特許第6013631号(P6013631)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6013631鉱物のX線発光分離のための方法、およびこの方法を実行するためのX線発光ソータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013631
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】鉱物のX線発光分離のための方法、およびこの方法を実行するためのX線発光ソータ
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/62 20060101AFI20161011BHJP
   G01N 23/223 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   G01N21/62 A
   G01N23/223
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-561304(P2015-561304)
(86)(22)【出願日】2013年11月21日
(65)【公表番号】特表2016-514263(P2016-514263A)
(43)【公表日】2016年5月19日
(86)【国際出願番号】RU2013001039
(87)【国際公開番号】WO2014178753
(87)【国際公開日】20141106
【審査請求日】2015年9月8日
(31)【優先権主張番号】2013120814
(32)【優先日】2013年4月29日
(33)【優先権主張国】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】512300104
【氏名又は名称】リサーチ アンド プロダクション エンタープライズ “ボーレヴェストニック”
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】カザコフ、レオニード ヴァシリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】コロソヴァ、ナタリア パヴロヴナ
(72)【発明者】
【氏名】クチン、パヴェル ニコラエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ツヴェトコフ、ウラジーミル イオシフォヴィチ
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−539021(JP,A)
【文献】 特表2013−536420(JP,A)
【文献】 特開2001−013073(JP,A)
【文献】 特表平01−500659(JP,A)
【文献】 米国特許第07763820(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62−21/74
G01N 23/00−23/227
B07C 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鉱物のX線発光分離のための方法であって、
a)分離されるべき材料のフローを搬送する段階と、
b)前記材料の自由落下軌道の指定部分内で複数の励起X線放射パルスのシーケンスにより前記材料を放射し、鉱物発光信号強度の記録の部分との境界までの搬送部分において複数のX線を励起することにより、更に照射する段階と、
c)各シーケンス期間中に前記材料のフローの放射された側および反対側の前記材料の動きの軌道の放射された部分内において、各シーケンス期間中の前記鉱物発光信号強度を記録するが、前記材料のフローの反対側における鉱物発光は、前記材料の自由落下軌道の前記放射された部分内のみで精鉱された前記材料の最大発光強度のスペクトル域において記録される段階と、
d)記録済みの複数の発光信号は、前記材料のフローの前記放射された側において記録された発光信号の遅い成分の強度に対する値が、前記強度に対して指定された閾値を超える場合に、複数の分離パラメータを判断するべく、リアルタイムで処理される段階と、
e)前記材料のフローの前記放射された側において記録された前記発光信号の前記遅い成分の値の、前記材料のフローの前記反対側において記録された前記発光信号の前記遅い成分の値に対する比は、分離パラメータとして更に判断される、前記複数の分離パラメータを算出する段階と、
f)得られた前記複数の分離パラメータを指定閾値と比較する段階と、
g)有用な鉱物は、比較の結果が指定された基準を満たす場合に、分離された前記材料から排出される段階と、
h)前記段階d)において、前記材料のフローの前記放射された側において記録された発光信号の前記遅い成分が前記指定閾値を超えない場合に、前記材料のフロー側の前記反対側において記録された前記発光信号の速い成分の強度の値は、前記強度に対して指定された閾値と比較される段階と、
i)前記材料のフローの前記反対側において記録された前記発光信号の前記速い成分の強度の前記値が、前記強度に対して指定された前記閾値を超える場合に、前記材料のフローの前記放射された側において記録された前記発光信号の前記速い成分の値の、放射と反対のフロー側において記録された前記発光信号の速い成分の値に対する比は、分離パラメータとして判断される段階と、
j)最新の分離パラメータが前記指定閾値を超える場合に、前記有用な鉱物は、分離される前記材料から排出される段階とを備える、方法。
【請求項2】
前記材料のフローの前記放射された側において記録されるべき前記信号の前記遅い成分の強度の値が、前記強度に対して指定された前記閾値を超える前記鉱物発光信号を、複数の分離パラメータとして処理する段階において、複数の発光信号特性は、正規化自動相関関数、前記信号の前記速い成分および前記遅い成分の全強度の、遅い成分の強度に対する比、および励起パルスの終了後の発光減衰時間定数として判断される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
X線発光ソータであって、
分離される材料を搬送するための手段と、
搬送される前記材料の表面上に位置し、搬送するための前記手段から材料が下降する場所付近の材料の自由落下軌道の部分で放射することが可能なパルス励起X線放射源と、
搬送される前記材料の放射される前記表面に対する前記パルス励起X線放射源と同一の側に位置し、放射区域と一致する前記自由落下軌道の部分で搬送される前記材料の発光を記録する区域を組み合わせる可能性を有する発光記録のための写真受信デバイスと、
発光信号強度の複数の閾値および複数の分離パラメータの複数の閾値を設定するためのユニットと、
同期化ユニットと、
