特許第6013647号(P6013647)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6013647
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/04 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   A61B1/04 362J
   A61B1/04 372
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-506918(P2016-506918)
(86)(22)【出願日】2015年9月8日
(86)【国際出願番号】JP2015075518
【審査請求日】2016年2月9日
(31)【優先権主張番号】特願2014-246136(P2014-246136)
(32)【優先日】2014年12月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【弁理士】
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】大河 文行
(72)【発明者】
【氏名】橋本 秀範
(72)【発明者】
【氏名】松井 泰憲
【審査官】 小田倉 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−28709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高域成分が減衰した撮像信号の高域成分を強調補正するための高域成分強調回路を設けた第1のプロセッサに接続可能な内視鏡であって、
被検体に挿入される挿入部と、
前記挿入部の先端に設けられ、前記被検体の光学像を撮像してアナログ撮像信号を生成する撮像部と、当該アナログ撮像信号をデジタル撮像信号に変換して出力するA/D変換部とを備える撮像素子と、
一端が前記撮像素子に接続され、前記デジタル撮像信号を他端側に伝送するためのケーブルと、
前記ケーブルの他端に設けられ、前記高域成分強調回路に係る周波数特性を平準化するための周波数特性を有する逆特性フィルタと、
を具備することを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
さらに、前記高域成分強調回路が設けられていない、前記第1のプロセッサとは異なる第2のプロセッサに接続可能であって、
前記内視鏡が、前記第1のプロセッサに接続されているか、または、前記第2のプロセッサに接続されているかを識別可能な識別部と、
前記識別部の識別結果に応じて、前記デジタル撮像信号が前記逆特性フィルタを通過する信号経路と、前記デジタル撮像信号が前記逆特性フィルタを通過しない信号経路とを切り替える信号経路切替部と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記信号経路切替部は、前記識別部の識別結果により前記内視鏡が前記第1のプロセッサに接続されている場合には、前記デジタル撮像信号が前記逆特性フィルタを通過するように前記信号経路を切り替え、一方、前記内視鏡が前記第2のプロセッサに接続されている場合には、前記デジタル撮像信号が前記逆特性フィルタを通過しないように前記信号経路を切り替える
ことを特徴とする請求項2に記載の内視鏡。
【請求項4】
さらに、前記高域成分強調回路が設けられていない、前記第1のプロセッサとは異なる第2のプロセッサに接続可能であって、
前記デジタル撮像信号が前記逆特性フィルタを通過する第1の信号経路と、前記デジタル撮像信号が前記逆特性フィルタを通過しない第2の信号経路とを切り替えるための切替指示信号を出力する切替指示部と、
前記切替指示部からの前記切替指示信号に応じて、前記第1の信号経路と前記第2の信号経路とを切り替える信号経路切替部と、
を具備することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像信号としてデジタル信号を出力する撮像素子を搭載する内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用分野及び工業用分野において撮像素子を備えた内視鏡が広く用いられている。また、内視鏡に着脱自在に接続され、内視鏡に係る各種信号処理をプロセッサと称する信号処理装置により担い、内視鏡システムを構成する技術も知られるところにある。
