特許第6013601号(P6013601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6013601低ゲル含量ポリプロピレンから製造される発泡体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013601
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】低ゲル含量ポリプロピレンから製造される発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/12 20060101AFI20161011BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20161011BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20161011BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   C08L23/12
   C08L23/26
   C08F8/00
   C08J3/20 ZCES
【請求項の数】17
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-523503(P2015-523503)
(86)(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公表番号】特表2015-522700(P2015-522700A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】EP2013065262
(87)【国際公開番号】WO2014016205
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2015年3月13日
(31)【優先権主張番号】12177879.9
(32)【優先日】2012年7月25日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513276905
【氏名又は名称】ボレアリス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BOREALIS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(72)【発明者】
【氏名】プロクシ ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン ヘルマン
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/016206(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/141070(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0047544(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0063212(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0004861(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00−23/36
C08F 8/00−8/50
C08J 3/00−3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐ポリプロピレン(b−PP)を含むポリプロピレン組成物を提供する方法であって、ポリプロピレン(PP)を熱分解性フリーラジカル形成剤、並びに任意に二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーと反応させて分岐ポリプロピレン(b−PP)を得る工程(a)を少なくとも有し、
(a) 前記ポリプロピレン(PP)が0.5g/10分より大きいメルトフローレートMFR(230℃)を有し、
(b) 前記ポリプロピレン組成物及び/又は前記分岐ポリプロピレン(b−PP)が20.0cNより大きいF30溶融張力と200mm/秒より大きいv30溶融伸展性とを有し、前記F30溶融張力及び前記v30溶融伸展性がISO16790:2005に従って測定され、
(c) 前記ポリプロピレン(PP)が、1,500μm未満の粒子径分布d90、1,000μm未満の粒子径分布d50、及び1.80未満のd90/d50比を有する粒子の形態で用いられる、
上記方法。
【請求項2】
前記ポリプロピレン(PP)が、
(a) プロピレンホモポリマーであり、
及び/又は
(b) 線状ポリプロピレン(l−PP)である
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記線状ポリプロピレン(l−PP)が、1.0cNより大きいF30溶融張力と200mm/秒未満のv30溶融伸展性とを有し、前記F30溶融張力及び前記v30溶融伸展性はISO16790:2005に従って測定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(a) 前記熱分解性フリーラジカル形成剤が過酸化物であり、
及び/又は
(b) 前記二官能性不飽和モノマーが、ジビニル化合物、アリル化合物及びジエン類からなる群より選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)の後に、前記分岐ポリプロピレン(b−PP)に対して、0.5〜18.0g/10分のメルトフローレートMFR(230℃)を有するポリプロピレン(PP’)を添加する工程(b)をさらに有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
(a) 前記ポリプロピレン(PP)及び前記熱分解性フリーラジカル形成剤及び任意に前記二官能性不飽和モノマーの間の反応が少なくとも80%起こってから前記工程(b)が開始され、
及び/又は
(b) 前記ポリプロピレン(PP’)が線状ポリプロピレン(l−PP’)である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記線状ポリプロピレン(l−PP’)が、1.0cNより大きいF30溶融張力と200mm/秒未満のv30溶融伸展性とを有し、前記F30溶融張力及び前記v30溶融伸展性がISO16790:2005に従って測定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(a)及び前記任意の工程(b)を押出機内で行い、前記押出機が作動方向において第1混合ゾーン(MZ1)及び第2混合ゾーン(MZ2)を有し、さらに前記工程(a)が前記第1混合ゾーン(MZ1)にて行われ、前記工程(b)が前記第2混合ゾーン(MZ2)にて行われる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記押出機が作動方向において、供給口(FT)、前記第1混合ゾーン(MZ1)、前記第2混合ゾーン(MZ2)、及びダイ(D)を有し、前記第1混合ゾーン(MZ1)と前記第2混合ゾーン(MZ2)との間に側供給口(SFT)が設けられ、さらに前記ポリプロピレン(PP)、前記熱分解性フリーラジカル形成剤、及び任意に前記二官能性不飽和モノマーが前記供給口(FT)を介して供給され、前記ポリプロピレン(PP’)が前記側供給口(SFT)を介して供給される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(a) 前記ポリプロピレン(PP)と前記熱分解性フリーラジカル形成剤、及び任意に前記二官能性不飽和モノマーとの反応が前記第1混合ゾーン(MZ1)で起こり、
及び/又は
(b) 前記ポリプロピレン組成物の前記分岐ポリプロピレン(b−PP)の合計量の10重量%以下が前記第2混合ゾーン(MZ2)にて製造される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
1〜5重量部の前記ポリプロピレン(PP’)を95〜99重量部の分岐ポリプロピレン(b−PP)に加える、請求項5〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
得られる前記ポリプロピレン組成物が、
(a) 25.0cN〜50.0cNのF30溶融張力及び210〜300mm/秒のv30溶融伸展性、
並びに/又は
(b) 1.00重量%未満のゲル含量、
を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
(A) 分岐ポリプロピレン(b−PP)を含むポリプロピレン組成物を提供する方法であって、ポリプロピレン(PP)を熱分解性フリーラジカル形成剤、並びに任意に二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーと反応させて分岐ポリプロピレン(b−PP)を得る工程(a)を少なくとも有し、
(i) 前記ポリプロピレン(PP)が0.5g/10分より大きいメルトフローレートMFR(230℃)を有し、
(ii) 前記ポリプロピレン組成物及び/又は前記分岐ポリプロピレン(b−PP)が20.0cNより大きいF30溶融張力と200mm/秒より大きいv30溶融伸展性とを有し、前記F30溶融張力及び前記v30溶融伸展性がISO16790:2005に従って測定され、
(iii) 前記ポリプロピレン(PP)が、1,500μm未満の粒子径分布d90、1,000μm未満の粒子径分布d50、及び1.80未満のd90/d50比を有する粒子の形態で用いられる、
上記方法と、
(B) 工程(A)の前記ポリプロピレン組成物に発泡処理を施して、発泡体を得る工程、
とを有する、発泡体の製造方法。
【請求項14】
前記ポリプロピレン組成物が、
(a) 分岐ポリプロピレン(b−PP)を95〜99重量部、
(b) 任意に、ISO1133に従って測定される0.5より大きく18.0g/10分までのメルトフローレートMFR(230℃)を有するポリプロピレン(PP’)を1〜5重量部、
含み、
前記ポリプロピレン組成物が、
− ISO1133に従って測定される1.0以上7.0g/10分未満のメルトフローレートMFR(230℃)と、
− 1.00重量%未満のゲル含量、
とを有し、
前記ポリプロピレン組成物及び/又は前記分岐ポリプロピレン(b−PP)が、25.0cN〜50.0cNのF30溶融張力と210〜300mm/秒のv30溶融伸展性とを有し、前記F30溶融張力及び前記v30溶融伸展性がISO16790:2005に従って測定される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ポリプロピレン組成物に対して発泡処理を施して発泡体を得る工程を有する発泡体の製造方法であって、前記ポリプロピレン組成物が、
(a) 分岐ポリプロピレン(b−PP)を95〜99重量部、及び
(b) 任意に、ISO1133に従って測定される0.5より大きく18.0g/10分までのメルトフローレートMFR(230℃)を有するポリプロピレン(PP’)を1〜5重量部、
含み、
前記ポリプロピレン組成物が、
− ISO1133に従って測定される1.0以上7.0g/10分未満のメルトフローレートMFR(230℃)と、
− 1.00重量%未満のゲル含量、
とを有し、
前記ポリプロピレン組成物及び/又は前記分岐ポリプロピレン(b−PP)が、25.0cN〜50.0cNのF30溶融張力と210〜300mm/秒のv30溶融伸展性とを有し、前記F30溶融張力及び前記v30溶融伸展性がISO16790:2005に従って測定され、
前記ポリプロピレン組成物が、ポリプロピレン(PP)を熱分解性フリーラジカル形成剤、並びに任意に二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーと反応させて前記分岐ポリプロピレン(b−PP)を得る工程(a)を少なくとも有する方法により得られ、
(i) 前記ポリプロピレン(PP)が0.5g/10分より大きいメルトフローレートMFR(230℃)を有し、
(ii) 前記ポリプロピレン組成物及び/又は前記分岐ポリプロピレン(b−PP)が、20.0cNより大きいF30溶融張力と200mm/秒より大きいv30溶融伸展性とを有し、前記F30溶融張力及び前記v30溶融伸展性がISO16790:2005に従って測定され、
(iii) 前記ポリプロピレン(PP)が、1,500μm未満の粒子径分布d90、1,000μm未満の粒子径分布d50、及び1.80未満のd90/d50比を有する粒子の形態で用いられる、
上記発泡体の製造方法。
【請求項16】
分岐ポリプロピレン(b−PP)及び/又は前記分岐ポリプロピレン(b−PP)を含むポリプロピレン組成物のゲル含量を減少させるための、前記分岐ポリプロピレン(b−PP)及び前記分岐ポリプロピレン(b−PP)を含む前記ポリプロピレン組成物の請求項1〜12のいずれか1項に規定される提供方法における、0.5g/10分より大きいメルトフローレートMFR(230℃)並びに1,500μm未満の粒子径分布d90、1,00μm未満の粒子径分布d50及び1.80未満のd90/d50比を有するポリプロピレン(PP)の使用。
【請求項17】
