特許第6013482号(P6013482)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013482
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】口腔及び咽頭腔用保護創傷包帯装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 15/24 20060101AFI20161011BHJP
   A61L 15/32 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   A61L15/24 100
   A61L15/32 100
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-527240(P2014-527240)
(86)(22)【出願日】2012年8月21日
(65)【公表番号】特表2014-524340(P2014-524340A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】US2012051691
(87)【国際公開番号】WO2013028672
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年6月16日
(31)【優先権主張番号】13/217,852
(32)【優先日】2011年8月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591286579
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ケプリンガー・スコット・アラン
【審査官】 加藤 文彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第07074981(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0251612(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/087722(WO,A1)
【文献】 特開平08−024325(JP,A)
【文献】 米国特許第06632450(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 15/24
A61L 15/32
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)モザイク状の水溶性成形マトリックスと、
B)1,1−二置換エチレンモノマーと、を含
前記モザイク状の水溶性成形マトリックスが、ポリビニルアルコール、ゼラチン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーから構成され、
前記1,1−二置換エチレンモノマーがシアノアクリレートを含む、創傷包帯。
【請求項2】
前記シアノアクリレートが、エチルシアノアクリレート、n−ブチルシアノアクリレート、2−オクチルシアノアクリレート、メトキシエチルシアノアクリレート、エトキシエチルシアノアクリレート、ドデシルシアノアクリレート、2−エチルヘキシルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、3−メトキシブチルシアノアクリレート、2−ブトキシエチルシアノアクリレート、2−イソプロポキシエチルシアノアクリレート、1−メトキシ−2−プロピルシアノアクリレート、ヘキシルシアノアクリレート、ブチルラクトイルシアノアクリレート、ブチルグリコルシルシアノアクリレート、エチルラクトイルシアノアクリレート、及びエチルグリコロイルシアノアクリレートからなる群から選択される、請求項に記載の創傷包帯。
【請求項3】
前記モザイク状の水溶性成形マトリックスが、任意の所与の寸法において5mm未満のセルから構成される、請求項1に記載の創傷包帯。
【請求項4】
前記モザイク状の水溶性成形マトリックスが、任意の所与の寸法において3mm未満のセルから構成される、請求項に記載の創傷包帯。
【請求項5】
前記モザイク状の水溶性成形マトリックスが、重合開始剤又は速度調整剤を更に含む、請求項に記載の創傷包帯。
【請求項6】
前記重合開始剤又は速度調整剤が生体活性である、請求項に記載の創傷包帯。
【請求項7】
A)少なくとも1つのモザイク状の水溶性成形マトリックスと、
B)少なくとも1種の1,1−二置換エチレンモノマーと、を含
前記モザイク状の水溶性成形マトリックスが、ポリビニルアルコール、ゼラチン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーから構成され、
前記1,1−二置換エチレンモノマーがシアノアクリレートを含む、キット。
【請求項8】
前記シアノアクリレートが、エチルシアノアクリレート、n−ブチルシアノアクリレート、2−オクチルシアノアクリレート、メトキシエチルシアノアクリレート、エトキシエチルシアノアクリレート、ドデシルシアノアクリレート、2−エチルヘキシルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、3−メトキシブチルシアノアクリレート、2−ブトキシエチルシアノアクリレート、2−イソプロポキシエチルシアノアクリレート、1−メトキシ−2−プロピルシアノアクリレート、ヘキシルシアノアクリレート、ブチルラクトイルシアノアクリレート、ブチルグリコルシルシアノアクリレート、エチルラクトイルシアノアクリレート、及びエチルグリコロイルシアノアクリレートからなる群から選択される、請求項に記載のキット。
【請求項9】
前記モザイク状の水溶性成形マトリックスが、任意の所与の寸法において5mm未満のセルから構成される、請求項に記載のキット。
【請求項10】
前記モザイク状の水溶性成形マトリックスが、任意の所与の寸法において3mm未満のセルから構成される、請求項に記載のキット。
【請求項11】
前記モザイク状の水溶性成形マトリックスが、重合開始剤又は速度調整剤を更に含む、請求項に記載のキット。
【請求項12】
前記重合開始剤又は速度調整剤が生体活性である、請求項11に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、医療用及び外科用創傷包帯、並びにかかる包帯の製造方法及び使用方法に関する。特に、本発明は、得られた創傷包帯を予測可能な最大サイズ及び幾何学的形状の粒子として脱落させるために、創傷包帯が水溶性成形マトリックスを組み込んでいる、医療用及び外科用創傷包帯に関する。本発明の医療用及び外科用創傷包帯は、窒息の危険性もたらさない、口腔及び咽頭腔の手術後の部位を封止する処置を提供する。
【0002】
