(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外部シュラウド(24)の半径方向外側舌部(38)が、空洞(42)の内側に向かって半径方向に配向された突起(86)を担持し、前記突起(86)は前記クリップ(605、606)の軸方向保持ストップを形成する、請求項13に記載のステータ角度セクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、特に前および/または後縁において、ステータセクタの各羽根が動作中に受ける機械的応力の制限に有効な、ステータ角度セクタを提案しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、タービンエンジン圧縮機用のステータ角度セクタを用いて達成され、セクタは、放射対称の軸を中心に延在し、そして:一方が他方の中に同軸に配置された外部シュラウドおよび内部シュラウドと;前記シュラウドの間で半径方向に延在してその半径方向末端でそこに接続されている少なくとも1つの羽根と、を含み;外部シュラウドは、エンジンのケーシング上にステータ角度セクタを実装するための第一および第二実装手段を有し、前記第一および第二実装手段は、軸と平行に反対方向に配向され、中間部によって互いに接続されており;セクタは、外部シュラウドが、前記中間部から延在し、自由末端が設けられ、羽根の半径方向外側末端に接続された、少なくとも1つの軸方向末端部を有すること;少なくとも1つの減衰材形成インサートは末端部と接触するのに適していること;および末端部の振動の振幅の所定値を超えると、減衰材インサートおよび末端部は、末端部とともに移動する総移動質量を変化させ、それによって前記末端部の振動挙動を修正するように、互いに対して移動するのに適していることを、特徴とする。
【0012】
本願において、そして別途指定されない限り、「上流」および「下流」は、エンジンを通る気体の通常の流れ方向(上流から下流へ)に対して定義される。さらに、エンジンの軸は、エンジンの放射対称の軸である。軸方向は、それに沿ってエンジンの軸が延在する方向に対応し、半径方向は、前記軸と直交する方向である。同様に、「軸方向」面はエンジンの軸を含む平面であり、「半径方向」面は前記軸と直交する平面である。別途指定されない限り、「軸方向の」、「半径方向の」、「軸方向に」、「半径方向に」という形容詞および副詞は、上記で指定された軸および半径方向を基準として使用される。最後に、別途指定されない限り、「内部」および「外部」という形容詞は、ある要素の内側の部分または面(すなわち半径方向内側の部分または面)が同じ要素の外側の面または部分(すなわち半径方向外側の面または部分)よりもエンジンの軸に近くなるように、半径方向を基準として使用される。
【0013】
本願において、「軸方向末端部」という用語は、ステータセクタの軸方向に延在する外部シュラウドの部分を指定するために使用される。有利なことに、この部分は、減衰のための振動運動が位置する羽根の部分に、直接接続される。
【0014】
本願において、減衰材形成インサートは、末端部に接続された羽根の振動のレベルが制限され得るように、動作中の末端部の半径方向移動に対抗するのに役立つ。減衰材インサートと末端部との間の相互作用は、以下により詳細に説明される。
【0015】
動作の一例において、静止している減衰材インサートは、末端部に対して押しつけられているか、または少なくとも末端部と接触しているかまたはこれに固定されている。
【0016】
末端部の振動の振幅の第一範囲では、減衰材インサートおよび末端部は互いに対して固定されたままであり、これらは一緒に振動する。すると、末端部に固定された総移動質量は、末端部および減衰材インサートの質量の合計に対応する。
【0017】
とはいえ、減衰材インサートは、恒久的接続によって末端部に接続されていない。その結果、末端部が十分なレベルの振動運動に到達すると(すなわち末端部の半径方向移動が限界値に到達すると)、慣性の効果の下で、減衰材は末端部と接触しなくなるか、またはもはや末端部に固定されなくなる。このような状況下では、減衰材インサートおよび末端部は個別に振動し、末端部に固定された総移動質量は、末端部のみの質量に等しい。
【0018】
末端部に固定された総移動質量を修正することによって、減衰材インサートは、振動モードに対抗し、振動周波数を修正する。これは、ステータの振動モードが共振するのを防止する。減衰材インサートは、自身の共振周波数の1つに対応しない周波数で励起源によって励起され、したがってインサートは、共振するのではなく、むしろステータのシュラウドの移動に対抗するのに貢献する。
【0019】
動作の別の例において、末端部と静止している減衰材インサートとの間の接触は、不確実である(恒久的ではない)。この接触の喪失は、たとえば接触面が摩耗してきた結果として生じるかも知れない。このような状況下では、末端部の低レベルの振動で、前記末端部に固定された総移動質量は、減衰材インサートおよび末端部の質量の合計よりも少ない。
