特許第6013621号(P6013621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 同方威視技術股▲分▼有限公司の特許一覧 ▶ 清華大学の特許一覧

<>
  • 特許6013621-3次元データの処理及び識別方法 図000004
  • 特許6013621-3次元データの処理及び識別方法 図000005
  • 特許6013621-3次元データの処理及び識別方法 図000006
  • 特許6013621-3次元データの処理及び識別方法 図000007
  • 特許6013621-3次元データの処理及び識別方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013621
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】3次元データの処理及び識別方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20060101AFI20161011BHJP
   G01N 23/04 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   G06T7/00 C
   G01N23/04 320
【請求項の数】25
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-549950(P2015-549950)
(86)(22)【出願日】2013年7月5日
(65)【公表番号】特表2016-505976(P2016-505976A)
(43)【公表日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】CN2013078884
(87)【国際公開番号】WO2014101387
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2015年6月24日
(31)【優先権主張番号】201210581559.9
(32)【優先日】2012年12月27日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503414751
【氏名又は名称】同方威視技術股▲分▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】513322718
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】TSINGHUA UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】李 明亮
(72)【発明者】
【氏名】陳 志強
(72)【発明者】
【氏名】李 元景
(72)【発明者】
【氏名】張 麗
【審査官】 岡本 俊威
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−516517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G01N 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を走査して再構成することによって、被検体を識別するための3次元データを取得するステップと、
3次元データから特徴がマッチングするデータを抽出し、抽出された3次元データを注目対象として構成するステップと、
前記マッチングするデータに対して、隣接するデータ点を一つのクラスとして併合することによって、併合後の注目対象の画像を形成するステップと、
注目対象の横断面を識別するステップと、
前記横断面の中央点を通過し且つ前記横断面と垂直に交わる垂直面の少なくとも1つによって、注目対象をカットすることで、パターンを取得するステップと、
前記パターンの属性に基づいて、注目対象の形状を識別するステップと、
を備え
空間角の分布に対する解析方法によって、注目対象の表面データを取得し、
前記空間角の分布に対する解析方法は、
注目対象内における任意の点Iを座標原点として選択して、球座標系を作成し、
3次元データの各点の球座標系における頂角θ及び方位角φ、ならびに各点から座標原点である点Iまでの距離を算出し、
Δθ及びsinθΔφを設定して、各立体角sinθΔθΔφ内で座標原点までの距離が最も長い点を表面データとして選択する、ことを特徴とする3次元データの処理及び識別方法。
【請求項2】
注目対象の各3次元データ点を解析し、当該3次元データ点の3次元の方向における隣接する箇所全てに他方の3次元データ点が存在する場合、当該3次元データ点を表面データでないと設定し、逆の場合、当該3次元データを表面データであると設定する、ことを特徴とする請求項1に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項3】
前記選択された表面データの点のそれぞれに対して、その周囲にある点を選択して補間することによって当該点の補間点を取得し、
