特許第6013533号(P6013533)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013533
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】表面センサオフセット
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/008 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   G01B5/008
【請求項の数】26
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-36988(P2015-36988)
(22)【出願日】2015年2月26日
(62)【分割の表示】特願2010-516560(P2010-516560)の分割
【原出願日】2008年7月11日
(65)【公開番号】特開2015-127714(P2015-127714A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2015年2月26日
(31)【優先権主張番号】0713639.3
(32)【優先日】2007年7月13日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド スヴェン ウォレス
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ルイス グルゼシアク
【審査官】 神谷 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−506113(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/114570(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00− 5/30
G01B 21/00−21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面センサが配備される関節式ヘッドを有し、前記関節式ヘッドは、少なくとも第1および第2の軸を中心とする前記表面センサの回転を与える座標位置決め装置の操作方法であって、
前記表面センサを前記関節式ヘッドの前記第1の軸を中心とする第1の角方向に位置付けて、前記第1の角方向における前記表面センサによって加工物の第1の測定結果を取得するステップであって、前記表面センサを前記関節式ヘッドの前記第2の軸を中心として回転させるための前記関節式ヘッドの作動を含むステップと、
前記表面センサを前記第1の軸を中心とする第2の角方向に位置付けるように、前記関節式ヘッドを動かして、前記第2の角方向における前記表面センサによって前記加工物の少なくとも第2の測定結果を取得するステップであって、前記表面センサを前記関節式ヘッドの前記第2の軸を中心として回転させるための前記関節式ヘッドの作動を含み、前記第1と第2の角方向は相互に異なり、前記表面センサの想定位置からのオフセットが前記第1と第2の測定結果に対して少なくとも部分的に反する影響を有する、ステップと、
前記第1と第2の測定結果を用いて前記表面センサの前記想定位置からの前記オフセットを設定し、前記オフセットを用いて、前記表面センサによって取得されるその後の測定結果の誤差を補正するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2の角方向は前記第1の角方向と異なり、前記表面センサの想定位置からのオフセットが前記第2の測定結果に与える影響は、その第1の測定結果に対する影響と略同等かつ反対であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の角方向が前記第1の角方向の略逆であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1と第2の測定結果を取得するステップは、前記表面センサがそれ自体に関して第1の方向における測定のみを行うように、前記表面センサを移動させるステップを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1と第2の測定結果を取得するステップは、前記表面センサがそれ自体に関して第1と第2の方向において測定を行うように、加工物に関して前記表面センサを移動させるステップを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記オフセットを用いて補正するステップは、少なくとも第1の方向における前記表面センサのオフセットを判定するステップを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記オフセットを用いて補正するステップは、少なくとも第2の方向における前記表面センサのオフセットを判定するステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも第1と第2のオフセット要因を判定するステップを含むことを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のオフセット要因は、前記少なくとも第1の軸の実際の位置と想定位置との差を含み、前記第2のオフセット要因は、前記第1の軸に関する前記表面センサの実際の位置と想定位置の差を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記オフセットを用いて補正するステップは、前記第1と第2の測定結果から得られた修正済み測定結果を判定するステップを含むことを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第2の測定結果を取得するステップは、前記表面センサを異なる角方向に置いて行われる、前記第1の測定結果を取得するステップの反復であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第1と第2の測定結果の各々を取得するステップは、ある加工物の複数の地点を測定するステップを含むことを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記第1と第2の測定結果を取得するステップは、円形の形状構成物の第1と第2の測定結果を取得するステップを含むことを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記表面センサは、前記第1の軸に対して垂直な少なくとも第2の軸を中心として回転自在であることを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記第1と第2の測定結果を取得するステップは、前記第2の軸の直線位置を保持するステップを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の角方向は、前記第1の角方向と略反対であることを特徴とする請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1と第2の測定結果を取得するステップは、前記第1と第2の軸の直線位置を移動させるステップを含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記表面センサが接触プローブの接触先端であることを特徴とする請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
表面センサが配備される関節式ヘッドを有し、前記関節式ヘッドは、少なくとも第1の軸および第2の垂直軸を中心とする前記表面センサの回転を与える座標位置決め装置の操作方法であって、
前記表面センサを、前記関節式ヘッドの前記第1の軸を中心として、前記第1の軸を通って前記第2の垂直軸に平行に延びる線に関して第1の角度で位置付けて、加工物の第1の測定結果を取得するステップと、
前記関節式ヘッドを動かして、前記表面センサを、前記第1の軸を中心として、前記第1の軸を通って前記第2の垂直軸に平行に延びる線に関して第2の角度で位置付けて、前記加工物の第2の測定結果を取得するステップであって、前記第2の角度は前記第1の軸に関して前記第1の角度と反対方向であり、前記表面センサの想定位置からのオフセットが、前記第1と第2の測定結果に少なくとも部分的に反する影響を与える、ステップと、
前記第1と第2の測定結果を用いて前記表面センサの前記想定位置からの前記オフセットを設定し、前記オフセットを用いて、前記表面センサによって取得されるその後の測定結果の誤差を補正するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記第1と第2の測定結果を取得するステップは、前記表面センサを、前記第2の垂直軸を中心として回転させるステップを含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の角度は前記第1の角度と略同等であることを特徴とする請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
