特許第6013463号(P6013463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013463
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】鉄基流動電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20161011BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20161011BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20161011BHJP
   H01M 4/96 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   H01M8/18
   H01M4/86 M
   H01M4/90 M
   H01M4/96 B
【請求項の数】28
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-513737(P2014-513737)
(86)(22)【出願日】2012年6月1日
(65)【公表番号】特表2014-519168(P2014-519168A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】US2012040429
(87)【国際公開番号】WO2012167057
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2015年5月11日
(31)【優先権主張番号】61/491,973
(32)【優先日】2011年6月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597138069
【氏名又は名称】ケース ウエスタン リザーブ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100156845
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 威一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100112896
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 宏記
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【弁理士】
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】サヴィネル ロバート エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ウェインライト ジェス エス.
【審査官】 太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−100460(JP,A)
【文献】 特開2010−092635(JP,A)
【文献】 特開2010−092636(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0183816(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86 − 4/98
H01M 8/00 − 8/0297
H01M 8/08 − 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fe2+イオン源を提供する第一の電解液と第一の半セル内に配置される電極とを含む第一の半セルと、
Fe2+及びFe3+イオン源を提供する第二の電解液と第二の半セル内に配置される電極とを含む第二の半セルと、
前記第一の半セル及び第二の半セル間の分離器と、
前記第一の半セルへ及び前記第一の半セルから前記第一の電解液を循環させるための、前記第一の半セルの外側に位置する第一の貯蔵タンクと、
前記第二の半セルへ及び前記第二の半セルから前記第二の電解液を循環させるための、前記第二の半セルの外側に位置する第二の貯蔵タンクと、を備える鉄流酸化還元セルであって
前記第一及び第二の半セルは、鉄流酸化還元セルの充電及び放電をするために酸化還元反応を実施し、
(a)第二の電解液はFe3+安定化剤を含み、又は(b)第一の電解液は水素放出抑制剤を含み、かつ、第二の電解液はFe3+安定化剤を含む、
前記第一の半セルにおける電極は、電気伝導性粒子、鉄粒子、鉄被膜粒子、又はそれらの組合せを備えるスラリーにより構成される、
鉄流酸化還元セル。
【請求項2】
前記Fe3+安定化剤は、シアン化合物、スクロース、グリセロール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、アセテート、オキサレート、シトラート、アセチルアセトネート、フッ化物、アミノ酸、タルトレート、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、又はそれら2種以上の組み合わせで構成されるグループから選択される
請求項1に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項3】
前記Fe3+安定化剤はグルタミン酸、グリシン又はそれらの組合せで構成されるグループから選択されるアミノ酸である
請求項2に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項4】
前記Fe3+安定化剤の濃度は0.01Mから10Mである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項5】
前記Fe3+安定化剤の濃度は0.1Mから5Mである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項6】
前記Fe3+安定化剤の濃度は1Mから5Mである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項7】
