【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも1つの軸を中心として回転自在な表面センサを有する測定システムを使って物体を測定する方法を提案するものであり、この方法は、表面センサを第1の角方向に置いて第1の測定を行うステップと、表面センサを第2の角方向に置いて第2の測定を行うステップと、を含み、第2の角方向は、表面センサの想定位置からのオフセットが第2の測定に与える影響が第1の測定に与えるそれとは異なるような角方向である。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも第1の軸を中心として回転自在な表面センサを有する座標位置決め装置を操作する方法が提案され、この方法は、表面センサを少なくとも第1の軸を中心とする第1の角方向に置いて第1の測定結果を取得するステップと、表面センサを少なくとも第1の軸を中心とする第2の角方向に置いて少なくとも第2の測定結果を取得するステップと、を含み、第1と第2の角方向は、表面センサの想定位置からのオフセットが第1と第2の測定結果に与える影響が少なくとも部分的に反するように、相互に異なる。この方法は、第1と第2の測定結果を使ってオフセットを補正するステップを含んでいてもよい。この方法は、第1と第2の測定結果を使ってオフセットを設定するステップを含んでいてもよい。この方法は、第1と第2の測定結果を利用してオフセットを設定し、補正する両方のステップを含んでいてもよい。
【0008】
本発明は、想定位置からオフセットした表面センサにより取得される測定データに含まれた誤差を特定し、および/または、これに対処する新たな方法を提案する。誤差および/またはオフセットが分かれば、その誤差および/またはオフセットを補正するための対策を講じることが可能となる。例えば、座標位置決め装置を、誤差を基にして校正することができる。任意に、この方法は誤差を修正するステップをさらに含んでいてもよい。例えば、判定された誤差に基づいて第1および/または第2の測定結果を修正する、あるいは、その後の測定結果を修正することができる。任意に、本発明による方法は、あらゆるオフセットを設定するために利用できる。設定できれば、その後に適切な対策を講じることができる。例えば、表面センサを交換できる。
【0009】
表面センサの想定位置からのオフセットがあれば、これが第2の測定に対して、第1の測定に与える影響と少なくとも部分的に反対(opposing)の影響を与えるように、第2の角方向を設定すれば、第1と第2の測定結果を比較することによって全ての誤差を判定することが可能となる。したがって、オフセットを補正するステップには、第1と第2の測定結果を比較するステップを含めることができる。さらに、オフセットを補正するステップには、第1と第2の測定結果の差を判定するステップを含めることができる。
【0010】
当然のことながら、表面センサのオフセットが加工物の測定に与える影響は、その加工物の測定方法をはじめとする複数の要素に依存することがある。例えば、穴の内周を測定する場合、穴の中心軸を中心として表面センサを回転させることによって穴を測定すると、オフセットが原因で、穴の測定結果がその実際の大きさと異なることがある。したがって、例えば、この例においてオフセットが第1の測定結果に対して、その形状構成物(feature)を実際よりも大きく見せるという影響を有すると、このオフセットは、第2の測定結果に対しては、それが形状構成物を実際の大きさより小さく見せるという影響を有するはずである。
【0011】
しかしながら、穴に関する表面センサの角方向が一定に保たれて、表面センサが穴の周辺で直進運動されると、測定されたその穴の大きさは正しいが、測定空間(measurement volume)の中の被測定位置は、表面センサのオフセットに相対する量だけオフセットされる。当然ながら、表面センサを直進運動させるステップには、座標位置決め装置の直線軸に沿って表面センサを移動させるステップを含めることができる。したがって、例えば、この例においてオフセットが第1の測定結果に与える影響が、第1の方向にオフセットされるべき形状構成物の直進位置を測定するというものである場合、オフセットが第2の測定結果に与える影響は、その直進位置が第2の方向にオフセットされるはずである。第2の方向は2つの成分に分解でき、その内の一方が第1の方向の正反対であるはずである。したがって、影響は同等かつ反対、つまり正反対である必要はない。オフセットが少なくとも第2の測定結果に与える影響には、第1の測定結果に対するその影響と正反対の成分が含まれていればよい。