【0003】
また、近年、撮像素子としてCCDイメージセンサを採用する内視鏡においてはCCDイメージセンサの画素数が増える傾向にある。この種の内視鏡においては、画素数が増えることにより従来に増して高速な処理が必要となる。
【0004】
そして、この種の内視鏡においては、先端部に配設された撮像素子と前記プロセッサとを接続するケーブルが比較的長距離に及ぶこと、および内視鏡挿入部の細径化を実現するためにケーブル径に制約があること等から、内視鏡挿入部の先端に配設されるCCDイメージセンサからの信号出力を的確に伝送することがより困難となっている。
【0005】
係る事情に鑑み近年では、内視鏡の先端部において、CCDイメージセンサの撮像信号に対してCDS処理(correlated double sampling:相関2重サンプリング)を施し、信号の周波数帯域を落としてからケーブルを介して当該撮像信号を伝送する一方で、当該ケーブルにおける周波数劣化分を、受けた側のプロセッサ等に配設した所定のアナログ回路(エンハンス回路等)で補正するシステムも開示されている(日本国特開2012−115531号公報参照)。
【0006】
なお、日本国特開2012−115531号公報において開示された技術は周波数成分を補正するものであるが、デジタル的に周波数劣化成分を補正する技術も知られるところにある。
【0007】
一方、近年、撮像素子としてCMOSイメージセンサを採用する内視鏡も提案されている。
【0008】
この種のCMOSイメージセンサは、そのセンサチップ内に撮像部と共にA/D変換部を備える。そして、センサとしての出力信号はデジタル信号となっている。
【0009】
ここで、周波数特性の観点から言えば、デジタル信号の伝送はアナログ信号の伝送に比べてケーブル自体の物理的特性の影響を受けづらい。したがって、この種のCMOSイメージセンサを採用する内視鏡はセンサ出力信号をデジタル信号として出力するため、比較的長いケーブルでの信号伝送であっても、センサ出力信号をアナログ信号として出力するCCDイメージセンサを採用する内視鏡に比して、画質に与える信号劣化の影響は小さくなる。
【0010】
しかしながら、上述したCMOSイメージセンサを採用する内視鏡を、CMOSイメージセンサに対応するプロセッサ(以下、CMOS対応プロセッサと称する)に接続する場合は特に問題は生じないが、従来のCCDイメージセンサを採用する内視鏡であって、上述した如く、先端部においてCDS処理を施す内視鏡に対応したプロセッサ(以下、先端CDS対応プロセッサと称す)に接続する場合は、以下に示す不都合を生じる虞がある。
【0011】
すなわち、上述した先端CDS対応プロセッサは、アナログ信号伝送路における周波数特性の劣化(主として高域周波数成分の減衰)に対応するため、劣化した成分を補うようなエンハンス回路を経由して映像信号を出力している。
【0012】
このような出力信号の特性を有する従来の先端CDS対応プロセッサに、周波数特性が比較的フラットなCMOSイメージセンサを採用する内視鏡からの信号を入力すると、必要以上に映像信号の高域周波数成分が強調され過ぎてしまうという不都合を生じる虞がある。
【0013】
本発明は上述した点に鑑みてなされたもので、高域周波数成分を強調補正する回路を備えるプロセッサに接続された場合であっても、当該プロセッサにおいて適正な画像信号処理を行い得る、撮像信号としてデジタル信号を出力する撮像素子を搭載する内視鏡を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様の内視鏡は、高域成分が減衰した撮像信号の高域成分を強調補正するための高域成分強調回路を設けた第1のプロセッサに接続可能な内視鏡であって、被検体に挿入される挿入部と、前記挿入部の先端に設けられ、前記被検体の光学像を撮像してアナログ撮像信号を生成する撮像部と、当該アナログ撮像信号をデジタル撮像信号に変換して出力するA/D変換部とを備える撮像素子と、一端が前記撮像素子に接続され、前記デジタル撮像信号を他端側に伝送するためのケーブルと、前記ケーブルの他端に設けられ、前記高域成分強調回路に係る周波数特性をイコライズする周波数特性を有する逆特性フィルタと、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1の実施形態の内視鏡の構成を示す図。
