(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱風炉のチェッカー煉瓦を受ける格子金物と、前記格子金物と炉底面との間に設置される既存柱と、を有するチェッカー煉瓦受け金物に、追加柱を増設するチェッカー煉瓦受け金物の柱増設方法であって、
前記既存柱の周囲に複数の柱部材を配置して柱筒体を形成し、複数の前記柱筒体を高さ方向に積み上げて柱本体を形成し、前記柱本体の高さを高さ調整機構で調整し
、前記既存柱の外側に前記柱本体および高さ調整機構で構成される同軸追加柱を同軸状に設置することを特徴とするチェッカー煉瓦受け金物の柱増設方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したように、熱風炉から高炉へ供給される熱風を、十分な熱量を有する高温の熱風とするためには、熱風炉のチェッカー煉瓦に蓄熱される熱量(蓄熱量)を大きくし、チェッカー煉瓦の温度とくに底面温度を高めることが必要である。
しかし、前述したチェッカー煉瓦受け金物が耐熱温度以上になると、チェッカー煉瓦受け金物が破損し、チェッカー煉瓦が崩落して熱風炉操業が停止するおそれがある。このため、熱風炉炉底部の雰囲気温度を決定する熱風炉排ガス温度の上限値はチェッカー煉瓦受け金物の耐熱温度によって決定される。
【0008】
従って、高炉に熱風を供給する際、蓄熱時の加熱用の熱風が、チェッカー煉瓦受け金物部分の耐熱温度以下に制約されることとなって、チェッカー煉瓦の蓄熱エネルギーの上限が制限される。結果として、高炉へ供給される熱風をさらに高温とすることができない。
ここで、既設の熱風炉のチェッカー煉瓦受け金物を、より耐熱温度が高いチェッカー煉瓦受け金物に取り替えることによって、チェッカー煉瓦の蓄熱エネルギーの上限を引き上げることが考えられる。
しかし、チェッカー煉瓦受け金物を取り替えるためには、チェッカー煉瓦を含む大規模な取替・改造工事をする必要がある。この工事を行うと、1年以上等の長期の操業停止期間が必要となり高炉生産量が低下することとなる。
【0009】
別の高温化対応として、格子金物を支える支柱を増設することが考えられる。支柱を増設できれば、チェッカー煉瓦受け金物の強度を向上でき、耐熱温度の向上が図れる。
しかし、既存の支柱の間隔が十分にない場合、後付する支柱を設置することが難しい。すなわち、既存の支柱の間には、後付する支柱の設置スペースだけでなく、作業スペースが必要になるためである。このように、支柱の増設で対応しようとしても、既存の支柱の配置によっては、増設する支柱の数が十分に得られず、前述した高温化およびランニングコスト削減への対応ができないという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、チェッカー煉瓦の蓄熱量を増やして高温化に対応することができ、ランニングコストを削減できるとともに、工期の短縮が図れるチェッカー煉瓦受け金物用の追加柱、チェッカー煉瓦受け金物および柱増設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のチェッカー煉瓦受け金物用の追加柱は、熱風炉のチェッカー煉瓦を受ける格子金物と炉底面との間に設置されるチェッカー煉瓦受け金物用の追加柱であって、前記格子金物と前記炉底面との間に設置されている既存柱の外側に同軸状に設置される柱本体と、前記柱本体の高さを調整可能な高さ調整機構と、を有し、前記柱本体は、高さ方向に積み上げられる複数の柱筒体を有することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、既存柱の外周を覆うように設置される柱本体により、既存柱と同軸状の追加柱(同軸追加柱)を形成することができる。追加柱が既存柱と同軸状であるとは、内側の既存柱に対して外側に追加柱が二重に設置されることで、追加柱と既存柱とが同じ設置領域を共有している状態をいい、追加柱の中心軸と既存柱の中心軸とが同じ位置で共有される状態に限らない。このため、追加柱と既存柱の干渉が発生しなければ、既存柱に対して追加柱を偏心した状態、つまり各々の中心軸がずれた状態で設置してもよい。
このような同軸追加柱は、既存柱と同じ位置に設置されるため、専用の設置スペースが必要なく、既存柱の間に別途の追加柱(独立追加柱)が設置できない場合、あるいはできても本数に制約がある場合でも、何ら支障なく設置することができる。
