特許第6013471号(P6013471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6013471ガイディング装置を拡張して可撓性を調節するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013471
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ガイディング装置を拡張して可撓性を調節するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/09 20060101AFI20161011BHJP
   A61M 25/092 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   A61M25/09 512
   A61M25/09 516
   A61M25/092 500
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-518661(P2014-518661)
(86)(22)【出願日】2012年6月21日
(65)【公表番号】特表2014-520596(P2014-520596A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】US2012043528
(87)【国際公開番号】WO2013003191
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2015年5月11日
(31)【優先権主張番号】61/502,671
(32)【優先日】2011年6月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/232,108
(32)【優先日】2011年9月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514002329
【氏名又は名称】コーディス・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Cordis Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ウィルキンソン・マシュー
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−530158(JP,A)
【文献】 特開2010−137095(JP,A)
【文献】 特開昭63−192457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00−25/092
A61B 17/00−17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイディング装置であって、
細長い本体と、拡張性先端部と、を備え、該先端部が、巻き戻し方向への回転に対する抵抗力によって該先端部を拡張するような巻き形状を有する複数の螺旋状部材を含み、該螺旋状部材が、前記ガイディング装置を巻き方向に回転すると、穴あけを行うように構成されるねじ山を形成し、
前記細長い本体が中実ガイドワイヤを含み、
前記先端部が、前記螺旋状部材に張力がかかっていないときにたわんだ形状を示し、前記螺旋状部材に張力がかけられているときに真っ直ぐな形状を示すように構成される、ガイディング装置。
【請求項2】
前記螺旋状部材がニッケル−チタン合金から形成される、請求項1に記載のガイディング装置。
【請求項3】
前記巻き方向への回転に対する抵抗力によって前記螺旋状部材に張力がかけられると、前記拡張性先端部の剛性が増すように構成される、請求項1に記載のガイディング装置。
【請求項4】
前記螺旋状部材が重なった配置で巻かれる、請求項に記載のガイディング装置。
【請求項5】
前記細長い本体が、内側管状部材の上に同軸状に配置される外側管状部材を備え、前記螺旋状部材の近位端が前記外側管状部材の遠位端に隣接して固定され、前記螺旋状部材の遠位端が前記内側管状部材の遠位端に隣接して固定される、請求項1に記載のガイディング装置。
【請求項6】
前記螺旋状部材によって支持される弾性膜を更に含む、請求項に記載のガイディング装置。
【請求項7】
外側管状部材の内側管状部材に対する軸方向運動によって、前記螺旋状部材を半径方向にたわませ、前記ガイディング装置の前記先端部を拡張する、請求項に記載のガイディング装置。
【請求項8】