図2図2は、第1の実施形態の内視鏡におけるCMOS内のAFE回路の構成を示した図。
図3図3は、第1の実施形態の内視鏡、従来の内視鏡および先端CDS対応プロセッサの接続関係を示した図。
図4図4は、第1の実施形態の内視鏡、先端CDS対応プロセッサおよびCMOS対応プロセッサとの接続関係を示した図。
図5図5は、第1の実施形態の内視鏡が先端CDS対応プロセッサに接続された際の構成を示す図。
図6図6は、第1の実施形態の内視鏡がCMOS対応プロセッサに接続された際の構成を示す図。
図7図7は、第1の実施形態の内視鏡におけるデジタルフィルタ処理の作用を示したフローチャート。
図8図8は、従来の内視鏡がプロセッサに接続された際の一状態例を示した図である。
図9図9は、従来の内視鏡における伝送信号特性の一例を示した図である。
図10図10は、従来の内視鏡が接続される先端CDS対応プロセッサおける先端CDS向けエンハンス回路の信号特性の一例を示した図である。
図11図11は、本発明の第2の実施形態の内視鏡が先端CDS対応プロセッサに接続された際の構成を示す図。
図12図12は、第2の実施形態の内視鏡がCMOS対応プロセッサに接続された際の構成を示す図。
図13図13は、第2の実施形態の内視鏡におけるデジタルフィルタ処理の作用を示したフローチャート。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図1に示すように本発明の第1の実施形態である内視鏡1は、被検体に挿入される挿入部の先端に設けられ、被検体の光学像を撮像して所定のデジタル撮像信号を出力するCMOSイメージセンサ11と、前記CMOSイメージセンサ11に接続され前記デジタル撮像信号を伝送するケーブル40と、所定の信号処理を行う信号処理装置としてのプロセッサ(詳しくは後述する)に接続されるコネクタ部20と、を備える。
【0018】
前記CMOSイメージセンサ11は、プロセッサ3のクロック同期信号生成回路31(図5参照)から送信される所定のクロック信号および同期信号HD,VDに基づいて当該CMOSイメージセンサ11の動作仕様に合わせたクロック信号、水平同期信号HDおよび垂直同期信号VD並びに各種信号処理のためのパルスを生成するタイミングジェネレータ(TG)15と、当該タイミングジェネレータ15において生成された前記クロック信号、水平同期信号HDおよび垂直同期信号VDにより、被検体の光学像を撮像して所定のアナログ撮像信号を生成する撮像部12(PD12)と、当該撮像部12に対して所定の信号処理を施すと共にデジタル撮像信号に変換して出力するA/D変換部を備えるAFE回路13と、当該AFE回路13からのデジタル撮像信号をパラレル/シリアル変換して後段に出力するP/S回路14と、を有して構成される。
【0019】
前記ケーブル40は、プロセッサ3から送信される所定のクロック信号および同期信号HD,VDをCMOSイメージセンサ11に伝送すると共に、P/S回路14においてパラレル/シリアル変換されたシリアル信号の前記デジタル撮像信号をコネクタ20の内部に設けられたS/P変換回路23に伝送する。
【0020】
本実施形態においては、前記コネクタ部20の内部に、前記デジタル撮像信号に対して所定の信号処理を施すための回路をFPGA(以下、FPGA21)にて構成する。
【0021】
前記FPGA21は、プロセッサ3において生成された前記クロック信号および同期信号HD,VDを受けてCMOSイメージセンサ11に向けて出力する。
【0022】
一方、前記FPGA21は、プロセッサ3において生成された前記クロック信号に基づいて各種信号処理のためのパルスを生成するタイミングジェネレータ(TG)22と、CMOSイメージセンサ11から出力された前記シリアル信号のデジタル撮像信号をシリアル/パラレル変換するS/P変換回路23と、S/P変換回路23に接続された先端CDS対応プロセッサ用デジタルフィルタ24(以下、CDS対応デジタルフィルタ24と称す)と、同じくS/P変換回路23に接続されたCMOS対応プロセッサ用デジタルフィルタ25(以下、CMOS対応デジタルフィルタ25と称す)、を具備する。
【0023】