前記水素放出抑制剤は、ホウ酸、重金属又はその組み合わせで構成されるグループから選択される
請求項1から6いずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項8】
前記水素放出抑制剤は、Pb、Bi、Mn、W、Cd、As、Sb、Sn又はそれら2以上の元素の組み合わせで構成されるグループから選択される
請求項1から7いずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項9】
前記水素放出抑制剤は、0.1Mから5Mの濃度のホウ酸である
請求項1から8いずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項10】
前記水素放出抑制剤は、0.0001Mから0.1Mの濃度の重金属である
請求項1から9いずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項11】
前記第一の電解液は陽極液であり、
前記陽極液のpH値は1から6である、
請求項1から10いずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項12】
前記第一の電解液は陽極液であり、
前記陽極液のpH値は1から1.8である、
請求項1から11のいずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項13】
前記第一の電解液は陽極液であり、
前記第二の電解液は陰極液であり、
前記陰極液はFe3+安定化剤を含み、かつ、前記陽極液のpH値は2を上回る、
請求項1から12いずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項14】
前記電気伝導性粒子はグラファイト粒子から選定される、
請求項1から13のいずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項15】
前記第一の半セルの電極は、グラファイト、銅、チタニウム、又はそれら2種以上の組合せから選定される鉄被膜粒子を含む、
請求項14に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項16】
前記電気伝導性粒子は1ミクロンから1500ミクロンの粒子径を有する、
請求項14又は15に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項17】
1:1から10:1のエネルギー対電力率を有する、
請求項1から16のいずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項18】
1:1から5:1のエネルギー対電力率を有する、
請求項1から16のいずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項19】
1:1から3:1のエネルギー対電力率を有する、
請求項1から16のいずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項20】
150mAh/cm2から400mAh/cm2のメッキ容量を有する、
請求項1から17のいずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項21】
150mAh/cm2から200mAh/cm2のメッキ容量を有する、
請求項1から17のいずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項22】
60%から99%のメッキ効率を有する、
請求項1から21のいずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項23】
40%から85%のワット時効率を有する、
請求項1から22のいずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項24】
セルの稼働中での電解液の温度は20°Cから80°Cである、
請求項20から23のいずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか1項に記載の鉄流酸化還元セルを1つ以上備えるバッテリ。
【請求項26】
前記スラリーは、前記第一の半セル内で電気伝導性を維持するのに充分な粒子の容積を備える、
請求項1から24のいずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル又は請求項25に記載のバッテリ。
【請求項27】
前記電気伝導性粒子は、1000ミクロン以下の粒子径を有する、
請求項1から24のいずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル又は請求項25に記載のバッテリ。
【請求項28】
前記電気伝導性粒子は、100ミクロンの標準粒子径を有する、
請求項1から24のいずれか1項に記載の鉄流酸化還元セル又は請求項25に記載のバッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年6月1日に出願された" IRON BASED FLOW BATTERIES "と題する米国仮特許出願第61/491,973号の権利を主張するものであり、当該出願に記載の全ての内容を援用する。
【背景技術】
【0002】
酸化還元(redox)流動電池(レドックス・フロー電池)は化学的形態で電気エネルギーを貯蔵し、続いて、自発的逆酸化還元反応を介し、電気的形態にて貯蔵エネルギーを分配する。酸化還元流動バッテリは電気化学的貯蔵装置であり、その内部では一以上の溶解電気活性化学種を含有する電解液が反応セル内を貫流し、この反応セルでは化学エネルギーが電気エネルギーに変換される。逆に、放出電解液は反応セル内を貫流し得るもので、これにより電気エネルギーは化学エネルギーに変換される。流動バッテリで使用される電解液は一般的にイオン化した金属塩溶液から構成されており、金属塩溶液は、大型の外部タンクに貯蔵され、印加された充電/放電電流に従ってセルそれぞれの側を介して汲み上げられる。外部に貯蔵された電解液は、汲み上げ方式、重力供給方式又はその他すべてのシステム内流体貫動方式によりバッテリシステム内を流れることができる。流動バッテリでの反応は可逆的であり、電解液は、電気反応性材料を交換することなく再充電され得る。従って、酸化還元流動バッテリ(レドックス・フロー電池)のエネルギー容量は、総電解液容積、例えば、貯蔵タンクのサイズに関連している。全出力での酸化還元流動バッテリの放電時間は、また電解液容積に依存しており、数分から数日間まで変動する。
