(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013630
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】無指向性円偏波アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/26 20060101AFI20161011BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20161011BHJP
H01Q 21/20 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
H01Q9/26
H01Q21/24
H01Q21/20
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-560797(P2015-560797)
(86)(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公表番号】特表2016-509451(P2016-509451A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】IB2014000501
(87)【国際公開番号】WO2014135970
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2015年11月5日
(31)【優先権主張番号】201310075104.4
(32)【優先日】2013年3月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120363
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 智樹
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】リャオ,シャオウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ニー,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ギャン
【審査官】
佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開平2−19006(JP,A)
【文献】
特開2012−178813(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0002254(US,A1)
【文献】
米国特許第03942180(US,A)
【文献】
特開平07−111418(JP,A)
【文献】
特開平07−038326(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102931479(CN,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0005917(KR,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0023618(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 7/00− 9/46
H01Q 21/00− 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無指向性円偏波アンテナであって、
水平に配置され、同一のスポーク状形状を有する金属ストリップからなる上層および下層であって、前記金属ストリップの前記層はそれぞれ、中心と、前記中心に接続される複数のスポークとから構成され、前記複数のスポークは、前記スポーク状形状の円周位置において、円周に沿って同じ方向に向かって延在する延長部を有し、前記金属ストリップの前記上層および前記下層内の前記スポークの前記延長部の延在方向は反対である、上層および下層と、
前記金属ストリップ内のスポークの数と同じ数を有する金属ポールであって、前記金属ポールは、前記金属ストリップの前記上層および前記下層内の前記スポークの前記延長部の端部を垂直方向に相互接続する、金属ポールと、
細長い内側導体と、外側導体とを備える同軸コネクタであって、前記細長い内側導体は前記金属ストリップの前記上層の前記中心に接続され、前記外側導体は、前記金属ストリップの前記下層の前記中心に接続される、同軸コネクタとを備える、無指向性円偏波アンテナ。
【請求項2】
前記金属ストリップの前記上層および前記下層はそれぞれ、プリント回路基板の上層および下層内に配置される、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記金属ストリップの前記上層および前記下層はプリント回路基板の1つの層内に配置される、請求項1に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記アンテナの動作周波数に応じて、前記細長い内側導体の高さと、前記スポークの数とが調整されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアンテナを備えるワイヤレス通信装置。