【0020】
末端部が十分なレベルの振動運動に到達すると(すなわちその半径方向移動が、末端部と減衰材インサートとの間に存在する初期間隙を克服するのに十分であるとき)、減衰材は末端部に対して押しつけられ、その質量が末端部の質量に加えられる。ここでもまた、末端部に固定された総移動質量の変化が、振動周波数の修正を引き起こす。この周波数修正のため、もはやいかなる共振も存在しない。
【0021】
本発明の一実施形態において、末端部は、外部シュラウドの軸方向末端に向かって開放している少なくとも1つの空洞を定義するために、その外側に半径方向に配置された実質的に同軸の舌部と協働する。言い換えると、外部シュラウドは、少なくとも1つの軸方向末端に、前記軸方向末端に向かって開放しており、末端部と、第一および第二実装手段のうちの1つを担持する外側半径方向舌部との間に延在する、空洞を含む。
【0022】
特定の実施形態において、外部シュラウドは、外部シュラウドの上流末端に向かって開放している上流空洞と、外部シュラウドの下流末端に向かって開放している下流空洞とを含み、少なくとも1つの減衰材形成インサートが、前記空洞のうちの少なくとも1つに収容される。一実施形態において、少なくとも1つの減衰材形成インサートは、外部シュラウドの各空洞内に設けられてもよい。このような状況下では、外部シュラウドは、外部シュラウドの上流および下流実装手段に接続された中心の中間部、および前記中間部から一方は上流に延在して他方は下流に延在する、2つの軸方向末端部を有することは、理解され得る。
【0023】
一実施形態において、外部シュラウドは一体品として作られる。言い換えると、実装手段、中間部、および(1つまたは複数の)軸方向末端部はすべて、一体品を含む。外部シュラウドは、たとえば鋳造によって直接獲得されてもよい。別の変形実施形態において、その形状は同様に、機械加工作業を実行した結果であってもよい。
【0024】
別の実施形態において、ステータセクタ全体が、一体品として作られてもよい。言い換えると、外部シュラウド、内部シュラウド、および(1つまたは複数の)羽根によって構成されるユニットが、互いに組み合わせられたいくつかの部品のセットよりも作りやすく強度の高い、一体型構造を構成する。
【0025】
本発明の一実施形態において、減衰材インサートは、外部シュラウドの軸方向末端部上に間隙を伴わずに実装されるのに適した、リング部である。リング部はたとえば、環状リングの、または実質的に円筒形のリングの、一部であってもよい。
【0026】
一実施形態において、減衰材インサートの形状を補完する形状の少なくとも1つの凹部が、軸方向末端部に形成され、減衰材インサートの軸方向保持手段を形成する。
【0027】
本発明の一実施形態において、減衰材インサートは、スリーブ部、および前記スリーブ部から半径方向外向きに、外部シュラウドの開放軸方向末端に向かって延在するフック部を有する、弾性バネ形成クリップを含み、前記スリーブ部は外部シュラウドの末端部に対して半径方向に圧迫するのに適しており、前記フック部は、たとえば外部シュラウドの半径方向外側舌部に対して、またはエンジンのケーシングの面に対してなど、前記末端部の反対側の表面に対して半径方向に圧迫するのに適している。本願全体にわたって、「クリップ」は、スリーブ部、およびスリーブ部から半径方向外向きに、それが受容される空洞の開放末端に向かって延在するフック部を含む、リング部であるように定義される。
【0028】
本発明の別の実施形態において、クリップのスリーブ部は、外部シュラウドの中間部に対して圧迫するのに適している。より具体的には、ならびに外部シュラウドが軸方向末端部と半径方向外側舌部との間に定義された空洞を有するときには、クリップのスリーブ部は、空洞の内部に向かって配向されたその軸方向末端を通じて、末端部および半径方向外側舌部を互いに接続して空洞の末端壁を形成する、外部シュラウドの中央部に対して圧迫するのに適している。この目的のため、スリーブ部は、たとえば実質的に円筒の一部である主要部を有してもよく、これは半径方向外向きに広がる部分によって、空洞の内部に向かって配向されたその軸方向末端において延在してもよい。
【0029】
スリーブ部はまた、その半径方向内側面に、少なくとも1つの陥凹も含んでよい。このような陥凹は、重量の削減を提供し、クリップと外部シュラウドの末端部との間の接触がよりよく位置決めされ得るようにする。
【0030】
本発明の別の実施形態において、外部シュラウドの半径方向外側舌部は、空洞の内部に向かって半径方向に配向された突起を有し、前記突起は前記クリップの軸方向保持ストップを形成する。このように、クリップが外部シュラウドの空洞内に保持されるので、誤実装を回避することが可能である。具体的には、クリップは、空洞から外れたり、実装中に紛失されることが、防止される。この配置はまた、クリップとケーシングとの間の直接接触を回避することを可能にし、それによってケーシングを保護する。