当該点から点Iまでの距離よりも当該補間点から点Iまでの距離が長い場合、前記点を削除する、ことを特徴とする請求項に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項4】
前記選択された表面データの点のそれぞれに対して、その周囲にある点を選択して補間することによって当該点の補間点を取得し、
当該補間点から点Iまでの距離と当該点から点Iまでの距離との比率が所定の範囲内にある場合、当該点を保留し、そうでない場合、当該点を削除する、ことを特徴とする請求項に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項5】
注目対象が中空構造である場合、前記空間角の分布に対する解析方法によって、注目対象の内面のデータを識別し、
各立体角sinθΔθΔφ内で、座標原点である点Iまでの距離が最も短い点を内面のデータとして選択する、ことを特徴とする請求項に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項6】
前記選択された各内面のデータ点に対して、その周囲にある点を選択して補間することによって、当該点の補間点を取得し、
当該点から点Iまでの距離よりも当該補間点から点Iまでの距離が短い場合、前記点を削除する、ことを特徴とする請求項に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項7】
前記注目対象の横断面を識別する方法は、
(1)注目対象内における任意の点Iを通過する任意のα面を取って注目対象をカットすることで、α面と注目対象とが交差する点を取得し、これらの点を解析して、α面の中央点Rを取得し、
(2)α面以外であって、点Iに近接する箇所にある一つの点を取って、α面と平行なβ面を作成し、それによって注目対象をカットすることで、β面と注目対象とが交差する点を取得し、これらの点を解析して、β面の中央点Sを取得し、
(3)直線RS⊥α面である場合、α面が横断面であると判定し、直線RSがα面と垂直でない場合、α面の法線方向を変更して、注目対象を新たにカットし、直線RS⊥α面の条件を満足するまで、上記(1)から(3)を繰り返す、ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項8】
n個点の中心座標を、(数2)とすることで、前記中央点を求め、
ただし、X、Y、Zは、それぞれ第i点のx、y、z軸における座標値であり、1≦i≦n、且つ、nは、整数である、ことを特徴とする請求項に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【数2】
【請求項9】
注目対象をカットして得られたパターンが三角形である場合、注目対象が円錐体であると判定する、ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項10】
注目対象をカットして得られたパターンが台形で、当該台形の平行な対辺における上方の端点をXとY、対辺における下方の端点をUとTとした場合、前記台形の4つの端点からなる線分において、線分TU≧線分XYであると、線分TU及び線分XY長さの差と線分TU及び線分XYの長さの合計との比率を算出し、
当該比率が所定の閾値よりも大きい場合、当該注目対象が円錐体であると判定し、
当該比率が所定の閾値よりも小さい場合、当該注目対象が柱状体であると判定する、ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項11】
注目対象が円錐体であると判定されると、線分XYの長さに基づいて、円錐体の先端のサイズを算出する、ことを特徴とする請求項10に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項12】
さらに、2sin−1(TU−XY)/2XT)に基づいて、円錐体の先端の角度を推定する、ことを特徴とする請求項11に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項13】
前記注目対象をカットして得られたパターンが矩形である場合、注目対象が柱状物であると判定する、ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項14】
前記矩形の長さおよび幅を算出することによって、柱状体のサイズを取得する、ことを特徴とする請求項13に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項15】
前記注目対象における垂直面が互いに垂直に交わる垂直面φ及びγであり、当該垂直面φ及びγで注目対象をカットして得られたパターンが、同じサイズの矩形であり、且つ、前記横断面αが円形である場合、注目対象を円柱体として識別する、ことを特徴とする請求項14に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項16】
前記円柱体が、中空である円柱体として識別された場合、注目対象をパイプタイプのものであると判定する、ことを特徴とする請求項15に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項17】
