【実施例】
【0185】
実施例1.大腸菌を透過性にする界面活性剤のスクリーニング
大腸菌細胞を透過処理する添加剤を同定するため、イオン性(n−ドデシル−β−イミノジプロピオン酸;デシルトリメチルアンモニウムクロライド;ドデカノイルサルコシンナトリウム;アンゼルゲント3−10)、及び非イオン性(ジメチルオクチルホスフィンオキシド[Apo8];ジメチルデシルホスフィンオキシド;n−オクチル−β−D−チオグルコピラノシド[8TGP];スクロースモノドデカノアート;Mega10;Tween80;TritonX100;TritonX114)の両方の多くの界面活性剤を、膜−不透過性色素、ゲルレッド(Gel Red)(Biotium社、カタログ番号41002)の取り込み、及びGFPの遊離の両方によってスクリーニングした。透過処理のテストを行った界面活性剤は、Anatraceから購入した。
【0186】
ここに述べる実験に用いた大腸菌宿主株は、全てK12由来のArgentum細胞株(ΔmcrAΔ(mrr−hsdRMS−mcrBC)ΔendA lacZΔM15)(Alchemy Biosciences社)であった。しかしながら、本発明の方法は、B株由来のBL21(F
−dcm ompT hsdS(r
B−m
B−)gal)、及びK12クローン株DH5α(F
−endA1 glnV44 thi−1 recA1 relA1 gyrA96 deoR nupG Φ80dlacZΔM15 Δ(lacZYA−argF)U169,hsdR17(r
K-m
K+),λ−)を用いてもテストを行い、同様な結果を得た。
【0187】
GFPを、アラビノース誘導性の高コピー数ベクター(pAra1::GFP5)にクローン化した。発現は、新たに画線したコロニーを含むシャーレから重度に播種した培養液より行った。培養液は、37°Cで、アラビノースを最終濃度0.2%になるまで添加して発現を誘導するときに、OD600が約0.3となるまで培養した。誘導培養液は、収穫まで25°Cで2時間振盪した。
【0188】
1mLの誘導培養液を遠心分離して細胞を沈殿させ、300μLの0.5%界面活性剤含有LB中に懸濁して透過性にした後、25°Cで10分間培養した。透過性にした細胞は、沈澱させ、再懸濁し1xゲルレッド(Gel Red)を含む水に再懸濁し2分間置き、その後沈澱させ300μLのTBSで1度洗浄した。細胞は、300μLのTBSに懸濁し、蛍光顕微鏡検査のために、DABCO/グリセリン(0.0325gのDABCOを900μLのグリセリン+100μLのPBS中に溶解)を加えて処理した。
【0189】
サンプルは、スライド式カメラ(SPOT RT 2.3.0ソフトウェアv4.6)を用いたオリンパスProvis AX70光学顕微鏡、又はLeica TCS SP2共焦点レーザ走査顕微鏡/Leica DM IRE2倒立顕微鏡(Leica共焦点ソフトウェアv2.0)のいずれかにより可視化した。
【0190】
図1は、界面活性剤によるGFP発現大腸菌の透過処理の結果を示す。未処理細胞は、緑色(GFP)であるが、透過処理した細胞は、内部のGFPを失い、DNA結合性ゲルレッド(Gel Red)色素を取り込み赤色に染色される。また、ノニデット−40もいくらか透過処理を示すが、Apo8とMega10は、より高い割合の透過処理された細胞を示す。これら2種の界面活性剤の0.5%ずつの混合物は、活性剤86と呼ばれ、別の界面活性剤n-オクチル−β−D-チオグルコピラノシド(8TGP)と同様に、ほとんど完全に透過処理することを示した。Mega10、Apo8及び8TGPはいずれも非イオン性界面活性剤で、イオン性界面活性剤と比べ、タンパク質の重畳や機能に対し、破壊の程度が低い。
【0191】
細胞壁は、透過処理によっても無傷だったので、上述した界面活性剤での透過処理による上澄みの可溶性タンパク質の抽出物をSDS−PAGEにより分析した。透過処理した細胞に、ニワトリ卵白リゾチーム(Boehringer Mannheim社;837 059)を最終濃度2mg/mLまで、透過処理している細胞のサンプルに加え、細胞壁を除去し、全細胞タンパク質を遊離させた。β−メルカプトエタノールを含むSDS−PAGEローディング色素を、95°Cで2分間変性したサンプルに加えた。20μLのサンプルを9%SDS−PAGEにロードし、クーマシー・ブリリアント・ブルー/メタノール/酢酸で染色/固定した。
【0192】
図2は、可溶性タンパク質の遊離は、顕微鏡検査で見られたGFPの遊離及びGel Redの取り込みと直接的に関連していることを示す。無傷な細胞壁を有する細胞からのタンパク質の遊離と、リゾチームを用いて細胞壁を除去した細胞からのそれとの間には、明白な差があったが、細胞壁に被包された細胞が遊離する可溶性タンパク質は、大きさが約120kDまでであった。これは、球状タンパク質が、グラム陰性真正細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカン格子の細孔を通って、細胞から出ることができなくなる限界寸法であると思われる。
【0193】
実施例2.宿主DNAを保持する透過処理溶液のスクリーニング
本発明の方法を、改良した特性のタンパク質変異体を求めて遺伝子ライブラリーをスクリーニングするのに使用する場合、発現されるタンパク質と、それをコードする核酸との間に関連がなければならない。膜の透過処理工程で、DNAが、細胞壁を通って失われるのを防ぐ障壁が除去されるので、宿主DNAの損失を減少し、あるいは防止しうる、透過処理の条件を調べた。
【0194】
0.5%8TGPを用いて異なる培地中で細胞の透過処理を行い、DNA結合色素、Gel Redを用いて、DNAの損失を蛍光顕微鏡検査法により調べた。
【0195】
テストした透過処理培地(全培地に0.5%8TGPを含む)の組成
LB培地(10gトリプトン、5g酵母抽出物、10g/LのNaCl)
LB(塩)培地(10gトリプトン、5g/Lの酵母抽出物)
50mM−Tris、pH7.5
50mM−HEPES、pH7.0
170mM−NaCl
250mM−NaCl
25mM−Tris、pH7.5+1.5%PEG6000(w/v)
50mM−Tris、pH7.5+3%PEG6000(w/v)
50mM−Tris、pH7.5+170mM−NaCl
50mM−Tris、pH7.5+250mM−NaCl
【0196】
好適な透過処理培地は、LB細菌培地と確認された。したがって、以降、透過処理は、0.5%8TGPを含むLB又は剤86を含むLB(0.5%Mega10及び0.5%Apo8を含むLB)のいずれかを用いて行った。
【0197】
実施例3.タンパク質のテトラマー骨格への融合
実施例1に記述した実験に示されるように、約120kDより大きいタンパク質は、透過性にした大腸菌細胞の内部に細胞壁により保持された。したがって、120kDより小さい所望のタンパク質も、タンパク質パ−トナーと融合することで合計寸法が120kDを超えるようにできれば、細胞壁カプセル中に保持されるだろうと考えられた。
【0198】
このため、融合パートナーとして用いるため、大腸菌から6種の異なる四量体タンパク質をクローン化した。すなわち、β−gal、BetB、G5K、GshB、RhnA、及びYdcWで、それぞれのモノマー寸法は116kD、52kD、39kD、35kD、47kD及び50kDであった。
【0199】
アラビノース誘導性高複製数ベクターを、四量体発現のために構築した。蛍光性基質と共有結合で結合する20kD領域であるSNAPタグ(NEB社/Covalys)が、テトラマー遺伝子の上流にクローン化され、発現レポーターとして使用された。精製と検知を容易にするため、6xHisエピトープも、融合タンパク質のN末端に挿入された。
【0200】
前記アラビノースベクターpAra3::His6::SNAPの配列が、SEQ ID NO:1(配列番号)として示される。
【0201】
融合タンパク質の発現は、0.2%アラビノースを加えて誘導し、培養液を25°Cで2時間培養した。
【0202】
本発明の方法により、蛋白質ディスプレイのために細胞を透過性にするプロトコルは、以下のとおりであった:
1.遠心分離により細胞1mLを沈澱させる。
2.300μLの0.5%8TGP/LBに細胞を再懸濁する。
3.25°Cで10分間培養する。
4.遠心分離により細胞を沈澱させる。
5.200μLのTBS又はLBに細胞を再懸濁する。
【0203】
SNAP発現レポーター領域を、膜不透過性SNAP色素(Covalys、New England Biolabs社)で標識付けするプロトコルは、以下の通りであった:
1.20nmolのBG−488(緑色色素)又はBG−547(赤色色素)を、300μLのDMSOに200x原液として溶解する。
2.1μLの200x原液を200μLの透過性にした細胞を懸濁したTBS又はLBに加える。
3.25°Cで15分間培養する。
4.遠心分離により沈澱させ、また300μLのTBSに再懸濁させて、細胞を2度洗浄する。
【0204】
四量体融合タンパク質が、透過性にした細胞カプセル中に保持されるのを蛍光顕微鏡検査法により観察するプロトコルは、以下の通りであった:
