(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013544
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】明示的な周波数ホッピングを用いるマルチキャリヤ通信システム
(51)【国際特許分類】
H04J 11/00 20060101AFI20161011BHJP
H04B 1/7143 20110101ALI20161011BHJP
H04W 72/04 20090101ALI20161011BHJP
【FI】
H04J11/00 Z
H04B1/7143
H04W72/04 111
H04W72/04 131
H04W72/04 134
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-75452(P2015-75452)
(22)【出願日】2015年4月1日
(62)【分割の表示】特願2013-23789(P2013-23789)の分割
【原出願日】2008年5月16日
(65)【公開番号】特開2015-164316(P2015-164316A)
(43)【公開日】2015年9月10日
【審査請求日】2015年4月28日
(31)【優先権主張番号】60/954,731
(32)【優先日】2007年8月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598036300
【氏名又は名称】テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100166660
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 晴人
(72)【発明者】
【氏名】ダールマン, エリック
(72)【発明者】
【氏名】ヤディング, イルバ
(72)【発明者】
【氏名】パルクヴァル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】スキレルマルク, ペル
【審査官】
佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−294895(JP,A)
【文献】
特開2007−151059(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0064641(US,A1)
【文献】
LG Electronics,UL frequency hopping,3GPP TSG-RAN WG1#49 R1-072349,2007年 5月11日,pp.1-5,URL,http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_49/Docs/R1-072349.zip
【文献】
ETRI,Reliable transmission of 1st UL message in random access,3GPP TSG-RAN WG1#47 R1-063518,2006年11月10日,pp.1-3,URL,http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_47/Docs/R1-063518.zip
【文献】
Nokia Siemens Networks, Nokia,Uplink Scheduling Request for LTE,3GPP TSG-RAN WG1#49 R1-072307,2007年 5月11日,pp.1-2,URL,http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_49/Docs/R1-072307.zip
【文献】
NTT DoCoMo, Fujitsu,Persistent Scheduling in E-UTRA,3GPP TSG-RAN WG1#49b R1-072950,2007年 6月29日,pp.1-6,URL,http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_49b/Docs/R1-072950.zip
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 11/00
H04B 1/7143
H04W 72/04
IEEE Xplore
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信システムにおける送信をスケジューリングする方法であって、
