(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、フレキソマスター版上の非連続パターンを使用して、基板に高精細な連続線およびパターンを印刷する方法。本明細書でいう「フレキソマスター版」という用語は、基板に印刷されるパターンを備えたゴムもしくはフォトポリマーの小片ないしシートを指していることもある。一般的に、フレキソマスター版はレリーフ、すなわち浮き彫りにした形状を備えた「原版」ないしマスター版である。これに代わる実施例として、フレキソマスター版は基板に印刷するためのパターンの隆起形状を備えたものであってもよい。
【0009】
フレキソマスター版上のパターンは、フレキソマスター版の材料の物理的特性や、目標とする速度、粘度、圧力、アニロックスロールのインク容積などの種々の印刷パラメータが最終的な印刷パターンに及ぼす影響を考慮または配慮して修正されたパターンを彫刻することによって形成される。本明細書でいう「アニロックスロール」という用語は、インクを計量して刷版に提供するために使用される円柱体を指す。ひとつの実施例として、フレキソマスター版を形成するために、何らかのCADソフトウェアを使用して設計されたパターンがタグ付き画像ファイル形式(TIFFファイル)に変換される。次にこれは、レーザ画像化システムに読み込まれる。レーザ画像化システムでは、パターンが、UV透過基板を被覆する黒色レジスト材料にアブレーション加工される。次に、ブランクのエラストマー積層体フォトレジスト(「フレキソ版」または「フレキソブランク」としても知られる)が、レーザーアブレーション加工されたパターンを通して、UV光に露光される。UV光がフレキソ版と相互作用する場所の積層されたフォトレジスト内に、そのパターンが「記録」される。いったんUV露光が完了すると、フレキソ版は現像、乾燥、切断される。これはフレキソマスター版(積層構造のエラストマー状フォトレジストの片面にパターンを担持させたもの)と呼べるものであり、次に版胴に接着することができる。「フレキソ版」「フレキソマスター版」という用語は、本明細書において、パターンまたはパターンの一部分を印刷することができる、パターン形成されたフレキソブランクを意味するものとして区別せずに使用することもできることは理解できよう。これはフレキソマスター版を作製するためのひとつの方法ではあるが、唯一の方法ではないことに留意していただきたい。他の方法としては、ポリマー基板に直接パターンをレーザーアブレーションで形成するものが挙げられる。これらのパターン形成方法はいずれも、平面状の版と、円柱スリーブにあらかじめコーティングしておいたパターン形成可能な材料のいずれに対しても行うことができる。パターン形成されたスリーブは、それらを円柱体の縁部の上に単に摺動させることによって、版胴に装着することができる。本発明ではフレキソマスター版を作製するための特定の方法に依存するのではなく、フレキソ材料、インク、基板、印刷設備の物理的特性に固有の欠点を克服するための方法に着目する。本明細書で扱うインクは、モノマー、オリゴマー、ポリマーと、金属元素、金属元素錯体、有機金属とを混合した液体状態のものを指していることがあり、基板表面に不連続的に塗布される。
【0010】
例えば、フレキソマスター版上に複数の細い線や特徴部位を備えるパターンを作ることによって太い実線を形成することもできる。場合によっては、このように構成したフレキソマスター版によれば、例えば約50μmを超える大きな特徴部位での不均一なインク転移や、太い特徴部位や線と細い特徴部位や線との境界で起きうる連続性の問題など、印刷の欠陥を回避できることがある。不均一なインク転移とは、意図したパターンの形状にインクが付着する均一なインクが転移することに対し、意図しないようにインクが付着し、意図しないパターンまたはパターンの部分を形成する場合を説明するために使用する用語である。ここでいう「均一」という用語は、基板へのインクが意図しなかった状態に付着することに対し、基板にインクが意図したとおりに付着することを区別する意味である。「再現可能」という用語は、ここでは、確実に一貫して均一なパターンを印刷することができるフレキソマスター版の能力や、そのようなフレキソマスター版(複数あってもよい)を採用するシステムや方法の能力を指すために使用する。本発明の別の面からは、傾きの異なる線や特徴部位を印刷する技術のほか、連続動作時のフレキソマスター版の膨張によって生じる線や特徴部位のパターンの変化を吸収することが得られる。さらに、本発明とその説明を通して、線と言うときはCAD図面をもとに作製することのできるあらゆるパターンを含むものと解釈すべきである。
【0011】
「Embossing Roller, Embossing Device Including Said Roller And Paper Article Produced With Said Embossing Device」なる名称の国際公開第WO2006/092817号、「Printing Machine」なる名称の米国特許出願第2007/0181016号、「Method Of Lithographic Printing」なる名称の米国特許出願第2002/0170451号、「Flexographic Printing Plate Precursor And Imaging Method」なる名称の米国特許出願第2007/0190452号、「System And Method Employing Secondary Back Exposure Of Flexographic Plate」なる名称の米国特許出願第2010/0028815号、「Method For Providing Or Correcting A Flexographic Printing Plate, Sleeve, Or Precursor Thereof」なる名称の米国特許出願第2009/0191333号の開示内容は本明細書の開示内容と関連する場合があるため参照によって援用する。
【0012】
フレキソ印刷とは印刷胴に凸版が両面接着などで取り付けられる回転ウェブ凸版印刷の一形態である。しかし、従来のフレキソ印刷機では幅10μm未満で途切れがなく幅が均一な細線を一貫して印刷することができない。フレキソ印刷プロセスは、使いやすさや費用など商業的に有益な特徴がある。しかし、商業として高精細パターンの印刷を行う場合、この方法とプロセスでは従来の欠点のせいで印刷される特徴部位の幅、厚さ、パターンの連続性を一貫して制御できないことがある。場合によってはフレキソ版の基材に可撓性がありすぎて細い線パターンが容易に変形してしまい、印刷される細い線やパターンの形状や連続性を維持するのが困難になることがある。さらにフレキソ版の基材は湿気と液体に対して吸収性があり膨張することがある。フレキソ版の基材が膨張すると、特にこれらの変形が近接している場合に、大きさの異なる特徴部位の変形に差が出ることがある。さらに、パターンや様々な特徴部位どうしの近接具合によって異なる体積のインクが印刷される。したがって、個々の線や特徴部位の幅が約50μmを超えるような太い線パターンでは、パターンの全幅内にインクの均一な層が印刷されない。このように、当業界にはフレキソ印刷で高精細パターンを印刷することの必要性がある。
【0013】