前記先端部が、内側管状部材に対して近位方向に外側管状部材へ軸力をかけると、前記先端部の剛性が増すように構成される、請求項に記載のガイディング装置。
【請求項9】
前記外側管状部材の近位端に固定されるノブを更に備え、該ノブが、前記内側管状部材の上に同軸状に配置され、前記内側管状部材に対して前記外側管状部材に回転力及び軸力をかけることが可能なように構成される、請求項に記載のガイディング装置。
【請求項10】
前記内側管状部材が、血管内処置を行うための細長い装置を収容するように構成される内腔を更に含む、請求項に記載のガイディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤ又はガイディングカテーテルに関し、より詳細には完全に閉塞した血管を通過するように構成されるかかる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
閉塞性血管疾患は一般に、血管中を流れる血液を遮断する硬化した石灰化沈着物を特徴とする。閉塞性血管疾患は、冠状血管及び末梢血管の両方において遮断を引き起こす恐れがある。特に重篤な例として、慢性完全閉塞(CTO)として知られる状態である、病変部及び沈着物が血管を完全に遮断する状況が挙げられる。典型的なCTOは、内部への沈着物、典型的には石灰化フィブリンの蓄積に起因する、患者血管内にある病変である。
【0003】
従来からこの種の疾患は、バイパス手術及び/又は薬物療法の両方で治療されている。最近では、閉塞性血管疾患は、病変部を通過して又は全体にガイドワイヤを進め、インターベンション治療のための通路を作る、すなわち血管形成術によっても治療できることが発見された。別の方法としては、同様の機能を得ることを意図したガイディングカテーテルも使用されている。これらの処置では、バルーンカテーテル又はステントを病変部に送達する経路を作り出すために、ガイドワイヤを用いて硬化沈着物を通して穿刺する。これに関する手技としては、装置が前進方向及び逆方向に短い時間で交代する運動を受けて、病変部に係合する先端部又は類似部が、病変部を短時間突き、ある意味ではたたくことによる、「dottering」として当該技術分野において既知であるものを含み得る。
【0004】
典型的には、経皮的冠形成(PTCA)法で用いられるガイドワイヤ及びカテーテルは別々の装置であり、ガイドワイヤは本質的に、所望の医学的処置を行うPTCAカテーテルのためのガイド機能を果たす。したがって、ガイドワイヤ及びガイディングカテーテルの設計には多くの課題が残っている。例えば、患者の解剖学的に適切な位置にガイディング装置を位置決めすることは難しいプロセスであり、血管壁の穿孔を避けるためにガイディング装置の先端部の並びを維持しながら、蛇行する血管構造の進路を決定し、病変部をうまく通過させることが必要である。
【0005】
更に、CTOでの使用を意図したガイディング装置は、更なる課題に直面する。多くの場合、血管の真腔は閉塞部に埋没しており、徐々に形成された偽腔に囲まれている。真腔を通過させる試みは、ガイディング装置の先端部がそれて閉塞部の偽腔内に入る原因となり得、これによって血管穿孔、解離、又は血流内へのプラク粒子の遊離が起こる恐れがある。更に、通過中、ガイディング装置の先端部は、閉塞部の形状によって、自然に閉塞部の中央部よりも側部に向かう傾向があり、これも血管穿孔、解離、及び閉塞部を通過できない原因となる恐れがある。
【0006】
結果として、多くの機能的特徴部を有するCTO処置での使用を意図したガイディング装置では、その特徴部の一部が元々対向しており、所望の性能を得るために良好なバランスを求めることが有利である。例えば、ガイディング装置は、体内の、屈曲部、ループ部、及び分枝部からなる蛇行する経路を通過して進むため、十分に可撓性でなければならない。しかし、所定の位置に進める際、摩擦及び閉塞に打ち勝つために必要な推進力を提供するように、十分に剛性である必要もある。またガイディング装置は、十分な剛性を有して、この装置を超えて又は通過して進む別の装置の導管としても機能しなくてはならない。加えて、ガイディング装置は、所定の位置にガイドされる際の方向変更を促すために、トルクを与えることが可能でなくてはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、病変部の通過及び/又は処置に先立ち、及びその間に容易に位置付けでき、血管穿孔のリスクも減らす医療用装置の必要性がある。血管腔の中央部に残ったまま血管構造を通って進むために、かかる可撓性を有するガイディング装置を提供することが有利である。