2つ以上のタイムスロットを含むスケジューリング区間においてスケジューリングされた少なくとも1つの携帯端末に対する帯域幅の割当てを決定するステップであって、前記スケジューリング区間は、スケジューリングの単位であるサブフレームと等しい、前記ステップと、
前記スケジューリングされた携帯端末に対する前記帯域幅の割当てに基づいて、前記スケジューリング区間においてスケジューリングされた携帯端末に対する周波数ホッピングパターンを決定するステップであって、前記周波数ホッピングパターンは、前記帯域幅の割当てに依存してスケジューリング区間ごとに決定される、前記ステップと、
前記スケジューリング区間についての前記帯域幅の割当てと前記周波数ホッピングパターンとを前記スケジューリングされた携帯端末へスケジューリング許可信号内で送信するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
スケジューリングされた携帯端末に対する帯域幅の割当てを決定する前記ステップは、前記携帯端末に対するサブキャリヤ数を決定するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スケジューリング区間においてスケジューリングされた携帯端末に対する周波数ホッピングパターンを決定する前記ステップは、前記スケジューリング区間内の異なる複数のタイムスロットについての前記携帯端末に対する周波数オフセットを決定するステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記携帯端末は、上りリンク送信についてスケジューリングされ、
前記スケジューリング区間についての前記携帯端末に対する前記帯域幅の割当てと周波数ホッピングパターンとの前記送信は、前記帯域幅の割当てと前記周波数ホッピングパターンとをスケジューリング許可信号内で送信するステップを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
スケジューリング許可信号を前記スケジューリングされた携帯端末へ送信する前記ステップは、
前記スケジューリングされた携帯端末へ割り当てられた前記サブキャリヤ数と、前記スケジューリング区間の連続するタイムスロット内で該スケジューリングされた携帯端末によって使用される一組の周波数オフセットとを、該スケジューリングされた携帯端末へ送信するステップを含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記サブキャリヤ数と前記一組の周波数オフセットとは、単一のパラメータとして送信されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
周波数ホッピングパターンを決定する前記ステップは、少なくとも1つの同時にスケジューリングされる他の携帯端末に対する帯域幅の割当てにさらに基づくことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記帯域幅の割当てを決定する前記ステップ及び前記周波数ホッピングパターンを決定する前記ステップでは、同一のスケジューリング区間内において同時にスケジューリングされた2つ以上の携帯端末に対して、前記帯域幅の割当てと前記周波数ホッピングパターンとを決定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
複数の携帯デバイスについての送信をスケジューリングする、移動通信システムにおけるスケジューラであって、
2つ以上のタイムスロットを含むスケジューリング区間においてスケジューリングされた少なくとも1つの携帯端末に対する帯域幅の割当てを決定し、ここで、前記スケジューリング区間は、スケジューリングの単位であるサブフレームと等しく、
前記スケジューリングされた携帯端末に対する前記帯域幅の割当てに基づいて、前記スケジューリング区間においてスケジューリングされた携帯端末に対する周波数ホッピングパターンを決定し、ここで、前記周波数ホッピングパターンは、前記帯域幅の割当てに依存してスケジューリング区間ごとに決定され、
前記スケジューリング区間についての前記帯域幅の割当てと前記周波数ホッピングパターンとを前記スケジューリングされた携帯端末へスケジューリング許可信号内で送信する
ことを特徴とするスケジューラ。
【請求項10】
前記スケジューラは、スケジューリングされた携帯端末に対する帯域幅の割当てを、該携帯端末に対するサブキャリヤ数を決定することによって決定することを特徴とする請求項9に記載のスケジューラ。