前記分岐ポリプロピレン(b−PP)及び/又は前記分岐ポリプロピレン(b−PP)を含む前記ポリプロピレン組成物が1.00重量%未満のゲル含量を有する場合に、前記ゲル含量が減少する、請求項16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高溶融張力及び低ゲル含量を有するポリプロピレン組成物を提供する方法に関する。さらに、本発明はそれに対応する低ゲル含量高溶融張力(HMS)ポリプロピレン組成物、及び高溶融張力並びに低ゲル含量を有するポリプロピレン組成物に基づく発泡体の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)組成物は一般的によく知られている。しかしながら、既存のHMS−PPにおける難点の1つはその変化する発泡体品質である。用いられる高溶融張力ポリプロピレンのゲル含量が低いと発泡体品質が向上する。
【0003】
さらに、周知のとおり、通常は添加剤をプラスチック材料に加えて、その性能を向上させる。典型的な添加剤の例としては、例えば酸化防止剤又は顔料が挙げられる。これらの添加剤はしばしば、少量のポリマー粉末に添加剤を含んだ添加剤混合物の形態でプラスチック基材に添加される。添加剤混合物はマスターバッチと呼ばれることもある。添加剤混合物に用いられる少量のポリマー粉末は通常、HMS処理の最後に投入される。しかしながら、この添加剤混合物の最終ゲル含量への影響はしばしば見落とされている。さらに今日まで、高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)の製造におけるベースポリマー粉末の分子量が最終発泡体の特性に著しく影響を与えることも認識されていない。
【0004】
1997年にBorealisによって出願されたEP0879830には、長鎖分岐ポリプロピレン(LCB−PP)材料を製造するために過酸化物及びブタジエンを用いる、Borealis高溶融張力(HMS)後反応器処理の基本が記載されている。この特許は広範囲の粉末メルトフローレート(MFR)及び粒子径を網羅しているものの、高溶融張力ポリプロピレンのゲル含量に基づくHMS品質、特に発泡体品質に対して、ベースポリマーの種類、及び添加剤混合物の調製に用いられるポリプロピレン粉末が与える影響について記載していない。
【0005】
したがって、当技術分野では信頼できる及び/又は向上した品質の高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)を製造する方法がいまだ必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これを受けて、本発明の目的は、当業者がポリプロピレン組成物及び低ゲル含量を有する前記ポリプロピレン組成物からなる発泡体を製造することを可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは驚くことに、ベースポリマーのMFRを上昇させることで最終ゲル含量を著しく減少させることができることを見出した。
【0008】
従って、本発明は分岐ポリプロピレン(b−PP)を含むポリプロピレン組成物を提供する方法に関し、上記方法は、ポリプロピレン(PP)を熱分解性フリーラジカル形成剤、並びに任意に二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーと反応させて分岐ポリプロピレン(b−PP)を得る工程(a)を少なくとも有し、
(a) ポリプロピレン(PP)は0.5g/10分より大きいメルトフローレートMFR(230℃)を有し、
(b) ポリプロピレン組成物及び/又は分岐ポリプロピレン(b−PP)は20.0cNより大きいF30溶融張力と200mm/秒より大きいv30溶融伸展性とを有し、F30溶融張力及びv30溶融伸展性はISO16790:2005に準じて計測される。
【0009】
本発明はさらに、
(a) 分岐ポリプロピレン(b−PP)を95〜99重量部、及び
(b) 任意に、ISO1133に従って測定される0.5〜18.0g/10分より大きいメルトフローレートMFR(230℃)を有するポリプロピレン(PP’)を1〜5重量部、
を含有するポリプロピレン組成物を提供し、
上記ポリプロピレン組成物は
− ISO1133に従って測定される1.0以上7.0g/10分未満のメルトフローレートMFR(230℃)と、
− 1.00重量%未満、好ましくは0.80重量%未満のゲル含量とを有し、
上記ポリプロピレン組成物及び/又は分岐ポリプロピレン(b−PP)は、25.0cN〜50.0cNのF30溶融張力と、210〜300mm/秒のv30溶融伸展性とを有し、F30溶融張力及びv30溶融伸展性はISO16790:2005に従って測定される。
【0010】
本発明はさらに、
(A) 分岐ポリプロピレン(b−PP)を含むポリプロピレン組成物を提供する方法であって、ポリプロピレン(PP)を熱分解性フリーラジカル形成剤、並びに任意に二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーと反応させて分岐ポリプロピレン(b−PP)を得る工程(a)を少なくとも有し、
(i) 上記ポリプロピレン(PP)が0.5g/10分より大きいメルトフローレートMFR(230℃)を有し、
(ii) 上記ポリプロピレン組成物及び/又は分岐ポリプロピレン(b−PP)が20.0cNより大きいF30溶融張力と200mm/秒より大きいv30溶融伸展性とを有し、F30溶融張力及びv30溶融伸展性がISO16790:2005に従って測定される、上記方法と、
(B) 工程(A)のポリプロピレン組成物に発泡処理を施して発泡体を得る工程、とを有する発泡体の製造方法に関する。
【0011】
さらに本発明は、ポリプロピレン組成物に発泡処理を施して発泡体を得る工程を有する発泡体の製造方法を対象とし、上記ポリプロピレン組成物は、
(a) 分岐ポリプロピレン(b−PP)を95〜99重量部、及び
(b) 任意に、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃)が0.5より大きく18.0g/10分までのポリプロピレン(PP’)を1〜5重量部、含有し、
上記ポリプロピレン組成物は
− ISO1133に従って測定される1.0以上7.0g/10分未満のメルトフローレートMFR(230℃)と、
− 1.00重量%未満、好ましくは0.80重量%未満のゲル含量とを有し、
上記ポリプロピレン組成物及び/又は分岐ポリプロピレン(b−PP)は、25.0cN〜50.0cNのF30溶融張力と、210〜300mm/秒のv30溶融伸展性とを有し、F30溶融張力及びv30溶融伸展性はISO16790:2005に従って測定される。
【0012】
さらに本発明は、分岐ポリプロピレン(b−PP)及び/又は分岐ポリプロピレン(b−PP)を含むポリプロピレン組成物のゲル含量を減少させるための、分岐ポリプロピレン(b−PP)の製造、及びその分岐ポリプロピレン(b−PP)を含むポリプロピレン組成物の製造における、メルトフローレートMFR(230℃)が0.5g/10分より大きいポリプロピレン(PP)の使用を対象とする。好ましくは、ゲル含量は、分岐ポリプロピレン(b−PP)及び/又は分岐ポリプロピレン(b−PP)を含むポリプロピレン組成物が1.00重量%未満の、好ましくは0.80重量%未満のゲル含量を有する場合に減少する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明をより詳細に説明する。
【0014】
最初に、本発明及びポリプロピレン組成物に用いられる個々の成分、すなわち、線状ポリプロピレン(l−PP’)などのポリプロピレン(PP)、線状ポリプロピレン(l−PP’)などのポリプロピレン(PP’)、分岐ポリプロピレン(b−PP)、及び添加剤(A)について記載する。次に、発泡体及びポリプロピレン(PP)の使用に加えて、特許請求の範囲に記載の方法をより詳細に記載する。しかしながら、個々の成分又はポリプロピレン組成物について記載されたいかなる情報及び好ましい実施形態も、個々の成分及びポリプロピレン組成物がそれぞれ参照される場合は本発明の方法及び本発明の使用について適用可能である。
【0015】
分岐ポリプロピレン(b−PP)
本発明によって提供されるポリプロピレン組成物の主要成分は、分岐ポリプロピレン(b−PP)である。分岐ポリプロピレンは線状ポリプロピレンとは異なり、ポリプロピレンバックボーンが側鎖を含むのに対して、非分岐ポリプロピレン、すなわち線状ポリプロピレンは、側鎖を含まない。側鎖はポリプロピレンのレオロジーに著しい影響を与える。したがって、線状ポリプロピレン及び分岐ポリプロピレンは圧力下における流動挙動によって明確に区別することができる。
【0016】
分岐は特定の触媒、すなわち特定のシングルサイト触媒、又は化学修飾によって得られる。特定の触媒を用いて得られる分岐ポリプロピレンの製造に関しては、EP1892264が参照される。化学修飾によって得られる分岐ポリプロピレンに関しては、EP0879830A1が参照される。このような場合、分岐ポリプロピレンは高溶融張力ポリプロピレンとも呼ばれる。本発明に係る分岐ポリプロピレン(b−PP)は、以下により詳細に記載するように化学修飾によって得られ、従って高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)である。したがって、「分岐ポリプロピレン(b−PP)」及び「高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)」という用語は本発明において同義語とみなすことができる。
【0017】
したがって、ポリプロピレン組成物の主要成分としての分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)は、20.0cNより大きいF30溶融張力と200mm/秒より大きいv30溶融伸展性とを有し、好ましくは20.0より大きく50.0cNまでのF30溶融張力と、200より大きく300mm/秒までのv30溶融伸展性とを有して、良好なせん断減粘特性を有するポリプロピレン組成物をもたらす。F30溶融張力及びv30溶融伸展性はISO16790:2005に従って測定される。
【0018】
典型的には、本発明のポリプロピレン組成物はさらに、20.0cNより大きいF30溶融張力と200mm/秒より大きいv30溶融伸展性とを有し、好ましくは20.0より大きく50.0cNまでのF30溶融張力と200より大きく300mm/秒までのv30溶融伸展性とを有する。
【0019】
好ましい実施形態において、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)は、
(a) 20.0cNより大きい、例えば20.0より大きく50.0cNまで、より好ましくは21.0cNより大きい、さらにより好ましくは21.0〜50.0cN、いっそうより好ましくは25.0〜50.0cN、さらにいっそうより好ましくは25.0〜45.0cN、最も好ましくは30.0〜45.0cN、例えば32.0〜42.0のF30溶融張力と、
(b) 210より大きく300mm/秒まで、例えば220より大きく300mm/秒まで、より好ましくは225mm/秒より大きく、さらにより好ましくは225〜300mm/秒、いっそうより好ましくは230〜290mm/秒のv30溶融伸展性とを有する。
【0020】
特に好ましい実施形態では、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)は、20.0cNより大きいF30溶融張力と210より大きく300mm/秒までのv30溶融伸展性とを、例えば20.0より大きく0.0cNまでのF30溶融張力と220より大きく300mm/秒までのv30溶融伸展性とを、より好ましくは21.0cNより大きいF30溶融張力と225mm/秒より大きいv30溶融伸展性とを、さらにより好ましくは21.0〜50.0cNのF30溶融張力と225〜300mm/秒のv30溶融伸展性とを、いっそうより好ましくは25.0〜50.0cNのF30溶融張力と230〜290mm/秒のv30溶融伸展性とを、さらにいっそうより好ましくは25.0〜45.0cNのF30溶融張力と230〜290mm/秒のv30溶融伸展性とを、最も好ましくは30.0〜45.0cNのF30溶融張力と230〜290mm/秒のv30溶融伸展性とを、例えば32.0〜42.0cNのF30溶融張力と230〜290mm/秒のv30溶融伸展性とを有する。
【0021】
さらに、前記分岐ポリプロピレン(b−PP)、好ましくは高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)は、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃)が7.0g/10分以下、より好ましくは0.5〜7.0g/10分の範囲内、さらにより好ましくは0.5〜6.0g/10分の範囲内、いっそうより好ましくは1.0〜6.0g/10分の範囲内、例えば1.5〜5.0g/10分の範囲内又は1.0〜5.0g/10分の範囲内であることが好ましい。
【0022】
したがって、具体的な実施形態の1つでは、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)は、
(a) 7.0g/10分以下、好ましくは0.5〜7.0g/10分の範囲内、より好ましくは0.5〜6.5g/10分の範囲内、さらにより好ましくは0.5〜6.0g/10分の範囲内、いっそうより好ましくは1.0〜6.0g/10分の範囲内、例えば1.5〜5.0g/10分の範囲内又は1.0〜5.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、
(b) 20.0cNより大きい、例えば20.0より大きく50.0cNまで、より好ましくは21.0cNより大きい、さらにより好ましくは21.0〜50.0cN、いっそうより好ましくは25.0〜50.0cN、さらにいっそうより好ましくは25.0〜45.0cN、最も好ましくは30.0〜45.0cN、例えば32.0〜42.0cNのF30溶融張力と、