これらの凸版(マスター版またはフレキソ版と呼ばれる場合もある)は、速乾性の低粘度溶媒と、アニロックスなどの2個のローラーを備えたインク供給システムから供給されるインクと併せて使用することもできる。マスター版は、任意の基板に印刷するために使用される既定のパターンを担持する任意のロールとすることもでき、アニロックスロールは、インクを計量して刷版に与えるために使用される円柱体とすることもできることは理解できよう。インクは、例えば、水性または紫外線(UV)硬化性インクとすることもできる。ひとつの例として、第1のローラーは、インクパンまたは計量システムからのインクを計量ローラーまたはアニロックスロールに転移する。インクは、アニロックスローラーから版胴に転移する際に、均一の厚さに計量される。基板がロールツーロール搬送システムを通って版胴から圧胴に移動する際、圧胴は、凸版上の画像を基板に転写する版胴に圧力を加える。実施例によっては、版胴の代わりにファウンテンローラーが存在してもよく、ローラー全体へのインクの分布を改善するためにドクターブレードを使用することもできる。
【0014】
フレキソ刷版は、例えばプラスチック、ゴム、フォトポリマー(UV感受性ポリマーと呼ばれることもある)から作製することができる。本明細書でいうフォトポリマーという用語は、光に対して感受性であり、通常、紫外線スペクトル内の光を照射した際にその特性を変化させる、ポリマーを指す。刷版は、レーザ彫刻、光機械的または光化学的方法によって作製することもできる。刷版は購入することも、あるいは何らかの既知の方法に従って作製することもできる。好ましいフレキソ印刷プロセスは、プレス機のフレームの各側に複数段の印刷部のスタックを縦に1つ以上配設し、各スタックでそれぞれ固有の版胴を用いて1種類のインクを使用して印刷を行うスタック型として構成することもでき、この構成によれば基板の片面にも両面にも印刷できるようになる。別の実施例として、プレス機のフレーム内に単一の圧胴を装着する中央圧胴式を使用することもできる。基板がプレス機に入ってくると、基板は圧胴と接触して適切なパターンが印刷される。これに代えて、複数の印刷部を水平な直線上に配置して共通のラインシャフトで駆動するインライン式のフレキソ印刷プロセスを利用することもできる。この例では、印刷設備を硬化設備、切断機、折り畳み機などの印刷後加工設備へと連結することもできる。その他の形態のフレキソ印刷プロセスを利用することもできる。
【0015】
ひとつの実施例として、例えば、円筒(ITR)画像形成プロセスにおいて、フレキソ版スリーブを使用することもできる。従来の版胴と呼ばれる場合もある平面状の刷版が印刷胴に装着される上述の方法とは対照的に、ITRプロセスではフォトポリマー刷版材料をプレス機に装着されるスリーブ上で加工される。フレキソスリーブは、表面にレーザーアブレーションマスクコーティングが配置されたフォトポリマーの連続スリーブとすることもできる。別の例として、フォトポリマーのばらばらの断片を基材となるスリーブにテープで取り付け、次に上述のレーザーアブレーションマスクを用いてスリーブと同一の方法で画像形成し、処理することもできる。フレキソスリーブは、例えば、担持ロールの表面に装着される画像形成された平面状の版のための担持ロールとして、または画像が直接彫刻された(円筒)スリーブ表面としてなど、いくつかの方法で使用することもできる。スリーブが単独で担持ロールとしての役割を果たすような例では、画像が彫刻された刷版は、次に印刷設備の胴体に設置されるスリーブに装着することもできる。これらのあらかじめ装着された刷版は、刷版を既に装着した状態でスリーブを保管することができるため、切り替え時間を削減できる。スリーブは、熱可塑性複合材料、熱硬化性複合材料、ニッケルなどの様々な材料から作製でき、ひびや割れに耐えられるように繊維強化してもしなくてもよい。非常に高品質な印刷には、発泡体または緩衝体からなる基材が組み込まれた長期にわたり再使用可能なスリーブを使用する。実施例によっては、発泡体や緩衝体のない使い捨ての「薄い」スリーブを使用することもできる。
【0016】
本明細書に記載するシステムと方法は、インクの粘度等の特性に加え、圧力、ラインの速度、構成部材の選択(すなわちインクロール、アニロックスロールの選択)、フレキソマスター版の設計に関係する処理パラメータや機械設定を上手く活用することにより微細で均一な印刷パターンを作り出す。「ドットゲイン」と呼ばれる現象が起きると印刷された材料が意図したものよりも大きくなったり違ってきたりすることがあるが、これは場合によってはインクが滲んだ見た目となるためであり、印刷の際に意図したパターンが均一に印刷できていない、完全には印刷できていない、あるいはその両方であるということにもなる。ドットゲインは、フレキソマスター版を備えた版胴と基板との間の接触圧、インクの不十分あるいは過剰な転移、転写接触領域での機械の温度、インクの粘度、インクの組成などの要因が組み合わさることによって起きることがある。このため、本発明ではフレキソマスター版を設計する際にこの現象を利用することで、上述のように、幅が50μmより太い線、幅が1μmより細い(サブミクロンの)線、そして幅が1μmから50μmの間の大きさである線を含む高精細パターンを印刷できるようなものにする。実施例によっては、この印刷パターンをさらに処理することもでき、これは明瞭かつ均一な印刷パターンに役立つ費用の掛かる処理であることもある。別の実施例として、印刷パターンは、そのままで使用することもでき、またはパターンの安定性もまた考慮されるように、見込まれるさらなる処理のために保管することもできる。
【0017】
図1は本発明の実施例を実現することのできる例示的なフレキソ印刷プロセスの説明図である。フレキソ印刷システム100は、インクパン102などのインク供給源と、ファウンテンロール104またはインクロールと、アニロックスロール106または計量ロールと、版胴108と、圧胴112またはニップロールと、基板116を印刷するために組み合わせで使用することもでき、余分なインクを除去するためのドクターブレード114とを備えることもできる。インクロール104は、インク120をインクパン102からアニロックスロール106に転移する。アニロックスロール106は、鋼またはアルミニウムの芯を工業用セラミックでコーティングした、表面にセルとして知られる数百万個の非常に細かい窪みのあるものとすることもできる。アニロックスロール106は特定の体積のインク120を転移できるよう、パターンの構成ならびにインクの種類や粘度などの機械の設定パラメータに応じて選択することができる。
【0018】