2007年の米国における扁桃摘出術、咽頭扁桃切除術、及び扁桃摘出術/咽頭扁桃切除術の組み合わせの件数は、約100万件であった。扁桃摘出術及び咽頭扁桃切除術は安全な手術であると考えられているが、それでもなお、疼痛及び術後出血はかなりの罹患率を占める。術後疼痛は、嚥下時にかなりの不快感を引き起こす。患者は、この疼痛を避けようとする飲料水及び摂食不足により、脱水症及び経口摂取の低下を経験することがある。理想的な治療は、窒息などの付加的な安全性リスクを発生させることなく、疼痛を緩和することとである。
【0003】
扁桃摘出術後の「痂皮」の臨床的に有意な誤嚥リスクは、ゼロに近いと思われる。痂皮脱落のほとんどが完全なままなのか、又はほとんどが断片となるのかは分かっていない。脱落が断片の場合、断片サイズは不明である。痂皮の排出経路がせき又は嚥下であるかは不明である。扁桃摘出術後の痂皮の自然歴に関する知識のこの不足は、保護創傷包帯の設計にとって課題となっている。疼痛を減少させ、かつ術後出血を減少させるが、治癒する過程で包帯が創傷床から脱落したときに、窒息、誤嚥、又は摂取などの合併症を引き起こす可能性のない包帯を作製することが望まれる。
【0004】
異物の摂取及び誤嚥は、主に小児科患者に見られる問題である。1979年以降、米国は、小さな部品による窒息の危険性のある、三歳未満の子供向けのあらゆるおもちゃ及び他の物品の州際通商を禁止する法規制を施行している。物体が小さな子供の窒息の危険性を引き起こし得るかどうかを判断するために用いられる、Small Parts Test Fixtureと呼ばれる試験用治具が存在する。シリンダーの直径は31.7mm、深さは25.4〜57.2mmである(シリンダーの上面は傾斜がつけられている)。試験方法は、16 CFR Part 150:Method for Identifying Toys and Other Articles Intended for Use by Children Under 3 Years of Age Which Present Choking,Aspiration,or Ingestion Hazards Because of Small Partsに記載されている。1995年に534件の事故を調査したところ、誤嚥された遺物の99%がこの試験で不合格となった(Reilly JS et al,Size/shape analysis of aerodigestive foreign bodies in children:a multi−institutional study.American Journal of Otolaryngology.1995;16:190〜193.)。しかし、このSmall Parts Test Fixtureは、子供の窒息を防止するために、ヨーロッパ、アメリカ、及び中国を含む世界の大部分で用いられている。Reillyの研究では、気道異物は、13.6mmの平均長、7.0mmの平均幅、及び5.7mmの平均高さを有していた。窒息の危険性をもたらさないために、これらの寸法よりも小さい断片が望ましいことは明らかである。
【0005】
多くの手技が、これらの手術の術後疼痛を減少させる能力について評価されてきた。ArthroCare Corporation(Austin,TX)が開発したコブレーション扁桃摘出術は、「低侵襲」、ひいてはより疼痛の少ない扁桃摘出法として開発された。このシステムは、単一装置で軟組織のアブレーション、切除、凝固を同時に行い、かつ血管の止血をもたらすために、高周波を利用する。高周波は比較的低い温度を発生させ、組織損傷量を減少させる。しかしながら、この外科手技を用いても、術後疼痛及び出血は、なおもかなりの罹患率を占める。
【0006】
術後領域の被覆もまた、術後疼痛及び出血の治療に使える可能性があるとして評価されてきた。小規模な研究における扁桃陰窩への無細胞性皮膚移植片の移植は、疼痛減少効果を発揮した。しかしながら、この治療のコストは、こうした外科手術の償還レベルに見合わない。(Sclafani AP,Jacono AA,Dolitsky.Grafting of the peritonsillar fossa with an acellular dermal graft to reduce posttonsillectomy pain.Am J Otolaryngol.2001;22:409〜414.)別の研究では、扁桃の口峡柱が縫合された。この研究は、疼痛の減少を示さず、実際には、合併症を起こす確率が高かった。(Ramjettan S,Singh B.Are sutured faucial pillars really an advantage in tonsillectomy?SAJS 1996;34:189〜191.)
【0007】
様々な生物学的製品及び合成製品が、扁桃摘出包帯になりうるとして評価されてきた。これらは、手術部位に付着する能力(付着性)、一緒に保持する能力(接着性)、及び/又臨床的に意義のある期間にわたって適所に留まる能力(耐久性)が限定されているという問題を有するのは明らかである。一例として、術後出血及び疼痛を管理するのを助けるために、フィブリンシーラントが扁桃窩に適用されてきた。上記文献に報告されているこの処置の有効性に関する結果は、混在していた。フィブリンシーラントは、治癒期間にわたって創傷を保護するための耐久性に欠いている。シーラントは、完全な治癒が達成される前に、部位から脱落する。現在のところ、フィブリンシーラント又は任意の他の製品のいずれに関しても、Food and Drug Administrationは、これら特定の手術において術後出血又は疼痛を制御するとして認証も分類もしていない。
【0008】
2007年2月8日にHissongらにより出願された米国特許出願第11/704,115号は、扁桃及びアデノイドに適用するためのポリマー膜形成医療用シーラントの使用を開示している。このシーラントは、次の機能の少なくとも1つを実行する:a)細菌のコロニー形成の阻害、b)組織への細菌の付着の阻害、c)組織罹患率の低減、d)止血、e)治癒中の組織の被覆及び保護、並びにf)疼痛の軽減。Hissongらは、好ましいポリマー膜形成医療用シーラントを開示しているが、ポリマー膜形成医療用シーラントが扁桃摘出後の窩からどのように脱落するかについて開示していない。
【0009】
Teteraultらに付与された米国特許第6,559,350号は、患者の創傷を閉じるための、湿分硬化性接着縫合ストリップを開示している。この縫合ストリップは、化学的に不活性な材料で形成される通気性裏当部材、湿分硬化性外科用接着剤、及び該裏当部材に着脱自在に固定されて外科用接着剤を覆う、取り外し可能な保護部材で構成される。裏当部材は、ポリエチレン又はテトラフルオロエチレンなどの化学的に不活性な材料で形成される。この裏当部材は、裏当部材を患者に固定するための外科用接着剤で充填された表面空洞を有すると記載されている。あるいは、外科用接着剤は、ドット又はストライプとして裏当部材に塗布されてもよい。裏当部材用として開示されている材料によると、断片化は起こりそうもない。縫合ストリップは、むしろバルーンのように脱落し、その形状一致特性(conforming nature)により、重大な窒息の危険性の原因となる可能性がある。