(c) 210より大きく300mm/秒まで、例えば220より大きく300mm/秒まで、より好ましくは225mm/秒より大きい、さらにより好ましくは225〜300mm/秒、いっそうより好ましくは230〜290mm/秒のv30溶融伸展性、
とを有する。
【0023】
したがって、具体的な実施形態では、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)は、7.0g/10分以下のメルトフローレートMFR(230℃)と、20.0cNより大きいF30溶融張力と、210より大きく300mm/秒までのv30溶融伸展性、例えば0.5〜7.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、20.0より大きく50.0cNまでのF30溶融張力と、220より大きく300mm/秒までのv30溶融伸展性、より好ましくは0.5〜6.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、21.0cNより大きいF30溶融張力と、225mm/秒より大きいv30溶融伸展性、さらにより好ましくは1.0〜6.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、21.0〜50.0cNのF30溶融張力と、225〜300mm/秒のv30溶融伸展性、いっそうより好ましくは1.0〜6.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と25.0〜50.0cNのF30溶融張力と、230〜290mm/秒のv30溶融伸展性、さらにいっそうより好ましくは1.0〜5.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、25.0〜45.0cNのF30溶融張力と、230〜290mm/秒のv30溶融伸展性、最も好ましくは1.0〜5.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、30.0〜45.0cNのF30溶融張力と、230〜290mm/秒のv30溶融伸展性、例えば1.0〜5.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、32.0〜42.0cNのF30溶融張力と、230〜290mm/秒のv30溶融伸展性とを有する。
【0024】
好ましくは、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)は、少なくとも130℃、より好ましくは少なくとも135℃、及び最も好ましくは少なくとも140℃の融点を有する。結晶化温度は好ましくは少なくとも110℃、より好ましくは少なくとも120℃である。
【0025】
さらに、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)は、分岐ランダムプロピレンコポリマー(b−R−PP)、すなわち高溶融張力ランダムプロピレンコポリマー(R−HMS−PP)、又は分岐プロピレンホモポリマー(b−H−PP)、すなわち高溶融張力プロピレンホモポリマー(H−HMS−PP)であってもよく、後者が好ましい。
【0026】
本発明の目的のために、「プロピレンホモポリマー」の表現は、実質的に、すなわち少なくとも97モル%、好ましくは少なくとも98モル%、より好ましくは少なくとも99モル%、最も好ましくは少なくとも99.8モル%のプロピレン単位からなるポリプロピレンを意味する。好ましい実施形態では、プロピレンホモポリマー中にプロピレン単位のみが検出可能である。
【0027】
分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)が分岐ランダムプロピレンコポリマー(b−R−PP)、すなわち高溶融張力ランダムプロピレンコポリマー(R−HMS−PP)である場合、これはプロピレンと共重合可能なモノマー、例えばエチレン及び/又はC〜C12α−オレフィン、特にエチレン及び/又はC〜C10α−オレフィン、例えば1−ブテン及び/又は1−ヘキセンなどのコモノマーを含む。好ましくは、分岐ランダムプロピレンコポリマー(b−R−PP)、すなわち高溶融張力ランダムプロピレンコポリマー(R−HMS−PP)は、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群からの、プロピレンと共重合可能なモノマーを含み、特に前記モノマーからなる。より具体的には、分岐ランダムプロピレンコポリマー(b−R−PP)、すなわち高溶融張力ランダムプロピレンコポリマー(R−HMS−PP)は、プロピレンの他に、エチレン及び/又は1−ブテンに由来する単位を含む。好ましい実施形態では、分岐ランダムプロピレンコポリマー(b−R−PP)、すなわち高溶融張力ランダムプロピレンコポリマー(R−HMS−PP)は、エチレン及びプロピレンに由来する単位のみを含む。分岐ランダムプロピレンコポリマー(b−R−PP)、すなわち高溶融張力ランダムプロピレンコポリマー(R−HMS−PP)におけるコモノマー含量は、好ましくは0.2より大きく10.0モル%までの範囲内、さらにより好ましくは0.5より大きく7.0モル%までの範囲内であることが好ましい。
【0028】
この点について、高溶融張力プロピレンホモポリマー(H−HMS−PP)又は高溶融張力ランダムプロピレンコポリマー(R−HMS−PP)である高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)は、高溶融張力ランダムプロピレンコポリマー(R−HMS−PP)について規定したコモノマーとは異なる不飽和モノマーをさらに含んでもよい。言い換えると、高溶融張力プロピレンホモポリマー(H−HMS−PP)又は高溶融張力ランダムプロピレンコポリマー(R−HMS−PP)は不飽和単位、プロピレン、エチレン及びその他のC〜C12α−オレフィンとは異なる、例えば以下に規定する二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーを含んでいてもよい。したがって、高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)に関連したホモポリマー及びコポリマーの定義は、実際には、以下に詳細に規定するような化学修飾によって溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)を得るのに用いられる未修飾ポリプロピレン、すなわちポリプロピレン(PP)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)を意味する。
【0029】
したがって、好ましい実施形態の1つにおいて、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)は、
(a) 高溶融張力プロピレンホモポリマー(H−HMS−PP)である場合は、
(i) プロピレンと、
(ii) 二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマー
に由来する単位、
を含み、
又は
(b) 高溶融張力ランダムプロピレンコポリマー(R−HMS−PP)である場合は、
(i) プロピレンと、
(ii) エチレン及び/又はC〜C10α−オレフィン、例えば1−ブテン及び/又は1−ヘキセン、好ましくはエチレンと、
(iii) 二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマー
に由来する単位、
とを含む。
【0030】
上記で使用している「二官能性不飽和」又は「多官能性不飽和」は、例えばジビニルベンゼン又はシクロペンタジエン又はポリブタジエンのような、好ましくは2つ以上の非芳香族二重結合の存在を意味する。好ましくはフリーラジカル(下記を参照されたい。)の補助によって重合させることができる、このような二官能性又は多官能性不飽和化合物のみが使用される。二官能性又は多官能性不飽和化合物中の不飽和部位は、二重結合がそれぞれ未修飾ポリプロピレン、すなわちポリプロピレン(PP)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)のポリマー鎖への共有結合に使用されるため、それらの化学的な結合状態において実際には「不飽和」ではない。
【0031】
1種及び/又は2種以上の不飽和モノマーから合成され、好ましくは10000g/モル以下の数平均分子量(Mn)を有する二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーと、未修飾ポリプロピレン、すなわちポリプロピレン(PP)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)との反応は、熱フリーラジカル形成剤、例えば熱分解可能な過酸化物などの分解性フリーラジカル形成剤の存在下にて行われる。
【0032】
二官能性不飽和モノマーは、
− ジビニル化合物、例えばジビニルアニリン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン、ジビニルペンタン及びジビニルプロパンなど;
− アリル化合物、例えばアクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、マレイン酸アリルメチル及びアリルビニルエーテルなど;
− ジエン、例えば1,3−ブタジエン、クロロプレン、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、ヘプタジエン、ヘキサジエン、イソプレン及び1,4−ペンタジエンなど;
− 芳香族及び/又は脂肪族ビス(マレイミド)ビス(シトラコンイミド)並びにこれらの不飽和モノマーの混合物であってよい。
【0033】
特に好ましい二官能性不飽和モノマーは、1,3−ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン及びジビニルベンゼンである。
【0034】
好ましくは10000g/モル以下の数平均分子量(Mn)を有する、多官能性不飽和低分子量ポリマーは、1種又は2種以上の不飽和モノマーから合成されてもよい。
【0035】
そのような低分子量ポリマーの例は、
− ポリブタジエン、特にポリマー鎖中の異なる微細構造、すなわち1,4−cis、1,4−trans及び1,2−(ビニル)の大部分が1,2−(ビニル)配置であるもの
− ポリマー鎖中に1,2−(ビニル)を有するブタジエン及びスチレンのコポリマー、
である。
【0036】
好ましい低分子量ポリマーは、ポリブタジエン、特に1,2−(ビニル)配置のブタジエンを50.0重量%を超えて有するポリブタジエンである。
【0037】
分岐ポリプロピレン、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)は、2種以上の二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーを含有してもよい。さらにより好ましくは、分岐ポリプロピレン、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)中の二官能性不飽和モノマーと多官能性不飽和低分子量ポリマーとを合わせた量は、前記分岐ポリプロピレン、すなわち前記高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)に対して0.01から10.0重量%である。
【0038】
好ましい実施形態では、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)は、添加剤(A)を含まない。したがって、本発明のポリプロピレン組成物が添加剤(A)を含む場合は、これらの添加剤(A)は分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)の製造中においてポリプロピレン組成物に取り込まれない。
【0039】
ポリプロピレン(PP)
上記の通り、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)は修飾ポリプロピレンであり、ポリプロピレン(PP)を熱分解性フリーラジカル形成剤、及び任意に二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーと反応させることによって得られる。
【0040】
本発明の本質的な側面は、本発明においては、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)の製造において、並びにその分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)を含むポリプロピレン組成物の製造において、特定の未修飾ポリプロピレンを用いなければならないことである。特記すべき知見は、ポリプロピレン(PP)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)が、低めの分子量及びしたがって大きめのメルトフローレートを有さなければならないということである。したがって、ポリプロピレン(PP)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)は、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃)が0.5g/10分より大きく、好ましくは0.5より大きく18.0g/10分までの範囲内、例えば0.5より大きく15.0g/10分まで、又は0.6より大きく15.0g/10分まで、より好ましくは0.5より大きく10.0g/10分未満、さらにより好ましくは0.6より大きく9.0g/10分まで、いっそうより好ましくは0.8〜8.0g/10分であることが好ましい。