ひとつの実施例として、インクを計量するアニロックスロール106についた余分なインクをドクターブレード114で除去して、版胴上で均一な厚さとなるようにすることもできる。フレキソマスター版110は、基板116にパターンを印刷するために使用される版胴108に配置することもできる。フレキソマスター版110は、フレキソマスター版110と版胴108のうちの少なくとも一方に接着剤を使用して、あるいは機械的手段、熱的手段、化学的手段、もしくはこれらを併用することによって、版胴に配置あるいは固定することもできる。実施例によっては、基板にひとつのパターンを印刷するのに2個以上の版胴108を使用することもできる。この実施例では、複数のフレキソマスター版110を各版胴108に1つ配置することもでき、2種類以上の組成および/または粘度のインク120を使用することもできる。別の実施例として、個々の区分にさらに処理できる2つ以上のパターンを基板116に印刷するために、複数のフレキソマスター版110を使用することもできる。印刷パターン(単数または複数)の最終的な用途によって、印刷を基板116の片面に行っても基板116の両面に行ってもよいことは理解できよう。基板116は、版胴108と圧胴112との間を移動していく。圧胴112は、版胴108に圧力を加え、それによってフレキソマスター版から基板にインク120の画像を転写することができる。版胴108の回転速度は、基板116が、ロールツーロール搬送システムと呼ばれる場合もあるフレキソ印刷システム100を通って移動する速度と合致するように同期させることもできる。実施例によって速度は20フィート/分から2600フィート/分の間で様々とすることができる。フレキソマスター版は、接合点、不連続線などのフレキソマスター版の特徴部位のうちのいずれかまたはすべて、および/あるいは少なくとも、均一な印刷もしくは均一なパターン印刷と呼ばれる場合もある、フレキソ印刷プロセスにおいて、基板116上の意図した領域にのみインクを付着させ、意図しない領域にはインクを付着させないための、フレキソマスター版の特徴部位、インクの粘度、および機械圧力の組み合わせを利用する方法を備えることもできる。ひとつの実施例として、基板116上の意図した領域は、フレキソマスターパターン110に対応する複数の場所と呼ぶこともある。
【0019】
ひとつの実施例として、版胴108を金属で形成することができ、さらに耐摩耗性を向上させるなどのために版胴の表面をクロムめっきすることもできる。基板116は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、ポリエステル、ポリプロピレン、発泡体シート、紙、アルミホイルなどの金属箔、薄いガラスなどの印刷可能な物質とすることができる。本明細書でいうポリエチレンテレフタレート(PET)は原子炉級ポリエステルやポリエステルチップなどの溶融PET樹脂、ポリエステル類の生産、および多くの場合ガラス繊維と組み合わせられるエンジニアリング樹脂で使用されるポリマーであり得る、を指すことを理解できよう。場合によっては、PETまたはPETフィルムは、熱安定化され、接着促進コーティングを施しても施さなくてもよい。本明細書で扱う基板116用ポリマー基板は光学的に透明なアクリレートとすることもできる。ひとつの例として、基板116は厚さを最大で約0.50mmとすることもできる。
【0020】
図1はまた、版胴108、圧胴112、フレキソマスター版110、基板116、インク転写領域122のある接触印刷領域118を示している。インク転写領域122には、アニロックスロール106、フレキソマスター版110、版胴108がある。2個以上の版胴108を使用する実施例では、2つ以上のインク転写領域122や接触印刷領域118が存在し得ることは理解できよう。
【0021】
図2は接触印刷領域の断面の拡大図を示している。
図1で述べた接触印刷領域118は、フレキソマスター版110が基板116と接触する領域である。印刷されるパターンを備える線206の隆起した印刷面202が、フレキソマスター版110に彫刻することもでき、傾斜した側壁204を呈してもよい。これに代わる実施例(図示せず)として、線206は凹型にしてもよい。インク120は、圧胴112で基板116を印刷面202に押し付ける際に、インク供給源、例えばアニロックスロールから隆起した印刷面202に移され、隆起した印刷面202から基板116に移され、その間、版胴108と圧胴112は同期して回転していてもよい。この接触印刷領域118は、好ましい実施例の例として図示し、インク120は、隆起したパターン線206によって捕捉され、明瞭、精密、均一、かつ再現可能に基板116に転移され、
図4Aと
図4Cなどと対比することもできる。
【0022】
フレキソマスターパターンの向き:
図3は、本発明の実施例に沿ったロールツーロール式フレキソ印刷システムの横方向(T)と送り方向(M)の説明図である。実施例によっては、本発明は、版胴108の回転方向を基準にして向きを決めたフレキソマスターパターンに関するものである。
図3は、フレキソマスター版110上にある横方向304(T)を向いた線206aと送り方向302(M)を向いた線206bを含む特定の向きにした線206を示している。線206a、206bが最終的には限定しないがタッチスクリーンやRFアンテナなどの用途で導電パターンとして使用できるパターン(単数または複数)を形成する複数の線の代表であること、そして特定の方向の線の記載が同一の方向のパターンの代表であることは理解できよう。横方向304を向いた線206aを含むフレキソマスター版110では、印刷面202が基板116と接触する際に単発的に衝突するため、その結果としてすべてのインク120が移ることもある。送り方向304を向いた線206bを含むフレキソマスター版110では、印刷面202が基板116と好ましくは連続的に接触するようにすることもでき、版胴108が回転するにつれてインク120を線206bの長さ分だけ基板116に転移させることもできる。インク120は、フレキソマスター版110上の線206aまたは206bの印刷面202に付着する1滴以上の液滴で構成されることは理解できよう。
【0023】
インクの転移体積:
図4Aから
図4Cは、インク転写領域の分解断面図を図示する。
図4Aから
図4Cは、
図1に示すインク転写領域122内でのアニロックスロール106によるフレキソマスター版110へのインク転移を示す。ひとつの実施例として、アニロックスロール106は、アニロックスロール106のセルの大きさに基づき、移るインク120の量を制御できる、つまり、異なる大きさのセル402は、異なる体積のインクをフレキソマスター版110に移る。
図4Aでは、アニロックスロール106から不十分な量406のインク120がフレキソマスター版110上の線206に移る場合、線206および/または印刷面202のいずれかに、均一な寸法的不良のないパターンを形成するのに十分なインク120が移らない場合がある。ここでいう寸法的不良のないパターン、あるいは寸法的に正確なパターンとは、上述のような均一な印刷パターンを指し、インクは、意図した場所にのみ付着し、意図しない場所には付着しない。このパターンは、顧客仕様、内部仕様、法規上の要件、またはこれらの組み合わせの所定のセットを満足し得る。これはまた、均一に印刷されたパターン、あるいは均一パターンと呼ぶ場合もある。
【0024】
図4Aに示したようにインクの移る量が不十分であるとパターン印刷が不十分となって、廃棄物が出たり、印刷パターンをさらに処理することが不可能になったり、印刷パターンを含む中間製品あるいは最終製品が機能しなくなったりする場合がある。本明細書に記載しているように印刷パラメータを制御し、変化させることによって、本明細書に記載しているフレキソマスター版110の設計を使用して、印刷される線や特徴部位の目的の幅が達成することもできる。変化する可能性のある印刷パラメータには、印刷速度、圧力、インクの粘度、移すインクの体積(アニロックスロール)が挙げられる。本明細書に記載しているように、滲み等の特性の利点を生かして、完全な均一なパターンを形成するために、インクの粘度や体積などのいくつかの特性を、フレキソマスター版110の設計および設計方向に利用することもできる。
【0025】