複数の分離パラメータを判断し、得られた複数のパラメータ値を対応する複数の指定閾値と比較し、作動装置に対して発行されるべきコマンドを生成するための複数の機能により提供されるデジタル発光信号処理ユニットと、
前記作動装置と、
精鉱された産出物および尾鉱産出物のための受け取りビンとを備え、
前記ソータは、更に、
搬送するための前記手段から前記材料が下降する前に、前記部分における放射を保証するべく、搬送される前記材料の前記表面上に位置する励起X線放射源と、
精鉱されるべき鉱物の発光の最大強度のスペクトル域をろ過するための手段を提供され、分離される前記材料の動きの前記自由落下軌道に対して前記励起X線放射源の反対側に位置し、視界が前記材料の自由落下軌道の放射された部分に制限される可能性を有する写真受信デバイスとを備え、
これにより、前記写真受信デバイスの受信ウィンドウの中心から前記材料の自由落下軌道の前記放射された部分の中間までの距離が次式の関係を満たし、
h=L/2×tg β/2
式中、Lは、前記材料の自由落下軌道の前記放射された部分の最大線形寸法であり、
βは、前記写真受信デバイスの開口部であり、
前記デジタル発光信号処理ユニットは、2つの写真受信デバイスからの複数の発光信号を同時にリアルタイムに処理することが可能であり、前記材料のフローの前記放射された側において記録された前記発光信号の遅い成分の値の、放射と反対の前記フロー側において記録された前記発光信号の前記遅い成分の値に対する比と、前記材料のフローの前記放射された側において記録された前記発光信号の速い成分の値の、放射と反対の前記フロー側において記録された前記発光信号の前記速い成分の値に対する比とを、前記複数の分離パラメータとして判断するための複数の機能を更に提供される、ソータ。
【請求項4】
追加の前記励起X線放射源は、パルスX線放射生成器の形態で作製される、請求項3に記載のソータ。
【請求項5】
追加の前記励起X線放射源は、一定のX線放射生成器の形態で作製される、請求項3または4に記載のソータ。
【請求項6】
前記写真受信デバイスの前記スペクトル域をろ過するための前記手段は、差動光フィルタの形態で作製される、請求項3から5のいずれか1項に記載のソータ。
【請求項7】
分離される前記材料の動きの軌道に対する前記励起X線放射源の反対側に位置する前記写真受信デバイスの前記視界は、相互配置により前記写真受信デバイスと結合された前記ソータの複数の構造要素により、放射の部分と一致する前記材料の自由落下軌道の部分に制限され得る、請求項3から6のいずれか1項に記載のソータ。
【請求項8】
材料のフローの動きの方向における前記写真受信デバイスの前記視界は、分離される前記材料を搬送するための前記手段の縁部付近の1つの側と、光放射のために不透明なスクリーン付近の他の側に制限され、前記材料の自由落下軌道に対して横方向の前記励起X線放射源の反対側に設置される、請求項7に記載のソータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱物加工の分野に関し、より具体的には、励起放射の作用下で発光性の複数の鉱物を含む、破砕済みの採掘材料を精鉱されるべき産出物および尾鉱産出物に分離することに関する。本発明は、全ての選鉱段階における複数のX線発光ソータ、およびダイアモンド産出原材料試験等の複数の産出物検査デバイスの双方において実装され得る。
【背景技術】
【0002】
電磁放射の作用下において生じる発光の記録済み信号の解析に基づいて、様々な鉱物のバルク混合物を、精鉱済み産出物および尾鉱産出物に分離する複数の従来の方法が存在する。
【0003】
例えば、複数の鉱物の記録済み熱発光放射の複数のスペクトル特性の解析に基づいて、タイプ、具体的にはタイプIもしくはIIに分離することにより、他の複数の鉱物を伴うダイアモンドの混合物と、ダイアモンドの混合物からダイアモンドを選別するための方法が既知である(イギリス特許第1379923号、B07C5/342、1975年1月8日;イギリス特許第1384813号、B07C5/34、1975年2月26日)。この方法において、運搬された鉱物混合物は、ガンマ源(Со60アイソトープ)からの励起放射、X線もしくは紫外線放射により、まず放射され、複数の鉱物中に生じる発光の終了後、次の搬送部分において、混合物は加熱され、これにより記録され、回析格子スペクトルデバイスにより解析される、複数の鉱物の熱発光が生じる。ダイアモンドは、記録されたスペクトル特性における複数の差異に基づいて選別される。
【0004】
この方法は、鉱物分離の十分に高い選択性を特徴とする。
【0005】
しかし、この方法は、複数の特性の記録および解析に極めて多くの時間(最大数百ミリ秒)を必要とするので、どちらかといえば低い生産性を有する。従って、採掘加工工場の状況下で用いることには、極めて限界がある。更に、この方法を実装するには、放射能源(Со60アイソトープ)および十分に高い解像度を有する分光計を用いることが好ましい。
【0006】
また、鉱物発光の積分信号の記録に対するスペクトル域の選択に基づいた、複数の鉱物のX線発光分離のための方法が既知であり、これは、分離尾鉱産出物における鉱物発光の最小分光濃度領域において実行される(ロシア特許第2334557号、С2,В03В13/06,B07C5/342、2008年9月27日)。
【0007】
この方法は、十分に高い鉱物分離の選択性を有する。
【0008】
しかし、高い生産能力(100トン/時間)および中位の生産能力(10トン/時間)を有する複数のソータを用い、特に、弱く発光する複数のダイアモンドを抽出するには、その感度は、十分に高くない。鉱物発光のそのようなスペクトルろ過においては、精鉱されるべき鉱物(ダイアモンド)の放射の記録済み強度が半分に低下するからである。
【0009】
また、電磁放射の作用下で生じる発光の記録済み信号を解析するときに、X線の吸収係数、およびダイアモンドと関連する鉱物との間の複数の光放射における差異の使用に基づいて、様々な鉱物のバルク混合物を分離するための複数の方法が既知である。
【0010】
例えば、単層のフローにより鉱物を搬送する段階と、発光を励起する透過性放射線により複数の鉱物を放射する段階と、透過性放射線側の発光強度を記録する段階と、その反対側において、透過性放射線の透明度により有用な鉱物の透明度および分離を判断する段階からなる鉱物分離方法が既知である(ロシア特許第2303495号、C2,В07С5/342、2007年7月27日)。励起X線放射のための鉱物の透明度は、透過性放射線流束の側および反対側で記録された複数の発光強度の対数の差異、またはこれらの強度の比の対数により判断され得る。
【0011】
そのような鉱物分離方法を用いて、全てのタイプのダイアモンドを検出することが可能である。
【0012】
