(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の方法であって、対応関係ルールを準備するステップが、少なくとも部分的に、差分回動振幅、回動方向、回動速度、回動加速度又は絶対回動位置に基づくステップである方法。
請求項2記載の方法であって、対応関係ルールを準備するステップが、少なくとも部分的に、第1角度エンコーダ及び第2角度エンコーダを利用するステップである方法。
請求項4記載の方法であって、対応関係ルールを準備するステップが、少なくとも部分的に、第1時点・第2時点間で第1角度エンコーダ及び第2角度エンコーダが辿った経路を判別することによるステップである方法。
【背景技術】
【0003】
座標計測装置としては、注目点に再帰反射ターゲットを配置しそこにレーザビームを送ることでその点の三次元座標を計測する装置がある。この種の装置では、例えばそのターゲットまでの距離及びそのターゲットに対する二通りの角度を計測することで注目点の座標を導出する。距離の計測には絶対距離計(ADM)、干渉計等の距離計測装置を使用する。角度の計測には角度エンコーダ等の角度計測装置を使用する。注目点にレーザビームを差し向ける手段としては、装置内にジンバル式ビームステアリング機構を設ける。こうした装置の例としてはレーザトラッカがある。レーザトラッカのシステム構成については、例えば特許文献1(発明者:Brown et al.,この参照を以て本願に繰り入れる)及び特許文献2(発明者:Lau et al.)に記載がある。
【0004】
レーザトラッカに類する座標計測装置としてはトータルステーションがある。トータルステーションは探査分野でよく用いられる装置であり、散乱反射ターゲットや再帰反射ターゲットの座標計測に使用される。以下、トータルステーションを包含する広い意味で「レーザトラッカ」の語を使用することにする。
【0005】
通常、レーザトラッカに発するレーザビームの輻射先は再帰反射ターゲット、例えば金属球にキューブコーナリフレクタを組み込んだ構成の球体実装再帰反射器(SMR)である。これは、相直交する3枚のミラーで構成されるキューブコーナリフレクタを、その頂点即ちミラー同士の交点が中心に来るよう金属球内に配置したものである。計測の際には、例えば、SMRの球面を供試物体表面(計測対象面)に接触させその面沿いにSMRを移動させる。球内ミラー配置が上掲の配置であるので、キューブコーナ頂点から供試物体表面(SMRの当接先面)へと下ろした垂線の長さはSMRが転がっても変わらない。従って、その面に倣いSMRを移動させつつレーザトラッカでそのSMRの位置を追跡することで、面上にある各点の三次元座標を計測することができる。また、SMRの頂部にガラス窓を設けることで塵埃による汚損を妨げることができる。そうしたガラス窓については特許文献3(発明者:Raab et al.,この参照を以て本願に繰り入れる)に記載がある。
【0006】
レーザトラッカにジンバル機構を設けるのは、自トラッカ発のレーザビームをSMR等に指向させるためである。即ち、SMRからレーザトラッカへと再帰反射された光の一部を位置検出器で捉え、位置検出器に対するその光の入射位置に基づきレーザトラッカ内制御システムを作動させ、自トラッカ内機械軸(アジマス軸及びゼニス軸)の回動角を然るべく調整することで、レーザビームをそのSMRに指向させ続けることができる。ひいては、そのレーザトラッカでSMRを追尾乃至追跡することができる。
【0007】
レーザトラッカの機械軸(アジマス軸及びゼニス軸)に角度エンコーダを装着するのは、(トラッカ座標系を基準とした)レーザビームのアジマス角及びゼニス角を計測するためである。レーザトラッカで距離計測を一通り、角度計測を二通り行うことで、SMRの三次元位置を十分に特定することができる。
【0008】
レーザトラッカで使用されうる距離計測装置には、上述の通り、干渉計と絶対距離計(ADM)の二種類がある。干渉計を使用する場合、始点から終点へと再帰反射ターゲットを動かしながら、通過していく既知長(通常はレーザ光の半波長)に対する倍数を計測することで、始点から終点までの距離を特定する。そのため、計測中にレーザビームがブレークすると、倍数が正確にわからなくなって距離情報が失われる。これに対し、ADMによれば、ビームがブレークしても再帰反射ターゲットの絶対距離を特定することができる。ひいては、ターゲット間のスイッチングも可能である。従って、ADMを用いることでいわゆるポイントアンドシュート計測を実行することができる。また、従前のADMでは静止ターゲットしか計測できなかったため、干渉計が併用されるのが普通であった。しかしながら、昨今のADMは迅速な計測が可能であり、干渉計を併用する必要がない。そうしたADMについては、特許文献4(発明者:Bridges et al.,この参照を以て本願に繰り入れる)に記載がある。
【0009】
追尾モードにおいては、レーザトラッカは、自トラッカの捕捉範囲内にあるSMRの動きに自動的に追従する。こうした追尾はレーザビームがブレークすると停止する。ビームがブレークする状況は幾通りかある。(1)第1に、トラッカ・SMR間に遮蔽物がある状況である。(2)第2に、SMRの動きが速すぎてトラッカ側が追従できない状況である。(3)第3に、SMRの方向がそのSMRの受容可能角を超えて変化した状況である。通常のデフォルト設定では、ビームがブレークした後、ビームの方向(位置)はビームがブレークした位置のままか最近のコマンドで指定された位置にされる。この状態から追尾を継続させたい場合、オペレータがビームの位置を視認しSMRをそのビームの位置に配することで、トラッカの向きをSMR方向にロックさせる必要がある。
【0010】
レーザトラッカのなかにはカメラを1台又は複数台備えるものがある。そのカメラの光軸(カメラ軸)は、計測ビームと同軸にされることもあれば、計測ビームに対しある固定距離乃至角度ずれた位置にされることもある。カメラを使用することで、例えば、広い視野に亘り再帰反射器を捉えることができる。また、カメラ軸付近に変調光源を配し再帰反射器を照明することにより、再帰反射器の特定がより容易になる。これは、変調光源による照明光に対し再帰反射器が同相で閃光するため(背景物体からの光がその照明光に対し同相にならないため)である。こうした構成のカメラは、例えば、視野内にある複数個の再帰反射器を検知し自動シーケンスに従いそれぞれを計測するのに使用することができる。そうしたシステムについては例えば特許文献5(発明者:Pettersen et al.)及び特許文献6(発明者:Bridges et al.,この参照を以て本願に繰り入れる)に記載がある。
【0011】
レーザトラッカのなかには、三通りの座標値(例えばx、y及びz)及び三通りの回動角(例えばピッチ、ロール及びヨー)を合わせ六自由度に亘る計測が可能なものがある。六自由度計測が可能なレーザトラッカベースのシステムは既に幾種類か市販乃至提案されている。そうしたシステムについては例えば特許文献6(発明者:Bridges et al.)、特許文献7(発明者:Bridges,この参照を以て本願に繰り入れる)、特許文献8(発明者:Pettersen et al.)及び特許文献9(発明者:Lau)に記載がある。
【0012】
[レーザトラッカ機能のユーザ制御]
レーザトラッカに備わる一般的な動作モードとしては、追尾モード(トラッキングモード)とプロファイリングモードの二種類がある。追尾モードでは、再帰反射器の動き(オペレータによる動き)に対しレーザトラッカからのレーザビームが追従する。プロファイリングモードでは、レーザトラッカからのレーザビームが、コンピュータコマンド又はマニュアル操作を通じオペレータが指示した方向へと送出される。
【0013】
これら、レーザトラッカの基本動作(追尾及び指向)の制御に関わる動作モードの他には、オペレータが前もって指定した形態にてトラッカが応答できるようにする特殊なオプションモードがある。必要となるオプションモードは、例えばレーザトラッカ制御用のソフトウェアによって選定される。そうしたソフトウェアは、(例えばネットワークケーブルを介し)トラッカに接続されている外部コンピュータ上にあることもあれば、トラッカ自体に組み込まれていることもある。後者の場合、トラッカに組み込まれているコンソール機能を使用しそのソフトウェアにアクセスすることができる。
【0014】
オプションモードの例としてはオートリセットモードがある。このモードでは、レーザビームがブレークするたびにそのビームが所定の基準点へと差し向けられる。オートリセットモードで使用される基準点の例としてはホームポジション、即ちトラッカボディ上に座す磁気ネストの位置がある。また、オートリセットに代わるオプションモードとしては、例えばノーリセットモードがある。このモードでは、レーザビームがブレークした場合は常にそのビームがそのときの方向を指向し続ける。トラッカのホームポジションについては特許文献10(発明者:Cramer et al.,この参照を以て本願に繰り入れる)に記載がある。
【0015】
オプションモードの例としては更にパワーロックモードがある。パワーロックモードは、Leica GeosystemsのLeica(登録商標)アブソリュートトラッカ(商品名)に搭載されている。パワーロックモードでは、レーザビームがブレークするとレーザトラッカ上のカメラによって再帰反射器の所在が特定される。トラッカ制御システムに対しては、そのカメラで得られた角度座標が直ちに送られるので、トラッカに発するレーザビームの向きを再帰反射器へと戻すことができる。再帰反射器の自動捕捉を伴う手順としては、特許文献11(発明者:Dold et al.)及び特許文献12(発明者:Kaneko)に記載のものがある。
【0016】
オプションモードのなかにはやや複雑な動作を伴うものがある。その一例は、SMRが所定時間に亘り静止しているときに呼び出される安定性条件モードである。例えば、オペレータがSMRを動かし磁気ネスト上に配置したとする。このとき安定性条件モードがアクティブになっていると、レーザトラッカによる三次元座標の計測値に関し、ソフトウェアが安定性評価を開始する。ユーザは、例えば、SMRの距離計測値におけるピークトゥピーク偏差が1秒間に2μm未満である場合に、そのSMRが安定であると評価するように決める。安定性評価の条件が満たされると、トラッカが三次元座標の計測を実行しソフトウェアがそのデータを記録する。
【0017】
コンピュータプログラムを使用しより複雑な動作モードを実現することも可能である。一例として、計測対象物表面の一部を計測し幾何学的形状を当てはめるソフトウェアを考える。こうしたソフトウェアは、例えば、まず、計測対象物表面に沿いSMRを動かすようオペレータに指示を発した後、必要なポイントに亘りデータが収集されたら、SMRをその面から持ち上げ計測を終えるよう指示する。計測対象物表面に対するSMRの動きからは、計測が終了したことだけでなく、その面に対するSMRの位置関係もわかる。こうした位置情報は、SMR半径により生じたオフセットを適正に算入すべくアプリケーションソフトウェアで必要とされる。
【0018】
より複雑なコンピュータ制御の第2例としてはトラッカサーベイがある。トラッカサーベイに際しては、予め設定されているスケジュールに従い、幾通りかのターゲット位置を順繰りに巡るようにトラッカが駆動される。オペレータは、SMRを所要位置それぞれへと運ぶことで、サーベイに先立ちそれらの位置をトラッカに教える。
【0019】
より複雑なソフトウェア制御の第3例としてはトラッカ指示計測がある。この動作では、SMRを所要位置に動かすようソフトウェアがオペレータに指示する。この指示は、グラフィックディスプレイを用い所要位置の距離及び方向を指し示すことで実行される。オペレータがSMRを所要位置まで動かすと、コンピュータ画面での表示色が例えば赤から緑へと変化する。
【0020】
レーザトラッカによるビームステアリングをマニュアル制御するシステムについては、特許文献13(発明者:Westermark et al.)、特許文献14(発明者:Westermark et al.)及び特許文献15(発明者:Hoffer,譲受人:本願出願人,この参照を以て本願に繰り入れる)に記載がある。
【0021】
上述した全てのトラッカ動作に共通する要素は、オペレータが、トラッカの挙動に対する制御に(あまり)関与できない点である。例えば、ソフトウェアにより選定されるオプションモードのなかには、トラッカの動作のうちあるものをオペレータがプリセットできるものがある。この場合、残念なことに、オプションモードがユーザによって選定された後は、それによりトラッカの挙動が画定するので、オペレータは、コンピュータコンソールに戻らない限り挙動を変化させることができない。また、コンピュータプログラムがオペレータに指示して複雑な動作を実行させ、その結果をソフトウェアが洗練した形態で解析する場合もある。いずれの場合でも、オペレータは、トラッカ及びトラッカにより収集されるデータの制御に(あまり)関与することができない。