逆に、
図4Cに示すようにフレキソマスター版110上の線206上に移るインク120の量が印刷面202の上だけに収めるには多すぎる場合、余分なインク404が広がって、線206の印刷面202のすぐ隣にある傾斜した側壁204の一部に付着する場合がある。インクが意図的ではなく側壁204上に押しやられるとパターンが基板106に均一に印刷されないこととなるため、これが懸念事項になることは理解できよう。また、フレキソマスター版110のパターン中の1本以上の線206の少なくとも側壁の場所に過剰なインク404があると、印刷プロセスが継続していくにつれて蓄積したりフレキソマスター版が正確な量のインクを保持できなくなったりするという問題が起きることがある。後に
図9について述べる実施例では、過剰な圧力を活用することで、フレキソマスター版の1本の線206をもとにして間隔のあいた2本の印刷線を作ることもできる。そして最後に
図4Bに描かれているものは、インク120が基板106に完全かつ均一に転移されていることからもわかるように、アニロックスロール106からフレキソマスター版110にインクを転移する好ましい実施例となり得るものである。
【0026】
図5は過剰なインクでフレキソ印刷された基板の説明図である。
図5は
図4Aで説明したような過剰なインク404によって生じる可能性のある結果を示している。不十分なインクという用語が、移し取られるインクの量が少なくとも部分的な原因となってパターンが均一に印刷されなかったり(パターンが印刷される際に意図しない領域や場所にインクが付いた場合、または意図した場所にインクが付かなかった場合、すなわち隙間などインクが抜けている場所が存在する場合)、正確に印刷されなかったりした場合を説明するのに使用しているものであったのと同様に、過剰なインクはこれと逆の問題、つまり目的とする寸法と形状をもったパターンを印刷するのに必要な量よりもインクが多く移し取られたためにパターンが不均一に印刷された場合を説明するために使用する用語である。代表的に描いた送り方向302(M)の線206と横方向304(T)の線510とによってフレキソマスター版110上に十字形状504ができることがある。送り方向302の線206を印刷する際、フレキソマスター版110と基板116とが接触するところでは、まだフレキソマスター版110にあるインク120が基板116とすでにこの基板116に移ったインク120の一部との両者に接触する可能性がある。この接触点に過剰なインク404が存在すると、送り方向302と横方向304の線206が基板116と接触した状態で回転し続け、インク120が前方に押しやられることがある。
【0027】
この過剰なインク404は広がって印刷線の余分な幅となり、印刷線の縁が連続的に波打った形状502に見える(すなわちネックレスのビーズのように見える)ようになったり、あるいは以下に述べるように十字形状504や類似の接合点に蓄積してする可能性がある。こういった箇所では、過剰なインク404の全量が一度に付着し、越えていく箇所506に過剰なインクが乗ってしまうことがある。その代わりに、あるいはこの問題に加えて、印刷線206の長さがのび、送り方向302(M)の線206の終端の先にインクの延長部508ができてしまうこともある。さらに過剰なインク404は、508のような形状の問題はないかもしれないが、線512のように印刷用に設計されたパターン線510よりも大幅に太い(すなわち目的とする用途の仕様外の)印刷線ができてしまうこともある。ひとつの実施例として、このような線はフレキソマスター版の線510と比べておそらくパターン線510の幅の10倍に太くなることがあるため、寸法仕様の指定された線(幅公差が10Xまたは+/−5Xになることはないであろう)を作ることができるようにフレキソマスター版110が設計されている場合には望ましくないこともある。この幅に関する問題のみならず、印刷パターンの長さと高さが上述の問題によって悪影響を受けることもあることは理解できよう。
【0028】
図6は過剰なインクでフレキソ印刷された基板の説明図である。ここでいう「過剰なインク」という用語は、パターンを印刷するのに必要な量よりも多いインクがインク供給源からアニロックスロールへ、あるいはアニロックスロールから版胴108へ、あるいは版胴108から基板116へと移し取られるような状況を説明するために使用している。フレキソマスター版の線604のうちの1本以上に過剰なインク404がつくと印刷の際に橋のような特徴部位が形成されて繋がってしまう可能性があり、これにより元の意図したパターン線604が完全にぼけてしまうことがある。つまり、フレキソマスター版の間隔のあいた2本の線604によって印刷される2本の印刷線602が異常な形状になったり、602に示すように一部が繋がり合ったりすることがあり、こうなると目的とする均一な印刷パターンができないことや、製造物が廃棄されることもある。実施例によっては、廃棄には費用や労力や環境のうえで問題があるため、インクが意図した領域にのみ付着し意図しない領域には付着しないよう高精細の線を含む均一なパターンを再現可能な方法で印刷できるようにしたいという願望をさらに抱くこととなる。フレキソマスター版は、特定の幅、長さ、高さをもった線や、各線または一群の線ごとに特定の大きさをもった接合部位のあるパターンを印刷するように設計されるため、
図5と
図6に描いたような制御不能な影響はないほうが望ましいということは理解できよう。この代わりに、例えば本明細書に記載したようなシステムと方法を使用すれば、費用効率の高い製造と最終製品の信頼性、そして中間の印刷後処理のための明瞭で均一なパターンを一貫して再現可能に印刷することができる。実施例によって印刷パターンは
図14のところでさらに述べるように清掃、めっき、硬化などの加工がさらになされることがあるため、パターンの印刷が不完全であると下流の加工工程にさらに大きな影響が及ぶ可能性があることは理解できよう。
【0029】
したがって、少なくとも
図6に示したような効果を低減する補助とするには、送り方向302(M)に対してほぼ平行な角度で連続的に形成されたパターン線604を使用して線206を作るのではなく、
図7に示すとともに以下で詳しく述べるような非連続的に形成されたパターン線702(点線もしくは破線、あるいは切れ目のある線)を使用した方がよい場合がある。また実施例によっては、
図6に示した効果を利用して、上で述べたような印刷パラメータ、インクの特性、フレキソマスター版の設計を組み合わせて使用して、フレキソマスター版110の2つ以上の線206や特徴部位を使用して基板116に単一の線や特徴部位を形成する、制御された方法で線を作ることが望ましい場合もある。このような実施例では、使用するフレキソマスター版110上の2本以上の線はその高さ、幅、長さ、形状を同一の寸法、類似の寸法、異なる寸法、またはこれらの組み合わせとすることができる。
【0030】