また、柱本体を複数の柱筒体の積み重ねで形成することで、各々の柱筒体は柱本体に比べて十分に短尺とすることができ、熱風炉内への搬入や、炉内での作業を、何ら支障なく行うことができる。
柱筒体どうしの連結は、例えば、各柱筒体の開口端部にフランジを形成しておき、このフランジを貫通するボルトにより締め付ける構造や、フランジ面を加工して形成されたインロー構造などが利用できる。
【0013】
さらに、高さ調整機構を設けたことで、既存柱との間で高さ調整を行うことができ、既存柱で負担されていた格子金物の荷重を確実に代替することができる。
例えば、既存柱の外側に、既存柱より短い状態で同軸追加柱を設置した後、高さ調整機構で同軸追加柱の高さを大きくすれば、同軸追加柱が既存柱よりも長くなった段階で、既存柱で受けられていた格子金物の荷重を、同軸追加柱に載せ替えることができる。このような同軸追加柱により、既存柱に対して、追加柱としての機能を達成することができる。
高さ調整機構としては、例えば外側から楔金物を打ち込むか、ジャッキボルトを用いることで高さを調整する構造が利用できる。高さ調整機構は、柱本体と格子金物との、柱本体の途中、または柱本体と炉底面との間に設置することができる。
【0014】
本発明のチェッカー煉瓦受け金物用の追加柱において、前記柱筒体は、それぞれ周方向に分割された複数の柱部材を有することが好ましい。
【0015】
本発明によれば、既存柱の外周の各方向から、周方向に分割された柱部材を沿わせ、各々を周方向に連結することで、既存柱を覆う柱本体を形成することができる。
周方向に分割された柱部材としては、例えば中心角180度ずつの2分割(いわゆる最中合わせ)、120度ずつの3分割や90度ずつの4分割などとすることができる。例えば、180度のものと90度のもの2つとを組み合わせる等としてもよい。
柱部材の周方向の連結は、例えば、各柱部材にフランジを形成しておき、このフランジを貫通するボルトにより締め付ける構造などが利用できる。
【0016】
本発明のチェッカー煉瓦受け金物用の追加柱において、前記柱筒体は円筒状であり、前記柱部材は円筒面を2分割した半円筒状を有することが好ましい。
【0017】
本発明によれば、柱本体を一般的な円筒状の構造にできるとともに、柱部材がそれぞれ中心角180度ずつの2分割となり、最小限の部材で柱本体を形成することができる。ただし、柱形状は四角形、六角形などの多角形形状でも採用可能である。
【0018】
本発明のチェッカー煉瓦受け金物用の追加柱において、前記柱本体と前記既存柱との間に、断熱材が設置されていることが好ましい。
【0019】
本発明によれば、断熱材が設置されているため、熱風炉が稼働した際に、外側の柱本体(同軸追加柱)と内側の既存柱との間に温度差を生じさせ、これに伴う熱膨張差を利用して、既存柱から同軸追加柱への荷重載せ替えを行うことができる。
すなわち、外側の同軸追加柱と内側の既存柱との間に断熱材が介在することで、熱風炉の稼働時に外側から伝えられる熱は、外側の同軸追加柱には十分に伝達されるが、内側の既存柱への到達が抑制される。その結果、外側の同軸追加柱は高温となって熱膨張が比較的大きく、内側の既存柱は温度上昇が抑制されて熱膨張が比較的小さくなり、各々の間には熱膨張の差が生じる。同軸追加柱を設置する際に、格子金物の荷重を負担する直前の状態としておけば、既存柱に対する熱膨張差により、熱風炉の稼働に伴って同軸追加柱が伸長し、格子金物を持ち上げる状態となり、これにより前述した既存柱から同軸追加柱への荷重載せ替えを行うことができる。
【0020】
本発明のチェッカー煉瓦受け金物用の追加柱において、前記高さ調整機構は、前記柱本体の外側から前記柱本体の中心軸線に向けて打ち込まれる楔金物を有することが好ましい。
【0021】
本発明によれば、十分な荷重強度が得られるとともに、簡素な構造で高さ調整機能を得ることができる。
楔金物としては、鋼製の板材であって、表裏のテーパ角度が0度よりも大きく10度よりも小さいものが好ましい。楔金物は、同軸追加柱の周囲に複数を均等間隔で配置することができ、例えば4つの楔金物を90度間隔で配置することができる。
【0022】
本発明のチェッカー煉瓦受け金物用の追加柱において、前記高さ調整機構は、前記炉底面に立設されて前記柱本体に当接可能なジャッキボルトと、前記柱本体と前記炉底面との間に打ち込まれる楔金物と、を有することが好ましい。