表面センサが配備される関節式ヘッドを有し、前記関節式ヘッドは、少なくとも第1および第2の軸を中心とする前記表面センサの回転を与える座標位置決め装置の操作方法であって、
前記表面センサを前記関節式ヘッドの前記第1の軸を中心とする第1の角方向に位置付けて、前記表面センサを直進運動させることによって加工物の第1の測定結果を取得するステップと、
前記表面センサを少なくとも前記第1の軸を中心とする第2の角方向に位置付けるように前記関節式ヘッドを動かして、前記表面センサを直進運動させることによって少なくとも前記加工物の第2の測定結果を取得するステップであって、前記第2の角方向は前記第1の角方向と異なり、前記表面センサの想定位置からのオフセットが、前記第1および少なくとも第2の測定結果に少なくとも部分的に対向する影響を与える、ステップと、
前記第1および少なくとも第2の測定結果を用いて前記表面センサの前記想定位置からの前記オフセットを設定し、前記オフセットを用いて、前記表面センサによって取得されるその後の測定結果の誤差を補正するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
前記表面センサの前記第1および少なくとも第2の角方向は、前記第1および少なくとも第2の測定結果の取得中に固定されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
少なくとも第1および第2の軸を中心として回転自在な表面センサと、前記座標位置決め装置のモータに駆動信号を送って前記表面センサの運動を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記座標位置決め装置を制御するように構成されて、請求項1から23のいずれかに記載の方法を実行することを特徴とする座標位置決め装置。
【請求項25】
少なくとも第1の軸を中心として回転自在な表面センサを有する測定システムのコントローラによって実行されたときに、前記測定システムに請求項1から23のいずれかに記載の方法を実行させる命令を含むことを特徴とするコンピュータプログラムコード。
【請求項26】
請求項25に記載のコンピュータプログラムコードが記録されていることを特徴とするコンピュータ読取可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面センサ、特に関節式プローブヘッド用センサのオフセットを補正および/または設定する技術に関し、例えば、関節式プローブヘッドに取り付けられたプローブの表面検知先端の幾何誤差を判定および/または修正するために利用できる。
【背景技術】
【0002】
工作物を作製した後に、これをCMM(座標測定機)またはその他の種類の座標位置決め装置等の位置決め装置で検査することは一般的な手順である。このような座標位置決め装置は通常、クイル(quill)を有し、その上に測定プローブが取り付けられ、測定プローブは、機械の稼動範囲内において、直交する3つの方向X,Y,Zに駆動することができる。
【0003】
特許文献1により開示される関節式プローブヘッドは、2つの回転自由度でプローブを方向付け、このプローブを工作物の表面を走査する作業に利用できるようなっている。一般に、このようなプローブヘッドは、プローブを2つの略直交する回転軸を中心として方向付けることができるようにする2つの回転駆動機構を備える。このような関節式プローブヘッドは、CMMのクイルに取り付けて、プローブ先端を5自由度(つまり、CMMにより提供される3つの線形自由度と、関節式プローブヘッドにより提供される2つの回転自由度)で位置付けることができるようにしてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,189,806号明細書
【特許文献2】国際特許出願第90/07097号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測定プローブは表面センサ部を有し、このセンサ部が工作物の表面に接触して測定データを収集する。例えば、プローブ本体またはプローブヘッド等、プローブセンサの一部に関する表面センサ部の実際の位置と推定位置との間には、違いが生じることがある。この違いは、不正確な測定データが得られる原因となりうる。この違いは、関節式ヘッドに取り付けられた測定プローブを使って取得される測定データの精度に重大な影響を与える可能性があり、それは、この違いが測定データに与える影響が測定プローブの角位置に依存しうるからである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1つの軸を中心として回転自在な表面センサを有する測定システムを使って物体を測定する方法を提案するものであり、この方法は、表面センサを第1の角方向に置いて第1の測定を行うステップと、表面センサを第2の角方向に置いて第2の測定を行うステップと、を含み、第2の角方向は、表面センサの想定位置からのオフセットが第2の測定に与える影響が第1の測定に与えるそれとは異なるような角方向である。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも第1の軸を中心として回転自在な表面センサを有する座標位置決め装置を操作する方法が提案され、この方法は、表面センサを少なくとも第1の軸を中心とする第1の角方向に置いて第1の測定結果を取得するステップと、表面センサを少なくとも第1の軸を中心とする第2の角方向に置いて少なくとも第2の測定結果を取得するステップと、を含み、第1と第2の角方向は、表面センサの想定位置からのオフセットが第1と第2の測定結果に与える影響が少なくとも部分的に反するように、相互に異なる。この方法は、第1と第2の測定結果を使ってオフセットを補正するステップを含んでいてもよい。この方法は、第1と第2の測定結果を使ってオフセットを設定するステップを含んでいてもよい。この方法は、第1と第2の測定結果を利用してオフセットを設定し、補正する両方のステップを含んでいてもよい。
【0008】
本発明は、想定位置からオフセットした表面センサにより取得される測定データに含まれた誤差を特定し、および/または、これに対処する新たな方法を提案する。誤差および/またはオフセットが分かれば、その誤差および/またはオフセットを補正するための対策を講じることが可能となる。例えば、座標位置決め装置を、誤差を基にして校正することができる。任意に、この方法は誤差を修正するステップをさらに含んでいてもよい。例えば、判定された誤差に基づいて第1および/または第2の測定結果を修正する、あるいは、その後の測定結果を修正することができる。任意に、本発明による方法は、あらゆるオフセットを設定するために利用できる。設定できれば、その後に適切な対策を講じることができる。例えば、表面センサを交換できる。
【0009】
表面センサの想定位置からのオフセットがあれば、これが第2の測定に対して、第1の測定に与える影響と少なくとも部分的に反対(opposing)の影響を与えるように、第2の角方向を設定すれば、第1と第2の測定結果を比較することによって全ての誤差を判定することが可能となる。したがって、オフセットを補正するステップには、第1と第2の測定結果を比較するステップを含めることができる。さらに、オフセットを補正するステップには、第1と第2の測定結果の差を判定するステップを含めることができる。
【0010】
当然のことながら、表面センサのオフセットが加工物の測定に与える影響は、その加工物の測定方法をはじめとする複数の要素に依存することがある。例えば、穴の内周を測定する場合、穴の中心軸を中心として表面センサを回転させることによって穴を測定すると、オフセットが原因で、穴の測定結果がその実際の大きさと異なることがある。したがって、例えば、この例においてオフセットが第1の測定結果に対して、その形状構成物(feature)を実際よりも大きく見せるという影響を有すると、このオフセットは、第2の測定結果に対しては、それが形状構成物を実際の大きさより小さく見せるという影響を有するはずである。
【0011】
しかしながら、穴に関する表面センサの角方向が一定に保たれて、表面センサが穴の周辺で直進運動されると、測定されたその穴の大きさは正しいが、測定空間(measurement volume)の中の被測定位置は、表面センサのオフセットに相対する量だけオフセットされる。当然ながら、表面センサを直進運動させるステップには、座標位置決め装置の直線軸に沿って表面センサを移動させるステップを含めることができる。したがって、例えば、この例においてオフセットが第1の測定結果に与える影響が、第1の方向にオフセットされるべき形状構成物の直進位置を測定するというものである場合、オフセットが第2の測定結果に与える影響は、その直進位置が第2の方向にオフセットされるはずである。第2の方向は2つの成分に分解でき、その内の一方が第1の方向の正反対であるはずである。したがって、影響は同等かつ反対、つまり正反対である必要はない。オフセットが少なくとも第2の測定結果に与える影響には、第1の測定結果に対するその影響と正反対の成分が含まれていればよい。