【0003】
エネルギーの電気化学変換を行う最少ユニットは、流動バッテリ、燃料電池又は二次電池であろうと、一般的に"セル"と呼ばれる。電気的に直列又は並列に結合されたこのような多数のセルを一体化し高電流又は高電圧若しくはその双方を得る装置は、一般的に"バッテリ"と呼ばれる。ここで用いるように、 "バッテリ"は、単一の電気化学セル又は電気的に結合された複数のセルに言及してもよい。伝統的な各バッテリのように、各セルは流動バッテリシステムにおいて共に"積み上げ"得るもので、それにより所望の電力出力を達成している。そのため、"セル"と"バッテリ"とはここでは相互交換的に使用可能である。
【0004】
電解液は外部に貯蔵されるため、流動バッテリで蓄電され得るエネルギー量は化学物質の溶解度とタンクのサイズでほとんど決定される。タンクのサイズと貯蔵容量は容易に測量することができる。真流動バッテリは全ての化学種を有し、該化学種はバッテリ内を貫流し外部タンクに貯蔵されるもので、そのためエネルギーと体積容量は独立に測定可能となる。バナジウム酸化還元流動バッテリは、真流動バッテリの例であり、近年多大な注目を受けている。ハイブリッド型流動バッテリ(ハイブリッドフロー電池)では、各化学状態のうち少なくとも一つの状態が、金属メッキを施す手段で得られるような堆積物内に存在する。ハイブリッドフロー電池の一つの例として、亜鉛金属メッキが施される亜鉛臭素電池が挙げられる。これらのシステムでは、電力容量とエネルギー容量が結合され、メッキ密度はエネルギー/電力容量率に影響を与える。
【0005】
酸化還元流動バッテリは、電気エネルギーの蓄積を必要とする多数の技術で実用可能である。例えば、酸化還元流動バッテリは、(廉価に生産できる)夜間時の電気を蓄電し、続いて電気生産がより高価となる又は電気需要が電力の生産能力を超えるときなどの需要ピーク中に電力を供給するために利用可能である。また、そのような電池は、グリーンエネルギー、すなわち風力、太陽熱、風力又は非従来型エネルギー源等の再生可能エネルギー源から生成されるエネルギーの蓄積に利用可能である。
【0006】
電気で稼働する数多くの装置はその電力供給源の突然の除去により悪影響を受ける。酸化還元流動バッテリは、より高価なバックアップ発電器に替えて無停電電源として利用できる。電力遮断の影響又は突然の停電の影響を緩和する組み込み型バックアップ電源を有する装置を構築するために、電力貯蔵の効率的な方法が活用できる。電力貯蔵装置はまた、発電所での故障の影響を軽減することが可能である。
【0007】
無停電電源が重要となるその他の状況として、限定されるわけではないが、病院などのように無停電電源が死活問題となる施設が含まれる。そのようなバッテリはまた、開発途上国での無停電電源を提供するのに利用可能であり、それら開発途上国の多くは信頼に足る電源を持ち合わせておらず、結果的に電源可用性は断続的なものとなっている。レドックス・フロー電池の他の可能な利用対象として電気自動車がある。電気自動車は電解液を交換することで急速"再充電"が可能である。電解液は車両とは分離して再充電し再利用可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は鉄基流動バッテリを提供する。本発明の態様に係る鉄流動バッテリは、充分に高いセル電圧と秀逸なクーロン効率とボルタ効率を発揮する電源を提供できる。鉄流動バッテリはまた、バナジウム基レドックス・フロー電池のような従来技術を基礎としたレドックス・フロー電池又は亜鉛基流動バッテリのようなハイブリッド型流動バッテリよりはるかに廉価なバッテリ及びそのシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一の態様に於いて、本発明は鉄以外の反応成分(無効成分)が実質的に無い鉄基流動バッテリを提供する。
【0010】
一の態様に於いて、本発明は鉄基流動バッテリを提供するものであって、該鉄基流動バッテリは、Fe2+イオン源を提供する第一の電解液と第一の半セル内に配置される電極とを含む第一の半セルと、Fe2+イオンとFe3+イオン源を提供する第二の電解液と第二の半セル内に配置される電極とを含む第二の半セルと、前記第一の半セル及び第二の半セル間の分離器と、第一の半セルへ及び第一の半セルから第一の電解液を循環させるための、前記第一の半セルの外側に位置する第一の貯蔵タンクと、第二の半セルへ及び第二の半セルから第二の電解液を循環させるための、前記第二の半セルの外側に位置する第二の貯蔵タンクと、を備え、バッテリの充電及び放電をするために前記各半セルは酸化還元反応を実施し、第一の電解液は水素放出抑制剤を含む。
【0011】
他の態様において、本発明は鉄基流動バッテリを提供するものであって、該鉄基流動バッテリは、Fe2+イオン源を提供する第一の電解液と第一の半セル内に配置される電極とを含む第一の半セルと、Fe2+及びFe3+イオン源を提供する第二の電解液と第二の半セル内に配置される電極とを含む第二の半セルと、前記第一の半セル及び第二の半セル間の分離器と、第一の半セルへ及び第一の半セルから第一の電解液を循環させるための、前記第一の半セルの外側に位置する第一の貯蔵タンクと、第二の半セルへ及び第二の半セルから第二の電解液を循環させるための、前記第二の半セルの外側に位置する第二の貯蔵タンクと、を備え、バッテリの充電及び放電をするために前記各半セルは酸化還元反応を実施し、第二の電解液はFe3+安定剤を含む。
【0012】