【0022】
[リモートトラッカコマンドの必要性]
レーザトラッカのオペレータには、二種類の基本的な役割がある。計測中にSMRを配置すること、並びに制御用コンピュータを介しトラッカにコマンドを送ることである。しかしながら、計測場所から離れた位置にコンピュータがあることが多いので、これら二通りの役割を一人のオペレータがこなすのは容易でない。この問題の回避を試みる手法も多々あるが、いずれも完全に満足のいくものではない。
【0023】
しばしば用いられる手法のうち第1のものは、一人のオペレータが、再帰反射器を所要位置にセットした後、装置制御用キーボードまで歩いて戻り計測指令を実行させる、という手法である。残念なことに、このような手法ではオペレータの利用及び装置時間の利用に関し無駄が生じる。また、計測に当たりオペレータが再帰反射器を保持固定しなければならない場合には、オペレータがキーボードのすぐ近くにいるときでないと単一オペレータ制御を実行することができない。
【0024】
第2の手法は、二人目のオペレータを参加させる手法である。即ち、オペレータのうち一人がコンピュータのそばに立ち、もう一人がSMRを動かす手法である。自明な通り、これは高くつく手法である。離れている場所間で肉声でやりとりすることが問題になることもある。
【0025】
第3の手法は、レーザトラッカにリモートコントローラを実装する手法である。残念なことに、リモートコントローラの使用には様々な問題がある。まず、安全上又は保安上の理由でリモートコントローラの使用が許されない施設が多々ある。リモートコントローラの使用が認められている場合でも、無線チャネル間の干渉が問題として残る。また、リモートコントローラ信号の届く範囲がレーザトラッカの稼働範囲全体に満たない場合もある。はしご上で作業しているときのように、リモートコントローラの操作に両手をさけない状況も生じうる。リモートコントローラの使用に際しては、それに先立ち、コンピュータ及びリモートコントローラをセットアップする必要があろうし、それを行ったとしても、任意時点でアクセス可能なトラッカ向けコマンドがごく一部のものに留まることがあり得る。この着想によるシステムの例としては特許文献16(発明者:Smith et al.)記載のものがある。
【0026】
第4の手法は、レーザトラッカに対し携帯電話で指示する手法である。即ち、携帯電話からトラッカを呼び出した後、その携帯電話のキーパッドから数字を入力すること或いは音声認識を使用することで、コマンドをリモート的に入力する手法である。残念なことに、この手法にも多くの難点がある。まず、携帯電話の使用が許されていない施設や、携帯電話を使用することができない地方がある。携帯電話を利用するには月々のサービスプロバイダ利用代金が必要になる。携帯電話インタフェースとして、コンピュータ又はレーザトラッカとの接続に係るハードウェアも必要になろう。携帯電話の技術は日進月歩であるのでそれに応じた更新も必要になる。リモートコントローラを使用する場合と同じく、その使用に先立ち、コンピュータ及び携帯電話をセットアップする必要があろうし、それを行ったとしても、任意時点でアクセス可能なトラッカ向けコマンドがごく一部のものに留まることがあり得る。
【0027】
第5の手法は、レーザトラッカにインターネット接続機能又は無線ネットワーク接続機能を付与しておき、無線ポータブルコンピュータ乃至PDA(携帯情報端末)を使用しレーザトラッカに指令を送る手法である。残念なことに、この手法には携帯電話による手法のそれに類する難点がある。同手法は、しばしばトータルステーションで使用される。同手法を使用するシステムの例としては、特許文献17(発明者:Kumagai et al.)、特許文献18(発明者:Viney et al.)、特許文献19(発明者:Gatsios et al.)、特許文献20(発明者:Gatsios et al.)、特許文献21(発明者:Piekutowski)及び特許文献22(発明者:Monz et al.)に記載のものがある。同手法は、更に、特許文献23(発明者:Ouchi et al.)に記載の要領に従い機器を制御する際にも使用されている。
【0028】
第6の手法は、計測対象になる個別の点をポインタで指し示す手法である。この手法の例としては特許文献24(発明者:Ura et al.)に記載のものがある。この手法をレーザトラッカに対するコマンド発行に応用することは可能であるが、ポインタビームパターンを好適に投射可能な面を見つけ出すのは一般にあまり容易でない。
【0029】
第7の手法は、少なくとも再帰反射器、送信機及び受信機を有する複雑な構成のターゲットを使用する手法である。この種のシステムを例えばトータルステーションで使用することで、精密な位置情報をオペレータに送ることや、GPS(汎地球測位システム)情報をトータルステーションに送ることが可能になる。その種のシステムの例としては特許文献25(発明者:Hinderling et al.)に記載のものがある。但し、同文献には、オペレータ発のコマンドを計測装置(トータルステーション)に送る手法についての記載がない。
【0030】
第8の手法は、少なくとも再帰反射器、送信機及び受信機を有する複雑な構成のターゲットを使用すると共に、トータルステーションに変調光信号を送る機能をその送信機に持たせる手法である。この手法では、例えばキーパッドから入力されたコマンドが変調光信号によってトータルステーションに送られ、トータルステーションでそれらコマンドが検知される。こうしたシステムの例としては、特許文献26(発明者:Katayama et al.)、特許文献27(発明者:Muraoka et al.)、特許文献28(発明者:Ishinabe et al.)及び特許文献29(発明者:Ishinabe et al.)に記載のものがある。この手法は、複雑なターゲット及びキーパッドが大きなスタッフの上に実装される探査アプリケーションに特に適しているが、大きなコントロールパッドにコードで接続されていない小さなターゲットを用いることが望ましいレーザトラッカとの併用向きではない。また、トラッカが再帰反射ターゲットにロックしていないときでもコマンドを送れるようにしたいものである。
【0031】
第9の手法は、トータルステーションに情報を送れるようターゲット側に無線送信機及び変調光源を設ける手法である。この手法では、トータルステーションの向きを適正な向きにすることができるよう、即ち再帰反射ターゲットにレーザビームが届くよう、無線送信機から情報(主としてターゲットの角度的姿勢に関する情報)を送信する。また、変調光源は、トータルステーション側で変調光をピックアップすることができるよう、再帰反射器の近くに配置する。従って、この手法によれば、オペレータの許でトータルステーションを正しい方向に向けること、ひいては再帰反射ターゲットに由来しない偽反射を排除することができる。こうしたシステムの例としては特許文献30(発明者:Wiklund et al.)に記載のものがある。ただ、この手法では、レーザトラッカに汎用コマンドを送ることができない。
【0032】
第10の手法は、無線送信機、ターゲット側コンパスアセンブリ、トータルステーション側コンパスアセンブリ及び案内光トランスミッタを併用する手法である。ターゲット側コンパスアセンブリ及びトータルステーション側コンパスアセンブリは、トータルステーションのアジマス角をターゲットに揃えるのに使用される。案内光トランスミッタから発せられる案内光は水平方向に延びるファン状の光である。トータルステーション側検知器で信号が受光されるまで、ターゲット側でその光を鉛直方向にパンさせることができる。案内光が検知器上にセンタリングしたら、トータルステーションは、再帰反射信号が大きくなる方向へとその向きを少しずつ変化させる。無線送信機は、ターゲット側のキーパッドを使用しオペレータが入力した情報を送信する。この手法に基づくシステムの例としては特許文献31(発明者:Wasutomi et al.)に記載のものがある。ただ、この手法では、レーザトラッカに汎用コマンドを送ることができない。
【0033】
第11の手法は、再帰反射光に時間的変調を施すことひいてはデータを送信することができるよう、再帰反射器の構成を工夫する手法である。この手法で使用される再帰反射器は、例えば、頂点切り落とし型のキューブコーナリフレクタ、そのキューブコーナリフレクタの前面に装着された光スイッチ、並びにデータを送信又は受信するための電子回路を有する。この種のシステムの例としては特許文献32(発明者:Kennedy)に記載のものがある。残念なことに、この種の再帰反射器は複雑且つ高価である。フェロエレクトリック光結晶素材等で形成された光スイッチや、頂点切り落とし型のキューブコーナリフレクタが使用されるため、再帰反射光の品質が悪い。更に、ADMビーム計測での使用時にはレーザトラッカに戻る光が既に変調されているので、光のオンオフ間スイッチングは、ADMにとっては無論、トラッカ側干渉計及び位置検出器にとっても問題となり得る。
【0034】
第12の手法は、ターゲットと通信する双方向送信機及び再帰反射器の識別を支援するアクティブ再帰反射器を備えた計測装置を使用する手法である。双方向送信機は無線又は光による送信機であり、再帰反射器、送信機及び制御ユニットを有する複雑なターゲットスタッフの一部を構成している。この種のシステムの例としては特許文献33(発明者:Hertzman et al.)に記載のものがある。ただ、この種の手法は、大きな制御パッドにコードで接続されていない小さなターゲットを用いるのが有益なレーザトラッカとの併用に適していない。更に、注目している再帰反射ターゲットを識別する手法が複雑且つ高コストである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図2】一例に係るレーザトラッカに接続された情報処理手段及び電源供給手段を示す図である。
【
図3A】パッシブターゲットを用い且つレーザトラッカの追尾計測システムを介しジェスチャ情報を搬送する手法を示す図である。
【
図3B】パッシブターゲットを用い且つレーザトラッカの追尾計測システムを介しジェスチャ情報を搬送する手法を示す図である。
【
図3C】パッシブターゲットを用い且つレーザトラッカの追尾計測システムを介しジェスチャ情報を搬送する手法を示す図である。
【
図3D】パッシブターゲットを用い且つレーザトラッカの追尾計測システムを介しジェスチャ情報を搬送する手法を示す図である。
【
図3E】パッシブターゲットを用い且つレーザトラッカの追尾計測システムを介しジェスチャ情報を搬送する手法を示す図である。
【
図4A】パッシブターゲットを用い且つレーザトラッカのカメラシステムを介しジェスチャ情報を搬送する手法を示す図である。
【
図4B】パッシブターゲットを用い且つレーザトラッカのカメラシステムを介しジェスチャ情報を搬送する手法を示す図である。
【
図4C】パッシブターゲットを用い且つレーザトラッカのカメラシステムを介しジェスチャ情報を搬送する手法を示す図である。
【
図5A】アクティブターゲットを用い且つレーザトラッカのカメラシステムを介しジェスチャ情報を搬送する手法を示す図である。
【
図5B】アクティブターゲットを用い且つレーザトラッカのカメラシステムを介しジェスチャ情報を搬送する手法を示す図である。
【
図5C】アクティブターゲットを用い且つレーザトラッカのカメラシステムを介しジェスチャ情報を搬送する手法を示す図である。
【
図5D】アクティブターゲットを用い且つレーザトラッカのカメラシステムを介しジェスチャ情報を搬送する手法を示す図である。
【
図6】ジェスチャコマンドを発行及び実行する際オペレータ及びレーザトラッカにより実行される手順を示すフローチャートである。
【
図7】ジェスチャコマンドの省略可能部分及び必要部分を示すフローチャートである。
【
図8】一群のレーザトラッカ向けコマンド並びにそのコマンドをレーザトラッカに搬送する際オペレータにより実行される対応するジェスチャを示す図である。
【
図9】一群のレーザトラッカ向けコマンド並びにそのコマンドをレーザトラッカに搬送する際オペレータにより実行される対応するジェスチャを示す図である。
【
図10】一群のレーザトラッカ向けコマンド並びにそのコマンドをレーザトラッカに搬送する際オペレータにより実行される対応するジェスチャを示す図である。
【
図11A】使用できるジェスチャの別例を示す図である。
【
図11B】使用できるジェスチャの別例を示す図である。
【
図11C】使用できるジェスチャの別例を示す図である。
【
図11D】使用できるジェスチャの別例を示す図である。
【
図11E】使用できるジェスチャの別例を示す図である。
【
図11F】使用できるジェスチャの別例を示す図である。
【
