.0g)を得た。
【0057】
(実施例1:ブロック基を有するポリロタキサンの製造:アダマンチル基)
窒素雰囲気下、撹拌装置、加熱装置、及び温度計を備えた内容積100mLのガラス製フラスコに、ジメチルホルムアミド15.0g、アダマンチルアミン塩酸塩0.22g(1.17mmol)、及びトリエチルアミン0.63g(6.23mmol)を加え、30分攪拌した。次いで、この混合液に、参考例2と同様の方法で得られた擬ポリロタキサン10.00g(数平均分子量:130,000、0.077mmol相当)、DMT−MM0.32g(1.16mmol)、ジメチルホルムアミド10.0g(ジメチルホルムアミド使用量(合計):25.0g)の順に加え、固−液懸濁反応系下、25℃にて3時間攪拌した。なお、反応開始時の反応混合物の水分量は、0.47質量%であった。反応終了後、得られた反応混合物に、水30gを加えて攪拌して反応を停止させた後、ろ過を行ない、ろ物を取得した。得られたろ物をエタノール15.0gにて洗浄(リンス)し、減圧乾燥することにより、目的物であるブロック基を有するポリロタキサン(以下、「ブロック化されたポリロタキサン」ともいう)を、白色固体として9.58g得た。
得られたブロック基を有するポリロタキサンの包接率を表1に示す。
【0058】
(比較例1〜2:ブロック基を有するポリロタキサンの製造:アミド化剤の検討)
アミド化剤の種類を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
【0059】
(実施例2:ブロック基を有するポリロタキサンの製造:有機塩基の検討)
有機塩基の種類を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
【0060】
(実施例3:ブロック基を有するポリロタキサンの製造:有機塩基の検討)
有機塩基、反応温度及び反応時間を表1のように変更した以外は、実施例2と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
【0061】
【表1】
*1:DMT−MM;4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム・クロリド
*2:BOP;1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム・ヘキサフルオロホスファート
*3:PyBOP;1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウム・ヘキサフルオロホスファート
*4:TEA;トリエチルアミン
*5:DIPEA;ジイソプロピルエチルアミン
*6:
1H−NMR測定(DMSO−d
6)より算出(最大包接率を:1.000)。―は未測定。
*7:ブロック化されたポリロタキサンの取得収率(%)
*8:ブロック化されたポリロタキサンの純度(%)
*9:数式<1>より算出(%)
【0062】
(実施例4〜7、比較例3:ブロック基を有するポリロタキサンの製造:アミド化剤使用量の検討)
アミド化剤(DMT−MM)の使用量を下記表2のように変更した以外は、実施例1と同様に反応を行った。結果を、実施例1の結果と併せて表2に示す。
【0063】
【表2】
*1:DMT−MM;4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム・クロリド
*2:ブロック化されたポリロタキサンの取得収率(%)
*3:ブロック化されたポリロタキサンの純度(%)
*4:数式<1>より算出(%)
【0064】
(実施例8〜11:ブロック基を有するポリロタキサンの製造:ブロック化剤使用量の検討)
ブロック化剤(アダマンチルアミン・塩酸塩)の使用量を下記表3のように変更した以外は、実施例1と同様に反応を行った。結果を、実施例1の結果と併せて表3に示す。
【0065】
【表3】
*1:アダマンチルアミン塩酸塩
*2:ブロック化されたポリロタキサンの取得収率(%)
*3:ブロック化されたポリロタキサンの純度(%)
*4:数式<1>より算出(%)
【0066】
(実施例12〜13:ブロック基を有するポリロタキサンの製造:有機塩基使用量の検討)
有機塩基(トリエチルアミン)の使用量を下記表4のように変更した以外は、実施例1と同様に反応を行った。結果を表4に示す。
【0067】
【表4】
*1:TEA;トリエチルアミン
*2:ブロック化されたポリロタキサンの取得収率(%)
*3:ブロック化されたポリロタキサンの純度(%)
*4:数式<1>より算出(%)
【0068】
(実施例14、比較例4〜7:ブロック基を有するポリロタキサンの製造:溶媒の検討)
有機溶媒の種類を下記表5のように変更した以外は、実施例1と同様に反応を行った。結果を実施例1の結果と併せて表5に示す。
【0069】
【表5】
*1:DMF;ジメチルホルムアミド、CH
3CN;アセトニトリル、DMSO;ジメチルスルホキシド、MeOH;メタノール
*2:ブロック化されたポリロタキサンの取得収率(%)
*3:○;反応に使用可能、×;低収率、又は未反応のため反応に使用不可
【0070】
(実施例15〜18:ブロック基を有するポリロタキサンの製造:有機溶媒中の水分含量の検討)
有機溶媒(ジメチルホルムアミド)に、下記表6のように水を含有させて使用した以外は、実施例1と同様に反応を行った。結果を表6に示す。
【0071】
【表6】
*1:ジメチルホルムアミドの合計使用量(g)
*2:反応系への水の添加量(g)、及び反応溶媒(溶媒+水)における水の含有量(質量%)
*3:ブロック化されたポリロタキサンの取得収率(%)
*4:ブロック化されたポリロタキサンの純度(%)
*5:数式<1>より算出(%)
*6:カールフィッシャー水分測定による、反応終了後の反応混合物中の水の含有量(質量%)
*7:
1H−NMR測定(DMSO−d
6)より算出(最大包接率:1.000)
【0072】
(実施例19〜20:ブロック基を有するポリロタキサンの製造:反応温度の検討)
反応温度を下記表7のように水を含有させて使用した以外は、実施例1と同様に反応を行った。結果を表7に併せて示す。
【0073】
【表7】
*1:反応中の反応混合物の温度(℃)
*2:ブロック化されたポリロタキサンの取得収率(%)
*3:ブロック化されたポリロタキサンの純度(%)
*4:数式<1>より算出(%)
【0074】
上記のとおり、本発明の製造方法によれば、所望の包接率を有するブロック化されたポリロタキサンを収率90%以上、かつ純度(GPC面積百分率)も85%以上(概ね90%以上)で得ることができる。また、表1より、従来の縮合剤を使用した方法に比べてアミド化選択率についても向上しており、工業的にも非常に好適な製造方法である。