前記パイプタイプの注目対象の内径が、銃のパイプの内径に合い、その材料が金属である場合、注目対象が銃であると判定する、ことを特徴とする請求項16に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項18】
注目対象の画像が略円柱状、略円錐状または略円錐台状である場合、注目対象内における任意の点Iを通過するα面を取って注目対象をカットし、当該α面の法線方向を球座標(θ,φ)として、当該α面によりカットされたパターンが円形である場合、当該α面が横断面であると判定し、そうでない場合、点Iを通過するα面の法線方向(θ,φ)を変更して新たに注目対象をカットして、α面によりカットされたパターンが円形になるまで、または、法線方向(θ,φ)が全ての方向に跨るまで、上記の工程を繰り返す、という方法で、注目対象の横断面を高速に識別する、ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項19】
前記識別された円錐体または円錐体に近似する形状について、そのサイズおよび円錐体の先端の角度、ならびに円錐体の材料が金属または高密度の物質であることに基づいて、注目対象が、矢、鋭い刃、ねじ回し、銃弾、砲弾またはミサイル弾頭であると判定する、ことを特徴とする請求項から12および18のいずれか一項に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項20】
前記特徴がマッチングするデータは、前記3次元データと通常の危険物または禁制品における既存のデータに対してマッチング検索を行うことによって取得されたものである、ことを特徴とする請求項1に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項21】
前記既存のデータは、減衰係数のデータ、密度のデータ、原子番号のデータのいずれか1つまたはそれらの組み合わせである、ことを特徴とする請求項20に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項22】
併合後のデータに対して、そのデータ点の数量に基づいて、被検体のサイズを推定する、ことを特徴とする請求項1に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項23】
併合後のデータの存在する領域の品質及び/又は存在する領域の位置、減衰係数、密度、原子番号のいずれか1つまたはそれらの組み合わせの平均値を統計処理する、ことを特徴とする請求項1に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項24】
前記3次元データは、保安検査CTシステム又は磁気共鳴システムにより被検体を走査して再構成することによって得られたデータである、ことを特徴とする請求項1に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【請求項25】
前記3次元データのx、y、z軸における極大値及び極小値の中間値を、前記注目対象内における任意の点Iの座標または前記注目対象内における一つの点の座標として選択する、ことを特徴とする請求項からおよび18のいずれか一項に記載の3次元データの処理及び識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2012年12月27に提出した、出願番号が201210581559.9で、発明の名称が「3次元データの処理及び識別方法」である中国特許出願の優先権を主張し、その内容を全て本出願にとりこむものとする。
【0002】
本発明は、3次元データの処理及びその識別の分野に関して、特に、CT保安検査における禁制品または磁気共鳴システムにおける被検体に対するスマートな識別に関する。
【背景技術】
【0003】
民間航空輸送は、乗客量が多くて、攻撃しやすくて、事後の影響が大きいため、テロリストがテロ活動を行うときの優先の対象になっている。
【0004】
2001年9月11日のテロ事件以後、アメリカの政府は、選択された荷物の全てに対して爆発物の検査を行うという航空保安検査を追加して実行することを決めた。周知の爆発物検出システムは、X線(透過)またはCT技術を用いて荷物に関する画像を得るものである。アメリカの政府は、2001年12月から、選択された荷物の全てに対して、新たに成立されたTransportation Security Agencyによって認可された技術を用いて爆発物の検査を行わなければならないと規定している。今まで、TSAによって認可された技術は、CTだけである。
【0005】
現在、主流の保安検査用CTは、いずれも3次元のCTデータを得ることができる。空港は、乗客量が多いので、預かり手荷物及び持ち込み手荷物に対して、爆発物検出システムは、高い通過率を要求している。そのため、禁制品をスマートに識別できる技術への要求は、非常に切実である。それは、保安検査者の労働負担を減少させ、人為的要素を低減し、通過率を向上させることができるからである。