【0023】
本発明によれば、予めジャッキボルトの上端高さを炉底面から所定高さに調整しておき、このジャッキボルトに柱本体(同軸追加柱)を載置することで、同軸追加柱を基本高さに設定できる。この後、楔金物を打ち込むことで、同軸追加柱を基本高さから設定高さまで上昇させることができる。
つまり、設定高さと炉底面との差が大きい場合でも、基本高さまでの分はジャッキボルトで対応することができ、楔金物で対応する高さは、基本高さと設定高さとの差分だけで済む。このため、楔金物を小型化することができ、打ち込み作業も最小限にすることができる。また、ジャッキボルトによる基本高さの設定は、同軸追加柱を載せる前の無負荷状態で簡単に操作することができ、作業時間を短縮することができる。
【0024】
本発明のチェッカー煉瓦受け金物は、熱風炉のチェッカー煉瓦を受ける格子金物と、前記格子金物と炉底面との間に設置される既存柱と、を有するチェッカー煉瓦受け金物であって、前記既存柱の外側に同軸状に設置される同軸追加柱を有し、前記同軸追加柱は、
前記既存柱の外側に同軸状に設置される柱本体と、前記柱本体の高さを調整可能な高さ調整機構と、を有し、前記柱本体は、高さ方向に積み上げられる複数の柱筒体を有することを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、前述した本発明のチェッカー煉瓦受け金物用の追加柱で説明した通りの作用効果を得ることができる。
【0026】
本発明のチェッカー煉瓦受け金物において、
前記同軸追加柱は複数設置され、複数の前記同軸追加柱の
中間位置には、前記同軸追加柱から離れた位置で前記格子金物と前記炉底面との間に独立追加柱が設置されてもよい。
【0027】
本発明によれば、同軸追加柱での補強だけでなく、独立追加柱を併用することで、既設格子金物に発生する応力を低減することができ、既設格子金物の使用可能最大温度を向上させることができる。
【0028】
本発明のチェッカー煉瓦受け金物の柱増設方法は、熱風炉のチェッカー煉瓦を受ける格子金物と、前記格子金物と炉底面との間に設置される既存柱と、を有するチェッカー煉瓦受け金物に、追加柱を増設するチェッカー煉瓦受け金物の柱増設方法であって、
前記既存柱の周囲に複数の柱部材を配置して柱筒体を形成し、複数の
前記柱筒体を高さ方向に積み上げ
て柱本体
を形成し、前記柱本体の高さを
高さ調整機構で調整
し、前記既存柱の外側に
前記柱本体および高さ調整機構で構成される同軸追加柱を同軸状に設置することを特徴とする。
【0029】
本発明によれば、前述した本発明のチェッカー煉瓦受け金物用の追加柱で説明した通りの作用効果を得ることができる。
【0030】
本発明のチェッカー煉瓦受け金物の柱増設方法において、前記熱風炉の稼働時に、前記同軸追加柱を前記既存柱よりも大きく熱膨張させ、前記同軸追加柱による前記格子金物の荷重負担を前記既存柱よりも大きくすることが好ましい。
【0031】
本発明によれば、前述した本発明のチェッカー煉瓦受け金物用の追加柱における、熱膨張差を利用した既存柱から同軸追加柱への荷重載せ替えを行うことができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、既存柱と同軸状に配置される同軸追加柱を用いることで、設置スペースに制約を受ける場合でも追加柱を増設することができる。その結果、チェッカー煉瓦の蓄熱量を増やして高温化に対応することができ、ランニングコストを削減できるとともに、工期の短縮が図れるチェッカー煉瓦受け金物用の追加柱、チェッカー煉瓦受け金物および柱増設方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の具体的な実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1において、製銑用の高炉1には、熱風を供給する熱風炉2が接続されている。
図1では、熱風炉2を1基だけ示したが、一般に熱風炉2は高炉1基につき複数設置される。
【0035】
熱風炉2は、燃焼室9と蓄熱室3とを備えている。蓄熱室3の炉底部にはチェッカー煉瓦受け金物10が設置され、チェッカー煉瓦受け金物10の上には蓄熱用のチェッカー煉瓦4が積層されている。