【請求項11】
前記スケジューラは、前記スケジューリング区間においてスケジューリングされた携帯端末に対する周波数ホッピングパターンを、該スケジューリング区間内の異なる複数のタイムスロットについての前記携帯端末に対する周波数オフセットを決定することによって決定することを特徴とする請求項10に記載のスケジューラ。
【請求項12】
前記スケジューラは、前記携帯端末からの上りリンク送信をスケジューリングし、
前記スケジューラは、前記帯域幅の割当てと前記周波数ホッピングパターンとを、スケジューリング許可信号内で前記携帯端末へ送信することを特徴とする請求項11に記載のスケジューラ。
【請求項13】
前記スケジューラは、前記スケジューリングされた携帯端末へ割り当てられた前記サブキャリヤ数と、前記スケジューリング区間の連続するタイムスロット内で該スケジューリングされた携帯端末によって使用される一組の周波数オフセットとを、該スケジューリングされた携帯端末へ送信することを特徴とする請求項12に記載のスケジューラ。
【請求項14】
前記サブキャリヤ数と前記一組の周波数オフセットとは、前記スケジューラによって単一のパラメータとして送信されることを特徴とする請求項13に記載のスケジューラ。
【請求項15】
前記スケジューラは、さらに、少なくとも1つの同時にスケジューリングされる他の携帯端末に対する帯域幅の割当てに基づいて、周波数ホッピングパターンを決定することを特徴とする請求項10に記載のスケジューラ。
【請求項16】
同一のスケジューリング区間内において同時にスケジューリングされた2つ以上の携帯端末に対して、前記帯域幅の割当てと前記周波数ホッピングパターンとを決定することを特徴とする請求項10に記載のスケジューラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してマルチキャリヤ通信システムに関するものであり、特に、周波数ホッピングを用いる直交周波数分割多重システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周波数ホッピングは、多くの無線通信アプリケーションにおいて使用されているスペクトル拡散技術である。周波数ホッピング・スペクトル拡散システムにおいて、送信機は、その送信周波数を、擬似ランダム・ホッピング・パターンに従って時間とともに変化させる。実際には、送信機は、信号を広い周波数帯域へ拡散するために、送信中にある周波数から別の周波数へ「ホップする」一方で、送信信号は、任意の所与の瞬間において狭い周波数帯域を占有する。本明細書においてタイムスロットとも称されるホッピング期間は、周波数が一定のまま変化しない時間区間である。周波数ホッピングパターンは、送信機がホップする周波数の系列を含む。
【0003】
周波数ホッピングは周波数ダイバーシチをもたらし、周波数ダイバーシチは、異なる複数の周波数においてフェージングが無相関となるようにサブキャリヤ間の間隔を十分に大きくすることによってもたらされ、マルチパスフェージングの影響を低減することに貢献する。ほとんどの移動通信システムは、チャネル符号化を送信機側に適用し、対応するチャネル復号を受信側に適用する。周波数ホッピングによってもたらされる周波数ダイバーシチをうまく利用するために、符号化された情報ブロックは、複数ホップ、即ち複数のタイムスロットにわたって拡散されるべきである。
【0004】
周波数ホッピングは、複数ユーザ間で無線リソースを共有するために使用され得る。従来の周波数ホッピングシステムでは、移動通信システムの同一セル内又は同一セクタ内に属する異なる携帯端末は、同一のタイムスロット内において同一の周波数で同時に送信しないように、相互に直交する周波数ホッピングパターンを割り当てられる。ホッピングパターンが相互に直交することを確保にする1つの方法は、各携帯端末について異なる周波数オフセットを用いて、全携帯デバイスについて同一の基本的なホッピングパターンを使用することである。
【0005】
セル間では、一般的には非直交の周波数ホッピングパターンが使用され、このことは、同一のタイムスロット中に同一の周波数帯域において隣接セル内の2つの携帯デバイスから同時送信が発生し得ることを意味する。これが発生すると、「衝突」が起こり、このことは、対応するタイムスロット中において高い干渉レベルとなることを意味する。しかしながら、チャネル符号化が数ホップの範囲に及ぶことに起因して、チャネル復号器は、一般的に正しく情報を復号し続けることができる。
【0006】