ここで、前記CDS対応デジタルフィルタ24は、プロセッサ3における先端CDS向けエンハンス回路33(詳しくは後述する)に係る周波数特性をイコライズする特性を有する逆特性フィルタとして構成される。そして、前記エンハンス回路33を有するプロセッサ3に当該CMOSイメージセンサ11を搭載する内視鏡1が接続された際に有効に働くようになっている。
【0024】
一方、前記CMOS対応デジタルフィルタ25は、前記CDS対応デジタルフィルタ24とは異なる特性を有するフィルタとして構成される。そして、前記エンハンス回路33を備えず、かつ、CMOSイメージセンサ11に対応した処理を行うプロセッサ3Aに当該CMOSイメージセンサ11を搭載する内視鏡1が接続された際に有効に働くようになっている。
【0025】
図1に戻って、さらに前記FPGA21は、前記CDS対応デジタルフィルタ24と、CMOS対応デジタルフィルタ25との出力信号経路を切り替える信号経路切替部26と、当該信号経路切替部26からの出力信号をパラレル/シリアル変換してプロセッサ3に向けて出力するP/S回路27と、当該内視鏡1に接続さえたプロセッサの種別に応じて前記信号経路切替部26における信号経路を切り替えるプロセッサ検知回路28と、を備える。
【0026】
なお、図2に示すように、AFE回路13は、撮像部12からのアナログ撮像信号に対して所定の相関2重サンプリング処理を施すCDS回路16と、この相関2重サンプリング処理が施されたアナログ撮像信号をA/D変換して出力するA/D変換回路17とを備えて構成される。
【0027】
次に、内視鏡1が接続され得る前記プロセッサ3およびプロセッサ3Aについて詳しく説明する。
【0028】
図3は本実施形態の内視鏡、従来の内視鏡および先端CDS対応プロセッサ(プロセッサ3)との接続関係を示した図である。
【0029】
図3に示すように、プロセッサ3は、従来の、内視鏡先端部においてCCDイメージセンサと共にCDS処理を施す回路を備えた内視鏡101に対して接続可能な先端CDS対応プロセッサである。一方でプロセッサ3は、CMOSイメージセンサを採用した内視鏡であっても、上述した本実施形態の如き構成をなす内視鏡1であれば、接続された際に当該プロセッサにおいて適正な画像信号処理を行い得る。
【0030】
図5に示すように当該先端CDS対応プロセッサ3は、所定のクロック信号および同期信号HD,VDを生成する前記クロック同期信号生成回路31と、接続された内視鏡から出力されるシリアル信号のデジタル撮像信号をシリアル/パラレル変換するS/P変換回路32と、S/P変換回路32に接続された先端CDS向けエンハンス回路33と、プロセッサ3内の各種回路を制御するCPU34と、を備える。
【0031】
ここで、前記先端CDS向けエンハンス回路33は、S/P変換回路32によりシリアル/パラレル変換された当該内視鏡101からの撮像信号に対して高域成分を強調する役目を果たすが、詳細は後述する。
【0032】
また、当該プロセッサ3におけるCPU34は、図示しないメモリに格納された当該プロセッサ3固有のID情報(特に、当該プロセッサ3が先端CDS対応プロセッサであるとの情報)を接続された内視鏡1に伝送する役目を果たす。
【0033】
一方、本実施形態の内視鏡1における前記プロセッサ検知回路28は、接続されたプロセッサ3における前記CPU34からの情報に基づいて当該接続されたプロセッサが先端CDS対応プロセッサであるか否かを判別するようになっている。
【0034】
なお、上述したプロセッサ3としては、当該プロセッサ3固有のID情報(先端CDS対応プロセッサであるとの情報)を内視鏡1に対して送出する機能を有するものを想定し、前記プロセッサ検知回路28は当該ID情報を入手して接続されたプロセッサの種別を判別するものとしたが、プロセッサの判別方法はこれに限られない。
【0035】
たとえば、接続されたプロセッサから所定のID情報を受信しないことをもって当該プロセッサ3の種別を判別するようにしてもよい。
【0036】
より具体的には、後述するように「CMOS対応プロセッサ」からは自身の固有のID情報、すなわちCMOS対応プロセッサであるとの情報を必ず送出することを前提とし、当該プロセッサ3の如き先端CDS対応プロセッサからはプロセッサ判別用のID情報を何ら送出しない仕様にすれば、ID情報を受信しないことをもって当該プロセッサ3が先端CDS対応プロセッサであるとの判断をすることができる。
【0037】