しかし、その選択性は、十分に高くない。この方法の分離パラメータが鉱物の光学的特性を考慮しておらず、鉱物の線形寸法(厚さ)に依存し、これは、分離される材料の粒度クラス内の拡散のみならず、記録の時点における励起放射の効果の方向に対する、不規則に形作られた複数の鉱物物体の位置における差異ゆえに著しく異なるからである。更に、この方法は、特に、強度の発光を有する関連する鉱物の発光信号間において、弱く発光するダイアモンドの信頼性のある識別を可能にしない。自然なノイズレベルに近い複数の弱い信号に対する高い増幅係数を有する発光信号処理ユニットにおいて対数増幅器を用いることは、複数の重大なエラーをもたらすからである。
【0013】
一定の期間中に記録された実際の鉱物発光信号は、複数の動力学的特性を有し、2つの成分の重層(重複)とみなされ得る。一般に、そのような信号は、一時的または速い発光成分(「FC」)を含み得、FCは、励起放射への曝露の開始と共に事実上同時に(数マイクロ秒の間隔で)生じ、終了後には直ちに存在しなくなる。永続的または遅い発光成分(「SC」)の強度は、励起放射への曝露中に継続して上昇し、終了後(発光残光期間)には比較的緩慢に(数百マイクロ秒〜ミリ秒の単位)低下する。
【0014】
分離される材料の単層フローの形態で鉱物を搬送する段階と、透過性放射線によりこの材料を放射する段階と、透過性放射線の入射光束に対する鈍角もしくは平角において、重複する複数の放射区域における一時的および永続的鉱物の発光成分の強度を記録し、永続的発光成分のみの強度を記録し、空気発光の強度を記録し、後者は、分離されるべき材料のフローの幅に対して記録される段階と、記録された鉱物発光強度に対する指定閾値であって、空気発光信号の強度に比例する閾値との比較結果に応じて有用な鉱物を分離する段階とを備えた鉱物分離方法が既知である(ロシア特許第2310523号、C2,В07С5/342、2007年11月20日)。
【0015】
この方法は、複数の鉱物分離パラメータとして、X線の吸収、およびダイアモンドと関連する鉱物との間の光放射における差異のみならず、励起放射の存在下および不存在下の双方の場合に記録される鉱物発光信号の複数の動力学的特性も用いる可能性により、分離の選択性を向上させることを可能にする。
【0016】
しかし、不十分な感度ゆえに、この方法は、弱く発光する複数のダイアモンドの信号、特に、強度の発光を有するいくつかの関連する鉱物の発光信号間の信頼性のある識別を提供しない。
【0017】
本発明のX線発光性鉱物分離方法に最も近い類似物は、分離されるべき材料のフローを搬送する段階と、材料の動きの軌道における指定部分内で複数の励起X線放射パルスのシーケンスによりこの材料を放射する段階と、放射される材料の動きの軌道部分内で各シーケンス期間中に鉱物発光信号の強度を記録する段階と、複数の分離パラメータを判断するための記録済み信号の複数の動力学的成分の各々に対する複数の指定状況に応じてリアルタイムに処理する段階と、得られた複数のパラメータを複数の指定閾値と比較する段階と、比較の複数の結果に応じて搬送される材料のフローから、精鉱されるべき鉱物を分離する段階とを備える方法である(ロシア特許第2437725号、C1,В07С 5/00、2011年12月27日)。記録された信号の処理において、まず、励起パルスの終了後に指定された期間における発光信号強度値が判断され、得られた値は、それに対して指定された閾値と比較される。閾値を超える場合に、選択された分離基準の値を判断するべく、信号処理が実行され、処理の結果は、分離基準の指定閾値と比較され、比較の結果が指定された基準を満たす場合に、精鉱されるべき鉱物は、分離される材料から抽出される。得られた発光信号強度値が、励起パルスの終了後の指定された期間における閾値よりも小さい場合、励起放射パルス中に生じた発光信号強度値が判断され、それに対して指定された閾値と比較され、閾値を超える場合に、精鉱されるべき鉱物は、分離される材料から抽出される。
【0018】
そのような鉱物分離方法は、十分に高い選択性をもって、分離される材料のフローから精鉱されるべき全てのタイプの発光性鉱物を抽出する段階を提供する。この方法は、複数の分離基準パラメータとして、鉱物材料の励起放射への曝露中、およびその後(残光期間中)に記録された発光信号の動力学的特性間の様々な関係を用いるからである。
【0019】
しかし、遅い成分の発光の強度が閾値より小さい複数の弱発光性材料、例えば、タイプIIのダイアモンドの回収は、十分に高くない選択性を有する。これは、鉱物発光信号の速い成分の記録における不十分な感度に起因する。光信号の高い強度の複数の変動(1.5V〜10V)が、空気、様々な蒸気、岩石および関連する複数の鉱物の粒子の発光により生成され、これらは放射中に有用な鉱物の発光信号と共に記録されるからである。
【0020】
また、上記の複数の鉱物分離方法のある方法または別の方法が実装され得るX線発光ソータが既知である。
【0021】
例えば、分離される材料を搬送するための手段と、透過性放射線源の反対側で分離される材料の動きの軌道に対して設置された写真受信デバイスと、鉱物発光信号処理ユニットと、空気発光信号の振幅記録・格納ユニットと、作動装置とを備えるX線発光ソータが既知である(ロシア特許第2310523号、C2,В07С5/342、2007年11月20日)。透過性放射線源は、放射領域の幅が分離される材料のフローの幅を超えるように設置される。写真受信デバイスは、鉱物発光信号処理ユニットの第1の入力部および空気発光信号処理・格納ユニットの入力部に接続され、空気発光信号処理・格納ユニットの出力部は、鉱物発光信号処理ユニットの第2の入力部に接続される。鉱物発光信号処理ユニットの出力部は、作動装置に接続される。
【0022】
ソータは、分離の選択性の向上を可能にする。透過性放射線源の反対側の写真受信デバイスの位置(透過性放射線の入射光束に対する鈍角または平角における)は、記録される発光強度に対する関連する複数の鉱物の発光の寄与を低減するべく、X線の吸収、およびダイアモンドと関連する鉱物との間の光放射における複数の差異を用いることを可能にする。
【0023】
しかし、そのようなソータは、弱く発光する複数のダイアモンドの信号、特に、強度の発光を有するいくつかの関連する鉱物の発光信号間の信頼性のある識別には不十分な感度を有する。これは、写真受信デバイスにより記録されるべき空気発光信号が、増大した発光量に起因する十分に高い強度を有し、これによりの識別基準としての分離閾値の増大をもたらすという事実により生じる。
【0024】