【0041】
具体的な例の1つにおいて、ポリプロピレン(PP)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)は、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃)が0.5g/10分より大きく、好ましくは0.5より大きく18.0g/10分までの範囲内、例えば0.5より大きく15.0g/10分まで又は0.6より大きく15.0g/10分まで、より好ましくは0.5より大きく10.0g/10分未満、さらにより好ましくは0.6より大きく9.0g/10分まで、いっそうより好ましくは0.8〜8.0g/10分であるが、但し、1.0g/10分、10.0g/10分及び45.0g/10分の値は除外される。
【0042】
分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)は、その製造に用いられるポリプロピレン(PP)とは異なり、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)のバックボーンが側鎖を含むのに対して、開始生成物、すなわちポリプロピレン(PP)は、側鎖を含まないか、略含まない。側鎖はポリプロピレンのレオロジーに著しく影響を与える。したがって、開始生成物、すなわちポリプロピレン(PP)、及び得られた分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)は、圧力下におけるその流動挙動によって明確に区別することができる。
【0043】
さらに、上記のとおり、ポリプロピレン(PP)は好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)である。同様のことが、以下に詳細に議論されるようにポリプロピレン(PP’)にも適用され、好ましい実施形態では線状ポリプロピレン(l−PP’)でもある。したがって、本発明を通じて「線状ポリプロピレン」という用語は、線状ポリプロピレンが分岐構造を示さないか略示さないことを示す。分岐がないことによって、線状ポリプロピレン、すなわち線状ポリプロピレン(l−PP)及び線状ポリプロピレン(l−PP’)は、好ましくはその低いv30溶融伸展性及び/又は低いF30溶融張力によって特徴付けられる。
【0044】
したがって、線状ポリプロピレン(l−PP)は
(a) 1.0cNより大きい、好ましくは2.0cNより大きい、より好ましくは1.0以上68.0cN未満の範囲内、さらにより好ましくは1.5〜65.0cNの範囲内、いっそうより好ましくは2.0〜60.0cNの範囲内、さらにいっそうより好ましくは2.5〜50.0cNの範囲内、例えば2.5〜45.0cNの範囲内のF30溶融張力と、
(b) 200mm/秒未満、好ましくは190mm/秒未満、より好ましくは100以上200mm/秒未満の範囲内、さらにより好ましくは120〜190mm/秒の範囲内、いっそうより好ましくは120〜175mm/秒の範囲内、例えば125〜170mm/秒の範囲内のv30溶融伸展性、
とを有することが好ましい。
【0045】
言い換えると、線状ポリプロピレン(l−PP)は、1.0cNより大きいF30溶融張力と、200mm/秒未満のv30溶融伸展性とを、好ましくは2.0cNより大きいF30溶融張力と190mm/秒未満のv30溶融伸展性とを、より好ましくは1.0以上68.0cN未満の範囲内のF30溶融張力と100以上200mm/秒未満の範囲内のv30溶融伸展性とを、いっそうより好ましくは1.5〜65.0cNの範囲内のF30溶融張力と120〜190mm/秒の範囲内のv30溶融伸展性とを、さらにいっそうより好ましくは2.0〜60.0cNの範囲内のF30溶融張力と120〜190mm/秒の範囲内のv30溶融伸展性とを、例えば2.5〜50.0cNの範囲内のF30溶融張力と120〜175mm/秒の範囲内のv30溶融伸展性とを有することが好ましい。
【0046】
したがって、具体的な実施形態の1つにおいて、線状ポリプロピレン(l−PP)は
(a) ISOに従って測定される0.5g/10分より大きい、好ましくは0.5より大きく18.0g/10分までの範囲内、例えば0.5より大きく15.0g/10分まで又は0.6より大きく15.0g/10分まで、より好ましくは0.5より大きく10.0g/10分未満、さらにより好ましくは0.6より大きく9.0g/10分まで、いっそうより好ましくは0.8〜8.0g/10分のメルトフローレートMFR(230℃)と、
(b) 1.0cNより大きく、好ましくは2.0cNより大きく、より好ましくは1.0以上68.0cN未満の範囲内、さらにより好ましくは1.5〜65.0cNの範囲内、いっそうより好ましくは2.0〜60.0cNの範囲内、さらにいっそうより好ましくは2.5〜50.0cNの範囲内、例えば2.5〜45.0cNの範囲内のF30溶融張力と、
(c) 200mm/秒未満、好ましくは190mm/秒未満、より好ましくは100以上200mm/秒未満の範囲内、さらにより好ましくは120〜190mm/秒の範囲内、いっそうより好ましくは120〜175mm/秒の範囲内、例えば125〜170mm/秒の範囲内のv30溶融伸展性とを有する。
【0047】
したがって、具体的な実施形態の1つにおいて、ポリプロピレン(PP)は、0.5g/10分より大きいメルトフローレートMFR(230℃)と、1.0cNより大きいF30溶融張力と、200mm/秒未満のv30溶融伸展性とを、好ましくは0.5より大きく18.0g/10分までの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、2.0cNより大きいF30溶融張力と、190mm/秒未満のv30溶融伸展性とを、より好ましくは0.6より大きく15.0g/10分までの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、1.0〜68.0cNの範囲内のF30溶融張力と、100以上200mm/秒未満の範囲内のv30溶融伸展性とを、いっそうより好ましくは0.5より大きく10.0g/10分までの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、2.0〜60.0cNの範囲内のF30溶融張力と、120〜190mm/秒の範囲内のv30溶融伸展性とを、さらにいっそうより好ましくは0.6より大きく9.0g/10分までの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、2.5〜50.0cNの範囲内のF30溶融張力と、120〜190mm/秒の範囲内のv30溶融伸展性とを、例えば0.8より大きく8.0g/10分までの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、2.5〜45.0cNの範囲内のF30溶融張力と、120〜175mm/秒の範囲内のv30溶融伸展性とを有する、線状ポリプロピレン(l−PP)である。
【0048】
好ましくは、ポリプロピレン(PP)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)は、少なくとも140℃、より好ましくは少なくとも150℃、及びさらにより好ましくは少なくとも158℃の融点を有する。
【0049】
さらに、ポリプロピレン(PP)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)は、特定の大きさの粒子の形態で用いられることが好ましい。したがって、ポリプロピレン(PP)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)は、
(a) 1,500μm未満、より好ましくは1,200μm未満、さらにより好ましくは50以上1,200μm未満の範囲内、いっそうより好ましくは100以上1,100μm未満の範囲内、例えば150以上1,100μm未満の範囲内の粒子径分布d90
及び/又は
(b) 1,000μm未満、より好ましくは800μm未満、さらにより好ましくは30以上1,000μm未満の範囲内、いっそうより好ましくは50〜850μmの範囲内、例えば100〜750μmの範囲内の粒子径分布d50
及び/又は
(c) 1.80未満、より好ましくは1.75未満、さらにより好ましくは1.60未満、いっそうより好ましくは1.00〜1.75の範囲内、さらにいっそうより好ましくは1.10〜1.60の範囲内のd90/d50比、
を有することが好ましい。
【0050】
ポリプロピレン(PP)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)は、例えばシングルサイト又はチーグラーナッタ触媒を採用することによって、周知の方法で製造することができる。ポリプロピレン(PP)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)は、プロピレンホモポリマー(H−PP)、好ましくは線状プロピレンホモポリマー(l−H−PP)、又はプロピレンコポリマー(R−PP)、好ましくは線状プロピレンコポリマー(l−R−PP)であってもよい。コモノマー含量及びコモノマーの種類に関しては、分岐ポリプロピレン(b−PP)について上記した情報が参照され、特に高溶融張力ランダムプロピレンコポリマー(R−HMS−PP)が参照される。好ましくはポリプロピレン(PP)は線状ポリプロピレン(l−PP)である。さらにより好ましくは、ポリプロピレン(PP)は線状プロピレンホモポリマー(l−H−PP)である。したがって、メルトフローレートMFR(230℃)、融点、F30溶融張力、v30溶融伸展性、及び粒子径並びに粒子径分布それぞれについて提供される全ての情報は、特に線状プロピレンホモポリマー(l−H−PP)について適用される。
【0051】
好ましい実施形態では、ポリプロピレン(PP)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)は、添加剤(A)を含まない。したがって、本発明のポリプロピレン組成物が添加剤(A)を含む場合、これらの添加剤(A)は分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)の製造中においてポリプロピレン組成物に取り込まれない。
【0052】
ポリプロピレン(PP’)
本発明のポリプロピレン組成物の製造中に、ポリプロピレン(PP’)をさらに添加してもよい。このポリプロピレン(PP’)は、好ましくは、本発明のポリプロピレン組成物中に添加剤(A)を入れ込むために用いられる。したがって好ましい実施形態では、添加剤(A)は本発明のポリプロピレン組成物に添加剤混合物(AM)の形態で導入され、前記添加剤混合物は、ポリプロピレン(PP’)及び添加剤(A)を含み、好ましくはそれらからなる。
【0053】
好ましくは、ポリプロピレン(PP’)は線状ポリプロピレン(l−PP’)である。
【0054】
より好ましくは、ポリプロピレン(PP’)、すなわち線状ポリプロピレン(PP’)は、低めの分子量、つまりは大きめのメルトフローレートを有さなければならない。したがって、ポリプロピレン(PP’)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP’)は、ISO1133に従って測定される0.5g/10分より大きい、好ましくは0.5より大きく18.0g/10分までの範囲内、例えば0.5より大きく15.0g/10分まで又は0.6より大きく15.0g/10分まで、より好ましくは0.5より大きく10.0g/10分未満、さらにより好ましくは0.6より大きく9.0g/10分まで、いっそうより好ましくは0.8〜8.0g/10分のメルトフローレートMFR(230℃)を有することが好ましい。
【0055】
好ましくは、ポリプロピレン(PP’)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP’)は、少なくとも140℃、より好ましくは少なくとも150℃及びさらにより好ましくは少なくとも158℃の融点を有する。
【0056】
さらに、上記のとおり、ポリプロピレン(PP’)は好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP’)であり、従って分岐構造を示さないか又は略示さない。分岐が不在であるために、線状ポリプロピレン(l−PP’)は好ましくは低いv30溶融伸展性及び/又は低いF30溶融張力によって特徴付けられる。
【0057】
したがって、線状ポリプロピレン(l−PP’)は
(b) 1.0cNより大きい、好ましくは2.0cNより大きい、より好ましくは1.0以上68.0cN未満の範囲内、さらにより好ましくは1.5〜65.0cNの範囲内、いっそうより好ましくは2.0〜60.0cNの範囲内、さらにいっそうより好ましくは2.5〜50.0cNの範囲内、例えば2.5〜45.0cNの範囲内のF30溶融張力、
及び
(b) 200mm/秒未満、好ましくは190mm/秒未満、より好ましくは100以上200mm/秒未満の範囲内、さらにより好ましくは120〜190mm/秒の範囲内、いっそうより好ましくは120〜175mm/秒の範囲内、例えば125〜170mm/秒の範囲内のv30溶融伸展性を有することが好ましい。
【0058】
言い換えると、線状ポリプロピレン(l−PP’)は、1.0cNより大きいF30溶融張力と200mm/秒未満のv30溶融伸展性とを、好ましくは2.0cNより大きいF30溶融張力と190mm/秒未満のv30溶融伸展性とを、より好ましくは1.0以上68.0cN未満の範囲内のF30溶融張力と100以上200mm/秒未満の範囲内のv30溶融伸展性とを、いっそうより好ましくは1.5〜65.0cNの範囲内のF30溶融張力と120〜190mm/秒の範囲内のv30溶融伸展性とを、さらにいっそうより好ましくは2.0〜60.0cNの範囲内のF30溶融張力と120〜190mm/秒の範囲内のv30溶融伸展性とを、例えば2.5〜50.0cNの範囲内のF30溶融張力と120〜175mm/秒の範囲内のv30溶融伸展性とを有することが好ましい。