【請求項6】
外部広帯域整合回路網をさらに備える、請求項5に記載のワイヤレス通信装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の装置を備える、ワイヤレス通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナの技術分野に関し、特に無指向性円偏波アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年、ワイヤレス通信の技術分野において、屋内ワイヤレスカバレッジが次第にホットスポットになりつつあり、アンテナ技術に関する研究が本業界において特に関心を集めている。
【0003】
最新の研究によれば、直線偏波に比べて円偏波が有利であること、例えば、マルチパスフェージングを除去すること、および偏波方向の影響を受けにくいことに起因して、衛星通信および放送において円偏波アンテナが広く使用されていることが既に指摘されている。さらに、円偏波アンテナは、受信信号対雑音比に及ぼすユーザ端末のアンテナの偏波方向の影響を低減することができるので、円偏波アンテナを用いて屋内カバレッジを強化できることも、最近の研究によってさらにわかっている。
【0004】
しかしながら、既存の円偏波アンテナの大部分は非無指向性であり、例えば、角を切り取ったコーナートランケーテッド(corner−truncated)方形パッチアンテナ、2点/4点給電式パッチアンテナ、スパイラルアンテナなどである。その指向性放射パターンに起因して、これらのアンテナは屋内ワイヤレスカバレッジに適していない。さらに、これらのアンテナは、帯域幅が狭い、および構造が複雑であるという難点がある。
【0005】
FMおよびTV放送帯では、リンデンブラッドおよびサイクロイド(cycloid)ダイポールアンテナのような、幾つかの古典的な無指向性円偏波アンテナがある。しかしながら、これらのアンテナが屋内ワイヤレスカバレッジのために一般的に使用される帯域(0.8GHz〜2.5GHz)まで縮小されても、サイズが大きすぎ、構造が非常に不安定になるので、実用的でなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえ、広軸比帯域幅および単純で安定した構造のような特性を有し、その一方で、屋内ワイヤレスカバレッジを達成するために一般的に使用されるワイヤレス帯域において動作することができる、新たな無指向性円偏波アンテナを提供することが望ましい。
【0007】
従来技術における上記の問題を解決するために、本発明は、給電回路網の一部として垂直ショートダイポールを用いて幾つかの分流導線を励磁する新たな無指向性円偏波アンテナを提供する。導線はダイポールの軸に沿って配置され、合わせてループアンテナを形成する。ダイポールを通って流れる電流、および各導線を通って流れる電流は、半波共振を引き起こす。それゆえ、ダイポールを通って流れる電流、および各導線を通って流れる電流は同相である。ダイポールの高さと、分流導線の本数とを調整することによって、無指向性円偏波放射を可能にするように遠距離場の水平成分および垂直成分を適応させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
具体的には、本発明の一態様によれば、無指向性円偏波アンテナが提供され、そのアンテナは、水平に配置され、同一のスポーク状形状を有する金属ストリップからなる上層および下層であって、各層は中心と、中心に接続される複数のスポークとから構成され、複数のスポークは、スポーク状形状の円周位置において、円周に沿って同一方向に向かって延在する延長部を有し、金属ストリップの上層および下層におけるスポークの延長部の延在方向は反対である、上層および下層と、金属ストリップ上のスポークの数と同じ数を有する金属ポールであって、金属ストリップの上層および下層内のスポークの延長部の端部を垂直方向に相互接続する金属ポールと、細長い内側導体と、外側導体とを備える同軸コネクタであって、細長い内側導体は、金属ストリップの上層の中心に接続され、外側導体は金属ストリップの下層の中心に接続される、同軸コネクタとを備える。
【0009】
好ましくは、アンテナの金属ストリップの上層および下層はそれぞれ、プリント回路基板の上層および下層内に配置される。
【0010】
好ましくは、アンテナの金属ストリップの上層および下層はプリント回路基板の1つの層内に配置される。
【0011】
より好ましくは、アンテナは、その動作周波数に応じて、細長い内側導体の高さと、スポークの数とを調整する。
【0012】
本発明の第2の態様によれば、上記のアンテナのいずれか1つを備えるワイヤレス通信装置が提供される。好ましくは、アンテナの金属ストリップの上層および下層はプリント回路基板の1つの層内に配置される。
【0013】
好ましくは、その装置は、外部広帯域整合回路網をさらに備える。