【0031】
別の実施形態において、軸方向末端部は、中に配置された調速機おもりまたは減衰材形成インサートを有する、閉鎖されて漏れ止めされたチャンバまたは囲いの少なくとも一部を定義する。
【0032】
一例として、減衰材インサートは、固体、粉末、具体的には金属粉末、または実際には液体(あるいは動作温度で溶融するその他何らかの物質)であってもよい。減衰材インサートは好ましくは、たとえば鋼、ニッケル、タングステン、劣化ウランなど、高密度の材料で作られるように選択される。
【0033】
一般的に、チャンバは、減衰材インサートとチャンバとの間の相対的移動を低減するように、ほぼ完全に充填されるべきである。
【0034】
粉末を使用するとき、その粒径は好ましくは、システムのパラメータが経時的に変化するのを回避するように、非常に細かくなるように選択される。
【0035】
動作のモードは、上記で説明されたのと同一である。減衰材インサートは、外部シュラウドの軸方向末端部と接触する位置と、前記末端部ともはや接触しない位置との間で、移動する。とはいえ、このような状況下では、末端部は外向きおよび内向き方向の両方で半径方向のピーニングを受ける可能性がある。
【0036】
一般的に、本発明の実施形態のすべてにおいて、羽根の振動の減衰は、以下のように要約され得る。
【0037】
外部シュラウドの軸方向末端部は、振動しながら、第一限界位置と第二限界位置との間で移動する。
【0038】
これら2つの位置のうち少なくとも1つにおいて、減衰材インサートは末端部と接触している。
【0039】
第一および第二位置の間の中間位置において、および/または減衰材インサートがこれらの位置のうちの1つのみで末端部と接触する場合には、これらの位置の他方では、減衰材インサートは末端部と接触していない。
【0040】
このため、本発明によれば、末端部に固定された総移動質量が前記部分の質量プラス減衰材インサートの質量に等しい少なくとも1つの瞬間t1、および前記質量が末端部のみの質量まで減少した少なくとも1つの瞬間t2が存在する。
【0041】
瞬間t1およびt2の間で質量を修正することによって、振動が減衰されて共振が回避されるように、周波数が修正される。
【0042】
本発明はまた、上記で定義された1つ以上のステータ角度セクタで作られたタービンエンジンステータも提供する。本発明はまた、少なくとも1つのそのようなステータを含むタービンエンジンも提供する。
【0043】
本発明のその他の特徴および利点は、非限定的な例によって与えられる本発明の実施形態の以下の記載を読むと明らかになる。記載は、以下の添付図面を参照する。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1Aに模式的に部分的に示される圧縮機10は、複数の圧縮段を含むが、そのうちの2つのみが示されている。各圧縮段は、タービンエンジンの回転子軸(図示せず)によって担持されるディスク14上に実装された動翼12の環状列、およびエンジンの外部ケーシングによって担持され、端から端まで円周方向に配置された1つ以上の角度ステータセクタによって構成される、静止したステータ18を含む。圧縮機の放射対称の軸は、
図1AにおいてAが付されている。
【0046】
図1Aに示されるタイプのステータセクタ18は、たとえば円筒形の部分を形成し、一方が他方の内部に延在し、1つ以上の半径方向羽根26によって互いに接続されている、内部および外部シュラウド22および24を有する、これらの羽根26の各々は、凹状または圧力側表面、ならびに凸状または吸引側表面を有し、これらの表面は、圧縮機10を流れる空気のための前縁28および後縁30を形成するように、その上流および下流末端で互いに接続されている。
【0047】
内部シュラウド22は、内部シュラウド22の下で発生する可能性のある気体の逆流を回避するために、回転子軸(図示せず)によって担持される半径方向ワイパ34と協働するため、その内部表面上に摩耗性被膜32を担持する。
【0048】
図1Aに示される例において、ステータセクタ18の外部シュラウド24は、一体品として作られており、羽根26の外部半径方向末端が接続された半径方向内側舌部36、および前記半径方向内側舌部36の周りで同軸になっている半径方向外側舌部38を有し、これら舌部は中央部40によって互いに接続されている。
【0049】
やはり図示される例において、中央部40は外部シュラウド24の上流末端に位置し、半径方向内側および外側舌部36および38の上流末端はそこに直接取り付けられている。このため外部シュラウド36の下流末端に向かって開放している空洞42は、(空洞の壁を形成する)半径方向内側および外側舌部36および38によって、ならびに(空洞の末端壁を構成する)中央部40によって、定義される。
【0050】
図示されていない実施形態において、ステータセクタ18の羽根26のすべてまたはいくつかだけの間の半径方向内側舌部36内に、スロットも作られてよい。