ここで、このCDS処理回路を有する内視鏡101がプロセッサ3に接続された際の一状態例について図8を参照して説明する。
【0038】
上述したように、従来、撮像素子からの撮像信号に対して、内視鏡の先端部においてCDS処理(相関2重サンプリング処理)を施し、伝送帯域を落としてから当該撮像信号を伝送する内視鏡が知られている。
【0039】
具体的には図8に示すように、当該従来の内視鏡101は、被検体に挿入される挿入部の先端部111に、被検体の光学像を撮像してタイミングジェネレータ113に基づいて所定のアナログ撮像信号を出力するCCDイメージセンサ112を備えると共に、当該アナログ撮像信号に対して相関2重サンプリング処理を施すCDS回路114を備える。
【0040】
そして、この相関2重サンプリング処理が施されたアナログ撮像信号は、比較的長距離のケーブル140を経由してコネクタ部120において、A/D変換された後パラレル/シリアル変換されプロセッサ3に向けて出力される。
【0041】
一方、このケーブル140における周波数劣化分を補うべく前記プロセッサ3は、クロックおよび同期信号HD,VDを内視鏡101に対して送出すると共に、S/P変換回路32によりシリアル/パラレル変換された当該内視鏡101からの撮像信号に対して高域成分を強調する先端CDS向けエンハンス回路33を備える。
【0042】
ここで、この種の内視鏡101においては、上述したように、先端部111に配設された撮像素子(CCDイメージセンサ112)と前記プロセッサ3とを接続するケーブル140は比較的長距離に及ぶこととなる。加えて内視鏡挿入部の細径化を実現するために当該ケーブル140はその径に制約があることから、CCDイメージセンサ112からの信号出力はケーブル140の物理的特性の影響を受けて、信号の高域周波数成分が劣化しやすくなっている(図9参照)。
【0043】
係る状況に鑑みて前記先端CDS向けエンハンス回路33は、上述した要因によりケーブル140において劣化した高域周波数成分を強調するよう補正して出力するようになっている(図10参照)。
【0044】
一方、本実施形態の内視鏡1は、従来の先端CDS向けエンハンス回路33を備えるプロセッサ3の他に、前記プロセッサ3Aに接続可能である。
【0045】
図4は本実施形態の内視鏡、先端CDS対応プロセッサおよびCMOS対応プロセッサとの接続関係を示した図である。
【0046】
プロセッサ3Aは、CMOSイメージセンサ11を搭載する内視鏡1が接続されることを想定した信号処理回路を備える。
【0047】
ここで、上述したように、周波数特性の観点から言えば、デジタル信号の伝送はアナログ信号の伝送に比べてケーブル自体の物理的特性の影響を受けづらいことから、センサ出力信号をデジタル信号として出力する当該内視鏡1は、比較的長いケーブルでの信号伝送であっても、センサ出力信号をアナログ信号として出力するCCDイメージセンサを採用する内視鏡101に比して、画質に与える信号劣化の影響(特に高域周波数成分の劣化の影響)は小さくなる。
【0048】
すなわちプロセッサ3Aは、ケーブル40による高域周波数成分の劣化の影響が小さい撮像信号を入力することを前提とした信号処理回路を備える。
【0049】
換言すればプロセッサ3Aは、前記先端CDS向けエンハンス回路33に相当するエンハンス回路を備えない。
【0050】
次に、本実施形態の内視鏡1が先端CDS対応のプロセッサ3またはCMOS対応のプロセッサ3Aに接続された際の作用についてそれぞれ説明する。
【0051】
図5は、本実施形態の内視鏡が先端CDS対応プロセッサに接続された際の構成を示す図であり、図6は、本実施形態の内視鏡がCMOS対応プロセッサに接続せれた際の構成を示す図である。さらに、図7は、本実施形態の内視鏡におけるデジタルフィルタの選択処理を示したフローチャートである。
【0052】
図7示すように、まず内視鏡1におけるプロセッサ検知回路28が所定のプロセッサに接続されたことを検知すると、プロセッサ検知回路28は接続されたプロセッサのCPU34(図5図6参照)から所定のID情報を入手する(ステップS1)。
【0053】
この後、プロセッサ検知回路28は、接続されたプロセッサが、ステップS1で入手したID情報に基づいて、当該内視鏡1が接続されたプロセッサが先端CDS対応のプロセッサ3であるか、またはCMOS対応のプロセッサ3Aであるかを判定する(ステップS2)。