【0012】
以上のことから、オフセットが少なくとも第2の測定結果に与える影響が第1の測定結果に与える影響の反対となるように第2の角位置を選択する方法は、第1および少なくとも第2の測定が行われる方法に依存することが分かるであろう。
【0013】
好ましくは、少なくとも第2の角方向は第1の角方向と異なり、表面センサの想定位置からのオフセットが第2の測定結果に与える影響は、それが第1の測定結果に与える影響と略同等かつ反対である。これを実現するには、第2の角位置を、それが第1の角位置の略逆となるように構成すればよい。言い換えれば、第2の角位置を第1の角位置と略同等かつ反対とすることができる。1つの実施形態において、これは、第2の角方向にある表面センサを、少なくとも第1の軸を中心として略180°回転させる時とすることができる。別の実施形態では、表面センサを同じ量だけ、ただし、第1の軸を中心として、第1の軸に対して垂直に延びる線に関して反対方向に回転させた時である。当然ながら、これは、表面センサが幾何学的に略反対の位置、例えば、表面センサの測定次元に対して垂直に延びる軸に関して幾何学的に略反対にある時とすることができる。表面センサが2つの次元の測定結果を取得できる実施形態において、これは、表面センサが、表面センサの測定面に対して垂直に延びる軸に関して幾何学的に略反対である時とすることができる。当然ながら、第2の角位置が第1の角位置の反対になるように表面センサの角位置を操作する方法は、表面センサが位置付けられる中心となる第1の軸の向きに依存させることができる。
【0014】
当然のことながら、第1と第2の測定結果を取得することは、第1と第2の測定データを取得することを意味しうる。測定データには、1つまたは複数の位置データを含めることができる。位置データは、加工物上の1地点の位置を表すものとすることができる。例えば、位置データは、座標位置決め装置の測定範囲における加工物上の1地点の位置を表すものとすることができる。
【0015】
第1と第2の測定結果は、同じ加工物の測定結果である必要はない。例えば、第1の測定結果は第1の加工物のもので、第2の測定結果は第1の加工物とは異なる第2の加工物のものとすることができる。この場合、第1と第2の加工物は、座標位置決め装置の測定範囲におけるその次元と位置関係が分かっているものであることが好ましいかもしれない。
【0016】
第1と第2の測定結果は、同じ第1の加工物の測定結果であることが好ましいかもしれない。この場合、第1と第2の測定結果は、第1の加工物の同じ部分の測定結果である必要はない。例えば、加工物がキャリブレーションキューブ等の立方体である場合、第1の測定結果は立方体の第1の面に関するもので、第2の測定結果が立方体の第2の面に関するものとすることができる。第2の面は、第1の面と正反対の面とすることができる。
【0017】
それにもかかわらず、第1の測定結果を取得するステップは、加工物上の少なくとも第1の地点の位置データを取得するステップを含み、少なくとも第2の測定結果を取得するステップは、加工物上の当該少なくとも第1の地点の位置データを取得するステップを含むことが好ましいかもしれない。したがって、第1と第2の測定結果は、それぞれ、加工物上の少なくとも1つの共通の地点の位置データを含むことが好ましいかもしれない。これにより、校正済み加工物を使用する必要がなくなる。
【0018】
第1の測定結果を取得するステップには、加工物上の1地点のみの位置を測定するステップを含めることができる。少なくとも第2の測定結果を取得するステップには、加工物上の1地点のみの位置を測定するステップを含めることができる。上記の記述に合わせて、その地点は同じ地点でも異なる地点でもよい。
【0019】
好ましくは、第1の測定結果を取得するステップは、加工物上の複数の地点の位置を測定するステップを含む。好ましくは、少なくとも第2の測定結果を取得するステップは、加工物の複数の地点の位置を測定するステップを含む。上記の記述に合わせて、この方法は、少なくとも第2の測定が第1の測定中に測定された加工物上の少なくとも1つの地点を測定するステップを含むように構成することができる。この方法は、少なくとも第2の測定が第1の測定中に測定された加工物上の地点と略同じ地点を測定するステップを含むように構成することができる。複数の地点は、複数の個別の測定を行うことによって取得できる。任意に、複数の地点は、加工物を走査することによって取得できる。したがって、表面センサは、タッチトリガプローブ等の2状態機器とすることができる。任意に、表面センサは、例えば、光学走査プローブ等のアナログ走査プローブのようなアナログ走査機器とすることができる。