【0051】
その軸方向末端の各々に、外部シュラウド24は、エンジンのケーシング20上にステータセクタ18を実装する手段を有する。
図1Aにおいて、これらの実装手段は、中央部40から上流に延在する円筒形の一部の形態の上流実装タブ44と、実質的に半径方向外向きに延在するリング部48およびリング部48の外部半径方向末端から下流に延在する円筒部50で構成される、半径方向外側舌部38の末端に形成された下流実装タブ46と、を含む。これら実装タブ44、46の各々は、ケーシング20内の対応する溝52、54と協働するためのものである;
この例において、半径方向外側舌部38および中央部40は、実装タブ44および46を互いに接続する中間部41を形成する。
【0052】
半径方向内側舌部36は、中間部41から延在し、自由末端43が設けられ、羽根26の外部半径方向末端に接続された、軸方向末端部を形成する。
【0053】
実装タブ44、46とケーシング20の溝52、54との間の嵌合から離れた末端部36が、前記タブ44、46に直接接続された外部シュラウド24の領域(41)よりもはるかに弱い剛性を有することは、容易に理解され得る。末端部36は有利なことに、さらに柔軟にするように、可能な限り細くなっている。
【0054】
図3Aから
図5に示される、簡素化された変形実施形態において、下流実装タブはまた、単に半径方向外側舌部38の末端に位置する部分によって、ならびに円筒46’の単一の部分の形態で、構成されてもよいことに、注意すべきである。
【0055】
本発明において、外部シュラウド24の空洞42は、減衰材形成インサート(以下、「減衰材インサート」と称される)を受容するためのものである。
【0056】
図1Aの例において、この減衰材インサートは、たとえば、ステータを形成するために端から端まで円周方向に互いに接続された複数のステータセクタ18のそれぞれの空洞42によって形成された、環状空洞内に実装するための環状リングである。より正確には、所定のステータセクタのため、ステータセクタの空洞42内に収容され、ステータセクタと同じ角度セクタにわたって延在する、この環状リングの部分601によって、減衰作用が働く。
【0057】
環状リングは、単一の環状片として構成されてもよい。変形例として、これは同様に、360°リングを形成するために、端から端まで互いに接続された複数のリング部から作られてもよい。この目的のため、各リング部は、その2つの半径方向末端の各々に、フック状の要素、または張力の下で2つの部品をともに保持するためのその他いずれかの機械的連結手段を、含んでもよい。
【0058】
軸方向面のリング断面を実質的に補完する形状の環状溝部62は、半径方向内側舌部36の外側面に設けられ、リング部601の軸方向保持手段を形成する。
【0059】
リング部601は、好ましくはステータセクタ上に間隙を伴わずに実装される。とはいえその締結は、部品の異なる膨張などの極端な状況で(具体的には臨界モードの共振の瞬間に)、および具体的には温度に応じて、最適化されてもよい。
【0060】
外部シュラウド24上のリング部601の減衰作用は、以下のように発生する:静止時、リング部601は、外部シュラウド24の半径方向内側舌部36に対して押しつけられているだけである。リング部601の半径方向移動を妨げる部品はない。加えて、半径方向内側舌部36とリング部601を固定する、溶接、ろう付けなどのタイプの恒久的接続もない。動作中、半径方向内側舌部の振動振幅値の第一範囲にわたって、リング部601および半径方向内側舌部36は一体に移動する(すなわち、これらの部品の両方が一緒に振動する)。半径方向内側舌部36が振動の限界振幅に到達すると、半径方向内側舌部と一緒の移動における総質量が変化するように、リング部601は半径方向内側舌部から分離する。半径方向内側舌部のこの質量および剛性の変化は、部品の各々の共振モードの周波数の変化を招き、この周波数はもはや(1つまたは複数の)励起源の周波数には対応せず、したがって減衰されている。リング部601の存在によって生じた状態は、連続的にエネルギーを消散しないという利点を有する、不安定な状態である。
【0061】
図1Bは、ステータセクタの外部シュラウド24が軸方向空洞を有していない、
図1Aの実施形態の変形例を示す。
【0062】
上述の例にあるように、外部シュラウド24は、上流を向いている第一実装タブ44、下流を向いている第二実装タブ46、および2つの実装タブ44および46ならびに羽根26の上端部にも接続されている中間部41を有する。
【0063】
この変形例において、第二実装タブ46は、その軸方向において、外部シュラウド24の中央に向かって位置し、すなわち上記の例よりもさらに上流に位置している。この例における外部シュラウド24は、外側半径方向舌部を有していない。
【0064】
羽根26の上部末端に接続されてエンジンのケーシング20の一部に対向している末端部36のみが、中間部41から下流に延在する。