【0010】
Kotzevらによる2005年5月9日出願の米国特許出願第11/124,831号は、体液溶解性添加剤を含有した生体吸収性シアノアクリレート系接着剤を開示している。体内溶解性添加剤は、シアノアクリレートモノマーに不溶であるが、硬化した接着剤から容易に溶出し、組織の内部成長のための細孔及びチャネルを形成する。体内溶解性添加剤は、バルク材料が体液と接触した際にこれを制御可能な再吸収率で吸収するのを容易にするために用いられる。体内溶解性添加剤はシアノアクリレートモノマー全体に分散されるので、体液がバルク材料を侵食する際に細孔及びチャネルが形成される。これら細孔及びチャネルは、バルク材料中にランダム欠陥を作り出す。断片が形成される場合、それらの寸法は予測不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、患者が扁桃摘出術及びアデノイド切除手術から回復するのを助ける保護創傷包帯の必要性が存在する。術後処置は患者のいくつかのニーズを満たす必要がある。この処置は、安全かつ効果的でなければならない。この処置は、保護創傷包帯を用いて実現することが可能である。理想的には、創傷包帯は、障壁の役割を果たし、手術部位及びその近傍の組織を保護し、患者が嚥下するのを容易にし、疼痛をより少なくする。創傷包帯は、嚥下力で術後の組織及び粘膜組織に付着し、疼痛を低減するのに加えて、出血も減少させる。最も重要なことには、創傷包帯は、治癒中に、扁桃床から予測可能な片で脱落する。このように脱落することにより、創傷包帯は窒息の危険性を生じさせない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、創傷を処置するための改善された材料及び方法を提供することによって、当該技術分野などにおける上記ニーズなどに対処する。
【0013】
実施形態において、本発明は、ポリビニルアルコール、ゼラチン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーから構成されるモザイク状の水溶性成形マトリックスと、1,1−二置換エチレンモノマーと、を含む創傷包帯を提供する。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、(1)(a)1,1−二置換モノマーを創傷に適用し、ポリビニルアルコール、ゼラチン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーから構成されるモザイク状の水溶性成形マトリックスを、1,1−二置換エチレンモノマーの中に埋め込むこと、又は(b)ポリビニルアルコール、ゼラチン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーから構成されるモザイク状の水溶性成形マトリックスを創傷に適用し、1,1−二置換モノマーを創傷に適用して水溶性成形マトリックスの少なくとも1つのセルの少なくとも一部を充填することと、(2)1,1−二置換エチレンモノマーを重合することと、(3)創傷に適用される成形ポリマーを残して、水溶性成形マトリックスを溶解することと、を含む、創傷の処置方法を提供する。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、ポリビニルアルコール、ゼラチン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーから構成される少なくとも1つのモザイク状の水溶性成形マトリックスと、少なくとも1種の1,1−二置換エチレンモノマーと、を含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
これら及びその他の本発明の利点と特徴は、下記、特に添付の図面を検討することによって明らかになるであろう。
図1】創傷における保護創傷包帯装置の一実施形態の使用を示す図。
図2】創傷における保護創傷包帯装置の第2の実施形態の使用を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、口腔及び咽頭腔(pharangeal space)内の手術後の部位を治療するための改善された材料及び方法を提供することによって、当該技術分野における上記のニーズなどに対処する。
【0018】
実施形態では、本発明の材料及び方法は、口腔及び咽頭腔(pharangeal space)内の手術後の部位を治療するための現行の材料及び方法に勝る有意な利点を提供する。本発明の材料及び方法は、安全かつ効果的な保護創傷包帯を提供する。保護創傷包帯の使用は、術後疼痛の減少及び/又は消失、二次的な術後出血の低減、並びに患者の日常生活への早期復帰、といういくつかの利益をもたらす。最も重要なことには、本発明による水溶性成形マトリックスの使用は、扁桃摘出術後創から予測可能なサイズの断片で脱落する保護創傷包帯を作り出す。したがって、本発明の保護創傷包帯は、窒息などの付加的な安全性リスクを導入することがない。
【0019】
本発明の保護創傷包帯は、口腔及び咽頭腔(pharangeal space)内の手術後の部位を覆うのものとして使用される。保護創傷包帯は、2つの主要な要素、即ち、水溶性成形マトリックスと、1,1−二置換エチレンモノマーと、から構成される。水溶性成形マトリックスは、1,1−二置換エチレンモノマーを、予測可能な最大サイズの粒径で脱落する形状へとその場で成形して、潜在的な窒息の危険性を防止する。
【0020】
これらの用語は、本明細書において使用される場合、次の意味を有する。
1.用語「水溶性」とは、本明細書で使用するとき、水、食塩水、又は唾液などの他の体液に溶解することを意味する。
2.用語「窩」とは、本明細書で使用するとき、チャネル又は浅い窪みを意味する。窩は扁桃が除去されたときに形成される。
3.用語「重合」とは、本明細書で使用するとき、液状のモノマー材料が固体のポリマー材料に変化する過程を意味する。重合、凝固、硬化は、本明細書において交換可能に用いられる。
4.用語「生体適合性」とは、身体に有意な有害効果又は悪影響を示さない物質を意味する。
5.用語「モザイク化」又は「モザイク状」とは、繰り返しパターンの形態で平面を間隙又は重なりなしに覆うことを意味する。この形態は、直線又は曲線部分からなる多角形である。この形態は、同一形状又は同一サイズであってもなくてもよい。
【0021】
本発明の創傷包帯は、2つの主要な要素、即ち、水溶性成形マトリックスと、1,1−二置換エチレンモノマーと、から構成される。水溶性成形マトリックスは次の特徴を有する。予測可能な時間枠内に、水、食塩水、又はその他の体液に水溶性である材料で構築される。水溶性成形マトリックスは、手術部位の形状よりもかなり大きいので、適切なサイズに切断又は製造され得る。水溶性成形マトリックスパターンは、任意の数の幾何学的形状を有することができ、成形型のセル構成は、得られる重合した接着剤粒子の最大サイズ及び形状を決定する。