【0020】
第1および少なくとも第2の測定結果は、1地点の測定結果とすることができる。例えば、第1および少なくとも第2の測定結果は、1つの平面上のある地点の測定結果とすることができる。第1および少なくとも第2の測定結果は、物体の角の測定結果とすることができる。例えば、第1および少なくとも第2の測定結果は、立方形の加工物の角の測定結果とすることができる。第1および少なくとも第2の測定結果は、規則的または不規則的形状の測定結果とすることができる。例えば、第1および少なくとも第2の測定結果は、正方形、立方形、六角形、八角形または自由形状の表面の測定結果とすることができる。第1および少なくとも第2の測定には、湾曲した形状構成物の第1および少なくとも第2の測定結果を取得するステップを含めることができる。第1および少なくとも第2の測定には、楕円形の形状構成物の第1および少なくとも第2の測定結果を取得するステップを含めることができる。第1および少なくとも第2の測定には、円形の形状構成物の第1および少なくとも第2の測定結果を取得するステップを含めることができる。円形の形状構成物は、円の一部とすることができる。円形の形状構成物は完全な円とすることができる。したがって、第1および少なくとも第2の測定には、完全な円の第1および少なくとも第2の測定結果を取得するステップを含めることができる。円形の形状構成物は、リングゲージ、ある物体の穴、または球とすることができる。
【0021】
オフセットを補正するステップは、オフセットを判定するステップを含んでいてもよい。オフセットは距離を含んでいてもよい。例えば、基準位置からの距離である。基準位置は想定位置とすることができる。オフセットは角オフセットを含んでいてもよい。
【0022】
オフセットを補正するステップは、少なくとも第1の次元におけるオフセットを判定するステップを含んでいてもよい。オフセットを補正するステップは、第1の次元のみにおけるオフセットを判定するステップを含んでいてもよい。オフセットを補正するステップは、少なくとも第2の次元におけるオフセットを判定するステップを含んでいてもよい。
【0023】
少なくとも第1の次元は、第1と第2の角方向を定める際の中心となる少なくとも第1の軸に対して垂直とすることができる。第2の次元は、第1の次元に対して垂直とすることができる。第2の次元は、第1と第2の角方向を定める際の中心となる軸に対して垂直とすることができる。
【0024】
当然のことながら、表面センサは、加工物の表面に関する位置情報の取得を可能にできる。表面センサは、少なくとも第1の測定次元、例えば、第1の測定次元および少なくとも第2の測定次元における位置情報を取得するように構成できる。好ましくは、第1および/または少なくとも第2の測定次元は、線形次元である。好ましくは、第1および第2の測定次元は、相互に対して垂直である。当然ながら、第1および、もしあれば少なくとも第2の測定次元は、表面センサに関して固定することができる。したがって、測定次元は表面センサと共に移動することができる。特に、測定次元は表面センサと共に回転することができる。
【0025】
表面センサの実際の位置は、第1の測定次元における想定位置からオフセットしていることがある。表面センサの実際の位置は、第2の測定次元における想定位置からオフセットしていることがある。表面センサの実際の位置は、第1と第2の測定次元における想定位置からオフセットしていることがある。
【0026】
この方法は、第1の測定次元における表面センサのオフセットを判定するステップを含んでいてもよい。特に、オフセットを補正するステップは、第1の測定次元のみにおける表面センサのオフセットを判定するステップを含んでいてもよい。
【0027】
第1と第2の測定結果は、表面センサを、表面センサがセンサ自体に関して第1の次元でのみ測定を行うように移動させることによって取得できる。第1の次元は、例えば、第1の軸に対して垂直とすることができる。第1の次元は、第1または第2の測定方向とすることができる。いずれの場合も、第1および少なくとも第2の測定は、第1の次元におけるオフセットによってのみ影響を受ける。したがって、第2の次元における表面センサのオフセットは、第1と第2の測定に影響を与えない。これは、第1および少なくとも第2の測定が、第1の次元以外の次元における表面センサのオフセットの影響を受けないようにできることを意味する。これを実現するためには、例えば、第1と第2の測定中に、測定対象の加工物の表面に関するその方向が常に略同じとなるように表面センサを移動させることができる。言い換えれば、表面センサは、表面センサの略同じ地点が表面と接触して測定データを取得するように移動される。例えば、接触先端を有する接触プローブの場合、接触先端は、接触先端の略同じ地点が測定対象表面に接触するように移動される。例えば、円形の形状構成物の場合、これは表面センサを、円の中心軸を中心として回転させることによって実現できる。