更なる他の態様において、本発明は鉄基流動バッテリを提供するものであって、該鉄基流動バッテリは、Fe2+イオン源を提供する第一の電解液と第一の半セル内に配置される電極とを含む第一の半セルと、Fe2+及びFe3+イオン源を提供する第二の電解液と第二の半セル内に配置される電極とを含む第二の半セルと、前記第一の半セル及び第二の半セル間の分離器と、第一の半セルへ及び第一の半セルから第一の電解液を循環させるための、前記第一の半セルの外側に位置する第一の貯蔵タンクと、第二の半セルへ及び第二の半セルから第二の電解液を循環させるための、前記第二の半セルの外側に位置する第二の貯蔵タンクと、を備え、バッテリの充電及び放電をするために前記各半セルは酸化還元反応を実施し、第一の電解液は鉄メッキを施す伝導性粒子のスラリーを含む。
【0013】
一の態様に於いて、Fe2+イオン源を提供する第一の電解液と第一の半セル内に配置される電極とを含む第一の半セルと、Fe2+及びFe3+イオン源を提供する第二の電解液と第二の半セル内に配置される電極とを含む第二の半セルと、前記第一の半セル及び第二の半セル間の分離器と、第一の半セルへ及び第一の半セルから第一の電解液を循環させるための、前記第一の半セルの外側に位置する第一の貯蔵タンクと、第二の半セルへ及び第二の半セルから第二の電解液を循環させるための、前記第二の半セルの外側に位置する第二の貯蔵タンクと、を備え、バッテリの充電及び放電をするために前記各半セルは酸化還元反応を実施し、ここで、(a)第二の電解液はFe3+安定化剤を含み、(b)第一の電解液は水素放出抑制剤を含み、又は(c)第一の電解液は水素放出抑制剤を含み、かつ、第二の電解液はFe3+安定化剤を含む。
【0014】
一の実施の形態では、鉄流酸化還元セルは、シアン化合物、スクロース、グリセロール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、アセテート、オキサレート、シトラート、アセチルアセトネート、フッ化物、アミノ酸、タルトレート、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、又はそれら2種以上の組み合わせの中から選定されるFe3+安定化剤を含む。
【0015】
一の実施の形態では、Fe3+安定化剤はグルタミン酸、グリシン又はそれらの組合せから選定されるアミノ酸を含む。
【0016】
一の実施の形態では、Fe3+安定化剤の濃度は、0.01Mから10M、0.1Mから5M、更に1Mから5Mである。
【0017】
一の実施の形態では、鉄流酸化還元セルは、ホウ酸、重金属又は其の組み合わせから選定される水素放出抑制剤を含む。
【0018】
一の実施の形態では、水素放出抑制剤は、Pb、Bi、Mn、W、Cd、As、Sb、Sn又はそれら2種以上の組み合わせから選定される。
【0019】
一の実施の形態では、酸化還元セルは、0.1Mから5Mの濃度のホウ酸を含む。
【0020】
一の実施の形態では、酸化還元セルは、0.0001Mから0.1Mの濃度の重金属を含む。
【0021】
一の実施の形態では、陽極液のpH値は1から6である。他の実施の形態では、陽極液のpH値は1から1.8である。
【0022】
一の実施の形態では、陰極液はFe3+安定化剤を含み、陽極液のペーハー値は2を上回る。
【0023】
一の実施の形態では、第一の半セルの電極は、電気伝導性粒子、鉄粒子、鉄被膜粒子、又はそれらの組合せを含むスラリーを含む。
【0024】
一の実施の形態では、電気伝導性粒子はグラファイト粒子から選定される。
【0025】
一の実施の形態では、第一の半セルの電極は、グラファイト、銅、チタニウム、又はそれら2種以上の組合せから選定される鉄被膜粒子を含む。一の実施の形態では、電気伝導性粒子は1ミクロンから1500ミクロンの粒子径を有する。
【0026】
一の実施の形態では、酸化還元セルは、1:1から10:1、1:1から5:1、更に1:1から3:1のエネルギー対電力率を有する。
【0027】
一の実施の形態では、酸化還元セルは、150mAh/cm2から400mAh/cm2、更に150mAh/cm2から200mAh/cm2のメッキ容量を有する。
【0028】
一の実施の形態では、酸化還元セルは、60%から99%のメッキ効率を有する。
【0029】
一の実施の形態では、酸化還元セルは、40%から85%のワット時効率を有する。
【0030】
一の実施の形態では、セルの稼働中での電解液の温度は20°Cから80°Cである。
【0031】
一の実施の形態では、酸化還元セルは、第一の半セルへ及び第一の半セルから第一の電解液を循環させるための、前記第一の半セルの外側に位置する第一の貯蔵タンクと、第二の半セルへ及び第二の半セルから第二の電解液を循環させるための、前記第二の半セルの外側に位置する第二の貯蔵タンクとを含む。
【0032】
他の実施の形態において、本発明は、前述の各段落に記載の特徴のうち1つ以上の特徴を有する酸化還元セルを1つ以上備えるバッテリを提供する。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る鉄流動バッテリは、バナジウム基流動バッテリにおよそ相当する約1.2Vのセル電位を有することができ、また他の各流動バッテリと比較すると概して無毒性である。しかし、本鉄流動バッテリは、各バナジウム基流動バッテリよりもはるかに廉価である。本発明の各態様に係る流動バッテリの費用はバッテリについてはキロワットあたり約250ドルであり、電解液及び貯蔵器についてはキロワット時あたり30ドルであり、約75%以上の繰り返し貯蔵効率を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本発明の各実施の形態に適応する流動バッテリの概略図である。
図2図2は、ホウ酸を有するまたは有しない塩化第二鉄溶液からの鉄メッキ効率を示すグラフである。
図3図3は、グリセロールを有する又は有しない白金電極でのFe2+/3+酸化/還元についての周期的なボルタンモグラムである。
図4図4は異なる電極液温度での、グリセロールを有する白金電極でのFe2+/3+酸化・還元に対する周期ボルタンモグラムを示す図である。
図5-15】図5−15はそれぞれ、各種Fe3+安定化剤を含有する電解液に対する白金電極でのFe2+/3+酸化/還元に対する周期ボルタンモグラムを示す図である。