図12】ジェスチャによりレーザトラッカにコマンドを送る際に使用できるコマンドタブレットの例を示す図である。
【
図13】ジェスチャを用いトラッカ側基準点を設定する手順の例を示す図である。
【
図14】ジェスチャを用いコマンドタブレットを初期化する手順の例を示す図である。
【
図15】ジェスチャを用い円を計測する手順の例を示す図である。
【
図16】ジェスチャを用いレーザトラッカからのレーザビームで再帰反射器を捕捉させる手順の例を示す図である。
【
図17】レーザトラッカに係る電子回路及び処理システムの例を示す図である。
【
図18】レーザトラッカの光軸から外れた位置にあるカメラを使用しターゲットの三次元座標を求めることが可能な幾何学的配置の例を示す図である。
【
図19】ある空間パターンに従い再帰反射器でジェスチャを発することによりレーザトラッカにコマンドを送る手順の例を示す図である。
【
図20】再帰反射器で位置を指し示すことによりレーザトラッカにコマンドを送る手順の例を示す図である。
【
図21】ある経時パターンに従い再帰反射器でジェスチャを発することによりレーザトラッカにコマンドを送る手順の例を示す図である。
【
図22】六自由度レーザトラッカで六自由度ターゲットの姿勢変化を計測することによりレーザトラッカにコマンドを送る手順の例を示す図である。
【
図23】レーザトラッカからのレーザビームを再帰反射器に向けてその再帰反射器上にロックさせるコマンドを、ある空間パターンに従った再帰反射器の移動を伴うジェスチャを使用し、送る手順の例を示す図である。
【
図24】レーザトラッカからのレーザビームを再帰反射器に向けてその再帰反射器上にロックさせるコマンドを、ある経時パターンに従ったレーザトラッカ側受光量の変化を伴うジェスチャを使用し、送る手順の例を示す図である。
【
図25】レーザトラッカからのレーザビームを再帰反射器に向けてその再帰反射器上にロックさせるコマンドを、六自由度プローブの姿勢変化を伴うジェスチャを使用し、送る手順の例を示す図である。
【
図26A】トラッカ構成要素のオペレータ起因運動を計測することでレーザトラッカにコマンドを送る手法の例を示す図である。
【
図26B】トラッカ構成要素のオペレータ起因運動を計測することでレーザトラッカにコマンドを送る手法の例を示す図である。
【
図27A】カメラ光源出射光が再帰反射器に届かないようにすることでレーザトラッカにコマンドを送る手法の例を示す図である。
【
図27B】カメラ光源出射光が再帰反射器に届かないようにすることでレーザトラッカにコマンドを送る手法の例を示す図である。
【
図28】
図26A及び
図26Bに示した手法に従いレーザトラッカにコマンドを機械的に送る際にオペレータが実行する手順を示すフローチャートである。
【
図29】
図27A及び
図27Bに示した手法に従いレーザトラッカにコマンドを光学的に送る際にオペレータが実行する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、別紙図面を参照しつつ説明する。図中、同様の部材には同様の参照符号を付してある。
【0042】
図1にレーザトラッカの一例構成10を示す。このトラッカ10のジンバル式ビームステアリング機構12は、アジマス軸20周りで回動させうるようにゼニスキャリッジ14をアジマスベース16上に搭載し、ゼニス軸18周りで回動させうるようそのゼニスキャリッジ14上にペイロード15を搭載した構成である。軸18,20はトラッカ10内で相直交しており、その交点即ちジンバル点22が通例に倣い距離計測原点とされている。レーザビーム46が辿る光路の延長線はその点22を通りゼニス軸18に直交している。即ち、ビーム46は、軸18に直交する面に属している。ビーム46は、ペイロード15をゼニス軸18周り及びアジマス軸20周りで回動すべくトラッカ内に設けられているモータ(図示せず)により、所望方向に差し向けられる。トラッカ10内では、ゼニス軸18沿いに延びるゼニス機械軸に軸18用の角度エンコーダ、アジマス軸20沿いに延びるアジマス機械軸に軸20用の角度エンコーダが装着されているので、それらの角度エンコーダ(図示せず)で回動角を高精度検出することができる。出射されたビーム46は外部再帰反射ターゲット26(例.前掲のSMR)へと伝搬していく。ジンバル点22・ターゲット26間輻射方向距離(動径)、ゼニス軸18周り回動角、並びにアジマス軸20周り回動角を計測することで、ターゲット26の位置をトラッカ側球座標系に従い求めることができる。
【0043】
レーザビーム46は一通り又は複数通りの波長成分を含んでいる。以下の説明ではそのステアリング機構として
図1に示したものを想定するが、これは簡明化のためであり、他種ステアリング機構を使用することもできる。例えば、アジマス軸及びゼニス軸周りで可回動なミラーを用いレーザビームを反射させるタイプの機構を使用してもよい。このような形態でミラーを使用する例が特許文献2(発明者:Lau et al.)に記載されている。本願記載の技術は、ステアリング機構のタイプ如何によらず適用することができる。
【0044】
また、このレーザトラッカ10では、カメラ52及び光源54がペイロード15上に配置されている。これらのうち光源54は、1個又は複数個の再帰反射ターゲット26を照明する。光源54としては、LED(発光ダイオード)を電気的に駆動してパルス光を反復発生させる構成を使用することができる。また、カメラ52は、それぞれ、感光アレイ及びその感光アレイの面前に位置するレンズを備えている。感光アレイとしては、例えばCMOSアレイやCCDアレイを使用することができる。レンズとしては、例えばその視野が広めのもの(30〜40°のもの)を使用するとよい。このレンズの役目は、レンズ視野内に存する物体の像を感光アレイ上に発生させることにある。各光源54は、その光源54からの光が各ターゲット26で反射されカメラ52に届くようカメラ52のそばに配置されている。このような構成では、ターゲット26の像が背景より明るく且つ脈動する像になるので、感光アレイ上に達した背景光からターゲット像を速やかに弁別することができる。また、カメラ52及び光源54は、レーザビーム46の光路を挟むように2個ずつ配置されている。カメラ52がこのような形態で設けられているので、カメラ視野内にある全SMRの三次元座標を三角測量の原理で計測することができる。更に、SMRが点から点へと動く際に、そのSMRの三次元座標をモニタすることができる。このような目的でカメラを2個使用する構成は特許文献7(発明者:Bridges)に記載されている。
【0045】
カメラ及び光源の個数及び配置はこれ以外の個数及び配置にすることもできる。例えば、レーザトラッカから輻射されるレーザビームに対し(ほぼ)同軸になるよう光源及びカメラを配置してもよい。この場合、トラッカ発レーザビームによりカメラ内感光アレイが飽和することを防ぐため、光学フィルタリング又はそれに類する手法を使用する必要があろう。
【0046】
また、レーザトラッカのペイロード又はベース上に単一のカメラを配置し使用するようにしてもよい。トラッカ光軸から外れた位置に単一のカメラを配した場合、そのカメラから、再帰反射ターゲットの方向に関する二種類の角度情報を得ることができる。ターゲットまでの距離に関する情報は得られないが、多くの場合角度情報だけで十分である。また、単一のカメラを使用しているときに再帰反射ターゲットの三次元座標が必要となった場合は、例えば、トラッカをアジマス軸周りで180°回動させた後に、ゼニス軸周り反転によりトラッカを再びターゲット方向に向ければよい。こうすれば、再帰反射ターゲットが二通りの方向から捉えられることになるので、そのターゲットの三次元位置を三角測量の原理で求めることができる。
【0047】
単一のカメラで再帰反射ターゲットまでの距離を求めることが可能でより一般性が高い手法としては、例えば、アジマス軸周り又はゼニス軸周りでレーザトラッカを回動させ、二通りの回動位置それぞれでトラッカ側カメラによりターゲットを観測する、という手法がある。再帰反射ターゲットは、例えば、そのカメラのそばに配置されているLEDで照明すればよい。
図18に、この手法に従い再帰反射ターゲットまでの距離を求める要領を示す。この供試環境900は、レーザトラッカ910、第1位置にあるカメラ920、第2位置にあるカメラ930、第1位置にある再帰反射ターゲット940、並びに第2位置にある再帰反射ターゲット950で構成されている。レーザトラッカ910はトラッカ内ジンバル点912を中心にして且つアジマス軸、ゼニス軸又は双方の周りで回動させることができる(カメラ第1位置はその回動前の位置、第2位置は回動後の位置に相当する)。また、カメラ920はレンズ系922及び感光アレイ924を備えている。レンズ系922内にある926は投射中心であり、ターゲット940からの光線及びターゲット950からの光線がそこを通っている。カメラ930の構成は、その回動位置が異なっている点を除きカメラ920と同様である。また、図中のL1はトラッカ910の表面からターゲット940までの距離、L2はターゲット950までの距離である。線914はジンバル点912からレンズ系922の投射中心926に至る経路、線916はジンバル点912からレンズ系932の投射中心936に至る経路を表している。線914で表される距離と線916で表される距離は互いに等しい大きさである。更に、図中の942はトラッカ910に近い位置にある方のターゲット940がもたらす像スポット、952は遠い位置にある方のターゲット950がもたらす像スポットであり、図示の通り前者の方が感光アレイ924の中心から遠い位置に発生する。このパターンは、回動後のカメラ930即ち第2位置のカメラでも同様に成立する。そのため、回動前後における近方ターゲット940の像スポット間距離(像点間距離)は、回動前後における遠方ターゲット950の像スポット間距離(像点間距離)に比べて大きくなる。従って、レーザトラッカを回動させることで生じる感光アレイ上での像スポット位置の変化を調べることで、再帰反射ターゲットまでの距離を求めることができる。本件技術分野で習熟を積まれた方々(いわゆる当業者)には自明な通り、この距離検出手法は三角法を用い容易に画定・表現することができる。
【0048】
その他の手法としては、ターゲットのイメージングと計測の間で切り替える手法がある。そうした手法の例が特許文献6(発明者:Bridges et al.)に記載されている。カメラ配置を別の配置にして本願記載の手法を実行することもできる。
【0049】
図2に、レーザトラッカ10の一部をなす補助ユニット70を示す。このユニット70の役割は、トラッカ本体に電力を供給すること(場合によっては更に情報処理機能やクロック発生機能をシステムに付加すること)である。その機能をトラッカ本体に組み込むことで、補助ユニット70を廃することもできる。補助ユニット70は、多くの場合汎用コンピュータ80に接続される。コンピュータ80上に相応のアプリケーションソフトウェアをロードすることで、相応のアプリケーション機能例えばリバースエンジニアリング機能を提供することができる。その情報処理能力をトラッカ10の本体に組み込むことで、コンピュータ80を廃することもできる。その場合、ユーザインタフェース(例えばキーボードやマウスの機能があるもの)をトラッカ10に組み込むようにする。また、補助ユニット70・コンピュータ80間接続は無線接続でも導電ケーブルを用いた接続でもかまわない。補助ユニット70やコンピュータ80をネットワークに接続してもよい。複数個の機器例えば複数個の計測装置乃至アクチュエータを、補助ユニット70やコンピュータ80を介し互いに接続することもできる。
【0050】
レーザトラッカ10は、回して横倒しにする、上下逆さまにする等、様々な姿勢にすることができる。トラッカ10に対するアジマス軸及びゼニス軸の位置関係は、トラッカ10の姿勢によらず
図1に示したものと同様の位置関係になる。
【0051】
また、ペイロード15を、アジマス軸20及びゼニス軸18周りで回動するミラーに置き換えることができる。この場合、レーザビームを上向きに発してそのミラーに入射させる。そのビームはミラーから再帰反射ターゲット26へと送られる。
【0052】
[離れた場所からレーザトラッカへのコマンド送信]
図3A〜
図3E、
図4A〜
図4C及び
図5A〜
図5Dに検知手段の例を示す。即ち、レーザトラッカ10により認識されコマンドとして実行されるジェスチャパターンを、オペレータが送ることが可能な手段を示す。特に、
図3A〜
図3Eに示したのは、トラッカ10の追尾計測システムを通じコマンドとして認識されるジェスチャパターンを、オペレータが送ることが可能な検知手段である。まず、