図7は、本発明の実施例に沿った印刷基板の説明図である。例示した印刷線706は、フレキソマスター版110上の非連続なパターン線702から得られる。ここで扱う非連続(または不連続)なパターン線702とは、一方向に沿った、もしくは(図示しないが)2つ以上の方向に沿った複数の均一または不均一な断片で構成することもできる。均一な断片は寸法のうち長さと幅と高さがほぼ同一であるようなものであり、不均一な断片は寸法が異なるものであり、不連続線702とは一部の断片が互いに対しては均一であるが他の断片に対しては異なるようなものである。ひとつの実施例として、不連続線702は均一な断片のみを含むものとしたり、これに代わる実施例として、不連続線702は不均一な断片のみを含むものとしたり、別の実施例として、不連続線702は一部の断片について高さと幅と長さのうちの少なくとも1つが同一ないし同等であるようないくつかの断片を組み合わせたものとしてもよい。線の断片(線702の線分と呼ぶこともできる)は、目的の線を印刷するのに適切なように、上から見て、長方形状、正方形状、円形状、多角形状、あるいはこれらを組み合わせた形状とすることもできる。フレキソマスター版110上で連続な線としたい線を複数の断片に分割して図示したような不連続線702とすれば、
図5と
図6で説明した過剰なインク404によって印刷が波打つという問題を緩和することができる。フレキソマスター版110上の非連続に形成されたパターン線702の断片間に隙間704を設けることによって、実際にはインク120が基板116上で合流し合って連続した特徴部位や線706を印刷することができる。
【0031】
図6に示したような意図しない繋がりとは対照的であるが、
図7の繋がりはフレキソマスター版の設計あるいは上述のインクと機械の設定パラメータや特性で制御することによってパターンの各部を形成できる。1本の線206や、2本以上の線206で構成される他の特徴部位や、線206(単数または複数)の途中の移行部に必要な隙間704は、印刷速度、インク120の粘度、フレキソマスター版110と基板116の間の圧力、アニロックスロール106でフレキソマスター版110に転移されるインク120の体積、基板116の表面エネルギーなどの印刷パラメータによって変えることができる。適した隙間704の決定は、インクの粘度、端部パターン寸法、上で述べた圧力等の印刷パラメータ、および横方向304の印刷線の具体的な組み合わせを選択することによって行うことができる。パターン線510の幅と比較して太い印刷線512の実際の幅が、最大隙間704を定める。隙間704は、フレキソマスター版110上に線206を作るための元のパターン設計に対する要件と調節を定めるために使用することもできる。別の実施例として、印刷された電子回路パターンを作るための高精細フレキソマスター版は、非連続パターンである送り方向に印刷された線を備える。この実施例では、フレキソマスター版上の10μmの太さの線が、元の形成されたパターン線より30μm太い40μmの太さの線を基板116に印刷する場合、フレキソマスター版のパターンに設ける隙間は、連続印刷線を得るために、すべての線分の間に30μm未満の隙間ができるように作ることもできる。印刷プロセス中、過剰なインクは基板上で合流して、隙間を閉じ、連続的な印刷線706となる。
【0032】
図8は不十分なインクでフレキソ印刷された基板の説明図である。
図8は、転移過程の何らかの部分でインク406の移りが不十分であるとどんな種類の印刷線が出来る可能性があるかの説明を示している。上述のようにインク406が不十分となるのは、特に
図4Cで述べたようにフレキソマスター版110の側壁204にインクが付いた場合や、フレキソマスター版110のパターン表面の高さが均一でない場合、すなわちパターン中の線や特徴部位の高さが様々であり印刷前にパターン中の線すべてがインクで十分に覆われるわけではない場合など、フレキソマスター版の設計を含む多数の要因で生じることがある。線206の印刷面202から基板116に移るインク406が不十分であると、非連続な印刷線514が形成されることがある。さらに、フレキソマスター版110を基板116と接触させる方向に押すように加えられる圧力の大きさは、フレキソマスター版110上の線206から移るインク120の量に影響を与えることがあり、ひいてはインク120が基板116に移ってできる印刷パターンにも影響を及ぼすことがある。実施例によっては、インク406の体積が不十分でも圧力が小さければ印刷線の幅がフレキソマスター版110のパターンに最も近くなることもある。しかし、フレキソマスター版110は上面に凹凸が存在することがあり、この場合は印刷パターンに隙間または途切れができてしまうことがある。
【0033】
圧力変化:
図9は、フレキソマスター版と基板との間の過剰な圧力が印刷に及ぼすおそれのある影響の説明図である。この例では、圧胴によって基板とフレキソマスター版などの間の圧力を高めた状態でインク120を使用すると、合計の全幅が元のフレキソマスター版110の線206よりも大幅に太くなった線902の印刷パターンができる。上で述べたようにフレキソマスター版110は寸法公差の指定された線を含むパターンを印刷できるように設計されている場合もあるため、線が太くなるのは望ましくないこともある。
図9で印刷したいパターンは送り方向302(M)を向いた連続線206である。しかし、過剰な圧力をかけてフレキソマスター版110を基板116と接触するように押さえ付けると、インク120がすべて線206の傾斜した側壁204まで押しやられてしまう。このような印刷作用によって得られる印刷パターンは、実質的にはフレキソマスター版110上の線206の印刷面202の幅にほぼ相当する大きさの間隔をあけた2本の独立した印刷線902である。印刷パターンにおいて目的の幅をもった線206や特徴部位を達成するため、インク120の体積と圧力を的確に組み合わせて使用することもできる。実施例によっては、本明細書に記載しているフレキソマスター版の設計によって線幅50μm以上またはそれを超えるパターンを印刷することもでき、別の実施例としては線幅が1μmより細いパターン(大きさ1ミクロン未満の線)を印刷することもでき、またこれに代わる実施例として線幅を1μmから50μmとすることもできる。
【0034】
膨張:
図10は、フレキソ印刷システム中のフレキソマスター版が膨張する影響の説明図である。
図10はフレキソマスター版1000の膨張がどのように特徴部位の高さと印刷の性能に影響を及ぼすかを示している。
図10は、フレキソマスター版110に高く形成されたパターン線1004の体積の膨張、傾斜した側壁204と比較した際の膨れとして具体的に示した、体積膨張1002の例を示している。フレキソマスター版110は非常に可撓性の高いものであってもよく、また高い湿気や、インク、接着剤、機械用液体などの接触する液体から水分を吸収することがある。この吸収の結果、フレキソマスター版110は体積が膨張し、印刷される特徴部位の長さ、幅、高さ、形状が変化したり、そして体積断面によっては様々な特徴部位の高さに差異が出たりなど、印刷される特徴部位に歪みができる。一般的に、高く形成されたパターン線1004は、低く形成されたパターン線1006の高さ(H2)より大きな高さ(H1)となる。高く形成されたパターン線1004に乗ったインク120は、高い特徴部位が描く弧1008に沿って回転する一方、低く形成されたパターン線1006のインク120は、低い特徴部位が描く弧1010に沿って回転する。このシナリオでは1008と1010との間に高さの差異があるため、印刷プロセス中、低く形成されたパターン線1006からのインク120のすべてではないにしても大部分が基板116に適切に移らず、目的とする均一なパターンが基板116に印刷されないことがある。フレキソマスター版110の様々な特徴部位間の高さの差異は、線206の中のある箇所や部分の下に大きさの差異が存在するかどうかによって生じることがある。この場合、線206は水分の吸収によって膨張することがあるため、高く形成されたパターン線1004は低く形成されたパターン線1006より膨張する可能性がある。大きな密度で高く形成されたパターン線1004の下には大きな体積の材料が存在するためである。本明細書に記載する方法では、膨張は、フレキソマスター版の設計のみならず、インクの選択、機械パラメータの選択、アニロックスロールなどの機械構成部品の選択の両方によって説明できることもある。