【0022】
水溶性成形マトリックスは、1,1−二置換エチレンモノマーを、予測可能な最大サイズの粒径で脱落する形状へとその場で成形する、セルマトリックスである。水溶性成形マトリックスは、セル構造を利用して接着剤を成形する。水溶性成形マトリックスは、以下により詳細に記載されるいくつかの付加的な特徴を有する。
【0023】
最も重要なことには、水溶性成形マトリックスは、水溶性の材料から製造される。材料は、1,1−二置換エチレンモノマーをその場で成形するために、水溶性でなければならない。この目的に適している材料としては、ゼラチン及びポリビニルアルコール(PVOH)が挙げられる。水溶性成形マトリックスは、水溶性材料の組み合わせから形成されてもよい。材料の選択は、選択した水溶性成形マトリックスの形状及び/又は保護創傷包帯の所望の適用位置の影響を受け得る。材料の選択は、過度の実験を行わなくとも当業者によって容易に決定される。
【0024】
水溶性成形マトリックスは、溶液流延法、射出成形、又はポリマーシート若しくは膜からの打ち抜きなどが挙げられるが、これらに限定されない様々なプロセスを用いて作製され得る。水溶性成形マトリックスは、プロセスの組み合わせを用いて製造されてもよい。例えば、セルパターンは射出成形により形成されてもよく、次にこのセルパターンは、二次製造プロセスを用いてポリマーシート又は膜に取り付けられてもよい。製造プロセスの選択は、材料選択及び水溶性成形マトリックスの形状に依存する。製造プロセスは、過度の実験を行わなくとも当業者によって容易に決定される。
【0025】
水溶性成形マトリックスのセル部分の形状は、モザイク状又はランダムであり得る。モザイクパターンの例としては、三角形、矩形、正方形、菱形、ハニカム状、六角形、八角形、魚のうろこ状、又は涙形などの多角形系形状が挙げられる。ランダムパターンの例としては、膜に打ち込まれた円形パターンを挙げることができる。所与の水溶性成形マトリックスにおいて、パターンは、メッシュのような正方形のパターンなどの同一形状を繰り返してもよく、又はパターンは、パッチワークのキルトのような、三角形によって取り囲まれた六角形などの複数の形状を利用してもよい。
【0026】
水溶性成形マトリックスは、開放セル構成又は膜で架橋された構成を有し得る。開放セル構成では、水溶性成形マトリックスのセル部分は、1,1−二置換エチレンモノマーが創傷に垂直に上方に流れて、水溶性成形マトリックスのセルを充填するのを制限しない。1,1−二置換エチレンモノマーが最初に創傷に適用され、開放セル構成を有する水溶性成形マトリックスは、1,1−二置換エチレンモノマーの上に配置され得る。1,1−二置換エチレンモノマーは、重合して創傷包帯を形成する前に、創傷適用部から上方に、水溶性成形マトリックスのセルの中へと流れ込む。1,1−二置換エチレンモノマーは、ポリマーに埋め込まれた水溶性成形マトリックスと重合する。あるいは、開放セル構成を有する水溶性成形マトリックスが最初に創傷の上に配置され、1,1−二置換エチレンモノマーは、水溶性成形マトリックスのセルを通して創傷に適用されてもよい。1,1−二置換エチレンモノマーの量が水溶性成形マトリックスの容積を超える場合、1,1−二置換エチレンモノマーはマトリックスからあふれ出て、マトリックスを内部に封入することになる。マトリックスが内部に封入されると、このマトリックスは水又は食塩水に暴露されず、溶解しないことになる。保護創傷包帯装置として機能するためには、水溶性成形マトリックスの少なくとも一部は、重合性包帯中の水又は食塩水に暴露される必要がある。
【0027】
好ましくは、水溶性成形マトリックスは膜で架橋された構成を有する。膜で架橋された構成では、水溶性成形マトリックスのセル部分は、薄膜で裏打ちされる。このタイプの水溶性成形マトリックスを使用する場合、1,1−二置換エチレンモノマーが最初に創傷に適用され、膜で架橋された構成の水溶性成形マトリックスは、重合前の接着剤の上に適用される。水溶性成形マトリックスは、セル部分が1,1−二置換エチレンモノマーに面した状態で創傷に適用される。1,1−二置換エチレンモノマーは、創傷に垂直に上方に流れて、1,1−二置換エチレンモノマーの重合に先立って水溶性成形マトリックスのセルを充填することになる。水溶性成形マトリックスの容積を超える量の1,1−二置換エチレンモノマーが創傷に適用されると、接着剤は、創傷の中の水溶性成形マトリックスの下に、重合接着剤の連続又は半連続層を形成する。この層は約10mmを超えないのが好ましい。
【0028】
水溶性成形マトリックスの性能特性は、パターンを選択することによって調整され得る。例えば、一辺が3mmで深さ3mmの正三角形をベースにした水溶性成形マトリックスは、重合組成物中に、一辺が3mmで深さ3mmの正方形をベースにした水溶性成形マトリックスと異なる成形パターンをもたらす。性能特性はまた、水溶性成形マトリックス特性のサイズを変更することによって調整され得る。例えば、水溶性成形マトリックスは、幅2mm×長さ4mm×深さ3mmの矩形をベースにしたセルパターンで構成されてもよい。幅2mm×長さ4mm×深さ5mmである矩形を有するより深いセルパターンを有する第2の水溶性成形マトリックスは、異なる性能特性を提供する。任意の所与の寸法において、約10mm未満である断片を形成するのが好ましい。任意の所与の寸法において、約5mm未満である断片を形成するのがより好ましい。
【0029】
水溶性成形マトリックスは、好ましくは約24時間未満の間定位置に留まる。より好ましくは、水溶性成形マトリックスは、約12時間未満の間定位置に留まる。より好ましくは、水溶性成形マトリックスは、約8時間未満の間定位置に留まる。水溶性成形マトリックスが定位置に留まる時間は、水溶性成形マトリックスの材料選択、形状、及び創傷包帯の配置などのいくつかの要因に左右される。当業者は、過度の実験を行わなくとも望ましい性能特性を達成することができる。
【0030】
1,1−二置換エチレンモノマーは次の特徴を有する。嚥下に耐える耐久性がある。外科手術後の易感染性組織に付着する。粘膜組織に付着する。好ましい1,1−二置換エチレンモノマーは、シアノアクリレートである。1,1−二置換エチレンモノマーは、約1〜約20個以上の炭素原子、又はより好ましくは約3〜約8個の炭素原子のアルキル鎖長を有するアルキルα−シアノアクリレートなどであるが、これに限定されない、α−シアノアクリレートなどの1種以上の1,1−二置換エチレンモノマーを含み得る。かかるモノマーは、生物分解することができるが、必ずしもその必要はないポリマーを形成するものを含む。かかるモノマーは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,328,687号、同第5,928,611号、及び同第6,183,593号、1999年10月29日に出願された米国特許出願第09/430,177号、並びに米国特許第6,183,593号に開示されている。本発明のα−シアノアクリレートは、当該技術分野で既知のいくつかの方法によって調製可能である。それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第2,721,858号、同第3,254,111号、同第3,995,641号、及び同第4,364,876号は、α−シアノアクリレートの調製方法を開示している。