図16図16は、回転ディスク電極試験下で得られた、各種電解液に対する偏極カーブを示す図である。
図17図17は、グラファイト粒子を用いるスラリー電極を利用する各セルについてのセル電力対電流密度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明の態様に関連する使用に好適な鉄基流動電池システム100の実施の形態を示す。流動電池100は、分離器106で分離された2個の半セル102と104とを含む。半セル102と半セル104とは個別に電極108と電極110とを含み、これら電極は電解液と接触しており、これにより電極の一方の表面で陽極反応が起き、他方の電極の表面で陰極反応が起きる。電解液は、酸化反応と還元反応が起きるのにつれて、半セル102と104のそれぞれで流れる。図1では、陰極反応が半セル102内の電極108(ここでは、正の電極又は陰極と称する)で起きており、陽極反応が半セル104内の電極110(ここでは、負の電極又は陽極と称する)で起きている。
【0036】
半セル102と104内の電解液は、システム内を通って、貯蔵タンク112と貯蔵タンク114のそれぞれに流入し、新規電解液/再生電解液は各タンクから各電池に流入する。図1では、半セル102内の電解液は管116内を通って保持タンク112に流入し、タンク112内の電解液は管118内を通って半セル102に流入している。同様に、半セル104内の電解液は管120を通って保持タンク114に流入することができ、タンク114からの電解液は管122を通って半セル104に流入する。システムは、システム内の電解液の流れを所望するように補助又は制御するように構成することが出来るものであり、例えば、いかなる好適なポンプシステム又はバルブシステムを含んでもよい。図1に示す実施の形態では、システムはポンプ124とポンプ126とを含み、これにより電解液をタンク112とタンク114のそれぞれから汲み上げて各半セルに供給している。幾つかの実施の形態では、保持タンクは各セルを貫流した電解液を未だ貫流していない電解液から隔離できるタンクである。しかしながら、電解液を混在排出又は部分排出することも可能である。
【0037】
電極108と電極110とは、負荷装置又は電源から電気エネルギーを供給する又は供給されるよう結合構成とすることができる。負荷装置に含まれるその他の監視・制御電子装置は、半セル102及び104での電解液の流れを制御することができる。複数のセル100は、より高い電圧を達成するために電気的に直列結合("積み上げ")構成とすること、又はより高い電流を達成するために電気的に並列結合("積み上げ")構成とすることができる。
【0038】
鉄流動バッテリでは、半セル反応は下記のようになる。
充電:
Fe2+ + 2e- → Fe0 負電極
2Fe2+ → 2Fe3+ + 2e 正電極
放電:
Fe0 → Fe2+ + 2e 負電極
2Fe3+ + 2e- → 2Fe2+ 正電極
充電中において半セル104の負電極110上に鉄板が突出(例えば、図1では鉄メッキ128)しており、放電時にFe2+が放出される。
【0039】
半セル102と104用の電解液は、各半セルでの反応実施に必要な好適なイオン源を提供するよう選定される。正電極での酸化還元反応に用いられる電解液は好適な塩溶液であって、該塩溶液は第一鉄(Fe2+)及び第二鉄(Fe3+)のイオン源を構成する。また、この電解液は、ここでは陰極液とも称する。負電極での反応に用いられる電解液はFe2+イオン源を構成する。また、この電解液は、ここでは陽極液とも称する。電解液はいかなる好適な塩溶液であってよく、該塩溶液は、下記に限定されるわけではないが、塩化物塩、硫酸塩、硝酸塩又はそれら2種以上組み合わせを含む。一の実施の形態では、陰極液はFeCl2とFeCl3の溶液から成り、該溶液は他の鉄塩と比較して相対的に大きな電荷搬送容量を与える。Fe2+イオン(例えば、FeCl2)を与える塩の濃度は約0.01Mから約5M、約0.05Mから約2.5M、更には約0.1Mから約1Mでよく、またFe3+イオン(例えば、FeCl3)を与える塩の濃度は約0.01Mから約5M、約0.05Mから約2.5M、更には約0.1Mから約1Mでよい。一の実施の形態では、FeCl2の濃度は約1.0Mであり、FeCl3の濃度は約1.0Mである。
【0040】
一の実施の形態では、陽極液はFeCl2溶液から成る。FeCl2の濃度は約0.01Mから約5Mである。
【0041】
一の実施の形態では、鉄流動バッテリは陽極液を含み、該陽極液は負電極での水素放出を削減する添加物を含有する。負電極(例えば、電極110)での水素放出はバッテリのクーロン効率を減少させ、このクーロン効率の減少はワット時効率を減少させる。加えて、また、水素放出は電解液のpH(hydrogen ion exponent)を上昇させ、その結果、水酸化第二鉄として沈殿する第二鉄イオンを生じさせる。好適な水素放出抑制添加物は、ホウ酸に限定されるわけではなく、重金属を含み、そのような有機材料は界面活性剤や腐食防止剤として好適である。クーロン効率は、グラファイト基板上に鉄メッキを施し、続いて電流下降が10μAを下回るまで鉄を剥離することでその値を求めることができる。クーロン効率は、メッキ処理中に通過した電気量(クーロン)で除算した、剥離処理中に通過した電気量(クーロン)に等しい。
【0042】
一の実施の形態では、負の半セルの電解液はホウ酸を含む。ホウ酸の濃度は、約0.1Mから約5M、約0.5Mから約2M、約0.7Mから約1.5Mであってよい。一の実施の形態では、ホウ酸の濃度は約1Mである。室温では、濃度1Mのホウ酸は溶解度限界の近傍値にある。高気温下では、更に高い濃度のホウ酸を用いてよい。好適な又は有用なレベルで濃度を保持するよう逐次ホウ酸を陽極液に補給するようにしてもよいことは理解されよう。
【0043】
一の実施の形態では、負の電解液は、負電極での水素発生を抑制するのに好適な金属添加物を含む。負電極での水素放出を抑制する好適な重金属の例には、限定されるわけではないが、Pb、Bi、Mn、W、Cd、As、Sb、Sn、それら2種以上の組み合わせ等が含まれる。特定の理論に拘束されない限りにおいて、金属添加物は、樹状突起の無い堆積物の形成を容易にし、かつ鉄と共に陽極上に共堆積され得る。放電では、金属類は鉄と共に剥離され電解溶液に戻る。重金属添加物は、約0.0001Mから約0.1Mの量で存在してもよい。他の実施の形態では、重金属添加物は、約0.001Mから約0.05Mの量で存在してもよい。更なる他の実施の形態では、重金属添加物は、約0.01Mから約0.025Mの量で存在してもよい。
