(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013464
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】建設プラント型の重車両用タイヤビード
(51)【国際特許分類】
B60C 15/06 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
B60C15/06 Q
B60C15/06 B
B60C15/06 F
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-514046(P2014-514046)
(86)(22)【出願日】2012年6月6日
(65)【公表番号】特表2014-518811(P2014-518811A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】EP2012060646
(87)【国際公開番号】WO2012168270
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2015年4月10日
(31)【優先権主張番号】1154926
(32)【優先日】2011年6月7日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】カンパニー ジェネラレ デ エスタブリシュメンツ ミシュラン
(73)【特許権者】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ボンデュ リュシアン
【審査官】
小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−015951(JP,A)
【文献】
特開平09−099715(JP,A)
【文献】
国際公開第2002/085647(WO,A1)
【文献】
特開2009−113715(JP,A)
【文献】
特表2013−513507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00−19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設プラント型重車両用のタイヤであって、リム(6,26)に接触するようになった2つのビードと、金属補強要素で構成された少なくとも1つのカーカス補強材層(1,12)を含むカーカス補強材とを有し、前記カーカス補強材層は前記タイヤの内側から外側に向かってビードワイヤ(4、24)回りに巻かれ、かつ、前記タイヤの内壁に沿って延びる主要部(1a、21a)と前記タイヤの軸方向に前記主要部(1a、21a)の外側に位置する巻き上げ部(1b、21b)を有し、前記巻き上げ部(1b,21b)と前記主要部分(1a,21a)との間の距離(d)は、前記ビードワイヤ(4,24)から最小距離(d1)まで前記外側に向かって半径方向に連続的に減少し、次に、最大距離(d2)まで連続的に増加し、前記巻き上げ部(1b,21b)は、ポリマー縁取り材料で構成されている縁取り要素(2,22)によって覆われた端(E1,E21)を有し、各ビードは、前記ビードワイヤ(4,24)の前記外側に向かう半径方向延長部としての充填要素(3,23)を有し、前記充填要素は、少なくとも1つのポリマー充填材料(3a,3b,23a,23b)で構成され、前記縁取り要素と接触状態にある前記ポリマー充填材料(3b,23b)は、前記ポリマー縁取り材料の10%伸び率における弾性率よりも低い10%伸び率における弾性率を有する、タイヤにおいて、ポリマー移行材料で構成されている移行要素(25)が設けられ、前記移行要素(25)は、少なくとも部分的に、その軸方向外面が前記ポリマー縁取り材料(22)と接触状態にあると共にその軸方向内面が前記ポリマー充填材料(23b)と接触状態にあり、前記移行要素(25)の半径方向外側端部(E25)及び半径方向内側端部(I25)は、それぞれ、前記巻き上げ部(21b)の前記端(E21)の半径方向外側及び半径方向内側に位置し、前記ポリマー移行材料の10%伸び率における弾性率は、前記移行要素が接触している前記ポリマー縁取り材料の10%伸び率における弾性率と前記移行要素が接触している前記ポリマー充填材料(23b)の10%伸び率における弾性率との間にある、建設プラント型重車両用タイヤ。
【請求項2】
前記移行要素(25)の厚さ(e)は、前記巻き上げ部(21b)の前記端(E21)と前記主要部分(21a)との間の距離(d3)の0.25倍以上である、請求項1記載の建設プラント型重車両用タイヤ。
【請求項3】
前記移行要素(25)の厚さ(e)は、前記巻き上げ部(21b)の前記端(E21)と前記主要部分(21a)との間の距離(d3)の0.60倍以下である、請求項1又は2記載の建設プラント型重車両用タイヤ。
【請求項4】