チェッカー煉瓦4は、平面視略六角形状であり、上下に貫通する複数の貫通孔が形成されている。チェッカー煉瓦4は、水平方向に格子状に複数配列され、チェッカー煉瓦受け金物10から熱風炉2の炉頂近くまで積まれている。
【0036】
チェッカー煉瓦4は、各々の貫通孔が互いに連通され、各貫通孔を通して蓄熱室3の炉底部から炉頂部との間で空気を流通させることができる。
熱風炉2の下部側面にはダクト5が接続され、チェッカー煉瓦受け金物10の隙間には通気空間6が形成されている。通気空間6を通して、ダクト5はチェッカー煉瓦4の貫通孔に連通されている。
【0037】
〔チェッカー煉瓦受け金物10〕
図2に示すように、チェッカー煉瓦受け金物10は、チェッカー煉瓦4を上面で支持する格子金物20と、格子金物20を下面側から支持するガーダー30と、を有する。さらに、チェッカー煉瓦受け金物10は、ガーダー30を支持する複数の既存柱40および複数の同軸追加柱50と、格子金物20を支持する複数の独立追加柱60と、を備えている。これらの格子金物20、ガーダー30、既存柱40、同軸追加柱50および独立追加柱60は、それぞれ鋳鉄製である。ただし、耐熱温度上問題無ければ、耐火物、鋼板、鋳鋼などの別材質でも採用可能である。
【0038】
格子金物20は、平板状であり、熱風炉2の内部の炉底部分に水平方向に拡がって設けられている。格子金物20には、多数の通気孔が上下に貫通形成され、それぞれチェッカー煉瓦4の貫通孔に連通されている。
ガーダー30は、水平に支持された梁材であり、格子金物20の下面に沿って複数配置され、格子金物20を下面側から支持している。
既存柱40は、ガーダー30の長手方向に沿って所定間隔を隔てて配置され、上端でガーダー30を支持している。既存柱40の下端は、熱風炉2の炉底部に固定され、耐熱コンクリート22に埋設されている。耐熱コンクリート22上には、さらに敷煉瓦23が敷設されている。
【0039】
同軸追加柱50は、既存柱40の外側に、既存柱40と同軸状に配置され、上端でガーダー30を支持している。同軸追加柱50の下端は、耐熱コンクリート22に固定され、敷煉瓦23に埋設されている。
独立追加柱60は、既存柱40および同軸追加柱50の間の空間に、周囲と所定間隔を空けて配置され、上端で格子金物20を支持している。独立追加柱60の下端は、耐熱コンクリート22に固定され、敷煉瓦23に埋設されている。
【0040】
図3に示すように、熱風炉2の炉底部において、既存柱40は、ガーダー30に沿って配置されるため、それぞれ直線的に配列される。同軸追加柱50は、既存柱40の各々と同軸状つまり同じ位置に配置されており、炉底部における配置は既存柱40に準じて直線的な配列となる。
一方、独立追加柱60は、ガーダー30と関係なく配置される。独立追加柱60の配置にあたっては、周囲との間隔確保のため、既存柱40の中間位置などとされる。このため、独立追加柱60も大部分が直線的に配列される。ただし、熱風炉2の外周付近では、必ずしも直線的な配列とはならない。
以下、既存柱40、同軸追加柱50および独立追加柱60の詳細について説明する。
【0041】
〔既存柱40〕
既存柱40は、熱風炉2の築炉時に設置されるものであり、
図4および
図5に示すように、全長にわたって連続した円管状の鋼材で形成される。
図4において、既存柱40は、下端が熱風炉2の炉底部の耐熱コンクリート22に埋設されている。下端を耐熱コンクリート22に埋設される前に、既存柱40はその固定高さを調整される。
【0042】
既存柱40の下端には、下端プレート41が固定されている。熱風炉2の炉底部には熱風炉炉底鉄皮221が設置されている。下端プレート41と熱風炉炉底鉄皮221との間には、楔金物42が設置されている。この楔金物42の打ち込み位置に応じて、既存柱40の高さを調整することができる。このような高さ調整を行った後に、コンクリートを打設することで、既存柱40は所定高さに設置され、かつ下端が耐熱コンクリート22に埋設される。
【0043】
既存柱40の設置手順は、次のようになる。
先ず、熱風炉炉底鉄皮221上に楔金物42を設置し、その上に下端プレート41を載せ、既存柱40を垂直に保持する。
次に、楔金物42を既存柱40の外周から打ち込み、既存柱40の上端高さが所定の高さとなるように調整する。