図3Aに示すように、トラッカ10発のレーザビーム46が再帰反射ターゲット26に射突している状態で、そのターゲット26を左右に動かすと、トラッカ10発ビーム46の方向がその動きに追従して変化する。それと同時に、トラッカ10内の角度エンコーダで、左右方向及び上下方向に沿ったターゲット26の角度位置が検出される。それら角度エンコーダの出力は二次元角度マップを形成する。このマップは、トラッカ10により時間の関数として記録すること及び動きのパターンを求めるべく解析することができる。
【0053】
また、
図3Bに示すように、レーザビーム46で再帰反射ターゲット26が追尾されている状態では、レーザトラッカ10からターゲット26までの距離がそのトラッカ10で計測される。その際のADM又は干渉計の出力は一次元距離マップを形成する。このマップは、トラッカ10により時間の関数として記録すること及び動きのパターンを求めるべく解析することができる。更に、
図3Aに示した動きと
図3Bに示した動きの組合せをトラッカ10で評価し、三次元空間における動きのパターンを調べることもできる。
【0054】
角度の変動、距離の変動及び三次元空間における動きは、いずれも空間パターンの一種である。空間パターンとは、レーザトラッカによるルーチン計測中に継続的に観察される動きのパターンのことである。空間パターンのなかには、レーザトラッカに対するコマンドに関連付けうるものがある。コマンドとして解釈することが可能な空間パターンの例としては、計測が終わった後に計測対象物の表面からSMRを引き離す、という空間パターンがある。例えば、計測対象物の外径を求めるべくオペレータがSMRで計測対象物上の諸点に関し計測を行った後、そのSMRを計測対象物の表面から引き離した場合、外径側が計測対象であったことを引き離し方向から知ることができる。内径計測の後にオペレータがSMRを計測対象物表面から引き離した場合も、内径側が計測対象であったことを知ることができる。同様に、プレート計測後にオペレータがSMRを上方に移動させた場合、そのプレートの上面が計測対象であったことを知ることができる。SMRの中心から外面までの距離即ちSMRのオフセットを除去するのに必要であるので、計測対象物のどちらの側が計測されたかを知るのは重要である。計測対象物からSMRを引き離すというこの動作は、レーザトラッカ計測に係るソフトウェアによって自動認識される。即ち、SMRの動きが「移動方向に沿ってSMRオフセットを減じよ」なるコマンドとして認識される。そして、この第1コマンドに加え空間パターンに基づく他のコマンド群を含めることにより、後述の通り複数通りのコマンドを準備することが可能である。言い換えれば、複数通りのトラッカ向けコマンドと複数通りの空間パターンとの間に対応関係がある。
【0055】
なお、本願中の説明では、レーザトラッカに対するコマンドという概念をそれに対応する計測状況との関連で捉えているので、その点を了解されたい。例えば、上述の例では、再帰反射器による計測の対象が内径であったかそれとも外径であったかを、再帰反射ターゲットの動きから調べるようにしている。この記述が正確性を帯びるのは、レーザトラッカによる計測の対象物が、円形プロファイルを有している場合のみである。
【0056】
図3Cでは、レーザビーム46により再帰反射ターゲット26が追尾されている状態で、そのターゲット26を固定保持すると、レーザトラッカ10の働きで三次元座標が求まる。従って、計測対象空間内の個別位置に特別の意味合いを持たせそれをコマンドとすることができる。例えば、後述するコマンドタブレットを相応の三次元位置に配置しそれを利用することができる。
【0057】
図3Dでは、レーザビーム46が再帰反射ターゲット26に届かない状態になっている。このようにビーム46が遮られている状態と遮られていない状態を交互に発生させると、レーザトラッカ10に戻る光量に相応パターンの変化が生じる。そのパターンは、トラッカ側計測システムを構成している位置検出器や距離計で検知することができる。この返戻光変化パターンは時間の関数を形成する。これは、トラッカ10側で記録すること及びパターンを求めるべく解析することができる。
【0058】
レーザトラッカ側に戻る光量のパターン的な変化は、ルーチン的な計測中にしばしば発生する。例えば、再帰反射ターゲットに向かうレーザビームがいっとき遮られ、のちにそのターゲットがそのビームで再捕捉される、という状況は、レーザトラッカに対するターゲットの位置を新たな位置に変更するときしばしば発生する。この動作、即ちレーザビームを遮った後そのビームで再捕捉する、という動作は、単純なユーザコマンドと見なすことができる。即ち、新たな位置に動かした後に再帰反射ターゲットを再捕捉せよ、と指示するコマンドと見なすことができる。従って、この第1コマンドに加え光量の経時的変動に基づく他のコマンド群を含めることにより、後述の通り複数通りのコマンドを準備することが可能である。言い換えれば、複数通りのトラッカ向けコマンドと、レーザトラッカ側センサにより検知される光量の変動に基づく複数通りのパターンとの間に、対応関係がある。
【0059】
光量の変化はルーチン計測中にしばしば発生する。レーザビームが遮られレーザトラッカに戻らない状況である。こうした動作は、「追尾中止」又は「計測中止」を指示するコマンドとして認識することができる。同様に、レーザビームを受光するよう再帰反射ターゲットを動かすことができる。この単純な動作は、「追尾開始」を指示するコマンドとして認識することができる。これらの単純なコマンドは本願の興味範囲外であるので、本願では、少なくとも光量減少及びそれに続く光量増大を伴うものを光量変化によるコマンドとして説明する。
【0060】
図3Eでは、六自由度プローブ110を伴う再帰反射ターゲット26がレーザビーム46で追尾されている。六自由度プローブとしては、
図3Eに例示したプローブ110に限らず、様々なタイプのものを使用することができる。レーザトラッカ10は、そのプローブの角度的傾斜を検出することができる。例えば、プローブ110のロール角、ピッチ角及びヨー角を検知し時間の関数として記録することができる。記録された角度は、パターンを求めるべく解析することができる。
【0061】
図4A〜
図4Cに示したのは、トラッカ10のカメラシステムを通じ認識されるジェスチャパターンを、オペレータが送ることが可能な検知手段である。まず、
図4Aでは、再帰反射ターゲット26の動きがカメラ52で観察されている。カメラ52により検知されたターゲット26の角度位置は時間の関数として記録され、記録された角度は後にパターンを求めるべく解析される。ターゲット26の角度的な動きに追従するには一方のカメラだけでよいが、カメラがもう1台あればそのターゲット26までの距離を算出することができる。光源54(省略可)でターゲット26を照明することにより、背景画像中に埋もれたターゲットをより容易に識別することができる。更に、光源54をパルス発光させることで、ターゲット識別をより容易にすることができる。
【0062】
次に、
図4Bでは、再帰反射ターゲット26の動きがカメラ52で観察されている。カメラ52により検知されたターゲット26の角度位置は記録され、三角測量の原理に従いターゲット26までの距離が時間の関数として算出される。求まった距離は、後に、パターンを求めるべく解析される。光源54(省略可)でターゲット26を照明するようにしてもよい。
【0063】
また、
図4Cでは、固定保持されている再帰反射ターゲット26の位置がカメラ52で観察されている。レーザトラッカ10はターゲット26の三次元座標を計測する。計測対象空間内の個別位置に特別の意味合いを割り当てておけば、その位置を以てコマンドとすることができる。例えば、後述するコマンドタブレットを相応の三次元位置に配置すればよい。
【0064】
図5A〜
図5Dに示したのは、トラッカ10のカメラシステムを通じ認識されるジェスチャパターンを、オペレータが送ることが可能な検知手段、特にアクティブ光源を利用したものである。まず、
図5Aでは、アクティブ再帰反射ターゲット120がカメラ52で観察されている。アクティブ再帰反射ターゲット120は、再帰反射ターゲット126と、その上に実装された光源122及び制御ボタン124とを備え、そのボタン124の操作で光源122をオンオフさせることが可能な構成である。オペレータは、ボタン124を所定パターンに従いオンオフさせることで、光源122をそのパターンに従い発光させることができる。その発光パターンは、カメラ52により検知されトラッカ10により解析される。
【0065】
図5Aのそれに代替する動作モードとしては、コマンドのジェスチャをしている間(例えば左右方向や上下方向に動かしている間)だけ、オペレータが制御ボタン124を押し続ける、というモードがある。ジェスチャをしている間のみボタン124が押され続けるので、レーザトラッカ10によるジェスチャの認識及び解析(パーシング)をより単純な動作で実行することができる。こうしてボタン124が押され続けるモードでもそうでないモードでも、トラッカ10側は、様々な形態で動きのパターンを捉えることができる。(1)まず、カメラ52を光源122の動きに追従させることができる。(2)カメラ52を(例えば光源54によって照明されている)再帰反射ターゲット126の動きに追従させることができる。(3)或いは、トラッカ10の追尾計測システムをターゲット126の動きに追従させることができる。加えて、トラッカ10に対しコマンドを発行すべくオペレータがボタン124を押下・解放させてLED輻射光を経時パターン的に発光させているときに、計測データを収集すべくトラッカ10をターゲット126の動きに追従させることもできる。
【0066】
次に、
図5Bでは六自由度プローブ130上の光源132がカメラ52で観察されている。六自由度プローブ130は、再帰反射ターゲット136、光源132及び制御ボタン134を備えている。オペレータは、所定の形態に従い制御ボタン134をオンオフすることで、相応のパターンに従い光源132を発光させることができる。そのパターンは、カメラ54で検知されレーザトラッカ10により解析される。
【0067】
図5Bのそれに代替する動作モードとしては、コマンドのジェスチャをしている間(例えば左右方向や上下方向に動かしている間又は回動させている間)だけ、オペレータが制御ボタン134を押し続ける、というモードがある。ジェスチャをしている間のみボタン134が押され続けるので、レーザトラッカ10によるジェスチャの認識及び解析をより単純な動作で実行することができる。また、トラッカ10側は、様々な形態で動きのパターンを捉えることができる。(1)まず、カメラ52を光源132の動きに追従させることができる。(2)カメラ52を(例えば光源54によって照明されている)再帰反射ターゲット136の動きに追従させることができる。(3)或いは、トラッカ10の追尾計測システムを六自由度プローブ130の動き又は回動に追従させることができる。
【0068】
図5A及び
図5Bのモードは、特定の位置を指し示すのにも使用することができる。例えば、アクティブ再帰反射ターゲット120の球面上の一点又は六自由度プローブ130の球面上の一点を計測対象物に押しつけることで、位置を指し示すことができる。カメラ52側ではその点の位置を判別することができる。更に、計測対象空間内の個別位置に特別の意味合いを割り当てることができる。例えば、
図12を参照して後述するコマンドタブレットを相応の三次元位置に配置する場合である。
【0069】
また、
図5Cではワンド140上の光源142がカメラ52で観察されている。ワンド140は光源142及び制御ボタン144を備えている。オペレータは、所定の形態に従い制御ボタン144をオンオフすることで、相応の経時パターンに従い光源142を発光させることができる。そのパターンは、カメラ54で検知されレーザトラッカ10により解析される。
【0070】
そして、
図5Dではワンド140上の光源142がカメラ52で観察されている。オペレータは、ワンド140上の制御ボタン144を押して光源142を連続的に発光させる。オペレータがワンド140を任意方向に動かすと、カメラ52でワンド140の動きが記録され、そのパターンがレーザトラッカ10で解析される。横断方向(左右方向及び上下方向)の動きが肝要で動径方向の動きが肝要でないパターンの場合、使用するカメラ52は1個でよい。
【0071】
このように、レーザトラッカ10には、オペレータが再帰反射ターゲット26、六自由度プローブ110,130、アクティブ再帰反射ターゲット120又はワンド140を使用し発生させる空間位置、空間パターン及び経時パターンを、検出する機能がある。それら空間的乃至経時的なパターンのことを総称してジェスチャと呼ぶ。
図3A〜
図3E、
図4A〜
図4C及び
図5A〜
図5Dに示した検知装置及びモードは具体例であり、本発明の技術的範囲を制限するものと理解されるべきではない。
【0072】
図6に、ジェスチャコマンドを発行及び実行する際オペレータ及びレーザトラッカ10により実行される諸ステップをフローチャート200により示す。ステップ210では、トラッカ10が継続的にコマンドをスキャンする。言い換えれば、トラッカ10は、