また、必要とされる可撓性を、閉塞した病変部を通過するのに要する剛性と組み合わせることも有利である。更に、ガイディング装置の先端部が、病変部のキャップ部から内膜下腔内にそれる可能性を最小限にすることが有利である。また、ガイディング装置の先端部が揃わないために、血管壁を穿孔するリスクを最小限にすることも有利である。以下の説明において詳述されるように、本発明は、これらの及びその他の目的を達成する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記ニーズ及び以下で言及され明らかになるニーズに従って、本開示は、細長い本体と、拡張性先端部と、を備え、先端部が、巻き戻し方向への回転に対する抵抗力によって先端部を拡張するような巻き形状を有する複数の螺旋状部材を含み、螺旋状部材が、ガイディング装置を巻き方向に回転すると、穴あけ行為を行うように構成されるねじ山を形成する、ガイディング装置を目的とする。好ましくは、螺旋状部材は、ニッケル−チタン合金から形成される。螺旋状部材は、巻き方向への回転に対する抵抗力によって螺旋状部材に張力がかけられると、拡張性先端部の剛性が増すように構成される。
【0009】
一実施形態では、細長い本体は中実ガイドワイヤを含む。好ましくは、指定した実施形態では、螺旋状部材は重なった配置で巻きつけられる。別の態様では、遠位先端部を、螺旋状部材に張力がかかっていないときにたわんだ形状を示し、螺旋状部材に張力がかけられているときに実質的に真っ直ぐな形状を示すように構成してよい。
【0010】
別の実施形態では、細長い本体は、内側管状部材の上に同軸状に配置される外側管状部材を備え、螺旋状部材の近位端は外側管状部材の遠位端に隣接して固定され、螺旋状部材の遠位端は内側管状部材の遠位端に隣接して固定される。好ましくは、装置は、螺旋状部材によって支持される弾性膜も含む。
【0011】
一構成では、外側管状部材の内側管状部材に対する軸方向運動によって、螺旋状部材を半径方向にたわませ、ガイディング装置の先端部を拡張する。好ましくは、先端部は、内側管状部材に対して近位方向に外側管状部材へ軸力をかけると、先端部の剛性が増すように構成される。指定した実施形態では、外側管状部材の近位端に固定され、内側管状部材の上に同軸状に配置されるノブは、好ましくは、内側管状部材に対して外側管状部材へ回転力及び軸力をかけられるように構成される。
【0012】
別の態様では、内側管状部材は、血管内処置の実施のために細長い装置を収容するように構成される内腔を更に備える。
【0013】
また、本発明は、細長い本体と、拡張性先端部と、を備え、先端部が巻き形状を有する複数の螺旋状部材を含み、螺旋状部材がねじ山を形成するガイディング装置を準備する段階と、先端部が閉塞性病変に近接するまで血管を通してガイディング装置を進める段階と、ガイディング装置を巻き方向に回転させてねじ山が病変部に穴をあける段階と、ガイディング装置を巻き戻し方向に回転させることによって病変部の一部を半径方向に移動し、先端部を拡張する段階と、を含む、血管の閉塞性血管疾患の治療方法も目的とする。好ましくは、この方法は、ガイディング装置を抵抗力に逆らって巻き方向に回転させることによって、先端部を硬くする段階も含む。
【0014】
本方法の一実施形態は、内側管状部材の上に同軸状に配置される外側管状部材を特徴とし、螺旋状部材の近位端は外側管状部材の遠位端に隣接して固定され、螺旋状部材の遠位端は内側管状部材の遠位端に隣接して固定される、細長い本体の使用を含む。この実施形態では、病変部を半径方向に移動させる段階は、好ましくは、内側管状部材に対して巻き戻し方向に外側管状部材に回転力をかける段階、又は内側管状部材に対して遠位方向に外側管状部材に軸力をかける段階を含む。更に、この実施形態は、内側管状部材に対して巻き方向に外側管状部材に回転力をかける、又は内側管状部材に対して近位方向に外側管状部材に軸力をかけることによって、先端部を硬くする段階を含んでよい。
【0015】
本発明の更に別の態様は、先端部を拡張することによって、ガイディング装置を血管の中心に置くことを目的とする。内側管状部材を含む実施形態では、中心に置かれたガイディング装置の内側管状部材の内腔を通って、血管内装置を進める更なる段階を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
更なる特徴及び利点は、添付図面に示すような本発明の好ましい実施形態に関する以下の、及びより詳細な説明によって明らかとなり、ここでは図全体を通して、類似する参照数字は、概ね同じ部品又は要素を指す。