【0044】
水素放出抑制剤入りの陽極液のpHは約1から約6であってよい。溶液の稼働pH値は、特定の目的又は意図する使途のために所望の如く選定されてよい。一の実施の形態では、陽極液のpH値は約2から約4である。他の実施の形態では、陽極液のpH値は約1から約1.8である。
【0045】
図2に示されるように、FeCl2溶液からの鉄のメッキ効率はより高いpHレベルで上昇する。しかしながら、pHレベルが約2では、Fe3+は、不溶解であり、水酸化第二鉄(Fe(OH)3)として溶液から沈殿し始める。特別な用途でpHレベルが"2"を上回る陽極液を用いるならば、システムは好ましくはFe3+の沈殿を回避するよう構成される。この構成は、セルに於けるイオン選別分離器、例えば、陰イオン薄膜を分離器106として用いることで達成できる。更に、"2"を上回るpH値を陽極液に、また"2"を下回るpH値を陰極液に付与するようなpH勾配を維持する分離器を用いて、システムを構成することができる。また、発明のその他の態様に従い更に下記の如く記載されるように、電解液は、溶液のFe3+イオンを結合維持するリガンド(配位子)を含んでよい。負の電解液のpH値が"2"を上回るような鉄流動バッテリの稼働では、イオン選別薄膜を使用する必要はないであろう。鉄堆積物を付着させクーロン効率を低下させるであろう第二鉄イオンの交錯を防止するためには、イオン選別薄膜の使用を採用してもよい。
【0046】
他の実施の形態では、鉄流動バッテリ及びそのシステムは、第一鉄・第二鉄結合を制御する添加物を含む陰極液を備える。上記のように、電解液のペーハー値が"2"を上回る場合、電解液の第二鉄イオンは沈殿し始めるであろう。Fe3+安定化リガンドを特定目的又は意図する使途のために所望の如く選定してもよい。一の実施の形態では、陰極液は第二鉄イオンの安定化に好適なリガンドを含み、これにより、比較的高い開路電位(E°)を維持しながら、第二鉄イオンが(水酸化第二鉄として)沈殿することを有意的に回避又は防止している。この添加物は、ここではFe3+安定化リガンドと称する。加えて、Fe2+3+反応の電気化学的な挙動を著しく妨げないリガンドを用いることが望ましい。鉄流動バッテリでは、ここで記載した変性陽極液又は変性陰極液を単独又は相互に組み合わせる形態で用いてよい。一の実施の形態では、鉄流動バッテリは、水素放出抑制剤を含む変性陽極液を含んで成る。他の実施の形態では、Fe3+結束リガンドを含む変性陰極液を備える。更なる他の実施の形態では、鉄流動バッテリは、水素放出抑制剤を含む陽極液と、Fe3+結束リガンドを含む陰極液を備える。
【0047】
一の実施の形態では、Fe3+安定化リガンドは、OH-よりも大きく、かつFe2+及びFe3+に類似する平衡定数を有する材料から選定され、これにより充分に高い電位(E°)と交換電流密度(i0)とが与えられる。一の実施の形態では、Fe3+安定化リガンドは、シアン化合物、スクロース(ショ糖)、グリセロール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセテート、オキサレート、シトラート(クエン酸)、アセチルアセトネート、フッ化物、タルトレート、リンゴ酸、琥珀酸、アミノ酸(限定されるわけではないが、グルタミン酸、グリシン等を含む)、それら2種以上の組み合わせ等から選定されてよい。一の実施の形態では、グリセロールがFe3+安定化リガンドとして用いられる。
【0048】
Fe3+安定化リガンドの濃度は、Fe3+イオンの沈殿を防止するに十分な濃度で電解液に存在させることができる。一の実施の形態では、Fe3+安定化リガンドの濃度は約0.01Mから約10Mである。他の実施の形態では、Fe3+安定化リガンドの濃度は約0.1Mから約5Mである。更なる他の実施の形態では、Fe3+安定化リガンドの濃度は約1Mから約5Mである。Fe3+安定化リガンドは陰極液での補助溶剤と考え得ることが理解できるであろう。
【0049】
それぞれの実施の形態では、Fe3+安定化リガンドは陰極液の導性を減少させる効果を有してもよい。Fe3+安定化リガンドの伝導性が低い場合、必要であれば、電解溶液の電気伝導性を向上させるために好適な塩成分を添加するのが望ましいであろう。好適な塩成分は、下記に限定されるわけではないが、NaCl、KCl、NH4CL、LiCl等を含んでよい。
【0050】
上述のように、鉄流動バッテリでは、水素放出抑制剤を含む陽極液と併せて、Fe3+安定化リガンドを有する陽極液を用い得る。しかしながら、Fe3+安定化リガンドを陰極液が有するときには、そのような陽極液添加剤の使用は不必要であることは理解されるであろう。これは、陰極でのFe2+3+反応と陽極でのFe2+/Fe0反応の双方に対する電気化学的挙動が、その目的のために特別に加えられる添加剤を用いることなく、陽極での水素放出抑制を効果的に行うに充分なほど急速となるからである。
【0051】
鉄流動バッテリで使用される電極(電極108及び110)は全ての好適な電極材料から選択することができる。一の実施の形態では、それぞれの電極はグラファイト電極である。電極は、特定目的又は意図する使途のために所望の如く特定形状に構成することができる。一の実施の形態では、電極面は実質的に平面とすることができる。一の実施の形態では、陰極面は輪郭面又は形状面とすることができ、これによりさらに広い面積が提供される。加えて、電極は多孔性発泡体とすることができる。
【0052】
分離器(例えば、分離器106)は特定目的又は意図する使途のために所望の選定をすることができる。一の実施の形態では、薄膜は、いかなる活性イオン交換材料をも有しない多孔性薄膜である。他の実施の形態では、薄膜はイオン選択性多孔性薄膜である。一の実施の形態では、薄膜は陰イオン性の薄膜である。先に説明したように、陰イオン性薄膜は、システムがそれぞれ異なるpHレベルを有する陽極液と陰極液を使用する場合及び交差混合からの電解液の保護が必要な場合に、好適であり得る。