【0028】
この方法は、第2の次元における表面センサのオフセットを判定するステップを含んでいてもよい。これは、表面センサの第1の次元におけるオフセットを判定するステップに追加することができる。
【0029】
第1および少なくとも第2の測定結果を取得するステップは、表面センサがセンサ自体に関して第1と第2の次元で測定を行うように、表面センサを加工物に関して移動させるステップを含んでいてもよい。したがって、この場合、第1および少なくとも第2の測定は、第1の次元におけるオフセットと第2の次元におけるオフセットによって影響を受ける。これを実現するためには、例えば、第1および少なくとも第2の測定中に、表面センサを、測定対象の加工物の表面に関するその向きが変化するように移動させればよい。言い換えれば、表面センサは、表面センサの異なる地点が表面と接触して測定データを取得するように移動させることができる。例えば、接触先端を有する接触プローブの場合、接触先端は、接触先端の異なる地点が測定対象の表面と接触するように移動させることができる。例えば、円形の形状構成物の場合、これは、表面センサの回転方向を固定して、円の周囲で表面センサを直進運動させることによって実現できる。
【0030】
オフセットを補正するステップは、第1および少なくとも第2の測定結果から加工物の合成測定結果(resultant measurement)を判定するステップを含んでいてもよい。加工物の合成測定結果は、測定対象の加工物の修正済み測定結果とすることができる。当然ながら、修正済み測定結果は、表面センサのオフセットがなかった場合に表面センサを使って取得されたであろう測定結果となる。したがって、修正済み測定結果は、座標位置決めシステムの測定範囲に関する加工物の測定対象部分の実際の、つまり真実の寸法および位置を表すものとすることができる。合成測定結果は、第1および少なくとも第2の測定結果から直接判定することができる。例えば、合成測定結果は、第1と第2の測定結果を比較することによって判定できる。特に、合成測定結果は、第1および少なくとも第2の測定結果の差を求めることによって判定できる。合成測定結果は、第1および少なくとも第2の測定結果の平均を求めることによって判定できる。合成測定結果は、少なくとも第1の次元における表面センサのオフセットを判定する代わりに判定できる。合成測定結果は、少なくとも第1の次元における表面センサのオフセットを判定するのに加えて判定できる。合成測定結果は、少なくとも第1の次元において判定された表面センサのオフセットと、第1および少なくとも第2の測定結果の内の少なくとも一方から判定することができる。
【0031】
少なくとも第2の測定は、第1の測定の反復とすることができる。当然ながら、これは略同じ地点が測定されることを意味しうる。これはまた、座標位置決め機の略同じ動きを使って測定結果を得ることを意味しうる。しかしながら、当然ながら、第2の角方向は第1の角方向と異なるであろう。反復測定を採用することにより、校正済み加工物を使用する必要がなくなる。これは、第1と第2の測定結果を直接比較することによってオフセットを設定し、および/または補正することができるからである。第1と第2の測定は、加工物上の同じ地点の測定とすることができる。第1と第2の測定は、同じ順序で実施しなくてもよい。言い換えれば、測定中に測定地点を定める順序は、第1および少なくとも第2の測定について同じでなくてもよい。例えば、第1と第2の測定において、始点および/または終点が異なっていてもよい。例えば、第1の測定結果は、表面センサと加工物の第1の方向への相対的運動によって得ることができ、第2の測定結果は、第2の方向への相対的運動によって得ることができる。第2の方向は、第1の方向の反対とすることができる。
【0032】
表面センサは、少なくとも第2の軸を中心として回転自在とすることができる。これにより、表面センサの運動範囲がより大きくなる。好ましくは、第2の軸は第1の軸に対して垂直である。表面センサが第1と第2の軸を中心として回転自在である実施形態において、好ましくは、表面センサの角位置は第1の軸に関して定められる。この場合、第1と第2の角方向は第1の軸を中心として定め、第2の軸に関して測定することができる。第1と第2の軸が交差しない実施形態では、第1と第2の角方向は第1の軸を中心として定め、第2の軸に平行に、第1の軸を通過して延びる線に関して測定することができる。第2の角方向は、第2の軸に関して第1の角方向の反対とすることかできる。