【0006】
以上のことに鑑みて、保安検査CTのための新規な3次元データの処理及び識別方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術に存在する上記課題および欠点のうち、少なくともひとつを解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、新規な3次元データの処理及び識別方法が提供される。本発明に係る3次元データの処理及び識別方法は、被検体を走査して再構成することによって、被検体を識別するための3次元データを取得するステップと、3次元データから特徴がマッチングするデータを抽出し、抽出された3次元データを注目対象として構成するステップと、マッチングするデータに対して、隣接するデータ点を一つのクラスとして併合することによって、併合後の注目対象の画像を形成するステップと、注目対象の横断面を識別するステップと、横断面の中央点を通過し且つ横断面と垂直に交わる垂直面の少なくとも1つによって、注目対象をカットすることで、パターンを取得するステップと、パターンの属性に基づいて、注目対象の形状を識別するステップとを含む。
【0009】
本発明の主旨は、注目対象または容疑対象(例えば、危険物または禁制品)の特徴のデータを使用して、保安検査CTシステムによって走査して再構成された3次元データに対して、サーチ、抽出、併合、統計及び形状の識別を行うことである。従来技術における3次元データによる画像の分割は、難しく、その正確性及び汎用性も悪い。本発明は、従来技術と異なる知見により、3次元データの処理及び識別方法を提供し、注目対象のサーチ、統計及び形状の識別を行う課題を解決することを目的とする。
【0010】
本発明の上記態様及び/又は他の態様の特徴及びその利点は、図面を参照しつつ実施形態を説明することで、一層明らかになり、容易に理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】円錐を示す模式図である。
図2】表面に存在しないデータ点を削除したことを示す模式図である。
図3】注目対象内における選択された座標原点を通過する横断面及びそれに平行する横断面の模式図である。
図4】注目対象の横断面を識別した後、横断面の中央点を通過する二つの垂直面の模式図である。
図5】横断面と垂直に交わる平面を用いて円柱体および立方体の注目対象を切って取得した様子の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を具体的に説明する。明細書において、同一または類似の部材には、同一または類似の符号を付す。図面を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、本発明の主旨を解釈するためのもので、本発明を限定するものと理解してはならない。
【0013】
本発明の実施形態は、保安検査CTシステムが走査を行って再構成されたCT画像のデータを例にして、どのように本発明の3次元データの処理及び識別方法によって禁制品または危険物に対する識別を行うのかを説明する。本発明の3次元データの処理及び識別方法を、磁気共鳴システムまたはそれに類似するシステムに適用することによって、注目対象に対する識別を行うことが可能であることは、当業者の知るところである。
【0014】
本発明の主旨は、注目対象または容疑対象(例えば危険物または禁制品)の特徴のデータで、保安検査CTシステムによって走査し再構成された3次元データに対して、サーチ、抽出、併合、統計及び形状の識別を行うことである。従来技術において、3次元データによる画像の分割は難しく、正確性または汎用性などが低かった。本発明は、従来技術と異なる知見に基づき、3次元データの処理及び識別方法を提供することで、注目対象に対するサーチ、統計及び形状を識別するという課題を解決する。
【0015】
以下、実施形態を組み合わせて、図1乃至図5を参照しながら、本発明の3次元データの処理及び識別方法を詳細に説明する。
【0016】
本発明は、主に、鋭利な危険物や鋭い危険物、矢、鋭い凶器などのような円錐形または円錐形に近似する形状の危険物を識別することに用いられる。なお、本発明の識別方法は、銃などのような柱状体を識別することにも用いられる。
【0017】
まず、本発明の3次元データの処理及び識別方法をよりよく説明するために、以下、円錐または柱状体の性質を詳細に説明する。
【0018】
以下、図1を参照しながら、円錐体を例に説明するが、柱状体も円錐体に近似する性質を有するので、本発明の3次元データの処理及び識別方法を使用して円錐及び/または柱状体を識別することができるのは勿論である。
【0019】
図1における円錐体の軸線AGを通過する平面π(図1に三角形ABCとして示す)を取得する。当該平面πは、円錐体の横断面と交差し、交差線をEFとした場合、EF⊥AGになる。平面πは、円錐体の傾斜断面と交差し、交差線をJKとした場合、線LM‖線JKと仮定する。点Pは、線分JKの二等分点であり、線APと線LMとは点Qで交差する。相似三角形の特徴によると、点Qは線分LMの二等分点である。∠APK<∠ADK、および、∠ADK<∠ADFであるので、∠APK<∠ADF、即ち、∠APK<90°である。そのため、本発明は、円錐体のこのような性質を、その横断面を識別する判定の根拠として利用する。具体的に、3次元データの処理及び識別方法は、下記のとおりである。