前記移行要素(25)の前記半径方向外側端部(E25)と前記巻き上げ部(21b)の前記端(E21)との間の距離(a)は、前記巻き上げ部の前記端と前記主要部分(21a)との間の距離(d3)の2倍以上である、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の建設プラント型重車両用タイヤ。
【請求項5】
前記移行要素(25)の前記半径方向外側端部(E25)と前記巻き上げ部(21b)の前記端(E21)との間の距離(a)は、前記巻き上げ部の前記端と前記主要部分(21a)との間の距離(d3)の4倍以下である、請求項1〜4のうちいずれか一に記載の建設プラント型重車両用タイヤ。
【請求項6】
前記移行要素(25)の前記半径方向内側端部(I25)と前記巻き上げ部(21b)の前記端(E21)との間の距離(b)は、前記巻き上げ部の前記端と前記主要部分(21a)との間の距離(d3)の2倍以上である、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の建設プラント型重車両用タイヤ。
【請求項7】
前記移行要素(25)の前記半径方向内側端部(I25)と前記巻き上げ部(21b)の前記端(E21)との間の距離(b)は、前記巻き上げ部の前記端と前記主要部分(21a)との間の距離(d3)の6倍以下である、請求項1〜6のうちいずれか一に記載の建設プラント型重車両用タイヤ。
【請求項8】
前記ポリマー移行材料の10%伸び率における弾性率は、前記ポリマー縁取り材料(22)及び前記ポリマー充填材料(23b)の10%伸び率におけるそれぞれの弾性率の算術平均の0.9倍以上であり、且つ、1.1倍以下である、請求項1〜7のうちいずれか一に記載の建設プラント型重車両用タイヤ。
【請求項9】
前記巻き上げ部(21b)と前記主要部分(21a)との間の最大距離(d2)は、前記巻き上げ部(21b)と前記主要部分(21a)との間の最小距離(d1)の1.1倍以上である、請求項1〜8のうちいずれか一に記載の建設プラント型重車両用タイヤ。
【請求項10】
請求項1〜9のうちいずれか一に記載の建設プラント型重車両用タイヤと、リム(26)とを備える設置組立体であって、前記タイヤは、前記リム(26)に取り付けられ、前記タイヤは、前記主要部分(21a)の軸方向外側の最小距離(d1)のところに且つ前記リム(26)の基準線(S)の半径方向外側の距離(HA)のところに位置する前記巻き上げ部(21b)の箇所Aを有し、前記リム(26)の半径方向最も外側の箇所Fが前記リム(26)の基準線(S)の半径方向内側の距離(HF)のところに位置している、タイヤにおいて、前記主要部分(21a)の軸方向外側の前記最小距離(d1)のところに位置した前記巻き上げ部(21b)の前記箇所Aから前記リム(26)の前記基準線(S)までの距離(HA)は、前記リム(26)の前記半径方向最も外側の箇所Fから前記リム(26)の前記基準線(S)までの距離(HF)の1.25倍以上であり、且つ、2.5倍以下である、設置組立体。
【請求項11】
請求項1〜9のうちいずれか一に記載の建設プラント型重車両用タイヤと、リム(26)とを備える設置組立体であって、前記タイヤは、前記リム(26)に取り付けられ、前記タイヤは、前記主要部分(21a)の軸方向外側の最大距離(d2)のところに且つ前記リム(26)の基準線(S)の半径方向外側の距離(HB)のところに位置する前記巻き上げ部(21b)の箇所Bを有し、前記リム(26)の半径方向最も外側の箇所Fが前記リム(26)の基準線(S)の半径方向外側の距離(HF)のところに位置している、タイヤにおいて、前記主要部分(21a)の軸方向外側の前記最大距離(d2)のところに位置した前記巻き上げ部(21b)の前記箇所Bから前記リム(26)の前記基準線(S)までの距離(HB)は、前記リム(26)の前記半径方向最も外側の箇所Fから前記リム(26)の前記基準線(S)までの距離(HF)の2倍以上であり、且つ、4倍以下である、設置組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設プラント型の重車両に取り付けられるようになったラジアルタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、この種の用途には限定されないが、具体的には、採石場又は露天掘り鉱山から掘り出された物体を運搬する車両であるダンプ車(ダンパとも呼ばれる)に取り付けられるようになったラジアルタイヤに関して本発明を説明する。かかるタイヤのリムの公称直径は、欧州タイヤ及びリム技術協会、即ちETRTOにより提供されている意味の範囲内において、最小25インチ(63.5cm)に等しい。
【0003】
以下の説明において、次の定義が用いられている。
‐「子午面(又は子午線平面)」は、タイヤの回転軸線を含む平面である。
‐「赤道面」は、タイヤのトレッド表面(踏み面)の中央を通ると共にタイヤの回転軸線に垂直な平面である。