【0059】
したがって、具体的な実施形態の1つにおいて、線状ポリプロピレン(l−PP’)は
(a) ISO1133に従って測定される0.5g/10分より大きい、好ましくは0.5より大きく18.0g/10分までの範囲内、例えば0.5より大きく15.0g/10分まで又は0.6より大きく15.0g/10分まで、より好ましくは0.5より大きく10.0g/10分未満、さらにより好ましくは0.6より大きく9.0g/10分まで、いっそうより好ましくは0.8〜8.0g/10分のメルトフローレートMFR(230℃)と、
(b) 1.0cNより大きい、好ましくは2.0cNより大きい、より好ましくは1.0以上68.0cN未満の範囲内、さらにより好ましくは1.5〜65.0cNの範囲内、いっそうより好ましくは2.0〜60.0cNの範囲内、さらにいっそうより好ましくは2.5〜50.0cNの範囲内、例えば2.5〜45.0cNの範囲内のF30溶融張力と、
(c) 200mm/秒未満、好ましくは190mm/秒未満、より好ましくは100以上200mm/秒未満の範囲内、さらにより好ましくは120〜190mm/秒の範囲内、いっそうより好ましくは120〜175mm/秒の範囲内、例えば125〜170mm/秒の範囲内のv30溶融伸展性とを有する。
【0060】
したがって、具体的な実施形態の1つにおいて、ポリプロピレン(PP’)は、0.5g/10分より大きいメルトフローレートMFR(230℃)と、1.0cNより大きいF30溶融張力と、200mm/秒未満のv30溶融伸展性とを、好ましくは0.5より大きく18.0g/10分までの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、2.0cNより大きいF30溶融張力と、190mm/秒未満のv30溶融伸展性とを、より好ましくは0.6より大きく15.0g/10分までの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、1.0〜68.0cNの範囲内のF30溶融張力と、100以上200mm/秒未満の範囲内のv30溶融伸展性とを、いっそうより好ましくは0.5より大きく10.0g/10分までの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、2.0〜60.0cNの範囲内のF30溶融張力と120〜190mm/秒の範囲内のv30溶融伸展性とを、さらにいっそうより好ましくは0.6より大きく9.0g/10分までの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、2.5〜50.0cNのF30溶融張力と120〜190mm/秒の範囲内のv30溶融伸展性とを、例えば0.8より大きく8.0g/10分までの範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、2.5〜45.0cNの範囲内のF30溶融張力と、120〜175mm/秒の範囲内のv30溶融伸展性とを有する線状ポリプロピレン(l−PP’)である。
【0061】
さらに、ポリプロピレン(PP’)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP’)は、特定の大きさの粒子の形態で用いられることが好ましい。したがって、ポリプロピレン(PP’)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP’)は、
(a) 1,500μm未満、より好ましくは1,200μm未満、さらにより好ましくは50以上1,200μm未満の範囲内、いっそうより好ましくは100以上1,100μm未満の範囲内、例えば150以上1,100μm未満の範囲内の粒子径分布d90
及び/又は
(b) 1,000μm未満、より好ましくは800μm未満、さらにより好ましくは30以上1,000μm未満の範囲内、いっそうより好ましくは50〜850μmの範囲内、例えば100〜750μmの範囲内の粒子径分布d50
及び/又は
(c) 1.80未満、より好ましくは1.75未満、さらにより好ましくは1.60未満、いっそうより好ましくは1.00〜1.75の範囲内、さらにいっそうより好ましくは1.10〜1.60の範囲内のd90/d50比、
を有することが好ましい。
【0062】
ポリプロピレン(PP’)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP’)は、例えばシングルサイト又はチーグラーナッタ触媒を採用することによって周知の方法で製造することができる。ポリプロピレン(PP’)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP’)は、プロピレンホモポリマー(H−PP’)、好ましくは線状プロピレンホモポリマー(l−H−PP’)、又はプロピレンコポリマー(R−PP’)、好ましくは線状プロピレンコポリマー(l−R−PP’)であってもよい。コモノマー含量及びコモノマーの種類に関しては、分岐ポリプロピレン(b−PP)、特に高溶融張力ランダムプロピレンコポリマー(R−HMS−PP)について上記にて提供された情報が参照される。好ましくは、ポリプロピレン(PP’)は線状ポリプロピレン(l−PP’)である。さらにより好ましくは、ポリプロピレン(PP’)は線状プロピレンホモポリマー(l−H−PP’)である。したがって、メルトフローレートMFR(230℃)、融点、F30溶融張力、v30溶融伸展性、及び粒子径並びに粒子径分布それぞれに関して提供された全ての情報は、特に線状プロピレンホモポリマー(l−H−PP’)に適用される。
【0063】
具体的な実施形態において、ポリプロピレン(PP)及びポリプロピレン(PP’)は同一である。したがって、好ましい実施形態の1つにおいて、ポリプロピレン(PP)及びポリプロピレン(PP’)は、特に上記のようにメルトフローレートMFR(230℃)、F30溶融張力及びv30溶融伸展性に関して同じ性質を有する、線状プロピレンホモポリマー、すなわち線状プロピレンホモポリマー(l−H−PP)及び線状プロピレンホモポリマー(l−H−PP’)である。
【0064】
上記のとおり、ポリプロピレン(PP‘)はポリプロピレン組成物に添加剤(A)を導入するための担体として用いられる。言い換えると、ポリプロピレン組成物の製造のための本発明の方法において、ポリプロピレン(PP’)及び添加剤(A)を含み、好ましくはそれらからなる添加剤混合物(AM)が用いられる。
【0065】
添加剤(A)としては高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)及びその適用の技術領域において有用な任意の添加剤を用いることができる。したがって、本発明のポリプロピレン組成物中に用いられ、従って添加剤混合物(AM)の形態で用いられる添加剤(A)は、酸化防止剤(例えば立体障害フェノール、亜リン酸エステル/亜ホスホン酸エステル、硫黄含有酸化防止剤、アルキルラジカル捕捉剤、芳香族アミン、立体障害アミン安定剤、又はそれらの混合物)、金属不活性化剤(例えばIrganox MD1024)、若しくはUV安定剤(例えば立体障害アミン光安定剤)などの安定剤を含むがこれらに限定されるものではない。他の典型的な添加剤は、帯電防止又は防曇剤などの調節剤(例えばエトキシ化アミン及びアミド、又はグリセロールエステル)、酸捕捉剤(例えばステアリン酸カルシウム)、発泡剤、付着剤(cling agents)(例えばポリイソブテン)、潤滑剤及び樹脂(アイオノマーワックス、PE−及びエチレンコポリマーワックス、フィッシャー・トロプシュワックス(Fischer−Tropsch waxes)、モンタン系ワックス(Montan−based waxes)、フッ素系化合物、又はパラフィンワックス)、核形成剤(例えばタルク、ベンゾエート、リン系化合物、ソルビトール、ノニトール系化合物、又はアミド系化合物)、並びにスリップ及びブロッキング防止剤(例えば、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、タルク天然シリカ及び合成シリカ、若しくはゼオライト)などである。好ましくは、添加剤(A)は酸化防止剤(例えば立体障害フェノール、亜リン酸エステル/亜ホスホン酸エステル、硫黄含有酸化防止剤、アルキルラジカル捕捉剤、芳香族アミン、立体障害アミン安定剤、又はそれらの混合物)、金属不活性化剤(例えばIrganox MD1024)、若しくはUV安定剤(例えば立体障害アミン光安定剤)、帯電防止又は防曇剤(例えば、エトキシ化アミン及びアミド、又はグリセロールエステル)、酸捕捉剤(例えばステアリン酸カルシウム)、発泡剤、付着剤(例えばポリイソブテン)、潤滑剤及び樹脂(アイオノマーワックス、PE−及びエチレンコポリマーワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、モンタン系ワックス、フッ素系化合物、又はパラフィンワックス)、核形成剤(例えばタルク、ベンゾエート、リン系化合物、ソルビトール、ノニトール系化合物、又はアミド系化合物)、スリップ剤、ブロッキング防止剤(例えば、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、タルク天然シリカ及び合成シリカ、又はゼオライト)及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0066】
通常、添加剤混合物(AM)中の添加剤(A)の合計量は、添加剤混合物(AM)の合計重量に対して25重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下であり、例えば5〜20重量%の範囲内である。
【0067】
ポリプロピレン組成物
上記のとおり、本発明の方法によって、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)を含むポリプロピレン組成物が得られる。実施形態の1つにおいて、本発明のポリプロピレン組成物は分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)と、ポリプロピレン(PP’)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP’)と、任意で少なくとも1種の添加剤(A)とを含む。
【0068】
本発明のポリプロピレン組成物における主要成分は分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)である。したがって、ポリプロピレン組成物は少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、いっそうより好ましくは少なくとも80重量%、さらにより好ましくは少なくとも85重量%、さらにいっそうより好ましくは少なくとも90重量%、例えば少なくとも95重量%の分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)を含む。
【0069】
より好ましくは、本発明のポリプロピレン組成物は、
(a) 80〜99重量部、好ましくは90〜99重量部、より好ましくは95〜99重量部の分岐ポリプロピレン(b−PP)、好ましくは高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)と、
(b) 任意に1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部のポリプロピレン(PP’)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)、
とを含む。
【0070】
好ましい実施形態では、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)、及びポリプロピレン(PP’)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP’)が、ポリプロピレン組成物中の唯一のポリマー成分である。言い換えると、ポリプロピレン組成物は、上記でより詳細に規定されている少なくとも1種の添加剤(A)をさらに含んでもよいが、ポリプロピレン組成物の全重量に対して5重量%を超える、より好ましくは2重量%を超える、なおより好ましくは1重量%を超える量の他のポリマーを含まない。具体的な実施形態では、ポリプロピレン組成物は分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)、ポリプロピレン(PP’)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP’)、及び少なくとも1種の添加剤(A)からなる。
【0071】
好ましくは、ポリプロピレン組成物における添加剤(A)の合計量は、ポリプロピレン組成物の合計重量に対して、5.0重量%以下、より好ましくは1.0重量%以下、例えば0.005〜0.5重量%の範囲内である。
【0072】
したがって、本発明の方法は、
(a) 分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)を80〜99重量部、好ましくは90〜99重量部、より好ましくは95〜99重量部、