【0065】
図1Aを参照して先に記載された減衰材インサート601は、まったく同じように動作するために、中間部41と自由末端43との間で、この末端部36上に位置してもよい。
【0066】
図2Aおよび
図2Bは、減衰材インサートが、半径方向内側舌部36の外側面に対して静止時にその内部表面が押しつけられている円筒形リングの部分602である、本発明の第二の実施形態を示す。
図1Aおよび
図1Bの実施形態と比較して、この形状は、減衰材インサートと半径方向内側舌部36との間の圧迫面積を増加させるのに役立つ。
【0067】
図1Aおよび
図1Bの実施形態と共通のすべての要素は、同じ参照番号が付されており、簡潔さのため再度記載されることはない。減衰材インサート602の動作もまた、
図1Aを参照して記載されたものと同一である。
【0068】
図2Aの例において、リング部602の形状を補完する形状の凹部62’が、半径方向内側舌部36に形成されている。この凹部は、一旦空洞42内に実装されたら、リング部602を軸方向に保持するのに役立つ。
【0069】
図2Bに示される有利な変形実施形態において、凹部62’は外部シュラウド24の下流末端に向かって開放するように規定されてもよい。このような凹部は、その形状のためリングが比較的剛性がある場合に、円筒形リングを軸方向に挿入しやすくする。この構成において、減衰材インサートは、まず凹部62’によって、次に組み立て後にケーシング20に対して圧迫するリング部602によって、あるいは少なくとも、一旦凹部62’内に配置されたらリング部602の軸方向末端に対向するケーシングの表面の存在によって、軸方向に保持される。
【0070】
リング部602と外部シュラウド24の半径方向内側舌部36との間の接触の位置決めもまた、リング部602の半径方向内側面に形成された陥凹(図示せず)によって改善されてよい。
【0071】
別の実施形態において、減衰材インサートは、その他いずれか適切な断面または質量を有するリング部であってもよい。軸方向の空洞内のその位置もまた、最適化されてよい。
【0072】
有利なことに、減衰材インサートは、外部シュラウドの半径方向移動が最大となる領域に位置すべきである。通常、リングは半径方向内側舌部36の自由縁に可能な限り近く配置されるべきである。
【0073】
図3Aは、減衰材インサートが、一旦空洞42内に挿入されたら外部シュラウド24の半径方向内側および半径方向外側舌部36および38に対して圧迫すべき弾性バネ形成クリップ604である、本発明の第三の実施形態を示す。
【0074】
図3Aに見られるように、クリップ604は、軸方向面において、その垂直部が外部シュラウド24の半径方向内側舌部36上に横たわる、小文字のhの形状の断面を有する。より具体的には、クリップ604は、スリーブ部71,および前記スリーブ部71から半径方向外向き方向に、そして空洞42の開放末端に向かって延在するフック部73を有する、リング部である。スリーブ部71およびフック部73は、弱い締結力で、外部シュラウド24の半径方向内側舌部36および半径方向外側舌部38に対して半径方向に圧迫する、バネを形成する。クリップ604の可撓性は、以下により詳細に説明されるように、半径方向内側舌部の振動を減衰するのに十分な可撓性を維持しながら、半径方向内側および外側舌部との良好な接触を維持するために、最適化される必要がある。
【0075】
スリーブ部71は、実質的に円筒の形状であって、半径方向外向きに広がる部分72によって空洞42の内側に向いているその軸方向末端において延在する、主要部68を有する。
【0076】
図3Aに見られるように、広がった部分72の軸方向末端面70は、実装後に、空洞42の末端壁に対して、すなわち中央部40に対して、より具体的には、実質的に半径方向面内に延在する中央部40の面に対して、圧迫してもよい。
【0077】
主要部68の内側面は、外部シュラウド24の半径方向内側舌部36に対して圧迫する。
【0078】
図示される例において、主要部68の半径方向内側面に形成された陥凹82はまた、質量の削減、ならびにクリップ604と外部シュラウド24の半径方向内側舌部36との間の接触の改善された位置決めを達成するのにも、役立つ。
【0079】
その2つの軸方向末端の中間あたりで、スリーブ部71は、それ自体が主要部68から半径方向外向きに延在するリングの部分を構成する中央部74を有するフック部73と、実質的に一部分の形態であって、リング部74の半径方向外側末端から空洞42の外側に向かって(この例では下流に)延在する末端部76と、によって延在させられる。
【0080】
フック部73の半径方向外側面は、半径方向外側舌部38に対してしっかりと圧迫してもよい。
【0081】
それがしっかりと圧迫することを保証するために、末端部76は、半径方向外向きに延在する極厚部の形態の圧迫部を有し、極厚部の半径方向外側面は、半径方向外側舌部38の対向面に対して圧迫する。
【0082】
