(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2制御部は、前記吸引装置を駆動しながら前記第1バルブを開きかつ前記第2バルブを閉じるように構成されている、請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
前記第1制御部は、前記第1インク経路の前記第1上流端部に前記第1インクカートリッジが接続されておらず、かつ、前記第2インク経路の前記第2上流端部に前記第2インクカートリッジが接続されているときに、前記第1の運転を行うように構成されている、請求項4に記載のインクジェットプリンタ。
前記第1制御部は、少なくとも前記第2インク経路のうち前記第2上流端部と前記第2接続部との間の部分にインクが充填されるまで前記第1の運転を行うように構成され、
前記第2制御部は、前記第1インク経路、前記第2インク経路、および前記第3インク経路にインクが充填されるまで前記第2の運転を行うように構成されている、請求項4または5に記載のインクジェットプリンタ。
前記第1の時間および前記第2の時間を基に、前記第1インクカートリッジおよび前記第2インクカートリッジのインク残量を算出するインク残量算出装置を備えた、請求項4〜6のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されるようなインク経路を備えたインクジェットプリンタでは、例えばメンテナンス時に、当該インク経路にインクを充填したり、当該インク経路からインクを抜き取ったり、当該インク経路を洗浄液で洗浄したりすることがある。本発明者の検討によれば、このような作業の際に、例えば無駄なインクの消費が多くなったり、インクや洗浄液の抜き取りが不十分になったりすることがあった。以下、このことについて図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0006】
図18は、従来のインク経路の説明図である。インク経路150は、2本のチューブ106、108と、これらのチューブ106、108を連結するチューブ118とを有する。チューブ106の一の端部106cはインクカートリッジ102に接続され、他の一の端部106dはインクヘッド100に接続されている。また、チューブ108の一の端部108cはインクカートリッジ104に接続され、他の一の端部108dはインクヘッド100に接続されている。また、チューブ106、108には、それぞれバルブ112、116が配設されている。
【0007】
こうしたインク経路150を備えたインクジェットプリンタにおいては、例えばインクカートリッジ102、104をチューブ106、108にそれぞれ接続した際、最初に、チューブ106、108、118内にインクを充填する作業を行う。具体的には、バルブ112、116を開状態として、インクヘッド100の下面100aからポンプ(図示せず。)で吸引する。
【0008】
しかしながら、このときに、例えば、チューブ106、108、118の配置や形状などに由来してインクの吸引にバラツキが生じると、吸引しやすい方のチューブから、より多くのインクが吸引されることがある。例えばチューブ106の方がチューブ108より吸引しやすい場合には、まず、インクカートリッジ102から吸引されたインクがチューブ106の上流領域106aに流れる(
図19(a))。次に、インクは接続部P1において、チューブ118と下流領域106bとに分流する。チューブ118に流入したインクは、接続部P2を介してチューブ108の下流領域108bに流れた後、インクヘッド100へ流れる(
図19(b))。下流領域106bに流れたインクは、インクヘッド100へ流れる。その後、ポンプによる吸引を続けると、吸引しにくい方のチューブ108に接続されたインクカートリッジ104からも少量ずつインクが吸引される。当該吸引されたインクは、チューブ108の上流領域108aに流れる。この間、チューブ106に接続されたインクカートリッジ102からは絶えずインクが吸引され、インクヘッド100から排出され続けることとなる。
【0009】
このため、従来のインク充填方法では、無駄なインクの消費量が多くなる問題があった。また、インクカートリッジ102、104のインク残量は、典型的には、上記吸引の際に両インクカートリッジ102、104から排出されるインクの量が同じであるとの仮定の下、上記インクの吸引時間を基に算出する。このため、上記のように例えば無駄なインク消費量が多くなる場合には、インクの残量を正確に把握し難い問題があった。
【0010】
また、チューブ106、108で均等に吸引がなされる場合であっても、他の問題を生じることがある。具体的には、インクカートリッジ102から吸引されたインクは、チューブ106の上流領域106a、接続部P1、下流領域106bの順で流れてインクヘッド100に達する。また、インクカートリッジ104から吸引されたインクは、チューブ108の上流領域108a、接続部P2、下流領域108bの順で流れてインクヘッド100に達する。このとき、チューブ118の中央部分には、インクが充填されていない領域が形成される(
図19(c))。このため、チューブ118に空気層(気泡)が生じることとなり、こうした気泡がインクヘッド100に流入して、印刷不良などの不具合の原因となることがある。
【0011】
また、例えばインクカートリッジ102、104を交換する際などには、チューブ106、108、118からインクを抜き取る作業を行う。具体的には、チューブ106、108からそれぞれインクカートリッジ102、104を取り外した後、バルブ112、116を開状態として、チューブ106、108、118内のインクをインクヘッド100の下面100aからポンプ(図示せず。)で吸引する。
【0012】
しかしながら、上記のようにチューブ106、108において吸引のバラツキのある場合があり、吸引しにくい方のチューブではインクが完全に抜き取れないことがある。例えば、チューブ106の方がチューブ108より吸引しやすい場合において、
図20(a)に示すように、チューブ106、108、118内にインクが満たされた状態から、ポンプによる吸引を始めるとする。すると、まず、下流領域106b、108bのインクがインクヘッド100に流れる。次に、チューブ118のインクが下流領域108bに流れる。また、上流領域106aのインクが下流領域106bおよびチューブ118に流れて、上流領域106aには空気が流入する(
図20(b))。このとき、上流領域108aにはインクが残留する。その後、さらにポンプで吸引すると、下流領域106b、108bのインクがインクヘッド100に流れる。また、チューブ118のインクが下流領域108bに流れる。そして、上流領域108a以外のインク経路からインクが抜き取られた状態となる(
図20(c))。この状態でさらにポンプにより吸引を続けても、チューブ106の方から空気が吸引され続けることとなり、チューブ108の上流領域108aからインクを抜き取ることは難しい。
【0013】
さらに、チューブ106、108で均等に吸引がなされる場合であっても、インク残留の問題を生じることがある。具体的には、ポンプによる吸引が始まると、下流領域106b、108bのインクがインクヘッド100に流れる。次に、上流領域106a、108aのインクおよびチューブ118のインクの一部が、それぞれ下流領域106b、108bを介して、インクヘッド100に流れる。このとき、チューブ118の中央部分にインクが残留することがある(
