特許第6013487号(P6013487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013487
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】PCSK9に対する抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/40 20060101AFI20161011BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20161011BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20161011BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20161011BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20161011BHJP
【FI】
   C07K16/40ZNA
   C12N15/00 A
   A61K39/395 P
   A61P3/06
   !C12P21/08
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-530744(P2014-530744)
(86)(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公表番号】特表2014-530188(P2014-530188A)
(43)【公表日】2014年11月17日
(86)【国際出願番号】US2012054737
(87)【国際公開番号】WO2013039958
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2015年4月9日
(31)【優先権主張番号】61/535,625
(32)【優先日】2011年9月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・デイビーズ
(72)【発明者】
【氏名】バレット・アラン
(72)【発明者】
【氏名】ライアン・ジェイムズ・ダーリング
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−501952(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/053759(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/077854(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/029513(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/111007(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/40
A61K 39/395
A61P 3/06
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)を含む、抗体、またはその抗原結合断片であって、前記HCVRは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、前記LCVRは、CDRのLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、前記HCDR1のアミノ酸配列は配列番号1により与えられ、前記HCDR2のアミノ酸配列は配列番号2により与えられ、前記HCDR3のアミノ酸配列は配列番号3により与えられ、前記LCDR1のアミノ酸配列は配列番号4により与えられ、前記LCDR2のアミノ酸配列は配列番号5により与えられ、前記LCDR3のアミノ酸配列は配列番号6により与えられ、前記抗体、またはその抗原結合断片はヒトPCSK9に結合する、抗体またはその抗原結合断片。
【請求項2】
重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)を含み、前記HCVRのアミノ酸配列は配列番号7により与えられ、前記LCVRのアミノ酸配列は配列番号8により与えられる、請求項1に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項3】
2つのHCVRおよび2つのLCVRを含み、各々のHCVRのアミノ酸配列は配列番号7により与えられ、各々のLCVRのアミノ酸配列は配列番号8により与えられる、請求項2に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項4】
重鎖(HC)および軽鎖(LC)を含み、前記HCのアミノ酸配列は配列番号9により与えられ、前記LCのアミノ酸配列は配列番号10により与えられる、請求項1に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項5】
2つの重鎖(HC)および2つの軽鎖(LC)を含み、各々のHCのアミノ酸配列は配列番号9により与えられ、各々のLCのアミノ酸配列は配列番号10により与えられる、請求項4に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項6】
2つの重鎖(HC)および2つの軽鎖(LC)を含み、各々のHCのアミノ酸配列は配列番号9により与えられ、各々のLCのアミノ酸配列は配列番号10により与えられる、抗体。
【請求項7】
2つの重鎖および2つの軽鎖からなる抗体であって、各々の重鎖のアミノ酸配列は配列番号9により与えられ、各々の軽鎖のアミノ酸配列は配列番号10により与えられる、抗体。
【請求項8】
請求項1に記載の抗体または抗原結合断片と、1種以上の薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項9】
脂質異常症または高コレステロール血症を治療するための医薬の製造のための、請求項1に記載の抗体または抗原結合断片の使用
【請求項10】