【0012】
以上のことから、オフセットが少なくとも第2の測定結果に与える影響が第1の測定結果に与える影響の反対となるように第2の角位置を選択する方法は、第1および少なくとも第2の測定が行われる方法に依存することが分かるであろう。
【0013】
好ましくは、少なくとも第2の角方向は第1の角方向と異なり、表面センサの想定位置からのオフセットが第2の測定結果に与える影響は、それが第1の測定結果に与える影響と略同等かつ反対である。これを実現するには、第2の角位置を、それが第1の角位置の略逆となるように構成すればよい。言い換えれば、第2の角位置を第1の角位置と略同等かつ反対とすることができる。1つの実施形態において、これは、第2の角方向にある表面センサを、少なくとも第1の軸を中心として略180°回転させる時とすることができる。別の実施形態では、表面センサを同じ量だけ、ただし、第1の軸を中心として、第1の軸に対して垂直に延びる線に関して反対方向に回転させた時である。当然ながら、これは、表面センサが幾何学的に略反対の位置、例えば、表面センサの測定次元に対して垂直に延びる軸に関して幾何学的に略反対にある時とすることができる。表面センサが2つの次元の測定結果を取得できる実施形態において、これは、表面センサが、表面センサの測定面に対して垂直に延びる軸に関して幾何学的に略反対である時とすることができる。当然ながら、第2の角位置が第1の角位置の反対になるように表面センサの角位置を操作する方法は、表面センサが位置付けられる中心となる第1の軸の向きに依存させることができる。
【0014】
当然のことながら、第1と第2の測定結果を取得することは、第1と第2の測定データを取得することを意味しうる。測定データには、1つまたは複数の位置データを含めることができる。位置データは、加工物上の1地点の位置を表すものとすることができる。例えば、位置データは、座標位置決め装置の測定範囲における加工物上の1地点の位置を表すものとすることができる。
【0015】
第1と第2の測定結果は、同じ加工物の測定結果である必要はない。例えば、第1の測定結果は第1の加工物のもので、第2の測定結果は第1の加工物とは異なる第2の加工物のものとすることができる。この場合、第1と第2の加工物は、座標位置決め装置の測定範囲におけるその次元と位置関係が分かっているものであることが好ましいかもしれない。
【0016】
第1と第2の測定結果は、同じ第1の加工物の測定結果であることが好ましいかもしれない。この場合、第1と第2の測定結果は、第1の加工物の同じ部分の測定結果である必要はない。例えば、加工物がキャリブレーションキューブ等の立方体である場合、第1の測定結果は立方体の第1の面に関するもので、第2の測定結果が立方体の第2の面に関するものとすることができる。第2の面は、第1の面と正反対の面とすることができる。
【0017】
それにもかかわらず、第1の測定結果を取得するステップは、加工物上の少なくとも第1の地点の位置データを取得するステップを含み、少なくとも第2の測定結果を取得するステップは、加工物上の当該少なくとも第1の地点の位置データを取得するステップを含むことが好ましいかもしれない。したがって、第1と第2の測定結果は、それぞれ、加工物上の少なくとも1つの共通の地点の位置データを含むことが好ましいかもしれない。これにより、校正済み加工物を使用する必要がなくなる。
【0018】
第1の測定結果を取得するステップには、加工物上の1地点のみの位置を測定するステップを含めることができる。少なくとも第2の測定結果を取得するステップには、加工物上の1地点のみの位置を測定するステップを含めることができる。上記の記述に合わせて、その地点は同じ地点でも異なる地点でもよい。
【0019】
好ましくは、第1の測定結果を取得するステップは、加工物上の複数の地点の位置を測定するステップを含む。好ましくは、少なくとも第2の測定結果を取得するステップは、加工物の複数の地点の位置を測定するステップを含む。上記の記述に合わせて、この方法は、少なくとも第2の測定が第1の測定中に測定された加工物上の少なくとも1つの地点を測定するステップを含むように構成することができる。この方法は、少なくとも第2の測定が第1の測定中に測定された加工物上の地点と略同じ地点を測定するステップを含むように構成することができる。複数の地点は、複数の個別の測定を行うことによって取得できる。任意に、複数の地点は、加工物を走査することによって取得できる。したがって、表面センサは、タッチトリガプローブ等の2状態機器とすることができる。任意に、表面センサは、例えば、光学走査プローブ等のアナログ走査プローブのようなアナログ走査機器とすることができる。
【0020】
第1および少なくとも第2の測定結果は、1地点の測定結果とすることができる。例えば、第1および少なくとも第2の測定結果は、1つの平面上のある地点の測定結果とすることができる。第1および少なくとも第2の測定結果は、物体の角の測定結果とすることができる。例えば、第1および少なくとも第2の測定結果は、立方形の加工物の角の測定結果とすることができる。第1および少なくとも第2の測定結果は、規則的または不規則的形状の測定結果とすることができる。例えば、第1および少なくとも第2の測定結果は、正方形、立方形、六角形、八角形または自由形状の表面の測定結果とすることができる。第1および少なくとも第2の測定には、湾曲した形状構成物の第1および少なくとも第2の測定結果を取得するステップを含めることができる。第1および少なくとも第2の測定には、楕円形の形状構成物の第1および少なくとも第2の測定結果を取得するステップを含めることができる。第1および少なくとも第2の測定には、円形の形状構成物の第1および少なくとも第2の測定結果を取得するステップを含めることができる。円形の形状構成物は、円の一部とすることができる。円形の形状構成物は完全な円とすることができる。したがって、第1および少なくとも第2の測定には、完全な円の第1および少なくとも第2の測定結果を取得するステップを含めることができる。円形の形状構成物は、リングゲージ、ある物体の穴、または球とすることができる。
【0021】
オフセットを補正するステップは、オフセットを判定するステップを含んでいてもよい。オフセットは距離を含んでいてもよい。例えば、基準位置からの距離である。基準位置は想定位置とすることができる。オフセットは角オフセットを含んでいてもよい。
【0022】
オフセットを補正するステップは、少なくとも第1の次元におけるオフセットを判定するステップを含んでいてもよい。オフセットを補正するステップは、第1の次元のみにおけるオフセットを判定するステップを含んでいてもよい。オフセットを補正するステップは、少なくとも第2の次元におけるオフセットを判定するステップを含んでいてもよい。
【0023】
少なくとも第1の次元は、第1と第2の角方向を定める際の中心となる少なくとも第1の軸に対して垂直とすることができる。第2の次元は、第1の次元に対して垂直とすることができる。第2の次元は、第1と第2の角方向を定める際の中心となる軸に対して垂直とすることができる。
【0024】
当然のことながら、表面センサは、加工物の表面に関する位置情報の取得を可能にできる。表面センサは、少なくとも第1の測定次元、例えば、第1の測定次元および少なくとも第2の測定次元における位置情報を取得するように構成できる。好ましくは、第1および/または少なくとも第2の測定次元は、線形次元である。好ましくは、第1および第2の測定次元は、相互に対して垂直である。当然ながら、第1および、もしあれば少なくとも第2の測定次元は、表面センサに関して固定することができる。したがって、測定次元は表面センサと共に移動することができる。特に、測定次元は表面センサと共に回転することができる。
【0025】
表面センサの実際の位置は、第1の測定次元における想定位置からオフセットしていることがある。表面センサの実際の位置は、第2の測定次元における想定位置からオフセットしていることがある。表面センサの実際の位置は、第1と第2の測定次元における想定位置からオフセットしていることがある。
【0026】
この方法は、第1の測定次元における表面センサのオフセットを判定するステップを含んでいてもよい。特に、オフセットを補正するステップは、第1の測定次元のみにおける表面センサのオフセットを判定するステップを含んでいてもよい。
【0027】