図20(d))。この状態でさらにポンプにより吸引を続けても、チューブ106、108から均等に空気が吸引され続けることとなり、チューブ118内に残ったインクを抜き取ることは難しい。
【0014】
また、例えばインクヘッド100に異なる色彩のインクを供給する際などには、事前にチューブ106、108、118内の洗浄作業を行う。具体的には、まず、インクカートリッジ102、104が取り付けられる位置に、洗浄液が貯留されたカートリッジ120、122をそれぞれ取り付ける(
図21(a))。次に、バルブ112、バルブ116を開状態として、インクヘッド100の下面100aからポンプ(図示せず。)で吸引する。このとき、インク経路150にインクが充填されているか否かにかかわらず、
チューブ106、108、118に洗浄液と空気とを交互に流入させて、最終的にはインクと洗浄液を確実に抜き取る必要がある。
【0015】
しかしながら、上記のようにチューブ106、108において吸引のバラツキがある場合があり、吸引しにくい方のチューブ内の洗浄が不十分になることがある。
【0016】
例えば、チューブ106の方がチューブ108より吸引しやすい場合において、
図21(a)に示すように、チューブ106、108、118内にインクが満たされた状態から、ポンプによる吸引を始めるとする。すると、
図21(b)に示すように、上記インクの充填時(
図19(a))と同様に、上流領域106aにカートリッジ120から洗浄液が流入する。
【0017】
次に、チューブ106、108からカートリッジ120、122をそれぞれ取り外してポンプで吸引すると、下流領域106b、108bのインクはインクヘッド100に流れる。また、チューブ118のインクは、下流領域108bに流れる。そして、上流領域106aの洗浄液は接続部P1で下流領域106bおよびチューブ118に分流する(
図21(c))。このとき、洗浄液が位置していた上流領域106aに空気が流入して、上流領域106aは洗浄される。
【0018】
次に、再びカートリッジ120、122を取り付けてポンプで吸引すると、下流領域108bのインクはインクヘッド100に流れる。また、下流領域106bの洗浄液はインクヘッド100に流れる。また、チューブ118の洗浄液は下流領域108bに流れる。また、上流領域106aの空気は、接続部P1で下流領域106bおよびチューブ118に分流する(
図21(d))。このとき、上流領域106aにはカートリッジ120から洗浄液が流入して、下流領域106bと、チューブ118の洗浄液が位置していた部分とが洗浄される。
【0019】
このような、洗浄液吸引処理と空気吸引処理とを繰り返し行うことで、チューブ106、108、118内に洗浄液層と空気層とを交互に形成する。洗浄液層と空気層とをインク経路150内で移動させることにより、チューブ106、108、118内を洗浄する。そして、洗浄が終了した後には、上述のインク抜き取り処理と同様にして、インク経路150から洗浄液を抜き取る。
【0020】
このとき、上記インク充填時や抜き取り時と同様に、チューブ108では洗浄液や空気を十分に流入させられないことがある。その結果、
図21(e)に示すように、チューブ108の上流領域108aを十分に洗浄できないことがある。
【0021】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数のインクカートリッジとインクヘッドとをつなぐインク経路を備え、インクや洗浄液、空気などの流体をインク経路に的確に流入させることが可能なインクジェットプリンタを提供することである。また、本発明の他の目的は、インク消費量の無駄を抑えて、インク経路に的確にインクを充填することができるインク充填方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、インク経路から的確にインクを抜き取ることができるインク抜き取り方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、インク経路を的確に洗浄することができる洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係るインクジェットプリンタは、インクを吐出するインクヘッドと、インクまたは洗浄液を貯留する第1のカートリッジが接続可能な第1上流端部と、前記インクヘッドに連通した第1下流端部と、を有する第1インク経路と、インクまたは洗浄液を貯留する第2のカートリッジが接続可能な第2上流端部と、前記インクヘッドに連通した第2下流端部と、を有する第2インク経路と、前記第1インク経路に接続された第1接続部と、前記第2インク経路に接続された第2接続部と、を有する第3インク経路と、前記第1インク経路のうち前記第1上流端部と前記第1接続部との間の部分に配設された第1バルブと、前記第2インク経路のうち前記第2上流端部と前記第2接続部との間の部分に配設された第2バルブと、前記インクヘッドに取り付けられ、前記インクヘッドから前記第1インク経路、前記第2インク経路、および前記第3インク経路の内部の流体を吸引する吸引装置と、前記第1バルブおよび前記第2バルブの開閉、並びに、前記吸引装置の起動および停止を制御する制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記第1バルブを閉じた状態とするとともに前記第2バルブを開いた状態とし、前記吸引装置を第1の時間駆動する第1の運転を行う第1制御部と、前記第1の運転の後、前記第1バルブを開いた状態とするとともに前記第2バルブを閉じた状態とし、前記吸引装置を第2の時間駆動する第2の運転を行う第2制御部と、を備えている。
【0023】
本発明に係るインクの充填方法は、インクを吐出するインクヘッドと、インクを貯留する第1インクカートリッジが接続可能な第1上流端部と、前記インクヘッドに連通した第1下流端部と、を有する第1インク経路と、インクを貯留する第2インクカートリッジが接続可能な第2上流端部と、前記インクヘッドに連通した第2下流端部と、を有する第2インク経路と、前記第1インク経路に接続された第1接続部と、前記第2インク経路に接続された第2接続部と、を有する第3インク経路と、前記第1インク経路のうち前記第1上流端部と前記第1接続部との間の部分に配設された第1バルブと、前記第2インク経路のうち前記第2上流端部と前記第2接続部との間の部分に配設された第2バルブと、前記インクヘッドに取り付けられ、前記インクヘッドから前記第1インク経路、前記第2インク経路、および前記第3インク経路の内部の流体を吸引する吸引装置と、を備えるインクジェットプリンタにおいて、前記第1インク経路、前記第2インク経路、および前記第3インク経路に前記インクを充填する方法である。本発明に係るインク抜き取り方法は、前記インクジェットプリンタにおいて、前記第1インク経路、前記第2インク経路、および前記第3インク経路からインクを抜き取る方法である。本発明に係るインク経路の洗浄方法は、前記インクジェットプリンタにおいて、前記第1インク経路、前記第2インク経路、および前記第3インク経路を洗浄する方法である。
【0024】
本発明に係るインクの充填方法は、前記第2インク経路の前記第2上流端部に前記第2インクカートリッジを接続した状態において、前記第1バルブを閉じた状態とするとともに前記第2バルブを開いた状態とし、前記吸引装置を第1の時間駆動することにより、少なくとも前記第2インク経路のうち前記第2上流端部と前記第2接続部との間の部分に前記インクを充填する第1の工程と、前記第1インク経路の前記第1上流端部に前記第1インクカートリッジを接続した状態において、前記第1バルブを開いた状態とするとともに前記第2バルブを閉じた状態とし、前記吸引装置を第2の時間駆動することにより、前記第1インク経路、前記第2インク経路、および前記第3インク経路のうち前記第1の工程で前記インクが満たされていない部分に前記インクを充填する第2の工程と、を包含する。