脂質異常症または高コレステロール血症を治療するための医薬の製造のための、請求項6に記載の抗体の使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬の分野に関する。特に、本発明は、前駆タンパク質転換酵素スブチリシン/ケキシンタイプ9(PCSK9)に対する抗体、そのようなPCSK9抗体を含む組成物、および脂質異常症または高コレステロール血症を治療するためにPCSK9抗体を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前駆タンパク質転換酵素スブチリシン/ケキシンタイプ9(PCSK9)は、主に肝臓で生成される分泌セリンプロテアーゼであり、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL−C)の血漿濃度を調節する。分泌されたPCSK9は、肝細胞の表面に位置するLDL受容体(LDLR)に結合し、内在化する。LDLRは、分解のためにリソソームにLDL粒子を結合し、輸送することにより血漿からLDL−Cを除去する機能をする。LDL粒子が分解のために送達されると、LDLRは、さらなるLDL−Cに結合し、血漿からLDL−Cを除去するために肝細胞表面で再利用される。PCSK9は、細胞表面で再利用するよりむしろ、分解のために内在化されたLDLRを誘導することにより血漿LDL−Cを調節し、それによりLDL−Cクリアランスを減少させる。PCSK9が欠損または過剰発現される齧歯動物における研究により、現在、PCSK9がLDLRのレベルを調節することにより循環LDLレベルを制御することが確認されている。循環PCSK9が肝臓LDLRの分解に関与するという観測により、PCSK9の抗体中和がLDL−Cを低下させるための実行可能な治療アプローチであることが示唆される。さらに、LDL−Cを低下させるための現在の標準的な治療であるスタチン薬剤が、PCSK9の発現および血清レベルを実際に増加させ得ることが報告されている。したがって、PCSK9抗体はまた、スタチン治療と相乗作用的にLDL−Cを減少させる可能性を有する。
【0003】
PCSK9抗体および血漿LDL−Cを低下させるそれらの作用は当該技術分野において知られている。例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4は、このようなPCSK9抗体およびそれらの使用を開示している。しかしながら、今まで、PCSK9を標的としている抗体は治療用途のために承認されていなかった。したがって、代替のPCSK9抗体についての必要性が存在している。特に、高い有効性を有してLDL−Cを減少させる代替のPCSK9抗体についての必要性が存在している。さらにより特に、高い有効性を有してLDL−Cを減少させ、作用持続時間の維持(例えばLDL−Cレベルの抑制の維持)を提供する代替のPCSK9抗体についての必要性が存在している。このような抗体は好ましくはまた、開発、製造または処方を促進するための良好な物理化学特性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0246192号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0142352号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0166768号明細書
【特許文献4】国際公開第2010/029513号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)を含む、抗体、またはその抗原結合断片を提供し、HCVRは、相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、LCVRは、CDRのLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、HCDR1のアミノ酸配列は配列番号1により与えられ、HCDR2のアミノ酸配列は配列番号2により与えられ、HCDR3のアミノ酸配列は配列番号3により与えられ、LCDR1のアミノ酸配列は配列番号4により与えられ、LCDR2のアミノ酸配列は配列番号5により与えられ、LCDR3のアミノ酸配列は配列番号6により与えられ、前記抗体またはその抗原結合断片はヒトPCSK9に結合する。一実施形態において、本発明は、重鎖可変領域(HCVR)および軽鎖可変領域(LCVR)を含む、抗体、またはその抗原結合断片を提供し、HCVRのアミノ酸配列は配列番号7により与えられ、LCVRのアミノ酸配列は配列番号8により与えられ、前記抗体またはその抗原結合断片はヒトPCSK9に結合する。別の実施形態において、本発明は、2つの重鎖可変領域(HCVR)および2つの軽鎖可変領域を含む、抗体、またはその抗原結合断片を提供し、各HCVRのアミノ酸配列は配列番号7により与えられ、各LCVRのアミノ酸配列は配列番号8により与えられる。
【0006】
別の特定の実施形態において、本発明は、重鎖(HC)および軽鎖(LC)を含む、抗体、またはその抗原結合断片を提供し、HCのアミノ酸配列は配列番号9により与えられ、LCのアミノ酸配列は配列番号10により与えられる。さらにより特定の実施形態において、本発明は、2つの重鎖(HC)および2つの軽鎖(LC)を含む抗体を提供し、各HCのアミノ酸配列は配列番号9により与えられ、各LCのアミノ酸配列は配列番号10により与えられる。最も特定の実施形態において、本発明は、2つのHCおよび2つのLCからなる抗体を提供し、各HCのアミノ酸配列は配列番号9により与えられ、各LCのアミノ酸配列は配列番号10により与えられる。
【0007】
本発明はさらに、本発明の抗体または抗原結合断片と、1種以上の薬学的に許容可能な担体、希釈剤または賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。より特には、本発明の医薬組成物はさらに、1種以上の追加の治療剤を含む。
【0008】