第1と第2の測定結果は、表面センサを、表面センサがセンサ自体に関して第1の次元でのみ測定を行うように移動させることによって取得できる。第1の次元は、例えば、第1の軸に対して垂直とすることができる。第1の次元は、第1または第2の測定方向とすることができる。いずれの場合も、第1および少なくとも第2の測定は、第1の次元におけるオフセットによってのみ影響を受ける。したがって、第2の次元における表面センサのオフセットは、第1と第2の測定に影響を与えない。これは、第1および少なくとも第2の測定が、第1の次元以外の次元における表面センサのオフセットの影響を受けないようにできることを意味する。これを実現するためには、例えば、第1と第2の測定中に、測定対象の加工物の表面に関するその方向が常に略同じとなるように表面センサを移動させることができる。言い換えれば、表面センサは、表面センサの略同じ地点が表面と接触して測定データを取得するように移動される。例えば、接触先端を有する接触プローブの場合、接触先端は、接触先端の略同じ地点が測定対象表面に接触するように移動される。例えば、円形の形状構成物の場合、これは表面センサを、円の中心軸を中心として回転させることによって実現できる。
【0028】
この方法は、第2の次元における表面センサのオフセットを判定するステップを含んでいてもよい。これは、表面センサの第1の次元におけるオフセットを判定するステップに追加することができる。
【0029】
第1および少なくとも第2の測定結果を取得するステップは、表面センサがセンサ自体に関して第1と第2の次元で測定を行うように、表面センサを加工物に関して移動させるステップを含んでいてもよい。したがって、この場合、第1および少なくとも第2の測定は、第1の次元におけるオフセットと第2の次元におけるオフセットによって影響を受ける。これを実現するためには、例えば、第1および少なくとも第2の測定中に、表面センサを、測定対象の加工物の表面に関するその向きが変化するように移動させればよい。言い換えれば、表面センサは、表面センサの異なる地点が表面と接触して測定データを取得するように移動させることができる。例えば、接触先端を有する接触プローブの場合、接触先端は、接触先端の異なる地点が測定対象の表面と接触するように移動させることができる。例えば、円形の形状構成物の場合、これは、表面センサの回転方向を固定して、円の周囲で表面センサを直進運動させることによって実現できる。
【0030】
オフセットを補正するステップは、第1および少なくとも第2の測定結果から加工物の合成測定結果(resultant measurement)を判定するステップを含んでいてもよい。加工物の合成測定結果は、測定対象の加工物の修正済み測定結果とすることができる。当然ながら、修正済み測定結果は、表面センサのオフセットがなかった場合に表面センサを使って取得されたであろう測定結果となる。したがって、修正済み測定結果は、座標位置決めシステムの測定範囲に関する加工物の測定対象部分の実際の、つまり真実の寸法および位置を表すものとすることができる。合成測定結果は、第1および少なくとも第2の測定結果から直接判定することができる。例えば、合成測定結果は、第1と第2の測定結果を比較することによって判定できる。特に、合成測定結果は、第1および少なくとも第2の測定結果の差を求めることによって判定できる。合成測定結果は、第1および少なくとも第2の測定結果の平均を求めることによって判定できる。合成測定結果は、少なくとも第1の次元における表面センサのオフセットを判定する代わりに判定できる。合成測定結果は、少なくとも第1の次元における表面センサのオフセットを判定するのに加えて判定できる。合成測定結果は、少なくとも第1の次元において判定された表面センサのオフセットと、第1および少なくとも第2の測定結果の内の少なくとも一方から判定することができる。
【0031】
少なくとも第2の測定は、第1の測定の反復とすることができる。当然ながら、これは略同じ地点が測定されることを意味しうる。これはまた、座標位置決め機の略同じ動きを使って測定結果を得ることを意味しうる。しかしながら、当然ながら、第2の角方向は第1の角方向と異なるであろう。反復測定を採用することにより、校正済み加工物を使用する必要がなくなる。これは、第1と第2の測定結果を直接比較することによってオフセットを設定し、および/または補正することができるからである。第1と第2の測定は、加工物上の同じ地点の測定とすることができる。第1と第2の測定は、同じ順序で実施しなくてもよい。言い換えれば、測定中に測定地点を定める順序は、第1および少なくとも第2の測定について同じでなくてもよい。例えば、第1と第2の測定において、始点および/または終点が異なっていてもよい。例えば、第1の測定結果は、表面センサと加工物の第1の方向への相対的運動によって得ることができ、第2の測定結果は、第2の方向への相対的運動によって得ることができる。第2の方向は、第1の方向の反対とすることができる。
【0032】
表面センサは、少なくとも第2の軸を中心として回転自在とすることができる。これにより、表面センサの運動範囲がより大きくなる。好ましくは、第2の軸は第1の軸に対して垂直である。表面センサが第1と第2の軸を中心として回転自在である実施形態において、好ましくは、表面センサの角位置は第1の軸に関して定められる。この場合、第1と第2の角方向は第1の軸を中心として定め、第2の軸に関して測定することができる。第1と第2の軸が交差しない実施形態では、第1と第2の角方向は第1の軸を中心として定め、第2の軸に平行に、第1の軸を通過して延びる線に関して測定することができる。第2の角方向は、第2の軸に関して第1の角方向の反対とすることかできる。
【0033】
オフセット要因は複数あることがある。したがって、その方法は、少なくとも第1と第2のオフセット要因を判定するステップを含んでいてもよい。第1のオフセット要因は、少なくとも第1の軸の実際の位置と想定位置との差を含んでいてもよい。特に、第1のオフセット要因は、第2の軸に関する第1の軸の実際の位置と想定位置との間の違いとすることができる。第2のオフセット要因は、第1の軸に関する表面センサの実際の位置と想定位置との間の差を含んでいてもよい。
【0034】
この方法はさらに、表面センサを、第1の軸に関して第2の軸を中心として第1の角方向に置いて第3の測定結果を取得するステップと、表面センサを、第1の軸に関して第2の軸を中心として第2の角方向に置いて少なくとも第4の測定結果を取得するステップと、をさらに含んでいてもよく、第2の角方向は第1の角方向と異なり、想定位置からの表面センサのオフセットが全て、第3と第4の測定結果に対して少なくとも部分的に反する影響(partially opposing affect)を有する。第1と第2の軸が交差しない実施形態において、第1と第2の角方向は第2の軸を中心として定め、第1の軸に平行に、第2の軸を通過して延びる線に関して測定することができる。好ましくは、この方法は、第3と少なくとも第4の測定結果を使って、オフセットを補正および/または設定するステップをさらに含む。好ましくは、この方法は、第1と第2と第3と少なくとも第4の測定結果を使って、オフセットの第1と第2の要因を特定するステップをさらに含む。
【0035】
少なくとも第1の軸を中心とした表面センサの角位置は、第1と第2の測定結果を取得している間に固定することができる。この場合、第1と第2の測定結果を取得するステップは、表面センサを、第2の軸を中心として回転させるステップを含んでいてもよい。この場合、好ましくは、オフセットは第1と第2の軸に対して略垂直な次元におけるものである。この場合、好ましくは、第2の角方向は第1の角方向と同等であるが、第2の軸に関して反対方向に定められる。好ましくは、第1と第2の角方向は第2の軸に関して10°を超えない、特に好ましくは、5°を超えない。
【0036】
任意に、第1と第2の測定結果を取得するステップは、第2の軸の線位置を維持するステップを含む。この場合、前述のように、表面センサは第2の軸を中心として回転させることができる。
【0037】
任意に、第1と第2の測定結果を取得するステップは、第1の軸と、もしあれば第2の軸の線位置を移動させるステップと、第1の軸と、もしあれば第2の軸を中心とした表面センサの回転位置を維持するステップと、を含んでいてもよい。したがって、この場合、好ましくは、第2の軸(もしあれば)を中心とした表面センサの角位置は、第1と第2の測定中またはその合間に変化しない。この場合、好ましくは、オフセットは、第1の軸に対して略垂直に伸びる1つの平面内のものである。オフセットは、その平面内の第1と第2の次元において測定することができる。これらの2つの次元は、相互に対して垂直とすることができる。本発明の本実施形態において、好ましくは、第1の軸を中心とした表面センサの第1と第2の角方向の間で定められる最小角度は90°を超え、例えば少なくとも120°、例えば180°である。この角度が略180°ではない実施形態では、2つより多い測定結果を取得することが好ましいかもしれない。
【0038】