周波数ホッピングは、直交周波数分割多重(OFDM)システムに適用され得る。OFDMシステムでは、広帯域のキャリヤが複数のサブキャリヤに分割される。複数の変調シンボルを広帯域のキャリヤの複数のサブキャリヤにわたって拡散するために、高速フーリエ変換が当該複数の変調シンボルに適用される。周波数ホッピングは、サブキャリヤの割当てを変化させることによってOFDMシステムにおいて実行され得る。
【0007】
近年では、OFDMシステムの上りリンクにおける可変の帯域幅割当ての使用に関心が集まりつつある。基本的な概念は、携帯端末の瞬時チャネル状態、バッファ・レベル、サービス品質(QoS)の要求条件、及びその他の要因に基づいて、携帯端末へ割り当てる帯域幅を変化させることである。ネットワーク内のスケジューラは、複数の携帯端末をスケジューリングするとともに、それらの帯域幅の割当てを決定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
周波数ホッピングはこれまで、可変帯域幅割当てを用いるOFDMシステムにおいて使用されてこなかった。可変の帯域幅割当てを可能にするOFDMシステムへ周波数ホッピング技術を適用する際の困難性は、使用可能なホッピングパターンの数が帯域幅の割当てに応じて変化することにある。さらに、1つのサブフレーム(FDMA)内で異なる帯域幅を使用する2つ以上の携帯デバイスからの送信を混合する場合、各携帯デバイスについてのホッピングの実現性は、他の携帯デバイスに割り当てられた帯域幅に依存する。もう1つの問題は、帯域幅の割当てが携帯デバイスの瞬時のチャネル状態に依存し、このためそれを事前に知ることが不可能なことである。周波数パターンが帯域幅の割当てを考慮することなく確立される場合、帯域幅の割当ては、衝突を回避するようになされなければならず、それによりシステムの効率が低減するであろう。
【0009】
従って、可変の帯域幅割当てを可能にするOFDMシステムにおいて周波数ホッピングを実現するためには、新たなスケジューリング技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、携帯端末に対する可変の帯域幅割当てを可能にするOFDMシステムにおいて周波数ホッピングを実行するための方法及び装置を提供する。可変の帯域幅割当ては、携帯端末の瞬時のチャネル状態に応じて、異なる数のサブキャリヤを異なる携帯端末へ動的に割り当てることによって実現される。周波数ホッピングパターンは、その時点においてスケジューリングされている携帯端末についてのその時点の帯域幅の割当てに基づいて、「動的に」に決定される。帯域幅割当て及び周波数ホッピングパターンは、スケジューリング許可信号(スケジューリング・グラント)(scheduling grant)内で携帯端末へシグナリングされる。周波数ホッピングパターンは事前に定められていないため、スケジューリング許可信号は、スケジューリング区間内の各タイムスロットについての帯域幅割当て及び周波数オフセットを明示的にシグナリングする。
【0011】
本発明は、柔軟性のある帯域幅の送信をサポートするシステムにおいて上りリンクの周波数ホッピングを実行するための、非常に柔軟で、簡易で(低複雑度で)、かつ低オーバヘッドの方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】可変帯域幅及び周波数ホッピングを用いるシングルキャリヤOFDMを実行する典型的な送信機を示す図である。
【
図2】シングルキャリヤOFDM送信機についての典型的なOFDMプロセッサを示す図である。
【
図3】典型的なOFDMキャリヤの構造を示す図である。
【
図4】単一の携帯端末についての典型的な周波数ホッピングパターンを示す図である。
【
図5】2つの携帯端末についての相互に直交する周波数ホッピングパターンを示す図である。
【
図6】可変の帯域幅割当てが、使用可能な周波数ホッピングパターンに対してどのように影響を与えるかを示す図である。
【
図7】可変の帯域幅割当てと組み合わされた典型的な周波数ホッピングパターンを示す図である。
【
図8】帯域幅割り当て及び周波数ホッピングパターンを決定するスケジューラを含む移動通信ネットワークにおける典型的なアクセス・ノードを示す図である。
【
図9】移動通信システムにおける上りリンク送信をスケジューリングするスケジューラによって実行される典型的な方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