【0033】
オフセット要因は複数あることがある。したがって、その方法は、少なくとも第1と第2のオフセット要因を判定するステップを含んでいてもよい。第1のオフセット要因は、少なくとも第1の軸の実際の位置と想定位置との差を含んでいてもよい。特に、第1のオフセット要因は、第2の軸に関する第1の軸の実際の位置と想定位置との間の違いとすることができる。第2のオフセット要因は、第1の軸に関する表面センサの実際の位置と想定位置との間の差を含んでいてもよい。
【0034】
この方法はさらに、表面センサを、第1の軸に関して第2の軸を中心として第1の角方向に置いて第3の測定結果を取得するステップと、表面センサを、第1の軸に関して第2の軸を中心として第2の角方向に置いて少なくとも第4の測定結果を取得するステップと、をさらに含んでいてもよく、第2の角方向は第1の角方向と異なり、想定位置からの表面センサのオフセットが全て、第3と第4の測定結果に対して少なくとも部分的に反する影響(partially opposing affect)を有する。第1と第2の軸が交差しない実施形態において、第1と第2の角方向は第2の軸を中心として定め、第1の軸に平行に、第2の軸を通過して延びる線に関して測定することができる。好ましくは、この方法は、第3と少なくとも第4の測定結果を使って、オフセットを補正および/または設定するステップをさらに含む。好ましくは、この方法は、第1と第2と第3と少なくとも第4の測定結果を使って、オフセットの第1と第2の要因を特定するステップをさらに含む。
【0035】
少なくとも第1の軸を中心とした表面センサの角位置は、第1と第2の測定結果を取得している間に固定することができる。この場合、第1と第2の測定結果を取得するステップは、表面センサを、第2の軸を中心として回転させるステップを含んでいてもよい。この場合、好ましくは、オフセットは第1と第2の軸に対して略垂直な次元におけるものである。この場合、好ましくは、第2の角方向は第1の角方向と同等であるが、第2の軸に関して反対方向に定められる。好ましくは、第1と第2の角方向は第2の軸に関して10°を超えない、特に好ましくは、5°を超えない。
【0036】
任意に、第1と第2の測定結果を取得するステップは、第2の軸の線位置を維持するステップを含む。この場合、前述のように、表面センサは第2の軸を中心として回転させることができる。
【0037】
任意に、第1と第2の測定結果を取得するステップは、第1の軸と、もしあれば第2の軸の線位置を移動させるステップと、第1の軸と、もしあれば第2の軸を中心とした表面センサの回転位置を維持するステップと、を含んでいてもよい。したがって、この場合、好ましくは、第2の軸(もしあれば)を中心とした表面センサの角位置は、第1と第2の測定中またはその合間に変化しない。この場合、好ましくは、オフセットは、第1の軸に対して略垂直に伸びる1つの平面内のものである。オフセットは、その平面内の第1と第2の次元において測定することができる。これらの2つの次元は、相互に対して垂直とすることができる。本発明の本実施形態において、好ましくは、第1の軸を中心とした表面センサの第1と第2の角方向の間で定められる最小角度は90°を超え、例えば少なくとも120°、例えば180°である。この角度が略180°ではない実施形態では、2つより多い測定結果を取得することが好ましいかもしれない。
【0038】
例えば、3つまたはそれ以上の測定結果を取得することができる。複数の測定は、第1の軸の周囲で等角的に離間させて行われることが好ましいかもしれない。例えば、3つの測定結果は、毎回の測定の間に表面センサを第1の軸で120°ずつ回転させて取得することができる。当然ながら、複数の測定は必ずしも第1の軸の周囲で等角的に離間させて行わなければならない訳ではない。しかしながら、好ましくは、1つの平面内で第1の軸に対して略垂直に延びる2つの垂直な方向にオフセットを補正できるように、表面センサの角方向を選択する。
【0039】
座標位置決め装置は、少なくとも第1の軸を提供し、この第1の軸を中心とした表面センサの運動を助けるヘッドを備えていてもよい。このヘッドは、アクティブヘッドとすることができる。例えば、ヘッドは、少なくとも第1の軸を中心として表面センサを駆動するように制御可能とすることができる。オフセットは、表面センサの、ヘッドに関する想定位置からのオフセットとすることができる。