【0054】
なお、上述したようにプロセッサ検知回路28は、ID情報を受信しないことをもって当該プロセッサ3が先端CDS対応のプロセッサであるか否かの判別をしてもよい。
【0055】
そして、接続されたプロセッサが先端CDS対応のプロセッサ3である場合(すなわち、撮像信号に対して前記先端CDS向けエンハンス回路33が働くプロセッサである場合)は、プロセッサ検知回路28は、ステップS3の処理を行う。
【0056】
すなわち、ステップS3においてプロセッサ検知回路28は、前記信号経路切替部26を制御して前記P/S回路27から出力される撮像信号が、前記CDS対応デジタルフィルタ24を経由するように信号経路を切り替える(図5参照)。
【0057】
ここで、上述したように、CMOSイメージセンサ11からはデジタル撮像信号が出力されるため、ケーブル40による伝送の過程ではほとんど当該撮像信号に基づく映像の高域周波数成分は劣化しない。したがって、そのままの状態で上述のごときプロセッサ3に入力されると必要以上に映像の高域周波数成分を強調してしまうことになる。
【0058】
しかしながら本実施形態では、前記CDS対応デジタルフィルタ24は、前記先端CDS向けエンハンス回路33に係る周波数特性をイコライズする特性を有する逆特性フィルタとして構成される。
【0059】
すなわち内視鏡1からの出力される撮像信号の高域周波数成分は一旦減じられており、この撮像信号を入力したプロセッサ3内においては、前記先端CDS向けエンハンス回路33による高域強調作用と相まって結果として適正な周波数特性を得ることができる。
【0060】
一方、接続されたプロセッサがCMOS対応のプロセッサ3Aである場合は、プロセッサ検知回路28は、ステップS4の処理を行う。
【0061】
すなわち、ステップS4においてプロセッサ検知回路28は、前記信号経路切替部26を制御して前記P/S回路27から出力される撮像信号が、前記CMOS対応デジタルフィルタ25を経由するように信号経路を切り替える(図6参照)。
【0062】
なお、前記CMOS対応デジタルフィルタ25の特性は、ケーブル40においてCMOSイメージセンサ11から出力されるデジタル撮像信号に基づく映像の高域周波数成分がほとんど劣化しないことを考慮すると、ほぼフラットな周波数特性を示す回路構成であってもよい。
【0063】
以上説明したように本実施形態によると、上述のごとく撮像信号に対して高域周波数成分を強調する信号処理回路を備えるプロセッサに接続された場合であっても、当該プロセッサにおいて適正な画像信号処理を行い得る、CMOSイメージセンサを搭載する内視鏡を提供することができる。
【0064】
なお、本実施形態においては、前記FPGA21はコネクタ部20に配設するものとしたが、これに限らず、内視鏡1における操作部等に配設されてもよい。
【0065】
また、本実施形態においては、内視鏡1の撮像素子としてCMOSイメージセンサを想定したが、CMOSイメージセンサに限らず、本願発明は、挿入部先端部においてデジタルの撮像信号を生成し上述のごときケーブル40を介して後方回路部に向けて当該デジタル撮像信号を送出することができる撮像素子を搭載した内視鏡に適用することができる。
【0066】
次に本発明の第2の実施形態について説明する。
【0067】
図11は、本発明の第2の実施形態の内視鏡が先端CDS対応プロセッサに接続された際の構成を示す図であり、図12は、第2の実施形態の内視鏡がCMOS対応プロセッサに接続された際の構成を示す図である。また、図13は、第2の実施形態の内視鏡におけるデジタルフィルタ処理の作用を示したフローチャートである。
【0068】
本第2の実施形態の内視鏡システムは、その基本的な構成は第1の実施形態と同様であり、前記コネクタ部20におけるFPGA21内の一部の構成のみを異にするものである。したがって、ここでは第1の実施形態との差異のみの説明にとどめ、共通する部分の説明については省略する。
【0069】
上述した第1の実施形態においては、前記FPGA21は、内視鏡1に接続されたプロセッサの種別に応じて信号経路切替部26における信号経路を切り替えるプロセッサ検知回路28を備えるが(図1参照)、第2の実施形態においては、図11図12に示すように、当該プロセッサ検知回路28に代えて、信号経路切替部26における信号経路を切り替える切替指示信号を送出する切替指示部28aを備えることを特徴とする。
