(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013578
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】高トリグリセリド血症を治療する、または高トリグリセリド血症を発症するリスクを低減するための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/37 20060101AFI20161011BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20161011BHJP
A61K 36/28 20060101ALI20161011BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20161011BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20161011BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20161011BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20161011BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20161011BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20161011BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20161011BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
A61K31/37
A61K31/352
A61K36/28
A61K45/00
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P5/14
A61P13/12
A61P9/10
A61P43/00 101
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-210853(P2015-210853)
(22)【出願日】2015年10月27日
(65)【公開番号】特開2016-141682(P2016-141682A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2015年10月27日
(31)【優先権主張番号】14/613,032
(32)【優先日】2015年2月3日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515298279
【氏名又は名称】ウィンテック コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Wyntek Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ツェン−ロン トゥ
(72)【発明者】
【氏名】ウェン−マイ スー
(72)【発明者】
【氏名】ユージーン ファン
【審査官】
鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第102552238(CN,A)
【文献】
Pharmacologyonline,2008年,Vol.2,pp.640-651
【文献】
Carcinogenesis,2007年,28(12),pp.2521-2529
【文献】
Shandong Yiyao ,2013年,53(12),pp.24-25
【文献】
Archives of Pharmacal Research ,2010年,33(11),pp.1741-1746
【文献】
Zhongyao Yaoli Yu Linchuang ,2014年,30(5),pp.44-47
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/37
A61K 31/352
A61K 36/00−36/9068
A61K 45/00
A61P 3/04
A61P 3/06
A61P 3/10
A61P 5/14
A61P 9/10
A61P 13/12
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高トリグリセリド血症に罹患した対象者の高トリグリセリド血症を治療するための医薬組成物において、前記医薬組成物は、
ウェデロラクトン、ルテオリン及びアピゲニンを含有する有効量の組成物を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記高トリグリセリド血症は、アルコール依存症、糖尿病、肥満、メタボリック症候群、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、又はそれらの組み合わせに起因する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記高トリグリセリド血症は、薬物治療に起因する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
薬物は、チアジド系利尿薬、β−アドレナリン遮断薬、経口エストロゲン、タモキシフェン、グルココルチコイド、経口イソトレチノイン及び抗レトロウイルス薬からなる群より選択される、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記対象者はリポタンパクリパーゼ欠損症又はアポリポタンパク質C−II欠損症を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記対象者は、家族性脂質異常症又は家族性高トリグリセリド血症を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記組成物は、ウェデリア・チネンシスの酸性水抽出物又はエタノール抽出物である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