【0014】
本発明の第3の態様によれば、上記の装置を備えるワイヤレス通信システムが提供される。
【0015】
本発明では、単純で、実用的な設計の屋内カバレッジ用無指向性円偏波アンテナが提案される。従来の無指向性円偏波アンテナと比べて、提案されるアンテナは以下の2つの主な利点を有する。第一に、アンテナ全体が主に、2つのプリント回路基板と、幾つかの金属ポールとに基づいており、その構造は他の円偏波アンテナよりはるかに単純であり、さらに、より高い周波数においては、提案されるアンテナは単一のプリント回路基板上に具現することもでき、本発明において提案される構造は製造しやすくなり、さらに安定する。第二に、本発明により提案される円偏波アンテナの軸比帯域幅は、他の従来の円偏波アンテナよりはるかに広い。
【0016】
本発明の他の特徴、目的および利点は、図を参照しながら非限定的な実施形態の以下の詳細な説明を読むことによって、さらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明による、無指向性円偏波アンテナの一実施形態の斜視図である。
【
図2】本発明による、無指向性円偏波アンテナの一実施形態の側面図である。
【
図3】本発明による、無指向性円偏波アンテナの一実施形態の平面図である。
【
図4】本発明の無指向性円偏波アンテナの一実施形態による、方位角面内の反射減衰量および最大軸比の概略的なグラフである。
【
図5】本発明の無指向性円偏波アンテナの一実施形態による、中心周波数における方位角面および仰角面内の最大軸比の概略的なグラフである。
【
図6a】本発明の無指向性円偏波アンテナの一実施形態による、中心周波数における正規化されたパターンを示す図である。
【
図6b】本発明の無指向性円偏波アンテナの一実施形態による、中心周波数における正規化されたパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
同一または同様の参照番号は、同一の、または類似のステップ、機構または手段/モジュールを表す。
【0019】
好ましい実施形態の以下の詳細な説明において、本発明の一部を形成する添付の図面が参照されることになる。添付の図面は、本発明を実現することができる具体的な実施形態を例示的に示す。例示的な実施形態は、本発明による全ての実施形態を論じ尽すことは意図していない。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が用いられる場合があり、構造的または論理的な修正が加えられる場合があることは理解されよう。それゆえ、以下の詳細な説明は限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定められる。
【0020】
最初に、電磁理論によれば、同じ電流によって励磁される垂直ショートダイポールおよび水平スモールループの遠距離場は互いに垂直であり、かつ90度の位相差を有する。したがって、ダイポールおよびループアンテナの2つの遠距離場を共存させ、励磁振幅を調整することによって、全方向において円偏波放射場を達成することができる。
【0021】
上記の理論に基づいて、本発明の基本的な着想は、ダイポールを給電回路網の一部として用いて、ダイポールの軸に沿って配置され、かつ合わせてループアンテナを形成する幾つかの分流導線を励磁することである。ダイポールおよび各導線に流れる電流は、半波共振を引き起こす。それゆえ、ダイポールに流れる電流と、各ワイヤに流れる電流とは同相である。ダイポールの高さと、分流導線の数とを調整することによって、遠距離場の水平成分および垂直成分を適応させることができ、それにより、無指向性円偏波放射を生成することができる。
【0022】
上記の着想からさらにわかる場合があるように、ダイポールの高さと、分流導線の数とを調整することによって、本発明による無指向性円偏波アンテナは、非常に広い範囲のワイヤレス帯域において動作することができ、典型的には、屋内ワイヤレスカバレッジのために一般的に使用される周波数帯(0.8GHz〜2.5GHz)において動作することができる。しかしながら、本発明によるアンテナは、上記の周波数帯には限定されない。実際には、本発明によるアンテナは、ミリメートル波帯においても適用することができる。それゆえ、以下の記述において規定される周波数は、説明を容易にすることのみを目的としており、本発明の適用シナリオを限定することは意図していない。
【0023】
図1〜
図3は、1.6GHzの周波数帯において動作することができる、本発明による無指向性円偏波アンテナの具体的な実施形態を示す。
【0024】