さらに、本発明は、本発明の有効量の抗体または抗原結合断片を、それを必要とする患者に投与することを含む、脂質異常症または高コレステロール血症を治療する方法を提供する。本発明はまた、治療に使用するための本発明の抗体またはその抗原結合断片を提供する。より特には、本発明は、脂質異常症または高コレステロール血症の治療に使用するための本発明の抗体またはその抗原結合断片を提供する。さらに、本発明は、脂質異常症または高コレステロール血症を治療するための医薬の製造における本発明の抗体またはその抗原結合断片の使用を提供する。
【0009】
本発明はまた、本発明の抗体または抗原結合断片をコードする核酸分子および発現ベクターに関する。さらに、本発明はプロセスに従って調製される抗体を提供し、前記プロセスは、(a)ポリペプチド配列が発現されるような条件下で、配列番号9により与えられるポリペプチド配列をコードする第1のポリヌクレオチド配列および配列番号10により与えられる第2のポリペプチド配列をコードする第2のポリヌクレオチド配列を含む宿主細胞を培養する工程と、(b)重鎖および軽鎖を含む抗体を前記宿主細胞から回収する工程とを含み、前記重鎖のポリペプチド配列は配列番号9により与えられ、前記軽鎖のポリペプチド配列は配列番号10により与えられる。より特には、上述のプロセスにより産生される抗体は2つの重鎖および2つの軽鎖を含み、各重鎖のポリペプチド配列は配列番号9により与えられ、各軽鎖のポリペプチド配列は配列番号10により与えられる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
完全長抗体はジスルフィド結合により相互接続される2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子である。各鎖のアミノ末端部分は、そこに含まれる相補性決定領域(CDR)による抗原認識に主に関与する約100〜110アミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分はエフェクター機能に主に関与する定常領域を規定する。軽鎖はカッパまたはラムダとして分類され、それらの各々は当該技術分野において公知である特定の定常領域により特徴付けられる。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンとして分類され、それぞれ、IgG、IgM、IgA、IgD、またはIgEとして抗体のアイソタイプを規定する。IgG抗体はさらに、サブクラス、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分けられ得る。各重鎖タイプはまた、当該技術分野において周知の配列を有する特定の定常領域により特徴付けられる。本明細書で使用する場合、「抗原結合断片」とは、ヒトPCSK9に結合するFab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、および一本鎖Fv断片を指す。本明細書で使用する場合、「ヒトPCSK9に結合する」という用語は、配列番号14のアミノ酸配列により与えられるヒトPCSK9上のエピトープとの相互作用を指す。本明細書で使用する場合、「エピトープ」という用語は本発明の抗体または抗原結合断片により認識される抗原上の別個の三次元部位を指す。
【0011】
CDRは、フレームワーク領域(「FR」)と呼ばれる、十分に保存される領域に散在する。各々の軽鎖可変領域(LCVR)および重鎖可変領域(HCVR)は、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端まで配置される、3つのCDRおよび4つのFRから構成される。軽鎖の3つのCDRは、「LCDR1、LCDR2、およびLCDR3」と称され、重鎖の3つのCDRは、「HCDR1、HCDR2、およびHCDR3」と称される。CDRは抗原と特異的に相互作用を形成する残基のほとんどを含有する。本発明の抗体または抗原結合断片のLCVRおよびHCVR領域内のCDRアミノ酸残基の番号付けおよび配置は、周知のKabat番号付け法(LCDR1−3、HCDR2−3)に従って、またはKabatプラスChothia(HCDR1)に従って決定され得る。
【0012】
抗体および抗原結合断片を産生し、精製するための方法は当該技術分野において周知であり、例えば、HarlowおよびLane(1988)Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York,5−8および15章に見出され得る。例えば、マウスは、ヒトPCSK9、またはその断片で免疫化され得、次いで得られる抗体が回収され得、精製され得、当該技術分野において周知の従来の方法を使用してアミノ酸配列が決定される。抗原結合断片もまた、従来の方法により調製されてもよい。本発明の抗体または抗原結合断片は、非ヒト抗体に由来するCDR周囲の1つ以上のヒトフレームワーク領域を含むように操作される。ヒトフレームワーク生殖細胞系配列は、それらのウェブサイトhttp://imgt.cines.frによりImMunoGeneTics(IMGT)から、またはMarie−Paule LefrancおよびGerard LefrancによるThe Immunoglobulin Facts Book、Academic Press、2001、ISBN012441351から得られ得る。特に、本発明の抗体または抗原結合断片に使用するための生殖細胞系列軽鎖フレームワークには、A3およびO2が含まれる。本発明の抗体または抗原結合断片に使用するための特定の生殖細胞系列重鎖フレームワーク領域には、VH3−21およびVH3−23が含まれる。
【0013】