(b) 任意に、ISO1133に従って測定される0.5g/10分より大きい、好ましくは0.5より大きく18.0g/10分までの範囲内、例えば0.5より大きく15.0g/10分まで又は0.6より大きく15.0g/10分まで、より好ましくは0.5より大きく10.0g/10分未満、さらにより好ましくは0.6より大きく9.0g/10分まで、いっそうより好ましくは0.8〜8.0g/10分のメルトフローレートMFR(230℃)を有するポリプロピレン(PP’)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP’)を1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部、及び
(c) 任意に、酸化防止剤、金属不活性化剤、UV安定剤、帯電防止剤、防曇剤、酸捕捉剤、発泡剤、付着剤、潤滑剤、核形成剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤及びそれらの混合物からなる群より好ましくは選択される添加剤(A)を、0.005〜5.0、好ましくは0.005〜2.0、より好ましくは0.05〜1.0、例えば0.05〜0.5重量部、
含むポリプロピレン組成物の製造を対象とする。
【0073】
上記のように、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)は、本発明のポリプロピレン組成物の主要部分である。したがって、最終的なポリプロピレン組成物が分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)と類似するレオロジー挙動を示すことが好ましい。
【0074】
したがって、本発明のポリプロピレン組成物は、
(a) 20.0cNより大きい、例えば20.0より大きく50.0cNまで、より好ましくは21.0cNより大きい、さらにより好ましくは21.0〜50.0cN、いっそうより好ましくは25.0〜50.0cN、さらにいっそうより好ましくは25.0〜45.0cN、最も好ましくは30.0〜45.0cN、例えば32.0〜42.0cNのF30溶融張力と、
(b) 210より大きく300mm/秒まで、例えば220より大きく300mm/秒まで、より好ましくは225mm/秒より大きい、さらにより好ましくは225〜300mm/秒、いっそうより好ましくは230〜290mm/秒のv30溶融伸展性、
とを有する。
【0075】
特に好ましい実施形態において、本発明のポリプロピレン組成物は、20.0cNより大きいF30溶融張力と、210より大きく300mm/秒までのv3溶融伸展性とを、例えば20.0より大きく50.0cNまでのF30溶融張力と220より大きく300mm/秒までのv30溶融伸展性とを、より好ましくは21.0cNより大きいF30溶融張力と225mm/秒より大きいv30溶融伸展性とを、さらにより好ましくは21.0〜50.0cNまでのF30溶融張力と225〜300mm/秒のv30溶融伸展性とを、いっそうより好ましくは25.0〜50.0cNのF30溶融張力と230〜290mm/秒のv30溶融伸展性とを、さらにいっそうより好ましくは25.0〜45.0cNのF30溶融張力と230〜290mm/秒のv30溶融伸展性とを、最も好ましくは30.0〜45.0cNのF30溶融張力と230〜290mm/秒のv30溶融伸展性とを、例えば32.0〜42.0cNのF30溶融張力と230〜290mm/秒のv30溶融伸展性とを有する。
【0076】
さらに、本発明のポリプロピレン組成物は、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃)が、7.0g/10分以下、好ましくは0.5〜7.0g/10分の範囲内、より好ましくは0.5〜6.5g/10分の範囲内、さらにより好ましくは0.5〜6.0g/10分の範囲内、いっそうより好ましくは1.0〜6.0g/10分の範囲内、例えば1.5〜5.0g/10分の範囲内又は1.0〜5.0g/10分の範囲内であることが好ましい。
【0077】
したがって、具体的な実施形態の1つにおいて、本発明のポリプロピレン組成物は
(a) ISO1133に従って測定される7.0g/10分以下、好ましくは0.5〜7.0g/10分の範囲内、より好ましくは0.5〜7.0g/10分の範囲内、さらにより好ましくは0.5〜6.0g/10分の範囲内、いっそうより好ましくは1.0〜6.0g/10分の範囲内、例えば1.5〜5.0g/10分の範囲内又は1.0〜5.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、
(b) 20.0cNより大きい、例えば20.0より大きく50.0cNまで、より好ましくは21.0cNより大きい、さらにより好ましくは21.0〜50.0cN、いっそうより好ましくは25.0〜50.0cN、さらにいっそうより好ましくは25.0〜45.0cN、最も好ましくは30.0〜45.0cN、例えば32.0〜42.0cNのF30溶融張力と、
(c) 210より大きく300mm/秒まで、例えば220より大きく300mm/秒まで、より好ましくは225mm/秒より大きい、さらにより好ましくは225〜300mm/秒、いっそうより好ましくは230〜290mm/秒のv30溶融伸展性、
とを有する。
【0078】
したがって、より具体的な実施形態において、本発明のポリプロピレン組成物は、7.0g/10分以下のメルトフローレートMFR(230℃)と、20.0cNより大きいF30溶融張力と、210より大きく300mm/秒までのv30溶融伸展性とを、例えば0.5〜7.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、20.0より大きく50.0cNまでのF30溶融張力と、220より大きく300mm/秒までのv30溶融伸展性とを、より好ましくは0.5〜6.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、21.0cNより大きいF30溶融張力と、225mm/秒より大きいv30溶融伸展性とを、さらにより好ましくは1.0〜6.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、21.0〜50.0cNのF30溶融張力と、225〜300mm/秒のv30溶融伸展性とを、いっそうより好ましくは1.0〜6.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、25.0〜50.0cNのF30溶融張力と、230〜290mm/秒のv30溶融伸展性とを、さらにいっそうより好ましくは1.0〜5.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、25.0〜45.0cNのF30溶融張力と、230〜290mm/秒のv30溶融伸展性とを、最も好ましくは1.0〜5.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、30.0〜45.0cNのF30溶融張力と、230〜290mm/秒のv30溶融伸展性とを、例えば1.0〜5.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、32.0〜42.0cNのF30溶融張力と、230〜290mm/秒のv30溶融伸展性とを有する。
【0079】
本発明の本質的な知見は、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)、及び/又は本発明のポリプロピレン組成物が、低ゲル含量を示すことである。したがって、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)、及び/又は本発明のポリプロピレン組成物が、1.00重量%未満、好ましくは0.80重量%未満、より好ましくは0.50重量%未満、さらにより好ましくは0.01以上1.00重量%未満の範囲内、いっそうより好ましくは0.01以上0.80重量%未満の範囲内、さらにいっそうより好ましくは0.02以上0.50重量%未満の範囲内のゲル含量を有することが好ましい。
【0080】
上記の情報を念頭に入れれば、本発明は例えば、
(a) 分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)を80〜99重量部、好ましくは90〜99重量部、より好ましくは95〜99重量部、
(b) 任意に、ISO1133に従って測定される0.5g/10分より大きい、好ましくは0.5より大きく18.0g/10分までの範囲内、例えば0.5より大きく15.0g/10分まで、又は0.6より大きく15.0g/10分まで、より好ましくは0.5より大きく10.0g/10分未満、さらにより好ましくは0.6より大きく9.0g/10分まで、いっそうより好ましくは0.8〜8.0g/10分のメルトフローレートMFR(230℃)を有するポリプロピレン(PP’)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)を1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部、及び
(c) 任意に、酸化防止剤、金属不活性化剤、UV安定剤、帯電防止剤、防曇剤、酸捕捉剤、発泡剤、付着剤、潤滑剤、核形成剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤及びそれらの混合物からなる群より好ましくは選択される添加剤(A)を0.005〜5.0、好ましくは0.005〜2.0、より好ましくは0.05〜1.0、例えば0.05〜0.5重量部、
含むポリプロピレン組成物を包含し、
前記ポリプロピレン組成物は、
− 7.0g/10分以下、好ましくは0.5〜7.0g/10分の範囲内、より好ましくは0.5〜6.5g/10分の範囲内、さらにより好ましくは0.5〜6.0g/10分の範囲内、いっそうより好ましくは1.0〜6.0g/10分の範囲内、例えば1.5〜5.0g/10分の範囲内又は1.0〜5.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、
− 1.00重量%未満、好ましくは0.80重量%未満、より好ましくは0.50重量%未満、さらにより好ましくは0.01以上1.00重量%未満の範囲内、いっそうより好ましくは0.01以上0.80重量%未満の範囲内、さらにいっそうより好ましくは0.02以上0.50重量%未満の範囲内のゲル含量、
とを有し、
前記ポリプロピレン組成物及び/又は分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)は、
− 20.0cNより大きい、例えば20.0より大きく50.0cNまで、より好ましくは21.0cNより大きく、さらにより好ましくは21.0〜50.0cN、いっそうより好ましくは25.0〜50.0cN、さらにいっそうより好ましくは25.0〜45.0cN、最も好ましくは30.0〜45.0cN、例えば32.0〜42.0cNのF30溶融張力と、
− 210より大きく300mm/秒まで、例えば220より大きく300mm/秒まで、より好ましくは225mm/秒より大きい、さらにより好ましくは225〜300mm/秒、いっそうより好ましくは230〜290mm/秒のv30溶融伸展性、とを有する。
【0081】
発泡体
上記のとおり、本発明はまた、本明細書に記載される本発明のポリプロピレン組成物を含む発泡体として特徴付けられる。好ましくは、発泡体は、本発明に係るポリプロピレン組成物を少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、いっそうより好ましくは少なくとも95重量%含む。好ましい実施形態では、発泡体は、本発明のポリプロピレン組成物からなる(発泡処理の後に発泡体に発泡剤が残る場合はそれを除く)。
【0082】
方法
本発明の本質的な側面の1つは、ポリプロピレン(PP)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)を用いた、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)を含むポリプロピレン組成物の製造である。言い換えると、本発明は、分岐ポリプロピレン(b−PP)を含むポリプロピレン組成物を提供する方法に関し、前記方法は、ポリプロピレン(PP)を熱分解性フリーラジカル形成剤、並びに任意に二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーと反応させて、分岐ポリプロピレン(b−PP)を得る工程(a)を少なくとも有する。好ましくは、本発明の方法は、工程(a)の後に、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)にポリプロピレン(PP’)を添加する工程(b)をさらに有する。さらにより好ましくは、本発明の方法は、工程(a)の後に、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)に、ポリプロピレン(PP’)と添加剤(A)とを含む添加剤混合物(AM)を添加する工程(b)をさらに有する。
【0083】
その後、このように製造されたポリプロピレン組成物に対して発泡処理を施して、本発明のポリプロピレン組成物を含む発泡体を得る。
【0084】
発泡体、ポリプロピレン組成物、分岐ポリプロピレン(b−PP)、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン(PP’)、添加剤(A)及び添加剤混合物(AM)の定義及び好ましい実施形態に関しては、上記に提供された情報が参照される。
【0085】