図1】本発明による拡張性穴あけ先端部を有するガイディングカテーテルの代表的な実施形態の簡略化部分断面図である。
図2】本発明による拡張した形状の図1に示す実施形態の図である。
図3】本発明による収縮した形状の拡張性先端部の簡略化正面図である。
図4】本発明による拡張した形状の拡張性先端部の簡略化正面図である。
図5図4に示す形状より大きな可撓性を示す、図3に示す形状の拡張性先端部の図である。
図6A】本発明によるガイドワイヤの遠位端の簡略化正面図である。
図6B】本発明による図6Aのガイドワイヤの遠位先端部の形状の簡略化断面図である。
図7】本発明によるたわみを有するガイドワイヤの遠位端の簡略化正面図である。
図8】本発明による閉塞病変部に穴をあけている、本発明のガイディング装置の概略図である。
図9】本発明による閉塞病変部内に進んでいる、本発明のガイディング装置の概略図である。
図10】本発明による先端部を拡張することによって病変部の一部を半径方向に移動している、本発明のガイディング装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
最初に、本開示は、特に例示された材料、構成、手順、方法、又は構造に限定されず、当然のことながら変化し得ると理解される。したがって、本明細書に記載されているものの多くの選択肢、類似物、又は等価物を、本発明の実施形態の実践に使用できるが、好ましい材料及び方法を本明細書に記載する。
【0018】
また、本明細書に使用される用語は、単に本開示の特定の実施形態を説明するためのものであり、限定するものではないことを理解されたい。
【0019】
別段の規定がない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。
【0020】
更に、本明細書で上記又は下記のいずれかに引用されるすべての特許公報、特許、及び特許出願は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0021】
最後に、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を包含する。
【0022】
本発明の完全閉塞拡張性ガイディング装置は、完全に閉塞した血管を通過するように設計される。この装置は、血管真腔内を開いて進むために2つの手段を備える。第1の特徴は、ガイディング装置の先端部がねじ付きで、穴あけ、つまり穿孔性の特徴を有し、回転すると、閉塞部を切削し、押しのけ、移動させ、又は取り除くように構成されることである。好ましくは、これは螺旋ねじ山形状を用いて実行される。第2の特徴は、ガイディング装置の先端部が拡張性であり、閉塞部を形成するプラク沈着物を押しのけて内腔を再開口できることである。好ましくは、遠位先端部は、巻き戻しトルクが先端部にかけられると拡張し、巻きトルクがかけられると収縮するように構成される渦巻き型構成を有する。この構成の別の特徴は、遠位先端部の相対可撓性が、かけられたトルク量に応じて変化し得ることである。これらの特徴などは、以下に説明する代表的な実施形態に関して、よりはっきりと認識できる。
【0023】
ここで図1に戻ると、本発明による特徴を有するガイディング装置10の遠位部分が、概略的かつ部分的に断面で示される。ガイディング装置10は、内側の細長い管状部材14の上に同軸状に配置される外側の細長い管状部材12を備える。拡張性遠位先端部アセンブリ16は、先端部アセンブリ16の近位端20から遠位端22まで延在する複数の螺旋状壁体部材18を備える。外側管状部材12の遠位端は、近位端20に固定され、一方内側管状部材14の遠位端は先端部アセンブリ16を通って同軸状に延在し、遠位端22に固定される。外側管状部材12の近位端は、内側管状部材14上に同軸状に配置される作動ノブ24に接合される。内側管状部材14の近位端は、従来のハブアダプター26で終端し、内腔28へのアクセスを可能にする。当業者に理解されるように、内腔28は、ガイドワイヤ、拡張カテーテル(cathers)、アテレクトミカテーテル、ステント留置カテーテルなどを含む、様々な血管内装置の導入を可能にする。
【0024】