本発明の操作された抗体または抗原結合断片は公知の方法を使用して調製および精製され得る。例えば、重鎖(例えば、配列番号9により与えられるアミノ酸配列)および軽鎖(例えば、配列番号10により与えられるアミノ酸配列)をコードするcDNA配列は、GS(グルタミン合成酵素)発現ベクター内でクローニングされ、操作され得る。次いで、操作される免疫グロブリン発現ベクターはCHO細胞中で安定にトランスフェクトされ得る。当業者が理解するように、抗体の哺乳動物発現の結果、グリコシル化、典型的にFc領域において高度に保存されたN−グリコシル化部位を生じる。安定なクローンが、ヒトPCSK9に特異的に結合する抗体の発現のために検証されてもよい。陽性クローンは、バイオリアクタ中での抗体産生のために無血清培地中で増殖されてもよい。抗体が分泌される培地は従来技術により精製されてもよい。例えば、その培地は、リン酸緩衝生理食塩水などの適合緩衝液と平衡するプロテインAまたはGセファロースFFカラムに簡便に適用されてもよい。カラムは非特異的結合成分を除去するために洗浄される。結合抗体は、例えばpH勾配により溶出され、SDS−PAGEなどにより抗体画分が検出され、次いでプールされる。抗体は一般的な技術を使用して濃縮および/または滅菌濾過されてもよい。安定な凝集体および多量体は、サイズ排除、疎水性相互作用、イオン交換、またはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを含む、一般的な技術により効果的に除去されてもよい。生成物は例えば−70℃にて即座に凍結されてもよいか、または凍結乾燥されてもよい。
【0014】
本発明の抗体はモノクローナル抗体である。本明細書で使用する場合、「モノクローナル抗体」または「mAb」とは、例えば、任意の真核生物、原核生物、またはファージクローンを含む、単一コピーまたはクローン由来の抗体を指し、それが産生される方法ではない。モノクローナル抗体およびその抗原結合断片は、例えば、ハイブリドーマ技術、組換え技術、ファージディスプレイ技術、合成技術、例えばCDR−グラフト、またはこのようなもしくは当該技術分野で公知の他の技術の組み合わせにより産生され得る。
【0015】
本発明の別の実施形態において、抗体もしくはその抗原結合断片、またはそれをコードする核酸は単離形態で提供される。本明細書で使用する場合、「単離された」という用語は、細胞環境に見出される他の高分子種を含まないかまたは実質的に含まないタンパク質、ペプチドまたは核酸を指す。本明細書に使用する場合、「実質的に含まない」とは、存在する高分子種の(モル基準で)80%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超を含む、目的のタンパク質、ペプチドまたは核酸を意味する。
【0016】
本発明の抗体または抗原結合断片は患者の治療に使用され得る。「治療している」(または「治療する」または「治療」)という用語は、存在する症状、障害、病態、または疾患の進行または重症度を遅延させること、中断させること、停止させること、軽減させること、止めること、減少させること、または反転させることを指す。本明細書に使用する場合、「患者」とは、ヒトまたは非ヒト哺乳動物を指すが、好ましくはヒトを指す。本明細書に使用する場合、「有効量」とは、患者へ単回または複数回投与すると、治療下の患者に所望の効果を与える、本発明の抗体または抗原結合断片の量または用量を指す。有効量は、哺乳動物の種;そのサイズ、年齢および全体的な健康;関連する特定の疾患;疾患の程度または重症度;個々の患者の反応;投与される特定の抗体;投与様式;投与される製剤のバイオアベイラビリティ特性;選択される用法;ならびに任意の併用薬の使用などの複数の要因を考慮することにより、当業者としての担当の診断医により容易に決定され得る。
【0017】
本発明の抗体もしくは抗原結合断片、それを含む医薬組成物は、非経口経路(例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、または経皮的)により投与されてもよい。本発明の医薬組成物は、当該技術分野において周知の方法(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第19版、(1995)、A.Gennaroら、Mack Publishing Co.)により調製されてもよく、本明細書に開示される抗体、またはその抗原結合断片と、1種以上の薬学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤とを含む。例えば、本発明の抗体または抗原結合断片は、クエン酸ナトリウム、クエン酸、ポリソルベート80、およびスクロースなどの薬剤と製剤化されてもよく、次いで、得られる組成物は凍結乾燥され、2℃〜8℃で保存されてもよい。次いで凍結乾燥組成物は、投与前に注射のために滅菌水で再構成され得る。
【0018】
以下の実施例は本発明をさらに例示するが、実施例は例示の目的で記載され、限定されず、種々の修飾が当業者によりなされてもよいことは理解される。
【実施例】
【0019】
実施例1
操作したPCSK9抗体
マウス宿主を、ヒトPCSK9(配列番号17)のC末端切断断片を含むペプチドで免疫化し、PCSK9結合IgG抗体を単離し、標準的な方法を使用してクローニングする。単離したマウスFabのCDRを突然変異生成によりランダム化し、得られた抗体をヒトPCSK9に対する親和性についてスクリーニングする。親和性が増強した変異を合わせ、最適化したCDRをヒトVH3−21およびA3重鎖および軽鎖フレームワーク上でそれぞれ操作する。ヒト化抗体の生物物理学的特性をさらに最適化するために、CDR配列内の芳香族および疎水性アミノ酸の標的とする置換を生成する。ランダム化したCDRライブラリーもまた、さらなる親和性が増強した変異についてスクリーニングする。有益なCDR変異をランダムに合わせ、発現させ、得られた抗体をヒトPCSK9に対する親和性についてスクリーニングする。以下のアミノ酸配列を有する完全長のヒト化および最適化PCSK9抗体が得られる。
【0020】
【表1】
【0021】
配列番号9および配列番号10のそれぞれの重鎖および軽鎖アミノ酸配列をコードする対応するcDNA配列は以下の通りである:
【0022】
【表2】
【0023】
実施例2
操作したPCSK9抗体の発現