【0035】
図11は線充填パターンを用いたパターン線設計の実施例の説明図である。線充填パターンとは、パターンの印刷を均一にしインクが意図した場所に付着し意図しない場所には付着しないようにするために、以下で説明し効果的に部分図で示したような1種類以上の模様をフレキソマスター版110上の1本以上のパターン線に施す場合を説明するために使用する用語である。例えば、フレキソマスター版110上のパターン設計1100によって上述のようにパターンを印刷する際、幅の異なる線どうしを、90度等の角度をなす交差点(接合点)や角、その他の移行領域や移行形状によって互いに接続する必要がある場合がある。ひとつの実施例として、フレキソマスター版のこのような接続領域や移行領域は、上で
図10について述べたようなパターンの連続性の問題が生じることのないよう、線どうしに高さの差が生じないように形成するのが望ましい。高さに差があると、例えば、高く形成された複数のパターン線1004が成す一群の印刷線を、低く形成された複数のパターン線1006が成す一群の印刷線に接続しなければならない場合に、印刷上の課題が生じる可能性がある。高く形成されたパターン線1004は低く形成されたパターン線1006よりも大きく膨張して、低く形成されたパターン線1006よりも高くなることがある。これが起きると、2組の線や特徴部位の間で高さの差があるため、印刷パターンの中で低く形成されたパターン線1006と高い特徴部位(またはより太い)線とが接続する箇所に隙間ができることがある。場合によっては、太い方の線や特徴部位を、これと接続すべき細い方の線や特徴部位に近い幅の多数の細い線や特徴部位で置換することもでき、こうすることで様々な印刷上の課題を可能な限り抑えることができる。印刷パターンの調節を行わないと、細く形成されたパターン線1104と太く形成されたパターン線1106とが接続する移行領域1102では、特徴部位どうしの接合点や交差点や移行部のところで印刷パターンに完全な途切れ1108ができてしまうか、印刷される細い線や特徴部位の幅が狭まってしまう(もしくは括れ1110ができる)かのいずれかが生じることがある。
【0036】
ひとつの実施例として、非常に太く形成されたパターン線1106、例えば太さ50μmを超えるような線を印刷する場合には、印刷されるインク120の均一性に関する課題が生じることがある。フレキソ版材料の表面エネルギーによっては、インク120がその表面張力のせいで球形になろうとする(または盛り上がろうとする)傾向にある。これは、フレキソマスター版110に太く形成されたパターン線1106が基板116に印刷される前後の、フレキソマスター版110に太く形成されたパターン線1106の表面へのインク120の分布(厚さと面積の両方)が不均一になる可能性がある。これは、基板116に印刷されるインク120の厚さと面積の両方の不均一な分布を作り出す可能性がある。
【0037】
このようにインク120が不均一であると、印刷される導電パターンの導電率または抵抗率に関する問題が起きる可能性や、印刷パターンのさらなる加工に影響が及ぶことがある。1112と1114と1116は線の様々な充填パターンを示している。1114と1116の充填パターンを明確にするために、
図11にはこれらのパターンの部分図と格子縞パターン1118とがある。この充填パターンは、上で述べたような多数の線で構成したフレキソマスターパターンとは違い、基板に様々な幅の線を印刷するように設計されたフレキソマスター版のパターンのすべての線のうちの一部に設けることのできるパターンを説明するために使用する用語である。つまり、フレキソマスター版に複数ある線のうちの1本、数本、または全部について、印刷されるインクパターンが(寸法的に)十分にかつ均一に(パターンどうしの間で一貫して)充填されるよう、1112と1114と1116に示すように様々な組み合わせでパターン形成することができる。1112と1114と1116のパターン充填の例は説明のための例示であり、用途によっては他の充填パターンや複数の充填パターンの組み合わせが使用可能である。
【0038】
ひとつの実施例として、不均一な印刷は、複数の接点のある細い線のレンガ充填パターン1112の升目を形成する複数の細い線を印刷して太く形成された1本のパターン線1106と等価なものを作るか、あるいはフレキソマスター版110上のパターンの太く形成されたパターン線1106の表面のパターンを変えることによって対処し、印刷基板116にインク120がより均一に移るようにすることもできる。1116と1114は説明のために部分図を掲げる。1116と1114と1112と1118の充填パターンの特徴部位は図示したとおりの向きとすることもできるが、45°、90°、180°の向きとしたり、フレキソマスター版の設計に適した別の向きにしたりしてもよいことは理解できよう。別の実施例として、約20μmの隙間(実際の隙間の値は前述のようにして決定することもできる)のある20μmの幅のレンガ充填パターン1112を使用して、最大で500μmの太さの単一の太い導電パターン線1106を印刷することができる。同様に、太く形成されたパターン線1106には、細い線1112の代わりに十字模様充填パターン1114や水玉模様パターン1116等、様々な充填パターンを使用することもできる。これらの充填パターンの実際の大きさ、形状、間隔の値は、選択した印刷パラメータの組を使用して印刷試験を実施して得られた値から決定する。ひとつの実施例として、
図1に示すように複数の版胴108に複数のフレキソマスター版110を配置することもでき、その各フレキソマスター版110でひとつのパターンの一部を印刷することもできる。このような実施例では、パターンの各部分に同じ種類のインク120を使用することもできるが、そのパターンを印刷するのに様々な組成または粘度の2種類以上のインク120を使用することもできる。上では太さ50μm以上の線を扱ったが、充填パターンは50μmより細い線上に使用することもでき、その場合、例えばレンガ充填パターンを20μm未満の寸法としてもよいことは理解できよう。
【0039】
図12は移行領域を含むフレキソマスターパターン設計の断面図と斜視図を示している。
図12はフレキソマスター版110(図示せず)上のフレキソマスターパターンの設計1100の斜視図で描いたものを示している。フレキソマスター版110上の特徴部位の断面もまた図示している。区画T1は複数の線1202を含んでおり、区画T2は複数の線1204を含んでいる。ひとつの実施例として、区画T1の複数の線1201は、例えば幅と高さの一方または両方を区画T2の複数の線1202より小さくすることもできる。この区画T1、T2は、フレキソマスター版の製造に関して上述のUV露光(パターン形成)工程中で特徴部位の下にあるフォトポリマーが架橋、収縮する際にできる高さの差異を代表するものである。ひとつの実施例として、T2と1204で表したフォトポリマーの体積が大きいほどポリマーの架橋による収縮は大きくなる。したがって、太く形成されたパターン線1106の断面T2 1204は、細く形成されたパターン線1104の断面T1 1202よりも薄くなる。言い換えれば、フレキソマスター版の太い線は、同じフレキソマスター版のそれより細い線と比べて高さが小さくなることがある。