例えば、3つまたはそれ以上の測定結果を取得することができる。複数の測定は、第1の軸の周囲で等角的に離間させて行われることが好ましいかもしれない。例えば、3つの測定結果は、毎回の測定の間に表面センサを第1の軸で120°ずつ回転させて取得することができる。当然ながら、複数の測定は必ずしも第1の軸の周囲で等角的に離間させて行わなければならない訳ではない。しかしながら、好ましくは、1つの平面内で第1の軸に対して略垂直に延びる2つの垂直な方向にオフセットを補正できるように、表面センサの角方向を選択する。
【0039】
座標位置決め装置は、少なくとも第1の軸を提供し、この第1の軸を中心とした表面センサの運動を助けるヘッドを備えていてもよい。このヘッドは、アクティブヘッドとすることができる。例えば、ヘッドは、少なくとも第1の軸を中心として表面センサを駆動するように制御可能とすることができる。オフセットは、表面センサの、ヘッドに関する想定位置からのオフセットとすることができる。
【0040】
座標位置決め装置は、座標位置決めフレームを備えていてもよい。座標位置決めフレームは、少なくとも1つの線形次元、例えば2つの線形次元、例えば3つの線形次元における表面センサの運動を提供することができる。好ましくは、線形次元は垂直である。座標位置決めフレームは、表面センサの少なくとも1回転自由度の運動を提供することができる。
【0041】
当然のことながら、表面センサは、表面センサの運動を提供する座標位置決めフレームの一部によって担持されていてもよい。運動は直進運動とすることができる。オフセットは、表面センサの、座標位置決めフレームの表面センサ担持部に関する想定位置からのオフセットとすることができる。例えば、表面センサは、座標位置決めフレームのクイルによって担持されていてもよい。クイルは、表面センサの直進運動を提供することができる。したがって、オフセットは、表面センサの、クイルに関する想定位置からのオフセットとすることができる。任意に、表面センサは、クイル上にヘッド、例えばプローブヘッド、特に関節式プローブヘッドを介して取り付けることができる。したがって、オフセットは、表面センサの、ヘッドに関する想定位置からのオフセットとすることができる。ヘッドは、少なくとも第1の軸を提供し、この第1の軸を中心とした表面センサの運動を助けることができる。
【0042】
表面センサは、測定プローブの一部とすることがでる。測定プローブは、少なくとも第1の軸を有していてもよい。測定プローブは、少なくとも第2の軸を有していてもよい。任意に、前述のように、測定プローブは、少なくとも第1の軸を備えるプローブヘッドに取り付けることができる。したがって、プローブヘッドは関節式プローブヘッドとすることができる。関節式プローブヘッドは、少なくとも第2の軸を有していてもよい。
【0043】
測定プローブは、プローブ本体と表面センサを備えていてもよい。プローブ本体は、座標位置決めフレームに取り付けることができる。したがって、オフセットは、表面センサの、プローブ本体に関する想定位置からのオフセットとすることができる。測定プローブはプローブヘッドに取り付けることができ、プローブヘッドは座標位置決めフレームに取り付けられている。表面センサは、プローブ本体から離すことができる。例えば、測定プローブは、プローブ本体から延びるスタイラスをさらに備えていてもよい。表面センサは、スタイラスの、プローブ本体の遠位にある端部に向かって取り付けることができる。
【0044】
オフセットの方向は、測定プローブに関して略不変とすることができる。オフセットの程度は、測定プローブに関して略不変とすることができる。例えば、オフセットは、表面センサの位置、例えば少なくとも第1の軸を中心とした表面センサの角位置によって大きく変化しないものとすることができる。
【0045】
表面センサは、接触測定プローブの表面接触先端とすることができる。表面センサは、非接触測定プローブ、例えば、光、インダクタンスまたは容量を利用した測定プローブの表面接触先端とすることができる。
【0046】
本発明の第2の態様によれば、少なくとも第1と第2の垂直軸を中心として回転自在な表面センサを有する座標位置決め装置の操作方法が提案され、この方法は、表面センサを、第2の軸に関して第1の軸を中心とした第1の角度に位置付けて、第1の測定結果を取得するステップと、表面センサを、第2の軸に関して第1の軸を中心とした第2の角度に位置付けて、第2の測定結果を取得するステップであって、第2の角度が第1の軸に関して第1の角度と反対方向で、表面センサの想定位置からのオフセットが全て第1と第2の測定結果に対して少なくとも部分的に反する影響を有するステップと、第1と第2の測定結果を用いてオフセットを補正または設定するステップと、を含む。第1と第2の測定結果を取得するステップは、表面センサを、第2の軸を中心として回転させるステップを含んでいてもよい。第2の角度は、第1の角度と略同等かつ反対とすることができる。
【0047】
本発明の第3の態様によれば、少なくとも第1の軸を中心として回転自在な表面センサを有する座標位置決め装置の操作方法が提案され、この方法は、表面センサを第1の角方向に位置付け、表面センサを直進運動させることによって第1の測定結果を取得するステップと、表面センサを少なくとも第2の角方向に」位置付け、表面センサを直進運動させることによって少なくとも第2の測定結果を取得するステップであって、第2の角方向は第1の角方向と異なり、表面センサの想定位置からのあらゆるオフセットが第1および少なくとも第2の測定結果に少なくとも部分的に反する影響を与えるようなステップと、第1および少なくとも第2の測定結果を用いてオフセットを補正するステップと、を含む。好ましくは、表面センサの角方向は、第1および少なくとも第2の測定結果の取得中に固定される。好ましくは、表面センサを第2の角方向に位置付けるステップは、表面センサを、少なくとも第1の軸を中心として少なくとも90°回転させるステップを含む。好ましくは、表面センサを第2の角方向に位置付けるステップは、表面センサを回転させて、第1の軸を中心とした第1と第2の角方向の間の最小角度が90°以上となるようにするステップを含む。
【0048】
本発明の第4の態様によれば、表面センサの測定平面に略垂直に延びる少なくとも第1の軸を中心として回転自在な表面センサを有する座標位置決め装置の操作方法が提案され、この方法は、測定平面内の表面センサのオフセットが全て第1の方向に延びるように、表面センサを第1の角方向に置いて第1の測定結果を取得するステップと、測定平面内の表面センサのオフセットが全て第1の方向とは異なる第2の方向に延びるように、表面センサを第1の角方向とは異なる第2の角方向に置いて少なくとも第2の測定結果を取得するステップと、を含む。好ましくは、第2の方向は、2つの直交する成分に分解でき、その一方は第1の方向の正反対である。好ましくは、第2の方向は第1の方向の正反対である。この方法は、第1と第2の測定結果を使って補正するステップを含んでもよい。この方法は、第1と第2の測定結果を用いてオフセットを設定するステップを含んでもよい。
【0049】
本発明の第5の態様によれば、少なくとも第1の軸を中心として回転自在な表面センサと、上記の方法を実行するように構成されたコントローラを備える座標位置決め装置が提案される。
【0050】
本発明の第6の態様によれば、少なくとも第1の軸を中心として回転自在な表面センサを備える測定システムのコントローラによって実行されたときに、測定システムに上記の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラムコードが提案される。
【0051】
本発明の第7の態様によれば、上記のコンピュータプログラムコードが記録されたコンピュータ読取可能な媒体が提案される。
【0052】
本発明のまた別の態様によれば、表面センサが少なくとも2つの軸を中心として回転自在である測定システムの誤差修正方法が提案され、この方法は、表面センサを第1の角オフセットに位置付け、円形の形状構成物を測定して第1の測定結果を提供するステップと、表面センサを、第1の角オフセットと同等かつ反対の第2の角オフセットに位置付け、上記円形の形状構成物を測定して第2の測定結果を提供するステップと、第1と第2の測定結果の差を判定し、これによって測定誤差を判定するステップと、を含む。
【0053】
この方法は、測定誤差を修正するステップを含んでもよい。第1の実施形態において、円形の形状構成物を測定するステップは、第1の軸の周辺で表面センサを回転させ、その一方で第2の軸を中心としたその第1または第2の角オフセットを保持するステップを含む。第2の実施形態において、円形の形状構成物を測定するステップは、表面センサを線形に移動させ、その一方でその角オフセットを保持するステップを含む。表面センサは、測定プローブのプローブ先端またはその他のセンサを備えてもよい。測定システムは、座標位置決め装置の上に取り付けられた測定プローブを備えていてもよく、座標位置決め装置は少なくとも2つの軸の周辺で測定プローブを回転させる。座標位置決め装置は、少なくとも2つの軸における回転運動を提供する関節式プローブヘッドと、CMM(座標測定機)や線形運動を提供するマシンツール等の座標位置決め装置と、を備えてもよい。円形の形状構成物は、例えば、リングゲージ、穴または球であってもよい。