実施例1の操作したPCSK9抗体は、安定にトランスフェクトしたCHO細胞株中で発現できる。配列番号11(配列番号9の重鎖アミノ酸配列をコードする)および配列番号12(配列番号10の軽鎖アミノ酸配列をコードする)のcDNAを含有するグルタミン合成酵素(GS)発現ベクターを使用して、エレクトロポレーションによりチャイニーズハムスター細胞株、CHOK1SV(Lonza Biologics PLC、Slough、United Kingdom)をトランスフェクトする。発現ベクターは、SV早期(シミアンウイルス40E)プロモーターおよびGSについての遺伝子をコードする。GSの発現は、CHOK1SV細胞により必要とされるアミノ酸、グルタミンの生化学的合成を可能とする。トランスフェクション後、50μMのL−メチオニンスルホキシミン(MSX)を用いて細胞をバルク選択に供する。MSXによるGSの阻害を利用して、選択のストリンジェンシーを増加させる。宿主細胞ゲノムの転写活性領域内に発現ベクターcDNAを組み込んだ細胞は、GSの内因性レベルを発現する、CHOK1SV野生型細胞に対して選択できる。バルク培養物を、蛍光活性化細胞分類(FACS)技術を使用して単一細胞クローニングに供し、クローン細胞株を増殖させ、実施例1の操作したPCSK9抗体の発現についてスクリーニングする。
【0024】
実施例3
エピトープ結合
マウスIgGのPCSK9結合エピトープ(それから実施例1の操作したPCSK9抗体が誘導される)を、エピトープ抽出および水素/重水素交換質量分析により測定し、ヒトPCSK9の触媒ドメインの線形アミノ酸配列160−181内の領域に狭める(アミノ酸番号付けは、28のアミノ酸シグナルペプチドを含む、完全長ヒトPCSK9配列に基づいた)。ヒトPCSK9の触媒ドメイン内にこのエピトープを有する実施例1の操作した抗体の相互作用を、残基160−181に対応する合成ペプチドに対するその結合の評価により確認する(表1)。実施例1の操作した抗体はインタクトなヒトPCSK9より高い親和性を有するペプチド160−181に結合し、その相違は、より速い会合速度(kon)により引き起こされる。解離速度(koff)はインタクトなPCSK9の2倍以内であり、(結合が生じた後の)相互作用の強度は類似していることを示唆している。さらに、データは、ほぼ全ての結合決定基がPCSK9のこの線形領域内に含まれることを示唆している。ペプチド166−181に対する実施例1の操作した抗体の結合はペプチド160−181より顕著に弱く、160−165領域内のアミノ酸(または複数のアミノ酸)の役割を実証する。ペプチド163−174に対する実施例1の操作した抗体の結合は166−181より顕著に強く、同様に残基163−165からの寄与を示唆している。
【0025】
【表3】
【0026】
実施例4
結合キネティクスおよび結合親和性
当該技術分野において周知の表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイは、ヒト、カニクイザル、マウス、ラット、およびウサギPCSK9に対する試験PCSK9抗体の結合キネティクスおよび親和性を評価するために使用される。生理学的緩衝条件(イオン強度およびpH)および温度(37℃)下で、実施例1の操作した抗体は、1.2×10−1−1の平均会合速度(kon)および1.2×10−3−1の平均解離速度(koff)でヒトPCSK9に結合する。実施例1の操作した抗体に対するヒトPCSK9結合についての平均Kは約11nMであると決定した。実施例1の操作した抗体は1.1×10−1−1の平均会合速度(kon)および2.5×10−3−1の平均解離速度(koff)でカニクイザルPCSK9に結合し、カニクイザルPCSK9結合について約25nMのKを得た。以下の表2は、マウス、ラットおよびウサギPCSK9を使用して実施例1の操作したPCSK9抗体で得たさらなる結果の要約を示す。これらのデータは、実施例1の操作したPCSK9抗体が、生理学的条件のpH、イオン強度、および温度下でヒトおよびカニクイザルPCSK9の両方に対してナノモル親和性で結合することを示す。
【0027】
【表4】
【0028】
実施例5
LDL受容体に対するPCSK9結合の阻害
PCSK9は肝臓のLDLR含有量を減少させることにより血漿LDL−Cを調節し、それにより肝細胞によるLDL取り込みを減少させる。PCSK9の触媒ドメインはLDLRに結合する部位である。したがって、PCSK9の触媒ドメインを認識する抗体は、LDLRに対するPCSK9の結合を阻害すると予想される。
【0029】
AlphaLISA(登録商標)フォーマットを使用して、LDL受容体へのPCSK9結合に対する試験PCSK9抗体の効果を決定する。アッセイに使用した組換え完全長PCSK9は、ヒト胚腎臓(HEK)293安定細胞株(Qianら、J.Lipid Res.48:1488−1498、2007)においてC末端HISタグ化タンパク質として発現される。組換えLDL受容体細胞外ドメインは、一過性にトランスフェクトしたHEK293E細胞(Qianら、J.Lipid Res.48:1488−1498、2007)においてC末端FLAGタグ化タンパク質として発現される。ヒトPCSK9のC末端ドメインに結合するマウス抗PCSK9 Mabは、HEK293細胞において発現され、プロテイン−Gアフィニティカラム、続いてSuperdex200上で精製される。モノクローナルANTI−FLAG(登録商標)BioM2抗体(Sigma)は、ヒドラジド結合によりビオチンに共有結合する精製したマウスIgG1モノクローナル抗体である。ANTI−FLAG BioM2は、FLAG融合タンパク質のN末端、Met−N末端またはC末端におけるFLAG配列を認識する。ANTI−FLAG BioM2はアビジンまたはストレプトアビジンコンジュゲートにより検出できる。モノクローナルANTI−FLAG BioM2−ビオチンは、50%グリセロール、10mMリン酸ナトリウム、pH7.25、0.02%のアジ化ナトリウムを含有する150mMのNaCl中に供給され、−20℃で保存される。
【0030】