【0070】
この切替指示部28aは、図示しない操作等(例えば、ユーザーによる設定)により前記切替指示信号を信号経路切替部26に送出する。この切替指示信号は、前記デジタル撮像信号が前記先端CDS対応プロセッサ用デジタルフィルタ24(逆特性フィルタ)を通過する第1の信号経路と、前記CMOS対応プロセッサ用デジタルフィルタ25を通過する第2の信号経路(すなわち、前記デジタル撮像信号が前記逆特性フィルタを通過しない信号経路)とを切り替えるための指示信号である。
【0071】
また、本第2の実施形態において信号経路切替部26は、切替指示部28aからの切替指示信号に応じて、前記第1の信号経路を前記第2の信号経路とを切り替えるようになっている。
【0072】
このように本第2の実施形態においては、内視鏡1に接続されるプロセッサの種別(先端CDS対応プロセッサ3B(図11参照)またはCMOS対応プロセッサ3C(図12参照))を内視鏡1においては検知することなく、上述した信号経路の切替を行うことができる。
【0073】
次に、本実施形態の内視鏡1が先端CDS対応プロセッサまたはCMOS対応プロセッサに接続された際の作用についてそれぞれ説明する。
【0074】
図13に示すように、内視鏡1における切替指示部28aから前記切替指示信号が送出されると(ステップS11)、当該切替指示部28aにおける切替指示が先端CDS対応のプロセッサ3Bであるか、またはCMOS対応のプロセッサ3Cであるかに基づいて(ステップS12)、信号経路切替部26は前記第1の信号経路と前記第2の信号経路とを切り替える。
【0075】
すなわち、前記切替指示信号が先端CDS対応プロセッサ3Bを示す場合(すなわち、撮像信号に対して前記先端CDS向けエンハンス回路33が働くプロセッサを示す場合)は、前記先端CDS対応プロセッサ用デジタルフィルタ24(逆特性フィルタ)を通過する第1の信号経路を選択する(ステップS13)。
【0076】
一方、前記切替指示信号がCMOS対応のプロセッサ3Cを示す場合は、CMOS対応プロセッサ用デジタルフィルタ25を通過する第2の信号経路を選択する(ステップS14)。
【0077】
なお、第1の実施形態と同様に、前記CMOS対応プロセッサ用デジタルフィルタ25の特性は、ケーブル40においてCMOSイメージセンサ11から出力されるデジタル撮像信号に基づく映像の高域周波数成分がほとんど劣化しないことを考慮すると、ほぼフラットな周波数特性を示す回路構成であってもよい。
【0078】
以上説明したように本実施形態によると、接続されるプロセッサの種別検知をすることなく、撮像信号に対して高域周波数成分を強調する信号処理回路を備えるプロセッサに接続された場合であっても、当該プロセッサにおいて適正な画像信号処理を行い得る、CMOSイメージセンサを搭載する内視鏡を提供することができる。
【0079】
なお、本発明は、上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明の態様を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【0080】
このように、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更または応用が可能であることは勿論である。
【0081】
本出願は、2014年12月4日に日本国に出願された特願2014−246136号を優先権主張の基礎として出願するものであり、上記の開示内容は、本願明細書、請求の範囲、図面に引用されたものとする。
【要約】
高域成分が減衰した撮像信号の高域成分を強調補正する高域成分強調回路(33)を設けたプロセッサ(3)に接続可能な内視鏡であって、被検体の光学像を撮像してアナログ撮像信号を生成する撮像部と、当該アナログ撮像信号をデジタル撮像信号に変換して出力するA/D変換部とを備えるCMOSイメージセンサ(11)と、前記デジタル撮像信号を伝送するためのケーブル(40)と、前記高域成分強調回路に係る周波数特性をイコライズする周波数特性を有するフィルタ(24)とを具備する。
図1
図2
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図11
図12
図13