図3Aに示される実施形態において、末端部76は、可撓性において最適化され、リング部74に接続された薄い第一区画78と、圧迫部を形成し、第一区画78よりも大きい半径方向外径を有しながら第一区画78を延在させるように位置する第二区画80とで、構成されている。第二区画80の半径方向外側面は、クリップ604が一旦空洞42に挿入されてしまったら、外部シュラウド24の半径方向外側舌部38と接触するのに適した半径方向圧迫表面を構成する。
【0083】
図3Bは、末端部76の圧迫部(極厚部)80が、軸方向に沿って陥凹82の中央と実質的に一致するように位置決めされる、有利な変形実施形態を示す。この構成は、クリップ604が倒れるのを回避するのに役立つ。
【0084】
クリップ604は環状であってもよく、あるいはこれはセクタで構成されてもよい。
【0085】
クリップ604が分割されるとき、各角度セクタの角度は、クリップが実装されるステータセクタの角度と等しくても、それ未満でも、あるいはそれより大きくてもよい。とはいえ、クリップは通常、ステータの角度セクタ全体にわたって延在することになる。
【0086】
フック部73は場合により、各々がスリーブ部71によって占有される角度セクタの断片のみにわたって円周方向に延在する、1つ以上の「小セクタ」の形態であってもよい。
【0087】
より具体的には、円筒形部分76は、各小セクタがリング部74の断片のみから円周方向に延在する、フック部73の1つ以上の「小セクタ」の形態であってもよい。
【0088】
上述のようなクリップ604は、ステータ18の角度セクタが360°未満の角度であるときに、エンジンのケーシング上にセクタが実装される前に接線方向に摺動することによって、もしくは(特にステータの角度セクタが360°を占めるとき)軸方向に摺動することによって、空洞42内に挿入されることが可能である。
【0089】
図3Aおよび
図3Bに見られるように、一旦ステータが実装されると、クリップ604は、その上流末端を通じて空洞42の末端壁に対して、およびフック部73の下流末端84を通じてエンジンのケーシング20に対して、当接するようになる。このようにして、これは空洞42内の位置で軸方向に保持される。
【0090】
変形例として、または追加で、クリップ604はまた、実装後に、スリーブ部71の下流末端を通じてケーシング20に対して圧迫するようになってもよい。
【0091】
別の変形実施形態において、クリップ604の主要部68は、外部シュラウドの半径方向内側舌部に形成された凹部に収容されてもよい。するとクリップ604は、
図1、
図2A、および
図2Bの実施形態のリング部601および/または602と同じように、軸方向に保持される。
【0092】
さらに別の例において、円筒形部分76の極厚部80は、実装中に半径方向外側舌部38の対応する溝内に挿入されるのに適した舌部を形成するように構成されてもよく、それによってクリップ604を軸方向に保持する。
【0093】
クリップ604はまた、遮断ラグまたは外部シュラウドに装着されたその他いずれかのストップ手段を追加することによって、接線方向への移動が防止されてもよい。
【0094】
静止時、クリップ604は、外部シュラウド24の空洞42の両方の壁と、具体的には外部シュラウド24の半径方向内側舌部36と、接触する。動作中、半径方向内側舌部の振動の振幅が所定の限界値よりも小さいとき、クリップ604および半径方向内側舌部36は、接触したままで振動する。半径方向内側舌部36が振動のこの限界振幅に到達して超過すると、クリップ604は、半径方向内側舌部36とともに移動する総質量が減少するように、半径方向内側舌部36から分離する。半径方向内側舌部36の質量および剛性に対するこの修正は、共振周波数の修正を引き起こし、これはもはや励起源の周波数に対応していないので、振動は減衰することになる。
【0095】
第四の実施形態は、
図4を参照して以下に記載される。
【0096】
この実施形態において、減衰材インサートは、
図3Aおよび
図3Bを参照して記載されたクリップ604と同じ構造を有する、クリップ605である。具体的には、これは同様に、軸方向面において、その垂直部が外部シュラウド24の半径方向内側舌部36上に横たわる小文字のhの形状の断面を有する。したがって、これは再び詳細に記載されることはない。
【0097】
この第四の実施形態は、半径方向外側舌部38が空洞42の半径方向内側に直接向かう突起86を担持し、それによってクリップ605の形態の減衰材インサート向けの軸方向保持ストップを形成する点においてのみ、
図3Aおよび
図3Bのものと異なっている。
【0098】
このため、フック部73の末端は、半径方向外側舌部38に対して半径方向に、ならびに、下流末端面84を通じて、保持ストップ86に対して軸方向にも、圧迫する。
【0099】