理解されるように、作動ノブ24は、内側管状部材14に対して、外側管状部材12にトルクをかけることを可能にする。更に、作動ノブ24は内側管状部材14上に摺動可能に配置されるため、先端部アセンブリ16に伝えられる軸力を、ノブ24において遠位方向又は近位方向のいずれかにかけることができる。外側管状部材12は先端部アセンブリ16の近位端20に固定され、内側管状部材14は先端部アセンブリ16の遠位端22に固定されるため、ノブ24に近位方向の力がかけられると、先端部アセンブリ16に伸張力が伝わり、遠位方向の力がかけられると、圧縮力が伝わる。更に、ノブ24に回転力をかけると、螺旋状壁体18に対して巻き方向又は巻き戻し方向のいずれかにトルクが伝わる。同様に、先端部アセンブリ16の遠位端22に内側管状部材14が取り付けられているために、外側管状部材12の回転に抵抗するように作用し、外側管状部材12にかけられた回転力の方向に応じて、巻く、つまり収縮する張力、及び巻き戻す、つまり拡張する張力が螺旋状壁体18に生じる。
【0025】
外側管状部材12及び内側管状部材14に差をつけて力をかけることにより、先端部アセンブリ16は、拡張径まで拡張でき、又は収縮して相対剛性を増すことができる。特に、巻き戻し力又は圧縮力、又はこの2つの組み合わせを伝えることによって、先端部アセンブリ16の全長を縮め、一方螺旋状壁体18の螺旋特徴部によって直径を増加させる。
【0026】
所望に応じて、弾性膜30は、壁体18上に配置され、壁体18の内部に固定され、又は別の好適な手段によって支持され、壁体18に近接する領域への拡張力の分散を促すことができる。弾性膜は、好ましくは弾性ポリマー、例えばシリコーン、ポリアミド、ナイロン、又はポリエチレンなどのポリオレフィンを含む、生体適合性材料から形成される。
【0027】
図2に示すように、先端部アセンブリ16は、ノブ24に押し出し力及び/又は巻き戻し力をかけると、拡張した形状まで拡張する。同様に、図3及び4は、それぞれ収縮した形状、及び拡張した形状の先端部アセンブリ16の正面詳細図を示す。ノブ24に、近位方向又は回転巻き方向の力、又は両方の力をかけることによって、先端部アセンブリ16を図4の拡張した形状から図3の収縮した形状に戻すことができる。加えて、以下で説明するように、螺旋状部材16が形状記憶特性を有して、このプロセスを促進してもよい。図3の収縮した形状で、ノブ24に力がかかっていないとき、先端部アセンブリ16は、図5に示すように比較的大きい可撓性を示す。しかし、伸張力又は巻き力を更にかけると、螺旋状壁体18に張力がかかるために先端部アセンブリ16の剛性が相対的に増し、それによって、たわみに対する抵抗性が高くなる。別の態様では、外側管状部材12及び内側管状部材14を同時回転して、先端部アセンブリ16に、穴あけ、つまり穿孔動作を行わせる。具体的には、先端部アセンブリ16の巻き方向への回転によって、螺旋状壁体18を、穴あけ用、つまり切削用ねじ山として作用させる。
【0028】
本発明の別の拡張性ガイディング装置の実施形態を図6A、6B、7に示す。拡張性ガイドワイヤ40の遠位部分を図6Aに示す。ガイドワイヤ40の本体は、所望の特徴に応じて、中実コアを有してよい、又はハイポチューブであってもよい従来の細長い部材42を備える。遠位先端部44は、重なった渦巻き形状で配置される複数の螺旋状部材46から形成される。図6Bは、先端部44の一部の断面図であり、互いに摺動可能に係合している隣接する螺旋状部材46を示している。切削用ねじ山48を操作して螺旋状部材46が互いに揃うように維持し、ガイドワイヤ40が螺旋状部材46に対して巻き方向に回転すると、穴あけ、つまり穿孔動作が行われる。
【0029】
螺旋状部材46は互いに対して摺動できるため、遠位先端部44に対して巻き戻し力をかけると、螺旋状部材の直径が広がり、先端部44を拡張する。理解されるように、巻き戻し力をかけることには、閉塞病変部などの抵抗性閉塞部に対して遠位先端部44を進め、続いてガイドワイヤ40の近位端で回転力を更にかけることを含んでよい。回転力が螺旋状部材46の形状に対して巻き戻し方向であるとき、先端部44の遠位端における病変部からの摩擦によって、螺旋状部材46を互いに対して摺動させ、直径を広げることによって先端部44を拡張する。螺旋状部材46の重なった配置によって、拡張したときでも外側表面が比較的均一に保たれ、病変部の通過が容易になる。回転力がガイドワイヤ40にかかっていないとき、螺旋状部材46の互いに対して摺動する性能によって、特に中実先端部と比較すると、先端部44が比較的可撓性になる。しかし、巻き力がかけられると、先端部44の遠位端が受ける抵抗力によって螺旋状部材46に張力が生じ、先端部44の剛性が増す。十分な回転力がかけられると、病変部による抵抗力に打ち勝ち、先端部44の巻き方向への回転を生じ、切削用ねじ山48によって穴あけ行為が行われる。
【0030】