【0040】
図13は、本発明の実施例に沿ったフレキソマスターパターンに用いる複数の方向範囲の説明図である。
図13は、フレキソマスター版110上の印刷線の方向角に沿って描くために使用する線206のためのパターンスタイル1300を示している。指定のパターンを含むCADファイルを作成した後、このCADファイルは後にパターン形成フレキソマスター版110となるビットマップファイルに変換する。パターン図面は横方向304(T)または送り方向302(M)を基準として作成しなければならない。横方向(T)パターンのCADファイルの図面である場合、印刷速度、インク120の粘度、圧力、インク120の体積等の印刷パラメータの制御を改善できるようにするため、連続的に形成されたパターン線1304とするのが好ましい。送り方向(M)パターンのCADファイルの図面である場合、非連続的に形成されたパターン線702が好ましい。印刷の結果は、インクの粘度、基板の表面エネルギー(本来のものとコロナ放電で誘発して変化させたものの両方)、構成要素の温度、使用したアニロックスロールの大きさや体積に基づいて変化する可能性があることは理解できよう。ひとつの例として、アニロックスロールの体積が1BCM(1平方インチあたり10億立方マイクロメートル)未満であると、ドットゲインは印刷される特徴部位の寸法が大幅に変わらない程度まで十分に小さくなる可能性がある。これはアニロックスロールからフレキソ版に移るインクの体積が減少すると特徴部位の異形または不完全な形成に寄与するインクが少なくなるためである。しかし、印刷パターンの寸法が十分に小さいと、1BCM以下のアニロックスロールからのインク転移でさえ懸念事項となり、不連続線を使用する契機が生じる。しかし、ほとんどの場合、太い線幅に対しては、フレキソマスター版上の不連続線を使用して連続的な線や特徴部位を印刷することができる。
【0041】
さらに、印刷配向角は、その角度を制限し得る特定の特徴を有し得る。つまり、0°から45°と135°から180°の範囲の印刷配向角は横方向304(T)(0°と180°)に近いため横方向角1302と見なすこともでき、したがって、連続形成されたパターン線1304とするのが好ましい。逆に、45°から135°の範囲の印刷配向角は送り方向302(M)(90°)に近いため送り方向角1306と見なし、結果として非連続に形成されたパターン線702を使用することもできる。このため、横方向304は、上記の図の送り方向302に対して大体垂直またはほぼ垂直に図示し、「横方向」302という用語は、本明細書で使用する場合、送り方向304と同一ではなく、送り方向304と交わる方向を定めるために使用される。送り方向304と横方向302は上記の様々な図中に示しているが、これらの図中に示した方向は例示にすぎず、両方向の線の角度範囲を決定するには、インクの粘度、機械圧力、パターン設計のほか、機械速度などの要因を熟考する必要があることは理解できよう。ひとつの実施例として、版胴が第1の方向に回転するとき、複数の線の一部をその第1の方向を含む第1の所定の範囲内の向きとする。このような実施例では、複数の線の一部を第1の方向の第1の所定の範囲外の角度に向け、第1の所定の範囲内の複数の線を不連続線とし、第1の所定の範囲外の複数の線を連続線とする。
【0042】
図14は、本発明の実施例に沿ったフレキソ印刷の方法のフローチャートである。この方法1400では、ブロック1402のところでフレキソ印刷システム(例えば
図1に記載したシステム100)を準備する。このブロック1402での機械の準備は、インクをインクパン102などのインク供給源に配置するブロック1401の過程、少なくとも1個のアニロックスロール106を選択するブロック1406の過程、フレキソマスター版110を版胴108に配置するブロック1408の過程、そして基板116をシステム100内に配置する過程とで構成することもできる。基板116は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、ポリエステル、ポリプロピレン、発泡体シート、紙、アルミホイル等の金属箔、薄いガラスなどの印刷可能な物質とすることができる。
【0043】
実施例によってはインクを2種類以上使用することもでき、したがって2つ以上のインク供給源102があってもよい。実施例によっては、方法1400の中で複数のアニロックスロール106と版胴108を使用することもできる。このような実施例では、ブロック1408で複数の版胴108のそれぞれにフレキソマスター版110を配置し、各フレキソマスター版110にひとつのパターン中の異なる部分があるようにすることもできる。これらの異なる部分には様々な線幅、移行形状があってもよく、同じ種類のインクを使用することも異なる種類のインクを使用することもできる。ブロック1412ではフレキソ印刷システム100が使用可能な状態となり、ブロック1414ではブロック1410でシステム100内に配置された基板116を水洗やウェブクリーナーなどの清掃方法を使用して清掃することもできる。ブロック1416では、ブロック1408で少なくとも1つの版胴108に配置された少なくとも1つのフレキソマスター版110を使用して基板116に印刷が行われる。実施例によっては上に述べたように基板116に片面印刷することもできるが、実施例によっては基板116に両面印刷することもできる。両面印刷は、ひとつの版胴108にひとつのフレキソマスター版110を配置して実現することもできるが、複数の版胴108を使用して複数のフレキソマスター版110で実現することもでき、各面は用途に合わせて同一の方法で印刷しても異なる方法で印刷してもよく、また同じ種類のインクを使用しても何種類かのインクを使用してもよい。上述のように、少なくとも一部において、インクの粘度、組成、温度感受性、圧力感受性による固有の性質やその他のシステムパラメータを活用すべく、パターンを印刷するために使用される少なくとも1つのフレキソマスター版110には、少なくとも1本の不連続線、印刷したい接合点形状よりも小さな接合点形状、2本の線を印刷するための1本の線、または1本の線を印刷するための少なくとも2本の線があってもよい。ブロック1416で印刷された基板はブロック1418でさらなる加工を行うこともできる。このさらなる加工には、硬化、めっき、無電解めっき、コーティング、トリミング、切断、梱包、さらなる組み立てなどがあることは理解できよう。
【0044】
図15は、フレキソマスターパターン中の複数の特徴部位と、そこから得られる印刷パターン中の特徴部位の説明図である。
図15はフレキソマスター版110(図示せず)にある4つのパターンから基板116に印刷した結果を示している。フレキソマスター版110上のパターンは、基板116への印刷結果の上方に描いている。印刷パターンは、(1)中実の交差点1504をもつフレキソマスター版の第1接合点1502と、(2)中実の交差点1504(部分