‐「半径方向」は、タイヤの回転軸線に垂直な方向である。
‐「軸方向」は、タイヤの回転軸線に平行な方向である。
‐「円周方向」は、子午面に垂直な方向である。
‐「半径方向距離」は、タイヤの回転軸線に垂直に且つタイヤの回転軸線から測定された距離である。
‐「軸方向距離」は、タイヤの回転軸線に平行に且つ赤道面から測定された距離である。
‐「半径方向」は、半径の方向である。
‐「軸方向」は、軸線の方向である。
‐「〜の半径方向内側」又は「〜の半径方向外側」は、それぞれ、半径方向距離が短い又は半径方向距離が長いところを表す。
‐「〜の軸方向内側」又は「〜の軸方向外側」は、それぞれ、軸方向距離が短い又は軸方向距離が長いところを表す。
【0004】
タイヤは、タイヤとタイヤが取り付けられるリムとの間の機械的連結部を提供する2つのビードを有し、これら2つのビードは、それぞれ、2つのサイドウォールによって、トレッド表面を介して路面に接触するようになったトレッドに接合されている。
【0005】
ラジアルタイヤは、具体的に説明すると、トレッドの半径方向内側に位置したクラウン補強材及びクラウン補強材の半径方向内側に位置したカーカス補強材を含む補強材を有している。
【0006】
建設プラント型重車両用ラジアルタイヤのカーカス補強材は、通常、ポリマー被覆材料で被覆されている金属補強要素で構成された少なくとも1つのカーカス補強材層を有する。金属補強要素は、互いに実質的に平行であり且つ円周方向と85°〜95°の角度をなしている。カーカス補強材層は、2つのビードを互いに接合し、各ビード内においてビードワイヤ回りに巻かれた主要部分を有する。ビードワイヤは、通常金属で作られていて、少なくとも1種類の材料で包囲された円周方向補強要素を有し、かかる材料は、ポリマー又はテキスタイルで作られるのが良いが、これらには限定されない。カーカス補強材層は、端を有する巻き上げ部を形成するようタイヤの内側から外側に向かってビードワイヤ回りに巻かれる。行われる。各ビード内における巻き上げ部は、カーカス補強材層をこのビードのビードワイヤに繋留する。
【0007】
巻き上げ部の端は、その2つのそれぞれの軸方向内面と軸方向外面の両方が通常、ポリマー被覆材料と同一の化学的組成のものであるが、異なる材料であっても良いポリマー縁取り材料で作られた縁取り要素によって覆われている。かくして、縁取り要素は、巻き上げ部の端のところにポリマー被覆材料の追加の厚みをもたらす。
【0008】
各ビードは、ビードワイヤの半径方向外方の延長部としての充填要素を更に有する。充填要素は、少なくとも1種類のポリマー充填材料で作られている。充填要素は、子午線に沿って任意の子午面と交差した接触面に沿って接触状態にある少なくとも2種類のポリマー充填材料の半径方向スタックで作られる場合がある。充填要素は、主要部分を巻き上げ部から軸方向に分離している。
【0009】
ポリマー材料は、硬化後、引張り試験によって決定される引張り応力‐変形(量)特性が優れているという機械的特性を有する。この引張り試験は、公知の方法に従って、例えば、国際規格ISO37に従って且つ国際規格ISO471によって定められた通常の温度(23±2℃)及び通常の湿度(50±5%相対湿度)下において試験片について当業者によって実施される。ポリマー材料に関し、メガパスカル(MPa)で表された10%伸び率における弾性率は、試験片の10%伸び率について測定された引張り応力に与えられた名称である。
【0010】
ポリマー材料は又、硬化後、その硬度が優れているという機械的特性を有する。硬度は、特に、ASTM・D2240‐86に従って定められたショアAスケール硬度によって定められる。
【0011】
車両が走行しているとき、リムに取り付けられていて、インフレートされて車両の荷重を受けて圧縮された状態のタイヤは、特にそのビード及びそのサイドウォールのところで曲げサイクルを受ける。
【0012】
曲げサイクルは、主要部分及び巻き上げ部について金属補強要素の張力の変動と組み合わさった曲率の変動をもたらす。
【0013】
ビードが、曲がる際に、外側軸線及び内側軸線がそれぞれ主要部分及び巻き上げ部であるビードのように機械的に挙動するとみなすと、曲げサイクルを受ける巻き上げ部は、ビードの疲労破壊を招き、したがってビードの耐久性の減少及びタイヤの寿命の短縮を招く恐れのある圧縮変形を受ける。
【0014】
欧州特許第2216189号明細書は、ビードが使用中、リム上で撓むときに巻き上げ部の圧縮変形を減少させることによって耐久性を向上させたタイヤビードを記載している。この目的は、巻き上げ部と主要部分との間の距離がビードワイヤから最小距離まで外側に向かって半径方向に連続的に減少し、次に、最大距離まで連続的に増加するような巻き上げ部によって達成される。巻き上げ部は、巻き上げ部と主要部分との間の最大距離に対応した巻き上げ部の箇所の半径方向外側で延びる。
【0015】