【0031】
本発明で使用される好ましいα−シアノアクリレートモノマーとしては、エチルシアノアクリレート、n−ブチルシアノアクリレート、2−オクチルシアノアクリレート、メトキシエチルシアノアクリレート、エトキシエチルシアノアクリレート、ドデシルシアノアクリレート、2−エチルヘキシルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、3−メトキシブチルシアノアクリレート、2−ブトキシエチルシアノアクリレート、2−イソプロポキシエチルシアノアクリレート、1−メトキシ−2−プロピルシアノアクリレート、ヘキシルシアノアクリレート、又はドデシルシアノアクリレートが挙げられる。
【0032】
本発明で使用するのに適したその他のシアノアクリレートとしては、アルキルエステルシアノアクリレートモノマーが挙げられるが、これに限定されない。そのようなアルキルエステルシアノアクリレート及び他の好適なモノマーは、例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、2001年8月2日に出願された米国特許出願第09/919,877号、及び米国特許第6,620,846号に開示されている。好ましいアルキルエステルシアノアクリレートの例としては、ブチルラクトイルシアノアクリレート、ブチルグリコロイルシアノアクリレート、エチルラクトイルシアノアクリレート、及びエチルグリコロイルシアノアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
1,1−二置換エチレンモノマーはまた、所望により、モノマーから形成されるポリマーに可撓性を付与するのを助ける少なくとも1種の可塑剤も含むことができる。可塑剤は、好ましくは水分を少量含むか又は全く含まず、モノマーの安定性又は重合に大きく影響を与えてはならない。好適な可塑剤の例としては、クエン酸トリブチル、アセチルトリ−n−ブチルシトレート(ATBC)、セバシン酸ジブチル、ポリジメチルシロキサン、ヘキサジメチルシラザン、及び、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,183,593号に記載されているものなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
実施形態では、1,1−二置換エチレンモノマーはまた、1種以上の重合開始剤又は速度調整剤を含んでもよい。重合開始剤又は速度調整剤は、1,1−二置換エチレンモノマーに直接組み込まれてもよい。そのような実施形態では、重合開始剤又は速度調整剤は、好ましくは、1,1−二置換エチレンモノマーを創傷に適用する直前に、又は適用と同時に、1,1−二置換エチレンモノマーと混合される。例えば、重合開始剤又は速度調整剤と重合性接着剤組成物とはアプリケータ自体の中で又は別の容器の中で、好適な混合装置によって適用前に混合されることができ、あるいは、1,1−二置換エチレンモノマーがアプリケータから絞り出されるときに混合することによって、適用と同時に混合されることができる。
【0035】
好適な重合及び/又は架橋開始剤及び速度調整剤、並びにこれらを基材に適用する方法は、例えば、米国特許第5,928,611号、同第6,352,704号、同第6,455,064号、同第6,579,469号、及び同第6,595,940、並びに、1999年10月29日出願の米国特許出願第09/430,177号、1999年10月29日出願の米国特許出願第09/430,289号及び同第09/430,180号、1999年8月30日出願の米国特許出願第09/385,030号、及び1998年10月22日出願の米国特許出願第09/176,889号に記載されており、これら文献の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。一部の医療用用途で好ましい開始剤としては、塩化ベンザルコニウムが挙げられる。
【0036】
特定のモノマー用の特定の開始剤及び速度調整剤は、過度の実験を行わなくとも当業者によって容易に選択されることができる。適用した接着剤の分子量分布の制御は、選択したモノマーに対する開始剤又は速度調整剤の濃度及び官能性を選択することによって強化することができる。シアノアクリレート組成物に適した重合開始剤及び速度調整剤としては、洗剤組成物;界面活性剤、例えば、ポリソルベート20製品(例えば、Tween 20(商標)製品、ICI Americas)、ポリソルベート80製品(例えば、Tween 80(商標)製品、ICI Americas)、及びポロキサマーなどの非イオン性界面活性剤;臭化テトラブチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤;アニオン性界面活性剤、例えば、塩化ベンザルコニウム若しくはその純成分、及び塩化ベンゼトニウムなどのハロゲン化4級アンモニウム;オクチル酸第1スズ(スズ(II)2−エチルヘキサノエート)及びテトラデシル硫酸ナトリウム;並びに水酸化ドデシルジメチル(3−スルホプロピル)アンモニウム、分子内塩などの両性若しくは両イオン性界面活性剤;イミダゾール、トリプタミン、尿素、アルギニン、及びポビディンなどのアミン、イミン、及びアミド;トリフェニルフォスフィン及びトリエチルフォスファアイトなどのフォスフィン、亜リン酸塩、及びフォスフォニウム塩;エチレングリコールなどのアルコール;没食子酸メチル;アスコルビン酸;タンニン及びタンニン酸;亜硫酸水素ナトリウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、及びケイ酸ナトリウムなどの無機塩基及び塩;チオウレア及びポリスルフィドなどのイオウ化合物;モネンシン、ノナクチン、クラウンエーテル、カリキサレン、及びポリマーエポキシドなどのポリマー環式エーテル;ジエチルカーボネートなどの環式及び非環式カーボネート;Aliquat(商標)336(General Mills,Inc.,Minneapolis,Minn.)などの相転移触媒;有機金属;アセチルアセトンマンガン;ジ−t−ブチルパーオキサイド及びアゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル開始剤及びラジカル;並びに生体活性化合物及び作用物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