図1501参照)と対照的な中空の交差点1508をもつフレキソマスター版の第2接合点1506と、(3)中実の角部1512のある第1屈曲パターン1510と、(4)中実の角部1512と対照的なフィレットと呼ぶこともできる中空の角部1516のある第2屈曲パターン1514、である。ここでいう「角部」という用語は、1本以上の線によって形成される任意の角度の屈曲部を説明するために使用することがあることは理解できよう。
【0045】
図15には交差する2本の線と角部とを示しているが、実施例によっては3本以上の線によって接合点が形成されていることもあるということ、そして
図15に示しているフレキソマスターパターンの一部は印刷パターンと比較する際の説明のためのものであり、実際には基板116上にはないことは理解できよう。フレキソマスター版上の中空の交差点1508は、中実の交差点1504と比較した場合、中実の交差点1504が2本以上の線が任意の角度で交差する場所であることがあり、交差する各線の寸法が中実の交差点1504の寸法に保たれるという点で最もうまく説明できる。特徴部位1504、1508の拡大
図1501は分かりやすく説明するために網掛けしており、中空の交差点1508は、交差する各線の寸法が保たれておらず、代わりに、中空の窪みとも呼べる中空1508を作るために線の一部がえぐられた場所であることは理解できよう。フレキソマスター版はこの特徴部位を用いて製造することもできること、そして「えぐられた」という用語は印刷特徴部位に対してフレキソマスター版の特徴部位を指していることもまた理解できよう。また、フレキソマスター版は、上述のように製造した後、対応する特徴部位を特定の寸法範囲内で印刷できるようにするために、熱的および/または機械的に特徴部位の大きさを変化させるような処理をさらに行うことができることもまた理解できよう。
【0046】
交差点である特徴部位1504、1508の拡大
図1503では中空部1534を分かりやすく説明するために網掛けしており、
図15では2本の線の交差点に4つの中空部1534を図示しているが、3本以上の線が交差していてもよく、交差点は、インクの粘度、機械速度、圧力、パターン寸法などの要因によって、1つ以上の中空部1534を備える場合があることは理解できよう。実施例によっては、2つ以上の中空部1534が存在する場合、中空部1534は、均一の大きさであってもよく、別の実施例として、中空部は、異なる寸法とすることもできる。2本以上の線の交差点は、接合点もしくは交差点、またはフィレットもしくは中空部1534の集合と呼ばれる場合がある。
【0047】
中実の交差点1504のあるフレキソマスター版の第1の接合点1502で印刷すると、十字線の交差点に大型の(はみ出した)印刷交差点1520のある第1の印刷十字線パターン1518ができる。「はみ出した」という用語は、印刷特徴部位が、特定の特徴部位(単数または複数)やパターン全体に指定される寸法を印刷しないことを反映するために使用している。中空の交差点1508のあるフレキソマスター版の第2の接合点1506で印刷すると、十字線の交差点に、以下に述べる大型の交差点1520と比較して小型の印刷交差点1524のある第2の印刷十字線パターン1522ができる。ひとつの実施例として、この小型の印刷交差点1524は、特定の用途にまつわる複数の所定の寸法に印刷される。したがって、「小型」の印刷交差点1524と呼ぶことはできるものの、印刷される寸法は、単に、中空の交差点1508のフィレット1534なく印刷された大型の印刷交差点1520と比較して小型であるというだけである。また、好ましい実施例として、交差点あるいはその付近の中空の交差点1508の形状や構造がそれより小型の印刷交差点1524の対応箇所とは異なることを観測することによって、この差を説明することもできる。
【0048】
中実の角部1512のあるフレキソマスター版の第1の折れ線パターン1510で印刷すると、角部に大型の(はみ出した)印刷角部1528のある第1の印刷折れ線パターン1526ができる。中空の角部1516のあるフレキソマスター版の第2の折れ線パターン1514で印刷すると、角部に小型の印刷角部1532のある第2の印刷折れ線パターン1530ができる。したがって、ひとつの実施例として、2本以上の線の印刷接合点または交差点に関するインクの移動を制御することが望ましい場合、フレキソマスター版に中空の交差点1508を設け、その中空の交差点1508の寸法を目的の印刷交差点の寸法より小さくすることもできる。このように中空の交差点1508の形状を用いることによって印刷パターンに影響が及ぼされる。別の実施例として、このように変形させた中空の交差点1508は、基板116にその形状を印刷するのではなく、パターンの一部を少なくとも高さ、幅、長さが既定の許容範囲内になるように印刷できるよう、インクの粘度、フレキソマスター版の材料、圧力などのパラメータ等の特性を用いて設計するということは理解できよう。
図15の接合点や角部や交差点の実施例は、大型の(はみ出した)角部1528と交差点1520がなるべく発生しないよう、フレキソマスター版の特徴部位の形状を対応する印刷特徴部位の形状とは異なるようにしたものであると言える。
【0049】
ひとつの実施例として、印刷電子回路パターンを作製するための高精細フレキソマスター版を隆起した印刷面で構成し、その印刷面でインクをフレキソマスター版から基板に移して、基板に印刷パターンを乗せる。フレキソマスター版には、
図7で述べたような送り方向に印刷される直線を形成するための非連続パターンを設けるのが好ましい。また別の実施例として、印刷電子回路を作製するための高精細フレキソマスター版に横方向に形成された連続パターンのパターン線を設けることもできる。目的とする線の幅は、目標の速度、粘度、圧力、インクの体積などの印刷パラメータを最適化することによって実現される。これに関連する実施例として、
図4Cで述べたように1本の線を使用して2本の線を印刷することもでき、または
図6の本来望ましくない現象を利用して1本の線を印刷するためにフレキソマスター版に複数の線を設けることもできる。本明細書に記載したシステムと方法は、確実に均一なパターンを印刷するため上述のフレキソマスター版の種々の特徴部位を自由に組み合わせて利用することができることは理解できよう。
【0050】
以下の説明と特許請求の範囲を通して、特定のシステム構成要素を指すために特定の用語を使用している。本文献は、機能が同じで名前が異なる構成要素どうしを区別することは意図していない。以下の記載と特許請求の範囲における「含む」「備える」という用語は非限定的に使用しているため、「・・・を含むが、これらに限定されない」という意味に解釈すべきである。本願でいう「ほぼ」という語は「±10%」を意味することを意図している。
【0051】
本明細書において、接合点、2本の線を印刷するためのフレキソマスター版の1本の線、1本の線を印刷するための複数のフレキソ版の線、不連続線、様々な厚さのフレキソマスター版について説明している各実施例は、微細な印刷パターンを作るために様々に組み合わせて使用することができることは理解できよう。本明細書に記載している方法とシステムは、単一のフレキソ印刷システムで複数の種類のインクを用いながらこれらの実施例の様々に組み合わせて使用することもできるが、場合によってはひとつのパターンを印刷するために複数の版胴を使用し、各版胴にはそのパターンの一部を有するフレキソマスター版を配置することもできる。