クリップ605はこのように、外部シュラウド24の空洞42の内部で軸方向に保持され、特に実装中およびステータセクタ18がエンジンのケーシング20内に実装される前に、そこから外れることは不可能である。これらの配置はまた、クリップ605とケーシング20との間の直接接触を回避することを可能にし、それによって摩擦による摩耗からケーシングを保護する。
【0100】
この実施形態において、クリップ605は、接線方向摺動によって正常に実装されることになる。
【0101】
図5は、本発明の第五の実施形態を示す。
【0102】
この実施形態において、半径方向外側舌部38は、その半径方向内側面に、第一および第二区画88および90の間にショルダ92が形成されるように、第一区画88,および第一区画88の内径よりも小さい内径の第二区画90で構成される、軸方向保持ストップ86’を担持する。
【0103】
上述の第三および第四の実施形態のように、減衰材インサートは、軸方向面において、その垂直部が外部シュラウド24の半径方向内側舌部36に対して圧迫する、小文字のhの形状の断面を有する、クリップ606である。
【0104】
クリップ606は、クリップ604および605と実質的に同じスリーブ部71を有し、このスリーブ部は、半径方向外向きに延在する中央部74を有するフック部73と、中央部74の半径方向外側末端から外向きに広がる、この例では円錐台形の可撓性末端部94とによって、延在させられる。
【0105】
その形状およびその薄さのため、末端部94は、クリップ606が空洞42内に軸方向に摺動させられるときに、軸方向保持ストップ86’の第二区画90と協働してたわむのに、および一旦これが通過してしまったら外側に再展開するのに、適合させる弾性特性を有する。
【0106】
一旦クリップ606が空洞42に実装されると、スリーブ部71の上流末端面70は外部シュラウド24の中央部40に対して圧迫するようになり、円錐台形部94の下流末端はショルダ92に対して保持され、それによってクリップ606は空洞42の内側の所定位置に保持される。
【0107】
この実施形態において、ならびにクリップ606が環状であるとき、分解を可能にする装置を提供する必要がある。
【0108】
一例として、分解は、フック部73が切断されて、軸方向保持ストップ86の第二区画90の下を通過するようにたわませられるようにする花綱または銃眼を有する場合に、容易になるだろう。
【0109】
ステータが端から端まで配置された複数の角度セクタで作られる特定の構成において、たとえば内視鏡孔を有するセクタなど、角度セクタのうちの少なくとも1つに、分解装置が存在しなければならない。このような状況下で、一旦このセクタが取り外されると、他のものは、差込式締め具の原理に基づいて、これらを外れやすくするように構成された領域内に接線方向に摺動させることによって、さらに容易に取り外されることが可能である。
【0110】
図示されて上述された実施形態のすべてにおいて、後縁30は、より剛性のある中央部から離れた軸方向末端部36の末端(これらの例においてその下流末端)に取り付けられる。このため羽根26の後縁30は、剛性があまりなく、いずれの場合も羽根の前縁28が取り付けられる部分よりも剛性が低い、外部シュラウド24の部分に取り付けられる。この構成は、動作中に羽根26の後縁30が、前縁28が受ける移動よりも大きい半径方向移動を受けるときに、特に適切である。
【0111】
反対に、その下流末端に中間部41を有する外部シュラウド24を想定することも可能である。このような状況下では、羽根26の前縁28は、羽根26の後縁30が取り付けられる部分ほど剛性が低くない外部シュラウド24の部分(すなわち軸方向末端部36の遠位末端)に取り付けられるだろう。この構成は、動作中に羽根26の前縁28が、後縁30が受けるよりも大きい半径方向移動を受けるときに、特に適切である。
【0112】
中間部41が、外部シュラウド24の軸方向末端から離れて位置し、好ましくはその軸方向に沿って前記シュラウド24の実質的に中心に位置することを、想定することも可能である。
【0113】
このような状況下では、外部シュラウド24はたとえば、外部シュラウドの上流末端に向かって開放している上流空洞とその下流末端に向かって開放している下流空洞の、2つの空洞を有してもよい。すると、外部シュラウドの各半径方向舌部は上流対と下流対の2対の舌部で構成されることになり、これらの対は中央部を通じて互いに接続されている。上流空洞は、上流半径方向内側舌部の部分、上流半径方向外側舌部の部分、および中央部によって定義される。同様に、下流空洞は、下流半径方向内側舌部の部分、下流半径方向外側舌部の部分、および中央部によって定義される。
【0114】
2つの空洞のうちの1つにのみ1つ以上の減衰材形成インサートが配置されることを想定することが、可能である。外部シュラウドの空洞の各々に少なくとも1つの減衰材インサートを装着することを想定することも、可能である。
【0115】
この構成は、羽根26の前縁28および後縁30が両方とも、完全に切り離された振動モードを前および後縁28および30で個別に共振させることが可能なように、高レベルの振動運動に曝されるときに、特に適切である。