好ましい実施形態では、開始剤は、例えば、塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウム(塩化ベンザルコニウム:BAC)、その純成分、又はそれらの混合物、特に、6〜18個の炭素原子を含有するアルキルを有するものなどのハロゲン化4級アンモニウム;塩化ベンゼトニウム;及びスルファジアジン塩、などの生体活性物質であってもよい。過酸化物の促進剤としてナフテン酸コバルトを使用することができる。
【0038】
好ましい実施形態では、開始剤は、抗ウイルス特性、抗菌特性、抗真菌特性、及び/又は創傷治癒特性を保有する生体活性物質であることができる。重合開始特性並びに抗ウイルス特性、抗菌特性、及び/又は抗真菌特性を保有する材料の例は、ゲンチアナバイオレット(Gentian Violet)であり、クリスタルバイオレット又は塩化メチルロサニリンとしても知られている。重合開始特性及び創傷治癒特性を保有する材料の例としては、各種亜鉛錯体及び亜鉛塩、ビタミンE及び他のビタミンなどの抗酸化剤、並びに塩化銅、硫酸銅、及び銅ペプチドなどの銅化合物も挙げられる。該材料は、シアノアクリレートモノマー用の重合開始剤又は速度調整剤として働くだけでなく、創傷部位に抗ウイルス作用、抗菌作用、及び/又は抗真菌作用などの追加利益も提供することができ、あるいは、創傷治癒促進を助けることもできるので、特に好ましい。
【0039】
重合性及び/又は架橋性材料もまた、触媒又は促進剤によって活性化されるまで不活性である開始剤(これらは、本明細書において用いられる「開始剤」という用語の範囲に含まれる)及び/又は速度調整剤を含有していてもよい。熱及び/又は光(例えば、紫外線又は可視光線)などの刺激によって活性化される開始剤もまた、可撓性基材がかかる刺激を適切に受ける場合には好適である。重合及び/若しくは架橋開始剤並びに/又は速度調整剤に加えて、可撓性基材は、重合開始剤及び/又は速度調整剤として働くか、又は働かない種々の他の物質もまた有していてもよい。例えば、可撓性基材は、これもまた重合及び/若しくは架橋開始剤並びに/又は速度調整剤であるか、又はそうではなくてもよい生体活性物質を含んでもよい。好適な生体活性物質の例としては、例えば抗生物質、抗菌剤、防腐剤、バクテリオシン、静菌剤、殺菌剤、ステロイド、麻酔薬、抗真菌剤、抗炎症薬、抗バクテリア剤、抗ウイルス剤、抗がん剤、成長促進物質、抗酸化剤、又はこれらの混合物のような薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、実施形態では、開始剤及び/又は速度調整剤は、生体活性であり得るが、そうである必要はない。開始剤及び/又は速度調整剤が生体活性である実施形態では、本発明の方法を用いて組織及び創傷を閉じ、被覆し、又は保護することができ、それと同時に、生体活性物質を組織又は創部に与えることができる。
【0040】
重合開始剤又は速度調整剤は、1,1−二置換エチレンモノマーと混合される代わりに、製造プロセス中に水溶性成形マトリックスに直接組み込まれてもよい。開始剤又は速度調整剤は、水溶性成形マトリックスに化学的に結合させる、物理的に結合させる、吸収させる、又は吸着させることができる。場合によっては、重合開始剤又は速度調整剤が全く必要ない場合がある。
【0041】
1,1−二置換エチレンモノマーはまた、任意に、増粘剤を含んでいてもよい。好適な増粘剤としては、ポリメタクリル酸メチル(polymethylpethacrylate)、ポリ(2−エチルヘキシメタクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、及び米国特許第6,183,593号に列挙されているもののようなものを挙げることができ、該特許は参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれる。
【0042】
1,1−二置換エチレンモノマーはまた、任意に、1種以上の安定化剤、好ましくは、少なくとも1種のアニオン性蒸気相安定化剤及び少なくとも1種のアニオン性液相安定化剤の両方を含むことができる。これらの安定化剤は、早期重合を阻止することができる。好適な安定化剤としては、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,183,593号に列挙されているものを挙げることができる。更に、特定の安定化剤はまた、抗菌剤、例えば上で特定したような種々の酸性抗菌剤として機能することができる。
【0043】
本発明において有用な1,1−二置換エチレンモノマーはまた、組成物の保存寿命を延ばすために、1種以上の保存剤を更に含有していてもよい。好適な保存剤、及びそれらの選択方法、並びにそれらを接着剤組成物に組み込む方法は、参照によりその開示全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願第09/430,180号に開示されている。かかる保存剤は、組成物に添加される場合があるか又は添加されない場合のある任意の抗菌剤に加えて添加するのがよい。組成物及び容器を滅菌するかどうかとは無関係に、かかる保存剤を含むことができる。
【0044】
本発明は、特に、扁桃摘出術後に形成された扁桃窩を処置するために用いられることができる。本発明はまた、食道又は腸などの消化管を処置するために用いられてもよい。本発明はまた、膀胱を処置するために用いられてもよい。
【0045】
処置方法を以下に説明する。創傷包帯は、約4〜10日、より好ましくは4〜8日、最も好ましくは4〜7日の間適所に留まるのが好ましい。
1.必要な場合には、水溶性成形マトリックスを、扁桃窩に嵌合して損傷組織をすべて被覆することができるようなサイズにカットする。膜で架橋された構成を有する水溶性成形型を使用するのが好ましい。
2.1,1−二置換エチレンモノマーを扁桃窩に適用する。
3.水溶性成形マトリックスを1,1−二置換エチレンモノマーの上に設置し、モノマー接着剤の中に押し込む。セル側が接着剤に埋まり、膜側が1,1−二置換エチレンモノマーの表面を被覆するように水溶性成形マトリックスを配向する。
4.水溶性成形マトリックスのセル側を重合接着剤に埋め込んだ状態で、1,1−二置換エチレンモノマーを重合時間の間放置する。
5.水溶性成形マトリックスはその位置で徐々に溶解し、重合創傷包帯を所望の形状に成形する。
6.自然治癒過程の間に重合創傷包帯が創傷床から脱落するとき、片は、水溶性成形マトリックスによって形成された所定の経路に沿って砕ける。
【0046】
本発明は、キットとして販売されてもよい。キットは、少なくとも1つの水溶性成形マトリックスと、少なくとも1種の1,1−二置換エチレンモノマーと、から構成されてもよい。水溶性成形マトリックスは、同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