【0040】
座標位置決め装置は、座標位置決めフレームを備えていてもよい。座標位置決めフレームは、少なくとも1つの線形次元、例えば2つの線形次元、例えば3つの線形次元における表面センサの運動を提供することができる。好ましくは、線形次元は垂直である。座標位置決めフレームは、表面センサの少なくとも1回転自由度の運動を提供することができる。
【0041】
当然のことながら、表面センサは、表面センサの運動を提供する座標位置決めフレームの一部によって担持されていてもよい。運動は直進運動とすることができる。オフセットは、表面センサの、座標位置決めフレームの表面センサ担持部に関する想定位置からのオフセットとすることができる。例えば、表面センサは、座標位置決めフレームのクイルによって担持されていてもよい。クイルは、表面センサの直進運動を提供することができる。したがって、オフセットは、表面センサの、クイルに関する想定位置からのオフセットとすることができる。任意に、表面センサは、クイル上にヘッド、例えばプローブヘッド、特に関節式プローブヘッドを介して取り付けることができる。したがって、オフセットは、表面センサの、ヘッドに関する想定位置からのオフセットとすることができる。ヘッドは、少なくとも第1の軸を提供し、この第1の軸を中心とした表面センサの運動を助けることができる。
【0042】
表面センサは、測定プローブの一部とすることがでる。測定プローブは、少なくとも第1の軸を有していてもよい。測定プローブは、少なくとも第2の軸を有していてもよい。任意に、前述のように、測定プローブは、少なくとも第1の軸を備えるプローブヘッドに取り付けることができる。したがって、プローブヘッドは関節式プローブヘッドとすることができる。関節式プローブヘッドは、少なくとも第2の軸を有していてもよい。
【0043】
測定プローブは、プローブ本体と表面センサを備えていてもよい。プローブ本体は、座標位置決めフレームに取り付けることができる。したがって、オフセットは、表面センサの、プローブ本体に関する想定位置からのオフセットとすることができる。測定プローブはプローブヘッドに取り付けることができ、プローブヘッドは座標位置決めフレームに取り付けられている。表面センサは、プローブ本体から離すことができる。例えば、測定プローブは、プローブ本体から延びるスタイラスをさらに備えていてもよい。表面センサは、スタイラスの、プローブ本体の遠位にある端部に向かって取り付けることができる。
【0044】
オフセットの方向は、測定プローブに関して略不変とすることができる。オフセットの程度は、測定プローブに関して略不変とすることができる。例えば、オフセットは、表面センサの位置、例えば少なくとも第1の軸を中心とした表面センサの角位置によって大きく変化しないものとすることができる。
【0045】
表面センサは、接触測定プローブの表面接触先端とすることができる。表面センサは、非接触測定プローブ、例えば、光、インダクタンスまたは容量を利用した測定プローブの表面接触先端とすることができる。
【0046】
本発明の第2の態様によれば、少なくとも第1と第2の垂直軸を中心として回転自在な表面センサを有する座標位置決め装置の操作方法が提案され、この方法は、表面センサを、第2の軸に関して第1の軸を中心とした第1の角度に位置付けて、第1の測定結果を取得するステップと、表面センサを、第2の軸に関して第1の軸を中心とした第2の角度に位置付けて、第2の測定結果を取得するステップであって、第2の角度が第1の軸に関して第1の角度と反対方向で、表面センサの想定位置からのオフセットが全て第1と第2の測定結果に対して少なくとも部分的に反する影響を有するステップと、第1と第2の測定結果を用いてオフセットを補正または設定するステップと、を含む。第1と第2の測定結果を取得するステップは、表面センサを、第2の軸を中心として回転させるステップを含んでいてもよい。第2の角度は、第1の角度と略同等かつ反対とすることができる。
【0047】