既存柱40の高さが所定高さとなったら、下端プレート41および楔金物42を包むようにコンクリートを打設し、耐熱コンクリート22を形成する。これにより、既存柱40の下端が炉底部に固定される。
既存柱40が炉底部に固定されたら、既存柱40の周囲の耐熱コンクリート22の表面に敷煉瓦23を敷く。さらに、既存柱40の上端に、ガーダー30および格子金物20を支持させる。
【0044】
以上により、ガーダー30を介して格子金物20を支持する既存柱40が形成される。
熱風炉2は、これらの既存柱40のみでガーダー30および格子金物20を支持した状態で稼働可能である。ただし、チェッカー煉瓦4の蓄熱量を増やして高温化する目的などで、追加柱が設置される。
本実施形態では、追加柱として、同軸追加柱50および独立追加柱60を設置する。
【0045】
〔同軸追加柱50〕
同軸追加柱50は、熱風炉2に追加で設置されるものであり、
図6に示すように、既存柱40の外側に同軸状に設置される鋼製の柱本体51と、柱本体51の高さを調整可能な高さ調整機構59とを備えている。そして、柱本体51は、高さ方向に積み上げられる複数の柱筒体52を有する。
【0046】
図7および
図8に示すように、柱筒体52は、中心角180度の半円筒状の柱部材53を一対にして構成される。柱部材53どうしを結合するために、柱部材53にはフランジ531が形成され、このフランジ531どうしをボルト532で締め付け固定される。
一対の柱部材53を組み合わせる際に、その間に既存柱40を挟み込むことで、柱筒体52は既存柱40の外側に同軸状に設置される。
【0047】
柱部材53と既存柱40との間には、断熱材54が設置される。
断熱材54は、予め柱部材53の内面に張っておいてもよく、既存柱40の外面に巻き付けておいてもよい。また、柱部材53設置後にできる既存柱40との隙間に詰め込んでもよい。断熱材54は、シート状あるいはマット状のもののほか、吹付けて形成されるものであってもよい。
同軸追加柱50と既存柱40の間に膨張差が発生するだけの十分な温度差が生まれるのであれば、断熱材54を使用せずに、同軸追加柱の50の厚みを大きくするか、あるいは同軸追加柱50と既存柱40との隙間間隔を大きくするなど、他の方法を用いてもよい。
【0048】
柱筒体52は、各々の上下端縁に沿った円弧状のフランジ521どうしをボルト522で締め付け固定されることで、相互に連結され、柱本体51とされる。
柱本体51の最上段の柱筒体52には、上端部材58が接続される。この上端部材58を介して、柱本体51はガーダー30に接続される。
【0049】
図6において、同軸追加柱50を設置する際には、既存柱40の周囲の敷煉瓦23が一部撤去されて耐熱コンクリート22が露出される。そして、柱本体51の最下段の柱筒体52と耐熱コンクリート22との間には、高さ調整機構59が形成される。
図9に示すように、耐熱コンクリート22の表面にはベースプレート222が敷かれている。ベースプレート222には、楔金物591、ジャッキボルト592,固定ボルト593が設置されている。
【0050】
楔金物591は、テーパ角度が0度よりも大きく10度よりも小さい鋼片であり、外側からの打ち込みにより高さを調整可能かつ大荷重を負担可能である。
ジャッキボルト592は、ベースプレート222に固定されたナットに螺合され、回転させることで頭部の高さを調整可能である。この高さ調整により、最下段の柱筒体52の高さ位置が調整でき、これにより同軸追加柱50の高さ位置を決めることができる。
固定ボルト593は、下部を耐熱コンクリート22に埋設固定されており、ベースプレート222のボルト孔および最下段の柱筒体52のフランジ521のボルト孔を挿通したうえで、ナットを螺合させて締め付けることで、柱筒体52を耐熱コンクリート22に固定可能である。
【0051】
同軸追加柱50の設置手順は、次のようになる。
先ず、同軸追加柱50を設置する既存柱40の周囲で、敷煉瓦23を一部撤去して耐熱コンクリート22を露出させる(
図6参照)。
そして、露出された耐熱コンクリート22の表面にベースプレート222を敷き(
図9参照)、ベースプレート222に楔金物591、ジャッキボルト592,固定ボルト593を設置しておく。
【0052】
次に、ジャッキボルト592の上で、柱本体51を組み立ててゆく。
先ず、柱本体51の最上段となるべき上端部材58(