【0053】
一の実施の形態では、鉄流動バッテリとそのシステムは、負電極での電力とエネルギーを分離するよう提供される。図1に示すシステムでは、蓄積されるエネルギーと供給される電力は達成される鉄メッキの厚さで制限される。電力の分離に係る実施の形態では、鉄メッキは、セルを介して循環され得る基板上に施される。
【0054】
一の実施の形態では、陽極での電力/エネルギーを分離するためのシステムは、スラリー電極又は流動床式電極を負電極として用いることを含む。スラリーは、電解液に電極伝導性を分与するに充分な粒子を含む。好適な粒子物質は、炭素系(例えば、グラファイト)粒子、鉄粒子、鉄被覆粒子、又はそれら2種以上の組み合わせで構成される。鉄被覆粒子は、コアとして電気伝導性粒子を含むことができる。一の実施の形態では、鉄被覆粒子は、鉄被覆される、炭素系粒子、銅粒子、又はチタン粒子を含むことができる。鉄被覆粒子は、鉄メッキによって構成される粒子であることができる。時間が経つにつれて、鉄粒子と鉄メッキとは減損し得るもので、鉄被覆粒子を使用することで依然として電気伝導性を発揮するスラリーが電気伝導性の粒子を介して提供される。一の実施の形態では、スラリー電極は充分な容積の電解液中で懸濁した鉄粒子を含み、これによりスラリーがバッテリを介して汲み上げ可能となり、この際、粒子は電気伝導性の為の粒子接点に維持されている。粒子径は所望する径に選定される。一の実施の形態では、粒子は、約1ミクロンから1500ミクロン、約5ミクロンから1000ミクロン、約10ミクロンから500ミクロン、約20ミクロンから250ミクロン、更に約50ミクロンから100ミクロンの粒子径を有することができる。一の実施の形態では、粒子は、約100ミクロンの標準粒子径を有することができる。ここでは、明細書及び請求項のその他の個所と同様に、数値は新規又は非開示の範囲を構成するようその組合せが可能である。特定の理論に拘束されない限りにおいて、より大きな粒子を使用することで、粒子それ自体を粒子接点まで減少させ、スラリーの伝導性を上昇させることができる。スラリー電極を使用することで、鉄メッキ/溶解に対する過電位を最小化する広面積が得られ、かつ(平坦電極へのメッキと比較して)高いサイクル寿命が得られる。
【0055】
貯蔵の目的には、電気化学的セル外のスラリーの脱水が望ましい。貯蔵される材料の総容量と必要とする電解液の総容量とがこの脱水により最小化され、貯蔵中での鉄の腐食が低下するであろう。脱水中に取り除かれた電解液は、バッテリ内に導入される伝導性粒子の再スラリー化を行うために使用できる。
【0056】
他の実施の形態では、負電極は、鉄メッキが施されるであろうコイル状スチールにより提供されることができる。10μmの厚さにメッキされたコイル状スチール(幅約1.2m、長さ約1,000m)は、90,000Ahrを上回る蓄電容量を提供し得る。その他のコイル形状にかかわる手法についてその変形を用いることができる。例えば、コイル状スチールに替えて、金属化されたポリマー膜にメッキを施すことが可能である。ポリマー膜は、銅薄膜層又は金のような不活性金属の薄膜層などで被膜するように、すべての好適な金属で被膜可能である。この薄膜層の被膜により、大規模システムの重量、複雑性及びコストが減少されるはずである。
【0057】
動力/エネルギー分離システムは、特により大規模な鉄流動バッテリシステムに好適であろう。より小規模なシステム又は一定の用途では、動力/エネルギー分離システムは必要としないであろう。これらの場合、薄膜に向かって減少する集電器からの均一な電流分布又は均一な反応分散に対して、適切に設計されているのであれば、グラファイトフェルトのような負電極基板は合理的であるかもしれない。
【0058】
鉄流動バッテリは、電流密度が約75から400mA/cm2で稼働可能である。一の実施の形態では、このバッテリは、電流密度が約80mA/cm2から稼働される。他の実施の形態では、バッテリは、電流密度が約100mA/cm2で稼働される。電解液の温度は約25°Cから80°Cとなり得る。一の実施の形態では、バス(浴槽)の温度は約70°Cである。概ね室温(例えば、約25°C)で稼働していても、バスの温度は稼働中に上昇し得ることが理解されるであろう。
【0059】
本発明の各態様に係る鉄流動バッテリは、分離システムにおいて、約1:1から約10:1を上回るエネルギー対電力率を有することが可能である。一の実施の形態では、 エネルギー対電力率は約1:1から約5:1である。他の実施の形態では、エネルギー対電力率は約1:1から約3:1である。平坦基板を有するシステムのメッキ容量は、約150mAh/cm2から400mAh/cm2であってもよい。一の実施の形態では、システムのメッキ容量は、約150mAh/cm2から200mAh/cm2であってもよい。メッキ容量が大きくなれば、放電時間も上昇し、結果としてシステムのエネルギー対電力率が増加する。
【0060】
バスのワット時効率は、約40%から85%とすることができる。一の実施の形態では、ワット時効率は、約40%から55%である。ここで適用したように、ワット時効率は、セルの充電と放電中の等電流での充電電圧で除算された放電電圧の謂いである。充電電圧とは、セル充電に対する挙動、電気抵抗及び物質移動の過電位の総量を差し引いた開回路電位の謂いである。放電電圧とは、セル放電に対する挙動、電気抵抗及び物質移動の過電位の総量を差し引いた開回路電位の謂いである。
【0061】
本発明の各態様に係る鉄流動バッテリは、繰り返し充電と放電が可能であり、各種用途での電力の一時蓄電用のバッテリとして好適である。鉄流動バッテリは、下記の用途に限定されるわけではないが、エネルギー伝送グリッド、発電所等の一部としての使用を含む広範囲な用途に用いることができる。
【0062】
此処で用いられるように、個々の数値は追加的及び/又は非開示の範囲を構成するようその組合せが可能である。
【0063】
発明の各態様は下記の実施例に関連して更に理解されるであろう。各実施例は発明の可能な各実施の形態を例証するものであるが、発明又は添付の請求項の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0064】