図1は、本発明の保護創傷包帯の一実施形態を示す。保護創傷包帯を適用するため、最初に創傷を洗浄して、あらゆる余剰滲出液、血液を除去し、壊死組織をカットする。創傷をできるだけ乾燥させる。水溶性成形マトリックス110が創傷のサイズに合わない場合には、使用の前にカットする。1,1−二置換エチレンモノマー120を創傷130に適用する。水溶性成形マトリックス110を、重合前の1,1−二置換エチレンモノマー120の中に押し込む。あるいは、水溶性成形マトリックス110を創傷内に留置し、1,1−二置換エチレンモノマー120を水溶性成形マトリックス110の上に適用してもよい。重合の後、水溶性成形マトリックス110は水又は食塩水に暴露されると溶解し、予測可能な最大サイズの粒径で創傷から脱落して、潜在的な窒息の危険性を防止する保護創傷包帯が形成される。
【0048】
図2は、本発明の保護創傷包帯の第2の実施形態を示す。保護創傷包帯を適用するため、最初に創傷を洗浄して、あらゆる余剰滲出液、血液を除去し、壊死組織をカットする。創傷をできるだけ乾燥させる。水溶性成形マトリックス210が創傷のサイズに合わない場合には、使用の前にカットする。組成物220を創傷230に適用する。水溶性成形マトリックス210を、重合前の1,1−二置換エチレンモノマー220の中に押し込む。重合の後、水溶性成形マトリックス110は水又は食塩水に暴露されると溶解し、予測可能な最大サイズの粒径で創傷から脱落して、潜在的な窒息の危険性を防止する保護創傷包帯が形成される。
【0049】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例示するために提供されており、本発明の範囲を限定するもの見なされるべきではない。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
開放セル構成を有する水溶性成形マトリックスの調製
28.35gの無香料Knox(登録商標)ゼラチン(Kraft Foods,Inc.)を、冷たい精製水236.6mLが入ったビーカーに加えた。この混合物に緑の食用着色料を約10滴加え、得られる水溶性成形マトリックスに薄い色を付けた。ビーカーを攪拌板の上に置き、約60℃まで加熱し、すべてのゼラチンが溶解するまで内容物を中程度の撹拌速度で約30分間にわたり攪拌した。この溶液が高温のうちに、10mm×10mmのセルで約10mmのセル深さを有する寸法100mm×100mmの可撓性のシリコーン成形型にこの溶液を注ぎ込んだ。溶液がセルのみを充填して成形型の表面全体を覆わないように、溶液を可撓性成形型に注ぎ込んだ。この溶液を収容しているシリコーン成形型を24時間にわたって冷蔵庫に入れた。24時間後に、ゼラチンから製造された得られた水溶性成形マトリックスを、使用する目的でシリコーン成形型(silicon mold)から注意深く取り出した。
【0051】
(実施例2)
膜で架橋された構成を有する水溶性成形マトリックスの調製
6gのポリビニルアルコール粉末(分子量約20,000ダルトン、MP Biomedicals,LLC)を、イソプロピルアルコール及び精製水の50/50体積比の混合物が60mL入っているビーカーに加えた。この混合物に赤の食用着色料を約5〜6滴加え、得られる水溶性成形マトリックスに薄い色を付けた。ビーカーを攪拌板の上に置き、約80℃まで加熱し、すべての粉末が溶解するまで内容物を中程度の撹拌速度で約30分間にわたり攪拌した。この溶液が高温のうちに、5mm×5mmのセルで約3mmのセル深さを有する寸法150mm×150mmの可撓性のシリコーン成形型にこの溶液を注ぎ込んだ。溶液がセル並びに全セル領域にわたる薄膜層を充填するように、溶液を可撓性成形型に注ぎ込んだ。この溶液を収容しているシリコーン成形型を、膜が固化するまで、約37℃に設定された恒温庫の中に6〜8時間にわたって入れた。6〜8時間後に、ポリビニルアルコールから製造された得られた水溶性成形マトリックスを、使用する目的でシリコーン成形型(silicon mold)から注意深く取り出した。
【0052】
(実施例3)
実施例1の水溶性成形マトリックスを使用した創傷包帯の耐久性評価
本発明に従って作製されたサンプルを評価するためのベンチ法を開発した。体温に近づけるために試験用治具を約37℃に維持した。唾液又はその他の体液を模倣するための食塩水でサンプルを濡れた状態に維持した。サンプルは、嚥下を模倣するためにローラーにより生成された摺擦力を受けた。成人の平均嚥下回数は1日当たり1000回である(Gleeson,DC.Oropharyngeal swallowing and aging:A review.J.Commun.Disord.1999:32;373〜396)。その結果、試験装置(往復運動1回)の500サイクルが約1日を表す。この摺擦力は嚥下よりもずっと強力であったので、これらの試験結果は「最悪のシナリオ」と考えられた。
【0053】
試験サンプルを支持するためElcometer 1720摩耗試験機の台の上に発泡体製パッド(McMaster−Carr)を載置した。コラーゲン片(250mm×150mm×〜0.13mm(5ミル)、Vista International Packaging,LLC)を食塩水で濡らし、試験装置の発泡体製パッドの上に装着した。実施例1の水溶性成形マトリックスの事前に切断しておいた片を、試験装置に装着されているコラーゲンマトリックスの中央に設置した。シアノアクリレート接着剤配合物(2−オクチルシアノアクリレート、安定化剤、染料、及び開始剤)を、接着剤の薄膜がセル領域内部のコラーゲン基材を完全に被覆するように、水溶性成形マトリックスのセルの各セルに適用した。配合物が重合するまで水溶性成形マトリックスは適所に保たれた。
【0054】
試験用治具のローラー部を可動台に取り付け、200gの荷重を加えた。カバーフレームを定位置に配置した。貯蔵瓶に0.9%食塩溶液(Baxter Healthcare,Inc.)を充填し、1サイクル毎に1回又は2回滴下するように設定した。加熱ランプを使用して、約37℃の試験サンプル温度を維持した。サイクル速度の速度設定は4(約29サイクル/分)であった。サイクルカウントは10,000に設定した。
【0055】
ビデオカメラを使用して、耐久性評価中の試験サンプルを記録した。結果詳細を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
(実施例4)
実施例2の水溶性成形マトリックスを使用した創傷包帯の耐久性評価
実施例3に記載されている試験を、実施例2の水溶性成形マトリックスを用いて、いくつかの修正を加えて行った。
【0058】
実施例2の水溶性成形マトリックスを直径約30mmの円形に切断した。シアノアクリレート接着剤配合物(2−オクチルシアノアクリレート、安定化剤、染料、及び開始剤)を、厚さ約3〜5mm、直径約30mmの円形の層でラテックスシート(250mm×150mm×〜0.13mm(5ミル)、McMaster−Carr)に適用した。配合物が液体である間に、水溶性成形マトリックスを、セル部分が接着剤に面し、膜が上方に面するように配合物に押し込んだ。配合物が重合するまで水溶性成形マトリックスは適所に保たれた。