図3A〜
図3E、
図4A〜
図4C及び
図5A〜
図5Dに示した検知モードのうち一通り又は複数通りを使用し、位置、空間パターン及び経時パターンを記録する。ステップ220ではオペレータがコマンドを発行する。即ち、再帰反射ターゲット26、六自由度プローブ110,130、アクティブ再帰反射ターゲット120、ワンド140等の物体側で相応の動作を実行することによりジェスチャを発生させる。相応の動作とは、例えば、特定の絶対座標への移動や、特定の空間乃至経時パターンを生成する動きを、伴うもののことである。
【0073】
ステップ230では、オペレータにより発行されたばかりのコマンドをレーザトラッカ10が捉え解析する。コマンドを捉える動作は、移動物体から来る空間的及び経時的情報を検知及び記録することで実行する。コマンドを解析する動作は、例えばトラッカ10に組み込まれている情報処理能力を使用することで実行させる。その際には、データ流を相応のサブユニット群に分割し、そのサブユニットにより形成されるパターンをあるアルゴリズムに従い識別する。使用できる諸種アルゴリズムについては後に説明する。
【0074】
ステップ240では、コマンドを受け取った旨、レーザトラッカがアクノリッジ(確認通知)を発する。このアクノリッジは、例えば、トラッカ上に配置されている光源を閃光させることにより発する。アクノリッジは、コマンドが明瞭に捕捉されたか、取り違えられたか、不完全か、ある種の理由により実行できないか等に応じ、幾通りかの形態をとりうる。これら様々な条件それぞれに係る信号は様々な形態で発行することができる。例えば、光の色を違える、閃光パターンを違える、閃光時間を違える等の形態である。可聴信号をフィードバックとして使用することもできる。
【0075】
ステップ250では、レーザトラッカ10が、コマンドが取り違えられているか否かをチェックする。即ち、受け取ったコマンドの意味が不明確であるか否かをチェックする。コマンドが取り違えられている場合、動作はステップ210に戻り、トラッカ10によるコマンドのスキャンが継続される。それ以外の場合はステップ260に移行する。ステップ260では、トラッカ10が、コマンドが不完全であるか否かをチェックする。即ち、コマンドを全面的に特定するのに更なる情報が必要か否かをチェックする。コマンドが不完全な場合、動作はステップ210に戻り、トラッカ10によるコマンドのスキャンが継続される。それ以外の場合はステップ270に移行する。
【0076】
ステップ270では、コマンドで求められた動作全てをレーザトラッカ10が実行する。場合によっては、その動作の実行に、トラッカ側及びオペレータ側を併せ複数個のステップが必要になることもある。そうした状況の例については後に説明する。ステップ280では、計測が完了した旨の信号をトラッカ10が発行する。その後、動作はステップ210に戻り、トラッカ10によるコマンドのスキャンが継続される。
【0077】
図7に、オペレータがコマンドを発行するステップ220を示す。このステップ220は、プロローグに係るステップ222、指令に係るステップ224及びエピローグに係るステップ226の三ステップを含んでいる。プロローグ及びエピローグは省略可能である。コマンド中の指令部分は、コマンドのうち従うべき指令を搬送する部分である。コマンドのうちプロローグ部分は、レーザトラッカに対し、コマンドが始まっていること及び指令がまもなく与えられることを指し示している。コマンドのうちエピローグ部分は、トラッカに対し、コマンドが終わりであることを指し示している。
【0078】
図8〜
図10に、一群のコマンド及びそれに対応するジェスチャ(「例1ジェスチャ」「例2ジェスチャ」の二例)を示す。図中の最左列はコマンドの名称例を表している。これらのコマンドのうち幾つかはFARO(登録商標)CAM2ソフトウェア由来のものである。他の幾つかは他のソフトウェア、例えばFARO(登録商標)レーザトラッカに実装されているSMX(登録商標)Insightソフトウェア乃至Utilitiesソフトウェアに由来のものである。これは例示に過ぎず、更に他のソフトウェアからコマンドを採ることや、必要に応じ簡単に生成することもできる。また、図中の第2列は、CAM2ソフトウェアにおけるソフトウェアショートカット(利用できる場合)を表している。オペレータは、キーボード上でこのソフトウェアショートカットを押すことにより、対応するコマンドを実行させることができる。図中の第3列及び第4列は、特定のコマンドを表現するのに使用されうる空間パターンの例を表している。こうした二次元的な空間パターンは、例えば
図3A、
図4A又は
図5Dに示した手法で検知することができる。
【0079】
図8〜
図10中の第3列及び第4列では、個々のジェスチャが、その始点を「・」、主点を「→」とする形態で表されている。図中の第3列に示したジェスチャは単純な形状、即ち円形、三角形又は正方形になっている。また、同列に記載されている28通りの形状は、その向き及び始点で互いに区別されている。これに対して、図中の第4列に示されている形状は、実行すべきコマンドを示唆する形状となっている。第3列に示されている形状の主たる長所は、コンピュータ側でコマンドとして認識及び解釈するのが容易な点にある。この点については後に詳細に説明する。第4列に示されている形状の主たる長所は、オペレータが覚えやすいことである。
【0081】
図12にコマンドタブレットの一例300を示す。このタブレット300は、オペレータによって、計測対象位置のそばにある都合よい場所まで運搬される。タブレット300は、例えば、帳面以上のサイズを有する堅固な素材で形成しておく。オペレータは、タブレット300を適当な面上に配置し、種々の手段を用いてその場所に固定する。使用できる手段としては、テープ、磁石、熱接着剤、鋲、フックアンドループ式ファスナ等がある。オペレータは、再帰反射ターゲット26を基準位置310、312及び314に接触させることにより、レーザトラッカ10の座標系におけるタブレット300の位置を画定する。環境次第では、複数個のコマンドタブレットを併用することも可能である。コマンドタブレットの位置を求める手法については後に例示説明する。
【0082】
コマンドタブレットは複数個の正方形に区分することができる。例えば、
図8〜
図10に例示するコマンドタブレット300では、基準位置310、312及び314に係る正方形の他、コマンドに係る正方形、ターゲットタイプに係る正方形、ネストタイプに係る正方形、方向に係る正方形及び数字に係る正方形が設けられている。このタブレット300における配置及びその内容は例示に過ぎず、コマンドタブレットは様々な形態で効果的に設計することができる。個々のジョブ毎にカスタムコマンドタブレットを設計することも可能である。
【0083】
レーザトラッカ10にコマンドを送る際、オペレータは、コマンドタブレット300上にある相応の正方形内に再帰反射ターゲットを接触させることでジェスチャに代えることができる。即ち、オペレータが正方形内に再帰反射ターゲットを接触させる動作はフローチャート200中のステップ220に対応している。また、この動作の検知は、例えば
図3C又は
図4Cに示した手順により実行することができる。複数個の数字からなる数字列を送りたい場合、例えば「3.50」を送りたい場合には、正方形「3」、正方形「.」、正方形「5」、正方形「0」の順でターゲットを正方形に接触させればよい。後述する通り、正方形を読み取るようトラッカに指示する手法は幾通りかある。例えば、所定の時間(例えば2秒)以上待つ手法である。トラッカは、所定時間が経過した時点で、その正方形を読み取ったことを示す信号を、光源を閃光させること等で発する。数字列全体を送り終えた後、オペレータは、所定手法に従い数字列の終了を通知することができる。例えば、基準位置のうち所定のいずれかにターゲットを接触させることで数字列の終了を通知する。
【0084】
コマンドタブレット300は、レーザトラッカではなく多関節腕型CMM(座標計測機)と併用することもできる。多関節腕型CMMは複数個のセグメントを連結した構成を有するものであり、その一端が固定ベースに連結される一方、他端にはプローブ、スキャナ又はセンサが実装・装着される。多関節腕型CMMの例としては、特許文献34(発明者:Raab et al.,この参照を以て本願に繰り入れる)及び特許文献35(発明者:Raab et al.,この参照を以て本願に繰り入れる)に記載のものがある。多関節腕型CMMを使用する場合は、レーザトラッカを使用する場合にタブレット300上の正方形に再帰反射ターゲットを接触させるのと同じ要領で、タブレット300の正方形に例えばプローブチップを接触させる。また、多関節腕型CMMは、レーザトラッカにより計測される空間に比べかなり狭い計測対象空間に亘り計測を実行するのが普通である。そのため、多関節腕型CMMを使用する場合、一般に、都合のよい場所を探してタブレット300を配置することがより容易になる。タブレット300に含まれるコマンドのうち幾つかは、レーザトラッカ向けコマンドと異なる多関節腕型CMM向けコマンドへと変更されることとなろう。コマンドタブレットを多関節腕型CMMと併用する手法のよいところは、プローブを外してコンピュータへと移動しコマンドを入力して多関節腕型CMMに戻る、といった動作にまつわるオペレータの不便さ及び時間損失をなくせる点にある。
【0085】
図13〜
図16にジェスチャの使用形態を四例示す。まず、
図13に示したのは、レーザトラッカ10向けにジェスチャで基準点を設定する手順である。先に説明した通り、オートリセットがレーザトラッカで採りうるオプションモードであることを想起されたい。オートリセットモードに設定されているレーザトラッカでは、レーザビームがブレークするとそのビームが基準点へと差し向けられることとなる。基準点として一般に使用されるのはそのレーザトラッカのホームポジション、即ちトラッカ本体に恒久実装されている磁気ネストの位置である。或いは、作業空間に近い場所に基準点を設定してもよい。そうすれば、レーザビームがブレークしたときにオペレータがレーザトラッカへと歩いて戻る必要がなくなる。この機能は、通常、そのレーザトラッカにおける計測実行手段としてADMではなく干渉計が使用されている場合に特に重要になる。
【0086】
図13では、ジェスチャを通じフローチャート400に示した動作を実行することで基準点が設定される。ステップ420では、
図10中の「Set Reference Point」(基準点設定)欄に係るパターンに従いオペレータがターゲットを動かす。そのターゲットとしては、例えば
図3Aの如く再帰反射ターゲット26を使用する。ステップ430では、レーザトラッカ10が、コマンドを認識及び解析した上で、そのコマンドを受領したことを示すアクノリッジを発する。このアクノリッジは、例えば、トラッカ前面パネル上の赤色光源を2回閃光させる形態で発せられる。無論、その他の種類のフィードバック、例えば別の色又はパターンでの発光や可聴信号によるアクノリッジでもよい。ステップ440では、オペレータが、ターゲット26例えばSMRを、基準位置を定める磁気ネスト上に配置する。トラッカ10は、SMR26の位置情報を継続的にモニタし、静止状態であるか否かを調べる。SMR26が5秒以上に亘り静止している場合、トラッカ10は、オペレータがSMR26をネスト内に故意に配置したものと認識して計測を開始する。計測が実行されている間は、例えばトラッカパネル上の赤色光源が点灯される。計測が完了するとこの赤色光源は消灯される。
【0087】
図14では、フローチャート500に示した動作を実行することで、三次元空間におけるコマンドタブレット300の位置が画定される。先に説明した通り、タブレット300上に三通りの基準位置310、312及び314があることを想起されたい。再帰反射ターゲットをこれら三通りの位置に接触させることで、三次元空間におけるタブレット300の位置を指定することができる。ステップ510では、
図9中の「Initialize Command Tablet」(コマンドタブレット初期化)欄に係るパターンに従いオペレータがターゲットを動かす。そのターゲットとしては、
図3Aの如く再帰反射ターゲット26例えばSMRを使用することができる。ステップ520では、レーザトラッカ10が、コマンドを認識及び解析した上で、赤色光源を2回閃光させることによりコマンド受領を示すアクノリッジを発する。ステップ530では、オペレータが、3個ある基準位置のうち1個の上にSMR26を配置する。トラッカ10は、SMR26の位置情報を継続的にモニタし、静止状態であるか否かを調べる。SMR26が5秒以上に亘り静止している場合、ステップ540にてトラッカ10がSMR26の位置を計測する。ステップ550では、オペレータが、3個ある基準位置のうち第2のものの上にSMR26を配置する。SMR26が5秒以上に亘り静止している場合、ステップ560にてトラッカ10がSMR26の位置を計測する。ステップ570では、オペレータが、3個ある基準位置のうち第3のものの上にSMR26を配置する。SMR26が5秒以上に亘り静止している場合、ステップ580にてトラッカ10がSMR26の位置を計測する。三通りある基準位置それぞれが三次元的に判明したので、トラッカ10は、三対の基準位置(三通りの基準位置の組合せ)間の距離を算出することができる。ステップ590では、基準位置間距離の算出結果を既知の基準位置間距離と比較することにより、トラッカ10が誤差を調べる。誤差が過度に大きい場合、ステップ595にて信号エラーが通知される。この通知には、例えば、赤色光源の5秒点灯等の形態が使用される。