【0054】
本発明のさらに別の態様は、表面センサが少なくとも2つの軸の周辺で回転自在である測定システムと、表面センサを第1の角オフセットに位置付けて、円形の形状構成物を測定して第1の測定結果を提供するステップと、表面センサを第1の角オフセットと同等かつ反対の第2の角オフセットに位置付けて、上記円形の形状構成物を測定して第2の測定結果を提供するステップと、第1と第2の測定結果の差を判定し、それによって測定誤差を判定するステップと、を実行するためのコントローラを備える誤差修正装置を提案する。
【0055】
本発明の好ましい実施形態を、例として、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】工作物が載せられているCMM(座標測定機)を示す図である。
図2図1のCMMに取り付けられる関節式走査ヘッドを示す図である。
図3】関節式プローブヘッドの軸とスタイラス先端の位置を示す図である。
図4】関節式プローブヘッドに取り付けられたプローブを使用して測定される穴を示す図である。
図5A】本発明の第1の実施形態によるリングゲージの測定を示す図である。
図5B】本発明の第1の実施形態によるリングゲージの測定を示す図である。
図6】リングゲージの一部の測定結果を示す図である。
図7A】本発明の第2の実施形態によるリングゲージの測定を示す図である。
図7B】本発明の第2の実施形態によるリングゲージの測定を示す図である。
図8図7Aおよび図7Bに示す方法から判定された測定中心を示すリングゲージの平面図である。
図9】考えられる測定誤差の要因を示す概略図である。
図10図5Aおよび図5Bに関連して説明した方法を使って得られる測定を示すリングゲージの平面図である。
図11図7Aおよび図7Bに関連して説明した方法を使って得られる測定を示すリングゲージの平面図である。
図12】本発明の方法で使用するのに適したゲージブロックを示す図である。
図13】本発明の方法で使用するのに適したゲージリングを示す図である。
図14A】3回の測定に対するオフセットの影響を示す図であり、オフセットが各測定に与える影響が正反対ではなく部分的に反するように、プローブが毎回の測定の合間に回転される。
図14B】3回の測定に対するオフセットの影響を示す図であり、オフセットが各測定に与える影響が正反対ではなく部分的に反するように、プローブが毎回の測定の合間に回転される。
【発明を実施するための形態】
【0057】
特許文献2から、電動関節式プローブヘッドを座標測定機に取り付けることは良く知られている。関節式プローブヘッドにより、関節式プローブヘッドに取り付けられたプローブまたはスタイラスは2つの直交する軸を中心に回転させることができる。したがって、関節式プローブヘッドに取り付けられたプローブまたはスタイラスは、これら2つの軸を中心として角度的に配置することができ、その一方で関節式プローブヘッドは、座標位置決め機によって、同機械の動作範囲内のどの位置にでも位置付けられる。
【0058】
そのような関節式プローブヘッドは、プローブまたはスタイラスを様々な異なる方向に位置付けることができるため、よりフレキシブルな走査を行う座標位置決め機を提供する。
【0059】
図1は、座標位置決め装置、この場合はCMM(座標測定機)に取り付けられた関節式プローブヘッドを示している。測定対象となる工作物10は、CMM14のテーブル12の上に載置され、関節式プローブヘッド16はCMM 14のクイル18に取り付けられている。クイルは、モータによって周知の方法でテーブルに関して3つの方向X,Y,Zに駆動可能である。CMMにはモータとトランスデューサが設置され、これらが各軸での測定運動を提供する。
【0060】
図2に示すように、関節式プローブヘッド16は、ベースまたはハウジング20により形成される固定部を有し、ハウジング20はシャフト22の形態の可動部を支持し、シャフト22はモータM1によって軸A1を中心としてハウジング20に関して回転される。シャフト22は別のハウジング24に固定され、別のハウジング24はシャフト26を支持し、シャフト26は、モータM2によって軸A1に垂直な軸A2を中心としてハウジング24に関して回転される。
【0061】
工作物接触先端30を有するスタイラス29付きのプローブ28は、関節式プローブヘッドに取り付けられている。この配置によると、関節式プローブヘッドのモータM1,M2は、工作物接触先端を軸A1またはA2を中心として角度的に位置付けることができ、CMMのモータは、関節式プローブヘッドをCMMの三次元座標フレームワークの中のどの地点にでも直線的に位置付けて、スタイラス先端が走査対象表面と所定の関係となるようにすることができる。
【0062】
線形位置トランスデューサ(図示せず)はCMMに設置されて関節式プローブヘッドの線形移動を測定し、角位置トランスデューサT1,T2は、関節式プローブヘッドの中に設けられて、各軸A1,A2を中心とするスタイラスの角変位を測定する。
【0063】
コントローラ32は、CMMのモータと関節式プローブヘッドに信号を送ってそれらの運動を制御し、また、CMMのトランスデューサ、関節式プローブヘッドおよびプローブからの入力を受け取る。
【0064】
プローブは、屈折可能なスタイラスを有する接触プローブであってもよい。タッチトリガプローブの場合、スタイラスが屈折すると、トリガが発生した座標位置決め装置の位置をラッチする出力を発生させる。走査プローブでは、プローブ内のトランスデューサがスタイラスの屈折量を測定する。
【0065】
図1に示される垂直アームCMMにおいて、関節式プローブヘッド16の軸A1は、CMMのZ軸(スピンドル18に沿っている)に名目上平行(nominally parallel)である。関節式プローブヘッドは、この軸を中心として連続的にプローブを回転させてもよい。関節式プローブヘッドの軸A2は、その軸A1に直交する。
【0066】
図1,2に示される装置にはいくつかの誤差が生じ、これは特定して補正することが可能である。座標位置決め装置、例えばCMM、に関する関節式プローブヘッドの軸A1の位置には、CMMのX,Y,Z軸に関する軸A1の位置、およびZ軸との整合についての4つのパラメータがある。関節式プローブヘッドは、軸A1,A2の間の相対的角度(理想的には直角であるべきである)と、これらの軸の間の最短距離(理想的には交差するべきである)と、に関する2つのパラメータを有する。プローブ先端においては、プローブヘッドに対するスタイラス先端の位置に関する3つのパラメータ(例えば、軸A2とプローブ先端との間の距離、軸A2に沿ったオフセット、および軸A2に垂直なオフセット)がある。スタイラス先端のその想定位置からのオフセットに関する幾何誤差もあり得る。軸A2に垂直な次元におけるオフセットは、プローブの測定精度に大きな影響を与えることがある。
【0067】
図3は、関節式ヘッドの2つの軸A1,A2、スタイラス先端の想定位置40、およびスタイラス先端の実際の位置42を示す。これら2つの位置の差は、オフセット誤差eである。このオフセット誤差の要因はプローブの形状である。
【0068】
このオフセット誤差は、垂直方向の穴をらせん状に走査した場合(例えば、関節式走査ヘッドを主として軸A1を中心として回転させることによる)、半径方向の誤差という形で見られる。オフセットは、その他の形状構成物(例えば、垂直以外の穴)の測定における位置誤差の要因となる。
【0069】
図4は、穴44を走査するプローブ28を示す。関節式プローブヘッド16は穴44の上方で中心に位置付けられ、その軸A1が穴の中心軸46とほとんど一致した状態にある。プローブ28は軸A2の周辺で回転され、それによってスタイラス先端を穴の内表面と接触させる。図4においては、スタイラス先端の実際の位置42が穴の内表面と接触しているように描かれている。スタイラス先端の測定された位置40も示されている。これら2つの位置の差がオフセットeである。穴は、プローブ28を、関節式プローブヘッド16の軸A1を中心として回転させることによって測定される。プローブの、関節式プローブヘッドの軸A2を中心とした角度が基本的に同じままであるため、オフセットは、内周全体について穴の測定に同様の影響を与える。図4に示される例については、穴が実際の大きさより小さく見えることになるような、半径方向の誤差が発生するであろう。
【0070】