1.20μLの細胞懸濁液を顕微鏡用スライドガラス上に滴下し、カバーガラスで覆い、端部をマニキュア液でシールする(湿式プレパラート);あるいは細胞の液滴をほぼ乾燥させて、その上に20μLのDABCO/グリセリンを滴下し、カバーガラスで覆い、端部をマニキュア液でシールする(乾式プレパラート)。
2.オリンパス又はLeica蛍光顕微鏡のいずれかを用いて可視化する。
【0205】
完全長融合タンパク質の発現は、SDS−PAGEゲルに掛けてから、タンパク質抽出物のウェスタンブロット法でα−His6抗体をプローブに用い確認した。全ての四量体コンストラクトは、大腸菌中で検知可能なレベルで発現した(
図3A)。
【0206】
大腸菌内で発現した四量体融合タンパク質の蛍光顕微鏡検査によれば、β−gal及びG5Kは、顕著な封入体を含み、恐らく前記融合タンパク質の折りたたみが困難であるために、蛍光レベルが低いことが分かった。しかしながら、
図4によれば、SNAP蛍光により判定されるとおり、前記融合タンパク質の発現は、GshBでは良好、RhnA、BetB及びYdcWでは、極めて良好であった。透過性にした宿主細胞中の融合タンパク質の分布は、明視野顕微鏡検査及び蛍光の両方から明らかなように複数のフォーカスを有し、均一でないことが注目された。しかし、蛍光性SNAP基質は、ミスフォールドされた領域には結合されていないであろうし、かつ信号が非常に強いことから、これらの物体は恐らく折り畳まれたタンパク質の凝集体であって、大腸菌中で過剰発現しているタンパク質においてしばしばみられる、折り畳まれていないタンパク質の封入体ではないと考えられる。
【0207】
SNAP::テトラマー融合体は、His6-N末端エピトープをまた有していた。抗体といった大きな分子が、大腸菌細胞壁の格子構造を通り抜けられるかを調べるため、透過性にした細胞にSNAP::テトラマー融合体を検出するαHis抗体をプローブとして設けた。
【0208】
1.前記His6::SNAP::BetB骨格融合体の発現及び透過処理を上述のように実施した。
2.BG−547 SNAPリガンドによる標識化を上述のように実施した。
3.200μLの透過性にしたSNAP−標識化細胞をLB中で3回洗浄し、ポリエチレンイミン(PEI)コートしたカバーガラス上に沈降させた。過剰な細胞培地を、吸引して除去し、前記スライドガラスを風乾させた。
4.細胞を、ブロッキング緩衝液(1%BSA、1%冷水魚ゼラチン(Sigma社、G7765)、アジドの0.02%PBS−Tween20溶液)中で、1時間ブロックした。
5.細胞を、ブロッキング緩衝液で1:10に希釈したαHis一次抗体(Abcam社、AB9136−100)中で、一晩25°Cで培養した。
6.細胞を3回PBS−Tween20中で洗浄した(各回10分間)。
7.細胞を、ブロッキング緩衝液で1:2,000に希釈した二次抗体(Molecular Probes、A11015)中、室温1時間培養した。
8.細胞を3回PBS−Tween20中で洗浄した。
9.DABCO/グリセリンを封入剤に用い、共焦点オリンパス顕微鏡で観察した。
【0209】
図5は、αHis抗体が細胞壁カプセルの内部でSNAP蛍光性リガンドと共存しており、細胞壁の細孔が、比較的大きなタンパク質が、カプセル内部空間中に拡散を許すのに十分な大きさであることを表わしている。このように、非常に大きなタンパク質リガンドも、本発明の方法により、細胞質中で発現する親和性タンパク質のための親和性基質として使用できる。
【0210】
細胞下物体の生成が変化するか否かを見るためにSNAP融合パートナー及び発現レポーターをHALOタンパク質(Promega社)と比較した。前記HALOタンパク質は、SNAPと同様に膜不透過性蛍光性基質(Alexa fluor 488;G1001、Promega社)と共有結合で結合する。HALOレポーター遺伝子は、四量体発現コンストラクト中のSNAP遺伝子の位置にインフレームに直接クローン化した。HALO::四量体骨格タンパク質の発現を、SNAP変異体と比較した。透過性にしたHALO細胞の標識付けは、実質的にSNAPに対して記述したように、またメーカーの説明書に従い実施した。
図6は、HALO::テトラマー及びSNAP::テトラマーの発現パターンは、同様であったが、例外的にHALO::RhnA融合タンパク質は、部分的にSNAP::RhnA融合体より溶解性で、複数の蛍光フォーカスを有する細胞がより少数であったことを示す。
【0211】
したがって、タンパク質を四量体骨格(ここでは、SNAP又はHALO)への融合体として発現させ、つづいて大腸菌宿主細胞を適当な界面活性剤で透過性にすると、目的のタンパク質が、細胞壁の内側に保持できる。
【0212】
実施例4.細胞骨格としてのDNA結合タンパク質
表現型を遺伝子型に結合するには、宿主細胞は、透過処理の後、また機能スクリーニングを通して、少なくともいくらかのエピソームDNAを保持しなければならない。宿主ゲノムのDNAならびにプラスミドDNAを保持する透過処理条件を見出したことで、発現した目的のタンパク質の保持骨格としてDNAが使用できると結論付けた。
【0213】
このため、小型(80aa)の高親和性らせん−ヘアピン−らせんDNA結合タンパク質(DBP)を、Neisseria gonorrhoeae ComE遺伝子(Chen及びGotschlich、2001)からクローン化し、これをアラビノース誘導性コンストラクト(pAra3::GFP::DBP;seq2)中で、GFPのC末端に融合した。
【0214】
アラビノース誘導による発現を例1に記述したように実施した。細胞を透過性にし、例1及び3に記述したように蛍光顕微鏡検査のために調製した。
【0215】
図7は、GFP::DBP融合体(緑色)が透過性にした細胞中に保持され、DNA結合色素、Gel Red(赤色)と共存したことを示す。
【0216】
したがって、タンパク質を、高親和性、非特異的DNA結合タンパク質への融合体として発現させ、つづいて大腸菌宿主細胞を適当な界面活性剤で透過性にすると、目的のタンパク質が、細胞カプセルの内側に保持できる。
【0217】
実施例5.透過性にした細胞中へのDNA保持
DNA、ゲノム及びエピソーム両方のプラスミドの、透過性にした細胞カプセル中への保持を実証するため、蛍光顕微鏡検査及びプラスミドDNA抽出のためにGFP5::DBP及びHis6::eGFPを発現する細胞を調製した。
【0218】
誘導後、細胞を透過性にし、つづいて凍結するか、TBS中で37°Cにおいて一晩振盪した。次の日、全サンプルを、蛍光顕微鏡検査でGFP、及びDNA結合色素Gel RedでカプセルDNA含量を見るために、又は、プラスミドDNA調製のために処理した。
【0219】
蛍光顕微鏡検査を例3に対して記述したように実施した。
図8は、宿主細胞DNA(赤色)及びGFP5::DBP(緑色)双方とも、細胞カプセル中に、透過処理直後も、一晩37°Cで培養しても目立った減少もなく、保持されたことを示す。His6::GFP タンパク質は、透過処理直後に失われたが、宿主細胞DNA(赤色)は、透過処理直後も、一晩後も、同じく目立った減少もなく、保持された。
【0220】
宿主ゲノムだけでなくプラスミドDNAも透過性にした細胞内に保持されることを確認するため、同じように調製されたサンプルに対してプラスミド少量調製を行った。
【0221】
1mLの界面活性剤処理又は無処理細胞から、プラスミド少量調製アルカリ溶解プロトコルによりプラスミドDNAを調製した。界面活性剤抽出による上澄み中に遊離されたプラスミドDNAを、Perfectprep Gel Cleanup(Eppendorf社、955152051)コレム及び溶液を、メーカーのプロトコルに従って用いて、抽出した。
【0222】
各サンプルの全量を1%アガロースゲルにロードし、富士フィルム社LAS−3000インテリジェントダークボックス(Intelligent Darkbox)でイメージリーダー(Image Reader)LAS−3000ソフトウェア及びMulti Gauge v3.0ソフトウェアを使用して画像化した。
【0223】
図9は、両細胞株からのプラスミドDNAをサンプルとした、TAE緩衝液を用いた臭化エチジウム染色1%アガロースゲルを示す。
【0224】
図9のレーン1は、無処理細胞中の全プラスミドDNAである。レーン2は、透過処理工程の上澄み、レーン3は、透過処理後に細胞カプセル中に保持されたプラスミドである。
図8で観察された可溶性His6::GFP タンパク質の完全な消失に拘わらず、透過処理による上澄み中へのプラスミド遊離が殆どないことが観測された。したがって、プラスミドDNAは、ほとんど完全に細胞壁により保持され、本発明の方法において改良されたタンパク質変異体の選別のために、遺伝子型を表現型に結合するために使用できる。
【0225】
顕微鏡検査のデータを確認するように、TBSに懸濁した透過性にした細胞の37°Cでの一晩の培養後も、この培養でのプラスミドDNAの消失は全く見られなかった(レーン5)。
【0226】
実施例6.ペプチドグリカン結合骨格
膜透過処理後も保持されるいま一つの細胞構造は、ペプチドグリカン(PG)の格子状ポリマーでなる細胞壁である。
【0227】
PGを非共有結合で結合するために、大腸菌内で良好に発現し、細胞壁に高親和性(K=3×10
7M