(実施例1−2)
メッキ処理は、Ag/AgClの基準電極に対して−1.2V(約90mA/cm2)で1M FeCl2のバスで実施される。実施例1及び実施例2は、1Mの濃度のホウ酸を含む。実施例1は室温で実施され、実施例2は70°Cで実施される。図2は、添加剤を有しないFeCl2溶液及び1Mのホウ酸を有する溶液に対するpH値の関数としてのメッキ効率を示す。図2に示すとおり、pH値と共にメッキ効率は上昇し、ホウ酸を含む各溶液はホウ酸を含まない溶液よりも高い効率を有する。加えて、メッキ効率は、上昇した温度で、電解液を含むホウ酸に対して増加する。
【0065】
(実施例3−6)
メッキ処理は、10Mの濃度のグリセロールを含む1M FeCl2のバスで実施される。表1に、各種電解液pHレベルでのグリセロールのメッキ効率を示す。
【表1】
表1に示されるように、グリセロールによって減少したpHレベルであっても高い鉄メッキ効率が得られる。
【0066】
図3は周期的なボルタンモグラムであって、このボルタンモグラムは室温でのグリセロールを有する溶液とグリセロールの無い溶液での白金電極(Ag/AgCl基準電極を用いる)のFe2+3+酸化還元電位を示している。図3に示すように、グリセロールを含む溶液の酸化還元電位の挙動は、非グリセロールシステムと比較して、有意な変化を示しておらず、またE°電位も変位していない。加えて、陰極液でのグリセロールの使用によって、90%以上のクーロン効率でのメッキ処理が見込まれ得る。
【0067】
(実施例7−9)
周期的なボルタンメトリは、10mV/sの掃引率で、グラスカーボン作用電極、白金メッシュ対向電極、及びAg/AgCl基準電極を用いて、0.1MのFeCl2と、0.1MのFeCl3と、1MのNaClと、0.8Mのグリセロールとの組成を有する電解液中で実施される。電解液のpH値は"2"であり、電解液の温度は60°C(実施例7)、40°C(実施例8)、又は20°C(実施例9)である。図4は、異なる試験用の周期ボルタンモグラムを示しており、酸化還元反応の挙動と質量移行がより高い温度で改善可能であることを示している。
【0068】
(実施例10−25)
周期的なボルタンメトリは、10mV/sの掃引率で、0.1MのFeCl2と、0.1MのFeCl3と、1MのNaClと、0.3MのFe3+安定化剤との組成を有する電解液中で、グラスカーボン作用電極、白金メッシュ対向電極、及びAg/AgCl基準電極を用いて施される。各Fe3+安定化剤は、グリシン(アミノ酸)(実施例10)、グリセロール(実施例11)、キシリトール(実施例12)、スクロース(実施例13)、グルタル酸(実施例14)、アセテート(実施例15)、アスパラギン酸(実施例16)、クエン酸(実施例17)、ジメチルスルホキシド(実施例18)、グルタル酸(実施例19)、ラクタート(実施例20)、リンゴ酸(実施例21)、マロン酸(実施例22)、オキサレート(実施例23)、コハク酸(実施例24)及びスクロース(実施例25)である。図5図15は、Fe3+安定化リガンドを含まない電解液(比較例2)と比較して、実施例10−14の各電解液に対する各周期性ボルタンモグラムを示す。
【0069】
(実施例26−29)
回転ディスク電極試験は、0.01MのFeCl2と、0.01MのFeCl3、0.03MのFe3+安定化剤と、1MのNaClとの組成を有する電解液中で、グラスカーボン回転ディスク電極を用いて実施される。図16は、各種電解液に対する偏極カーブを示す。グリセロール、キシリトール、及びスクロースは、反応率及び限界電流に対して極めて類似する効果を示す。グリシンは、反応を緩慢にさせ、かつ、他の各リガンドより更に限界電流を減少させる。各Fe・リガンド複合物は全て、いかなるFe3+安定化剤(比較例3)も有しない電解液よりも小さい拡散係数を有する。これは、錯体のサイズ(分子径)及び電解液の増加粘度と発現する過剰リガンドとの組み合わせに由来しているであろう。
【0070】
(実施例30)
ここでは、2つの半セルを有する対称形状のセルが提供される。各セルは、ナフラン117の薄膜で分割されている。両側ではFe2+⇔Fe3+反応が発現し、両側の電解液は、0.5MのFeCl2、0.5MのFeCl3、及び1.0MのNaClであり、pH値は約"1"である。電解液は、一つの貯蔵器に貯蔵されており、セルの両側に供給されて再循環する。セルはスラリー電極システムを用い、電解液は約7−11μmの粒径を有するグラファイト粒子を含む。対称形状のセルの性能は、3mV/secと30mV/secとのスキャン率でかつACインピーダンスで、−0.5Vから0.5Vの間の周期性ボルタンメトリを用いて調べられるものであって、スラリー電極の効果を証明するよう意図される。20、30、40及び50mL/minの電解液流量もまた調査される。カーボン粒子の異なる配合量の測定は、どの配合量で電解液が電気的伝導性を帯びるか見ることで成されるものであり、この時点でセルの振る舞いは平板状集電器のものから広面積配分化電極を有するシステムに対するものに変化する。異なるカーボン配合量の変化についての典型的な結果が図17に示されており、ここではカーボン配合量は0〜10vol%であり、電解液流量は40mL/minである。この図での電流密度は集電器の幾何学的な面積に基づいている。
【0071】
平板状電極に対して、理論的な限界電流は、20mL/minの流量及び50mL/minの流量に対して、層流の典型的相対関係を用いて、それぞれ41mA/cm2及び56mA/cm2と見積もられる。図17では、0%と2.5%のカーボン配合量に対する周期性ボルタンモグラムは、限界電流に近づくにつれ+/−0.3V周辺で曲線関係を示しており、これら配合量での平板性振る舞いについて一貫性を保っている。
【0072】
鉄流動バッテリの各態様は一定の各実施の形態について例証且つ説明されたが、当業者に於いては本明細書を閲読し且つ理解すれば直ちにその均等態様及び変更態様が想起され得ることは理解されるであろう。本発明はその様な全ての均等態様及び変更態様を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17