オフセット誤差は、以下の校正方法によって補正することができる。第1の校正方法では、校正済みのリングゲージを使ってオフセットを判定する。図5A図5Bは、この方法で使用するためのリングゲージを示す。図5Aを参照すると、関節式プローブヘッド16はリングゲージ48の上方で中心に位置付けられ、その軸A1がリングゲージの中心軸50とほとんど一致している状態にある。プローブ28は、軸A2を中心として軸A1に関して角度+θ1°だけ回転され、それによってスタイラス先端をリングゲージの内表面と接触させる。プローブヘッドとスタイラス先端の交差軸と、直径100mのリングゲージと、の距離が250mmのプローブを使って、直径100mmのリングゲージを走査すると、θ1の値は約12°となるであろう。図5Aは、測定開始時のプローブ28の位置、つまり、それがリングゲージ48の内表面に接触するように軸2の周辺で回転されたときの位置を示す。次に、リングゲージ48の内周は、プローブ28を関節式プローブヘッド16の軸A1を中心として、例えば矢印Bにより示される方向に回転させることによって走査される。リングゲージの測定では、スタイラス先端のオフセットによって半径方向の測定誤差が生じるであろう。測定誤差は、リングゲージの校正済み半径とリングゲージの実測半径との差を比較することによって測定される。図3に示されるオフセット(つまり、−Y方向へのオフセット)の場合、半径方向の誤差は負であるため、測定されたリングゲージの直径は小さくなる。
【0071】
当然のことながら、角度θ1が大きいほど、オフセットがy次元における測定に与える影響が小さくなる。したがって、本発明の方法を使ってプローブを校正する場合、好ましくはθ1を小さく保ち、好ましくは10°を超えない、より好ましくは5°を超えないようにする。
【0072】
リングゲージの測定を図5Bに示すように再び行う。したがって、関節式プローブヘッド16はリングゲージ48の上方で中心に位置付けられ、その軸A1は、リングゲージの中心軸50とほとんど一致した状態にある。しかしながら、今回は、スタイラス先端をリングゲージの内表面に接触させるために、プローブ28を、軸A2の周辺で第1の測定の時と反対方向に略同じ量だけ回転させる。つまり、プローブ28を軸A2の周辺で角度−θ1°だけ回転させて、スタイラス先端をリングゲージ48の内表面と接触させる。図5Bは、第2の測定の開始時のプローブ28の位置、つまり、それがリングゲージ48の内表面と接触するように、軸A2の周辺で反対方向に回転された時の位置を示す。今回も、プローブを関節式プローブヘッド16の軸A1の周辺で、例えば矢印Cで示される方向に回転させることによって、リングゲージの内周が走査される。リングゲージの測定では、スタイラス先端のオフセットによる半径方向の測定誤差が生じるであろう。しかしながら、今回の半径方向の誤差は正であるため、測定されたリングゲージの直径は大きくなる。
【0073】
これらの2回の走査で測定された半径の変化は、スタイラス先端のオフセットを判定するのに用いることができる。オフセットは、2つの測定結果の差の半分である。オフセットのこの数値は、その後の全ての測定結果を修正するための校正に使用できる。
【0074】
リングゲージは逆転手法で2回測定されるため、このリングゲージもスタイラス先端の直径も校正の必要がない。これは、2回の測定結果を相互に比較でき、校正済みのリングゲージと比較する必要がないからである。両方の測定が同じ要素を有することから、軸A2を中心とした+veまたは−veの角度以外に、他の全ての誤差は打ち消される。
【0075】
スタイラス先端は軸A1を中心として回転されるため、スタイラス先端は、それ自体に関してY次元にのみ測定を行い、Y次元はスタイラス先端に関して固定されてスタイラス先端と共に回転する。したがって、この手法は、Y次元におけるオフセット誤差を示す。X次元にもオフセット誤差がある可能性はあるが、以下に説明するように、これは、上記の第1の測定方法を用いて測定された半径に対して小さな影響しか与えない。
【0076】
リングゲージの一部の測定結果を図6に示し、これは上から見たリングゲージに対応する。点線54はスタイラス先端がたどる経路を示し、実線56は報告された経路の位置、つまり、プローブヘッドにより実測された経路を示す。軸A2に垂直な(つまり、Y次元における)オフセットeyは、経路54と56の間に示され、半径方向の誤差の大きな成分である。
【0077】
軸A2に平行な(つまり、X次元における)オフセットexは、実際のスタイラスの位置58と、プローブヘッド60によって測定されたスタイラスの位置60と、の間の差によって示される。このオフセットは半径方向の二次の誤差を発生させるが、これは半径方向の誤差の非常に小さな成分であり、第1の測定方法を用いた場合、物体の測定にはほとんど影響を与えない。
【0078】
次に、スタイラス先端のオフセットを補正する第2の方法を、図7,8を参照しながら説明する。
【0079】
図7Aは、関節式プローブヘッド16がリングゲージ48の上方に位置付けられている様子を示している。第1のステップにおいて、プローブは、関節式プローブヘッドの軸A2を中心として角度θ2°だけ回転される。最良の結果を得るためには、θ2はゼロ(つまり、スタイラスが軸A1に平行)であるが、それ以外の角度、例えば、5°または10°でもよい。次に、プローブの角度を固定し、CMMの運動を利用してリングゲージを測定する。これらの測定から、リングゲージの中心が判定される。走査中に別の位置にある関節式プローブヘッドを、破線の輪郭54で示している。角度θ2°が同じままであることが分かる。
【0080】
図7Bは第2のステップを示しており、軸A2を中心とした角度は同じに保ちながら、プローブを軸A1の周辺で180°回転させることによって、プローブの角方向が変えられている。次に、プローブの角度を固定し、CMMの運動を利用して再びリングゲージ48を測定する。以下に説明するように、リングゲージの中心が再び判定される。
【0081】
図8はリングゲージ48の平面図であり、その実際の中心位置55と、図7A,7Bに関して説明した方法を使って得られた第1と第2の走査から測定された第1の中心位置56および第2の中心位置58と、が示されている。図のように、リングゲージ48のY次元における実際の中心位置55は、第1の走査により測定された中心位置56と第2の走査により測定された中心位置56のY位置との差の半分、つまりΔyの半分であり、リングゲージ48のX次元における実際の中心位置55は、第1の走査により測定された中心位置56と第2の走査により測定された中心位置56のX位置との差の半分、つまりΔxの半分である。したがって、これら2つの測定された中心位置56,58の差によってオフセットの判定が可能となり、オフセットは差の半分である。この実施形態において、スタイラス先端は、それ自体に関してXとYの両方の次元において測定を行うように移動される。したがって、この手法は、XとYの両方の次元におけるオフセットを補正できるという利点を有する。
【0082】
前述のように、これは逆転手法(reversal technique)であるため、リングゲージの校正は不要である。
【0083】
当然のことながら、第2の測定方法を採用する場合、角度θ2は変化しない。したがって、第2の測定方法は、プローブが軸A1のみの周辺で回転自在である実施形態に利用できる。したがって、プローブは、軸A1等の1つの軸でしか回転できない。
【0084】
当然ながら、プローブを軸A1で回転させる角度は180°である必要はない。例えば、図14A,14Bに示されるように、第1の測定(例えば、リングゲージ48の測定)を行い、プローブを軸A1を中心として120°回転させて第2の測定112を行い、次に、プローブをさらに120°回転させて第3の測定113を行うことができる。図14Aに示すように、オフセットにより、第1と第2と第3の測定によるリングゲージ48の位置は異なる。特に、第1の角方向において、オフセットは第1の方向130に測定される形状構成物の位置に影響を与え、第2の角方向は第2の方向132に測定される形状構成物の位置に影響を与え、第3の角方向は第3の方向134に測定される形状構成物の位置に影響を与える。図から分かるように、第1の方向130と第2の方向132は相反する。さらに、第1の方向130と第3の方向134も相反する。特に、第2の方向132は、第1の直交成分136と第2の直交成分138とに分解でき、そのうちの一方の成分、つまり第2の成分138は第1の方向130の正反対である。
【0085】
図8に関して説明した方法と同様に、3回の測定110,112,114では、それぞれ異なる第1の中心点116、第2の中心点118、第3の中心点120が得られ、これらをリングの真の中心122の判定に使用できる。これらの中心点はまた、XとYの次元におけるオフセットの判定にも使用できる。
【0086】
当然のことながら、リングの真の中心122は、異なる中心点116,118,120を通る円の中心である。この円の中心は、例えば最小二乗法を使って判定できる。中心122から、3つ(またはそれ以上)の誤差ベクトル、つまり、ベクトルV1(122から116)、ベクトルV2(122から118)、ベクトルV3(122から120)を判定できる。これらの誤差ベクトルは、軸A1によって回転されたセンサオフセットのベクトルを表す。3つ(またはそれ以上)のベクトルで方程式系を作ることが可能である。[RA1P1]が軸A1を中心とした角度P1の回転の行列を表すとすると、以下の方程式系が得られる。