-1)をもって結合することが既に知られている(Briersら、2009)、シュードモナスφKZファージ(KzPG)からの70aaPG結合ドメインをクローン化した。親和性タンパク質の選別用に、PGに対するKzPG−結合ドメインの親和性より、より高い親和性を標的に対して有する変異体を見つけるため、骨格結合タンパク質の親和性を増す必要がある。骨格結合部分の親和性を増すため、ComE DNA結合ドメイン(DBD)及びPG結合ドメインの両方を同一の融合タンパク質内で結合した。したがって、両骨格(PG又はDNA)からの融合タンパク質の最終解離定数は、それぞれの速度定数の倍数の近似値となる。
【0228】
このため、発現ベクターpAra3::His6::KzPG::SNAP::DBP(SEQ ID NO:2(配列番号2))を構築した。例1に記述したように発現を誘導し、細胞を例3に記述したように蛍光顕微鏡検査のために調製した。融合タンパク質の発現及び分布は、例3に記述したようにSNAP標識化により観察した。
【0229】
蛍光は、細胞の辺縁で、細胞壁のドメインにおいて認められ、より軽度には、カプセルの細胞壁で囲まれる空間内の広汎なドメインにおいて認められた。
【0230】
本発明のさらなる態様では、目的のタンパク質を共有結合で、透過処理前の細胞骨格に付着させる。これを実現するため、周辺質内にコイルドコイル三量体を形成する、大腸菌に豊富なタンパク質LPPへのタンパク質融合体を用いた。その天然型においては、1端が脂質化により外膜と連結し、他端はC末端リジンにより共有結合で細胞壁に結合している。
【0231】
OmpF周辺質標的シグナル配列をSNAP発現レポーターに融合し、さらにN末端シグナル配列を欠く57aa大腸菌LPP配列、外膜付着に必要なシステインが続く発現コンストラクトを構築した。発現ベクター、pAra3::OmpF::SNAP::LPP(SEQ ID NO:3(配列番号))は、実施例1に記述されるようにアラビノースで誘導され、細胞を蛍光顕微鏡検査のため、実施例3に記述されるように、調製した。融合タンパク質の発現及び分布は、実施例3に記述したようにSNAP標識化により観察した。
【0232】
図10が示すように、LPP融合タンパク質の分布は、細胞壁の表面にわたって不均一で、強い蛍光の場所と、蛍光のない場所があった。しかし、ほとんどのケースで細胞の極が、標識化された。
【0233】
実施例7.四量体タンパク質骨格を用いたαGFP親和性タンパク質のディスプレイ
親和性タンパク質に適用する本発明の方法を実証するため、eGFPに対して免疫したラマから生成した単一領域抗体を細胞骨格ベクター中にクローン化した。ここに、αGFP抗体に対する特許出願に(WO2007/068313)挙げられている2配列の内、R35変異体のみが機能することを指摘したい(αGFP−R35;タンパク質データベースID 3K1K)。したがって、この配列を全実験において使用した。
【0234】
前記αGFP−R35遺伝子を、pAra3::HALO::FLAG::RhnA四量体骨格のN末端融合体として、pAra3::αGFP(R35)::HALO::FLAG::RhnAベクター(SEQ ID NO:4(配列番号))を製作するためクローン化した。
【0235】
前記抗体の標的基質としてHis6::eGFP融合タンパク質を製造するため、pAra3::His6::eGFPベクターも、構築した。実施例1に記述されるように、His6::eGFPタンパク質を誘導した。可溶性タンパク質が、0.5%8TGPを用いて細胞から遊離され、Ni−NTAアガロース樹脂(Qiagen社;30230)を用いてIMACにより精製された。His6::eGFPは、Ni−NTA樹脂からNTTW緩衝液+イミダゾール(500mM NaCl、50mM Tris−HCl、pH7.5、0.1%Tween20+200mMイミダゾール)に溶出された。
【0236】
抗体::四量体融合タンパク質の発現及び宿主細胞の透過処理は、実施例1及び3に記述されるように実施した。
【0237】
透過性にした細胞カプセル内で、αGFPをeGFPに結合するため、カプセル沈殿物を300μLのeGFP中に懸濁し、25°Cで20分間平衡化させてから、カプセルを遠心分離で沈澱させ、300μLのTBS中で1度洗浄した後、TBS中に再懸濁させた。αGFP/eGFPカプセルに対する蛍光顕微鏡検査を、実施例3に記述されるように、実施した。
【0238】
図11は、HALOリガンド標識化した
図5で観察されるフォーカスと関係があるかもしれない、より強く染色された複数のフォーカスが生じているが、透過性にしたαGFP::HALO::RhnA融合タンパク質を発現しているカプセルが、細胞の全域でeGFPに結合したのを示している。
【0239】
したがって、ラマαGFP抗体の機能は細胞質内で発現し、さらに界面活性剤透過処理後も、カプセル内に保持される。
【0240】
実施例3で記述され、また
図5で観察されたαHis抗体の標識化は、すでに約150kDと大きめなタンパク質が、透過性にした細胞壁を拡散して通り、カプセルの内部に入ることができることを実証した。しかし、未変性の抗体は、柔軟なヒンジ領域で分けられた、3つのほぼ同じ大きさの領域を有する変則的な形状のタンパク質である。したがって、これらのタンパク質の示す有効半径は、はるかに小さな球状タンパク質に相応すると思われる。しかし、βバレル構造と約27kDの分子の大きさを有するGFPは、半径がその大きさに比例する、対称性のタンパク質であり、内部のαGFP抗体と結合するために、透過性にしたカプセルの細胞壁を通過することができた。
【0241】
したがって、本発明の方法は、大腸菌細胞質中で親和性タンパク質を発現して、少なくとも30kDの対称性の標的に結合する親和性ライブラリーのディスプレイに使用できる。
【0242】
実施例8.PG−及びDNA結合タンパク質骨格を用いるαGFP親和性タンパク質のディスプレイ
本発明の方法は、PG−及びDNA結合領域と融合したαGFPラクダ抗体を用いてさらに実証された。
【0243】
抗体::KzPG::SNAP::DBP融合タンパク質の発現、宿主細胞の透過処理、及びHis6::eGFPによる標識付けは、実施例6に記述されるように実施した。
【0244】
αGFP融合タンパク質によるeGFPの結合の画像化には、湿式及び乾式プレパラートの両方が用いられた。
図12は、GFP蛍光において、両方の画像化法で有意な差があったことを示している。乾式プレーパラート(DABCO/グリセリン)にされた細胞は、ほとんどが内部蛍光で、明視野とeGFP標識の間の混合があり、細胞壁の周囲の領域は内部空間より光が強くない(
図12B)。しかしながら、TBS中で直接プレパラートにされた細胞は、細胞壁に結合したeGFPと思われる強い蛍光の外部境界のはっきりした形状と、より弱い内部信号を有していた(
図12A)。理論に縛られることなく、推測するならば、DABCO/グリセリン溶媒環境は、粘度が高くまた水性でないので、KzPG領域とペプチドグリカン細胞壁の間の相互作用を抑止したが、αGFPのeGFPとの、あるいはDBPのDNAとの結合は抑止しなかった。
【0245】
しかしながら、親和性タンパク質又は酵素のスクリーニング操作は、通常は水系環境で行われるので、親和性融合タンパク質の分布は、
図12Aに観測された細胞壁結合湿式プレパラートに近いであろう。
【0246】
実施例9.細胞壁への共有結合性付着によるαGFP親和性タンパク質のディスプレイ
本発明の方法は、αGFP抗体の共有結合による細胞壁への結合によりさらに実証された。
【0247】
αGFP抗体は、アラビノース誘導性融合体として、OmpFシグナル配列の下流、かつSNAP及びLPP配列の上流にクローン化された。
【0248】
アラビノースで発現を誘導した後、OmpFシグナル配列は、新生タンパク質を、内部細胞膜を通して周辺質に送り、これが膜細孔を通るときに分裂される。
【0249】
周辺質において、LPP領域は、2つの別のパートナー、野生型LPP又は他のαGFP融合タンパク質とともに、三量体コイルドコイルを形成すると思われる。LPP領域のC末端の残基はリジンで、共有結合により、εアミン基を介して、恐らくはYbiS L,D−トランスペプチダーゼにより(Magnetら、2007)、大腸菌細胞壁に結合する。
【0250】
OmpF::αGFP::SNAP::LPP融合タンパク質の発現、細胞透過処理、及びeGFP標識付けは、実施例8に記述のように実施した。
【0251】
図13は、eGFPは、細胞壁の周りに不均一に、しかし強力に結合したことを示す(
図13B)。eGFPは、OmpF::SNAP::LPP融合体をαGFP領域無しに発現している細胞に結合されなかった(
図13A)。
【0252】
OmpF::SNAP::LPP融合体の細胞壁への共有結合性付着は、最初に、前記融合タンパク質を発現している透過性にした細胞をSNAPリガンドで標識化し、その後標識化細胞カプセルのサンプルを95°Cで5分間加熱して実証した。
図14は、細胞壁を標識化するSNAPリガンドからの蛍光は、加熱処理されたサンプルと、加熱されていないコントロールとの間で差が生じなかったことを示す。Gel Red染色でも、加熱処理されたサンプルにおいても、ゲノムDNAは、細胞中に保持され続けることを実証した。
【0253】