高トリグリセリド血症を発症するリスクにある対象者の高トリグリセリド血症を発症するリスクを低減するための医薬組成物において、前記医薬組成物は、
ウェデロラクトン、ルテオリン及びアピゲニンを含有する有効量の組成物を含む、医薬組成物。
【請求項9】
前記対象者は、アルコール依存症、糖尿病、肥満、メタボリック症候群、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、又はそれらの組み合わせに罹患している、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記対象者は正のエネルギー摂取バランスかつ高脂肪もしくは高血糖インデックスである食生活を有する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記対象者は、ストレスに苦しんでいるか、あまり体を動かさないか、或いは喫煙している、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記対象者は、冠状動脈性心疾患の家族歴を有する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物は、ウェデリア・チネンシスの酸性水抽出物又はエタノール抽出物である、請求項8乃至12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、高トリグリセリド血症の治療及び当該状態を発症するリスクを低減することに関する。
【背景技術】
【0002】
トリグリセリドは、グリセロールと3個の脂肪酸に由来するエステルである。トリグリセリド類は、食事脂肪及び動物の内臓脂肪の主たる脂質成分である。トリグリセリド類は、血液を介して、リポタンパク質粒子によって、組織と組織との間、例えば、脂肪組織と肝組織との間を移動する。最も高濃度のトリグリセリドは、カイロミクロン及び非常に低密度のリポタンパク質粒子において見られる。
【0003】
アメリカ心臓協会(American Heart Association)は、個人をその空腹時血清トリグリセリドレベルにより以下のように分類している:<150mg/dL、正常;150〜199mg/dL、高境界値;200〜499mg/dL、高い;及び≧500mg/dL、非常に高い。高トリグリセリド血症として知られるトリグリセリドレベルの上昇は、アテローム性動脈硬化症、心臓血管疾患及び急性膵臓炎の発症の一因となる。
【0004】
ほとんどの場合、高トリグリセリド血症は、肥満、リポジストロフィー症、糖尿病、メタボリック症候群及び慢性腎疾患が原因となって引き起こされる。幾らかの場合では、家族性遺伝病が原因となっている。
【0005】
典型的には、高境界値のトリグリセリドレベル(150〜199mg/dL)にある個人では、ライフスタイルの改善が推奨される。ライフスタイルの改善には、食習慣の変更、運動、体重減少、禁煙及びアルコール摂取の制限が含まれる。栄養摂取を最適化することによって、血清トリグリセリドを20%〜50%も顕著に低減することができる。
【0006】
トリグリセリドレベルが200mg/dLを超える患者では、脂質低下薬が処方される。高トリグリセリド血症に対する主たる薬理学的治療の選択肢は、HMG−CoA還元酵素阻害剤(例えば、アトルバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン及びロスバスタチン)、フィブリン酸誘導体(例えば、ゲムフィブロジル及びフェノフィブラート)、ニコチン酸(ナイアシン)、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸封鎖剤(レジン)及びω−3酸エチルエステルである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,375,112号明細書
【特許文献2】米国特許第8,597,701号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Abourjaili他、“Curret concepts in triglyceride metabolism,pathophysiology,and treatment”、Metabolism Clinical and Experimental、vol.59、2010
【非特許文献2】Atar他、“Is there any relationship between coronary artery disease and postprandial triglyceride levels?”、Anadolu Kardiyol Derg、2011
【非特許文献3】Austin他、“Hypertriglyceridemia as a Cardiovascular Risk Factor”、American Journal of Cardiology、vol.81、No.4A、1998
【非特許文献4】Fossati他、“Serum Triglycerides Determined Colorimetrically with an Enzyme That Produces Hydrogen Peroxide”、Clinical Chemistry、vol.28、No.10、1982