分離される材料を搬送するための手段と、X線放射パルス源と、1つは、搬送される材料の放射される表面に対するX線放射パルス源と同一の側に位置し、別のものは、分離される材料の動きの軌道に対する反対側に位置する2つの写真受信デバイスと、デジタル発光信号処理ユニットと、作動装置と、尾鉱産出物および精鉱済み産出物のための複数の受け取りビンを備えるX線発光ソータが、既知である。(ロシア特許第2303495号、C2,В07С5/342、2007年7月27日)。デジタル発光信号処理ユニットは、2つの写真受信デバイスからの複数の信号の対数増幅、分離基準として判断されるべき差動(差異)増幅、得られた基準値の指定閾値との比較、および作動装置に対して発行されるコマンドの生成のための複数の機能を提供される。
【0025】
そのようなソータにおいて、全てのタイプのダイアモンドが検出され得る。
【0026】
しかし、その選択性は、十分に高くない。判断される分離基準が鉱物の寸法(厚さ)に依存し、これは、分離される材料の粒度クラス内の拡散のみならず、記録の時点における一次X線放射の方向に対する、不規則に形作られた鉱物の位置における複数の差異ゆえに著しく異なるからである。更に、そのようなソータは、複数の弱発光ダイアモンドの信号、特に、強度の発光を有するいくつかの関連する鉱物の発光信号間の信頼性のある識別を提供しない。自然なノイズレベルに近い弱い発光信号に対する信号処理ユニットの対数増幅器の非常に高い増幅係数は、複数の重大なエラーをもたらすからである。
【0027】
分離される材料を搬送するための手段と、分離される材料の表面上に位置し、搬送するための手段からの下降の場所付近の材料の自由落下軌道の部分で放射する可能性を有するパルス励起X線放射源と、放射区域と一致する自由落下軌道の部分で搬送される材料の発光を記録する区域を組み合わせる可能性を有し、搬送される材料の放射される表面に対してパルス励起X線放射源として同一の側に位置する発光記録のための写真受信デバイスと、発光信号強度の閾値および複数の分離パラメータの閾値(基準)を設定するための電子ユニットと、同期化ユニットと、複数の分離パラメータを判断し、得られた複数のパラメータ値を対応する複数の指定閾値と比較し、作動装置に対して発行されるべきコマンドを生成するための複数の機能を提供されるデジタル発光信号処理ユニットと、作動装置と、精鉱済み産出物および尾鉱産出物のための複数の受け取りビンとを備えるX線発光ソータが既知であり、我々は、プロトタイプと捉えている(ロシア特許第2437725号、C2,В07С5/00、2011年12月27日)。写真受信デバイスは、様々な増幅係数を用いて記録される信号を同時に増幅することが可能である。複数の分離パラメータ(有用な鉱物識別基準)として、デジタル発光信号処理ユニットは、そのような複数の発光信号特性の値を、正規化自動相関関数、遅い成分の強度に対する速い信号成分および遅い信号成分の比、励起パルスの終了後の発光減衰時間定数、ならびに速い発光信号成分の強度の値として判断することが可能である。
【0028】
そのようなソータは、十分に高い選択性をもって分離される材料のフローから精鉱されるべき全てのタイプの鉱物の抽出を提供する。ソータが、複数の分離パラメータとして、励起放射に対する鉱物材料の曝露中およびその後(残光期間中)に記録された発光信号の複数の動力学的特性の様々な比を用いるからである。
【0029】
しかし、遅い成分の発光の強度が閾値よりも小さい、発光の低いレベルを有する複数の鉱物を抽出する場合、例えば、タイプIIのダイアモンドでは、選択性は十分に高くならない。これは、写真受信デバイスが、X線パルス放射の効果がある間に生じる発光の全強度の信号を記録するという事実により生じる。この信号は、鉱物発光の速い成分の強度と、空気発光、様々な蒸気、岩石の粒子、および関連する鉱物の強度の双方を含む。この光信号の強度は、高い変動(1.5V〜10V)を有し、この変動は、発光信号の速い成分の強度に対する比較的高い閾値を判断する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明の非常に重要な目的は、鉱物発光の速い成分に対する記録感度の向上により、分離される材料から精鉱されるべき複数の鉱物をより良好に選択的に抽出することである。本発明の別の目的は、抽出により、複数のタイプに応じて精鉱される複数の鉱物の分離を提供することである。例えば、このコンセプトは、任意の複数の選鉱段階、特に、一次精鉱段階において、ソータの高い生産能力(最大100t/h)により複数のダイアモンドを、タイプIのダイアモンドおよびタイプIIのダイアモンドに選別することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明において、
a)分離されるべき材料のフローを搬送する段階と、
b)材料の自由落下軌道の指定部分内で複数の励起X線放射パルスのシーケンスにより材料を放射し、鉱物発光信号強度の記録の部分との境界までの搬送部分において複数のX線を励起することにより、更に照射する段階と、
c)各シーケンス期間中に材料のフローの放射された側および反対側の材料の動きの軌道の放射された部分内において、各シーケンス期間中の鉱物発光信号強度を記録するが、材料のフローの反対側における鉱物発光は、材料の自由落下軌道の放射された部分内のみで精鉱された材料の最大発光強度のスペクトル域において記録される段階と、
d)記録済みの複数の発光信号は、材料のフローの放射された側において記録された発光信号の遅い成分の強度に対する値が、強度に対して指定された閾値を超える場合に、複数の分離パラメータを判断するべく、リアルタイムで処理される段階と、
e)材料のフローの放射された側において記録された発光信号の遅い成分の値の、材料のフローの反対側において記録された発光信号の遅い成分の値に対する比は、分離パラメータとして更に判断される、複数の分離パラメータを算出する段階と、
f)得られた複数のパラメータを複数の指定閾値と比較する段階と、
g)有用な鉱物は、比較の結果が指定された基準を満たす場合に、分離された材料から排出される段階と、
h)段階d)において、材料のフローの放射された側において記録された発光信号の遅い成分が指定閾値を超えない場合に、材料のフロー側の反対側において記録された発光信号の速い成分の強度の値は、強度に対して指定された閾値と比較される段階と、
i)材料のフローの反対側において記録された発光信号の速い成分の強度の値が、強度に対して指定された閾値を超える場合に、材料のフローの放射された側において記録された発光信号の速い成分の値の、放射と反対のフロー側において記録された発光信号の速い成分の値に対する比は、分離パラメータとして判断される段階と、
j)最新の分離パラメータが指定閾値を超え場合に、有用な鉱物は、分離される材料から排出される段階とを備える、複数の鉱物のX線発光分離の方法が提供される。
【0032】