これより図面を参照して、本発明の一実施形態に係る典型的な送信機を示し、当該送信機を番号10によって大まかに示す。送信機10は、シングルキャリヤ直交周波数分割多重(SC−OFDM:Single Carrier Orthogonal Frequency Division Multiplexing)として知られる伝送方式を実行する。可変の帯域幅の割当てと周波数ホッピングとが、無線リソースを効率よく使用するために採用される。可変帯域幅割当ては、複数の携帯端末の瞬時のチャネル状態に応じて、異なる数のサブキャリヤを異なる複数の携帯端末に割り当てることよって実現される。周波数ホッピングパターンは、その時点の帯域幅割当てに基づいて「動的に(on the fly)」に決定される。帯域幅割当て及び周波数ホッピングパターンは、スケジューリング許可信号(スケジューリング・グラント)内で携帯端末へシグナリングされる。
【0014】
図1を参照すると、送信機10は、送信信号プロセッサ12、直交周波数分割多重(OFDM)プロセッサ14、及び、送信フロントエンド16を備える。送信信号プロセッサ12は、遠隔端末への送信用の、符号化され変調された信号を生成する。送信信号プロセッサ12は、直交振幅変調(QAM)又は4相位相偏移変調といった任意の既知の形式の変調を使用し得る。OFDMプロセッサ14は、送信信号プロセッサ12から変調済みの信号を受信するとともに、OFDM変調を適用して送信信号を生成する。送信信号プロセッサ12及びOFDMプロセッサ14の機能は、1つ以上のデジタル信号プロセッサによって実行されてもよい。送信フロントエンド16は、送信アンテナ18と連結されている。送信フロントエンド16は、送信信号をアナログ形式に変換するデジタル・アナログ変換器と、送信信号をフィルタリング及び増幅する無線周波数回路とを備える。
【0015】
図2は、シングルキャリヤOFDM(SC−OFDM)と称されるOFDM伝送の一形式を実行する典型的なOFDMプロセッサ14を示す。
図2に示す複数の構成要素は、1つ以上のプロセッサによって実行され得る機能的な要素を表す。OFDMプロセッサ14は、離散フーリエ変換(DFT)モジュール22と、サブキャリヤ・マッピング回路24と、逆離散フーリエ変換(IDFT)モジュール26と、サイクリック・プレフィックス(CP)モジュール28とを備える。任意の変調アルファベットのM個の変調済みのシンボルのブロックは、サイズMのDFTモジュール22へ入力される。DFTモジュール22は、当該変調シンボルに対してDFTを実行することにより、当該変調シンボルを時間領域から周波数領域へ変換する。マッピング回路24は、DFTモジュール22によって出力された周波数サンプルを、N>Mの、サイズNのIDFTモジュールの対応する入力にマッピングする。IDFTモジュール26の未使用の入力は、0に設定される。IDFTモジュール26は、周波数サンプルを元の時間領域へ変換する。本発明のいくつかの実施形態においては、元の時間領域への変換前に、帯域幅の拡張とスペクトル整形(図示せず)とが、周波数領域における周波数サンプルに対して適用され得る。例えば、スペクトル整形回路は、周波数領域サンプルに対して半二乗余弦関数等の周波数整形関数を乗算することによって適用され得る。単一ブロックの複数の変調シンボルに対応する送信信号は、本明細書ではOFDMシンボルと称する。その後、サイクリック・プレフィックス・モジュール28は、OFDMシンボルに対してサイクリック・プレフィックスを付加する。
【0016】
図2に示すシングルキャリヤOFDMは、DFTに基づくプレコーディングを用いるOFDMと考えることができ、各IDFT入力は1つのOFDMサブキャリヤに対応する。従って、DFT拡散OFDM、又はDFTS−OFDMという用語は、
図2の送信機構造を記述するためにしばしば用いられる。DFTに基づくプレコーディングの使用により、最終的な送信信号の「シングルキャリヤ」特性が与えられ、このことは、各変調シンボルが全送信帯域幅に「拡散される」こと、及び、当該送信信号が通常のOFDM伝送と比べて比較的低いピーク対平均電力比を有することを意味する。IDFTモジュール26の出力においてf
sのサンプリングレートを想定すると、送信信号の公称の帯域幅は、BW=M/N・f
sとなる。
【0017】
図1に示すOFDM送信機10は、DFTモジュール22へ入力される変調シンボルのブロックサイズMを変化させることによって、瞬時の送信帯域幅を変化させることを可能にする。ブロックサイズMを増加させることにより、送信に必要な瞬時の帯域幅が増加する一方で、ブロックサイズMを減少させることにより、送信に必要な瞬時の帯域幅が減少する。さらに、DFT出力がマッピングされるIDFT入力をシフトさせることによって、送信対象の信号は、周波数領域においてシフトされ得る。