図6参照)をジャッキボルト592の上に搬入し、クレーンで吊り上げ、上端部材58の下方に柱筒体52の一段分のスペースを確保する。
そして、上端部材58の下方で、既存柱40を間に挟んで一対の柱部材53(
図8参照)を組み合わせて、2段目の柱筒体52を形成する。この際、既存柱40と各柱部材53との間には断熱材54(
図7参照)を挟み込んでおく。柱筒体52ができたら、クレーンを再度上昇させて新たな柱筒体52のスペースを確保する。
このような柱筒体52の組立ておよい吊り上げの繰り返しにより、所定数の柱筒体52を連結することで、柱本体51が形成される。
【0053】
柱本体51が形成されたら、ジャッキボルト592を所定の高さに調整したうえで、柱本体51を吊り上げているクレーンを下げ、最下段の柱筒体52をジャッキボルト592で支持し、固定ボルト593で固定する。このとき、楔金物591は柱筒体52のフランジ521に接触する程度としておく。
【0054】
柱本体51が組み上がった状態で、上端部材58の上面とガーダー30の下面との間には僅かな隙間が形成される。そして、格子金物20およびガーダー30の荷重は、専ら既存柱40で負担されており、同軸追加柱50には負担されていない。
前述した上端部材58の上面とガーダー30の下面との間の隙間は、設計段階で、高さ調整機構59の調整代つまり楔金物591による調整可能範囲より小さな寸法となるように設定されている。
そして、高さ調整機構59による柱本体51の高さ調整により、格子金物20およびガーダー30の荷重は同軸追加柱50にも負担される状態に移行する。
【0055】
すなわち、楔金物591を同軸追加柱50の外側から打ち込むことで、柱本体51が上方へ持ち上げられ、上端部材58の上面とガーダー30の下面との間の隙間が減少し、やがて隙間がなくなって上端部材58の上面とガーダー30の下面とが接触し、更に打ち込むことで、柱本体51でガーダー30が支持された状態となる。
この状態で、既存柱40によるガーダー30の荷重負担はまだ残されていてもよい。既存柱40の荷重負担は、熱風炉2の稼働再開により加熱されることで、同軸追加柱50との熱膨張の差によって、さらに軽減ないし解除されることになる。
【0056】
〔独立追加柱60〕
独立追加柱60は、熱風炉2の既存柱40どうしの間のガーダー30がない部位に追加で設置されるものであり、
図10に示すように、鋼製の柱本体61と、柱本体61の高さを調整可能な高さ調整機構69と備えている。そして、柱本体61は、高さ方向に積み上げられる複数の柱筒体62を有する。
【0057】
図10および
図11に示すように、柱筒体62は、円筒状の部材であり、上下の開口周縁にフランジ621を有する。
柱筒体62は、各々のフランジ621どうしをボルト622で締め付け固定されることで、相互に連結され、柱本体61とされる。
柱本体61の最上段の柱筒体62には、上端部材68が接続される。この上端部材68を介して、柱本体61は格子金物20に直接接続される。
【0058】
図10において、独立追加柱60を設置する際には、設置位置の敷煉瓦23が一部撤去されて耐熱コンクリート22が露出される。そして、柱本体61の最下段の柱筒体62と耐熱コンクリート22との間には、楔金物691を用いた高さ調整機構69が形成される。
高さ調整機構69は、前述した同軸追加柱50の高さ調整機構59(
図9参照)と同様に、上端部材68および複数の柱筒体62を一段ずつ配置してはクレーンで吊り上げる操作を繰り返すことで、一連の柱本体61として組立てられるものであり、ここでは重複する説明は省略する。
【0059】
以上の作業により、柱筒体62および上端部材68で柱本体61が組み上がった状態とされる。柱本体61が組み上がった状態で、上端部材58の上面と格子金物20の下面との間には僅かな隙間が形成される。この隙間は、設計段階で、高さ調整機構69の調整代つまり楔金物691による調整可能範囲より小さな寸法となるように設定されている。
そこで、楔金物691を独立追加柱60の外側から打ち込むことで、柱本体61が上方へ持ち上げられ、上端部材68の上面と格子金物20の下面との間の隙間が減少し、やがて隙間がなくなって上端部材68の上面と格子金物20の下面とが接触し、更に打ち込むことで、柱本体61で格子金物20が支持された状態となる。
【0060】
〔追加柱の増設手順〕