上記のとおり、ポリプロピレン組成物の製造方法の工程(a)では、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)は、ポリプロピレン(PP)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)を、熱分解ラジカル形成剤で処理することで得ることができる。しかしながら、そのような場合はポリプロピレン(PP)、好ましくは線状ポリプロピレン(PP)が劣化する危険性が大きく、それは有害となる。したがって、二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーを化学的に結合された架橋単位としてさらに利用することによって化学修飾を行うことが好ましい。分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)を得る適切な方法は、例えばEP0787750、EP0879830A1及びEP0890612A2に開示されている。全ての文献が本明細書中に参照によって引用される。よって、熱分解ラジカル形成剤、好ましくは過酸化物の量は、ポリプロピレン(PP)の量に対して好ましくは0.05〜3.00重量%の範囲内である。通常、熱分解ラジカル形成剤は二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーと一緒にポリプロピレン(PP)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)に加えられる。しかしながら、最初にポリプロピレン(PP)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)に、二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーを加え、続いて熱分解ラジカル形成剤を加えるか、又は逆に、最初にポリプロピレン(PP)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)に熱分解ラジカル形成剤を加え、その後に二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーを加えることもできるが、好ましいとは言えない。
【0086】
分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)の製造に用いられる二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーに関しては、「分岐ポリプロピレン」の項が参照される。
【0087】
上述したとおり、二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーは、熱分解性フリーラジカル形成剤の存在下にて使用されることが好ましい。
【0088】
過酸化物は、好ましい熱分解性フリーラジカル形成剤である。より好ましくは、熱分解性フリーラジカル形成剤は、過酸化アシル、過酸化アルキル、ヒドロペルオキシド、過酸エステル及びペルオキシカルボネートからなる群より選択される。
【0089】
以下に列挙する過酸化物が特に好ましい:
過酸化アシル:過酸化ベンゾイル、4−クロロベンゾイルペルオキシド、3−メトキシベンゾイルペルオキシド及び/又はメチルベンゾイルペルオキシド。
【0090】
過酸化アルキル:アリル t−ブチルペルオキシド、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシブタン)、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、ジイソプロピルアミノメチル−t−アミルペルオキシド、ジメチルアミノメチル−t−アミルペルオキシド、ジエチルアミノメチル−t−ブチルペルオキシド、ジメチルアミノメチル−t−ブチルペルオキシド、1,1−ジ−(t−アミルペルオキシ)シクロヘキサン、t−アミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、t−ブチルペルオキシド及び/又は1−ヒドロキシブチルn−ブチルペルオキシド。
【0091】
過酸エステル及びペルオキシカルボネート:過酢酸ブチル、過酢酸クミル、過プロピオン酸クミル、過酢酸シクロヘキシル、ジ−t−ブチルペルアジペート、ジ−t−ブチルペルアゼレート、ジ−t−ブチルペルグルタレート、ジ−t−ブチルペルフタレート、ジ−t−ブチルペルセバケート、4−ニトロクミルペルプロピオネート、1−フェニルエチルペルベンゾエート、ニトロ過安息香酸フェニルエチル、t−ブチルビシクロ−(2,2,1)ヘプタンペルカルボキシレート、t−ブチル−4−カルボメトキシペルブチレート、t−ブチルシクロブタンペルカルボキシレート、t−ブチルシクロヘキシルペルオキシカルボキシレート、t−ブチルシクロペンチルペルカルボキシレート、t−ブチルシクロプロパンペルカルボキシレート、t−ブチルジメチルペルシンナメート、t−ブチル−2−(2,2−ジフェニルビニル)ペルベンゾエート、t−ブチル−4−メトキシペルベンゾエート、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルカルボキシシクロヘキサン、t−ブチルペルナフトエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボネート、t−ブチルペルトルエート、t−ブチル−1−フェニルシクロプロピルペルカルボキシレート、t−ブチル−2−プロピルペルペンテン−2−オエート、t−ブチル−1−メチルシクロプロピルペルカルボキシレート、t−ブチル−4−ニトロフェニルペルアセテート、t−ブチルニトロフェニルペルオキシカルバメート、t−ブチル−N−スクシイミドペルカルボキシレート、t−ブチルペルクロトネート、t−ブチル過マレイン酸、t−ブチルペルメタクリレート、t−ブチルペルオクトエート、t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボネート、t−ブチルペルイソブチレート、t−ブチルペルアクリレート及び/又はt−ブチルペルプロピオネート。
【0092】
上記の分解性フリーラジカル形成剤の混合物も考慮に入れられる。
【0093】
好ましくは、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)を得るべく、ポリプロピレン(PP)と熱分解性フリーラジカル形成剤、及び任意に二官能性不飽和モノマーとの反応が少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、いっそうより好ましくは少なくとも90%、例えば少なくとも95又は99%進んだときに、工程(b)が開始される。
【0094】
好ましい実施形態において、二軸押出機などの押出機が工程(a)及び任意の工程(b)にて用いられる。
【0095】
押出機の使用は、分岐プロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)の調製、及び前記分岐プロピレン(b−PP)へのポリプロピレン(PP’)又は添加剤混合物(AM)のその後の添加に同時に用いることができる点で特に有利である。好ましい実施形態において、ポリプロピレン(PP)は、上記にて詳細に説明したとおり、熱分解性フリーラジカル形成剤、好ましくは過酸化物、並びに任意に二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマー、好ましくはジビニル化合物、アリル化合物若しくはジエン類から選択される二官能性不飽和モノマーと一緒に押出機に加えられて、工程(a)にて分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)を得る。また、予混合装置の下流に押出機を配置する組み合わせを用いてもよく、その場合は二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマー並びに熱分解性フリーラジカル形成剤は予混合装置の中のポリプロピレンに加えられる。
【0096】
その後、工程(b)にて、ポリプロピレン(PP’)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)、又は少なくとも1種の添加剤(A)を含む前記ポリプロピレン(PP’)、好ましくは前記線状ポリプロピレン(l−PP’)に基づく添加剤混合物(AM)を、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)を得るための修飾反応に干渉しないよう、上記のとおり、押出機スクリューの下流端にて加えることが好ましい。この点において、「押出機スクリューの下流端」という用語は、押出機スクリューの長さの最後の60%以内、好ましくは押出機スクリューの長さの最後の65%以内、より好ましくは押出機スクリューの長さの少なくとも70%、例えば押出機スクリューの少なくとも75%と理解される。
【0097】
したがって、本発明の方法に用いられる押出機(E)は、好ましくは作動方向に、供給口(FT)と、第1混合ゾーン(MZ1)と、第2混合ゾーン(MZ2)とダイ(D)とを備え、第1混合ゾーン(MZ1)及び第2混合ゾーン(MZ2)の間に側供給口(SFT)が設けられる。好ましくは、押出機はスクリュー押出機、例えば二軸押出機である。したがって、ポリプロピレン(PP’)、すなわち線状ポリプロピレン(l−PP’)及び添加剤(A)ではなく、ポリプロピレン(PP)、熱分解性フリーラジカル形成剤、好ましくは過酸化物、及び任意に、ジビニル化合物、アリル化合物又はジエン類から好ましくは選択される二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーモノマーが、供給口(FT)を介して、そのために好ましくはフィーダーを用いて、押出機に供給され、その後、第1混合ゾーン(MZ1)を通って下流へ渡される。好ましくは、前記第1混合ゾーン(MZ1)におけるせん断応力は、ポリプロピレン(PP)が溶融状態となり、ラジカル形成剤及び任意の二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーとの化学反応が開始される程度の大きさである。第1混合ゾーン(MZ1)の後、すなわち第1混合ゾーン(MZ1)と第2混合ゾーン(MZ2)との間で、ポリプロピレン(PP’)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP’)又は添加剤混合物(AM)が加えられ、すなわち押出機に供給される。好ましくは、ポリプロピレン(PP’)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP’)、又は添加剤混合物(AM)は側供給口(SFT)を介して供給され、その際に好ましくはサイドフィーダーが用いられる。その後に、ポリプロピレン(PP’)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP’)、又は添加剤混合物(AM)を含むポリプロピレン組成物の全ての成分が第2混合ゾーン(MZ2)を通って下流に渡される。最後に、ポリプロピレン組成物はダイ(D)を介して排出される。
【0098】
好ましくは、第1混合ゾーン(MZ1)は第2混合ゾーン(MZ2)よりも長い。好ましくは、第1混合ゾーン(MZ1)と第2混合ゾーン(MZ2)の長さの比[mm(MZ1)/mm(MZ2)]は、少なくとも2/1、より好ましくは3/1、いっそうより好ましくは2/1〜15/1の範囲内、さらにより好ましくは3/1〜10/1である。
【0099】
発泡処理は当業者の知識の範囲内である。このような処理において、ブタン、HFC又はCOなどの気体発泡剤を含む本発明のポリプロピレン組成物の溶融物は圧力の急激な低下によって急に膨張する。連続的な発泡処理(Continuous forming process)と断続的処理(discontinuous forming process)のいずれを適用してもよい。連続発泡処理では、ポリプロピレン組成物は溶融されて押出機の中にて、通常20barより大きい圧力下にて気体で荷重されてから、ダイを介して押し出され、そこで圧力が急激に低下して発泡体が形成される。発泡体押出におけるポリプロピレンの発泡化のメカニズムは、例えば、H.E.Naguib、C.B.Park、N.Reichelt、Fundamental foaming mechanisms governing the volume expansion of extruded polypropylene foams、Journal of Applied Polymer Science、91、2661−2668(2004)にて説明されている。発泡化の方法は、S.T.Lee、Foam Extrusion,Technomic Publishing(2000)にその概要が記載されている。断続的な発泡処理では、ポリプロピレン組成物(マイクロ)ペレットに圧力下で発泡剤と共に荷重をかけ、溶融温度未満まで加熱した後、オートクレーブ内の圧力を急激に緩和する。溶解している発泡剤が泡を形成して発泡体構造が生成する。このような断続的な発泡ビーズの調製は、例えばDE3539352に記載されている。
【0100】
使用
さらに本発明は、分岐ポリプロピレン(b−PP)及び/又は分岐ポリプロピレン(b−PP)を含むポリプロピレン組成物のゲル含量を減少させるための、分岐ポリプロピレン(b−PP)の製造、並びにその分岐ポリプロピレン(b−PP)を含むポリプロピレン組成物の製造における、0.5g/10分より大きいメルトフローレートMFR(230℃)を有するポリプロピレン(PP)の使用を対象とする。好ましくは、分岐ポリプロピレン(b−PP)及び/又は分岐ポリプロピレン(b−PP)を含むポリプロピレン組成物が1.00重量%未満、好ましくは0.80重量%未満、より好ましくは0.50重量%未満、さらにより好ましくは0.01以上1.00重量%未満の範囲内、いっそうより好ましくは0.01以上0.80重量%未満の範囲内、さらにいっそうより好ましくは0.02以上0.50重量%未満の範囲内のゲル含量を有する場合に、ゲル含量は減少する。