図に示されるように、その構造全体は、それぞれスポーク状金属ストリップ110、140を有する、プリント回路基板130の2つの層から主に構成される。スポーク状金属ストリップの上層および下層は同じ数のスポークを有し、各スポークの端部は、円周方向に沿って延長部を有し、単一の金属ストリップ層内の延長部は同じ方向を向いており、スポーク状金属ストリップの上層および下層内の延長部は、反対方向を向く。スポーク状金属ストリップ110の上層の中心は、同軸コネクタ150の細長い内側導体120に接続され、スポーク状金属ストリップ140の下層の中心は、同軸コネクタ150の外側導体に接続される。その円周上に位置する幾つかの金属ポール160が、スポーク状金属ストリップの上層および下層内のスポークの延長部の先端を接続する。電流が、同軸コネクタ150の内側導体から、細長い内側導体120、上層のスポーク状金属ストリップ、金属ポール160および下層のスポーク状金属ストリップ140を通って流れ、最終的に、給電用同軸コネクタ150の外側導体に戻る。
【0025】
これらの構造内の電流は、半波共振の状態になるように全て同相である。上層および下層金属ストリップ内の各スポーク対は、金属ポール160によって接続され、ダイポールの軸に沿って配置される上記の幾つかの分流導線のうちの1つを構成する。スポーク状金属ストリップ内の全てのスポークの延長部が連携して、同相励磁を用いて、ループアンテナに相当するアンテナを実現する。各上層および下層スポーク対の径方向部分の電流は同じ振幅であり、かつ方向が反対であるので、スポーク状金属ストリップ内のスポークの径方向部分は、その延長部のための給電用伝送線路としての役割を果たす。この構造は、スモールループアンテナによって生成されるのに類似の遠距離場方向パターンを生成する。同軸コネクタ150の細長い内側導体120は、一方では、ショートダイポールとして動作し、他方では、スポーク状金属ストリップ内のスポークの延長部のための給電構造の一部としても動作する。
【0026】
上記の具体的な実施形態に従って、本発明の有利な効果を試験するために、1.6GHzにおいて動作するアンテナプロトタイプが設計された。その設計の目標は、方位角面において低い軸比を保持し、同時に、インピーダンスおよび軸比帯域幅を最大にすることである。方位角面内の反射減衰量および最大軸比、中心周波数における仰角面および方位角面内の軸比、中心周波数における正規化されたパターンがそれぞれ
図4〜
図6において与えられており、
図6(a)は方位角面を示し、
図6(b)は仰角面を示す。図に示されるように、以下のことが理解できる。
【0027】
(1)−10dBインピーダンス帯域幅が12.2%(1.54GHz〜1.73GHz)であり、3dB軸比帯域幅が95%(0.95GHz〜2.65GHz)であるので、重ね合わせられる全帯域幅はインピーダンス帯域幅のみによって決まる。
【0028】
(2)そのパターンは水平無指向性であり、右旋円偏波(RHCP)である。
【0029】
(3)最大軸比は、中心周波数において、全平面内で−2dB未満である。中心周波数におけるアンテナ利得は1.2dBである。
【0030】
上記のアンテナプロトタイプの試験結果は、本発明による無指向性円偏波アンテナが、単純で、製造するのが容易な構造、かつより小型のサイズで、無指向性円偏波放射場を達成することができ、従来の円偏波アンテナと比べて、広い軸比帯域幅を与えることができることを十分に示す。
【0031】
さらに、本発明による無指向性円偏波アンテナは、その動作周波数に応じて、細長い内側導体120の高さと、スポークの数とを調整して異なる動作周波数を満たすことができ、それにより、ミリメートル波帯を含む、種々のワイヤレス周波数帯において適用することができる。
【0032】
上記の実施形態において、上層および下層の金属ストリップは、2つのプリント回路基板層内にそれぞれ位置することに留意されたい。しかしながら、本発明による無指向性円偏波アンテナが高い周波数において動作するほど、ショートダイポールとしての役割を果たす細長い内側導体120の高さが短くなるので、上層および下層の金属ストリップは、1つのプリント回路基板層内に配置することもできる。
【0033】
それに応じて、本発明は、本発明による無指向性円偏波アンテナを使用するワイヤレス通信装置をさらに提案する。
【0034】
さらに、外部広帯域整合回路網のような、他のインピーダンス帯域幅拡大手法を採用することによって、その装置は帯域幅をさらに拡張することができる。
【0035】
それに応じて、本発明は、本発明による無指向性円偏波アンテナを有する上記のワイヤレス通信装置を含むワイヤレス通信システムをさらに提案する。
【0036】
これまで本発明の実施形態を説明してきたが、本発明は、具体的なシステム、装置および具体的なプロトコルに限定されない。当業者は、添付の特許請求の範囲内で種々の改変および変更を加えることができる。
【0037】
当業者は、説明、図面および添付の1組の請求項の開示を調べることによって、公開された実施形態に対する他の変更を理解し、実施することができる。特許請求の範囲において、「備える、含む(comprise)」という用語は他の要素およびステップを除外せず、「1つの(a)」という用語は複数を除外しない。本発明において、「第1の」および「第2の」は名称を指示するだけであり、順序関係を表さない。本発明の実際の応用形態では、1つの部品が、特許請求の範囲において列挙される複数の技術的特徴の機能を実行する場合がある。特許請求の範囲における任意の参照番号は、本発明の開示の範囲を制限するものと理解されるべきではない。