【0025】
本発明に係るインク抜き取り方法は、前記第2インク経路の前記第2上流端部から前記第2インクカートリッジを取り外した状態において、前記第1バルブを閉じた状態とするとともに前記第2バルブを開いた状態とし、前記吸引装置を第1の時間駆動することにより、少なくとも前記第2インク経路のうち前記第2上流端部と前記第2接続部との間の部分から前記インクを抜き取る第1の工程と、前記第1インク経路の前記第1上流端部から前記第1インクカートリッジを取り外した状態において、前記第1バルブを開いた状態とするとともに前記第2バルブを閉じた状態とし、前記吸引装置を第2の時間駆動することにより、前記第1インク経路、前記第2インク経路、および前記第3インク経路のうち前記第1の工程で前記インクが抜き取られていない部分から前記インクを抜き取る第2の工程と、を包含する。
【0026】
本発明に係るインク経路の洗浄方法は、前記第2インク経路の前記第2上流端部に前記第2洗浄液カートリッジを接続した状態において、前記第1バルブを閉じた状態とするとともに前記第2バルブを開いた状態とし、前記吸引装置を第1の時間駆動することにより、少なくとも前記第2インク経路のうち前記第2上流端部と前記第2接続部との間の部分に前記洗浄液を流入させる第1の工程と、前記第1インク経路の前記第1上流端部に前記第1洗浄液カートリッジを接続した状態において、前記第1バルブを開いた状態とするとともに前記第2バルブを閉じた状態とし、前記吸引装置を第2の時間駆動することにより、前記第1インク経路、前記第2インク経路、および前記第3インク経路のうち前記第1の工程で前記洗浄液が流入していない部分に前記洗浄液を流入させる第2の工程と、前記第2インク経路の前記第2上流端部から前記第2洗浄液カートリッジを取り外した状態において、前記第1バルブを閉じた状態とするとともに前記第2バルブを開いた状態とし、前記吸引装置を第3の時間駆動することにより、少なくとも前記第2インク経路のうち前記第2上流端部と前記第2接続部との間の部分から前記洗浄液を抜き取る第3の工程と、前記第1インク経路の前記第1上流端部から前記第1洗浄液カートリッジを取り外した状態において、前記第1バルブを開いた状態とするとともに前記第2バルブを閉じた状態とし、前記吸引装置を第4の時間駆動することにより、前記第1インク経路、前記第2インク経路、および前記第3インク経路のうち前記第3の工程で前記洗浄液が抜き取られていない部分から前記洗浄液を抜き取る第4の工程と、を包含する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、インク経路に流体を好適に供給することができる。本発明によれば、インク経路に的確にインクを充填することができる。また、インク経路から的確にインクを抜き取ることができる。さらに、インク経路を的確に洗浄することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態について詳細に説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。
【0030】
なお、本明細書において「媒体」とは、普通紙などの紙類よりなる各種の記録媒体は勿論のこと、PVC、ポリエステルなどの樹脂材料やアルミ、鉄、木材のような材料などの各種材料が含まれるものとする。
【0031】
また、本明細書において「インクジェット方式」とは、二値偏向方式あるいは連続偏向方式などの各種の連続方式や、サーマル方式あるいは圧電素子方式などの各種のオンデマンド方式を含む、従来より公知の各種の手法によるインクジェット技術による印刷方法を意味するものとする。
【0032】
また、本明細書においては、記録紙等の媒体の幅方向を「主走査方向」と称する。また、主走査方向と直交する方向、即ち、記録紙等の媒体の搬送方向かつ当該媒体の長手方向を「副走査方向」と称する。
【0033】
図1は、インクジェットプリンタの概略構成を示す斜視図である。
図1に示すように、インクジェットプリンタ200は、ベース部材204と、側方部材206Lおよび206Rと、側方ユニット208と、中央壁210と、ガイドレール212と、ワイヤー214と、ホルダー216と、インクヘッド20とを有する。
【0034】
ベース部材204は、基台部材202に支持されている。ベース部材204は、主走査方向に延長して配設されている。側方部材206Lおよび206Rは、ベース部材204の左端および右端にそれぞれ配設されている。側方ユニット208は、側方部材206Rの側方に配設され、その表面に表示部224を備えている。中央壁210は、左右2つの側方部材206L、206Rを連結している。ガイドレール212は、中央壁210の壁面に配設され、主走査方向に延びている。ワイヤー214は、中央壁210の壁面に平行して配設されている。ワイヤー214は、主走査方向に移動自在である。ホルダー216は、ワイヤー214に固定され、ガイドレール212に摺動自在に装着されている。インクヘッド20は、ホルダー216に配設され、ベース部材204上の記録紙222と対向している。
【0035】
ここでは、媒体として、記録紙222が用いられている。記録紙222は、給紙装置(図示せず。)によってベース部材204上に供給される。そして、記録紙222は、主走査方向と直交する方向、即ち、記録紙222の長手方向に搬送される。
【0036】
また、インクジェットプリンタ200は、マイクロコンピューター32を備えている。インクジェットプリンタ200の全体の動作は、マイクロコンピューター32によって制御される。詳細は後述するが、マイクロコンピューター32は、制御装置320およびインク残量算出装置327として機能する。制御装置320は、第1制御部321、第2制御部322、第3制御部323、第4制御部324、カウント部325、および判定部326を備えている。
【0037】
インクジェットプリンタ200においては、マイクロコンピューター32の制御に従って記録紙222上に印刷が行われる。即ち、まず、給紙装置(図示せず。)によって、ベース部材204上に記録紙222が供給される。また、ワイヤー214は、モータ(図示せず)の駆動等によって巻き取られ、中央壁210に沿って移動する。ワイヤー214が移動すると、ホルダー216に搭載されたインクヘッド20が、主走査方向における行き方向(往路)および帰り方向(復路)に記録紙222上を往復移動する。インクヘッド20は、往復移動の際に記録紙222に対してインクを吐出する。これによって、記録紙222上に印刷が行われる。
【0038】
こうしたインクジェットプリンタ200では、側方ユニット208にキャップ装置40が設けられている。キャップ装置40は、例えばインクヘッド20が待機位置のときに、インクヘッド20の下面に設けられたインクジェットノズル(図示せず。)をキャッピングするように配置されている。側方ユニット208にはまた、インク経路が形成されている。インク経路は、着脱可能なインクカートリッジからインクヘッド20へとインクを供給するための経路である。
【0039】
図2は、インクジェットプリンタ200のインク経路10の概略構成を示す説明図である。