曲げサイクルは、特に、巻き上げ部の端のすぐ近くに位置したポリマー被覆材料、ポリマー縁取り材料及びポリマー充填材料中に応力を生じさせると共にこれらの変形をもたらす。
【0016】
具体的に説明すると、巻き上げ部の端のすぐ近くの応力及び変形により、特に補強要素が金属で作られている場合、巻き上げ部の端のところで始まる亀裂が広がり、かかる亀裂は、ビードの耐久性の低下を招くと共にタイヤの寿命の短縮を招く可能性がある。
【0017】
本発明によれば、亀裂の開始は、主として、巻き上げ部の金属補強要素の端とこれら端と接触状態にある被覆、縁取り又はポリマー充填材料との密着性が失われることによって起こる。曲げサイクル中におけるビード温度の上昇は、新品のタイヤ中に既に存在している密着性の低下を加速させる。
【0018】
亀裂は、被覆、縁取り及びポリマー充填材料中を広がり、ビードの劣化をもたらし、したがってタイヤの破損の原因となる。亀裂の広がり速度は、第1に、応力及び変形サイクルの振幅及び周期数に依存すると共に第2に亀裂ゾーン中のポリマー被覆、縁取り及び充填材料のそれぞれの剛性に依存する。
【0019】
米国特許第3921693号明細書は、補強要素が金属で作られている半径方向カーカス補強材を備えたタイヤの場合、設計上の目的が巻き上げ部の端のところの亀裂発生を阻止することにあるビードを既に記載している。提案されている技術的解決手段では、巻き上げ部の端は、ショアAスケール硬度が1種類又は複数種類のポリマー充填材料のショアAスケール硬度よりも高いポリマー材料で覆われる。
【0020】
米国特許第4086948号明細書も又、重車両用のラジアルタイヤの寿命を延ばす目的で、カーカス補強材の背の高い巻き上げ部を記載しており、巻き上げの背が高いということは、かかる巻き上げ部の端がタイヤのサイドウォールの軸方向最も外側の箇所を通る直線の半径方向外側に位置していることを意味している。加うるに、カーカス補強材の金属補強要素のポリマー被覆材料は、ポリマー充填材料のショアAスケール硬度及び300%伸び率における弾性率よりもそれぞれ高いショアAスケール硬度及び300%伸び率における弾性率を有する。
【0021】
最後に、米国特許第5056575号明細書は、変形を減少させると共にビードの耐久性を増大させる目的で巻き上げ部の端の近くに位置するポリマー材料中の亀裂の広がりを遅くすることができる重車両、例えばトラックやバス用のタイヤビードを記載している。提案されている技術的解決手段として、ビードは、100%伸び率における弾性率が半径方向最も外側に位置する巻き上げ部に隣接して位置するポリマー充填材料から半径方向最も内側に位置するビードワイヤに隣接したポリマー充填材料まで減少している3種類のポリマー充填材料を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】欧州特許第2216189号明細書
【特許文献2】米国特許第3921693号明細書
【特許文献3】米国特許第4086948号明細書
【特許文献4】米国特許第5056575号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明者は、巻き上げ部の端のところで始まってポリマー被覆、縁取り及び充填材料中を広がる亀裂を減少させることにより建設プラント型重車両用ラジアルタイヤのビードの耐久性を向上させるという目的の達成に取り組んだ。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明によれば、この目的は、
‐建設プラント型重車両用のタイヤであって、リムに接触するようになった2つのビードと、金属補強要素で構成された少なくとも1つのカーカス補強材層を含むカーカス補強材とを有し、
‐カーカス補強材層は、巻き上げ部を形成するよう各ビード内においてタイヤの内側から外側に向かってビードワイヤ回りに巻かれている主要部分を有し、
‐巻き上げ部と主要部分との間の距離は、ビードワイヤから最小距離まで外側に向かって半径方向に連続的に減少し、次に、最大距離まで連続的に増加し、
‐巻き上げ部は、ポリマー縁取り材料で構成されている縁取り要素によって覆われた端を有し、
‐各ビードは、ビードワイヤの外側に向かう半径方向延長部としての充填要素を有し、充填要素は、少なくとも1つのポリマー充填材料で構成され、
‐縁取り要素と接触状態にあるポリマー充填材料は、ポリマー縁取り材料の10%伸び率における弾性率よりも低い10%伸び率における弾性率を有し、
‐ポリマー移行材料で構成された移行要素が設けられ、移行要素は、少なくとも部分的に、その軸方向外面がポリマー縁取り材料と接触状態にあると共にその軸方向内面がポリマー充填材料と接触状態にあり、
‐移行要素の半径方向外側の端及び半径方向内側の端は、それぞれ、巻き上げ部の端の半径方向外側及び半径方向内側に位置し、