【非特許文献5】Kalia他、“Determination of serum triglycerides using lipase,glycerol kinase,glycerol−3−phosphate oxidase and peroxidase co−immobilized onto alkylamine glass beads”、Indian Journal of Biochemistry & Biophysics、vol.41、pp.326−328、2004年12月
【非特許文献6】Lin他、“Compounds from Wedelia chinesis synergistically suppress androgen activity and growth in prostate cancer cells”、Carcinogenesis、vol.28、No.12、2007
【非特許文献7】Miller他、“Triglycerides and Cardiovascular Disease:A Scientific Statement From the American Heart Association”、American Heart Association Circulation、2011;123:2292−2333、2011年4月
【非特許文献8】Nelson、“Hyperlipidemia as a Risk Factor for Cardiovascular Disease”、NIH Public Access Author Manuscript,Prim Care、2013
【非特許文献9】Nomani他、“Evaluation of antidiabetic potentiality of methanolic extract of Wedelia chinesis whole plant”、International Journal of Pharmaceutical and Biomedical Research、vol.4、No.4、2013
【非特許文献10】Pearson他、“AHA Guidelines for Primary Prevention of Cardiovascular Disease and Stroke:2002 Update Consensus Panel Guide to Comprehensive Risk Reduction for Adult Patients Without Coronary or Other Atherosclerotic Vascular Diseases”、Circulation、2002年7月
【非特許文献11】Prejic他、“Hypertriglyceridemia”、Evidence Based Clinical Medicine,JABFM、vol.19、No. 3、May−Jun.2006
【非特許文献12】Sarwar他、“Triglycerides and the Risk of Coronary HJeart Disease 10 158 Incident Cases Among 262 525 Participants in 29 Western Prospective Studies”、Circulation、2007年1月
【非特許文献13】Swartz、“Ultra Performance Liquid Chromatography(UPLC):An Introduction”、Separation Science Identified、2005年5月
【非特許文献14】Yuan他、“Hypertriglyceridemia:its etiology,effects and treatment”、CMAJ、vol.176、No.8、2007年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在の高トリグリセリド血症に対する薬理学的治療では、好ましくない副作用を伴うことなく高いトリグリセリドレベルを効果的に抑制しない。副作用をほとんど伴うことのない高トリグリセリド血症に対する効率的な治療の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、高トリグリセリド血症に罹患した対象者の高トリグリセリド血症を治療するための医薬組成物において、医薬組成物は、ウェデロラクトン、ルテオリン及びアピゲニンを含有する有効量の組成物を含む、医薬組成物、を提供する。
独立請求項8に記載の発明は、高トリグリセリド血症を発症するリスクにある対象者の高トリグリセリド血症を発症するリスクを低減するための医薬組成物において、医薬組成物は、ウェデロラクトン、ルテオリン及びアピゲニンを含有する有効量の組成物を含む、医薬組成物、を提供する。
上記した必要性を満たすべく、高トリグリセリド血症を治療するための方法が開示されている。同方法は、高トリグリセリド血症を伴う対象者を特定するステップと、同対象者に、ウェデロラクトン(wedelolactone)、ルテオリン(luteolin)及びアピゲニン(apigenin)を含有する有効量の組成物を投与するステップとを含む。
【0011】
高トリグリセリド血症を発症するリスクを低減するための方法も開示されている。同方法は、高トリグリセリド血症を発症するリスクにある対象者を特定するステップと、同対象者に、ウェデロラクトン、ルテオリン及びアピゲニンを含有する有効量の組成物を投与するステップとを含む。
【0012】
本発明の一つ又は複数の実施形態の詳細は、以下の詳細な説明、図面及び実施例に記載されている。本発明のその他の特徴、目的及び利点は、複数の実施形態の詳細な説明及び特許請求の範囲からも明らかになるであろう。本明細書において引用されている全ての刊行物及び特許文書は、その全体が参照によって組み込まれている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高トリグリセリド血症を治療するための
医薬組成物及び高トリグリセリド血症を発症するリスクを低減するための