図2に示すように、インク経路10は、チューブ16と、チューブ18と、チューブ16とチューブ18とを連結するチューブ28とを備える。チューブ16の一の端部16cはインクカートリッジ12(あるいは後述する洗浄液カートリッジ52)に着脱可能に接続され、他の一の端部16dはインクヘッド20に接続されている。チューブ18の一の端部18cはインクカートリッジ14(あるいは後述する洗浄液カートリッジ54)に着脱可能に接続され、他の一の端部16dはインクヘッド20に接続されている。
【0040】
チューブ16、18、28は、それぞれ「第1インク経路」、「第2インク経路」、「第3インク経路」の一例である。端部16c、端部16dは、それぞれ「第1上流端部」、「第1下流端部」の一例である。端部18c、18dは、それぞれ「第2上流端部」、「第2下流端部」の一例である。
【0041】
インクカートリッジ12、14は、同じ色彩のインクを貯留している。インクカートリッジ12、14は、側方ユニット208(
図1)に設けられたアダプター(図示せず。)を介してチューブ16、18と接続されている。また、インクカートリッジ12、14の下面には、それぞれ、センサー13、15が配設されている。このセンサー13、15には、マイクロコンピューター32が接続されている。インクカートリッジ12、14内に貯留されたインクがなくなると、それぞれセンサー13、15からマイクロコンピューター32にインク切れを示す信号が伝達される。
【0042】
洗浄液カートリッジ52、54は、前記インクを溶解することが可能な洗浄液を貯留している。洗浄液カートリッジ52、54は、側方ユニット208(
図1)に設けられたアダプター(図示せず。)を介してチューブ16、18に接続される。
【0043】
チューブ16、18には、それぞれ、チューブ28との接続部P3、P4よりもインク吸引方向の上流側にバルブ22、26が設けられている。接続部P3、P4は、それぞれ「第1接続部」、「第2接続部」の一例である。バルブ22、26は、それぞれ「第1バルブ」、「第2バルブ」の一例である。なお、以下では、上記接続部P3、P4よりもインク吸引方向の上流側、つまり、インクカートリッジ12、14が接続される方の領域を、それぞれ、上流領域16a、上流領域18aと称する。また、上記接続部P3、P4よりもインク吸引方向の下流側、つまり、インクヘッド20が接続される方の領域を、それぞれ、下流領域16b、下流領域18bと称する。バルブ22、26には、マイクロコンピューター32(
図1)が接続されている。バルブ22、26の開閉状態は、マイクロコンピューター32によって制御される。
【0044】
また、インクヘッド20の下面20aには、インクジェットノズル(図示せず。)が形成されている。このインクジェットノズルの周りには、当該インクジェットノズルをキャッピングするキャップ装置40が設けられている。キャップ装置40は、インクヘッド20の下面20aの方から順に、キャップ46、ポンプ(吸引装置)44、チューブ42を備えている。そして、チューブ42は、廃液タンクへつながっている。
【0045】
インクカートリッジ12、14からインク経路10にインクを充填したり、インク経路10からインクを抜き取ったり、インク経路10の洗浄を行ったりする際には、ポンプ44を利用する。具体的には、インクヘッド20を側方ユニット208(
図1)に移動させ、インクヘッド20の下面20aをキャップ46によってキャッピングする。この状態でポンプ44を稼動させて吸引を行う。ポンプ44にはマイクロコンピューター32が接続されている。ポンプ44の起動および停止は、マイクロコンピューター32によって制御される。
【0046】
マイクロコンピューター32は、以下の(i)第1の状態、(ii)第2の状態、を切り替え可能なように構成されている。
(i)第1の状態;バルブ22、26のうちの一のバルブを閉じた状態とするとともに他の一のバルブを開いた状態として、ポンプ44によってインクヘッド20の方から第1の時間だけ吸引する。
(ii)第2の状態;前記一のバルブを開いた状態とするとともに前記他の一のバルブを閉じた状態とし、ポンプ44によってインクヘッド20の方から第2の時間だけ吸引する。
【0047】
なお、本明細書において「流体」とは、液体と気体の総称をいう。流体の例として、インクや洗浄液、空気などが挙げられる。
【0048】
以下、
図3ないし
図16を参照しながら、(1)インク経路10にインクを充填する方法、(2)インク経路10からインクを抜き取る(つまりインク経路10を空気で満たす)方法、(3)インク経路10を洗浄する方法、を具体的に説明する。
【0049】
(1)インク経路にインクを充填する方法
作業者がインクジェットプリンタ200の操作子(例えば操作ボタン。図示せず)を操作してインク経路10へのインクの充填を指示すると、インクヘッド20の下面20aがキャップ装置40によりキャッピングされ(
図2)、インク充填処理が開始される。
【0050】
(第1の実施形態)
図3は、第1の実施形態に係るインク充填処理(第1のインク充填処理)の手順を示すフローチャートである。また、
図4(a)〜(e)は、第1のインク充填処理に係るインクの充填状態を示す説明図である。
【0051】
図4(a)に示すように、第1のインク充填処理の開始時には、チューブ16の端部16cがインクカートリッジ12に接続されている。また、チューブ18の端部18cがインクカートリッジ14に接続されている。
【0052】
第1のインク充填処理では、まず、ステップS602において、バルブ22を閉状態とするとともに、バルブ26を開状態とする(
図4(a))。
【0053】
次に、ステップS604において、キャップ装置40のポンプ44(
図2)を第1の時間だけ駆動する。つまり、ポンプ44を駆動して第1の時間が経過した後、ポンプ44を停止する。これにより、インクカートリッジ14から一定量のインクを吸引する。
【0054】
ポンプ44を駆動すると、まず、インクカートリッジ14からチューブ18の上流領域18aにインクが吸引される。その後、インクは、接続部P4でチューブ28とチューブ18の下流領域18bとに分流する。
【0055】
インクカートリッジ14から吸引するインクの量は、少なくともチューブ18の端部18cと接続部P4との間の部分にインクが充填される量とする。ここでは、インクカートリッジ14から吸引するインクの量は、チューブ18の上流領域18a、下流領域18bの一部、およびチューブ28の一部までインクが充填される量とする(
図4(b))。かかるインク量は、ポンプ44を駆動する第1の時間によって調整することができる。第1の時間は、例えば予め実験的に算出してマイクロコンピューター32に記憶しておく。第1の時間は、例えば10秒とすることができる。
【0056】
次に、ステップS606において、ポンプ44を停止した状態で、バルブ22を開状態とするとともに、バルブ26を閉状態とする(
図4(c))。
【0057】
そして、ステップS608において、ポンプ44を第2の時間だけ駆動する。つまり、ポンプ44を駆動して第2の時間が経過した後、ポンプ44を停止する。
【0058】
ポンプ44を駆動すると、まず、インクカートリッジ12からチューブ16の上流領域16aにインクが吸引される(
図4(d))。このとき、下流領域18bの一部に位置していたインクはインクヘッド20に移動し、チューブ28の一部に位置していたインクは下流領域18bに移動する。ただし、バルブ26は閉状態のため、上流領域18aのインクは移動しない。また、インクカートリッジ12から吸引されたインクは、チューブ16の上流領域16aを介して、接続部P3でチューブ16の下流領域16bとチューブ28とに分流する。分流したインクは、チューブ16の下流領域16bを介して、あるいは、チューブ28およびチューブ18の下流領域18bを介して、インクヘッド20に達する。これにより、