‐ポリマー移行材料の10%伸び率における弾性率は、移行要素が接触しているポリマー縁取り材料の10%伸び率における弾性率と移行要素が接触しているポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率との間にあることを特徴とする建設プラント型重車両用タイヤによって達成された。
【0025】
本発明によれば、ポリマー移行材料で構成された移行要素が設けられ、移行要素が少なくとも部分的に、その軸方向外面がポリマー縁取り材料と接触状態にあると共にその軸方向内面がポリマー充填材料と接触状態にあることが有利である。これは、移行要素を縁取り要素と巻き上げ部の端のところの軸方向内側に位置する充填材料との間に追加することにより、局所的に巻き上げ部の端に密接して位置するポリマー材料中において、巻き上げ部の端のところで始まる亀裂の広がり速度を定める応力レベル及び変形レベルを制限することが可能だからである。
【0026】
また、移行要素の半径方向外側の端及び半径方向内側の端を巻き上げ部の端の半径方向外側及び半径方向内側にそれぞれ位置させることが有利である。巻き上げ部の端を移行要素の2つのそれぞれの半径方向外側及び半径方向内側の端相互間に半径方向に位置決めすることにより、製造プロセスに固有の巻き上げ部の端の半径方向位置決めに関する公差を念頭において、巻き上げ部の端と移行要素との接触を保証することができる。
【0027】
最後に、ポリマー移行材料の10%伸び率における弾性率は、有利には、移行要素が接触しているポリマー縁取り材料の10%伸び率における弾性率と移行要素が接触しているポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率との間にある。ポリマー縁取り材料からポリマー移行材料、更にポリマー充填材料に進む際の10%伸び率における弾性率の漸減は、減少し且つ緩やかな剛性勾配を与え、かかる勾配により、巻き上げ部の端のところの応力及び変形量を減少させ、したがって亀裂の広がりを遅らせることができる。
【0028】
ポリマー縁取り材料の10%伸び率における弾性率とポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率の差が大きければ大きいほど、ポリマー移行材料の10%伸び率における弾性率により得られる利点はそれだけ一層顕著になる。研究対象の本発明のタイヤの実施例では、ポリマー縁取り材料の10%伸び率における弾性率は、ポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率の1.6倍に等しい。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、移行要素の厚さは、巻き上げ部の端と主要部分との間の距離の0.25倍以上である。移行要素の厚さと呼ばれているのは、移行要素の端のところのテーパした領域から遠ざかって測定された移行要素の一定の厚さである。巻き上げ部の端と主要部分との間の距離は、巻き上げ部の端を通ると共に主要部分に垂直な直線に沿って、巻き上げ部の補強要素の軸方向内側の母線と主要部分の補強要素の軸方向外側の母線との間で測定された距離である。移行要素のこの最小厚さにより、亀裂の広がり速度を減少させることができる最小の剛性勾配を定めることができる。
【0030】
移行要素の厚さは、巻き上げ部の端と主要部分との間の距離の0.60倍以下である。具体的に言えば、移行ポリマー要素の熱放散量は、その高い10%伸び率における弾性率によりポリマー充填材料の熱放散量よりも多い。その結果、ポリマー移行材料の体積が多すぎることにより、その寿命を損なうビード温度の増大が生じるので、移行要素の厚さに上限を課すことが重要である。
【0031】
移行要素の半径方向外側の端と巻き上げ部の端との間の距離は、巻き上げ部の端と主要部分との間の距離の少なくとも2倍に等しいことが有利である。この距離は、移行要素の半径方向外側の端を通り且つ巻き上げ部の端を通ると共に主要部分に垂直な直線に平行である直線と、巻き上げ部の端を通ると共に主要部分に垂直な直線との間で測定される。この最小距離は、製造公差が所与の場合、半径方向位置が変化する巻き上げ部の端の軸方向外側に移行要素が設けられるようにする。
【0032】
また、移行要素の半径方向外側の端と巻き上げ部の端との間の距離は、巻き上げ部の端と主要部分との間の距離の4倍以下であることが有利である。この最大距離を超える移行要素の部分は、一方において、ビードにとって有害なビード中の熱の消散を加速させ、かかる移行要素の部分は、巻き上げ部の端の半径方向位置決めに関する不確実性を補償する上では役に立たず、結果的にポリマー移行材料の不必要な追加の費用が生じる。
【0033】