いくつかの実施形態では、螺旋状部材46による巻き張力がないとき、図7に示すように方向性のあるたわんだ形状を有するように、先端部44が構成されることが望ましい場合がある。この特徴を実行する1つの好適な方法は、1つ以上の螺旋状部材46を特異的に変形する、つまり研削することである。理解されるように、このような形状は、患者の血管構造を通過して進むために改善された操作性を有するガイドワイヤ40を提供する。回転に対する抵抗力によって張力が螺旋状部材46にかかると、先端部44は実質的に真っ直ぐな形状を呈し、閉塞病変部の穴あけ及び通過を容易にする。
【0031】
本発明のこの好ましい実施形態では、螺旋状部材18及び46は、ニチノールなどのニッケル−チタン合金から形成される。当業者には既知であるように、これらの合金は、形状記憶性及び/又は超弾性特徴を示し得る。一般に、形状記憶性によって、部材を第2の形状に変形させることができるが、加熱すると元の形状に戻る。一方、超弾性特徴は一般に、金属をひずみ下において変形させると、相転移を引き起こす。ひずみが除かれると、超弾性部材は相を変え、元の形状に戻る。これらの相は、比較的低い引張り強度を有し、比較的低温で安定するマルテンサイト相、及び比較的高い引張り強度を有し、マルテンサイト相よりも高い温度で安定するオーステナイト相である。
【0032】
形状記憶特性は、金属を、マルテンサイト相からオーステナイト相への転移が完了する温度以上の温度、すなわち、オーステナイト相が安定する温度(Af温度)以上の温度に加熱することによって、合金に付与される。この加熱処理中の金属の形状は、「記憶された」形状である。加熱処理された金属は、マルテンサイト相が安定する温度まで冷却され、オーステナイト相をマルテンサイト相に転移させる。次いで、マルテンサイト相内の金属は、例えば、患者の体内へのその進入を促進するように塑性的に変形される。マルテンサイトからオーステナイトへの転移温度以上の温度までの、その後の変形されたマルテンサイト相の加熱は、変形したマルテンサイト相をオーステナイト相へ転移させ、この相転移中に、金属は、未拘束の場合、その本来の形状に戻る。拘束されている場合、金属は、拘束が除去されるまでマルテンサイトのままである。
【0033】
オーステナイトが安定する温度(すなわち、マルテンサイト相のオーステナイトへの転移が完了する温度)以上の温度で超弾性特徴を呈するニチノールなどの金属試料に応力がかけられると、この試料は、次いで、合金がオーステナイト相からマルテンサイト相への応力誘発相転移を受ける特定の応力レベルに達するまで、弾性的に変形する。相転移が進行すると、合金は、有意なひずみの増加を受けるが、応力の対応する増加はほとんど、又は全くない。ひずみが増加する一方、応力は、マルテンサイト相へのオーステナイト相の転移が完了するまで、実質的に一定のままである。その後、更なる変形を引き起こすために更なる応力の増加が必要である。マルテンサイト金属は、まず、付加的な応力の印加時に、弾性的に、次いで、永久的残留変形で塑性的に変形する。
【0034】
任意の永久的変形が生じる前に試料上の荷重が除去される場合、マルテンサイト試料は、弾性的に回復し、オーステナイト相に逆転移する。応力減少は、まず、ひずみの低下を引き起こす。応力減少が、マルテンサイト相がオーステナイト相に逆転移するレベルに到達すると、試料内の応力レベルは、オーステナイト相への逆転移が完了する、すなわち、対応するごくわずかな応力減少でひずみの有意な回復が存在するまで、本質的に一定のままである(しかし、実質的に、オーステナイトがマルテンサイトに転移する一定の応力レベル以下)。オーステナイトへの逆転移が完了した後、更なる応力減少は、弾性のひずみの減少を引き起こす。荷重の印加時に比較的一定応力で有意なひずみをもたらし、かつ荷重の除去時の変形から回復するこの能力は、一般に、超弾性又は擬似弾性と称される。これらの特性は、先端部16及び42の拡張及び収縮を引き起こす、螺旋状部材18及び46の巻き動作及び巻き戻し動作に特に好適である。
【0035】
本発明のガイディング装置の操作を図8〜10に概略的に示し、ここではガイディングカテーテル10を対象とする。当業者は、ガイドワイヤ40、並びに本発明の他の実施形態が、類似する機能性を提供できることを認識するであろう。図8は、血管52の内腔内の閉塞病変部50まで患者の血管構造を通って進んでいる、ガイディングカテーテル10の先端部アセンブリ16を示す。この点では、先端部アセンブリ16は病変部50と接している。内側管状部材14及び外側管状部材12を同時回転し、先端部アセンブリ16によって病変部50に穴をあけさせる。上述のように、内側管状部材14に対して回転力、つまり軸力を外側管状部材12にかけると、先端部アセンブリ16の剛性特性が変化し、ガイディングカテーテル10がマイクロチャネル中を進むのを、又は病変部50の石灰化被膜を貫通するのを促す。図9に示すように、ガイディングカテーテル10の穴あけ回転を続けることによって、病変部50を通るチャネル54の形成を可能にする。