図4(e)に示すように、チューブ16、18、28にインクが充填される。
【0059】
第2の時間は、チューブ16と、チューブ28と、チューブ18の下流領域18bとにインクを充填することが可能な時間とする。第2の時間は、例えば予め実験的に算出してマイクロコンピューター32に記憶しておく。第2の時間は、典型的には第1の時間より長く、例えば60秒とすることができる。
【0060】
本実施形態では、マイクロコンピューター32は、ステップS602およびS604を実行するときに第1制御部321として機能し、ステップS606およびS608を実行するときに第2制御部322として機能する。ステップS602およびS604は、インク充填方法の「第1の工程」の一例であり、ステップS606およびS608は「第2の工程」の一例である。
【0061】
ここに開示されるインク充填処理によれば、一定量のインクで確実にインク経路10にインクを充填することができる。つまり、インクの消費量を必要最小限に抑えることができる。また、インク経路10内に気泡が混入して、印刷不良等の不具合が生じることを防止することができる。
【0062】
さらに、ここに開示されるインク充填処理では、ポンプ44の駆動時間(第1の時間および第2の時間)を基に、インク経路10を充填する際に使用したインク使用量を算出することができる。第1の時間を基に、インクカートリッジ14のインク使用量を算出することができ、第2の時間を基に、インクカートリッジ12のインク使用量を算出することができる。このため、インクカートリッジ12、14のそれぞれのインク残量を正確に把握することができる。なお、マイクロコンピューター32は、ポンプ44の駆動時間を基にインクカートリッジ12、14のインク残量を算出するとき、インク残量算出装置327として機能する。
【0063】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態に係るインク充填処理(第2のインク充填処理)の手順を示すフローチャートである。また、
図6(a)〜(e)は、第2のインク充填処理に係るインクの充填状態を示す説明図である。
【0064】
図6(a)に示すように、第2のインク充填処理の開始時には、チューブ18の端部18cがインクカートリッジ14に接続されている。一方、チューブ16の端部16cはインクカートリッジに接続されていない。チューブ16の端部16cは、空気を吸い込むことができるように開放されている。
【0065】
第2のインク充填処理は、ステップS802、ステップS804、ステップS806、ステップS808、およびステップS810を包含する。このうち、ステップS802、ステップS804、ステップS806、ステップS810は、それぞれ、上記第1のインク充填処理におけるステップS602、ステップS604、ステップS606、ステップS608と同様であるため、詳しい説明を省略する。また、上記第1のインク充填処理の説明文中にある
図4(a)〜(e)は、それぞれ、
図6(a)〜(e)と読み替えることができる。
【0066】
ステップS806の後、ステップS808では、マイクロコンピューター32が、チューブ16の端部16cにインクカートリッジ12が接続されているか否かを判断する。この判断は、チューブ16とインクカートリッジ12との接続を検知するセンサー(図示せず。)の検知結果に基づいて行う。上記センサーは、例えば、チューブ16とインクカートリッジ12とを接続するアダプター(図示せず。)に設けられている。上記センサーは、チューブ16にインクカートリッジ12(または、後述する洗浄液カートリッジ52)が接続されているか否かを検知するものである。
【0067】
ステップS808において、チューブ16にインクカートリッジ12が接続されていないと判断されると、再びステップS808に戻る。即ち、チューブ16にインクカートリッジ12が接続されるまで、ステップS808の判断処理を繰り返し実行する。なお、チューブ16にインクカートリッジ12が接続されていないと判断された場合には、例えば、インクジェットプリンタ200の表示部224(
図2)などに、インクカートリッジ12をチューブ16に接続するよう促す表示を行うようにしてもよい。
【0068】
一方、ステップS808において、チューブ16にインクカートリッジ12が接続されていると判断されると、上記第1のインク充填処理と同様に、ステップS810が行われ、インク充填処理を終了する。
【0069】
ここに開示される第2のインク充填処理では、ステップS806においてバルブ22を開状態とする際、チューブ16にインクカートリッジ12が接続されていない。このため、インクカートリッジ12に空気(気泡)が流入することがなく、上述のような印刷不良等の不具合を未然に防止することができる。
【0070】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施形態に係るインク充填処理(第3のインク充填処理)の手順を示すフローチャートである。また、
図8(a)〜(e)は、第3のインク充填処理に係るインクの充填状態を示す説明図である。
【0071】
図8(a)に示すように、第3のインク充填処理の開始時には、チューブ16の端部16cがインクカートリッジ12に接続されている。また、チューブ18の端部18cがインクカートリッジ14に接続されている。
【0072】
第3のインク充填処理では、まず、ステップS1002において、バルブ22を閉状態とするとともに、バルブ26を開状態とする(
図8(a))。次に、ステップS1004において、キャップ装置40のポンプ44(
図2)を駆動する。ポンプ44を駆動すると、インクカートリッジ14からチューブ18の上流領域18aにインクが吸引される(
図8(b))。
【0073】
次に、ステップS1006では、マイクロコンピューター32が、第1の時間が経過したか否かの判断を行う。なお、第1の時間は、上記第1の実施形態と同様に設定し得る。
【0074】
第1の時間が経過していないと判断されると、ステップS1006に戻る。即ち、第1の時間が経過するまでステップS1006の判断処理を繰り返し実行する。
【0075】
一方、第1の時間が経過したと判断されると、ステップS1008が行われる。具体的には、ポンプ44が駆動した状態を維持したまま、マイクロコンピューター32によって、バルブ22を開状態とするとともにバルブ26を閉状態とする(
図8(c))。
【0076】
バルブ22が開状態、バルブ26が閉状態となると、インクカートリッジ12からチューブ16の上流領域16aにインクが吸引される(
図8(d))。そして、チューブ28に位置していたインクはチューブ18の下流領域18bに移動し、下流領域18bに位置していたインクはインクヘッド20に移動する。ただし、バルブ26が閉状態のため、上流領域18aのインクは移動しない。
【0077】
次に、ステップS1010では、マイクロコンピューター32が、第2の時間が経過したか否かの判断を行う。なお、第2の時間は、上記第1の実施形態と同様に設定し得る。
【0078】
第2の時間が経過していないと判断されると、ステップS1010に戻る。即ち、第2の時間が経過するまでステップS1010の判断処理を繰り返し実行する。
【0079】
一方、第2の時間が経過したと判断されると、ステップS1012が行われる。具体的には、インク経路10へのインクの充填が完了したものとして、ポンプ44を停止し、インク充填処理を終了する。