本発明の別の有利な実施形態では、移行要素の半径方向内側の端と巻き上げ部の端との間の距離は、巻き上げ部の端と主要部分との間の距離の2倍以上である。この距離は、移行要素の半径方向内側の端を通り且つ巻き上げ部の端を通ると共に主要部分に垂直な直線に平行である直線と、巻き上げ部の端を通ると共に主要部分に垂直な直線との間で測定される。この最小距離により、巻き上げ部と移行要素との最小接触面積を保証すると共に製造方法に固有の巻き上げ部の端の半径方向位置決めに関する公差を念頭に置いて、巻き上げ部の端が覆われるようにすることができる。
【0034】
また、移行要素の半径方向内側の端と巻き上げ部の端との間の距離は、巻き上げ部の端と主要部分との間の距離の6倍以下であることが有利である。具体的に言えば、この最大距離を超える移行要素の部分が第1に、ビードにとって有害なビード中の熱の消散を加速させ、第2に、かかる移行要素の部分が巻き上げ部と移行要素との密着を保証する上でも、結果的にポリマー移行材料の不必要な追加の費用をもたらす巻き上げ部の端の半径方向位置決めに関する不確実性を補償する上でも役に立たないからである。
【0035】
本発明の有利な一実施形態では、ポリマー移行材料の10%伸び率における弾性率は、ポリマー縁取り材料及びポリマー充填材料の10%伸び率におけるそれぞれの弾性率の算術平均の0.9倍以上であり、且つ、1.1倍以下である。ポリマー移行材料の10%伸び率における弾性率に関する値のこの範囲は、亀裂がポリマー縁取り材料からポリマー移行材料に、次にポリマー充填材料に広がる際に、移行要素を備えていない基準タイヤのビードと比較して、亀裂の広がり速度を著しく減少させることができるポリマー縁取り、移行及び充填材料又はコンパウンド相互間の剛性の勾配を保証する。
【0036】
有利には、巻き上げ部と主要部分との間の最大距離は、巻き上げ部と主要部分との間の最小距離の1.1倍以上である。この結果、巻き上げ部と主要部分との間に軸方向に位置する充填要素は、幅が狭くなった部分を有し、その結果、巻き上げ部と主要部分が互いに近くなり、それにより巻き上げ部をタイヤが駆動されているときに圧縮下に置くことができない。
【0037】
また、主要部分の軸方向外側の最小距離のところに位置した巻き上げ部の箇所からリムの基準線までの距離は、リムの半径方向最も外側の箇所からリムの基準線までの距離の1.25倍以上であり、且つ、2.5倍以下であり、また、主要部分の軸方向外側の最大距離のところに位置した巻き上げ部の箇所からリムの基準線までの距離は、リムの半径方向最も外側の箇所からリムの基準線までの距離の2倍以上であり、且つ、4倍以下であると有利である。リムの基準線は、通常、当業者によれば、受座直径に該当している。リムの半径方向最も外側の箇所からリムの基準線までの距離は、リムフランジの高さを定める。これら値の範囲内において主要部分に最も近い巻き上げ部の箇所及び主要部から最も遠くに位置する巻き上げ部の箇所を半径方向に位置決めすることにより、張力が最適化されると共に巻き上げ部に圧縮状態が生じないようになる。
【0038】
また、有利には、各ビードが一方のサイドウォールの半径方向内方の延長部としての保護要素と、保護要素及びサイドウォールの軸方向内側に且つ巻き上げ部の軸方向外側に位置した充填剤要素とを有する場合、保護要素及び充填剤要素はそれぞれ、少なくとも1種類のポリマー保護材料及び少なくとも1種類のポリマー充填材料で構成され、ポリマー充填材料は、ポリマー被覆材料の10%伸び率における弾性率よりも低い10%伸び率における弾性率を有し、ポリマー移行材料で作られた移行要素が、その軸方向内面を介して巻き上げ部分の軸方向外面のポリマー被覆材料と接触状態にあると共にその軸方向外面を介してポリマー充填材料と接触状態にあり、ポリマー移行材料の10%伸び率における弾性率は、ポリマー被覆材料の10%伸び率における弾性率とポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率との間にある。この移行要素により、巻き上げ部の軸方向外面上で始まり、そしてポリマー被覆及びフィラー又は充填材料を介して広がる亀裂を減少させることができる。巻き上げ部の軸方向外面上の亀裂のこの減少は、ビードの耐久性の向上に寄与すると共にタイヤの寿命の延長に寄与する。
【0039】
最後に、有利には、各ビードがビードワイヤの半径方向外方の延長部としての充填要素を有する場合、充填剤要素は少なくとも2種類のポリマー充填材料で構成され、第1のポリマー充填材料は、内側に向かって更に半径方向に位置すると共にビードワイヤと接触状態にあり、第2のポリマー充填材料は、第1のポリマー充填材料の半径方向外側に位置すると共に第1のポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率よりも低い10%伸び率における弾性率を有し、ポリマー移行材料で作られた移行要素が、その半径方向内面を介して第1のポリマー充填材料と接触状態にあると共にその半径方向外面を介し第2のポリマー充填材料と接触状態にあり、ポリマー移行材料の10%伸び率における弾性率は、第1のポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率と第1のポリマー充填材料の10%伸び率における弾性率との間にある。この移行要素により、内側に向かって最も半径方向に位置すると共にビードワイヤと接触状態にある第1のポリマー充填材料と第1のポリマー充填材料の半径方向外側に位置する第2のポリマー充填材料との接触表面のところで始まる亀裂を減少させることができる。第1のポリマー充填材料と第2のポリマー充填材料との間のインターフェースのところでのこの亀裂の減少は、ビードの耐久性の向上に寄与すると共にタイヤの寿命の延長に寄与する。