【0020】
本発明の3次元データの処理及び識別方法は、主に、データ処理、ならびに、円錐/柱状体の形状及びサイズの識別の二つの部分を有する。
【0021】
<データ処理>
保安検査CTシステムによって被検体を走査し再構成することでCT画像データ(即ち、3次元データ)を取得した後、取得された3次元データに基づいて禁制品(例えば刃物)に対する識別を行う。
【0022】
禁制品の特徴的データを用いて、取得された3次元データについて、サーチ、併合を行って、マッチングする3次元データを抽出する。これにより、抽出された3次元データは、注目対象になる。禁制品は、例えば刃物、爆発物、銃などのような通常の危険物である。特徴的データは、通常の危険物の材料(例えば、鉄や銅、重金属など)に関するデータである。データは、これらの減衰係数のデータ、密度のデータまたは原子番号のデータのいずれか一つまたはそれらの任意の組み合わせである。典型的にまたは好ましくは、データとして、密度のデータおよび原子番号のデータを用いることができる。
【0023】
マッチングする3次元データについて、隣接するデータ点を一つのクラスとして併合する。併合された3次元データの画像を、個別にまたは目立つように表示して、検査者による検査に提供される。
【0024】
併合後の3次元データは、そのデータ点の数量によって禁制品の大きさを推定することができる。このとき、併合後の3次元データの存在領域の品質、位置、密度及び原子番号の平均値の統計処理が、被検体における注目対象の位置、体積、重量、物質の種類などのより詳しい情報の取得に至り、禁制品の識別にさらに貢献する。密度及び原子番号に基づいて、被検体が麻薬、爆発物などの禁制品であるか否かを識別可能であることが理解されよう。
【0025】
上記抽出した3次元データで形成される注目対象または併合処理後の3次元データで形成される注目対象に対して、形状及びサイズに関する識別を行う前に、3次元データから表面データを構成するステップを実行してもよい。
【0026】
<3次元データから表面データを構成するステップ>
ここで、併合処理された3次元データから構成された注目対象を例にして、「3次元データから表面データを構成するステップ」を説明する。勿論、抽出した3次元データから構成された注目対象を基に、「3次元データから表面データを構成する」ステップを実行してもよい。
【0027】
具体的に、上述した併合後の3次元データは、3次元の対象(即ち注目対象)を構成する。まず、注目対象において点Iを選択する。併合後の3次元データにおけるデータのx,y,zの三つの方向での最大値及び最小値を選択し、三つの方向での最大値と最小値の中間値をそれぞれ算出して、その座標を点Iの座標とすることで、当該点Iを選択するのが好ましい。
【0028】
点Iを座標の原点として、球座標系を作成し、球座標系における併合後の立体データ(3次元データ)の各点の角度(θ,φ)および点Iまでの距離を算出する。ただし、0≦θ≦π,0≦φ<2π(物理的に、θは頂角を示すもので、φは方位角を示すものである)。△θおよびsinθ△φを設定して、各立体角sinθ△φ△θにおいて、点Iから最も遠い点を表面データとして選択する。
【0029】
表面に存在しないデータを削除することが好ましい。つまり、好適には、上記のように得られた各表面のデータに対して、その周囲の点を選択し、補間することで当該点の補間点を取得して、当該点から点Iまでの距離よりも補間点から点Iまでの距離が長い場合、当該点を削除する。具体的に、図2(4つの点A、B、C、Dが示され、表面データにおける点であるとする)を参照すると、点Bから点Iまでの距離よりも、線形補間によって得られた点Aと、点Cから点Iまでの距離の方が長いので、点Bを削除する。
【0030】
上述のような削除処理の後、残りのデータは、信頼性のより高い表面データであると考えられる。
【0031】
中空構造の3次元対象または注目対象について、中空構造である3次元対象の外面のデータに注目するだけではなく、中空構造の注目対象の内面のデータにも注目する場合がある。この場合、上記と同様に、内面のデータを選択する際、各立体角sinθ△φ△θ内で点Iから最も近い点を内面のデータとして選択する。そして同様に、内面のデータを削除するステップで、当該点から点Iまでの距離よりも補間点から点Iまでの距離が小さい場合、当該点を削除する。
【0032】
データを削除するもう一つの好ましい方法は、下記のとおりである。補間点から点Iまでの距離と、当該点から点Iまでの距離との比が、所定の閾値の範囲内(例えば、[0.95,1.05])にある場合、当該点を保留し、そうでない場合、当該点を削除する。この方法は、上述した表面のデータ及び内面のデータの削除にも用いられる。
【0033】
この際、構成済みの表面データを、直観的に注目対象の様子が見れるように操作者に表示させて、初期の識別(例えば形状の識別)を行う。
【0034】