AlphaLISA(登録商標)実験は、25mMのHEPES;pH7.5、100mMのNaCl、2.5mMのCaCl2、0.5%のTX−100、0.1%のカゼイン、1mg/mlのデキストラン−500、および0.05%のプロクリン−300を緩衝液として使用して384ウェル白色プロキシプレート(Perkin Elmer)中で実施する。そのアッセイは、AlphaLISA(登録商標)ストレプトアビジンドナービーズ(Perkin Elmer)およびAlphaLISA(登録商標)アクセプタービーズにコンジュゲートしたマウス抗PCSK9Mabを使用する。ビーズが結合パートナーの相互作用を介して近接した場合、PCSK9およびLDLR、一重項酸素をドナービーズからアクセプタービーズに移す。680nmでのレーザ励起により、一重項酸素はアクセプタービーズを励起して発光する。アクセプタービーズは、NaBHCN(Sigma)を使用して還元的アミノ化によりマウス抗PCSK9Mabに結合し、4℃で保存する。マウス抗PCSK9Mabがコンジュゲートしたアクセプタービーズ(22μg/ml)を1時間、2.22nMのPCSK9で予め負荷する。ドナービーズ(44μg/ml)を1時間、5.55nMのANTI−FLAG(登録商標)BioM2および2.22nMのFLAGタグ化LDLRで予め負荷する。予め負荷した後、2μlの試験PCSK9抗体または対照IgGを、完全に自動化したMultimek(Beckman)を使用して9μlの各ビーズ混合物(最終濃度のPCSK9およびLDLR=1nM)を含有するプロキシプレートに加え、室温で一晩結合する。AlphaLISA(登録商標)信号(1秒当たりのカウント)をEnvision Turbo(Perkin Elmer)で測定する。AlphaLISA(登録商標)アッセイを用いて全ての実験を微光条件下で実施する。
【0031】
実質的に上記の手順の後、AlphaLISA(登録商標)アッセイにおけるLDLRに対するヒトPCSK9の結合はPCSK9濃度に応じて増加する。実施例1の操作したPCSK9抗体(試験PCSK9抗体)の添加により、約90pMの平均IC50で、LDLRに対するPCSK9結合の濃度に関連した完全な阻害が生じた。対照IgG4はそのアッセイにおいて効果を有さなかった。このアッセイの結果により、実施例1の操作したPCSK9抗体はLDLRに対するヒトPCSK9の結合を阻害することが実証される。
【0032】
実施例6
HepG2細胞上でのPCSK9機能の阻害
肝細胞上のLDLRの密度に対する試験PCSK9抗体の効果を決定するために、ヒトHepG2細胞を、ポリ−D−リシンをコーティングしたT75フラスコ中で培養する。24時間後、ポリ−D−リシンをコーティングした96ウェルブラックプレート(Becton−Dickinson)中の5%(v/v)ヒトリポタンパク質が枯渇した血清(LPDS;Intracel)を含有する100μlのDMEM/F−12(3:1)培地中で5,000細胞/ウェルにて細胞を播種する。LPDSを含有する培地中で一晩インキュベーションした後、2.6〜1333nMの範囲の濃度にて2時間、69nM(5μg/mL)のC末端HISタグ化組換えヒトPCSK9および試験PCSK9抗体またはIgG4対照抗体と共に細胞をインキュベートする。全てのインキュベーションは37℃で実施する。Zenon(登録商標)Alexa Fluor(登録商標)488マウスIgG2b標識キット(Invitrogen)で蛍光標識したLDLR抗体(Progen)を用いてLDLRレベルをモニターする。室温にて90分間、細胞を検出抗体とインキュベートし、次いでホルマリンを含まない固定剤(Prefer;ANATECH、Ltd)を使用して10分間固定し、その後、0.01%TritonX−100中で透過処理する。10μg/mlのヨウ化プロピジウム(Invitrogen)で細胞を染色して全細胞数を決定する。Acumen Explorer(商標)レーザ走査蛍光マイクロプレート血球計算器蛍光検出器(TTP LabTech)を使用してLDLR信号を定量する。
【0033】
実質的に上記の手順の後、ヒトPCSK9により、18nMのEC50で、HepG2細胞上のLDLRの濃度依存性の減少が生じる。実施例1の操作したPCSK9抗体(試験PCSK9抗体)は、104nMのIC50で、HepG2細胞上のLDLRのPCSK9により誘導される抑制を阻害した。ヒトIgG4対照は1333nMまでの濃度で比較的不活性であった。これらのデータにより、実施例1の操作したPCSK9抗体が、PCSK9により媒介されるLDLR分解を阻害することが実証される。
【0034】
実施例7
LDL取り込みのPCSK9誘導性減少の阻害
LDL取り込みに対する試験PCSK9抗体の効果を決定するために、ポリ−D−リシンをコーティングした96ウェルブラックプレート上で5%のヒトLPDSを補足した100μlのDMEM/F−12(3:1)培地中で5,000細胞/ウェルにてHepG2細胞を播種し、5%CO雰囲気下で37℃にて18時間インキュベートする。ヒトPCSK9(69nM)を、2.6nM〜1333nMの範囲の濃度にてPCSK9試験抗体またはヒトIgG4対照と共にまたは有さずに細胞に加え、37℃にて2時間、細胞とプレインキュベートする。100ng/ウェルの蛍光標識したLDL(BODIPY−LDL、Invitorogen)を添加した後、次いで細胞を37℃にて4時間インキュベートする。室温にて20分間、ホルマリンを含まない固定剤(Prefer;ANATECH、Ltd)中で細胞を固定する。細胞をPBSで2回洗浄した後、室温にて15分間、0.01%TritonX−100を含有するPBS緩衝液を用いて細胞を透過処理し、10μg/mlのヨウ化プロピジウムで染色して全細胞数を決定する。Acumen Explorer(商標)レーザ走査蛍光マイクロプレート血球計算器を使用してLDL取り込みを決定し、全細胞に対する蛍光細胞のパーセントとして表す。試験PCSK9抗体または対照IgGに対する反応は、PCSK9の阻害パーセント、すなわち、PCSK9単独の存在下でのベースラインLDL−C取り込みに対してPCSK9の非存在下での最大LDL取り込みに戻るパーセントとして表す。LDL取り込みのPCSK9誘導性減少の阻害についての対応するIC50値もまた、計算する。
【0035】
実質的に上記の手順の後、ヒトPCSK9により、32nMのEC50で、HepG2細胞中のLDL取り込みの濃度に関連した減少が生じた。実施例1の操作したPCSK9抗体は、PCSK9誘導性阻害を反転させ、増加したLDL取り込みとして示されるのに対して、対照IgGは阻害を反転しなかった。具体的には、実施例1の操作したPCSK9抗体により、84%のPCSK9の平均最大阻害パーセントおよび194nMの平均IC50が実証された。これらのデータにより、実施例1の操作したPCSK9抗体が、LDL取り込みのPCSK9誘導性減少を阻害することが実証される。