【0040】
本発明の特徴は、添付の
図1及び
図2の説明の助けにより容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】先行技術の建設プラント型重車両用タイヤのビードの子午面断面図である。
【
図2】本発明の建設プラント型重車両用タイヤのビードの子午面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1及び
図2を理解しやすいようにするため、
図1及び
図2は、縮尺通りには描かれていない。
【0043】
図1は、先行技術の建設プラント型重車両用タイヤのビードを示しており、このタイヤは、
‐金属補強要素で構成された単一のカーカス補強材層1を含むカーカス補強材を有し、主要部分1aは、巻き上げ部1bを形成するようタイヤの内側から外側に向かってビードワイヤ4の回りに巻かれており、
‐巻き上げ部1bと主要部分1aとの間の距離dは、ビードワイヤ4から最小距離d
1まで外側に向かって半径方向に連続的に減少し、次に、最大距離d
2まで連続的に増加し、
‐巻き上げ部1bの端E
1をその2つの軸方向内面及び軸方向外面について覆い、ポリマー被覆材料と同一の化学的組成のポリマー縁取り又は縁結合材料で作られた縁取り又は縁結合要素2を有し、
‐ビードワイヤ4の半径方向外方の延長部としての充填要素3を有し、この充填要素は、2種類のポリマー充填材料で形成されており、第1のポリマー充填材料3aは、半径方向外側に位置すると共にビードワイヤ4と接触状態にあり、第2のポリマー充填材料3bは、半径方向外側に位置すると共に第1のポリマー充填材料3aと接触状態にある。
【0044】
図2は、本発明の建設プラント型重車両用タイヤのビードを示しており、このタイヤは、
‐金属補強要素で構成された単一のカーカス補強材層21を含むカーカス補強材を有し、主要部分21aは、巻き上げ部21bを形成するようタイヤの内側から外側に向かってビードワイヤ24の回りに巻かれており、
‐巻き上げ部21bと主要部分21aとの間の距離dは、ビードワイヤ24から最小距離d
1まで外側に向かって半径方向に連続的に減少し、次に、最大距離d
2まで連続的に増加し、
‐巻き上げ部21bの端E
21をその2つの軸方向内面及び軸方向外面について覆い、ポリマー被覆材料と同一の化学的組成のポリマー縁取り材料で作られた縁取り要素22を有し、
‐ビードワイヤ24の半径方向外方の延長部としての充填要素23を有し、この充填要素は、2種類のポリマー充填材料で形成されており、第1のポリマー充填材料23aは、半径方向外側に位置すると共にビードワイヤ24と接触状態にあり、第2のポリマー充填材料23bは、半径方向外側に位置すると共に第1のポリマー充填材料23aと接触状態にあり、
‐ポリマー移行材料で作られている移行要素25を有し、移行要素25は、少なくとも部分的に、その軸方向外面がポリマー縁取り材料22と接触状態にあると共にその軸方向内面がポリマー充填材料23bと接触状態にある。
【0045】
巻き上げ部21bの幾何学的形状は、巻き上げ部21bの箇所Aが主要部分21aの軸方向外側の最小距離d
1のところに且つリム26の基準線Sの半径方向外側の距離H
Aのところに位置すること及び巻き上げ部21bの箇所Bが主要部分21aの軸方向外側の最大距離d
2のところに且つリム26の基準線Sの半径方向外側の距離H
Bのところに位置することを特徴としている。箇所A,Bのそれぞれの位置は、リム26の半径方向最も外側の箇所Fに対して定められ、この半径方向最も外側の箇所Fは、リム26の基準線Sの半径方向外側の距離H
Fのところに位置する。
【0046】
移行要素25は、一定のものとして概略的に図示されている厚さeを有するが、この厚さは、実際には、端E
25及びI
25のところで通常テーパしている。移行要素25の長さは、a+bである。巻き上げ部21bの端E
21は、移行要素25の半径方向外側の端E
25と半径方向内側の端I
25との間で半径方向に位置している。
【0047】
移行要素25の半径方向外側の端E
25は、巻き上げ部21bの端E
21から距離aを置いたところに位置している。距離aは、移行要素25の半径方向外側の端E
25を通り且つ巻き上げ部21bの端E
21を通ると共に主要部分21aに垂直な直線Dに平行である直線D′と、巻き上げ部21bの端E