実施例10.外膜透過処理実験
本発明のさらなる態様においては、外膜は、リガンド標的、例えば酵素基質、あるいはポリペプチド等に対して選択的に透過性にしてもよいが、このとき、スクリーンされた前記ポリペプチドは、細胞壁の内部に、又はこれに付着して保持される。
【0254】
外膜を選択的に透過性にする条件を見出すため、一連の界面活性剤及び緩衝液を選別した。大型リガンド(eGFP)及び小型リガンド(Gel Red)の両方を用いて、外/内膜の透過処理で大きな、又は小さな膜細孔が生成したかを調べた。
【0255】
アラビノース誘導性OmpF::αGFP::SNAP::LPP(細胞壁に付着)又はαGFP::HALO::FLAG::RhnA(細胞質内性)を発現する大腸菌株を培養し、実施例1に記述されるように誘導した。
【0256】
誘導された培養液1mLを、50mMのTris(pH8)で1回洗浄し、25mM Tris+1mM EDTA(pH8)又は25mM Tris+2mM Ca
2+(pH8)のいずれかの中に0.2〜0.4%の界面活性剤をいれた透過処理緩衝液変種中に懸濁し、25℃で10分間培養した。
【0257】
透過性にした細胞は、適当な緩衝液で1回洗浄してから、Gel Red(1x水中)で染色し、TBSで洗浄した。これを、精製したHis6::eGFPとともに25℃で1時間培養し、遠心分離で沈殿させ、TBS中に再懸濁させ、湿式プレパラートとして蛍光顕微鏡検査法により観察した。
【0258】
図15及び16は、Tris/Ca
2+又はTris/EDTA緩衝液中の0.2%のApo8(A)又はTween20(B)が、外膜を選択的に透過性にし、大きなリガンド(eGFP)に、外膜を通させるが、内膜は通させないことを実証している。より小さな、膜不透過性のDNA結合リガンドGel Redは、大部分のサンプルで、細胞質まで部分的に透過性であって、いくつかの細胞において内膜にある程度の細孔形成が起きたことを示している。しかしながら、0.5%の8TGP又は剤86である界面活性剤で処理され、外膜及び内膜ともにeGFPに対して完全に透過性であるサンプルに比べて、Gel Red結合の程度は著しく減少した。
【0259】
実施例11.蛍光選別及び被包性ディスプレイの解析
細胞ディスプレイプラットフォームとして、リガンド結合クローンを識別するのに、本発明の方法は、蛍光標示式細胞選別(FACS)に非常に向いている。透過性にした大腸菌細胞のFACSによる選別での安定性を試験するため、3群:i)eGFP、ii)αGFP::KzPG::SNAP::DBP、及びiii)His6::SNAP::BetBを誘導して発現させた。
【0260】
eGFP発現細胞は、透過性にせず、無傷の大腸菌細胞での蛍光のポジティブコントロールとした。αGFP::KzPG::SNAP::DBP発現細胞は、本発明の方法により透過性にし、SNAP BG−488リガンド(緑色)で標識付けした。His6::SNAP::BetB発現細胞は、本発明の方法により透過性にし、SNAP BG−547リガンド(赤色)で標識付けした。
【0261】
細胞はPBS中に懸濁し、混合群の選別のために、ほぼ同数を混合し、あるいは信号の較正のため、別々に選別した。細胞選別は、Becton Dickson Influx FACSにより実施した。データ解析は、FlowJoソフトウェアにより実施した。大腸菌選別のためのパラメーターは、操作者が決定した。
【0262】
図17は、蛍光により3群が識別できたことを示している。選別された群の再分析は、前記選別がそれぞれの比較的純粋な群をもたらすことを示した。グラフの低蛍光領域にある信号は、信号の内部雑音であることが後で判明したので、後に操作者により装置の修正により除去した。
【0263】
実施例12.固体サポート結合のためのスペーサー領域選定
αGFP::KzPG::SNAP::DBP融合タンパク質を発現している細胞を、8TGP培地を用いて透過性にし、中間体His6−タグ化eGFPを経由してHisPur Co
2+セファロース・ビーズ(Thermo Scientific社)に結合した。細胞又はビーズは、最初に過剰のHis6−eGFPとともに培養し、TBS中で洗浄し、一緒に25℃で30分間培養した。結合しなかった細胞は、ビーズから洗い流し、つぎに蛍光顕微鏡検査法でビーズの結合の程度を評価した。
【0264】
最初は、αGFP::KzPG::SNAP::DBP融合タンパク質のセファロース・ビーズへの結合は検知されなかった。αGFP結合領域が、細胞壁に近すぎて、セファロース樹脂上のコバルト錯化eGFPに到達できないためと理論を立てた。このため、ランダムコドンによる12残基ペプチド・スペーサー領域を、αGFP結合領域及びkzPGペプチドグリカン結合領域の間にクローン化した(GGT ACC gcy gcy gkk wtb gck wtb gkk gkk gck gkk gcy gcy GGT CTG(SEQ ID NO:5(配列番号)))。
【0265】
スペーサー変異体の小型ライブラリー(約2,000要素)を発現し、上述のようにCo
2+セファロースに結合した。前記ライブラリーの一部は、ビーズに結合することが観測された。これらのクローンはPCRで増幅し、再クローン化し、十余のクローンの個別の結合性を試験し、配列を調べた。種々のペプチド・スペーサーが、タンパク分解に耐性があり(αGFPを高度に融合タンパク質中に保持する)、また、
図18に示されているように、界面活性剤処理細胞をセファロース・ビーズに結合できることが判明した。サポート結合に機能することが判明したスペーサー配列を表1に挙げる。
【0266】
表1.固体サポート結合のためのランダムリンカー(RL)スペーサー
【表1】
【0267】
スペーサー配列の一つRL6を選んで、後の結合の検討に用いた。固体サポート・マトリックスへの強い結合に寄与する他の要素を調べた。細胞のマトリックスとの培養時間、及び結合溶液の塩(NaCl)の濃度は、両方とも結合に対してポジティブな効果を有することが分かった。培養時間30分と、NaCl濃度の範囲約200mM〜500mMが、効果的であることが判明したが、300mMが最適と考えられる。結合は、Tris、リン酸塩、MOPSの300mMの塩含有緩衝溶液を含む一連の緩衝液中で効率的である。
【0268】
αGFP::RL6::KzPG::SNAP::DBP融合タンパク質を発現している細胞を、ビオチン化eGFPを介してストレプトアビジン磁性ナノ粒子(MagneSphere、Roche Diagnostics社)に結合する条件は、
図19に明示されるセファロース・ビーズ結合に対して求められた範囲内にあることも判明した。
【0269】
12残基スペーサーに加えて、タンパク質領域をも、スペーサー領域として用いることが考えられた。ヒトのタイチン遺伝子(I27)からの小型で安定な高度に発現した27番目のイムノグロブリン領域をRL6スペーサーの上流にクローン化した。この領域も、N末端のαGFP領域の高度かつ安定的な発現と、同時に非常に良好な固定マトリックス結合をも可能にすることが分かった(
図19)。
【0270】
実施例13.被包性ディスプレイ用のマウスscFvライブラリーの構築
一本鎖抗体(scFv)ライブラリーの細胞内ディスプレイ用の最後の領域構造は、scFv::I27::RL6::KzPG::SNAP::DBPであった。scFv領域を除いた、融合タンパク質のタンパク質及びDNAの配列は、SEQ ID NO:13(配列番号)及びSEQ ID NO:14(配列番号)に与えられている。このタンパク質融合体は、N末端にscFv、続いて2つのスペーサー領域であるI27及びRL6、次にペプチドグリカン結合領域のKzPG、SNAPレポーター領域、最後にDNA結合領域(DBP)を有する。
【0271】
ランダムプライマーを用いたcDNAを、酵素Superscript III(Invitrogen社)を用いて、マウス脾臓全RNAから製造した。このcDNAから、Schaeferら(2010)が記述するように、Vent DNAポリメラーゼ(New England Biolabs社)、及びマウス抗体ファミリー配列用変性オリゴヌクレオチド・プライマーを用いて、scFv軽鎖(V
L)及び重鎖(V
H)可変領域を増幅した。ライブラリー・クローン化に用いたオリゴヌクレオチド・プライマーは、Schaeferらの記述したものと、Bsm BIを介して我々のライブラリー骨格ベクター(SEQ ID NO:15(配列番号))内にクローン化するのに適当な末端を有する点で相違している。V
L及びV
H領域は、オーバーラップ伸長PCRを用いて加えられる。最終的scFvバンドは、合計60回のPCR増幅サイクル(1回目30回、2回目30回)にかけられた。
【0272】
ライブラリー・クローン化のために、ディスプレイ・コンストラクト900ngを、BsmBIで切断し、メーカーの説明書にしたがいSureclean(Bioline社)を用い沈澱させ、T4 DNAリガーゼを用い、同様に処理されたscFv生成物400ngに連結した。リガーゼを65°C、10分間の培養で不活性化し、連結体を大腸菌Argentum株(Alchemy Biosciences社)中に電気穿孔で入れた。電気穿孔された細胞は、SOC培地中に回収し、37°Cで1時間培養し、プール後、75μg/mLアンピシリンを含む20×150mmLB寒天シャーレに拡げた。このシャーレを一晩30°Cで培養した。ライブラリーの大きさは4×10