【0036】
実施例8
インビボ有効性
試験PCSK9抗体のインビボ薬物動態(PK)および/または薬力学(PD)効果を決定するために、試験抗体を正常なカニクイザルに投与でき、続いて種々のPKおよび/またはPDパラメータを決定できる。例えば、試験PCSK9抗体を健康な未処置のカニクイザルに静脈内または皮下に投与でき、次いでヒトIgGサンドイッチELISAの使用により試験抗体の血清濃度を測定できる。抗体投与後に種々の時点にわたって得られた血清濃度を使用して、T1/2、Cmax、AUCおよび血漿クリアランス(CL)を含む、試験抗体の種々のPKパラメータを決定できる。同様に、試験PCSK9抗体を健康な未処置のカニクイザルに静脈内または皮下に投与でき、自動分析装置(Direct LDL−C Plus、2ndGen.、Roche Diagnostics)によりLDL−Cの血清濃度を測定できる。
【0037】
実質的に上記の手順の後、1、5または15mg/kgの単回用量の静脈内投与後、および5mg/kgの単回皮下用量後の健康なカニクイザルにおける実施例1の操作したPCSK9抗体の薬物動態を評価した。これらの研究から決定した薬物動態パラメータを以下の表3に与える。
【0038】
【表5】
【表6】
【0039】
2回の独立した研究において実施例1の操作したPCSK9抗体の投与後に血清LDLを測定した。両方の研究において、LDL−C抑制の証拠は、実施例1の操作したPCSK9抗体の24時間の投与後に明白であった。5mg/kgでの実施例1の抗体の静脈内(i.v.)投与後、60%(研究1)および25%(研究2)の最大平均LDL−C減少を観測した。5mg/kgi.v.にて、約8週間(研究1)および2週間(研究2)、平均LDL−C抑制を維持した。研究2において、LDL−C抑制の大きさ(25〜35%)に対する用量(1〜15mg/kg)の適度の効果が存在した。LDL−C抑制の期間に対する用量の効果は、より明白であった。皮下投与(5mg/kg)した場合、実施例1の操作した抗体は、静脈内投与後に観測されたものと同様の大きさまでLDL−Cレベルを抑制するのに効果的であった。実施例1の操作した抗体の任意の用量の投与後の血清高密度リポタンパク質コレステロールに対する効果は存在しなかった。
【0040】
実施例9
操作したPCSK9抗体の物理化学的性質
実施例1の操作したPCSK9抗体はまた、良好な溶解度、化学的安定性、および物理的安定性を有することを見出した。
A.溶解度
十分に高い溶解度は簡便に投与できることが望まれる。例えば、100kgの患者へ1.0mLの注射により投与される1mg/kg用量は100mg/mLの溶解度を必要とする。さらに、高濃度で高分子量(HMW)の凝集体を有さずに単量体状態で抗体を維持することもまた望まれる。試験抗体の溶解度を決定するために、抗体を、(1)10mMのクエン酸塩pH6;(2)10mMのクエン酸塩pH6、150mMのNaCl;および(3)リン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.4中に透析できる。次いで回収した透析物を、HMWパーセントを測定するために分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析できる。次いで試験抗体を、溶解限度に到達するかまたは濃縮器の空隙容量に到達するまで、約25℃にて4mLの遠心濃縮器中で濃縮できる。空隙容量に到達する場合、濃度は≧として表す。次いで濃縮した抗体をSECにより分析してHMWパーセントを測定できる。濃度が元に戻ってHMW%の増加があるかどうかを決定するために、濃縮した試料を1mg/mLに希釈し、SECにより分析できる。
【0041】
実質的に上記の手順の後、実施例1の操作したPCSK9抗体は、試験した全ての条件下で128mg/mLより大きい溶解度を示した。さらに、低レベルのHMWのみが高濃度で存在した。
【0042】
【表7】
【0043】
B.化学的安定性
化学的安定性は十分な保存期間を有する薬剤の開発を促進する。試験抗体の化学的安定性を評価するために、抗体は、pH4、pH5、pH6、またはpH7にて緩衝した10mMのクエン酸中の1mg/mLの濃度で製剤化できる。次いで製剤化した試料を、促進した分解研究において4℃、25℃、および40℃にて4週間インキュベートする。化学変化を反映する抗体の電荷プロファイルの変化は、標準的な手順に従ってキャピラリ等電点集束(cIEF)を使用して評価できる。実質的に上記の手順の後、実施例1の操作した抗体の化学安定性の分析により以下の結果が与えられた。
【0044】
【表8】
【0045】
この結果は、25℃で4週間の保存後、pH6(抗体製剤に使用される一般的なpH)で製剤化した場合、主要ピーク%は4.1パーセントポイントのみ減少し、実施例1の操作したPCSK9抗体が、適切な保存期間を有する溶液製剤の開発を促進するのに十分な化学安定性を示すことを実証する。さらに、抗体はまた、pH5、およびより少ない程度でpH7において良好な化学的安定性を示し、抗体が、様々な範囲のpH単位にわたって製剤化を可能とし得る安定な特徴を有することを示す。
【0046】
C.物理的安定性
試験抗体の物理的安定性を評価するために、pH4、pH5、pH6、またはpH7(または10mMのTris、pH8)にて緩衝した10mMのクエン酸塩中の1mg/mLのタンパク質濃度で抗体を製剤化できる。次いで試料を、促進した分解研究において4℃、25℃、および40℃にて4週間インキュベートする。インキュベーション後、凝集した高分子量(HMW)抗体から所望の単量体抗体を分離する、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して物理的安定性を評価する。
【0047】
表6は、実質的に上記の手順の後、実施例1の操作したPCSK9抗体の物理的安定性の分析の結果をまとめる。そのデータは、pH5、pH6、およびpH7において、25℃または40℃で4週間にわたるHMWの変化が1%未満であったことを示し、この抗体が良好な物理的安定性有し、自己会合および凝集に耐性があることを示す。
【0048】
【表9】
【0049】
配列
HCDR1(配列番号1):
GFPFSKLGMV