【0059】
試験サンプルをラテックスシートの上に支持するためElcometer 1720摩耗試験機の台の上に発泡体製パッド(McMaster−Carr)を載置した。試験用治具のローラーを可動台に取り付け、200gの荷重を加えた。試験サンプルを収容しているラテックスシートを治具の台に載置し、カバーフレームを定位置に配置した。貯蔵瓶に0.9%食塩溶液(Baxter Healthcare,Inc.)を充填し、1サイクル毎に1回又は2回滴下するように設定した。加熱ランプを使用して、約37℃の試験サンプル温度を維持した。サイクル速度の速度設定は4(約29サイクル/分)であった。サイクルカウントは10,000に設定した。
【0060】
ビデオカメラを使用して、耐久性評価中の試験サンプルを記録した。結果詳細を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
本発明を好ましい実施形態を参照して説明してきたが、本発明はこれら具体例に限定されるものではなく、当業者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなくその他の実施形態及び修正を行うことができる。
【0063】
〔実施の態様〕
(1) A)ポリビニルアルコール、ゼラチン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーから構成されるモザイク状の水溶性成形マトリックスと、
B)1,1−二置換エチレンモノマーと、を含む、創傷包帯。
(2) 前記1,1−二置換エチレンモノマーがシアノアクリレートを含む、実施態様1に記載の創傷包帯。
(3) 前記シアノアクリレートが、エチルシアノアクリレート、n−ブチルシアノアクリレート、2−オクチルシアノアクリレート、メトキシエチルシアノアクリレート、エトキシエチルシアノアクリレート、ドデシルシアノアクリレート、2−エチルヘキシルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、3−メトキシブチルシアノアクリレート、2−ブトキシエチルシアノアクリレート、2−イソプロポキシエチルシアノアクリレート、1−メトキシ−2−プロピルシアノアクリレート、ヘキシルシアノアクリレート、ブチルラクトイルシアノアクリレート、ブチルグリコルシルシアノアクリレート(butyl glycolcyl cyanoacrylate)、エチルラクトイルシアノアクリレート、及びエチルグリコロイルシアノアクリレートからなる群から選択される、実施態様2に記載の創傷包帯。
(4) 前記モザイク状の水溶性成形マトリックスが、任意の所与の寸法において約5mm未満のセルから構成される、実施態様1に記載の創傷包帯。
(5) 前記モザイク状の水溶性成形マトリックスが、任意の所与の寸法において約3mm未満のセルから構成される、実施態様1に記載の創傷包帯。
【0064】
(6) 創傷の処置方法であって、
(1)(a)1,1−二置換モノマーを創傷に適用し、ポリビニルアルコール、ゼラチン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーから構成されるモザイク状の水溶性成形マトリックスを、前記1,1−二置換エチレンモノマーの中に埋め込むこと、又は
(b)ポリビニルアルコール、ゼラチン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーから構成されるモザイク状の水溶性成形マトリックスを創傷に適用し、1,1−二置換モノマーを前記創傷に適用して前記水溶性成形マトリックスの少なくとも1つのセルの少なくとも一部を充填することと、
(2)前記1,1−二置換エチレンモノマーを重合することと、
(3)前記創傷に適用される成形ポリマーを残して、前記水溶性成形マトリックスを溶解することと、を含む、方法。
(7) 前記1,1−二置換エチレンモノマーがシアノアクリレートを含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記シアノアクリレートが、エチルシアノアクリレート、n−ブチルシアノアクリレート、2−オクチルシアノアクリレート、メトキシエチルシアノアクリレート、エトキシエチルシアノアクリレート、ドデシルシアノアクリレート、2−エチルヘキシルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、3−メトキシブチルシアノアクリレート、2−ブトキシエチルシアノアクリレート、2−イソプロポキシエチルシアノアクリレート、1−メトキシ−2−プロピルシアノアクリレート、ヘキシルシアノアクリレート、ブチルラクトイルシアノアクリレート、ブチルグリコルシルシアノアクリレート、エチルラクトイルシアノアクリレート、及びエチルグリコロイルシアノアクリレートからなる群から選択される、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記モザイク状の水溶性成形マトリックスが、任意の所与の寸法において約5mm未満のセルから構成される、実施態様6に記載の方法。
(10) 前記モザイク状の水溶性成形マトリックスが、任意の所与の寸法において約3mm未満のセルから構成される、実施態様6に記載の創傷包帯。
【0065】
(11) A)ポリビニルアルコール、ゼラチン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーから構成される少なくとも1つのモザイク状の水溶性成形マトリックスと、
B)少なくとも1種の1,1−二置換エチレンモノマーと、を含む、キット。
(12) 前記1,1−二置換エチレンモノマーがシアノアクリレートを含む、実施態様11に記載のキット。
(13) 前記シアノアクリレートが、エチルシアノアクリレート、n−ブチルシアノアクリレート、2−オクチルシアノアクリレート、メトキシエチルシアノアクリレート、エトキシエチルシアノアクリレート、ドデシルシアノアクリレート、2−エチルヘキシルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、3−メトキシブチルシアノアクリレート、2−ブトキシエチルシアノアクリレート、2−イソプロポキシエチルシアノアクリレート、1−メトキシ−2−プロピルシアノアクリレート、ヘキシルシアノアクリレート、ブチルラクトイルシアノアクリレート、ブチルグリコルシルシアノアクリレート、エチルラクトイルシアノアクリレート、及びエチルグリコロイルシアノアクリレートからなる群から選択される、実施態様12に記載のキット。
(14) 前記モザイク状の水溶性成形マトリックスが、任意の所与の寸法において約5mm未満のセルから構成される、実施態様11に記載のキット。
(15) 前記モザイク状の水溶性成形マトリックスが、任意の所与の寸法において約3mm未満のセルから構成される、実施態様11に記載のキット。
図1
図2