【0018】
図3は、上りリンク伝送用の典型的なOFDMキャリヤの構造を示す。
図3の縦軸は周波数領域を表し、横軸は時間領域を表す。周波数領域においては、無線リソースは複数の狭帯域のサブキャリヤに分割される。典型的なOFDMキャリヤは、何百個、又は実に数千個ののサブキャリヤを含む。時間領域においては、無線リソースはタイムスロットに分割される。各タイムスロットは、複数のシンボル期間を含む。この例において、1つのタイムスロットには、7個のシンボル期間が含まれる。各タイムスロット内のシンボル期間のうちの1つは、パイロットシンボルを送信するために使用される。各タイムスロット内の残りの6個のシンボルは、データ信号及び制御信号の少なくとも何れかを送信するために使用される。1タイムスロット内のサブキャリヤは、リソースブロックとして知られる単位にグループ化され得る。例えば、本明細書で開示した典型的な実施形態で、1個のリソースブロックは、1個のタイムスロットに等しい期間にわたって12個のサブキャリヤを含む。
【0019】
上りリンクのスケジューリングを目的として、上りリンクの無線リソースは、時間領域において、サブフレームと称される複数のスケジューリング・ユニットに分割される。サブフレームは、2つ以上のタイムスロットを含む。本明細書で説明する典型的な実施形態において、サブフレームは、2個のタイムスロットを含むものの、異なる数のタイムスロットを使用してもよい。各サブフレームの間に、移動通信ネットワーク内の基地局等のアクセス・ノードは、上りリンクの送信のために1つ以上の携帯端末をスケジューリングし得る。アクセス・ノードは、スケジューリング許可信号を下りリンク制御チャネルで送信することによって、スケジューリングされた携帯端末に知らせる。
【0020】
いくつかのシステムでは、システムスループットの向上のために、直交多重方式と組み合わされた可変の帯域幅の割当てが使用され得る。OFDMシステムでは、所与のタイムスロットの間に、使用可能な全帯域幅を単一の携帯端末に対して割り当てることは効率的ではないであろう。携帯デバイスが実現し得るデータレートは、携帯デバイスの使用可能な電力によって制限される傾向にある。使用可能な全帯域幅を電力制限された携帯デバイスに割り当てることは、システムリソースの浪費につながるであろう。携帯デバイスが使用可能な帯域幅の全体を使用できない場合、より少ない送信帯域幅が当該携帯デバイスに対して割当てられ得るとともに、残りの帯域幅が別の携帯デバイスに割り当てられ得る。このように、2つ以上の携帯デバイス間で使用可能な帯域幅を共有するために、周波数分割多重(FDM)等の直交多重方式が使用され得る。
【0021】
本発明によれば、周波数ホッピングは、送信される信号のフェージングに対する耐性を向上させるために、可変帯域幅割当てと組み合わせて使用され得るとともに、それにより、送信中に起こり得るビット誤りを低減し得る。周波数ホッピングシステムにおいて、送信機は、例えば擬似ランダム・ホッピングパターンに従って、その送信周波数を時間とともに変更する。
図4は、12個のリソースブロック及び12個のタイムスロットにおけるホッピングパターンを示す。
図4に示すように、送信機は、送信中に1つの周波数から別の周波数へ「ホップする」ことによって信号を広い周波数帯域にわたって拡散する一方で、送信される信号は、任意の所与の瞬間においては狭い周波数帯域を占有する。OFDMシステムにおいて、周波数ホッピングは、スケジューリング区間中に携帯端末に割り当てられたリソースブロックの周波数位置をシフトすることによって実行され得る。例えば、使用されるスケジューリング区間が1サブフレームである場合、携帯端末は、サブフレーム内の各タイムスロットにおいて異なるリソースブロックを割当てられ得る。
【0022】
従来の周波数ホッピングシステムにおいて、移動通信システムの同一セル内又は同一セクタ内の異なる携帯端末は、同一のタイムスロット内において同一の周波数上で同時に送信しないように、相互に直交する周波数ホッピングパターンを割り当てられる。ホッピングパターンが相互に直交することを確保にする1つの方法は、各携帯端末について異なる周波数オフセットを用いて、全携帯デバイスについて同一の基本的なホッピングパターンを使用することである。
図5は、2つ以上の携帯デバイス間で使用可能な帯域幅を共有するためにどのようにホッピングが使用されるかを示す。
図5に示すように、各携帯端末は、同一の周波数ホッピングパターンを使用する。しかしながら、携帯デバイス2は、携帯端末1と比較して3リソースブロック分のオフセットを有する。なお、リソースブロックは、例えば、f