【0088】
図15では、ジェスチャを通じフローチャート600に示した動作を実行することで円が計測される。ステップ610では、
図8中の「Measure a Circle」(円計測)欄に係るパターンに従いオペレータがターゲットを動かす。ターゲットとしては、例えば
図3Aの如く再帰反射ターゲット26を使用する。ステップ620では、レーザトラッカ10が、コマンドを認識及び解析した上で、赤色光源を2回閃光させることによりコマンド受領を示すアクノリッジを発する。ステップ630では、オペレータがターゲット26例えばSMRをワークピース上に配置する。例えば、円形の孔の内側を計測しようとしている場合、オペレータは、SMR26をその孔の内側上の部分に配置する。トラッカ10は、SMR26の位置情報を継続的にモニタし、静止状態であるか否かを調べる。SMR26が5秒以上に亘り静止している場合、ステップ640にて赤色光源を点灯させトラッカ10によるSMR位置の連続計測を開始する。ステップ650では、注目している円に沿ってオペレータがターゲット26を動かす。十分なポイント数に亘りデータが集まったら、ステップ660にて、オペレータが計測対象物表面からSMR26を引き離す。こうしたSMR26の動きは計測完了を表している。また、SMR26で内径を計測しているのかそれとも外径を計測しているのかもわかるので、アプリケーションソフトウェア側で、SMR26の半径を勘案して距離オフセットを除去することができる。ステップ670では、十分な計測データが集まったことを示すべくトラッカ10が赤色光源を2回閃光させる。
【0089】
図16では、レーザトラッカ10からのレーザビームがブレークした後にフローチャート700に示した動作を実行することで再帰反射ターゲットを捕捉させる。ステップ710では、
図10中の「Acquire SMR」(SMR捕捉)欄に係るパターンに従いオペレータがターゲットを動かす。ターゲットとしては、例えば
図4Aの如く再帰反射ターゲット26を使用する。この手順の冒頭では、SMRが捕捉されていないので、
図3A〜
図3Eに示したモードは使用することができない。それに代え、カメラ52及び光源54を使用しターゲット26の位置を特定する。ステップ720では、レーザトラッカ10が、コマンドを認識及び解析した上で、赤色光源を2回閃光させることによりコマンド受領を示すアクノリッジを発する。同時に、トラッカ10はレーザビーム46をターゲット26の中心に向けて駆動する。ステップ730では、トラッカ10が、ビーム46がターゲット26により捕捉されたか否かをチェックする。大抵は、ビーム46はターゲット26の中心に十分近い位置まで駆動され、トラッカ内位置検出器のアクティブエリア内に到達している。この場合、トラッカサーボシステムは、位置検出器の中心に近づく方向へとビーム46を駆動する。これにより、ビーム46がターゲット26の中心にも近づく。その後は通常の追尾が実行される。ビーム46がターゲット26の中心に十分近い位置まで駆動されておらずトラッカ内位置検出器に到達していない場合は、例えばステップ740に示すスパイラルサーチを実行する。スパイラルサーチを実行する際、トラッカ10は、まずビーム46を開始時方向に向けた上で、徐々に拡がっていくスパイラルに従いビーム方向を変化させる。スパイラルサーチを実行するか否かは、トラッカ10又はそれと併用されるアプリケーションソフトウェアでオプションとして設定することができる。他のオプション、特に迅速に動くターゲットに適したものとしては、ビーム46がターゲット26によって捕捉されるまで又はタイムアウトを迎えるまでステップ720を反復する、というものがある。
【0090】
図7を参照して先に説明した通り、オペレータは、プロローグ(省略可)、指令及びエピローグ(省略可)の三段階を使用しコマンドを発行する。トラッカ10が常時データを解析していて所望パターンが生じたときに速やかに応答できる場合、プロローグ及びエピローグ抜きで指令のみを使用することが可能である。同様に、オペレータがコマンドタブレット300上の相応位置に触れている場合、プロローグやエピローグがなくともトラッカにとりコマンドは明らかになる。これに対し、トラッカによる解析が十分に速くなく、オペレータによって生成されたパターンに対し速やかに応答することができない場合や、オペレータがコマンドパターンを無意識に発生させる可能性がある場合は、プロローグ、エピローグ又はその双方を使用する必要があろう。
【0091】
単純なプロローグやエピローグの例としては、ターゲット例えば
図3A〜
図3E、
図4A〜
図4C及び
図5A〜
図5Dに示したそれの動きを一時停止させる、というものがある。例えば、オペレータが、パターンの開始前に1乃至2秒に亘り動きを一時停止させ、またパターンの終了時に1乃至2秒に亘り動きを一時停止させる。このように一時停止させることにより、各ジェスチャの開始点及び終了点(それぞれ
図8〜
図10では「・」及び「→」、
図11では「●」及び「■」で表されている点)を、コンピュータ乃至トラッカ上の解析ソフトウェアで容易に認識することができるようになる。
【0092】
単純なプロローグやエピローグの例としては、更に、レーザトラッカに発するレーザビームを遮る動作及び通す動作を敏速に実行する、というものがある。例えば、オペレータが、指と指の間に隙間が生じるよう4本の指(人差し指から小指までの指)を拡げる。次いで、レーザビームを相次いで過ぎるようその指を動かすことで、ビームの遮断及び通過を4連続で発生させる。こうした経時パターン、言い換えれば「四本指サルート」は、レーザトラッカ側で速やかに認識されうる。返戻レーザ光量の経時変化に基づく検知モードについては、パッシブターゲットに関するものが
図3Dに、またアクティブターゲットに関するものが
図5A〜
図5Cに示されている。
【0093】
ジェスチャコマンドにおけるプロローグやプロローグの使用以外では、レーザトラッカによる動作の開始時にも、ある種のプロローグが必要とされる場合がある。例えば、
図13〜
図15に示した例では、コマンドが発行された後トラッカによる計測が実行される前に5秒間の待機時間がある。この待機時間の目的は、計測開始前に再帰反射ターゲットを所要位置に配置するための時間を、オペレータに与えることにある。無論、5秒という時間は任意に定めたものであり、他の相応の値に設定することもできる。更に、計測開始を通知する手段として他種のものを使用することもできる。例えば、時間遅延ではなく四本指サルートにより、計測準備完了を通知するようにしてもよい。
【0094】
アクティブターゲット例えば
図5A〜
図5Dに示したそれは、ツール製造や装置組立の分野で有用である。ツールは、他の装置を製造する際に役立つ器具の一種である。自動車製造や航空機製造の分野ではツールは厳密な仕様に従い製造される。レーザトラッカは、そうしたツールの組立及びチェックに役立つ。多くの場合、ツールの構成要素を互いに整列させることが求められる。その際、単一の再帰反射ターゲット例えばターゲット26でも、ツール構成要素を互いに且つ適正に整列させうる座標系を画定することができる。しかしながら、複雑なツールでは、このやり方を採ると何回もの繰り返し計測が必要になる。別のやり方としては、ツール構成要素上に都合複数個の再帰反射ターゲットを装着し、それらを相次いで計測する、というやり方がある。絶対距離計、カメラシステム(例えば部材52,54)等といった今日的トラッカ技術があるので、そうした迅速計測も実行することができる。しかし、ツール上に直に複数個の再帰反射ターゲットが装着されている場合、オペレータがそれら再帰反射ターゲットのうちいずれかを使用しジェスチャコマンドを生成するのは困難又は不効率である。それよりは、ワンド、例えば
図5C又は
図5Dに示したワンド140を使用する方が便利であろう。ワンドであれば、オペレータが、ツール上に装着されている再帰反射ターゲットをかき乱すことなく迅速にコマンドを発することができる。更に、そうしたワンドをハンマ又はそれに類する器具の端部に装着することで、オペレータの手をフリーにし、組立及び調整を実行することができる。場合によっては、別の再帰反射ターゲット又は六自由度プローブ、例えば
図5A及び
図5Bに示したそれが、ツール製造に際して必要になろう。光源及び制御ボタンを素のSMR又は六自由度プローブに付加することで、オペレータが、非常に柔軟な形態でコマンドを発することができるようになる。
【0095】
図5A〜
図5Dに示したアクティブターゲットは、また、装置組立に際しても有用である。最近のトレンドは、自動ツーリングアセンブリではなくレーザトラッカを用いたフレキシブルアセンブリである。トラッカ法の重要な長所は、先立つ準備があまり必要でないことである。そうした組立手法が今日現実的なものになっているのは、一つには、CADソフトウェア図面をレーザトラッカ計測結果とマッチングするソフトウェアを利用できるからである。組立対象部品の上に再帰反射ターゲットを配置し、それらターゲットをレーザトラッカで順繰りに計測した上で、「遠い」ならば赤、「より近い」なら黄、「十分近い」ならば緑、といった要領で色を使用し、組立対象部品の接近具合(組立の厳密さ)をコンピュータディスプレイ上に表示させることができる。アクティブターゲットを使用することで、オペレータは、組立プロセスが最適化されるよう、指定したターゲット(群)を計測せよとのコマンドを発することができる。
【0096】
単一の計測対象空間に複数個の再帰反射ターゲットが配置されることもしばしばである。複数個の再帰反射ターゲットを用いたツール製造及び装置組立の例としては先に説明したものがある。これらの例からは、アクティブターゲットが特に有用になり得ることがわかる。場合によっては、複数個のパッシブ再帰反射ターゲットの動きを認識できるというレーザトラッカの機能が有用になる。例えば、シートメタルスタンピングプレス等のツール固定先装置上に複数個の再帰反射ターゲットが配置されており、オペレータがその固定先装置の個別動作が済むたびにターゲットサーベイを行いたがっているとする。そのサーベイでは、例えば、ツール固定先装置の再現性をチェックするため、個々のターゲットの座標が順に計測される。初期サーベイ座標を設定するに当たりオペレータが採りうる容易なやり方としては、各再帰反射ターゲットをそのネスト外に順に持ち上げ、所定のジェスチャパターンに従いそれを動かす、というやり方がある。そのパターンを認識すると、レーザトラッカがそのネストにおける再帰反射ターゲットの座標を計測する。これは、トラッカ側カメラで広視野に亘りジェスチャパターンを認識できるためであり、オペレータは複数個の再帰反射ターゲット間で至便にスイッチすることができる。
【0097】
先に言及した通り、ジェスチャパターンを認識しそれをコマンドとして解釈する手法乃至アルゴリズムには幾通りかの種類がある。ここでは数通りの手法を示すけれども、様々な種類の手法乃至アルゴリズムがあること及びそれらが良好に稼働することも明らかである。先に説明した通り、主たる注目パターンとしては、(1)単一点絶対位置、(2)経時パターン及び(3)動きのパターンの三種類がある。単一点絶対位置を認識することは、議論の余地なく、それら三種類のなかで最も容易である。この場合、トラッカに求められるのは、計測した座標を比較し、コマンドタブレット300の表面上の座標に対し所定の公差内でそれらが一致しているか否かを調べることだけである。
【0098】
経時パターンもまた比較的特定が容易である。個別のパターンは、例えば、オンオフが繰り返された回数で構成されるほか、許容できるオンオフ時間に関する制約が課されることもある。この場合、トラッカは、オンオフ時間を記録し、所定のパターンと整合するか否かを定期的にチェックするだけでよい。トラッカに対し信号を送る形態としては、無論、光を完全に消沈させる形態以外に、光量を低減させる形態も採りうる。レーザ再帰反射光量の低減は様々な手段、例えば中性濃度フィルタ、偏向器、アイリス等を使用することで実現することができる。
【0099】