【0036】
所望に応じて、図10に示すように先端部アセンブリ16を拡張させてよい。これは、上述のように、内側管状部材14に対して適当な回転力、つまり軸力を外側管状部材12にかけることによって実施することができる。先端部アセンブリ16の拡張は、病変部50に半径方向力を加え、プラクを押しのけてチャネル54の直径を広げ、ガイディングカテーテル10を更に進めることを容易にする。更に、全体巻き戻し回転力をカテーテル10にかけても、先端部アセンブリ16を拡張させる傾向がある。先端部アセンブリ16の拡張によって、ガイディングカテーテル10が血管52内の中心に置かれる傾向がある。これによって、真腔内のチャネル54の形成プロセスを促進し、ガイディングカテーテル10を安定化することもでき、内腔28内を進む血管内装置が、病変部の中心に向かって正しい向きに位置付けられ、更に血管内装置が、病変部の被膜によってたわむリスクを最小限にするようにする。
【0037】
操作中、ガイドワイヤ40の使用は通常は同じ手順に従う。具体的には、巻き方向に回転すると、病変部による抵抗力によって螺旋状部材46の張力が増加し、先端部44を硬くする。したがって、病変部に接触すると、ガイドワイヤ40に加えられるトルク量を変化させることによって、手術者は先端部44の相対可撓性を調整できる。病変部の抵抗力に打ち勝つ、ガイドワイヤ40の巻き方向への回転力は、病変部を通してガイドワイヤ40を進めるチャネルを作る、又は拡大するのに利用できる穴あけ行為をもたらす。同様に、ガイドワイヤ40の巻き戻し方向への回転力は、先端部44の遠位端の回転に抵抗する病変部の摩擦によって先端部44の拡張をもたらし、この拡張によって病変部中のプラクを半径方向に移動させる。
【0038】
理解されるように、ガイディングカテーテル10とガイドワイヤ40との間の主な違いは、ガイディングカテーテルが、外側管状部材12及び内側管状部材14に異なる力をかけることによって、拡張性及び先端部の剛性を比較的大きく制御する一方で、ガイドワイヤ40は薄型で、簡略化された製品である。
【0039】
一般に、拡張と穴あけ行為の組み合わせによって、本発明のガイディング装置は、ステント送達カテーテル又は拡張カテーテルなどの別の血管内装置の導入が可能な十分に大きいチャネルも作りながら、CTO病変部を通過できる。螺旋状部材によって先端部の剛性を増すことができるため、回転力又は軸張力がない状態の元来の可撓性をより高め、腔内の進行を容易にすることができる。同様に、高い推進力が所望されると、回転力又は軸張力をかけて先端部の剛性を増し、石灰化病変部の通過を容易にすることができる。ガイディング装置の穴あけ行為によって、閉塞部の被膜をより直接的に貫通することを可能にし、硬化した被膜が、内膜下(subinitimal)位置に進んでいる血管内装置をたわませる傾向を最小限にする。更に、先端部を拡張することによって、装置を患者の血管腔内の中心に置くのにも役立ち、これによっても内膜下への捕捉と血管穿孔が最小限度に抑えられる。
【0040】
本明細書に図示及び説明した実施形態は好ましい実施形態であると考えられるが、当業者であれば、本明細書に説明及び図示した特定の設計及び方法からの変更はそれ自体当業者にとって自明であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく使用できることは明らかであろう。本発明は、説明及び図示される特定の構造に限定されるものではないが、付属の特許請求の範囲に含まれ得るすべての改変例と一貫性を有するものとして解釈されなければならない。
【0041】
〔実施の態様〕
(1) ガイディング装置であって、
細長い本体と、拡張性先端部と、を備え、該先端部が、巻き戻し方向への回転に対する抵抗力によって該先端部を拡張するような巻き形状を有する複数の螺旋状部材を含み、該螺旋状部材が、前記ガイディング装置を巻き方向に回転すると、穴あけを行うように構成されるねじ山を形成する、ガイディング装置。
(2) 前記螺旋状部材がニッケル−チタン合金から形成される、実施態様1に記載のガイディング装置。
(3) 前記巻き方向への回転に対する抵抗力によって前記螺旋状部材に張力がかけられると、前記拡張性先端部の剛性が増すように構成される、実施態様1に記載のガイディング装置。
(4) 前記細長い本体が中実ガイドワイヤを含む、実施態様1に記載のガイディング装置。