5に対して3のオフセットはf
0となるように、「ラップアラウンド(wraparound)」する。
【0023】
周波数ホッピングは、これまでに周波数分割多重(FDM)、及び可変帯域幅割当てを採用するOFDMにおいて使用されてこなかった。可変の帯域幅割当てを可能にするOFDMシステムへ周波数ホッピング技術を適用する際の困難性は、使用可能なホッピングパターンの数が帯域幅の割当てに応じて変化することにある。広帯域信号については、狭帯域信号と比較して少数のホッピングオプションしか存在しない。一例として、周波数領域において8個のリソースブロックを用いるOFDMシステムにおいて、1個のリソースブロックに相当する送信帯域幅について、異なる8個のホッピングの実現性(8個の取り得る周波数位置)が存在する。しかしながら、7個のリソースブロックの送信帯域幅については、2個のホッピングの実現性(2個の取り得る周波数位置)しか存在しない。このように、両方のシナリオにおいて同一のホッピングパターンを使用することはできない。
【0024】
さらに、1個のサブフレーム(FDMA)内で異なる帯域幅を使用して2つ以上の携帯デバイスからの送信を混合する場合、各携帯デバイスについてのホッピングの実現性は、他の携帯デバイスに対して割り当てられた帯域幅に依存する。この制約は
図6に示している。
図6は、8個のリソースブロックの全体を共有する2個の携帯端末を示す。携帯端末1は7個のリソースブロックを割り当てられ、携帯端末2は1個のリソースブロックのみを割り当てられる。この簡略化した例を観察すると、携帯端末1については取り得る周波数位置が2個しか存在しない。他のユーザが存在しない場合には、携帯端末2は8個の実現性を有するであろう。しかしながら、携帯端末1との衝突を回避するために、携帯端末2もまた、2つの取り得る周波数位置のみに限定される。
【0025】
第3の問題は、帯域幅の割り当てが携帯デバイスの瞬時のチャネル状態に依存し、そのためにそれを事前に知ることができないということである。周波数パターンが帯域幅の割り当てを考慮することなく確立される場合、予め定められた周波数ホッピングパターンによって、望ましくない制約が帯域幅の割当てに強いられるであろう。この場合、帯域幅の割当ては、衝突を回避するようになされなければならず、それによりシステムの効率が低減されるであろう。
【0026】
本発明は、可変の帯域幅割当てを可能にするOFDMシステムにおいて周波数ホッピングを実行する方法を提供する。本発明によれば、基地局における、又はネットワーク内のスケジューラは、所与のスケジューリング区間中にスケジューリングされる各携帯端末によって使用される帯域幅割当てと周波数ホッピングパターンとを動的に決定する。このため、スケジューリングは、予め定められたホッピングパターンには基づかない。従って、スケジューラは、帯域幅割当てと周波数ホッピングパターンとを、スケジューリングされた携帯端末に対してスケジューリング許可信号内で明示的にシグナリングする。このように、周波数ホッピングパターンは、帯域幅の割当てに依存して、1つのスケジューリング区間から次のスケジューリング区間において変更され得る。
【0027】
図7は、典型的な一実施形態によってスケジューリングがどのように実行されるかを示す簡易な例を提供する。
図7は、24個のリソースブロックを有するOFDMキャリヤを示す。以下の議論では、インデックスiは、携帯端末を示し、インデックスjは、タイムスロットを示し、L
iは、リソースブロックの番号として表現されたi番目の携帯端末についての帯域幅割当てであり、K
i(j)は、j番目のタイムスロットにおけるi番目の携帯端末についての周波数オフセットである。3個の携帯端末が、例えば1サブフレームの、2個のタイムスロットを含むスケジューリング区間中に同時に送信するようにスケジューリングされている。携帯端末1として表示された第1携帯端末は、8個のリソースブロックを割り当てられ、携帯端末2として表示された第2携帯端末は、12個のリソースブロックを割り当てられ、携帯端末3として表示された第3携帯端末は、4個のリソースブロックを割り当てられている。帯域幅の割当ては、スケジューリング区間中の各タイムスロットにおいて同一である。第1タイムスロット(スロット「0」)において、携帯端末1は、周波数オフセットK
1(0)=12を割り当てられ、携帯端末2は、周波数オフセットK
2(0)=0を割り当てられ、携帯端末3は、周波数オフセットK
3(0)=20を割り当てられている。第2タイムスロット(スロット「1」)において、携帯端末1は、周波数オフセットK