従来の方法とは別に、複数の鉱物のX線発光分離のための提案される方法において、搬送される材料は、鉱物発光信号強度の記録の部分との境界までの搬送部分においてX線放射を励起することにより更に放射され、鉱物発光信号強度の複数の値は、各シーケンス期間中に放射された側、および材料のフローの反対側において同時に記録され、材料のフローの反対側の複数の鉱物発光信号は、材料の自由落下軌道の放射された部分内のみで精鉱される材料の最大発光強度のスペクトル域で記録され、記録された複数の発光信号は、材料のフローの放射された側において記録された発光信号の遅い成分の強度に対する値が、それに対して指定された閾値を超える場合に、複数の分離パラメータを判断するべく処理され、材料のフローの放射された側において記録された発光信号の遅い成分に対する値の、フローの反対側において記録された発光信号の遅い成分に対する値の比は、分離パラメータとして更に判断され、各発光信号の処理の結果は、複数の分離パラメータの複数の指定閾値と比較され、精鉱されるべき鉱物は、比較の結果が指定された基準を満たす場合に、分離される材料から隔離され、そうでなければ、記録済みの複数の発光信号は、材料のフロー側の反対側において記録された発光信号の速い成分の強度に対する値が、それに対して指定された閾値を超える場合に処理され、材料のフローの放射された側において記録された発光信号の速い成分に対する値の、放射と反対のフロー側において記録された発光信号の速い成分の値に対する比は、分離パラメータとして判断され、処理の結果は、分離パラメータの指定閾値と比較され、精鉱されるべき鉱物は、比較の結果が指定された基準を満たす場合に、分離される材料から隔離される。
【0033】
材料のフローの放射された側において記録される信号の遅い成分の強度の値が、それに対して指定された閾値を超える複数の鉱物発光信号を、複数の分離パラメータとして処理する場合において、そのような複数の発光信号特性を、正規化自動相関関数、信号の速い成分および遅い成分の全強度の、遅い成分の強度に対する比、および励起パルスの終了後の発光減衰時間定数として判断することが可能である。
【0034】
また、技術的結果の実現は、提案されるX線発光ソータにより提供され、ソータは、分離される材料を搬送するための手段と、搬送される材料の表面上に位置し、搬送するための手段から材料が下降する場所付近の材料の自由落下軌道の部分で放射することが可能なパルス励起X線放射源と、搬送される材料の放射される表面に対するパルス励起X線放射源と同一の側に位置し、放射区域と一致する自由落下軌道の部分で搬送される材料の発光を記録する区域を組み合わせる可能性を有する発光記録のための写真受信デバイスと、発光信号強度の複数の閾値および複数の分離パラメータの複数の閾値を設定するための手段と、同期化ユニットと、複数の分離パラメータを判断し、得られた複数のパラメータ値を対応する複数の指定閾値と比較し、作動装置に対して発行されるべきコマンドを生成するための複数の機能により提供されるデジタル発光信号処理ユニットと、作動装置と、精鉱された産出物および尾鉱産出物のための受け取り容器を備え、ソータは、更に、搬送するための手段から材料が下降する前の部分における放射を保証するべく、搬送される材料の表面上に位置する励起X線放射源と、精鉱されるべき鉱物の発光の最大強度のスペクトル域をろ過するための手段を提供され、分離される材料の動きの自由落下軌道に対して励起X線放射源の反対側に位置し、視界が材料の自由落下軌道の放射された部分に限定される可能性を有する写真受信デバイスとを備え、これにより、写真受信デバイスの受信ウィンドウの中心から材料の自由落下軌道の放射された部分の中間までの距離が次式の関係を満たし、
h=L/2×tg β/2
式中、Lは、材料の自由落下軌道の放射された部分の最大線形寸法であり、
βは、写真受信デバイスの開口部であり、
デジタル発光信号処理ユニットは、少なくとも2つの写真受信デバイスからの複数の発光信号を同時にリアルタイムに処理することが可能であり、材料のフローの放射された側において記録された発光信号の遅い成分の値の、放射と反対のフロー側において記録された発光信号の遅い成分の値に対する比と、材料のフローの放射された側において記録された発光信号の速い成分の値の、放射と反対のフロー側において記録された発光信号の速い成分の値に対する比とを、複数の分離パラメータとして判断するための複数の機能を更に提供される。
【0035】
従来のソータとは別に、本ソータは、更に、搬送するための手段から材料が下降する前の部分における放射を保証するべく、搬送される材料の表面上に位置する励起X線放射源と、精鉱されるべき鉱物の発光の最大強度のスペクトル域をろ過するための手段を提供され、分離される材料の動きの自由落下軌道に対して励起X線放射源の反対側に位置し、視界が材料の自由落下軌道の放射された部分に制限される可能性を有する写真受信デバイスとを備え、従って、写真受信デバイスの受信ウィンドウの中心から材料の自由落下軌道の放射された部分の中間までの距離が次式の関係を満たし、
h=L/2×tg β/2
式中、Lは、材料の自由落下軌道の放射された部分の最大線形寸法であり、
βは、写真受信デバイスの開口部であり、
デジタル発光信号処理ユニットは、2つの写真受信デバイスからの複数の発光信号を同時にリアルタイムに処理することが可能であり、材料のフローの放射された側において記録された発光信号の遅い成分の値の、放射と反対のフロー側において記録された発光信号の遅い成分の値に対する比と、材料のフローの放射された側において記録された発光信号の速い成分の値の、放射と反対のフロー側において記録された発光信号の速い成分の値に対する比とを、複数の分離パラメータとして判断するための複数の機能を更に提供される。
【0036】
励起X線放射の追加の源は、パルスX線放射生成器の形態または一定のX線放射生成器の形態で作製され得る。
【0037】
写真受信デバイスのスペクトル域をろ過するための手段は、差動光フィルタの形態で作製され得る。
【0038】
分離される材料の動きの軌道に対する励起X線放射源の反対側に位置する写真受信デバイスの視界は、相互配置により写真受信デバイスと結合されたソータの複数の構造要素により、放射の部分と一致する材料の自由落下軌道の部分に制限され得る。
【0039】
材料のフローの動きの方向における写真受信デバイスの視界は、分離される材料を搬送するための手段の縁部付近の1つの側と、光放射のために不透明なスクリーン付近の他の側に限定され、材料の自由落下軌道に対して横方向の励起X線放射源の反対側に設置される。
【0040】
本発明において提案される顕著な特徴および限定的特徴の組み合わせは、発明者に既知の文献には記載されていないので、「新規性」基準を満たす。
【0041】