(5) 前記螺旋状部材が重なった配置で巻かれる、実施態様4に記載のガイディング装置。
【0042】
(6) 前記遠位先端部が、前記螺旋状部材に張力がかかっていないときにたわんだ形状を示し、前記螺旋状部材に張力がかけられているときに実質的に真っ直ぐな形状を示すように構成される、実施態様4に記載のガイディング装置。
(7) 前記細長い本体が、内側管状部材の上に同軸状に配置される外側管状部材を備え、前記螺旋状部材の近位端が前記外側管状部材の遠位端に隣接して固定され、前記螺旋状部材の遠位端が前記内側管状部材の遠位端に隣接して固定される、実施態様1に記載のガイディング装置。
(8) 前記螺旋状部材によって支持される弾性膜を更に含む、実施態様7に記載のガイディング装置。
(9) 外側管状部材の内側管状部材に対する軸方向運動によって、前記螺旋状部材を半径方向にたわませ、前記ガイディング装置の前記先端部を拡張する、実施態様7に記載のガイディング装置。
(10) 前記先端部が、内側管状部材に対して近位方向に外側管状部材へ軸力をかけると、前記先端部の剛性が増すように構成される、実施態様7に記載のガイディング装置。
【0043】
(11) 前記外側管状部材の近位端に固定されるノブを更に備え、該ノブが、前記内側管状部材の上に同軸状に配置され、前記内側管状部材に対して前記外側管状部材に回転力及び軸力をかけることが可能なように構成される、実施態様7に記載のガイディング装置。
(12) 前記内側管状部材が、血管内処置を行うための細長い装置を収容するように構成される内腔を更に含む、実施態様7に記載のガイディング装置。
(13) 血管の閉塞性血管疾患の治療方法であって、
a)細長い本体と、拡張性先端部と、を備え、該先端部が巻き形状を有する複数の螺旋状部材を含み、該螺旋状部材がねじ山を形成する、ガイディング装置を準備する段階と、
b)該先端部が閉塞性病変に近接するまで該血管を通して該ガイディング装置を進める段階と、
c)該ガイディング装置を巻き方向に回転させて該ねじ山が該病変部に穴をあける段階と、
d)該ガイディング装置を巻き戻し方向に回転させることによって該病変部の一部を半径方向に移動し、該先端部を拡張する段階と、
を含む、方法。
(14) 前記ガイディング装置を抵抗力に逆らって前記巻き方向に回転させることによって、前記先端部を硬くする段階を更に含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記細長い本体が、内側管状部材の上に同軸状に配置される外側管状部材を備え、前記螺旋状部材の近位端が前記外側管状部材の遠位端に隣接して固定され、前記螺旋状部材の遠位端が前記内側管状部材の遠位端に隣接して固定され、前記病変部を半径方向に移動する段階が、前記内側管状部材に対して前記巻き戻し方向に前記外側管状部材に回転力をかける段階を含む、実施態様13に記載の方法。
【0044】
(16) 前記細長い本体が、内側管状部材の上に同軸状に配置される外側管状部材を備え、前記螺旋状部材の近位端が前記外側管状部材の遠位端に隣接して固定され、前記螺旋状部材の遠位端が前記内側管状部材の遠位端に隣接して固定され、前記病変部を半径方向に移動する段階が、前記内側管状部材に対して遠位方向に前記外側管状部材に軸力をかける段階を含む、実施態様13に記載の方法。
(17) 前記細長い本体が、内側管状部材の上に同軸状に配置される外側管状部材を備え、前記螺旋状部材の近位端が前記外側管状部材の遠位端に隣接して固定され、前記螺旋状部材の遠位端が前記内側管状部材の遠位端に隣接して固定され、前記内側管状部材に対して前記巻き方向に前記外側管状部材に回転力をかけることによって前記先端部を硬くする段階を更に含む、実施態様13に記載の方法。
(18) 前記細長い本体が、内側管状部材の上に同軸状に配置される外側管状部材を備え、前記螺旋状部材の近位端が前記外側管状部材の遠位端に隣接して固定され、前記螺旋状部材の遠位端が前記内側管状部材の遠位端に隣接して固定され、前記内側管状部材に対して近位方向に前記外側管状部材に軸力をかけることによって前記先端部を硬くする段階を更に含む、実施態様13に記載の方法。
(19) 前記先端部を拡張することによって、前記ガイディング装置を前記血管の中心に置く段階を更に含む、実施態様13に記載の方法。
(20) 前記中心に置かれたガイディング装置の前記内側管状部材の内腔を通って、血管内装置を進める段階を更に含む、実施態様19に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10