もう一つの表面データの構成方法は、注目対象に対して、各3次元データを解析し、3次元の方向(例えば、上、下、左、右、前、後)に向かって隣接する箇所に他のデータが存在すれば、それを非表面データとし、残りの3次元データを表面データとしてもよい。
【0035】
<円錐体/柱体の形状およびサイズの識別>
識別すべき円錐/柱状体である注目対象は、上述した「データ処理」ステップによって取得された3次元データ(即ち、併合処理後の3次元データ)で形成される注目対象であってもよいし、「表面データの構成」のステップ後の3次元データで形成される注目対象であってもよい。
【0036】
本実施形態においては、「3次元データから表面データを構成する」ステップの処理が実行された後に注目対象が形成されて、識別処理を実行する例を説明する。「3次元データから表面データを構成する」ステップ後の注目対象は、冗長データが少ないため、より容易に処理することができる。これは、表面に存在しない若干のデータ点を削除したからである。
【0037】
注目対象において点Iを選択する。点Iの選択方法として、データのx,y,zの三つの方向における最大値および最小値を選択し、当該三つの方向の最大値と最小値の中間値をそれぞれ算出して、その座標(x0,y0,z0)を選択した点Iの座標とする方法が好ましい。
【0038】
図3を参照すると、注目対象の横断面を識別するための方法の具体的なステップは、以下のとおりである。
1)注目対象内における点Iを通過する任意の面(その法線方向は、球座標(θ,φ)の方向である)αによって、注目対象をカットして、α面と注目対象とが交差する点を取ってから、これらの点を解析して中央点Rを取得する。
2)α面の周囲において点Iに近接する1つの点を取って、α面に平行するβ面を作成し、このβ面によって注目対象をカットして、β面と注目対象とが交差する点を取ってから、これらの点を解析して中央点Sを取得する。
3)直線RS⊥α面であれば、α面は横断面となる。直線RSがα面と垂直でなければ、α面の点Iを通過する法線方向(θ,φ)を変更することで、注目対象を再度カットする。直線RS⊥α面の条件を満足するまで、ステップ1)から3)を繰り返す。
【0039】
上記の注目対象の横断面の識別方法を実行するとき、当該方法に時間がかかる場合、まず大概にサーチした後詳細にサーチするという対策を使用して前記横断面をサーチしてもかまわない。公知の情報を使用して前記サーチをリードすることで速度を向上することも勿論実行可能である。
【0040】
上記の中央点R又はSを求める方法は、以下のとおりである。
n個の点の中心座標は、
【数1】
【0041】
円柱状や円錐状、円錐台形状である対象に対して、以下のような高速な識別方法を用いてもよい(上記の方法も勿論適用可能であるが、その演算速度が遅い可能性がある)。
【0042】
注目対象内における点Iを通過する面(その法線方向を球座標(θ,φ)とする)αを取って、注目対象をカットし、カットされたパターンが円形になると、α面は横断面となる。そうでない場合、カットされたパターンが円形になる(即ち、横断面を取得する)または法線方向(θ,φ)が全ての方向に跨るまで、α面(点Iを通過する)の法線方向(θ,φ)を変更して注目対象を再度カットするステップを繰り返す。
【0043】
上述したサーチステップが完了すると、注目対象の横断面αが見つかる。注目対象の横断面αが見つかると、横断面αの中央点を通過する当該横断面αと垂直に交わる2つの面φおよびγを作成する。平面φと平面γも互いに垂直に交わる(アルゴリズムの算出時間を短縮させるために、横断面αと垂直に交わる面を1つだけ作成しても良い)。
【0044】
横断面αと垂直に交わる平面φまたはγによって注目対象をカットすることで得られたパターンが三角形であれば、注目対象が円錐体であると判定することができる。当該三角形の頂角が、円錐体の先端の角度になる。
【0045】
横断面αと垂直に交わる平面φまたはγによって注目対象をカットすることで得られたパターンが台形であり、当該台形の4つの端点であるX、Y、UおよびT(図4に示す)からなる線分がTU≧線分XYであれば、線分TUと線分XYの長さの差を、線分TUと線分XYの長さの合計で割ることで得られる比率{(TU−XY)/(TU+XY)}を算出する。当該比率が、閾値(例えば0.1)よりも大きい場合、注目対象が円錐体であると判定し、当該比率が、閾値よりも小さい場合、注目対象が柱状体であると判定する。ただし、端点X、Yは、台形の短い上底の端点であり、端点UおよびTは、台形の長い下底の端点である。
【0046】
円錐体は、加工や摩損などの原因で、実際に円錐台(または角錐台)の形状になっている。横断面αと垂直に交わる平面φまたはγによって円錐台または角錐台をカットすることで得られたパターンは、通常、台形である。図4の上方に示されたように、横断面αと垂直に交わる平面φで注目対象をカットすることによって、台形XYTU(または三角形ATU)が得られる。この際、線分XYの長さは、円錐体の先端の寸法として算出される。線分XTと線分YUとがなす角は、円錐体の先端の角度として算出される。
【0047】