1(1)=0を割り当てられ、携帯端末2は、周波数オフセットK
2(1)=12を割り当てられ、携帯端末3は、周波数オフセットK
3(1)=8を割り当てられている。
【0028】
図7に示す例から、3個のパラメータが、各携帯端末に対してシグナリングされることを必要とすることがわかる。即ち、スケジューリング区間における帯域幅割当てL
iと、第1タイムスロット用の周波数オフセットK
i(0)と、第2タイムスロット用の周波数オフセットK
i(1)である。予め定められたホッピングパターンが使用されないために、第2タイムスロット用の周波数オフセットは、第1タイムスロットにおいて使用される周波数オフセットに依存しないことに留意されたい。このように、上記の例において、基地局は、第1タイムスロットと同様に、第2タイムスロット用の周波数オフセットをシグナリングする必要がある。この手順は、本明細書において明示的なシグナリングと称される。
【0029】
3個のパラメータ、L
i(リソースブロック数単位で測定される、割り当てられた帯域幅)、K
i(0)(第1スロットについての割当ての周波数オフセット)、及び、K
i(1)(第2スロットについての割当ての周波数オフセット)は、相互に独立してシグナリングされ得る。しかしながら、L
iの値と、K
i(0)及びK
i(1)の取り得る値との間には依存性が存在する。より正確には、Nを使用可能なリソースブロックの総数とすると、所与のL
iの値について、K
i(0)及びK
i(1)は、0からN−L
iまでの範囲における値のみを取り得る。このため、パラメータL
i、K
i(0)、及びK
i(1)を一緒に符号化することによって、L
i、K
i(0)、及びK
i(1)をシグナリングするためのビットの総量を低減し得る。これは、L
i、K
i(0)、及びK
i(1)を3個の異なる独立したパラメータとしてシグナリングするのではなく、むしろL
i、K
i(0)、及びK
i(1)の組み合わせを単一のパラメータとしてシグナリングするように、表現され得る。
【0030】
いくつかのシナリオにおいて、周波数ホッピングは必ずしも使用されなくてよい。このような1つのケースは、周波数領域のチャネルに依存したスケジューリングが使用される場合である。チャネルに依存したスケジューリングが使用される場合、K
i(1)の明示的なシグナリングは、不必要なオーバヘッドを意味する。これを回避するために、異なるフォーマットのスケジューリング許可信号が提供されてもよく、この場合、1つのフォーマットはパラメータK
i(1)を含み、1つのフォーマットはパラメータK
i(1)を含まない。
【0031】
図8は、移動通信システムにおける上りリンク送信をスケジューリングする典型的なアクセス・ノード50を示す。アクセス・ノード50は、1つ以上の携帯端末と通信するためのアンテナ54と連結された送受信回路52と、アクセス・ノード50の動作を制御するための制御回路56とを備える。制御回路56は、無線リソース制御等の様々な制御機能を実行する1つ以上のプロセッサを備えていてもよい。制御回路56は、上述のように上りリンク送信をスケジューリングするスケジューラ58を含む。スケジューラ58は、何れの携帯端末を各スケジューリング区間中の送信のためにスケジューリングし、当該スケジューリングした携帯端末に対してスケジューリング許可信号を送信するかの決定に関与する。
【0032】
図9は、スケジューラ58によって実行される典型的な手順100を示す。
図9に示す手順100は、周波数ホッピングが用いられる場合、各スケジューリング区間において繰り返される。所与のスケジューリング区間の開始前に、スケジューラ58は、携帯端末を選択するとともに、当該選択した携帯端末に対する帯域幅の割当てを決定する(ブロック102)。携帯端末の選択と、帯域幅の割当ての決定とは、チャネル状態、バッファ・レベル、及びその他の関連性のある要因に基づく。いったん帯域幅の割当てが決定されると、スケジューラ58は、スケジューリングされた各携帯端末用の周波数ホッピングパターンを決定するとともに(ブロック104)、スケジューリングされた各携帯端末に対してスケジューリング許可信号を送信する(ブロック106)。
【0033】
本発明は、柔軟性のある帯域幅の送信をサポートするシステムにおいて上りリンクの周波数ホッピングを実行するための、非常に柔軟で、簡易で(低複雑度で)、かつ低オーバヘッドの方法を提供する。概して、当業者は、本発明が上述の説明及び添付の図面によって限定されないことを理解するだろう。それよりもむしろ、本発明は、特許請求の範囲及びそれらの法的な均等物によってのみ限定される。