【0116】
空洞の高さおよび深さが大きいときに外部シュラウドの空洞へのストップ形成要素の挿入が容易になることに、注意すべきである。
【0117】
図1Aおよび
図2Aから
図5に示される実施形態において、エンジンのケーシング20上にステータセクタ18を実装するための上流および下流実装手段44、46、および46’はこのように、互いに半径方向にずれている。たとえば、
図1Aでは、特に下流実装タブ46(すなわち、半径方向外側舌部38によって担持され、空洞42の横に位置する実装タブ)と、ケーシングの対応する溝54との間の連結が持ち上げられていることが、わかる。
【0118】
この配置は、外部シュラウドの、およびひいては空洞42の高さ(半径方向で見たとき)を増加させられるようにする。
【0119】
空洞が機械加工で作られるとき、この配置はまた、空洞42の深さを増加させることも可能にする。機械加工に関わる制約(特に使用される特定の工具に関わる制約)のため、空洞42の高さがその深さを決定する。空洞の高さが高いほど、空洞の深さも深くでき、減衰材によって作用され得る半径方向移動も大きくできる。
【0120】
図2Aから
図5を参照して記載された減衰材インサートのすべてが、
図1Bに示されるのと同じように外部シュラウドと協働できることに、注意すべきである。このような状況下では、クリップ604、605、および606は、末端部36に対して、ならびにエンジンのケーシング20の対向面に対しても、圧迫する。
【0121】
図6Aは、外部シュラウド24の末端部36が少なくとも1つのボス49(以下により詳細に記載される
図6Bに示される)を有し、溶接シールまたはキャップ47によって閉鎖されるのに適したチャンバ45が機械加工される、本発明の第六の実施形態を示す。
【0122】
チャンバ45は、半径方向内側面45a、半径方向外側面45b、および側面45cによって定義される。
【0123】
これは液体、金属粉末、または特定形状の固体要素の形態の、減衰材インサート607で、かなりの程度まで満たされる。
図6Aの詳細図に示されるように、間隙eは静止時に、減衰材インサート607と、(ステータセクタの向きに応じて)チャンバ45の半径方向内側面45aおよび半径方向外側面45bのうちの1つとの間に、保存される。
【0124】
漏れを防止するために、キャップ47によって閉鎖されたチャンバ45は、完全に漏れ止めされている。
【0125】
減衰材インサート607のために、鋼またはニッケルタイプの非常に高密度な材料を選択することが、好ましい。
【0126】
この実施形態の動作原理は、上述のものと類似である。
【0127】
静止時に、および末端部の小さい振動のため、減衰材インサート607は、チャンバ45の半径方向内側および外側面のうちの1つと接触している。
【0128】
末端部が振動の定められた振幅に到達すると、慣性の効果の下で、減衰材インサート607は、チャンバ45の半径方向内側および外側面45aまたは45bともやは接触しない中間位置を占有するように移動する。
【0129】
その瞬間に、末端部36とともに移動する総質量が修正される。
【0130】
その後、減衰材インサート607は、チャンバ45の半径方向内側面45aおよび半径方向外側面45bのうちの他方に当たり、総移動質量を再び修正する。
【0131】
この総質量を修正することによって、減衰材インサート607は共振周波数を修正し、そうして振動疲労の結果として羽根が破損するのを長期的に回避できるようにする。
【0132】
上述のように、チャンバが外部シュラウドの末端部36に直接機械加工されてもよいものの、末端部36にチャンバ45の側面45cおよび半径方向外側面45bを形成する様々な要素を溶接することによってこれをインサートとして形成することも可能であることに、注意すべきである。このような状況下では、チャンバ45の半径方向内側面45aのみが、外部シュラウド24の末端部36によって構成される。
【0133】
図6Bは、本実施形態におけるステータセクタの斜視図である。この実施形態では、内部シュラウド22と外部シュラウド24との間に複数の羽根が半径方向に延在している。これが柔軟であることを保証するために、軸方向末端部36は好ましくは、その区画の各々が羽根26のうちの1つを担持するように分割される。
【0134】
図示される例において、減衰材インサート607を含むチャンバ45は、末端部36の限られた断片にわたって延在する。このためこのように作られた減衰材は、局所的な減衰を実行する。
【0135】
とはいえ、チャンバ45の形状または配向は図示される実施形態に限定されず、要点は、チャンバが末端部36の最大局所的移動の点またはその付近に位置したままな点であることに、注意すべきである。
【0136】
図6Cは、減衰材インサート607(およびひいてはこの実施形態ではチャンバ45)が好ましくは羽根26の末端から可能な限り遠くに配置されることを示す、模式図である。