5独立クローン程度と推定された。20クローンの内、20クローンに予想された大きさの挿入断片が含まれていることが判明した。
【0273】
実施例14.被包性ディスプレイ・マウスscFvライブラリーのスクリーニング
ファージディスプレイ・ライブラリーから単離される一本鎖抗体は、多くの場合大腸菌中での発現が困難で、周辺質での発現レベルが低く、あるいはβシートとIg群の間にジスルフィド結合形成を欠くために、細胞質中で完全に不溶性である。大腸菌細胞質中で可溶性のマウスscFv骨格を選別するのに被包性ディスプレイを用いることができるか否かを決定するには、scFvの溶解性が融合タンパク質の性質と相関しているか否かを決定する必要があった。
【0274】
有用な可溶性scFvは、凝集のレベルが低く、発現レベルが少なくとも中程度であることが予想された。これは、透過性にした細胞中のKzPG領域を、細胞壁に結合させる(したがって、細胞中の封入体に局在しない)、かつSNAPレポーター領域の少なくとも中程度の発現を示すクローンとして、視覚的に判断できた。
【0275】
これらのパラメーターを選別するため、単一のコロニーを採取し、すでに実施例1に記述したようにアラビノースを用いて融合タンパク質の発現を誘導した。透過処理後、これらをSNAPリガンドで標識付けし蛍光顕微鏡検査法を用いて観察した。ライブラリー・クローンを、発現、及び、
図20に例が示されるような、SNAPレポーターの細胞での分布に基づき、4類に分類した。
1.SNAPの発現なし。
2.凝集した封入体中でのSNAPの中〜高程度の発現(
図20、左図)
3.細胞壁に局在してのSNAPの弱程度の発現(
図20、中央図)
4.細胞壁に局在してのSNAPの高程度の発現(
図20、右図)
【0276】
発現と溶解性の両方が高いクローンのみを、さらに分析した。しかしSNAPレポーターの発現の弱かったのは、大腸菌発現に最適化されなかったタンパク質の非効率な発現のためでありうるので、こうしたクローンのうちのある部分は、コドンの使用が適性化されたならば、可溶性細胞質ライブラリー・ディスプレイに対して非常に適していると判明することがあり得る。
【0277】
SNAPレポーターの発現レベルが高く、透過性にした細胞の細胞壁の周りに均一に分布したクローンの配列を調べ、残りの融合タンパク質に対して正しい翻訳枠にあるscFv挿入断片の存在を確認した。分析した21クローンの全てで、scFv挿入断片は、全長で、正しい長さのグリシン/セリン・リンカー領域を有し、全融合タンパク質の翻訳のために正しい読み枠中にあることが判明した。このことは、本発明のスクリーニング方法は、大腸菌細胞の細胞質中で、溶解状態で発現したマウスscFv遺伝子を正しく識別していることを示唆した。前記ライブラリーから単離されたscFvタンパク質が、大腸菌細胞質中で可溶であることを確認するため、これを、ライブラリー・コンストラクトから、介在性のスペーサー領域I27−RL6又はRL6のいずれかを含むC末端のFLAGエピトープを有するアラビノース誘導性発現ベクターにシャトルした。
【0278】
アラビノースによるタンパク質発現の誘導後、可溶性のscFv::I27::RL6::FLAG又はscFv::RL6::FLAG融合タンパク質を、0.5%8TGPで抽出した。不溶性の細胞物質は沈澱させ、β-メルカプトエタノールを含むSDS−PAGEローディング緩衝液中に、サンプルに超音波をかけ95℃で5分間加熱して、再懸濁した。各画分の等量ずつを10%SDS−PAGEゲルにかけ、電気泳動した。分離されたタンパク質は、ニトロセルロース膜に移し、5%脱脂粉乳でブロックした。組換えタンパク質発現体に、1:1000に希釈したヒツジαFLAG抗体(Sigma社)、つづいて、抗マウスHRP抱合二次抗体でプローブ付けを行った。化学発光を用いて検出した。
【0279】
図21は、本発明の方法は、ほとんどが溶解した状態で、細菌細胞質内で発現するscFv遺伝子を識別することができることを明らかにしている。ウェスタンブロット法による発現プロフィールは、各サンプルで、scFv::I27::RL6::FLAGコンストラクトについてSNAPリガンドで検知した蛍光顕微鏡検査法と一致している。
【0280】
実施例15.アルジェントン株大腸菌でのP2溶原菌生成
アルジェントンのP2溶原菌(K12;ΔmcrA Δ(mrr−hsdRMS−mcrBC)ΔendAlacZΔM15)は、アルジェントン細胞のローンのP2の単一プラークから派生して作成された。ファージ感化は、Kahn et al. (1991)に記載されるように行なった。
【0281】
実施例16.P2 ΔYKノックアウト
a.相同の再結合による生成
P2バクテリオファージは、多くの溶解性及び溶原性バクテリオファージで特定された溶解システムと同様に、理論上のホリン及び溶解システムに関する遺伝子を有する。ホリンは、内膜を通過してムレイン細胞壁を劣化するリシン酵素のペリプラスム空間に接近する。
【0282】
P2K遺伝子(SEQ ID NO:17)及びY遺伝子(SEQ ID NO:18)はそれぞれ、想定されるリゾチーム及びホリンをコード化する。これらの遺伝子は、Hamilton et al. (1989) に記載されるのと同様の相同的組換を用いて欠失された。隣接の相同の領域は、P2ゲノム(ジェンバック配列 NC_001895.1)から選択され、FRT−隣接のカナマイシン選択カセット間に複製された。P2ゲノムの交換の領域は、6721bpから7487bpだった。
【0283】
標的YK遺伝子の交換の後に、Cherepanov and Wackernagel (1995)に記載されるように、pCP20プラスミドから発現されたFLP組換酵素によってカナマイシンカセットを除去した。その合成株は、ORFだけのものとして保持する短い20回ペプチドとともにYK遺伝子を欠失した。
【0284】
P4バクテリオファージとの感化によって、K12 P2 ΔYK株を機能的に試験した。P4バクテリオファージの103pfuで、アルジェントン(P2)及びアルジェントン(P2 ΔYK)培養を感化し、上部寒天プレートに注いだ。プラークは、アルジェントン(P2 ΔYK)ではなく、アルジェントン(P2)のローンに形成されるのが観察された。
【0285】
b.P4vir1及び準備溶解を用いた試験
感化するP4バクテリオファージを複製し、パッケージするためのP2バクテリオファージYK欠失(P2 ΔYK)の機能性を試験するために、P4変位株のP4virlでP2ΔYK株を感化した。P4変位株は、P4制御領域の転写を増やす変位株を有し、明確なプラーク表現型を有する。
【0286】
P2ΔYK細胞は、早期のログフェーズで成長し、1mMのCaCl
2で補完した。P4virlバクテリオファージ10
9pfu/mLを含む溶解物上澄み1μLを、P2 ΔYK培養の1mLni加えて、37℃で80分間培養した。懸濁液を遠心分離して細胞をペレット化して、上澄み液を廃棄し、未結合のP4virlを除去するために、0.08mMのEGTA及び2.5mMのMgCl
2を含むLB媒体で3回洗浄した。細胞は、1mLのLB媒体中で再懸濁し、そして3つのサンプルに分割した。1つのサンプルは、さらなる処理をせずにそのまま維持した(Sample 1:未透過処理)。サンプル2及び3は、内膜及び外膜の両方を透過処理するために、0.5%の洗剤8TGpを追加して、ペレット化して、LB中で再懸濁によってさらに処理した。そして、細胞をペレット化して、追加なしのLB媒体中で2回洗浄した。透過処理及び洗浄した細胞ペレットは、LB媒体中で再懸濁した。(透過処理した)サンプル2は、さらなる処理をせずにそのままに保持した。(リゾチームで透過処理した)サンプル3は、0.5μLのReady-Lyse (Epicentre, USA)でさらに処理した。Ready-Lyse (Epicentre, USA)は、組み換え型のリゾチームである。濁度が急速に減少したことは、ペプチドグリカン細胞壁がReady-Lyseによって劣化したこと、及びあらゆるパッケージされたP4virl粒子が溶解物に放出されたことを示していた。
【0287】
サンプル1及び2をそれぞれ10μLとサンプル3(未処理の溶解物の希釈)0.1μLを、1mMのCaCl
2を追加した未使用のK12(P2)細胞200μLに添加した。37℃で20分間細胞を培養し、上部寒天(LB媒体、%寒天)7mLを追加し、予備過熱したLBプレートに注ぎ入れた。プレートは、37℃で一晩中培養し、K12ローン中のP4virlプラークの存在を翌朝に決定した。
【0288】
透過処理していないP4感染細胞を示すサンプル1には、上部寒天プレートに83のプラークが産出された。洗剤で透過処理したP4感染細胞を示すサンプル2には、34のプラークが産出された。洗剤で透過処理してからリゾチームで細胞壁を劣化させたP4感染細胞を示すサンプル3には、168のプラークが産出された。
【0289】
サンプル希釈を調整し、透過処理し、リゾチーム処理したP2 ΔYK細胞(サンプル3)は、サンプル1よりも200フォルド多いP4virlバクテリオファージを有し、サンプル2よりも500フォルド多いP4virlバクテリオファージを有していた。