医薬組成物が提供できた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(A)ウェデリア・チネンシス(Wedelia chinensis)の酸性水抽出物の超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)による分析を示すグラフである。(B)ウェデリア・チネンシスのエタノール抽出物のUPLCによる分析を示すグラフである。
【
図2】(A)ウェデリア・チネンシスの酸性水抽出物のアンドロゲン受容体アンタゴニスト活性についてのバイオアッセイを示す棒グラフである。(B)ウェデリア・チネンシスのエタノール抽出物のアンドロゲン受容体アンタゴニスト活性についてのバイオアッセイを示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の詳細な説明は以下において、添付された図面を参照する。
上記したように、高トリグリセリド血症を治療するための方法が開示されている。同方法は、当該症状を患う対象者を特定するステップを含む。高トリグリセリド血症は、当該技術分野において周知の方法によって検出できる。例えば、フォサッティ(Fossati)他、Clin.Chem.、第28巻:2077〜2080頁及びカリア(Kalia)他、Indian J.Biochem.Bioshys.、第41巻:326〜328頁を参照されたい。対象者は、少なくとも500mg/dLの空腹時血清トリグリセリドレベルを有していてもよく、或いは500mg/dLから1000mg/dLの空腹時血清トリグリセリドレベルを有していてもよい。代替的に、対象者は、1000mg/dLを超える空腹時血清トリグリセリドレベルを有していてもよい。
【0016】
高トリグリセリド血症は、アルコール依存症、糖尿病、肥満、メタボリック症候群、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、妊娠、非アルコール性脂肪肝疾患、異常タンパク血症、及び自己免疫疾患に起因する。例えば、ユアン(Yuan)他、Canadian Med.Assoc.J.、第176巻:1113−1120頁を参照されたい。高トリグリセリド血症は、これらの医学的症状の任意の組み合わせにも起因する。
【0017】
加えて、高トリグリセリド血症は、薬物治療の結果であり得る。同薬物は、例えば、チアジド系利尿薬、β−アドレナリン遮断薬、経口エストロゲン、タモキシフェン、グルココルチコイド、経口イソトレチノイン、非定型抗精神病薬、胆汁酸結合樹脂、シクロホスファミド、向精神薬、免疫抑制剤、プロテアーゼ阻害剤及び抗レトロウイルス薬であってもよい。例えば、ユアン(Yuan)他及びペジク(Pejic)他、J.Am.Board Fam.Med.、第19巻:310−316頁を参照されたい。
【0018】
方法の別の態様において、対象者における高トリグリセリド血症は、リポタンパクリパーゼ欠損症及びアポリポタンパク質C−II欠損症に起因するかもしれない。特別な態様において、対象者は、家族性脂質異常症又は家族性高トリグリセリド血症を有する。
【0019】
高トリグリセリド血症を治療するための方法はまた、対象者にウェデロラクトン、ルテオリン及びアピゲニンを含有する組成物を投与するステップを必要とする。組成物は、ウェデリア・チネンシス(Wedelia chinensis(クマノギク))からの抽出物であってもよい。より具体的には、ウェデリア・チネンシスからの抽出物は、酸性の水抽出物であってもよい。代替的に、ウェデリア・チネンシスからの抽出物はエタノール抽出物であってもよい。更に、組成物は、純粋なウェデロラクトン、ルテオリン及びアピゲニンの混合物であってもよい。
【0020】
組成物は、ウェデロラクトン、ルテオリン及びアピゲニンが1:5.5−75:0.05−25の重量比を有するものであってもよい。例えば、組成物は、ウェデロラクトン、ルテオリン及びアピゲニンが1:12:1.5の重量比を有するものであってもよい。
【0021】
加えて、投与されるべき組成物は、組成物の0.0001重量%乃至10重量%のウェデロラクトン、ルテオリン及びアピゲニンを含んでいてもよい。
高トリグリセリド血症を発症するリスクを低減させるための方法もまた開示されている。同方法は、高トリグリセリド血症を発症するリスクについて対象者を最初に特定することを必要とする。
【0022】
脂質異常症を発症するリスクは、別の医学的症状と関連していてもよい。例えば、高トリグリセリド血症を発症するリスクにある対象者は、アルコール依存症、糖尿病、肥満、メタボリック症候群、甲状腺機能低下症またはネフローゼ症候群に罹患していてもよい。高トリグリセリド血症を発症するリスクにある対象者は、これらの医学的症状の任意の組み合わせに罹患していてもよい。
【0023】
方法の特定の態様において、高トリグリセリド血症を発症するリスクにある対象者は、冠状動脈性心疾患の家族歴を有する。
対象者はまた、ライフスタイルの選択の結果として、高トリグリセリド血症を発症するリスクにあるかもしれない。例えば、対象者は、正の(positive)エネルギー摂取バランスかつ高脂肪もしくは高血糖インデックスである食生活であり得る。代替的に、対象者は、ストレス状態にあるか、あまり体を動かさないか、喫煙者であり得る。
【0024】
加えて、高トリグリセリド血症を発症するリスクにある対象者は、正常からやや高い血清トリグリセリドレベルであり得る。例えば、上述の一つ以上のリスク因子を有する対象者は、<150mg/dLの血清トリグリセリドレベルを有するかもしれない。代替的に、対象者は、150〜199mg/dLの血清トリグリセリドレベルを有するかもしれない。
【0025】
高トリグリセリド血症を発症するリスクにある対象者は、上記したように、医師又は他の医療専門家により医学的症状、家族歴、ライフスタイルの選択及び血清トリグリセリドレベルに関して対象者を検査することによって、特定され得る。
【0026】