本発明の第3の態様によれば、少なくとも第1の軸を中心として回転自在な表面センサを有する座標位置決め装置の操作方法が提案され、この方法は、表面センサを第1の角方向に位置付け、表面センサを直進運動させることによって第1の測定結果を取得するステップと、表面センサを少なくとも第2の角方向に」位置付け、表面センサを直進運動させることによって少なくとも第2の測定結果を取得するステップであって、第2の角方向は第1の角方向と異なり、表面センサの想定位置からのあらゆるオフセットが第1および少なくとも第2の測定結果に少なくとも部分的に反する影響を与えるようなステップと、第1および少なくとも第2の測定結果を用いてオフセットを補正するステップと、を含む。好ましくは、表面センサの角方向は、第1および少なくとも第2の測定結果の取得中に固定される。好ましくは、表面センサを第2の角方向に位置付けるステップは、表面センサを、少なくとも第1の軸を中心として少なくとも90°回転させるステップを含む。好ましくは、表面センサを第2の角方向に位置付けるステップは、表面センサを回転させて、第1の軸を中心とした第1と第2の角方向の間の最小角度が90°以上となるようにするステップを含む。
【0048】
本発明の第4の態様によれば、表面センサの測定平面に略垂直に延びる少なくとも第1の軸を中心として回転自在な表面センサを有する座標位置決め装置の操作方法が提案され、この方法は、測定平面内の表面センサのオフセットが全て第1の方向に延びるように、表面センサを第1の角方向に置いて第1の測定結果を取得するステップと、測定平面内の表面センサのオフセットが全て第1の方向とは異なる第2の方向に延びるように、表面センサを第1の角方向とは異なる第2の角方向に置いて少なくとも第2の測定結果を取得するステップと、を含む。好ましくは、第2の方向は、2つの直交する成分に分解でき、その一方は第1の方向の正反対である。好ましくは、第2の方向は第1の方向の正反対である。この方法は、第1と第2の測定結果を使って補正するステップを含んでもよい。この方法は、第1と第2の測定結果を用いてオフセットを設定するステップを含んでもよい。
【0049】
本発明の第5の態様によれば、少なくとも第1の軸を中心として回転自在な表面センサと、上記の方法を実行するように構成されたコントローラを備える座標位置決め装置が提案される。
【0050】
本発明の第6の態様によれば、少なくとも第1の軸を中心として回転自在な表面センサを備える測定システムのコントローラによって実行されたときに、測定システムに上記の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラムコードが提案される。
【0051】
本発明の第7の態様によれば、上記のコンピュータプログラムコードが記録されたコンピュータ読取可能な媒体が提案される。
【0052】
本発明のまた別の態様によれば、表面センサが少なくとも2つの軸を中心として回転自在である測定システムの誤差修正方法が提案され、この方法は、表面センサを第1の角オフセットに位置付け、円形の形状構成物を測定して第1の測定結果を提供するステップと、表面センサを、第1の角オフセットと同等かつ反対の第2の角オフセットに位置付け、上記円形の形状構成物を測定して第2の測定結果を提供するステップと、第1と第2の測定結果の差を判定し、これによって測定誤差を判定するステップと、を含む。
【0053】
この方法は、測定誤差を修正するステップを含んでもよい。第1の実施形態において、円形の形状構成物を測定するステップは、第1の軸の周辺で表面センサを回転させ、その一方で第2の軸を中心としたその第1または第2の角オフセットを保持するステップを含む。第2の実施形態において、円形の形状構成物を測定するステップは、表面センサを線形に移動させ、その一方でその角オフセットを保持するステップを含む。表面センサは、測定プローブのプローブ先端またはその他のセンサを備えてもよい。測定システムは、座標位置決め装置の上に取り付けられた測定プローブを備えていてもよく、座標位置決め装置は少なくとも2つの軸の周辺で測定プローブを回転させる。座標位置決め装置は、少なくとも2つの軸における回転運動を提供する関節式プローブヘッドと、CMM(座標測定機)や線形運動を提供するマシンツール等の座標位置決め装置と、を備えてもよい。円形の形状構成物は、例えば、リングゲージ、穴または球であってもよい。
【0054】
本発明のさらに別の態様は、表面センサが少なくとも2つの軸の周辺で回転自在である測定システムと、表面センサを第1の角オフセットに位置付けて、円形の形状構成物を測定して第1の測定結果を提供するステップと、表面センサを第1の角オフセットと同等かつ反対の第2の角オフセットに位置付けて、上記円形の形状構成物を測定して第2の測定結果を提供するステップと、第1と第2の測定結果の差を判定し、それによって測定誤差を判定するステップと、を実行するためのコントローラを備える誤差修正装置を提案する。
【0055】
本発明の好ましい実施形態を、例として、添付の図面を参照しながら説明する。