【0080】
バルブ22を開状態とし、バルブ26を閉状態とした後に第2の時間が経過すると、
図8(d)に示す状態からさらにインクが吸引される。吸引されたインクは、上流領域16aから、下流領域16bを介して、あるいは、チューブ28および下流領域18bを介して、インクヘッド20に達する。これにより、
図8(e)に示すように、チューブ16、18、28にインクが充填される。
【0081】
ここで、第3のインク充填処理では、ステップS1008においてバルブ22を開状態とする際にポンプ44による吸引がなされている。換言すれば、第2の状態において、バルブの開閉を変更する前に予め吸引装置を起動させている。これにより、インクカートリッジ12に空気(気泡)が流入することがなく、上述のような印刷不良等の不具合を未然に防止することができる。
【0082】
(2)インク経路からインクを抜き取る方法
作業者がインクジェットプリンタ200の操作子(図示せず)を操作してインク経路10からのインクの抜き取りを指示すると、インクヘッド20の下面20aがキャップ装置40によりキャッピングされ(
図2)、インク抜き取り処理が開始される。なお、以下ではインク経路10からインクを抜き取る場合について説明するが、インク以外の流体(例えば洗浄液)についても同様の処理で抜き取ることができる。
【0083】
(第1の実施形態)
図9は、第1の実施形態に係るインク抜き取り処理(第1のインク抜き取り処理)の手順を示すフローチャートである。また、
図10(a)〜(d)は、第1のインク抜き取り処理に係るインクの抜き取り状態を示す説明図である。
【0084】
図10(a)に示すように、第1のインク抜き取り処理の開始時には、インク経路10内にインクが充填されている。また、チューブ16、18の端部16c、18cからは、それぞれインクカートリッジ12、14が取り外されている。
【0085】
第1のインク抜き取り処理では、まず、ステップS1202において、バルブ22を閉状態とするとともにバルブ26を開状態とする(
図10(a))。
【0086】
次に、ステップS1204において、キャップ装置40のポンプ44を第1の時間だけ駆動する。つまり、ポンプ44を駆動して第1の時間が経過した後、ポンプ44を停止する。
【0087】
ポンプ44を第1の時間だけ駆動すると、チューブ18の下流領域18bに位置していたインクがインクヘッド20に移動する。また、チューブ28に位置していたインクが下流領域16bに移動する。また、上流領域18aに位置していたインクが接続部P4で分流し、チューブ28とチューブ18の下流領域18bとに移動する(
図10(b))。これにより、チューブ18の上流領域18a、下流領域18bの一部、およびチューブ28の一部から一定量のインクが抜き取られる。
【0088】
なお、ここでは、第1の時間は、これらの領域からインクを抜き取ることが可能な時間とする。第1の時間は、少なくともチューブ18の端部18cと接続部P4との間の部分からインクを抜き取ることが可能な時間に設定される。第1の時間は、例えば予め実験的に算出して、マイクロコンピューター32に記憶しておく。例えば、10秒とすることができる。
【0089】
次に、ステップS1206において、ポンプ44を停止した状態で、バルブ22を開状態とするとともにバルブ26を閉状態とする(
図10(c))。
【0090】
そして、ステップS1208において、キャップ装置40のポンプ44を第2の時間だけ駆動する。つまり、ポンプ44を駆動して第2の時間が経過した後、ポンプ44を停止する。
【0091】
ポンプ44を駆動すると、下流領域16b、18bに位置していたインクがインクヘッド20に移動する。また、チューブ28に位置していたインクが下流領域18bに移動する。また、上流領域16aに位置していたインクが、接続部P3で分流し、チューブ28および下流領域16bに移動する(
図10(d))。その後、下流領域16b、18bに位置していたインクはインクヘッド20に達する。また、チューブ28に位置していたインクは下流領域18bを介してインクヘッド20に達する。これにより、チューブ16、18、28からインクが抜き取られる。
【0092】
第2の時間は、チューブ16と、チューブ28と、チューブ18の下流領域18bとのインクを抜き取ることが可能な時間とする。第2の時間は、例えば予め実験的に算出し、マイクロコンピューター32に記憶しておく。第2の時間は、典型的には第1の時間より長く、例えば60秒とすることができる。
【0093】
本実施形態では、マイクロコンピューター32は、ステップS1202およびS1204の処理を実行するときに第1制御部321として機能し、ステップS1206およびS1208の処理を実行するときに第2制御部322として機能する。ステップS1202およびS1204は、インク抜き取り方法の「第1の工程」の一例であり、ステップS1206およびS1208は「第2の工程」の一例である。
【0094】
ここに開示されるインク抜き取り処理によれば、インク経路10(例えばチューブ28)内にインクが残留し難い。このため、インク経路10から的確にインクを取り除くことができる。
【0095】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態に係るインク抜き取り処理(第2のインク抜き取り処理)の手順を示すフローチャートである。また、
図12(a)〜(e)は、第2のインク抜き取り処理に係るインクの抜き取り状態を示す説明図である。
【0096】
図12(a)に示すように、第2のインク抜き取り処理の開始時には、第1のインク抜き取り処理と同様に、インク経路10内にインクが充填されている。また、チューブ16、18からは、それぞれインクカートリッジ12、14が取り外されている。
【0097】
第2のインク抜き取り処理では、まず、ステップS1402において、バルブ22を閉状態とするとともに、バルブ26を開状態とする(
図12(a))。
【0098】
次に、ステップS1404において、キャップ装置40のポンプ44を駆動する。ポンプ44を駆動すると、チューブ18の上流領域18aに位置していたインクが抜き取られる(
図12(b))。
【0099】
次に、ステップS1406では、マイクロコンピューター32が、第1の時間が経過したか否かの判断を行う。なお、第1の時間は、上記第1の実施形態と同様に設定し得る。
【0100】
第1の時間が経過していないと判断されると、ステップS1406に戻る。即ち、第1の時間が経過するまでこの判断処理を繰り返し実行する。
【0101】
ここで、ポンプ44を駆動して第1の時間が経過すると、第1のインク抜き取り処理と同様に、チューブ18の上流領域18a、下流領域18bの一部、およびチューブ28の一部からインクが抜き取られる(
図12(c))。
【0102】
一方、ステップS1406において第1の時間が経過したと判断されると、ステップS1408が行われる。具体的には、ポンプ44が駆動した状態を維持したまま、マイクロコンピューター32は、バルブ22を開状態とするとともにバルブ26を閉状態とする(
図12(d))。
【0103】
ここで、バルブ22が開状態、バルブ26が閉状態となると、下流領域16b、18bに位置していたインクは、インクヘッド20に移動する。また、チューブ28に位置していたインクは下流領域18bに移動する。また、上流領域16aに位置していたインクは、接続部P3で分流して、チューブ28と下流領域16bとに移動する(
図12(e))。
【0104】