当該円錐体の先端の角度を、2sin−1(TU−XY)/2XT)によって得ることが好ましい。勿論、本分野の周知の方法によって当該円錐体の先端の角度を算出してもよい。
【0048】
円錐体の先端の寸法が閾値(例えば8mm)よりも小さくて、円錐体の先端の角度が閾値(例えば90°)よりも小さい場合、システムが警報をならすことができる。同様に、横断面αと垂直に交わる平面γによって注目対象をカットした円錐体の先端の寸法および先端の角度を取得して、同じ閾値に基づいて警報をならすこともできる。
【0049】
材質(例えば銅)、円錐体の先端の寸法および先端の角度が銃弾の特徴に合う場合、銃弾であると判定することができる。
【0050】
横断面αと垂直に交わる平面φまたはγによって注目対象をカットして得られたパターンが矩形であれば、注目対象が柱状物であると判定することができる。図5に示すように、当該矩形の長さおよび幅を算出することによって、柱状物のサイズを得ることができる。図5は、横断面αと垂直に交わる平面φによって円柱体または立方体の注目対象をカットするときの様子を示し、注目対象をカットして得られたパターンは、矩形である。
【0051】
注目対象の横断面αと垂直に交わる平面φまたはγが、互いに垂直に交わる垂直面φおよびγであり、それによって注目対象をカットして取得したパターンが、同じサイズの矩形であり、横断面が円形であると、注目対象を円柱体として識別する。
【0052】
円柱体が中空構造であると識別されると、注目対象がパイプタイプのものであると判定することができる。
【0053】
パイプタイプの注目対象の内径が銃のパイプの内径に合い、その材料が金属(例えば銅や鉄)であると、注目対象が銃であると判定することができる。
【0054】
横断面によって注目対象をカットしたパターンと、垂直面φ、γとが、いずれも矩形であると、注目対象が直方体である。
【0055】
本方法は、円錐体または円錐体に近似するものであると識別した後、円錐体のサイズ、円錐体の先端の角度および材質が金属(または高密度の物質)であることに基づいて、矢、鋭い刃、ねじ回し、砲弾およびミサイルの弾頭などのような注目対象の識別にも用いられる。保安検査に適用される場合、ガラス材質の円錐体、矢も潜在的な危険品になる。高精度の画像に基づいて、針状体などを識別することもできる。
【0056】
注目対象がパイプタイプであると識別された場合、その材質が金属で、サイズもミサイルに合うと、ミサイル(または砲弾)が存在すると判定することができる。コンテンツまたは隣接して置かれた充填物が、弾薬の特徴(例えば、密度や原子番号など)に合うと、危険性の高いミサイル(または砲弾)が存在すると高精度で判定することができる。
【0057】
柱状物の識別に基づいて、航空保安検査における通常の長尺物やステッキなどのような禁止された携帯手荷物を効率的に検査することができる。そのため、検査者の労働負担を低下させることができる。
【0058】
本願の方法は、CT及び磁気共鳴システム等のような3次元データの生成システムに適用することができる。明細書において、直交座標系及び球座標系を例にして記述したが、他の座標系を採用したり、本発明を簡単に展開したりすることは、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0059】
このように、本発明の方法は、特徴のマッチングによって3次元データを抽出し、注目対象の横断面を識別し、横断面の中央点を通過し、且つ、横断面と垂直に交わる平面の少なくとも一つによって、注目対象をカットして、カットされた部分でパターンを取得する。そして、パターンの属性に基づいて、注目対象の形状を識別することで、鋭い物や銃などの禁制品を識別する。各CTシステムは、いずれもこの方法を使用して、危険物に対する識別を行うことができる。3次元データを生成する他のシステム、例えば磁気共鳴システム等も、このような方法を使用して、注目対象を識別することができる。つまり、注目対象の特徴のデータを用いて、3次元データに対してサーチ、抽出、併合、統計及び形状の識別を行う。3次元データによる画像の分割は、難しく、正確性および汎用性も低いが、本方法は、別の知見から注目対象に対するサーチ、統計及び形状の識別を解決する。
【0060】
本発明の方法は、CTシステム及び磁気共鳴システム等のような3次元データの生成システムに適用できる。本明細書において、直交座標系及び球座標系を例にして本発明の3次元データの処理及び識別方法を記述したが、他の座標系を採用したり、本発明を簡単に展開したすることは、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0061】
図面を参照しながら本発明を説明したが、図面に開示された実施形態は、本発明の好ましい実施形態を例にして説明するもので、本発明を限定するものではない。
【0062】
本発明の主旨の一部は、実施形態によって説明されたが、本発明の主旨及び趣旨を逸脱しない限り、これらの実施形態を変更することができることは勿論である。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその同等物によって限定される。
図1
図2
図3
図4
図5