提案される本発明における顕著な複数の特徴および複数の限定的特徴との相互関係の組み合わせは、技術的矛盾を解決することを可能にする。すなわち、記録される発光信号の強度の増大は、より良好な感度を保証し、それにより抽出の選択性を改善する。しかし、これは、X線放射パルスへの曝露中に記録される全ての鉱物および空気からの光信号の強度を増大させ、これにより、発光信号の速い成分に対する感度の低下、および精鉱される材料の抽出の選択性の減少をもたらす。本発明において提案される複数の操作の組み合わせは、変動の低減による信号/ノイズ比の増大、および空気、様々な蒸気、および岩石粒子により生成され、放射中に記録された光信号の強度レベルの低下として、(発光信号の速い成分に対する)X線放射パルスの効果がある間に記録の感度を向上させることを可能にする。提案される複数の操作の組み合わせおよびシーケンスは、放射と相互作用する間に、精鉱される鉱物のみならず、構造および元素組成等の分離される材料全体に関係する自然の独自性の様々な兆候を考慮することを可能にする。そのような複数の独自性を識別および考慮することは、本発明において提案される鉱物分離基準にとり決定的である。本方法を実装するべく提案されるX線発光ソータは、技術的結果の実現を完全に保証する。従って、提案される複数の技術的解決法は、「発明の進歩性」基準を満たす。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1A】遅い成分が集中する、複数の記録済みの鉱物発光信号のタイミング図を示す。
図1B】遅い成分の強度が顕著でない、複数の記録済みの鉱物発光信号のタイミング図を示す。
図2】提案される方法を実装するためのX線発光ソータの複数の実施形態のうち概略的なものを示す。
図2A】分離される材料の自由落下部分における放射/記録の区域の複数のソータ要素の概略的な相互配置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
[産業上の利用可能性] 複数の鉱物のX線発光分離のための提案される方法の実装は、以下のように実行される。分離される材料は、基板上に搬送され、単層のフローの形態での移動を保証する。この材料のフローは、励起X線放射により放射され、基板の放射された部分上で材料を搬送する期間中に、精鉱される鉱物の複数の原子の永続的(準安定的)な複数の状態での十分な占有を保証する。結果として、許された複数の原子遷移から、空気および複数の鉱物の発光が生じる。材料のフローが搬送基板から下降すると、材料の自由落下軌道の指定部分内において励起X線放射のパルスtのシーケンスにより放射される。この部分の長さは、材料搬送速度、反復頻度、持続時間、およびX線放射パルスの強度を考慮して選択され、その部分の幅は、分離される材料の入射フローの幅により限定される。X線放射のパルスtへの鉱物曝露の結果として(図1A、B)、発光が生じ、その強度が複数の鉱物原資において可能とされる複数の遷移の対応レベルの直接の逆占有のみならず、放射のパルスtの促進作用下でのみならず、先に占有された準安定な複数の原子状態から可能にされた状態への放射されない複数の遷移によっても提供される付加的占有提供される付加的占有が生じることが明らかである。材料が軌道の放射された部分を通る期間中、鉱物発光の信号U(t)の遅い成分(SC)は、かろうじて閃光する。鉱物発光の信号の強度U=f(t)は、各パルスシーケンス期間T(図1A、B)の間に、材料のフローの放射された側Uirr(t)(図1A、B)および反対側Uopp(t)(図1A、B)において同時に記録される。これを行うときに、信号Uopp(t)の強度は、精鉱される鉱物の最も強い複数のスペクトル線が位置する周波帯で記録され、記録中に観察されるグローの領域は、材料の自由落下軌道の部分の複数の寸法により限定される。記録される発光信号Uirr(t)およびUopp(t)(図1A、B)は、発光信号の速い成分(FC)および遅い成分(SC)の蓄積部分Т、ならびに遅い成分(SC)(図1A、B)の減衰部分Тの双方を含み得る。記録される信号Uirr(t)およびUopp(t)は、発光信号のFCおよび、おそらくはSCの蓄積部分Тを含み得るが、事実上、SCの減衰部分Тを含むことができない(図1A、B)。記録される全ての信号Uirr(t)およびUopp(t)は、指定された複数の分離パラメータの各々の値を判断するべく、リアルタイムで処理されることになる。信号Uirr(t)およびUopp(t)が発光SC(図1A)を有する場合、励起放射のパルスtの終了後の時間tscの指定された時点で記録された信号Uscirr(tsc)の強度の値は、それに対して指定された閾値Uscと比較される。この値を超える場合(Uscirr(tsc)>Usc)(図1A)、信号Uirr(t)およびUopp(t)は、分離パラメータとして、材料のフローの放射された側において記録された発光信号Uscirr(tsc)のSCの値の、放射と反対の材料のフロー側において記録された発光信号Uscopp(tsc)のSCの値に対する比(Uscirr(tsc)/Uscopp(tsc))、ならびに、所与の場合の複数の分離パラメータとして指定された信号Uirr(t)の複数の動力学的特性の値、例えば、
次式により決定され、
【数1】
式中、Tは、重畳パラメータである、正規化自動相関関数(NCF)、
励起放射のパルスtの効果の期間中における発光信号Uscirr(t)の速い成分および遅い成分の全強度の、時間tscの指定された時点における遅い成分の強度Uscirr(tsc)に対する比(Uscirr(t)/Uscirr(tsc))、
次式により数学的に決定され得、
F(t)=Fexp(−t/(τ)
式中、Fは、発光減衰領域(t>t)におけるべき指数の初期値である、励起パルス(τ)の終了後の発光減衰時間定数を得るべく、更なる処理を受ける。
【0044】
得られた複数の分離基準パラメータの値は、これらのパラメータの複数の指定閾値と比較され、分離基準条件が満たされる場合に、精鉱されるべき鉱物は、分離される材料から抽出される。そのような場合に、精鉱されるべき鉱物の抽出における高い選択性が実現される。記録済みの複数の鉱物発光信号Uirr(t)およびUopp(t)、特に弱く発光するものの強度の増大が、複数の動力学的特性の識別、具体的には、SC(Uscirr(tsc)およびUscopp(tsc))の存在の検出、ならびに選択された複数の分離基準パラメータに対する精鉱される鉱物への適合についての解析(処理)の実効を可能にするからである。これにより、複数の発光鉱物の信号Uirr(t)およびUopp(t)の動力学的特性、およびスペクトル特性、ならびにX線および複数の光放射線に対する発光鉱物の透明性を総合的に考慮する。分離の感度(閾値Usc)は、精鉱される鉱物に典型的な時間tscの指定された時点における信号Uscirr(tsc)の最小値により判断される。得られた信号Uscirr(tsc)の値がUsc(Uscirr(tsc)≦Usc)の値を超えない場合(図1B)、発光信号FC Ufcopp(t)の強度が判断され、これは、励起放射パルスの作用の効果がある時間tで生じ、材料のフロー放射側の反対側において記録される。