HCDR2(配列番号2):
TISSGGGYTYYPDSVKG

HCDR3(配列番号3):
EGISFQGGTYTYVMDY

LCDR1(配列番号4):
RSSKSLLHRNGITYSY

LCDR2(配列番号5):
QLSNLAS

LCDR3(配列番号6):
YQNLELPLT

HCVR(配列番号7):
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFPFSKLGMVWVRQAPGKGLEWVSTISSGGGYTYYPDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGISFQGGTYTYVMDYWGQGTLVTVSS

LCVR(配列番号8):
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSKSLLHRNGITYSYWYLQKPGQSPQLLIYQLSNLASGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCYQNLELPLTFGQGTKVEIK

HC(配列番号9):
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFPFSKLGMVWVRQAPGKGLEWVSTISSGGGYTYYPDSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGISFQGGTYTYVMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG

LC(配列番号10):
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSKSLLHRNGITYSYWYLQKPGQSPQLLIYQLSNLASGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCYQNLELPLTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC

HC cDNA(配列番号11):
GAGGTGCAGCTGGTGGAGTCTGGGGGAGGCTTGGTAAAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCCCGTTCAGTAAGCTCGGCATGGTTTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCAACCATTAGTAGTGGTGGTGGTTACACATACTATCCAGACAGTGTGAAGGGGCGGTTCACCATCTCCAGAGACAATGCCAAGAACTCACTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCCGTATATTACTGTGCGAGAGAAGGAATTAGCTTTCAGGGTGGCACCTACACTTATGTTATGGACTACTGGGGCCAGGGCACCCTGGTCACCGTCTCCTCAGCCTCCACCAAGGGCCCATCGGTCTTCCCGCTAGCGCCCTGCTCCAGGAGCACCTCCGAGAGCACAGCCGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACGGTGTCGTGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCGGCTGTCCTACAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACGAAGACCTACACCTGCAACGTAGATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAGAGTTGAGTCCAAATATGGTCCCCCATGCCCACCCTGCCCAGCACCTGAGGCCGCCGGGGGACCATCAGTCTTCCTGTTCCCCCCAAAACCCAAGGACACTCTCATGATCTCCCGGACCCCTGAGGTCACGTGCGTGGTGGTGGACGTGAGCCAGGAAGACCCCGAGGTCCAGTTCAACTGGTACGTGGATGGCGTGGAGGTGCATAATGCCAAGACAAAGCCGCGGGAGGAGCAGTTCAACAGCACGTACCGTGTGGTCAGCGTCCTCACCGTCCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGCAAGGTCTCCAACAAAGGCCTCCCGTCCTCCATCGAGAAAACCATCTCCAAAGCCAAAGGGCAGCCCCGAGAGCCACAGGTGTACACCCTGCCCCCATCCCAGGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTCAGCCTGACCTGCCTGGTCAAAGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAAAGCAATGGGCAGCCGGAGAACAACTACAAGACCACGCCTCCCGTGCTGGACTCCGACGGCTCCTTCTTCCTCTACAGCAGGCTAACCGTGGACAAGAGCAGGTGGCAGGAGGGGAATGTCTTCTCATGCTCCGTGATGCATGAGGCTCTGCACAACCACTACACACAGAAGAGCCTCTCCCTGTCTCTGGGTTGA

LC cDNA(配列番号12)
GATATTGTGATGACTCAGTCTCCACTCTCCCTGCCCGTCACCCCTGGAGAGCCGGCCTCCATCTCCTGCAGGTCTAGTAAGAGTCTCTTACATCGTAATGGCATCACTTATTCGTATTGGTACCTGCAGAAGCCAGGGCAGTCTCCACAGCTCCTGATCTATCAGCTGTCCAACCTTGCCTCAGGAGTCCCAGACAGGTTCAGTGGCAGTGGGTCAGGCACTGATTTCACACTGAAAATCAGCAGGGTGGAGGCTGAGGATGTTGGAGTTTATTACTGCTATCAAAATCTAGAACTTCCGCTCACGTTCGGCCAGGGCACCAAGGTGGAAATCAAACGGACTGTGGCTGCACCATCTGTCTTCATCTTCCCGCCATCTGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTTGTGTGCCTGCTGAATAACTTCTATCCCAGAGAGGCCAAAGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCGGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAGGACAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACGCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAACACAAAGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGCTCGCCCGTCACAAAGAGCTTCAACAGGGGAGAGTGCTAA

hPCSK9(配列番号13):
RAQEDEDGDYEELVLALRSEEDGLAEAPEHGTTATFHRCAKDPWRLPGTYVVVLKEETHLSQSERTARRLQAQAARRGYLTKILHVFHGLLPGFLVKMSGDLLELALKLPHVDYIEEDSSVFAQSIPWNLERITPPRYRADEYQPPDGGSLVEVYLLDTSIQSDHREIEGRVMVTDFENVPEEDGTRFHRQASKCDSHGTHLAGVVSGRDAGVAKGASMRSLRVLNCQGKGTVSGTLIGLEFIRKSQLVQPVGPLVVLLPLAGGYSRVLNAACQRLARAGVVLVTAAGNFRDDACLYSPASAPEVITVGATNAQDQPVTLGTLGTNFGRCVDLFAPGEDIIGASSDCSTCFVSQSGTSQAAAHVAGIAAMMLSAEPELTLAELRQRLIHFSAKDVINEAWFPEDQRVLTPNLVAALPPSTHGAGWQLFCRTVWSAHSGPTRMATAVARCAPDEELLSCSSFSRSGKRRGERMEAQGGKLVCRAHNAFGGEGVYAIARCCLLPQANCSVHTAPPAEASMGTRVHCHQQGHVLTGCSSHWEVEDLGTHKPPVLRPRGQPNQCVGHREASIHASCCHAPGLECKVKEHGIPAPQEQVTVACEEGWTLTGCSALPGTSHVLGAYAVDNTCVVRSRDVSTTGSTSEGAVTAVAICCRSRHLAQASQELQDVHHHHHH

hPCSK9 160−181(配列番号14):
RITPPRYRADEYQPPDGGSLVE

hPCSK9 166−181(配列番号15):
YRADEYQPPDGGSLVE

hPCSK9 163−174(配列番号16):
PPRYRADEYQPP

C末端切断hPCSK9(配列番号17):
QEDEDGDYEELVLALRSEEDGLAEAPEHGTTATFHRCAKDPWRLPGTYVVVLKEETHLSQSERTARRLQAQAARRGYLTKILHVFHGLLPGFLVKMSGDLLELALKLPHVDYIEEDSSVFAQSIPWNLERITPPRYRADEYQPPDGGSLVEVYLLDTSIQSDHREIEGRVMVTDFENVPEEDGTRFHRQASKCDSHGTHLAGVVSGRDAGVAKGASMRSLRVLNCQGKGTVSGTLIGLEFIRKSQLVQPVGPLVVLLPLAGGYSRVLNAACQRLARAGVVLVTAAGNFRDDACLYSPASAPEVITVGATNAQDQPVTLGTLGTNFGRCVDLFAPGEDIIGASSDCSTCFVSQSGTSQAAAHVAGIAAMMLSAEPEL
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]