【0101】
ポリプロピレン(PP)の好ましい実施形態は、「ポリプロピレン(PP)」の項で定義したものである。好ましい分岐ポリプロピレン(b−PP)及び好ましいポリプロピレン組成物に関しては、それぞれ「分岐ポリプロピレン(b−PP)」の項及び「ポリプロピレン組成物」の項が参照される。好ましくは、ポリプロピレン(PP)は、「方法」の項に記載の方法にて用いられる。したがって、分岐ポリプロピレン(b−PP)、ポリプロピレン組成物、ポリプロピレン(PP)、ポリプロピレン(PP’)、添加剤(A)及び添加剤混合物(AM)について上記した全ての好ましい実施形態が、本発明の使用にとっても好ましい。したがって、例えば、本発明は、分岐ポリプロピレン(b−PP)及び/又は分岐ポリプロピレン(b−PP)を含むポリプロピレン組成物のゲル含量を下げるための、分岐ポリプロピレン(b−PP)、そしてその分岐ポリプロピレン(b−PP)を含むポリプロピレン組成物の製造方法における、ポリプロピレン(PP)の使用を対象とし、
前記方法は、ポリプロピレン(PP)を熱分解性フリーラジカル形成剤並びに任意に二官能性不飽和モノマー及び/又は多官能性不飽和低分子量ポリマーと反応させて、分岐ポリプロピレン(b−PP)を得る工程(a)を少なくとも含み、
(a) ポリプロピレン(PP)は、
(a1)ISO1133に従って測定される0.5g/10分より大きい、好ましくは0.5より大きく18.0g/10分までの範囲内、例えば0.5より大きく15.0g/10分まで又は0.6より大きく15.0g/10分まで、より好ましくは0.5より大きく10.0g/10分未満、さらにより好ましくは0.6より大きく9.0g/10分まで、いっそうより好ましくは0.8〜8.0g/10分のメルトフローレートMFR(230℃)と、
(a2)好ましくは1.0cNより大きい、より好ましくは2.0cNより大きい、さらにより好ましくは1.0以上68.0cN未満の範囲内、いっそうより好ましくは1.5〜65.0cNの範囲内、さらにいっそうより好ましくは2.0〜60.0cNの範囲内、例えば好ましくは2.5〜50.0cNの範囲内、最も好ましくは2.5〜45.0cNの範囲内のF30溶融張力と、
(a3)好ましくは200mm/秒未満、より好ましくは190mm/秒未満、さらにより好ましくは100以上200mm/秒未満の範囲内、いっそうより好ましくは120〜190mm/秒の範囲内、さらにいっそうより好ましくは120〜175mm/秒の範囲内、例えば125〜170mm/秒の範囲内のv30溶融伸展性とを有し、
及び
(b) ポリプロピレン組成物並びに/又は分岐ポリプロピレン(b−PP)は、
(b1)7.0g/10分以下、好ましくは0.5〜7.0g/10分の範囲内、より好ましくは0.5〜6.5g/10分の範囲内、さらにより好ましくは0.5〜6.0g/10分の範囲内、いっそうより好ましくは1.0〜6.0g/10分の範囲内、例えば1.5〜5.0g/10分の範囲内又は1.0〜5.0g/10分の範囲内のメルトフローレートMFR(230℃)と、
(b2)20.0cNより大きい、例えば20.0より大きく50.0cNまで、より好ましくは21.0cNより大きい、さらにより好ましくは21.0〜50.0cN、いっそうより好ましくは25.0〜50.0cN、さらにいっそうより好ましくは25.0〜45.0cN、最も好ましくは30.0〜45.0cN、例えば32.0〜42.0cNのF30溶融張力と、
(b3)210より大きく300mm/秒まで、例えば220より大きく300mm/秒まで、より好ましくは225mm/秒より大きく、さらにより好ましくは225〜300mm/秒、いっそうより好ましくは230〜290mm/秒のv30溶融伸展性とを有し、
さらに
分岐ポリプロピレン(b−PP)並びに/又は分岐ポリプロピレン(b−PP)を含むポリプロピレン組成物が1.00重量%未満、好ましくは0.80重量%未満、より好ましくは0.50重量%未満、さらにより好ましくは0.01以上1.00重量%未満の範囲内、いっそうより好ましくは0.01以上0.80重量%未満の範囲内、さらにいっそうより好ましくは0.02以上0.50重量%未満の範囲内のゲル含量を有する場合にゲル含量が減少する。
【0102】
実施形態の1つにおいて、分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)は、工程(A)の後にポリプロピレン(PP’)又は添加剤混合物(AM)と混合される。したがって、ポリプロピレン組成物は好ましくは、
(a) 分岐ポリプロピレン(b−PP)、すなわち高溶融張力ポリプロピレン(HMS−PP)を80〜99重量部、好ましくは90〜99重量部、より好ましくは95〜99重量部、
(b) 任意に、ISO1133に従って測定される0.5g/10分より大きい、好ましくは0.5より大きく18.0g/10分までの範囲内、例えば0.5より大きく15.0g/10分まで又は0.6より多く15.0g/10分まで、より好ましくは0.5より大きく10.0g/10分未満、さらにより好ましくは0.6より大きく9.0g/10分未満、いっそうより好ましくは0.8〜8.0g/10分のメルトフローレートMFR(230℃)を有するポリプロピレン(PP’)、好ましくは線状ポリプロピレン(l−PP)を1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部、及び
(c) 任意に、酸化防止剤、金属不活性化剤、UV安定剤、帯電防止剤、防曇剤、酸捕捉剤、発泡剤、付着剤、潤滑剤、核形成剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤及びそれらの混合物からなる群より好ましくは選択される添加剤(A)を0.005〜5.0、好ましくは0.005〜2.0、より好ましくは0.05〜1.0、例えば0.05〜0.5重量部、
含む。
【0103】
以下に本発明をより詳細に、実施例によって記載する。
【実施例】
【0104】
A. 測定方法
以下の用語及び測定方法の定義は、別段の規定がない限り、下記の実施例だけでなく上記の本発明の一般的な記述にも適用される。
【0105】
ポリプロピレン中のコモノマー含量
コモノマー含有量は、周知の方法により定量的13C核磁気共鳴(NMR)分光法によって較正した基本的な帰属の後に、定量的フーリエ変換赤外分光法(FTIR)により決定する。薄フィルムを250μmの間の厚さにプレスし、スペクトルは透過モードで記録する。
具体的には、ポリプロピレン−コエチレンコポリマーのエチレン含有量を、720〜722及び730〜733cm−1に表れる定量バンドのベースライン補正ピーク面積を用いて求める。プロピレン−1−ブテンコポリマーは、767cm−1で評価した。定量結果は、フィルム厚を参照して求められる。
【0106】
溶融温度(T)及び融解熱(H)、結晶化温度(T)及び結晶化熱(H)は、5〜10mgの試料を用い、Mettler TA820示差走査熱量計(DSC)により測定する。DSCはISO3146/第3部/方法C2に従って、加熱/冷却/加熱サイクルにて、+23〜+210℃の温度範囲において10℃/分の走査速度で行う。結晶化温度及び結晶化熱(H)は冷却工程から決定し、溶融温度及び融解熱(H)は第2加熱工程から決定する。
【0107】
MFR(230℃)はISO1133(230℃、2.16kg荷重)に従って測定される。
【0108】
30溶融張力及びv30溶融伸展性
ここに記載される試験はISO16790:2005に従う。
【0109】
ひずみ硬化挙動は、「Rheotens−Mastercurves and Drawability of Polymer Melts」M.H.Wagner、Polymer Engineering and Sience,Vol.36,925〜935ページの記事に記載される方法によって求められる。上記文書の内容は参照によって引用される。ポリマーのひずみ硬化挙動は、融解ストランドを規定の加速度で下方に引っ張ることによって延伸させるレオテンス装置(Rheotens apparatus)(Gottfert社製品、Siemensstr.2,74711Buchen、ドイツ)によって分析される。
【0110】
レオテンス実験(Rheotens experiment)は工業的紡績及び押出処理をシミュレートする。原則的に、溶融物をプレスするか又は円形のダイから押し出して、結果として得られたストランドを引き取る。押出成形物にかかる応力は、溶融物特性の関数及び測定パラメータ(特に出力と引取速度の比率、実際的には延伸率の測定値)として記録される。以下に示した結果については、材料を、研究室用押出機HAAKE Polylabシステム及び円柱形のダイ(L/D=6.0/2.0mm)を有する歯車ポンプ(gear pump)を用いて押し出した。歯車ポンプを5mm/秒のストランド押出速度に予め調節し、溶融温度を200℃に設定した。ダイとレオテンスホイール(Rheotens wheels)の間のスピンライン長は80mmであった。実験の最初に、レオテンスホイールの巻き取り速度を押し出されるポリマーストランドの速度に調節した(張力ゼロ)。その後、レオテンスホイールの巻き取り速度を徐々に上げることで実験を開始し、ポリマーフィラメントが破断するまで続けた。ホイールの加速度は準定常条件下で張力を計測するのに十分な小ささであった。下方に引っ張られた融解ストランドの加速度は120mm/秒であった。レオテンスをパソコンプログラムEXTENSと組み合わせて操作した。これはリアルタイムのデータ取得プログラムであり、張力及び引っ張り速度の測定データを表示及び保存する。レオテンス曲線(Rheotens curve)(力対プーリ回転速度)の終点を、F30溶融張力及び引抜性値(drawability value)とみなす。
【0111】
ゲル含量
約2gのポリマー(m)を秤量し、秤量した金属メッシュに入れる(mp+m)。メッシュの中のポリマーをソックスレー抽出器中にて沸騰キシレンで5時間抽出する。次いで、溶出液を新たなキシレンと置き換えて、もう1時間沸騰を続ける。続いて、メッシュを乾燥して、再度秤量する(mXHU+m)。式mXHU+m−m=mXHUによって得られる熱キシレン不溶物(mXHU)の質量をポリマー(m)の重量と関連付けて、キシレン不溶物分率mXHU/mを得る。
【0112】
粒子径/粒子径分布
ポリマー試料に対して粒度試験を行った。ふるい分析には、以下の大きさの金網目を有する篩を組み込んだカラムを用いた:>20μm、>32μm、>63μm、>100μm、>125μm、>160μm、>200μm、>250μm、>315μm、>400μm、>500μm、>710μm、>1mm、>1.4mm、>2mm、>2.8mm。試料を最も大きいふるいの目を有する一番上のふるいに流し込んだ。カラム内の下方にあるふるいはそれぞれその1つ上のものよりも小さい目を有する(上記の大きさを参照されたい。)。底はレシーバである。カラムを機械的振とう機内に入れた。振とう機はカラムを振とうした。振とうが完了した後に、各ふるい上の材料を秤量した。次いで、各ふるいの試料の重量を合計重量で割って、各ふるいに残った材料の百分率を出した。
【0113】
B. 実施例
線状ポリプロピレン(l−PP)
l−PP1は、0.37g/10分のMFR(230℃)、1,100μmのd50、1,650μmのd90、164℃の溶融温度Tm、68cNのF30溶融張力、及び146mm/秒のv30溶融伸展性を有する線状プロピレンホモポリマーである。
【0114】
l−PP2は、0.90g/10分のMFR(230℃)、625μmのd50、970μmのd90、162℃の溶融温度、39cNのF30溶融張力、及び155mm/秒のv30溶融伸展性を有する線状プロピレンホモポリマーである。
【0115】
添加剤混合物
線状ポリプロピレンl−PP2を用いて、分岐ポリプロピレンのベースポリマーに導入するためのマスターバッチとしてさらなる添加剤を含む添加剤混合物(AM)を調製した。添加剤混合物は線状ポリプロピレンl−PP1を85重量%、Irganox B225FF(酸化防止剤)を10.00重量%、及びハイドロタルシトを2.50重量%及びステアリン酸カルシウムを2,50重量%含む。
【0116】
実施例IE1及びIE2並びに比較例CE1〜CE3:
比較例CE1〜CE3に対してはl−PP1並びに実施例IE1及びIE2に対してはl−PP2を、以下に記載のとおり、ブタジエン及び過酸化物の存在下で反応性押出に供した。ブタジエン及び過酸化物の両方(Akzo Nobel製、t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート「Trigonox BPIC−C75」の75%溶液)(量は表3に示す)を、パドル攪拌器を有する横型ミキサーを用いて、15〜20分の平均滞留時間を維持しながら、溶融混合工程の前にl−PP1粉末又はl−PP2粉末と65℃の温度にて予め混合した。予混合物を、不活性雰囲気下にて、3つの混錬ゾーン及び二工程の脱気セットアップを有し、高強度混合スクリューを備え、バレル直径が60mmで、L/D比が48のTheyson TSK60型の同方向回転二軸押出機に移した。溶融温度プロファイルを表1に示す。スクリュー速度及び処理量を表2に示す。押出機の長さの最初の3/4において、分岐ポリプロピレンが製造される(b−PP)。その後に、サイドフィーダーを介して、すなわち押出機の長さの最後の1/4で、添加剤混合物が押出機中に供給され、製造された分岐ポリプロピレン(b−PP)に供給される。押し出されたポリプロピレン組成物は排出されてペレット化された。ペレットからゲル含量を測定した。最終特性を表3に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
【表3】