本実施形態において、熱風炉2の築炉時の既存柱40の設置手順、および、追加柱増設時の同軸追加柱50および独立追加柱60の設置手順は、各々既に述べた通りである。
ここで、追加柱増設時の全体的な作業手順について説明する。
【0061】
熱風炉2への追加柱増設は高炉休風期間などに行われ、増設を行う際には、先ず熱風炉2の稼働を停止し、炉内温度を作業可能な温度となるまで冷却する。
次に、マンホール8(
図2および
図3参照)から作業員が炉内に入り、同軸追加柱50および独立追加柱60の設置部位において、炉底面21から敷煉瓦23を掘り下げて耐熱コンクリート22を露出させる。敷煉瓦23の廃材はマンホール8から搬出する。
続いて、マンホール8から同軸追加柱50および独立追加柱60の資材、つまり柱部材53や柱筒体62および高さ調整機構59,69の構成部材を搬入し、組立てる。
各部において、同軸追加柱50および独立追加柱60の柱本体51,61が組み上がったら、高さ調整機構59,69を操作してガーダー30および格子金物20の荷重負担を開始する。
【0062】
ここで、炉内作業を終了し、作業員が退去したのち、熱風炉2の稼働を再開する。稼働に伴う炉内の熱により、既存柱40、同軸追加柱50および独立追加柱60は熱膨張する。ただし、既存柱40は断熱材54で包囲されて昇温が比較的小さいため熱膨張量が小さい。これに対し、同軸追加柱50および独立追加柱60は熱膨張量が大きく、ガーダー30および格子金物20の荷重負担が更に増大する。その結果、既存柱40による荷重負担は軽減ないし解除されることになる。この状況は、設計ないし施工時の隙間調整により選択することができる。
【0064】
本実施形態によれば、既存柱40の外周を覆うように設置される柱本体51により、既存柱40と同軸状の同軸追加柱50を形成することができる。
同軸追加柱50は、既存柱40と同じ位置に設置されるため、専用の設置スペースが必要なく、既存柱40の間に別途の追加柱(独立追加柱60)が設置できない場合、あるいはできても本数に制約がある場合でも、何ら支障なく設置することができる。
また、柱本体51を複数の柱筒体52の積み重ねで形成することで、各々の柱筒体52は柱本体51に比べて十分に短尺とすることができ、熱風炉2内への搬入や、炉内での作業を、何ら支障なく行うことができる。
【0065】
さらに、高さ調整機構59を設けたことで、既存柱40との間で高さ調整を行うことができ、既存柱40で負担されていた格子金物20およびガーダー30の荷重を確実に代替することができる。
例えば、既存柱40の外側に、既存柱40より短い状態(相対的に高さが小さい状態)で同軸追加柱50を設置した後、高さ調整機構59で同軸追加柱50の高さを大きくすれば、同軸追加柱50が既存柱40よりも長くなった段階で、既存柱40で受けられていた格子金物20の荷重を、同軸追加柱50に載せ替えることができる。このような同軸追加柱50により、既存柱40に対して、追加柱としての機能を達成することができる。
【0066】
本実施形態では、柱筒体52を、それぞれ周方向に分割された複数の柱部材53で構成した。このため、既存柱40の外周の各方向から、周方向に分割された柱部材53を沿わせ、各々を周方向に連結することで、既存柱40を覆う柱筒体52ないし柱本体51を形成することができる。
【0067】
とくに、本実施形態では、柱筒体52は円筒状であり、柱部材53は円筒面を2分割した半円筒状を有するものとした。このため、柱本体51を一般的な円筒状の構造にできるとともに、柱部材53がそれぞれ中心角180度ずつの2分割となり、最小限の部材で柱本体51を形成することができる。
【0068】
本実施形態では、既存柱40と同軸追加柱50との間に断熱材54を設置した。このため、熱風炉2が稼働した際に、外側の同軸追加柱50と内側の既存柱40との間に温度差を生じさせ、これに伴う熱膨張差を利用して、既存柱40から同軸追加柱50への荷重載せ替えを行うことができる。
【0069】
本実施形態では、高さ調整機構59は、柱本体51の外側から柱本体51の中心軸線に向けて打ち込まれる楔金物591を有するものとした。このような楔金物591を用いることで、同軸追加柱50において十分な荷重強度が得られるとともに、簡素な構造で高さ調整機能を得ることができる。
【0070】