動きのパターンは、一次元的、二次元的又は三次元的に解析することができる。例えば、動径方向距離の変化は一次元的な解析で求まる。横断方向(上下左右)の動きの変化は二次元的な解析で求まる。動径方向及び横断方向に沿った寸法の変化は三次元的な解析で求まる。無論、注目寸法はレーザトラッカシステムにより同時的にモニタされる。認識及び解析動作を単純化するには、例えば、動きが発生する時間及び空間の範囲を限るようにすればよい。例えば、パターンに対し、200〜800mm(8〜32インチ;1インチ=約25mm)の範囲での動きであること及びその動きが1〜3秒間に終了することを求めればよい。横断方向の動きの場合、レーザトラッカはその動きを角度変化として検知するので、それらの角度(ラジアン単位)にターゲットまでの距離を乗じ、パターンの大きさに換算する必要がある。このように、許容できるパターンを特定の時間的範囲及び空間的範囲に制限することで、ジェスチャコマンドとしての検討対象から様々な動きを排除することができる。更に、残ったものは様々な形態で評価することができる。例えば、バッファ内にデータを一時保存しておき、それを定期的に評価することで、認識されたジェスチャパターンのうちいずれかに対する潜在的なマッチの有無を調べればよい。
図5A中の制御ボタン124を押して光源122を発光させることでジェスチャ発生を通知する場合、ジェスチャ的な動きパターンの識別が特に容易となる。即ち、コンピュータが、光源122が発光しているときに生じたパターンを記録し、そのパターンを評価して有効なジェスチャの発生有無を調べるだけでよい。オペレータが制御ボタン134を押して
図5B中の光源132を発光させる場合や、制御ボタン144を押して
図5D中の光源142を発光させる場合も、同様の手法を採ることができる。
【0100】
これら三通りの主たるパターンの他には、パッシブオブジェクトを使用すること又はそれを再帰反射器と併用することで生じるパターンもある。例えば、所定サイズを有するパッシブな赤い正方形をSMRから1インチ以内に接近させることで、特定のコマンドが発せられたことをトラッカ側カメラに認識させることができる。
【0101】
三通りある主たるパターンのうち二通りを組み合わせることも可能である。例えば、動きの速度を特定の空間パターンと組み合わせることで、第2のパターンタイプと第3のパターンタイプを組み合わせることができる。或いは、迅速な上方への動き及びそれに続くゆっくりとした回帰を伴う鋸波パターンに従い、オペレータが特定のコマンドを発生させることもできる。同様に加速も使用することができる。例えば、フリックモーションを使用し、計測対象物周りでレーザビームを特定方向に“弾く”ことができる。
【0102】
諸種パターン内で変化を付けることもできる。例えば、空間パターンの場合、小さな正方形(例えば一辺3インチ)と大きな正方形(例えば一辺24インチ)とを区別することが可能である。
【0103】
上述したアルゴリズムの手法は、
図17に示す処理システム800で実現することができる。この図の処理システム800は、トラッカ側処理ユニット810及びコンピュータ80(省略可)で構成されている。処理ユニット810は少なくとも1個のプロセッサ、例えばマイクロプロセッサ、ディジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等のデバイスを有している。その処理能力は、情報の処理及びトラッカ内プロセッサに対するコマンドの発行に使用されている。ここでは、そうしたプロセッサとして、位置検出器プロセッサ812、アジマスエンコーダプロセッサ814、ゼニスエンコーダプロセッサ816、インジケータライトプロセッサ818、ADMプロセッサ820、干渉計(IFM)プロセッサ822及びカメラプロセッサ824が設けられている。ジェスチャパターンの評価乃至解析を支援するためジェスチャプリプロセッサ826を設けることもできる。補助ユニットプロセッサ870は、処理ユニット810内の他のプロセッサに対しタイミング及びマイクロプロセッササポートを提供する。補助ユニットプロセッサ870は、デバイスバス830を介し他のプロセッサと通信する。デバイスバス830は、本件技術分野で周知の通り、データパケットを使用しトラッカ内で情報を転送する。情報処理能力は、トラッカ側センサで収集されたデータに関しDSPやFPGAが中間計算を実行する、といった形態で、処理ユニット10内に分散されている。これら中間計算の結果は補助ユニットプロセッサ870に返送される。先に説明した通り、補助ユニット70は、長いケーブルを介しレーザトラッカ10の本体に接続することも、トラッカ10が直に(且つ付加的に)コンピュータ80に接続されるようトラッカ本体内に組み込むこともできる。補助ユニットプロセッサ870は接続手段840、例えばイーサネット(登録商標)ケーブルや無線接続を介しコンピュータ80に接続することができる。補助ユニットプロセッサ870及びコンピュータ80は接続手段842,844、例えばイーサネット(登録商標)ケーブルや無線接続を介しネットワークに接続することができる。
【0104】
ジェスチャコンテンツの評価に関するセンサデータの前処理は、例えばプロセッサ812〜824で行ってもよいし、ジェスチャ前処理実行向けに構成されたプロセッサ826で行ってもよい。そのジェスチャプリプロセッサ826としては、マイクロプロセッサ、DSP、FPGA等のデバイスを使用することができる。ジェスチャプリプロセッサ826内に、ジェスチャコンテンツとして評価すべきデータが格納されるバッファを設けてもよい。前処理されたデータを最終評価のため補助ユニットに送るようにしてもよいし、ジェスチャコンテンツに関する最終評価をジェスチャプリプロセッサ826で実行するようにしてもよい。或いは、生の又は前処理されたデータをコンピュータ80に送りそこで解析させるようにしてもよい。
【0105】
ジェスチャの使用に関するこれまでの説明は専ら単一のレーザトラッカに的を絞ったものであったが、一群のレーザトラッカに対し或いはレーザトラッカと他の装置との組合せに対しジェスチャを適用するのも有益である。そのやり方の一つは、レーザトラッカのうち1台をマスタに指定し、そこから他の装置へとコマンドを送らせる、というやり方である。例えば、各トラッカで計測された距離のみに基づき三次元座標が算出される多辺(マルチラテレイション)計測を、4台一組のレーザトラッカで行うものとする。その場合、トラッカのうち1台にコマンドを与え、そこから他のトラッカにコマンドを中継させるようにすればよい。別のやり方としては、複数の装置がジェスチャに応答できるやり方がある。例えば、レーザトラッカを用い多関節腕型CMMを再配置するシステムを考える。こうしたシステムについては、例えば特許文献36(発明者:Raab,この参照を以て本願に繰り入れる)に記載がある。このシステムでは、まず、レーザトラッカをマスタに指定して再配置プロセスを実行する。再配置プロセスでは、オペレータがトラッカにジェスチャコマンドを送り、そのトラッカが多関節腕型CMMに相応のコマンドを送る。再配置プロセスが終了した後は、オペレータが、上述の要領に従い、コマンドタブレットを用いて多関節腕型CMMにジェスチャコマンドを送る。
【0106】
図19に、
図3A〜
図3B、
図4A〜
図4B及び
図5Aを参照しての説明に従いジェスチャによるコマンドをレーザトラッカに送る際に実行される手順1900を示す。ステップ1910では、コマンド・空間パターン間の対応関係ルールを準備する。ステップ1920では、ユーザが、多々あるコマンドのなかから使用するコマンドを選定する。ステップ1930では、ユーザが、所望のコマンドに対応する空間パターンに従い再帰反射器を動かす。空間パターンは横断方向でも動径方向でもよい。ステップ1940では、レーザトラッカから再帰反射器へと光を投射する。この光は、レーザトラッカの光軸に沿って輻射される光ビームでもよいし、レーザトラッカ側に設けられているカメラのそばにあるLEDが輻射する光でもよい。ステップ1950では、再帰反射器からレーザトラッカへと光が反射される。ステップ1960ではその反射光を検知する。この検知は、トラッカ側カメラに備わる感光アレイで行ってもよいし、トラッカ側位置検出器で行ってもよいし、トラッカ側距離計で行ってもよい。ステップ1970では、対応関係ルールに基づきコマンドを判別する。ステップ1980ではそのコマンドを実行する。
【0107】
図20に、
図3C、
図4C及び
図5Aを参照しての説明に従いジェスチャによるコマンドをレーザトラッカに送る際に実行される手順2000を示す。ステップ2010では、コマンド・三次元位置間の対応関係ルールを準備する。ステップ2020では、ユーザが、多々あるコマンドのなかから使用するコマンドを選定する。ステップ2030では、ユーザが、所望のコマンドに対応する位置へと再帰反射器を動かす(例えば再帰反射ターゲットをコマンドタブレットに接触させる)。ステップ2040では、レーザトラッカから再帰反射器へと光を投射する。この光は、レーザトラッカの光軸に沿って輻射される光ビームでもよいし、レーザトラッカ側に設けられているカメラのそばにあるLEDが輻射する光でもよい。ステップ2050では、再帰反射器からレーザトラッカへと光が反射される。ステップ2060ではその反射光を検知する。この検知は、トラッカ側カメラに備わる感光アレイで行ってもよいし、トラッカ側位置検出器で行ってもよいし、トラッカ側距離計で行ってもよい。ステップ2070では、対応関係ルールに基づきコマンドを判別する。ステップ2080ではそのコマンドを実行する。
【0108】
図21に、
図3D及び
図5Aを参照しての説明に従いジェスチャによるコマンドをレーザトラッカに送る際に実行される手順2100を示す。ステップ2110では、コマンド・経時パターン間の対応関係ルールを準備する。ステップ2120では、ユーザが、多々あるコマンドのなかから使用するコマンドを選定する。ステップ2130では、レーザトラッカから再帰反射器へと光を投射する。この光は、レーザトラッカの光軸に沿って輻射される光ビームでもよいし、レーザトラッカ側に設けられているカメラのそばにあるLEDが輻射する光でもよい。ステップ2140では、再帰反射器からレーザトラッカへと光が反射される。ステップ2150ではその反射光を検知する。この検知は、トラッカ側カメラに備わる感光アレイで行ってもよいし、トラッカ側位置検出器で行ってもよいし、トラッカ側距離計で行ってもよい。ステップ2160では、ユーザが、レーザトラッカ側のセンサにより受光される光量をある経時パターンに従い変動させる。そうした経時パターンは、後述の通り、光ビームを遮ったり通したりすることで容易に発生させることができる。ステップ2170では、対応関係ルールに基づきコマンドを判別する。ステップ2180ではそのコマンドを実行する。
【0109】
図22に、
図3E及び
図5Bを参照しての説明に従いジェスチャによるコマンドを六自由度レーザトラッカに送る際に実行される手順2200を示す。ステップ2210では、コマンドと六自由度ターゲットの姿勢との間の対応関係ルールを準備する。ステップ2220では、ユーザが、多々あるコマンドのなかから使用するコマンドを選定する。ステップ2230では、六自由度レーザトラッカを使用し、第1姿勢における六自由度ターゲットの座標のうち一通り又は複数通りを計測する。姿勢の座標(自由度)としては、並進座標が例えばx,y,zの三通りあり、方向座標が例えばロール,ピッチ,ヨーの三通りある。ステップ2240では、ユーザが、六自由度ターゲットの姿勢を構成する六通りの座標のうち上記一通り又は複数通りの座標を変化させる。ステップ2250では、ユーザがステップ2240を完遂することで生じた姿勢即ち第2姿勢に関し上記一通り又は複数通りの座標を計測する。ステップ2260では、対応関係ルールに基づきコマンドを判別する。ステップ2270ではそのコマンドを実行する。
【0110】
図23に、レーザトラッカからのレーザビームをターゲットに向けそのターゲット上にロックさせるコマンドをジェスチャによりレーザトラッカに送る際に実行される手順2300を示す。ステップ2310では、再帰反射器上に光を投射する。投射する光は、例えば、レーザトラッカ側に設けられているカメラのそばにあるLEDが輻射する光である。ステップ2320では、ユーザが、所定の空間パターンに従い再帰反射器を動かす。ステップ2330では、再帰反射器からレーザトラッカへと光が反射される。ステップ2340ではその反射光を検知する。この検知は、例えば、トラッカ側カメラに備わる感光アレイで行う。ステップ2350では、対応関係ルールに基づきコマンドを判別する。ステップ2360では、トラッカから再帰反射器へと光ビームを差し向ける。ステップ2370では、トラッカからのレーザビームを再帰反射器上にロックさせる。
【0111】