【0290】
感染したK12 P2ΔYK細胞中の複製能力のあるP4virlバクテリオファージが存在することにより、YK溶融遺伝子の欠失がP4virlゲノムの複製又は機能的バクテリオファージ粒子の組換えを妨げないことが実証される。しかしながら、YK溶融遺伝子の欠失により、感染細胞からの組換えバクテリオファージ粒子の放出が妨げられる。洗剤処理によってなされた細菌細胞の内膜及び外膜の透過処理によって、バクテリオファージが溶液に放出されるわけではない。しかしながら、リゾチームで透過処理された細胞によって、伝染性のバクテリオファージが溶液に放出された。
【0291】
実施例17.誘導酵素とP2ΔYK/P4共溶原菌
a.C1a細胞中のP2/P4共溶原菌の生成
長年、P2バクテリオファージ及びその付随体P4との実験に用いられる株は、大腸菌のC株である(Wiman et al., 1970)。我々は、C株、C1a(Sasaki and Bertani, 1965)の起源を用いることで、上述のように、P2プラークから溶原化した細胞のサブクローンを通じてP2溶原を作製した。同様に、C1aP2株のP4共溶原菌を作製した。
【0292】
P2/P4共溶原菌株は、転写抑制下で両方のプロファージを有している。この株を使ってコスミドライブラリープラスミド両ファージを誘導的にパッケージすることは、アクチベートさせるのに必要である。他のうまく特定した溶原性ファージ、ラムダに関して、抑制の開放は、RecA/LexA媒介分裂を通じて、又は、熱不安定性突然変異リプレッサー、cI857を用いて、リプレッサータンパク質、cIの不活性とともに起こる。しかしながら、P2のリプレッサーの不活性による抑制に無反応であるため、P2は、非誘導ファージとして知られている。この理由は、恐らく複製及び構造的遺伝子転写とともに、ゲノムからの欠失を調整できないからである(Bertani, 1968)。しかしながら、感化したP4付随体ファージは、エントリーを抑制されたP2プロファージをアクチベートするメカニズムを有している。P4ε(イプシロン)タンパク質は、P2リプレッサータンパク質へ結合してアンチリプレッサーとして行動する。さらに、P4δ(デルタ)タンパク質は、P2構造的オペロンの有効な活性剤である。P2構造的オペロンは、P2ogr転写アクチベーターの融解縦列重複である。しかしながら、P4プロファージは、それ自体及びP2アクチベーターの両方の複雑で厳重な制御を有する。
【0293】
P4プロファージは、それ自体のプロモーターの転写リプレッサー、Visタンパク質と、cIRNAに基づく抑制複合体を産出するための転写及び翻訳カップリングに頼る下流Eta及びcI遺伝子との間の相互作用を用いる。
【0294】
P4及びP2プロファージの抑制解除は、P4εタンパク質によるP2リプレッサの抑制を必要とする。アクチベーターP2は、P4δ遺伝子の転写を促進するトランスのCox及びOgr転写アクチベーターを次々に生み出す。P4δ遺伝子は、さらにVisプロモーターを通じてP4をアクチベートし、P2構造遺伝子オペロンにトランスで作用する。
【0295】
このような複合体システムにおいて、抑制されたプロファージ、P2及びP4の両方を含む細胞は、その組み合わせの影響を強める相互作用のある多くの要因で、有利なフィードバック効果をもたらすことを抑制するあらゆるアクチベーター遺伝子の発現を厳密に制御しなければならない。プロファージの潜在的アクチベーターは、P2cox、P2ogr及びP4δ転写アクチベーター、並びにP4εアンチリプレッサーを含んでいる。
【0296】
3つの転写アクチベーターは、λファージリプレッサーcI857の温度感性対立遺伝子によって提供される厳密な転写制御下で複製された。pUC起源と両立する複製の低コピーpACYC184プラスミド起源は、pUCベースのライブラリプラスミドとともに、誘導性アクチベーターを維持することができる。
【0297】
C1a P2/P4共溶原菌は、誘導性発現構造で変形させて、30℃で成長させた。その培養は、分解が生じるまで37℃成長させる前の、42℃に温度を変えて20分間誘導の前に、早期ログフェーズに成長させた。
【0298】
P4δ遺伝子は、早期溶解を示し、次にogr、そしてcoxが続くが、全ての3つのアクチベーターは、共溶原菌内で溶解を誘導することができる。温度誘導P4δのポリヌクレオチドシーケンスはSEQ ID NO:19(配列番号)で提供される。
【0299】
伝染性バクテリオファージP4粒子の産出は、C1a P2溶原菌の培養に対する溶菌液の滴定によって確かめられた。P4滴定量は、>10
9pfu/mlで決められた。
【0300】
実施例18.コスミド伝送とP2 ΔYK
遺伝子ライブラリースクリーニング及び伝送に関するP2/P4システムを使用するために、P4cos領域を含むベクターを構築した。psu遺伝子から始まるP4からcos卵割サイトに亘ってgop遺伝子までの389bp領域(P4ゲノムの11461bp〜225bp; NCBI 受入番号NC_001609)は、PCRによって増幅され、高複製pUC起源プラスミドベクターに複製された。P4cos領域の特定は、配列によって検証された。ベクターは、特許出願PCT/AU2010/001702に記載されるようなライブラリー細胞内のディスプレイスクリーンシステムのaraC遺伝子及びアラビノース誘導プロモーター制御発現も含んでいた。
【0301】
P2、P4、又はλバクテリオファージにかかわらず、あらゆるコスミドベクターと同様に、生存能力のある遺伝されるユニットを産出するためのカプシドヘッドにパッケージングするための最小のサイズがある。P4に関して、これは、約9.2kb(Kim and Song, 2006)と決定される。このP4カプシドヘッドにパッケージするための最小サイズを達成するために、大腸菌ゲノムのDNAの4.3kbの「stuffer」フラグメントで複製によって、コスミドベクターの合計サイズが10.7kbまで増量され、11.6kbの野生型P4ゲノムサイズ近くになる。
【0302】
C1a P2 ΔYK/P4共溶原菌でのコスミドベクターレジデントのコパッケージングを示すために、温度感性P4δ遺伝子とpUC主鎖の抗アンピシリンコスミドベクター及びpACYC184主鎖の抗クロラムフェニコールベクターで株を変換した。
【0303】
両共溶原菌及び両プラスミドを有する株が30℃で早期ログフェーズに成長させて、P4δタンパク質が42℃に温度を変更して20分間で誘導し、その後37℃で1時間の成長させた。制御として、P4カプシドパッケージングのためにP4cos領域なしのライブラリープラスミドを含む株及びシェッファーフラグメントを誘導した。
【0304】
パッケージされたコスミド及びP4バクテリオファージを放出するために、透過処理媒体(LB媒体 + 0.5% 8TGP)中、室温(〜25℃)で10分間、誘導細胞をペレット化して再懸濁した。透過処理後、LB及び細胞壁を消化するために追加したReady-Lyseリゾチーム0.5μL中でペレット化し、再懸濁した。液滴の濁度によって溶解を確認した。細胞壁のReady-Lyseの作用のためにクロロホルムが細胞の透過処理に有効であることも確認した。C1a及びC1aP2溶原菌の感染によって、パッケージされたコスミド及びP4バクテリオファージをそれぞれ滴定した。
【0305】
ライブラリーコスミドは、誘導P2ΔYK細胞中の固有P4プロファージとほぼ同レベルで、P4プラークと比較して得られるコスミド復活からの抗生物質固有コロニーとほぼ同数をパッケージすることを確認した。コロニーは、P4cos領域及びシェッファーフラグメントを欠くライブラリープラスミドを運搬する株から調整された溶解物との感染から得られなかった。
【0306】
(Mg/EGTAとのLB媒体中に4℃で保管された)C1a P2溶解細胞からの未処理の溶解物中のP4バクテリオファージ又はパッケージされたコスミドの低安定性とは違って、溶解物中の細胞タンパク質分解酵素の作用によるものと推測されるが、初めに透過化され、洗浄されたP2ΔYK細胞から放出された、P4バクテリオファージ及びパッケージされたコスミドは、外部から加えたリゾチーム(Ready-Lyse)の作用によって溶解する前に、2日以上の期間、わずか一滴だけの滴定でも安定であることもわかった。これは、ペレット化工程及び媒体変更工程の間に細胞壁に保持される感染性粒子から洗い落とされた透過化細胞からの上述のタンパク質分解酵素の放出によるものと推測される。このため、温度誘導、透過化及び媒体変更により容易に高滴定量のコスミド粒子を産出し得るし、標準的なバクテリオファージのプロトコルのように、長時間の超遠心分離工程を必要とせずとも安定した滴定を維持し得る。
【0307】
実施例19.有機溶媒を用いた大腸菌の透過処理
洗剤を用いたグラム陰性細胞の透過処理に加えて、膜完全性を破壊する他の化学物質は、脂肪親和性の有機溶媒であってもよい。有機溶媒は、先行技術で細胞の透過処理及び顕微鏡検査の免疫標識の固化に実質的に用いられている(Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory, 1988)。本発明の方法において、細胞内の標的に結合する大型免疫グロブリン複合体を流入するために細胞膜を透過処理する。