本実施形態において、高さ調整機構59は、前述した楔金物591とともに、炉底面のベースプレート222に立設されて柱本体51に当接可能なジャッキボルト592を用いるとした。このため、予めジャッキボルト592の上端高さを炉底面21から所定高さに調整しておき、このジャッキボルト592に柱本体51を載置することで、同軸追加柱50を基本高さに設定できる。この後、楔金物591を打ち込むことで、同軸追加柱50を基本高さから設定高さまで上昇させることができる。
つまり、設定高さと炉底面との差が大きい場合でも、基本高さまでの分はジャッキボルト592で対応することができ、楔金物591で対応する高さは、基本高さと設定高さとの差分だけで済む。このため、楔金物591を小型化することができ、打ち込み作業も最小限にすることができる。また、ジャッキボルト592による基本高さの設定は、同軸追加柱50を載せる前の無負荷状態で簡単に操作することができ、作業時間を短縮することができる。
【0071】
〔第2実施形態〕
前述した第1実施形態では、追加柱として同軸追加柱50および独立追加柱60を併用した。これに対し、本実施形態では、追加柱として同軸追加柱50のみが設置され、独立追加柱60は設置されていない。
【0072】
図12および
図13において、熱風炉2の炉底部にはチェッカー煉瓦受け金物10Aが設置されている。
チェッカー煉瓦受け金物10Aは、前述した第1実施形態のチェッカー煉瓦受け金物10と同様に、熱風炉2の築炉時には既存柱40のみでガーダー30および格子金物20が支持されていた。
追加柱の増設にあたって、チェッカー煉瓦受け金物10Aにおいては、既存柱40の外側に同軸追加柱50が設置される。ただし、既存柱40の間に追加柱(第1実施形態の独立追加柱60)は設置されていない。
【0073】
なお、本実施形態において、同軸追加柱50、既存柱40、ガーダー30、格子金物20の個々の構成は、前述した第1実施形態と同様である。このため、各々についての重複する説明は省略する。
このような本実施形態によっても、同軸追加柱50による作用効果を得ることができる。そして、第1実施形態のような独立追加柱60による補強は得られないが、チェッカー煉瓦受け金物10Aの追加柱として要求される性能に対して、同軸追加柱50だけで十分であれば、構造を簡素化し、工期を短縮することができる。
【0074】
〔他の実施形態〕
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
例えば、高さ調整機構59において、ジャッキボルト592は省略可能である。ジャッキボルト592に代えて、鋼片などをスペーサとして柱筒体52を支持しておき、その後楔金物591を打ち込んで高さを調整してもよい。
【0075】
高さ調整機構59は、楔金物591を用いる構造に限らない。ただし、大荷重を負担しつつ高さが調整できる構造としては、楔金物591あるいは他の耐熱材質による楔部材であることが望ましい。
柱筒体52として組み立てられる柱部材53は、円筒を2分割した半円筒状に限らず、3分割以上としてもよい。ただし、部品点数が増加するため、2分割程度であることが望ましい。
柱本体51は円形断面に限らず、矩形断面などであってもよい。ただし、方向の均等性を考慮すると、円形断面であることが望ましい。
【0076】
本発明が適用される熱風炉2としては、内燃式、外燃式あるいは炉頂燃焼式であってもよく、チェッカー煉瓦を支持するチェッカー煉瓦受け金物を用いるものであれば、本発明はいずれにも適用することができる。
【0077】
同軸追加柱50および独立追加柱60に用いられる材質は鋳鉄だけに限らず、高温化の温度に耐えられる材質であれば、耐火物や鋼板、鋳鋼などの別材質も採用することができる。
【課題】チェッカー煉瓦の蓄熱量を増やして高温化に対応することができ、ランニングコストを削減できるとともに、工期の短縮が図れるチェッカー煉瓦受け金物用の追加柱、チェッカー煉瓦受け金物および柱増設方法を提供する。
【解決手段】熱風炉2のチェッカー煉瓦を受ける格子金物20と、格子金物20と炉底面21との間に設置される既存柱40と、を有するチェッカー煉瓦受け金物10であって、既存柱40の外側に同軸状に設置される同軸追加柱50を有し、同軸追加柱50は、既存柱40の外側に同軸状に設置される柱本体51と、柱本体51の高さを調整する高さ調整機構59と、を有し、柱本体51は、高さ方向に積み上げられる複数の柱筒体52を有する。