得られた値Ufcopp(t)は、それに対して指定された閾値Ufcと比較される(図1B)。この値を超える場合(Ufcopp(t)>Ufc)、材料のフローの放射された側において記録されたUfcirr(t)の発光信号FC値の、材料のフロー放射の反対側において記録された発光信号FC値Ufcopp(t)に対する値の比は、分離パラメータとして判断される。得られた分離パラメータの値Ufcirr(t)/Ufcopp(t)は、それに対して指定された閾値と比較され、精鉱されるべき鉱物は、複数の分離基準条件が満たされると、分離される材料から抽出される。この場合、精鉱されるべき鉱物の抽出の選択性も、記録感度の向上により改善される。分離の感度(Ufcの閾値)は、X線放射パルスの効果の時間tの間の信号Ufcopp(t)の最小値により判断され、これは、X線および光学距離において非発光性および不透明であり、制限記録領域内に位置する材料の複数の粒子および関連する複数の鉱物によるこの光信号の遮蔽に起因すると共に、記録される信号Ufcopp(t)のスペクトルの選択性に起因して、放射時間t中に記録される空気、様々な蒸気、および岩石粒子により生成される光信号の変動における減少およびより低いレベルの強度により保証され、これにより3÷10回による記録の感度の増大を可能にする。従って、提案される方法は、放射と相互作用する間に、精鉱される材料のみならず、構造および元素組成等の分離される材料全体の性質の独自性の様々な兆候を考慮する。
【0045】
[本発明の好ましい実施形態]
上述の方法の詳細な実装は、本発明において提案されるX線発光ソータの操作例により説明される。
【0046】
提案される方法が実装されるソータ(図2)は、分離される材料2を搬送するための手段1と、励起X線放射源3および4と、写真受信鉱物発光デバイス5および6と、発光信号Uirr(t)およびUopp(t)のデジタル処理のためのユニット7と、発光信号Uscirr(tsc)およびUfcopp(t)の強度であるUscおよびUfcの閾値のそれぞれ、ならびに指定される複数の分離パラメータの閾値を設定するための手段8と、同期化ユニット9と、作動装置10と、精鉱される鉱物および尾鉱産出物に対するそれぞれの受け取りビン11および12とを含む。搬送のための手段1は、スローピングシュートの形態で作製され、要求される速度で(例えば、1〜3m/sの範囲内の速度で)、放射、記録、および分離(切断)の複数の区域を通って分離される材料2のフローを搬送するように設計されている。源3および4は、X線放射生成器の形態で作製され、分離される材料2のフローに対する放射のために設計される。写真受信デバイス(PRD)5および6は、鉱物発光を、電気信号Uirr(t)およびUopp(t)にそれぞれ変換するように設計される。信号U(t)のデジタル処理のためのユニット7は、PRD5および6からの信号Uirr(t)およびUopp(t)をそれぞれ処理し、指定された複数の分離パラメータの複数の値を判断し、得られた複数のパラメータ値を対応する複数の指定閾値と比較し、作動装置10へのコマンドを生成し、比較の結果に応じて、精鉱される鉱物を分離するように設計される。ユニット9は、ソータに含まれる複数のアセンブリおよびユニットの要求される操作シーケンスを同期化するように設計される。源3は、シュート1上に位置し、シュート1上の材料2のフローを放射するように設計される。源3は、X線放射生成器の形態または一定のX線放射生成器の形態で作製され得る。源4は、複数のX線パルスの連続したシーケンスを生成する生成器の形態で作製され、分離される材料2のフロー上に位置する。源4は、シュート1から下降する場所付近の材料2の自由落下軌道の部分のフロー2を放射するように設計される。PRD5およびPRD6は、源4により放射されるフロー2の表面に対する異なる側に設置される。PRD5は、放射領域(励起/記録区域)に一致する、自由落下軌道の部分からの発光を記録するべく、源4により放射されるフロー2の表面上に設置される。PRD6は、源4(励起/記録区域)により放射される材料2の自由落下軌道の部分に、視界が制限される可能性を有するフロー2の放射される表面の反対側に設置される。源4により放射される、PRD6の受信ウィンドウの中央から材料2の自由落下軌道の部分の中間までの距離hは、以下の関係式により判断され得る。 h=L/2×tgβ/2
式中、Lは、材料の自由落下軌道の放射された部分の最大線形寸法であり、
βは、写真受信デバイスの開口部である。
【0047】
PRD6の視界(図2図2A)は、一方の側でシュート1の縁部により、他方の側で光放射のために不透明な材料で作製された遮蔽13により、フロー2の動きの方向に制限される。PRD6は、差動フィルタの形態で作製された、精鉱される材料の発光の最大強度のスペクトル域をろ過するための手段14を提供される。精鉱される鉱物のための受け取り容器11は、例えば、異なるタイプの複数の鉱物を別々に収集するための仕切りを用いて分離された2つのチャンバの形態で作製され得る。
【0048】
ソータ(図2)は、以下のように機能する。分離されるべき材料2を給送する前に、同期化ユニット9が起動し、複数のX線源3および4、ならびにデジタル処理ユニット7に、発光SCの励起に十分な持続時間(例えば、4msの期間で0.5ms)を有する励起パルスを発する。設定デバイス8により、閾値UscおよびUfcの数値、ならびに複数の分離基準パラメータに対する閾値の数値は、(複数の電圧ユニット内の)ユニット7に入力され、K1はPRDに対してであり、K2は(Ufcirr(t)/Uscirr(tsc))に対してであり、K3はτに対してであり、K4は(Uscirr(tsc)/Uscopp(tsc))に対してであり、K5は(Ufcirr(t)/Ufcopp(t))に対してである。次に、分離される材料の給送が開始する。スローピングシュート1上での動きの間、材料2のフローは、源3からの放射の部分、およびシュート1から下降するときの材料2の自由落下軌道の部分Lを含む部分を横切り、スローピングシュート1上で、材料2は、励起/記録区域に入り、X線放射パルス源4からの期間Тの持続時間tを伴う周期パルス(図1A、B)により、放射される。X線放射パルス源3および4の作用下で、材料2のフローにある複数の鉱物のいくつかの部分は、発光し、源3および4の放射区域に入る大量の空気も発光する。更に、フロー2の複数の非発光性材料の表面から反射される光も、グローの強度に寄与する。励起/記録区域L内の源4の複数のX線放射パルスにより励起される光信号は、PRD5および6により記録され、PRD5および6は、光信号を処理ユニット7に向かう複数の電気信号に変換することになる。源4の複数の励起パルスのシーケンスにおける各期間Тにおいて(図1A、B)、ユニット7は、複数の光信号を記録することになる。励起/記録区域Lにおいて発光鉱物が存在しない場合(図1A、B)、ユニット7は、PRD5および6からの背景光信号UbirrおよびUboppをそれぞれ記録し、これらの信号の統計上正しい数が得られる場合に、励起/記録区域Lにおける信号UbirrおよびUboppに対する平均値をそれぞれ判断し(そのような場合に、複数の発光特性の判断は、実行されない)、これは、PRD5および6のゼロレベルの安定化にそれぞれ用いられる。