【0308】
特に、有機溶媒クロロホルムは、おそらく細胞膜の透過処理を通じて、細胞/バクテリオファージ懸濁液中の細菌細胞を選択的に破壊するためにも用いられる(Sambrook et al. 2001)。クロロホルムは、ホリン変異株を救出するために、溶解バクテリオファージ遺伝子中で使用されることもある。当該ホリン変異株は、バクテリオファージを放出するための細胞質からリゾチームを放出する内膜を透過処理することができなかった(Ziermann et al., 1994)。同様に、クロロホルムは、リゾチーム変異株を救出するために使用されることもある。このリゾチーム変異株は、外因性活性リゾチームをペリプラズムに導入し得るたの、外膜を透過処理することによって、ペプチドグリカン細胞壁を加水分解することができなかった(Ziermann et al., 1994)。それ故、クロロホルムは、グラム陰性大腸菌細胞の内膜及び外膜の両方を通過して、少なくとも小さいリゾチーム通路(〜15kD)を通過することができることが明らかであった。
【0309】
本発明の方法で記載される細胞内のディスプレイに使用する細胞膜の透過処理するための有機溶媒を試験するために、αGFP::RL6::KzPG::SNAP::DBP融合タンパク質を発現する大腸菌(実施例8に記載されるような誘導発現)を、有機溶媒の水性混合物中で懸濁した。膜の透過処理は、小分子量DNA結合蛍光性リガンド、GelRed及び30kDタンパク質、eGFP、の結合によって示された。
【0310】
いくつかの有機溶媒は、水中で混和性を維持するけれども(つまり、短鎖アルコール)、他は、大部分は混和せずに、混合が水相と非水相に分離する(例えば、クロロホルム及びブタノール)。分離している相は、水相中での有機溶媒の溶解性が低い飽和状態を表している。
【0311】
αGFP::RL6::KzPG::SNAP::DBP融合タンパク質を表す細胞を、遠心分離によって回収し、25℃で10分間、下記の溶媒組成の1つで透過処理をした。LB培養基は、水性の混合物の組成で用いた。トリス緩衝制御も実行した。
【0312】
10%エタノール;20%エタノール;30%エタノール
10%メタノール;20%メタノール;30%メタノール
10%イソプロパノール;20%イソプロパノール;30%イソプロパノール
10%DMSO;20%DMSO;30%DMSO
10%アセトン;20%アセトン;30%アセトン
ブタノール(1:5)
クロロホルム(1:5)
50mM トリス/LB(pH7.0);1M トリス/LB(pH7.0)
【0313】
溶媒処理後、細胞は、遠心分離によりペレット化し、懸濁液によってLB媒体とともに1回洗浄し、遠心分離でペレット化し、さらに低分子量DNA結合蛍光色素分子GelRed(1:10,000水希釈)又はeGFPのいずれかを含むLB媒体中で懸濁した。識別した媒体中において、25℃で20分培養した後に、遠心分離により細胞をペレット化し、LB中で再懸濁によって洗浄し、そして蛍光顕微鏡検査法によって観察した。
図22は、有機溶媒で試験したものを示しており、低分子量リガンドを細胞質(A)に導入してもよい大腸菌細胞膜を透過化するクロロホルム及びブタノールであるが、クロロホルムだけが大型の分子量タンパク質(〜30kD)の導入できている。
【0314】
実施例20.P2gpL装飾タンパク質を用いたカプシドディスプレイ
P2バクテリオファージgpLタンパク質を、成熟したビリオンの構成成分として検出し(Chang et al., 2008)、たとえ、2つのタンパク質が対合BLASTアライメント(NCBI)による重要な相同領域を全く記述していなくても、ラムダバクテリオファージのgpDカプシドタンパク質の機能的に同一であると推定される。ラムダgpDタンパク質は、長さに110残余がある一方で、P2gpLタンパク質は長さに169残余がある。
【0315】
P2 gpLタンパク質がカプシドディスプレイに機能するかどうかを試験するために、αGFP:I27配列を、SEQ ID NO:20(配列番号)及びSEQ ID NO:21(配列番号)としてリストされた融合タンパク質を作製するためのP2 gpLのN−及びC−終端に溶解させた。融合タンパク質は、gpL及びαGFP:I27領域の間に空間を設けるFLAGエピトープ標識を含んでもよい。上流側のaraC転写制御因子とaraBADプロモーターからの下流遺伝子配列を複製することによるアラミノーゼ誘導で融合タンパク質を発現した。αGFP:I27:gpL発現ベクターのDNA配列は、SEQ ID NO:22としてリストされる。
【0316】
αGFP:I27:gpL融合タンパク質をコード化するプラスミドを、Hy5プロファージを含む大腸菌K12宿主に転写した。Hy5ファージは、186転写制御下でP2項増遺伝子を含む関連ファージP2及び186のハイブリッドである(Bradley et al., 1975; Younghusband et al., 1975)。さらに、Hy5(186) cIリプレッサーは、温度感性であり、ファージ成長の温度誘導を許容している。
【0317】
アラビノーゼによるαGFP:I27:gpL融合タンパク質の発現及びSDS-PAGEによる分析は、
予想サイズ44kDよりも大きい、約55kDの上側バンドを作製した。その上側バンドは、溶解性成分及び不溶解性成分の両方にあり、より低いバンドは、単独で溶解性成分にある(
図23)。
【0318】
αGFP:I27:gpL融合タンパク質が、ファージカプシドに結合し、ファージディスプレイ上で機能的に結合することを実証するために、発現構築とのプロファージ株を45℃に加熱して15分間熱し、Hy5複製を開始した。熱ショックの後に、サンプルを成長させるための温度の32℃に下げた。アラビノーセを添加して0.2%の濃度にして温度を下げてから30分後に、融合タンパク質発現を誘導した。最大ファージ放出のために32℃で合計70分間培養物を培養した。
【0319】
Hy5ファージディスプレイαGFP:I27:gpL融合タンパク質の捕獲に関し、ストレプトアビジンで被覆したDynalビーズ(M-270, cat. no. 653-05; Life Technologies)をビオチン化抗体His6-GFPでまず標識付し、TBSで完全に洗浄した。eGFPでのDynalビーズの標識付は、蛍光顕微鏡検査法で確かめた。
【0320】
表2は、DynalビーズによるHy5ファージキャプチャのgpL融合タンパク質発現を表している。これらのデータは、野生型gpLタンパク質を用いてパッケージされたファージ上のDynalビーズにより、αGFP抗体のP2pgLカプシドタンパク質への融合を82フォルド増強したことを表している。さらに、誘導していないサンプルが融合タンパク質の発現を検出できない水準であっても(
図23、サンプル1)、そのサンプルを上記制御の重要な水準まで親和純正化した。このことは、かなり低水準のディスプレイでもファージ捕捉される結果となることを示唆している。
【0321】
表2.Hy5制御上のgpLカプシド融合タンパク質をディスプレイするHy5ファージの増強
【表2】
【0322】
実施例21.ラムダファージSR溶菌遺伝子の欠失
ラムダファージ溶菌遺伝子は、S’/S (ホリン(SEQ ID NO:23)/抗ホリン), R (エンドリシン (SEQ ID NO:24)), Rz/Rz1 (ある媒体で必要な溶解)遺伝子の右腕に位置する。溶解クラスターは、あらゆるラムダ構造遺伝子及び溶解遺伝子の転写の原因となるpRプロモーターから転写したより大きな転写ユニット内にある。それ故、pRのmRNAは、ラムダゲノムの約半分をカバーする単一の転写産物である。溶解遺伝子を不活性化するために、相同組換を用いる遺伝子を削除することを決定した。ラムダ変異種を迅速に選択し得るために、溶解遺伝子をカナミシン耐性遺伝子(KanR)に置換した。しかしながら、細胞の生存に有害かもしれないプロファージ構造遺伝子発現をもたらす、プロモーター配列又は転写ターミネーター配列をいずれも挿入しないことを確実にするために、隣接する非本質的なbor遺伝子も削除された。bor遺伝子は、宿主大腸菌への血清耐性を与えるものであり、それ自身のプロモーター下で、pR’への反対方向にプロファージ中で構造的に発現される(Barondess and Beckwith, 1995)。合成のgBlockフラグメント(IDT)を用いて、我々はKanR遺伝子の開始コドンのBor遺伝子の開始コドンへの溶着で溶解クラスターの切断を設計した。この欠失からラムダ溶解クラスターを保持する配列だけが、MKMPEKQLEGTQKYINEQCR配列の切断ペプチドだった。溶菌-欠損のDNA配列は、人工腕と構築し、KanRカセットは、SEQ ID NO:27としてリストされる。
【0323】
人工相同腕及びKanRカセットは、pUCに基づくPCRクローニングベクター、pAcquire(Alchemy Biosciences, Melbourne, Australia)に複製され、配列によって検証された。
【0324】