高トリグリセリド血症を発症するリスクを低減するための方法はまた、対象者にウェデロラクトン、ルテオリン及びアピゲニンを含有する組成物を投与するステップを必要とする。組成物は、ウェデリア・チネンシスからの抽出物であってもよい。より具体的には、ウェデリア・チネンシスからの抽出物は、酸性の水抽出物であってもよい。代替的に、ウェデリア・チネンシスからの抽出物はエタノール抽出物であってもよい。更に、組成物は、純粋なウェデロラクトン、ルテオリン及びアピゲニンの混合物であってもよい。
【0027】
既に述べたように、組成物は、ウェデロラクトン、ルテオリン及びアピゲニンの1:5.5−75:0.05−25の重量比、例えば、1:12:1.5の重量比、であってもよい。投与されるべき組成物は、組成物の0.0001重量%乃至10重量%のウェデロラクトン、ルテオリン及びアピゲニンを含んでいてもよい。
【0028】
本明細書の開示に基づいて、更に説明することなく、当業者は本発明を最大限に使用することができる。従って、以下の特定の実施例は、単に記述的なものとして解釈されるべきものであり、開示の残りの部分をいかなる様式においても制限するものとして解釈されるべきものではない。
【実施例】
【0029】
実施例1:W.チネンシス(W.chinensis)の酸性水抽出物の調製
W.チネンシスの植物全体を乾燥し、0.2cm未満のサイズに細かく粉砕した。250mLの食品等級の酢酸(99.8%)及び750mLの逆浸透水(RO H
2O)を100gの粉砕したW.チネンシスに加えた。こうして形成された混合物を90分間沸騰した後に室温に冷却した。沸騰した混合物を濾過して、不溶性の残渣を除去した。ろ液を、ロータリーエバポレータにておおよそ35mLの体積まで濃縮した。濃縮物を、H
2Oを用いて1Lの体積に希釈して、再び濃縮した。希釈ステップ及び濃縮ステップは、希釈した材料のpHが4.0を上回るまで繰り返した。こうして得られた濃縮されたW.チネンシスの酸性水抽出物(acidic aqueos extract)を等重量の微結晶セルロースと混合した。混合物を10分間攪拌し、その後凍結乾燥した。
【0030】
W.チネンシスの酸性水抽出物の分析は、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)によって実施した。SwarzのLC−GC North America Supplement 23:8−14を参照されたい。
図1(A)に示す結果は、酸性水抽出物の3つの主要な活性成分、即ち、ウェデロラクトン、ルテオリン及びアピゲニン、は、おおよそ1:14:2の重量比で存在していたことを示す。
【0031】
W.チネンシスの酸性水抽出物の生物学的な活性は、リン(Lin)他の、Carcinogenesis、第28巻:第2521−2529(「Lin」)(その内容の全体が参照として本明細書によって援用されている)に基本的には記載されているように、インビトロ細胞培養に基づくアッセイを用いて試験した。
【0032】
簡潔に述べると、前立腺特異抗原プロモータ−ルシフェラーゼ(PSA−LUC)レポータ構築物を担持する培養した前立腺癌細胞を、W.チネンシスの酸性水抽出物の非存在下(対照)又は存在下でジヒドロオキシテストステロン(DHA)にさらした。ルシフェラーゼ酵素活性を測定し、対照と比較したものとして阻害率(%)で示した。結果を
図2(A)に示す。W.チネンシスの酸性水抽出物は、対象のルシフェラーゼ活性の80%と同じ程度に抑制し、抽出物がアンドロゲン誘発性遺伝子発現を遮断することを示す。
【0033】
実施例2:W.チネンシスのエタノール抽出物の調製
W.チネンシスのエタノール抽出物を基本的にはLinに記載されているように調製した。エタノール抽出物のUPLC分析は、実施例1における上述の記載に従って実施した。生物学的活性も、上述の記載に従って評価した。
【0034】
UPLCのデータ(
図1(B))及び生物学的活性のデータ(
図2(B))は、エタノール抽出物がW.チネンシスの酸性水抽出物と同様の組成物及び活性を有していたことを示している。
【0035】
実施例3:W.チネンシス抽出物を用いた高トリグリセリド血症の短期間の治療
実施例1に記載されたW.チネンシスの酸性水抽出物の6gを、5名の対象者に、一日一回、3ヶ月間経口投与した。対象者の血清トリグリセリドレベルを治療開始時と、1ヶ月間隔にて測定した。結果を以下の表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
結果は、W.チネンシスの酸性水抽出物を用いた治療は、対象者の全てにおいて、成功裏に血清トリグリセリドレベルを低下させた。
実施例4:W.チネンシス抽出物を用いた高トリグリセリド血症の長期間の治療
実施例1に記載されたW.チネンシスの酸性水抽出物の6g/日を、高血中トリグリセリドレベルである対象者に、3ヶ月間経口投与した。引き続き、用量を一日当り4gに減らし、治療を300日まで継続させた。血清トリグリセリドレベルを一定の間隔をおいて測定した。結果を以下の表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
結果は、W.チネンシスの酸性水抽出物を用いた長期間の治療は、成功裏に高トリグリセリド血症の対象者の血清トリグリセリドレベルを低下させた。
他の実施形態
本明細書に開示されている特徴の全ては、任意の組み合わせにて組み合わせてもよい。本明細書に開示された各特徴は、同一の、同等の又は類似した目的を果たす代替的な特徴によって置き換えてもよい。従って、明示的に別段の定めをした場合を除き、開示された各特徴は、包括的な一連の同等の或いは類似した特徴の一例であるのみである。
【0040】
上記記載から、当業者は本発明の本質的な特徴を容易に確認でき、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の用途及び状態に適合させるべく本発明の種々の変更及び修飾を行うことができる。従って、他の実施形態もまた特許請求の範囲の範囲内にある。