次に、ステップS1410では、マイクロコンピューター32が、第2の時間が経過したか否かの判断を行う。なお、第2の時間は、上記第1の実施形態と同様に設定し得る。
【0105】
第2の時間が経過していないと判断されると、ステップS1410に戻る。即ち、第2の時間が経過するまでステップS1410の判断処理が繰り返し実行される。
【0106】
一方、第2の時間が経過したと判断されると、ステップS1412が行われる。具体的には、インク経路10
からのインクの抜き取りが完了したものとして、ポンプ44を停止し、インク抜き取り処理を終了する。
【0107】
ここで、バルブ22を開状態とし、バルブ26を閉状態とした後、第2の時間が経過する間に、インク経路10内のインクが吸引される。下流領域16b、18bに位置していたインクはインクヘッド20へ移動する。また、チューブ28に位置していたインクは、下流領域18bを介してインクヘッド20へ移動する。これにより、チューブ16、18、28からインクが抜き取られる。
【0108】
第2のインクの抜き取り処理では、ステップS1408においてバルブ22を閉状態から開状態とする際にポンプ44による吸引がなされている。換言すれば、第2の状態において、バルブの開閉を変更する前に予め吸引装置を起動させている。これにより、チューブ16の上流側の端部からインクが流出(噴出)することを未然に防止することができる。
【0109】
(3)インク経路を洗浄する方法
作業者がインクジェットプリンタ200の操作子(図示せず)を操作してインク経路10の洗浄を指示すると、インクヘッド20の下面20aがキャップ装置40によりキャッピングされ(
図2)、
洗浄処理が開始される。なお、以下では、インクが充填された状態のインク経路10を洗浄する場合について説明するが、インクが充填されていない場合についても同様に洗浄を行うことができる。
【0110】
(第1の実施形態)
図13は、第1の実施形態に係る洗浄処理(第1の洗浄処理)の手順を示すフローチャートである。また、
図14(a)〜(e)は、第1の洗浄処理に係るインク経路の洗浄状態を示す説明図である。
【0111】
図14(a)に示すように、第1の洗浄処理の開始時には、チューブ16の端部16cが洗浄液カートリッジ52に接続されている。また、チューブ18の端部18cが洗浄液カートリッジ54に接続されている。
【0112】
第1の洗浄処理は、大まかに言って、インク経路に洗浄液を流入させる工程(ステップS1602、ステップS1604、ステップS1606、ステップS1608)と、洗浄液カートリッジを取り外す工程(ステップS1610)と、インク経路に空気を流入させる工程(ステップS1612、ステップS1614、ステップS1616、ステップS1618)と、洗浄回数をカウントする工程(ステップS1620、ステップS1622)と、洗浄液カートリッジを接続する工程(ステップS1624)と、を包含する。
【0113】
このうち、インク経路に洗浄液を流入させる工程については、上述の第1のインク充填処理を準用することができる。つまり、第1のインク充填処理の説明文中にある「インクを
吸引する」は「
洗浄液を吸引する」と読み替え、「インク」は図面に準じて「洗浄液」あるいは「インクおよび洗浄液」と読み替え、
図4(a)、(b)はそれぞれ
図14(a)、(b)と読み替えることができる。ただし、S1608において洗浄液カートリッジ52から吸引する洗浄液の量は、チューブ16の上流領域16a、下流領域16bの一部、およびチューブ28の一部まで洗浄液が充填される量とする(
図14(c))。かかる
洗浄液の量は、ポンプ44を駆動する第2の時間によって調整することができる。したがって、第2の時間は、第1の時間より長くなる場合もあるし、第1の時間より短くなる場合もあるし、第1の時間と同じとなる場合もある。
【0114】
次に、ステップS1610では、マイクロコンピューター32が、チューブ16、18からそれぞれ洗浄液カートリッジ52、54が取り外されているか否かを判断する。この判断は、チューブ16、18とそれぞれ対応する洗浄液カートリッジ52、54との接続を検知するセンサー(図示せず。)の検知結果に基づいて行う。
【0115】
洗浄液カートリッジ52、54のうち少なくとも一方が取り外されていないと判断されると、再びステップS1610に戻る。即ち、チューブ16、18から洗浄液カートリッジ52、54が取り外されるまで、この判断処理を繰り返し実行する。なお、洗浄液カートリッジ52、54が取り外されていないと判断された場合には、例えば、インクジェットプリンタ200の表示部224に、洗浄液カートリッジ52、54を取り外すことを促す表示を行うようにしてもよい。
【0116】
一方、洗浄液カートリッジ52、54が取り外されたと判断されると、ステップS1612が行われる。具体的には、バルブ22を閉状態にするとともにバルブ26を開状態とする。
【0117】
次に、インク経路に空気を流入させる工程については、上述の第1のインク抜き取り処理を準用することができる。つまり、第1のインク抜き取り処理の説明文中にある「インク」は「洗浄液」または「インクおよび洗浄液」と読み替え、「インクカートリッジ12、14」は「洗浄液カートリッジ52、54」と読み替え、
図10(b)、(d)はそれぞれ
図14(d)、(e)と読み替えることができる。ただし、S1618において導入する空気の量は、チューブ16の上流領域16a、下流領域16bの一部、およびチューブ28の一部まで
空気が充填される量とする(
図14(e))。かかる
空気の量は、ポンプ44を駆動する第2の時間によって調整することができる。
【0118】
ステップS1614においてポンプ44を第1の時間だけ駆動すると、チューブ18の端部18cから一定量の空気が導入される。これにより、上流領域18a、下流領域18bの一部、およびチューブ28の一部から洗浄液が排出される。その結果、上流領域18a、下流領域18bの一部、およびチューブ28の一部が洗浄される。
【0119】
また、ステップS1618においてポンプ44を第2の時間だけ駆動すると、チューブ16の端部16cから一定量の空気が導入される。これにより、上流領域16a、チューブ28の一部および下流領域16bの一部から洗浄液が排出される。その結果、上流領域16a、チューブ28の一部および下流領域16bの一部が洗浄される。
【0120】
次に、ステップS1620では、マイクロコンピューター32が、カウント数を「+1」する。すなわち、カウント数を1つ増加させる。このカウント数は、ステップS1602〜S1618の処理が行われた回数のことである。
【0121】
次に、ステップS1622では、上記ステップS1620のカウント数が所定の回数に達したか否かの判断を行う。この所定の回数は、インク経路10を十分に洗浄する回数とする。所定の回数は、例えば予め実験的に算出して、マイクロコンピューター32に記憶しておく。例えば2回とすることができる。
【0122】
ステップS1622において、カウント数が所定の回数に達していないと判断されると、ステップS1624が行われる。具体的には、チューブ16、18にそれぞれ洗浄液カートリッジ52、54が接続されたか否かの判断を行う。
【0123】
即ち、ステップS1624では、マイクロコンピューター32が、チューブ16、18に洗浄液カートリッジ52、54が接続されているか否かを判断する。この判断は、チューブ16、18とそれぞれ対応する洗浄液カートリッジ52、54との接続を検知するセンサー(図示せず。)の検知結果に基づいて行う。
【0124】