ラムダ溶融クラスターの欠失を発効するために、その構造は、大腸菌株ED8739(F-, metB, hsdS, supE, supF)のラムダcI857sam7の溶原菌に転送され、ファージ溶解は温度誘導し(42℃、10分)、その後、37℃で1時間成長によって誘導させた。ファージを含む上澄みの1mLを遠心分離で洗浄し、クロロホルムを1滴加えた。そして、追加のマグネシウム(10mM)及びマルトース(0.1%)とED8739の培養物をファージ溶解物で希釈して感染させて、30℃で16時間成長させたLB+カナミシン(15μg/mL)寒天プレート上に載せる前に、30℃で2時間溶原菌を副産物で回復させた。
【0325】
標的プラスミドは十分小さかったので、ラムダ::コスミド組換型が成長するファージとしてパッケージされることができ、そして、カナミシン抵抗プロファージコロニーは、アンピシリン抵抗遺伝子(つまり、Kan
R/Amp
S)不足のためにスクリーンされ、このアンピシリン抵抗遺伝子は標的構造の相同両腕の間の相同再結合の事象、溶融クラスターを切除し、それを所望のカナミシンカセットと置換することを示しているだろう。望まない変異株なしでも欠失が有効であることを確認するためにKan
R/Amp
Sプロファージを特定し、その領域は、PCR及びその配列決定によって詳述された。全ての複製が計画通りに正しいことを見出された。
【0326】
実施例22.ラムダΔSRゲノムのパッケージング
溶融クラスターの欠失が、細胞単位あたりの存続能力のあるパッケージされたファージの同一の数を産出したこと(つまり、修正したpR’転写産物は、ファージ構造タンパク質の産出をもたらさなかったこと)を実証するために、ラムダcI857sam7ΔSRプロファージは、30℃でラムダcI857sam7プロファージと平行して特定の細胞密度に成長したし、ファージ産出は、温度誘導(42℃、10分)で誘導し、続いて37℃で1時間成長させた。期待しているように、ラムダcI857sam7培養は終了まで溶解し、その一方で、ラムダcI857sam7ΔSRは溶解し損ねた。ラムダcI857sam7ΔSR培養は、遠心分離によって回収され、LB+0.5% 8TGP中で再懸濁し、25℃で10分間培養した。そして、透過処理した細胞は、遠心分離によって回収され、LB+10mM MgSO
4で一度洗浄し、元の1mLの体積のLB+10mM MgSO
4で再懸濁し、0.5μLのReadyLyse(Epicentre)を使って溶解させた。各溶解物にクロロフロムを1滴加えて、保持される存続可能な細胞を始末し、ファージはED8739に影響した連続希釈法を用いて滴定され、10mMのMgSO
4と0.1%マルトースを追加したLB上部寒天上にプレートした。プラークを数える前に、37℃で16時間プレートを培養した。ラムダcI857sam7及びラムダcI857sam7ΔSRプロファージの両方は、〜1×10
9pfu/mLのファージ滴定をして、ラムダΔSR溶融クラスターの欠失及び反対の転写方向にカナミシン遺伝子の関連挿入は、構造的遺伝子の転写及び翻訳を混乱させない。
【0327】
実施例23.ΔSRファージのカプシドディスプレイ
ラムダgpD遺伝子を用いるカプシドディスプレイは、文献によく寄稿されるように、gpDディスプレイを用いた標的結合へのファージを取る方法を有している。しかしながら、カプシドディスプレイと溶菌-欠損ファージの組合せの使用は、この出願以前には提案されていなかった。さらに本発明の方法により透過処理した細胞のカプシドディスプレイと溶菌-欠損ファージの組合せは、FACS欠失によるファージカプシドへの標的結合に対してスクリーニングすることができるものであり、そのFACS欠失は、複製特性の高効率な方法である。
【0328】
透過処理した細胞内に保持される溶菌-欠損ファージへの標的の結合を実証するために、我々は、GFPに関する蛍光タンパク質、mAG1(Kurosawa et al., 2003)に結合する単結合抗体(scFv)をコード化する配列を、ラムダgpD遺伝子の3’−ターミナスに溶解させた。低減状態での細菌細胞質で発現するとき、α−mAG1のscFvは、可溶性及び安定な抗体の希少な分類である。FLAG抗原決定基は、gpD::α−mAG1融合タンパク質のC末端に溶解し、そして全長の溶解性タンパク質は、αFLAG単クローン抗体を用いて大腸菌細胞の細胞質に発現されることが実証された。
【0329】
ラムダコスミドは、araCタンパク質による抑制及びアラビノーセによる誘導の下で、araBADプロモーターからgpD::α−mAG1融合タンパク質を発現し、構成された。コスミドは、ラムダcos領域(SEQ ID NO:26(配列番号))、複製の細菌プラスミド起源、及び抗生物質の抗体遺伝子(AmpR及びChlR)の、個別的に、及び商業的に使用可能な他のコスミドベクターに共通する特徴を含んてもいた。コスミドベクターは、生体内でのファージのパッケージングを可能とするシェッファーフラグメントも含んでいる。商業的に使用可能なコスミドベクターの例は、pFOS1(New England VBioLabs(NEB))である。
【0330】
gpD::α−mAG1コスミドは、λcI857ΔSRプロファージを含む大腸菌ED8739株に転写され、30℃の栄養増殖で成長させた。ファージ機能を誘導するために、株は、低密度のLB媒体で培養され、31℃で75分成長させる前に42℃で15分間加熱した。0.2%w/vのアラビノーセの添加、続く42℃の培養によってgpD::α−mAG1融合タンパク質の誘導をすぐに開始した。ファージ成長の感性及びパッケージングで、25℃で10分間のLB+0.5% 8TGPの0.3×体積で遠心分離及び再懸濁により本発明の方法を用いて細胞を透過処理した。そして、細胞を再度遠心分離し、1×TBSの体積+10mMMgSO
4(TBS/Mg)で洗浄した。ペレット化する前に、TBS/Mg中の過剰のmAG1タンパク質で20分間懸濁した。mAG1結合の後に、顕微鏡によって観察するため、又はFACS分析のために懸濁し、細胞をTBS/Mgと未結合のmAG1をきれいに洗浄した。
【0331】
図24は、多価のラムダディスプレイを描くものであり、透過処理した細胞内にカプセル化され、蛍光標的で探査したときに、蛍光顕微鏡法による視覚の検出において特に強いシグナルが発生した。各細菌細胞は、10巣と30巣の間に点状の標識で表されていた。これらの巣は、gpD::α-mAG1融合タンパク質を発現する細胞中にのみ観察され、ファージで誘導されていた。巣は、融合タンパク質を発現していない細胞内では観察されなかったし、mAG1タンパク質で探査したときにファージで誘導されなかった。同様に、gpD::α-mAG1で標識したファージは、関連する蛍光タンパク質、GFPに結合しなかった。野生型ラムダファージ放出量は、細胞1つあたり100〜200コピーであることがわかり、細胞のほんの少しの領域でファージが濃縮しているものと推察され、各巣は、3ファージ及び20ファージの間で含まれている。この見積もりは、控えめであるかもしれず、融合の標準的なタイミングで複製が許容される溶菌-欠損ファージからの放出量はもっと大きいかもしれない。それ故、多価のカプセル化したディスプレイ、溶菌-欠損ファージは、本発明の方法で記載されるように、光学顕微鏡によって蛍光標識したタンパク質結合を直接検出してもよい。
【0332】
FACS装置の感度は、従来の顕微鏡の画像よりも優れているので、光学顕微鏡でシグナルの強度を容易に観察し得ることにより、標識されていないファージから標識したファージを含む細胞を検出及び回収し得ることが期待される。
図25は、〜1%のα−mAG1陽性細胞とInflux FACS(BD Biosciences)の100K事象での蛍光グラフを描いている。細胞集団は、DNA結合色素Gel Red及び蛍光mAG1タンパク質との共染色されている。P2ゲート集団は、α-mAG1陽性であり、またP3ゲート集団は、α−MAG1陰性である。
【0333】
ED8739 λ cI857ΔSR細胞への感染に続き、ReadyLyse酵素の添加によりPost-FACS出力を回復した。好ましい一事象あたり約10ファージ粒子の回復を記録した。
【0334】
それ故、カプセル化したカプシドディスプレイファージの高速処理FACSスクリーニングは、本発明の方法を用いることによって可能とされる。
【0335】
広く記述された本発明の範囲を逸脱することなく、特定の態様において示したように、多くの変化形及び/又は改良が可能であることを当業者は理解するであろう。本実施態様は、したがって、いかなる点においても説明のためであって、制限を課すものと考えてはならない。
【0336】
本明細書において、議論され、及び/又は参照された公刊物は、その全体を参照のため本明細書に組み入れる。
【0337】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、装置、物品等々に関するいかなる議論もひとえに本発明の状況を提供することを目的としている。これらの事項のいずれか、又は全てが、当出願の各請求項の優先日より以前に存在していたことを理由として、それが先行技術の基盤の一部を形成すること、あるいは本発明に関連する分野において普通の一般的な知識であったことを是認するとして取られるべきでない。
【0338】
参考文献
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