[RA1P1*オフセット=V1
[RA1P2*オフセット=V2
[RA1P3*オフセット=V3
ただし、P1,P2,P3は、誤差ベクトルV1,V2,V3が測定された時の軸A1の角位置である。
【0087】
当然ながら、この方程式系を標準的な周知の最小二乗法、例えば、グラム・シュミットの直交化またはハウスホルダ変換を用いたQR分解を使って解き、センサオフセットの座標を特定することが可能である。したがって、オフセットは、2回、3回またはそれ以上の測定を利用して補正できる。
【0088】
2回を超える測定を使って上記の方法を実行する例を、120°の角度を用いて説明したが、これは例に過ぎない。当然ながら、他の角度も使用できる。さらに、当然ながら、第2と第3の測定の間の角度は、第1と第2の測定の間の角度と同じである必要はない。
【0089】
上記の実施形態ではリングゲージの使用について述べたが、この方法には、どのような円形の形状構成物も適している。さらに、形状構成物は円形でなくてもよい。例えば、同じ方法を、ある平面上の1地点に接触する場合にも応用できる。例えば、ある物体の上の1地点は、プローブを第1と第2の両方の角度に置いた状態で(第1または第2の測定方法のいずれかを使用して)測定し、これらを比較してオフセットを補正できる。さらに、校正済みの物体を使用する場合、第1の地点はプローブを第1の角度に置いて測定し、その後、第2の異なる地点はプローブを第2の角度に置いて測定し、これらを比較してオフセットを補正することができる。例えば、キャリブレーションキューブの第1の面を第1の角度に置いたプローブで測定し、反対側の第2の面を第2の角度に置いたプローブで測定する。これらの異なる平面に垂直な次元においてオフセットがあれば、それは、このキューブの幅の測定に影響を与え、その結果、例えば、実際より大きく、または小さく現れる。したがって、これを、そのキューブの既知の幅と比較して、オフセットを判定できる。
【0090】
部品の測定を行う場合、測定結果を比較すればオフセットによる誤差を除去できる。例えば、この方法を用いて円形、または螺旋の測定を行うことができ、2つの測定結果を平均して、オフセットの半径方向の誤差を除去できる。
【0091】
任意に、これらの方法を測定前の通常の校正手順の一部として使用してもよい。
【0092】
当然のことながら、スタイラス先端のその想定位置からのオフセットには2つの要因があり得る。図9を参照すると、誤差の1つの要因は、ヘッドの軸(例えば、A1)に関するプローブ軸(例えばA2)の想定位置と実際の位置との差により発生することがある。これはヘッド誤差と呼ぶことができ、図9においてy1で示される。別の誤差の要因は、ヘッド軸(例えば、A1)に関するスタイラス先端の想定角位置と実際の角位置との差により発生することがある。これはプローブ誤差と呼ぶことができ、y2で示される。図から分かるように、スタイラス先端68と表面66との間の実際の接触点62は、y1とy2の誤差のために、測定された接触点64と異なる。y1とy2の数値は、前述の方法を使って得られた測定結果から計算できる。
【0093】
例えば、図5A,5Bに関して説明した方法(つまり、プローブを軸A2の周囲のそれぞれ第1と第2の角度において軸A1を中心として旋回させることによって第1と第2の測定を行う)を使用した場合、図10に示すように、第1の測定70と第2の測定72が行われる。y1とy2の誤差により、一方の測定72では、形状構成物74の半径“r”が実際よりΔrだけ大きく測定され、もう一方の測定70では、形状構成物の半径“r”が実際よりΔrだけ小さく測定される。図9から分かるように、Δrはy1とy2の差と等しい、つまりΔr=(y1−y2)となる。
【0094】
図7A図7Bに関連して説明した方法(つまり、プローブを軸A1の周囲のそれぞれ第1と第2の角度において測定対象の形状構成物の周辺で直進移動させることによって、第1と第2の測定を行う)を使った場合、図11に示すように、第3の測定80と第4の測定82が行われる。この方法を使用すると、y1とy2の誤差は、形状構成物の大きさの測定結果に影響を与えない。しかしながら、y1とy2の誤差により、第3の測定80と第4の測定82の横方向の位置が影響を受けるであろう。特に、第4の測定82において測定された中心点84は、形状構成物74の実際の中心点88に関して第1の方向へと横方向に変位し、第3の測定80において測定された中心点86は、形状構成物の実際の中心点88に関して第1の方向とは反対の第2の方向へと横方向に変位する。y次元における第3の中心点86と第4の中心点84の差はΔy誤差と呼ばれ、y1とy2の合計の2倍に等しい、つまりΔy=2(y1+y2)となる。
【0095】
したがって、ΔrとΔyは、取得された測定結果を検査することによって判定できる。その後、ΔrとΔyが分かるため、y1とy2は、位置と半径の変動値を組み合わせることにより、例えば次式を使って計算できる。
1=(Δr+Δy/2)/2
2=(Δr−Δy/2)/2
上記の実施形態では、円形の形状構成物を走査することについて説明したが、これらの方法は、オフセットによって生じる半径方向の誤差が同じであるため、個別の測定地点を利用する場合にも適している。例えば、図12を参照すると、ゲージブロック94の内側の長さ90および/または外側の長さ92を測定できる。同様に、図13を参照すると、リングゲージ102の内径96および/または外径98の直径を測定できる。
【0096】
上記の方法では、軸A1に略平行な表面の測定が関わり、特に、軸A1に略平行な中心軸を有する円形の形状構成物の測定が関わる。しかしながら、当然ながら、これに当てはまらなければならない訳ではなく、軸A1に平行でない表面の測定にも使用できる。例えば、本発明は、軸A1に対して垂直に延びる表面の測定に応用できる。例えば、本発明は、軸A1に対して垂直に伸びる中心軸を有する穴または円形の形状構成物の測定中にも使用できる。この場合、当然ながら、表面センサのオフセットが第1と第2の測定に対して反する影響(opposing affect)を有するようにするために、第1と第2の測定の合間に、表面センサを軸A1,A2を中心として回転させる必要があるであろう。例えば、図1,2を参照すると、表面センサ30を、軸A1に関して軸A2を中心として90°になる第1の角方向に位置付けて(図1に示すように、スタイラス29は略水平に位置付けられる)第1の測定を行うと、第2の角方向は、例えば、表面センサを、軸A1を中心として180°および軸A2を中心として180°(どちらの順番でもよい)回転させることによって実現される。この場合、オフセットが第2の測定に与える影響は、第1の測定に与えるその影響と同等かつ反対となるであろう。
【0097】
さらに、この方法は、ある物体上の1地点のみを2回またはそれ以上測定し、この複数の測定の各々についてプローブを異なる角方向にすることによって実現することができる。例えば、リングゲージ48、ゲージブロック94、または、その他の形状構成物の上の1地点について、測定プローブを第1の角方向(first angular orientation)に置いて測定し、次に測定プローブを第2の角方向(second angular orientation)に置いて少なくとも第2回目の測定を行うことができる。その後、第1および少なくとも第2の測定結果を比較し、表面センサのオフセットを設定することができる。例えば、上記の実施形態を参照すると、1地点の第1の測定は、プローブを、軸A1を中心として第1の角方向に置いて行うことができる。次に、プローブを、軸A1を中心として180°回転させ、同じ点の第2の測定を行うことができる。この場合、測定次元における表面センサのオフセットが、その1地点の測定位置に与える影響は、正反対の影響となるであろう。したがって、オフセットは、第1と第2の測定位置の差の半分として判定できる。この1地点は、1つの平面上のある地点とすることができる。この1地点は、例えば、立方体の角等、形状構成物の角とすることができる。
【0098】
さらに、上記の実施形態では、接触プローブの使用について説明しているが、これらの方法はまた、光、容量、インダクタンスを利用するプローブ等、非接触プローブにも適している。
【0099】
またさらに、当然ながら、この方法は垂直アーム座標位置決め機での使用に限定されない。例えば、水平アーム座標位置決め機での使用にも適している。
【0100】
上記の実施形態において、関節式プローブヘッドは、CMMのクイルと同等の取り付け構造に取り付けられる。本発明はまた、他の種類の機械に設置された表面センサとともに使用するのにも適している。例えば、関節式プローブヘッドは、検査ロボットの遠位端に取り付けてもよく、これは、例えば、複数の関節式ジョイントを有するロボットアームとすることができる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B