洗浄液カートリッジ52、54のうち少なくとも一方が接続されていないと判断されると、ステップS1624に戻る。即ち、チューブ16、18に洗浄液カートリッジ52、54が接続されるまで、この判断処理を繰り返し実行する。なお、洗浄液カートリッジ52、54が接続されていないと判断された場合には、例えば、インクジェットプリンタ200の表示部224に、洗浄液カートリッジ52、54を接続することを促す表示を行うようにしてもよい。
【0125】
一方、洗浄液カートリッジ52、54が接続されたと判断されると、ステップS1602に戻り、一連の処理が再度繰り返される。
【0126】
そして、ステップS1622おいて、カウント数が所定の回数に達したと判断されると、洗浄処理を終了する。なお、カウント数は、洗浄処理が終了する際に「0」に再設定される。すなわち、カウント数の初期化が行われる。なお、インク経路10の洗浄後には、上述のインク抜き取り処理と同じ処理で、インク経路10から洗浄液を抜き取ることができる。
【0127】
本実施形態では、マイクロコンピューター32は、ステップS1602およびS1604を実行するときに第1制御部321として機能し、ステップS1606およびS1608を実行するときに第2制御部322として機能し、ステップS1612およびS1614を実行するときに第3制御部323として機能し、ステップS1616およびS1618を実行するときに第4制御部324として機能する。また、マイクロコンピューター32は、ステップS1620を実行するときにカウント部325として機能し、ステップS1622を実行するときに判定部326として機能する。ステップS1602およびS1604は、インク経路の洗浄方法の「第1の工程」の一例であり、ステップS1606およびS1608は「第2の工程」の一例であり、ステップS1612およびS1614は「第3の工程」の一例であり、ステップS1616およびS1618は「第4の工程」の一例である。
【0128】
本実施形態では、ステップS1604におけるポンプ駆動時間とステップS1614におけるポンプ駆動時間とは等しく、第1の時間である。しかし、ステップS1604におけるポンプ駆動時間とステップS1614におけるポンプ駆動時間とは、異なっていてもよい。ステップS1614におけるポンプ駆動時間を「第3の時間」とすると、第3の時間は第1の時間と等しくてもよく、第1の時間よりも短くてもよく、第1の時間よりも長くてもよい。
【0129】
本実施形態では、ステップS1608におけるポンプ駆動時間とステップS1618におけるポンプ駆動時間とは等しく、第2の時間である。しかし、ステップS1608におけるポンプ駆動時間とステップS1618におけるポンプ駆動時間とは、異なっていてもよい。ステップS1618におけるポンプ駆動時間を「第4の時間」とすると、第4の時間は第2の時間と等しくてもよく、第2の時間よりも短くてもよく、第2の時間よりも長くてもよい。
【0130】
ここに開示されるインク経路の洗浄処理では、洗浄液と空気を交互に流入させることで、インク経路10に洗浄液を好適に流通させることができる。また、上述の処理を所定の回数だけ繰り返すことで、インク経路10を的確に洗浄することができる。さらに、洗浄後のインク経路からは、インクや洗浄液を的確に取り除くことができる。
【0131】
(第2の実施形態)
図15は、第2の実施形態に係る洗浄処理(第2の洗浄処理)の手順を示すフローチャートである。また、
図16(a)〜(g)は、第2の洗浄処理に係るインク経路の洗浄状態を示す説明図である。
【0132】
第2の洗浄処理では、インク経路に洗浄液を流入させる工程において上述の第3のインク充填処理を準用し、また、インク経路に空気を流入させる工程において上述の第2のインク抜き取り処理を準用すること以外は、上記第1の洗浄処理と同様に行うことができる。つまり、第1の洗浄処理における
図14(a)〜(e)は、それぞれ
図16(a)、(b)、(d)、(e)、(g)と読み替えることができる。また、
図16(c)および(f)は、それぞれ、第3のインク充填処理における
図8(c)および第2のインク抜き取り処理における
図12(d)と同じ状態を表している。
【0133】
第2の洗浄処理では、ステップS1808およびステップS1822において、バルブ22を閉状態から開状態とする際にポンプ44による吸引がなされている。換言すれば、第2の状態において、バルブの開閉を変更する前に予め吸引装置を起動させている。これにより、チューブ16の上流側の端部からインクが流出(噴出)したり、洗浄液カートリッジ52にインクや洗浄液が流入したりすることを未然に防止することができる。
【0134】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限らず、他に種々の形態にて実施することができる。
【0135】
上述した実施形態では、2本のチューブが1本のチューブを介して互いに連結されてインク経路を形成しているが、勿論、これに限られるものではない。即ち、3本以上のチューブを備え、隣接するチューブ同士が相互に連結されてインク経路を形成してもよい(
図17(a))。このとき、インクカートリッジおよびバルブの数は、チューブと同数(3つ以上)である。
【0136】
かかる場合、制御装置320は、複数のバルブのうちの所定のバルブ(例えば一のバルブ)を閉じた状態とするとともにその他のバルブを開いた状態とし、吸引装置によってインクヘッドの方から第1の時間だけ吸引する第1の状態と;上記所定のバルブを開いた状態とするとともに上記その他のバルブを閉じた状態とし、吸引装置によってインクヘッドの方から第2の時間だけ吸引する第2の状態と;を切り替え可能なように構成されている。
【0137】
上述した実施形態では、チューブ16とチューブ18とがチューブ28で連結されている。また、チューブ16の一方の端部16cがインクカートリッジ12に接続され、他方の端部16dがインクヘッド20に接続されている。また、チューブ18の一方の端部18cがインクカートリッジ14に接続され、他方の端部18dがインクヘッド20に接続されている。しかし、インク経路の構成は、勿論、これに限られるものではない。
【0138】
例えば、
図17(b)に示すように、チューブ16の端部16dがチューブ28に接続されていてもよい。この場合、端部16dと接続部P3とが一致する。チューブ16の端部16dは、チューブ28とチューブ18の一部とを介してインクヘッド20に連通する。
【0139】
さらに、例えば、
図17(c)に示すように、チューブ16とチューブ18との接続部よりインクヘッド20の方で、一方の端部50cがチューブ18に接続され、他方の端部50dがインクヘッド20に接続されたチューブ50を設けてもよい。
【0140】
上述した実施形態では、洗浄液カートリッジ52、54を接続する際、あるいは、洗浄液カートリッジ52、54を取り外す際に、バルブ22、26のうちの一方を開状態、他方を閉状態としている。しかし、例えばバルブ22、26の両方を閉状態としてもよいことは勿論である。
【0141】
上述した実施形態では、第1の時間および第2の時間は、予めマイクロコンピューター32に記憶されていた。しかし、第1の時間および/または第2の時間は、ユーザが入力可能であってもよく、適宜変更可能であってもよい。上述した実施形態では、ステップS1622における所定の回数は、予めマイクロコンピューター32に記憶されていた。しかし、上記所定の回数は、ユーザが入力可能であってもよく、適宜変更可能であってもよい。
【0142】
上述の実施形態ならびに他の実施形態は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。