図24に、レーザトラッカからのレーザビームをターゲットに向けてそのターゲット上にロックさせるコマンドをジェスチャによりレーザトラッカに送る際に実行される手順2400を示す。ステップ2410では、再帰反射器上に光を投射する。投射する光は、例えば、レーザトラッカ側に設けられているカメラのそばにあるLEDが輻射する光である。ステップ2420では、再帰反射器からレーザトラッカへと光が反射される。ステップ2430ではその反射光を検知する。この検知は、例えば、トラッカ側カメラに備わる感光アレイで行う。ステップ2440では、上述した要領に従い所定の経時パターンを発生させる。ステップ2450では、対応関係ルールに基づきコマンドを判別する。ステップ2460では、トラッカから再帰反射器へと光ビームを差し向ける。ステップ2470では、トラッカからのレーザビームを再帰反射器上にロックさせる。
【0112】
図25に、レーザトラッカからのレーザビームをターゲットに向けてそのターゲット上にロックさせるコマンドをジェスチャによりレーザトラッカに送る際に実行される手順2500を示す。ステップ2510では、再帰反射器上に光を投射する。投射する光は、例えば、レーザトラッカ側に設けられているカメラのそばにあるLEDが輻射する光である。ステップ2520では、第1姿勢における六自由度ターゲットの座標のうち一通り又は複数通りを計測する。上述した通り、姿勢の座標(自由度)としては、三通りの並進自由度及び三通りの方向自由度がある。ステップ2530では、第1姿勢の座標のうち一通り又は複数通りの座標を変化させる。ステップ2540では、六自由度プローブの座標のうち上記一通り又は複数通りを変化させることで生じた姿勢即ち第2姿勢に関し上記一通り又は複数通りの座標を計測する。ステップ2550では、対応関係ルールが満たされているか否かを判別する。ステップ2560では、トラッカから再帰反射器へと光ビームを差し向ける。ステップ2570では、トラッカからのレーザビームを再帰反射器上にロックさせる。
【0113】
図26A,
図26B及び
図27A,
図27Bに、レーザトラッカ10により認識されコマンドとして実行されるジェスチャパターンをオペレータが送ることが可能なレーザトラッカの機械的構成(
図26A,
図26B)及び光学的構成(
図27A,
図27B)を示す。まず、
図26A及び
図26Bに示す構成のレーザトラッカ10では、オペレータがジェスチャパターンを機械的な手段で送り、レーザトラッカ10がその角度エンコーダシステムを使用しそれを解釈する。エンコーダの角度出力は修正無しで使用される。或いは、エンコーダによって計測された角度運動が、トラッカ内モータによりその軸に加えられたトルクの方向及び大きさと比較され、トラッカ内モータがもたらした動きと外部者がもたらした動きとが弁別され、外部者が加えたトルクの方向及び大きさが算出される。
図26Aに示すレーザトラッカ10では、そのペイロード15が、オペレータによってゼニス機械回動軸18周りで回動されている。
図26Bに示すレーザトラッカ10では、そのゼニスキャリッジ14が、オペレータによってアジマス機械回動軸20周りで回動されている。ペイロード15乃至ゼニスキャリッジ14をパターンに従い回動させると、その角度運動がアジマス及びゼニス角度エンコーダによって計測され、外部コンピュータ上のソフトウェア又はレーザトラッカ内のプロセッサ/メモリにより記録される。角度エンコーダ出力は、時間の関数として記録すること及び解析してパターンを見つけ出すことが可能な二次元角度マップを形成する。その角度パターンにより表されるジェスチャが、レーザトラッカ10により認識されコマンドとして実行される。
図26A及び
図26Bに示した手法と前述した手法との間の違いは、
図26A及び
図26Bではオペレータが再帰反射器のそばではなくトラッカのそばにいる点にある。従って、
図26A及び
図26Bに示した手法を前述した手法と組み合わせることにより、オペレータは、計測対象空間内の様々な場所から、トラッカに対しジェスチャコマンドを送ることができる。
【0114】
第1の例としては、30°以上の角度に亘りオペレータがペイロード15を2回回動させることを以て、トラッカからの光ビームの現在位置の右に位置している至近の再帰反射器を特定しその上にロックせよ、とのコマンドとすることができる。第2の例としては、−90°から+90°までのアジマス角に亘りアジマス軸周りでゼニスキャリッジ14を回動させることを以て、所与視野内の全再帰反射ターゲットを識別して各ターゲットのサーベイを始めよ、とのコマンドとすることができる。第3の例としては、オペレータがペイロード15及びゼニスキャリッジ14を同時に回動させることを以て、その回動の方向にある至近の再帰反射器にロックしその三次元座標を計測せよ、とのコマンドとすることができる。第4の例としては、ペイロード15及びゼニスキャリッジ14をオペレータがある種の注目領域特定パターン(例えば円形パターン)に従い動かすことを以て、注目領域を規定するコマンドにすることができる。注目領域としては、例えば、一群の再帰反射器に関しサーベイが実行される領域を規定することができる。ペイロード15及びゼニスキャリッジ14の回動に関し空間パターン及び経時パターンを組み合わせることにより、多様なコマンドを規定することができる。ペイロード15及びゼニスキャリッジ14の回動に関連する特性としては、更に、絶対角、差分角、印加トルクレベル、角速度、角加速度及びそれに類する経時量がある。上述した差分回動運動に加え、絶対回動も使用することができる。例えば、ペイロードを天頂、天底、先に識別した再帰反射器位置その他の重要点に向けることを以て、コマンドを送ることができる。
【0115】
次に、
図27A及び
図27Bに示す構成のレーザトラッカ10では、オペレータが光学的手段でジェスチャパターンを送り、トラッカ10がそのカメラシステムを用いてそのジェスチャパターンを認識する。
図27Aに示すレーザトラッカ10では、その光源54に発する光がオペレータによりもたらされた遮蔽物64によって遮られており、またその遮蔽物64がトラッカ10の比較的近くに配置されている。遮蔽物64は、トラッカ10に発するレーザビーム46(図示せず)も遮蔽している。この場合、光源54に発する光のうちかなりの量が遮蔽物64によって散乱され、カメラ52のレンズを通り、カメラ内感光アレイに到達する。その結果、かなり大きな光スポットがカメラ面上に現れる。遮蔽物64がカメラ52のかなり近くに配置されているので、感光アレイ上における光スポットのサイズは、再帰反射ターゲット26によって感光アレイ上にもたらされる光スポットのサイズに比べかなり大きくなる。この違いがあるため、遮蔽物64によって散乱された光を再帰反射ターゲット26によって反射された光から区別することができ、トラッカ10へと反射されるビーム46の損失を、トラッカ10へと反射されるビーム46の損失をもたらす別の条件から区別することができる。カメラ52から遮蔽物64までの距離が「比較的近い」と見なせる条件はカメラ52及び光源54の特性に依存する。しかしながら、多くの場合、その遮蔽物がカメラ52から25mm以内の距離にあるのなら「比較的近い」と見なすことができ、カメラ52から1000mm超の距離にあるのならカメラ52から「比較的遠い」と見なすことができる。
【0116】
次に、
図27Bに示すレーザトラッカ10では、左側光源54からの光が遮蔽物65によって遮られているが、右側光源54からの光は遮蔽物65によって遮られていない。更に、
図27Bでは、トラッカ10から再帰反射ターゲット26を経てトラッカ10に戻るレーザビーム46が遮蔽物65によって遮られていない(但しこの手法はビーム46の光路上にターゲット26がないときにも使用できる)。この場合、左側カメラ52と右側カメラ52の間で捉える画像に違いが生じる。本件技術分野で周知の通り、理想的な再帰反射器では、入射光に対し反射光が平行になり、またその再帰反射器の対称軸について対称なオフセットが生じる。この点については特許文献6(発明者:Bridges et al.,譲受人:本願出願人,この参照を以て本願に繰り入れる)に詳細な記載がある。特にその第17カラム第45〜65行及び
図15A〜
図15Cを参照されたい。再帰反射器にこうした特性があるので、左側光源54に発しターゲット26によって反射された光は、部分的に左側カメラ52に入射するが右側カメラ52には入射しない。右側光源54に発しターゲット26によって反射された光は、部分的に右側カメラ52に入射するが左側カメラ52には入射しない。環境光によって照明された背景画像を左側カメラ52で捉えたものは、当該背景画像を右側カメラ52で捉えたものと非常に似通ったものになる。どちらのカメラも閃光スポットを捉えるが、左側カメラ52上のスポットの方が右側カメラ52上のスポットより大きくなる。従って、
図27A及び
図27Bの手法は、様々な種類のジェスチャコマンドを送るのに使用することができる。
【0117】
第1の例としては、
図27Aに示した遮蔽法を使用することで、オペレータが、自動補償を実行するよう或いはウォームアップ手順を実行するようレーザトラッカに指示することができる。様々なジェスチャパターンに従い遮蔽物64を動かすことで、様々な種類のコマンドをトラッカに送ることができる。
図27Bに示した遮蔽法では、オペレータがトラッカにジェスチャコマンドを送っている間も、SMRの計測を継続することができる。左側光源54及び左側カメラ52を遮蔽することにより、オペレータは、SMRの計測を行えとのコマンドをトラッカに送ることができる。右側光源54及び右側カメラ52を遮蔽することにより、オペレータは、次の再帰反射ターゲットに移動せよとのコマンドをトラッカに送ることができる。オペレータは、遮蔽物を前後に動かすことで、ジェスチャとして認識されるべき経時パターンを生成することができる。オペレータは、例えば、5秒間に3回ビームが遮られるよう遮蔽物64又は65を動かすパターンのジェスチャをとることで、例えば、トラッカを至近の再帰反射器にロックさせ計測を実行させることができる。これ以外にも多様な経時パターン及びコマンドを使用することができる。
【0118】
図28に、
図26A及び
図26Bを参照しての説明に従いジェスチャによるコマンドをレーザトラッカに機械的に送る手法で実行される手順2800を示す。ステップ2810では、第1角度エンコーダを有するトラッカを準備する。ステップ2820では、複数通りのコマンドそれぞれと、トラッカ構造体の一部に係る複数通りの回動パターンそれぞれと、の間の対応関係ルールを準備する。トラッカ構造体の一部、とは、例えばペイロードやゼニスキャリッジのことである。ステップ2830では、ユーザが、多々あるコマンドのなかから第1コマンドを選定する。ステップ2840では、ユーザが、第1時点と第2時点の間で、レーザトラッカ構造体の一部を、第1回動パターンに従い回動させる。第1回動パターンとは、多々ある回動パターンのなか、第1コマンドに対応するパターンのことである。ステップ2850では、第1時点・第2時点間に第1角度エンコーダから得られる第1角度計測値群を取得する。ステップ2860では、対応関係ルールに従い第1角度計測値を処理した結果に少なくとも部分的に基づき、第1コマンドを判別する。ステップ2870では、レーザトラッカが第1コマンドを実行する。
【0119】
図29に、
図27A及び
図27Bを参照しての説明に従いジェスチャによるコマンドをレーザトラッカに光学的に送る手法で実行される手順2900を示す。ステップ2910では、各コマンドと各経時パターンの間の対応関係ルールを準備する。ステップ2920では、ユーザが、多々あるコマンドのなかから第1コマンドを選定する。ステップ2930では、ユーザが、第1時点と第2時点の間で遮蔽物を第1経時パターンに従い動かす。第1経時パターンとは、多々ある経時パターンのなか、第1コマンドに対応するパターンのことである。ステップ2940では、レーザトラッカからの第1光を遮蔽物に投射する。この光は、例えば、カメラレンズのそばにあるLED照明器からの光である。ステップ2950では、第1光の一部である第2光を遮蔽物が散乱させる。ステップ2960では、第2光の一部である第3光を検知することにより第1検知データを取得する。第1検知データは、第1時点・第2時点間にレーザトラッカにより得られる。ステップ2970では、対応関係ルールに従い第1検知データを処理した結果に少なくとも部分的に基づき、第1コマンドを判別する。ステップ2980では、レーザトラッカがその第1コマンドを実行する。
【0120】
以上、好適な実施形態に関し説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく様々な変形及び置換を施すことが可能である。そこで、本発明に関するこれまでの説明が例示的且つ非限定的なものであることを了解されたい。
【0121】
従って、本願記載の諸実施形態は、あらゆる意味で例示的且つ非限定的なものである。本発明の技術的範囲は、以上の説明ではなく別紙特許請求の範囲の記載により示される。文理上特許請求の範囲から逸脱しない変更や特許請求の範囲に対して均等範囲に属する変更は、いずれも、本発明に包含されるものである。