【0049】
発光鉱物が励起/記録区域L内に現れると、PRD5および6から処理ユニット7へと向かう複数の光信号の特性は、変更される。ユニット7は、まず、パルスtの効果が終了した後の時間tscの時点で記録されるべき信号Uirr(t)およびUopp(t)の強度のUscirr(tsc)およびUscopp(tsc)の値を判断し、得られたUscirr(tsc)の値を、Uscの指定閾値と比較し、Uscirr(tsc)>Usc図1A)の場合に、分離基準、すなわちNCF、(Ufcirr(t)/Uscirr(tsc))、τ、および(Uscirr(tsc)/Uscopp(tsc))により指定された発光信号U(t)の複数の特性の複数の値を判断する。次に、処理ユニット7は、得られた複数の特性を閾値K1、K2、K3、およびK4と比較し、比較が肯定的な結果である場合に、作動装置10に制御信号を発することになる。作動装置10は、精鉱されるべき鉱物を、受け取り容器11の対応するチャンバに送り、残余の材料は、尾鉱産出物の受け取り容器12に向かうことになる。
【0050】
Uscirr(tsc)の値をUscの指定閾値と比較するときに、ユニット7が当該Uscirr(tsc)≦Usc図1B)を検出する場合、ユニット7は、源4の励起放射パルスの効果のtにおける時間の間に生じ、PRD6により記録された発光信号FC値Ufcopp(t)を判断することになる。ユニット7は、信号Ufcopp(t)の値を、それに対して指定された閾値Ufcと比較する(図1B)。この値(Ufcopp(t)>Ufc)を超える場合、ユニット7は、分離パラメータとして、材料2のフローの放射された側において記録されるべきUfcirr(t)の発光信号FC値の、放射(Ufcirr(t)/Ufcopp(t))と反対の材料2のフロー側において記録されるべきUfcopp(t)の発光信号FC値に対する比を判断する。処理ユニット7は、得られたUfcirr(t)/Ufcopp(t)のパラメータ値を、K5の閾値と比較し、比較が肯定的な結果である場合に、作動装置10に制御信号を発することになる。作動装置10は、精鉱されるべき鉱物を、別のタイプの複数の鉱物用に設計された受け取り容器11のチャンバに送り、残余の材料は、尾鉱産出物の受け取り容器12に向かうことになる。
【0051】
ソータ内における源3および4の相互配置は、材料2に作用するX線放射の強度の増大のみならず、効果の持続時間およびシーケンスに起因して分離される材料2のフローにおいて弱く発光する複数の鉱物の複数信号U(t)の強度の増大を保証する。この処理において、記録の状況、ならびにPRD5、PRD6、およびユニット7によりソータ内で発生した信号U(t)の処理は、源4からの複数のX線放射パルスが作用する間の背景発光信号Uboppの強度および変動における相当な低減を保証する。従って、ソータは、低い発光強度を有する複数の鉱物を含む、全ての鉱物発光信号U(t)の記録の感度における向上を提供する。更に、複数の操作のシーケンスおよびデバイス7においてこれらの信号を処理するべく指定された複数の分離基準パラメータのセットは、精鉱されるべき鉱物の全てのタイプの抽出における選択性のみならず、1サイクルの間の複数のタイプによる分離の可能性も保証する。例えば、ソータは、材料2のフローから複数のダイアモンドを選択的に抽出するときに、材料2中に存在する複数のダイアモンドから、発光信号Uscirr(tsc)およびUscopp(tsc)の十分な強度を有するタイプIのダイアモンド、ならびに発光信号Uirr(t)およびUopp(t)においてSCが事実上見つからないタイプIIのダイアモンドを分離することを可能にする。
【0052】
同期化ユニット9およびデジタル信号処理デバイス7は、組み合わされ、内蔵マルチチャネルアナログ・デジタルコンバータを用いるパーソナルコンピュータまたはマイクロコントローラに基づいて作製され得る。複数の閾値を設定するためのデバイス8は、マイクロコントローラに接続された複数のスイッチまたはテンキーボードに基づいて作製され得る。また、同期化ユニット9は、K155またはK555シリーズのTTLロジックICに基づく持続時間tおよび期間Tを用いた複数のパルスの生成器として作製され得る。PRD5および6は、FEU―85またはR―6094(Hamamatsu)タイプの光電子倍増管に基づく複数のマルチチャネル装置の形態で作製され得る。PRD5および6におけるチャネルの数は、搬送される材料2のフローの幅により決定され、これは、ソータの要求される生産能力、ならびにPRDの指定された感度を保証するのに必要である。作動装置10は、日本のSMGにより製造されるVXFAタイプの複数の空気圧弁または複数の機械的ダンパ装置に基づいたマルチチャネル装置の形態で作製され得る。ダイアモンドを含む材料の精鉱において精鉱されるべき鉱物の発光のスペクトル域をろ過するための手段14は、一列に設置された複数の光フィルタの形態で作製され、例えば、GOST9411−91によるSZS20およびZhS10のシリアルベースで製造され得る。本発明において提案される複数の鉱物のX線発光分離のための方法、およびX線発光ソータは、「産業上の利用可能性」基準を満たす。
【0053】
図2において示され、TU4276―074―00227703―2007仕様によるLS―20―09タイプのX線発光ソータに基づいて作製され、Burevestnik Science & Production Enterprise Open Joint−Stock Companyによりシリアル方式で製造されるX線発光ソータの変形形態は、精鉱粉砕機の複数の状況で、ダイアモンドを含む材料の精鉱において試験された。試験中に、我々は、タイプIのダイアモンドおよびタイプIIのダイアモンドの同時識別を用いて、複数のダイアモンドの100%の抽出をかろうじて実現した。
【0054】
従って、複数の鉱物のX線発光分離のための提案される方法、および本方法を実行するためのX線発光ソータは、低い発光強度を有する複数の鉱物を含む、分離される材料のフローから精鉱されるべき複数の鉱物の任意の複数のタイプを抽出する選択性の向上を保証するのみならず、複数の鉱物をタイプにより同時に分離することも可能にする。
図1A
図1B
図2
図2a