21を通ると共に主要部分21aに垂直な直線Dとの間の距離である。
【0048】
移行要素25の半径方向内側の端I
25は、巻き上げ部21bの端E
21から距離bを置いたところに位置している。距離bは、移行要素25の半径方向内側の端I
25を通り且つ巻き上げ部21bの端E
21を通ると共に主要部分21aに垂直な直線Dに平行である直線D″と、巻き上げ部21bの端E
21を通ると共に主要部分21aに垂直な直線Dとの間の距離である。
【0049】
巻き上げ部21bの端E
21と主要部分21aとの間の距離d
3は、巻き上げ部21bの端E
21を通ると共に主要部分21aに垂直な直線Dに沿って、巻き上げ部21b中の補強要素の軸方向内側の母線と主要部分21a中の補強要素の軸方向外側の母線との間で測定された距離である。
【0050】
本発明を特にサイズ59/80R63のダンプ車型の重車両用タイヤの場合について検討した。欧州タイヤ及びリム協会の規格によれば、かかるタイヤの通常の使用条件は、6バールのインフレーション圧力、99トンの静荷重及び16〜32kmの1時間の走行距離である。加うるに、ETRTO規格の意味の範囲内において、かかるタイヤの設計上の断面高さHは、1214mmである。
【0051】
59/80R63型タイヤは、
図2に概略的に示されているように本発明に従って設計されたものであり、このことは、背の高い巻き上げ部の端がタイヤの軸方向最も外側の箇所を通る軸方向直線の付近に半径方向に位置していることを意味している。
【0052】
巻き上げ部21bの幾何学的形状に関する限り、巻き上げ部21bの箇所Aは、主要部分21aの軸方向外側の18mmに等しい最小距離d
1のところに且つリム26の基準線Sの半径方向外側の200mmに等しい距離H
Aのところに位置する。巻き上げ部21bの箇所Bは、主要部分21aの軸方向外側の27mmに等しい最大距離d
2のところに且つリム26の基準線Sの半径方向外側の390mmに等しい距離H
Bのところに位置する。箇所A,Bのそれぞれの位置は、リム26の半径方向最も外側の箇所Fに対して定められ、この半径方向最も外側の箇所Fは、リム26の基準線Sの半径方向外側の127mmに等しい距離H
Fのところに位置する。
【0053】
巻き上げ部21bの端E
21と主要部分21aとの間の距離d
3は、15mmに等しい。半径方向外側の端E
25及び半径方向内側の端I
25で画定された移行要素25は、4.5mm、即ち距離d
3の0.30倍の厚さを有する。移行要素25の半径方向外側の端E
25は、45mm、即ち、距離d
3の3倍に等しい距離のところに位置している。移行要素25の半径方向内側の端I
25は、75mm、即ち、距離d
3の5倍に等しい距離bのところに位置している。
【0054】
ポリマー縁取り材料22、ポリマー移行材料25及びポリマー充填材料23bの10%伸び率における弾性率は、それぞれ、6MPa、4.8MPa及び3.5MPaに等しい。かくして、ポリマー移行材料25の10%伸び率における弾性率は、ポリマー縁取り材料22及びポリマー充填材料23bの10%伸び率におけるそれぞれの弾性率の算術平均に等しい。
【0055】
図1に示されている基準タイヤ及び
図2に示されている本発明のタイヤについてそれぞれ有限要素解析計算シミュレーションを実施した。基準タイヤの場合、巻き上げ部1bの端領域E
1内において巻き上げ部1bの軸方向内面上に位置するポリマー充填材料3bの伸び率は、これと接触状態にあるポリマー縁取り材料2の伸び率の1.4倍に等しく、これら伸びは、巻き上げ部21bに平行である。その結果、亀裂がポリマー縁取り材料2からポリマー充填材料3bに向かって広がるとき、ポリマー充填材料3b中におけるその広がり速度は、ポリマー縁取り材料2と比較して、ポリマー充填材料3bの伸び率が高いので増大する。本発明のタイヤの場合、巻き上げ部21bの端領域E
21内における巻き上げ部の軸方向内面上のポリマー移行材料25の伸び率は、ポリマー縁取り材料22の伸び率の0.9倍に等しい。その結果、亀裂がポリマー縁取り材料22からポリマー移行材料25に向かって広がるとき、ポリマー移行材料25中におけるその広がり速度は、ポリマー縁取り材料22と比較して、ポリマー移行材料25の伸び率が低いので減少する。
【0056】
本発明は、
図2に示されている例に限定されるものと解されてはならず、他の変形形態、例えば、
‐ポリマー縁取り材料がポリマー被覆材料の化学的組成とは異なる化学的組成を有する変形形態、
‐縁取り要素が設けられておらず、それにより、移行要素の軸方向外面とカーカス補強材の巻き上げ部の軸方向内面を被覆するポリマー被覆材料が直接接触する変形形態、
‐移行要素が2つずつ接触状態にあると共に半径方向のポリマー移行材料の幾つかの層から成る変形形態、
‐カーカス補強材の巻き上げ部の端が
図2の場合よりも一層ビードワイヤの半径方向近くに位置している変形形態に拡張可能であるが、これらには限定されない。